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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 特174条1項  A63F
管理番号 1327936
異議申立番号 異議2017-700243  
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-07 
確定日 2017-05-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第5989189号発明「サーバ、プログラム、及びサーバの制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5989189号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5989189号の請求項1乃至7に係る特許についての出願は,平成24年10月11日に出願された特願2012-226125号を優先権の基礎として,平成25年10月9日に出願されたPCT/JP2013/006024の国内出願である特願2014-530856号の一部を,特願2015-116759号として平成27年6月9日に,新たに特許出願され,平成28年8月19日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許に対し,特許異議申立人上杉則亮により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第5989189号の請求項1乃至7の特許に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。(以下,「本件特許発明1」乃至「本件特許発明7」という。)
「【請求項1】
所定レベル以上のアイテムをそれぞれ1以上含む複数のアイテムグループのうち,1のアイテムグループを選択するための選択画面をユーザの操作する通信端末に送信する送信手段と,
前記選択画面で選択され前記ユーザに設定されたアイテムグループに属するアイテムのうち,当該ユーザに未提供のアイテムの中から少なくとも1の任意のアイテムを選択する選択手段と,
当該選択されたアイテムを,前記ユーザに提供する提供手段と,
を備え,
前記複数のアイテムグループが異なるユーザに設定される場合,各ユーザに設定され得るアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数は,当該アイテムグループに対応する他のユーザに設定されるアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数と同一であることを特徴とするサーバ。
【請求項2】
所定レベル以上のアイテムをそれぞれ複数含む複数のアイテムグループのうち,1のアイテムグループを選択するための選択画面をユーザの操作する通信端末に送信する送信手段と,
前記選択画面で選択されたアイテムグループに属するアイテムのうち,当該ユーザに未提供の少なくとも1のアイテムを選択する選択手段と,
当該選択されたアイテムを,前記ユーザに提供する提供手段と,
を備え,
前記送信手段は,前記ユーザにアイテムを提供することによりアイテムグループに前記所定レベル以上のアイテムが1以上減少した場合,該アイテムグループに対応する選択肢を選択不可能にした選択画面を送信することを特徴とするサーバ。
【請求項3】
前記送信手段は,各アイテムグループのアイテム種類毎のアイテム総数及び取得数を含む選択画面を前記通信端末に送信することを特徴とする,請求項1又は2に記載のサーバ。
【請求項4】
ユーザの通信端末として動作するコンピュータに,
所定レベル以上のアイテムをそれぞれ1以上含む複数のアイテムグループのうち,1のアイテムグループを選択するための選択画面を表示するステップと,
前記選択画面において,1のアイテムグループを選択する前記ユーザの操作による操作信号を受信するステップと,
選択され前記ユーザに設定されたアイテムグループに属するアイテムのうち,未提供のアイテムの中から少なくとも1の任意のアイテムの提供を受けるステップと,を実行させ,
前記複数のアイテムグループが異なるユーザに設定される場合,各ユーザに設定され得るアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数は,当該アイテムグループに対応する他のユーザに設定されるアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数と同一であるプログラム。
【請求項5】
ユーザの通信端末として動作するコンピュータに,
所定レベル以上のアイテムをそれぞれ複数含む複数のアイテムグループのうち,1のアイテムグループを選択するための選択画面を表示するステップと,
前記選択画面において,1のアイテムグループを選択する前記ユーザの操作による操作信号を受信するステップと,
選択されたアイテムグループに属するアイテムのうち,未提供の少なくとも1のアイテムの提供を受けるステップと,を実行させるプログラムであって,
前記表示するステップは,前記ユーザにアイテムを提供することによりアイテムグループに前記所定レベル以上のアイテムが1以上減少した場合,該アイテムグループに対応する選択肢を選択不可能にした選択画面を表示することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
サーバと通信端末とを備える通信システムにおけるサーバの制御方法であって,
前記サーバが,所定レベル以上のアイテムをそれぞれ1以上含む複数のアイテムグループのうち,1のアイテムグループを選択するための選択画面をユーザの操作する前記通信端末に送信するステップと,
前記サーバが,前記選択画面において,1のアイテムグループを選択する前記ユーザの操作による操作信号を受信するステップと,
前記サーバが,前記選択画面で選択され前記ユーザに設定されたアイテムグループに属するアイテムのうち,当該ユーザに未提供のアイテムの中から少なくとも1の任意のアイテムを選択し,前記選択されたアイテムを,前記ユーザに提供するステップと,を含み,
前記複数のアイテムグループが異なるユーザに設定される場合,各ユーザに設定され得るアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数は,当該アイテムグループに対応する他のユーザに設定されるアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数と同一であることを特徴とする制御方法。
【請求項7】
サーバと通信端末とを備える通信システムにおけるサーバの制御方法であって,
前記サーバが,所定レベル以上のアイテムをそれぞれ複数含む複数のアイテムグループ
のうち,1のアイテムグループを選択するための選択画面をユーザの操作する前記通信端末に送信するステップと,
前記サーバが,前記選択画面において,1のアイテムグループを選択する前記ユーザの操作による操作信号を受信するステップと,
前記サーバが,前記選択画面で選択されたアイテムグループに属するアイテムのうち,当該ユーザに未提供の少なくとも1のアイテムを選択し,前記選択されたアイテムを,前記ユーザに提供するステップと,を含むことを特徴とする制御方法であって,
前記送信するステップは,前記ユーザにアイテムを提供することによりアイテムグループに前記所定レベル以上のアイテムが1以上減少した場合,該アイテムグループに対応する選択肢を選択不可能にした選択画面を送信することを特徴とする制御方法。」

3.申立理由の概要
(1)特許異議申立人上杉則亮は,証拠として,「特願2012-122741号(特開2013-247977号公報参照)」(以下「甲第1号証」という。)を提出し,請求項1?7に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから,請求項1?7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(2)特許異議申立人上杉則亮は,主たる証拠として,「『iPhone GameCast』,『ガンダムカードコレクション,ガチャにかかる金額を実質明示:ソーシャルゲームを見る12』,2012年06月10日(2017年2月13日検索)」(http://web.archibe.org/web/2012070109595/http://www.gamecast-blog.com/archibes/65683438.html)(以下「甲第2号証」という。),及び従たる証拠として,「『GOLDEN TIMES』,『モバゲーの新ガチャ「ボックスガチャ」がイメージ図詐欺すぐるwww』,2012年06月08日(2017年2月13日検索)」(http://web.archibe.org/web/20120610104528/http://www.linedoor.jp/goldennews/archibes/51721312.html)(以下「甲第3号証」という。),特開2002-366852号公報(以下「甲第4号証」という。),「『ローズの時間』,『【お悩み解決】着せ替えガチャ/わらしべ/Tの中身リスト』,April 05,201218:36(2012年04月05日)(2017年2月20日検索)」(http://web.archibe.org/web/20120615221953/http://blog.roseon.jp/archibes/53801979.html)(以下「甲第5号証」という。)を提出し,請求項1,4,6に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1,4,6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(3)特許異議申立人上杉則亮は,拒絶査定審判請求時にされた請求項1,4,6に対する補正は,所謂新規事項の追加であるから,請求項1,4,6に係る特許は同法第17条の2第3項の規定に違反してされたものであるから,請求項1,4,6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.各甲号証の記載
(1)甲第1号証(甲第1号証とは「特願2012-122741号(特開2013-247977号公報参照)」の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲,及び図面をいう。)
ア 「【0012】
図1は,本発明の一実施形態におけるゲームシステムを概略的に示すブロック図である。図1に示すように,本発明の一実施形態に係るオンラインゲーム用サーバ装置10(以下,単に「サーバ装置10」ということがある。)は,インターネット等の通信網20を介して,通信機能を備える複数の端末装置30-1,30-2,・・・,30-N(以下,「端末装置30」と総称することがある。)と通信可能に接続されている。サーバ装置10は,本発明の一実施形態に係るゲームシステムの一部又は全部を実装する装置の一例である。」

イ 「【0014】
ユーザI/F13は,例えば,オペレータの入力を受け付けるキーボードやマウス等の情報入力装置と,CPU11の演算結果を出力する液晶ディスプレイ等の情報出力装置とを含む。通信I/F14は,ハードウェア,ファームウェア,又はTCP/IPドライバやPPPドライバ等の通信用ソフトウェア又はこれらの組み合わせとして実装され,通信網20を介して端末装置30と通信可能に構成される。」

ウ 「【0018】
外部メモリ15には,端末装置30においてブラウザソフトウェア以外の実行環境上で実行されるゲームアプリケーションも格納され得る。このゲームアプリケーションには,ゲームを実行するためのゲームプログラムや当該ゲームプログラム実行時に参照される画像データ等の各種データを含めることができる。ゲームプログラムは,例えば,Objective-C,Java(登録商標)等のオブジェクト指向プログラミング言語で作成される。作成されたゲームプログラムは,各種データとともに,アプリケーションソフトウェアとして外部メモリ15に記憶される。外部メモリ15に記憶されたアプリケーションソフトウェアは,配信要求に応じて,端末装置30に配信される。サーバ装置10から配信されたアプリケーションソフトウェアは,端末装置30において,CPU31の制御に従って通信I/F34を介して受信され,受信されたゲームプログラムが外部メモリ35に送信され記憶される。このアプリケーションソフトウェアは,プレイヤによる端末装置30の操作に応じて起動され,端末装置30に実装されたNgCore(商標)やAndroid(商標)等のプラットフォーム上で実行される。サーバ装置10は,端末装置30で実行されているゲームアプリケーションに対してゲームの進行に必要な各種データを提供する。また,サーバ装置10は,端末装置30から送信される各種データをプレイヤごとに記憶することで,プレイヤごとにゲームの進行を管理することができる。
【0019】
このように,サーバ装置10は,ゲームサービスを提供するウェブサイトを管理し,当該ウェブサイトを構成するウェブページを端末装置30からの要求に応じて配信することにより,ゲームを進行させることができる。また,サーバ装置10は,このようなブラウザゲームとは代替的に,又は,ブラウザゲームに加えて,端末装置30で実行されるゲームアプリケーションとゲームで用いられる各種データを通信することによりゲームを進行させることができる。サーバ装置10は,いずれの態様でゲームを提供するにしても,各プレイヤを識別する識別情報(後述する)ごとにゲームの進行に必要なデータを記憶することができる。サーバ装置10によって提供されるゲームには,アクションゲーム,ロールプレイングゲーム,野球対戦ゲーム,カードゲーム等の任意のゲームが含まれる。サーバ装置10のウェブサイト又はゲームアプリケーションによって実現されるゲームの種類は,本明細書において明示されたものに限られない。」

エ 「【0031】
端末装置30においては,様々なゲームが実行される。端末装置30において実行されるゲームにおいては,電子的なカード,アイテム,ゲーム内で利用可能な仮想通貨等の様々なゲーム媒体が用いられる。ゲーム媒体は,ゲームの進行のためにプレイヤによって用いられる電子データの総称であり,例えば,カード,アイテム,キャラクタ,及びアバタを含む。本発明の一態様において,ゲーム媒体は,ゲームの進行に応じ,プレイヤによって,ゲーム内で,取得,保有,使用,管理,交換,合成,強化,売却,廃棄,及び/又は贈与等され得るが,ゲーム媒体の利用態様は本明細書で明示されるものには限られない。ゲーム内でカードを売却する場合には,現実の通貨ではなく,ゲーム内で使用される仮想通貨がカードを売却する対価としてプレイヤに支払われてもよい。ゲーム媒体には,例えば,ゲームの進行において適宜参照される属性情報(例えば,「レアリティ(rarity)」「レベル」,「攻撃力」,「防御力」,「ゲーム媒体の名称」等)が設定される。これらの属性情報の少なくとも一部はゲームの進行に伴って更新され得る。プレイヤは,更新された属性情報を有するゲーム媒体を用いてゲームを進行させることができる。例えば,カードゲームにおいては,プレイヤは,ゲーム内で一又は複数のカードを保有し,その保有するカードを用いてミッションを攻略したり,当該カードを用いて他のプレイヤやノンプレイヤキャラクタと対戦することによりゲームを進行させることができる。本出願人は,Mobage(登録商標)プラットフォーム上において,様々な種類のカードゲームを提供している。
【0032】
本発明の実施形態におけるゲームで用いられるゲーム媒体は,ゲーム媒体収容デッキ(本明細書において,単に「デッキ」と呼ぶこともある。)と呼ばれる単位でサーバ装置10において管理されており,各プレイヤは,自らに割り当てられたデッキに収容されているゲーム媒体を端末装置30を介して取得し,取得したゲーム媒体を用いてゲームを進行させることができる。デッキには有限個のゲーム媒体が収容される。ゲームの各プレイヤに対して個別にデッキが割り当てられる。デッキに収容されるゲーム媒体は,プレイヤごとに異なっていてもよく,同じゲーム媒体を収容するデッキを各プレイヤに割り当ててもよい。」

オ 「【0037】
ゲーム媒体の「レアリティ値」は,当該ゲーム媒体の入手しにくさを示す指標であり,図5の実施例では,「1」から「4」のいずれかの値を取る。図示した実施例では,ゲーム媒体のレアリティ値が小さいほど当該ゲーム媒体を入手しやすく,レアリティ値が大きいほど入手しにくいと仮定している。これとは逆に,ゲーム媒体のレアリティ値が大きいほど当該ゲーム媒体が入手しやすくなるようにレアリティ値の値を設定してもよい。」

カ 「【0040】
ゲーム媒体の「収容個数」は,後述する当選ゲーム媒体がプレイヤに提供された後にデッキに残存しているゲーム媒体の個数を示す。後述するように,デッキ識別情報「D000001」で識別されるデッキ(以下,「デッキ1」と呼ぶことがある。)に収容されているゲーム媒体のうち当選ゲーム媒体として選択されたゲーム媒体は,プレイヤ識別情報「000001」で識別されるプレイヤ(以下,「プレイヤ1」と呼ぶことがある。)に対して提供される。ゲーム媒体の「収容個数」は,当該ゲーム媒体の「総収容個数」から,プレイヤに提供された当該ゲーム媒体の個数を減じることにより算出される。このようにして算出されたゲーム媒体のデッキ内における残存数が,収容ゲーム媒体情報管理テーブルの「収容個数」の領域に記憶される。」

キ 「【0047】
更新部55は,当選ゲーム媒体選択部54によって,デッキ中のゲーム媒体から選択された当選ゲーム媒体を当該デッキから削除する。例えば,図5に示した例において1個のゲーム媒体1が当選ゲーム媒体選択部54によって選択された場合には,「M000001」に対応付けて記憶されている「収容個数」を「32」から「31」へ減少させる。これにより,ゲーム媒体1が,1個,デッキ1から削除される。このように,本明細書において,当選ゲーム媒体をデッキから削除するというときには,当該当選ゲーム媒体の収容個数を減少させることが含まれる。当選ゲーム媒体が複数個選択される場合には,その選択された個数だけデッキにおいて当該当選ゲーム媒体に対応付けられている収容個数を減少させる。例えば,当選ゲーム媒体選択部54によって3個のゲーム媒体1が当選ゲーム媒体として選択された場合には,「M000001」に対応付けて記憶されている「収容個数」を「32」から「29」へ減少させる。このように,更新部55は,当選ゲーム媒体選択部54によって選択された当選ゲーム媒体をデッキから削除することにより,当該デッキに対応付けら得ている収容ゲーム媒体情報の少なくとも一部を更新することができる。」

ク 「【0048】
保有ゲーム媒体情報記憶部56は,各プレイヤを識別するプレイヤ識別情報と対応付けて,当該プレイヤがゲーム内で保有する一又は複数のゲーム媒体を記憶することができる。保有ゲーム媒体情報記憶部56は,例えば,外部メモリ15や外部のデータベースサーバ等に設けられる保有ゲーム媒体管理テーブルにより実現される。図6は,保有ゲーム媒体管理テーブルの一例を示す。図示のとおり,保有ゲーム媒体管理テーブルには,各プレイヤを識別するプレイヤ識別情報に対応付けて,当該プレイヤが保有する5つのゲーム媒体を識別するゲーム媒体識別情報及び各ゲーム媒体の保有個数が記憶されている。図6において,保有するゲーム媒体が存在しない場合には,「N/A」と表記されている。
【0049】
保有ゲーム媒体情報記憶部56は,当選ゲーム媒体選択部54によって,プレイヤからのゲーム媒体取得要求に応じて当選ゲーム媒体が選択された場合に,当該当選ゲーム媒体を当該プレイヤが保有するゲーム媒体として記憶する。例えば,図6に示した例において,プレイヤ1からのゲーム媒体取得要求に応じてゲーム媒体1が当選ゲーム媒体として選択された場合には,保有ゲーム媒体管理テーブルのプレイヤ識別情報「000001」に対応付けられたゲーム媒体1の個数が「8」から「9」に更新される。このように,当選ゲーム媒体として,既に1個以上保有しているゲーム媒体が選択された場合には,当該ゲーム媒体の保有個数を,当選ゲーム媒体として選択されたゲーム媒体の個数だけ増加させる。例えば,当選ゲーム媒体として,ゲーム媒体1が1個選択された場合には,保有ゲーム媒体管理テーブルにおけるゲーム媒体1の保有個数を「1」だけ増加させる。また,当選ゲーム媒体として,ゲーム媒体1が3個選択された場合には,保有ゲーム媒体管理テーブルにおけるゲーム媒体1の保有個数を「3」だけ増加させる。プレイヤ1が保有していないゲーム媒体が当選ゲーム媒体として選択された場合には,当該当選ゲーム媒体を識別するゲーム媒体識別情報を,プレイヤ1のプレイヤ識別情報「000001」と対応付けて記憶する。例えば,図6の例において,プレイヤ1のゲーム媒体取得要求に応じて,当選ゲーム媒体としてゲーム媒体4が選択された場合には,プレイヤ識別情報「000001」と対応付けられた「保有アイテム5」の領域に,ゲーム媒体4を識別するゲーム媒体識別情報「M000004」と,その保有個数である「1」を登録する。」

ケ 「【0051】
初期化処理部57は,所定の初期化条件が満たされたことに応じて,デッキを初期化する初期化処理を行うことができる。初期化条件には,例えば,(a)デッキ内で最もレアリティの高いゲーム媒体が当選ゲーム媒体として選択されたこと(初期化条件(a)),(b)デッキに収容されている全ゲーム媒体の収容個数の合計が一定の数よりも少なくなったこと(初期化条件(b)),(c)デッキの利用開始時,ゲームへの利用登録時,定刻(例えば,0時)等の所定の時点から所定時間経過したこと(初期化条件(c)),(d)サーバ装置10が当該デッキが割り当てられているプレイヤから所定回数のゲーム媒体取得要求を取得したこと(初期化条件(d)),及び(e)所定数の当選ゲーム媒体が選択されたこと(初期化条件(e)),が含まれるが,本発明に適用可能な初期化条件はこれらに限られるものではない。
【0052】
これらの初期化条件のいずれかが満たされると,初期化処理部57によってデッキが初期化される。デッキの初期化とは,デッキに収容されているゲーム媒体の収容個数がその総収容個数と等しくなるように,デッキを設定又は更新することをいう。上述したように,本発明の実施形態におけるデッキは,プレイヤからのゲーム媒体取得要求に応じて当選ゲーム媒体が決定されると,当該当選ゲーム媒体が当該デッキから削除されるように構成されており,このとき,ゲーム媒体の収容個数が当選ゲーム媒体の数に相当する数だけ減少する。したがって,当選ゲーム媒体が削除されたデッキに,当該削除された当選ゲーム媒体を補充することにより,当該デッキは初期化される。デッキを初期化する手法として,様々な手法を用いることができる。特に,本発明におけるデッキの初期化は,削除された当選ゲーム媒体をデッキ内に補充することには限定されない。例えば,初期化処理部57は,レアリティ値が最も大きなゲーム媒体(例えば,ゲーム媒体4)を補充せず,代わりにレアリティ値が低いゲーム媒体を補充することができる。これにより,レアリティ値が最も大きいゲーム媒体の流通枚数を制限することができる。本発明の一態様においては,初期化条件(a)乃至初期化条件(e)のいずれかが満たされたときに,端末装置30に対して初期化要求を生成及び送信するためのウェブページを送信し,プレイヤによる当該ウェブページの操作に基づいて生成された初期化要求を取得したときに,デッキを初期化することができる。」

コ 「【0057】
次に,図7を参照して,本発明の一実施形態における当選ゲーム媒体を選択する処理の一例を説明する。図7は,サーバ装置10により提供されるゲームの開始から,当選ゲーム媒体の選択に応じてデッキを更新する処理が完了し,必要に応じてデッキが初期化されるまでの処理の概要を示すフロー図である。ここでは,プレイヤ1からのゲーム媒体取得要求に基づいてデッキ1に収容されたゲーム媒体から当選ゲーム媒体を選択する場合を例に説明を行う。
【0058】
まず,工程702においてゲームが開始されると,プレイヤは,端末装置30を操作してサーバ装置10にアクセスし,ゲームサイトを構成する複数のウェブページの中から所望のウェブページを取得する。プレイヤが,ゲーム媒体を取得するために,ゲーム媒体取得要求を行うためのウェブページへのリンクを選択すると,例えば,図8に示すような表示画面が端末装置30に表示される。図8は,ゲームのプレイヤに対してゲーム媒体取得要求の生成及びサーバ装置10への送信を促すための表示画面の一例である。端末装置30は,サーバ装置10からゲームサイトを構成するウェブページのうち,ゲーム媒体取得要求を行うためのウェブページに対応するHTMLデータを取得し,当該HTMLデータを解析することにより,図8に例示したゲーム媒体取得要求画面を表示することができる。
【0059】
プレイヤが端末装置30を操作して,ゲーム媒体取得要求画面内の「取得要求する」と表示されている操作ボタンを選択すると,端末装置30は,ゲーム媒体取得要求を生成し,生成したゲーム媒体取得要求をサーバ装置10に対して送信する。ゲーム媒体取得要求には,例えば,プレイヤ1のプレイヤ識別情報が含まれる。続いて,サーバ装置10は,工程704において,プレイヤ1の端末装置30から送信されたゲーム媒体取得要求を取得する。次に,工程706に進んで,取得されたゲーム媒体取得要求に応じて,当選ゲーム媒体選択部54によって,デッキ識別情報管理テーブルが参照されてプレイヤ1に割り当てられているデッキ1が特定され,このデッキ1に収容されているゲーム媒体の中から,上述した所定の抽選アルゴリズムに従って当選ゲーム媒体が選択される。例えば,1個のゲーム媒体1が当選ゲーム媒体として選択された場合には,プレイヤ1の端末装置30に対して,図9に示す当選ゲーム媒体の表示画面に対応するウェブページが生成され,生成されたウェブページがプレイヤ1の端末装置30に送信される。プレイヤ1の端末装置30は,受信したウェブページを解析して,図9に例示したような当選ゲーム媒体を含む表示画面を表示する。ユーザは,図9の表示画面を見ることにより,抽選によりいずれのゲーム媒体が当選ゲーム媒体として選択されたか確認できる。」

サ 「【0063】
収容ゲーム媒体情報提供部58は,更新後の収容ゲーム媒体情報管理テーブルに記憶されている収容ゲーム媒体情報を含むウェブページを生成し,生成したウェブページをプレイヤ1の端末装置30に送信することができる。図10は,更新後の収容ゲーム媒体情報を含むウェブページに対応する表示画面の端末装置30における表示例である。図示のとおり,図10の表示画面においては,更新後の各ゲーム媒体の収容ゲーム媒体情報のうち,ゲーム媒体の名称と当該ゲーム媒体の収容個数とが関連付けて表示される。このうち,ゲーム媒体1については,「カードA」という名称とともに,その更新前の収容個数である「32個」という表記,及び,その更新後の収容個数である「31個」という表記が,それぞれ関連付けて表示されている。ゲーム媒体1以外のゲーム媒体については,「カードB」等の名称と,その収容個数とが関連付けて表示されている。このウェブページには,収容個数に加えて総収容個数を含め,図10の表示画面において,収容個数及び総収容個数を並記してもよい。このように,収容個数を総収容個数と関連付けて表示することにより,デッキに含まれる全ゲーム媒体のうちどの程度のゲーム媒体が既に当選ゲーム媒体として選択されたか(又はデッキから削除されたか)を理解しやすくプレイヤに提示することができる。」

シ 「【0070】
図11に示すように,本実施形態に係るデッキ識別情報管理テーブルは,各プレイヤを識別するプレイヤ識別情報と対応付けて,当該プレイヤに割り当てられた一又は複数のデッキを識別するデッキ識別情報を記憶する。例えば,図11のデッキ識別情報管理テーブルには,プレイヤ識別情報「000001」と対応付けて,デッキ識別情報「D000001-1」及び「D000001-2」で識別される2種類のデッキが対応付けられている。例えば,デッキ識別情報「D000001-2」で識別されるデッキ(デッキ1-2)は,デッキ識別情報「D000001-1」で識別されるデッキ(デッキ1-1)よりも,大きなレアリティ値を有するゲーム媒体の総収容個数が多くなるように構成されている。例えば,図12(b)に示すデッキ1-2においては,最も大きなレアリティ値を有するゲーム媒体4の総収容個数が10個となっている。したがって,デッキ1-2を用いて当選ゲーム媒体の選択を行うことにより,ゲーム媒体4の総収容個数が1個であるデッキ1-1(図12(a)参照)を用いる場合よりも,ゲーム媒体4は約10倍選択されやすくなる。デッキ1-2に収容されるゲーム媒体のレアリティ値の期待値は,デッキ1-1に収容されるゲーム媒体のレアリティ値の期待値と同じであっても異なっていてもよい。上述したように,図12に示したデッキ1-1とデッキ1-2とを比較すると,デッキ1-2を使用した場合の方がレアリティ値の期待値が大きい(デッキ1-2の方がレアリティ値の大きいゲーム媒体の比率が高い)が,両者の期待値が同じ値となるようにデッキ1-2に収容するゲーム媒体を決定することもできる。
【0071】
図13に示すフロー図に従って,工程702においてプレイヤ1によりゲームが開始されると,サーバ装置10は,例えば,図14に示すようなゲーム媒体取得要求生成用のウェブページを端末装置30に表示させる。図14は,ゲームのプレイヤに対してゲーム媒体取得要求の生成及びサーバ装置10への送信を促すためのウェブページの表示画面の一例であり,図8の図と異なり,「ノーマル抽選」と「プレミアム抽選」の2種類の抽選に関する表示がなされている。例えば,プレイヤ1が端末装置30を操作して,「ノーマル抽選」の表示と関連付けて表示されている「取得要求する」と表された操作ボタン1402を選択すると,端末装置30は,デッキ1-1を用いることを示すデッキ選択情報を含むゲーム媒体取得要求を生成し,生成したゲーム媒体取得要求をサーバ装置10に対して送信する。一方,プレイヤ1が端末装置30を操作して,「プレミアム抽選」の表示と関連付けて表示されている「取得要求する」と表された操作ボタン1404を選択すると,端末装置30は,デッキ1-2を用いることを示すデッキ選択情報を含むゲーム媒体取得要求を生成し,生成したゲーム媒体取得要求をサーバ装置10に対して送信する。このように,本実施形態においては,プレイヤ1の端末装置30から送信されるゲーム媒体取得要求に,デッキ1-1とデッキ1-2のいずれを用いるかを示すデッキ選択情報を含めることができる。」

ス 「【0073】
サーバ装置10において,プレイヤ1の端末装置30からデッキ選択情報を含むゲーム媒体取得要求が取得されると,処理は工程1302に進む。工程1302においては,当選ゲーム媒体選択部54によって,取得されたゲーム媒体取得要求に含まれているデッキ選択情報に基づいて,当選ゲーム媒体の選択処理のために用いるデッキが特定される。例えば,デッキ選択情報に,デッキ1-1を識別するデッキ識別情報が含まれている場合には,デッキ1-1を使用するデッキとして特定する。続いて,工程706に進んで,工程1302において特定されたデッキに収容されているゲーム媒体の中から,所定の抽選アルゴリズムに従って,当選ゲーム媒体が選択される。当選ゲーム媒体が選択された後は,図7のフローと同様の処理が行われる。」

セ 図11から,プレイヤ識別情報「000001」のプレイヤには,デッキ識別情報「D000001-1」及び「D000001-2」の2種類のデッキが割り当てられる点が看て取れる。

ソ 図12から,デッキ識別情報「D000001-1(デッキ1-1)」のノーマル抽選用のデッキと,デッキ識別情報「D000001-2(デッキ1-2)」のプレミアム抽選用のデッキのいずれにも,レアリティ値「1」から「4」までのゲーム媒体が少なくとも1枚が含まれている点が看て取れる。

タ 図15から,プレイヤ識別情報「000001」,「000021」及び「000022」のプレイヤには,デッキ識別情報「D000001」の同じデッキが割り当てられる点が看て取れる。

チ 上記セ?タを総合すると,プレイヤ識別情報「000001」,「000021」及び「000022」のプレイヤに対して,同じデッキが割り当てられるのであるから,これらのプレイヤにノーマル抽選用のデッキと,プレミアム抽選用のデッキを割り当てる場合,例えば,デッキ識別情報「D000001-1(デッキ1-1)」及び「D000001-2(デッキ1-2)」の2種類のデッキが割り当てられることは,自明である。

甲第1号証の上記記載事項を含め,甲第1号証の全記載を総合すると,甲第1号証には以下の事項(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「プレイヤは,端末装置を操作してサーバ装置にアクセスし,ゲームサイトを構成する複数のウェブページの中から所望のウェブページを取得し,ゲーム媒体を取得するために,ゲーム媒体取得要求を行うためのウェブページへのリンクを選択すると,「ノーマル抽選」と「プレミアム抽選」の2種類の抽選に関する表示がなされた,ゲーム媒体取得要求の生成及びサーバ装置への送信を促すためのウェブページの表示画面が,プレイヤの端末装置に表示され,
該ゲーム媒体取得要求には,デッキ1-1とデッキ1-2のいずれを用いるかを示すデッキ選択情報を含めることができ,それぞれのデッキは,レアリティ値「1」から「4」までのゲーム媒体が少なくとも1枚が含まれるデッキ識別情報「D000001-1(デッキ1-1)」のノーマル抽選用のデッキと,デッキ識別情報「D000001-2(デッキ1-2)」のプレミアム抽選用のデッキであって,
プレイヤが端末装置を操作して,「ノーマル抽選」の表示と関連付けて表示されている「取得要求する」と表された操作ボタンを選択すると,端末装置は,デッキ1-1を用いることを示すデッキ選択情報を含むゲーム媒体取得要求を生成し,生成したゲーム媒体取得要求をサーバ装置に対して送信し,プレイヤが「プレミアム抽選」の表示と関連付けて表示されている「取得要求する」と表された操作ボタンを選択すると,端末装置は,デッキ1-2を用いることを示すデッキ選択情報を含むゲーム媒体取得要求を生成し,生成したゲーム媒体取得要求をサーバ装置に対して送信し,
サーバ装置は,プレイヤの端末装置からデッキ選択情報を含むゲーム媒体取得要求を取得すると,取得されたゲーム媒体取得要求に含まれているデッキ選択情報に基づいて,当選ゲーム媒体の選択処理のために用いるデッキが特定し,該特定したデッキに収容されているゲーム媒体の中から,所定の抽選アルゴリズムに従って,当選ゲーム媒体を選択し,プレイヤの端末装置に対して,当選ゲーム媒体の表示画面に対応するウェブページを生成して,生成したウェブページをプレイヤの端末装置に送信し,
プレイヤ識別情報「000001」,「000021」及び「000022」のプレイヤに対して,デッキ識別情報「D000001-1(デッキ1-1)」及び「D000001-2(デッキ1-2)」の2種類のデッキが割り当てることが可能であり,
デッキ内で最もレアリティの高いゲーム媒体が当選ゲーム媒体として選択されると,所定の初期化条件が満たされたとして,デッキを初期化するサーバ装置。」

(2)甲第2号証
ツ 「ソーシャルゲームを見る」(第1頁の「タグ」の欄)

テ 「今回このゲームが採用したのは「ボックスガチャ」と称するガチャ形式。あらかじめ決まった数のカードが用意され,その枚数だけカードを引けばその中に目当てのカードが必ず含まれる仕組み。」(第2頁第4?7行)

ト 「実際にやってみよう。ガチャガチャのなかには「SR(スーパーレア)」が100枚,「R(レア)」が200枚,さらにイベント限定の「特攻SR(SRの中でも特別なSR)」が40枚,「UR(ウルトラレア)」が1枚。計341枚が入っている。それより価値の低いコモンカードとアンコモンカードは無限だが,今回これは問題にならない。」(第2頁第11?17行)

ナ 「試しにガチャを回してみると「R」が1枚「SR」が1枚当たった。」(第3頁第1行)

ニ 「すると,「SR」と「R」の横の数値が減っていることがわかる。」(第3頁第2行)

ヌ 「このゲームでは無課金のガチャと課金のガチャにわかれており」(第4頁第1行)

ネ 第2頁の画像には「引けば引くほど中身のカードが減って…」の見出しの下に「UR,SR,R,UC,C」と記載し,それぞれ色分けされた領域を有する棒グラフ状の直方体が2つ記載されていることが看て取れる。

ノ 第3頁の上段の画像には,「[SR 100/100枚] [R 200/200枚]」,下段の画像には「[SR 99/100枚] [R 199/200枚]」と表示されていることが

ハ 第4頁の画像には「特効保証 地球連邦10連MSガシャ」というタイトルと,「期間限定のボックスMSガシャ。必ずレア以上(R/SR/UR)のカード9枚とスーパーレア以上(SR/UR)の特効カードが1枚出るよ!」と表示されていることが看て取れる。

甲第2号証の各画像や,甲第2号証に記載されるゲームがソーシャルゲームであることを勘案すると,甲第2号証に記載されるゲームは,携帯通信端末を用いて行われることは当業者にとって自明である。

甲第2号証の上記記載事項を含め,甲第2号証の全記載を総合すると,甲第2号証には以下の事項(以下,「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「あらかじめ決まった数のカードが用意され,その枚数だけカードを引けばその中に目当てのカードが必ず含まれる仕組みを有するボックスガチャであって,URが1枚,SRが100枚,Rが200枚,UCが無限枚数,Cが無限枚数のカードが入ったガチャガチャに対して,ガチャを回してみると,「R」が1枚「SR」が1枚当たることがある,携帯通信端末を用いて行われるソーシャルゲーム。」

(3)甲第3号証
ヒ 「モバゲーの新ガチャ「ボックスガチャ」」(第1頁のタイトル)

フ 「※補給は地球連邦ボックスMSガシャでのみ行え,地球連邦ボックスキャラガシャ,ジオンボックスMSガシャ,ジオンボックスキャラガシャでは補給できませんのでご了承ください。」(第2頁図中の「カード補給でUR機体を複数GET」の欄)

ヘ 「※残りカード枚数はお客様ごとに独立しています。
※ボックスのカード補給は,地球連邦ボックスMSガシャでのみ行えます。なお,URカードの残り枚数が0枚になったときに限ります。」(第2頁図中の「注意事項(必読)」の欄)

甲第3号証の上記記載事項を含め,甲第3号証の全記載を総合すると,甲第3号証には以下の事項(以下,「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「地球連邦ボックスMSガシャ,地球連邦ボックスキャラガシャ,ジオンボックスMSガシャ,ジオンボックスキャラガシャから,ガシャを選択でき,地球連邦ボックスMSガシャを選択し,URカードの残り枚数が0枚になったときに,ボックスのカード補給が行えるボックスガチャ。」

(4)甲第4号証
ホ 「【0059】[構成の説明]図1は,本発明が実施されるシステムの概要を説明する図である。同図に示すように,第1の実施形態では,データを提供する情報提供装置であるサーバー200と,ユーザーから情報提供の代価を徴収する課金サーバー800とを含む情報処理システムが,情報伝達の媒体である電気通信回線としてのインターネット400を介して,サーバー200および課金サーバー800とデータの送受信自在なユーザー端末600と接続されている。
【0060】サーバー200は,公知の汎用コンピュータ,あるいはパーソナルコンピュータなどであって,CPUと,ICメモリと,補助記憶装置と,CD或いはMOといった外部記憶媒体を読み込み自在な外部記憶媒体読込装置と,キーボードやマウスなどの入力装置と,ディスプレイ等の表示装置と,インターネット400に接続するための通信装置とが,システムバスを介して接続されている。サーバー200は,インターネット400に対して常時接続されており,WWWサーバーとしての機能を備える。そして,サーバー200は,本発明におけるデータ提供のためのWebサイトに係るサイト情報や,提供するプログラムやデータ等を格納しており,サイト情報に基づいてインターネット400上に,Webページ等を公開する。サーバー200は,このサイトに対してアクセスしてきた情報端末装置,即ちユーザー端末600に対して,Webページを構成する文書データ,画面データ,音楽データ等を送信する。ユーザー端末600は,受信したデータに基づく画面を表示し,ユーザーにWebページを閲覧させる。
【0061】図2は,ユーザー端末600の一例を示す外観図である。同図に示すように,ユーザー端末600は,CPUやICメモリ等からなる制御装置(図示略)と,数字などの操作ボタン642,十字操作キー644,ソフトキー646等の入力装置と,小型LCDディスプレイ66等の表示装置と,無線通信を行う無線装置68等が,システムバスを介して接続される公知の携帯電話機である。ユーザー端末600は,無線電話機としての機能だけでなく,インターネット400上に公開されているWebサイトへアクセスし,Webページの閲覧が可能なインターネット機能を備え,さらに,Webサイトからダウンロードされたプログラム,または内蔵された所与のプログラムを実行することによって,音声データや映像データの再生,ゲームプレイなどの種々の機能を追加・実現することが可能である。本実施形態におけるユーザー・インターフェースである仮想販売機の画像を表示するための情報は,Webサイトへのアクセスによって得ることもできる。
【0062】図2(a)の例では,表示装置66に,本実施形態におけるユーザー・インターフェースである仮想販売機10の一例が表示されている。仮想販売機10は,コンテンツを封入したカプセルCを販売する設定である。ユーザーは,先ず,Webサイトにアクセスして,所与の課金システムをへて仮想コイン50を手に入れる。そして,仮想コイン50を使って仮想販売機10でカプセルCを購入すると,それぞれのカプセルCに対応するコンテンツ(例えば,画像,音声,音楽,テキスト,ゲームプログラム等の各種データ)がユーザー端末600に送信され入手することができる。図2(b)は,送信されたコンテンツを,携帯電話機の待ち受け画面にしている例である。なお,ユーザー端末600は,携帯電話機に限らず,同様の機能を備えたPHS,PDA,パソコン,ゲーム機等であってもかまわない。」

マ 「【0081】コンテンツとしては,例えば,ユーザー端末600の待ち受け画面やメールに添付可能なコブタの画像データ,呼び出し音やシステム音などの音声データ,所与のゲームや待ち受け時計などのプログラム,所与のサイトにアクセスできるパスワード,特別なメールを配信してもらえるパスワード,或いは所定の申し込みによって別途,サービスや物品の提供を受けられるチケット・データなど,種々の形態が考えられる。どのカプセルCにどのコンテンツが封入されるかは,仮想販売機10にカプセルCが補充される際に,販売機管理部224により,記憶部240のコンテンツ管理テーブル259の設定に基づいて行われる。ここでデータ提供者が,コンテンツ管理テーブル259の出現率を適宜設定するならば,コンテンツに手に入りにくさ,即ちレア度を付与することが可能となる。したがって,コンテンツに所与のコレクション性をもたせることで,よりユーザーに購入してもらう楽しみと意欲をもってもらうことができる。」

ミ 「【0096】ユーザー端末600に,店頭ページが表示される(ステップS402)。図16は,店頭ページの一例を示す図である。図16(a)は,商店の店先を模した背景に,複数の仮想販売機10が並んでいる様子を示し,画面中央の販売機が選択対象になっている。画面上部には選択対象となっている販売機のコンテンツのシリーズ名が表示されている。図16(b)は,テキスト表示の場合である。ユーザー端末600は,ソフトキー646で「もどる」が選択されると,ここでメニュー画面に戻る(ステップS404のYES)。十字操作キー644の左右操作により選択対象の販売機が変更され,ソフトキー646で選択決定されると,選択された仮想販売機10の販売機IDが送信される(ステップS404のNO→S406)。
【0097】サーバー200が,販売機の選択信号(例えば販売機のID)を受信したならば,記憶部240より該当する販売機管理テーブル254を読み出し(ステップS407),処理部220で仮想販売機10の外観を示す画像を生成し送信する(ステップS409)。ユーザー端末600では,図17に示すように,示唆情報として仮想販売機10の外観を示す画像が表示される(ステップS410)。ユーザーは,この画像で販売機の中に配置されたカプセルCの並びを観察し,自分がほしいデータが入っているカプセルの配置を確認し,購入するタイミングを予測する。ここで,例えば,ユーザー端末600の操作ボタン642の「1」が押されると拡大表示,「2」が押されると縮小表示の視点変更要求が送信され,十字操作キー644の何れかの方向を押すと,押された方向へ視点を回り込ませるような視点変更要求が送信される(ステップS412)。」

ム 「【0103】ユーザー端末600に,レバー操作画面として,仮想販売機10の購入レバー13の拡大図が表示される(ステップS424)。図20は,レバー操作画面の一例である。ここで,例えば,所与の時間間隔内で,ユーザー端末600の十字操作キー644を,上→右→下→左といったように順に押されるといった,レバー操作がされると画面上で効果音とともにレバーが回転する画像が表示され,提供要求がサーバー200に送信される(ステップS426)
【0104】サーバー200は,提供要求を受信するとカプセル管理テーブル255から,オブジェクト排出部12に最も近いカプセルCを排出対象として選択する。カプセルCに付与されていたポイントは,ユーザー管理テーブル256の獲得ポイント数に加算される(ステップS427)。そして,処理部220で,選択されたカプセルCのカプセル開封画像を生成し,割り当てられたコンテンツ・データとそのアイコンをコンテンツDB290より読み出し,該当する効果音データが効果データ266から読み出し,ともに送信する(ステップS429)。」

甲第4号証の上記記載事項を含め,甲第4号証の全記載を総合すると,甲第4号証には以下の事項(以下,「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「データを提供する情報提供装置であるサーバーと,ユーザーから情報提供の代価を徴収する課金サーバーとを含む情報処理システムが,情報伝達の媒体である電気通信回線としてのインターネットを介して,データが送受信自在にユーザー端末と接続され,サーバーは,アクセスしてきたユーザー端末に対して,Webページを構成する文書データ,画面データ,音楽データ等を送信し,ユーザー端末は,受信したデータに基づく画面を表示し,ユーザー端末の表示装置には,商店の店先を模した背景に,複数の仮想販売機が並んでいる様子を示し,該仮想販売機は,コンテンツを封入したカプセルを販売する設定であって,十字操作キーの左右操作により選択対象の販売機が変更され,ソフトキーで選択決定されると,選択された仮想販売機の販売機IDが送信され,サーバーが,販売機の選択信号(販売機のID)を受信したならば,仮想販売機の外観を示す画像を生成し送信し,さらに,ユーザー端末から提供要求がサーバーに送信されると,サーバーは,オブジェクト排出部に最も近いカプセルを排出対象として選択して,選択されたカプセルCのカプセル開封画像を生成して送信するシステム。」

(5)甲第5号証
メ 「着せ替えガチャシリーズ…
多数のアイテムから1種のアイテムが当選するボックスです。
ボックスによっては,よりレアが出やすい「SUPER」や,レア以上しか出ない「HYPER」などのバージョン違いが存在するものがあります。」(第1頁の左欄中ほどより下)

甲第5号証の上記記載事項を含め,甲第5号証の全記載を総合すると,甲第5号証には以下の事項(以下,「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「多数のアイテムから1種のアイテムが当選するアイテムボックスであって,よりレアが出やすい「SUPER」や,レア以上しか出ない「HYPER」などのバージョン違いがあるボックス。」

5.判断
(1)特許法第29条の2について
ア 本件特許発明1,4,6について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
後者の「レアリティ値」は,前者は「レベル」に相当する。
後者の「ゲーム媒体」は,前者は「アイテム」に相当する。
後者の「デッキ」は,前者は「アイテムグループ」に相当する。
後者の「プレイヤ」は,前者は「ユーザ」に相当する。
後者の「端末装置」は,前者は「通信端末」に相当する。
後者は,2種類のデッキ1-1とデッキ1-2のそれぞれに「「1」から「4」までのレアリティ値のゲーム媒体」を1以上含んでいるのであるから,後者は,前者の「所定レベル以上のアイテムをそれぞれ1以上含む複数のアイテムグループ」に相当する構成を備えているといえる。
後者のサーバ装置は「端末装置に対して,ゲーム媒体取得要求の生成及びサーバ装置への送信を促すためのウェブページを表示」させており,後者において「プレイヤ」は,「ノーマル抽選」と「プレミアム抽選」のどちらかを選択しているところから,後者は,前者の「1のアイテムグループを選択するための選択画面をユーザの操作する通信端末に送信する」に相当する構成を備えているといえ,そのための「通信手段」を有していることは自明である。
後者のサーバ装置は「プレイヤの端末装置からデッキ選択情報を含むゲーム媒体取得要求を取得すると,取得されたゲーム媒体取得要求に含まれているデッキ選択情報に基づいて,当選ゲーム媒体の選択処理のために用いるデッキが特定し,該特定したデッキに収容されているゲーム媒体の中から,所定の抽選アルゴリズムに従って,当選ゲーム媒体を選択し,プレイヤの端末装置に対して,当選ゲーム媒体の表示画面に対応するウェブページを生成して,生成したウェブページをプレイヤの端末装置に送信」しているから,後者は,前者の「前記選択画面で選択され前記ユーザに設定されたアイテムグループに属するアイテムのうち,当該ユーザに少なくとも1の任意のアイテムを選択する」こと,及び「当該選択されたアイテムを,前記ユーザに提供する」ことに相当する構成を備えているといえ,そのための「選択手段」及び「提供手段」を有していることは自明である。
後者のサーバ装置は,プレイヤ識別情報「000001」,「000021」及び「000022」のプレイヤに対して,デッキ識別情報「D000001-1(デッキ1-1)」及び「D000001-2(デッキ1-2)」の2種類のデッキを割り当てることができ,これは,「複数のデッキが,複数のプレイヤに設定されること」,及び「各プレイヤに設定され得るデッキにおける各レアリティ値のゲーム媒体の個数は,当該デッキに対応する他のプレイヤに設定されるデッキにおける各レアリティ値のゲーム媒体の個数と同一であること」を意味しているから,後者は,前者の「複数のアイテムグループが異なるユーザに設定される場合,各ユーザに設定され得るアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数は,当該アイテムグループに対応する他のユーザに設定されるアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数と同一である」ことに相当する構成を備えているといえる。

以上のことより,両者は,
〈一致点〉
「所定レベル以上のアイテムをそれぞれ1以上含む複数のアイテムグループのうち,1のアイテムグループを選択するための選択画面をユーザの操作する通信端末に送信する送信手段と,
前記選択画面で選択され前記ユーザに設定されたアイテムグループに属するアイテムのうち,当該ユーザにアイテムの中から少なくとも1の任意のアイテムを選択する選択手段と,
当該選択されたアイテムを,前記ユーザに提供する提供手段と,
を備え,
前記複数のアイテムグループが異なるユーザに設定される場合,各ユーザに設定され得るアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数は,当該アイテムグループに対応する他のユーザに設定されるアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数と同一であるサーバ。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
<相違点1>
ユーザに提供するアイテムを選択する選択手段に関して,前者はユーザに「未提供のアイテム」の中から選択しているのに対して,後者はそうではない点。

上記相違点につき検討する。
本件特許発明1と甲1発明の間には,相違点1が存在するため,両者は同一ではない。
また,上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は,他のいずれの甲号証にも記載されておらず,周知技術でもなく,課題解決のための具体化手段における微差であるとも認められないから,両者が実質同一であるともいえない。
本件特許発明4及び6と甲1発明とを比較すると,本件特許発明1と同様に上記相違点1で相違し,同様の理由で,本件特許発明4及び6と甲1発明とが,同一であるとも,実質同一であるとも認められない。

イ 本件特許発明2,5,7について
本件特許発明2と甲1発明とを対比する。
上記「ア 本件特許発明1,4,6について」における対比を踏まえると,両者は,
〈一致点〉
「所定レベル以上のアイテムをそれぞれ1以上含む複数のアイテムグループのうち,1のアイテムグループを選択するための選択画面をユーザの操作する通信端末に送信する送信手段と,
前記選択画面で選択されたアイテムグループに属するアイテムのうち,当該ユーザに少なくとも1のアイテムを選択する選択手段と
当該選択されたアイテムを,前記ユーザに提供する提供手段と,
を備えたサーバ。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
<相違点1>
ユーザに提供するアイテムに関して,前者はユーザに「未提供のアイテム」を選択しているのに対して,後者はそうではない点。
<相違点2>
選択画面の送信に関して,前者は「ユーザにアイテムを提供することによりアイテムグループに前記所定レベル以上のアイテムが1以上減少した場合,該アイテムグループに対応する選択肢を選択不可能にした選択画面」を送信しているのに対して,後者はそうではない点。

上記相違点につき検討する。
本件特許発明2と甲1発明の間には,相違点1及び2が存在するため,両者は同一ではない。
また,上記相違点1及び2に係る本件特許発明1の発明特定事項は,他のいずれの甲号証にも記載されておらず,周知技術でもなく,課題解決のための具体化手段における微差であるとも認められないから,両者が実質同一であるともいえない。
本件特許発明5及び7と甲1発明とを比較すると,本件特許発明2と同様に上記相違点1及び2で相違し,同様の理由で,本件特許発明5及び7と甲1発明とが,同一であるとも,実質同一であるとも認められない。
なお,特許異議申立人上杉則亮は,相違点2に係る本件特許発明2の発明特定事項は,同人が提出した甲第1号証に記載されていると主張しているが,その根拠とする甲第1号証の段落【0051】及び【0052】には「デッキ内で最もレアリティの高いゲーム媒体が当選ゲーム媒体として選択されたことを含む,所定の初期化条件が満たされたことに応じて,デッキを初期化する」ことが記載されるのみであって,「アイテムグループに対応する選択肢を選択不可能にした選択画面を送信」する点については,記載も示唆もなく,かかる主張は理由がない。

ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は,本件特許発明1又は2を引用し,さらに他の発明特定事項を付加したものである。
そして,「ア 本件特許発明1,4,6について」,「イ 本件特許発明2,5,7について」で検討したとおり,本件特許発明1,2,4?7が,甲1発明と同一もしくは実質同一ではない以上,本件特許発明3は,甲1発明と同一もしくは実質同一ではない。
よって,本件特許発明1乃至7は,特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものではない。

(2)特許法第29条第2項について
本件特許発明1,4,6について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
後者のボックスガチャは,それを構成するカードと枚数の関係から,前者の「所定レベル以上のアイテムをそれぞれ1以上含むアイテムグループ」に相当する。
後者において,ガチャを回すと「R」が1枚「SR」が1枚当たるところから,後者は,前者の「少なくとも1の任意のアイテムを選択する選択手段」及び「選択されたアイテムを,前記ユーザに提供する提供手段」を有していることは自明であり,ソーシャルゲームの技術常識を勘案すると,上記の各手段は,携帯通信端末外にあるサーバに備えられていることも自明である。
また,サーバが,携帯通信端末に対して何らかの画面を送信する送信手段を備えていることも自明である。

以上のことより,両者は,
〈一致点〉
「携帯通信端末に対して画面を送信する送信手段と,
所定レベル以上のアイテムを1以上含むアイテムグループに属するアイテムの中から少なくとも1の任意のアイテムを選択する選択手段と,
当該選択されたアイテムを,前記ユーザに提供する提供手段を備えたサーバ。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
<相違点1>
アイテムグループに関して,前者は「複数のアイテムグループ」を対象としているのに対して,後者はそうではない点。
<相違点2>
ユーザの操作する通信端末に画面を送信する送信手段に関して,前者は「複数のアイテムグループのうち,1のアイテムグループを選択するための選択画面」を送信しているのに対して,後者は,そもそも「複数のアイテムグループ」を対象としていないため,「アイテムグループを選択するための選択画面」ではない点。
<相違点3>
ユーザに提供するアイテムを選択する選択手段に関して,前者はユーザに「未提供のアイテム」の中から選択しているのに対して,後者はそうではない点。
<相違点4>
複数のアイテムグループが異なるユーザに設定される場合に各ユーザに設定され得るアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数に関して,前者は「アイテムグループに対応する他のユーザに設定されるアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数と同一」であるのに対して,後者はその点が不明である点。
上記相違点につき検討する。
上記相違点のうち,相違点3及び4に係る本件特許発明1の発明特定事項については,甲第3?5号証には,記載も示唆もなく,当業者にとって設計的事項であったとも認められない。
したがって,本件特許発明1は,甲2発明及び甲3乃至5発明から当業者が容易になし得るものではない。
本件特許発明4及び6と甲2発明とを比較すると,本件特許発明1と同様に上記相違点1乃至5で相違し,同様の理由で,本件特許発明4及び6は,甲2発明及び甲3乃至5発明から当業者が容易になし得るものではない。
よって,本件特許発明1,4,6は,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。

(3)第17条の2第3項について
本件特許発明1,4,6について
特許異議申立人上杉則亮が,特許異議申立書第31頁の「(6)具体的理由3(第17条の2第3項)」において,以下のように主張しているので,検討する。
「拒絶査定不服審判請求時の補正により,本件請求項1,4及び6に「前記複数のアイテムグループが異なるユーザに設定される場合,各ユーザに設定され得るアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数は,当該アイテムグループに対応する他のユーザに設定されるアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数と同一である」との構成が追加されている。
しかしながら,当該構成は本件の当初明細書等には,開示も示唆もされていない。」(なお,特許異議申立人が追加されたと主張する上記構成を,以下,「補正事項」という。)

本件の願書に最初に添付された明細書及び図面には以下の記載がある。
モ 「【0019】
アイテム情報テーブル111a?111cは,アイテムの総数及びアイテム種類に係る情報を含むテーブルである。図2(a)?(c)に,アイテム情報テーブル111a?111cの例を示す。図2(a)?(c)に示すように,例えばアイテム情報テーブル111aは,アイテム識別情報“UNI1”,アイテム名“アイテムA”,アイテム種類“3”,アイテムグループ“アイテムグループ1”を含む。アイテム識別情報とは,本システムにおいてアイテムを一意に特定するための識別子である。アイテム情報テーブル111a?111cには,本ゲームサーバ1においてアイテム情報テーブルを一意に特定するためのテーブル識別情報が付与される。ここではアイテム情報テーブル111a?111cには,それぞれテーブル識別情報として“TID1”,“TID2”,及び“TID3”が付与されているものとする。アイテムグループとは,各アイテム情報テーブルに含まれるアイテムを小分けするグループである。アイテム情報テーブル111aのアイテムは,アイテムグループ1?3の3つのアイテムグループに小分けされる。各アイテムグループは少なくとも1つの所定の値以上のアイテム種類の値のアイテム(以下,目玉アイテムという。)を含む。具体的には所定のアイテム種類の値(レベル)は“5”である。なお図2の例ではアイテムグループは3つであるが,2つであってもよく,4つ以上であってもよい。図2aの例では,アイテムグループ1には目玉アイテムが1つ,アイテムグループ2には目玉アイテムが2つ,アイテムグループ3には目玉アイテムが2つ含まれている。
【0020】
ユーザ情報テーブル112は,ユーザ毎の提供アイテム,及びアイテムの取得数を算出するための情報を格納するテーブルである。ユーザ情報テーブル112は,ユーザ識別情報,テーブル識別情報,及び提供済アイテム識別情報を対応付けている。ここで提供済アイテム識別情報とは,ゲームサーバ1がユーザに提供済みのアイテムデータに係るアイテム識別情報である。
【0021】
図3に,ユーザ情報テーブル112の例を示す。図3に示すように,ユーザ情報テーブル112は,ユーザ識別情報“UID1”,テーブル識別情報“TID1”,提供済みアイテム識別情報“UNI2”,“UNI4”等を含む。」

ヤ 【図2】から,テーブル識別情報TID1は,アイテム情報テーブル111aであって,アイテムグループ1?3を有すること,,テーブル識別情報TID2は,アイテム情報テーブル111bであって,アイテムグループ1?3を有する点が看て取れる。

ユ 【図3】から,ユーザ識別情報「UID1」と「UID3」で表示される2人のユーザに,テーブル識別情報「TID1」で表されるアイテム情報テーブルが割り当てられ,ユーザ識別情報「UID2」と「UID5」で表示される2人のユーザに,テーブル識別情報「TID2」で表されるアイテム情報テーブルが割り当てられる点が看て取れる。
そして,テーブル識別情報「TID1」,「TID2」は,【図2】のアイテム情報テーブル「111a」,「111b」であって,ユーザ識別情報「UID1」と「UID3」に割り当てられるアイテム情報テーブル「111a」は同一のもの,ユーザ識別情報「UID2」と「UID5」に割り当てられるアイテム情報テーブル「111b」は同一のものとなることは自明である。

以上のことより,本件の願書に最初に添付された明細書及び図面には,
「ユーザ識別情報「UID1」と「UID3」で表示される2人のユーザは,テーブル識別情報「TID1」で表されるアイテム情報テーブルであって,アイテムグループ1?3の3つのアイテムグループに小分けされたアイテム情報テーブル111aを用いてゲームを行うこと,及び,ユーザ識別情報「UID2」と「UID5」で表示される2人のユーザは,テーブル識別情報「TID2」で表されるアイテム情報テーブルであって,アイテムグループ1?3の3つのアイテムグループに小分けされたアイテム情報テーブル111bを用いてゲームを行うこと」が記載されていることになる。(以下,「当初明細書等記載事項」という。)

補正事項と当初明細書等記載事項とを比較する。
まず,当初明細書等記載事項における,ユーザ識別情報「UID1」と「UID3」で表示される2人のユーザについて検討する。
後者のアイテム情報テーブル111aの「小分けされたアイテムグループ1?3の3つのアイテムグループ」は,前者の「複数のアイテムグループ」に対応する。
後者の「ユーザ識別情報「UID1」と「UID3」で表示される2人のユーザ」は,前者の「異なるユーザ」に対応する。
後者の「ユーザ識別情報「UID1」に設定されるアイテム情報テーブル」と「ユーザ識別情報「UID3」に設定されるアイテム情報テーブル」は同一の「アイテム情報テーブル111a」であるから,アイテム情報テーブルを構成する「アイテムグループ」も,当然,同一の「アイテムグループ1?3」となる。
したがって,後者において,「ユーザ識別情報「UID1」で表示されるユーザ」と「ユーザ識別情報「UID3」で表示されるユーザ」に設定されたアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数は,互いに「当該アイテムグループに対応する他のユーザに設定されるアイテムグループにおける各レベルのアイテムの個数と同一」となることは自明である。
また,ユーザ識別情報「UID2」と「UID5」で表示される2人のユーザについても,同様のことがいえる。
よって,上記補正事項は,本件の願書に最初に添付された明細書及び図面に記載されていた事項であって,所謂新規事項の追加には該当しない。
よって,本件特許発明1,4,6は,特許法第17条の2第3項の規定に違反して特許されたものではない。

6.むすび
したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-05-11 
出願番号 特願2015-116759(P2015-116759)
審決分類 P 1 651・ 55- Y (A63F)
P 1 651・ 16- Y (A63F)
P 1 651・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
藤本 義仁
登録日 2016-08-19 
登録番号 特許第5989189号(P5989189)
権利者 グリー株式会社
発明の名称 サーバ、プログラム、及びサーバの制御方法  
代理人 岡野 大和  
代理人 田中 伸次  
代理人 杉村 憲司  
代理人 河野 英仁  

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