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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
管理番号 1331176
異議申立番号 異議2016-700242  
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-23 
確定日 2017-06-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5795658号発明「周波数ドメイン干渉測定を利用して光学撮像を実行する方法および装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5795658号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、9、11-13、15-19〕、5、6、7、〔8、10〕、14について訂正することを認める。 特許第5795658号の請求項1ないし6、8ないし19に係る特許を維持する。 特許第5795658号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5795658号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、2004年(平成16年)9月8日を国際出願日とする特願2006-536622号(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年10月27日 米国)の一部を平成23年8月1日に新たな特許出願とした特願2011-168802号の一部を平成26年4月8日に新たな特許出願としたものであって、平成27年8月21日にその特許権の設定登録がされ、平成28年3月23日付けで山下勝(以下、「申立人」という。)から特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、本件特許の請求項1?19に対して特許異議の申立てがなされているものである。
その後、当審より平成28年7月13日付けで取消理由(以下、「1回目の取消理由」という。)が通知され、特許権者から同年10月17日に意見書及び訂正請求書が提出され、同年12月15日付けで申立人から意見書が提出された。
さらに、当審より平成29年1月6日付けで取消理由(以下、「2回目の取消理由」という。)が通知され、特許権者から同年4月12日付けで意見書が提出され及び同日付けで訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、これに対して同年5月26日付けで申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりであり、訂正前の請求項の引用関係からみて、(i)第1訂正単位(請求項1ないし請求項5、及び、請求項7ないし19)、(ii)第2訂正単位(請求項6)の2つの訂正単位がある。
なお、下線は訂正箇所を示す。また、訂正前の事項及び訂正後の事項については、当審において、特定事項の区切りで行換えをし、a)、a-i)などの見出しを付した。
(1) 第1訂正単位についての訂正事項
ア 訂正事項1(請求項1に関する訂正)
請求項1に
「【請求項1】
a) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、
a-i) i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、
a-ii) ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2構造と、を含むものと、
b) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した少なくとも1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
を備える装置。」
とあるのを
「【請求項1】
a) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、
a-i) i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、
a-ii) ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、
a-iii) iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
b) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
c) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器と、
を備える装置。」
と訂正する。

イ 訂正事項2(請求項2ないし4に関する訂正)
請求項1に係る訂正事項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項2ないし請求項4も請求項1と同様に訂正する。

ウ 訂正事項3(請求項5に関する訂正)
請求項5に
「【請求項5】
f) 更に、往復長さが5mより短いレーザキャビティを備える、請求項1に記載の装置。」
とあるのを
「【請求項5】
a) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、
a-i) i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、
a-ii) ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、
a-iii) iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
b) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
f) 往復長さが5mより短いレーザキャビティと、
を備える装置。」
と訂正する。

エ 訂正事項4(請求項7に関する訂正)
請求項7を削除する。

オ 訂正事項5(請求項8に関する訂正)
請求項8に
「【請求項8】
l) 更に、前記少なくとも1つの第1電磁放射線、少なくとも1つの第2電磁放射線、少なくとも1つの第3電磁放射線又は少なくとも1つの第4電磁放射線のうち少なくとも1つの周波数をシフトするように構成され、さらに、前記干渉のマイナス周波数成分を少なくとも部分的に減縮し、区分し、または、無くすように構成された少なくとも1つの第3アレンジメントを備える、請求項1に記載の装置。」
とあるのを
「【請求項8】
a) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、
a-i) i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、
a-ii) ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、
a-iii) iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
b) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
l) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線、少なくとも1つの第2電磁放射線、少なくとも1つの第3電磁放射線又は少なくとも1つの第4電磁放射線のうち少なくとも1つの周波数をシフトするように構成され、さらに、前記干渉のマイナス周波数成分を少なくとも部分的に減縮し、区分し、または、無くすように構成された少なくとも1つの第3アレンジメントと、
を備える装置。」
と訂正する。

カ 訂正事項6(請求項9に関する訂正)
請求項1に係る訂正事項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項9も請求項1と同様に訂正する。

キ 訂正事項7(請求項10に関する訂正)
請求項8に係る訂正事項5の訂正に伴い、請求項8を引用する請求項10も請求項8と同様に訂正する。

ク 訂正事項8(請求項11ないし請求項13に関する訂正)
請求項1に係る訂正事項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項11並びに請求項11を引用する請求項12及び請求項13も請求項1と同様に訂正する。

ケ 訂正事項9(請求項14に関する訂正)
請求項14に
「【請求項14】
p) 更に、前記電磁放射線の偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器を備える、請求項1に記載の装置。」
とあるのを
「【請求項14】
a) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、
a-i) i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、
a-ii) ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、
a-iii) iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
b) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
p) 前記電磁放射線の偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器と、
を備える装置。」
と訂正する。

コ 訂正事項10(請求項15ないし請求項19に関する訂正)
請求項1に係る訂正事項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項15ないし請求項19も請求項1と同様に訂正する。

(2) 第2訂正単位についての訂正事項
ア 訂正事項11(請求項6に関する訂正)
請求項6に
「【請求項6】
g) 電磁放射線の間の干渉を検出する装置の動作を制御する方法であって、
h) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供し、
i) 前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせ、
j) 前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせ、及び、
k) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した少なくとも1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する、
ことを備える方法。」
とあるのを
「【請求項6】
g) 電磁放射線の間の干渉を検出する装置の動作を制御する方法であって、
h) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供し、
i) 前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせ、
j) 前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせ、
k) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した少なくとも1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出し、及び、
s) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調する、
ことを備える方法。」
と訂正する。

2 訂正に対する当審の判断
(1) 第1訂正単位についての当審の判断
ア 訂正事項1(請求項1に関する訂正)についての判断
(ア) 請求項1のa-i)の訂正事項
訂正前のa-i)に「i)」とあったのを「i)」と訂正することは、a-ii)の「ii)」と平仄を合わせるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
そして、係る訂正事項は、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(イ) 請求項1のa-ii)の訂正事項
訂正前のa-ii)に「周波数ダウンシフトを生じさせる第2構造」とあったのを「周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造」と訂正することは、訂正前の「構造」が「レーザ利得媒体」であると限定するものであるから特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
そして、係る訂正事項は、本件特許明細書の「【0089】 キャビティ内レーザ光がSOA利得媒体(例えば図7のSOA224)を通過するにつれて、その光スペクトルにおいて周波数ダウンシフトが帯域内4波混合現象の結果として生じ得る。」(下線は当審にて付記した。本件特許明細書の記載に関して以下同様。)との記載に基づくものであって、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(ウ) 請求項1のa-iii)の訂正事項
訂正前のa-ii)に「周波数ダウンシフトを生じさせる第2構造」とあったのを、訂正により、「第2構造」に対して限定を加え、「a-iii) iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、」を含むものと訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
そして、かかる訂正事項は、
【図7】

及び
「キャビティ内レーザ光がSOA利得媒体(例えば図7のSOA224)を通過するにつれて、その光スペクトルにおいて周波数ダウンシフトが帯域内4波混合現象の結果として生じ得る。周波数ダウンシフトが生じたとき、プラス波長スキャンはレーザスペクトルの同調を促し、それで、より高い出力パワーを生み出す」(【0089】)ため、プラス波長スキャンが有効であるところ、「フィルタ210は格子232及び多角形ミラー236を含」(【0084】)み、「光軸に関する入射ビームの向きと多角形ミラー194の回転方向198が、波長同調の方向、すなわち、波長アップ(プラス)スキャンか、ダウン(マイナス)スキャンかを決定する。図6に示した配置は、プラスの波長掃引を生じさせる。」(【0079】)との記載を根拠とするものである。
ここでいう、「プラスの波長掃引」(【0079】)とは、「波長アップ(プラス)スキャン」(【0079】)のことであるから、短波長から長波長へと波長掃引することを意味する。

そうすると、「プラスの波長掃引を生じさせる」(【0079】)ように駆動される「格子232及び多角形ミラー236」(【0084】)を含む図7の「フィルタ210」が、当該訂正事項の「短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長フィルタアレンジメント」に相当する。
また、 図7の「SOA利得媒体224」と「フィルタ210」を併せた構造が当該訂正事項の「第2レーザ利得媒体構造」に相当する。

よって、当該訂正事項は、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載された範囲内の事項であり、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものである。

(エ) 請求項1のb)の訂正事項
訂正前に「少なくとも1つの第3電磁放射線」とあった事項から、「少なくとも」を削除し「1つの第3電磁放射線」と訂正することは、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものであることは明らかである。

(オ) 請求項1のc)の訂正事項
c)の訂正事項は、訂正前の請求項7にあった事項を加え「c) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器」を備えると訂正したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものであることは明らかである。

(カ) 拡張・変更の有無
訂正事項1により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更されることとはならないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

イ 訂正事項2(請求項2ないし4に関する訂正)について
訂正事項2は、請求項1に係る訂正事項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項2ないし4が訂正されるものであって、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものである。
また、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を含む訂正事項1の訂正に伴うものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 訂正事項3(請求項5に関する訂正)について
訂正事項3は、訂正前に請求項1を引用していた請求項5に対し、請求項1を引用しないものとし、さらに、特定事項a)及びb)に対して訂正事項1と同じ限定を加えたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、並びに、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合する。
さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ 訂正事項4(請求項7に関する訂正)について
訂正事項4は、請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、同条第9項において準用する126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

オ 訂正事項5(請求項8に関する訂正)について
訂正事項5は、訂正前に請求項1を引用していた請求項8に対し、請求項1を引用しないものとし、さらに、特定事項a)及びb)に対して訂正事項1と同じ限定を加えたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、並びに、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合する。
さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

カ 訂正事項6(請求項9に関する訂正)について
訂正事項6は、請求項1に係る訂正事項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項9が訂正されるものであって、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものである。
また、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を含む訂正事項1の訂正に伴うものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

キ 訂正事項7(請求項10に関する訂正)について
訂正事項7は、請求項8に係る訂正事項5の訂正に伴い、請求項8を引用する請求項10が訂正されるものであって、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものである。
また、訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を含む訂正事項5の訂正に伴うものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ク 訂正事項8(請求項11ないし請求項13に関する訂正)について
訂正事項8は、請求項1に係る訂正事項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項11が訂正され、加えて、請求項11を引用する請求項12及び請求項13が訂正されるものであって、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものである。
また、訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を含む訂正事項1の訂正に伴うものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ケ 訂正事項9(請求項14に関する訂正)について
訂正事項9は、訂正前に請求項1を引用していた請求項14に対し、請求項1を引用しないものとし、さらに、特定事項a)及びb)に対して訂正事項1と同じ限定を加えたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないもとすること、並びに、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合する。
さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

コ 訂正事項10(請求項15ないし請求項19に関する訂正)について
訂正事項10は、請求項1に係る訂正事項1の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項15ないし請求項19が訂正されるものであって、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものである。
また、訂正事項10は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を含む訂正事項1の訂正に伴うものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

サ 訂正単位について
第1訂正単位(請求項1ないし請求項5、及び、請求項7ないし19)は、訂正前の請求項2ないし請求項5、及び、請求項7ないし19がそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用していることから、訂正前において一群の請求項に該当し、特許法第120条の5第4項に規定する要件に適合するものである。

タ 第1訂正単位について小括
以上のことから、訂正事項1ないし10は、特許法第120条の5第2項ただし書きに掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものであるので、訂正後の〔請求項1-請求項5、請求項7-19〕について訂正することを認める。
訂正事項3(請求項5に関する訂正)、訂正事項5(請求項8に関する訂正)及び訂正事項9(請求項14に関する訂正)は、引用関係の解消を目的とする訂正を含むものであり、上記したように訂正が認められるものである。
また、訂正事項4(請求項7に関する訂正)は、請求項の削除を目的とする訂正であり、上記したように訂正が認められるものである。

そして、特許権者から、請求項5、請求項7、請求項8及び請求項14の訂正が認められるときは、別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項5、請求項7、〔請求項8、請求項10〕及び請求項14については、請求項1を含む一群の請求項とは別に、請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正することを認める。
よって、第1請求単位である訂正後の〔請求項1-4、請求項9、請求項11-13、請求項15-19〕、請求項5、請求項7、〔請求項8、請求項10〕、請求項14について訂正することを認める。

(2) 第2訂正単位についての当審の判断
ア 訂正事項11(請求項6に関する訂正)について
訂正事項11は、訂正前の請求項7にあった事項を訂正前の請求項6に特定事項s)として加えるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また、該訂正にともない、不明瞭となった
・訂正前j)の「生じさせ、及び、」を「生じさせ、」と訂正し、
・訂正前k)の「干渉を検出する、」を「干渉を検出し、及び、」と訂正
するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

以上の訂正事項は、新規事項を含むものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する126条第5項に規定する要件に適合するものである。
また、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
よって、第2請求単位である訂正後の請求項6について訂正することを認める。

(3) 申立人の主張について
申立人は、平成29年5月26日付け意見書3頁9?21行において、「つぎに、特許法第120条(当審注:「第120条」は「第126条」の誤記と認める。)第1項等に規定する訂正要件について補足する。・・・『波長フィルタアレンジメント』が、請求項1中の構成のいずれを概念的に下位にしたものとはいえないから、発明特定事項の限定とはいえない。よって、限定的減縮ではないと思料する。」(下線は、当審にて付記した。)と主張する。
しかしながら、特許法第120条の5第2項第1号や特許法第126条第1項第1号は、いわゆる限定的減縮を要件としていない。申立人の主張は、特許法第17条の2第5項第2号「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」とする規定と、特許法第126条第1項(特許法第120条の5第2項)の規定を混同したものと理解され、失当である。

(4) 小括
以上のことから、訂正後の〔請求項1-4、請求項9、請求項11-13、請求項15-19〕、請求項5、請求項6、請求項7、〔請求項8、請求項10〕、請求項14について、訂正することを認める。

第3 訂正後の本件特許発明
上記「第2 訂正の適否についての判断」で述べたとおり、本件訂正は認められることとなったから、請求項1?19に係る発明(以下、それぞれの発明を「本件訂正発明1」などという。)は、次の事項により特定される発明であると認める。

【請求項1】
a) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、
a-i) i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、
a-ii) ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、
a-iii) iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
b) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
c) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器と、
を備える装置。

【請求項2】
平均周波数が5キロヘルツより大きい反復レートで反復的に変化する、請求項1に記載の装置。

【請求項3】
平均周波数が10テラヘルツより大きい範囲にわたって変化する、請求項1に記載の装置。

【請求項4】
スペクトルが100ギガヘルツより小さい瞬時ライン幅を有する、請求項1に記載の装置。

【請求項5】
a) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、
a-i) i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、
a-ii) ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、
a-iii) iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
b) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
f) 往復長さが5mより短いレーザキャビティと、を備える装置。

【請求項6】
g) 電磁放射線の間の干渉を検出する装置の動作を制御する方法であって、
h) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供し、
i) 前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせ、
j) 前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせ、
k) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した少なくとも1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出し、及び、
s) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調する、ことを備える方法。

【請求項7】 (削除)

【請求項8】
a) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、
a-i) i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、
a-ii) ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、
a-iii) iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
b) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
l) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線、少なくとも1つの第2電磁放射線、少なくとも1つの第3電磁放射線又は少なくとも1つの第4電磁放射線のうち少なくとも1つの周波数をシフトするように構成され、さらに、前記干渉のマイナス周波数成分を少なくとも部分的に減縮し、区分し、または、無くすように構成された少なくとも1つの第3アレンジメントと、を備える装置。

【請求項9】
前記少なくとも1つの第2アレンジメントが、少なくとも1つの光検出器と、前記少なくとも1つの光検出器の後に続く少なくとも1つの電気アナログフィルタを備える、請求項1に記載の装置。

【請求項10】
前記少なくとも1つの第2アレンジメントが、少なくとも1つの光検出器と、前記少なくとも1つの光検出器の後に続く少なくとも1つの電気アナログフィルタを備える、請求項8に記載の装置。

【請求項11】
更に、検出された干渉に基づいて画像を生成する少なくとも1つの第3アレンジメントと、
走査データ生成のためにサンプルの横方向位置を走査し、その走査データを画像生成のために前記第3アレンジメントに提供するプローブと、を備える、請求項1に記載の装置。

【請求項12】
前記走査データが、サンプル上の多重横方向位置で得られた干渉検出データを含む、請求項11に記載の装置。

【請求項13】
前記プローブが回転接合器と光ファイバーカテーテルを備えると共に、前記カテーテルが毎秒30回転より高い速度で回転する、請求項11に記載の装置。

【請求項14】
a) 少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、
a-i) i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、
a-ii) ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、
a-iii) iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
b) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
p) 前記電磁放射線の偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器と、を備える装置。

【請求項15】
前記少なくとも1つの第2アレンジメントが、前記少なくとも1つの第3電磁放射線に関連した自己相関を除去するように構成された少なくとも1つのデュアルバランスレシーバを備える、請求項1に記載の装置。

【請求項16】
更に、
・前記少なくとも1つの第1電磁放射線と少なくとも1つの第2電磁放射線のうち少なくとも1つ、または、
・前記少なくとも1つの第3電磁放射線と少なくとも1つの第4電磁放射線のうち少なくとも1つ、の少なくとも1つの間の位相差を追跡するように明確に構成された少なくとも1つの第3アレンジメントを備える、請求項1に記載の装置。

【請求項17】
前記スペクトルの中央値の変化の速度が少なくとも1000nm/msecである、請求項1に記載の装置。

【請求項18】
スペクトルが少なくとも10kHzの反復レートで反復的に経時変化する、請求項1に記載の装置。

【請求項19】
前記少なくとも1つの第1アレンジメントが、スペクトルを経時変化させるスペクトルフィルタを含み、且つ、
前記スペクトルフィルタが、多角形スキャナ、スペクトルを経時変化させるスペクトル分離アレンジメント、及び、前記スペクトル分離アレンジメントから前記干渉の1つまたはそれ以上の成分を直接受け取って、該干渉の1つまたはそれ以上の成分を像平面上に収束及び投影するように構成された少なくとも1つの光学撮像アレンジメントを含む、請求項1に記載の装置。

第4 申立人の主張及び証拠方法
申立人は、次の甲第1号証ないし甲第9号証(以下、それぞれ「甲1」などという。)を提出すると共に、次の申立理由を主張する。

甲1:国際公開第03/062802号及び甲1訳文
甲2:特開平10-332329号公報
甲3:特表2000-503237号公報
甲4:S. H. Yun et.al,“High-speed wavelength-swept semiconductor laser with a polygon-scanner-based wavelength filter”,OPTICS LETTERS,Vol.28,No.20,2003.10.15,pp.1981-1983 及び甲4訳文
甲5:特開2000-89264号公報
甲6:特開平8-86746号公報
甲7:Zuyuan He et.al,“Distributed Fiber-Optic Stress-Location Measurement by Arbitrary Shaping of Optical Coherence Function”,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,Vol.20,No.9,2002.9,pp.1715-1723 及び甲7訳文
甲8:K. C. Harvey et.al,“External-cavity diode laser using a grazing-incidence diffraction grating”,OPTICS LETTERS,Vol.16,No.12,1991.6.15,pp.910-912 及び甲8訳文
甲9:特開2003-199701号公報

1 申立理由1 [申立書22頁5行?28頁16行、29頁8行?30頁下から2行]
本件特許の請求項1ないし請求項19に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」などという。)は、次の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1?請求項19に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(1) 本件特許発明1は、甲1発明、甲2ないし甲7に記載されたもの及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 本件特許発明2ないし本件特許発明4は、甲1発明、甲2ないし甲8に記載されたもの及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 本件特許発明5ないし本件特許発明7は、甲1発明、甲2ないし甲7に記載されたもの及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 本件特許発明8は、甲1発明、甲2ないし甲7及び甲9に記載されたもの並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5) 本件特許発明9ないし本件特許発明19は、甲1発明、甲2ないし甲7に記載されたもの及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 申立理由2 [申立書28頁19行?29頁6行、30頁末行?31頁7行]
請求項19について、「スペクトルフィルタ」、「多角形スキャナ」、「スペクトル分離アレンジメント」、「光学撮像アレンジメント」等についての具体的構成及び作用が不明確である。
また、請求項19に記載された構成について、発明の詳細な説明との対応が不明確である。
よって、本件特許発明19についての特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

さらに、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
よって、本件特許発明19についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

第5 1回目の取消理由の概要
本件特許の請求項1ないし6、9、11ないし13、15ないし19に係る発明は、本件特許の出願の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その請求項に係る特許は特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

1.S. H. Yun et.al,“High-speed wavelength-swept semiconductor laser with a polygon-scanner-based wavelength filter”,OPTICS LETTERS,Vol.28,No.20,October 15 2003,pp.1981-1983(申立人が提出した甲4)
2.特表2000-503237号公報(申立人が提出した甲3)
3.国際公開03/062802号(申立人が提出した甲1)

第6 2回目の取消理由の概要
平成28年10月17日付け訂正請求における訂正後の請求項について、以下の取消理由が出された。
なお、以下の取消理由でいう訂正後とは、平成28年10月17日付け訂正請求で訂正されたものをいう。
(取消理由1)
本件特許の請求項13、請求項15及び請求項17に係る発明は、その出願の優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その請求項に係る特許は特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

刊行物1 :B. Golubovic et.al,“Optical frequency-domain reflectometry using rapid wavelength tuning of a Cr^(4+):forsterite laser”,OPTICS LETTERS,Vol.22,No.22,1997.11.15,pp.1704-1706
刊行物2(甲4):S. H. Yun et.al,“High-speed wavelength-swept semiconductor laser with a polygon-scanner-based wavelength filter”,OPTICS LETTERS,Vol.28,No.20,October 15 2003,pp.1981-1983
刊行物3(甲3):特表2000-503237号公報
刊行物4(甲1):国際公開第03/062802号

(取消理由2)
本件特許の出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、その請求項に係る特許は特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。

1 訂正後の請求項1の「ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2構造」について、訂正後の請求項1のii)だけ読んでも意味が不明であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 短波長から長波長方向へ掃引することによって、解決しようとする課題である高い出力パワーを生み出されることが理解されるところ、本件特許明細書等の【0089】に記載の発明の課題解決手段が、訂正後の請求項1に反映されていない。
そのため、訂正後の請求項1の記載は、「上記高い出力パワーを生み出す」という課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えている。
よって、訂正後の請求項1は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 訂正後の請求項6について、
「 i.前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調するか、あるいは、
ii.前記少なくとも1つの第1電磁放射線、少なくとも1つの第2電磁放射線、少なくとも1つの第3電磁放射線又は少なくとも1つの第4電磁放射線のうち少なくとも1つの周波数をシフトし、前記干渉のマイナス周波数成分を少なくとも部分的に減縮し、区分し、または、無くすか、の少なくとも一方を行う、」
と規定され、発明特定事項がiとiiの選択肢で表現されている。
しかしながら、特許法第36条第6項第2号(明確性要件)が規定された趣旨からみれば、一の請求項から発明が明確に把握されることが必要である。
また、請求項の制度の趣旨に照らせば、一の請求項に記載された事項に基づいて、一の発明が把握されることが必要である。
上記、iとiiの選択肢は、選択肢同士が類似の性質又は機能を有しないため、一の請求項から二の発明が把握され、明確であるとはいえない。
よって、訂正後の請求項6の特許請求の範囲は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第7 特許異議申立理由並びに1回目及び2回目の取消理由について
1 特許法29条に関して
(1) 各甲号証及び取消理由で引用された文献に記載の事項
翻訳は、当審で翻訳したものである。また、下線は当審で付記した。

ア 甲1(1回目の取消理由通知の引用文献3、2回目の取消理由の刊行物4)記載の事項(国際公開第03/062802号)
(甲1ア)「PHASE TRACKING
The present invention also provides apparatus and methods for phase tracking in spectral domain("SD") OCT.
Fully parallel SD OCT
One of the features of fully parallel SD OCT is spectral dispersion of the detection arm light onto a multi-element array such as but not limiting to an integrating device(e.g., CCD) and measurement of the real or complex spectral density at high speeds. The detection arm beam is separated by a spectral separating unit(e.g., grating) and focused onto the array. With respect to previous Spectral Domain OCT designs known in the art, two differences are apparent that will be discussed below: 1) implementation of balanced detection, and, 2) implementation of phase tracking.
・・・
Phase Tracking: Phase tracking is preferable to eliminate phase instabilities in the interferometer. Phase instabilities can cause individual interferometric fringes to shift in location. If detection is slow relative to the shifting of the fringes, the resulting averaging results in an artifactual decrease in the measured fringe amplitude. Fast detection arrays can capture the cross spectral density at a rate of 20 to 40 kHz, resulting in integration times of 50 to 25 μsec, respectively. Phase instabilities arising on a time frame shorter than the integration time of the array should be compensated.」(明細書25頁22行?26頁1行・・・26頁15?21行)
「位相追跡
本発明は、また、スペクトラルドメイン(“SD”)OCTにおける位相追跡のための装置及び方法を提供する。
完全に並行なSD OCT
完全に並行なSD OCTの特徴の1つは、検出アーム光の多要素アレイ、これに限定しないが、積分装置(例えば、CCD)等、へのスペクトル分散と、高速での実数又は複素スペクトル密度の測定である。検出アームビームは、スペクトル分離ユニット(例えば、回折格子)によって分離され、アレイ上に集光される。当分野で知られている従来のスペクトラルドメインOCT設計に対して、後述する2つの差異が明らかである。即ち、1)平衡検出の実現、及び2)位相追跡の実現である。
・・・
位相追跡:位相追跡は、干渉計における位相不安定性を除去するために好ましい。位相の不安定性は、個々の干渉計の干渉縞が位置をシフトする原因になり得る。検出が干渉縞のシフト動作に対して遅い場合、その結果生じる平均化により、測定された干渉縞振幅は、人為的に減少する。高速検出アレイは、交差スペクトル密度を20ないし40kHzのレートで捕獲でき、それぞれ、積分時間が50ないし25μ秒になる。時間フレームがアレイの積分時間より短いと生じる位相不安定性は、補正すべきである。」

(甲1イ)「Dual Balanced detection
Dual balanced detection is preferably used by the present invention, which is preferably utilized for the following reasons. Firstly, most light sources generate 1/f noise (f = frequency) at relatively low frequencies. Balanced detection will eliminate 1/f source noise. Secondly, an interference term of the sample arm light with itself (auto-correlation term) is present on top of the true signal term, which is the interference between sample and reference arm. This auto-correlation term can be eliminated by a differential technique. Balanced detection may eliminate this autocorrelation term from the measured signal. Thirdly, RIN can be reduced.」(明細書24頁20?末行)
「デュアルバランス検出
デュアルバランス検出は、好ましくは、本発明で以下の理由により好ましく利用される。第1に、ほとんどの光源は、比較的低い周波数において1/f(f=周波数)ノイズを発生する。バランスされた検出器は、1/fソースノイズを除去する。第2に、サンプルアーム光それ自身を伴うサンプルアーム光の干渉分(自己相関分)が、サンプルとリファレンスアーム間の干渉である真のシグナル分の先頭に存在する。この自己相関分は、差分手法によって除去し得る。バランスされた検出は測定信号からこの自己相関分を除去し得る。第3に、RINが減少され得る。」

(甲1ウ)「Dual balanced detection : Dual balanced detection is advantageous for at least three reasons. First, most light sources generate 1/f noise at relatively low frequencies (tens of kHz range). In time domain ("TD") OCT systems 1/f noise is not a problem because the signal carrier is in general in the MHz range where 1/f noise is not significant. In SD OCT, balanced detection may likely eliminate 1/f source noise. Second, an interference of the sample arm light with itself (auto-correlation term) is present on top of the true signal. This auto-correlation term can be eliminated by a differential technique. Balanced detection can be used to eliminate this autocorrelation term from the measured signal. Third, balanced detection may reduce relative intensity or Bose Einstein noise.」(明細書26頁5?14行)
「デュアルバランス検出:デュアルバランス検出は、少なくとも3つの理由で有利である。第1に、ほとんどの光源は、比較的低周波数(10kHz領域)で1/fノイズを発生する。信号搬送波が、1/fノイズが顕著でないMHzにあることが一般的であるため、時間ドメイン(“TD”)OCTシステムにおいて、1/fノイズは問題ではない。SD-OCTにおいては、バランスされた検出は、1/fノイズを除去するのに適当である。第2に、サンプルアーム光とそれ自身との干渉(自己相関分)が、真の信号の先頭に存在する。この自己相関分は、差分法により除去し得る。バランスされた検出器は、測定信号からこの自己相関分を除去するのに使い得る。第3に、バランスされた検出器は、相対強度又はボーズアインシュタインノイズを減少し得る。」

(甲1エ)「Fig. 3 shows a schematic of one exemplary embodiment of a Spectral Domain OCT system 200, which includes a light source 202, splitter 204, reference arm 206, sample arm 208, tissue sample 130, optical element 210, grating 212, lens 214, detector 216 array, and processor 218. The detection arm light is dispersed by the grating 212 and the spectrum imaged onto a detector array 216. By stepping the reference arm 206 length over a distance λ/8, the cross spectral density of reference arm 206 and sample arm 208 light can be determined. A Fourier transform of the cross spectral density generates the depth profile information.
Sources
The source arm 203 contains at least light source 202 that is used to illuminate the interferometer with low-coherence light. The source temporal coherence length is preferably shorter than a few microns (a preferred range is about 0.5 μm - 30 μm). Examples of sources include, but are not limited to, semiconductor optical amplifier, superluminescent diodes, light-emitting diodes, solid-state femtosecond sources, amplified spontaneous emission, continuum sources, thermal sources, combinations thereof and the like. Other appropriate sources known to those skilled in the art may be used. While light is referred to herein as the source, it is intended that other electromagnetic radiation ranges may be suitable for use, depending on the circumstances. 」(明細書13頁16行?14頁1行)
「図3は、スペクトラルドメインOCTシステム200の一実施形態の概略図であって、光源202、スプリッタ204、参照アーム206、サンプルアーム208、組織サンプル130、光学要素210、回折格子212、レンズ214、検出器216アレイ、及びプロセッサ218を含む。検出アーム光が、回折格子212によって分けられ、スペクトルが検出器アレイ216上に結像される。距離λ/8にわたって、参照アーム206の長さをステッピングすることによって、参照アーム206及びサンプルアーム208の光の交差スペクトル密度を求めることができる。交差スペクトル密度のフーリエ変換は、深さプロファイル情報を生成する。
光源
光源アーム203は、低コヒーレンス光により干渉計を照射するための光源202を少なくとも含んでいる。光源の時間的なコヒーレンス長は、数ミクロンより短いのがよい(好適な範囲は、約0.5μm?30μm)。光源の例としては、限定されないが、半導体光増幅器、超発光性ダイオード、発光ダイオード、固体フェムト秒光源、増幅式自然発光、連続光源、熱光源、及びこれらの組合せなどが挙げられる。当業者に公知の他の適切な光源を使用することができる。光は光源と呼ぶことにするが、状況に応じて、他の電磁放射の範囲が使用に好適であることが意図される。」

(甲1オ)「APPARATUS AND METHOD FOR RANGINGS AND NOISE REDUCTION OF LOW COHERENCE INTERFEROMETRY LCI AND OPTICAL COHERENCE TOMOGRAPHY (OCT) SIGNALS BY PARALLEL DETECTION OF SPECTRAL BANDS」(1頁(54)発明の名称)
「スペクトル帯域の並列検出による低コヒーレンス干渉法LCI及び光学コヒーレンス断層撮影法(OCT)信号の、レンジング及び雑音低減のための装置及び方法」

甲1には、発明の名称(甲1オ)からみて、
「スペクトル帯域の並列検出による低コヒーレンス干渉法LCI及び光学コヒーレンス断層撮影法(OCT)信号の、レンジング及び雑音低減のための装置及び方法」
に関する発明が記載されていると認められる。

イ 甲2記載の事項(特開平10-332329号公報)
甲2には、発明の名称(1頁(54))からみて、「光周波数掃引式断層画像測定方法及び装置」に関する発明が記載されていると認められる。

ウ 甲3(1回目の取消理由の引用文献2、2回目の取消理由の刊行物3)記載の事項(特表2000-503237号公報)
甲3には、発明の名称(1頁(54))からみて、「光ファイバ撮像ガイドワイヤ、カテーテル又は内視鏡を用いて光学測定を行う方法及び装置」に関する発明が記載されていると認められる。

エ 甲4(1回目の取消理由の引用文献1、2回目の取消理由の刊行物2)記載の事項(OPTICS LETTERS,Vol.28,No.20)
(甲4ア)「Ultrahigh-speed tuning of an extended-cavity semiconductor laser is demonstrated. The laser resonator comprises a unidirectional fiber-optic ring, a semiconductor optical amplifier as the gain medium, and a novel scanning filter based on a polygonal scanner. Variable tuning rates up to 1150 nm/ms (15.7-kHz repetition frequency) are demonstrated over a 70-nm wavelength span centered at 1.32 μm. This tuning rate is more than an order of magnitude faster than previously demonstrated and is facilitated in part by self-frequency shifting in the semiconductor optical amplifier. The instantaneous linewidth of the source is <0.1 nm for 9-mW cw output power and a low spontaneous-emission background of -80 dB.」(1981頁 要約の欄)
「拡張共振器半導体レーザの超高速掃引が示される。レーザ発振器は、一方向光ファイバリングと、利得媒体としての半導体光学増幅器と、多角形スキャナに基づく新規なスキャニングフィルタと、を含む。1.32μmを中心とする70nmの波長範囲に亘る1150nm/ms(反復周波数15.7kHz)までの可変同調速度が論証される。この掃引速度は以前論証されたものよりも一桁大きく、半導体光学増幅器における自己周波数シフトによって部分的に促進される。光源の瞬時ライン幅は、cw出力電力が9mWで自然発光バックグラウンドが低い-80dBである場合に<0.1nmである。」

(甲4イ)「Considerable effort has recently been devoted to the development of rapidly scanning, widely tuning laser sources for optical reflectometry, biomedical imaging, sensor interrogation, and test and measurement applications.^(1-8)」(1981頁左欄1?5行)
「近年、高速スキャニング、光学反射光測定に関する広範囲掃引レーザ光源、生体医療撮像、センサ問い合わせ、並びに、テスト及び測定アプリケーションの開発に相当な努力が向けられている。^(1-8)」

(甲4ウ)「An instantaneous linewidth of 10 GHz is sufficiently narrow to provide useful ranging depth of a few millimeters in optical coherence tomography^(5,6) or micrometer-level transverse resolution in spectrally encoded confocal microscopy.^(9)」(1981頁左欄14?19行)
「10GHzの瞬時ライン幅は、光干渉トモグラフィ^(5,6)における数ミリメ-トルの有効深さ範囲又は分光共焦点顕微法におけるマイクロメートルレベルの横解像度をもたらすのに十分に狭いものである。^(9)」)

(甲4エ)「In this Letter we demonstrate an ultrahigh-speed wavelength-swept laser with a tuning speed as fast as 1150 nm/ms and a variable repetition rate as high as 15.7 kHz, an order of magnitude faster than previously demonstrated.」(1981頁左欄27?31行)
「この報告において、我々は、以前論証されたものより一桁速い、1150nm/ms程度の同調速度であって15.7kHz程度の可変繰り返しレートを伴う超高速波長掃引レーザを論証する。」

(甲4オ)「As was demonstrated recently,^(12) the SOA's gain medium produces a frequency downshift of the intracavity laser spectrum through intraband four-wave mixing. Scanning the filter in the same direction as the frequency shift allows intracavity light to experience less loss and results in a higher power. Figure 5 shows the peak power of the laser output measured as a function of tuning speed. We obtained the negative tuning speed by flipping the position of the collimator and the orientation of the grating with respect to the optic axis of the rest of system. Care was taken to make the conditions of the filter and laser cavity, except for the tuning direction, identical in both cases. The result shows that the combined action of the frequency shift and positive tuning allows higher output to be obtained and enables the laser to be operated at higher tuning speed.」(1983頁左欄24行?同頁右欄14行)
「最近実証されたように、^(12) SOA利得媒体は、キャビティ内レーザスペクトルの周波数ダウンシフトを、帯域内4波混合を経て生じる。周波数シフトと同方向にフィルタをスキャンすることにより、キャビティ内の光をより低損失とし、高い出力パワーを生み出す。図5は、同調速度の関数として測定されたレーザ出力のピークパワーを示す。マイナス同調速度は、コリメータの位置と格子の向きを残余のシステムの光軸に関して反転させることによって得られる。同調方向を除くフィルタとレーザキャビティの条件を、両ケースで同一にするように注意を要する。その結果、周波数シフトとプラス同調の複合作用によって、より高い出力を得ることができ、レーザをより高い同調速度で動作させることが可能となる。」)

(甲4カ)「A schematic of the wavelength-scanning filter is presented in Fig.1. The reflection-type filter comprises a diffraction grating, an afocal telescope, and a polygonal scanner.」(1981頁右欄3?6行)
「図1には、波長掃引フィルタの模式図が示される。反射型フィルタは、回折格子と、アフォーカル望遠鏡と、多角形スキャナと、を備える。」

(甲4キ)

Fig. 1. Schematic of high-speed wavelength-scanning filter.
「図1 高速波長掃引フィルタの模式図。」

(甲4ク)
「6. B. Golubovic, B. E. Bouma, G. J. Tearney, and J. G. Fujimoto, Opt. Lett. 22, 1704 (1997)」(1983頁右欄「References」の項)

甲4には、「光干渉トモグラフィ(甲4ウ)などの生体医療撮像(甲4イ)にも使用できる1150nm/ms(反復周波数15.7kHz)までの可変同調速度のレーザ発振器であって、一方向光ファイバリングと、利得媒体としての半導体光学増幅器と、多角形スキャナに基づく新規なスキャニングフィルタと、を含み(甲4ア)、利得媒体としての半導体光学増幅器であるSOA利得媒体は、キャビティ内レーザスペクトルの周波数ダウンシフトを、帯域内4波混合を経て生じ、周波数シフトと同方向にフィルタをスキャンすることにより、キャビティ内の光をより低損失とし、周波数シフトとプラス同調の複合作用によって、より高い出力を得ることができ、レーザをより高い同調速度で動作させることが可能となる(甲4オ)、レーザ発振器。」に関する発明が記載されていると認められる。

オ 甲5記載の事項(特開2000-89264号公報)
甲5には、発明の名称(1頁(54))からみて、「広帯域光周波数基準発生装置」に関する発明が記載されていると認められる。

カ 甲6記載の事項(特開平8-86746号公報)
甲6には、発明の名称(1頁(54))からみて、「高感度光波反射測定装置及び該装置を利用した光波エコートモグラフィー装置」に関する発明が記載されていると認められる。

キ 甲7記載の事項(JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, Vol.20, No.9 )
甲7には、表題(1715頁)からみて、「光波コヒーレンス関数の任意の整形による分散光ファイバの応力位置測定」に関する発明が記載されていると認められる。

ク 甲8記載の事項(OPTICS LETTERS, Vol.16, No.12)
甲8には、表題(910頁)からみて、「格子斜入射回折を用いた外部共振器型ダイオードレーザ」に関する発明が記載されていると認められる。

ケ 甲9記載の事項(特開2003-199701号公報)
甲9には、発明の名称(1頁(54))からみて、「光走査型観察装置、走査型観察装置の設定方法」に関する発明が記載されていると認められる。

コ 2回目の取消理由で引用された刊行物1記載の事項(OPTICS LETTERS , Vol. 22, No. 22 )
(刊1ア)「We present a cw chromium-doped forsterite laser that permits rapid wavelength tuning over a broad bandwidth and demonstrate the application of this source to frequency-domain ranging and optical tomography. The entire tuning range of 1200 to 1275 nm can be swept in less than 500 μs. This permits frequency-domain ranging to be performed with a scan rate of 2 kHz and an axial resolution of 15 μm. 」(1704頁 要約の欄)
「我々は、広い帯域にわたって高速な波長掃引を可能とするcwクロムドープしたフォルステライトレーザを提示し、この光源の周波数ドメイン測定と光トモグラフィへの適用を論証する。1200?1275nmの全波長掃引範囲は、500μs未満で掃引可能である。このことは、2kHzのスキャンレートと、15μmの距離分解能を伴う周波数ドメイン測定を実行可能とする。」

(刊1イ)「The light source used in this study is a chromiumdoped forsterite(Cr^(4+):Mg_(2)SiO_(4)) laser that is excited in the near IR.^(15) A schematic diagram of the experimental apparatus can be seen in Fig. 1. The laser consists of a 3-mm-long Brewster-cut Cr^(4+):Mg_(2)SiO_(4) laser crystal in a standard z-cavity configuration. The radius of curvature of the focusing mirrors was 5 cm, and the output coupler had a reflectivity of 99.3%. The excitation source for this laser was a cw Ti:Al_(2)O_(3) laser operating at 740 nm. Spectral filtering for narrow-band operation and wavelength tuning are both facilitated by a sequence of four dispersive, Brewster-cut prisms inserted into one of the collimated arms of the laser. Since the angular deflection of a ray traversing this prism sequence is wavelength dependent, only a narrow spectral range will be returned undeviated after reflection from the resonator end mirror. An angular deflection of the end mirror, then, will shift this spectral range and tune the laser. To perform rapid wavelength scanning, we mounted the laser end mirror upon a tilting galvanometer. This deflector can be driven with triangular voltage functions at frequencies as high as 1 kHz and amplitudes sufficient to cover the emission spectrum of Cr^(4+):Mg_(2)SiO_(4).
Light emitted from the laser was coupled into a single-mode fiber-optic Michelson interferometer in which one arm was terminated by a stationary mirror and the sample of interest was placed in the other arm. A polarization controller was used to cancel out any polarization imbalance in the interferometer. To reduce laser noise contributions we implemented a dual-balanced detection technique. The interferometer signal was acquired and digitized with a 150-MHz, 8-bit analog-digital oscilloscope, and the data were transferred to a computer for processing and display. Although we achieved longitudinal (depth) scanning of a sample by rapid tuning of the cw Cr^(4+):forsterite laser, the sample was displaced transversely to cover the surface area of the sample investigated and allow for three-dimensional image reconstruction.
」(1704頁右欄22行?1705頁左欄16行)
「本発明で使用される光源は、近赤外で励起されるクロムドープフォルステライト(Cr^(4+):Mg_(2)SiO_(4))レーザである。^(15)実験装置の模式図は、図1に示される。レーザはスタンダードなzキャビティ構成の3mm長ブリュースターカットCr^(4+):Mg_(2)SiO_(4)レーザ結晶からなる。集束鏡の曲率半径は5cmであり、出力カプラは99.3%の反射率を有していた。本レーザのための励起源は、740nmで動作するcw Ti:Al_(2)O_(3)レーザであった。狭帯域動作のためのスペクトルフィルタリング及び波長掃引はいずれも、コリメートされたレーザアームのひとつに挿入された4つの連なる分散性ブリュースターカットのプリズムにより行われる。このプリズム列を通過する光線の角偏向は波長に依存するので、共振器の端部反射鏡から反射された後、狭いスペクトル範囲のみが逸れずに返ってくるであろう。そのため、端部反射鏡の角偏向は、このスペクトル範囲をシフトさせ、レーザを調整する。高速な波長スキャンを行うため、角度可変のガルバノメータにレーザの端部反射鏡を取り付けた。この反射鏡は、1kHz程度の周波数と、Cr^(4+):Mg_(2)SiO_(4)の発光スペクトルをカバーするのに十分な振幅と、を有する三角電圧関数で駆動される。
レーザから放たれた光はシングルモード光ファイバマイケルソン干渉計に入力された。この干渉計では、一方のアームは固定鏡で終端され、対象サンプルは他方のアームに置かれた。干渉計における偏光のアンバランスを相殺するために偏光コントローラが使用された。レーザのノイズ寄与を減少させるために我々は、デュアルバランス検出技術を実施した。干渉計信号は150MHz、8ビットのアナログデジタルオシロスコープによって取得されデジタル化された。データは、処理および表示のためにコンピュータに転送された。
我々は、cw Cr^(4+):フォルステライトレーザの高速掃引によってサンプルの縦(深さ)スキャンを達成したけれども、サンプルは、調べられるサンプルの表面をカバーし三次元イメージの再構成を可能とするために横方向に動かされた。」

(刊1ウ)「 For our situation, as noted, the laser operates in multiple longitudinal modes whose time-averaged behavior establishes the effective coherence length measured in this experiment. 」(1705頁右欄21?24行)
「我々の状況に関して、述べたように、このレーザは多重の縦モードで動作し、その時間平均の振る舞いがこの実験で測定された有効コヒーレンス長をもたらす。」

(刊1エ)「To demonstrate the imaging capability of this system we obtained a surface reconstruction image of the lettering on a U.S. one cent coin. The letters “BE” in “LIBERTY” are shown in Fig.5. The sample was placed at the focus of a lens in the sample arm of the interferometer, and the zero path difference for the two interferometer arms was placed above the surface of the coin. The focal spot size was 20 μm, corresponding to a confocal parameter of 1 mm. To obtain the three-dimensional image we moved the coin on translation stages in a 20 μm×20 μm grid, and at each point a longitudinal scan was acquired. The galvanometric actuator was driven with a 100-Hz triangle drive, resulting in a scan rate of 200 longitudinal scans per second.」(1706頁左欄18?32行)
「このシステムのイメージング能力を示すために、我々は米国1セント硬貨上の文字の表面再構成画像を得た。図5には、「LIBERTY」の「BE」の文字が示される。サンプルは干渉計のサンプルアーム内のレンズの焦点に置かれ、2つの干渉計アームについてのゼロ経路差は効果の表面の上に置かれた。焦点サイズは20μmであった。これは1mmの共焦点パラメータに対応する。三次元画像を得るため、我々は硬貨を移動ステージ上で20μm×20μmグリッドで動かした。そして各点で、縦スキャンが取得された。ガルバノアクチュエータは100Hzの三角駆動で駆動された。これにより毎秒200の縦スキャンが得られた。」

(刊1オ)「Scanning speeds are limited by cavity mode buildup times and relaxation oscillation effects. However, the ultimate extension of these techniques using narrow-linewidth tunable diode laser sources would afford even higher scanning speeds and greater ease of use. 」(1706頁右欄15?20行)
「掃引速度は共振器モードビルドアップ時間および緩和振動効果により制限される。しかしながら、狭いライン幅の掃引可能ダイオードレーザ源を使用した本技術の根本的な拡張は、より高い掃引速度及び大きな使いやすさを与えるであろう。」

(刊1カ)

Fig. 1. Schematic diagram of the experimental setup. A/D, analog-digital.
「図1 実験装置の模式図。 A/D、アナログ-デジタル。」

(刊1キ)

Fig. 2 Laser output as a function of end-mirror scanning for a 100-Hz triangle dirve frequency.
「図2 100Hz三角駆動周波数における端部反射鏡スキャンの関数として示したレーザー出力。」

刊行物1から次の事項が理解される。
(事項1)
使用されるレーザは、広い帯域にわたって高速な波長掃引を可能とするcwクロムドープしたフォルステライトレーザ(Cr^(4+):Mg_(2)SiO_(4))(刊1イ)(刊1ア)であることが理解される。

(事項2)
「1200?1275nmの全波長掃引範囲は、500μs未満で掃引可能」(刊1ア)と記載され、周波数=光速/波長及び光速=2.998×10^(8)(m/s)を用いると、波長1200nmは、周波数約250テラヘルツ、波長1275nmは、周波数約235テラヘルツと計算される。
そして、「1200?1275nm」、すなわち、235?250テラヘルツの掃引範囲を「500μs」で掃引されることとなるから、同調速度は、(約250-約235)テラヘルツ/500μs=約29.4テラヘルツ/msと計算される。

(事項3)
図1(刊1カ)記載の光路は、「レーザから放たれた光はシングルモード光ファイバマイケルソン干渉計に入力され」(刊1イ)「この干渉計では、一方のアームは固定鏡で終端され、対象サンプルは他方のアームに置かれた」(刊1イ)との記載から、図1(刊1カ)で点線で囲まれ図示された「レーザ」からの光は、2方向に分けられ、一つの光(以下、「第1の光」という。)はサンプルへ送られ、他の光(以下、「第2の光」という。)は、リファレンスミラーが終端にあるリファレンスへ送られていることが分かり、それぞれ光路を「アーム」ということが理解される。そして、以下、第1の光が通るアームを「第1のアーム」、第2の光が通るアームを「第2のアーム」ということとする。

(事項4)
図1(刊1カ)記載のコンピュータから、「TRANSVERSE SCANNING」と記載された矢印が「SAMPLE」まで引かれており、「TRANSVERSE SCANNING」、すなわち、横方向走査する信号がサンプルに送られていることが分かる。
そして、サンプルの横に十字の矢印が図示されており、サンプルが矢印の方向に走査されていることが理解され、図1(刊1カ)の装置を用いて、「このシステムのイメージング能力を示すために、我々は硬貨を移動ステージ上で20μm×20μmグリッドで動かし」(刊1エ)「米国1セント硬貨上の文字の表面再構成画像を得た」(刊1エ)と記載されていることから、サンプルを横方向走査して再構成画像を得ることが理解される。

以上のことから、符号を付して整理すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、対応する摘記箇所及び前記認定事項(事項1)ないし(事項4)を付記した。

「A) 第1の光を第1のアームを通してサンプルに提供すると共に、第2の光を第2のアームを通してリファレンス鏡に提供するレーザおよびカプラを備え(刊1カ)(事項3)、
B) 前記レーザは、広い帯域にわたって高速な波長掃引を可能とするcwクロムドープしたフォルステライトレーザ(Cr_(4+):Mg_(2)SiO_(4))であり(事項1)、
C) 前記第1の光及び前記第2の光が、平均周波数がある速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを有し(刊1キ)、
D) 前記レーザは、1200?1275nmを全波長掃引範囲とし、同調速度が、約29.4テラヘルツ/msであり(事項2)、
E) 前記レーザが、多重の異なる縦モードを含み(刊1ウ)、
F) 前記第1の光と関連したサンプルから反射して戻る第3の光と、前記第2の光と関連したリファレンスミラーで反射して戻る第4の光の間の干渉を検出する、レーザのノイズ寄与を減少させることができるデュアルバランス検出器およびアナログデジタルオシロスコープ(刊1カ)(刊1イ)と、
G) 検出信号に基づいて画像を生成するコンピュータ(刊1カ)と、
を備える装置であって、
H) サンプルを横方向走査して再構成画像を得ることができる装置(事項4)。」

(2) 特許法第29条に関する判断
ア 本件訂正発明1について
本件訂正発明1の特定事項である「c) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器」は、甲1ないし甲9及び刊行物1のいずれにも記載されていない。
特に言及すれば、申立人は、平成28年12月15日付け意見書1?4頁において、甲1及び甲9に記載のように「偏光変調器」が周知である旨を主張するが、本件訂正発明1(c)の「偏光を時間について変調するように構成された」「偏光変調器」については記載が無い。
よって、本件訂正発明1は、これらの刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、申立理由1及び1回目の取消理由によって本件訂正発明1に係る特許を取り消すことはできない。

なお、申立人は、平成29年5月26日付け意見書5頁4?7行において「『偏光変調器』は周知慣用手段であり、当該周知の技術の適用の動機付けがある。また、一般に、変調技術としては『時間』又は『周波数』について変調するものであるから、『時間について変調するように構成』することは当業者が適宜なし得ることである。」と主張する。
しかしながら、偏光変調器が周知慣用技術であることと、刊行物1発明に適用する動機付けとは無関係なことであり、偏光変調器が周知慣用技術であるというだけで刊行物1発明に適用する動機付けがあることにはならない。ましてや、刊行物1発明において、変調技術として『時間』について変調することを採用する動機付けが申立人から示されておらず、また、本件特許の出願の優先日当時の技術常識を参酌しても、動機付けがあるとも認められない。

イ 本件訂正発明2ないし本件訂正発明4について
本件特許発明2ないし本件特許発明4は、請求項1を引用する発明であり、上記「ア 本件訂正発明1について」に記したのと同様の理由で、申立理由1及び1回目の取消理由によって本件特許発明2ないし本件特許発明4に係る特許を取り消すことはできない。

ウ 本件訂正発明5について
本件訂正発明5の特定事項である「f) 往復長さが5mより短いレーザキャビティ」は、甲1ないし甲9及び刊行物1のいずれにも記載されていない。
そして、レーザキャビティの長さは、本件特許明細書等の【0089】によれば「出力パワーは、同調速度が増すにつれて減少してよい。そこで、同調速度に対する出力パワーの感度を下げるためにキャビティ長は小さいのが望ましいと言える。」という技術的意義がある。
この点について、甲1ないし甲9及び刊行物1のいずれにも記載されておらず、これらの刊行物記載の発明に基づき当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
また、上記した技術的意義の上で本件訂正発明5においては、「往復長さが5mより短い」ことが選択されたのであるから、設計的事項とはいえず、本件訂正発明5は、これらの刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立理由1及び1回目の取消理由によって本件訂正発明5に係る特許を取り消すことはできない。

エ 本件訂正発明6について
本件訂正発明6の特定事項である「s) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調する」ことは、甲1ないし甲9及び刊行物1のいずれにも記載されておらず、本件訂正発明6は、これらの刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立理由1及び1回目の取消理由によって本件訂正発明6に係る特許を取り消すことはできない。

オ 本件訂正発明8について
本件訂正発明8の特定事項である「l) 前記少なくとも1つの第1電磁放射線、少なくとも1つの第2電磁放射線、少なくとも1つの第3電磁放射線又は少なくとも1つの第4電磁放射線のうち少なくとも1つの周波数をシフトするように構成され、さらに、前記干渉のマイナス周波数成分を少なくとも部分的に減縮し、区分し、または、無くすように構成された少なくとも1つの第3アレンジメント」については、甲1ないし甲9及び刊行物1のいずれにも記載されておらず、本件訂正発明8は、これらの刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
特に言及すれば、申立人は申立書26頁下から5?下から4行において、甲3の25頁7?23行を指摘するが、本件訂正発明8の特定事項l)の「前記干渉のマイナス周波数成分を少なくとも部分的に減縮し、区分し、または、無くすように構成された」ことについて、示唆する記載は無い。
また、申立書26頁下から4?下から3行において、甲9の図19並びに【0125】及び【0132】を指摘するが、甲9の2頁の特許請求の範囲にあるように、甲9に記載のものは、低可干渉光源、すなわち、低コヒーレンス干渉光源を用いたものである。
これに対して、本件訂正発明8は、a-i)「ほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造」及びa-ii)「第2レーザ利得媒体構造」を備えたレーザを光源とするもの、すなわち、コヒーレンス干渉光源を用いるものであり、低コヒーレンス干渉光源に関する甲9の技術を採用する動機がない。
よって、申立理由1によって本件訂正発明8に係る特許を取り消すことはできない。

カ 本件訂正発明9について
本件特許発明9は、請求項1を引用する発明であり、上記「ア 本件訂正発明1について」に記したのと同様の理由で、申立理由1及び1回目の取消理由によって本件訂正発明9に係る特許を取り消すことはできない。

キ 本件訂正発明10について
本件特許発明10は、請求項8を引用する発明であり、上記「オ 本件訂正発明8について」に記したのと同様の理由で、申立理由1によって本件訂正発明10に係る特許を取り消すことはできない。

ク 本件訂正発明11及び本件訂正発明12について
本件訂正発明11及び本件訂正発明12は、請求項1を直接又は間接的に引用する発明であり、上記「ア 本件訂正発明1について」に記したのと同様の理由で、申立理由1及び1回目の取消理由によって本件訂正発明11及び本件訂正発明12に係る特許を取り消すことはできない。

ケ 本件訂正発明13について
本件訂正発明13は、請求項1を間接的に引用する発明であり、上記「ア 本件訂正発明1について」に記したのと同様の理由で、申立理由1、1回目の取消理由及び2回目の取消理由の取消理由1によって本件訂正発明13に係る特許を取り消すことはできない。

コ 本件訂正発明14について
本件訂正発明14の特定事項である「p) 前記電磁放射線の偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器」は、甲1ないし甲9及び刊行物1のいずれにも記載されておらず、本件訂正発明14は、これらの刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立理由1によって本件訂正発明14に係る特許を取り消すことはできない。

サ 本件訂正発明15について
本件訂正発明15は、請求項1を引用する発明であり、上記「ア 本件訂正発明1について」に記したのと同様の理由で、申立理由1、1回目の取消理由及び2回目の取消理由の取消理由1によって本件訂正発明15に係る特許を取り消すことはできない。

シ 本件訂正発明16について
本件訂正発明16は、請求項1を引用する発明であり、上記「ア 本件訂正発明1について」に記したのと同様の理由で、申立理由1及び1回目の取消理由によって本件訂正発明16に係る特許を取り消すことはできない。

ス 本件訂正発明17について
本件訂正発明17は、請求項1を引用する発明であり、上記「ア 本件訂正発明1について」に記したのと同様の理由で、申立理由1、1回目の取消理由及び2回目の取消理由の取消理由1によって本件訂正発明17に係る特許を取り消すことはできない。

セ 本件訂正発明18及び本件訂正発明19について
本件訂正発明18及び本件訂正発明19は、請求項1を引用する発明であり、上記「ア 本件訂正発明1について」に記したのと同様の理由で、申立理由1及び1回目の取消理由によって本件訂正発明18及び本件訂正発明19に係る特許を取り消すことはできない。

2 特許法第36条に関して
(1) 申立理由2について
申立書28頁18行?29頁6行において、申立人は「請求項19には、『 前記少なくとも1つの第1アレンジメントが、スペクトルを経時変化させるスペクトルフィルタを含み、且つ、
前記スペクトルフィルタが、多角形スキャナ、スペクトルを経時変化させるスペクトル分離アレンジメント、及び、前記スペクトル分離アレンジメントから前記干渉の1つまたはそれ以上の成分を直接受け取って、該干渉の1つまたはそれ以上の成分を像平面上に収束及び投影するように構成された少なくとも1つの光学撮像アレンジメントを含む、請求項1に記載の装置。』と記載されている。しかしながら、例えば、『スペクトルフィルタ』、『多角形スキャナ』、『スペクトル分離アレンジメント』、及び、『光学撮像アレンジメント』等についての具体的構成及び作用が不明確である。また、請求項19に記載された構成について、発明の詳細な説明の記載との対応が不明確である。
また、・・・本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。」と主張する。

そこで、本件特許明細書等の記載を精査する。
本件特許明細書等には、請求項19に係る発明の特定事項であるスペクトルフィルタに関連する事項として、以下の記載がある。なお、下線は当審で付記した。

【図6】

「【0071】
図6は、例えば周波数掃引源(上で図5に則して述べた周波数掃引源100のような)として使用できるようになっていてよい例示的な光源100’を示し、ここでは、光フィルタ170が、レンズ172と光パス174を通して光源/コントローラ176(以下、“光コントローラ176”と呼ぶ)に結合している。光コントローラ176の方は、1つ以上のアプリケーション178に結合していてよい。アプリケーション178は、例えば、光学撮像プロセス及び/又は光学撮像システム、レーザ加工プロセス及びレーザ加工システム、写真平版プロセス及び写真平版システム、レーザトポグラフィシステム、通信プロセス及び通信システムに対応してよい。これで、フィルタ170と光コントローラ176から作られた例示的光源100’は、多種多様な広範な用途において使用してよく、そのうち幾つかの一般的な例をここで説明する。
【0072】
以下で詳細に述べる通り、フィルタ170により、光源100’は、中心波長が光コントローラ176の帯域幅にわたって連続的かつ反復的に適時に同調させることのできるスペクトルを放出する周波数掃引源として動作させられる。従って、光源100’は、光源/コントローラ176の複数の周波数モードからなる瞬時放出スペクトルを有してよい。この実施例では、光波長フィルタ170は、入力ポートと出力ポートが同一である反射型フィルタとして構成されている。従って、光パス174は、例えば入出力光ファイバーとして設けてあってよく、レンズ172は、コリメーションレンズに相当するものであってよい。図6に示したフィルタ170は、光コントローラ176を通してアプリケーション178の1つ又は全部に結合しているが、光コントローラ以外のデバイスを通してフィルタ170をアプリケーション178の1つ以上に直接結合させることも可能である。
・・・
【0074】
・・・フィルタ170は、光コントローラ176からの光ビームを受け取り、この光ビームを、各々、知られている通り1つの光パスに沿って方向づけされる複数の異なる波長の光に分割すべく工夫された波長分散エレメント180を含む。波長分散エレメント180は、光コントローラ176からの光ビームを受け取り、この光ビームを、各々1つの光パスに沿って方向づけされる複数の波長の複数の光に分割すべく工夫された1つ以上のエレメントを含むことができる。波長分散エレメント180は更に、複数の波長の光を光軸182に関して複数の角方向又は角位置において方向づけする働きも持つ。本発明の一実施例では、波長分散エレメント180は、例えば反射格子184のような光分散エレメントを含むことができる。あるいは代わりに、波長分散エレメント180は、伝送格子(例えばディクソン型ホログラフィック格子のような伝送型格子)、プリズム、回折格子、音響光学回折用セル、又はこれらエレメントの1つ以上の組み合わせの形であってもよい。
【0075】
波長分散エレメント180は、各波長の光を、光軸182に関して角度をなすパスに沿ってレンズ系186の方に向ける。各角度は、波長分散エレメント180によって特定される。レンズ系186は、波長分散エレメント180から別々の波長の光を受け取り、その光をビーム偏向デバイス188上に設けられた所定位置に向け、又は向かわせ、及び/又は収束すべく工夫された1つ以上の光学エレメントを含むことができる。ビーム偏向デバイス188は、1つ以上々の離散的波長の光を受け取り、これを再び光軸182に沿ってレンズ系186を通して波長分散エレメント180及び光コントローラ176に選択的に戻すべく制御することができる。・・・ビーム偏向デバイス188は、多様な仕方で形成及び/又は配置することができる。例えば、ビーム偏向デバイス188は、多角形ミラー、回転シャフト上に置かれた平面ミラー、検流計上に置かれたミラー、又は音響光学変調器を含む(但し、これだけに限らない)エレメントから作ることができる。
【0076】
図6に示した実施例では、分散エレメント180(当審注:図6及び【0074】の記載に照らし、「分散エレメント180」は「光フィルタ170」の誤記と認める。)は、回折格子184(当審注:図6及び【0074】の記載に照らし、「回折格子184」は「反射格子184」の誤記と認める。)、レンズ系186(テレスコープ193を形成する第1及び第2のレンズ190、192を有する)、及び、多角形ミラースキャナ194として描かれたビーム偏向デバイス188を含む。テレスコープ193は、第1及び第2のレンズ190、192から4f構成で作られている。テレスコープ193の第1及び第2のレンズ190、192は、各々ほぼ光軸182上で心出しされている。第1レンズ190は、波長分散エレメント180(例えば回折格子184)から第1の距離、第1レンズ190の焦点距離F1にほぼ等しい第1の距離をおいて位置する。第2レンズ192は、第1レンズ190から第2の距離、第1レンズ190の焦点距離F1と第2レンズ192の焦点距離F2の総和にほぼ等しい第2の距離をおいて位置する。この実施例では、第1レンズ190は、波長分散エレメント180から平行調整された離散的波長の光を受け取ることができ、また、同等の1つ以上の収束ビームが1つの像平面(図6においてIPで表されている)上に投影されるよう、平行調整された1つ以上の離散的波長の光の各々についてフーリエ変換を効果的に実行することができる。像平面IPは、第1レンズと第2レンズの間で、第1レンズから所定の距離、つまり、第1レンズの焦点距離F1によって限定された所定の距離をおいて位置する。像平面IPを通って伝搬した後、収束ビームは、第2レンズによって受け取られる同等の1つ以上の発散ビームを形成する。第2レンズは、1つ以上の発散ビームを受け取り、光軸182に関して所定の角位置を占める同等の数の平行調整ビームを形成し、これをビーム偏向デバイス188の所定の部分に向ける、又は向かわせる働きをする。
・・・
【0079】
光軸に関する入射ビームの向きと多角形ミラー194の回転方向198が、波長同調の方向、すなわち、波長アップ(プラス)スキャンか、ダウン(マイナス)スキャンかを決定する。図6に示した配置は、プラスの波長掃引を生じさせる。図6に示したミラー194はファセット12面を有するが、12面より少ない形も12面より多い形も使用できることを理解されたい。その時々の用途において使用されるミラーファセットの数は、特定の用途における所望の走査速度と走査範囲によって異なる。その上、ミラーのサイズは、特定の用途のニーズに応じて、ミラー194の重量及び製作可能性を含む(但し、これだけに限らない)ファクターを考慮した上で選択される。また、レンズ190、192は異なる焦点距離を持つものであってよいことも認識されたい。レンズ190、192は、できれば、ミラー194の中心点200付近に焦点を作るように選択するのが望ましい。」

「フィルタ170により、光源100’は、中心波長が光コントローラ176の帯域幅にわたって連続的かつ反復的に適時に同調させることのできるスペクトルを放出する周波数掃引源として動作させられる。」(【0072】)との記載から、「フィルタ170」が請求項19の「スペクトルを経時変化させるスペクトルフィルタ」に相当するといえる。
そこで、請求項19のスペクトルフィルタを構成する要素について、更に検討する。

請求項19の「多角形スキャナ」は、ビーム偏向デバイス188としての「多角形ミラースキャナ194」(【0075】、【0076】)に相当する。

「フィルタ170は、・・・光ビームを、各々、知られている通り1つの光パスに沿って方向づけされる複数の異なる波長の光に分割すべく工夫された波長分散エレメント180を含む。波長分散エレメント180は、光コントローラ176からの光ビームを受け取り、この光ビームを、各々1つの光パスに沿って方向づけされる複数の波長の複数の光に分割すべく工夫された1つ以上のエレメントを含むことができる。波長分散エレメント180は更に、複数の波長の光を光軸182に関して複数の角方向又は角位置において方向づけする働きも持つ。」(【0074】)、「ビーム偏向デバイス188は、1つ以上々の離散的波長の光を受け取り、これを再び光軸182に沿ってレンズ系186を通して波長分散エレメント180及び光コントローラ176に選択的に戻すべく制御することができる。」(【0075】)、「光軸に関する入射ビームの向きと多角形ミラー194の回転方向198が、波長同調の方向、すなわち、波長アップ(プラス)スキャンか、ダウン(マイナス)スキャンかを決定する。図6に示した配置は、プラスの波長掃引を生じさせる。」(【0075】)との記載から、波長分散エレメント180としての反射格子184、及び、ビーム偏向デバイス188としての多角形ミラースキャナ194それぞれの構成並びに配置により、スペクトルの掃引が実現されるものと理解できる。
よって、請求項19の「スペクトルを経時変化させるスペクトル分離アレンジメント」は、「反射格子184」及び「多角形ミラースキャナ194」に相当する。

「レンズ系186(テレスコープ193を形成する第1及び第2のレンズ190、192を有する)」、「第1レンズ190は、波長分散エレメント180から平行調整された離散的波長の光を受け取ることができ、また、同等の1つ以上の収束ビームが1つの像平面(図6においてIPで表されている)上に投影される」(【0076】)との記載から、第1レンズ190を含むレンズ系186は、波長分散エレメント180である反射格子184から離散的波長の光を受け取り、像平面上に収束ビームを投影することが理解できる。
よって、請求項19の「光学撮像アレンジメント」は、「レンズ系186」に相当する。

してみると、請求項19で特定される「スペクトルフィルタ」は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件訂正発明19が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
そして、発明の詳細な説明には、請求項19で特定される「スペクトルフィルタ」の具体的構成が記載されていることから、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明19の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。
さらに、少なくとも、発明の詳細な説明の記載を参酌することにより、請求項19で特定される「スペクトルフィルタ」の構成を理解することができることから、本件訂正発明19が明確でないとはいえない。

以上のとおりであるから、本件特許の請求項19の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていなとすることはできない。また、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

(2) 2回目の取消理由の取消理由2について
ア 請求項1ないし5、及び、8ないし19について
(ア)訂正前の特定事項「ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2構造」は、意味が不明であった。
本件訂正により、特定事項ii)の「第2構造」が「第2レーザ利得媒体構造」と訂正されるとともに、「iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメント」を含むという特定事項が追加された。
本件特許の出願の優先日当時の技術常識を参酌するに、レーザ利得媒体構造で生じるスペクトルの周波数ダウンシフトは、帯域内4波混合によるものであると理解できる。
してみると、本件訂正後の特定事項ii)は、意味が不明であるということはできない。
よって、本件訂正後の請求項1ないし5、及び、8ないし19は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものとなった。

(イ)また、訂正前は「より高い出力パワーを生み出す」という課題を解決するための手段である、帯域内4波混合現象の結果として周波数ダウンシフトを生じさせる手段及び短波長から長波長方向へのプラス波長スキャンを行う手段が反映されていなかった。
本件訂正により、「短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメント」が設けられた「スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造」を含むことが特定された。
本件特許の出願の優先日当時の技術常識を参酌するに、レーザ利得媒体構造で生じるスペクトルの周波数ダウンシフトは、帯域内4波混合によるものであると理解できる。
してみると、もはや「より高い出力パワーを生み出す」という課題を解決するための手段が反映されていないということはできない。
よって、本件訂正後の請求項1ないし5、及び、8ないし19は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものとなった。

イ 請求項6について
訂正前は、「i.前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調するか、あるいは、
ii.前記少なくとも1つの第1電磁放射線、少なくとも1つの第2電磁放射線、少なくとも1つの第3電磁放射線又は少なくとも1つの第4電磁放射線のうち少なくとも1つの周波数をシフトし、前記干渉のマイナス周波数成分を少なくとも部分的に減縮し、区分し、または、無くすか、の少なくとも一方を行う、」と規定され、発明特定事項がiとiiの選択肢で表現されている。
上記iとiiの選択肢は、選択肢同士が類似の性質又は機能を有しないため、一の請求項から二の発明が把握され、明確であるとはいえなかった。

本件訂正により、ii)の選択肢が削除されたため、本件訂正後の請求項6は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものとなった。

第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし6及び本件請求項8?19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし6及び本件請求項8ないし19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項7に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項7に対して申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないこととなった。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、 i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、 ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、 iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器と、を備える装置。
【請求項2】
平均周波数が5キロヘルツより大きい反復レートで反復的に変化する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
平均周波数が10テラヘルツより大きい範囲にわたって変化する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
スペクトルが100ギガヘルツより小さい瞬時ライン幅を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、 i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、 ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、 iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
往復長さが5mより短いレーザキャビティと、を備える装置。
【請求項6】
電磁放射線の間の干渉を検出する装置の動作を制御する方法であって、
少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供し、
前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせ、
前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせ、
前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した少なくとも1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出し、及び、
前記少なくとも1つの第1電磁放射線または前記少なくとも1つの第2電磁放射線の少なくとも1つの偏光を時間について変調する、ことを備える方法。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、 i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、 ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、 iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
前記少なくとも1つの第1電磁放射線、少なくとも1つの第2電磁放射線、少なくとも1つの第3電磁放射線又は少なくとも1つの第4電磁放射線のうち少なくとも1つの周波数をシフトするように構成され、さらに、前記干渉のマイナス周波数成分を少なくとも部分的に減縮し,区分し,または,無くすように構成された少なくとも1つの第3アレンジメントと、を備える装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2アレンジメントが、少なくとも1つの光検出器と、前記少なくとも1つの光検出器の後に続く少なくとも1つの電気アナログフィルタを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2アレンジメントが、少なくとも1つの光検出器と、前記少なくとも1つの光検出器の後に続く少なくとも1つの電気アナログフィルタを備える、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
更に、検出された干渉に基づいて画像を生成する少なくとも1つの第3アレンジメントと、
走査データ生成のためにサンプルの横方向位置を走査し、その走査データを画像生成のために前記第3アレンジメントに提供するプローブと、を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記走査データが、サンプル上の多重横方向位置で得られた干渉検出データを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記プローブが回転接合器と光ファイバーカテーテルを備えると共に、前記カテーテルが毎秒30回転より高い速度で回転する、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの第1電磁放射線をサンプルに提供すると共に、少なくとも1つの第2電磁放射線をリファレンスに提供する少なくとも1つの第1アレンジメントであって、前記第1アレンジメントは、 i)前記第1電磁放射線または前記第2電磁放射線のうち少なくとも1つに、平均周波数が毎ミリ秒100テラヘルツより大きい同調速度でほぼ連続的に経時変化するスペクトルを持たせる第1構造と、 ii)前記スペクトルの周波数ダウンシフトを生じさせる第2レーザ利得媒体構造と、 iii)前記第2レーザ利得媒体構造に設けられ、短波長から長波長へのプラスの波長掃引方向で動作する波長走査フィルタアレンジメントと、を含むものと、
前記少なくとも1つの第1電磁放射線と関連した1つの第3電磁放射線と、前記少なくとも1つの第2電磁放射線と関連した少なくとも1つの第4電磁放射線の間の干渉を検出する少なくとも1つの第2アレンジメントと、
前記電磁放射線の偏光を時間について変調するように構成された少なくとも1つの偏光変調器と、を備える装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第2アレンジメントが、前記少なくとも1つの第3電磁放射線に関連した自己相関を除去するように構成された少なくとも1つのデュアルバランスレシーバを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
更に、
・前記少なくとも1つの第1電磁放射線と少なくとも1つの第2電磁放射線のうち少なくとも1つ、または、
・前記少なくとも1つの第3電磁放射線と少なくとも1つの第4電磁放射線のうち少なくとも1つ、の少なくとも1つの間の位相差を追跡するように明確に構成された少なくとも1つの第3アレンジメントを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記スペクトルの中央値の変化の速度が少なくとも1000nm/msecである、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
スペクトルが少なくとも10kHzの反復レートで反復的に経時変化する、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第1アレンジメントが、スペクトルを経時変化させるスペクトルフィルタを含み、且つ、
前記スペクトルフィルタが、多角形スキャナ、スペクトルを経時変化させるスペクトル分離アレンジメント、及び、前記スペクトル分離アレンジメントから前記干渉の1つまたはそれ以上の成分を直接受け取って,該干渉の1つまたはそれ以上の成分を像平面上に収束及び投影するように構成された少なくとも1つの光学撮像アレンジメントを含む、請求項1に記載の装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-12 
出願番号 特願2014-79364(P2014-79364)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 536- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
郡山 順
登録日 2015-08-21 
登録番号 特許第5795658号(P5795658)
権利者 ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
発明の名称 周波数ドメイン干渉測定を利用して光学撮像を実行する方法および装置  
代理人 南山 知広  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 鶴田 準一  
代理人 河合 章  
代理人 中村 健一  
代理人 青木 篤  
代理人 河合 章  
代理人 中村 健一  
代理人 鶴田 準一  

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