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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1326331
審判番号 不服2016-6762  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-09 
確定日 2017-04-04 
事件の表示 特願2012-121703「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 9日出願公開、特開2013-247053、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成24年5月29日の出願であって、平成27年12月22日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月8日付け(発送日:同年3月15日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出された後、当審において同年12月16日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.原査定の概要
本願の平成28年2月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1ないし7に記載された発明又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:実用新案登録第2536467号公報
刊行物2:特開2011-181435号公報
刊行物3:特開2008-71677号公報(周知技術を示す刊行物)
刊行物4:特開2004-103449号公報(周知技術を示す刊行物)
刊行物5:特許第3520956号公報(周知技術を示す刊行物)
刊行物6:特許第2995934号公報(周知技術を示す刊行物)
刊行物7:特開2009-181909号公報(周知技術を示す刊行物)

第3.当審の拒絶理由の概要
(理由1)本願の平成28年5月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1及び2に記載された発明又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:実用新案登録第2536467号公報(原査定時の刊行物1)
刊行物2:特開2008-71677号公報(原査定時の刊行物3)

(理由2)本願の平成28年5月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1において、「周縁の丸みを有する角部を形成する外周面に沿って設けられた断面がL字型で嵌合方向に延びるガタツキ防止穴が設けられ、」とあるが、その構成が不明瞭である。
(2)請求項2において、「前記ガタツキ防止穴は、いずれか一方のハウジングの互いに反対側に位置する一対の片部の一方の片部の外周面に沿って設けられ、他方の片部の外周面に前記ガイド溝と前記ガイド筒の一方が形成される」とあるが、その構成が不明瞭である。

(理由3)本願の平成28年5月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項2において、「2つのガイドリブが設けられ、前記嵌合相手のハウジングの外周面に前記ガイドリブがそれぞれ嵌入されるガイド溝とガイド筒の一方が形成され、」、「他方の片部の外周面に前記ガイド溝と前記ガイド筒の一方が形成される」とあるが、当該構成を含む発明は、発明の詳細な説明に記載したものとは認められない。

第4.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成29年2月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下のとおりのものである。下線は、補正箇所として請求人が付与したものである。
「【請求項1】
雌端子がそれぞれ収容される複数の端子収容室が形成された樹脂製の雌端子ハウジングと、前記雌端子に接続される複数の雄端子を保持してなる樹脂製の雄端子ハウジングとを備え、前記雌端子は弾性変形可能な接点部材を内包してなる筒部の一側面に形成された係止穴が前記端子収容室の内壁に弾性部材により形成されたランスに係合され、前記雄端子ハウジングと前記雌端子ハウジングを嵌合させて前記雄端子を前記雌端子の前記接点部材に摺接させて接続する構成のコネクタにおいて、
前記雄端子は、前記雄端子ハウジングに埋め込み支持され、
前記雄端子ハウジングと前記雌端子ハウジングは、嵌合時に第1の嵌合位置と第2の嵌合位置で互いに係合する第1係合部と第2係合部を有して嵌合され、
前記第1の嵌合位置は、前記雌端子の前記係止穴が前記ランスに係合した位置であって、前記雄端子が前記雌端子の接点部材に摺接する位置よりも手前に設定され、
前記第2の嵌合位置は、前記雄端子が前記雌端子の接点部材に摺接する位置に設定されてなり、
前記雌端子ハウジングと前記雄端子ハウジングは嵌合方向に直交する断面が矩形状に形成され、該矩形状の角部は丸みを有して形成され、
いずれか一方のハウジングには、前記角部に沿って断面がL字型で嵌合方向に延びるガタツキ防止穴が設けられ、
他方のハウジングには、前記ガタツキ防止穴に嵌入される断面がL字型のガタツキ防止部材が突出して設けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記雌端子ハウジングと前記雄端子ハウジングの一方は、ハウジングの先端部に嵌合相手に向けて突出する少なくとも2つのガイドリブが設けられ、前記嵌合相手のハウジングに前記ガイドリブがそれぞれ嵌入されるガイド溝又はガイド筒からなるガイドリブ嵌入部が形成され、
前記ガイドリブと該ガイドリブに対応する前記ガイドリブ嵌入部は、前記ガタツキ防止部材と前記ガタツキ防止穴が形成された前記角部が位置する前記雌端子ハウジングと前記雄端子ハウジングの矩形状の辺部を除く他の辺部に設けられることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。」

第5.刊行物の記載について
1.刊行物1(実用新案登録第2536467号公報)
当審の平成28年12月16日付け拒絶理由において引用された刊行物1(原査定時の刊行物1)には、「スイッチコネクタの防水構造」に関し、次の事項が図面(特に、図3ないし図5)と共に記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、車両のバッテリに直結された暗電流用ヒューズ回路を断続するスイッチコネクタにおける防水構造に関するものである。」

(2)「【0004】
【考案が解決しようとする課題】本考案は、上記した点に鑑み、仮係止及び本係止機構を有して離脱時のコネクタの保持を容易に行えるスイッチコネクタにおける適切な防水構造を提供することを目的とする。」

(3)「【0007】
【実施例】図1は、本考案におけるスイッチコネクタを電気接続箱に接続した状態を示す概観図である。この構造は、車両に搭載される電気接続箱1の内部に設けた暗電流用ヒューズ2の差込部(雌端子)3に、雄端子4を有するリード線5を介してスイッチコネクタ6を接続し、電気接続箱1の外壁8のブラケット9に固定させるものであり、該スイッチコネクタ6は、リード線10によって、図示しない時計等の暗電流部品を接続するコネクタ11の端子12に接続される。」

(4)「【0009】図3は、該スイッチコネクタ6を示す外観斜視図、図4は、同じく内部構造を示す本考案のスイッチコネクタの防水構造の第一実施例としての縦断面図である。該スイッチコネクタ6は、雌コネクタ16と、該雌コネクタ16を一定範囲スライド可能に係合させる雄コネクタ17とにより構成される。
【0010】該雌コネクタ16の合成樹脂製ハウジング23の前壁24には、先端に操作用押圧部25、中間部に本係止突起26をそれぞれ有する本嵌合用の可撓ロックアーム27を該ハウジング23の下端方から立ち上げ連成してあり、該雄コネクタ17のハウジング28には、該可撓ロックアーム27に対するガイド壁29を膨出させて設けると共に、該ガイド壁29の中央部に上下の切欠30,31を設けて、該本係止突起26に対する上下受け面32a,32bを有する係合壁部32を形成させている。該本係止突起26は、下向き傾斜面26aと上向き水平係止面26bを有している。
【0011】また、該雌ハウジング23の側壁33及び後壁34には、下向き傾斜面35aと上向き水平面35bを有する仮係止突起35を設けてあり、雄ハウジング28には、該仮係止突起35に対する挿通溝36を設けると共に、該挿通溝36内に、該仮係止突起35に対する上向き傾斜ガイド面37aと下向き水平受け面37bとを有する可撓係合爪37を切欠形成してある。また、該雄ハウジング28の側壁33には、前記電気接続箱1のブラケット9に対する可撓ロック片38を有する嵌合ガイド壁39を一体に形成してある。
【0012】図4に示すように、該雌コネクタ16の内部には、雄コネクタ17の内側に形成された端子収容部40に対するコネクタ嵌合室41を設けてあり、該コネクタ嵌合室41内には、逆U字状に屈曲した(図4において紙面と直交する方向に位置する)短絡用のショート端子19の雄タブ19aを突出させ、該雄コネクタ17の内部には、該雄タブ19aに対する弾性接触片20aを有する雌型接続端子20をそれぞれ収容させ、ハウジング28に一体に形成した係止ランス42により固定させている。両端子19,20は、コネクタ仮嵌合状態において非接触になるように設定されている。該接続端子20は、リード線5を介して前記電気接続箱1(図1)に接続される。」

(5)「【0014】また、該コネクタ嵌合室内壁44の開口端部には、該摺動用シール45に対する挿入用のテーパガイド48を形成してある。該摺動用シール45は、ハウジング仮嵌合(図4の如く仮係止突起35が可撓係合爪37を乗り越え、本係止突起26が係合壁部32の上側受け面32aに若干のガタをもって当接した状態)と同時に、該テーパガイド48からコネクタ嵌合室内壁44に挿着されるように位置設定されている。
【0015】図5は、該スイッチコネクタ6の本嵌合状態を示すものであり、雌コネクタ16を下方に押動させることにより、可撓ロックアーム27が撓み、本係止突起26が前記係合壁部32の下側受け面32bに係合すると共に、ショート端子19の雄タブ19aが接続端子20内に挿入され、同時に防水パッキン46の摺動用シール45が内壁面44を摺接して、コネクタ嵌合室41の基端方内壁面44に密着する。」

(6)(4)より、雌型接続端子20は、端子収容部40において、係止ランス42によって係合されていることから、係止ランス42を係合するための係止穴を有しており、弾性接触片20aを内包する筒部の一側面に形成されていることが分かる。

上記記載事項、上記認定事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「雌型接続端子20がそれぞれ収容される複数の端子収容部40が形成された雄ハウジング28と、前記雌型接続端子20に接続される複数のショート端子19を保持してなる合成樹脂製の雌ハウジング23とを備え、前記雌型接続端子20は弾性接触片20aを内包してなる筒部の一側面に形成された係止穴が前記端子収容部40の内壁に係止ランス42に係合され、前記雌ハウジング23と前記雄ハウジング28を嵌合させて前記ショート端子19を前記雌型接続端子20の前記弾性接触片20aに摺接させて接続する構成のスイッチコネクタにおいて、
前記ショート端子19は、前記雌ハウジング23に支持され、
前記雌ハウジング23と前記雄ハウジング28は、嵌合時に第1の嵌合位置と第2の嵌合位置で互いに係合する仮係止突起35及び可撓係合爪37と本係止突起26及び係合壁部32を有して嵌合され、
前記第1の嵌合位置は、前記雌型接続端子20の係止穴が前記係止ランス42に係合した位置であって、前記ショート端子19が前記雌型接続端子20の弾性接触片20aに摺接する位置よりも手前に設定され、
前記第2の嵌合位置は、前記ショート端子19が前記雌型接続端子20の弾性接触片20aに摺接する位置に設定されてなる
、スイッチコネクタ。」

2.刊行物2(特開2008-71677号公報)
当審の平成28年12月16日付け拒絶理由において引用された刊行物2(原査定時の刊行物3)には、「コネクタ」に関し、次の事項が図面(特に、図7及び図8)と共に記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、過酷な環境下においても電気的導通が可能なコネクタに関するものである。」

(2)「【0008】
本発明の目的は、過酷な環境下においても電気的導通を失わずに簡易かつ容易に接続可能なコネクタを提供することである。」

(3)「【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る電気コネクタ100は、メスハウジング200、掛け止め金具300およびオスハウジング400を含む。
【0017】
図1に示すように、メスハウジング200には、メスハウジング200とオスハウジング400とが嵌合する方向(図中矢印Xの方向)に垂直な方向(図中矢印Zの方向)に平行な案内溝210が設けられている。このメスハウジング200の案内溝210に掛け止め金具300が(図中矢印Z方向から-Z方向へ向かって)圧挿される。
【0018】
図1のメスハウジング200の内部には、一対の第1接続端子201a,201b(図2参照)が設けられている。同じく、オスハウジング400の内部には、一対の第2接続端子401a,401b(図3参照)が設けられている。
【0019】
一方、オスハウジング400の内部に設けられた第2接続端子401a,401bには、電気的配線が接続されている(図3参照)。
【0020】
詳細については後述するが、オスハウジング400にメスハウジング200が嵌挿されて嵌合することにより、第1接続端子201aおよび第2接続端子401aと、第1接続端子201bおよび第2接続端子401bとがそれぞれ接合し、電気的導通が図られる。」

(4)「【0023】
図2に示すメスハウジング200は、後述するオスハウジング400(図3参照)の略四角柱筒形状を外包する略四角柱筒形状を有する。
【0024】
図2(a)に示すように、メスハウジング200の内部には、第1接続端子201a,201bが設けられている。本実施の形態に係る電気コネクタ100の極数は、2極である。そのため、第1接続端子201a,201bが2つ並んで設けられている。
【0025】
図2(a)に示すように、メスハウジング200の内部には、長方形リブ202とT字リブ203とが形成されている。これらの長方形リブ202とT字リブ203とには、それぞれテーパ形状が形成されている。このテーパ形状は、第1接続端子201a,201bおよび後述するオスハウジング400の第2接続端子401a,401bとの嵌挿をスムーズにさせるとともに、嵌合時に長方形リブ202とT字リブ203と、後述するオスハウジング400の長方形溝402およびT字溝403との密着度を向上させるために設けられる。
【0026】
さらに、これらの長方形リブ202とT字リブ203との形状は、オスハウジング400とメスハウジング200との逆嵌合を防止するために設けられている。すなわち、長方形リブ202とT字溝403とは嵌合せず、T字リブ203と長方形溝402とは嵌合しないからである。また、これらの長方形リブ202とT字リブ203との形状は、矢印X方向を軸としたねじれ防止効果も有する。このねじれ防止の詳細については、後述する。」

(5)「【0072】
次に、図7はオスハウジング400の長方形溝402およびT字溝403と、メスハウジング200の長方形リブ202およびT字リブ203との関係を示す模式図である。図7(a)はメスハウジング200の長方形リブ202およびT字リブ203を示し、図7(b)はオスハウジング400の長方形溝402およびT字溝403を示し、図7(c)はメスハウジング200の長方形リブ202およびT字リブ203の他の例を示し、図7(d)はメスハウジング200の長方形リブ202およびT字リブ203のさらに他の例を示す。
【0073】
図7(a),(b)に示すように、T字リブ203およびT字溝402の関係においては、図中矢印RTの方向の誤差を低減することができる。すなわち、T字リブ203の直角方向のリブの働きにより、矢印RTの方向の誤差を低減することが可能となる。
【0074】
また、図7(c)に示すように、T字リブ203の代わりに十字リブ203aを用いてもよく、図7(d)に示すように、T字リブ203の代わりに台形リブ203bを用いてもよい。これらの場合においても、T字リブ203およびT字溝402の関係と同様に、図中矢印RTの方向の誤差を低減することができる。
【0075】
なお、本実施の形態においては、T字リブ203およびT字溝402、十字リブ203aおよび十字溝(図示せず)、台形リブ203bおよび台形溝(図示せず)を例示したが、これに限定されず、他の任意のリブおよび溝形状を用いてもよい。」

(6)「【0076】
次に図8は、メスハウジング200におけるがたつき防止リブ280について説明するための模式的説明図である。図8(a)はメスハウジング200の一部を切り欠いた斜視図であり、図8(b)は図8(a)の断面を模式的に示したものである。
【0077】
まず、図8(a)に示すように、メスハウジング200の内部には、がたつき防止リブ280が設けられている。このがたつき防止リブ280は、過度の振動が付与された場合に、過度にメスハウジング200とオスハウジング400との嵌合が、がたつくのを防止できるように設けられている。
【0078】
すなわち、図8(b)に示すように、メスハウジング200のスリットリブ205a,?,205dおよびスリット250a,?,250iがオスハウジング400の外形を外側から内側に圧力を加えて嵌合を保持するのに対し、がたつき防止リブ280は、過度の振動によるがたつきを防止するためのものである。したがって、メスハウジング200にオスハウジング400を嵌合させた場合にクリアランスが設けられていてもよい。」

3.刊行物3(特開2011-181435号公報)
原査定において刊行物2として引用された刊行物3には、「コネクタ及びコネクタの嵌合方法」に関し、図面と共に以下の記載がある。
(1)「【0001】
本発明は、コネクタ及びコネクタの嵌合方法に関する。」

(2)「【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本発明は、第2端子金具が電線の端末に接続される端子金具からなることにより、両ハウジングのいずれからも電線が導出されるワイヤトゥワイヤタイプのコネクタにも適用可能である。
(2)第2端子金具が、第2ハウジングにインサート成形によって一体に保持されるものであってもよい。」

4.刊行物4(特開2004-103449号公報)
原査定において引用された刊行物4には、「コネクタ」に関し、図面と共に以下の記載がある。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆる慣性ロック機構を備えたコネクタに関する。」

(2)「【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1ないし図6によって説明する。この第1実施形態では、フード部12を有する雄コネクタハウジング10(以下、単に雄ハウジング10という)と、フード部12内に嵌合可能な雌コネクタハウジング20(以下、単に雌ハウジング20という)とからなるコネクタを示す。なお、以下では両ハウジング10,20における嵌合面側を前方として説明する。」

(3)「【0017】
雌ハウジング20の上面における両側端位置(ロックアーム22の両側方位置)には、図2及び図3に示すように、一対の規制部25が上方へ突出して設けられている。規制部25は、正面から見て上端部がロックアーム22側に張り出した略L字型をなしており、雌ハウジング20の全長にわたってレール状に延出して形成されている。規制部25のうち側方への張り出し部分が被規制部16の係止部17を受ける受け部26となっている。受け部26は、略ブロック状をなすとともに、その高さ寸法が規制部25の半分程度の大きさとなっている。この受け部26は、両ハウジング10,20が嵌合されるのに伴って、フード部12の上部と係止部17との間に進入可能とされており、その下面26aが係止部17の上面17aに係止されるようになっている。この受け部26の下面26aは、係止部17の上面17aに適合するような真直面となっている。なお両規制部25は、ロックアーム22の両側方位置に配されているから、ロックアーム22に対して外部の異物などが突き当たるのを防ぐロックアーム22の保護機能を併せ持っている。
【0018】
本実施形態は以上のような構造であり、続いてその作用について説明する。雄雌のハウジング10,20内にそれぞれ雄雌の端子金具を収容した後に、両ハウジング10,20の嵌合作業を行う。このとき、雄ハウジング10に対して雌ハウジング20を正規の姿勢とは上下反転した不正な姿勢で嵌合しようとした場合には、両被規制部16が雌ハウジング20の前端面に突き当たることで嵌合動作が規制されるので、誤嵌合を防ぐことができるようになっている。
【0019】
正規の姿勢とした雌ハウジング20を雄ハウジング10のフード部12内に嵌合すると、図4に示すように、規制部25が被規制部16とフード部12の側部との間に進入するとともに、受け部26がフード部12の上部と係止部17との間に進入していく。そして、両ハウジング10,20が所定深さまで嵌合されると、図5に示すように、ロック突部24が突き当て部15に突き当たる。これにより、基準値を上回る嵌合力を付与しない限りはそれ以上の嵌合動作が規制されることになる。なお、この段階では未だ両端子金具の接続が開始されておらず、互いに非接触となっている。」

5.刊行物5(特許第3520956号公報)
原査定において引用された刊行物5には、「コネクタ」に関し、図面と共に以下の記載がある。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誤嵌合防止を図ったコネクタに関する。」

(2)「【0008】
【発明の実施の形態】
<実施形態1>以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図5を参照して説明する。本実施形態のコネクタは、雄側コネクタハウジング10と雌側コネクタハウジング20とからなる。雄側コネクタハウジング10は、複数の雄端子金具12を収容したハウジング本体11と、このハウジング本体11から前方へ突出する角筒形のフード部13とからなる。フード部13内には雄端子金具12の先端のタブ12Aが互いに平行に、且つ両コネクタハウジング10,20の嵌合方向に沿って突出されているとともに、ハウジング本体11に支持したボルト14がこれらのタブ12Aと平行に突出されている。フード部13内には、可動位置決め部材15が設けられている。この可動位置決め部材15は嵌合方向と直交する板状をなし、中央にはボルト14を貫通させるためのボルト貫通孔16が形成されているとともに、タブ12Aと対応する配置で複数の位置決め孔17が形成されている。各位置決め孔17には、夫々、対応するタブ12Aが嵌通されている。かかる可動位置決め部材15の周縁には、フード部13の内周と摺接する筒形のガイド壁18が前方へ突出して形成され、このガイド壁18により、可動位置決め部材15が図4に示す進出位置と図5に示す後退位置との間での移動を可能とされている。進出位置では位置決め孔17がタブ12Aの先端に嵌合するようになり、後退位置では可動位置決め部材15がフード部13の奥端面に当接して位置決め孔17がタブ12Aの基端部に嵌合する状態となる。また、両コネクタハウジング10,20の嵌合前の状態では、可動位置決め部材15は図示しない仮係止手段により進出位置に保持されており、ある程度の強い力で押されることにより仮係止が解除され、可動位置決め部材15の後退位置側への移動が可能となる。
【0009】かかる可動位置決め部材15には、雌側コネクタハウジング20の雌側分割コネクタハウジング23が誤嵌合することを防止するための一対の凸部(本発明の構成要件である整合手段)19が形成されている。この凸部19は、嵌合方向に沿って前方へ突出し、可動位置決め部材15が進出位置にある状態では凸部19の先端面がフード部13の先端面とほぼ面一となるように突出寸法が設定されている。かかる凸部19は、その上半部分19Aが上下方向の直線状をなすとともに下半部分19Bが斜めに傾いた直線状をなす。かかる一対の凸部19は正面から視て左右対称な形状及び配置とされている。
【0010】一方、雌側コネクタハウジング20は、ボルト孔22を有するハウジング本体21と、このハウジング本体21にボルト孔22を挟むように取り付けた左右2個の雌側分割コネクタハウジング23とからなり、各雌側分割コネクタハウジング23には、夫々、上記タブ12Aと対向する配置で複数の雌端子金具24が収容されている。雌側分割コネクタハウジング23はフード部13内に嵌合されるようになっており、フード部13に雌側分割コネクタハウジング23が嵌合されると、その前端面が可動位置決め部材15に当接してこの可動位置決め部材15を奥側へ一体に移動させ、正規嵌合状態になると可動位置決め部材15がフード部13の奥端面に突き当てられるようになる。この嵌合が行われる間、タブ12Aが雌側分割コネクタハウジング23内に進入して雌端子金具24と嵌合されるようになる。
【0011】かかる雌側分割コネクタハウジング23には、上記可動位置決め部材15の凸部19と対応する形状及び配置の凹部(本発明の構成要件である整合手段)25が形成されている。即ち、雌側分割コネクタハウジング23をフード部13に嵌合しようとしたときに、雄側コネクタハウジング10との組み合わせが適正で且つフード部13に対する配置が正しい場合にのみ凸部19と凹部25が嵌合され、凸部19と凹部25が嵌合することにより雌側分割コネクタハウジング23がフード部13に進入できるようになっている。これに対し、不適正な組み合わせの雌側分割コネクタハウジング23が嵌合されようとした場合や、組み合わせが適正であっても配置が不適正である場合には、凸部19の先端面と雌側分割コネクタハウジング23の先端面とが突き当たって凸部19と凹部25が嵌合できず、したがって、雌側分割コネクタハウジング23がフード部13内に進入できないようになっている。」

(3)「【0013】これに対し、雄側コネクタハウジング10に対する雌側分割コネクタハウジング23の組み合わせが不適正である場合、または、組み合わせは適正であっても雌側分割コネクタハウジング23の取り付けが左右逆であったり上下逆の場合には、嵌合操作を完遂することはできない。即ち、このように雌側分割コネクタハウジング23が不適正な場合にはその凹部25が可動位置決め部材15の凸部19と整合していないため、雌側分割コネクタハウジング23をフード部13内に嵌合しようとしても、嵌め込まれる前に雌側分割コネクタハウジング23の先端面が凸部19の突出端面に突き当ってしまい、雌側分割コネクタハウジング23をフード部13に嵌め込むことはできない。」

(4)「【0017】(2)上記実施形態では各雌側コネクタハウジング毎にリブの形状が相違するようにしたが、本発明によれば、各雌側コネクタハウジングの嵌合位置が決められていて、雌側コネクタハウジングが嵌合面に沿って移動できないようにしてある場合には、リブの形状と寸法を同一とし、嵌合位置の中でのリブの配置が各雌側コネクタハウジング毎に相違するようにしてもよい。」

6.刊行物6(特許第2995934号公報)
原査定において引用された刊行物6には、「接続コネクタ」に関し、図面と共に以下の記載がある。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、種々の電気配線の接続に使用される接続コネクタに関する。」

(2)「【0009】接続コネクタは、主コネクタ1と相手側コネクタ2とから成る。主コネクタ1は、一体形に樹脂で成形したケーシング3に2極ずつの端子の2つのグループから成る接続端子4を備え、各端子の他端はケーシング3内に突入している。図5に示すように、ケーシング3内には各グループ毎に断面がT字状の空洞部(キャビティ)5が設けられ、その中に上記接続端子4がそれぞれ突入している。さらに、空洞部5内には接続端子4に隣接して並列にリブ6が設けられている。リブ6はケーシング3と同じ樹脂で一体に成形されている。このリブ6の位置で断面した状態を図6に示す。又、図1に示すように、ケーシング3の上面には各グループ毎に切欠き7が設けられ、その一端には抜止め8が形成されている。」

(3)「【0012】上記のように構成したコネクタは、図2に示すように、主コネクタ1に相手側コネクタを嵌合すると、接続端子4と9の接合によって各極毎の電気的な接続が行なわれる。そして、相手側コネクタ2が主コネクタ1の対応する適正な空洞部5内に挿入される限り、上記電気的な接続も適正な接続が得られる。もし、相手側コネクタ2が本来の位置でなく異なる位置の空洞部5に挿入されたとき、例えば図5において左側の空洞部5に挿入すべき相手側コネクタ2を誤って右側の空洞部5に挿入しようとすると、その相手側コネクタ2内の左側の接続端子9が右側空洞部5内のリブ6に当り挿入することができない。従って、このコネクタでは各個々の相手側コネクタ2を誤挿入することが防止される。なお、上記実施例では2極ずつ2グループから成る接続端子4を有する形を説明したが、3極ずつ3グループなど多極の例にも同様にこの発明を適用できることは当業者であれば自明であろう。」

7.刊行物7(特開2009-181909号公報)
原査定において引用された刊行物7には、「コネクタ装置、およびコネクタシステム」に関し、図面と共に以下の記載がある。
(1)「【0001】
本発明は、コネクタ装置、およびコネクタシステムに関するものである。」

(2)「【0031】
図4は、本発明の第一の実施形態に係るコネクタ装置100を組み合わせた状態の斜視図、図5(b)は、本発明の第一の実施形態に係るコネクタ装置100の備えるラック側接続部材30と、筐体側接続部材40と、を組み合わせた状態の側面図である。
【0032】
図4、図5(b)に示すように、ラック側接続部材30と、筐体側接続部材40とは、コネクタ34と、44とが対向する向きで組み合わせることが可能である。
【0033】
具体的には、ラック側接続部材30と、筐体側接続部材40と、の接続状態においては、コネクタ34と、コネクタ44と、が嵌合し、筐体側接続部材40のスペーサ41は、係止爪31aと、31bと、の間に入り込んで、先端面41aが主板39の上部39aに接触する。また、スペーサ42の先端面41bは、主板39の下部39bに接触し、その際、係止爪31aの底面部先端312aと、係止爪31bの底面部先端312bは、切り欠き部上面410aと、410bと、の上方にそれぞれ位置する。また、ハウジング35と、ハウジング45と、の間には、所定の間隔c1が形成される。
【0034】
以上のような構成により、コネクタ装置100は、係止爪31a、31bと、スペーサ41、42が、相互の位置関係から、対となる接続部材が選択的に結合することによって、対応する組み合わせのコネクタを接続でき、誤挿入を防止することができる。
【0035】
また、係止爪31a、31bによって、主板49の上方向への動きと、左右方向への動きが制限されることにより、本実施形態のように収納室2の後部が固定されていない場合でも、浮き上がりや横ずれを防止することができる。さらに、ハウジング35と、ハウジング45と、の合計よりも大きな長さを有するスペーサ41と、42とが主板39に接触することで、ハウジングどうしの接触を防止すると共に、接続部材間の間隔c2を規制し、コネクタどうしの過剰な押圧を避け、破損を防ぐことが可能である。」

(3)「【0038】
図6は、本発明の第一の実施形態に係るコネクタ装置200の斜視図である。
【0039】
コネクタ装置200は、ラック側接続部材50と、コネクタ54と、筐体側接続部材60と、コネクタ64と、を有する。
【0040】
ラック側接続部材50は、主板59の上部中央左寄りに係止爪51、右寄りに係止爪52を有する。また、筐体側接続部材60は、主板69の背面に向かって、上部左端のスペーサ61、中央のスペーサ62、右端のスペーサ63、の3つのスペーサを備えている。これらの構造については、係止爪31a、31bと、スペーサ41、42と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0041】
ラック側接続部材50と、筐体側接続部材60とは、具体的には、ラック側接続部材50と、筐体側接続部材60とは、コネクタ54と、64とが対向する向きで組み合わせることが可能である。
【0042】
具体的には、ラック側接続部材50と、筐体側接続部材60と、の接続状態において、コネクタ54と、コネクタ64と、は勘合している。また、筐体側接続部材60のスペーサ61は、側面61bが、係止爪51の側面511bと隣接し、主板59の上部左端59aに、先端面61aが接触する。スペーサ62は、側面62bが係止爪52の側面511aと、側面62cが係止爪521aと隣接して、先端面62aが主板59の上部中央59bと接触するまで、係止爪51と52との間に入り込む。スペーサ63は、側面63bが、係止爪52の側面521bと隣接し、主板59の上部右端59cに、先端面63aが接触する。さらに、スペーサ66の先端面66aは、主板59の下部59dに接触し、その際、係止爪51の底面部先端512aと、係止爪52の底面部先端512bは、切り欠き部上面610aと、610bと、の上方にそれぞれ位置する。また、ハウジング55と、ハウジング65と、の間には、所定の間隔c1が形成される。」

第6.当審の判断
1.29条2項について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア.引用発明における「雌型接続端子20」、「ショート端子19」は、その機能及び構造からみて、それぞれ本願発明1における「雌端子」、「雄端子」に相当し、以下同様に、前者における「端子収容部40」、「雄ハウジング28」、「雌ハウジング23」、「弾性接触片20a」、「係止ランス42」、及び「スイッチコネクタ」は、それぞれ後者における「端子収容室」、「雌端子ハウジング」、「雄端子ハウジング」、「接点部材」、「ランス」、及び「コネクタ」に相当する。
イ.引用発明の「弾性接触片20a」は、その機能及び構造からみて、弾性変形可能であると認められる。
ウ.引用発明における「雌ハウジング23」は、合成樹脂製であり、図3及び図4の記載から見て、「ショート端子19」は、「雌ハウジング23」に「埋め込み支持」されているものと認められる。
エ.引用発明は、仮係止突起35と可撓係合爪37とが係合する仮嵌合状態(刊行物1の図4参照)と、本係止突起26と係合壁部32とが係合する本嵌合状態(刊行物1の図5参照)となるものであるから、引用発明の「仮係止突起35及び可撓係合爪37」は、本願発明の「第1の係合部」に、同様に、「本係止突起26及び係合壁部32」は「第2の係合部」に相当する。オ.引用発明の「第1の嵌合位置」、「第2の嵌合位置」は、それぞれ本願発明1の「第1の嵌合位置」、「第2の嵌合位置」に相当する。
カ.引用発明の「雄ハウジング28」と「雌ハウジング23」とは、嵌合方向に直交する断面が矩形状であることは、図3からみて、明らかである。

以上によれば、本願発明1と引用発明とは、次の一致点・相違点を有するものと認められる。
[一致点]
「雌端子がそれぞれ収容される複数の端子収容室が形成された雌端子ハウジングと、前記雌端子に接続される複数の雄端子を保持してなる樹脂製の雄端子ハウジングとを備え、前記雌端子は弾性変形可能な接点部材を内包してなる筒部の一側面に形成された係止穴が前記端子収容室の内壁に弾性部材により形成されたランスに係合され、前記雄端子ハウジングと前記雌端子ハウジングを嵌合させて前記雄端子を前記雌端子の前記接点部材に摺接させて接続する構成のコネクタにおいて、
前記雄端子は、前記雄端子ハウジングに埋め込み支持され、
前記雄端子ハウジングと前記雌端子ハウジングは、嵌合時に第1の嵌合位置と第2の嵌合位置で互いに係合する第1係合部と第2係合部を有して嵌合され、
前記第1の嵌合位置は、前記雌端子の前記係止穴が前記ランスに係合した位置であって、前記雄端子が前記雌端子の接点部材に摺接する位置よりも手前に設定され、
前記第2の嵌合位置は、前記雄端子が前記雌端子の接点部材に摺接する位置に設定されてなり、
前記雌端子ハウジングと前記雄端子ハウジングは嵌合方向に直交する断面が矩形状に形成され、
るコネクタ」
[相違点]
本願発明1では、雌端子ハウジングが「樹脂製」であり、雌端子ハウジング及び雄端子ハウジングの「該矩形状の角部は丸みを有して形成され、いずれか一方のハウジングには、前記角部に沿って断面がL字型で嵌合方向に延びるガタツキ防止穴が設けられ、他方のハウジングには、前記ガタツキ防止穴に嵌入される断面がL字型のガタツキ防止部材が突出して設けられている」のに対して、引用発明では、かかる構成を有していない点。

(2)判断
相違点に係る本願発明1の構成に関して、本願明細書には、「本発明の第2の態様によれば、ガタツキ防止穴とガタツキ防止部材の断面形状をL字型に形成したことから、嵌合方向に対する直交2軸方向のガタツキを効果的に抑えることができる。また、ガタツキ防止部材の直交2軸方向の変形を抑制することができる。」(段落【0014】)、「第2の特徴部によれば、ガタツキ防止穴25とガタツキ防止部材26の断面形状をL字型に形成したことから、嵌合方向に対する直交2軸方向(図示、X、Y方向)のガタツキを効果的に抑えることができる。また、ガタツキ防止部材26は、X、Y方向に一定の長さを有し、それらの方向の断面係数が大きいから、直交2軸方向の変形を抑制することができる。また、耐震性が向上する。さらに、両ハウジングの嵌合時の姿勢を適正に保つガイド機能を持たせることができる。」(段落【0029】)と記載されている。
この記載によれば、本願発明1は、雌端子ハウジング及び雄端子ハウジングの矩形状の角部を丸みを有して形成し、いずれか一方のハウジングに、前記角部に沿って断面がL字型で嵌合方向に延びるガタツキ防止穴、他方のハウジングに、前記ガタツキ防止穴に嵌入される断面がL字型のガタツキ防止部材が突出して設けたことにより、嵌合方向に対する直交2軸方向(X、Y方向)のガタツキを効果的に抑えることができ、また、ガタツキ防止部材26は、X、Y方向に一定の長さを有し、それらの方向の断面係数が大きいから、直交2軸方向の変形を抑制することができ、耐震性が向上し、両ハウジングの嵌合時の姿勢を適正に保つガイド機能を持たせることができるようにしたものであると認められる。
これに対して、引用発明は、ハウジングの嵌合時のガタツキを防止する手段が設けられておらず、刊行物1には、他にガタツキを防止する手段についての記載は見当たらない。
一方、第5.2.(6)によれば、刊行物2(原査定時の刊行物3)に記載された事項におけるメスハウジング200に設けたがたつき防止リブ280は、コネクタに過度の振動が付与された場合に、メスハウジング200とオスハウジング400との嵌合ががたつくのを防止するものであり、また、刊行物2の図8(a)、(b)に記載されるように、断面矩形のメスハウジング200の長辺と短辺のそれぞれに、メスハウジング200の嵌合方向に延出するように設けられているから、当該リブ280が、上下左右方向のがたつきを防止することは明らかではあるものの、これに留まる。また、第5.2.(4)及び(5)によれば、刊行物2(原査定時の刊行物3)に記載された事項において、オスハウジング400の長方形溝402及びT字溝403、メスハウジング200の長方形リブ202及びT字リブ203は、前記溝とリブとが嵌合することにより、メスハウジング200及びオスハウジング400の嵌合方向を軸として回転する方向(ねじれ方向)の振動を抑制するものであり、その機能及び作用からみて、結果的に、コネクタの上下左右方向の振動も防止して、ガタツキを防止することも可能であると認められるが、これに留まる。
すなわち、刊行物2(原査定時の刊行物3)に記載された事項は、そもそもがたつき防止リブ280が嵌入されるがたつき防止穴を有するものではなく、矩形状の断面のハウジングの丸みを有する角部に沿って、断面がL字型で嵌合方向に延びるガタツキ防止穴及びガタツキ防止部材を形成した構成を示唆するものではない。また、長方形溝402及びT字溝403、長方形リブ202及びT字リブ203も、結果としてガタツキを防止する効果を奏する可能性はあると認められるものの、矩形状の断面のハウジングの丸みを有する角部に沿って、断面がL字型で嵌合方向に延びるガタツキ防止穴及びガタツキ防止部材を形成した構成を示唆するものではない。
また、相違点に係る本願発明1の構成が、周知の技術であるとも設計事項であるとも認められない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び刊行物2(原査定時の刊行物3)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

本願発明2は、本願発明1を引用するものであり、本願発明1が引用発明及び刊行物2(原査定時の刊行物3)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、同様に、本願発明2も引用発明及び刊行物2(原査定時の刊行物3)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.36条6項2号について
平成29年2月16日付け手続補正書による補正により、特許請求の範囲の請求項1及び2は、第4.のとおりに補正され、請求項1において、ハウジングの形状、ハウジングとガタツキ防止穴及びガタツキ防止部材との位置関係は明瞭になり、請求項2において、ガタツキ防止穴とガイドリブ及びガイド溝又はガイド筒の位置関係は明瞭になり、当該拒絶理由は解消した。

3.36条6項1号について
平成29年2月16日付け手続補正書による補正により、特許請求の範囲の請求項2は、第4.のとおりに補正され、請求項2において、ガイドリブ及びガイド溝又はガイド筒からなるガイドリブ嵌入部が特定され、請求項2の記載は発明の詳細な説明の段落【0032】ないし段落【0034】の記載と整合するものとなった。
したがって、請求項2に記載された発明は、発明の詳細な説明の記載により充分裏付けられているものと認められ、当該拒絶理由は解消した。

第7.原査定についての判断
平成29年2月16日付け手続補正書による補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「前記雌端子ハウジングと前記雄端子ハウジングは嵌合方向に直交する断面が矩形状に形成され、該矩形状の角部は丸みを有して形成され、いずれか一方のハウジングには、前記角部に沿って断面がL字型で嵌合方向に延びるガタツキ防止穴が設けられ、他方のハウジングには、前記ガタツキ防止穴に嵌入される断面がL字型のガタツキ防止部材が突出して設けられている」構成を含むものとなった。

第6.1.の通り、本願発明1は、引用発明及び刊行物2(原査定時の刊行物3)に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、第5.4.(2)及び(3)によれば、刊行物4に記載された事項における係止部17及び受け部26は、ハウジングの誤嵌合を防止するためのものであり、第5.5.(2)及び(3)によれば、刊行物5に記載された事項における凸部19及び凹部25も、ハウジングの誤嵌合を防止するためのものにすぎない。第5.6.(2)及び(3)によれば、刊行物6に記載された事項におけるリブ6は、コネクタの誤挿入を防止するためのものであり、第5.7.(2)及び(3)によれば、刊行物7に記載された事項における係止爪31a、31b(係止爪51、52)は、コネクタの誤挿入を防止するためのものにすぎない。
さらに、刊行物3(原査定時の刊行物2)には、相違点に係る本願発明1の構成の開示はない。
以上であるから、刊行物3ないし7には、矩形状の断面のハウジングの丸みを有する角部に沿って、断面がL字型で嵌合方向に延びるガタツキ防止穴及びガタツキ防止部材を形成した構成は記載されておらず、その示唆もない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び刊行物2(原査定時の刊行物3)ないし刊行物7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本願発明2は、本願発明1を引用するものであり、本願発明1が引用発明及び刊行物2(原査定時の刊行物3)ないし刊行物7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、同様に、本願発明2も引用発明及び刊行物2(原査定時の刊行物3)ないし刊行物7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第8.むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-21 
出願番号 特願2012-121703(P2012-121703)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01R)
P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
阿部 利英
発明の名称 コネクタ  
代理人 吉岡 宏嗣  

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