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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1323149
審判番号 不服2015-16931  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-14 
確定日 2016-12-28 
事件の表示 特願2012-535414「高い軸外反射率を有する浸漬した反射偏光子」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月28日国際公開、WO2011/050268、平成25年 3月 7日国内公表、特表2013-508781〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,特許法184条の3第1項の規定により,平成22年10月22日にされたとみなされる特許出願であって(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 平成21年10月24日,米国),その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成25年10月22日:手続補正書
平成26年 6月26日:拒絶理由通知(同年7月1日発送)
平成26年12月26日:意見書
平成26年12月26日:手続補正書
平成27年 4月28日:拒絶査定(同年5月12日送達)
平成27年 9月14日:手続補正書(以下「本件補正」という。)
平成27年 9月14日:審判請求

第2 補正の却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,この請求項1の記載に係る発明を,「本願発明」という。)。
「フィルム構造体において,
可視波長を含む広範な波長領域にわたり角度及び偏光の関数として光を選択的に透過及び反射するように構成され,垂直に入射する第1の偏光の可視光線に対する通過軸と,垂直に入射する第2の偏光の可視光線に対するブロック軸と,を画定し,更に,前記第1の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,入射角が斜めのときに反射率が高くなることによって特徴付けられる,複数のミクロ層と,
前記ミクロ層への大きく傾斜した光の伝播を制限する,又はかかる大きく傾斜した伝播光を前記ミクロ層に向けて向け直すという方法で前記ミクロ層に連結される,少なくとも1.1であるが1.3以下である,可視波長にわたって平均化された超低屈折率を有する目的の光の波長を超える厚さの低屈折率層と,を備え,
前記低屈折率層及び前記複数のミクロ層が,共に目的の光の波長を超える厚さの第1の層と目的の光の波長を超える厚さの第2の層との間に配置されるように配列される,第1及び第2の層を更に備え,
前記第1及び第2の層が,前記低屈折率層よりも高い屈折率を有するフィルム構造体。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(以下,この記載に係る発明を,「本件補正後発明」という。)。なお,下線は当合議体が付したものである(以下同じ。)。
「フィルム構造体において,
可視波長を含む広範な波長領域にわたり角度及び偏光の関数として光を選択的に透過及び反射するように構成され,垂直に入射する第1の偏光の可視光線に対する通過軸と,垂直に入射する第2の偏光の可視光線に対するブロック軸と,を画定し,更に,前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなることによって特徴付けられる,複数のミクロ層と,
前記ミクロ層への大きく傾斜した光の伝播を制限する,又はかかる大きく傾斜した伝播光を前記ミクロ層に向けて向け直すという方法で前記ミクロ層に連結される,少なくとも1.1であるが1.3以下である,可視波長にわたって平均化された超低屈折率を有する目的の光の波長を超える厚さの低屈折率層と,を備え,
前記低屈折率層及び前記複数のミクロ層が,共に目的の光の波長を超える厚さの第1の層と目的の光の波長を超える厚さの第2の層との間に配置されるように配列される,第1及び第2の層を更に備え,
前記第1及び第2の層が,前記低屈折率層よりも高い屈折率を有するフィルム構造体。」

2 特許法17条の2第3項について
(1) 本件補正について
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1の「複数のミクロ層」が「前記第1の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,入射角が斜めのときに反射率が高くなることによって特徴付けられる」とする限定を,「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなることによって特徴付けられる」と更に限定する補正(以下,「補正事項」という。)である。
そこで,上記補正事項が,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものであるかについて,以下,検討する。

(2) 補正事項について
ア 当初明細書等に記載された事項
本件補正後発明は,複数のミクロ層が透過軸とブロック軸を画定し,第1及び2の偏光の可視光線が第1及び2の入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる構成を具備するところ,この構成について,当初明細書等には,次の事項が記載されている。

(ア)「【図面の簡単な説明】
【0011】
(中略)
【図6】反射偏光フィルムの一部分の概略斜視図。
【図7a】方向半球(direction hemisphere)の斜視図。半球の任意の点は,極角θ及び方位角φによって特徴付けられるフィルムの中の光の伝播方向。
【図7b】図7aの方向半球の斜視図。通過状態偏光を有する光に対する本明細書に開示の2軸コリメート多層反射偏光フィルムの透過率特性の簡略化された形態。
(中略)
【図8a】超低屈折率媒体への入射角の関数としての,超低屈折率の媒体に浸漬されている多層反射偏光フィルムの計算された内部反射率のグラフ。」

(イ)「【0055】
例えば,図6は,標準的な偏光子602に入射角θで入射し,それによって入射面612を形成する光線610を示している。偏光子602は,y軸に平行な通過軸604と,x軸に平行なブロック軸606と,を含む。光線610の入射面612はブロック軸606に平行である。光線610は,入射面612中にあるp偏光成分と,入射面612と直交するs偏光成分と,を有する。光線610のp偏光は,偏光子602のブロック軸606と平行なベクトル成分を有し,したがって偏光子によってほぼ反射されるが,一方で光線610のs偏光は偏光子602の通過軸604と平行であり,少なくとも部分的に透過する。
【0056】
更に,図6は,偏光子602の通過軸604と平行なベクトル成分を有する入射面622内で偏光子602に入射する光線620を例示している。したがって,光線620のp偏光は,偏光子602の通過軸604と平行であり,一方で,光線620のs偏光は,偏光子602のブロック軸606と平行である。結果として,偏光子602が,ブロック軸における偏光の全ての角度の入射光において100%の,通過軸における偏光の全ての角度の入射光において0%の反射率を有する「理想的」偏光子である場合,偏光子は光線610のs偏光及び光線620のp偏光を透過し,一方で光線610のp偏光及び光線620のs偏光を反射する。換言すれば,偏光子602はp偏光とs偏光の組み合わせを透過する。本明細書で更に詳しく説明されるように,p偏光とs偏光の透過量と反射量は,偏光子の特性に依存する。
【0057】
光学的に浸漬されている反射偏光子として使用するのに適しており,また有利には,「通過」偏光状態の斜めに入射した光に対する反射率の有意な増加を呈する光学フィルムを製造するために,多層光学フィルムの隣接するミクロ層間の屈折率の関係をどのように調整することができるかを,以下により完全に説明する。斜めに入射した光に対する有意な反射率の増加は,1つの入射面のみに生じるように,又は2つの直交する入射面に生じるように設計されてもよく,いずれの場合も,(少なくとも1つの入射面,及びいくつかの実施形態では2つの直交する入射面における高反射率及び低透過型反射率(low transmission off-axis)の結果として)光をより狭い視野円錐に拘束又は「コリメート」するのを助けて,表示システムに増加した輝度及び/又はコントラストをもたらすために,あるいは照明器具からの光をコリメートするために,リサイクリングシステムで用いることができる。用語「コリメート」は,開示される反射偏光フィルムに関連して用いられるとき,代表的な実施形態において,偏光フィルムによって反射された一部の光を少なくとも部分的にリサイクルする他の反射性又は拡散性フィルム若しくは要素とフィルムが組み合わされる,という了解の下で広く用いられることを読者は理解すべきである。そのため,偏光フィルムが,垂直入射光に対して高透過率を有し,大きく傾斜した光に対してはるかに低い透過率(より高い反射率)を有する場合,反射された斜光の少なくとも一部は,偏光フィルムによって透過される可能性が高くなるように,システムの別の光学要素によって傾斜の少ない方向で偏光フィルムに戻る向きに再度反射され得る。この意味で,最初は大きく傾斜している光は,偏光フィルムによって透過されるときまでに傾斜の小さい光に「変換され」,また,偏光フィルムはそこに衝突する光を「コリメートする」ということができる。」

(ウ)「【図6】



(エ)「【0060】
開示される多層光学フィルムは,少なくとも小さな入射角(即ち,垂直又はほぼ垂直な入射角,θ≒0)の光に対して,有意な偏光特性を呈するのが好ましい。したがって,垂直入射光に対し,フィルムは,可視波長にわたって低反射率及び高透過率の通過軸(例えば,面内y軸に沿った),及び可視波長にわたって非常に高い反射率及び非常に低い透過率のブロック軸(例えば,面内x軸に沿った)を画定するのが好ましい。好ましくは,「ブロック」偏光の光は,θとφとのほぼ全ての組み合わせにわたって,即ち,半球で表わされる全方向にわたって「ブロックされる」,即ち,非常に高い反射率及び非常に低い透過率によって特徴付けられる。したがって,606がブロック軸である図6の図形を参照すると,開示される反射偏光フィルムは,ULI材料で測定される最大約90度の角度θ及びほぼ全ての可視波長に関して,平面622に入射するs偏光及び平面612に入射するp偏光に対して高反射率を維持するのが好ましい。」

(オ)「【0063】
以下に更に記述されるように,通過偏光状態の光に対する高い及び低い透過率領域が,図7bに示されるように方位角φの影響を比較的受けないように,又は図7cに示されるようにφに強く依存し得るように,多層偏光フィルムを調整することができる。明白な理由から,図7bの方位角の影響を受けない特性は,「2軸コリメート(2-axis collimating)」多層反射偏光フィルムを特徴付けるということができ,図7cの強度に変化する方位角特性は,「1軸コリメート」多層反射偏光フィルムを特徴付けるということができる。こうしたカテゴリーの区別は,フィルムが目的とする用途,及び異なる方位角方向間の差が所与の用途において,どれだけ有意であると考えられるかに依存し得る。以下の議論の便宜上,単純に,2軸コリメート偏光フィルムを,x-z平面及びy-z平面などの2つの直交する入射面の極角θの関数として透過率においても同様の低下を示すと特徴付けることができる一方,1軸コリメート偏光フィルムを,1つの入射面では透過率の大きな低下を示し,直交する入射面では透過率の低下をほとんどあるいは全く示さないと特徴付けることができる。1軸コリメート偏光フィルムの場合には,透過率の大きな低下を示す入射面は,フィルムの通過軸又はブロック軸のいずれかと整列され得ることに留意されたい。透過率が低下する平面が通過軸と整列される場合,通過状態の光のp偏光成分が入射角の増加に伴ってより多く反射されるので,フィルムをp偏光コリメーティングフィルムと呼ぶことができ,平面がフィルムのブロック軸と整列される場合,通過状態の光のs偏光成分が入射角の増加に伴ってより多く反射されるので,s偏光コリメーティングフィルムと呼ぶことができる。」

(カ)「【図7b】



(キ)「【0068】
フィルムの内部反射率は,所与の入射角θにおける4種類の偏光の場合のいずれか,即ち:通過平面に入射するp偏光に対する反射率(「RPpass(θ)」);通過平面に入射するs偏光に対する反射率(「RSblock(θ)」);ブロック平面に入射するp偏光に対する反射率(「RPblock(θ)」);及びブロック平面に入射するs偏光に対する反射率(「RSpass(θ)」);に関して特定され,この場合,通過平面は,フィルムの通過軸と垂直軸とを含む平面であり,ブロック平面は,フィルムのブロック軸と垂直軸とを含む平面であり,角度θは,空気中(θ_(air))又は超低屈折率材料中(θ_(low index))で測定された角度であり得る。
【0069】
フィルムの内部透過率は,所与の入射角θにおける4種類の偏光の場合のいずれか,即ち:通過平面に入射するp偏光に対する透過率(「TPpass(θ)」);通過平面に入射するs偏光に対する透過率(「TSblock(θ)」);ブロック平面に入射するp偏光に対する透過率(「TPblock(θ)」);及びブロック平面に入射するs偏光に対する透過率(「TSpass(θ)」);に関して特定される。」

(ク)「【0086】
図9に関連して非対称フィルムの加工に関する考察,及びそれらがミクロ層の屈折率にどのような影響を与えるかについて更に説明する前に,2軸コリメーションを提供することができる特定の多層偏光フィルムの例を記述する。」

(ケ)「【0089】
計算された(内部)反射率と入射角曲線の比較が図8aにプロットされており,入射角は,屈折率1.2のULI媒体の中のものであると仮定される。図中,曲線810は,RSblock(θ)及びRPblock(θ)の両方を表し,曲線812はRSpass(θ)を表し,曲線814はRPpass(θ)を表す。s偏光及びp偏光の両方に関する通過状態の反射率は,最高角度でほぼ0.9まで上昇することに留意されたい。ほとんどの角度で,これらの反射率の値は,システム構造の表面及び境界面反射を支配する。図8bは,通過偏光及びブロック偏光の両方の右側帯域(RBE)を,屈折率1.2のULI材料の中の入射角の関数としてプロットしており,曲線820はブロック状態でs偏光された光のRBEの位置を示し,曲線822はブロック状態でp偏光された光のRBEの位置を示し,曲線824は通過状態でs偏光された光のRBEの位置を示し,曲線826は通過状態でp偏光された光のRBEの位置を示す。」

(コ)「【図8a】



上記(ア)?(コ)から,当初明細書等には,偏光子が通過軸とブロック軸とを含むことが記載されている(段落【0055】)。そして当初明細書等には,「通過平面は,フィルムの通過軸と垂直軸とを含む平面であり,ブロック平面は,フィルムのブロック軸と垂直軸とを含む平面であり,」「通過平面に入射するp偏光に対する反射率(「RPpass(θ)」);通過平面に入射するs偏光に対する反射率(「RSblock(θ)」);ブロック平面に入射するp偏光に対する反射率(「RPblock(θ)」);及びブロック平面に入射するs偏光に対する反射率(「RSpass(θ)」)」(段落【0068】)とする定義がある。
そして,ブロック軸と平行な偏光成分は偏光子によってほぼ反射され,通過軸と平行な偏光は,少なくとも部分的に透過し(段落【0055】),反射率と入射角曲線の比較について,図8aにおける「曲線810は,RSblock(θ)及びRPblock(θ)の両方を表し,曲線812はRSpass(θ)を表し,曲線814はRPpass(θ)を表す」(段落【0089】)ことが記載されている。

イ 補正の適否
「複数のミクロ層」について,特許請求の範囲には,「可視波長を含む広範な波長領域にわたり角度及び偏光の関数として光を選択的に透過及び反射するように構成され,垂直に入射する第1の偏光の可視光線に対する通過軸と,垂直に入射する第2の偏光の可視光線に対するブロック軸と,を画定し,更に,前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなることによって特徴付けられる」と記載されている。
この記載は,必ずしも明確であるとはいえないところもあるが,一応,「第2の偏光の可視光線」は,それぞれ2つの直交する入射面に対して,「入射角が斜めのときに反射率が高くなる」ことを意味すると解される。
ここで,本件補正後発明において,「ブロック軸」は,「垂直に入射する第2の偏光の可視光線に対する」軸であるから,「第2の偏光の可視光線」は,ブロック軸に対応する偏光である。しかし,当初明細書等においては,ブロック軸と平行な偏光成分は,偏光子によってほぼ反射されると記載されている。したがって,当初明細書等には,ブロック軸に対応する「第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」ることについては記載されていない。本願の明細書の段落【0057】に記載されている「光をより狭い視野円錐に拘束」することも,「「通過」偏光状態の斜めに入射した光」についての記載である。
この点に関して,請求人は,「かかる補正は,特許請求の範囲を減縮することを目的とし,例えば明細書段落[0063]に記載されているような「2軸コリメート(2-axis collimating)」多層反射偏光フィル(審決注:フィルムの誤記。)に基づくものであるので,新規事項を追加するものではありません」(審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】(2)補正の根拠の明示)と説明している。
しかしながら,本願の明細書の段落【0063】には,通過偏光状態の光に対する高い及び低い透過率領域を図7bに示されるように設定することが記載されている。通過偏光状態の光とは,通過平面に入射するp偏光,ブロック平面に入射するs偏光であり,ブロック軸に対応する偏光である「第2の偏光の可視光線」が,それぞれ2つの直交する入射面に対して,「入射角が斜めのときに反射率が高くなる」ことは示されていない。
なお,仮に,「第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線」を単に「p偏光」,「s偏光」と解したとしても,同様である。すなわち,その際には,「p偏光」,「s偏光」が「第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」こととなる。しかし,「p偏光」,「s偏光」は,ブロック軸に平行な場合(反射率が「RSblock(θ)」,「RPblock(θ)」の場合)には反射されることが記載されており,二つの「入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」ことについては,当初明細書等に記載がない。
いずれにせよ,本件補正の「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」とする技術的事項は,当初明細書等には記載も示唆もされていない。また本件補正後発明の偏光子は所定の偏光をブロックするブロック軸を画定することが前提であるから,上記の技術的事項が自明であるともいえない。
したがって,上記補正事項を含む本件補正は,当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるということができない。

(3) 結論
よって,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく,特許法17条の2第3項の規定に違反するものであるから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3 独立特許要件違反
(1) 本件補正について
上記補正事項は,「複数のミクロ層」の構成を限定するものであるから,本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる事項を目的とするものである。そこで,念のために,本件補正後発明が,特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下検討する。

(2) 特許法36条6項2号について
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には,「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」と記載されている。
しかしながら,「第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面」について,「入射面」が何と直交するのか必ずしも明確でなく,第1及び第2の「入射面」が何を指すのか不明確である。また,この記載のみからは,それぞれの入射面が必ずしも相互に直交するとは必ずしも読み取れない。
そして,「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線」も,「第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面」との関係が明確でなく,それぞれの「偏光の可視光線」,「入射面」がどのような方向や組み合わせの関係となっているのか不明確である。
上記のとおりであるから,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしておらず,本件補正後発明は,特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(3) 特許法36条6項1号について
本件補正後発明の「複数のミクロ層」は,「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなることによって特徴付けられる」ものである。
しかしながら,特許請求の範囲には,「垂直に入射する第1の偏光の可視光線に対する通過軸と,垂直に入射する第2の偏光の可視光線に対するブロック軸と,を画定」すると記載しているから,「第2の偏光の可視光線」は,ブロック軸に対応する偏光である。
また,本願の発明の詳細な説明には,それぞれの入射面において,ブロック軸に平行な偏光の反射率(「RSblock(θ)」,「RPblock(θ)」)は角度によらず高いことが記載されており,それぞれの「入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」ことについては,記載がない。
したがって,本願の発明の詳細な説明には,ブロック軸に対応する「第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くな」ることについては,記載されていない。
また,本願補正発明の偏光子は,所定の偏光をブロックするブロック軸を画定することが前提であるから,技術常識を考慮しても「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」ことまで発明を拡張できるものでもない。
上記のとおりであるから,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしておらず,本件補正後発明は,特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(4) 特許法29条2項について
ア 引用例の記載及び引用発明
(ア) 引用例1の記載
本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,原査定の拒絶の理由に引用された,国際公開第2008/144656号(以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。

a 「In the view of Applicants, drawbacks or limitations of existing edge-lit backlights include the following: the relatively large mass or weight associated with the light guide, particularly for larger backlight sizes; the need to use components that are non- interchangeable from one backlight to another, since light guides must be injection molded or otherwise fabricated for a specific backlight size and for a specific source configuration; the need to use components that require substantial spatial non-uniformities from one position in the backlight to another, as with existing extraction structure patterns; and, as backlight sizes increase, increased difficulty in providing adequate illumination due to limited space or "real estate" along the edge of the display, since the ratio of the circumference to the area of a rectangle decreases linearly (1/L) with the characteristic in- plane dimension L (e.g., length, or width, or diagonal measure of the output region of the backlight, for a given aspect ratio rectangle).
In "direct-lit" backlights, one or more light sources are disposed ? from a plan- view perspective ? substantially within the area or zone corresponding to the output area, normally in a regular array or pattern within the zone. Alternatively, one can say that the light source(s) in a direct- lit backlight are disposed directly behind the output area of the backlight. Because the light sources are potentially directly viewable through the output area, a strongly diffusing plate is typically mounted above the light sources to spread light over the output area to veil the light sources from direct view. Again, light management films, such as a reflective polarizer film, and prismatic BEF film(s), can also be placed atop the diffuser plate for improved on-axis brightness and efficiency. Large area LCD applications tend to use direct- lit backlights because they are not constrained by the 1/L limitation of edge-lit backlights and because of the weight associated with solid light guides.」(4頁3行?26行)
(日本語訳)
「出願人の見地では,既存のエッジリット・バックライトの欠点または制限は次のものを含む;特にバックライトのサイズが大きい場合にライトガイドと関連した質量又は重量が比較的大きいこと,特定のバックライト・サイズと特定の光源構造用にライトガイドが射出成形や他の方法で製造されなければならないので,バックライト間で互換性のない構成要素を使用しなければならないこと,既存の抽出構造パターンと同様にバックライト内の位置に応じて実質的に空間的の不均一を必要とする構成要素を使用しなければならないこと,並びにバックライト・サイズが大きくなるほど,長方形の面積に対する周囲の長さの比率が,特徴的な面内寸法L(例えば,所定の縦横比の長方形では,バックライトの出力領域の長さ,幅,又は対角線寸法)と共に線形(1/L)に低下するので,表示装置の縁に沿った空間すなわち「占有体積」が制限されるため十分な照明を提供するのが困難になることがある。
「ダイレクトリット(direct-lit)」バックライトでは,1つ以上の光源が,-平面的な視点から見れば-実質的に出力領域に対応する領域又はゾーンの内側に,通常はゾーン内で規則的な配列又はパターンで配置される。あるいは,ダイレクトリット・バックライトの光源が,バックライトの出力領域の後方に直接配置されてもよい。光源が出力領域を介して直接見える可能性があるので,出力領域の上で光を拡散させて光源を直接見えなくするために,通常,光源の上に強力な拡散板が取り付けられる。この場合も,拡散板の上に反射偏光子フィルムやプリズムBEFフィルム等の光処理フィルムを配置して,軸上の輝度と効率を改善することができる。広域面積の液晶表示用途では,エッジリット・バックライトの1/L制限を受けないように,また固体ライトガイドと関連した重量のために,ダイレクトリット・バックライトを使用する傾向がある。」

b 「Summary
In one aspect, the present disclosure provides a backlight that includes a front reflector and a back reflector that form a hollow light recycling cavity including an output surface. The backlight also includes one or more light sources disposed to emit light into the light recycling cavity. The front reflector includes an on-axis average reflectivity of at least 90% for visible light polarized in a first plane, and an on-axis average reflectivity of at least 25% but less than 90% for visible light polarized in a second plane perpendicular to the first plane.
In another aspect, the present disclosure provides an asymmetric reflective film including alternating polymer layers whose arrangement and refractive indices are tailored to provide an average on-axis reflectivity of at least 90% for visible light polarized in a first plane, and an average on-axis reflectivity of at least 25% but less than 90% for visible light polarized in a second plane perpendicular to the first plane.」(5頁10行?22行)
(日本語訳)
「要約
一態様において,本開示は,出力面を有する中空の光リサイクリング・キャビティーを形成する前面反射体と背面反射体を含むバックライトを提供する。バックライトは,また,光リサイクリング・キャビティー内に光を放射するように配置された1つ以上の光源を含む。前面反射体は,第1の平面内で偏光された可視光に関して少なくとも90%の軸上の平均反射率と,第1の平面と垂直な第2の平面内で偏光された可視光に関して少なくとも25%かつ90%未満の軸上の平均反射率と,を有する。
別の態様では,本開示は,第1の平面内で偏光された可視光に関して少なくとも90%の軸上の平均反射率と,第1の平面と垂直な第2の平面内で偏光された可視光に関して少なくとも25%かつ90%未満の軸上の平均反射率と,を提供するように調整された構成及び屈折率を有する高分子の交互層を含む非対称の反射フィルムを提供する。」

c 「Fig. 1



d 「As mentioned herein, the backlights of the present disclosure can be utilized as backlights for display systems. A schematic cross-sectional view of one embodiment of a direct- lit display system 100 is illustrated in FIG. 1. Such a display system 100 may be used, for example, in an LCD monitor or LCD-TV. The display system 100 includes a display panel 150 and an illumination assembly 101 positioned to provide light to the panel 150. The display panel 150 can include any suitable type of display. In the illustrated embodiment, the display panel 150 includes an LC panel (hereafter referred to as LC panel 150). The LC panel 150 typically includes a layer of LC 152 disposed between panel plates 154. The plates 154 are often formed of glass and can include electrode structures and alignment layers on their inner surfaces for controlling the orientation of the liquid crystals in the LC layer 152. These electrode structures are commonly arranged so as to define LC panel pixels, i.e., areas of the LC layer where the orientation of the liquid crystals can be controlled independently of adjacent areas. A color filter may also be included with one or more of the plates 152 for imposing color on the image displayed by the LC panel 150.」(14頁19行?15頁3行)
(日本語訳)
「本明細書で言及されるように,本開示のバックライトを表示システムのバックライトとして利用することができる。図1に,ダイレクトリット表示システム100の一実施形態の概略断面図を示す。このような表示システム100は,例えば,液晶モニタ又は液晶テレビで使用されてもよい。表示システム100は,表示パネル150と,パネル150に光を提供するように位置決めされた照明アセンブリ101とを含む。表示パネル150は,いかなる好適なディスプレイをも含む。示した実施形態では,表示パネル150は,液晶パネルを含む(以後,液晶パネル150と呼ぶ)。液晶パネル150は,一般に,パネル板154間に配置された液晶層152を含む。パネル板154は,ガラスで形成されることが多く,その内側面に液晶層152の液晶の配向を制御するための電極構造とアラインメント層を有することがある。これらの電極構造は,一般に,液晶パネル画素,即ち液晶の配向を隣接領域と関係なく制御することができる液晶層の領域を画定するように構成される。また,1つ以上の板152と共に,液晶パネル150によって表示された画像に色付けするためのカラー・フィルタが含まれてもよい。」

e 「The LC panel 150 is positioned between an upper absorbing polarizer 156 and a lower absorbing polarizer 158. In the illustrated embodiment, the upper and lower absorbing polarizers 156, 158 are located outside the LC panel 150. The absorbing polarizers 156, 158 and the LC panel 150 in combination control the transmission of light from a backlight 110 through the display system 100 to the viewer. For example, the absorbing polarizers 156, 158 may be arranged with their transmission axes perpendicular to each other. In an unactivated state, a pixel of the LC layer 152 may not change the polarization of light passing therethrough. Accordingly, light that passes through the lower absorbing polarizer 158 is absorbed by the upper absorbing polarizer 156. When the pixel is activated, the polarization of the light passing therethrough is rotated so that at least some of the light that is transmitted through the lower absorbing polarizer 158 is also transmitted through the upper absorbing polarizer 156. Selective activation of the different pixels of the LC layer 152, for example, by a controller 104, results in the light passing out of the display system 100 at certain desired locations, thus forming an image seen by the viewer. The controller 104 may include, for example, a computer or a television controller that receives and displays television images.
One or more optional layers 157 may be provided proximate the upper absorbing polarizer 156, for example, to provide mechanical and/or environmental protection to the display surface. In one exemplary embodiment, the layer 157 may include a hardcoat over the upper absorbing polarizer 156.」(15頁4行?15頁23行)
(日本語訳)
「液晶パネル150は,上側吸収偏光子156と下側吸収偏光子158との間に位置する。示した実施形態では,上側吸収偏光子156と下側吸収偏光子158は,液晶パネル150の外側にある。吸収偏光子156,158と液晶パネル150は組み合わせで,バックライト110から表示システム100を介して観察者までの光の透過を制御する。例えば,吸収偏光子156,158は,その透過軸が互いに垂直な状態で配列されてもよい。液晶層152の画素は,非駆動状態で,通過する光の偏光を変化させないことがある。したがって,下側吸収偏光子158を通過する光は,上側吸収偏光子156に吸収される。画素が駆動されたとき,通過する光の偏光は,下側吸収偏光子158を透過する光の少なくとも一部分が上側吸収偏光子156も透過するように回転される。例えば制御装置104が液晶層152の異なる画素を選択的に駆動すると,光が表示システム100の特定の所望の位置から出て,それにより観察者が見ることができる画像が形成される。制御装置104は,例えば,コンピュータ,又はテレビ画像を受信して表示するテレビ制御装置を含み得る。
表示面の機械的保護及び/又は環境的保護を提供するために,例えば,上側吸収偏光子156の近くに1つ以上の選択的な層157が提供されてもよい。一つの例示的な実施形態では,層157は,上側吸収偏光子156の上のハードコートを含むことがある。」

f 「The illumination assembly 101 includes a backlight 110 and optionally one or more light management films 140 positioned between the backlight 110 and the LC panel 150. The backlight 110 can include any backlight described herein, e.g., backlight 200 of FIG. 2.
An arrangement 140 of light management films, which may also be referred to as a light management unit, is positioned between the backlight 110 and the LC panel 150. The light management films 140 affect the illumination light propagating from the backlight 110. For example, the arrangement 140 of light management films may include a diffuser 148. The diffuser 148 is used to diffuse the light received from the backlight 110.
The diffuser layer 148 may be any suitable diffuser film or plate. For example, the diffuser layer 148 can include any suitable diffusing material or materials. In some embodiments, the diffuser layer 148 may include a polymeric matrix of polymethyl methacrylate (PMMA) with a variety of dispersed phases that include glass, polystyrene beads, and CaCO_(3) particles. Exemplary diffusers can include 3M^(TM) Scotchcal^(TM) Diffuser Film, types 3635-30, 3635-70, and 3635-100, available from 3M Company, St. Paul, Minnesota.」(15頁29行?16頁13行)
(日本語訳)
「照明アセンブリ101は,バックライト110を含み,必要に応じて,バックライト110と液晶パネル150との間に位置する1つ以上の光処理フィルム140を含む。バックライト110は,本明細書で述べるいずれかのバックライト,例えば図2のバックライト200を含むことができる。
光処理ユニットと呼ばれることもある光処理フィルムの配列140は,バックライト110と液晶パネル150との間に位置する。光処理フィルム140は,バックライト110から伝搬する照明光に作用する。例えば,光処理フィルム140の配列は,拡散体148を含むことがある。拡散体148は,バックライト110から受けた光を拡散するために使用される。
拡散層148は,いずれの好適な拡散フィルム又はプレートであってもよい。例えば,拡散層148は,いずれの好適な拡散材を含んでいてもよい。ある実施形態では,拡散層148は,ガラス,ポリスチレンビーズ,及びCaCO_(3)粒子を含むさまざまな分散相を有するポリメチルメタクリレート(PMMA)の高分子マトリックスを含んでもよい。例示的な拡散体には,ミネソタ州セントポールの3M社から入手可能な3M(登録商標)Scotchcal(登録商標)拡散フィルム,タイプ3635-30,3635-70及び3635-100がある。」

g 「The optional light management unit 140 may also include a reflective polarizer 142. Any suitable type of reflective polarizer may be used for the reflective polarizer 142, e.g., multilayer optical film (MOF) reflective polarizers; diffusely reflective polarizing film (DRPF), such as continuous/disperse phase polarizers; wire grid reflective polarizers; or cholesteric reflective polarizers.
Both the MOF and continuous/disperse phase reflective polarizers rely on the difference in refractive index between at least two materials, usually polymeric materials, to selectively reflect light of one polarization state while transmitting light in an orthogonal polarization state. Some examples of MOF reflective polarizers are described in co-owned U.S. Patent No. 5,882,774 (Jonza et al.). Commercially available examples of MOF reflective polarizers include Vikuiti^(TM) DBEF-D200 and DBEF-D440 multilayer reflective polarizers that include diffusive surfaces, available from 3M Company.」(16頁14行?16頁25行)
(日本語訳)
「選択的な光処理ユニット140は,反射偏光子142を含んでもよい。反射偏光子142には,例えば,多層光学フィルム(MOF)反射偏光子,連続/分散相偏光子などの拡散反射偏光フィルム(DRPF),ワイヤ・グリッド反射偏光子,又はコレステリック反射偏光子などのいずれの適切なタイプの反射偏光子を使用することができる。
MOF及び連続/分散相反射偏光子の双方は,選択的に1つの偏光状態の光を反射しながら,直交に偏光した状態で光を透過するために,少なくとも2つの材料,通常,高分子材料間の屈折率の差に依存する。MOFの反射偏光子の幾つかの例は,共有米国特許第5,882,774号(ジョンザ(Jonza)他)に示されている。MOF反射偏光子の市販の例には,3M Companyから入手可能な拡散面を含むVikuiti(登録商標)DBEF-D200及びDBEF-D440多層反射偏光子がある。」

h 「In some embodiments, a polarization control layer 144 may be provided between the diffuser plate 148 and the reflective polarizer 142. Examples of polarization control layers 144 include a quarter wave retarding layer and a polarization rotating layer such as a liquid crystal polarization rotating layer. The polarization control layer 144 may be used to change the polarization of light that is reflected from the reflective polarizer 142 so that an increased fraction of the recycled light is transmitted through the reflective polarizer 142.
The optional arrangement 140 of light management films may also include one or more brightness enhancing layers. A brightness enhancing layer can redirect off-axis light in a direction closer to the axis of the display. This increases the amount of light propagating on-axis through the LC layer 152, thus increasing the brightness of the image seen by the viewer. One example of a brightness enhancing layer is a prismatic brightness enhancing layer, which has a number of prismatic ridges that redirect the illumination light through refraction and reflection. Examples of prismatic brightness enhancing layers that may be used in the display system 100 include the Vikuiti^(TM) BEF II and BEF III family of prismatic films available from 3M Company, including BEF II 90/24, BEF II 90/50, BEF IIIM 90/50, and BEF IIIT. Brightness enhancement may also be provided by some of the embodiments of front reflectors as is further described herein.
The exemplary embodiment illustrated in FIG. 1 shows a first brightness enhancing layer 146a disposed between the reflective polarizer 142 and the LC panel 150. A prismatic brightness enhancing layer typically provides optical gain in one dimension. An optional second brightness enhancing layer 146b may also be included in the arrangement 140 of light management layers, having its prismatic structure oriented orthogonally to the prismatic structure of the first brightness enhancing layer 146a. Such a configuration provides an increase in the optical gain of the display system 100 in two dimensions. In other exemplary embodiments, the brightness enhancing layers 146a, 146b may be positioned between the backlight 110 and the reflective polarizer 142.
The different layers in the optional light management unit 140 may be free standing. In other embodiments, two or more of the layers in the light management unit 140 may be laminated together, for example as discussed in co-owned U.S. Patent Application Serial No. 10/966,610 (Ko et al.). In other exemplary embodiments, the optional light management unit 140 may include two subassemblies separated by a gap, for example, as described in co-owned U.S. Patent Application Serial No. 10/965,937 (Gehlsen et al).
」(17頁9行?18頁10行)
(日本語訳)
「ある実施形態では,拡散体板148と反射偏光子142との間に偏光制御層144が提供されることがある。偏光制御層144の例には,4分の1波長の遅延層と,液晶偏光回転層などの偏光回転層がある。偏光制御層144は,反射偏光子142を透過するリサイクリング光の一部が増えるように反射偏光子142から反射される光の偏光を変化させるために使用されてもよい。
光処理フィルムの選択的な配列140は,1つ以上の輝度強化層を含んでもよい。輝度強化層は,軸から外れた光の向きをディスプレイの軸に近い方向に変化させることができる。これは,液晶層152を通って軸上を伝播する光の量を増やし,それにより観察者が見る画像の輝度が高まる。輝度強化層の一例は,照明光を屈折と反射で変化させる幾つかのプリズム隆起部を有するプリズム輝度強化層である。表示システム100で使用されることがあるプリズム輝度強化層の例には,BEF II 90/24,BEF II 90/50,BEF IIIM 90/50及びBEFIIITを含む,3M Companyから入手可能なVikuiti(登録商標)BEF II及びBEF III系のプリズムフィルムが含まれる。輝度強化は,本明細書で更に詳しく説明される前面反射体の実施形態の幾つかによって提供することが可能である。
図1に示した例示的な実施形態は,反射偏光子142と液晶パネル150との間に配置された第1の輝度強化層146aを示す。プリズム輝度強化層は,一般に,一次元の光学利得を提供する。また,光処理層の配列140には,第1の輝度強化層146aのプリズム構造に直角に向けられたプリズム構造を有する選択的な第2の輝度強化層146bが含まれてもよい。そのような構成は,表示システム100の光学利得を二次元で増大させる。他の例示的な実施形態では,輝度強化層146a,146bは,バックライト110と反射偏光子142との間に配置されてもよい。
選択的な光処理ユニット140内の様々な層は独立していてもよい。他の実施形態では,例えば共有米国特許出願第10/966,610号(コー(Ko)他)で言及されているように,光処理ユニット140内の2つ以上の層が共に積層されてもよい。他の例示的な実施形態では,例えば共有米国特許出願第10/965,937号(ゲルセン(Gehlsen)他)に記載されているように,選択的な光処理ユニット140が,ギャップで分離された2つの半組立体を含んでもよい。」

i 「The front reflector 210 is operable to emit polarized light. In such embodiments, the front reflector 210 includes an on-axis average reflectivity of at least 90% for visible light polarized in a first plane, and an on-axis average reflectivity of at least 25% but less than 90% for visible light polarized in a second plane parallel to the first plane. Those skilled in the art would consider light polarized in the second plane to be in a useable polarization state, i.e., such polarized light would pass through the lower absorbing polarizer of an LC panel (e.g., lower absorbing polarizer 158 of FIG. 1) and be incident on the LC panel. Further, those skilled in the art would consider the first plane to be parallel to the block axis and the second plane to be parallel to the pass axis of the polarizing front reflector 210. Backlights of the present disclosure that provide polarized light exhibit high enough reflectivities for useable light to provide sufficient lateral transport or spreading for acceptable spatial uniformity of the emitted light, but a low enough reflectivity of usable light to keep the overall loss of the usable polarization state in the cavity to manageable levels, thereby providing an acceptably high brightness of the emitted light.」(19頁22行?20頁3行)
(日本語訳)
「前面反射体210は,偏光を放射する働きをする。そのような実施形態では,前面反射体210は,第1の平面内で偏光された可視光に関しても少なくとも90%の軸上の平均反射率と,第1の平面と平行な第2の平面内で偏光された可視光に関しても少なくとも25%かつ90%未満の軸上の平均反射率とを有する。当業者は,第2の平面内で偏光された光を有効な偏光状態であると見なし,即ち,そのような偏光は,液晶パネルの下側吸収偏光子(例えば,図1の下側吸収偏光子158)を通って,液晶パネルに入射することになる。更に,当業者は,第1の平面が遮断軸(block axis)と平行であり,第2の平面が,偏光前面反射体210の通過軸(pass axis)と平行であると見なす。偏光を提供する本開示のバックライトは,有効な光が放射光の空間均一性を許容可能なレベルにするのに十分な横方向の伝播又は拡散を実現できるだけの高い反射率を示すが,有効な光がキャビティー内の有効な偏光状態の総合損失を扱い可能なレベルに維持できるだけの低い反射率を示し,それにより放射光の許容可能な高い輝度が実現される。」

j 「A multilayer optical film typically includes individual microlayers having different refractive index characteristics so that some light is reflected at interfaces between adjacent microlayers. The microlayers are sufficiently thin so that light reflected at a plurality of the interfaces undergoes constructive or destructive interference to give the multilayer optical film the desired reflective or transmissive properties. For multilayer optical films designed to reflect light at ultraviolet, visible, or near-infrared wavelengths, each microlayer generally has an optical thickness (a physical thickness multiplied by refractive index) of less than about 1 μm. However, thicker layers can also be included, such as skin layers at the outer surfaces of the multilayer optical film, or protective boundary layers (PBLs) disposed between the multilayer optical films, that separate the coherent groupings of microlayers. Such a multilayer optical film body can also include one or more thick adhesive layers to bond two or more sheets of multilayer optical film in a laminate.」(21頁18行?21頁30行)
(日本語訳)
「多層光学フィルムは,通常,異なる屈折率特性を有する個別のミクロ層を含み,その結果一部の光が隣接ミクロ層間の境界面で反射される。ミクロ層は,複数の境界面で反射された光が,発展的又は破壊的干渉を受けて多層光学フィルムに所望の反射又は透過特性を提供できるほど薄い。紫外線波長,可視光波長,又は近赤外線波長の光を反射するように設計された多層光学フィルムの場合,各ミクロ層は,一般に,約1μm未満の光学的厚さ(物理的厚さ×屈折率)を有する。しかしながら,多層光学フィルムの外側表面の表皮層,又は多層光学フィルム間に配置されコヒーレントなミクロ層群を分離する保護境界層(PBL)などのもっと厚い層を含むこともできる。そのような多層光学フィルム本体は,積層体内の2つ以上の多層光学フィルムを接合するために1つ以上の厚い接着層を含むこともできる。」

k 「FIG. 3 depicts a conventional multilayer optical film 300. The film 300 includes individual microlayers 302, 304. The microlayers have different refractive index characteristics so that some light is reflected at interfaces between adjacent microlayers. The microlayers are sufficiently thin so that light reflected at a plurality of the interfaces undergoes constructive or destructive interference to give the film the desired reflective or transmissive properties. For optical films designed to reflect light at ultraviolet, visible, or near-infrared wavelengths, each microlayer generally has an optical thickness (i.e., a physical thickness multiplied by refractive index) of less than about 1 μm. Thicker layers can, however, also be included, such as skin layers at the outer surfaces of the film, or protective boundary layers disposed within the film that separate packets of microlayers.
The reflective and transmissive properties of multilayer optical film 300 are a function of the refractive indices of the respective microlayers. Each microlayer can be characterized, at least in localized positions in the film, by in-plane refractive indices n_(x) , n_(y) , and a refractive index n_(z) associated with a thickness axis of the film. These indices represent the refractive index of the subject material for light polarized along mutually orthogonal x-, y-, and z-axes, respectively (see FIG. 3). 」(23頁30行?24頁14行)
(日本語訳)
「図3は,従来の多層光学フィルム300を示す。フィルム300は,個別のミクロ層302,304を含む。ミクロ層は,隣接するミクロ層間の境界面で一部の光が反射されるように異なる屈折率特性を有する。ミクロ層は,複数の境界面で反射された光が,発展的又は破壊的干渉を受けて膜に所望の反射又は透過特性を提供できるように十分に薄い。光を紫外線波長,可視光波長,又は近赤外線波長で反射するように設計された光学フィルムの場合,各ミクロ層は,一般に,約1μm未満の光学的厚さ(即ち,物理的厚さ×屈折率)を有する。しかしながら,フィルムの外側表面における表皮層,又はミクロ層のパケットを分離する,フィルム内に配置された保護境界層などのより厚い層も含むことができる。
多層光学フィルム300の反射特性と透過特性は,それぞれのミクロ層の屈折率の関数である。各ミクロ層は,少なくともフィルムの局所的位置で,面内の屈折率n_(x),n_(y)と,フィルムの厚さ方向の軸に付随する屈折率n_(z)とによって特徴付けることができる。これらの屈折率は,それぞれ互いに直交するx軸,y軸及びz軸に沿って偏光された光の対象材料の屈折率を表わす(図3参照)。」

l 「To maintain high reflectivity of p-polarized light at oblique angles of incidence, the z-index mismatch Δn _(z) between microlayers can be controlled to be substantially less than the maximum in-plane refractive index difference Δn _(x) , such that Δn _(z) ≦ 0.5 * Δn _(x) . More preferably, Δn _(z ) ≦ 0.25 * Δn _(x) . A zero or near zero magnitude z-index mismatch yields interfaces between microlayers whose reflectivity for p-polarized light is constant or near constant as a function of incidence angle. Furthermore, the z-index mismatch Δn _(z) can be controlled to have the opposite polarity compared to the in-plane index difference Δn _(x) , i.e., Δn _(z) < 0. This condition yields interfaces whose reflectivity for p-polarized light increases with increasing angles of incidence, as is the case for s-polarized light.」(25頁7行?15行)
(日本語訳)
「斜めの入射角でのp偏光の高い反射率を維持するために,Δn_(z)≦0.5*Δn_(x)となるように,ミクロ層間のz屈折率の不整合Δn_(z)を制御して,最大面内屈折率の差Δn_(x)より実質的に小さくすることができる。より好ましくは,Δn_(z)≦0.25*Δn_(x)である。ゼロ又はほぼゼロの大きさのz屈折率の不一致が,p偏光に対する反射率が入射角の関数として一定又はほぼ一定である界面をミクロ層の間にもたらす。更に,z屈折率の不整合Δn_(z)を,面内屈折率の差Δn_(x)と反対の極性を有するように,即ちΔn_(z)<0となるように制御することができる。この条件により,s偏光の場合と同じように,入射角が大きくなるほどp偏光の反射率が高くなる境界面が得られる。」

m 「For example, FIG. 4 illustrates light ray 410 that is incident on a polarizer 402 at an angle of incidence θ, thereby forming a plane of incidence 412. The polarizer 402 includes a pass axis 404 that is parallel to the y-axis, and a block axis 406 that is parallel to the x-axis. The plane of incidence 412 of ray 410 is parallel to the block axis 406. Ray 410 has a p-polarized component that is in the plane of incidence 412, and an s-polarized component that is orthogonal to the plane of incidence 412. The p-pol light of ray 410 is parallel to the block axis 406 of polarizer 402 and will, therefore, be substantially reflected by the polarizer, while the s-pol light of ray 410 is parallel to the pass axis 404 of polarizer 402 and, at least in part, be transmitted.
Further, FIG. 4 illustrates ray 420 that is incident on polarizer 402 in a plane of incidence 422 that is parallel to the pass axis 404 of the polarizer 402. Therefore, the p- pol light of ray 420 is parallel to the pass axis 404 of the polarizer 402, while the s-pol light of ray 420 is parallel to the block axis 406 of polarizer 402 As a result, assuming that the polarizer 402 is a perfect polarizer that has a reflectance of 100% at all angles of incident light for light polarized in the block axis and 0% at all angles of incident light for light polarized in the pass axis, the polarizer transmits s-pol light of ray 410 and the p-pol light of ray 420, while reflecting the p-pol light of ray 410 and the s-pol light of ray 420. In other words, the polarizer 402 will transmit a combination of p- and s-pol light. The amount of transmission and reflection of p- and s-pol light will depend on the characteristics of the polarizer as is further described herein.」(25頁30行?26頁18行)
(日本語訳)
「例えば,図4は,偏光子402に入射角θで入射し,それにより入射面412が形成される光線410を示す。偏光子402は,Y軸と平行な通過軸404と,X軸と平行な遮断軸406とを有する。光線410の入射面412は,遮断軸406と平行である。光線410は,入射面412内にあるp偏光成分と,入射面412と直交するs偏光成分とを有する。光線410のp偏光は,偏光子402の遮断軸406と平行であり,したがって,偏光子によって実質的に反射され,光線410のs偏光は,偏光子402の通過軸404と平行であり,少なくとも一部分が透過される。
更に,図4は,偏光子402の通過軸404と平行な入射面422内の偏光子402に入射する光線420を示す。したがって,光線420のp偏光は,偏光子402の通過軸404と平行であり,光線420のs偏光は,偏光子402の遮断軸406と平行である。その結果,偏光子402が,遮断軸で偏光された光に関して全ての入射角で100%の反射率を有し,また通過軸で偏光された光に関して全ての入射角で0%の反射率を有する完全な偏光子であると仮定すると,偏光子は,光線410のs偏光と光線420のp偏光を透過し,一方で光線410のp偏光と光線420のs偏光を反射する。即ち,偏光子402は,p偏光とs偏光の組み合わせを透過する。本明細書で更に詳しく説明されるように,p偏光とs偏光の透過量と反射量は,偏光子の特性に依存する。」

n 「In general, various asymmetric reflective films can be provided for use as a front reflector (e.g., front reflector 210 of FIG. 2) by altering the relative degree of index match of an in-plane index of the low index material with the z-index of the adjacent birefringent high index material. In some embodiments, relatively large in-plane index mismatches are required along both in-plane optical axes of the asymmetric reflective film, but the mismatches are significantly different from each other, thus producing asymmetrical normal incidence transmission and reflection properties. This is in contrast to conventional reflective polarizing films where in-plane indices are substantially matched along the pass axis. An example of such films is DBEF (available from 3M Company), which has low reflectivity for light polarized along one in-plane axis at normal incidence.」(26頁19行?28行)
(日本語訳)
「一般に,前面反射体(例えば,図2の前面反射体210)として使用する種々の非対称の反射フィルムは,低屈折率材料の面内屈折率の整合の相対的な程度を,隣接した複屈折の高屈折率材料のz軸の屈折率によって変化させることによって,提供することができる。ある実施形態では,非対称の反射フィルムの両方の面内光学軸に沿って比較的大きい面内屈折率の不整合が必要とされるが,この不整合は,互いに大きく異なり,したがって垂直入射の透過特性と反射特性が非対称になる。これは,面内屈折率が通過軸に沿って実質的に整合された従来の反射偏光フィルムと対照的である。そのようなフィルムの例は,光が垂直入射で面内軸に沿って偏光された光に関して低い反射率を有するDBEF(3M Companyから入手可能)である。」

o 「For example, an exemplary asymmetric reflective film that can be used in the front reflector of the present disclosure can have a high index layer (i.e., the layer that includes the highest index of refraction) with in plane index values of nxl = 1.82 and nyl = 1.62, and a z-axis index of nzl = 1.50, and an isotropic low index layer having in-plane indices of nx2 = ny2 = nz2 = 1.56. A film having these indices of refraction can be formed using a coPEN/PETG coextruded multilayer film using a constrained uniaxial orientation as in a Standard film tenter. Using about 300 layers, the reflectivities shown in FIG. 5 can be achieved for light from 400 to 870 nm with polarization vectors parallel to the y-z plane (the "pass" axis). Due to the large index difference along the x-axis, and the lack of a Brewster angle, about 98% of light with polarization vectors parallel to the x-z plane is reflected. FIG. 5 illustrates the reflectivity of light for the pass axis at various angles of incidence in air for p-pol light (curve 502) and s-pol light (curve 504). As illustrated, such a film can include an average on-axis reflectivity of about 29% for visible light for one polarization while having a much higher reflectivity of about 98% for the block axis.
In general, the use of a high index biaxially birefringent material, such as the one illustrated in FIG. 5, allows for the design of asymmetric reflectors which block most light components polarized parallel to a first (block) axis, and pass controlled amounts of both s-polarized and p-polarized light components that are aligned with the orthogonal (pass) axis. The relative reflectivity for s- and p-pol light along this pass axis can be adjusted by varying the isotropic index n2 of the second material to a value somewhere between nyl and nzl.」(26頁29行?27頁17行)
(日本語訳)
「例えば,本開示の前面反射体に使用することができる例示的な非対称の反射フィルムは,nx1=1.82とny1=1.62の面内屈折率値と,nz1=1.50のZ軸屈折率を有する高屈折率層(即ち,最も高い屈折率を含む層)と,nx2=ny2=nz2=1.56の面内屈折率を有する等方性の低屈折率層とを有することができる。これらの屈折率を有するフィルムは,標準フィルム・テンターのような限定一軸延伸を使用してcoPEN/PETG共押出多層フィルムを使用して形成することができる。約300個の層を使用して,図5に示した反射率は,y-z平面(「通過」軸)と平行な偏光ベクトルを有する400?870nmの光に関して達成することができる。x軸に沿った屈折率の差が大きくブルースター角がないため,x-z平面と平行な偏光ベクトルを有する光の約98%が反射される。図5は,p偏光(曲線502)とs偏光(曲線504)の空気中の異なる入射角における通過軸に関する光の反射率を示す。図示したように,そのようなフィルムは,ある偏光では可視光の約29%の軸上の平均反射率を有することができ,遮断軸ではそれよりはるかに高い約98%の反射率を有することができる。
一般に,図5に示したような高屈折率の二軸複屈折材料を使用することにより,第1の(遮断)軸と平行に偏光されたほとんどの光成分を遮り,かつ制御された量の直交(通過)軸と合わされたs偏光成分とp偏光成分の両方を通す非対称の反射体の設計が可能になる。この通過軸に沿ったs偏光とp偏光の相対反射率は,第2の材料の等方性屈折率n2をny1?nz1の何からの値に変化させることによって調整することができる。」

p 「Fig. 5



q 「FIG. 5 illustrates the pass axis reflectivity versus incident angle for visible light in air for one embodiment of a front reflector as modeled using standard modeling techniques. A front reflector having the reflectivities shown in FIG. 5 can be formed using a coPEN/PETG coextruded multilayer film using a constrained uniaxial orientation as in a standard film tenter. Using about 300 layers, the reflectivities shown in FIG. 5 can be achieved for visible light from 400 to 870 nm with polarization vectors parallel to the y-z plane (i.e., the pass axis).
Curve 502 represents the reflectivity of p-pol light in the pass axis and curve 504 represents the reflectivity of s-pol light in the pass axis. The reflectivity values include the reflections from the multilayer film and surface reflections at the air/film boundary. As can be seen in FIG. 5, the reflectivity for both s-pol and p-pol light increases with increasing angle of incidence. Due to the large index difference along the x-axis, and the lack of a Brewster angle, about 98% of light with polarization vectors parallel to the x-z plane is reflected (i.e., the block axis). This single film can thus perform the task of multiple films to form a front reflector that transmits controlled amounts of light polarized parallel to a pass axis. The calculated average reflectivity for s- and p-polarized light at 60 degrees for the pass axis is about 50%. Further, the reflectivity for all light polarized in a plane parallel to the block axis can be greater than about 99%.
In general, the use of a high index biaxially birefringent material, such as the asymmetric reflective film described regarding FIG. 5, allows for design of asymmetric reflectors that block most light components polarized parallel to one axis, and pass controlled amounts of both s-polarized and p-polarized light components that are aligned with the orthogonal (pass) axis. The relative reflectivity for s- and p-pol light along this pass axis can be adjusted by varying the isotropic refractive index n2 of the second material to a value somewhere between ny 1 and nzl .」(29頁5行?29行)
(日本語訳)
「図5は,標準モデリング法を用いてモデル化された前面反射体の一実施形態に関する通過軸反射率と空気中の可視光の入射角との関係を示す。図5に示した反射率を有する前面反射体は,標準フィルム・テンターのような限定一軸延伸を使用してcoPEN/PETG共押出多層フィルムを使用して形成することができる。約300個の層を使用して,図5に示した反射率は,y-z平面(即ち,通過軸)と平行な偏光ベクトルを有する400?870nmの可視光に関して達成することができる。
曲線502は,通過軸でのp偏光の反射率を表わし,曲線504は,通過軸でのs偏光の反射率を表わす。反射率値は,多層フィルムからの反射と空気/フィルム境界での表面反射を含む。図5で分かるように,s偏光とp偏光の両方の反射率は,入射角が増大するほど増えることになる。x軸に沿った屈折率差が大きくブルースター角がないため,x-z平面と平行な偏光ベクトル(即ち,遮断軸)を有する光の約98%が反射される。したがって,この単一フィルムは,通過軸と平行に偏光された制御量の光を透過する前面反射体を形成する複数フィルムの役割を果たすことができる。通過軸に関して計算された60度でのs偏光とp偏光の平均反射率は,約50%である。更に,遮断軸と平行な平面内で偏光された全ての光の反射率は,約99%より大きくてもよい。
一般に,図5に関して述べた非対称の反射フィルムのような高屈折率の二軸複屈折材料を使用することにより,1つの軸に平行に偏光された光成分ほとんどを遮断し,かつ直交(通過)軸と整合された,制御された量のs偏光成分とp偏光成分の両方を通す非対称の反射体を設計することができる。この通過軸に沿ったs偏光とp偏光の相対反射率は,第2の材料の等方性屈折率n2をny1?nz1の間の何らかの値に変化させることによって調整することができる。」

r 「Returning to FIG. 2, the front reflector 210 can also be attached to a supporting layer. The support layer can include any suitable material or materials, e.g., polycarbonate, acrylic, PET, etc. In some embodiments, the front reflector 210 can be supported by a fiber reinforced optical film as described, e.g., in U.S. Patent Publication No. 2006/0257678 (Benson et al), entitled FIBER REINFORCED OPTICAL FILMS; U.S. Patent Application No. 11/323,726 (Wright et al.), entitled REINFORCED REFLECTIVE POLARIZER FILMS; and U.S. Patent Application No. 11/322,324 (Ouderkirk et al.), entitled REINFORCED REFLECTIVE POLARIZER FILMS. Further, the front reflector 210 can be attached to the support layer using any suitable technique. In some embodiments, the front reflector 210 can be adhered to the support layer using an optical adhesive. The front reflector 210 and support layer can be attached to the backlight using any suitable technique, e.g., those techniques described in U.S. Patent Application No. 60/947,776 (Thunhorst et al.), entitled OPTICALLY TRANSMISSIVE COMPOSITE FILM FRAME.
In some embodiments, the front reflector 210 can be attached to the LC panel. For example, the front reflector can be attached to lower absorbing polarizer 158 of FIG. 1, which is in turn attached to panel plate 154.」(40頁9行?25行)
(日本語訳)
「図2に戻ると,前面反射体210は支持層に貼り付けられてもよい。支持層は,いずれの適切な材料,例えば,ポリカーボネート,アクリル,PETなど,を含むことができる。ある実施形態では,前面反射体210は,例えば,繊維強化光学フィルム(FIBER REINFORCED OPTICAL FILMS)と題する米国特許公開第2006/0257678号(ベンソン(Benson)他),強化反射偏光子フィルム(REINFORCED REFLECTIVE POLARIZER FILMS)と題する米国特許出願第11/323,726号(ライト(Wright)他),及び,強化反射偏光子フィルム(REINFORCED REFLECTIVE POLARIZER FILMS)と題する米国特許出願第11/322,324号(オーダカーク(Ouderkirk)他)に記載されたような繊維強化光学フィルムによって支持されてもよい。更に,前面反射体210は,いずれの適切な技術を使用して支持層に取り付けられ得る。ある実施形態では,前面反射体210は,光学接着剤を使用して支持層に接着されてもよい。前面反射体210と支持体層は,いずれの適切な技術,例えば,光透過複合フィルムフレーム(OPTICALLY TRANSMISSIVE COMPOSITE FILM FRAME)と題する米国特許出願第60/947,776号(サンホルスト(Thunhorst)他)に記載された技術を使用してバックライトに取り付けられ得る。
ある実施形態では,前面反射体210は,液晶パネルに取り付けられ得る。例えば,前面反射体は,パネル板154に取り付けられた図1の下側吸収偏光子158に取り付けられ得る。」

s 「What is claimed is
(中略)
14. An asymmetric reflective film comprising alternating polymer layers whose arrangement and refractive indices are tailored to provide an average on-axis reflectivity of at least 90% for visible light polarized in a first plane, and an average on-axis reflectivity of at least 25% but less than 90% for visible light polarized in a second plane perpendicular to the first plane.
15. The film of claim 14, wherein the film comprises a first on-axis average transmissivity for visible light polarized in the first plane, and a second on-axis average transmissivity for visible light polarized in the second plane, and further wherein a ratio of the second on-axis transmissivity to the first on-axis transmissivity is at least 10.
16. The film of claim 14, wherein p-polarized visible light that is polarized in the second plane comprises a substantially constant average reflectivity as angle of incidence with the front reflector increases from near zero degrees to about 60 degrees.
17. The film of claim 14, wherein p-polarized visible light that is polarized in the second plane comprises a monotonically increasing average reflectivity as angle of incidence with the front reflector increases from near zero degrees to about 60 degrees.
18. The film of claim 17, wherein the monotonic increase in average reflectivity of p- polarized visible light is substantially similar to a monotonic increase, over angles of incidence from near zero degrees to about 60 degrees, in average reflectivity of s- polarized visible light that is polarized in the second plane.
19. The film of claim 14, wherein the film comprises a multilayer optical film that has only one packet of alternating polymer microlayers.」
(日本語訳)
「特許請求の範囲
(中略)
14.第1の平面内で偏光された可視光に関して少なくとも90%の軸上の平均反射率と,前記第1の平面と垂直な第2の平面内で偏光された可視光に関して少なくとも25%かつ90%未満の軸上の平均反射率とを提供するように調整された構成と屈折率とを有する高分子の交互層を含む非対称の反射フィルム。
15.前記フィルムが,前記第1の平面内で偏光された可視光に関して第1の軸上の平均透過率と,前記第2の平面内で偏光された可視光に関して第2の軸上の平均透過率とを有し,更に,前記第1の軸上の透過率に対する前記第2の軸上の透過率の比率が,少なくとも10である,請求項14に記載のフィルム。
16.前記第2の平面内で偏光されたp偏光の可視光が,前記前面反射体との入射角がほぼ0度から約60に増大するときに,実質的に一定の平均反射率を有する,請求項14に記載のフィルム。
17.前記第2の平面内で偏光されたp偏光の可視光が,前記前面反射体との入射角がほぼ0度から約60度に増大したときに,単調増加する平均反射率を有する,請求項14に記載のフィルム。
18.前記p偏光の可視光の平均反射率の単調増加が,ほぼ0度から約60度までの入射角にわたって,前記第2の平面内で偏光されたs偏光の可視光の平均反射率の単調増加と実質的に類似している,請求項17に記載のフィルム。
19.前記フィルムが,高分子の交互ミクロ層の1つのパケットだけを有する多層光学フィルムを含む,請求項14に記載のフィルム。」

(イ) 引用発明
引用例1の40頁23行?25行(上記(ア)q参照)には,「ある実施形態では,前面反射体210は,液晶パネルに取り付けられ得る。例えば,前面反射体は,パネル板154に取り付けられた図1の下側吸収偏光子158に取り付けられ得る。」と記載されている。
そうすると,引用例1には,特に14頁19行?18頁25行,26頁19行?31頁7行などに記載の多層光学フィルムを用いた表示システムに関して,前面反射体を下側吸収偏光子に取り付けた上記の実施形態として,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。(頁行番号を併記する。)
なお,引用例1では「表示パネル150は,液晶パネルを含む(以後,液晶パネル150と呼ぶ)」(14頁19行?15頁3行)と記載されており,以下では「表示パネル150」も「液晶パネル150」に統一して記載する。また,引用例1に「光処理ユニットと呼ばれることもある光処理フィルム」(15頁29行?16頁13行)と記載されており,以下では「光処理ユニット140」も「光処理フィルム140」に統一して記載する。

「(14頁19行?15頁3行)表示システム100は,液晶パネル150と,液晶パネル150に光を提供するように位置決めされた照明アセンブリ101とを含み,
液晶パネル150は,パネル板154間に配置された液晶層152を含み,パネル板154は,ガラスで形成され,
(15頁4行?15頁23行)液晶パネル150は,上側吸収偏光子156と下側吸収偏光子158との間に位置し,
(15頁29行?16頁13行)照明アセンブリ101は,バックライト110を含み,バックライト110と液晶パネル150との間に位置する1つ以上の光処理フィルム140を含み,
(15頁29行?16頁13行)光処理フィルム140の配列は,拡散体148を含み,(16頁14行?25行)光処理フィルム140は,反射偏光子142を含み,反射偏光子142には多層光学フィルム(MOF)反射偏光子が使用され,
(17頁9行?18頁3行)拡散体板148と反射偏光子142との間に偏光制御層144が提供され,
輝度強化層146a,146bは,バックライト110と反射偏光子142との間に配置され,
(40頁9行?25行)前面反射体が,パネル板154に取り付けられた下側吸収偏光子158に取り付けられており,
ここで,前記前面反射体は,
(26頁29行?27頁17行)多層フィルムを使用して形成され,
第1の(遮断)軸と平行に偏光されたほとんどの光成分を遮り,かつ制御された量の直交(通過)軸と合わされたs偏光成分とp偏光成分の両方を通し,
(29頁5行?29行)通過軸でのp偏光の反射率と通過軸でのs偏光の反射率は,入射角が増大するほど増え,
(29頁5行?29行)反射率は,通過軸と平行な偏光ベクトルを有する400?870nmの可視光に関して達成され,
(26頁19行?28行)前面反射体として使用する非対称の反射フィルムである
(14頁19行?15頁3行)表示システム100。」

イ 対比
(ア) 透過軸,ブロック軸
引用発明の「反射フィルム」は,「第1の(遮断)軸と平行に偏光されたほとんどの光成分を遮り,かつ制御された量の直交(通過)軸と合わされたs偏光成分とp偏光成分の両方を通」す。したがって,引用発明の「直交(通過)軸と合わされたs偏光成分とp偏光成分」及び「第1の(遮断)軸と平行に偏光された」「光成分」は,それぞれ,本件補正後発明の「第1の偏光」及び「第2の偏光」に相当する。
また,引用発明の「反射フィルム」において「通過軸でのp偏光の反射率と通過軸でのs偏光の反射率は,入射角が増大するほど増え」る。ここで「入射角」は,反射フィルムに垂直な軸に対しての入射角であることは,技術的に明らかであり,入射角が小さくゼロにおいて「反射フィルム」に「垂直に入射する」こととなる。したがって,引用発明の「反射フィルム」は,「垂直に入射する第1の偏光」に対して所定の透過率を有するといえる。(この点は,図5及びその説明からも理解できる事項である。)
引用発明の「通過軸でのp偏光の反射率と通過軸でのs偏光の反射率は,」「通過軸と平行な偏光ベクトルを有する400?870nmの可視光に関して達成され」る。したがって,引用発明の「通過軸でのp偏光」と「通過軸でのs偏光」の反射率における透過成分は,「可視光線に対する通過」である。また,引用発明において,遮られる「第1の(遮断)軸と平行に偏光されたほとんどの光成分」についても同じ「400?870nmの可視光」についての偏光成分であることは,技術的に明らかであるから,「可視光線に対するブロック」を行っているといえる。
したがって,引用発明の「直交(通過)軸」及び「第1の(遮断)軸」は,それぞれ,本件補正後発明の「透過軸」及び「ブロック軸」に相当するとともに,それぞれ「垂直に入射する第1の偏光の可視光線に対する通過軸」,「垂直に入射する第2の偏光の可視光線に対するブロック軸」の要件を満たす。

(イ) 入射角が斜めのときの反射率
本件補正後発明の「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」の構成については,上記「第2」3.(2)のとおり明確であるとはいえない。ただし,請求人は,「かかる補正は,特許請求の範囲を減縮することを目的とし,例えば明細書段落[0063]に記載されているような「2軸コリメート(2-axis collimating)」多層反射偏光フィル(審決注:フィルムの誤記。)に基づくものであるので,新規事項を追加するものではありません」(審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】(2)補正の根拠の明示)と説明している。
そこで,「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」の意味を,「通過平面に入射するp偏光の可視光線及びブロック平面に入射するs偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,通過平面に入射するp偏光については透過平面及びブロック平面に入射するs偏光についてはブロック平面における入射角が斜めのときに反射率が高くなる」の意味と解して対比する。
引用発明の「反射フィルム」は,「制御された量の直交(通過)軸と合わされたs偏光成分とp偏光成分の両方を通し」,「通過軸でのp偏光の反射率と通過軸でのs偏光の反射率は,入射角が増大するほど増え」る。上記(ア)のとおり,ここで「入射角」は,反射フィルムに垂直な軸に対しての入射角であることは,技術的に明らかである。したがって,通過軸でのp偏光についての入射角は,透過軸と平行で反射フィルムに垂直な入射面(25頁30行?26頁18行における入射面422)内における入射角である。同様に,通過軸でのs偏光についての入射角は,透過軸と垂直で反射フィルムに垂直な入射面(25頁30行?26頁18行における入射面412)内における入射角である。
したがって,引用発明の「反射フィルム」は,本件補正後発明の「通過平面に入射するp偏光の可視光線及びブロック平面に入射するs偏光の可視光線」が,「通過平面に入射するp偏光については透過平面及びブロック平面に入射するs偏光についてはブロック平面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなる」との要件を満たす。
本願補正後発明の「圧縮」について,本願の明細書の段落【0062】には「通過状態の垂直入射光に対して「高い」透過率を有する他に,フィルムは,少なくとも方位角φの或る範囲内では,大きく傾斜した角度θで入射する通過状態の光に対してはるかに低い透過率(及び高い反射率)を有するのが望ましい。角度の増加と共に増加する反射率は,フィルムを横断する光の視野錐体又は伝播錐体を効果的に圧縮する。」と記載されている。つまり,本願において,反射率が角度の増加と共に増加することを,光の視野錐体又は伝播錐体を「圧縮する」としている。そして,引用発明も上記のとおり「通過軸でのp偏光の反射率と通過軸でのs偏光の反射率は,入射角が増大するほど増え」ており,結果として「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように」しているといえる。

(ウ) 複数のミクロ層
本願補正後発明の「画定」について,本願の明細書の段落【0002】には「面内のブロック軸に沿った隣接するミクロ層の間の屈折率の実質的不整合と,面内の通過軸に沿った隣接するミクロ層の間の屈折率の実質的整合と,をもたらすようにその面内屈折率が選択され,ブロック軸に沿って偏光した垂直入射光の高反射率を確実にする一方で,通過軸に沿って偏光した垂直入射光の低反射率及び高透過率を維持する,複数のミクロ層からなる反射偏光子が以前から知られている。」と記載されており,段落【0060】には「垂直入射光に対し,フィルムは,可視波長にわたって低反射率及び高透過率の通過軸(例えば,面内y軸に沿った),及び可視波長にわたって非常に高い反射率及び非常に低い透過率のブロック軸(例えば,面内x軸に沿った)を画定するのが好ましい。」と記載されている。つまり,本願の明細書において「軸に沿った隣接するミクロ層の間の屈折率の実質的整合」により「透過軸」及び「ブロック軸」を与えることが記載されている。したがって,本願補正後発明の「透過軸」及び「ブロック軸」を「画定」するとは,所定のミクロ層の間の屈折率を与えることにより,結果として「定める」ことと理解できる。上記(ア)及び(イ)より,引用発明の「反射フィルム」は,「透過軸」及び「ブロック軸」を有し,各層の屈折率の構成によって,「透過軸」及び「ブロック軸」の光学的性質が与えられている(引用例1の26頁29行?27頁17行)。したがって,引用発明の「反射フィルム」は,本願補正後発明の「透過軸」及び「ブロック軸」を「画定」するとの要件を満たす。
引用発明の「反射フィルム」は,「多層フィルムを使用して形成」される。引用発明の「反射フィルム」は,可視光を対象として干渉により反射などの特性を定めているから,各層の光学的厚さが1μm未満となるのは,技術的に明らかである。この点は,引用例1の21頁18行?21頁30行や図3及びその説明からも理解できる。したがって,引用発明の「反射フィルム」は,本件補正後発明の「複数のミクロ層」に相当する。
また,上記(ア)より,引用発明の「反射フィルム」は,「400?870nmの可視光」の反射を行っており,本件補正後発明の「可視光線に対する通過」及び「可視光線に対するブロック」を行っている。上記(ア)及び(イ)より,引用発明の「反射フィルム」は,「角度及び偏光」によって光を選択的に透過及び反射しているといえる。したがって,引用発明の「反射フィルム」は,本件補正後発明の「可視波長を含む広範な波長領域にわたり角度及び偏光の関数として光を選択的に透過及び反射するように構成され」るとの要件を満たす。

(エ) フィルム構造体
本件補正後発明の「フィルム構造体」について,例えば,本願の出願当初の請求項8?10にも「ライトガイドを含む」,「表示パネルを含む」などと記載されており,単にフィルムのみで構成されるもののみならず,液晶パネルやライトガイドといった光学部材も含み得るものである。上記(ア)?(ウ)より,引用発明の「表示システム100」は,本件補正後発明の「フィルム構造体」に相当するとともに,本件補正後発明の「複数のミクロ層」「を備え」るとの要件を満たす。

ウ 一致点
本件補正後発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「可視波長を含む広範な波長領域にわたり角度及び偏光の関数として光を選択的に透過及び反射するように構成され,垂直に入射する第1の偏光の可視光線に対する通過軸と,垂直に入射する第2の偏光の可視光線に対するブロック軸と,を画定し,更に,前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなることによって特徴付けられる,複数のミクロ層を備える
フィルム構造体」

エ 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。
(ア) 相違点1
本件補正後発明の「フィルム構造体」は,「前記ミクロ層への大きく傾斜した光の伝播を制限する,又はかかる大きく傾斜した伝播光を前記ミクロ層に向けて向け直すという方法で前記ミクロ層に連結される,少なくとも1.1であるが1.3以下である,可視波長にわたって平均化された超低屈折率を有する目的の光の波長を超える厚さの低屈折率層を備え」るのに対して,引用発明は,そのような低屈折率層を備えるか明確でない点。

(イ) 相違点2
本件補正後発明は,「フィルム構造体」が,「前記低屈折率層及び前記複数のミクロ層が,共に目的の光の波長を超える厚さの第1の層と目的の光の波長を超える厚さの第2の層との間に配置されるように配列される,第1及び第2の層を更に備え,前記第1及び第2の層が,前記低屈折率層よりも高い屈折率を有する」のに対して,引用発明の「表示システム」は,バックライト110,液晶パネル150,光処理フィルム140を備えるが,本件補正後発明のような第1及び第2の層を備えるか必ずしも明確でない点。

オ 判断
(ア) 相違点1について
引用発明の「表示システム100は,液晶パネル150と,液晶パネル150に光を提供するように位置決めされた照明アセンブリ101とを含」む。ここで,当該液晶パネルを含む「表示システム」の技術分野において,低出射角の光を増大させ,正面方向の輝度を高めるためにバックライトと液晶パネルとの間に低屈折率層を設けることは,本願の優先日前において一般的に行われている事項である(以下「周知慣用技術」という。)。例えば,特開2004-151550号公報には,導光部材よりも低い屈折率を有する低屈折率層を導光部材の光出射面に設けること(段落【0030】?【0043】,図1)により,臨界角よりも小さな入射角を有する光のみが選択され,低出射角の光を増大させて,表示光量を増加させること(段落【0018】,【0044】,【0062】等)が記載されている。また,例えば,特開2009-63898号公報には,正面方向の輝度を高めるため,光源と液晶セルの間に低屈折率層を含む光拡散板を設けること(図1,段落【0010】,【0014】,【0017】など)が記載されている。
引用例1の18頁4行?10行にも挙げられている「共有米国特許出願第10/965,937号」(米国特許出願公開第2006/0082700号明細書)には,光処理フィルムの各層の間に間隙を設けること,空気界面,または増加された屈折率差を有する界面を通って輝度向上層に光が入ることが望ましく,低屈折率材料を輝度向上層の下に配置することなどが記載されている(実施例,特に,段落[0079])。更に,特表2009-532720号公報の【0046】?【0048】,図9?11,特表2002-530713の【0028】には,多層の反射層に低屈折率層を積層することにより,伝播角度を減少することも記載されている。引用発明の液晶パネルを含む「表示システム」においても,低出射角の光を増大させ,正面方向の輝度を高めることは,一般的な課題であり,引用発明において光処理フィルムの各層を積層して空気の間隙がない場合には,引用発明に上記の周知慣用技術を適用することは,上記のような公知の事項を心得た当業者が当然行うべきことである。そして,低屈折率層は低出射角の光を増大させ,正面方向の輝度を高めるものであり,結果として,「大きく傾斜した光の伝播を制限」しているといえる。
上記の特開2004-151550号公報(段落【0036】),特開2009-63898号公報(【表1】)にも「少なくとも1.1であるが1.3以下である」屈折率の層を用いることも記載されており,所望の光の角度に応じて屈折率は当業者が適宜設定し得た事項に過ぎない。
そして,可視波長の光を取り扱う当該液晶パネルを含む「表示システム」の技術分野において,周知慣用技術を適用する際に,低屈折率層について,「可視波長にわたって平均化された」屈折率とすること,「目的の光の波長を超える厚さ」とすることは,当業者が当然行うべき事項である。

(イ) 相違点2について
a 複数のミクロ層について
引用発明において,「前面反射体は,パネル板154に取り付けられた下側吸収偏光子158に取り付けられ」ている。

さらに,引用発明の「照明アセンブリ101は,バックライト110を含み,バックライト110と液晶パネル150との間に位置する1つ以上の光処理フィルム140を含み」,「光処理フィルム140の配列は,拡散体148を含み,光処理フィルム140は,反射偏光子142を含み,反射偏光子142には多層光学フィルム(MOF)反射偏光子が使用され」ている。
引用発明の「反射フィルム」も有効な光を表示装置に角度選択的に透過させる反射偏光子であり,引用発明の反射偏光子142と同じ機能を有する。更に,引用発明の「反射フィルム」は多層光学フィルムによって構成されており,引用発明の反射偏光子142と基本的な構成も同じである。したがって,引用発明の「反射フィルム」を引用発明の反射偏光子142に適用することは,当業者が容易にできたことである。

なお,引用例1における従来の多層光学フィルムにおいても,「s偏光の場合と同じように,入射角が大きくなるほどp偏光の反射率が高くなる境界面が得られ」ること(25頁7行?15行),透過軸,遮断軸を設けること(25頁30行?26頁18行)も記載されており,これらの性質を備えた多層偏光フィルムを反射偏光子142に用いることも,当業者が容易にできたことである。
さらに,引用例1には,「輝度強化は,本明細書で更に詳しく説明される前面反射体の実施形態の幾つかによって提供することが可能である」(17頁9行?18頁3行)とも記載されている。
したがって,引用発明において,反射偏光子142,輝度強化層146a,146bを本願補正後発明の「複数のミクロ層」を含む構成とすることは,当業者が容易にできたことである。

b 第1及び第2の層
引用発明の「表示システム」は,「液晶パネル」,「拡散体」,「上側吸収偏光子」,「下側吸収偏光子」,「反射偏光子」,「偏光制御層」,「輝度強化層」及び「バックライト」を有している。引用発明の「液晶パネル150」の「パネル板154は,ガラスで形成され」る。また,バックライト,輝度強化層(引用例1の17頁9行?18頁3行),拡散体(引用例1の15頁29行?16頁13行)などに用いられる材料としてアクリル樹脂,ガラスなどが一般的であり,これらの屈折率は1.3より大きい。例えば,上記特開2004-151550号公報には,バックライトの導光板に屈折率約1.5の部材を用いている(段落【0042】)。(本願の明細書【0185】?【0188】にも,ライトガイド,拡散層,表示パネルを第1の層としている。)
上記(ア)のとおり,引用発明において,周知慣用技術は当然採用されるべき構成である。そうしてみると,低屈折率層と「複数のミクロ層」はこれらの層の間(少なくとも液晶パネル及びバックライトの間)に配置されることとなる。
したがって,引用発明の「液晶パネル」,「拡散体」,「上側吸収偏光子」,「下側吸収偏光子」,「反射偏光子」,「偏光制御層」,「輝度強化層」及び「バックライト」は,本願補正後発明の「第1及び第2の層」に相当するとともに,引用発明に周知慣用技術を適用した「表示システム」は,本願補正後発明の「前記低屈折率層及び前記複数のミクロ層が,」「第1の層」と「第2の層との間に配置されるように配列される,第1及び第2の層を更に備え,前記第1及び第2の層が,前記低屈折率層よりも高い屈折率を有する」との要件を満たす。
可視波長の光を取り扱う当該液晶パネルを含む「表示システム」の技術分野において,「液晶パネル」及び「バックライト」などの第1及び2の層を「目的の光の波長を超える厚さ」とすることは,当業者が当然行うべき事項である。

カ 請求人の主張について
請求人は,審判請求書において「本願の請求項1に係る発明は,「更に,前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなることによって特徴付けられる,複数のミクロ層」すなわち「2軸コリメート」多層反射偏光フィルムを有します。(b)それに対し,引用文献1?4には,本願の請求項1に係る発明の上記「2軸コリメート」多層反射偏光フィルムが記載も示唆もされていません。 」(【本願発明が特許されるべき理由】(3))と主張している。
しかしながら,請求人の主張の点については,上記イ(イ)のとおりであり,請求人の上記主張を採用することはできない。

キ 小括
本件補正後発明は,引用発明,引用例1の記載事項及び周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5) 独立特許要件のまとめ
本件補正後発明は,特許法29条2項,36条6項1号及び2号の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができず,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

4 補正却下のまとめ
本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
また,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本願発明)は,上記「第2」1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,本願発明は,本願の優先日前に日本国又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例に記載の事項及び引用発明について
引用例の記載及び引用発明については,上記「第2」3(4)アに記載したとおりである。

4 対比及び判断
(1) 本願発明と本件補正後発明の相違について
本願発明は,本件補正後発明から,「前記第1の偏光の可視光線及び第2の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように,第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する入射角が斜めのときに反射率が高くなることによって特徴付けられる」るという構成において「及び第2の偏光の可視光線」「第1の直交する入射面及び第2の直交する入射面に対する」の限定を除いたものである。
そして,引用発明との相違点は上記「第2」3(4)エに記載したとおりである。

(2) 相違点1について
上記「第2」3(4)オ(ア)に記載したとおりである。

(3) 相違点2について
上記「第2」3(4)オ(イ)に記載したとおりである。

(4) まとめ
したがって,本願発明は,引用発明,引用例1の記載事項及び周知慣用技術に基づいて,本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,本願の優先日前に日本国又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,他の請求項に係る発明について審究するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-07-26 
結審通知日 2016-08-02 
審決日 2016-08-16 
出願番号 特願2012-535414(P2012-535414)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 561- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 河原 正
多田 達也
発明の名称 高い軸外反射率を有する浸漬した反射偏光子  
代理人 鶴田 準一  
代理人 南山 知広  
代理人 遠藤 力  
代理人 青木 篤  
代理人 河合 章  

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