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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H01R
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H01R
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する H01R
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01R
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する H01R
管理番号 1328109
審判番号 訂正2017-390012  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-02-07 
確定日 2017-04-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4076314号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4076314号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4076314号は、平成12年7月17日に特許出願され、その請求項1ないし2に係る発明は、平成20年2月8日にその特許権の設定登録がなされたものであって、平成29年2月7日に本件訂正審判が請求された。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4076314号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。(審決注:下線部分が訂正箇所である。)

ア 訂正事項1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に「・・・(前略)・・・電気コネクタにおいて、金属板を打ち抜いて、・・・(中略)・・・複数延出して作られた細条片から形成された端子と固定金具・・・(中略)・・・一体モールド成形により保持されており、・・・(中略)・・・固定金具を有する電気コネクタ。」とあるのを、「・・・(前略)・・・電気コネクタの製造方法において、金属板を打ち抜いて、・・・(中略)・・・複数延出する細条片を作ること、及び、細条片から形成された端子と固定金具・・・(中略)・・・一体モールド成形により保持すること、を含み、・・・(中略)・・・固定金具を有する電気コネクタの製造方法。」に訂正する。
イ 訂正事項2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に「・・・(前略)・・・金属板を打ち抜いて、同列に定間隔で同一形状に複数延出・・・(中略)・・・端子と固定金具が配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持・・・(後略)・・・」とあるのを、「・・・(前略)・・・金属板を打ち抜いて、キャリアから同列に定間隔で同一形状に複数延出・・・(中略)・・・端子と固定金具をキャリアにつなげたまま配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持・・・(後略)・・・」に訂正する。
ウ 訂正事項3
本件特許の特許請求の範囲の請求項2に「電気コネクタ。」とあるのを、「電気コネクタの製造方法。」に訂正する。
エ 訂正事項4
本件特許の明細書の【発明の名称】に「固定金具を有する電気コネクタ」とあるのを、「固定金具を有する電気コネクタの製造方法」に訂正する。
オ 訂正事項5
本件特許の明細書の段落【0001】に「電気コネクタに関する。」とあるのを、「電気コネクタの製造方法に関する。」に訂正する。
カ 訂正事項6
本件特許の明細書の段落【0007】に「電気コネクタを提供することを目的とする。」とあるのを、「電気コネクタの製造方法を提供することを目的とする。」に訂正する。
キ 訂正事項7
本件特許の明細書の段落【0008】に「本発明に係る電気コネクタは、」とあるのを、「本発明に係る電気コネクタの製造方法は、」に訂正する。
ク 訂正事項8
本件特許の明細書の段落【0009】に「かかる電気コネクタにおいて、本発明では、金属板を打ち抜いて、同列に定間隔で同一形状に複数延出して作られた細条片から形成された端子と固定金具が配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持されており、・・・(後略)・・・」とあるのを、「かかる電気コネクタの製造方法において、本発明では、金属板を打ち抜いて、キャリアから同列に定間隔で同一形状に複数延出する細条片を作ること、及び、細条片から形成された端子と固定金具をキャリアにつなげたまま配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持すること、を含み、・・・(後略)・・・」に訂正する。

第3 当審の判断
1.訂正事項1及び訂正事項2について
訂正事項1及び訂正事項2はいずれも、請求項1の訂正に関するものであるからまとめて検討する。
(1)訂正の目的について
まず、訂正事項1を検討するに、訂正前請求項1の記載は、「・・・(前略)・・・固定金具を有する電気コネクタ。」であるから、訂正前請求項1発明の対象は、「電気コネクタ」という「物」であることは明らかである。
そして、訂正前請求項1には、「金属板を打ち抜いて、同列に定間隔で同一形状に複数延出して作られた細条片から形成された端子と固定金具が配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持されており」と特定されていることから、電気コネクタを構成する「端子と固定金具」に関し、金属板を打ち抜いて、細条片を同列に定間隔で同一形状に複数延出して作ること、及び、細条片から形成された端子と固定金具を配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持すること、という、「端子と固定金具」の「製造方法」が包含されているといえる。

ここで、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))と判示されている。

そこで、上記判示事項を踏まえて検討すると、訂正前請求項1の「金属板を打ち抜いて、・・・(中略)・・・複数延出して作られた細条片から形成された端子と固定金具が・・・(中略)・・・一体モールド成形により保持されており」との「端子と固定金具」の製造方法が記載されているから、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるものである。

そして、訂正事項1は、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある訂正前請求項1を、「電気コネクタの製造方法」として、「金属板を打ち抜いて、・・・(中略)・・・複数延出する細条片を作ること、及び、細条片から形成された端子と固定金具・・・(中略)・・・一体モールド成形により保持すること、を含み」を特定する訂正後請求項1に訂正するものであって、「発明が明確であること」という要件を満たすものである。
したがって、この点は、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

次に、訂正事項2を検討するに、訂正前請求項1は、電気コネクタを構成する「端子と固定金具」に関し、金属板を打ち抜いて、細条片を同列に定間隔で同一形状に複数延出して作ること(以下「第1の製造工程」という。)、及び、細条片から形成された端子と固定金具を配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持すること(以下「第2の製造工程」という。)を包含しているといえる。
そうすると、訂正前請求項1に「・・・(前略)・・・金属板を打ち抜いて、同列に定間隔で同一形状に複数延出・・・(中略)・・・端子と固定金具が配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持・・・(後略)・・・」とあるのを、「・・・(前略)・・・金属板を打ち抜いて、キャリアから同列に定間隔で同一形状に複数延出・・・(中略)・・・端子と固定金具をキャリアにつなげたまま配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持・・・(後略)・・・」に訂正することは、細条片を同列に定間隔で同一形状に複数延出して作る前記第1の製造工程を、細条片が「キャリアから」延出すると限定するものであり、また、細条片から形成された端子と固定金具を配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持する前記第2の製造工程を、端子と固定金具を「キャリアにつなげたまま」保持すると限定するものである。
したがって、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
以上のとおり、請求項1の訂正に関する訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」及び同条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

(2)願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
まず、訂正事項1を検討するに、願書に添付した明細書の段落【0009】には、「本発明では、金属板を打ち抜いて、同列に定間隔で同一形状に複数延出して作られた細条片から形成された端子と固定金具が配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持されており、」、同段落【0019】には「該端子3及び固定金具4は、同一形状・寸法をなしていて、同一の金属板から同時に、同一金型で作られている。例えば、図1のものにあっては、図2に見られるように、金属板を打ち抜いて帯状のキャリアA1から定間隔pで櫛歯状に延出する一連の細条片A2を有する二点鎖線で示される部材を形成し、これを実線のごとく曲げ加工して得られる。これらの細条片A2が端子としてそして固定金具として用いられる。この曲げ加工は、これら細条片A2がハウジングに保持される前になされる。」、同段落【0021】に「本実施形態にあっては、図2のごとく上記端子3及び固定金具4が曲げ加工を受けた形状でキャリアA1につながっている状態で、モールド成形金型(図示せず)に配置されてハウジング2と一体モールド成形されて該ハウジング2により保持され、しかる後に上記キャリアA1が切り離されて図1及び図3のごとくの形態となる。」と記載されている。
よって、願書に添付した明細書には、訂正後請求項1発明に対応する「金属板を打ち抜いて、・・・(中略)・・・複数延出する細条片を作ること、及び、細条片から形成された端子と固定金具・・・(中略)・・・一体モールド成形により保持すること、を含」むことが記載されていると解されるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。

次に、訂正事項2を検討するに、「キャリアから同列に定間隔で同一形状に複数延出」に関し、願書に添付した明細書の段落【0019】には「例えば、図1のものにあっては、図2に見られるように、金属板を打ち抜いて帯状のキャリアA1から定間隔pで櫛歯状に延出する一連の細条片A2を有する二点鎖線で示される部材を形成し、これを実線のごとく曲げ加工して得られる。これらの細条片A2が端子としてそして固定金具として用いられる。この曲げ加工は、これら細条片A2がハウジングに保持される前になされる」ことが記載されている。
また、「端子と固定金具をキャリアにつなげたまま配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持」することに関し、同段落【0019】には、「これらの細条片A2が端子としてそして固定金具として用いられる。この曲げ加工は、これら細条片A2がハウジングに保持される前になされる。キャリアA1は、ハウジングに保持される前に切り離されることも、あるいは上記保持後に切り離されることもある。」と記載されていること、及び同段落【0021】に「本実施形態にあっては、図2のごとく上記端子3及び固定金具4が曲げ加工を受けた形状でキャリアA1につながっている状態で、モールド成形金型(図示せず)に配置されてハウジング2と一体モールド成形されて該ハウジング2により保持され、しかる後に上記キャリアA1が切り離されて図1及び図3のごとくの形態となる」ことが記載されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
ア 発明が解決しようとする課題とその解決手段について
特許法第126条第6項は、第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものである。
また、特許法第36条第4項第1号の規定により委任された特許法施行規則の第24条の2には、「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定されているから、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明において、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が、実質的に変更されたものか否かにより、訂正後請求項1発明の技術的意義が、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更されたものであるか否かについて検討する。

訂正前の本件特許明細書の段落【0005】ないし【0010】の記載から、訂正前請求項1発明の課題は、「安価でかつ小型化の可能な取付金具を有し、回路基板に対する平坦度が一致し、回路基板への確実な実装が得られる」ことであり、その解決手段は「端子と固定金具」について、「金属板を打ち抜いて、同列に定間隔で同一形状に複数延出して作られた細条片から形成された端子と固定金具が配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持」されることである。
一方、訂正後の本件特許明細書の段落【0005】ないし【0010】の記載から、訂正後請求項1発明の課題は、「安価でかつ小型化の可能な取付金具を有し、回路基板に対する平坦度が一致し、回路基板への確実な実装が得られる」ことであり、その解決手段は「端子と固定金具」について、「金属板を打ち抜いて、キャリアから同列に定間隔で同一形状に複数延出する細条片を作ること、及び、細条片から形成された端子と固定金具をキャリアにつなげたまま配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持すること」である。
してみると、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明の課題には、何ら変更はなく、また、訂正後請求項1発明における課題解決手段は、(1)で検討したように、訂正前請求項1発明の課題解決手段を技術的に限定するものであって、実質上拡張するものではない。
したがって、訂正後請求項1発明の技術的意義は、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正による第三者の不測の不利益について
特許請求の範囲は、「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載されたもの(特許法第36条第5項)である。
また、特許法第126条第6項は、第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならない旨を規定したものであって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、言い換えれば、訂正前の発明の「実施」に該当しないとされた行為が訂正後の発明の「実施」に該当する行為となる場合、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため、そうした事態が生じないことを担保したものである。
以上を踏まえ、訂正前請求項1発明と訂正後請求項1発明において、それぞれの発明の「実施」に該当する行為の異同により、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為が、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものであるか否かについて検討する。

ここで、特許法第2条第3項第1号に規定された「物の発明」(訂正前請求項1発明)及び第3号に規定された「物を生産する方法の発明」(訂正後請求項1発明)の実施について比較する。
「物の発明」の実施(第1号)とは、「その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」であり、「物を生産する方法」の実施(第3号)とは、「その方法の使用をする行為」(第2号)のほか、その方法により生産した「物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」である。ここで、「物を生産する方法」の実施における「その方法の使用をする行為」とは、「その方法の使用により生産される物の生産をする行為」と解されることから、「物の発明」の実施における「その物の生産」をする行為に相当する。

すると、「物の発明」の実施においては、物の生産方法を特定するものではないのに対して、「物を生産する方法の発明」の実施においては、物の生産方法を「その方法」に特定している点で相違するが、その実施行為の各態様については、全て対応するものである。

そして、訂正前請求項1発明は、「金属板を打ち抜いて、同列に定間隔で同一形状に複数延出して作られた細条片から形成された端子と固定金具が配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持されて」いるという製造方法(以下「特定の製造方法」という)により「電気コネクタ」という物が特定された「物の発明」であるから、前記特定の製造方法により製造された「電気コネクタ」に加え、前記特定の製造方法により製造された「電気コネクタ」と同一の構造・特性を有する物も、特許発明の実施に含むものである。
一方、訂正後請求項1発明は、上記特定の製造方法を更に限定した製造方法により「電気コネクタの製造方法」という方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから、前記特定の製造方法を更に限定した製造方法により製造された「電気コネクタ」を、特許発明の実施に含むものである。
したがって、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえない。

ウ 小括
訂正後請求項1発明の技術的意義は、訂正前請求項1発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではなく、訂正後請求項1発明の「実施」に該当する行為は、訂正前請求項1発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえないから、訂正事項1及び訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)独立して特許を受けることができるものであるか否かについて
訂正事項2は、発明特定事項を限定するものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1及び2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討すべきところ、訂正後請求項1発明及び訂正後請求項2発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後請求項1発明及び訂正後請求項2発明は、いずれも特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、当該訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

2.訂正事項3について
上記「1.」と同様の理由により、当該訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、特許法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

3.訂正事項4ないし8について
上記訂正事項4ないし8は、上記訂正事項1ないし3の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載及び発明の名称との整合を図るものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、また、特許法第126条第5項、第6項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求に係る訂正事項1ないし8は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
固定金具を有する電気コネクタの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに複数の端子と複数の固定金具が保持されていて、一端側に接触部を有する端子の他端側が接続部として、そして一端側にハウジングへの埋没部を有する固定金具の他端側が固定用の脚部としてそれぞれハウジング外に延出して接続対象の取付面上に位置するようになっている電気コネクタの製造方法において、
金属板を打ち抜いて、キャリアから同列に定間隔で同一形状に複数延出する細条片を作ること、及び、
細条片から形成された端子と固定金具をキャリアにつなげたまま配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持すること、を含み、
端子と固定金具はいずれも一端側と他端側の間で略L字状に屈曲された中間部と該中間部よりも一端側で該中間部に隣接する直状部と該直状部から延びる湾曲部を有するように作られていて、端子の一端側が接触部として相手コネクタの受入れのためのハウジングの凹部形状の受入部に臨んで位置し、固定金具の埋没部は端子の配列方向両端側に位置して、上記受入部の両端を形成するハウジングの端壁部に埋没して保持されており、上記埋没部は中間部に隣接する直状部を含んでいることを特徴とする固定金具を有する電気コネクタの製造方法。
【請求項2】
配列は対称に二つ設けられていることとする請求項1に記載の固定金具を有する電気コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固定金具を有する電気コネクタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の電気コネクタとしては、特開平9-139242に開示されているものが知られている。
【0003】
この公知のコネクタは、添付図面の図9に見られるように、ハウジング50に端子51が複数植設されており、該端子51はハウジングの底部位置で側方に向け屈曲され延出する接続部51Aを有している。又、ハウジング50の長手方向端部近傍には、強度を有する固定金具52が取り付けられている。この固定金具52も、上記ハウジングの底部位置で側方に延出する脚部52Aを有している。かかる固定金具52は、図の上方に示されているように複雑な形状の取付部53を有しており、この取付部がハウジングの対応溝内に圧入されてハウジング50により保持される。
【0004】
使用に際しては、上記コネクタは取付対象の取付面、例えば回路基板の面上に配置され、端子51の接続部51Aと固定金具52の脚部52Aが回路基板の面に接面する。接続部51Aは接面せる対応回路部と半田接続され、脚部52Aは対応部位と半田固定される。この固定金具52の脚部52Aの半田固定によってコネクタは回路基板に保持される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図9の公知のコネクタにあっては、別途固定金具を必要とすることに起因し、いくつかの解決すべき課題を残している。先ず、固定金具を用意せねばならず、部品点数が増え、加工そして組立も工数が複雑化し、ひいてはコスト高となる。次に、固定金具は、組立作業との関係で、端子から或る程度の距離をもって位置する必要があり、その分だけコネクタは大型化してしまう。
【0006】
更に、端子と固定金具の製造工程は、別々であるため、その寸法の管理も異なり、コネクタを回路基板に実装するとき、端子と固定金具との間に段差が生じ、回路基板に対する平坦度が一致しないという問題がある。
【0007】
本発明はかかる課題を解決し、安価でかつ小型化の可能な取付金具を有し、回路基板に対する平坦度が一致し、回路基板への確実な実装が得られる電気コネクタの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電気コネクタの製造方法は、ハウジングに複数の端子と複数の固定金具が保持されていて、一端側に接触部を有する端子の他端側が接続部として、そして一端側にハウジングへの埋没部を有する固定金具の他端側が固定用の脚部としてそれぞれハウジング外に延出して接続対象の取付面上に位置するようになっている。
【0009】
かかる電気コネクタの製造方法において、本発明では、金属板を打ち抜いて、キャリアから同列に定間隔で同一形状に複数延出する細条片を作ること、及び、細条片から形成された端子と固定金具をキャリアにつなげたまま配列状態でハウジングとの一体モールド成形により保持すること、を含み、端子と固定金具はいずれも一端側と他端側の間で略L字状に屈曲された中間部と該中間部よりも一端側で該中間部に隣接する直状部と該直状部から延びる湾曲部を有するように作られていて、端子の一端側が接触部として相手コネクタの受入れのためのハウジングの凹部形状の受入部に臨んで位置し、固定金具の埋没部は端子の配列方向両端側に位置して、上記受入部の両端を形成するハウジングの端壁部に埋没して保持されており、上記埋没部は中間部に隣接する直状部を含んでいることを特徴としている。
【0010】
このような構成の本発明によると、端子と固定金具とは同一形状に形成されているため、同列に密に配列される。端子の一端側は受入部に臨んでおり、相手コネクタの端子と接触し、又、固定金具は中間部から一端側の部分の埋没部が、上記受入部の両端を形成するハウジングの端壁に埋没して保持されており、固定金具の保持を増強している。これに対して、端子そして固定金具の他端側は接続部として形成され、ハウジング外にあって、回路基板等の接続対象と半田により接続される。かかる端子と固定金具は定間隔で位置する配列を形成しているので、両者は密に配置され、コネクタは配列方向にて小型化される。その際、固定金具は配列の範囲の両端側に位置しているが、端子と固定金具とは、同一形状に形成されているので、回路基板に対する平坦度が一致し、回路基板への確実な接続が得られる。又、配列は対称に二つ設けられていることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面の図1ないし図8にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態のコネクタを示し、図1(A)はこのコネクタの一部破断平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【0017】
図1のコネクタ1は、略直方体の外形をなし、絶縁材のハウジング2により複数の端子3そして固定金具4が保持されている。ハウジング2は図1(A),(B)に見られるように横長に形成され、その両側にて長手方向に端子3そして固定金具4が等間隔に配列されている。該固定金具4はこの配列方向の両端にて二つづつ設けられている。
【0018】
上記ハウジング2は、上方に開口して、相手コネクタの受入れのための受入部5が有底凹部形状に形成されている。端子配列方向たるコネクタの長手方向で、該受入部5の両端側の上縁には、相手コネクタの受入れを容易にするための導入テーパ部5Aが設けられている。
【0019】
上記受入部5の長手方向に延びる対向内縁に沿って端子3そしてその両端側に固定金具4が位置している。該端子3及び固定金具4は、同一形状・寸法をなしていて、同一の金属板から同時に、同一金型で作られている。例えば、図1のものにあっては、図2に見られるように、金属板を打ち抜いて帯状のキャリアA1から定間隔pで櫛歯状に延出する一連の細条片A2を有する二点鎖線で示される部材を形成し、これを実線のごとく曲げ加工して得られる。これらの細条片A2が端子としてそして固定金具として用いられる。この曲げ加工は、これら細条片A2がハウジングに保持される前になされる。キャリアA1は、ハウジングに保持される前に切り離されることも、あるいは上記保持後に切り離されることもある。
【0020】
このように、端子3と固定金具4は同一形状であるので、ここでは、その形状に関し、端子3について説明する。端子3は、図3(A)に見られるように、略L字状に屈曲されていて一端側に直状の接触部3Aそして他端側に直状の接続部3Bを有している。接触部3Aは上記ハウジングの受入部5の内方に向いて該受入部の面と同一面もしくは若干突出しており、上端部は略半円状に湾曲して導入部3Cを形成している。この導入部3Cは、図1(A)そして図2からも判るように、他部よりも幅広になっている。接続部3Bは、中間部3Dから若干クランク状に屈曲された他端側に水平に延出し、ハウジング2の底面2Aとほぼ同一レベルに位置しており、ハウジングの底面2Aが回路基板上に配されたときに該回路基板の対応固定部の面に接する位置にある。かかる端子3と同一形状の固定金具4は、図3(B)に見られるように、上記端子3の接続部3Bに対応する部分が固定用の脚部4Bとなり、端子3の接続部3Bと固定金具4の脚部4Bとは回路基板に対する平坦度が一致する(同一平面上に位置するようになる)。
【0021】
本実施形態にあっては、図2のごとく上記端子3及び固定金具4が曲げ加工を受けた形状でキャリアA1につながっている状態で、モールド成形金型(図示せず)に配置されてハウジング2と一体モールド成形されて該ハウジング2により保持され、しかる後に上記キャリアA1が切り離されて図1及び図3のごとくの形態となる。上記モールド成形後、端子3の接触部3Aは、既述のごとく、受入部5の内面と同一面もしくは若干突出して位置し(図3(A)参照)、固定金具4は中間部から上方の部分(端子3の中間部から導入部3Cに至る部分に相当する部分)が端子配列方向にてハウジング2の両端の壁部内に埋没されて、ハウジング2により堅固に保持される(図3(B))参照)。
【0022】
一方、相手コネクタ10は図4に見られるように、ハウジング11に端子12が植設されている。この形態にあっては、端子12は図4の紙面に平行な金属板を図示の形に打ち抜いて得られており、弾性を有するC形状の接触部12A、係止突起を有する係止12B、水平にハウジング11外に延出する脚部12Cを有している。ハウジング11は、上記のコネクタ1の端子3の配列位置に対応した位置にスリット13が形成されていて、上記端子12は図4において上方からこのスリット13内に挿着される。そして係止部12Bがスリットへの圧入時に係止突起のハウジングへの係止により所定位置からの抜けを防止する。
【0023】
使用に際しては、本発明のコネクタ1について端子3の接続部3Bそして固定金具4の脚部4Bを回路基板の対応回路部そして固定部へそれぞれ半田接続し、相手コネクタ10についても端子12の接続部12Cを回路基板の対応回路部へ半田接続する。かくして、本発明のコネクタは、数多い端子の接続部3Bでの半田によっても回路基板上への固定力を得るが、部分4A,4C,4Dにてハウジングにより強固に保持されている固定金具4の脚部4Bでの半田により大部分の固定力を確保できる。かかる両コネクタ1,10の嵌合時の端子の接触部3A,12A同士の弾性接触により両回路基板は電気的に接続される。
【0024】
本発明は、既出の形態に限定されず、他の形態でも可能である。例えば、図1?図4の例では端子そして固定金具はハウジングとの一体モールド成形によりハウジングに保持されていたが、これらはハウジングに圧入して取りつけることも可能である。図5(A),(B)は、それぞれ図3(A),(B)に対応する位置での様子を示し、端子そして固定金具の各部位も図3の場合と同一符号で示されている。図5(A)にて下方から圧入された端子3はハウジング2のスリット5Aの両面(紙面に平行な対向面)で支持されており、接触部3Aは受入部5に臨んでいる。又、固定金具4は、上記スリット5Aへ下方から圧入されることにより部分4Aの弾性を利用して、スリットの左右端面にても保持されている。
【0025】
図6の例は、端子3の接触部3Aの部分の形が図5のものと比して異なるものについて、図1?4と同様に一体モールド成形により該端子そして固定金具を保持する形態を示している。端子3は、図6(A)のごとく、ハウジング2の受入部5の底部に沿って延びた後に上方に向け屈曲されたS字状の接触部3Aを有している。中間部3DはU字状に屈曲されていて、ハウジングとのモールド一体成形による保持力を強めている。そして、ハウジング下部からは接続部3Bが水平に延出している。一方、固定金具4は、ハウジング外に延出する脚部4B以外はすべてハウジングと一体モールド成形されていて強固に保持されている。
【0026】
又、本発明は、図1?4の実施形態で示した相手コネクタの形式のものにも適用可能である。図7のコネクタにおいては、図示しない端子は図4のコネクタの端子と全く同じである。そして図7において、図4の端子12と同一形態の固定金具22は、曲状の弾性圧入部22Aと、係止突起が設けられた係止部22Bと、脚部22Cとを有している。この固定金具22の上記弾性圧入部22A、係止部22Bそして脚部22Cは図4の端子12の接触部12A,係止部12Bそして接続部12Cと対応しそれぞれ同一形状をなしている。図7の固定金具22の弾性圧入部22Aはハウジング11の対応溝11Aへ圧入されており、かくして該固定金具22はこの弾性圧入部22Aと係止部22Bの両者のハウジングへの圧入により強固に保持される。
【0027】
さらに、本発明は、端子の接触部がハウジングの側面に突出している形式のコネクタにも適用できる。例えば、図8のごとく、ハウジング31の両側部に段部が形成されていて、その段部側面31Aに窓部31Bが形成されていて、ここに端子3の接触部3Aが突出している。固定金具4は端子3と全く同一形状に作られていて、端子3の接続部3Bに相当する脚部4Bがハウジング外に突出している以外、他部はハウジングとの一体モールド成形によりハウジングに埋没保持されている。
【0028】
以上のような本発明においては、モールド成形時にハウジングの受入部の大きさを変更するだけで、端子と固定金具の数を容易に変更できる。すなわち、固定金具に大きな固定力を要求するときには、端子の数を若干減らしてこの分だけ固定金具の数を増やすことができ、そして、固定力の小さくともよいときには、すべてを端子とすることもできる。
【0029】
又、モールド成形後に変更したいときには、固定金具のハウジング保持部分を開放した形態でハウジングをモールド成形し、必要個数の固定金具についてのみ追加の保持部材の圧入により固定金具として使用し、他の固定金具を開放のままとすれば、端子として使用可能である。そして、固定金具が不要のときは、すべての固定金具を端子として使用可能となる。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、以上のごとく、固定金具を端子と同一形状とし該固定金具の中間部から一端側への部分の埋没部を、端子配列方向たるコネクタの長手方向で、受入部の両端を形成するハウジングの端壁部に埋没するようにしてハウジングによりしっかりと保持することとしたので、コネクタを構成する部品の種類が減り、固定金具と端子とを同時に同一金型で成形そして組込みができるようになり、コネクタのコスト低下を図ることができる。又、固定金具と端子とが同時に同様に組込まれるので、両者を近接配置して配列することができ、配列方向でのコネクタの小型化を可能とする。又、固定金具と端子とは、同一形状に形成されているので回路基板に対する平坦度が一致し、回路基板への確実な実装が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のコネクタを示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は部分破断側面図である。
【図2】図1のコネクタの端子及び固定金具のハウジングへの挿着前の斜視図である。
【図3】図1のコネクタの断面図で、(A)は端子位置、(B)は固定金具位置での断面である。
【図4】図1のコネクタと相手コネクタの断面図で、両者の結合前を示す。
【図5】本発明の他の実施形態のコネクタの断面図であり、(A)は端子位置、(B)は固定金具位置での断面である。
【図6】本発明のさらにの他の実施形態のコネクタの断面図であり、(A)は端子位置、(B)は固定金具位置での断面である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態のコネクタの断面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態のコネクタの部分破断断面図である。
【図9】従来のコネクタの斜視図である。
【符号の説明】
1 コネクタ
2 ハウジング
3 端子
3A 接触部
3B 接続部
4 固定金具
4B 脚部
5 受入部
22 固定金具
A1 キャリア
A2 細条片
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-03-29 
結審通知日 2017-03-31 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2000-215422(P2000-215422)
審決分類 P 1 41・ 856- Y (H01R)
P 1 41・ 855- Y (H01R)
P 1 41・ 853- Y (H01R)
P 1 41・ 854- Y (H01R)
P 1 41・ 851- Y (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 阿部 利英
特許庁審判官 中川 隆司
冨岡 和人
登録日 2008-02-08 
登録番号 特許第4076314号(P4076314)
発明の名称 固定金具を有する電気コネクタの製造方法  
代理人 高石 秀樹  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 豊島 匠二  
代理人 松野 仁彦  
代理人 松野 仁彦  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 須田 洋之  
代理人 須田 洋之  
代理人 高石 秀樹  
代理人 豊島 匠二  

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