• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C03C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 全部申し立て 特29条の2  C03C
管理番号 1327849
異議申立番号 異議2015-700073  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-10-08 
確定日 2017-03-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5698641号発明「光学ガラス及び光学素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5698641号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 特許第5698641号の請求項1-12、14に係る特許を維持する。 特許第5698641号の請求項13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5698641号は、平成21年4月30日に出願された特願2009-111301号の一部を、平成23年10月14日に新たな特許出願とした特願2011-227403号について、平成27年2月20に設定登録がされ、その後、その請求項1-14に係る特許に対し、特許異議申立人 古川 京子により特許異議の申立てがなされ、平成28年1月29日付けで本件特許の請求項1-14に係る特許に対する取消理由が通知され、平成28年4月1日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がなされ、平成28年7月20日付けで特許異議申立人より意見書の提出がなされ、平成28年9月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成28年12月5日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がなされ、平成29年2月8日付けで特許異議申立人より意見書の提出がなされ、平成29年2月16日付けで取消理由が通知され、平成29年2月27日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がなされたものである。

第2.訂正の請求
1.訂正の内容
平成29年2月27日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項1-23よりなる。

(ア)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「P_(2)O_(5)成分を5.0%以上40.0%以下」とあるのを、「P_(2)O_(5)成分を10.0%以上33.0%以下」に訂正する。

(イ)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「Nb_(2)O_(5)成分を10.0%以上60.0%以下」とあるのを、「Nb_(2)O_(5)成分を30.0%以上57.0%以下」に訂正する。

(ウ)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1について、K_(2)O成分の含有量をさらに特定し、その含有量について「K_(2)O成分を0.1%以上8.0%以下」に訂正する。

(エ)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1について、CaO成分の含有量をさらに特定し、その含有量について「CaO成分の含有量が3.86%以下」に訂正する。

(オ)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「BaO成分の含有量が10.0%未満」とあるのを、「BaO成分の含有量が4.5%以下」に訂正する。

(カ)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1について、SiO_(2)成分の含有量をさらに特定し、その含有量について「SiO_(2)成分の含有量が2.0%以下」に訂正する。

(キ)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1について、ZrO_(2)成分の含有量をさらに特定し、その含有量について「ZrO_(2)成分の含有量が10.0%以下」に訂正する。

(ク)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1について、TiO_(2)成分の含有量をさらに特定し、その含有量について「TiO_(2)成分の含有量が25.0%以下」に訂正する。

(ケ)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項1について、WO_(3)成分の含有量をさらに特定し、その含有量について「WO_(3)成分の含有量が10.0%以下」に訂正する。

(コ)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項1について、La_(2)O_(3)成分の含有量をさらに特定し、その含有量について「La_(2)O_(3)成分を含まず」に訂正する。

(サ)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項1について、粉末法による化学的耐久性(耐酸性)をさらに特定し、その数値範囲について「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1」に訂正する。

(シ)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項1に「500℃以上1200℃以下の液相温度」とあるのを、「500℃以上1116℃以下の液相温度」に訂正する。

(ス)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項2に「TiO_(2)成分 0?30.0%」とあるのを、「TiO_(2)成分 0?12.0%以下」に訂正する。

(セ)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項2に「SiO_(2)成分 0?10.0%」とある記載を削除する。

(ソ)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項3に「TiO_(2)成分の含有量が12.0%以下」とあるのを、「TiO_(2)成分の含有量が11.0%以下」に訂正する。

(タ)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項4に「SiO_(2)成分の含有量が2.0%以下」とあるのを、「SiO_(2)成分の含有量が1.5%以下」に訂正する。

(チ)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項5に「K_(2)O成分 0?8.0%」とある記載を削除する。

(ツ)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項6に「K_(2)O成分の含有量が0.1%以上である」とあるとあるのを、「K_(2)O成分の含有量が0.15%以上である」に訂正する。

(テ)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項7に「CaO成分 0?10.0%」とある記載を削除する。

(ト)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項9に「La_(2)O_(3)成分 0?10.0%」とある記載を削除する。

(ナ)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項9に「WO_(3)成分 0?20.0%」とある記載を削除する。

(ニ)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項13を削除する。

(ヌ)訂正事項23
特許請求の範囲の請求項14に「請求項1から13のいずれか記載の光学ガラス」とあるのを、「請求項1から12のいずれか記載の光学ガラス」に訂正する。

2.訂正の適否
(ア)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1において、光学ガラスに含まれる「P_(2)O_(5)成分」の数値範囲を、訂正前の「5.0%以上40.0%以下」から「10.0%以上33.0%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項1において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0030】の「酸化物換算組成のガラス全質量に対するP_(2)O_(5)成分の含有率は、・・・最も好ましくは10.0%を下限とし、・・・最も好ましくは33.0%を上限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(イ)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1において、光学ガラスに含まれる「Nb_(2)O_(5)成分」の数値範囲を、訂正前の「10.0%以上60.0%以下」から「30.0%以上57.0%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項2において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0031】の「酸化物換算組成のガラス全質量に対するNb_(2)O_(5)成分の含有率は、・・・最も好ましくは30.0%を下限とし、・・・最も好ましくは57.0%を上限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(ウ)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1において、訂正前に特定されていないK_(2)O成分の含有量を「K_(2)O成分を0.1%以上8.0%以下含有し」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項3において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0037】の「酸化物換算組成のガラス全質量に対するK_(2)O成分の含有率は、・・・より好ましくは8.0%、最も好ましくは6.0%を上限とする。・・・好ましくは0.1%、より好ましくは0.15%、最も好ましくは0.2%を下限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(エ)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項1において、訂正前に特定されていないCaO成分の含有量を「CaO成分の含有量が3.86%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項4において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0040】の「従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するCaO成分の含有率は・・・最も好ましくは6.0%を上限とする。」との記載と、段落【0074】【表1】の実施例6におけるCaO成分含有量についての「3.86(%)」の値に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(オ)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項1において、光学ガラスに含まれる「BaO成分」の数値範囲を、訂正前の「10.0%未満」から「4.5%未満」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項5において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0033】の「ここで、特に分散の大きい(アッベ数の小さい)ガラスが得られる点では、酸化物換算組成のガラス全質量に対するBaO成分の含有率は・・・最も好ましくは4.5%を上限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(カ)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項1において、訂正前に特定されていないSiO_(2)成分の含有量を「SiO_(2)成分の含有量が2.0%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項6において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0034】の「ここで、特に分散の大きい(アッベ数の小さい)ガラスが得られ易くなる点では、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSiO_(2)成分の含有率は、好ましくは2.0%・・・を上限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(キ)訂正事項7について
訂正事項7は、請求項1において、訂正前に特定されていないZrO_(2)成分の含有量を「ZrO_(2)成分の含有量が10.0%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項7において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0050】の「従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するZrO_(2)成分の含有率は、好ましくは10.0%・・・を上限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(ク)訂正事項8について
訂正事項8は、請求項1において、訂正前に特定されていないTiO_(2)成分の含有量を「TiO_(2)成分の含有量が25.0%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項8において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0032】の「従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTiO_(2)成分の含有率は、・・・最も好ましくは25.0%を上限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(ケ)訂正事項9について
訂正事項9は、請求項1において、訂正前に特定されていないWO_(3)成分の含有量を「WO_(3)成分の含有量が10.0%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項9において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0054】の「従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するWO_(3)成分の含有率は、・・・最も好ましくは10.0%を上限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(コ)訂正事項10について
訂正事項10は、請求項1において、訂正前に特定されていないLa_(2)O_(3)成分の含有量を「La_(2)O_(3)成分を含まず」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項10において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0044】の「従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLa_(2)O_(3)成分の含有率は・・・最も好ましくは5.0%を上限とする。」との記載と、段落【0074】【表1】の実施例1-7における光学ガラスがLa_(2)O_(3)成分を含有しない点に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(サ)訂正事項11について
訂正事項11は、請求項1において、訂正前に特定されていない粉末法による化学的耐久性(耐酸性)を「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項11において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0066】の「特に、JOGIS06-1999に準じたガラスの粉末法による化学的耐久性(耐酸性)は・・・最も好ましくはクラス1?3である。」との記載と、段落【0074】【表1】の実施例1-7における光学ガラスの化学的耐久性(耐酸性)についての「1(級)」の値に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(シ)訂正事項12について
訂正事項12は、請求項1において、光学ガラスの液相温度の数値範囲を、訂正前の「500℃以上1200℃以下」から「500℃以上1116%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項12において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0074】【表1】の実施例1の液相温度である「1116(℃)」の値に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(ス)訂正事項13について
訂正事項13は、請求項2において、光学ガラスに含まれる「TiO_(2)成分」の数値範囲を、訂正前の「0?30.0%」から「0?12.0%」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項13は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項13において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0032】の「ここで、高い屈折率及び分散を得つつ、ガラスの可視光に対する透明性が特に高められる点では、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTiO_(2)成分の含有率は、好ましくは12.0%・・・を上限とし」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(セ)訂正事項14について
訂正事項14は、請求項2において訂正前に特定されていた「SiO_(2)成分」の含有量についての特定「SiO_(2)成分 0?10.0%」を削除するものである。
この訂正は、訂正事項6で、請求項1が「SiO_(2)成分の含有量が2.0%以下」と訂正されたことに伴い、請求項1の従属請求項である請求項2において、訂正前に「SiO_(2)成分 0?10.0%」と特定されていることにより、「SiO_(2)成分」が「2.0%以下」であるか、「0?10.0%」であるかが不明瞭となることを解消するためになされたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正事項14は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ソ)訂正事項15について
訂正事項15は、請求項3において、光学ガラスに含まれる「TiO_(2)成分」の数値範囲を、訂正前の「12.0%以下」から「11.0%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項15は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項15において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0032】の「ここで、高い屈折率及び分散を得つつ、ガラスの可視光に対する透明性が特に高められる点では、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTiO_(2)成分の含有率は・・・より好ましくは11.0%を上限とし」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(タ)訂正事項16について
訂正事項16は、請求項4において、光学ガラスに含まれる「SiO_(2)成分」の数値範囲を、訂正前の「2.0%以下」から「1.5%以下」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項16は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項16において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0034】の「ここで、特に分散の大きい(アッベ数の小さい)ガラスが得られ易くなる点では、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSiO_(2)成分の含有率は・・・より好ましくは1.5%・・・を上限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(チ)訂正事項17について
訂正事項17は、請求項5において訂正前に特定されていた「K_(2)O成分」の含有量についての特定「K_(2)O成分 0?8.0%」を削除するものである。
この訂正は、訂正事項3で、請求項1が「K_(2)O成分を0.1%以上8.0%以下含有し」と訂正されたことに伴い、請求項1の従属請求項である請求項5において、訂正前に「K_(2)O成分 0?8.0%」と特定されていることにより、「K_(2)O成分」が「0.1%以上8.0%以下」であるか、「0?8.0%」であるかが不明瞭となることを解消するためになされたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正事項17は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ツ)訂正事項18について
訂正事項18は、請求項6において、光学ガラスに含まれる「K_(2)O成分」の数値範囲を、訂正前の「0.1%以上」から「0.15%以上」に限定するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正事項18は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、当該訂正事項18において限定した事項は、本件特許明細書の段落【0037】の「従って、この場合における酸化物換算組成のガラス全物質量に対するK_(2)O成分の含有率は・・・より好ましくは0.15%・・・を下限とする。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(テ)訂正事項19について
訂正事項19は、請求項7において訂正前に特定されていた「CaO成分」の含有量についての特定「CaO成分 0?10.0%」を削除するものである。
この訂正は、訂正事項4で、請求項1が「CaO成分の含有量が3.86%以下」と訂正されたことに伴い、請求項1の従属請求項である請求項7において、訂正前に「CaO成分 0?10.0%」と特定されていることにより、「CaO成分」が「3.86%以下」であるか、「0?10.0%」であるかが不明瞭となることを解消するためになされたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正事項19は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ト)訂正事項20について
訂正事項20は、請求項9において訂正前に特定されていた「La_(2)O_(3)成分」の含有量についての特定「La_(2)O_(3)成分 0?10.0%」を削除するものである。
この訂正は、訂正事項10で、請求項1が「La_(2)O_(3)成分を含まず」と訂正されたことに伴い、請求項1の従属請求項である請求項9において、訂正前に「La_(2)O_(3)成分 0?10.0%」と特定されていることにより、「La_(2)O_(3)成分」の含有量として0%のみ取り得るのか、「0?10.0%」であるかが不明瞭となることを解消するためになされたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正事項20は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ナ)訂正事項21について
訂正事項21は、請求項11において訂正前に特定されていた「WO_(3)成分」の含有量についての特定「WO_(3)成分 0?20.0%」を削除するものである。
この訂正は、訂正事項9で、請求項1が「WO_(3)成分の含有量が10.0%以下」と訂正されたことに伴い、請求項1の従属請求項である請求項11において、訂正前に「WO_(3)成分 0?20.0%」と特定されていることにより、「WO_(3)成分」が「10.0%以下」であるか、「0?20.0%」であるかが不明瞭となることを解消するためになされたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正事項21は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ニ)訂正事項22について
訂正事項22は、特許請求の範囲の請求項13を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正事項22は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(ヌ)訂正事項23について
訂正事項23は、訂正前に請求項13を引用していた請求項14において、当該請求項13の引用を削除するものだから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正事項23は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

3.一群の請求項について
訂正前の請求項2-14は、訂正前の請求項1を引用する請求項であるから、請求項1-14は一群の請求項であるところ、上記の訂正は、一群の請求項ごとに適法に請求されたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項又は第6項に適合するので、請求項1-14からなる一群の請求項について訂正を認める。

第3.本件発明
上記「第2.」のとおり、本件訂正請求による訂正が認められるから、本件特許の請求項1-12、14に係る発明(以下、請求項の項番にしたがって、「本件発明1」などといい、全体をまとめて「本件発明」という。)は、平成29年2月27日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1-12、14に記載された事項により特定される、以下のものである。

「【請求項1】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でP_(2)O_(5)成分を10.0%以上33.0%以下、Nb_(2)O_(5)成分を30.0%以上57.0%以下、K_(2)O成分を0.1%以上8.0%以下含有し、CaO成分の含有量が3.86%以下、BaO成分の含有量が4.5%以下、SiO_(2)成分の含有量が2.0%以下、ZrO_(2)成分の含有量が10.0%以下、TiO_(2)成分の含有量が25.0%以下、B_(2)O_(3)成分の含有量が2.40%以下、Bi_(2)O_(3)成分の含有量が5.0%未満、WO_(3)成分の含有量が10.0%以下、Sb_(2)O_(3)成分の含有量が0.10%以下であり、La_(2)O_(3)成分を含まず、質量和Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)Oが9.95%以下であり、分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が500nm以下であり、粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1であり、500℃以上1116℃以下の液相温度を有する光学ガラス。
【請求項2】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
TiO_(2)成分 0?12.0%
をさらに含有する請求項1記載の光学ガラス。
【請求項3】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でTiO_(2)成分の含有量が11.0%以下である請求項2記載の光学ガラス。
【請求項4】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でSiO_(2)成分の含有量が1.5%以下である請求項2又は3記載の光学ガラス。
【請求項5】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Li_(2)O成分 0?8.0%及び
Na_(2)O成分 0?8.70%
の各成分をさらに含有する請求項1から4のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項6】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でK_(2)O成分の含有量が0.15%以上である請求項5記載の光学ガラス。
【請求項7】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
MgO成分 0?5.0%及び
SrO成分 0?10.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から6のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項8】
酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和MgO+CaO+SrO+BaOが20.0%以下である請求項7記載の光学ガラス。
【請求項9】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Y_(2)O_(3)成分 0?10.0%及び
Gd_(2)O_(3)成分 0?10.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から8のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項10】
酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和Y_(2)O_(3)+La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)が20.0%以下である請求項9記載の光学ガラス。
【請求項11】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
GeO_(2)成分 0?10.0%、
ZrO_(2)成分 0?10.0%、
ZnO成分 0?10.0%、
Al_(2)O_(3)成分 0?10.0%及び
Ta_(2)O_(5)成分 0?10.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から10のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項12】
1.70以上2.20以下の屈折率(nd)を有し、10以上25以下のアッベ数(νd)を有する請求項1から11のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項13】(削除)
【請求項14】
請求項1から12のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。」

第4.取消理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記甲第1-10号証(以下、「甲1」、「甲2」等という。)を提出し、本件訂正前の請求項1-4に係る特許は、特許法第113条第2号又は第4号に該当し、取り消すべきものである旨、主張している。
これに対し、当審にて本件訂正前の請求項1-14に係る特許に対して平成28年9月29付け取消理由通知(決定の予告)にて、特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

1)本件訂正前の本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2)本件訂正前の請求項1-14に係る発明は、特許異議申立人より証拠として提出され、本件特許の出願前に発行された甲9(引用例2)に記載された発明及び、当審が採用した参考文献11(引用例3)に記載された技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



甲1:国際公開第02/02470号
甲2:特開2004-250295号公報
甲3:特開2005-247659号公報
甲4:特開2008-303112号公報
甲5:特開2008-44837号公報
甲6:特開2003-321245号公報
甲7:特開2004-292301号公報
甲8:特開2006-131480号公報
甲9:特開平6-345481号公報(引用例2)
甲10:特願2007-267627号(特開2009-96649号)
参考文献11:山根正之他編,「ガラス工学ハンドブック」,初版第4刷,株式会社朝倉書店,2007年3月30日,44頁、538-539頁(引用例3)

第5.取消理由についての判断
1.取消理由1)について
発明の詳細な説明の段落【0008】の記載によれば、本件発明の課題は、屈折率(nd)が所望の範囲内にありながらも低いアッベ数(νd)を有し、可視光に対する透明性が高く、且つガラスの作製時及び加工時に失透や曇りが生じ難く、研磨加工によるプリフォーム材や光学素子の作製を行い易い光学ガラス、及び光学素子を提供することにある。
また、請求項1及び段落【0030】、【0031】の記載によれば、本件発明における光学ガラスの組成のうち、必須成分は「P_(2)O_(5)成分」及び「Nb_(2)O_(5)成分」であり、段落【0026】の記載によれば、本件発明は、必須成分であるP_(2)O_(5)成分及びNb_(2)O_(5)成分の含有量を「所定量」のものとすることにより、高屈折率化と高分散性が得られるとともに、可視光に対する透明性、耐失透性及び耐酸性を高めているものであるといえる。
ここで、「P_(2)O_(5)成分」の含有量における「所定量」の具体的な範囲として、請求項1には、「10.0%以上33.0%以下」と記載されており、段落【0030】には、「P_(2)O_(5)成分」が、「ガラスの可視域における透過率」を高める成分であるとともに、「10.0%以上」「33.0%以下」という数値範囲が、「ガラスの可視域における透過率」を高め、「高い屈折率」を得るための、「最も好ましい」含有量であることが記載されている。
また、「ガラスの可視域における透過率」の具体的な指標については、請求項1にて、「分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))」が「500nm以下」であることが記載されている。
「Nb_(2)O_(5)成分」の含有量については、請求項1には、「30.0%以上57.0%以下」と記載されており、段落【0031】の記載によれば、「Nb_(2)O_(5)成分」が、「所望の高屈折率及び高分散」を得るための成分であるとともに、「30.0%以上」「57.0%以下」という数値範囲が、「所望の高屈折率及び高分散」を得ることができ、「ガラスの液相温度の上昇を抑えて耐失透性を高める」ための、「最も好ましい」含有量が、「30.0%以上」「57.0%以下」であることが記載されている。
そこで、「P_(2)O_(5)成分」及び「Nb_(2)O_(5)成分」の含有量につき、請求項1に記載された数値範囲を採用することにより、本件発明の課題が解決できるかについて検討する。

発明の詳細な説明の実施例においては、段落【0074】【表1】にて、「P_(2)O_(5)成分」が「23.70%」から「26.20%」の含有量にて、「高い屈折率」を有し、「分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))」が「500nm以下」である光学ガラスが得られることが記載されているが、請求項1に記載された範囲における下限値である「10.0%」近傍において、同様の特性を示す光学ガラスが得られている実施例は存在しない。
同様に、「Nb_(2)O_(5)成分」についても、同【表1】には、「49.02%」から「53.80%」の含有量にて、「所望の高屈折率及び高分散」を有する光学ガラスが得られることが記載され、請求項1に記載された範囲における下限値である「30.0%」の近傍では、同様の特性を示す光学ガラスが得られている実施例は存在しない。

これに対し、発明の詳細な説明の段落【0030】、【0034】、【0050】、【0055】の記載によれば、「P_(2)O_(5)成分」と同様に「可視域における透過率を高める」効果を有し、「P_(2)O_(5)成分」の「代替成分」と解される成分は「SiO_(2)成分」、「ZrO_(2)成分」、「Sb_(2)O_(3)成分」であるが、請求項1に係る発明では、これら「P_(2)O_(5)成分」の「代替成分」の含有量が特定されているから、「P_(2)O_(5)成分」の下限値である「10.0%」近傍においても、「P_(2)O_(5)成分」及び前記代替成分の含有量を、各成分の寄与する効果や影響力を考慮して含有させれば、「可視域における透過率を高める」ことができないとはいえない。

「Nb_(2)O_(5)成分」についても、発明の詳細な説明の段落【0031】、【0032】、【0049】、【0054】の記載によれば、「Nb_(2)O_(5)成分」と同様に「ガラスの屈折率及び分散を高める」効果を有し、「Nb_(2)O_(5)成分」の「代替成分」と解される成分である「TiO_(2)成分」、「Bi_(2)O_(3)成分」、「WO_(3)成分」について、本件発明1にて、これらの成分の含有量が特定されているから、「Nb_(2)O_(5)成分」の下限値である「30.0%」近傍において、「所望の高屈折率及び高分散」を有する光学ガラスを得ることができないとはいえない。

したがって、本件発明1では、必須成分である「P_(2)O_(5)成分」に加え、代替成分である「SiO_(2)成分」、「ZrO_(2)成分」、「Sb_(2)O_(3)成分」の含有量が特定されており、「Nb_(2)O_(5)成分」についても、代替成分である「TiO_(2)成分」、「Bi_(2)O_(3)成分」、「WO_(3)成分」の含有量が特定されているから、「P_(2)O_(5)成分」及び「Nb_(2)O_(5)成分」の含有量のすべての数値範囲において、発明の詳細な説明の記載及び当業者の技術常識に照らし、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
また、本件発明1を引用し、本件発明1をさらに限定する本件発明2-12、14についても、同様の理由により、発明の詳細な説明の記載及び当業者の技術常識に照らし、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

以上のとおり、本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2-14の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているといえるから、本件特許は取り消すべきものでない。

2.取消理由2)について
(1)引用例の記載事項
平成28年1月29日付け取消理由通知の引用例2(特開平6-345481号公報(甲第9号証))には、「光学ガラスの製造方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】 ガラス成分としてAs_(2)O_(5)を含まないP_(2)O_(5)-TiO_(2)系光学ガラスを製造する方法において、該P_(2)O_(5)-TiO_(2)系ガラスを溶融し、冷却後、〔ガラスの転移点-100℃〕の温度以上に再昇温して熱処理をすることを特徴とする光学ガラスの製造方法。
【請求項2】 重量百分率で、P_(2)O_(5) 5?60%、TiO_(2) 5?25%、B_(2)O_(3) 0?20%、SiO_(2) 0?30%、Nb_(2)O_(5) 0?60%、Ta_(2)O_(5) 0?20%、WO_(3) 0?10%、Bi_(2)O_(3) 0?10%、ZrO_(2) 0?5%、Al_(2)O_(3) 0?5%、MgO+CaO+SrO+BaO 0?20%、La_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3) 0?20%、ZnO 0?20%、Li_(2)O 0?8%、Na_(2)O+K_(2)O 0?35%、ただし、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O 0?35%、Sb_(2)O_(3) 0.1%以下および上記各金属元素の1種または2種以上の酸化物の一部または全部と置換した弗化物の弗素(F)として合計0?8%含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の光学ガラスの製造方法。」
(イ)「【0006】上記のP_(2)O_(5)-TiO_(2)系ガラスの組成は特に限定されるものでないが、ガラスの光線透過性、耐失透性および化学的耐久性から、その組成範囲は、重量百分率で、P_(2)O_(5) 5?60%、TiO_(2) 5?25%、B_(2)O_(3) 0?20%、SiO_(2) 0?30%、Nb_(2)O_(5) 0?60%、Ta_(2)O_(5) 0?20%、WO_(3) 0?10%、Bi_(2)O_(3) 0?10%、ZrO_(2) 0?5%、Al_(2)O_(3) 0?5%、MgO+CaO+SrO+BaO 0?20%、La_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3) 0?20%、ZnO 0?20%、Li_(2)O 0?8%、Na_(2)O+K_(2)O 0?35%、ただし、Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O 2?35%、Sb_(2)O_(3) 0.1%以下および上記各金属元素の1種または2種以上の酸化物の一部または全部と置換した弗化物の弗素(F)として合計0?8%含有するガラスが好ましい。」
(ウ)「【0009】つぎに、本発明の実施例をガラス組成、ガラスの屈折率(Nd)、アッベ数(νd)、熱処理温度およびその保持時間、熱処理前後の70%分光透過率を与える波長(T_(70)(nm))および従来の光学ガラスの比較組成例(No.AおよびNo.B)と共に表1に示す。・・・」
(エ)「【0010】【表1】



(2)引用発明の認定
記載事項(ア)(エ)によれば、引用例2の実施例12には、重量%でP_(2)O_(5)成分を22.5%、Nb_(2)O_(5)成分を47.95%含有し、B_(2)O_(3)成分の含有量が1%、TiO_(2)成分の含有量が13.5%、SiO_(2)成分の含有量が0.5%、Sb_(2)O_(3)成分の含有量が0.01%、Li_(2)O成分の含有量が0.5%、Na_(2)O成分の含有量が4%、BaO成分の含有量が5%、La_(2)O_(3)成分の含有量が5%のガラス成分を含み、屈折率(Nd)が1.9604、アッベ数(νd)が17.9であり、熱処理後のT_(70)が432nmである光学ガラスが記載されている。
また、記載事項(ア)(エ)によれば、引用例2の実施例15には、重量%でP_(2)O_(5)成分を27.5%、Nb_(2)O_(5)成分を49.99%含有し、B_(2)O_(3)成分の含有量が0.5%、TiO_(2)成分の含有量が7.5%、SiO_(2)成分の含有量が2.2%、Sb_(2)O_(3)成分の含有量が0.01%、Na_(2)O成分の含有量が7.5%、CaO成分の含有量が4.8%のガラス成分を含み、屈折率(Nd)が1.8703、アッベ数(νd)が21.0であり、熱処理後のT_(70)が412nmである光学ガラスが記載されている。
ここで記載事項(ウ)によれば、引用例2におけるT_(70)は、「70%分光透過率を与える波長(T_(70)(nm))」であるから、引用例2の実施例12には、
「重量%でP_(2)O_(5)成分を22.5%、Nb_(2)O_(5)成分を47.95%含有し、B_(2)O_(3)成分の含有量が1%、TiO_(2)成分の含有量が13.5%、SiO_(2)成分の含有量が0.5%、Sb_(2)O_(3)成分の含有量が0.01%、Li_(2)O成分の含有量が0.5%、Na_(2)O成分の含有量が4%、BaO成分の含有量が5%、La_(2)O_(3)成分の含有量が5%のガラス成分を含み、CaO成分、ZrO_(2)成分を含まず、屈折率(Nd)が1.9604、アッベ数(νd)が17.9であり、熱処理後の70%分光透過率を与える波長(T_(70)(nm))が432nmである光学ガラス。」が記載されている(以下「引用発明2」という)。
また、引用例2の実施例15には、
「重量%でP_(2)O_(5)成分を27.5%、Nb_(2)O_(5)成分を49.99%含有し、B_(2)O_(3)成分の含有量が0.5%、TiO_(2)成分の含有量が7.5%、SiO_(2)成分の含有量が2.2%、Sb_(2)O_(3)成分の含有量が0.01%、Na_(2)O成分の含有量が7.5%、CaO成分の含有量が4.8%のガラス成分を含み、ZrO_(2)成分、La_(2)O_(3)成分を含まず、屈折率(Nd)が1.8703、アッベ数(νd)が21.0であり、熱処理後の70%分光透過率を与える波長(T_(70)(nm))が412nmである光学ガラス。」が記載されている(以下「引用発明2B」という)。

(3)本件発明1と引用発明2との対比、判断
本件発明1は、「第3.本件発明」の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの発明である。
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「熱処理後の70%分光透過率を与える波長(T_(70)(nm))」は、本件発明1の「分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))」に相当する。
引用発明2の「重量%」で表される「ガラス成分」は、本件発明1の「酸化物換算組成のガラス全質量」に対する「質量%」で表される「成分」に相当し、引用発明2における各「ガラス成分」である「P_(2)O_(5)」、「Nb_(2)O_(5)」、「CaO」、「SiO_(2)」、「ZrO_(2)」、「TiO_(2)」、「B_(2)O_(3)」、「Bi_(2)O_(3)」、「Sb_(2)O_(3)」、「WO_(3)」の含有量は、本件発明1における対応する各成分の含有量の範囲を満たしている。
引用発明2の「Li_(2)O」、「Na_(2)O」、「K_(2)O」成分の「合計」は、本件発明1の「質量和Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O」に相当し、その値は「4.5%」であって、「9.95%以下」という本件発明1の条件を満たす。
したがって、本件発明1と引用発明2とは、
「酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でP_(2)O_(5)成分を10.0%以上33.0%以下、Nb_(2)O_(5)成分を30.0%以上57.0%以下含有し、CaO成分の含有量が3.86%以下、SiO_(2)成分の含有量が2.0%以下、ZrO_(2)成分の含有量が10.0%以下、TiO_(2)成分の含有量が25.0%以下、B_(2)O_(3)成分の含有量が2.40%以下、Bi_(2)O_(3)成分の含有量が5.0%未満、WO_(3)成分の含有量が10.0%以下、Sb_(2)O_(3)成分の含有量が0.10%以下であり、質量和Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)Oが9.95%以下であり、分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が500nm以下である光学ガラス。」である点で一致し、下記(相違点1)-(相違点5)で相違する。

(相違点1)
本件発明1の光学ガラスは、K_(2)O成分を0.1%以上8.0%以下含有しているのに対し、引用発明2の光学ガラスは、K_(2)O成分を含有していない点。

(相違点2)
本件発明1の光学ガラスは、BaO成分の含有量が4.5%以下であるのに対し、引用発明2の光学ガラスは、BaO成分の含有量が5%である点。

(相違点3)
本件発明1の光学ガラスは、La_(2)O_(3)成分を含まないのに対し、引用発明2の光学ガラスは、La_(2)O_(3)成分を5%含有している点。

(相違点4)
本件発明1では、粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1であるのに対し、引用発明2では、粉末法による化学的耐久性(耐酸性)が不明である点。

(相違点5)
本件発明1では、液相温度が500℃以上1116℃以下であるのに対し、引用発明2では、液相温度が不明である点。

事案に鑑み、最初に(相違点4)について検討する。
本件特許明細書の段落【0032】、【0033】、【0040】、【0041】、【0043】-【0045】の記載によれば、引用発明2の光学ガラスに含まれる成分のうち、「化学的耐久性」に影響のある成分は、「化学的耐久性」を向上させる成分である「TiO_(2)」、「La_(2)O_(3)」と、「化学的耐久性」を低下させる成分である「BaO」といえるが、これらの各成分の含有量は、本件特許明細書の段落【0074】【表1】に記載された、本件発明1の実施例の各成分の含有量と異なっている。
そうすると、「ガラスの光学的性質以外の性質は、組成が一定であれば製造条件によって大きく変化するものでない」という、引用例3の第539頁右欄9.4 「規格」の第8-11行等に記載された技術常識を参酌しても、本件発明1の実施例とは組成が異なる以上、引用発明2の光学ガラスが、「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1」であるとはいえない。
また、引用例2の記載事項(イ)には、引用発明2の光学ガラスの組成が、「光線透過性」、「耐失透性」および「化学的耐久性」を考慮して決定されることが記載されているが、「化学的耐久性」の程度についての記載はなく、「化学的耐久性」に影響のある成分の明示もなく、「化学的耐久性」をどのように制御するかについての示唆もないから、引用発明2の光学ガラスを、「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)」が「クラス1」の光学ガラスとするための組成の制御方法は、引用例2の記載や技術常識から、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(4)本件発明1と引用発明2Bとの対比、判断
本件発明1と引用発明2Bとを対比する。
引用発明2Bの「熱処理後の70%分光透過率を与える波長(T_(70)(nm))」は、本件発明1の「分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))」に相当する。
引用発明2Bの「重量%」で表される「ガラス成分」は、本件発明1の「酸化物換算組成のガラス全質量」に対する「質量%」で表される「成分」に相当し、引用発明2Bにおける各「ガラス成分」である「P_(2)O_(5)」、「Nb_(2)O_(5)」、「BaO」、「ZrO_(2)」、「TiO_(2)」、「B_(2)O_(3)」、「Bi_(2)O_(3)」、「Sb_(2)O_(3)」、「WO_(3)」の含有量は、本件発明1における対応する各成分の含有量の範囲を満たしている。
引用発明2Bの「Li_(2)O」、「Na_(2)O」、「K_(2)O」成分の「合計」は、本件発明1の「質量和Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)O」に相当し、その値は「7.5%」であって、「9.95%以下」という本件発明1の条件を満たす。
したがって、本件発明1と引用発明2Bとは、
「酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でP_(2)O_(5)成分を10.0%以上33.0%以下、Nb_(2)O_(5)成分を30.0%以上57.0%以下含有し、BaO成分の含有量が4.5%以下、ZrO_(2)成分の含有量が10.0%以下、TiO_(2)成分の含有量が25.0%以下、B_(2)O_(3)成分の含有量が2.40%以下、Bi_(2)O_(3)成分の含有量が5.0%未満、WO_(3)成分の含有量が10.0%以下、Sb_(2)O_(3)成分の含有量が0.10%以下であり、La_(2)O_(3)成分を含まず、質量和Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)Oが9.95%以下であり、分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が500nm以下である光学ガラス。」である点で一致し、下記(相違点1)-(相違点5)で相違する。

(相違点1)
本件発明1の光学ガラスは、K_(2)O成分を0.1%以上8.0%以下含有しているのに対し、引用発明2Bの光学ガラスは、K_(2)O成分を含有していない点。

(相違点2)
本件発明1の光学ガラスは、CaO成分の含有量が3.86%以下であるのに対し、引用発明2Bの光学ガラスは、CaO成分の含有量が4.8%である点。

(相違点3)
本件発明1の光学ガラスは、SiO_(2)成分の含有量が2.0%以下であるのに対し、引用発明2Bの光学ガラスは、SiO_(2)成分の含有量が2.2%である点。

(相違点4)
本件発明1では、粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1であるのに対し、引用発明2Bでは、粉末法による化学的耐久性(耐酸性)が不明である点。

(相違点5)
本件発明1では、液相温度が500℃以上1116℃以下であるのに対し、引用発明2Bでは、液相温度が不明である点。

事案に鑑み、最初に(相違点4)について検討する。
「化学的耐久性」に影響のある成分の含有量につき、「第5.2.(3)」で行ったのと同様に比較すると、引用発明2Bの光学ガラスに含まれる当該成分の含有量は、本件発明1の実施例の各成分の含有量とは異なっているから、引用発明2Bの光学ガラスは、「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1」であるとはいえない。
また、「第5.2.(3)」で検討したように、引用発明2Bの光学ガラスを、「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)」が「クラス1」の光学ガラスとするための組成の制御方法は、引用例2の記載や技術常識から、当業者が容易に想到し得たものであるともいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(5)本件発明1についての小括
上記のとおり、本件発明1は、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでない。

(6)本件発明2-12、14について
本件発明2-12、14は、本件発明1を引用し、本件発明1をさらに限定する発明であるから、(3)、(4)で検討したとおり、引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、その特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでない。

(7)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は平成29年2月8日付け意見書にて、引用発明2、2Bの「光学ガラス」の組成は、本件発明1と実質的に相違しないから、化学的耐久性(耐酸性)についても、実質的に相違しない旨、主張している。
しかしながら、本件特許明細書の段落【0033】、【0040】の記載によれば、「BaO成分」、「CaO成分」は、化学的耐久性を低下させる成分であるから、当該「BaO成分」又は「CaO成分」を、本件発明1で特定される範囲より多く含む引用発明2の光学ガラスが、「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)」が「クラス1」を満たすとまではいえない。
よって、当該主張は採用できない。

第6.取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、「第5」で検討した取消理由1)、2)に加え、下記申立理由により、本件特許の請求項1-12、14に係る特許は、特許法第113条第2号及び第4号に該当し、取り消すべきものである旨、主張しているので、以下検討する。

3)本件訂正前の請求項1-14に係る発明は、本件特許の出願前に発行された甲1-甲8のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、若しくは、甲1-甲8のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
4)本件訂正前の請求項1-11、13、14に係る発明は、本件特許の原出願の出願前である平成19年10月15日に出願され、その後出願公開された甲10に係る特許出願(特願2007-267627号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と実質的に同一であるから、その特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであって、取り消すべきものである。
5)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号及び第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

1.申立理由3)について
(1)甲1の記載事項
甲1(国際公開第02/02470号、発明の名称「光学ガラス及びそれを用いた光学製品」)の第5頁第19行-第6頁第10行には、甲1に記載された光学ガラスの目的とする特性につき、
「 本発明は、このような事情のもとで、PbOを含まず、かつ高屈折率、高分散および低いガラス転移温度を有し、640℃以下の低温にて精密プレス成形が可能で、精密プレス成形後に研削または研磨を必要としない超精密非球面レンズなどを作製するための精密プレス成形用光学ガラス、並びにそれを用いたガラスプリフォームおよび光学製品を提供することを目的とするものである。
さらに、本発明は、精密プレス成形品の量産化に適用可能な高屈折率及び高分散特性、主として屈折率ndが1.7?2.0、アッベ数νdが20?32の範囲の光学恒数を有する光学ガラス、並びにこの光学ガラスからなる光学部品及び精密プレス成形素材を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記光学ガラスからなる精密プレス成形素材の製造方法及び精密プレス成形品の製造方法を提供することを目的とする。」と記載されている。
また、甲1の第44頁表4 実施例22には、前記目的を達成するための光学ガラスの例示として、
「(モル%)P_(2)O_(5) 24、B_(2)O_(3) 3.5、WO_(3) 11、Li_(2)O 12、Na_(2)O 9、K_(2)O 2、Nb_(2)O_(5) 18.5、TiO_(2) 5、CaO 0、SrO 0、BaO 8、BaF_(2) 0、ZnO 7、Al_(2)O_(3) 0 Y_(2)O_(3) 0、液相温度918℃、屈折率 1.83771、アッベ数23.26」の光学ガラスが記載されており、この光学ガラスの各成分を質量%に換算すると、甲1には、
「P_(2)O_(5) 23.64、B_(2)O_(3) 1.69、WO_(3) 17.70、Li_(2)O 2.48、Na_(2)O 3.87、K_(2)O 1.31、Nb_(2)O_(5) 34.1、TiO_(2) 2.77、CaO 0、SrO 0、BaO 8.49、 BaF_(2) 0、ZnO 3.95、Al_(2)O_(3) 0 Y_(2)O_(3) 0、液相温度918℃、屈折率 1.83771、アッベ数23.26の光学ガラス。」が記載されている。

(2)甲2の記載事項
甲2(特開2004-250295号公報、発明の名称「光学素子成形用ガラス素材、光学素子の製造方法および光学素子」)の段落【0005】には、甲2に記載された光学ガラスの目的とする特性につき、
「本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、WO_(3)を含むガラス素材を加圧成形する際に、光学素子表面に線状痕を発生させないか、あるいは線状痕の発生を大幅に抑制させた光学素子成形用ガラス素材を提供するととともに、かかる光学素子成形用ガラス素材を用いた光学素子の製造方法、および光学素子を提供することを目的とする。」と記載されている。
また、甲2の段落【0052】【表1】の「組成3」には、前記目的を達成するための光学ガラスの例示として、
「(モル%)WO_(3) 12、Nb_(2)O_(5) 18、TiO_(2) 5、P_(2)O_(5) 24、B_(2)O_(3) 3、Al_(2)O_(3) 0、Li_(2)O 16、Na_(2)O 10、K_(2)O 2、BaO 5、ZnO 5、Sb_(2)O_(3) 200ppmwt、屈折率 1.84151、アッベ数23.3」の光学ガラスが記載されており、この光学ガラスの各成分を質量%に換算すると、甲2には、
「WO_(3) 19.83、Nb_(2)O_(5) 34.07、TiO_(2) 2.85、P_(2)O_(5) 24.27、B_(2)O_(3) 1.49、Al_(2)O_(3) 0、Li_(2)O 3.4、Na_(2)O 4.42、K_(2)O 1.34、BaO 5.45、ZnO 2.9、Sb_(2)O_(3) 200ppmwt、屈折率 1.84151、アッベ数23.3の光学ガラス。」が記載されている。

(3)甲3の記載事項
甲3(特開2005-247659号公報、発明の名称「精密プレス成形用プリフォームの製造方法および光学素子の製造方法」)の段落【0010】には、甲3に記載された光学ガラスの目的とする特性につき、
「本発明は、このような事情のもとで、P_(2)O_(5)-Nb_(2)O_(5)-Li_(2)O系ガラスからなる高品質な精密プレス成形用プリフォームを高い生産性のもとに製造するための方法、および前記プリフォームを使用して高品質なガラス製の光学素子を製造する方法を提供することを目的とするものである。」と記載されている。
また、甲3の段落【0063】【表1】の「実験No.4」には、前記目的を達成するための光学ガラスの例示として、
「(モル%)P_(2)O_(5) 24、B_(2)O_(3) 3、SiO_(2) 0、Li_(2)O 16、Na_(2)O 10、K_(2)O 2、BaO 5、ZnO 5、SrO 0、CaO 0、Al_(2)O_(3) 0、Y_(2)O_(3) 0、Bi_(2)O_(3) 0、TiO_(2) 5、Nb_(2)O_(5) 18、WO_(3) 12、nd 1.84151、νd 23.25」の光学ガラスが記載されており、この光学ガラスの各成分を質量%に換算すると、甲3には、
「P_(2)O_(5) 24.27、B_(2)O_(3) 1.49、SiO_(2) 0、Li_(2)O 3.4、Na_(2)O 4.42、K_(2)O 1.34、BaO 5.45、ZnO 2.9、SrO 0、CaO 0、Al_(2)O_(3) 0、Y_(2)O_(3) 0、Bi_(2)O_(3) 0、TiO_(2) 2.85、Nb_(2)O_(5) 34.07、WO_(3) 19.83、nd 1.84151、νd 23.25の光学ガラス。」が記載されている。

(4)甲4の記載事項
甲4(特開2008-303112号公報、発明の名称「光学ガラス及びこれから作製される光学素子」)の段落【0007】には、甲4に記載された光学ガラスの目的とする特性につき、
「・・・その目的とするところは、鉛や砒素などの化合物を実質的に含有することなく、屈折率(nd)が1.80?1.85の範囲、アッベ数(νd)が20?28.5の範囲、ガラス転移温度(T_(g))が520℃以下、液相温度(T_(L))が700℃以下である、生産性の高い光学ガラスを提供することにある。」と記載されている。
また、甲4の段落【0038】【表1】の「実施例3」には、前記目的を達成するための光学ガラスの例示として、重量%で、
「P_(2)O_(5) 25.8、B_(2)O_(3) 2、Li_(2)O 3.3、Na_(2)O 5.5、K_(2)O 1、CaO 2、BaO 9.5、SrO 0、TiO_(2) 6.4、Bi_(2)O_(3) 2.9、Nb_(2)O_(5) 24、WO_(3) 17.6、Sb_(2)O_(3) 0、GeO_(2) 0、ZnO 0、屈折率 1.814、アッベ数 24.8、液相温度670℃の光学ガラス。」が記載されている。

(5)甲5の記載事項
甲5(特開2008-44837号公報、発明の名称「硬質フリント及びランタン硬質フリント位置の無鉛光学ガラス」)の段落【0015】には、甲5に記載された光学ガラスの目的とする特性につき、
「従って、本発明の目的は上記従来技術の上記問題を回避し、所望の光学特性を得るのを容易にする光学ガラスを提供することにある。これ等ガラスは好ましくは、精密プレス法で加工可能であり、遷移温度が低くあるべきである。更に、溶融可能、加工可能であり、且つ二次成形工程及び/又は連続生産工場での製造において結晶化安定性が十分であるべきである。更に、粘性範囲107.6?1013dPasにおいてできるだけ「ショート」なガラスが望ましい。」と記載されている。
また、甲5の段落【0079】【表2(3)】の「実施例11」には、前記目的を達成するための光学ガラスの例示として、重量%で、
「P_(2)O_(5) 27、Nb_(2)O_(5) 40、Bi_(2)O_(3) 4、GeO_(2) 4、Li_(2)O 0、Na_(2)O 0.5、K_(2)O 0.5、Cs_(2)O 4、MgO 0、CaO 0、SrO 0、BaO 7、ZnO 0、TiO_(2) 0、ZrO 0、WO_(3) 13、Sb_(2)O_(3) 0、n_(d) 1.8448、ν_(d) 23.2の光学ガラス。」が記載されている。

(6)甲6の記載事項
甲6(特開2003-321245号公報、発明の名称「プレス成形用光学ガラス」)の段落【0005】には、甲6に記載された光学ガラスの目的とする特性につき、
「本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、人体への悪影響が懸念されるPb化合物及びAs化合物を用いることなく高屈折率・高分散の光学恒数を達成し、耐着色度に優れ、しかもTg及びAtが低くモールド成形に適した光学ガラスを提供することにある。」と記載されている。
また、甲6の段落【0021】【表1】の「実施例2」には、前記目的を達成するための光学ガラスの例示として、重量%で、
「P_(2)O_(5) 24,B_(2)O_(3) 1、Nb_(2)O_(5) 35.5、WO_(3) 21、Bi_(2)O_(3) 0.5、ZnO 2、Li_(2)O 4、Na_(2)O 4、K_(2)O 1、CaO 0、SrO 5、BaO 2、屈折率 1.8355、アッベ数 23.8、着色度(透過率70%を示す波長)(λ_(70%)) 412nm、Tg 480℃の光学ガラス。」が記載されている。

(7)甲7の記載事項
甲7(特開2004-292301号公報、発明の名称「光学ガラス」)の段落【0016】には、甲7に記載された光学ガラスの目的とする特性につき、
「本発明の目的は、前記従来の技術にみられる諸欠点を総合的に改善し、屈折率(nd)が1.78?1.90未満、アッベ数(νd)が18?27の範囲の光学定数を有する高屈折率、高分散ガラスにおいて、SiO_(2)-PbO系の光学ガラスの色バランスを保ちつつ、短波長領域の光線透過率が優れたガラス、すなわち、ISO色特性指数のG,R値が小さく、内部品質および耐失透性が優れた高屈折率高分散性の光学ガラスを提供することにある。」と記載されている。
また、甲7の段落【0061】【表1】の「実施例4」には、前記目的を達成するための光学ガラスの例示として、重量百分率(重量%)で、
「SiO_(2) 0.5、B_(2)O_(3) 0.5、Al_(2)O_(3) 0、P_(2)O_(5) 25、Gd_(2)O_(3) 2.13、ZrO_(2) 0、Nb_(2)O_(5) 54.47、Ta_(2)O_(5) 0、ZnO 0、MgO 0、CaO 0、SrO 0、BaO 9.79、Li_(2)O 0、Na_(2)O 7.61、K_(2)O 0.5、Sb_(2)O_(3) 0、NaF 0,Bi_(2)O_(3) 0、WO_(3) 0、TiO_(2) 0、Lu_(2)O_(3) 0、ZnO 0、nd 1.8664、νd 23.2の光学ガラス。」が記載されている。

(8)甲8の記載事項
甲8(特開2006-131480号公報、発明の名称「光学ガラス及び光学素子」)の段落【0008】、【0009】には、甲8に記載された光学ガラスの目的とする特性につき、
「本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは高屈折率・高分散であって、鉛化合物を実質的に含有させることなくTgが低く、線熱膨張係数が小さいモールドプレス成形に適した光学ガラスを提供することにある。」、「また本発明の他の目的は、高屈折率・高分散であって、鉛化合物を実質的に含有せず、耐候性に優れ、線熱膨張係数の小さい、生産性の高い光学素子を提供することにある。」と記載されている。
また、甲8の段落【0039】【表1】の「実施例7」には、前記目的を達成するための光学ガラスの例示として、wt%(重量%)で、
「P_(2)O_(5) 25.5、B_(2)O_(3) 2、Nb_(2)O_(5) 31.5、WO_(3) 16、Bi_(2)O_(3) 3、BaO 10、Li_(2)O 4、Na_(2)O 2、K_(2)O 0、Al_(2)O_(3) 0、CaO 0、SrO 0、ZnO 0、TiO_(2) 2、SiO_(2) 0、Sb_(2)O_(3) 0.03、nd 1.8357、νd 24.65の光学ガラス。」が記載されている。

(9)本件発明1と、甲1-甲8の記載事項との対比、判断
甲1-甲8に例示された光学ガラスにおける、「化学的耐久性」に影響のある成分の含有量について、「第5.2.(3)」で行ったのと同様に比較すると、甲1-甲8に記載された光学ガラスに含まれる当該成分の含有量は、本件発明1の実施例の各成分の含有量とは異なっている。
また、目的とする光学ガラスの特性についての記載からみて、甲1-甲8の光学ガラスが、「化学的耐久性」の向上を目的としたものであるともいえないから、甲1-甲8に、光学ガラスの「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)」を「クラス1」とすることについての示唆があるともいえない。
よって、甲1-甲8に記載された光学ガラスは、「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1」であるとはいえないし、甲1-甲8に記載された光学ガラスを、「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)」が「クラス1」の光学ガラスとすることが、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
したがって、「第5.2.(3)」で検討したのと同様の理由により、本件発明1は、甲1-8に記載された発明でなく、甲1-8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

2.申立理由4)について
甲10に係る特許出願(特願2007-267627号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(特開2009-96649号公報を参照、発明の名称「光学ガラス及び光学素子」)の段落【0047】【表1】の「実施例3」には、質量%(重量%)で、
「P_(2)O_(5) 26.5、B_(2)O_(3) 0、Li_(2)O 5.5、Na_(2)O 0、K_(2)O 4.3、CaO 4.5、BaO 7.7、SrO 0、ZnO 0、TiO_(2) 4.2、Bi_(2)O_(3) 1.7、Nb_(2)O_(5) 28.1、WO_(3) 17.5、Sb_(2)O_(3) 0、nd 1.81059、νd 25.8の光学ガラス。」が記載されている。

甲10に記載された光学ガラスにおける、「化学的耐久性」に影響のある成分の含有量について、「第5.2.(3)」で行ったのと同様に比較すると、甲10に記載された光学ガラスに含まれる当該成分の含有量は、本件発明1の実施例の各成分の含有量とは異なっているから、甲10に記載された光学ガラスは、「粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1」であるとはいえない。
また、「CaO成分」、「BaO成分」及び「WO_(3)成分」についても、本件発明1の光学ガラスと、甲10に記載された光学ガラスとでは、その含有量が異なっている。
よって、本件発明1の光学ガラスは、甲10に記載された光学ガラスと実質的に同一でないから、本件発明1は、甲10に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と、実質的に同一でない。

3.申立理由5)について
特許異議申立人は、(ア)Nb_(2)O_(5)の下限、(イ)TiO_(2)の上限、(ウ)WO_(3)の上限、(エ)B_(2)O_(3)の下限、(オ)Na_(2)Oの下限及び(カ)K_(2)Oの下限につき、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているとはいえず(委任省令要件違反)、したがって、特許請求の範囲に記載されている当該各成分の含有量は、発明の詳細な説明に記載されているといえない(サポート要件違反)と主張する。

(ア)Nb_(2)O_(5)の下限について
「Nb_(2)O_(5)の下限」のサポート要件違反については、「第5.1」で検討しているので、委任省令要件違反についてのみ、検討する。
特許異議申立人は、本件特許明細書の段落【0031】や、本件特許の出願時に公知である甲7の段落【0019】の記載から、「Nb_(2)O_(5)成分」は、「ガラスの屈折率及び分散を高め」るとともに、「耐失透性を悪化」させ、「光線透過率を低下させ」る作用効果を奏する成分であるといえるが、本件特許明細書で作用効果の裏付けがある「Nb_(2)O_(5)成分」の下限値は、実施例に記載された「Nb_(2)O_(5)成分」の最小含有量である「49.02質量%」であるから、請求項1に記載されている「30.0質量%」を下限とする根拠は不明であって、「30.0質量%」を下限とする技術上の意義を理解するために必要な事項は、発明の詳細な説明に記載されていない旨、主張している。
しかしながら、本件特許明細書には、「Nb_(2)O_(5)成分」の作用効果について記載されているとともに、「Nb_(2)O_(5)成分」と作用効果の共通する成分、すなわち、代替成分である「TiO_(2)成分」、「Bi_(2)O_(3)成分」、「WO_(3)成分」についても、段落【0032】、【0049】、【0054】に記載されているものであって、当業者であれば、「Nb_(2)O_(5)成分」として、下限である「30.0質量%」を採用したとしても、当該代替成分の含有量を適宜選択すれば、所望の作用効果が得られることが理解できるといえる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないとはいえず、当該主張は採用できない。

(イ)TiO_(2)の上限及び(ウ)WO_(3)の上限について
特許異議申立人は、本件特許明細書の段落【0032】、【0054】及び甲7の段落【0021】の記載から、「ガラスの屈折率及び分散を高め」るとともに、「耐失透性を悪化」させ、「光線透過率を低下させ」る作用効果を奏する「TiO_(2)成分」、「WO_(3)成分」につき、本件特許明細書で作用効果の裏付けがある「TiO_(2)成分」、「WO_(3)成分」の上限値は、それぞれ実施例の最大含有量である「10.00質量%」、「5.00質量%」であるから、請求項1に記載されている「25.0質量%」、「10.0質量%」を上限とする根拠は不明であるし、「TiO_(2)成分」、「WO_(3)成分」を「25.0質量%」、「10.0質量%」とすることを含む本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない旨、主張している。
しかしながら、「(ア)Nb_(2)O_(5)の下限について」で述べたように、本件特許明細書には、「TiO_(2)成分」、「WO_(3)成分」の代替成分が、「Nb_(2)O_(5)成分」、「Bi_(2)O_(3)成分」であることが記載されているといえ、当業者であれば、「TiO_(2)成分」、「WO_(3)成分」を「25.0質量%」、「10.0質量%」としても、当該代替成分の含有量を合わせて適宜選択すれば、所望の作用効果が得られることが理解できるといえる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないとはいえず、本件発明1が、発明の詳細な説明に記載されていないものであるとはいえない。

(エ)B_(2)O_(3)の下限、(オ)Na_(2)Oの下限及び(オ)K_(2)Oの下限について
特許異議申立人は、本件特許明細書の段落【0036】、【0037】、【0047】の記載から、「B_(2)O_(3)成分」、「Na_(2)O成分」、「K_(2)O成分」は、「0.1%以上含有すること」で「ガラスの液相温度を高め」、「ガラスの耐失透性を高め」る作用効果を奏する成分であるといえるが、本件特許明細書に記載された光学ガラスの液相温度は、「B_(2)O_(3)成分」の最小含有量「0.5質量%」を含む実施例3が「1070℃」、「Na_(2)O成分」の最小含有量「4.3質量%」を含む実施例1が「1116℃」、「K_(2)O成分」の最小含有量「0.2質量%」を含む実施例7が「1050℃」であるのに対し、「Na_(2)O成分」の含有量が「2.00質量%」で、「B_(2)O_(3)成分」及び「K_(2)O成分」を含まない比較例の光学ガラスの液相温度は「1120℃」と、実施例1、3、7の光学ガラスの液相温度より高いものであるから、前記段落【0036】、【0037】、【0047】の「B_(2)O_(3)成分」、「Na_(2)O成分」、「K_(2)O成分」の作用効果に関する記載と矛盾しており、本件発明1で特定されている「B_(2)O_(3)成分」、「Na_(2)O成分」、「K_(2)O成分」の技術上の意義を理解するために必要な事項は、本件特許明細書に記載されていないと主張している。
また、「Na_(2)O成分」については、「Na_(2)O成分」を含まない比較例がないことから、「0.1%以上含有すること」により、「ガラスの液相温度を高め」る作用効果の有無についても、不明である旨、主張している。
さらに、本件特許明細書で作用効果の裏付けがある「B_(2)O_(3)成分」、「Na_(2)O成分」の下限値が、実施例の最小含有量である「0.5質量%」、「4.3質量%」であるのに対し、本件発明1では、「Na_(2)O成分」、「B_(2)O_(3)成分」は含有しなくともよい成分とされており、「Na_(2)O成分」、「B_(2)O_(3)成分」を含有しない場合を含み得る本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された内容を超えていることについても、主張している。
しかしながら、本件特許明細書の段落【0032】、【0033】、【0035】、【0038】-【0042】、【0051】の記載によれば、「ガラスの液相温度」に影響のある成分は、「B_(2)O_(3)成分」、「Na_(2)O成分」、「K_(2)O成分」の他、「TiO_(2)成分」、「BaO成分」、「Li_(2)O成分」、「MgO成分」、「CaO成分」、「SrO成分」及び「ZnO成分」であり、当業者であれば、「B_(2)O_(3)成分」や「Na_(2)O成分」を含有しなくとも、「ガラスの液相温度」に影響のある前記成分の含有量を合わせて適宜選択すれば、所望の作用効果が得られることが理解できるし、前記実施例1、3、7と比較例の光学ガラスの液相温度についても、「ガラスの液相温度」に影響のある、「B_(2)O_(3)成分」、「Na_(2)O成分」又は「K_(2)O成分」以外の成分の含有量も異なっていることを考慮すれば、実施例1、3、7と比較例とで、「B_(2)O_(3)成分」、「Na_(2)O成分」、「K_(2)O成分」の含有量と「ガラスの液相温度」との間に矛盾があるとはいえない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないとはいえず、本件発明1が、発明の詳細な説明に記載されていないものであるとはいえない。

第7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び取消理由通知において採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1-12、14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正後の請求項1-12、14にに係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求により、請求項13に係る特許は存在しなくなったので、当該請求項13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でP_(2)O_(5)成分を10.0%以上33.0%以下、Nb_(2)O_(5)成分を30.0%以上57.0%以下、K_(2)O成分を0.1%以上8.0%以下含有し、CaO成分の含有量が3.86%以下、BaO成分の含有量が4.5%以下、SiO_(2)成分の含有量が2.0%以下、ZrO_(2)成分の含有量が10.0%以下、TiO_(2)成分の含有量が25.0%以下、B_(2)O_(3)成分の含有量が2.40%以下、Bi_(2)O_(3)成分の含有量が5.0%未満、WO_(3)成分の含有量が10.0%以下、Sb_(2)O_(3)成分の含有量が0.10%以下であり、La_(2)O_(3)成分を含まず、質量和Li_(2)O+Na_(2)O+K_(2)Oが9.95%以下であり、分光透過率が70%を示す波長(λ_(70))が500nm以下であり、粉末法による化学的耐久性(耐酸性)がクラス1であり、500℃以上1116℃以下の液相温度を有する光学ガラス。
【請求項2】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
TiO_(2)成分 0?12.0%
をさらに含有する請求項1記載の光学ガラス。
【請求項3】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でTiO_(2)成分の含有量が11.0%以下である請求項2記載の光学ガラス。
【請求項4】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でSiO_(2)成分の含有量が1.5%以下である請求項2又は3記載の光学ガラス。
【請求項5】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Li_(2)O成分 0?8.0%及び
Na_(2)O成分 0?8.70%
の各成分をさらに含有する請求項1から4のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項6】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%でK_(2)O成分の含有量が0.15%以上である請求項5記載の光学ガラス。
【請求項7】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
MgO成分 0?5.0%及び
SrO成分 0?10.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から6のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項8】
酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和MgO+CaO+SrO+BaOが20.0%以下である請求項7記載の光学ガラス。
【請求項9】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
Y_(2)O_(3)成分 0?10.0%及び
Gd_(2)O_(3)成分 0?10.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から8のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項10】
酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量和Y_(2)O_(3)+La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)が20.0%以下である請求項9記載の光学ガラス。
【請求項11】
酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
GeO_(2)成分 0?10.0%、
ZrO_(2)成分 0?10.0%、
ZnO成分 0?10.0%、
Al_(2)O_(3)成分 0?10.0%及び
Ta_(2)O_(5)成分 0?10.0%
の各成分をさらに含有する請求項1から10のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項12】
1.70以上2.20以下の屈折率(nd)を有し、10以上25以下のアッベ数(νd)を有する請求項1から11のいずれか記載の光学ガラス。
【請求項13】(削除)
【請求項14】
請求項1から12のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-15 
出願番号 特願2011-227403(P2011-227403)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C03C)
P 1 651・ 113- YAA (C03C)
P 1 651・ 16- YAA (C03C)
P 1 651・ 536- YAA (C03C)
P 1 651・ 537- YAA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 貴之正 知晃  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 萩原 周治
新居田 知生
登録日 2015-02-20 
登録番号 特許第5698641号(P5698641)
権利者 株式会社オハラ
発明の名称 光学ガラス及び光学素子  
代理人 正林 真之  
代理人 新山 雄一  
代理人 新山 雄一  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ