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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A61H
管理番号 1336484
審判番号 無効2015-800191  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-10-15 
確定日 2018-01-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第5329608号発明「美顔器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I 手続の経緯
本件特許第5329608号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成20年8月31日に出願した特願2008-255137号の一部を平成23年6月22日に新たな特許出願としたものであって、平成25年8月2日にその請求項1?9に係る発明について特許の設定登録がなされた。
その後、請求人(株式会社MTG)より平成27年10月15日付けで請求項1?6に係る発明についての特許を無効とする審決を求める無効審判の請求がなされ、被請求人(株式会社遊気創健美倶楽部)より平成27年12月25日付け審判事件答弁書が提出され、請求人より平成28年4月4日付け口頭審理陳述要領書が提出され、被請求人より同日付け口頭審理陳述要領書が提出され、平成28年4月18日に口頭審理が行われ、請求人より平成28年4月25日付け上申書が提出され、被請求人より同日付け上申書(第1回)が提出され、請求人より平成28年5月31日付け上申書が提出され、被請求人より同日付け上申書(第2回)が提出された。

II 本件特許発明
本件特許の請求項1?6に係る発明(以下、「本件特許発明1?6」という。また、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
(a)炭酸ガスを導く可撓性ホースPと、
(b)スプレー本体Sであって、
(b1)可撓性ホースPの一端部に接続され、
(b2)スプレー本体Sの先端に設けられる噴出ノズル31と、
(b3)スプレー本体Sに設けられ、所定量の化粧水を収納するカップ29と、
(b4)スプレー本体Sに設けられ、スプレー本体Sを保持した手先Hで操作される操作部30とを備え、
(b5)可撓性ホースPからの炭酸ガスを、操作部30の操作によって開閉し、
(b6)操作部30の操作によって開いている状態で、可撓性ホースPから導かれた炭酸ガスを、噴出ノズル31から噴出させて、カップ29内の化粧水とともに、炭酸混合化粧水を、霧状に噴射するスプレー本体Sと、
(c)炭酸ガス供給用ボンベBであって、
(c1)全体の形状が上下に細長く形成され、
(c2)上端噴出口頭部3と、
(c3)上端噴出口頭部3に形成されるネジ4と、
(c4)上端噴出口頭部3に設けられる封印膜3aとを有する炭酸ガス供給用ボンベBと、
(d)一方向および反対方向に水平回転可能な円形調整用摘子17と、
(e)炭酸ガス供給用ボンベBを収納する直立型ボンベ収納ボックスXであって、
(e1)上側筒体1であって、
下開口であり、
円形調整用摘子17は、上側筒体1の上方で操作可能であり、
この上側筒体1内には、
炭酸ガス供給用ボンベBのネジ4が、炭酸ガス供給用ボンベBを取替え可能に、捻じ込まれるネジ孔6が形成され、
炭酸ガス供給用ボンベBのネジ4をネジ孔6に捻じ込んだ際、その炭酸ガス供給用ボンベBの封印膜3aを貫通して炭酸ガス供給用ボンベBからの噴出ガスを導くガス流通路が形成され、
円形調整用摘子17の回転によって炭酸ガス供給用ボンベBからの前記ガス流通路を介する炭酸ガスの噴出調整をして、可撓性ホースPの他端部に供給する上側筒体1と、
(e2)下側筒体2であって、
上開口であり、
上側筒体1の下端開口縁と着脱自在であり、
上側筒体1の前記ネジ孔6に炭酸ガス供給用ボンベBのネジ4を捻じ込んだ状態では、上側筒体1とともに、炭酸ガス供給用ボンベBの上端噴出口頭部3を隠蔽して炭酸ガス供給用ボンベBを収納し、
底部が着座する下側筒体2とを備える直立型ボンベ収納ボックスXを含むことを特徴とする美顔器。
【請求項2】
操作部30は、レバー形式であり、
スプレー本体Sは、操作部30の引き付け操作によって開いている状態とすることを特徴とする請求項1記載の美顔器。
【請求項3】
操作部30は、押しボタン形式であり、
スプレー本体Sは、操作部30の操作によって開いている状態とすることを特徴とする請求項1記載の美顔器。
【請求項4】
上側筒体1内には、
炭酸ガス供給用ボンベBのネジ4をネジ孔6に捻じ込んだ際、炭酸ガス供給用ボンベBの上端噴出口頭部3に対峙し、その炭酸ガス供給用ボンベBの封印膜3aを貫通する噴出用管11が設けられ、
前記ガス流通路は、炭酸ガス供給用ボンベBの封印膜3aを貫通した噴出用管11からの噴出ガスを導くことを特徴とする請求項1?3のうちの1つに記載の美顔器。
【請求項5】
円形調整用摘子17の回転によって、炭酸ガス供給用ボンベBからの前記ガス流通路を介する炭酸ガスの噴出、停止もすることを特徴とする請求項1?4のうちの1つに記載の美顔器。
【請求項6】
直立型ボンベ収納ボックスの下側筒体を有底で、而も下広状のスカート状に形成したことを特徴とする請求項1?5のうちの1つに記載の美顔器。」

III 主張の概略
1 請求人の主張
(1)理由1
本件特許発明1、2、4、5は、甲2に記載された発明を主引例とし、これに甲3に記載された技術を副引例として組み合わせることにより、本件特許発明3は、甲2に記載された発明を主引例とし、これに甲3及び甲5に記載された技術を副引例として組み合わせることにより、本件特許発明6は、甲2に記載された発明を主引例とし、これに甲3及び甲6に記載された技術を副引例として組み合わせることにより、いずれも、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1?6に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
(2)理由2
本件特許発明1、2、4、5は、甲2に記載された発明を主引例とし、これに甲4に記載された技術を副引例として組み合わせることにより、本件特許発明3は、甲2に記載された発明を主引例とし、これに甲4及び甲5に記載された技術を副引例として組み合わせることにより、本件特許発明6は、甲2に記載された発明を主引例とし、これに甲4及び甲6に記載された技術を副引例として組み合わせることにより、いずれも、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1?6に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証:特許第5329608号公報
甲第2号証:登録実用新案第3136465号公報
甲第3号証:特開昭63-243620号公報
甲第4号証:特開昭64-33410号公報
甲第5号証:特開平11-262700号公報
甲第6号証:特開平10-19719号公報
甲第7号証:特公平4-72554号公報
甲第8号証:登録実用新案第3007447号公報
甲第9号証:実願平3-71250号(実開平5-14750号)のCD-ROM
甲第10号証:特開平7-269790号公報
甲第11号証:日本炭酸瓦斯(株)のホームページ(http://www.ntg.co.jp/)のうち「トップページ」「会社案内」「製品紹介」の各ページの印刷物
甲第12号証の1:炭酸博士ドットコムの「新しい炭酸ミストシャワー MI・IN発表!(前編)」(http://tansan-hakase.com/archives/2008/08/11/133858.php)の印刷物
甲第12号証の2:炭酸博士ドットコムの「新しい炭酸ミストシャワー MI・IN発表!(後編)」(http://tansan-hakase.com/archives/2008/08/25/090413.php)の印刷物
甲第13号証:本件特許にかかる侵害事件(平成25年(ワ)23702号)における原告(被請求人)従業員の陳述書
甲第14号証:平成28年3月28日付け写真報告書
甲第15号証:本件特許における侵害事件(平成25年(ワ)23702号)の無効抗弁の理由及び証拠一式
甲第16号証:口頭審理の技術説明で用いたパワーポイントの印刷物

2 被請求人の主張
本件特許発明は、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載された発明から容易になし得たものではなく、また、甲第2号証、甲第4号証乃至甲第6号証に記載された発明から容易になし得たものでもないから、請求項1?6に係る本件特許は無効となり得ず、維持されるべきものである。

<証拠方法>
乙第1号証:手塚敬三著、「ガス溶接法(実習溶接教程)」、産業図書株式会社、昭和36年12月25日、p.103,104,112,113,134,135,161,162,171?178
乙第2号証:中央労働災害防止協会編、「ガス溶接・溶断作業の安全 ガス溶接技能講習用テキスト」、中央労働災害防止協会、平成27年8月20日、p9,12?17,22,23,29?32,42,43,50?52,62,67,90,98?102,105,106
乙第3号証:安田克彦著、「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい 溶接の本」、日刊工業新聞社、2009年12月25日、p.44?48
乙第4号証:「NTGミニトーチNT-PRO 取扱説明書」、日本炭酸瓦斯株式会社、p.1?16
乙第5号証:審判廷におけるスクリーンへ投影した画像(2)-1?(2)-4を含む合計7枚のスライド

IV 当審の判断
1 刊行物の記載事項
甲第2号証?甲第4号証には、それぞれ次のとおり記載されている。
(1)甲第2号証
(1-1)「【請求項1】
所定量の化粧水を収納するカップと、このカップを装備すると共に、滴下された化粧水が引き込まれる導管を内蔵し、且つ該導管の先端に設けられた噴出ノズルを有するスプレー本体と、更にこの導管内において前記滴下化粧水と混合して該炭酸混合化粧水を噴出ノズルから霧状に噴出させる炭酸ガス供給用ボンベと、而も該スプレー本体に備えられた炭酸混合化粧水の噴出調整用摘子とで成したことを特徴とする美顔器。」
(1-2)「【請求項2】
炭酸ガス供給用ボンベを直立収納する筒部と、該炭酸ガス供給用ボンベに連結されたガス供給用パイプを収納すると共に、化粧水収納カップを備えたボックス部と、該パイプを前面から進退自在に引出すと共に、後部の炭酸ガス供給用ボンベ及び化粧水収納カップを遮蔽する前板とで構成されたデスクトップ器体と、この前板から引出した炭酸ガス供給用パイプに接続されたスプレー本体と、更にデスクトップ器体に備えられた炭酸混合化粧水の噴出調整用摘子とで成したことを特徴とする美顔器。」
(1-3)「【請求項6】
スプレー本体を、握手部とこの握手部に対し直行する筒部とで構成し、この筒部の内部に導管を長手方向に内蔵配置すると共に噴出調整用摘子を後端に装備し、更に炭酸ガス供給用ボンベからのガス供給用パイプを前記握手部の内部を挿通して導管に接続し、且つ握手部にシャッター板を上下にスライドする操作レバーを装備したことを特徴とする請求項1記載の美顔器。」
(1-4)「【0001】
本考案は化粧水と炭酸ガスとの混合液を顔肌に噴霧状に吹き付ける美顔器に関する。」
(1-5)「【0006】
(1)請求項1により、スプレー本体の噴出ノズルから霧状に噴出した炭酸成分の混合化粧水が顔肌の毛細血管に作用して該血管を拡張し、皮脂や汚れ等の残骸物を顔肌からソフト的に遊離させて取り除き、より若々しく美しい顔肌を指向することができ、而してその噴出量はその噴出調整用摘子にて使用者の所望に応じ適宜調整できる。
(2)請求項2により、デスクトップ器体としてその前板にて後部に直立した炭酸ガス供給用ボンベを遮蔽して違和感を無くすると共に、而もスプレー本体とボンベを連結するガス供給用パイプを前板から進退自在に引出すことができ使用しない時は、邪魔にならず使い勝手良い。・・・
(5)請求項6により、スプレー本体、ガス供給用パイプを内部に挿通し、且つ操作レバーを備えた握手部、スプレー本体後端の噴出調整用摘子と夫々の配置によって美顔器全体のバランスと使用操作勝手が良い。」
(1-6)「【0007】
以下本考案を実施形態の図面に基づいて説明する。図1は美顔器の使用状態を示す斜視図であって、使用者が手先Hにてスプレー本体1の握手部2を保持している。
図2は、美顔器の全体構成図である。而して具体的には図3及び4に示す如く、スプレー本体1には握手部2と直行する筒部3を内蔵配置している。この筒部3は導管4を主として成している。
而してこの導管4の前方位置には所定量の化粧水Wを収納するカップ5を装備している。・・・このカップ5はキャップ6と導管4にねじ込まれる下端の滴下口7とより成っている。また、導管4の先端には噴出ノズル8が設けられている。
【0008】
スプレー本体1の握手部2には、炭酸ガス供給用ボンベBに連結されたガス供給用パイプ9を収納し、その引込口10を導管4に接続している。
また、この握手部2には反転自在に軸11にて支持された操作レバー12が装備されており、リンク13にて上下にスライドして導管4の内孔4aを開閉するシャッター板14に連携している。
このシャッター板14は、化粧水収納カップ5と炭酸ガス供給用パイプ9の引込口10との間に位置し、操作レバー12の引き付けによりリンク13を介して縦溝15を下方向にスライドし、導管4の内孔4aを開く。
更に導管4の後方端には内孔4aを進退自在に移動する様に噴出調整用摘子16を装備している。具体的には、内孔4aの端部4bと調整用摘子16の先端16aとを共にテーパー状に形成している。
【0009】
この噴出調整用摘子16と化粧水収納カップ5との間に炭酸ガス供給用パイプ9の引込口10が位置している。
続いて、導管4の内孔4aには、化粧水収納カップ5の滴下口7に逆止弁17が装備されており、炭酸ガスが化粧水収納カップ5側に流入するのを防止し、適正な炭酸成分の混合化粧水が得られる。・・・」
(1-7)「【0010】
図5は、炭酸ガス供給用ボンベBを直立収納する筒部21と、該炭酸ガス供給用ボンベBに連結されたガス供給用パイプ9を収納すると共に、化粧水収納カップ5を備えたボックス部22と、該パイプ9を前面から進退自在に引出すと共に、後部の炭酸ガス供給用ボンベB及び化粧水収納カップ9を遮蔽する前板23とで構成されたデスクトップ器体Xとした他の実施例であって、この前板23から引出した炭酸ガス供給用パイプ9にスプレー本体1を接続しおり、更にデスクトップ器体Xの前板23には炭酸混合化粧水の噴出調整用摘子16を備えている。また、この前板23に鏡24を装備し、スプレー本体1を収納するホルダー25を設けている。」
(1-8)「【0011】
次に本考案美顔器の使用順序を説明すると、図1に示す如く顔肌に噴出ノズル8を向けると共に、操作レバー12を引く。
この操作レバー12を引くことによりシャッター板14が降下し、炭酸ガス供給用ボンベBからのガスが供給用パイプ9を通して導管4の内孔4aを直進し、化粧水収納カップ5からの化粧水を誘引して混合化粧水として噴出ノズル8から一気に噴霧状に顔肌に吹き付ける。勿論、そのガス噴出量、噴出度は噴出調整用摘子16にて適度に調整する。
更に、使用を中止または終了する時は、操作レバー12の引きを解けば、シャッター板14が上昇して導管4の内孔4aを閉塞し炭酸ガス供給を断つこととなる。」

(1-9)図2の記載から、炭酸ガスボンベの形状は、全体の形状が上下に細長く形成されたものであることが窺える。

(1-10)図2の記載から炭酸ガス供給用ボンベBの上部に、ガス供給用パイプ9の他端部が接続された部材(以下、その部材を「上部構造物」という。)が設けられるとともに、炭酸ガス供給用ボンベBの下部に、上開口であり、その巾広の底部が着座する部材(以下、その部材を「ボンベ支持筒」という。)が設けられていることが窺える。

(1-11)図4の記載から、噴出調整用摘子16の軸がスプレー本体1の導管4と平行であり、噴出値要請用摘子16はスプレー本体1の導管4の軸と垂直な面で回転することが窺える。

上記(1-6)の「【0007】・・・図1は美顔器の使用状態を示す斜視図であって、使用者が手先Hにてスプレー本体1の握手部2を保持している。」と「【0008】・・・スプレー本体1の握手部2には、炭酸ガス供給用ボンベBに連結されたガス供給用パイプ9を収納し、その引込口10を導管4に接続している。」との記載を併せてみて、美顔器は、「炭酸ガスを導く炭酸ガス供給用パイプ9」を備えるといえる。

上記(1-1)の「【請求項1】・・・該炭酸混合化粧水を噴出ノズルから霧状に噴出させる・・・」との記載と、上記(1-6)の「【0007】・・・図2は、美顔器の全体構成図である。而して具体的には図3及び4に示す如く、スプレー本体1には握手部2と直行する筒部3を内蔵配置している。この筒部3は導管4を主として成している。
而してこの導管4の前方位置には所定量の化粧水Wを収納するカップ5を装備している。・・・このカップ5はキャップ6と導管4にねじ込まれる下端の滴下口7とより成っている。また、導管4の先端には噴出ノズル8が設けられている。
【0008】
スプレー本体1の握手部2には、炭酸ガス供給用ボンベBに連結されたガス供給用パイプ9を収納し、その引込口10を導管4に接続している。
また、この握手部2には反転自在に軸11にて支持された操作レバー12が装備されており、リンク13にて上下にスライドして導管4の内孔4aを開閉するシャッター板14に連携している。
このシャッター板14は、化粧水収納カップ5と炭酸ガス供給用パイプ9の引込口10との間に位置し、操作レバー12の引き付けによりリンク13を介して縦溝15を下方向にスライドし、導管4の内孔4aを開く。
更に導管4の後方端には内孔4aを進退自在に移動する様に噴出調整用摘子16を装備している。具体的には、内孔4aの端部4bと調整用摘子16の先端16aとを共にテーパー状に形成している。」との記載と、上記(1-8)の「【0011】・・・顔肌に噴出ノズル8を向けると共に、操作レバー12を引く。この操作レバー12を引くことによりシャッター板14が降下し、炭酸ガス供給用ボンベBからのガスが供給用パイプ9を通して導管4の内孔4aを直進し、・・・」との記載とを併せてみて、美顔器は、次の構造のスプレー本体1を備えるといえる。
「炭酸ガス供給用パイプ9の一端部に接続され、
スプレー本体1の先端に設けられる噴出ノズル8と、
スプレー本体1に設けられ、所定量の化粧水を収納する化粧水収納カップ5と、
スプレー本体1に設けられ、スプレー本体1を保持した手先Hで引き操作により開いている状態とする操作レバー12とを備え、
炭酸ガス供給用パイプ9からの炭酸ガスを、操作レバー12の操作によって開閉し、
操作レバー12の操作によって開いている状態で、炭酸ガス供給用パイプ9から導かれた炭酸ガスを、噴出ノズル8から噴出させて、化粧水収納カップ5内の化粧水とともに、炭酸混合化粧水を、霧状に噴射するスプレー本体1」

上記(1-6)の「【0008】・・・更に導管4の後方端には内孔4aを進退自在に移動する様に噴出調整用摘子16を装備している。具体的には、内孔4aの端部4bと調整用摘子16の先端16aとを共にテーパー状に形成している。」との記載と、上記(1-11)の図示内容とを併せてみて、美顔器は、「スプレー本体1の後方に設けられるとともに操作可能であり、一方向および反対方向にスプレー本体1の導管4の軸と垂直な面で回転可能な噴出調整用摘子16」を備えるといえる。

上記(1-6)の「【0009】・・・この噴出調整用摘子16と化粧水収納カップ5との間に炭酸ガス供給用パイプ9の引込口10が位置している。」との記載と、上記(1-11)の図示内容とを併せてみて、噴出調整用摘子16は、その回転によって炭酸ガス供給用ボンベBからのスプレー本体1での炭酸ガスの噴出調整するといえる。

以上から、甲第2号証には、次の発明が記載されている(以下、「甲第2号証発明」という。)。

「炭酸ガスを導く炭酸ガス供給用パイプ9と、
スプレー本体1であって、
炭酸ガス供給用パイプ9の一端部に接続され、
スプレー本体1の先端に設けられる噴出ノズル8と、
スプレー本体1に設けられ、所定量の化粧水を収納する化粧水収納カップ5と、
スプレー本体1に設けられ、スプレー本体1を保持した手先Hで引き操作により開いている状態とする操作レバー12とを備え、
炭酸ガス供給用パイプ9からの炭酸ガスを、操作レバー12の操作によって開閉し、
操作レバー12の操作によって開いている状態で、炭酸ガス供給用パイプ9から導かれた炭酸ガスを、噴出ノズル8から噴出させて、化粧水収納カップ5内の化粧水とともに、炭酸混合化粧水を、霧状に噴射するスプレー本体1と、
炭酸ガス供給用ボンベBであって、
全体の形状が上下に細長く形成された、
炭酸ガス供給用ボンベBと、
スプレー本体1の後方に設けられるとともに操作可能であり、回転によって炭酸ガス供給用ボンベBからのスプレー本体1での炭酸ガスの噴出調整をする、一方向および反対方向にスプレー本体1の導管4の軸と垂直な面で回転可能な噴出調整用摘子16と、
上部構造物であって、
炭酸ガス供給用ボンベBの上部に設けられ、ガス供給用パイプ9の他端部が接続される上部構造物と、
ボンベ支持筒であって、
上開口であり、その巾広の底部が着座するボンベ支持筒と、
を備える、美顔器。」

(2)甲第3号証
(2-1)「2.特許請求の範囲
(1).燃性ガスボンベおよび支燃性ガスボンベの各々に開封機構を介して一次側がそれぞれ接続される複数の調圧機構と、この複数の調圧機構の各々の二次側に着脱自在な可撓性の管を介して接続され、先端部に火口を備えたトーチ部とからなる携帯用トーチであって、前記燃性ガスボンベおよび支燃性ガスボンベに接続される各々の前記調圧機構が、一次側と二次側との間に介設され、弁座Oリングに挿通されるとともに、弁ばねおよび一次側のガス圧によって一次側と二次側とを遮断する方向に付勢される異径弁体と、二次側において前記異径弁体の端部に当接され、二次側におけるガス圧の変化を打ち消す方向に前記異径弁体を変位させる調圧ピストンと、この調圧ピストンの背面側に調圧ばねを介して当接される調圧ダイヤルとで構成され、該調圧ダイヤルの変位を前記調圧ばねおよび前記調圧ピストンを介して前記異径弁体に伝達することにより、該異径弁体と前記弁座Oリングとの密着による一次側と二次側との遮断、調圧ダイヤル操作で該異径弁体と前記弁座Oリングとの密着開放で、前記調圧ばねおよび前記調圧ピストンによる二次圧力の調整、二次圧力を介して火口からの流量調整が行われることを特徴とする携帯用トーチ。」(1頁左下欄4行?右下欄8行)
(2-2)「[産業上の利用分野]
本発明は、携帯用トーチに関し、特に、比較的微細な火焔を安定に形成することが必要とされる用途に好適な携帯用トーチに関する。」(1頁右下欄下から3行?2頁左上欄1行)
(2-3)「〔従来の技術〕
たとえば、彫金などにおける微細な蝋付けや溶接作業のように、作業空間が狭く、かつ比較的微細な火焔を必要とする用途に使用されるトーチとしては、次のような構造のものが考えられる。
すなわち、小型の燃性ガスボンベおよび支燃性ガスボンベの各々に装着されたガス調圧機構において所定の圧に調整された燃性ガスおよび支燃性ガスをホースを介してトーチに導き、このトーチに設けられた流量調整機構によってトーチの先端部に設けられた火口に供給される燃性ガスおよび支燃性ガスの流量調整や供給および供給停止の制御などを行うようにしたものである。
〔発明が解決しようとする問題点〕
ところが、上記のような構造の携帯用トーチなどにおいては、調圧機構と流量調整機構とが個別に設けられているため、・・・微細な火焔を安定に形成することが難しいという問題がある。
さらに、使用に際しては各ガス開閉弁または調圧機構と流量調整機構の双方を調整しなければならず、操作が煩雑になるとともに、流量調整機構がトーチに設けられているために、狭い作業空間で使用される比較的小さなトーチにおいては、流量調整機構のつまみなどが把持の障害となるなどしてトーチの操作性が損なわれるという問題もある。
本発明の目的は、微細な火焔を安定に形成することが可能な携帯用トーチを提供することにある。
本発明の他の目的は、操作性を向上させることが可能な携帯用トーチを提供することにある。
[問題を解決するための手段]
・・・
[作用]
上記した手段によれば、各々の調圧機構に設けられた調圧ダイヤルを操作することで、燃性ガスボンベおよび支燃性ガスボンベから各々の調圧機構を介してトーチ部に供給される燃性ガスおよび支燃性ガスの遮断およびガス圧の調整による流量の制御などを行うことができるので、ガス圧および流量の調整を個別に行う場合などに比較して、比較的小さな流量の燃性ガスおよび支燃性ガスをトーチ部に対して安定に供給することが可能となり、トーチ部の火口に微細な火焔を安定に形成することができる。
また、調圧ダイヤルのみを操作することで、トーチ部に供給される燃性ガスおよび支燃性ガスの遮断およびガス圧の調整による流量の制御などを行うことができるとともに、トーチ部に把持の障害となる余分な機構などを設ける必要がないので、操作性が向上される。」(2頁左上欄2行?右下欄15行)
(2-4)「[実施例]
第1図は本発明の一実施例である携帯用トーチの断面図であり、第2図は一部を破断して示す平面図である。
収納ケース1の内部には、複数の調圧機構2および調圧機構3が併置され、該調圧機構2および調圧機構3をそれぞれ保持する複数のブラケット1aおよびブラケット1bと複数の固定ねじ1cとによって安定に固定されている。
調圧機構2および調圧機構3の各々の一次側には、たとえば液化石油ガスなどの燃性ガスが封入された燃性ガスボンベ4および酸素ガスなどの支燃性ガスが封入された支燃性ガスボンベ5が螺合されることによってそれぞれ着脱自在に接続されている。
また、調圧機構2および調圧機構3の二次側には、互いに独立な可撓性の管6および管7を介してトーチ部8が接続されている。
このトーチ8は、管6および管7を通じて供給される燃性ガスおよび支燃性ガスを内部において混合する把持部8aと、この把持部8aの先端部に着脱自在に螺着され、燃性ガスと支燃性ガスとの混合ガスの火焔が先端部に形成される火口8bとて構成されている。
また、収納ケース1の下部には、着脱自在な蓋体1dが設けられており、燃性ガスボンベ4および支燃性ガスボンベ5の調圧機構2および調圧機構3に対する着脱時などに開放されるように構成されている。
また蓋体1dの内部には収納部1eが設けられており、携行時などに複数の管6および管7やトーチ部8などが収容されるように構成されている。
なお、本実施例においては、燃性ガスボンベ4が装着される調圧機構2および支燃性ガスボンベ5が装着される調圧機構3の内部構造は同一であるので、以下の説明では主として調圧機構2の構造を説明し、調圧機構3の対応する構成部品については括弧内に符号を示すこととする。
調圧機構2(3)において、筒状の本体2a(3a)の内部には、弁体ハウジング2b(3b)が螺着され、この弁体ハウジング2b(3b)の内部軸方向には、該弁体ハウジング2b(3b)を貫通して一端が二次側に突出される異径弁体2c(3c)が設けられている。
異径弁体2c(3c)は、一次側から二次側の方向に順に大径部2d(3d)、テーパ部2e(3e)および小径部2f(3f)をなしている。
さらに、異径弁体2c(3c)は、弁座Oリング押さえ2g(3g)によって弁体ハウジング2b(3b)の内部に保持された弁座Oリング2h(3h)に挿通されている。
この弁座Oリング2h(3h)の内周径は、異径弁体2c(3c)の大径部2d(3d)よりは小さく、かつ小径部2f(3f)よりは大きくされている。
弁座Oリング押さえ2g(3g)の内部には、異径弁体2c(3c)を軸方向に案内する一次側流路2i(3i)が貫通して形成されており、外端部側には、内部軸方向に透孔2j(3j)が形成された開栓針(開栓機構)2k(3k)がフィルタ2l(3l)を介して螺着されている。
一次側流路2i(3i)の内部には、異径弁体2c(3c)を弁体ハウジング2b(3b)から突出させる方向に付勢する弁ばね2m(3m)が設けられている。
開栓針2k(3k)の周囲には、ボンベパッキン2n(3n)が装着されており、このボンベパッキン2n(3n)は燃性ガスボンベ4(支燃性ガスボンベ5)が螺着されるボンベホルダ2p(3p)によって固定されている。
一方、調圧機構2(3)の内部において弁体ハウジング2b(3b)に対向する位置には、軸方向に移動自在な調圧ピストン2q(3q)が設けられ、この調圧ピストン2q(3q)と弁体ハウジング2b(3b)との間には流体室A(二次側)が構成されるとともに、調圧ピストン2q(3q)の端面には弁ばね2m(3m)によって付勢される異径弁体2c(3c)の小径部2f(3f)側の端部が当接されている。
調圧ピストン2q(3q)の背面側には、収納ケース1の外部に突出して本体2a(3a)の外端部に螺着された調圧ダイヤル2r(3r)との間に調圧ばね2s(3s)が介設されている。
そして、外部から調圧ダイヤル2r(3r)を所望の方向に回動させることによって発生される該調圧ダイヤル2r(3r)の軸方向の変位が調圧ばね2s(3s)および調圧ピストン2q(3q)を介して異径弁体2c(3c)に伝達されるものである。
流体室Aには、本体2a(3a)の壁面を貫通する二次側流路2t(3t)が連通されており、この二次側流路2t(3t)の外端部には管継手9(10)が螺着されている。」(2頁右下欄16?4頁左上欄8行)
(2-5)「以下、本実施例の作用について説明する。
まず、調圧ダイヤル2r(3r)を適宜回動させて、調圧ばね2s(3s)および調圧ピストン2q(3q)を弁体ハウジング2b(3b)から遠ざかる方向に変位させると、弁ばね2m(3m)に付勢されて調圧ピストン2q(3q)に追随して変位される異径弁体2c(3c)は弁体ハウジング2b(3b)から突出する方向に移動され、第1図に示されるように、異径弁体2c(3c)の大径部2d(3d)が弁座Oリング2h(3h)の内周部に圧入密着されて一次側流路2i(3i)と二次側流路2t(3t)とが遮断される。
また、トーチ部8の管6および管7は、管継手6aおよび管継手7aを介して逆止弁機構13および逆止弁機構14に接続されている。
この状態で、収納ケース1の蓋体1dが外され、調圧機構2(3)のボンベホルダ2p(3p)には、燃性ガスボンベ4(支燃性ガスボンベ5)が螺着されて固定される。
この時、燃性ガスボンベ4(支燃性ガスボンベ5)の装着端に設けられた図示しない封板は開栓針2k(3k)によって開封されるとともに、開栓針2k(3k)の周囲に設けられたボンベパッキン2n(3n)によってボンベホルダ2p(3p)に対する燃性ガスボンベ4(支燃性ガスボンベ5)の装着部の気密が保持され、燃性ガスボンベ4(支燃性ガスボンベ5)の内部に貯溜されている比較的高圧の燃性ガス(支燃性ガス)は、開栓針2k(3k)の透孔2j(3j)およびフィルタ2l(3l)を通じて一次側流路2i(3i)に流入される。
次に、調圧機構2(3)の調圧ダイヤル2r(3r)を適宜回動させ、調圧ばね2s(3s)および調圧ピストン2q(3q)を介して異径弁体2c(3c)を、弁ばね2m(3m)の付勢力および一次側流路2i(3i)に作用されている燃性ガス(支燃性ガス)の圧力に抗して弁体ハウジング2b(3b)の内部に押し込む方向に変位させることにより、異径弁体2c(3c)のテーパ部2e(3e)および小径部2f(3f)と弁座Oリング2h(3h)の内周部との間に、異径弁体2c(3c)の軸方向の変位に応じて開度が変化するオリフィス(間隙)が形成され、このオリフィスを通じて一次側流路2i(3i)から二次側流路2t(3t)に連通される流体室Aに燃性ガス(支燃性ガス)が流出し、二次圧力を安定させる。」(4頁右上欄2?右下欄8行)
(2-6)「すなわち、調圧ダイヤル2r(3r)を外部から適宜回動させて調圧ばね2s(3s)の調圧ピストン2q(3q)に対する付勢力を変化させ、異径弁体2c(3c)の軸方向における釣り合い位置を適宜変化させることにより、一次側流路2i(3i)から流体室Aへの方向に流出される燃性ガス(支燃性ガス)の二次圧および火口8bからの流量などが随時所望の値に調整されるとともに、調圧ピストン2q(3q)が弁体ハウジング2b(3b)から遠ざかる方向に調圧ダイヤルを回動させることにより、一次側流路2i(3i)と二次側の流体室Aとの遮断が随時迅速に行われる。
こうして、流体室Aに、調圧ダイヤル2r(3r)の回動量に応じた所望の値の安定な二次圧および火口8bからの一定流量で流出された燃性ガス(支燃性ガス)は、二次側流路2t(3t)および接続管11(12)、さらには逆止弁機構13(14)および管6(7)を通じてトーチ部8に供給される。
そして、トーチ部8においては管6および管7を通じて供給される燃性ガスおよび支燃性ガスが把持部8aの内部で混合された後に先端部に設けられた火口8bに流出され、調圧機構2および調圧機構3の調圧ダイヤル2rおよび調圧ダイヤル3rを適宜回動させることによって、二次圧力を変え燃性ガスおよび支燃性ガスの個々の火口8bの供給量を比較的小さくかつ安定に調整することにより、火口8bの先端部には、比較的微細な火焔が安定に形成される。
このように、本実施例においては、調圧機構2(3)に設けられた調圧ダイヤル2r(3r)によって、燃性ガスボンベ4(支燃性ガスボンベ5)からトーチ部8に供給される燃性ガス(支燃性ガス)の二次圧の調整と、トーチ部へのガス供給および供給停止などが行われるように構成されているため、たとえば、トーチ部8に流量調整機構などを個別に設ける場合のように、トーチ部8に供給される燃性ガス(支燃性ガス)の流量を比較的小さく設定する際に燃性ガス(支燃性ガス)の供給圧が不安定となることがなく、トーチ部8の火口8bに微細な火焔を安定に形成することができる。」(5頁左上欄13?左下欄14行)
(2-7)「さらに、トーチ部8に供給される燃性ガス(支燃性ガス)の二次圧の調整と、トーチ部へのガス供給および供給停止操作などが、調圧機構2(3〉の調圧ダイヤル2r(3r)のみを回動させることによって簡便に行われるので、操作が簡単化されるとともに、たとえば、トーチ部8に流量調整機構などを特別に設ける必要がなく、トーチ部8の把持操作の自由度が向上され、全体の操作性が向上される。」(5頁左下欄15?右下欄3行)

(2-8)第1図の記載から、収納ケース1と蓋体1dとからなるものにガスボンベ4を収納し、収納ケース1の上方に調圧ダイヤル2rが位置する携帯用トーチが窺える。
(2-9)第1図の記載から、収納ケース1は、図面上左側に、下に伸びる棒状の断面が2本示されており、かつ、これら2本の棒状の断面の下端部分を結ぶ直線の延長上に略ガスボンベ4の下端の左側表面が位置していること。

上記(2-1)?(2-7)の記載事項と(2-8)?(2-9)の図示内容から、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲第3号証発明」という。)が記載されている。
「燃性ガスを導く管6及び支燃性ガスを導く管7と、
トーチ部8であって、
管6及び管7の一端部に接続され、
トーチ部8の先端に設けられる火口8bと、
管6から導かれた燃性ガス及び管7から導かれた支燃性ガスを、内部にて混合し火口8bから噴出させるトーチ部8と、
燃性ガスボンベ4及び支燃性ガスボンベ5であって、それぞれ、
全体の形状が上下に細長く形成され、
上端の小径部と、
上端の小径部の装着端に設けられる封板と
を有する燃性ガスボンベ4及び支燃性ガスボンベ5と、
一方向および反対方向に水平回転可能な調圧ダイヤル2r及び調圧ダイヤル3rと、
燃性ガスボンベ4及び支燃性ガスボンベ5を収納する、調圧機構2及び調圧機構3を有する収納ケース1、及び蓋体1dであって、
調圧機構2及び調圧機構3を有する収納ケース1であって、
下開口であり、
調圧ダイヤル2r及び調圧ダイヤル3rは、収納ケース1の上方で操作可能であり、
この調圧機構2及び調圧機構3を有する収納ケース1内には、
燃性ガスボンベ4が、燃性ガスボンベ4を取替え可能に、螺着されるボンベホルダ2pと、支燃性ガスボンベ5が、支燃性ガスボンベ5を取替え可能に、螺着されるボンベホルダ3pとを備え、
燃性ガスボンベ4をボンベホルダ2pに螺着した際、透孔2jを有する開栓針2kがその燃性ガスボンベ4の封板を貫通して燃性ガスボンベ4からのガスが前記透孔2jを介して流入される一次側流路2i及び二次側流路2tが形成され、また、
支燃性ガスボンベ5をボンベホルダ3pに螺着した際、透孔3jを有する開栓針3kがその支燃性ガスボンベ5の封板を貫通して支燃性ガスボンベ5からのガスが前記透孔3jを介して流入される一次側流路3i及び二次側流路3tが形成され、
調圧ダイヤル2rの回転によって燃性ガスボンベ4からの前記一次側流路2i及び二次側流路2tを介する燃性ガスの停止及び調整をして、管6の他端部に供給し、
調圧ダイヤル3rの回転によって支燃性ガスボンベ5からの前記一次側流路3i及び二次側流路3tを介する支燃性ガスの停止及び調整をして、管7の他端部に供給する、調圧機構2及び調圧機構3を有する収納ケース1と、
蓋体1dであって、
上開口であり、
収納ケース1の下端開口縁と着脱自在であり、
調圧機構2及び調圧機構3を有する収納ケース1の前記ボンベホルダ2pとボンベホルダ3pとのそれぞれに燃性ガスボンベ4と支燃性ガスボンベ5を螺着した状態では、収納ケース1とともに、燃性ガスボンベ4及び支燃性ガスボンベ5を収納する、
蓋体1dと
を備える、調圧機構2及び調圧機構3を有する収納ケース1と蓋体1dとからなり燃性ガスボンベ4及び支燃性ガスボンベ5を収納する
携帯トーチ。」

(3)甲第4号証
(3-1)「[産業上の利用分野]
本発明は、携帯用トーチに関し、特に比較的微細な火焔を安定的に形成することが必要とされる携帯用トーチに適用して有効な技術に関する。」(1頁右欄6?9行)
(3-2)「[従来の技術]
たとえば、彫金等における微細な蝋付けや溶接作業等のように、比較的微細な火焔を必要とする用途に使用される携帯用トーチとしては、ガスボンベが設けられるトーチ本体と、前記ガスボンベからガス調圧機構を介して供給されたガスにより火焔が形成されるトーチ部とを備え、前記トーチ部がガス流量調整機構を有していないものがある。
[発明が解決しようとする問題点]
・・・前記した携帯用トーチは、そのガス調圧機構によるガス圧の大幅な減圧作用が必要とされるため、該ガス調圧機構を大形化し精密化しなければならないという問題点がある。
本発明の目的は、調圧機構の小形化や簡易化を図ることができる携帯用トーチを提供することにある。
[問題点を解決するための手段]
本発明の携帯用トーチは、ガス流量調整機能を有していないトーチ部側からガス調圧機構側へのガスの流れを阻止する逆止弁が該調圧機構とトーチ部との間に介在され、前記逆止弁は、前記調圧機構側から前記トーチ部側へ流れるガス圧を減圧する機能をも備えている構造としたものである。
[作用]
・・・、逆止弁は、ガス調圧機構側からトーチ部側へ流れるガス圧を減圧する機能をも備えていることにより該トーチ部への供給ガスはガス調圧機構の他に、該逆止弁によっても減圧されるので、ガス調圧機構による減圧作用を減少させることができ、該ガス調圧機構の小形化や構造の簡易化を図ることができる。」(1頁右欄10行?2頁右上欄12行)
(3-3)「[実施例]
第1図は本発明の一実施例である携帯用トーチを示す斜視図、第2図はその携帯用トーチにおけるトーチ部と管との収納状態を示す正面図、第3図は第2図のIII-III線における断面図、第4図は第2図のIV-IV線における断面図、第5図は第1図に示す携帯用トーチの拡大平面図、第6図は第5図のVI-VI線における断面図、第7図はトーチ部を示す拡大断面図である。
本実施例の携帯用トーチは、トーチ本体21と、トーチ部22と、トーチ本体21とトーチ部22とを接続している一対のガス供給用管23と、トーチ部用のスタンド24とを備えている。
前記トーチ本体21は、第1図ないし第3図に示すように表ケース部材25aと裏ケース部材25bとを、たとえばねじ25c等により結合させて形成された収納ケース25と、この収納ケース25の下部に着脱自在に設けられた底ケース26とを有している。」(2頁右上欄13?左下欄11行)
(3-4)「トーチ本体21の内部には、第6図に示すように、たとえば液化石油ガス等の燃性ガスが封入された燃性ガスボンベ30と、酸素ガス等の支燃性ガスを封入された支燃性ガスボンベ31とが交換自在に並設されている。前記一対の管23の各々はこれらのガスボンベ30、31の一方に夫々連通され、各ガスボンベ30、31からの燃性ガスおよび支燃性ガスの各々をトーチ部22に導き出す。」(2頁右下欄15?3頁左上欄3行)
(3-5)「第6図に示すように収納ケース25の内部には、一対のガス調圧機構41、42がパネル25eに固定されて併設されている。
調圧機構41、42の各々の一次側には、ガスボンベ30、31が螺合されて着脱自在に接続され、調圧機構41、42の二次側には、管23、23を介してトーチ部22が接続されている。
なお、本実施例においては、調圧機構41、42の内部構造は、同一であるので、以下の説明では調圧機構41の構造を主に説明する。
調圧機構41の筒状の本体43内には、弁体ハウジング44が螺着されている。弁体ハウジング44内の軸方向には、該弁体ハウジング44を貫通し、一端側か二次側に突出される異径弁体45が設けられている。
異径弁体45は、大径部45a、テーパ部45b、小径部45cから形成されている。また、異径弁体45は、弁座Oリング46に挿通され、この弁座Oリング46は弁体ハウジング44内の弁座押さえ47によって保持されている。
弁座Oリング46の内径は、異径弁体45の大径部45aより小さく、小径部45cより大きくされている。
弁座押さえ47内には、異径弁体45をその軸方向に案内する一次側流路47aが貫通して形成されている。弁座押さえ47の外端側には、フィルタ48を介して開栓針49が螺着され、この開栓針49内にはその軸方向に透孔49aが貫通して形成されている。
一次側流路47a内には、弁ばね50が設けられ、この弁ばね50は異径弁体45を弁体ハウジング44から突出させる方向に付勢している。
開栓針49の周囲には、ボンベパッキン51が装着され、このボンベパッキン51はガスボンベ30が螺着されるボンベホルダ52によって固定されている。
弁体ハウジング44の対向位置における調圧機構41内には、軸方向に移動自在な調圧ピストン53が設けられ、また調圧ピストン53と弁体ハウジング44との間には、流体室54が形成されている。
調圧ピストン53の端面には、異径弁体45の小径部45cの端部が弁ばね50によって付勢されて当接されている。
調圧ピストン53の背面側と調圧ダイヤル35との間には、調圧ばね55が介設されている。
調圧ダイヤル35は、本体43に螺着されて該収納ケース25の外部に突出されている。そして、調圧ダイヤル35を所望の方向に回動させることにより発生される該調圧ダイヤル35の変位が調圧ばね55および調圧ピストン53を介して異径弁体45に伝達されるようになっている。」(4頁右上欄3?右下欄14行)
(3-6)「次に、本実施例の作用について説明する。・・・
次に、携帯用トーチの使用時には、トーチ部22と管23とスタンド24とを夫々の収納部27,28,40から取り出す。また、第4図に示す孔34aに軸33を位置させて把持部兼支持脚部32を回動させた後に、孔34bに軸33を位置させて把持部兼支持脚部32を固定する。そして、第1図ないし第4図に示すように、トーチ本体21を傾斜状に設置する。
トーチ本体21は、把持部兼支持脚部32によって傾斜状の設置されることによりその重心が設置面近くに位置された安定した状態で設置される。
したがって、トーチ本体21がその長手方向に沿って起立されて設置される構造の携帯用トーチにおいては、安定した設置状態を得るためにトーチ本体の底部に大きなスペースを要する脚部が必要とされるが、本実施例においてはそのような脚部が不要であるので、トーチ本体21の小形化を図ることができる。
また、トーチ本体21が把持部兼支持脚部32によって傾斜状に設置されると、燃性ガスボンベ30がその内部の気相状態のガスを取り出せる範囲の傾斜状態に確実に位置されるため、燃性ガスボンベ30のガスがトーチ部22に確実に供給される。」(5頁左上欄16行?6頁左上欄9行)
(3-7)「ここで、第6図に示す状態は、ガスボンベ30、31の封板(図示せず)が夫々の開栓針49によって開封され、該ガスボンベ30、31内の比較的高圧のガスが夫々の開栓針49の透孔49aとフィルタ48を通じて一次側流路47aに夫々流入されている状態を示している。しかし、この一次側流路47a内のガスは、異径弁体45の大径部45aが弁座Oリング46に圧入密着されて一次側流路47aと流体室54とが遮断されているため、該流体室54には流入されていない。
この状態において、調圧ダイヤル35を所要の設定値まで回動させ、調圧ばね55および調圧ピストン53を介して異径弁体45を弁体ハウジング44内に押し込む方向に変位させる。
この変位により、弁座Oリング46に対する大径部45aの密着状態が開放され、小径部45cと弁座Oリング46の内周部との間を通じて一次側流路47aのガスが流体室54に流出する。
この場合に、流体室54のガス圧が調圧ダイヤル35で設定した所要の設定圧より高圧になった際には、そのガス圧により調圧ピストン53が押し上げられ、大径部45aが弁座Oリング46に密着されて一次側流路47aと流体室54とが遮断される。
これとは逆に、流体室54のガス圧が調圧ダイヤル35で設定した所要の設定圧より低圧になった際には、調圧ばね55の付勢力により調圧ピストン53が押し下げられ、大径部45aと弁座Oリング46との密着状態が開放されて一次側流路47aのガスが流体室54に流出する。
このように、本実施例によれば、異径弁体45の弁座Oリング46に対する密着とその開放とにより、調圧ダイヤル35で設定した所要の設定圧が安定した状態で維持され、この二次圧力を介してトーチ部22の火口22bから一定量のガスが流出される。
また、調圧ダイヤル35を適宜回動させて調圧ばね55の調圧ピストン53に対する付勢力を変化させることにより、トーチ部22の火口22bからのガス流量等を所望の値に安定した状態で調整することができる。」(6頁左上欄10?左下欄10行)

(3-8)第1図及び第4図の記載から、収納ケース25が水平面に対して傾斜していることによりトーチ本体21が傾斜して配置されることが窺える。
(3-9)第2図、第3図、第6図の記載から、収納ケース25と底ケース26とからなるトーチ本体21内に全体の形状が上下に細長く形成されたガスボンベ30、31を収納し、収納ケース25の上方に調圧ダイヤル35が位置する携帯用トーチが窺える。

上記(3-1)?(3-7)の記載事項と(3-8)?(3-9)の図示内容とから、甲第4号証には、次の発明が記載されている(以下、「甲第4号証発明」という。)。

「燃性ガスを導く管と支燃性ガスを導く管との一対の管23と、
トーチ部22であって、
一対の管23の一端部に接続され、
トーチ部22の先端に設けられる火口22bと、
一対の管23からの燃性ガスと支燃性ガスを、火口22bから噴出させるトーチ部22と、
燃性ガスボンベ30及び支燃性ガスボンベ31であって、それぞれ、
全体の形状が上下に細長く形成され、
上端の小径部と、
上端の小径部の装着端に設けられる封板と
を有する燃性ガスボンベ30及び支燃性ガスボンベ31と、
一方向および反対方向に水平回転可能な2つの調圧ダイヤル35、35と、
燃性ガスボンベ30及び支燃性ガスボンベ31を収納するトーチ本体21であって、
調圧機構41及び調圧機構42を有する収納ケース25であって、
下開口であり、
2つの調圧ダイヤル35、35は、収納ケース25の上方で操作可能であり、
調圧機構41及び調圧機構42を有する収納ケース25内には、
燃性ガスボンベ30が、燃性ガスボンベ30を取替え可能に、螺着されるボンベホルダ52と、支燃性ガスボンベ31が、支燃性ガスボンベ31を取替え可能に、螺着されるボンベホルダ52とを備え、
燃性ガスボンベ30をボンベホルダ52に螺着した際、透孔49aを有する開栓針49がその燃性ガスボンベ30の封板を貫通して燃性ガスボンベ30からのガスが前記透孔49aを介して流入される、一次側流路47a及び流体室54が形成され、また、
支燃性ガスボンベ31をボンベホルダ52に螺着した際、透孔49aを有する開栓針49がその支燃性ガスボンベ31の封板を貫通して支燃性ガスボンベ31からのガスが前記透孔49aを介して流入される、一次側流路47a及び流体室54が形成され、
一方の調圧ダイヤル35の回転によって前記一次側流路47a及び流体室54を介する燃性ガスの停止及び調整をして、燃性ガスボンベ30から一対の管23の他端部に供給し、
他方の調圧ダイヤル35の回転によって前記一次側流路47a及び流体室54を介する支燃性ガスの停止及び調整をして、支燃性ガスボンベ31から一対の管23の他端部に供給する、調圧機構41及び調圧機構42を有する収納ケース25と、
底ケース26であって、
上開口であり、
収納ケース25の下端開口縁と着脱自在であり、
調圧機構41及び調圧機構42を有する収納ケース25の2つの前記ボンベホルダ52のそれぞれに燃性ガスボンベ30と支燃性ガスボンベ31を螺着した状態では、燃性ガスボンベ30及び支燃性ガスボンベ31を収納する、
底ケース26と
を備えトーチ本体21を含む
携帯用トーチ。」

2 本件特許発明1について
(2-1)対比
本件特許発明1と甲第2号証発明とを対比すると、その構造または機能からみて、甲第2号証発明の「炭酸ガス供給用パイプ9」は、本件特許発明1の「可撓性ホースP」に相当し、以下同様に、「スプレー本体1」は「スプレー本体S」に、「噴出ノズル8」は「噴出ノズル31」に、「化粧水収納カップ5」は「カップ29」に、「操作レバー12」は「操作部30」に、「炭酸ガス供給用ボンベB」は「炭酸ガス供給用ボンベB」に、「噴出調整用摘子16」は「円形調整用摘子17」に、「美顔器」は「美顔器」に、それぞれ相当する。
また、甲第2号証発明の「スプレー本体1を保持した手先Hで引き操作により開いている状態とする操作レバー12」は、本件特許発明1の「スプレー本体Sを保持した手先Hで操作される操作部30」に相当する。
また、本件特許発明1の「(c)炭酸ガス供給用ボンベBであって、(c1)全体の形状が上下に細長く形成され、(c2)上端噴出口頭部3と、(c3)上端噴出口頭部3に形成されるネジ4と、(c4)上端噴出口頭部3に設けられる封印膜3aとを有する炭酸ガス供給用ボンベBと、」と甲第2号証発明の「炭酸ガス供給用ボンベBであって、全体の形状が上下に細長く形成された、炭酸ガス供給用ボンベBと、」とは、「炭酸ガス供給用ボンベであって、全体の形状が上下に細長く形成された炭酸ガス供給用ボンベと、」である点で共通する。
また、本件特許発明1の「(d)一方向および反対方向に水平回転可能な円形調整用摘子17」と甲第2号証発明の「スプレー本体1の後方に設けられるとともに操作可能であり、回転によって炭酸ガス供給用ボンベBからのスプレー本体1での炭酸ガスの噴出調整をする、一方向および反対方向にスプレー本体1の導管4の軸と垂直な面で回転可能な噴出調整用摘子16」とは、「一方向および反対方向に回転可能な円形調整用摘子」である点で共通する。
また、本件特許発明1の「(e1)上側筒体1であって、下開口であり、円形調整用摘子17は、上側筒体1の上方で操作可能であり、この上側筒体1内には、炭酸ガス供給用ボンベBのネジ4が、炭酸ガス供給用ボンベBを取替え可能に、捻じ込まれるネジ孔6が形成され、炭酸ガス供給用ボンベBのネジ4をネジ孔6に捻じ込んだ際、その炭酸ガス供給用ボンベBの封印膜3aを貫通して炭酸ガス供給用ボンベBからの噴出ガスを導くガス流通路が形成され、円形調整用摘子17の回転によって炭酸ガス供給用ボンベBからの前記ガス流通路を介する炭酸ガスの噴出調整をして、可撓性ホースPの他端部に供給する上側筒体1」と甲第2号証発明の「上部構造物であって、炭酸ガス供給用ボンベBの上部に設けられ、ガス供給用パイプ9の他端部が接続される上部構造物」とは、「上部構造物であって、炭酸ガス供給用ボンベからの炭酸ガスを可撓性ホースの他端部に供給する上部構造物」である点で共通する。
また、本件特許発明1の「(e2)下側筒体2であって、上開口であり、上側筒体1の下端開口縁と着脱自在であり、上側筒体1の前記ネジ孔6に炭酸ガス供給用ボンベBのネジ4を捻じ込んだ状態では、上側筒体1とともに、炭酸ガス供給用ボンベBの上端噴出口頭部3を隠蔽して炭酸ガス供給用ボンベBを収納し、底部が着座する下側筒体2」と甲第2号証発明の「ボンベ支持筒であって、上開口であり、その巾広の底部が着座するボンベ支持筒」とは、「ボンベ支持筒であって、上開口であり、底部が着座するボンベ支持筒」である点で共通する。

以上から、両者は、
「炭酸ガスを導く可撓性ホースと、
スプレー本体であって、
可撓性ホースの一端部に接続され、
スプレー本体の先端に設けられる噴出ノズルと、
スプレー本体に設けられ、所定量の化粧水を収納するカップと、
スプレー本体に設けられ、スプレー本体を保持した手先で操作される操作部とを備え、
可撓性ホースからの炭酸ガスを、操作部の操作によって開閉し、
操作部の操作によって開いている状態で、可撓性ホースから導かれた炭酸ガスを、噴出ノズルから噴出させて、カップ29内の化粧水とともに、炭酸混合化粧水を、霧状に噴射するスプレー本体と、
炭酸ガス供給用ボンベであって、
全体の形状が上下に細長く形成された、
炭酸ガス供給用ボンベと、
一方向および反対方向に回転可能な円形調整用摘子と、
上部構造物であって、
炭酸ガス供給用ボンベからの炭酸ガスを可撓性ホースの他端部に供給する上部構造物と、
ボンベ支持筒であって、
上開口であり、
底部が着座するボンベ支持筒と
を備える美顔器。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
炭酸ガス供給用ボンベに関し、本件特許発明1は、上端噴出口頭部と、上端噴出口頭部に形成されるネジと、上端噴出口頭部に設けられる封印膜とを有する炭酸ガス供給用ボンベであるのに対し、甲第2号証発明は、これらの発明特定事項を有するものであるかどうか不明な点。

(相違点2)
上部構造物に関し、本件特許発明1は、上側筒体であって、その上側筒体は、下開口であり、その上側筒体内には、炭酸ガス供給用ボンベのネジが炭酸ガス供給用ボンベを取替え可能に捻じ込まれるネジ孔が形成され、炭酸ガス供給用ボンベのネジをネジ孔に捻じ込んだ際、その炭酸ガス供給用ボンベの封印膜を貫通して炭酸ガス供給用ボンベからの噴出ガスを導くガス流通路が形成され、可撓性ホースの他端部に供給する上側筒体であるのに対し、甲第2号証発明は、炭酸ガス供給用ボンベの上部に設けられ、ガス供給用パイプの他端部が接続される上部構造物にすぎず、その上部構造物は、下開口であるかどうか、炭酸ガス供給用ボンベのネジが炭酸ガス供給用ボンベを取替え可能に捻じ込まれるネジ孔が形成され、炭酸ガス供給用ボンベのネジをネジ孔に捻じ込んだ際、その炭酸ガス供給用ボンベの封印膜を貫通して炭酸ガス供給用ボンベからの噴出ガスを導くガス流通路が形成されるものかどうか、また、形状が筒体であるかどうかのいずれも不明な点。

(相違点3)
ボンベ支持筒に関し、本件特許発明1は、下側筒体であって、その下側筒体は、上側筒体の下端開口縁と着脱自在であって、上側筒体の前記ネジ孔に炭酸ガス供給用ボンベのネジを捻じ込んだ状態では上側筒体とともに炭酸ガス供給用ボンベの上端噴出口頭部を隠蔽して炭酸ガス供給用ボンベを収納する下側筒体であるのに対し、甲第2号証発明は、ボンベ支持筒であるにすぎず、そのボンベ支持筒は、上側筒体の下端開口縁と着脱自在であって上側筒体の前記ネジ孔に炭酸ガス供給用ボンベのネジを捻じ込んだ状態では上側筒体とともに炭酸ガス供給用ボンベの上端噴出口頭部を隠蔽して炭酸ガス供給用ボンベを収納するようなものではない点。

(相違点4)
本件特許発明1は、上側筒体と下側筒体とを備え、炭酸ガス供給用ボンベを収納する直立型ボンベ収納ボックスを有するのに対し、甲第2号証発明は、本件特許発明1の直立型ボンベ収納ボックスに相当するものを有していない点。

(相違点5)
操作部と円形調整用摘子の位置に関し、本件特許発明1は、「操作部」が「スプレー本体Sに設けられ」るとともに、円形調整用摘子17が「直立型ボンベ収納ボックスXの上側筒体1の上方で操作可能」なように設けられているのに対し、甲第2号証発明は、操作部及び円形調整用摘子の双方ともに、スプレー本体に設けられている点。

(相違点6)
一方向および反対方向に回転可能な円形調整用摘子の回転方向及び機能に関し、本件特許発明1は、直立型ボンベ収納ボックスXの上側筒体の上方で「水平」操作されるような回転方向であり、その上側筒体において炭酸供給用ボンベからのガス流通路を介する炭酸ガスの噴出調整する機能であるのに対し、甲第2号証発明は、スプレー本体の後方でスプレー本体の導管の軸と垂直な面で回転操作されるような回転方向であり、スプレー本体において炭酸ガス供給用ボンベからの炭酸ガスの噴出調整をする機能である点。

(2-2)判断
(2-2-1)本件特許発明1について
最初に、本件特許発明1のガス噴出の調整について検討する。
本件明細書には次のとおり記載されている。
(a)「【技術分野】・・・
本発明は化粧水と炭酸ガスとの混合液を顔肌等に噴霧状に吹き付ける美顔器に関する。」
(b)「【背景技術】・・・
一般的な美顔器として、例えば下記技術文献1及び2が存在する。・・・
そこでこれらの多くの技術文献の下、本願発明者が発明者の一翼を担って技術文献5に示す如く、美顔器の製品化に結び付く発明が成された。
その後、本願発明者が更なる技術開発に傾注し、より実用に即した製品の具現化を探求することとした。
・・・
【特許文献5】登録実用新案第3136465号」
(c)「【発明が解決しようとする課題】・・・
本発明は、炭酸混合化粧水を生成する炭酸ガス供給用ボンベが使用時において直接目に触れない様にし、不必要な違和感、不安感を払拭し、且つボンベからの炭酸ガス噴出調整もボンベを直視することなく軽快に操作できることとした。」
(d)「【発明の効果】・・・
(1)請求項1?5により、上側筒体にて炭酸ガス供給用ボンベの上端の噴出口頭部は、直立型ボンベ収納ボックスXによって隠蔽されて外部に触れることはなく、その上方で円形調整用摘子の水平回転により前記ガス通路のガス噴出を調整できる。・・・
(6)請求項1?9により、炭酸混合化粧水を生成する炭酸ガス供給用ボンベが使用時において直接目に触れないのは勿論、ボンベからの炭酸ガス噴出調整もボンベを直視することなく直立型ボンベ収納ボックスの上部に装備された円形調整用摘子を水平回転させることにより、前記ガス通路の炭酸ガスの噴出、停止、更には噴出調整が軽快に行える。」
(e)「【発明を実施するための形態】・・・
【0022】
上側筒体1の上部面1bには炭酸ガス噴出調整用の円形調整用摘子17が位置しており、したがって図2?図5に明らかに示されるように、上側筒体1の上方で操作可能であり、・・・。
【0025】
而して図9は、スプレー本体Sの具体例を示し、・・・
【0026】
・・・
また、この握手部Saには操作部30が装備されており、図1に明らかに示されているように、スプレー本体Sを保持するために握手部Saを握った手先Hによって、この操作部30を操作することにより、導管28の内孔28aを開閉するシャッター板32を上下にスライドさせる。・・・
【0030】
次に本発明美顔器の使用順序を説明する。スプレー本体Sにおける操作部30の使用動作は、前述の技術文献5に類似する。・・・
図4は炭酸ガス供給用ボンベBが装填された状態を示している。・・・
【0031】
而してノズル部10の弁杆15は下方向に下降しており、内孔12とノズル孔13との間は遮断されている。
従って、この状態に於いてスプレー本体Sを操作しても、炭酸ガスが噴出供給されていないからスプレー本体Sから炭酸混合化粧水は霧状に噴出することはない。
・・・
【0032】
続いて、スプレー本体Sを使用し、炭酸混合化粧水を霧状に噴出するに当たっては、上記状態より円形調整用摘子17を反時計方向に回転させる。
・・・、図6の夫々の矢印に示す如く円形調整用摘子17の押圧杆18はバネ19に抗して上昇する。この押圧杆18の弾圧開放により弁杆15はバネ16にて上昇して、維持される。
【0033】
弁杆15の上昇にて、噴出用管11、内孔12、ノズル部10のノズル孔13に亘ってガス流通路を形成される。
この状態に於いて、スプレー本体Sを操作すれば、炭酸ガスと化粧水収納カップ29からの炭酸ガスとが混合し、所望の炭酸混合化粧水をスプレー本体Sの噴出ノズル31から霧状に噴出させることとなる。
【0034】
次にスプレー本体Sからの炭酸混合化粧水の噴出を停止、即ちスプレー本体Sの使用を終了する場合は、円形調整用摘子17を時計方向に回転し、円形調整用摘子17の凸状スパイラル23を上側筒体1の凹状スパイラル24に噛合緊締させると共に押圧杆18を下降させる。
これにより図5に示す如くバネ15に抗して弁杆15は下方向に弾圧下降し、ノズル部10のノズル孔13と噴出用管11とのガス流路を遮断し、ガス供給は断たれる。・・・」

以上の記載から、本件特許発明1は、当該発明の発明者が技術文献5に係る美顔器の技術開発を行い、請求項1に記載の発明特定事項を有するものとしたことにより、炭酸ガス混合化粧水を噴霧する美顔器において、使用時にガス通路の炭酸ガスの噴出、停止、更には噴出調整をボンベを直視することなく軽快に行えるようにしたものと認められる。

ところで、本件特許発明1は、ガス噴出の調整に関し、操作部について「スプレー本体Sに設けられ、スプレー本体Sを保持した手先Hで操作される操作部30とを備え(る)」と、円形調整用摘子について「水平回転可能な円形調整用摘子17」及び「円形調整用摘子17は、上側筒体1の上方で操作可能であ(る)」との発明特定事項を有している。すなわち、本件特許発明1は、スプレー本体に操作部30を設けるとともに、直立型ボンベ収納ボックスXの上側筒体の上方に水平回転可能な円形調整用摘子17を設けるものである。
これに対し、上記(b)に記載の「技術文献5」は、本件事件における甲第2号証に該当するものであるところ、当該文献の美顔器は、ガス噴出の調整に関し、スプレー本体1(本件特許発明1の「スプレー本体S」に相当する。)に操作レバー12(本件特許発明1の「操作部」に相当する。)とスプレー本体の後方でスプレー本体の導管の軸と垂直な面で回転操作されるような回転方向の噴出調整用摘子16(本件特許発明1の「円形調整用摘子」に相当する。)とを設けるものである(上記1(1)の甲第2号証発明を参照。)。

また、本件明細書の「炭酸混合化粧水を生成する炭酸ガス供給用ボンベが使用時において・・・ボンベからの炭酸ガス噴出調整もボンベを直視することなく直立型ボンベ収納ボックスの上部に装備された円形調整用摘子を水平回転させることにより、前記ガス通路の炭酸ガスの噴出、停止、更には噴出調整が軽快に行える。」(上記(d)を参照。)との記載における円形調整用摘子を水平回転させる操作は、上記(e)の「【0026】・・・この握手部Saには操作部30が装備されており、図1に明らかに示されているように、スプレー本体Sを保持するために握手部Saを握った手先Hによって、この操作部30を操作する・・・」との記載から、握手部Saを握った手先Hではない、他方の手先によるものであると認められる。

そうすると、上記した「本件特許発明1は、当該発明の発明者が技術文献5に係る美顔器の技術開発を行い、請求項1に記載の発明特定事項を有するものとしたことにより、炭酸ガス混合化粧水を噴霧する美顔器において、使用時にガス通路の炭酸ガスの噴出、停止、更には噴出調整をボンベを直視することなく軽快に行えるようにしたもの」とは、より具体的には、「本件特許発明1は、従来、スプレー本体に設けられていた操作部と円形調整用摘子について、操作部を従来と同様にスプレー本体に設けられたものとするとともに、円形調整用摘子をスプレー本体の後方でスプレー本体の導管の軸と垂直な面で回転操作されるような回転方向でスプレー本体に設けられたものに代えて直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方で水平操作されるような回転方向に設けられたものとすることにより、一方の手先によってスプレー本体の操作部を操作するとともに他方の手先によって直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方の円形調整用摘子を操作し、それにより、炭酸ガス混合化粧水を噴霧する美顔器において、使用時にガス通路の炭酸ガスの噴出、停止、更には噴出調整をボンベを直視することなく軽快に行えるようにしたもの」と認められる。

(2-2-2)相違点について
上記したとおり、甲第2号証は、本件明細書に従来技術として記載された技術文献5に当たるものである。
そこで、以下の相違点1?相違点6の判断に当たっては、上記したとおり、本件特許発明1は、従来、スプレー本体に設けられていた操作部と円形調整用摘子について、操作部を従来と同様にスプレー本体に設けられたものとするとともに、円形調整用摘子をスプレー本体の後方でスプレー本体の導管の軸と垂直な面で回転操作されるような回転方向でスプレー本体に設けられたものに代えて直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方で水平操作されるような回転方向に設けられたものとすることにより、一方の手先によってスプレー本体の操作部を操作するとともに他方の手先によって直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方の円形調整用摘子を操作し、それにより、炭酸ガス混合化粧水を噴霧する美顔器において、使用時にガス通路の炭酸ガスの噴出、停止、更には噴出調整をボンベを直視することなく軽快に行えるようにしたものである点を考慮して検討する。

(相違点1について)
甲第3号証には、携帯用トーチにおいて、全体の形状が上下に細長く形成され、上端の小径部と、上端の小径部の装着端に設けられる封板とを有する燃性ガスボンベ4が、ボンベホルダ2pに取替え可能に螺着されることが記載されている(上記1(2)欄の甲第3号証発明を参照。)。同様に、甲第4号証には、携帯用トーチにおいて、全体の形状が上下に細長く形成され、上端の小径部と、上端の小径部の装着端に設けられる封板とを有する燃性ガスボンベ30が、ボンベホルダ52に取替え可能に螺着されることが記載されている(上記1(3)欄の甲第4号証発明を参照。)。
よって甲第3号証及び甲第4号証には、携帯用トーチにおける、上端噴出口頭部と、上端噴出口頭部に形成されるネジと、上端噴出口頭部に設けられる封印膜とを有する燃焼ガスボンベが記載されている。
また、携帯用トーチ以外の技術分野においても、上端噴出口頭部と、上端噴出口頭部に形成されるネジと、上端噴出口頭部に設けられる封印膜とを有するガスボンベは広く知られている構造であると認められる。
したがって、甲第2号証発明に甲第3号証発明又は甲第4号証発明を適用し、甲第2号証発明の炭酸ガス供給用ボンベを、上端噴出口頭部と、上端噴出口頭部に形成されるネジと、上端噴出口頭部に設けられる封印膜とを有するものとすること、すなわち、甲第2号証発明において本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項を有するものとすることは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

(相違点2について)
甲第3号証には、携帯用トーチの収納ケース1について、(ア)下開口であること、(イ)燃性ガスボンベ4が螺着されるボンベホルダ2pと支燃性ガスボンベ5が螺着されるボンベホルダ3pとを備え、燃性ガスボンベ4をボンベホルダ2pに螺着した際、透孔2jを有する開栓針2kがその燃性ガスボンベ4の封板を貫通して燃性ガスボンベ4からのガスが前記透孔2jを介して流入される一次側流路2i及び二次側流路2tが形成され、また、支燃性ガスボンベ5をボンベホルダ3pに螺着した際、透孔3jを有する開栓針3kがその支燃性ガスボンベ5の封板を貫通して支燃性ガスボンベ5からのガスが前記透孔3jを介して流入される一次側流路3i及び二次側流路3tが形成されるものであること、(ウ)燃焼ガスを管6の他端部に供給するとともに支燃性ガスを管7の他端部に供給するものであることが記載されている(上記1(2)欄の甲第3号証発明を参照。)。
同様に、甲第4号証には、携帯用トーチの収納ケース25について、(ア’)下開口であること、(イ’)燃性ガスボンベ30が螺着されるボンベホルダ52と、支燃性ガスボンベ31が螺着されるボンベホルダ52とを備え、燃性ガスボンベ30をボンベホルダ52に螺着した際、透孔49aを有する開栓針49がその燃性ガスボンベ30の封板を貫通して燃性ガスボンベ30からのガスが前記透孔49aを介して流入される、一次側流路47a及び流体室54が形成され、また、支燃性ガスボンベ31をボンベホルダ52に螺着した際、透孔49aを有する開栓針49がその支燃性ガスボンベ31の封板を貫通して支燃性ガスボンベ31からのガスが前記透孔49aを介して流入される、一次側流路47a及び流体室54が形成されるものであること、(ウ’)燃性ガスボンベ30と支燃性ガスボンベ31とから一対の管23の他端部にそれぞれ燃性ガスと支燃性ガスとを供給するものであることが記載されている(上記1(3)欄の甲第4号証発明を参照。)。
よって、甲第3号証及び甲第4号証には、携帯用トーチにおいて、下開口であり、その上側筒体内には、燃焼ガスボンベ及び支燃性ガスボンベのネジがそれぞれのガスボンベを取替え可能に捻じ込まれるネジ孔が形成され、それぞれのボンベのネジをネジ孔に捻じ込んだ際、それぞれのボンベの封印膜を貫通してそれぞれのボンベからの噴出ガスを導くガス流通路が形成され、可撓性ホースの他端部に供給する収納ケースを備えることが記載されている。
また、携帯用トーチ以外の技術分野においても、ガスボンベが直接目に触れない様に工夫することは広く知られていることと認められる。
したがって、甲第2号証発明に甲第3号証発明又は甲第4号証発明を適用し、甲第2号証発明の上部構造物を、上側筒体であって、その上側筒体は、下開口であり、その上側筒体内には、炭酸ガス供給用ボンベのネジが炭酸ガス供給用ボンベを取替え可能に捻じ込まれるネジ孔が形成され、炭酸ガス供給用ボンベのネジをネジ孔に捻じ込んだ際、その炭酸ガス供給用ボンベの封印膜を貫通して炭酸ガス供給用ボンベからの噴出ガスを導くガス流通路が形成され、可撓性ホースの他端部に供給する上側筒体とすること、すなわち、甲第2号証発明において本件特許発明1の相違点2に係る発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

(相違点3について)
甲第3号証には、携帯用トーチの蓋体1dについて、上開口であり、収納ケース1の下端開口縁と着脱自在であり、収納ケース1の前記ボンベホルダ2pとボンベホルダ3pとのそれぞれに燃性ガスボンベ4と支燃性ガスボンベ5を螺着した状態では、収納ケース1とともに、燃性ガスボンベ4及び支燃性ガスボンベ5を収納するものとすることが記載されている(上記1(2)欄の甲第3号証発明を参照。)。
同様に、甲第4号証には、携帯用トーチの底ケース26について、上開口であり、収納ケース25の下端開口縁と着脱自在であり、収納ケース25の2つの前記ボンベホルダ52のそれぞれに燃性ガスボンベ30と支燃性ガスボンベ31を螺着した状態では、燃性ガスボンベ30及び支燃性ガスボンベ31を収納するものとすることが記載されている(上記1(3)欄の甲第4号証発明を参照。)。
よって、甲第3号証及び甲第4号証には、携帯用トーチにおいて、上開口であり、収納ケースの下端開口縁と着脱自在であり、収納ケースの2つのボンベホルダのそれぞれに燃性ガスボンベと支燃性ガスボンベを螺着した状態では、収納ケースとともに、燃性ガスボンベ4及び支燃性ガスボンベ5を収納する部材を備えることが記載されている。
また、上記したとおり、携帯用トーチ以外の技術分野においても、ガスボンベが直接目に触れない様に工夫することは広く知られていることと認められる。
したがって、甲第2号証発明に甲第3号証発明又は甲第4号証発明を適用し、甲第2号証発明のボンベ支持筒を、上開口であり、上側筒体の下端開口縁と着脱自在であって、上側筒体の前記ネジ孔に炭酸ガス供給用ボンベのネジを捻じ込んだ状態では上側筒体とともに炭酸ガス供給用ボンベの上端噴出口頭部を隠蔽して炭酸ガス供給用ボンベを収納する下側筒体とすること、すなわち、甲第2号証発明において本件特許発明1の相違点3に係る発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

(相違点4について)
最初に、本件特許発明1の直立型ボンベ収納ボックスについて検討する。
上記(2-2-1)欄に記載したとおり、本件特許発明1は、一方の手先によってスプレー本体の操作部を操作するとともに他方の手先によって直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方の円形調整用摘子を操作し、それにより、炭酸ガス混合化粧水を噴霧する美顔器において、使用時にガス通路の炭酸ガスの噴出、停止、更には噴出調整をボンベを直視することなく軽快に行えるようにしたものである。
したがって、本件特許発明1の直立型ボンベ収納ボックス(下線を付与した。)は、単に直立できるようなボンベ収納ボックスではなく、使用時において直立型であるボンベ収納ボックスを意味すると認められる。

次に、甲第3号証発明の収納ケース1と蓋体1dとからなるもの、及び、甲第4号証発明の収納ケース25と底ケース26とからなるものは、本件特許発明1の直立型ボンベ収納ボックスに対応するものと認められるので、これらが使用時において直立型であるといえるかどうか検討する。

まず、甲第4号証発明について検討する。
甲第4号証には、上記「1(3)甲第4号証」の(3-6)及び(3-8)に記載したとおり記載されている。
したがって、甲第4号証発明の収納ケース25と底ケース26とからなるものは、使用時において、水平面に対し傾斜しているものである。
よって、甲第4号証発明の収納ケース25と底ケース26とからなるものは、使用時において直立型であるといえない。

次に、甲第3号証発明について検討する。
甲第3号証には、携帯用トーチの使用時、収納ケース1と蓋体1dとからなるものを直立させるとの記載はない。
一方、甲第4号証や乙第4号証(「NTGミニトーチNT-PRO 取扱説明書」)の記載をみると、携帯用トーチの使用時、ケース部分を水平面に対し傾斜させることが行われていると認められる。
そうすると、甲第3号証には、上記「1(2)甲第3号証」の(2-9)欄に記載した形状の収納ケース1が記載されているから、甲第3号証発明は、その使用時、蓋体1dが外されて、甲第4号証や乙第4号証の携帯用トーチのように、収納ケース1を水平面に対し傾斜させるものであることも否定できない。
また、甲第3号証発明の携帯用トーチのような発火装置において、ガスボンベを直立させ不安定状態にして使用することは技術的に考えられないし、また、甲第3号証発明の収納ケース1と蓋体1dとからなるものがガスボンベを安定して直立させる構造のものであるともいえない。
よって、甲第3号証発明の収納ケース1と蓋体1dとからなるものは、使用時において直立型であるといえない。

したがって、甲第2号証発明に、甲第3号証発明の携帯用トーチに係る収納ケース1と蓋体1dとからなるものを適用しても、また、甲第4号証発明の携帯用トーチに係る収納ケース25と底ケース26とからなるものを適用しても、直立型ボンベ収納ボックスを有するものになるとは認められない。
また、上記(2-2-1)欄で検討したとおり、直立型ボンベ収納ボックスが使用時において直立であることは、本件特許発明1がその効果を奏するために必須の構成であることも明らかである。
よって、甲第2号証発明において本件特許発明1の相違点4に係る発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得る程度の事項とはいえない。

(相違点5について)
上記(2-2-1)欄に記載したとおり、本件特許発明1は、従来、スプレー本体に設けられていた操作部と円形調整用摘子について、操作部を従来と同様にスプレー本体に設けられたものとするとともに、円形調整用摘子をスプレー本体に代えて直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方に設けられたものとしたものである。

そこで、甲第2号証発明の、操作部及び円形調整用摘子の位置(双方ともにスプレー本体に設けられている。)のうち、円形調整用摘子の位置のみをボンベ側に設けるようにすることは、甲第3号証または甲第4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得る程度のものといえるかどうかみてみる。

甲第3号証には、携帯用トーチに関し、燃性ガスと支燃性ガスとのそれぞれについて、(ア)従来は、ガスボンベにガス調圧機構を装着するとともにトーチに流量調整機構を設ける構造であり、微細な火焔を安定に形成することが難しい、トーチの操作性が損なわれるといった問題を有していたこと、(イ)甲第3号証に記載された発明は、ガスボンベからガスを、流量調整が可能な調圧機構を介してトーチ部に、遮断および圧の調整による流量の制御をして供給するものであり、調圧機構の調圧ダイヤルのみを操作することで微細な火焔を安定に形成することができる、トーチ部に把持の障害となる余分な機構などを設ける必要がなく操作性が向上されるとの効果を奏することが記載されている(上記1(2)の(2-3)欄参照。)。
そして、甲第3号証には、調圧機構の調圧ダイヤル2r及び調圧ダイヤル3rを、収納ケース1の上方で操作可能とすることが記載されている(上記1(2)の甲第3号証発明を参照。)。
したがって、甲第3号証の調圧ダイヤル2rと調圧ダイヤル3rとは、いずれも燃性ガスと支燃性ガスとのそれぞれについて、従来、ガスボンベとトーチ部とに別々に設けられていた調圧機構と流量調整機構に代えて、両方の機構を統合した1つの流量調整可能な調圧機構をガスボンベの収納ケース1の上方で操作可能としたものと認められる。
そして、甲第3号証の調圧ダイヤル2r(または調圧ダイヤル3r)は、甲第2号証発明の操作部の機能(吹き付けるか否かの操作)と円形調整用摘子の機能(ガスの噴出量、噴出度の調整)の双方を有するものと認められる。
そうすると、甲第3号証のトーチ部と収納ケースがそれぞれ甲第2号証発明のスプレー本体と(上部構造物とボンベ支持筒とを備えた)炭酸ガス供給用ボンベBとに対応するとしてみて、甲第2号証発明に甲第3号証発明を適用しても、甲第2号証発明の操作部と円形調整用摘子の双方が炭酸ガス供給用ボンベBに設けられた構造が得られることになるから、本件特許発明1の相違点5の構成に至らない。

甲第4号証には、トーチ部がガス流量調整機構を有していない携帯用トーチに関し、調圧機構の小型化や構造の簡易化を図るものであることが記載されている(上記1(3)の(3-2)欄参照。)。
そして、甲第4号証には、調圧機構41と調圧機構42との2つの調圧ダイヤル35を、収納ケース25の上方で操作可能とすることが記載されている(上記1(3)の甲第4号証発明を参照。)
したがって、甲第4号証の2つの調圧ダイヤル35は、燃性ガスと支燃性ガスとのそれぞれについて、ガスの流量調整をトーチ部にガス流量調整機構を有することなく1つのガスボンベの収納ケース25の上方で操作可能としたものと認められる。
そして、甲第4号証の調圧ダイヤル35は、甲第2号証発明の操作部の機能(吹き付けるか否かの操作)と円形調整用摘子の機能(ガスの噴出量、噴出度の調整)の双方を有するものと認められる。
そうすると、甲第4号証のトーチ部と収納ケースがそれぞれ甲第2号証発明のスプレー本体と(上部構造物とボンベ支持筒とを備えた)炭酸ガス供給用ボンベBとに対応するとしてみて、甲第2号証発明に甲第4号証発明を適用しても、甲第2号証発明の操作部と円形調整用摘子の双方が炭酸ガス供給用ボンベBに設けられた構造が得られることになるから、本件特許発明1の相違点5の構成に至らない。

以上のとおりであるから、甲第2号証発明の、操作部と円形調整用摘子の位置に関し、「操作部」が「スプレー本体Sに設けられ」るとともに、円形調整用摘子17が「直立型ボンベ収納ボックスXの上側筒体1の上方で操作可能」なように設けられているものとすることは、甲第3号証または甲第4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得る程度のものとはいえない。
よって、甲第2号証発明において本件特許発明1の相違点5に係る発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得る程度の事項とはいえない。

(相違点6について)
上記(2-2-1)欄に記載したとおり、本件特許発明1は、従来、円形調整用摘子について、スプレー本体の後方でスプレー本体の導管の軸と垂直な面で回転操作されるような回転方向でスプレー本体に設けられたものに代えて直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方で水平操作されるような回転方向に設けられたものとしたものである。

そこで、甲第2号証発明の、スプレー本体の後方でスプレー本体の導管の軸と垂直な面で回転操作されるような回転方向でスプレー本体に設けられた円形調整用摘子を、回転方向及び機能について、直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方で水平操作されるような回転方向に設けられたものとすることは、甲第3号証または甲第4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得る程度のものといえるかどうかみてみる。

甲第3号証には、収納ケース1の上方で操作可能であり、また、その回転によってガスボンベからの一次側流路及び二次側流路を介するガスの停止及び調整する調圧ダイヤル2r(または調圧ダイヤル3r)が記載されている(上記1(2)の甲第3号証発明を参照。)。
ところで、上記「(相違点4について)」に記載したとおり、甲第3号証に記載された収納ケース1と蓋体1dとからなるものは使用時において直立型ではない。
したがって、甲第3号証には、調圧ダイヤル2r(または調圧ダイヤル3r)が、直立型の収納ケース1と蓋体1dとからなるものの上方で水平操作されることも、あるいは、調圧ダイヤル2r(または調圧ダイヤル3r)それ自体が水平操作されるような回転方向に設けられることも開示されているといえない。
よって、甲第3号証の調圧ダイヤル2r(または調圧ダイヤル3r)と収納ケースがそれぞれ甲第2号証発明の円形調整用摘子と(上部構造物とボンベ支持筒とを備えた)炭酸ガス供給用ボンベBとに対応するとしてみて、甲第2号証発明に甲第3号証発明を適用しても、甲第2号証発明の調圧ダイヤル2r(または調圧ダイヤル3r)は、スプレー本体の後方でスプレー本体の導管の軸と垂直な面で回転操作されるような回転方向のものに代えて、直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方で水平操作されるような回転方向のものになるといえないから、本件特許発明1の相違点6の構成に至らない。

甲第4号証には、収納ケース25の上方で操作可能であり、また、その回転によって一次側流路及び流体室を介するガスの停止及び調整する調圧ダイヤル35が記載されている(上記1(3)の甲第4号証発明を参照。)。
ところで、上記「(相違点4について)」に記載したとおり、甲第4号証に記載された収納ケース25と底ケース26とからなるものも、甲第3号証と同様に使用時において直立型ではない。
したがって、甲第4号証には、甲第3号証と同様に、調圧ダイヤル35が直立型の収納ケース25と底ケース26とからなるものの上方で水平操作されることも、あるいは、調圧ダイヤル35自体が水平操作されることも開示されているといえない。
よって、甲第4号証の調圧ダイヤル35と収納ケースがそれぞれ甲第2号証発明の円形調整用摘子と(上部構造物とボンベ支持筒とを備えた)炭酸ガス供給用ボンベBとに対応するとしてみて、甲第2号証発明に甲第4号証発明を適用しても、甲第3号証と同様に、甲第2号証発明の調圧ダイヤル2rは、スプレー本体の後方でスプレー本体の導管の軸と垂直な面で回転操作されるような回転方向のものに代えて、直立型ボンベ収納ボックスの上側筒体の上方で水平操作されるような回転方向のものになるといえないから、本件特許発明1の相違点6の構成に至らない。

以上のとおりであるから、甲第2号証発明の、一方向および反対方向に回転可能な円形調整用摘子の回転方向及び機能に関し、直立型ボンベ収納ボックスXの上側筒体の上方で「水平」操作されるような回転方向であり、その上側筒体において炭酸供給用ボンベからのガス流通路を介する炭酸ガスの噴出調整する機能のものとすることは甲第3号証または甲第4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得る程度のものとはいえない。
よって、甲第2号証発明において本件特許発明1の相違点6に係る発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得る程度の事項とはいえない。

(2-2-3)小括
以上のとおりであるから、甲第2号証発明において、相違点4?6に係る本件特許発明1の発明特定事項を有するものとすることは当業者が容易になし得るとするものとすることはできない。
一方、本件特許発明1は、相違点4?6に係る発明特定事項を有することにより、炭酸ガス混合化粧水を噴霧する美顔器において、使用時にガス通路の炭酸ガスの噴出、停止、更には噴出調整をボンベを直視することなく軽快に行えるという格別顕著な効果を奏するものと認められる。
よって、本件特許発明1は、甲第2号証発明及び甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3 本件特許発明2?6について
本件特許発明2?6は、本件特許発明1の構成をその構成の一部とするものであるから、上記した「2 本件特許発明1について」と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 小括
よって、請求人の主張する理由によっては、本件特許発明1?6は当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

V まとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由1、理由2及び提出した証拠方法によっては本件特許発明1?6についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人らが負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-25 
結審通知日 2016-08-30 
審決日 2016-09-12 
出願番号 特願2011-138980(P2011-138980)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 熊倉 強
高木 彰
登録日 2013-08-02 
登録番号 特許第5329608号(P5329608)
発明の名称 美顔器  
代理人 小林 徳夫  
代理人 西教 圭一郎  

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