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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1328361
審判番号 不服2016-2111  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-10 
確定日 2017-05-17 
事件の表示 特願2012-557245「周期的な酸化およびエッチングのための装置と方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月15日国際公開、WO2011/112802、平成25年 6月13日国内公表、特表2013-522882〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年3月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年3月10日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成24年10月25日 翻訳文の提出
平成26年 3月10日 審査請求、手続補正書の提出
平成26年12月16日 拒絶理由通知(起案日)
平成27年 4月22日 意見書及び手続補正書の提出
平成27年10月 5日 拒絶査定(起案日)
平成28年 2月10日 審判請求、手続補正書の提出


第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年2月10日に提出された手続補正書によりなされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正の概要
平成28年2月10日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、本願の特許請求の範囲を補正するものであって、その概要は、独立請求項である請求項1、請求項8及び請求項11を、以下のとおりに補正するものである。
<本件補正前>
「 【請求項1】
基板を処理する装置であって、
基板を支持する基板支持体が中に配置された処理チャンバと、
前記基板支持体上に支持された基板の温度を100℃未満の第1の温度に制御する温度制御システムと、
前記チャンバと流体連通して、少なくとも1つの酸素含有ガス、少なくとも1つの不活性ガス、および少なくとも1つのエッチングガスを前記処理チャンバ内へ送達するガス源と、
前記処理チャンバと流体連通して、前記酸素含有ガスおよび前記エッチングガスの少なくとも1つを付勢して、酸素含有ガスを含む酸化プラズマおよびエッチングプラズマの少なくとも1つを形成するプラズマ源と、
前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで加熱する熱源と
を備える装置。」

「 【請求項8】
基板上に材料層を成形する方法であって、
(a)処理チャンバ内で材料層の表面を処理して酸化物または窒化物含有層を形成するステップと、
(b)前記酸化物または窒化物含有層の形成を終了するステップと、
(c)(a)と同じ処理チャンバ内でエッチングプロセスによって前記酸化物または窒化物含有層の少なくとも一部を除去するステップと、
(d)前記材料層が所望の形状に形成されるまで、前記同じ処理チャンバ内で(a)から(c)を繰り返すステップと
を含む方法。」

「 【請求項11】
材料層に周期的な酸化およびエッチングのプロセスを実行する装置であって、
内部に処理領域を画定する複数の壁を有し、前記処理領域内に材料層を有する基板を保持する基板支持体を含む処理チャンバと、
前記処理チャンバと流体連通して、酸素含有ガス、不活性ガス、およびエッチングガスを前記処理チャンバ内へ供給する酸素含有ガス供給、不活性ガス供給、およびエッチングガス供給と、
前記処理チャンバおよび前記エッチングガスと流体連通して、前記チャンバから遠隔でエッチングプラズマを形成し、導管と流体連通して、前記エッチングプラズマを前記チャンバ内へ送達する遠隔プラズマ源と、
前記チャンバ内の前記基板を、100℃を上回る第1の温度まで加熱する加熱システムと、
前記チャンバ内の前記基板を前記第1の温度未満の第2の温度まで冷却する冷却システムと、
前記第1の温度と前記第2の温度との間で前記チャンバ内の前記基板を循環させる制御システムと
を備える装置。」

<本件補正後>
「 【請求項1】
基板を処理する装置であって、
基板を支持する基板支持体が中に配置された処理チャンバと、
前記基板支持体上に支持された基板の温度を100℃未満の第1の温度に制御する温度制御システムと、
前記チャンバと流体連通して、少なくとも1つの酸素含有ガス、少なくとも1つの不活性ガス、および少なくとも1つのエッチングガスを前記処理チャンバ内へ送達するガス源であって、前記少なくとも1つのエッチングガスがアンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含むガス源と、
前記処理チャンバと流体連通して、前記酸素含有ガスおよび前記エッチングガスの少なくとも1つを付勢して、酸素含有ガスを含む酸化プラズマおよびエッチングプラズマの少なくとも1つを形成するプラズマ源と、
前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで10秒未満で急速に加熱する熱源とを備える装置。」

「 【請求項8】
基板上に材料層を成形する方法であって、
(a)処理チャンバ内で材料層の表面を200℃?1000℃の範囲内である第2の温度で処理して酸化物または窒化物含有層を形成するステップと、
(b)前記酸化物または窒化物含有層の形成を終了するステップと、
(c)(a)と同じ処理チャンバ内で50℃を下回る第1の温度でのエッチングプロセスによって前記酸化物または窒化物含有層の少なくとも一部を除去するステップであって、前記エッチングプロセスがアンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含む除去するステップと、
(d)前記材料層が所望の形状に形成されるまで、前記同じ処理チャンバ内で(a)から(c)を繰り返すステップであって、前記第1の温度から前記第2の温度への温度の変化が10秒未満で起こる繰り返すステップと
を含む方法。」

「 【請求項11】
材料層に周期的な酸化およびエッチングのプロセスを実行する装置であって、
内部に処理領域を画定する複数の壁を有し、前記処理領域内に材料層を有する基板を保持する基板支持体を含む処理チャンバと、
前記処理チャンバと流体連通して、酸素含有ガス、不活性ガス、およびエッチングガスを前記処理チャンバ内へ供給する酸素含有ガス供給、不活性ガス供給、およびエッチングガス供給と、
前記処理チャンバおよび前記エッチングガスと流体連通して、前記チャンバから遠隔でエッチングプラズマを形成し、導管と流体連通して、前記エッチングプラズマを前記チャンバ内へ送達する遠隔プラズマ源であって、前記エッチングプラズマがアンモニア、三フッ化窒素およびキャリアガスの混合物を含み、前記混合物は0.05体積%?20体積%がアンモニアおよび三フッ化窒素である遠隔プラズマ源と、
前記チャンバ内の前記基板を、100℃を上回る第1の温度まで加熱する加熱システムと、
前記チャンバ内の前記基板を前記第1の温度未満の第2の温度まで冷却する冷却システムと、
前記第1の温度と前記第2の温度との間で前記チャンバ内の前記基板を循環させる制御システムであって、前記加熱システムが前記基板を前記第2の温度から前記第1の温度への温度へ10秒未満で急速に加熱する制御システムと
を備える装置。」

(2)補正事項
請求項1についての補正事項を整理すると次のとおりとなる。
ア 補正事項1
本件補正前の「少なくとも1つのエッチングガス」について、本件補正後は「前記少なくとも1つのエッチングガス」は「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含む」と補正する。
イ 補正事項2
本件補正前の「前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで加熱する熱源」を、本件補正後は「前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで10秒未満で急速に加熱する熱源」と補正する。

請求項8についての補正事項を整理すると次のとおりとなる。
ウ 補正事項3
本件補正前の「材料層の表面を処理して酸化物または窒化物含有層を形成する」を、本件補正後は「材料層の表面を200℃?1000℃の範囲内である第2の温度で処理して酸化物または窒化物含有層を形成する」と補正する。
エ 補正事項4
本件補正前の「エッチングプロセス」を、本件補正後は「50℃を下回る第1の温度でのエッチングプロセス」と補正する。
オ 補正事項5
本件補正前の「エッチングプロセスによって前記酸化物または窒化物含有層の少なくとも一部を除去するステップ」を、本件補正後は「エッチングプロセスによって前記酸化物または窒化物含有層の少なくとも一部を除去するステップであって、前記エッチングプロセスがアンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含む除去するステップ」と補正する。
カ 補正事項6
本件補正前の「繰り返すステップ」について、本件補正後は「繰り返すステップであって、前記第1の温度から前記第2の温度への温度の変化が10秒未満で起こる繰り返すステップ」と補正する。

請求項11についての補正事項を整理すると次のとおりとなる。
キ 補正事項7
本件補正前の「エッチングプラズマ」について、本件補正後は「前記エッチングプラズマがアンモニア、三フッ化窒素およびキャリアガスの混合物を含み、前記混合物は0.05体積%?20体積%がアンモニアおよび三フッ化窒素である」と補正する。
ケ 補正事項8
本件補正前の「加熱システム」について、本件補正後は「前記加熱システムが前記基板を前記第2の温度から前記第1の温度への温度へ10秒未満で急速に加熱する」と補正する。

2 新規事項の追加の有無
特許法第184条の4第1項の規定により提出された翻訳文は、同法第184条の6第2項の規定により、本願に係る国際出願日における願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされるところ、平成24年10月25日付けで提出された翻訳文は、本願の願書に最初に添付して提出した明細書、特許請求の範囲又は図面の翻訳文(以下「翻訳文」という。)であると認められる。
以下、補正事項1ないし補正事項8が、翻訳文に記載した事項の範囲内でなされたかどうか検討する。
(1)補正事項1について
補正事項1は、翻訳文における、段落【0173】の「処理チャンバ1800内で実行される、アンモニア(NH_(3))および三フッ化窒素(NF_(3))ガス混合物を使用して酸化物層を除去する例示的な乾式エッチングプロセスについて、次に説明する。」、段落【0235】の「特定の変形形態では、エッチングガスはフッ素含有ガスを含む。1つの特定の変形形態では、エッチングガスは、アンモニア(NH_(3))、三フッ化窒素(NF_(3))ガス、および無水フッ化水素(HF)の1つまたは複数を含む。」等の記載に基づくものと認められる。
したがって、補正事項1は、翻訳文の記載に基づいていると認められる。

(2)補正事項2について
補正事項2は、翻訳文における、段落【0070】の「熱制御システムは、基板温度を摂氏約30度(凝固を容易にする)から少なくとも摂氏約100度(昇華を容易にする)まで急速(たとえば、約1秒未満、または最高約10秒、もしくは最高約100秒)に変化させるのに適している。」、段落【0108】の「RTP装置1500は、摂氏25?100度/秒の速度でウエハまたは基板1520の温度を傾斜させることが可能」という記載に基づくものと認められる。
したがって、補正事項2は、翻訳文の記載に基づいていると認められる。

(3)補正事項3について
補正事項3は、翻訳文における、段落【0011】の「酸化プロセスは、約200℃?800℃、より具体的には約300℃?500℃の温度で実行され」、段落【0216】の「適した酸化ガスは、酸素、オゾン、H_(2)O、H_(2)O_(2)、またはN_(2)O、NO、もしくはNO_(2)などの酸化窒素種の1つまたは複数を含むことができる。酸化ガスは、適当に低い圧力でチャンバ内へ導入される。次いでチャンバは、材料表面上に酸化物層が成長するように、適当な温度まで加熱される。1つまたは複数の実施形態では、チャンバ温度は、約200℃?約800℃の範囲内で加熱される。特定の実施形態では、チャンバは、約300℃?約400℃の範囲内で加熱される。」、段落【0221】?【0222】の「基板を第1の温度を上回る第2の温度まで加熱する熱源とを備える装置を提供」し、「別の変形形態では、第2の温度は、約200℃?1000℃の範囲内である。」という記載に基づくものと認められる。
したがって、補正事項3は、翻訳文の記載に基づいていると認められる。

(4)補正事項4について
補正事項4は、翻訳文における、特許請求の範囲の請求項5における「約50℃を下回る温度で前記エッチングプロセスの少なくとも一部分を実行する」、段落【0011】の「エッチングプロセスは、約50℃未満、具体的には約40℃未満、より具体的には約25℃?35℃の範囲内で実行される処理と、それに続いて約100℃を超過し、たとえば約100℃?約200℃の範囲内の温度で実行されるステップとを含む。」、段落【0129】の「エッチングは、約30℃±5℃でNH_(3)/NF_(3)反応を使用して直流プラズマを用いて行われる。昇華反応は、基板を1ミリトル?約10トルの範囲内の圧力で少なくとも約1分間、少なくとも約100℃まで加熱することによって実現することができる。」等の記載に基づくものと認められる。
したがって、補正事項4は、翻訳文の記載に基づいていると認められる。

(5)補正事項5について
本件補正後の請求項8の「エッチングプロセスによって前記酸化物または窒化物含有層の少なくとも一部を除去するステップであって、前記エッチングプロセスがアンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含む除去するステップ」という記載、特に「前記エッチングプロセスがアンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含む」という記載は、必ずしも明確でない。しかしながら、技術常識を参酌すれば、本件補正後の請求項8の前記記載は、「エッチングプロセスによって前記酸化物または窒化物含有層の少なくとも一部を除去するステップ」が、「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物」をエッチャントとして用いる「前記エッチングプロセス」によって「前記酸化物または窒化物含有層の少なくとも一部を除去するステップ」であるという意味であると解される。そして、この理解は、以下のとおり、翻訳文の記載とも整合している。
翻訳文には、段落【0024】に「1つの非限定的で例示的な乾式エッチングプロセスは、遠隔プラズマによるアンモニア(NH_(3))もしくは三フッ化窒素(NF_(3))ガス、または無水フッ化水素(HF)ガス混合物を含むことができ、この混合物を低温(たとえば、約30℃)のSiO_(2)上で凝固させ、反応させて化合物を形成し、この化合物を適度な温度(たとえば、100℃超)で昇華させてSiO_(2)をエッチングする。」、段落【0173】に「処理チャンバ1800内で実行される、アンモニア(NH_(3))および三フッ化窒素(NF_(3))ガス混合物を使用して酸化物層を除去する例示的な乾式エッチングプロセス」、段落【0179】に「プラズマエネルギーは、アンモニアガスおよび三フッ化窒素ガスを解離して反応種にし、これらの反応種を組み合わせて、反応性の高いフッ化アンモニア(NH_(4)F)化合物および/またはフッ化水素アンモニウム(NH_(4)F・HF)を気相で形成する。これらの分子は、開口1856、1863、および1861を流れて、基板上の材料層の酸化物層と反応する。」、段落【0185】に「チャンバ1800内の1つの非限定的で例示的な乾式エッチングプロセスは、アンモニア(NH_(3))もしくは三フッ化窒素(NF_(3))ガス、または無水フッ化水素(HF)ガス混合物を遠隔プラズマでプラズマ体積1849内へ供給することを含むことができ、この混合物を低温(たとえば、約30℃)のSiO_(2)上で凝固させ、反応させて化合物を形成し、その後、この化合物を適度な温度(たとえば、100℃超)のチャンバ1800内で昇華させてSiO_(2)をエッチングする。」、段落【0215】には「チャンバ2100内の1つの非限定的で例示的なエッチングプロセスは、アンモニア(NH_(3))もしくは三フッ化窒素(NF_(3))ガス、または無水フッ化水素(HF)ガス混合物を遠隔プラズマ源2192へ供給することを含むことができ、この混合物を低温(たとえば、約30℃)のSiO_(2)上で凝固させ、反応させて化合物を形成し、その後、この化合物を適度な温度(たとえば、100℃超)のチャンバ2100内で昇華させてSiO_(2)をエッチングする。」と記載されている。
ここで、翻訳文には、「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物」用いてエッチングできるのは「酸化物層」または「SiO_(2)」であることが記載されているだけであって、「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物」を用いて「窒化物含有層の少なくとも一部」をエッチングすることは、記載されていない。
しかしながら、「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物」を用いて「窒化物含有層」を「除去」することは、以下に示す第2の4(6)イ(イ)?(オ)において指摘するように周知・慣用の技術であり、翻訳文に記載されているのと同然な、当業者には自明な事項であると認められる。
そうすると、補正事項5は、翻訳文の記載に基づいていると認められる。

(6)補正事項6について
本件補正後の請求項8の「繰り返すステップであって、前記第1の温度から前記第2の温度への温度の変化が10秒未満で起こる繰り返すステップ」という記載は、「繰り返すステップ」において「前記第1の温度から前記第2の温度への温度の変化が10秒未満で起こる」ということを意味すると認められる。
そうすると、補正事項2についての検討と同じ理由により、補正事項6は、翻訳文の記載に基づいていると認められる。

(7)補正事項7について
翻訳文には、補正事項1の検討で指摘した記載に加え、段落【0176】の「ガス混合物には、パージガスまたはキャリアガスを追加することもできる。……いくつかの実施形態では、全体的なガス混合物は、約0.05体積%?約20体積%がアンモニアおよび三フッ化窒素であり、残りはキャリアガスである。」と記載されている。
したがって、補正事項7は、翻訳文の記載に基づいていると認められる。

(8)補正事項8について
補正事項2についての検討と同じ理由により、補正事項8は、翻訳文の記載に基づいていると認められる。

(9)新規事項の追加の有無のまとめ
以上のとおり、補正事項1ないし補正事項8は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
したがって、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

3 補正の目的等について
(1)補正事項1について
補正事項1の補正は、本願補正前の「少なくとも1つのエッチングガス」が「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含む」ことを限定するものである。
したがって、補正事項1の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の減縮を目的とするものと認められる。

(2)補正事項2について
補正事項2の補正は、本件補正前の「前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで加熱する熱源」が「前記基板」を「第2の温度まで10秒未満で急速に加熱する熱源」であることを限定するものである。
したがって、補正事項2の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の減縮を目的とするものと認められる。

(3)補正事項3について
補正事項3の補正は、本件補正前の「材料層の表面」の「処理」が、「材料層の表面を200℃?1000℃の範囲内である第2の温度で処理」するものであることを限定するものである。
したがって、補正事項3の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の減縮を目的とするものと認められる。

(4)補正事項4について
補正事項4の補正は、本件補正前の「エッチングプロセス」が、「50℃を下回る第1の温度でのエッチングプロセス」であることを限定するものである。
したがって、補正事項4の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の減縮を目的とするものと認められる。

(5)補正事項5について
補正事項5の補正は、本件補正前の「エッチングプロセス」が、「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含む」ことを限定するものである。
したがって、補正事項5の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の減縮を目的とするものと認められる。

(6)補正事項6について
補正事項6の補正は、本件補正前の「繰り返すステップ」において「前記第1の温度から前記第2の温度への温度の変化が10秒未満で起こる」ことを限定するものである。
したがって、補正事項6の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の減縮を目的とするものと認められる。

(7)補正事項7について
補正事項7の補正は、本件補正前の「エッチングプラズマ」が、「アンモニア、三フッ化窒素およびキャリアガスの混合物を含み、前記混合物は0.05体積%?20体積%がアンモニアおよび三フッ化窒素である」ことを限定するものである。
したがって、補正事項7の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の減縮を目的とするものと認められる。

(8)補正事項8について
補正事項8の補正は、本件補正前の「加熱システム」が、「前記基板を前記第2の温度から前記第1の温度への温度へ10秒未満で急速に加熱する」ことを限定するものである。
したがって、補正事項8の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の減縮を目的とするものと認められる。

(9)発明の特別な技術的特徴について
なお、補正事項1ないし2の補正が請求項1に係る発明の特別な技術的特徴を変更しないこと、補正事項3ないし6の補正が請求項8に係る発明の特別な技術的特徴を変更しないこと、補正事項7ないし8の補正が請求項11に係る発明の特別な技術的特徴を変更しないことは、いずれも明らかである。

(10)検討のまとめ
以上検討したとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項ないし第5項に規定する要件を満たす。

4 独立特許要件について
(1)検討の前提
以上のとおり、補正事項1ないし補正事項8の本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そこで、本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、本件補正が、いわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かを、請求項1に係る発明について検討する。

(2)補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、再掲すると次のとおりである。

「基板を処理する装置であって、
基板を支持する基板支持体が中に配置された処理チャンバと、
前記基板支持体上に支持された基板の温度を100℃未満の第1の温度に制御する温度制御システムと、
前記チャンバと流体連通して、少なくとも1つの酸素含有ガス、少なくとも1つの不活性ガス、および少なくとも1つのエッチングガスを前記処理チャンバ内へ送達するガス源であって、前記少なくとも1つのエッチングガスがアンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含むガス源と、
前記処理チャンバと流体連通して、前記酸素含有ガスおよび前記エッチングガスの少なくとも1つを付勢して、酸素含有ガスを含む酸化プラズマおよびエッチングプラズマの少なくとも1つを形成するプラズマ源と、
前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで10秒未満で急速に加熱する熱源とを備える装置。」

(3)引用例1の記載事項及び引用発明
ア 引用例1の記載事項
原査定の根拠となった拒絶理由通知において引用され、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2003-309108号公報(以下「引用例1」という。)には、「エッチング方法」(発明の名称)について、図1?図12とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付加。以下同じ。)。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ドライプロセスにおいてもシリコン窒化膜(エッチングマスク)のパターンの間口を広くすることができるエッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】シリコン基板上に形成された素子を電気的に分離する技術に、STI(Shallow Trench Isolation)がある。STIは、一般的に、Si_(3)N_(4)/SiO_(2)膜をマスクとしてSiにトレンチを形成し、その中にSiO_(2)を埋込み、最後にCMP(Chemical and Mechanical Polishing)によって平坦化することによって形成される。
【0003】STIでは、トレンチの形成において反応性イオンエッチング(Reaction IonEtching;RIE)等のドライエッチングが用いられているが、半導体装置の微細化に伴い、結晶欠陥(ラディエーションダメージなど)や形状不良(RIEダメージ、ライナSiO_(2)膜の不均一性、埋込みSiO_(2)のボイドやシームなど)に起因する電気的リークの問題が生じる。このような不具合を防止するために、最近では、熱リン酸等のウェットプロセス(ウェットエッチング)によるプルバックによって、改善しようとしている。ここで、プルバックとは、後の工程において障害となるSi_(3)N_(4)等のエッチングマスクの一部(STIについてはSiO_(2)埋込みの際の障害となるトレンチ近傍の部分)を除去する(後退させる)ことをいう。」

(イ)「【0025】
【発明の実施の形態】少なくとも表面にシリコン(図2の2)及びシリコン窒化膜(図2の4)が露出する半導体基板(図2の1)のエッチング方法において、O_(2)ガスを反応ガスとしてプラズマ放電により励起された活性種を前記半導体基板に吹き付けることにより前記シリコン及び前記シリコン窒化膜を露出面から所定膜厚に酸化する酸化工程と(図2(B)参照)、前記酸化工程により酸化された前記半導体基板を少なくともO_(2)ガス及びCH_(2)F_(2)ガスを含む反応ガスを用いてプラズマエッチングするエッチング工程と(図2(C)参照)、を含むことにより、酸化工程でシリコン窒化膜表面にSiON膜ができ、エッチング工程の処理時間の経過にともなうシリコン窒化膜のエッチング速度の急速な上昇が抑えられ、基板表面の均一性を保ちながらシリコン窒化膜(エッチングマスク)のパターンの間口を広くすることができる。」

(ウ)「【0029】次に、実施例1に係るエッチング方法で用いる装置について説明する。実施例1では、図4のようなアッシング装置(アッシャ)を用いる。このアッシング装置10は、ガス供給源(図示せず)と流路として接続するプラズマ生成室12の周囲にICP(Inductive coupled Plasma)コイル11を有するICPソースを備えたRFダウンフローアッシャであり、プラズマ生成室12下のチャンバ15内の反応ガス出口にイオントラップ用のグリッド13を備えており、イオンバイアスがウェハ上にかかりにくなるバイアストラップ(図示せず)を有する。グリッド13は、金属または金属酸化物を網状にしたものが一般的に用いられ、2重にしたりすると効果が高い。チャンバ15内のグリッド13下方には、半導体基板1が搭載されるとともに高周波誘導、ヒータ等の加熱手段によって加熱されるサセプタ14を有する。チャンバ15内のガスは真空排気される。
【0030】次に、実施例1のエッチング方法について説明する。ここでのエッチングは、STI形成工程におけるトレンチエッチングからトレンチ埋込みの間に行なわれるものである。図1(F)に示したトレンチ6が形成された半導体基板1を図4に示したアッシング装置10のサセプタ14にセットして、以下の酸化工程及びプルバック工程を行なう。
【0031】まず、酸化工程を行なう。酸化工程では、O_(2)ガスのみを反応ガスとしてプラズマ放電によって励起された活性種O^(*)を半導体基板1に吹き付ける。これにより、シリコン窒化膜4の露出面(側壁面を含む)だったところから深さ3?30Å(0.3?3nm)程度までには等方的に酸素成分が注入(酸化)されたSiON膜4a(組成比は非化学量論的組成、SiNにOが任意量添加された状態、以下同じ)ができ、シリコン基板2(トレンチ6の内壁)の露出面だったところから深さ10?30Å(1?3nm)程度まで等方的に酸化されたシリコン酸化膜7ができる(図2(B)参照)。なお、実施例1における酸化工程の処理条件は表1に示す通りである。
【0032】
【表1】(当審注:表1の記載内容は省略)
【0033】次に、プルバック工程(エッチング工程)を行なう。プルバック工程では、酸化工程で用いた同一チャンバ内で半導体基板の位置を変えることなく引き続きO_(2)-CH_(2)F_(2)系でのO_(2)リッチ(O_(2)ガスの流量が全ガス流量の85?95%以上)な条件で、プラズマエッチング(等方性エッチング)する。
【0034】これにより、後のSiO_(2)埋込み工程において障害となるシリコン窒化膜4(エッチングマスク)の一部(特にトレンチ6近傍の側壁部分を含む)を選択的に除去(後退)させることができる。つまり、実質的にシリコン窒化膜4のみが等方的に後退したような形状(間口が広がったような形状)が得られる(図2(C)参照)。また、前記酸化工程を行なった後にプルバック工程を行なうと、前記酸化工程を行なわないでプルバック工程を行なう場合に比べ、エッチング速度を安定化させ、エッチングの選択比、エッチング量の均一性、制御性を向上させることができる。
【0035】ここで、Si_(3)N_(4)エッチング速度>Siエッチング速度>SiO_(2)エッチング速度であるため、Si_(3)N_(4)/SiO_(2)の選択比は5以上得られる。
【0036】なお、実施例1におけるプルバック工程の処理条件は表2に示す通りである。ここで、表2における選択比AはSi_(3)N_(4)/Siの選択比、選択比BはSi_(3)N_(4)/SiO_(2)の選択比である。
【0037】
【表2】(当審注:表2の記載内容は省略)
【0038】ここで、プルバック工程によるプルバック量(シリコン窒化膜4の水平方向の後退量;図2(C)の幅X参照)について説明すると、SiON膜4aが膜厚10Åである場合に、表2の処理条件でプルバック工程を行なうと、プルバック量=40(Å/min)×2(min)-10Å=70Å程度となる。なお、SiON/SiO_(2)の選択比は、SiONの組成が非化学量論的なため一定にならないが、ほぼ1と近似できる。
【0039】プルバック工程の後、半導体基板を洗浄し(図3(A)参照)、トレンチの内壁を酸化させ(図3(B)参照)、CVDによりSiO29をトレンチに埋め込み(図3(C)参照)、シリコン窒化膜4をCMPストッパとしてシリコン基板2が露出するまでCMPにより半導体基板の表面が平坦化され、STI構造が得られる(図3(D)参照)。これにより、トレンチへの埋め込みが良好となり、ボイド等の発生を抑えることができる。」

(エ)「【0043】シリコン窒化膜のエッチング速度が上がるメカニズムは、プラズマ励起反応によりO_(2)ガスから活性種O^(*)、CH_(2)F_(2)ガスから活性種F^(*)がそれぞれ発生するとして、以下の化学式1に示すような反応式が考えられる。なお、化学式1においては、シリコン窒化膜については「SiN」、フッ化珪素については「SiF」と表す。」

(オ)「【0051】次に、実施例2について図面を用いて説明する。図6は、本発明の実施例2に係るエッチング方法に用いるアッシング装置の構成を示した模式図である。
【0052】実施例2で用いる半導体基板(酸化工程直前のもの)は、図1(F)の半導体基板1と同様である。また、実施例2で用いるアッシング装置20の構成は、図4のアッシング装置におけるサセプタの代わりに加熱手段によって加熱されていない保持台24を用い、保持台24に搭載された半導体基板1をその保持台側(裏面側)から30?250℃程度に加熱するランプ26を備え、その他のコイル21、プラズマ生成室22、グリッド23、チャンバ25については図4のものと同様である(図6参照)。このアッシング装置20によれば、酸化工程の際にランプ26をONにして半導体基板1を250℃程度に加熱できるとともに、プルバック工程の際にランプ26をOFFにして半導体基板1を30℃程度にすることができる。
【0053】次に、実施例2の工程について説明すると、半導体基板1をアッシング装置20にセットし、酸化工程を行ない、その後プルバック工程を行なう。酸化工程では、表1におけるサセプタ設定温度及び処理時間以外の他の処理条件を適用し、アッシング装置のランプ26をONにして処理温度を250℃程度にして行う。プルバック工程では、表2におけるサセプタ設定温度以外の他の処理条件を適用し、アッシング装置のランプ26をOFFにして処理温度を30℃程度にして行う。なお、実施例2のエッチング方法による工程部分断面図は、図2と同様である。実施例2によれば、酸化工程の処理時間が10?15sec程度で済む。
【0054】なお、実施例2における酸化工程の処理温度は250℃程度としているが、200?350℃程度であればよい。200℃より低いと酸化工程の所要時間の短縮があまり見込まれず、350℃より高いと所要時間が短すぎ制御するのが難しくなったり、冷却に時間がかかりすぎたりするデメリットが考えられる。」

(カ)「【0061】次に、実施例5について説明する。実施例5のエッチング方法では、実施例1における酸化工程及びプルバック工程の繰り返し回数を調整する。各工程の処理条件は表1及び表2を参照されたい。なお、半導体基板は、図1(F)の半導体基板1と同様である。また、実施例7で用いるアッシング装置は、図4のアッシング装置10と同様である。
【0062】実施例5によれば、プルバック量(シリコン窒化膜のパターンの間口の大きさ)を広げる調整が可能である。例えば、酸化工程及びプルバック工程を3回繰り返すと、酸化工程及びプルバック工程の1回あたりのプルバック量が70Å(7nm)である場合、70Å×3回で210Å(21nm)程度プルバックすることができる。なお、酸化工程及びプルバック工程の繰り返しは、エッチング装置の処理シーケンスにより繰り返すことが可能であり、ステップ毎に異なるエッチング装置若しくはチャンバ(反応室)を使用する必要はない。」

(キ)引用例1の段落【0032】に記載された表1には、「酸化工程の処理条件(実施例1)」における「サセプタ設定温度」は「30?50℃」であること、「全圧(O_(2)の圧力)」が「500mTorr」であること、が記載されている。
また、段落【0037】に記載された表2には、「プルバック工程の処理条件(実施例1)」における「サセプタ設定温度」は「30?50℃」であること、「O_(2)の流量」は「900sccm」であり、「CH_(2)F_(2)の流量」は「75sccm」であること、が記載されている。

イ 引用発明
上記(オ)の「保持台24に搭載された半導体基板1をその保持台側(裏面側)から30?250℃程度に加熱するランプ26を備え、その他のコイル21、プラズマ生成室22、グリッド23、チャンバ25については図4のものと同様である」及び「酸化工程では、表1におけるサセプタ設定温度及び処理時間以外の他の処理条件を適用し、アッシング装置のランプ26をONにして処理温度を250℃程度にして行う。プルバック工程では、表2におけるサセプタ設定温度以外の他の処理条件を適用し、アッシング装置のランプ26をOFFにして処理温度を30℃程度にして行う。」という記載によれば、引用例1の実施例2に係るアッシング装置20は、実施例1に係るアッシング装置10と比較すると、半導体基板1の支持手段と加熱手段が異なるとともに、当該アッシング装置で行う酸化工程におけるサセプタ設定温度及び処理時間とプルバック工程におけるサセプタ設定温度が異なるものの、その他の構成は同じであると認められる。
そうすると、上記の(ア)?(キ)から、引用例1には、実施例2に係るエッチング方法で用いるアッシング装置20に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「少なくとも表面にシリコン及びシリコン窒化膜が露出する半導体基板1に酸化工程及びプルバック工程(エッチング工程)を行なうためのアッシング装置であって、
前記半導体基板1が搭載される保持台24を内部に有するチャンバ25と、
前記半導体基板1を前記保持台24側(裏面側)から加熱し、前記酸化工程の際にONにして前記半導体基板1を250℃程度に加熱し、前記プルバック工程の際にOFFにして前記半導体基板1を30℃程度にするランプ26と、
流路として接続されるプラズマ生成室22のガス供給源であって、前記酸化工程ではO_(2)ガスのみを反応ガスとして供給し、前記プルバック工程ではO_(2)ガス及びCH_(2)F_(2)ガスを反応ガスとして供給する前記ガス供給源と、
前記チャンバ25内の反応ガス出口に設けられるイオントラップ用のグリッド23の上に設けられ、プラズマ放電によるプラズマ励起反応により、前記O_(2)ガスから活性種O^(*)を、前記CH_(2)F_(2)ガスから活性種F^(*)をそれぞれ発生させるための前記プラズマ生成室22と、
を備え、前記保持台24にセットした半導体基板1の前記酸化工程を行ない、その後前記プルバック工程を行なうアッシング装置。」

(4)引用例2の記載事項
原査定の根拠となった拒絶理由通知において引用され、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2008-159892号公報(以下「引用例2」という。)には、「パターン形成方法、および半導体装置の製造方法」(発明の名称)について、図1?図12とともに、次の事項が記載されている。
ア 「【0040】
このプラズマ処理装置100は、前記のように表面酸化工程(ステップS2)においてウエハW上のシリコン(ポリシリコン、単結晶シリコン)の表面を酸化してシリコン酸化膜を形成するプラズマ酸化処理に好適に利用可能なものである。
プラズマ処理装置100によりシリコン表面の酸化処理を行う際には、まず、ゲートバルブ26を開にして搬入出口25から初期パターン300が形成されたウエハWをチャンバー1内に搬入し、サセプタ2上に載置する。
【0041】
そして、ガス供給系16のArガス供給源17およびO_(2)ガス供給源18から、ArガスおよびO_(2)ガスを所定の流量でガス導入部材15を介してチャンバー1内に導入し、所定の処理圧力に維持する。この際の条件としては、プラズマ中のO(^(1)D_(2))密度を1×10^(12)[cm^(-3)]以上に高める観点から、処理ガス中の酸素の割合が1%以下であればよく、例えば0.2?1%が好ましく、0.5?1%がより好ましい。このように、処理ガス中の酸素の割合を調節することにより、プラズマ中の酸素イオンや酸素ラジカルの量を制御することができる。従って、シリコン表面に例えば初期パターン300による凹凸が存在していても、凹部の奥に到達する酸素イオンや酸素ラジカルの量を調節できるので、均一な膜厚でシリコン酸化膜を形成できる。
処理ガスの流量は、Arガス:500?10000mL/min、O_(2)ガス:5?100mL/minの範囲から、全ガス流量に対する酸素の割合が上記値となるように選択することができる。」

イ 「【0055】
以上のような大気圧プラズマエッチング装置101では、載置台62と電極72a,72bとの距離L1を例えば5mmに設定し、載置台62に載置されたウエハWに形成されたシリコン酸化膜を、高密度のプラズマPにより選択的にエッチングして除去することができる。
【0056】
大気圧プラズマエッチング装置101を用いるエッチング条件は以下の通りである。処理ガスとしては、例えばHe、NF_(3)、H_(2)O(Heバブリングによる)を用いることができる。処理ガス中にH_(2)Oを添加することで、HFが生成され、エッチングレートを向上させることができる。処理ガスの流量比としては、例えば、He/NF_(3)/H_(2)O=8?16/30?250/180?400mL/min(sccm)とすることが好ましい。マイクロ波パワーは、500?1000Wとすることが好ましい。チャンバー内処理圧力は、101325Pa(760Torr)であり、処理温度は20?100℃の範囲とすることが好ましい。このような条件で大気圧プラズマエッチング処理を実施することにより、ウエハWのシリコン表面に形成されるシリコン酸化膜を下地のシリコンに対して高い選択比でエッチングすることができる。なお、大気圧プラズマ処理では、上記以外のガスとして、例えばArガスとNF_(3)とNH_(3)またはNF_(3)とN_(2)とH_(2)ガスを含むガス系を用いることができる。」

(5)対比
ア 補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「少なくとも表面にシリコン及びシリコン窒化膜が露出する半導体基板1」は補正発明の「基板」に相当し、引用発明の「酸化工程及びプルバック工程を行なう」ことは補正発明の「処理する」ことに相当する。
したがって、引用発明の「少なくとも表面にシリコン及びシリコン窒化膜が露出する半導体基板1に酸化工程及びプルバック工程(エッチング工程)を行なうためのアッシング装置」は、補正発明の「基板を処理する装置」に相当する。

(イ)引用発明の「前記半導体基板1が搭載される保持台24」は、補正発明の「基板を支持する基板支持体」に相当する。
したがって、引用発明の「前記半導体基板1が搭載される保持台24を内部に有するチャンバ25」は、補正発明の「基板を支持する基板支持体が中に配置された処理チャンバ」に相当する。

(ウ)引用発明は「前記半導体基板1を前記保持台24側(裏面側)から加熱し、前記酸化工程の際にONにして前記半導体基板1を250℃程度に加熱し、前記プルバック工程の際にOFFにして前記半導体基板1を30℃程度にするランプ26」を有している。
そうすると、引用発明は、「前記酸化工程の際」には「ランプ26」を「ON」制御して「保持台24」上の「半導体基板1を250℃程度に加熱」するとともに、「前記プルバック工程の際」には前記「ランプ26」を「OFF」制御して前記「半導体基板1を30℃程度にする」、温度制御手段を有すると認められる。
そして、この温度制御手段は、補正発明の「前記基板支持体上に支持された基板の温度を100℃未満の第1の温度に制御する温度制御システム」に相当する。

また、引用発明において、「酸化工程の際」の「前記半導体基板1」の「加熱」温度である「250℃程度」は、「前記プルバック工程」における「前記半導体基板1」温度である「30℃程度」を上回る温度である。
したがって、引用発明の前記「酸化工程の際にONにして前記半導体基板1を250℃程度に加熱」する「ランプ26」と、補正発明の「前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで10秒未満で急速に加熱する熱源」とは、「前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度」まで「加熱する熱源」である点で共通する。

(エ)引用発明の「アッシング装置」は、「ガス供給源」から供給された「O_(2)ガス及びCH_(2)F_(2)ガス」から、「流路として接続されるプラズマ生成室22」において「プラズマ放電によるプラズマ励起反応」により「活性種O^(*)」及び「活性種F^(*)」を発生させ、これらの「活性種」により「チャンバ25」の「内部」において「半導体基板1」に対する「酸化工程及びプルバック工程」を行うものである。
そうすると、引用発明の「チャンバ25」と「流路として接続されるプラズマ生成室22」は流体連通しており、「ガス供給源」と前記「チャンバ25」も、「プラズマ生成室22」を「流路」として流体連通しているものと認められる。
そして、前記「ガス供給源」から供給された「O_(2)ガス」と「CH_(2)F_(2)ガス」は、「プラズマ生成室22」において「プラズマ放電によるプラズマ励起反応」により反応性の高いプラズマ状態の「活性種」に「励起」されて「チャンバ25」の「内部」に送り込まれるものである。
ここで、引用発明の「O_(2)ガス」は酸素含有ガスに他ならず、また、引用発明の「O_(2)ガス及びCH_(2)F_(2)ガス」は「プルバック工程(エッチング工程)」において「反応ガスとして供給」されるからエッチングガスであると認められる。
したがって、引用発明の「流路として接続されるプラズマ生成室22のガス供給源であって、前記酸化工程ではO_(2)ガスのみを反応ガスとして供給し、前記プルバック工程ではO_(2)ガス及びCH_(2)F_(2)ガスを反応ガスとして供給する前記ガス供給源」と、補正発明の「前記チャンバと流体連通して、少なくとも1つの酸素含有ガス、少なくとも1つの不活性ガス、および少なくとも1つのエッチングガスを前記処理チャンバ内へ送達するガス源であって、前記少なくとも1つのエッチングガスがアンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含むガス源」とは、「前記チャンバと流体連通して、少なくとも1つの酸素含有ガス」および「少なくとも1つのエッチングガスを前記処理チャンバ内へ送達するガス源」である点で共通する。

また、引用発明の「前記チャンバ25内の反応ガス出口に設けられるイオントラップ用のグリッド23の上に設けられ、プラズマ放電によるプラズマ励起反応により、前記O_(2)ガスから活性種O^(*)を、前記CH_(2)F_(2)ガスから活性種F^(*)をそれぞれ発生させるための前記プラズマ生成室22」は、補正発明の「前記処理チャンバと流体連通して、前記酸素含有ガスおよび前記エッチングガスの少なくとも1つを付勢して、酸素含有ガスを含む酸化プラズマおよびエッチングプラズマの少なくとも1つを形成するプラズマ源」に相当する。

イ 一致点と相違点
以上を総合すると、補正発明と引用発明とは、以下の点で一致するとともに、以下の点で相違している。
(一致点)
「基板を処理する装置であって、
基板を支持する基板支持体が中に配置された処理チャンバと、
前記基板支持体上に支持された基板の温度を100℃未満の第1の温度に制御する温度制御システムと、
前記チャンバと流体連通して、少なくとも1つの酸素含有ガス、および少なくとも1つのエッチングガスを前記処理チャンバ内へ送達するガス源と、
前記処理チャンバと流体連通して、前記酸素含有ガスおよび前記エッチングガスの少なくとも1つを付勢して、酸素含有ガスを含む酸化プラズマおよびエッチングプラズマの少なくとも1つを形成するプラズマ源と、
前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで加熱する熱源とを備える装置。」

(相違点)
(相違点1)
補正発明の「ガス源」は「少なくとも1つの不活性ガス」も送達するのに対して、引用発明の「ガス供給源」は「反応ガス」は供給するものの、「不活性ガス」を供給することは特定されていない点。
(相違点2)
補正発明の前記「少なくとも1つのエッチングガス」は「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物を含む」のに対して、引用発明は、このような特定を有していない点。
(相違点3)
補正発明の「熱源」は、前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで「10秒未満で急速に」加熱するのに対して、引用発明において「ランプ26」を「ONにして前記半導体基板1を250℃程度に加熱」するときの昇温速度は不明である点。

(6)各相違点についての当審の判断
ア 相違点1について
(ア)プラズマ処理装置の処理ガスに窒素やアルゴン等の不活性ガスを含有させることは、第2の4(4)より、引用例2にみられるように当該技術分野では周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
したがって、引用発明において、「ガス供給源」が供給するガスとして「反応ガス」に加えて不活性ガスも供給することは、周知技術1を参酌すれば、当業者であれば適宜になし得たものと認められる。

イ 相違点2について
(ア)引用例1には、第2の4(3)ア(ウ)で摘記したとおり、「【0033】次に、プルバック工程(エッチング工程)を行なう。プルバック工程では、酸化工程で用いた同一チャンバ内で半導体基板の位置を変えることなく引き続きO_(2)-CH_(2)F_(2)系でのO_(2)リッチ(O_(2)ガスの流量が全ガス流量の85?95%以上)な条件で、プラズマエッチング(等方性エッチング)する。」、「【0034】これにより、後のSiO_(2)埋込み工程において障害となるシリコン窒化膜4(エッチングマスク)の一部(特にトレンチ6近傍の側壁部分を含む)を選択的に除去(後退)させることができる。」と記載されている。
すなわち、引用発明において「プルバック工程(エッチング工程)」で「反応ガス」として用いる「O_(2)ガス及びCH_(2)F_(2)ガス」は、プラズマエッチングによりシリコン窒化膜を選択的に除去するためのエッチングガスである。

(イ)そして、シリコン窒化膜を選択的にプラズマエッチングするための反応ガスとして、アンモニアと三フッ化窒素との混合物が含まれたガスを使用することは、以下に挙げる周知例1ないし周知例3にみられるように、プラズマエッチング技術において周知・慣用の技術(以下「周知技術2」という。)である。
したがって、第2の4(3)ア(ウ)で摘記したとおりシリコン窒化膜4のみをプラズマエッチングするための工程である引用発明の「プルバック工程」において、供給する「反応ガス」として、「O_(2)ガス及びCH_(2)F_(2)ガス」に代えて、アンモニアと三フッ化窒素との混合物が含まれたガスを供給することは、単なる周知技術への転換にすぎないと認められ、周知技術2を参酌すれば、当業者であれば適宜になし得たものと認められる。

(ウ)周知例1
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特表2009-506531号公報には、「磁気デバイスおよびその形成方法」(発明の名称)について、図1?図6とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0047】
次いで、第2のエッチング材料を使用して第2エッチングを実行し、エッチングを継続する。第2エッチング材料については、主として下層610および誘電体層606を選択的にエッチングし、残りの層(例えば、上層612)が実質的には作用を受けないように選ばれることが好ましい。例えば、第2エッチングで使用するのに適したエッチング材料としては、窒化シリコンを選択的にエッチングし、二酸化シリコンはほんのわずかしかエッチングしないCH_(3)F/O_(2)が挙げられるが、これに限定されない。あるいは、第2エッチングには、NF_(3)/O_(2)/NH_(3)を用いてもよく、これは、極めて高い選択性(例えば、約100対1よりも顕著な比)で窒化シリコンを選択し、二酸化シリコンは選択しない。このことは、例えば、Ying Wang and Leroy Luoによる論文、「Ultrahigh-Selectivity Silicon Nitride Selective Etch Process Using Inductive Coupled Plasma Source」,「Journal of Vacuum Science and Technology(JVST) A」,16巻,3号,p.1582-1587(1998年5月)に記載されている。従って、誘電体層606には、下層610の形成に使用する材料を含むがこれに限定しない、第2エッチング材料によってエッチング可能なあらゆる材料を、含めることができる。」

(エ)周知例2
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-264510号公報には、「シリコン窒化膜のエッチング方法およびエッチング装置」(発明の名称)について、図1?図9とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0015】上記構成のCDE装置において、ガス導入口1から導入された反応ガスがプラズマ化されて活性種(イオン、ラジカル)が生成され、寿命が短いイオンは輸送管3内で失活し、寿命の長いラジカルのみが輸送管3を通過して前記処理室5の内部に導入され、半導体ウエハー6と反応してCDEが行われる。そして、反応後のガスは排気口8より処理室5の外部に排気される。」
b 「【0045】以上詳述したように、フッ素を含むガスと、酸素ガスと、水素原子を含むガスとで構成される混合ガスを用いたCDEにより、シリコン窒化膜をシリコンに対して選択的にエッチング除去することができた。
【0046】また、上記各実施例では、F^(*)を生成するための原料ガスとしてCF_(4)を用いたが、NF_(3)、SF_(6)、XeF、F_(2)のようにFを含むガスならいずれでもよい。また、上記各実施例では、Hを含むガスとしてH_(2)Oを用いたが、H_(2)、NH_(3)のようにHを含むガスならいずれでもよい。」

(オ)周知例3
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2009-152550号公報には、「少なくとも1つの誘電体層を形成するための方法およびシステム」(発明の名称)について、図1?図4とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0025】
[0032]誘電体層125、たとえば、窒化ケイ素(SiN)層の一部分を取り除く一部の実施形態において、エッチングプロセス130では、三フッ化窒素(NF_(3))、四フッ化ケイ素(SiF_(4))、テトラフルオロメタン(CF_(4))、フルオロメタン(CH_(3)F)、ジフルオロメタン(CH2F_(2))、トリフルオロメタン(CHF_(3))、オクタフルオロプロパン(C_(3)F_(8))、ヘキサフルオロエタン(C_(2)F_(6))、他のフッ素含有前駆体、これらの様々な組合せなどのフッ素含有前駆体と、水素(H_(2))、アンモニア(NH_(3))、ヒドラジン(N_(2)H_(4))、アジ化水素酸(HN_(3))、他の水素含有前駆体、これらの様々な組合せなどの水素含有前駆体とを使用することができる。一部の実施形態において、エッチングプロセス130は、約10立方センチメートル毎分(sccm)?約5リットル毎分(slm)ガス流量、約100ミリトール?約200トールのプロセス圧力、約5ワット?約3,000ワットの高周波(RF)電力、および約100kHz?約64MHzのRFを提供することができる。一部の実施形態において、RFは約400kHz?約13.67MHzでもよい。
【0026】
[0033]一部の実施形態において、図2Aのステップ210に記載されているようにプラズマを生成するための外部プラズマ発生器に、NF_(3)、H_(2)およびHeを提供する。NF_(3)は約50sccmの流量を有することができ、H_(2)は約300sccmの流量を有することができ、Heは約100sccmの流量を有することができる。プロセス圧力は約3トールで、RF電力は約40ワットである。一部の実施形態においては、プラズマを、エッチングプロセス130を行うために構成されたエッチングチャンバ内で生成することができる。プラズマは、以下に記載されている式のように生成することができる。
【0027】
NF_(3)+H_(2)→NH_(x)F_(y)(またはNH_(x)F_(y)・HF)+HF+F
[0034]次いで、窒化ケイ素層の一部分をエッチングするためのエッチングチャンバに、プラズマを導入することができる。この遠隔生成プラズマは、窒化ケイ素と相互作用して、図2Aのステップ220に記載されているように副生成物、たとえば(NH_(4))_(2)SiF_(6)を形成することができる。一部の実施形態において、基板100は、-約100℃?約1,000℃の温度を有するペデスタルの上に配置される。一部の実施形態において、ペデスタルは約30℃の温度を有することができる。ペデスタルの温度は、望ましくはプラズマと窒化ケイ素との相互作用を高めることができる。一部の実施形態において、プラズマと窒化ケイ素との相互作用は、エッチングステップと称される。このエッチングプロセスは、下記式のように表すことができる。
【0028】
NH_(x)F_(y)・HF+SiN→(NH_(4))_(2)SiF_(6)+N_(2)+NH_(3 )
[0035]次いで、図2Aのステップ230に記載されているように、副生成物、(NH_(4))_(2)SiF_(6)に熱プロセスを施して副生成物を分解するおよび/または昇華させることができる。一部の実施形態においては、-約50℃?約1,000℃のプロセス温度を提供するように動作可能であるシャワーヘッドに副生成物を近づけることによって、熱プロセスを行うことができる。一実施形態において、プロセス温度は約180℃である。他の実施形態においては、たとえば、オーブン、炉、急速加熱アニール(RTA)装置、または他の熱装置によって、熱プロセスを行うことができる。副生成物の分解および/または昇華は、下記式のように表すことができる。
【0029】
(NH_(4))_(2)SiF_(6)→SiF_(4)+NH_(3)+HF」

ウ 相違点3について
(ア)引用発明は、「酸化工程の際にONにして前記半導体基板1を250℃程度に加熱」する加熱手段として「ランプ26」を用いている。
ここで、半導体の製造技術において、ランプを、基板を急速に加熱するための加熱手段として用いることは慣用手段であるから、引用例1には、「酸化工程の際」に「前記半導体基板1」を急速に「加熱」することが示唆されているといえる。

(イ)そして、半導体の製造技術において、酸化工程を実行するために、ランプ加熱によって、半導体基板を、100℃未満の温度を上回る温度にまで、10秒未満で急速に加熱することは、以下に挙げる周知例4及び周知例5にみられるように、周知技術(以下「周知技術3」という。)である。
したがって、引用発明において「ランプ26」を「ONにして前記半導体基板1を250℃程度に加熱」するとき、10秒未満で急速に加熱することは、周知技術3を参酌すれば、当業者が適宜になし得たものと認められる。

(ウ)周知例4
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-250488号公報には、「プラズマ処理装置及びその方法」(発明の名称)について、図1?図6とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0062】この後、上側及び下側のハロゲンランプ60を駆動して、半導体ウエハ1の温度を常温から500℃まで、毎分90℃以上の平均昇温速度にて5秒間で昇温させる。ハロゲンランプ60からの赤外線は、ドープトシリコンにて形成された上部電極20及び下部電極30及びSiO_(2)製の誘電体21を透過して、半導体ウエハ1に輻射され、RT方式にて半導体ウエハ1を急速昇温させることができる。
【0063】この直後に、プラズマ処理装置10内部に導入されるガスを、ガスボンベ12aに収容されたプラズマ放電用ガスであるHeガスと、ガスボンベ52bに収容された酸化性ガスである酸素(O_(2))とに、バルブ操作により切り替える。さらに、上部電極20及び下部電極30に、13.56MHz、100Wの高周波電力を供給し、上部電極20及び下部電極30間に大気圧プラズマ放電を発生させる。これにより、半導体ウエハ1上に供給された酸素ガスとヘリウムガスをプラズマ励起させ、半導体ウエハ1の表面をプラズマ酸化させる。この時、半導体ウエハ1は予めハロゲンランプ60により昇温されているため、半導体ウエハ1例えばそのシリコン基板を100オングストロームの厚さにて10秒という短時間で、プラズマ酸化させることができた。」

(エ)周知例5
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特表2003-532290号公報には、「シリコン/金属複合膜堆積物を選択的に酸化するための方法及び装置」(発明の名称)について、図1?図4Dとともに、次の事項が記載されている。
a 「【0006】
本発明は、シリコン/金属複合電極の選択的酸化における新規な方法について説明する。本発明において、複合電極を有する基板は、反応チャンバ内に配置される。本発明の実施例において、複合電極は、下側ポリシリコン膜と、ポリシリコン膜上に形成されたタングステンナイトライドバリア層と、タングステンナイトライドバリア上に配置されたタングステン膜とを有している。その後、N_(2)等の不活性ガスが反応チャンバ内に供給され、反応チャンバ内に不活性環境が形成される。その後、基板の温度が100℃を下回る温度から800℃を越える第2の高い酸化温度まで上昇される。温度上昇中に不活性ガスが流入することにより、バリア層の質及び性能を向上させる昇温中にタングステンナイトライドバリア層が改質される。酸化温度に達すると、不活性ガスに代えて、水素(H_(2))と酸素(O_(2))との混合ガスである選択的酸化プロセスガスが流入される。水素ガス及び酸素ガスが反応チャンバ内に流入すると、加熱された基板によって、水素と酸素とが反応し、反応チャンバ内に蒸気(H_(2)O)相が形成される。H_(2)ガス及びO_(2)ガスは、タングステン膜又はタングステンナイトライドバリアを酸化することなく電極の下側シリコン部分を選択的に酸化することができるH_(2)/H_(2)O環境を形成するような割合で反応チャンバ内に供給される。タングステンナイトライドバリア層が昇温中に改質されるため、選択的酸化プロセスでは、H_(2)濃度が高い環境(H_(2)の割合が80%以上)を含む任意のH_(2)/H_(2)O環境を使用することができる。また、800℃以上の適当な高い酸化温度に達するまでH_(2)及びO_(2)が反応チャンバ内に供給されないため、任意のH_(2)/H_(2)O環境を形成しても選択的酸化を行なうことができる。」
b 「【0008】
図1及び図2は、本発明の選択的酸化プロセスを実行するために使用できる急速熱加熱装置100を示している。図1に示される急速熱加熱装置100は、側壁14及び底壁15によって囲まれた真空処理チャンバ13を有している。側壁14及び底壁15は、ステンレススチールによって形成されていることが好ましい。真空処理チャンバ13の側壁14の上部は、“O”リング16によりウィンド・アセンブリ17に対してシールされている。ウィンド・アセンブリ17上には放射エネルギ光パイプアセンブリ18が連結して配置されている。放射エネルギアセンブリ18は、例えばシルバニアEYTランプ等の複数のタングステンハロゲンランプ19を有している。これらの各ランプは、ステンレススチール、真鍮、アルミニウム、他の金属であっても良い光パイプ21内に挿入して装着されている。」
c 「【0014】
急速熱加熱装置100は、ウェーハ61又は基板の温度を25?100℃/秒の割合で上昇させることができる枚葉式の反応チャンバである。急速熱加熱装置100は、酸化プロセス中におけるウェーハの温度がチャンバの側壁14の温度を上回る少なくとも400℃となることから、“コールド・ウォール”反応チャンバと呼ばれている。側壁14や底壁15を通じて加熱/冷却流体を循環させて、これらの壁を所望の温度に維持することができる。蒸気形成を利用する選択的蒸気酸化プロセスの場合、凝結を防止するため、チャンバ壁14,15は、室温(23℃)を上回る温度に維持される。急速熱加熱装置100は、ロボットアームを有するロードロック搬送チャンバを含む“クラスターツール”の一部として構成されることが好ましい。」

エ 審判請求書における主張に対して
(ア)審判請求人は、審判請求書において、「新請求項1の発明では、エッチング用混合物にさらすことで形成された膜を昇華させることができる温度まで急速に上げることができるようになっています。」、「一方で、引用文献1-5に記載の発明は、上述のような発明特定事項を開示していませんし、本願の新請求項1に記載の発明が有する作用効果を奏するものではありません。」と主張している。

(イ)しかしながら、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には、「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物」にさらされて形成される「膜」についての記載が存在しないばかりでなく、「エッチングガス」は如何なるエッチングを行うためのガスであるかさえも記載されていない。
したがって、審判請求人の上記主張は、本件補正後の特許請求の範囲の記載に基づくものではない。

(ウ)なお、第2の4(6)イ(オ)で摘記したとおり、窒化ケイ素層を「アンモニアおよび三フッ化窒素の混合物」にさらすことでSi含有副生成物を形成し、当該副生成物に熱プロセスを施して分解/昇華させることで、前記窒化ケイ素層の一部分を取り除くことは、周知例3に記載されている。
したがって、審判請求人の上記主張が、仮に本件補正後の特許請求の範囲の記載に基づくものであるとしても、上記主張の効果は、周知技術2を参酌すれば、当業者が引用発明から予期し得たものと認められる。

(エ)以上のとおりであるから、審判請求人の主張は採用することができない。

(7)独立特許要件の検討のまとめ
以上から、引用発明を相違点1ないし相違点3に係る構成とすることは、周知技術1ないし周知技術3を参酌すれば、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、補正発明の効果も、周知技術1ないし周知技術3を参酌すれば、当業者が引用発明から予期し得たものと認められる。
したがって、補正発明は、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 小括
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年2月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成27年4月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるものであり、その内の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、再掲すると、次のとおりのものである。

「基板を処理する装置であって、
基板を支持する基板支持体が中に配置された処理チャンバと、
前記基板支持体上に支持された基板の温度を100℃未満の第1の温度に制御する温度制御システムと、
前記チャンバと流体連通して、少なくとも1つの酸素含有ガス、少なくとも1つの不活性ガス、および少なくとも1つのエッチングガスを前記処理チャンバ内へ送達するガス源と、
前記処理チャンバと流体連通して、前記酸素含有ガスおよび前記エッチングガスの少なくとも1つを付勢して、酸素含有ガスを含む酸化プラズマおよびエッチングプラズマの少なくとも1つを形成するプラズマ源と、
前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで加熱する熱源と
を備える装置。」

2 引用例1及び引用発明
引用例1の記載事項は、第2の4(3)アで摘記したとおりである。
また、引用発明は、第2の4(3)イで認定したとおりのものである。

3 引用例2
引用例2の記載事項は、第2の4(4)アで摘記したとおりである。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、第2の4(5)アでの検討から、以下の点で一致するとともに、以下の点で相違している。
(一致点)
「基板を処理する装置であって、
基板を支持する基板支持体が中に配置された処理チャンバと、
前記基板支持体上に支持された基板の温度を100℃未満の第1の温度に制御する温度制御システムと、
前記チャンバと流体連通して、少なくとも1つの酸素含有ガス、および少なくとも1つのエッチングガスを前記処理チャンバ内へ送達するガス源と、
前記処理チャンバと流体連通して、前記酸素含有ガスおよび前記エッチングガスの少なくとも1つを付勢して、酸素含有ガスを含む酸化プラズマおよびエッチングプラズマの少なくとも1つを形成するプラズマ源と、
前記基板を前記第1の温度を上回る第2の温度まで加熱する熱源と
を備える装置。」

(相違点)
本願発明の「ガス源」は「少なくとも1つの不活性ガス」も送達するのに対して、引用発明の「ガス供給源」は「反応ガス」は供給するものの、「不活性ガス」を供給することは特定されていない点。

4 判断
そうすると、第2の4(6)アにおいて検討したとおり、引用発明を相違点に係る構成とすることは、周知技術1を参酌すれば、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、本願発明の効果も、周知技術1を参酌すれば、引用発明から当業者が予期し得たものと認められる。
したがって、本願発明は、周知技術1を参酌すれば、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 結言
以上のとおりであるから、本願発明は、周知技術1を参酌すれば、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-08 
結審通知日 2016-12-13 
審決日 2016-12-28 
出願番号 特願2012-557245(P2012-557245)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杢 哲次  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 加藤 浩一
鈴木 匡明
発明の名称 周期的な酸化およびエッチングのための装置と方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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