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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 C08L |
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管理番号 | 1323486 |
異議申立番号 | 異議2015-700136 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2015-10-30 |
確定日 | 2016-11-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5714576号発明「ポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5714576号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1ないし17〕について訂正することを認める。 特許第5714576号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5714576号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)5月26日(優先権主張 平成22年5月27日(2件))を国際出願日とする出願であって、平成27年3月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、同年10月30日に特許異議申立人 SABICジャパン 合同会社(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において同年12月28日付けで取消理由が通知され、平成28年3月7日に意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年4月12日付け(受理日:同年4月13日)で特許異議申立人により意見書が提出され、同年5月13日付けで審尋がされ、同年6月1日に回答書が提出され、同年7月1日付けで取消理由(以下、単に「取消理由」という。)が通知され、同年9月5日に意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年10月14日付け(受理日:同年10月17日)で特許異議申立人により意見書が提出されたものである。なお、平成28年3月7日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 平成28年9月5日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである(なお、下線は訂正箇所を示すものである。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「(E)ポリオルガノシロキサン」とあるのを「(E)ポリオルガノシロキサン(但し、分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサンを除く)」と訂正し(以下、「訂正事項1a」という。)、かつ「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」を「1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成する」ものに限定する訂正をする(以下、「訂正事項1b」という。)。なお、当該請求項1を直接的または間接的に引用する一群の請求項2ないし17も併せて訂正する。 (2)訂正事項2 明細書段落【0005】において、「(1)粘度平均分子量が17,000以上であり、(A-1)分岐状ポリカーボネート10?100質量部及び(A-2)芳香族ポリカーボネート90?0質量部からなる(A)ポリカーボネート100質量部に対し、(B)光拡散剤0.1?5質量部、(C)難燃剤0.01?1.0質量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0?0.5質量部、(E)ポリオルガノシロキサン0?2質量部を含むことを特徴とする難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「(1)粘度平均分子量が17,000以上であり、(A-1)分岐状ポリカーボネート10?100質量部及び(A-2)芳香族ポリカーボネート90?0質量部からなる(A)ポリカーボネート100質量部に対し、(B)光拡散剤0.1?5質量部、(C)難燃剤0.01?1.0質量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0?0.5質量部、(E)ポリオルガノシロキサン(但し、分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサンを除く)0?1質量部を含み、 (A-1)成分が、下記一般式(I)で表される分岐剤から誘導された分岐核構造を有する分岐状ポリカーボネートであり、 (A-1)成分において、前記一般式(I)で表される分岐剤の使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.01?3.0モル%の範囲であり、 1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成することを特徴とする難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【化1-1】 [一般式(I)において、Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基であり、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素、炭素数1?5のアルキル基あるいはハロゲン原子である。]」 と訂正する。 (3)訂正事項3 明細書段落【0005】において、「(7)(A-1)成分が、下記一般式(I)で表される分岐剤から誘導された分岐核構造を有する分岐状ポリカーボネートである(1)?(6)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」の記載を削除する。 (4)訂正事項4 明細書段落【0006】において、「【化1】 」の記載を削除する。 (5)訂正事項5 明細書段落【0007】において、「[一般式(I)において、Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基であり、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素、炭素数1?5のアルキル基あるいはハロゲン原子である。]」の記載を削除する。 (6)訂正事項6 明細書段落【0008】において、「(8)(A-1)成分において、前記一般式(I)で表される分岐剤の使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.01?3.0モル%の範囲である(7)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」の記載を削除する。 (7)訂正事項7 明細書段落【0008】において、「(9)前記一般式(I)で表される分岐剤が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンである(7)又は(8)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「(7)前記一般式(I)で表される分岐剤が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンである(1)?(6)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書段落【0008】において、「(10)1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2?2.0モル%の範囲である(9)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「(8)1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2?2.0モル%の範囲である(7)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書段落【0008】において、「(11)粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2モル%以上1.0モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.03?0.5質量部である(10)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「(9)粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2モル%以上1.0モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.03?0.5質量部である(8)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」に訂正する。 (10)訂正事項10 明細書段落【0008】において、「(12)粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.0モル%以上1.5モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.01?0.5質量部である(10)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「(10)粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.0モル%以上1.5モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.01?0.5質量部である(8)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」に訂正する。 (11)訂正事項11 明細書段落【0008】において、「(13)(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.5モル%以上であり、(D)成分の含有量が0質量部である(9)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「(11)(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.5モル%以上であり、(D)成分の含有量が0質量部である(7)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」に訂正する。 (12)訂正事項12 明細書段落【0008】において、「(14)粘度平均分子量が22,000以上である(1)?(10)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「(12)粘度平均分子量が22,000以上である(1)?(8)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」に訂正する。 (13)訂正事項13 明細書段落【0008】において、「(15)(B)成分がSi系光拡散剤である(14)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」とあるのを、「(13)(B)成分がSi系光拡散剤である(12)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」に訂正する。 (14)訂正事項14 明細書段落【0008】において、「(16)(1)?(15)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られるポリカーボネート樹脂成形体。」とあるのを、「(14)(1)?(13)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られるポリカーボネート樹脂成形体。」に訂正する。 (15)訂正事項15 明細書段落【0008】において、「(17)成形体が、照明器具用カバーである(16)に記載のポリカーボネート樹脂成形体。」とあるのを、「(15)成形体が、照明器具用カバーである(14)に記載のポリカーボネート樹脂成形体。」に訂正する。 (16)訂正事項16 明細書段落【0008】において、「(18)成形体が、表示器具用拡散カバーである(16)に記載のポリカーボネート樹脂成形体。」とあるのを、「(16)成形体が、表示器具用拡散カバーである(14)に記載のポリカーボネート樹脂成形体。」に訂正する。 (17)訂正事項17 明細書段落【0008】において、「(19)成形体が、液晶ディスプレー用拡散板である(16)に記載のポリカーボネート樹脂成形体。」とあるのを、「(17)成形体が、液晶ディスプレー用拡散板である(14)に記載のポリカーボネート樹脂成形体。」に訂正する。 (18)訂正事項18 明細書段落【0011】において、「本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、(A-1)分岐状ポリカーボネート10?100質量部及び(A-2)芳香族ポリカーボネート90?0質量部からなる(A)ポリカーボネート100質量部に対し、(B)光拡散剤0.1?5質量部、(C)難燃剤0.01?1.0質量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0?0.5質量部、(E)ポリオルガノシロキサン0?2質量部を含む。」とあるのを、「本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、粘度平均分子量が17,000以上であり、(A-1)分岐状ポリカーボネート10?100質量部及び(A-2)芳香族ポリカーボネート90?0質量部からなる(A)ポリカーボネート100質量部に対し、(B)光拡散剤0.1?5質量部、(C)難燃剤0.01?1.0質量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0?0.5質量部、(E)ポリオルガノシロキサン(但し、分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサンを除く)0?1質量部を含み、 (A-1)成分が、下記一般式(I)で表される分岐剤から誘導された分岐核構造を有する分岐状ポリカーボネートであり、 (A-1)成分において、前記一般式(I)で表される分岐剤の使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.01?3.0モル%の範囲であり、1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成する。 【化1-2】 [一般式(I)において、Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基であり、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素、炭素数1?5のアルキル基あるいはハロゲン原子である。]」に訂正する。 (19)訂正事項19 明細書段落【0036】において、「(E)成分のポリオルガノシロキサンは、難燃性発現補助、金型付着低減、高透過率発現、シルバー発生防止のために配合するものであり、特に限定されず、公知のものを使用することができるが、メトキシ基を含有するものが好ましく、特に、フェニル基、メトキシ基及びビニル基を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。」とあるのを、「(E)成分のポリオルガノシロキサン(但し、分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサンを除く)は、難燃性発現補助、金型付着低減、高透過率発現、シルバー発生防止のために配合するものであり、特に限定されず、公知のものを使用することができるが、メトキシ基を含有するものが好ましく、特に、フェニル基、メトキシ基及びビニル基を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書の訂正をする場合であって、請求項ごとに訂正の請求をするときに、請求項の全てについて行っているか否か、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)一群の請求項 本件訂正の請求は、訂正後の請求項1ないし17についての訂正を含むものであるが、訂正前の請求項2ないし17は訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし17は、一群の請求項である。 したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。 (2)訂正事項1について ア 訂正事項1aについて 訂正事項1aは、訂正前の請求項1に記載の「(E)ポリオルガノシロキサン」から「分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサン」を除くことにより、請求項1に係る発明の発明特定事項である「(E)ポリオルガノシロキサン」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1aは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項1aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項1bについて 訂正事項1bは、訂正前の請求項1に記載の「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」を「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」を「1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成する」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項1bは、願書に添付した明細書の段落【0047】、【0063】、【0064】及び【0066】に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項1bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項2ないし19について 訂正事項2ないし19は、訂正事項1に伴い、訂正後の請求項1の記載と明細書の記載を整合させるためのものであるとともに設定登録された特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2ないし19は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、本件訂正の請求は、訂正前の請求項1ないし17、すなわち一群の請求項ごとの訂正であり、しかも、特許第5714576号の請求項の数は17であるから、一群の請求項の全てについて訂正の請求を行っている。 さらに、訂正事項2ないし19は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3及び4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4ないし6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし17について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし17に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明17」という。)は、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 粘度平均分子量が17,000以上であり、(A-1)分岐状ポリカーボネート10?100質量部及び(A-2)芳香族ポリカーボネート90?0質量部からなる(A)ポリカーボネート100質量部に対し、(B)光拡散剤0.1?5質量部、(C)難燃剤0.01?1.0質量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0?0.5質量部、(E)ポリオルガノシロキサン(但し、分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサンを除く)0?1質量部を含み、 (A-1)成分が、下記一般式(I)で表される分岐剤から誘導された分岐核構造を有する分岐状ポリカーボネートであり、 (A-1)成分において、前記一般式(I)で表される分岐剤の使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.01?3.0モル%の範囲であり、 1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成することを特徴とする難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【化1】 [一般式(I)において、Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基であり、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素、炭素数1?5のアルキル基あるいはハロゲン原子である。] 【請求項2】 (A)成分100質量部に対して、(F)酸化防止剤を0.01?1.0質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項3】 (C)成分が有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩である請求項1又は2に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項4】 (D)成分が水性分散型のポリテトラフルオロエチレンである請求項1?3のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項5】 (D)成分がアクリル被覆されたポリテトラフルオロエチレンである請求項1?3のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項6】 (E)成分がフェニル基、メトキシ基及びビニル基を有するポリオルガノシロキサンである請求項1?5のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項7】 前記一般式(I)で表される分岐剤が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンである請求項1?6のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項8】 1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2?2.0モル%の範囲である請求項7に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項9】 粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2モル%以上1.0モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.03?0.5質量部である請求項8に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項10】 粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.0モル%以上1.5モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.01?0.5質量部である請求項8に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項11】 (A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.5モル%以上であり、(D)成分の含有量が0質量部である請求項7に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項12】 粘度平均分子量が22,000以上である請求項1?8のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項13】 (B)成分がSi系光拡散剤である請求項12に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項14】 請求項1?13のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られるポリカーボネート樹脂成形体。 【請求項15】 成形体が、照明器具用カバーである請求項14に記載のポリカーボネート樹脂成形体。 【請求項16】 成形体が、表示器具用拡散カバーである請求項14に記載のポリカーボネート樹脂成形体。 【請求項17】 成形体が、液晶ディスプレー用拡散板である請求項14に記載のポリカーボネート樹脂成形体。」 2 取消理由の概要 取消理由の概要は次のとおりである。 「特許第5714576号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし17に係る発明は、その出願日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、請求項1ないし17に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 記 第1 手続の経緯 ・・・(略)・・・ 第4 取消理由 1 先願明細書等の記載等 (1)先願明細書等の記載 特許異議申立人が提示した甲第11号証(特開2011-116839号公報。本件出願の優先日前に出願され、その後に出願公開された特願2009-274504号の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面の内容を掲載した刊行物である。以下、「先願明細書等」という。)には、「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、まとめて「先願明細書等の記載」という。)がある。 ・・・(略)・・・ 2 本件特許発明1について ・・・(略)・・・ よって、本件特許発明1は、先願発明と実質的に同一である。 ・・・(略)・・・ 17 むすび 以上のとおりであるから、請求項1ないし17に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 ・・・(略)・・・」 3 取消理由についての判断 (1)先願明細書等の記載等 ア 先願明細書等の記載 取消理由で引用し、特許異議申立人が提示した甲第11号証(特開2011-116839号公報。本件特許の優先日前に出願され、その後に出願公開された特願2009-274504号の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面の内容を掲載した刊行物である。以下、「先願明細書等」という。)には、「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」に関して、図面とともにおおむね次の記載(以下、総称して「先願明細書等の記載」という。)がある。 ・「【請求項1】 (A)分岐率0.7?1.5mol%の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、(B)芳香族基を有するシリコーン化合物(B成分)0.05?7.0重量部、(C)有機金属塩化合物(C成分)0.005?1.0重量部、および(D)光拡散剤(D成分)0.005?15.0重量部を含む難燃光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項2】 B成分が分子中にSi-H基を含有するシリコーン化合物であることを特徴とする請求項1記載の難燃光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項3】 C成分がパーフルオロアルキルスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、および芳香族系イミドのアルカリ(土類)金属塩からなる群より選択される1種以上の有機アルカリ(土類)金属塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】) ・「【0001】 本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは高い光線透過率と拡散性を維持したままで、難燃特性に優れる難燃光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 従来から各種照明カバー、ディスプレイカバー、自動車メーター、各種銘板などの光拡散性が要求される用途に、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂といった透明性樹脂に有機物や無機物の光拡散剤を分散させた材料が広く用いられている。この様な透明性樹脂の中で特に芳香族ポリカーボネート樹脂は機械的特性、耐熱性、耐候性に優れている上、高い光線透過率を備えた樹脂として幅広く使用されている。また光拡散剤としては、架橋構造を有する有機系粒子があり、さらに詳しくは架橋アクリル系粒子、架橋シリコーン系粒子、架橋スチレン系粒子などが挙げられる。さらに炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、弗化カルシウムなどの無機系粒子あるいはガラス短繊維などの無機系繊維が挙げられる。特に有機系粒子は無機系粒子に比べて成形品の表面平滑性に優れており高度な成形品外観を達成できるため、幅広い用途に適用可能である。」(段落【0001】及び【0002】) ・「【0008】 以下、本発明について具体的に説明する。 <A成分:芳香族ポリカーボネート樹脂> 本発明のA成分として使用される分岐率0.7?1.5mol%の芳香族ポリカーボネート樹脂とは、分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A-1成分)、または、A-1成分と直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A-2成分)との混合物であり、A成分全体としての分岐率が0.7?1.5mol%を満たしていれば、分岐率が0.7?1.5mol%の範囲を外れる分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。 【0009】 より優れた難燃性を付与する観点からは、A成分がA-1成分を20重量%?100重量%含むことが好ましく、70重量%?100重量%含むことがより好ましく100重量%含むことがさらに好ましい。A成分全体としての分岐率は0.7?1.5mol%であり、0.7?1.3mol%が好ましく、0.85?1.2mol%がより好ましい。なお、分岐率は樹脂全体に含まれる製造に用いた二価フェノール由来の構造単位の総モル数に対する分岐剤由来の構造単位のモル数(分岐剤由来の構造単位のモル数/二価フェノール由来の構造単位の総モル数×100(mol%で表す))を意味し、かかる分岐率は^(1)H-NMR測定により実測することができる。」(段落【0008】及び【0009】) ・「【0012】 本発明のA成分の粘度平均分子量は、10,000?50,000の範囲が好ましく、16,000?30,000がより好ましく、18,000?28,000の範囲がさらにより好ましく、19,000?26,000の範囲が最も好ましい。分子量が50,000を越えると溶融張力が高すぎて成形性に劣る場合があり、分子量が10,000未満であると成形片を燃焼した際のドリップ防止効果が不十分となり、すなわち本発明の優れた難燃性が発揮しにくくなることや溶融張力が低くすぎて押出成形やブロー成形が困難になることがある。また、本発明のA成分として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂は、分子量が前述の好ましい分子量範囲を満たすように、分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂1種あるいは2種以上を混合しても差し支えない。この場合、粘度平均分子量が前述の好ましい分子量範囲外である分岐構造を有するポリカーボネート樹脂を混合することも当然に可能である。なお、本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、 比粘度(η_(SP))=(t-t_(0))/t_(0) [t_(0)は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数] 求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。 η_(SP)/c=[η]+0.45×[η]^(2)c(但し[η]は極限粘度) [η]=1.23×10^(-4)M^(0.83) c=0.7」(段落【0012】) ・「【0017】 本発明で使用される三価以上のフェノール(分岐剤)の代表的な例は、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノ-ル、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、トリスフェノール、ビス(2,4-ジヒドロキシルフェニル)ケトン、フロログルシン、フロログルシド、イサンチンビスフェノール、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、トリメリト酸、ピロメリト酸、が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。 【0018】 本発明のA-1成分である分岐構造を有するポリカーボネート樹脂の製造に使用される一価フェノール(末端停止剤)としてはどのような構造でもよく特に制限はない。例えば、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-クミルフェノール、4-ヒドロキシベンゾフェノン、フェノール等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上併用してもよい。なかでも、p-tert-ブチルフェノールが好ましい。 【0019】 すなわち、本発明のA-1成分である分岐構造を有するポリカーボネートは、分岐構造部分が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンから誘導されてなる構造であり、分岐構造部分を除いた直鎖構造部分がビスフェノールAから誘導されてなる構造であり、末端がp-tert-ブチルフェノールから誘導されて成る構造であることが好ましい。」(段落【0017】ないし【0019】) ・「【0046】 <B成分:シリコーン化合物> 本発明のB成分として使用されるシリコーン化合物は芳香族基を有するシリコーン化合物であり、25℃における粘度が300cSt以下であることが好ましい。粘度が高くなると成形品の透明性が低下する。さらにB成分のシリコーン化合物が効率的に難燃効果を発揮するためには、燃焼過程における分散状態が重要である。かかる分散状態を決定する重要な因子として粘度が挙げられる。これは、燃焼過程においてシリコーン化合物があまりにも揮発しやすい場合、すなわち、粘度が低すぎるシリコーン化合物の場合には、燃焼時に系内に残っているシリコーンが希薄であるため、燃焼時に均一なシリコーンのストラクチャーを形成することが困難となるためと考えられる。かかる観点より、25℃における粘度は10?300cStがより好ましく、さらに好ましくは15?200cSt、最も好ましくは20?170cStである。 【0047】 B成分が有する芳香族基はシリコーン原子に結合しているものであり、ポリカーボネート樹脂との相溶性を高めたり透明性維持に寄与しており、燃焼時の炭化皮膜形成にも有利であることから難燃効果の発現にも寄与している。芳香族基を有しない場合は成形品の透明性が得られにくく、高度な難燃性を得ることも困難となる。 【0048】 本発明のシリコーン化合物は好ましくはSi-H基を含有するシリコーン化合物である。・・・(略)・・・」(段落【0046】ないし【0048】) ・「【0118】 (IV)ドリップ防止剤 本発明の樹脂組成物はドリップ防止性に優れるが、かかる性能をさらに補強するため通常のドリップ防止剤を併用することができる。その配合量はA成分100重量部に対し0.3重量部以下が好ましく、0.1重量部以下がより好ましく、0.08重量部以下がさらに好ましく、0.05重量部以下が最も好ましい。かかるドリップ防止剤としてはフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができる。特にポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)が好ましい。ここでいう透明性を損なわないとは、例えば2mm厚みのプレートのHazeが5%を超えない量のPTFEを使用するということである。フィブリル形成能を有するPTFEの分子量は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万?1,000万が好ましく、より好ましくは200万?900万である。かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な難燃性および透明性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。混合形態のPTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3000」(商品名)、「メタブレン A3700」(商品名)、「メタブレン A3750」(商品名)、Shine Polymer 製の「SN3307」(商品名)、Shine Polymer 製の「SN3305」(商品名)などを挙げることができる。」(段落【0118】) ・「【0129】 (i)難燃性 実施例の各組成から得られたペレットを120℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、射出成形機[東芝機械(株)IS150EN-5Y]によりシリンダー温度320℃、金型温度80℃で難燃性評価用の試験片を成形した。UL規格94の垂直燃焼試験を、厚み2.2mm、1.5mmで行いその等級を評価した。なお、判定がV-0、V-1、V-2のいずれの基準も満たすことが出来なかった場合「notV」と示すこととする。」(段落【0129】) ・「【0132】 [実施例1?29、および比較例1?9] 表1?表3記載の配合割合からなる樹脂組成物を以下の要領で作成した。尚、説明は以下の表中の記号にしたがって説明する。表の割合の各成分を計量して、タンブラーを用いて均一に混合し、かかる混合物を押出機に投入して樹脂組成物の作成を行った。押出機としては径30mmφのベント式二軸押出機((株)神戸製鋼所KTX-30)を使用した。スクリュー構成はベント位置以前に第1段のニーディングゾーン(送りのニーディングディスク×2、送りのローター×1、戻しのローター×1および戻しニーディングディスク×1から構成される)を、ベント位置以後に第2段のニーディングゾーン(送りのローター×1、および戻しのローター×1から構成される)を設けてあった。シリンダ-温度およびダイス温度が290℃、およびベント吸引度が3000Paの条件でストランドを押出し、水浴において冷却した後ペレタイザーでストランドカットを行い、ペレット化した。得られたペレットを上記の方法を用い、難燃性評価用および透明性評価用の試験片を成形した。なお、表1?表3に記載の使用した原料等は以下の通りである。」(段落【0132】) ・「【0143】 (B成分) B-1:Si-H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物B-1の製造) ・・・(略)・・・ 【0144】 B-2:Si-H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物 ・・・(略)・・・ 【0145】 B-3:Si-H基および芳香族基を含有するシリコーン化合物 ・・・(略)・・・」(段落【0143】ないし【0145】) ・「【0152】 【表1】 【0153】 【表2】 」(段落【0152】及び【0153】) イ 先願発明 先願明細書等の記載を整理すると、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認める。 「(A)分岐率0.7?1.5mol%の分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して,(B)芳香族基を有するシリコーン化合物(B成分)0.05?7.0重量部、(C)有機アルカリ(土類)金属塩である、有機金属化合物(C成分)0.005?1.0重量部、および(D)光拡散剤(D成分)0.005?15.0重量部を含む難燃光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物であって、 A成分が、分岐構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(A-1成分)と直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A-2成分)との混合物であり、A-1成分を20重量%?100重量%含み、 A成分の粘度平均分子量は,10,000?50,000の範囲であり、 分岐剤が、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンであり、 さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるドリップ防止剤をA成分100重量部に対し0.3重量部以下併用したものである、難燃光拡散性ポリカーボネート樹脂組成物。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と先願発明を対比する。 先願発明における「A成分」、「A-1成分」及び「A-2成分」は、その機能、構成または技術的意義からみて、それぞれ、本件特許発明1における「(A)」、「(A-1)」及び「(A-2)」に相当し、かつ、「A成分」における「A-1成分」及び「A-2成分」の配合量も重複している。 また、先願発明における「1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン」は、本件特許発明1における「一般式(I)で表される分岐剤」に相当し、分岐率0.7?1.5mol%であることからみて、その使用量も本件特許発明1におけるそれと重複している。 さらに、先願発明における「B成分」は、甲第11号証の段落【0048】に「本発明のシリコーン化合物は好ましくはSi-H基を含有するシリコーン化合物である。」(なお、下線は当審で付したものである。)と記載されているように、「Si-H基」は必須成分ではなく、「Si-H基」を含有しないものも含むことから、本件特許発明1における「(E)」に相当し、その配合量も本件特許発明1におけるそれと重複している。 さらにまた、先願発明における「C成分」は、ポリカーボネート樹脂を難燃化するのに使用されているものであって(段落【0069】)、本件特許発明1における「(C)」に相当し、その配合量も本件特許発明1におけるそれと重複している。 さらにまた、先願発明における「D成分」は、本件特許発明1における「(B)」に相当し、その配合量も本件特許発明1におけるそれと重複している。 さらにまた、先願発明における「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるドリップ防止剤」は、本件特許発明1における「(D)」に相当し、その配合量も本件特許発明1におけるそれと重複している。 そうすると、本件特許発明1と先願発明とは、 「(A-1)分岐状ポリカーボネート20?100質量部及び(A-2)芳香族ポリカーボネート80?0質量部からなる(A)ポリカーボネート100質量部に対し、(B)光拡散剤0.1?5質量部、(C)難燃剤0.01?1.0質量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0?0.3質量部、(E)ポリオルガノシロキサン0.05?1質量部を含み、 (A-1)成分が、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンである分岐剤から誘導された分岐核構造を有する分岐状ポリカーボネートであり、 (A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンである分岐剤の使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.7?1.5モル%の範囲である、難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。」 である点で一致する。 そして、次の点で相違または一応相違する。 <相違点1> 本件特許発明1においては、「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」の「粘度平均分子量」が「17,000以上」であるのに対し、先願発明においては、「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」の「粘度平均分子量」が、どの程度であるか明確ではない点。 <相違点2> 本件特許発明1においては、「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」が「1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成する」ものであるのに対し、先願発明においては、「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」の難燃性は、本件特許発明1のようには特定されていない点。 イ 相違点についての判断 そこで、相違点について検討する。 (ア)相違点1について 先願明細書等には、「本発明のA成分の粘度平均分子量は、10,000?50,000の範囲が好ましく、16,000?30,000がより好ましく、18,000?28,000の範囲がさらにより好ましく、19,000?26,000の範囲が最も好ましい。」(甲第11号証の段落【0012】)とあるように、先願発明における中間製品である「芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)」の粘度平均分子量について、望ましい範囲が記載されているが、最終成形品である「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」の「粘度平均分子量」については記載されておらず、当然、先願明細書等に、先願発明における「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」の「粘度平均分子量」は「17,000以上」であることは記載されていない。 しかし、本件特許の明細書の段落【0063】の【表1】及び段落【0064】の【表2】並びに回答書によると、中間製品であるポリカーボネート樹脂に、光拡散剤、難燃剤、ポリテトラフルオロエチレン及びポリオルガノシロキサン等を添加した場合、粘度平均分子量は変化しないか、変化するとしても、その変化の割合は、10%に満たないものである。 したがって、先願発明において、中間製品である「芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)」の粘度平均分子量が、最も好ましい範囲の「19,000?26,000」にある場合、または好ましい範囲の上限である「50,000」程度である場合、最終成形品である「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」の粘度平均分子量が「17,000以上」となる蓋然性は極めて高く、先願発明においても、「難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物」の「粘度平均分子量」は、「17,000以上」であるといえ、相違点1は実質的な相違点とはいえない。 (イ)相違点2について 先願明細書等には、「実施例の各組成から得られたペレットを120℃で6時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、射出成形機[東芝機械(株)IS150EN-5Y]によりシリンダー温度320℃、金型温度80℃で難燃性評価用の試験片を成形した。UL規格94の垂直燃焼試験を、厚み2.2mm、1.5mmで行いその等級を評価した。なお、判定がV-0、V-1、V-2のいずれの基準も満たすことが出来なかった場合「notV」と示すこととする。」(甲第11号証の段落【0129】)とあり、また、具体的な実施例としては、分子中にSi-H基を有するポリオルガノシロキサンを使用した実施例1ないし29の難燃性(2.2mmと1.5mm)が、V-0のランクであることが示されている(甲第11号証の段落【0132】、【0143】ないし【0145】、【0152】及び【0153】参照。)。すなわち、先願明細書等において、V-0のランクの難燃性の評価が示されているのは、分子中にSi-H基を有するポリオルガノシロキサンを使用したポリカーボネート樹脂組成物を2.2mm厚と1.5mm厚に成形したものだけである。 ところで、平成28年9月5日に特許権者が提出した意見書によると、1.0mm厚でV-0を達成することは、1.5mm厚でV-0を達成することよりも、優れた難燃性であることは、本件特許の優先日時点において技術常識である。 さらに、平成28年9月5日に特許権者が提出した意見書に添付された乙第1号証である特開2002-37997号公報(段落【0169】並びに【0172】の【表1】及び【0174】の【表3】を参照。特に、当該箇所において示された実施例3及び8と比較例2とを比べ、同じく実施例16と比較例4とを比べる。)には、分子中にSi-H基を有しないポリオルガノシロキサンを使用したポリカーボネート樹脂組成物は、分子中にSi-H基を有するポリオルガノシロキサンを使用したポリカーボネート樹脂組成物よりも、難燃性が劣ることが示されており、このことから、先願発明において、ポリオルガノシロキサンとして、分子中にSi-H基を有しないポリオルガノシロキサンを使用した場合には、分子中にSi-H基を有するポリオルガノシロキサンを使用した場合よりも、難燃性は劣ると考えられる。 以上のことを考慮すると、先願明細書等には、分子中にSi-H基を有しないポリオルガノシロキサンを使用したポリカーボネート樹脂組成物において、「1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成する」ものは、記載されているとはいえない。 したがって、相違点2は実質的な相違点である。 ウ まとめ 以上のとおり、相違点1は実質的な相違点とはいえないが、相違点2は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、先願発明と同一の発明であるとはいえない。 (3)本件特許発明2ないし17について 請求項2ないし17は請求項1を引用し、請求項1をさらに限定するものであるから、本件特許発明2ないし17は、本件特許発明1をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明2ないし17は、本件特許発明1と同様に先願発明1と同一の発明であるとはいえない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、請求項1ないし17に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではない。 第4 結語 上記第3のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1ないし17に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形体 【技術分野】 【0001】 本発明はポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形体に関し、特に、光の透過率及び拡散性が高く、黄変が抑制でき、薄肉難燃性が高い成形体を提供できるポリカーボネート樹脂組成物、及び該ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られるポリカーボネート樹脂成形体に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、LED照明などに使用される樹脂製照明機器拡散カバー等には意匠性と高い難燃性が必要とされており、難燃性については米国アンダーライターズラボラトリー-94(以下、UL-94)においてV-0規格を満たす高い難燃性が求められている。V-0規格については、製品厚みが薄くなるに従って難易度が高くなるが、意匠性のために成形品厚みを薄くする事例も多く見受けられ、近年では1.0mm以下でV-0規格を満たす高難易度の難燃性が求められている。 難燃性を向上させる技術として、例えば、特許文献1及び2では、ポリカーボネート樹脂に光拡散剤および難燃剤、ポリテトラフルオロエチレンを使用することで高い難燃特性および光学特性を付与すると記述があるが、難燃特性については十分でなく、光学特性についてもポリテトラフルオロエチレンを添加することによる黄味着色については言及されていない。 さらに、特許文献1及び2ではリン系難燃剤を使用しているが、ポリカーボネートの特徴である、リン系難燃剤を使用することによるポリカーボネートの耐熱性の低下については言及されていない。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2009-108281号公報 【特許文献2】特開2006-143949号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、光の透過率及び拡散性が高く、黄変が抑制でき、薄肉難燃性が高い成形体を提供できるポリカーボネート樹脂組成物、及び該ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られるポリカーボネート樹脂成形体を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者等は、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、分岐状ポリカーボネートを必須成分として、下記の配合組成により前記の目的を達成することを見いだし本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下の発明を提供するものである。 (1)粘度平均分子量が17,000以上であり、(A-1)分岐状ポリカーボネート10?100質量部及び(A-2)芳香族ポリカーボネート90?0質量部からなる(A)ポリカーボネート100質量部に対し、(B)光拡散剤0.1?5質量部、(C)難燃剤0.01?1.0質量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0?0.5質量部、(E)ポリオルガノシロキサン(但し、分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサンを除く)0?1質量部を含み、 (A-1)成分が、下記一般式(I)で表される分岐剤から誘導された分岐核構造を有する分岐状ポリカーボネートであり、 (A-1)成分において、前記一般式(I)で表される分岐剤の使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.01?3.0モル%の範囲であり、 1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成することを特徴とする難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【化1-1】 [一般式(I)において、Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基であり、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素、炭素数1?5のアルキル基あるいはハロゲン原子である。] (2)(A)成分100質量部に対して、(F)酸化防止剤を0.01?1.0質量部含むことを特徴とする(1)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (3)(C)成分が有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩である(1)又は(2)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (4)(D)成分が水性分散型のポリテトラフルオロエチレンである(1)?(3)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (5)(D)成分がアクリル被覆されたポリテトラフルオロエチレンである(1)?(3)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (6)(E)成分がフェニル基、メトキシ基及びビニル基を有するポリオルガノシロキサンである(1)?(5)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【0006】(削除) 【0007】(削除) 【0008】 (7)前記一般式(I)で表される分岐剤が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンである(1)?(6)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (8)1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2?2.0モル%の範囲である(7)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (9)粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2モル%以上1.0モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.03?0.5質量部である(8)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (10)粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.0モル%以上1.5モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.01?0.5質量部である(8)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (11)(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.5モル%以上であり、(D)成分の含有量が0質量部である(7)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (12)粘度平均分子量が22,000以上である(1)?(8)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (13)(B)成分がSi系光拡散剤である(12)に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 (14)(1)?(13)のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られるポリカーボネート樹脂成形体。 (15)成形体が、照明器具用カバーである(14)に記載のポリカーボネート樹脂成形体。 (16)成形体が、表示器具用拡散カバーである(14)に記載のポリカーボネート樹脂成形体。 (17)成形体が、液晶ディスプレー用拡散板である(14)に記載のポリカーボネート樹脂成形体。 【発明の効果】 【0009】 本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いると、光の透過率及び拡散性が高く、黄変が抑制でき、1mm以下でV-0という薄肉難燃性が高いポリカーボネート樹脂成形体を提供できる。 【図面の簡単な説明】 【0010】 【図1】本発明における拡散度の測定方法を示す概略図である。 【発明を実施するための形態】 【0011】 本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、粘度平均分子量が17,000以上であり、(A-1)分岐状ポリカーボネート10?100質量部及び(A-2)芳香族ポリカーボネート90?0質量部からなる(A)ポリカーボネート100質量部に対し、(B)光拡散剤0.1?5質量部、(C)難燃剤0.01?1.0質量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0?0.5質量部、(E)ポリオルガノシロキサン(但し、分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサンを除く)0?1質量部を含み、 (A-1)成分が、下記一般式(I)で表される分岐剤から誘導された分岐核構造を有する分岐状ポリカーボネートであり、 (A-1)成分において、前記一般式(I)で表される分岐剤の使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.01?3.0モル%の範囲であり、 1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成する。 【化1-2】 [一般式(I)において、Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基であり、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素、炭素数1?5のアルキル基あるいはハロゲン原子である。] 本発明のポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量は、難燃性及び成形性の観点から、17,000以上であり、17,000?26,000であると好ましい。 また、難燃性の観点からは、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量は22,000以上であるとより好ましく、22,000?26,000であると更に好ましい。 【0012】 以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の各成分について説明する。 (A)成分における(A-1)分岐状ポリカーボネート(PC)は、分岐状のポリカーボネートであれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(I)で表される分岐剤から誘導された分岐核構造を有し、かつ粘度平均分子量が15,000?40,000であって、好ましくは17,000?30,000であって、より好ましくは17,000?27,000であり、分岐剤の使用量は、二価フェノール化合物に対して、好ましくは0.01?3モル%、より好ましくは0.1?2.0モル%の範囲である分岐ポリカーボネートが挙げられる。 【0013】 【化2】 【0014】 Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基などである。また、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素、炭素数1?5のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基など)あるいはハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子など)である。 一般式(I)で表される分岐剤は、さらに具体的には1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-メタン;1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-エタン;1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン;1,1,1-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-メタン;1,1,1-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-エタン;1,1,1-トリス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-メタン;1,1,1-トリス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-エタン;1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-メタン;1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-エタン;1,1,1-トリス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-メタン;1,1,1-トリス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン;1,1,1-トリス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-メタン;1,1,1-トリス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-エタン;1,1,1-トリス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-メタン;1,1,1-トリス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-エタン;1,1,1-トリス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-メタン;1,1,1-トリス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-エタン、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール;α,α’,α”-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン;1-[α-メチル-α-(4’-ヒドロキシフェニル)エチル]-4-[α’,α’-ビス(4”-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン;フロログリシン、トリメリト酸、イサチンビス(o-クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物などである。上記のうち、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンを用いることが入手性、反応性、経済性の観点から好ましい。 これらの分岐剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。 また、分岐剤として1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンを用いる場合には、その使用量は、二価フェノール化合物に対して0.2?2.0モル%であることが好ましく、0.3?2.0モル%であることがより好ましく、0.4?1.9モル%であることが更に好ましい。0.2モル%以上であれば、配合の自由度が広くなり、2.0モル%以下であれば、重合中にゲル化しにくく、ポリカーボネートの製造が容易である。 【0015】 (A)成分における(A-1)分岐状ポリカーボネートは、上記一般式(I)で表される分岐剤から誘導された分岐核構造を有し、具体的には下記の式で表されるものである。 【0016】 【化3】 【0017】 (ここで、a,b及びcは整数であり、PCはポリカーボネート部分を示す。) 【0018】 PCは、例えば原料成分としてビスフェノールAを使用した場合には、下記の式で表される繰り返し単位を示す。 【化4】 【0019】 また、(A)成分における(A-1)分岐状ポリカーボネートの量は、10?100質量部であり、50?100質量部であると好ましい。分岐状ポリカーボネートの量が10質量部以上でないと、薄肉難燃性の効果が得られない。 【0020】 (A)成分における(A-2)芳香族ポリカーボネート(PC)は、分子構造中にハロゲンを含有しない非分岐状ポリカーボネートであり、好ましくは、下記式(II) 【0021】 【化5】 【0022】 〔式中、Xは、それぞれ水素原子又は炭素数1?8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基など)であり、このXが複数の場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよく、a及びbは、それぞれ1?4の整数である。そして、Yは、単結合,炭素数1?8のアルキレン基又は炭素数2?8のアルキリデン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテリレン基、ヘキシレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基など)、炭素数5?15のシクロアルキレン基又は炭素数5?15のシクロアルキリデン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基など)、又は-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-、-CO-結合もしくは下記式(III)あるいは(III’) 【0023】 【化6】 【0024】 で表される結合を示す。〕で表される構造単位を有する重合体である。このうち、Xは水素原子が好ましく、また、Yはエチレン基,プロピレン基が好ましい。 この芳香族ポリカーボネートは、式(IV) 【0025】 【化7】 【0026】 〔式中、X,Y,a及びbは、前記と同じである。〕で表される二価フェノールとホスゲン又は炭酸ジエステル化合物とを反応させることによって容易に製造することができるものである。すなわち、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、公知の酸受容体や粘度平均分子量調節剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応などによって製造される。 【0027】 ここで、前記式(IV)で表される二価フェノールとしては、様々なものがある。例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)-(4-イソプロピルフェニル)メタン;ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;1-ナフチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕;2-メチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;1-エチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン;1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン;4-メチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン;4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン;1,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;などのジヒドロキシジアリールアルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン;3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’-ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシアリールフルオレン類などが挙げられる。これらの中では、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が好適である。 【0028】 前記式(IV)で表される二価フェノール類以外の二価フェノールとしては、ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、1,5-ジヒドロキシナフタレン;2,6-ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類等が挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、炭酸ジエステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられる。 【0029】 そして、分子量調節剤としては、通常、ポリカーボネートの重合に用いられるものでよく、各種のものを用いることができる。具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-クミルフェノール、ノニルフェノールなどが挙げられる。更に、本発明で用いる芳香族ポリカーボネートは、2種以上の芳香族ポリカーボネートの混合物であってもよい。そして、該芳香族ポリカーボネートは、機械的強度及び成形性の点から、その粘度平均分子量が10,000?100,000のものが好ましく、特に、20,000?40,000のものが好適である。 【0030】 (B)成分の光拡散剤は、光拡散効果を付与するために配合するものであり、特に限定されず、公知のものを使用することができるが、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、シリカ、石英、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも成形等の滞留熱安定性が良く、難燃性向上効果があることから、シリコーン樹脂からなる有機微粒子が好ましく、好ましい粒径は0.5?10μm、より好ましくは1?5μmである。 本発明のポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量が22,000以上である場合には、(B)成分がSi系光拡散剤であると、後述する(D)ポリテトラフルオロエチレンを含有しなくても優れた薄肉難燃性が得られるという点で好ましい。Si系光拡散剤は、難燃性発現補助及び光拡散効果を付与するために配合するものであり、ケイ素(Si)を含有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、シリコーン系エラストマー、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも成形等の滞留熱安定性が良く、難燃性向上効果があることから、シリコーン樹脂からなる有機微粒子が好ましく、好ましい粒径は0.5?10μm、より好ましくは1?5μmである。 また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合する(B)成分の量は、成形品の厚みにより最適値は変わるが、(A)成分100質量部に対し、0.1?5質量部であり、好ましくは0.1?4質量部、より好ましくは0.1?3質量部である。0.1質量部より少ないと十分な拡散性能が得られず、5質量部を超えると成形品の強度が低下する。 【0031】 (C)成分の難燃剤は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の薄肉難燃性をさらに向上させるために配合するものであり、特に限定されず、公知のものを使用することができるが、有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩(有機アルカリ(土類)金属塩)が好ましい。 また、本発明においては、リン系難燃剤を含まないことが好ましい。 有機アルカリ(土類)金属塩としては種々のものが挙げられるが、少なくとも一つの炭素原子を有する有機酸、又は有機酸エステルのアルカリ金属塩及び有機アルカリ土類金属塩を使用することができる。 ここで、有機酸又は有機酸エステルは、有機スルホン酸、有機カルボン酸などである。一方、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなど、アルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどであり、この中で、ナトリウム、カリウムの塩が好ましく用いられる。また、その有機酸の塩は、フッ素、塩素、臭素のようなハロゲンが置換されていてもよい。アルカリ金属塩及び有機アルカリ土類金属塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 上記各種の有機アルカリ金属塩及び有機アルカリ土類金属塩の中で、例えば、有機スルホン酸の場合、下記式(1)で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が好ましく用いられる。 (C_(e)F_(2e+1)SO_(3))_(f)M (1) 式中、eは1?10の整数を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどのアリカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属を示し、fはMの原子価を示す。 これらの化合物としては、例えば、特公昭47-40445号公報に記載されているものがこれに該当する。 【0032】 上記式(1)で表されるパーフルオロアルカンスルホン酸としては、例えば、パーフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロメチルブタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸等を挙げることができる。特に、これらのカリウム塩が好ましく用いられる。その他、パラトルエンスルホン酸、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸;2,4,5-トリクロロベンゼンスルホン酸;ジフェニルスルホン-3-スルホン酸;ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホン酸;ナフタレントリスルホン酸等の有機スルホン酸のアルカリ金属塩等を挙げることができる。 また、有機カルボン酸としては、例えば、パーフルオロ蟻酸、パーフルオロメタンカルボン酸、パーフルオロエタンカルボン酸、パーフルオロプロパンカルボン酸、パーフルオロブタンカルボン酸、パーフルオロメチルブタンカルボン酸、パーフルオロヘキサンカルボン酸、パーフルオロヘプタンカルボン酸、パーフルオロオクタンカルボン酸等を挙げることができ、これら有機カルボン酸のアルカリ金属塩が用いられる。 また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合する(C)成分の量は、(A)成分100質量部に対し、0.01?1.0質量部であり、好ましくは0.03?0.5質量部、より好ましくは0.05?0.2質量部である。 【0033】 (D)成分のポリテトラフルオロエチレンは、アンチドリッピング効果や難燃性を向上させるために配合するものであり、特に限定されず、公知のものを使用することができるが、水性分散型のポリテトラフルオロエチレン、アクリル被覆されたポリテトラフルオロエチレンが好ましい。 また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合する(D)成分の量は、(A)成分100質量部に対し、0?0.5質量部である。0.5質量部を超えるとポリテトラフルオロエチレンの凝集体が増加する。 難燃性、光学特性、及び成形加工性向上の観点から、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量が17,000以上22,000未満であり、ポリカーボネート樹脂組成物の(A-1)成分において、分岐剤として1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンを用い、該分岐剤の使用量が(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2モル%以上1.0モル%未満の範囲である場合には、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.03?0.5質量部であることが好ましく、0.03?0.2質量部であることがより好ましく、0.03?0.1質量部であることが更に好ましい。 また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量が17,000以上22,000未満であり、ポリカーボネート樹脂組成物の(A-1)成分において、分岐剤として1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンを用い、該分岐剤の使用量が(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.0モル%以上1.5モル%未満の範囲である場合には、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01?0.5質量部であることが好ましく、0.01?0.2質量部であることがより好ましく、0.01?0.1質量部であることが更に好ましい。 【0034】 本発明のポリカーボネート樹脂組成物の(A-1)成分において、分岐剤として1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンを用い、該分岐剤の使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.5モル%以上である場合には、(D)成分の含有量は0質量部であってもよい。 【0035】 また、難燃性、光学特性、及び成形加工性向上の観点から、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量が22,000以上であり、ポリカーボネート樹脂組成物の(A-1)成分において、分岐剤として1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンを用いた場合には、(D)成分は、必要に応じて、(A)成分100質量部に対して0?0.3質量部添加してもよい。 【0036】 (E)成分のポリオルガノシロキサン(但し、分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサンを除く)は、難燃性発現補助、金型付着低減、高透過率発現、シルバー発生防止のために配合するものであり、特に限定されず、公知のものを使用することができるが、メトキシ基を含有するものが好ましく、特に、フェニル基、メトキシ基及びビニル基を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。 また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合する(E)成分の量は、(A)成分100質量部に対し、0?2質量部であり、好ましくは0.03?1質量部、より好ましくは0.05?0.5質量部である。2質量部を超える量を添加すると、射出成形により金型付着が生じる。 【0037】 本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、さらに(A)成分100質量部に対して、(F)酸化防止剤を添加してもよい。 この酸化防止剤は、粘度平均分子量低減防止、樹脂黄変防止、透過率低下防止するものであり、特に限定されず、公知のものを使用することができるが、例えば、下記式(2)又は(3)で表されるものが好ましい。 【0038】 【化8】 【0039】 (式中、R^(1)はアリール基又はアルキル基を示し、同一であっても異なっていてもよい。) 【0040】 【化9】 【0041】 (式中、R^(4)?R^(8)は、水素原子、アリール基または炭素数1?20のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。) また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に配合する(F)成分の量は、(A)成分100質量部に対し、0.01?1.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.03?0.5質量部、更に好ましくは0.04?0.2質量部である。0.01質量部以上であれば樹脂黄変抑制効果が高く、1.0質量部以下であれば耐久性が良好になる。 【0042】 さらに、本発明においては、必要に応じ、任意成分としてその他の合成樹脂、エラストマー、熱可塑性樹脂に常用されている添加剤成分を含有させることもできる。この添加剤としては帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、可塑剤、抗菌剤、相溶化剤及び着色剤(染料、顔料)等が挙げることができる。 上記任意成分の配合量は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。 【0043】 次に、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法について説明する。 本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A)?(E)を上記割合で、更に必要に応じて用いられる(F)成分及び各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。 配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常240?320℃の範囲で適宜選択される。上記溶融混練には、押出成形機、特に、ベント式の押出成形機の使用が好ましい。 なお、ポリカーボネート樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、ポリカーボネート樹脂又は他の熱可塑性樹脂と溶融混練、即ち、マスターバッチとして添加することもできる。 【0044】 本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、上記のようにして製造されたポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られる。 本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を、上記の溶融混練成形機を用いて溶融混練して得られた組成物、又は、該組成物から得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法等を用いることにより各種成形体を製造することができる。特に、得られたペレットを用いて、射出成形及び射出圧縮成形による射出成形体の製造を好適に行うことができる。 本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、例えば、照明器具用カバー、表示器具用拡散カバー、液晶ディスプレー用拡散板等の表示器具用拡散板として好適に用いることができる。 【実施例】 【0045】 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されない。 性能評価方法及び使用原料を次に示す。 【0046】 〔性能評価方法〕 (1)ポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量 粘度平均分子量Mvは、ウベローデ型粘度管にて、20℃におけるメチレンクロライド溶液の極限粘度[η]を測定し、下記の関係式により計算した。 [η]=1.23×10^(-5)Mv^(0.83) 【0047】 (2)難燃性 UL規格94に準じて作製した、試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1mm)の試験片を用いて垂直燃焼試験を行った。試験の結果に基づいてV-0、V-1、V-2又はNot-Vの等級に分類し、難燃性を評価した。 なお、UL規格94とは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間から難燃性を評価する方法である。 【0048】 (3)熱変形温度(HDT) ASTM D648に準拠して測定した(荷重18.6kg/cm^(2)、肉厚1/8mm、単位:℃)。 この値は耐熱性の目安となるものであり、樹脂組成物の使用目的にもよるが、通常80℃以上が実用上好ましい範囲である。 【0049】 (4)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)凝集体の評価 得られたペレットを、各々120℃で5時間熱風乾燥した後、成形機[住友ネスタールN515/150、住友重機械(株)製]を用いて、280℃の成形温度、80℃の金型温度で、40mm×40mm×2.0mmの平板を作製した。作製した平板を一定の光量を持つ光源の上に配置し、以下の基準で評価した。 A 凝集体なし B 凝集体目立たない C 凝集体が目立つ 【0050】 (5)色相(YI値) 一辺40mm、厚み2mmの試験片を用い、分光光度計[Color-Eye 7000A、GretagMacbeth社製]を使用して測定した。 【0051】 (6)全光線透過率(%) 得られたペレットを、各々120℃で5時間熱風乾燥した後、成形機[住友ネスタールN515/150、住友重機械(株)製]を用いて、280℃の成形温度、80℃の金型温度で、40mm×40mm×2.0mmの全光線透過率測定用の平板として、サンプルを作製した。JIS K7105に準拠して、日本電色工業(株)製の試験機により、作製したサンプルの平行光線透過率を測定した。 【0052】 (7)拡散度 一辺40mm、厚み2mmの平板状試験片を日本電色工業(株)製の分散度測定計を使用して測定した。なお、拡散度とは、図1において、光線bを上方から垂直に平板状試験片a面に当てたとき、角度c=0度のときの透過光量を100とした場合、その透過光量が50になるときのcの角度をいう。 【0053】 〔使用原料〕 (A)ポリカーボネート(PC) (A-1)分岐状ポリカーボネート 製造例1(分岐状ポリカーボネート THPE0.40mol%の製造) (ポリカーボネートオリゴマー合成工程) 5.6wt%水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解するBPA(ビスフェノールA)に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにBPA濃度が13.5wt%になるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。 また、5.6wt%水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解するTHPE(1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニルエタン))に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにTHPE濃度が11.3wt%になるようにTHPEを溶解し、THPEの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。 このBPAの水酸化ナトリウム水溶液42L/hr、THPEの水酸化ナトリウム水溶液0.41L/hr、塩化メチレン15L/hrの流量で、ホスゲンを4.0kg/hrの流量で、内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。 管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。 管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液2.8L/hr、25wt%水酸化ナトリウム水溶液0.07L/hr、水17L/hr、1wt%トリエチルアミン水溶液を0.69L/hr、PTBP(p-tert-ブチルフェノール)の塩化メチレン溶液(濃度4.0wt%)5.2L/hrを添加して反応を行った。 槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。 このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度329g/L、クロロホーメート基濃度0.74mol/Lであった。 【0054】 (ポリカーボネートの製造工程) 邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記で製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン10.2L及びトリエチルアミン2.8mLを仕込み、混合した。 この混合液に、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH639gと亜二チオン酸ナトリウム2.3gを水9.3Lに溶解した水溶液にBPA1166gを溶解させたもの)を添加し60分間重合反応を実施した。 希釈のため塩化メチレン10Lを加え10分間攪拌した後、ポリカーボネートを含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。 こうして得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次、15容積%の0.03mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.2N塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。 洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥した。 NMRにより求めたTHPE量は0.4mol%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は46.7、粘度平均分子量Mv=17,400であった。 【0055】 製造例2(分岐状ポリカーボネート THPE0.85mol%の製造) (ポリカーボネートオリゴマー合成工程) 5.6wt%水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解するBPA(ビスフェノールA)に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにBPA濃度が13.5wt%になるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。 また、5.6wt%水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解するTHPE(1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニルエタン))に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにTHPE濃度が11.3wt%になるようにTHPEを溶解し、THPEの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。 このBPAの水酸化ナトリウム水溶液42L/hr、THPEの水酸化ナトリウム水溶液0.87L/hr、塩化メチレン15L/hrの流量で、ホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。 管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。 管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液2.8L/hr、25wt%水酸化ナトリウム水溶液0.07L/hr、水17L/hr、1wt%トリエチルアミン水溶液を0.69L/hr、PTBP(p-tert-ブチルフェノール)の塩化メチレン溶液(濃度4.0wt%)4.6L/hrを添加して反応を行った。 槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。 このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度330g/L、クロロホーメート基濃度0.72mol/Lであった。 【0056】 (ポリカーボネートの製造工程) 邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記で製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン10.2L及びトリエチルアミン2.8mLを仕込み、混合した。 この混合液に、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH639gと亜二チオン酸ナトリウム2.3gを水9.3Lに溶解した水溶液にBPA1166gを溶解させたもの)を添加し60分間重合反応を実施した。 希釈のため塩化メチレン10Lを加え10分間攪拌した後、ポリカーボネートを含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。 こうして得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次、15容積%の0.03mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.2N塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。 洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥した。 NMRにより求めたTHPE量は0.85mol%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は55.2、粘度平均分子量Mv=22,800であった。 【0057】 製造例3(分岐状ポリカーボネート THPE1.0mol%の製造) ポリカーボネートオリゴマー合成工程において、THPEの水酸化ナトリウム水溶液の供給量を1.03L/hr、PTBPの塩化メチレン溶液(濃度4.0wt%)の供給量を6.0L/hrとした以外は、製造例1と同様の方法で、製造例3の分岐状ポリカーボネート(THPE1.0mol%)を得た。 NMRにより求めたTHPE量は1.0mol%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は47.0、粘度平均分子量Mv=17,500であった。 【0058】 製造例4(分岐状ポリカーボネート THPE1.5mol%の製造) ポリカーボネートオリゴマー合成工程において、THPEの水酸化ナトリウム水溶液の供給量を1.55L/hr、PTBPの塩化メチレン溶液(濃度4.0wt%)の供給量を6.8L/hrとした以外は、製造例1と同様の方法で、製造例4の分岐状ポリカーボネート(THPE1.5mol%)を得た。 NMRにより求めたTHPE量は1.5mol%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は46.6、粘度平均分子量Mv=17,300であった。 【0059】 製造例5(分岐状ポリカーボネート THPE1.90mol%の製造) (ポリカーボネートオリゴマー合成工程) 5.6wt%水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解するBPAに対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにBPA濃度が13.5wt%になるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。 また、5.6wt%水酸化ナトリウム水溶液に、後から溶解するTHPEに対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加え、これにTHPE濃度が11.3wt%になるようにTHPEを溶解し、THPEの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。 このBPAの水酸化ナトリウム水溶液42L/hr、THPEの水酸化ナトリウム水溶液2.0L/hr、塩化メチレン15L/hrの流量で、ホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。 管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。 管型反応器を出た反応液は後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入され、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液2.8L/hr、25wt%水酸化ナトリウム水溶液0.07L/hr、水17L/hr、1wt%トリエチルアミン水溶液を0.69L/hr、PTBPの塩化メチレン溶液(濃度4.0wt%)6.4L/hrを添加して反応を行った。 槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。 このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度336g/L、クロロホーメート基濃度0.71mol/Lであった。 【0060】 (ポリカーボネートの製造工程) 邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に上記で製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン10.2L及びトリエチルアミン2.8mLを仕込み、混合した。 この混合液に、BPAの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH639gと亜二チオン酸ナトリウム2.3gを水9.3Lに溶解した水溶液にBPA1166gを溶解させたもの)を添加し60分間重合反応を実施した。 希釈のため塩化メチレン10Lを加え10分間攪拌した後、ポリカーボネートを含む有機相と過剰のBPA及びNaOHを含む水相に分離し、有機相を単離した。 こうして得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次、15容積%の0.03mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.2N塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が0.01μS/m以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。 洗浄により得られたポリカーボネートの塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥した。 NMRにより求めたTHPE量は1.9mol%、ISO1628-4(1999)に準拠して測定した粘度数は55.2、粘度平均分子量Mv=22,800であった。 【0061】 (A-2)芳香族ポリカーボネート ・タフロンFN1500[出光興産(株)製、ビスフェノールAから製造されたホモポリカーボネート、粘度平均分子量=14,500] ・タフロンFN1900A[出光興産(株)製、ビスフェノールAから製造されたホモポリカーボネート、粘度平均分子量=19,500] ・タフロンFN2200A[出光興産(株)製、ビスフェノールAから製造されたホモポリカーボネート、粘度平均分子量=21,500] ・タフロンFN2600A[出光興産(株)製、ビスフェノールAから製造されたホモポリカーボネート、粘度平均分子量=26,000] (B)光拡散剤 ・架橋シリコーン樹脂粒子[信越化学工業(株)製、商品名「KMP590」] ・架橋(メタ)アクリル系重合体粒子[積水化成品工業(株)製、商品名「テクポリマーMBX?5」:5%重量減少温度250℃] (C)難燃剤 (金属塩難燃剤) ・パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩[三菱マテリアル(株)製、商品名「エフトップKFBS」] (リン系難燃剤) ・1,3-フェニレンビスジキシレニルホスフェート[大八化学工業(株)製、商品名「PX-200」] (D)PTFE ・フルオン AD938L[旭硝子(株)製:ポリテトラフルオロエチレン60%、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル3%、水37%] ・メタブレン A3800[三菱レイヨン(株)製:ポリテトラフルオロエチレン50%、炭素数4以上のアルキル基を有するポリアルキル(メタ)アクリレート50%] ・フルオン CD076[旭硝子(株)製:ポリテトラフルオロエチレン100%] (E)ポリオルガノシロキサン ・反応性シリコーン化合物[信越化学(株)製、商品名「KR511」:フェニル基、メトキシ基及びビニル基含有、屈折率=1.518] ・反応性シリコーン化合物[東レダウコーニング(株)製、商品名「DC3037」:メトキシ基及びフェニル基含有、屈折率=1.49] (F)酸化防止剤 ・ホスファイト系酸化防止剤[(株)ADEKA製、商品名「アデカスタブ PEP-36」] ・ヒンダードフェノール系酸化防止剤[BASF社製、商品名「イルガフォス(Irg)168」] 【0062】 実施例1-1?1-15、2-1?2-6及び比較例1-1?1-3、2-1?2-4 表1及び表2に示す割合で各成分を混合し、ベント式二軸押出成形機[東芝機械(株)製:TEM35]に供給し、バレル温度300?320℃、スクリュー回転数200?600回転、吐出量10?30kg/hrにて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを得た。 この評価用ペレットサンプルを用いて、粘度平均分子量を測定した。また、射出成形機にて、各試験を行うための試験片を作成し、各試験を行った。結果を表1及び表2に示す。 【0063】 【表1】 【0064】 【表2】 【0065】 表1に示すように、実施例1-1?1-15のポリカーボネート樹脂組成物から得られる樹脂成形体は、光の透過率及び拡散性が高く、黄変が少なく、薄肉難燃性が高いものである。また、(D)ポリテトラフルオロエチレンを含有する実施例1-1?1-12、1-14及び1-15においては、PTFE凝集体の生成が少なく、良好である。 これに対し、比較例1-1及び1-2のポリカーボネート樹脂組成物は、(A-1)成分の分岐状ポリカーボネートを含有しないため、粘度平均分子量が高いにも関わらず、(D)ポリテトラフルオロエチレンを同量含む実施例1-1?1-8と比較して難燃性が劣っている。なお、比較例1-2では、リン系難燃剤を使用しているため、金属塩難燃剤を使用した場合と比較して熱変形温度が低くなる。 比較例1-3では、0.5質量部を超える量の(D)ポリテトラフルオロエチレンを含有するため、PTFE凝集体が多量に発生し、製品には不向きである。また、比較例1-3と、これと同量の(B)光拡散剤を含有する実施例1-1及び1-2とを比較すると、PTFEを多く含有する比較例1-3の方が拡散度が高いことから、PTFEが拡散剤の役割をも担っていると考えられる。しかしながら、比較例1-3と、これと同等の透過率を有する実施例1-8及び1-10とを比較すると、比較例1-3の方が拡散度が劣っており、YI値も非常に高くなっていることがわかる。すなわち、0.5質量部を超える量の(D)PTFEを含有すると、透過率及び拡散効率の低下やYI値の増加を招くことになる。 【0066】 また、表2に示すように、実施例2-1?2-6のポリカーボネート樹脂組成物から得られる樹脂成形体は、光の透過率及び拡散性が高く、黄変が少なく、薄肉難燃性が高いものである。特に、実施例2-1?2-6のポリカーボネート樹脂組成物は、粘度平均分子量が22,000以上であり、かつ(B)成分がSi系光拡散剤であるため、(D)ポリテトラフルオロエチレンを含有しなくても、1mm以下でV-0という高い薄肉難燃性を達成することができる。 これに対し、(B)成分を含有しない比較例2-1、(A-1)成分を含有しない比較例2-2、及び、(A)成分100質量部に対し(C)成分を1.0質量部を超えて含有する比較例2-3及び2-4のポリカーボネート樹脂組成物から得られる樹脂成形体は、いずれも薄肉難燃性が低い。さらに、比較例2-1は光拡散性が低く、リン系難燃剤を使用している比較例2-3及び2-4は、金属塩難燃剤を使用した場合と比較して熱変形温度が低い。 【産業上の利用可能性】 【0067】 以上詳細に説明したように、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いると、光の透過率及び拡散性が高く、黄変が抑制でき、1mm以下でV-0という薄肉難燃性が高いポリカーボネート樹脂成形体が得られる。 このため、本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、照明器具用カバー、表示器具用拡散カバー、液晶ディスプレー用拡散板等の表示器具用拡散板として有用である。 【符号の説明】 【0068】 a 平板状試験片 b 光源 c 拡散光角度 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 粘度平均分子量が17,000以上であり、(A-1)分岐状ポリカーボネート10?100質量部及び(A-2)芳香族ポリカーボネート90?0質量部からなる(A)ポリカーボネート100質量部に対し、(B)光拡散剤0.1?5質量部、(C)難燃剤0.01?1.0質量部、(D)ポリテトラフルオロエチレン0?0.5質量部、(E)ポリオルガノシロキサン(但し、分子中にSi-H基を含有するポリオルガノシロキサンを除く)0?1質量部を含み、 (A-1)成分が、下記一般式(I)で表される分岐剤から誘導された分岐核構造を有する分岐状ポリカーボネートであり、 (A-1)成分において、前記一般式(I)で表される分岐剤の使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.01?3.0モル%の範囲であり、 1.0mm厚に成形した際に、UL94規格においてV-0の難燃性を達成することを特徴とする難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【化1】 [一般式(I)において、Rは水素あるいは炭素数1?5のアルキル基であり、R^(1)?R^(6)はそれぞれ独立に、水素、炭素数1?5のアルキル基あるいはハロゲン原子である。] 【請求項2】 (A)成分100質量部に対して、(F)酸化防止剤を0.01?1.0質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項3】 (C)成分が有機アルカリ金属塩及び/又は有機アルカリ土類金属塩である請求項1又は2に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項4】 (D)成分が水性分散型のポリテトラフルオロエチレンである請求項1?3のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項5】 (D)成分がアクリル被覆されたポリテトラフルオロエチレンである請求項1?3のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項6】 (E)成分がフェニル基、メトキシ基及びビニル基を有するポリオルガノシロキサンである請求項1?5のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項7】 前記一般式(I)で表される分岐剤が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンである請求項1?6のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項8】 1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2?2.0モル%の範囲である請求項7に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項9】 粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して0.2モル%以上1.0モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.03?0.5質量部である請求項8に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項10】 粘度平均分子量が17,000以上22,000未満の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物であって、(A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.0モル%以上1.5モル%未満の範囲であり、(D)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して0.01?0.5質量部である請求項8に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項11】 (A-1)成分において、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの使用量が、(A-1)成分の原料である二価フェノール化合物に対して1.5モル%以上であり、(D)成分の含有量が0質量部である請求項7に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項12】 粘度平均分子量が22,000以上である請求項1?8のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項13】 (B)成分がSi系光拡散剤である請求項12に記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物。 【請求項14】 請求項1?13のいずれかに記載の難燃光拡散ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工して得られるポリカーボネート樹脂成形体。 【請求項15】 成形体が、照明器具用カバーである請求項14に記載のポリカーボネート樹脂成形体。 【請求項16】 成形体が、表示器具用拡散カバーである請求項14に記載のポリカーボネート樹脂成形体。 【請求項17】 成形体が、液晶ディスプレー用拡散板である請求項14に記載のポリカーボネート樹脂成形体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-11-11 |
出願番号 | 特願2012-517318(P2012-517318) |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YAA
(C08L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岡▲崎▼ 忠 |
特許庁審判長 |
小柳 健悟 |
特許庁審判官 |
前田 寛之 加藤 友也 |
登録日 | 2015-03-20 |
登録番号 | 特許第5714576号(P5714576) |
権利者 | 出光興産株式会社 |
発明の名称 | ポリカーボネート樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂成形体 |
代理人 | 村上 博司 |
代理人 | 大谷 保 |
代理人 | 松井 光夫 |
代理人 | 大谷 保 |