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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01P 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01P |
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管理番号 | 1328269 |
審判番号 | 不服2016-11916 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-08 |
確定日 | 2017-05-08 |
事件の表示 | 特願2014-181668「臨時用無線フィルタ装置,臨時用無線フィルタ方法および臨時用無線フィルタプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日出願公開,特開2016- 58795〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成26年9月5日の出願であって,平成28年1月26日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,同年3月18日付けで手続補正がされたが,同年5月6日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年8月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年8月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成28年8月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,本件補正前の平成28年3月18日付けで手続補正された特許請求の範囲に記載された 「 【請求項1】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ装置であって, 同軸ケーブルにより構成され,臨時の際に前記空中線と前記無線機とに接続される臨時用の給電線と, 一端が開放または短絡され,他端が前記臨時用の給電線に接続自在で,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長に基づいて長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第1の分布定数線路と, 前記第1の分布定数線路から分岐して接続され,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路と, を備えることを特徴とする臨時用無線フィルタ装置。 【請求項2】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して高い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ装置であって, 同軸ケーブルにより構成され,臨時の際に前記空中線と前記無線機とに接続される臨時用の給電線と, 一端が開放され,他端が前記臨時用の給電線に接続自在で,前記不要な高周波信号に対して接続点でのインピーダンスがゼロになるように,前記不要な高周波信号の波長に基づいて長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第1の分布定数線路と, 前記第1の分布定数線路から分岐して接続され,前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスが無限大になるように長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路と, を備えることを特徴とする臨時用無線フィルタ装置。 【請求項3】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ方法であって, 前記空中線および前記無線機に,同軸ケーブルにより構成された臨時用の給電線を接続し, 一端が開放または短絡された同軸ケーブルからなる第1の分布定数線路の他端を前記臨時用の給電線に接続し,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長に基づいて前記第1の分布定数線路の長さを設定し, 前記第1の分布定数線路から分岐して同軸ケーブルからなる第2の分布定数線路を接続し,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように, 前記第2の分布定数線路の長さを設定する, ことを特徴とする臨時用無線フィルタ方法。 【請求項4】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して高い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ方法であって, 前記空中線および前記無線機に,同軸ケーブルにより構成された臨時用の給電線を接続し, 一端が開放された同軸ケーブルからなる第1の分布定数線路の他端を前記臨時用の給電線に接続し,前記不要な高周波信号に対して接続点でのインピーダンスがゼロになるように,前記不要な高周波信号の波長に基づいて前記第1の分布定数線路の長さを設定し, 前記第1の分布定数線路から分岐して同軸ケーブルからなる第2の分布定数線路を接続し,前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記第2の分布定数線路の長さを設定する, ことを特徴とする臨時用無線フィルタ方法。 【請求項5】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して不要な高周波信号を除去するために,臨時の際に前記空中線と前記無線機とに接続された同軸ケーブルからなる臨時用の給電線に接続され,同軸ケーブルからなる第1の分布定数線路の長さと,前記第1の分布定数線路から分岐して接続される同軸ケーブルからなる第2の分布定数線路の長さとを算出するための臨時用無線フィルタプログラムであって,コンピュータを, 前記所定の高周波信号の周波数と前記不要な高周波信号の周波数とを入力する入力手段と, 前記所定の高周波信号に対して前記不要な高周波信号の周波数が低い場合に,前記所定の高周波信号に対して前記給電線と前記第1の分布定数線路との接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長に基づいて前記第1の分布定数線路の長さを算出するとともに,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,前記第2の分布定数線路の長さを算出し,前記所定の高周波信号に対して前記不要な高周波信号の周波数が高い場合に,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,前記不要な高周波信号の波長に基づいて前記第1の分布定数線路の長さを算出するとともに,前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記第2の分布定数線路の長さを算出する算出手段, として機能させることを特徴とする臨時用無線フィルタプログラム。」 を 「 【請求項1】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ装置であって, 同軸ケーブルにより構成され,臨時の際に前記空中線と前記無線機とに接続される臨時用の給電線と, 一端が開放され,他端が前記臨時用の給電線に接続自在で,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長λpに基づいて長さが1/2λpに設定され,同軸ケーブルにより構成された第1の分布定数線路と, 前記第1の分布定数線路の他端から1/4λpのところで分岐して接続され,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,次の式〔1A〕および式〔1B〕のどちらかで算出される値dに長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路と, を備えることを特徴とする臨時用無線フィルタ装置。 【数1A】 ただし, fp;所定の高周波信号の周波数 fr;不要な高周波信号の周波数 λ:β=2π/λの関係を満たす値(β;第2の分布定数線路の位相定数) であり,この式〔1A〕は前記第2の分布定数線路が先端開放の場合である。 【数1B】 ただし,この式〔1B〕は前記第2の分布定数線路が先端短絡の場合である。 【請求項2】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して高い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ装置であって, 同軸ケーブルにより構成され,臨時の際に前記空中線と前記無線機とに接続される臨時用の給電線と, 一端が開放され,他端が前記臨時用の給電線に接続自在で,前記不要な高周波信号に対して接続点でのインピーダンスがゼロになるように,前記不要な高周波信号の波長λrに基づいて長さが3/4λrに設定され,同軸ケーブルにより構成された第1の分布定数線路と, 前記第1の分布定数線路の他端から1/2λrのところで分岐して接続され,前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスが無限大になるように,次の式〔1C〕および式〔1D〕のどちらかで算出される値dに長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路と, を備えることを特徴とする臨時用無線フィルタ装置。 【数1C】 ただし fp;所定の高周波信号の周波数 fr;不要な高周波信号の周波数 λ:β=2π/λの関係を満たす値(β;第2の分布定数線路の位相定数) であり,この式〔1C〕は前記第2の分布定数線路が先端開放の場合である。 【数1D】 ただし,この式〔1D〕は前記第2の分布定数線路が先端短絡の場合である。 【請求項3】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ方法であって, 前記空中線および前記無線機に,同軸ケーブルにより構成された臨時用の給電線を接続し, 一端が開放された同軸ケーブルからなる第1の分布定数線路の他端を前記臨時用の給電線に接続し,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長λpに基づいて前記第1の分布定数線路の長さを1/2λpに設定し, 前記第1の分布定数線路の他端から1/4λpのところで分岐して同軸ケーブルからなる第2の分布定数線路を接続し,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,次の式〔1E〕および式〔1F〕のどちらかで算出される値dに前記第2の分布定数線路の長さを設定する, ことを特徴とする臨時用無線フィルタ方法。 【数1E】 ただし, fp;所定の高周波信号の周波数 fr;不要な高周波信号の周波数 λ:β=2π/λの関係を満たす値(β;第2の分布定数線路の位相定数) であり,この式〔1E〕は前記第2の分布定数線路が先端開放の場合である。 【数1F】 ただし,この式〔1F〕は前記第2の分布定数線路が先端短絡の場合である。 【請求項4】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して高い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ方法であって, 前記空中線および前記無線機に,同軸ケーブルにより構成された臨時用の給電線を接続し, 一端が開放された同軸ケーブルからなる第1の分布定数線路の他端を前記臨時用の給電線に接続し,前記不要な高周波信号に対して接続点でのインピーダンスがゼロになるように,前記不要な高周波信号の波長λrに基づいて前記第1の分布定数線路の長さを3/4λrに設定し, 前記第1の分布定数線路の他端から1/2λrのところで分岐して同軸ケーブルからなる第2の分布定数線路を接続し,前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスが無限大になるように,次の式〔1G〕および式〔1H〕のどちらかで算出される値dに前記第2の分布定数線路の長さを設定する, ことを特徴とする臨時用無線フィルタ方法。 【数1G】 ただし fp;所定の高周波信号の周波数 fr;不要な高周波信号の周波数 λ:β=2π/λの関係を満たす値(β;第2の分布定数線路の位相定数) であり,この式〔1G〕は前記第2の分布定数線路が先端開放の場合である。 【数1H】 ただし,この式〔1H〕は前記第2の分布定数線路が先端短絡の場合である。 【請求項5】 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して不要な高周波信号を除去するために,一端が開放され,臨時の際に前記空中線と前記無線機とに接続された同軸ケーブルからなる臨時用の給電線に接続され,同軸ケーブルからなる第1の分布定数線路の長さと,所定の高周波信号に対して前記不要な高周波信号の周波数が低い場合に前記所定の高周波信号の波長λpに基づいて前記第1の分布定数線路の他端から1/4λpのところで分岐して接続され,また,所定の高周波信号に対して前記不要な高周波信号の周波数が高い場合に前記不要な高周波信号の波長λrに基づいて前記第1の分布定数線路の他端から1/2λrのところで分岐して接続される同軸ケーブルからなる第2の分布定数線路の長さとを算出するための臨時用無線フィルタプログラムであって,コンピュータを, 前記所定の高周波信号の周波数と前記不要な高周波信号の周波数とを入力する入力手段と, 前記所定の高周波信号に対して前記不要な高周波信号の周波数が低い場合に,前記所定の高周波信号に対して前記給電線と前記第1の分布定数線路との接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長λpに基づいて前記第1の分布定数線路の長さ1/2λpを算出するとともに,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,次の式〔1I〕および式〔1J〕のどちらかで前記第2の分布定数線路の長さdを算出し,前記所定の高周波信号に対して前記不要な高周波信号の周波数が高い場合に,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,前記不要な高周波信号の波長λpに基づいて前記第1の分布定数線路の長さ3/4λrにを算出するとともに,前記所定の高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスが無限大になるように,次の式〔1K〕および式〔1L〕のどちらかで前記第2の分布定数線路の長さdを算出する算出手段, として機能させることを特徴とする臨時用無線フィルタプログラム。 【数1I】 ただし, fp;所定の高周波信号の周波数 fr;不要な高周波信号の周波数 λ:β=2π/λの関係を満たす値(β;第2の分布定数線路の位相定数) であり,この式〔1I〕は前記第2の分布定数線路が先端開放の場合である。 【数1J】 ただし,この式〔1J〕は前記第2の分布定数線路が先端短絡の場合である。 【数1K】 ただし,この式〔1K〕は前記第2の分布定数線路が先端開放の場合である。 【数1L】 ただし,この式〔1L〕は前記第2の分布定数線路が先端短絡の場合である。」 に補正するとともに,明細書の段落【0011】を補正後の特許請求の範囲の請求項1に整合するように補正するものである。 なお,補正後の特許請求の範囲の記載において,「〔1A〕」,「〔1B〕」等は,「【数1A】」,「【数1B】」等に読み替えることとする。(以降においても同じように読み替える。) 2.新規事項の有無,シフト補正要件,及び,補正の目的要件について 本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内において, (1)特許請求の範囲について, ●「所定の高周波信号の波長」を「λp」に限定し,(請求項1,3及び5) ●「不要な高周波信号の波長」を「λr」に限定し,(請求項2,4及び5) ●「第1の分布定数線路」に関して, ・「一端」について,「開放または短絡」を「解放」に限定し,(請求項1,3及び5) ・「長さ」を,「1/2λp」(請求項1,3及び5)又は「3/4λr」(請求項2,4及び5)に限定し, ●「第2の分布定数線路」に関して, ・「第1の分布定数線路の他端から分岐して接続」を,「第1の分布定数線路の他端から1/4λpのところで分岐して接続」(請求項1,3及び5)又は「第1の分布定数線路の他端から1/2λrのところで分岐して接続」(請求項2,4及び5に限定し, ・「長さ」を, 「次の式〔1A〕および式〔1B〕のどちらかで算出される値d」(請求項1), 「次の式〔1C〕および式〔1D〕のどちらかで算出される値d」(請求項2), 「次の式〔1E〕および式〔1F〕のどちらかで算出される値d」(請求項3),又は, 「次の式〔1G〕および式〔1H〕のどちらかで算出される値d」(請求項4) 「次の式〔1I〕および式〔1J〕のどちらかで算出される値d」及び「次の式〔1K〕および式〔1L〕のどちらかで算出される値d」(請求項5)に限定(具体的な数式は省略する。)して,特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明を限定的に減縮し, (2)明細書について 段落【0011】の記載を,補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に整合するように補正する, ものである。 よって,本件補正は,特許法第17条の2第3項及び第4項に適合するとともに,同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮及び同法同条同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件について 本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするのものであるから,本件補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定)について以下に検討する。 (1)補正発明 補正後の請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)は,以下のものである。 「 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ装置であって, 同軸ケーブルにより構成され,臨時の際に前記空中線と前記無線機とに接続される臨時用の給電線と, 一端が開放され,他端が前記臨時用の給電線に接続自在で,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長λpに基づいて長さが1/2λpに設定され,同軸ケーブルにより構成された第1の分布定数線路と, 前記第1の分布定数線路の他端から1/4λpのところで分岐して接続され,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,次の式〔1A〕および式〔1B〕のどちらかで算出される値dに長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路と, を備えることを特徴とする臨時用無線フィルタ装置。 【数1A】 ただし, fp;所定の高周波信号の周波数 fr;不要な高周波信号の周波数 λ:β=2π/λの関係を満たす値(β;第2の分布定数線路の位相定数) であり,この式〔1A〕は前記第2の分布定数線路が先端開放の場合である。 【数1B】 ただし,この式〔1B〕は前記第2の分布定数線路が先端短絡の場合である。」 (2)引用例,引用発明等 ア 引用例について 原査定に引用された特開2011-142414号公報(以下,「引用例」という。)には,「避雷装置」(発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 空中線に接続されている給電線であり,かつ,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号が流れる給電線に接続される避雷装置であって, 一端が短絡されて接地されると共に他端が前記給電線に接続され,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスを無限大にするために,前記所定の高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路と, 前記第1の分布定数線路に分岐して接続されると共に前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスをゼロにするために,長さが設定された第2の分布定数線路と, を備えることを特徴とする避雷装置。」(第2ページ) (イ)「【0006】 ところで,例えば送信設備では,送信される高周波信号に対して高調波が発生するが,この高調波の強度は電波法で規制されている。一方,受信設備では,受信を目的としない高周波信号が空中線によって受信されるが,この信号が受信機に入力される前に,この信号を排除することが望ましい。このために,無線設備の空中線回路には,高調波の抑制や目的外の高周波信号を排除するために,つまり,不要な周波数の高周波信号(以下,「不要信号」という)を除去するために,フィルタが適所に挿入されている。 【0007】 しかし,先に述べたように,無線設備の空中線側には避雷器が設置されているので,不要信号を除去するフィルタを設けることは,設備のコストアップにつながる。また,不要な周波数を除去するフィルタは一般的にコイルやコンデンサなどの集中定数回路で構成される。しかし,山頂などに設置されている無線設備は季節による寒暖の影響を受けるので,コイルやコンデンサなどのような金属素子は温度によって伸縮する。これにより,集中定数回路に用いられている金属素子の電気的な特性が変化し,フィルタの特性も変化してしまう。つまり,気象等の外部環境による影響を受けやすい野外に設置されている空中線の近傍に対して,フィルタなどを設置することは適切ではない。 【0008】 この発明の目的は,前記の課題を解決し,フィルタと避雷器とを個別に設置することを不要にし,しかも,外部環境による影響を受けにくい避雷装置を提供することにある。」(第3ページ) (ウ)「【0019】 (実施の形態1) この実施の形態による避雷装置と,この避雷装置が適用されている送信設備とを図1に示す。図1の送信設備は送信機1A,2Aを備えている。送信機1A,2Aは,給電線1B,2Bによって空中線1C,2Cにそれぞれ接続されている。給電線1B,2Bは送信機1A,2Aからの高周波信号を流すための同軸ケーブル(分布定数線路)である。空中線1C,2Cは設置柱3に対して離れて設置されている。空中線1C,2Cは給電線1B,2Bを流れて来る高周波信号を,電波で空中に放出する。また,設置柱3には,空中線1C,2Cを落雷から保護するために避雷針4が設置され,避雷針4は接地線5によって接地されている。これにより,避雷針4に落雷があると,雷による強電流は接地線5を経て大地に流れる。 【0020】 送信機1Aは,例えば営配用無線に用いられるものであり,送信機1Aの高周波信号の周波数をfp(波長λp)とする。また,送信機2Aは,例えば工務用無線に用いられるものであり,送信機2Aの高周波信号の周波数をfr(波長λr)とする。そして,この実施の形態では, fp>fr である。 【0021】 こうした送信設備の給電線1B,2Bには,この実施の形態による避雷装置10,20がそれぞれ接続されている。避雷装置20は避雷装置10と同じであるので,以下では避雷装置10について説明し,避雷装置20の説明を省略する。 【0022】 避雷装置10は,図2に示すように,給電線1Bに対して並列に接続されている。避雷装置10は,基本スタブ11および補正スタブ12と,アダプタ13,14と,プラグ15と,接地端子16とを備えている。アダプタ13はT字状をした分岐用の部品である。アダプタ13の3つの端部にはジャックが設けられ,各ジャックにはプラグ15がそれぞれ取り付け可能である。これらのアダプタ13,14とプラグ15とにより,基本スタブ11および補正スタブ12が接続される。 【0023】 基本スタブ11は所定長の同軸ケーブルである。基本スタブ11の一端は,アダプタ13とプラグ15とにより,給電線1Bの途中の接続点A(破線円で示す)で,給電線1Bに接続されている。つまり,基本スタブ11の内部導体が給電線1Bの内部導体に接続され,基本スタブ11の外部導体が給電線1Bの外部導体に接続されている。これにより,基本スタブ11が給電線1Bに対して接続点Aで並列に接続されている。基本スタブ11の他端は,接地端子16により,内部導体と外部導体とが短絡されて接地されている。 【0024】 基本スタブ11には次の作用がある。図3に示すように,長さL1の基本スタブ11は周波数fpの3/4波長の伝送路である。なお,図3では図示の簡略化のために,給電線1Bと基本スタブ11および補正スタブ12とを平行2線で示している。周波数fpの3/4波長の基本スタブ11を給電線1Bに接続すると,周波数fpの高周波信号に対しては,給電線1Bの接続点Aから見た基本スタブ11のインピーダンスが無限大になり,送信機1Aからの周波数fpの高周波信号が基本スタブ11に流れることを防いでいる。つまり,周波数fpは給電線1Bのみを通過させる通過周波数である。一方,給電線1Bに流れる誘導電流は直流的な電流であるので,他端が接地されている基本スタブ11が誘導電流を大地に流し,誘導電流が送信機1Aに流れることを防いでいる。つまり,避雷針4に落雷があり,強電流が接地線5に流れたときに,給電線1Bに発生する誘導電流を基本スタブ11が大地に流して,この誘導電流が給電線1Bを通過することを防ぎ,送信機1Aを保護している。」(第5-6ページ) (エ)「【0026】 補正スタブ12は基本スタブ11に接続されている同軸ケーブルである。補正スタブ12の一端は,アダプタ14とプラグ15とにより,分岐点B(破線円で示す)で基本スタブ11に接続されている。このとき,補正スタブ12の一端は,波長λpの1/4だけ接続点Aから離れた長さL11の位置にあると共に基本スタブ11の短絡点から長さL12の位置にある。分岐点Bでは補正スタブ12の内部導体が基本スタブ11の内部導体に接続され,補正スタブ12の外部導体が基本スタブ11の外部導体に接続されて,補正スタブ12が基本スタブ11から分岐されている。補正スタブ12の他端は開放されている。 【0027】 補正スタブ12には次の作用がある。先に述べたように,設置柱3には空中線1C,2Cが併設されている。したがって,空中線2Cからの電波を空中線1Cが受信することで,給電線1Bに流れる周波数frの高周波信号は,送信機1Aに対しては不要信号になる。そこで,補正スタブ12のインピーダンスを利用して不要信号を除去し,周波数frの高周波信号が給電線1Bを通過することを防いでいる。このために,先の図3に示す接続点Aにおいて,周波数frに対してインピーダンスをゼロにすれば,給電線1Bでは周波数frの高周波信号が短絡状態になり,この信号の伝送を阻止することができる。そこで,長さがL2である補正スタブ12を利用して,阻止周波数である周波数frにおいて接続点Aから基本スタブ11側を見たインピーダンスがゼロになるようにしている。」(第6-7ページ) (オ)「【0036】 次に,この実施の形態の動作について説明する。営配用無線については,送信機1Aからの,周波数がfpである高周波信号により,空中線1Cから電波が出力される。このとき,周波数fpの高周波信号に対して,避雷装置10の接続点Aから基本スタブ11側を見たインピーダンスが無限大であるので,避雷装置10が周波数fpの高周波信号に影響を与えることがない。 【0037】 一方,工務用無線については,送信機2Aからの,周波数がfrである高周波信号により,空中線2Cから電波が出力される。このとき,空中線1Cは空中線2Cからの電波を受信して,周波数がfrの高周波信号つまり不要信号を給電線1Bに流す。避雷装置10の接続点Aにおいては,補正スタブ12が分岐点Bで基本スタブ11に接続されているので,基本スタブ11側のインピーダンスがゼロである。これにより,避雷装置10は,周波数をfrの不要信号を基本スタブ11側に流し,この信号が送信機1Aに流れ込むことを防いでいる。 【0038】 また,避雷針4に落雷があると,接地線5により強電流が大地に流れるが,このとき,給電線1Bにも誘導電流が流れる。給電線1Bに流れる誘導電流は直流的な電流であるので,避雷装置10において他端が接地されている基本スタブ11が誘導電流を大地に流し,避雷装置10は,送信機1Aに誘導電流が流れることを防いでいる。 【0039】 このように,この実施の形態によれば,落雷による直流的な誘導電流に対しては短絡状態になり,周波数fpの高周波信号に対してはインピーダンスが無限大の状態になり,かつ,周波数frの不要信号に対してはインピーダンスがゼロになるので,避雷器の機能と,高周波の不要信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。また,この実施の形態によれば,分布定数線路である基本スタブ11と補正スタブ12とで避雷装置10,20を主に構成するので,金属素子を用いる従来のフィルタに比べて外部環境の影響を受け難くすることができる。また,この実施の形態によれば,避雷装置10,20の補正スタブ12の長さを調節することにより,任意の周波数の不要信号を減衰させることが可能である。さらに,この実施の形態によれば,送信機1Aの高周波信号の周波数をfpと,送信機2Aの高周波信号の周波数をfrとがfp>frの関係にある場合,波長はλp<λrであるので,最短の伝送路長で避雷装置10,20を構成することができ,装置の小型化が可能である。」(第8-9ページ) (カ)「【0058】 (実施の形態4) 先に述べた実施の形態1?実施の形態3では,補正スタブ12,22の長さL2,L6を求める際にスミスチャートを利用したが,この実施の形態では三角関数を利用して長さL2,L6を求める。 【0059】 一般的な伝送路であり例えば図11に示す伝送路では,インピーダンスは次のとおりである。 【数15】 ZS:入力端におけるインピーダンス Z0:伝送路の特性インピーダンス ZL:負荷インピーダンス Γs:入力端から伝送路を見た反射係数 γ:伝播定数(γ=α+jβ:αは減衰定数,βは位相定数) d:入力端から伝送路の終端までの線路長 以下では,伝送路が無損失である場合について説明する。伝送路が無損失である場合には伝播定数γにおいて減衰定数α=0になることから,無損失伝送路のインピーダンスは次のとおりである。 【数16】 この実施の形態では,先の実施の形態と同様に,使用するスタブは先端短絡と先端開放の2種類である。先端短絡の場合のインピーダンス(実際にはリアクタンス)は, ZL=0 であるので,先の数16式にこの条件を代入すると, 【数17】 になる。ここで, β=2π/λ であるので,インピーダンスは, 【数18】 になる。 【0060】 また,先端開放の場合のインピーダンスは, ZL=∞ であるので,先の数16式にこの条件を代入すると, 【数19】 になる。 【0061】 先の各実施の形態で述べたように設計基準周波数には,通過させる周波数fpと,通過を阻止する周波数frの2つがある。これらの中で高い方の周波数(波長λ)に着目し,図12に示すように,その3/4波長に相当する基本スタブを設ける。基本スタブの一端は接続点で給電線に接続され,他端である先端は短絡または開放されている。基本スタブの中途の位置に分岐点が設けられ,リアクタンスを補正するための補正スタブの一端が分岐点で基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの他端である先端は短絡または開放されている。分岐点は1/4波長の位置または2/4波長の位置であり,周波数fpと周波数frとの関係で分岐点が選択される。 (…中略…) 【0064】 (…中略…) インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは, 【数21】 であり,(以下省略)」(第12-14ページ) (キ)「【0066】 (…中略…) <具体例3> 具体例3は,通過周波数fpと阻止周波数frとが, 通過周波数fp(=fr×1.5)>阻止周波数fr の関係にある場合である。 【0067】 この具体例では,図15に示すように,基本スタブは通過周波数fpの3/4波長の長さとし,先端は短絡して接地する。そして,給電線の接続点から通過周波数fpの1/4波長の位置が分岐点である。この分岐点には,長さdの補正スタブが基本スタブに対して並列に接続されている。補正スタブの先端は短絡する。 【0068】 分岐点では,この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については,阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に,分岐点から開放点側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については,阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ2が現れる。 【数28】 インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンスは,先の数21式に示すとおりであり,この並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し,分岐点に並列に接続すればよい。つまり,逆符号のインピーダンスは, 【数29】 であり, 【数30】 である。これより, 【数31】 となり,補正スタブの長さdを得ることができる。 【0069】 なお,具体例3では,図16に示すように,先端開放の基本スタブにより,使用するスタブ長を短くして,装置を構成してもよい。(以下省略)」(第16-17ページ) (ク)「 」(第19ページ) (ケ)「 」(第19ページ) (コ)「 」(第22ページ) 以下,上記(ア)ないし(コ)の記載及び本願の出願日における技術常識を考慮しつつ,引用例に記載された技術事項について検討する。 a.引用例の発明の名称及び前記(イ)より,引用例は,「無線設備」に不要な周波数の高周波信号(不要信号)を除去するフィルタと避雷器とを個別に設置することを不要にする「避雷装置」について記載したものといえる。 また,前記(オ)の【0039】の記載「この実施の形態によれば,(…中略…)避雷器の機能と,高周波の不要信号を減衰させるフィルタの機能とを併せ持たせることができる。」より,前記「避雷装置」は,「避雷器としての機能と不要な周波数の高周波信号(不要信号)を除去するフィルタの機能とを併せ持つ」ものといえる。 さらに,前記(ウ)の【0020】には,営配用無線に用いられる送信機1Aの高周波がfp(波長λp),他の工務用無線に用いられる送信機2Aの高周波信号の周波数がfr(波長λr)であり,fp>frの関係にあることを前提とすることが記載され,前記(オ)の【0037】及び【0039】には,周波数fpの高周波信号に対して,低い周波数の周波数frの高周波信号を不要信号とすることが記載され,前記(キ)の【0066】には,「<具体例3>具体例3は,通過周波数fpと阻止周波数frとが,通過周波数fp(=fr×1.5)>阻止周波数frの関係にある場合である。」と記載されている。また,周波数fpの高周波信号を,「所定の高周波信号」と称することは任意である。そうすると,前記「フィルタの機能」とは,「所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去する」ものといえる。 b.前記(ウ)の【0022】,前記(ケ)(図1)及び前記(コ)(図2)より,前記「避雷装置」は,「送信設備」に設置されるものであり,当該「送信設備」は,「空中線」(1C,2C)と「送信機」(1A,2A)とが「給電線」(1B,2B)によって接続されたものである。 前記a.を参酌すれば,前記「送信設備」は,「無線設備」といい得るものである。 また,前記「給電線」は「同軸ケーブル」により構成され,「空中線」と「送信機」とに接続されたものである。 c.前記a.及びb.より,引用例には,「空中線と送信機とが給電線によって接続された無線設備において,避雷器としての機能と,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するフィルタの機能とを併せ持つ避雷装置」であって,当該「避雷装置」が,「同軸ケーブルにより構成され,前記空中線と前記送信機とに接続される給電線」を備えることが記載されているといえる。 d.前記(ウ)の【0022】及び前記(ケ)(図2)より,前記「避雷装置」は,「基本スタブ」(11),「補正スタブ」(12)と,「アダプタ」(13)と,「プラグ」(15),及び,「接続端子」(16)とで構成されている。 前記「基本スタブ」は,前記(ウ)の【0023】によれば,所定長の「同軸ケーブル」である。 また,前記「補正スタブ」も,前記(エ)の【0026】によれば,「同軸ケーブル」で構成されている。 さらに,前記(ウ)の【0022】及び【0023】より,前記「基本スタブ」は,前記「給電線」に,T字状の分岐用の部品「アダプタ」と「プラグ」とにより接続され,前記(ウ)の【0022】及び前記(エ)の【0026】より,前記「補正スタブ」は,前記「基本スタブ」に,前記「アダプタ」と前記「プラグ」とにより接続されている。 ここで,「基本スタブ」において,「給電線」に接続されない側の端を「一端」,接続される側の端を「他端」と称することは任意である。 また,前記(ウ)の【0019】の記載「同軸ケーブル(分布定数線路)」より,「同軸ケーブル」は,「分布定数線路」であり,また,前記(ア)を参酌すれば,前記「基本スタブ」及び「補正スタブ」はそれぞれ,「第1の分布定数線路」及び「第2の分布定数線路」といい得るものである。 e.前記(キ)には,(実施の形態4)(三角関数を利用して補正スタブの長さを求める態様;前記(オ)の【0058】参照。)の<具体例3>が記載されている。 ここで,前記(キ)の【0069】より,当該<具体例3>の変形例として,前記(コ)の図16の実施例(以下,「図16実施例」という。)が記載されているが,当該図16の実施例の原理は,他の段落に記載された事項の基本原理に従うものと解される。 <具体例3>においては,前記(キ)の【0067】より,「基本スタブ」の先端(一端)と「補正スタブ」の先端のいずれも「短絡」するものであるが,前記(キ)の【0069】及び前記(サ)の図16より,図16実施例においては,「基本スタブ」の「一端」は「開放」し,「補正スタブ」の先端は「短絡」(先端短絡)するものである。 f.前記(コ)の図16によれば,図16実施例において,「基本スタブ」の長さは,λp/4+λp/4=λp/2であり,「補正スタブ」の長さは,「d」であり,かつ,当該「補正スタブ」は,「基本スタブ」の「他端」から「λp/4のところで分岐」しているといえる。 g.「基本スタブ」の長さに関して,前記(ア)の記載「一端が短絡されて接地されると共に他端が前記給電線に接続され,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスを無限大にするために,前記所定の高周波信号の波長を基に長さが設定された第1の分布定数線路」,前記(ウ)の【0024】の記載「周波数fpの高周波信号に対しては,給電線1Bの接続点Aから見た基本スタブ11のインピーダンスが無限大になり,送信機1Aからの周波数fpの高周波信号が基本スタブ11に流れることを防いでいる。」,前記(オ)の【0036】の記載「このとき,周波数fpの高周波信号に対して,避雷装置10の接続点Aから基本スタブ11側を見たインピーダンスが無限大であるので,避雷装置10が周波数fpの高周波信号に影響を与えることがない。」より,「基本スタブ」の長さλp/2は,「所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大となるように設定」されたものといえる。 h.一方,「補正スタブ」の長さは,前記(コ)の図16を参酌しても「d」としか記載がなく,具体的な長さは記載されていないものの,前記(ア)の記載「前記第1の分布定数線路に分岐して接続されると共に前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスをゼロにするために,長さが設定された第2の分布定数線路」,前記(エ)の【0027】の記載「このために,先の図3に示す接続点Aにおいて,周波数frに対してインピーダンスをゼロにすれば,給電線1Bでは周波数frの高周波信号が短絡状態になり,この信号の伝送を阻止することができる。そこで,長さがL2である補正スタブ12を利用して,阻止周波数である周波数frにおいて接続点Aから基本スタブ11側を見たインピーダンスがゼロになるようにしている。」,前記(オ)の【0037】の記載「避雷装置10の接続点Aにおいては,補正スタブ12が分岐点Bで基本スタブ11に接続されているので,基本スタブ11側のインピーダンスがゼロである。これにより,避雷装置10は,周波数をfrの不要信号を基本スタブ11側に流し,この信号が送信機1Aに流れ込むことを防いでいる。」より,この「補正スタブ」の長さdは,不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように設定」されたものといえる。 i.前記d.ないしh.を総合すると,引用例には次の事項が記載されているといえる。 前記「避雷装置」が, 「 一端が開放され,他端がT字状の分岐用部品であるアダプタとプラグとにより前記給電線に接続され,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,長さが1/2λp(λpは前記所定の高周波信号の波長)に設定され,同軸ケーブルにより構成された第1の分布定数線路と, 前記第1の分布定数線路の他端から1/4λpのところで分岐して接続され,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように長さdが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路」を備えること。 j.また,「補正スタブ」の長さdを算出するための式及び原理として,以下の事項が記載されている。 j-1.先端短絡のインピーダンス(前記(カ)の【0059】) 【数18】 j-2.先端開放のインピーダンス(前記(カ)の【0060】) 【数19】 j-3.インピーダンスZ1とインピーダンスZ2の並列合成インピーダンス(前記(カ)の【0064】) 【数21】 j-4.「分岐点では,この分岐点から給電線側の線路つまり基本スタブの1/4波長の部分については,阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ1が現れる。同様に,分岐点から開放点側の線路つまり基本スタブの1/2波長の部分については,阻止周波数frに関して先端短絡の線路のインピーダンスZ2が現れる。 (…中略…) 並列合成インピーダンスと逆符号のインピーダンスを補正スタブで作成し,分岐点に並列に接続すればよい。つまり,逆符号のインピーダンスは,【数29】(…中略…)であり【数30】である。これより【数31】となり,補正スタブ長さdを得ることができる。」(前記(キ)の【0068】) 前記j-4.より,基本スタブにおける分岐点から給電線路側すなわち他端までの部分の不要周波数、不要な高周波信号の周波数frに関するインピーダンスZ1と,基本スタブにおける分岐点から一端までの部分のfrに関するインピーダンスZ2との並列合成インピーダンスの逆符号が,補正スタブのインピーダンスと等しくなればよいといえるから, 補正スタブのインピーダンス=-(Z1とZ2の並列合成インピーダンス) ただし, Z1;frに関する基本スタブにおける分岐点から他端までの部分のインピーダンス Z2;frに関する基本スタブにおける分近点から一端までの部分のインピーダンス, といえる。(便宜上,前記の式を,【数X】とする。) また,前記(カ)の【0059】より,【数18】及び【数19】に含まれる「λ」は,βを位相定数とした場合に,β=2π/λを満たす値であることが明らかである。さらに,「補正スタブ」の長さを算出することを目的とする場合において,前記「β」が,「補正スタブ」すなわち「第2の分布定数線路」の「位相定数」であることは技術的にみて自明なことである。 以上のa.ないしj.の検討から,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「 空中線と送信機とが給電線によって接続された無線設備において,避雷器としての機能と,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するフィルタの機能とを併せ持つ避雷装置であって, 同軸ケーブルにより構成され,前記空中線と前記送信機とに接続される給電線と, 一端が開放され,他端がT字状の分岐用部品であるアダプタとプラグとにより前記給電線に接続され,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,長さが1/2λp(λpは前記所定の高周波信号の波長)に設定され,同軸ケーブルにより構成された第1の分布定数線路と, 先端が短絡され,前記第1の分布定数線路の他端から1/4λpのところで分岐して接続され,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,以下の式に基づいて算出される長さdが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路と, を備えることを特徴とする避雷装置。 【数18】 【数19】 【数21】 【数X】 補正スタブのインピーダンス=-(Z1とZ2の並列合成インピーダンス) ただし, fp;所定の高周波信号の周波数 fr;不要な高周波信号の周波数 λ;β=2π/λの関係を満たす値(β;第2の分布定数線路の位相定数) Z1//Z2;Z1とZ2の並列合成インピーダンス Z1;frに関する基本スタブにおける分岐点から他端までの部分のインピーダンス Z2;frに関する基本スタブにおける分近点から一端までの部分のインピーダンス」 イ 周知例について 本願の出願前に頒布された刊行物である,林 卓磨(ほか4名),移動環境におけるネットワークコーディングの適応性に関する一検討,電子情報通信学会技術研究報告(NS2008-43),日本,社団法人電子情報通信学会,2008年9月,第5-10ページ(以下,「周知例1」という。)には,次の事項が記載されている。 (サ)「1.はじめに 近年,有線はもちろんのこと,無線通信インフラも充実し,通信環境は常時通信可能なユビキタス環境に近づいてきている.一方で,既存の通信インフラを利用できない場合も数多く存在する.例えば,地震や台風などの自然災害時においては,有線の断線や基地局の倒壊により通信インフラが使用できなくなる.しかし,そのような場合においてもユーザが所有する携帯電話やモバイルPCなどの移動端末や,災害時用の簡易的な基地局を相互に接続することで,簡易的なネットワークを作成することが可能である.」(第5ページ左下欄)」 また,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-136928号(以下,「周知例2」という。)には,以下の事項が記載されている。 (シ)「【0002】 従来,地震災害や土砂災害が発生した場合,通信事業者は被災エリアに特設移動アンテナを設置し,被災者救済の通信回線を設立するが道路インフラが確立された時点で通信可能になることや基地局が倒壊しない場合でも通信回線輻輳のため数時間に渡り通話途絶するなどのタイムラグが発生し,その間被災状況確認ができず不安な状況が続くことになる。」(第2ページ) 前記(サ)及び(シ)より,以下の事項は,本願の出願時における周知事項と認められる。(以下,「周知事項」という。) 「 災害時に,使用できなくなった通信インフラに代わる,災害時用の簡易な基地局や,特設移動アンテナを設置すること。」 (3)対比・判断 ア 対比 補正発明において,「第1の分布定数線路」の長さdの値は,「式〔1A〕および式〔1B〕のどちらかで算出」され,「式〔1A〕」で算出されるのは,「第2の分布定数線路が先端開放の場合」であり,「式〔1B〕」で算出されるのは「第2の分布定数線路が先端短絡の場合」である。そして,「どちらかで算出」との語と,「第2の分布定数線路」が「先端開放」のである場合と「先端短絡」である場合とは排他的な事象であることから,補正発明は,「第2の分布定数線路が先端開放の場合」の発明と,「第2の分布定数線路が先端短絡の場合」の発明との2つの発明を選択的に含む発明であるといえる。 以降では,この2つの発明のうち,「第2の分布定数線路が先端短絡の場合」についてのみ検討する。 補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明における「無線設備」は,本願発明における「無線装置」といい得るものである。また,引用発明における「送信機」は,「無線設備」において無線により送信を行うものであることは明らかであるから,本願発明の「無線機」に含まれるものである。 (イ)引用発明における「避雷装置」は,「所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するフィルタの機能」を有していることから,フィルタ機能を有する装置であるといえる。同様に,補正発明の「臨時用無線フィルタ装置」も,「所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去する」という「フィルタ」としての機能を有していることが明らかである。 よって,前記(ア)を参酌すれば,引用発明の「避雷装置」と,補正発明の「臨時用無線フィルタ装置」とは,「空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するためのフィルタ機能を有する装置」である点において共通する。 (ウ)引用発明の「給電線」と,補正発明の「給電線」とは,「同軸ケーブルにより構成され,前記空中線と前記無線機とに接続される」ものである点において共通する。 (エ)「第1の分布定数線路」に関し,補正発明において,「他端」が「給電線に接続自在」であるとは,「他端」が「給電線に接続」されている態様を含むことは明らかである。 また,引用発明において,「長さが1/2λp(λpは前記所定の高周波信号の波長)に設定され」ることは,補正発明における「前記所定の高周波信号の波長λpに基づいて長さが1/2λpに設定され」ることに等しい。 よって,引用発明と補正発明とは,「第1の分布定数線路」に関し,「他端が前記給電線に接続され」ている点において共通し,また,「前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長λpに基づいて長さが1/2λpに設定され,同軸ケーブルにより構成された」点において一致している。 (オ)「第2の分布定数線路」に関し,引用発明における「先端が短絡され」ることは,補正発明の「前記第2の分布定数線路が先端短絡の場合」に相当する。そして,引用発明と補正発明とは,「前記第1の分布定数線路の他端から1/4λpのところで分岐して接続され,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,所定の式に基づいて算出される長さdが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路」を備える点において共通する。 そして,前記「所定の式」とは, 「fp;所定の高周波信号の周波数 fr;不要な高周波信号の周波数 λ:β=2π/λの関係を満たす値(β;第2の分布定数線路の位相定数)」 といったパラメータを使用する式であることは明らかである。 イ 一致点・相違点 以上の検討から,補正発明と引用発明とは,以下の点で一致ないし相違する。 [一致点] 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するためのフィルタ機能を有する装置であって, 同軸ケーブルにより構成され,前記空中線と前記無線機とに接続される給電線と, 一端が開放され,他端が前記給電線に接続され,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長λpに基づいて長さが1/2λpに設定され,同軸ケーブルにより構成された第1の分布定数線路と, 前記第1の分布定数線路の他端から1/4λpのところで分岐して接続され,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように,所定の式に基づいて算出される値dに長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路と, を備えることを特徴とする臨時用無線フィルタ装置。 ただし,前記所定の式は, fp;所定の高周波信号の周波数 fr;不要な高周波信号の周波数 λ:β=2π/λの関係を満たす値(β;第2の分布定数線路の位相定数) を使用するものであり,この所定の式は前記第2の分布定数線路が先端短絡の場合である。」 [相違点1] 「フィルタ機能を有する装置」が,補正発明は,「フィルタ機能」以外の機能について特定していない「フィルタ装置」であるのに対し,引用発明は,「避雷器としての機能」も併せ持つ「避雷装置」である点。 [相違点2] 「フィルタ機能を有する装置」が,補正発明においては,「臨時用」であるのに対し,引用発明においては,「臨時用」であることについて言及がない点。これにともない,「給電線」が,補正発明においては,「臨時用」であるのに対し,引用発明においては,「臨時用」であることについて言及がない点。 [相違点3] 「第1の分布定数線路」の「他端」と「給電線」との間の「接続」が,補正発明においては,「接続自在」であるのに対し,引用発明においては,「T字状の分岐用部品であるアダプタとプラグと」により「接続」されているものの,「接続自在」であるかどうか具体的に特定していない点。 [相違点4] 「第2の分布定数線路」の長さdの算出が,補正発明においては,【数1B】(式は省略)で算出されるのに対し,引用発明においては,【数18】,【数19】,【数21】及び【数X】(式は省略)に基づいて算出されるものの,長さdを直接算出する式について具体的に特定していない点。 ウ 相違点についての判断 (ア)[相違点1]について 引用例における「避雷装置」は,「避雷器としての機能」と,「フィルタの機能」とを併せ持つものであって,同一の装置により2つの機能を兼ね備えるものであるから,「避雷器としての機能」をも併せ持つことにより「フィルタの機能」を阻害するものではない。すると,引用発明の「避雷装置」は,「所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するフィルタの機能」に着目すれば,「無線フィルタ装置」といい得るものである。 よって,当該「相違点1」は,実質的なものではない。 (イ)[相違点2]及び[相違点3]について まず,[相違点2]について検討する。 周知例1及び周知例2に記載されているように, 「 災害時に,使用できなくなった通信インフラに代わる,災害時用の簡易な基地局や,特設移動アンテナを設置すること。」 は本願の出願時における周知事項である。 当該周知事項において,「災害時用の簡易な基地局や,特設移動アンテナ」は,災害が復旧するまでの間の「臨時用」のものであることは明らかである。 また,引用例には,引用発明の「避雷装置」(無線フィルタ装置)を常設のものとすることについて限定はなく,本願の出願日における技術常識を参酌しても,そのように限定的に解釈すべき特別な事情が存在するとも認められない。 よって,引用発明に周知事項を適用することにより,引用発明の「避雷装置」(無線フィルタ装置)を,「臨時用」にするとともに,これにともなって,「給電線」も「臨時用」のものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 次に[相違点3]について検討するに,引用発明において,「T字状の分岐用部品であるアダプタとプラグ」は,その機構から,簡易な接続を行うためのものであり,実際,本願の明細書の段落【0022】には「この給電線103の途中(中央部)には,第1のプラグ104を介してT字状の第1のアダプタ105が配設され,2つの第1のプラグ104に給電線103が接続され,1つの第1のプラグ104に基本スタブ2が接続自在となっている。」と記載されていることから,補正発明における「接続自在」には,「T字状の分岐用部品であるアダプタとプラグ」による接続を含むことは明らかである。また,「臨時用」の装置が,取り外しが簡単な「接続自在」な構造で足りることは,本願の出願日における技術常識である。 そうすると,[相違点3]に係る補正発明の構成は,引用発明に周知事項を適用することに伴い,引用発明の構成を考慮することによって,自ずと導き出せるものである。 (ウ)[相違点4]について 引用発明において,「基本スタブ」は「先端開放」,「補正スタブ」は「先端短絡」であり,「基本スタブの長さ」は,λp/2であり,「基本スタブ」から「補正スタブ」が分岐する点(分岐点)は,基本スタブの中間点であるから,基本スタブにおける分岐点から他端までの長さ,及び,基本スタブにおける分岐点から一端までの長さは,いずれもλp/4である。 そうすると,引用発明において,Z1は,不要な高周波信号の周波数frに関して,基本スタブにおける分岐点から他端までの長さλp/4の部分の先端短絡のインピーダンスであり,Z2は,不要な高周波信号の周波数frに関して,基本スタブにおける分岐点から一端までの長さλp/4の部分の先端開放のインピーダンスである。 また,周波数λと波長fとは,λ=C/f(C:定数)の関係にあることは本願の出願時における技術常識である。 これらの事項を,【数19】に適用すると, 【数a】 【数b】 となる。 また,第2の分布定数線路(補正スタブ)は,先端短絡であるから,その長さをdとすれば,そのインピーダンスは,【数18】より,次のものとなる。 【数c】 そして,【数X】に,【数21】及び前記【数a】ないし【数c】を適用すれば, 【数d】 となり,これを変形していくと, 【数e】 【数f】 となり,d>0となることは明らかである。 そうすると,前記【数f】は,補正発明の【数1B】と同値である。 よって,[相違点4]に係る補正発明の構成は,引用発明(図16実施例)の式から,当業者が容易に導き出し得る事項である。 よって,補正発明は,当業者が引用発明に基づいて周知技術を参酌することにより容易に発明をすることができたものである。 そして,補正発明の作用効果も,引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 (4)小括 よって,補正発明は,当業者が引用発明に基づいて周知技術を参酌することにより容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,独立して特許を受けることができるものではない。 4 結語 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願について 平成28年8月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲は,上記「第2 補正の却下の決定」の[理由]の「1.本件補正」の項で,平成28年3月18日付けで手続補正された特許請求の範囲となるので,本願の特許請求の範囲に記載された請求項(以下,「本願請求項」という。)の特許性について検討する。 1 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。 「 空中線と無線機とが給電線によって接続された無線装置において,所定の高周波信号に対して低い周波数の不要な高周波信号を除去するための臨時用無線フィルタ装置であって, 同軸ケーブルにより構成され,臨時の際に前記空中線と前記無線機とに接続される臨時用の給電線と, 一端が開放または短絡され,他端が前記臨時用の給電線に接続自在で,前記所定の高周波信号に対して接続点でのインピーダンスが無限大になるように,前記所定の高周波信号の波長に基づいて長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第1の分布定数線路と, 前記第1の分布定数線路から分岐して接続され,前記不要な高周波信号に対して前記接続点でのインピーダンスがゼロになるように長さが設定され,同軸ケーブルにより構成された第2の分布定数線路と, を備えることを特徴とする臨時用無線フィルタ装置。」 2 引用例,引用発明等 引用例,引用発明等は,「第2 補正の却下の決定」の[理由]の「3 独立特許要件について」の「(2)引用例,引用発明等」において,認定したとおりである。 3 判断 本願発明は,補正発明から本件補正により限定された事項をすべて省いたものである。 そうすると,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の[理由]の「3 独立特許要件について」の「(3)対比・判断」の項で検討したとおり,当業者が引用発明に基づいて周知技術を参酌することにより容易に発明することができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて周知技術を参酌して容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,その余の請求項に論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-01 |
結審通知日 | 2017-03-07 |
審決日 | 2017-03-21 |
出願番号 | 特願2014-181668(P2014-181668) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01P)
P 1 8・ 575- Z (H01P) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岸田 伸太郎 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
林 毅 中野 浩昌 |
発明の名称 | 臨時用無線フィルタ装置、臨時用無線フィルタ方法および臨時用無線フィルタプログラム |
代理人 | 原嶋 成時郎 |