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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B62D 審判 全部申し立て 特29条の2 B62D |
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管理番号 | 1336996 |
異議申立番号 | 異議2017-700304 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-03-27 |
確定日 | 2017-12-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5998088号発明「電動パワーステアリング装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5998088号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。 特許第5998088号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5998088号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成25年3月22日に特許出願され、平成28年9月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 森哲明(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年6月19日付けで取消理由を通知し、同年8月16日に意見書の提出及び訂正の請求があり、同年10月6日に特許異議申立人から意見書の提出があったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 平成29年8月16日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のとおりである。 なお、下線部は訂正箇所を示す。 ・訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「・・・減速機と、前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、・・・ ボルトと、を備えた電動パワーステアリングであって、」 とあるのを、 「・・・減速機と、前記電動モータの前記減速機と反対側に設けられ、前記電動モータを駆動制御する電子コントローラユニットと、前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、・・・ボルトと、を備え、前記電動モータ及び前記電子コントローラユニットが前記第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリングであって、」 に訂正する。 ・訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「・・・減速機と、前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、・・・嵌合連結手段と、を備えた電動パワーステアリングであって、」 とあるのを、 「・・・減速機と、前記電動モータの前記減速機と反対側に設けられ、前記電動モータを駆動制御する電子コントローラユニットと、前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、・・・嵌合連結手段と、を備え、前記電動モータ及び前記電子コントローラユニットが前記第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリングであって、」 に訂正する。 2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1及び2は、訂正前の請求項1及び2に係る発明の「電動モータ」に「電子コントロールユニット」が設けられていることを特定し、電動モータと電子コントローラユニットが設けられた電動モータを第2ハウジングに支持する構成を特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。 本件特許の願書に添付した明細書の段落【0018】には、 「前記電子コントロールユニット4と前記電動モータ5とは、図1?図4に示すように一体的に構成されており、・・・そして、電動モータ5の外端部に電子コントロールユニット4が直列に配設され、・・・このようにして、電子コントロールユニット4と電動モータ5とが一体に構成されてなるモータユニットは、後述する第2ハウジング20に、前記複数のボルトT0をもっていわゆる片持ち状態で支持固定されている。」 との記載があり、本件特許の願書に添付した図面である【図1】?【図3】を併せみれば、電動モータ5の減速機と反対側に電子コントローラユニット4が設けられ、電子コントロールユニット4と電動モータ5とが一体に構成されて第2ハウジング20に片持ち状態に支持されていることが示されているので、上記訂正事項1及び2は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものといえ、新規事項の追加に該当しない。 訂正事項1及び2は、訂正前の請求項1及び2に係る発明に発明特定事項を付加するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1、2について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、それぞれ次のとおりである。 「【請求項1】 ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達するラック軸と、該ラック軸に噛合するピニオン軸とから構成される操舵機構と、 前記操舵機構に操舵力を付与する電動モータと、 前記電動モータの出力軸に連結されたウォームシャフトと、前記ピニオン軸の外周に一体回転可能に設けられ、前記ウォームシャフトに噛合して前記電動モータの回転を減速して前記ピニオン軸に伝達するウォームホイールとから構成される減速機と、 前記電動モータの前記減速機と反対側に設けられ、前記電動モータを駆動制御する電子コントローラユニットと、 前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、 前記ウォームシャフトを収容するシャフト収容部と、前記ウォームホイールを収容するホイール収容部とを有し、前記ホイール収容部が前記ピニオン収容部と相互に連通するかたちで前記第1ハウジングに締結される第2ハウジングと、 前記第1ハウジングにおいて前記ウォームホイールの円周方向の3箇所に設定され、前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と対向するかたちで前記第2ハウジングに設定され、前記第1ハウジングに対する前記第2ハウジングの締結に供する第2ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と前記第2ハウジング側締結部とを締結する3つのボルトと、 を備え、前記電動モータ及び前記電子コントローラユニットが前記第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリングであって、 前記ピニオン軸の軸線を第1軸線とすると共に前記ウォームシャフトの軸線を第2軸線とし、前記第1軸線及び第2軸線の両軸線に平行であって且つ前記第2軸線上を通る仮想面を境界基準面としたとき、 前記各3つの締結部のうち1つが前記境界基準面よりも前記ウォームホイール側の領域において設定され、残余の2つが前記ウォームホイールの反対側の領域に設定され、 前記ラック軸が前記第1軸線よりも前記残余の2つの締結部が設けられる側に配置されることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 【請求項2】 ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達するラック軸と、該ラック軸に噛合するピニオン軸とから構成される操舵機構と、 前記操舵機構に操舵力を付与する電動モータと、 前記電動モータの出力軸に連結されたウォームシャフトと、前記ピニオン軸の外周に一体回転可能に設けられ、前記ウォームシャフトに噛合して前記電動モータの回転を減速して前記ピニオン軸に伝達するウォームホイールとから構成される減速機と、 前記電動モータの前記減速機と反対側に設けられ、前記電動モータを駆動制御する電子コントローラユニットと、 前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、 前記ウォームシャフトを収容するシャフト収容部と、前記ウォームホイールを収容するホイール収容部とを有し、前記ホイール収容部が前記ピニオン収容部と相互に連通するかたちで前記第1ハウジングに締結される第2ハウジングと、 前記第1ハウジングにおいて前記ウォームホイールの円周方向の3箇所に設定され、前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と対向するかたちで前記第2ハウジングに設定され、前記第1ハウジングに対する前記第2ハウジングの締結に供する第2ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と前記第2ハウジング側締結部とを締結する3つのボルトと、 前記ピニオン軸の外周域において前記第1ハウジングに設けられる第1ハウジング側嵌合部と前記第2ハウジングに設けられる第2ハウジング側嵌合部とを相互に凹凸嵌合させてなる嵌合連結手段と、 を備え、前記電動モータ及び前記電子コントローラユニットが前記第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリングであって、 前記ピニオン軸の軸線を第1軸線とすると共に前記ウォームシャフトの軸線を第2軸線とし、前記第1軸線及び第2軸線の両軸線に平行であって且つ前記第2軸線上を通る仮想面を境界基準面としたとき、 前記各3つの締結部のうち1つが前記境界基準面よりも前記第1嵌合部及び第2嵌合部側の領域において設定され、残余の2つが前記第1嵌合部及び第2嵌合部の反対側の領域に設定され、 前記ラック軸が前記第1軸線よりも前記残余の2つの締結部が設けられる側に配置されることを特徴とする電動パワーステアリング装置。」 2.取消理由の概要 訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して平成29年6月19日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 [取消理由1]本件特許の請求項1、2に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の先の特許出願1の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 [取消理由2]本件特許の請求項1、2に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 先の特許出願1:特願2012-100420号(特開2013-226940号 参照) 引用文献1:特開2013-1257号公報 引用文献2:特開2011-223807号公報 引用文献3:特開2003-324895号公報 第4 取消理由1について 1.先の特許出願1の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項及び引用発明1 先の特許出願1の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 なお、下線は当審で付したものである。以下同様。 (1) 「【0022】 図1?図3に示した電動パワーステアリング装置100は、不図示のブラケットにより車体フレーム等に固定されるギヤハウジング10を有する。ギヤハウジング10は第1?第4のハウジング11?14の組立体である。 【0023】 電動パワーステアリング装置100は、図3に示す如く、不図示のステアリングホイールに連結される入力軸21にトーションバー22を介して連結されるピニオン軸23を有する。また、電動パワーステアリング装置100は、ピニオン軸23のピニオン23Aをラック軸24のラック24Aに噛合いさせる。これにより、ステアリングホイールに加えた操舵トルクに従ってラック軸24をギヤハウジング10に対し左右直線動可能に移動させる。尚、入力軸21はギヤハウジング10の第4ハウジング14に設けた軸受21Jにより枢支され、ピニオン軸23はギヤハウジング10の第1ハウジング11に設けた軸受23Jにより枢支される。 【0024】 電動パワーステアリング装置100は、ギヤハウジング10の第1ハウジング11内でラック軸24を挟んでピニオン軸23と相対する部分に設けたシリンダ部15にラックガイド25を挿填し、シリンダ部15に螺着されるキャップ25Aにより背面支持されるばね25Bによりラックガイド25をラック軸24の側に弾発する。ラックガイド25はラック軸24のラック24Aをピニオン軸23のピニオン23Aに押付けるとともに、ラック軸24におけるラック24Aの背面を摺動自在に支持する。尚、ラック軸24はギヤハウジング10の第1ハウジング11に設けた不図示の軸受に摺動自在に支持される。 【0025】 電動パワーステアリング装置100は、ギヤハウジング10の第1ギヤハウジング11から突き出る両端部に設けたラックエンド26のボール継手27(図4)を介して左右のタイロッド28を連結し、それらのタイロッド28はナックルアームを介して被操舵部であるタイヤに連結されている。」 (2) 「【0029】 電動パワーステアリング装置100は、ギヤハウジング10の第3ハウジング13の内部に操舵トルク検出装置29を設けている。操舵トルク検出装置29は、運転者がステアリングホイールに加えた操舵トルクが入力軸21に作用し、トーションバー22の弾性ねじり変形により、入力軸21とピニオン軸23の間に生ずる回転方向の変位に基づき、上記操舵トルクを検出できる。 【0030】 電動パワーステアリング装置100は、ギヤハウジング10の第2ハウジング12に電動モータ30のモータケース31が取付けられるとともに、電動モータ30の出力が歯車伝達装置32(後述するウォームギヤ33とウォームホイール34)を介して伝えられるピニオン軸23がギヤハウジング10の第2ハウジング12に設けた軸受23Kにより枢支されている。 【0031】 本実施例において、歯車伝達装置32は電動モータ30の出力軸に連結されるウォームギヤ33(不図示)と、このウォームギヤ33に噛合ってピニオン軸23に固定されるウォームホイール34とからなる。 【0032】 電動パワーステアリング装置100は、操舵トルク検出装置29の検出結果に応じて駆動される電動モータ30の出力トルクが歯車伝達装置32(ウォームギヤ33とウォームホイール34)、ピニオン軸23を介してラック軸24に伝えられ、電動モータ30の出力トルクを前述のステアリングホイールによるラック軸24の移動に対するアシスト力として付与する。」 (3) 【図1】及び【図3】から、 ・電動モータ30は、第2ハウジング12に片持ち状態に支持されること、 ・第1ハウジング11は、ラック軸24の少なくとも一部と、ピニオン軸23の少なくとも一部を収容すること、 ・第2ハウジング12は、ウォームギヤ33と、ウォームホイール34を収容し、ウォームホイール34を収容した部分がピニオン軸23の少なくとも一部を収容した部分と相互に連通するかたちで第1ハウジング11に締結されること、 が看取できる。 (4) 【図1】?【図3】から、 ・第1ハウジング11と第2ハウジング12を少なくとも3つのボルト(特許異議申立書に添付された甲第1号証の参考図の図1?3に符号B1,B2,B3で示したボルト)で締結すること、 ・第1ハウジング11及び第2ハウジング12のそれぞれに、少なくとも3つのボルト(B1,B2,B3)が締結される第1締結部(甲第1号証の参考図の図1?3に符号F1,F2,F3で示したもの)及び第2締結部(甲第1号証の参考図の図1?3に符号S1,S2,S3で示したもの)が設けられること、第1締結部(F1,F2,F3)は、ウォームホイール34の円周方向の少なくとも3箇所に設けられ、第2ハウジング12に対する第1ハウジング11の締結に供するものであること、及び第2締結部(S1,S2,S3)は、第1締結部(F1,F2,F3)と対向するかたちで第2ハウジング12に設けられ、第1ハウジング11に対する第2ハウジング12の締結に供するものであること(以上、特許異議申立書20頁1?末行を参照)、 ・ピニオン軸23の軸線をA1とし、ウォームギヤ33の軸線をA2とし、両軸線に平行であって且つ軸線A2上を通る仮想面として境界基準面をBLとしたとき、少なくとも3つの締結部(第1締結部F1,F2,F3及び第2締結部S1,S2,S3)のうち、1つ(ボルトB2が締結される第1締結部F2及び第2締結部S2)が境界基準面(BL)よりもウォームホイール34側の領域に設定され、残余の2つ(ボルトB1及びB3が締結される第1締結部F1,F3及び第2締結部S1,S3)が境界基準面(BL)よりもウォームホイール34の反対側の領域に設定されること(以上、特許異議申立書21頁10行?22頁13行を参照)、 ・ラック軸24がピニオン軸23の軸線A1よりも残余の2つの締結部(ボルトB1及びB3が締結される第1締結部F1,F3及び第2締結部SI,S3)が設けられる側に配置されること(以上、特許異議申立書22頁16行?23頁3行を参照)、 ・ピニオン軸23の外周域において第1ハウジング11に設けられる凹部と第2ハウジング12に設けられる凸部とが相互に凹凸嵌合して嵌合連結手段を構成していること(以上、特許異議申立書23頁17?19行を参照)、 が看取できる。 上記(1)?(4)から、先の特許出願1の当初明細書等には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明1〕 「ステアリングホイールに加えた操舵トルクに従って左右直線動可能に移動するラック軸24と、ステアリングホイールに連結された、ラック軸24に噛合うピニオン軸23と、 運転者がステアリングホイールに加えた操舵トルクに応じて駆動される電動モータ30の出力トルクが、電動モータ30の出力軸に連結されるウォームギヤ33と、このウォームギヤ33に噛合ってピニオン軸23に固定されるウォームホイール34とからなる歯車伝達装置32、ピニオン軸23を介してラック軸24に伝えられ、 ラック軸24の少なくとも一部と、ピニオン軸23の少なくとも一部を収容する第1ハウジング11と、 ウォームギヤ33と、ウォームホイール34を収容し、ウォームホイール34を収容した部分がピニオン軸23の少なくとも一部を収容した部分と相互に連通するかたちで第1ハウジング11に締結される第2ハウジング12と、 第1ハウジング11においてウォームホイール34の円周方向の少なくとも3箇所に設けられ、第2ハウジング12に対する第1ハウジング11の締結に供する第1締結部と、 第1締結部と対向するかたちで第2ハウジング12に設けられ、第1ハウジング11に対する第2ハウジング12の締結に供する第2締結部と、 第1締結部と第2締結部とを締結する少なくとも3つのボルトと、 ピニオン軸23の外周域において第1ハウジング11に設けられる凹部と第2ハウジング12に設けられる凸部とが相互に凹凸嵌合した嵌合連結手段と、 を備え、前記電動モータ30が前記第2ハウジング12に片持ち状態に支持された電動パワーステアリング装置100であって、 ピニオン軸23の軸線とウォームギヤ33の軸線の両軸線に平行であって、且つウォームギヤ33の軸線上を通る仮想面を境界基準面としたとき、 第1締結部及び第2締結部の少なくとも3つの締結部のうち、1つが境界基準面よりもウォームホイール34側であり、嵌合連結手段側の領域に設定され、残余の2つが境界基準面よりもウォームホイール34の反対側であり、嵌合連結手段の反対側の領域に設定され、 ラック軸24がピニオン軸23の軸線よりも残余の2つの締結部が設けられる側に配置される、電動パワーステアリング装置100。」 2.対比・判断 (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 後者の「ステアリングホイールに加えた操舵トルクに従って左右直線動可能に移動するラック軸24」は、その機能からみて、前者の「ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達するラック軸」に相当する。 後者の「ラック軸24に噛合うピニオン軸23」は、前者の「ラック軸に噛合するピニオン軸」に相当する。 後者の「ラック軸24」と「ラック軸24に噛合うピニオン軸23」とを合わせたものは、前者の「ラック軸」と「ピニオン軸」とから構成される「操舵機構」に相当する。 後者の「運転者がステアリングホイールに加えた操舵トルクに応じて駆動される電動モータ30」は、前者の「操舵機構に操舵力を付与する電動モータ」に相当する。 後者の「電動モータ30の出力軸に連結されるウォームギヤ33」は、前者の「電動モータの出力軸に連結されたウォームシャフト」に相当する。 後者の「ウォームギヤ33に噛合ってピニオン軸23に固定されるウォームホイール34」は、前者の「ピニオン軸の外周に一体回転可能に設けられ、ウォームシャフトに噛合して電動モータの回転を減速してピニオン軸に伝達するウォームホイール」に相当する。 後者の「ウォームギヤ33」と「ウォームホイール34」とからなる「歯車伝達装置32」は、前者の「ウォームシャフト」と「ウォームホイール」とから構成される「減速機」に相当する。 後者の「ラック軸24の少なくとも一部と、ピニオン軸23の少なくとも一部を収容する第1ハウジング11」は、前者の「ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジング」に相当する。 後者の「ウォームギヤ33と、ウォームホイール34を収容し、ウォームホイール34を収容した部分がピニオン軸23の少なくとも一部を収容した部分と相互に連通するかたちで第1ハウジング11に締結される第2ハウジング12」は、前者の「ウォームシャフトを収容するシャフト収容部と、ウォームホイールを収容するホイール収容部とを有し、ホイール収容部がピニオン収容部と相互に連通するかたちで第1ハウジングに締結される第2ハウジング」に相当する。 後者の「第1ハウジング11においてウォームホイール34の円周方向の少なくとも3箇所に設けられ、第2ハウジング12に対する第1ハウジング11の締結に供する第1締結部」は、前者の「第1ハウジングにおいてウォームホイールの円周方向の3箇所に設定され、第2ハウジングに対する第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部」と、「第1ハウジングにおいてウォームホイールの円周方向の少なくとも3箇所に設定され、第2ハウジングに対する第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部」である限りにおいて一致する。 後者の「第1締結部と対向するかたちで第2ハウジング12に設けられ、第1ハウジング11に対する第2ハウジング12の締結に供する第2締結部」は、前者の「第1ハウジング側締結部と対向するかたちで第2ハウジングに設定され、第1ハウジングに対する第2ハウジングの締結に供する第2ハウジング側締結部」に相当する。 後者の「第1締結部と第2締結部とを締結する少なくとも3つのボルト」は、前者の「第1ハウジング側締結部と第2ハウジング側締結部とを締結する3つのボルト」と、「第1ハウジング側締結部と第2ハウジング側締結部とを締結する少なくとも3つのボルト」である限りにおいて一致する。 後者の「電動モータ30が第2ハウジング12に片持ち状態に支持された電動パワーステアリング装置100」は、前者の「電動モータ及び電子コントローラユニットが第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリング」と、「電動モータが第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリング」である限りにおいて一致する。 後者の「ピニオン軸23の軸線とウォームギヤ33の軸線の両軸線に平行であって且つウォームギヤ33の軸線上を通る仮想面を境界基準面とした」ことは、前者の「ピニオン軸の軸線を第1軸線とすると共にウォームシャフトの軸線を第2軸線とし、第1軸線及び第2軸線の両軸線に平行であって且つ第2軸線上を通る仮想面を境界基準面とした」ことに相当する。 後者の「第1締結部及び第2締結部の少なくとも3つの締結部のうち、1つが境界基準面よりもウォームホイール34側であり、嵌合連結手段側の領域に設定され、残余の2つが境界基準面よりもウォームホイール34の反対側であり、嵌合連結手段の反対側の領域に設定され」ることは、前者の「各3つの締結部のうち1つが境界基準面よりもウォームホイール側の領域において設定され、残余の2つがウォームホイールの反対側の領域に設定され」ることと、「少なくとも3つの締結部のうち1つが境界基準面よりもウォームホイール側の領域において設定され、残余の2つがウォームホイールの反対側の領域に設定され」る限りにおいて一致する。 後者の「ラック軸24がピニオン軸23の軸線よりも残余の2つの締結部が設けられる側に配置される」ことは、前者の「ラック軸が第1軸線よりも残余の2つの締結部が設けられる側に配置される」ことに相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 〔一致点1〕 「ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達するラック軸と、該ラック軸に噛合するピニオン軸とから構成される操舵機構と、 前記操舵機構に操舵力を付与する電動モータと、 前記電動モータの出力軸に連結されたウォームシャフトと、前記ピニオン軸の外周に一体回転可能に設けられ、前記ウォームシャフトに噛合して前記電動モータの回転を減速して前記ピニオン軸に伝達するウォームホイールとから構成される減速機と、 前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、 前記ウォームシャフトを収容するシャフト収容部と、前記ウォームホイールを収容するホイール収容部とを有し、前記ホイール収容部が前記ピニオン収容部と相互に連通するかたちで前記第1ハウジングに締結される第2ハウジングと、 前記第1ハウジングにおいて前記ウォームホイールの円周方向の少なくとも3箇所に設定され、前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と対向するかたちで前記第2ハウジングに設定され、前記第1ハウジングに対する前記第2ハウジングの締結に供する第2ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と前記第2ハウジング側締結部とを締結する少なくとも3つのボルトと、 を備え、前記電動モータが前記第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリングであって、 前記ピニオン軸の軸線を第1軸線とすると共に前記ウォームシャフトの軸線を第2軸線とし、前記第1軸線及び第2軸線の両軸線に平行であって且つ前記第2軸線上を通る仮想面を境界基準面としたとき、 前記少なくとも3つの締結部のうち1つが前記境界基準面よりも前記ウォームホイール側の領域において設定され、残余の2つが前記ウォームホイールの反対側の領域に設定され、 前記ラック軸が前記第1軸線よりも前記残余の2つの締結部が設けられる側に配置される電動パワーステアリング装置。」 〔相違点1〕 本件発明1は「電動モータの減速機と反対側に設けられ、電動モータを駆動制御する電子コントローラユニット」を備え、「電動モータ及び電子コントローラユニットが第2ハウジングに片持ち状態に支持され」ていると特定されるとともに、「第1ハウジング側締結部」が「3箇所」であり、「第1ハウジング側締結部と第2ハウジング側締結部とを締結する3つのボルト」と特定されているのに対して、引用発明1は、電動モータが前記のように電子コントローラユニットを備えておらず、「第1締結部」が「少なくとも3箇所に設けられ」、「第1締結部と第2締結部とを締結する少なくとも3つのボルト」であり、「3箇所」、「3つのボルト」と特定されていない点。 イ 判断 相違点1が実質的な相違点か否かについて以下検討する。 本件特許の願書に添付した明細書には次の記載がある。 「【0018】 前記電子コントロールユニット4と前記電動モータ5とは、図1?図4に示すように一体的に構成されており、・・・このようにして、電子コントロールユニット4と電動モータ5とが一体に構成されてなるモータユニットは、後述する第2ハウジング20に、前記複数のボルトT0をもっていわゆる片持ち状態で支持固定されている。」 「【0031】 そこで、まず、本実施形態では、前記両ハウジング10,20の締結箇所を前記従来よりも少ない3箇所に制限することによって、前記従来の技術的課題であった装置の大型化や重量増大を抑制しつつ、前記両ハウジング10,20の締結に供する第1、第2ハウジング側締結部11?13,21?23を上述のような配置とした、すなわち前記モータユニット自体の重量やその振動等に基づいた比較的大きな荷重が作用するシャフト収容部20a側の領域に2つのシャフト側締結部12?13,22?23を設定するようにしたことによって、数少ない限られた締結部でもって効果的に前記両ハウジング10,20を締結させることができる。」 上記段落には、電子コントローラユニット4と電動モータ5とを一体としてモータユニットを第2ハウジング20に複数のボルトT0をもっていわゆる片持ち状態で支持固定するときに、その重量やその振動等に基づいた比較的大きな荷重が作用するシャフト収容部20a側の領域に2つのシャフト側締結部12?13,22?23を設定したことによって、数少ない限られた締結部で効果的に両ハウジング10,20を締結させることができる旨記載されている。 そうすると、本件発明1は、電動パワーステアリング装置において、電子コントローラユニット4と電動モータ5とを一体としてモータユニットを前提として、第1ハウジング側締結部を3箇所としたときの各締結部の配置を特定したものといえ、上記相違点1の「電子コントローラユニット」に係る構成は本件発明1の前提構成であるので、たとえ電動パワーステアリング装置において電動モータと電子コントロールユニットとが一体に構成されることが周知であったとしても、引用発明1において上記相違点1の構成とすることが設計上の微差であるということはできない。 したがって、本件発明1は引用発明1と相違点1で相違し、両者は同一の発明であるとはいえない。 (2)本件発明2 本件発明2は、本件発明1に「ピニオン軸の外周域において前記第1ハウジングに設けられる第1ハウジング側嵌合部と第2ハウジングに設けられる第2ハウジング側嵌合部とを相互に凹凸嵌合させてなる嵌合連結手段」を追加し、「各3つの締結部」に関して、「1つが境界基準面よりもウォームホイール側」を「1つが境界基準面よりも第1嵌合部及び第2嵌合部側」とし、「残余の2つがウォームホイールの反対側」を「残余の2つが第1嵌合部及び第2嵌合部の反対側」としたものである。 そうすると、本件発明2と引用発明1とを対比すると、少なくとも上記「(1)ア」で述べた「相違点1」で相違する。 そして、上記「(1)イ」で検討したと同様に、本件発明2は、引用発明1と同一の発明であるとはいえない。 3.小括 よって、本件発明1、2は、先の特許出願1の当初明細書等に記載された発明である引用発明1と同一であるとはいえず、特許法第29条の2の規定に違反して特許を受けたということはできない。 第5 取消理由2について 1.引用文献1に記載された事項及び引用発明2 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1) 「【0011】 図1に示すパワーステアリング装置では、運転者によってステアリングホイールSWが回転操作されると、そのステアリングホイールSWの回転がステアリングシャフト1を介してステアリングホイール側ピニオン軸2に伝達されるとともに、そのステアリングホイール側ピニオン軸2の回転運動がラック軸3の直線運動に変換され、ラック軸3の両端に連結された左右の転舵輪W1,W2が転舵するようになっている。つまり、ラック軸3には、ステアリングホイール側ピニオン軸2が噛み合いするステアリングホイール側ラック歯(図示せず)が形成されており、そのステアリングホイール側ラック歯とステアリングホイール側ピニオン軸2との噛合をもって手動操舵用のステアリングホイール側ラックピニオン機構4が構成されている。」 (2) 「【0016】 他方、図1のほか図3に示すように、ラック軸3には、上述したステアリングホイール側ラック歯とは別のモータ側ラック歯3aが電動機側ラック歯として形成されており、そのモータ側ラック歯3aには、ウォーム減速機構8を介して電動機としての電動モータMに駆動されるモータ側ピニオン軸9が電動機側ピニオン軸として噛み合いしている。つまり、モータ側ラック歯3aとモータ側ピニオン軸9とをもって電動機側ラックピニオン機構であるモータ側ラックピニオン機構10が構成されている。モータ側ラックピニオン機構10の比ストロークは、電動モータMの特性やモータ側ラック歯3aの強度を考慮してステアリングホイール側ラックピニオン機構4とは異ならしめてある。 【0017】 そして、後述するECU14をもって電動モータMが駆動制御され、その電動モータMの出力軸12が回転すると、その回転がウォーム減速機構8を介してモータ側ピニオン軸9に伝達されるとともに、そのモータ側ピニオン軸9の回転がモータ側ラックピニオン機構10によって直線運動に変換され、もって電動モータMの出力が操舵アシスト力としてラック軸3へ伝達されることになる。なお、図3の符号11は、ウォーム減速機構8を収容するウォームハウジングを示している。」 (3) 【図1】及び【図3】から、 ・電動モータMは、ウォームハウジング11に片持ち状態に支持されること、 が看取でき、また、 ・ウォーム減速機構8が、電動モータMの出力軸に連結されたウォームシャフト(特許異議申立書に添付された甲第2号証の参考図の図3に符号8aで示したもの)と、モータ側ピニオン軸9の外周に一体回転可能に設けられウォームシャフトと噛合するウォームホイール(甲第2号証の参考図の図3に符号8bで示したもの)とから構成されること(特許異議申立書25頁20?26行を参照)、 ・ラック軸3の少なくとも一部を収容するラック収容部(甲第2号証の参考図の図3に符号H1で示したもの)と、モータ側ピニオン軸9の少なくとも一部を収容するピニオン収容部(甲第2号証の参考図の図3に符号H2で示したもの)とを有するラックハウジング(甲第2号証の参考図の図3に符号Hで示したもの。特許異議申立書26頁5?9行を参照)、 ・ウォームハウジング11が、ウォームシャフト(8a)を収容するシャフト収容部(甲第2号証の参考図の図3に符号11aで示したもの)と、ウォームホイール(8b)を収容するホイール収容部(甲第2号証の参考図の図3に符号11bで示したもの)とを有すること、及びウォームハウジング11とラックハウジング(H)とが、ホイール収容部(11b)とピニオン収容部(H2)とが相互に連通するかたちで締結されていること(特許異議申立書26頁12?19行を参照)、 ・ハウジング(H)とウォームハウジング11を締結する3つのボルト(甲第2号証の参考図の図1に符号B1,B2,B3で示したボルト。特許異議申立書26頁26行?27頁1行を参照)、 ・ラックハウジング(H)とウォームハウジング11のそれぞれに、3つのボルト(B1,B2,B3)が締結される第1締結部(甲第2号証の参考図の図1及び3に符号F1,F2,F3で示したもの)及び第2締結部(甲第2号証の参考図の図1及び3に符号S1,S2,S3で示したもの)が設けられること、第1締結部(F1,F2,F3)は、ウォームホイールの円周方向の少なくとも3箇所に設けられ、ウォームハウジング11に対するラックハウジング(H)の締結に供するものであること、及び第2締結部(S1,S2,S3)は、第1締結部(F1,F2,F3)と対向するかたちでウォームハウジング11に設けられ、ラックハウジング(H)に対するウォームハウジング11の締結に供するものであること(特許異議申立書27頁7?16行を参照)、 ・モータ側ピニオン軸9の軸線をA1とし、ウォームシャフト(8a)の軸線をA2とし、軸線A1及び軸線A2の両軸線に平行であって且つ軸線A2上を通る仮想面として境界基準面をBLとしたとき、各3つの第1締結部(F1,F2,F3)及び第2締結部(S1,S2,S3)の全てが境界基準面BLよりもウォームホイール(8b)側の領域に設定されていること(特許異議申立書28頁3?8行を参照)、 ・ラック軸3がモータ側ピニオン軸9の軸線(A1)よりもウォームシャフト(8a)側に配置されること(特許異議申立書28頁14?16行を参照)、 ・モータ側ピニオン軸9の外周域においてラックハウジング(H)に設けられる凹部(C)とウォームハウジング11に設けられる凸部(D)とが相互に凹凸嵌合して嵌合連結手段を構成していること(特許異議申立書34頁13?15行を参照)、 が看取できる。 上記(1)?(3)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明2〕 「ステアリングホイールSWの回転を直線運動に変換し左右の転舵輪W1,W2を転舵するラック軸3と、ラック軸3に噛み合うモータ側ピニオン軸9とから構成されるモータ側ラックピニオン機構10と、 出力が操舵アシスト力としてラック軸3へ伝達される電動モータMと、 電動モータMの出力軸に連結されたウォームシャフトと、モータ側ピニオン軸9の外周に一体回転可能に設けられウォームシャフトと噛合するウォームホイールから構成されるウォーム減速機構8と、 前記電動モータMを駆動制御するECU14と、 ラック軸3の少なくとも一部を収容するラック収容部と、モータ側ピニオン軸9の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有するラックハウジングと、 ウォームシャフトを収容するシャフト収容部と、ウォームホイールを収容するホイール収容部とを有し、ホイール収容部とピニオン収容部とが相互に連通するかたちでラックハウジングに締結されるウォームハウジング11と、 ラックハウジングにおいて、ウォームホイールの円周方向の少なくとも3箇所に設けられ、ウォームハウジング11に対するラックハウジングの締結に供する第1締結部と、 第1締結部と対向するかたちでウォームハウジング11に設けられ、ラックハウジングに対するウォームハウジング11の締結に供する第2締結部と、 第1締結部と第2締結部とを締結する少なくとも3つのボルトと、 モータ側ピニオン軸9の外周域においてラックハウジングに設けられる凹部とウォームハウジング11に設けられる凸部とが相互に凹凸嵌合した嵌合連結手段と、 を備え、前記電動モータMが前記ウォームハウジング11に片持ち状態に支持されたパワーステアリング装置であって、 モータ側ピニオン軸9の軸線とウォームシャフトの軸線の両軸線に平行であって且つウォームシャフトの軸線上を通る仮想面を境界基準面としたとき、 少なくとも3つの第1締結部及び第2締結部の全てが境界基準面BLよりもウォームホイール側の領域に設定され、 ラック軸3がモータ側ピニオン軸9の軸線よりもウォームシャフト側に配置される、パワーステアリング装置。」 2.対比・判断 (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と引用発明2とを対比する。 後者の「ラック軸3」は、ステアリングホイールSWの回転を直線運動に変換し左右の転舵輪W1,W2を転舵するものであるので、前者の「ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達するラック軸」に相当する。 後者の「モータ側ピニオン軸9」は、ラック軸3に噛み合うので、前者の「ラック軸に噛合するピニオン軸」に相当する。 前者の「操舵機構」に関して、本件特許の明細書の記載を参照すると、段落【0014】に「第1・第2の操舵機構」がある旨記載されており、「【0014】・・・電動モータ5にウォームギヤからなる減速機7を介して連係された第2のピニオン軸である第2出力軸6が車体幅方向の他方側に設けられた第2の操舵機構である第2ラック・ピニオン機構RP2を介して・・・」との記載があるので、後者の「モータ側ラックピニオン機構10」は、前者の「操舵機構」に相当する。 後者の「出力が操舵アシスト力としてラック軸3へ伝達される電動モータM」は、前者の「操舵機構に操舵力を付与する電動モータ」に相当する。 後者の「電動モータMの出力軸に連結されたウォームシャフト」は、前者の「電動モータの出力軸に連結されたウォームシャフト」に相当する。 後者の「モータ側ピニオン軸9の外周に一体回転可能に設けられウォームシャフトと噛合するウォームホイール」は、前者の「ピニオン軸の外周に一体回転可能に設けられ、ウォームシャフトに噛合して電動モータの回転を減速してピニオン軸に伝達するウォームホイール」に相当する。 後者の「ウォームシャフト」と「ウォームホイール」とから構成される「ウォーム減速機構8」は、前者の「ウォームシャフト」と「ウォームホイール」とから構成される「減速機」に相当する。 後者の「電動モータMを駆動制御するECU14」は、前者の「電動モータの減速機と反対側に設けられ、電動モータを駆動制御する電子コントローラユニット」と、「電動モータを駆動制御する電子コントローラユニット」である限りにおいて一致する。 後者の「ラック軸3の少なくとも一部を収容するラック収容部」と「モータ側ピニオン軸9の少なくとも一部を収容するピニオン収容部」とは、前者の「ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部」と「ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部」とに相当するので、後者の「ラックハウジング」は、前者の「第1ハウジング」に相当する。 後者の「ウォームシャフトを収容するシャフト収容部」と「ウォームホイールを収容するホイール収容部」とは、前者の「ウォームシャフトを収容するシャフト収容部」と「ウォームホイールを収容するホイール収容部」とに相当するので、後者の「ホイール収容部とピニオン収容部とが相互に連通するかたちでラックハウジングに締結されるウォームハウジング11」は、前者の「ホイール収容部がピニオン収容部と相互に連通するかたちで第1ハウジングに締結される第2ハウジング」に相当する。 後者の「ラックハウジングにおいて、ウォームホイールの円周方向の少なくとも3箇所に設けられ、ウォームハウジング11に対するラックハウジングの締結に供する第1締結部」は、前者の「第1ハウジングにおいてウォームホイールの円周方向の3箇所に設定され、第2ハウジングに対する第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部」と、「第1ハウジングにおいてウォームホイールの円周方向の少なくとも3箇所に設定され、第2ハウジングに対する第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部」である限りにおいて一致する。 後者の「第1締結部と対向するかたちでウォームハウジング11に設けられ、ラックハウジングに対するウォームハウジング11の締結に供する第2締結部」は、前者の「第1ハウジング側締結部と対向するかたちで第2ハウジングに設定され、第1ハウジングに対する第2ハウジングの締結に供する第2ハウジング側締結部」に相当する。 後者の「第1締結部と第2締結部とを締結する少なくとも3つのボルト」は、前者の「第1ハウジング側締結部と第2ハウジング側締結部とを締結する3つのボルト」と、「第1ハウジング側締結部と第2ハウジング側締結部とを締結する少なくとも3つのボルト」である限りにおいて一致する。 後者の「電動モータMがウォームハウジング11に片持ち状態に支持されたパワーステアリング装置」は、前者の「電動モータ及び電子コントローラユニットが第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリング」と、「電動モータが第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリング」である限りにおいて一致する。 後者の「モータ側ピニオン軸9の軸線とウォームシャフトの軸線の両軸線に平行であって且つウォームシャフトの軸線上を通る仮想面を境界基準面とした」ことは、前者の「ピニオン軸の軸線を第1軸線とすると共にウォームシャフトの軸線を第2軸線とし、第1軸線及び第2軸線の両軸線に平行であって且つ第2軸線上を通る仮想面を境界基準面とした」ことに相当する。 前者の「ラック軸が第1軸線よりも残余の2つの締結部が設けられる側に配置されること」に関して、「残余の2つの締結部が設けられる側」とはその前段の記載からすると、境界基準面からみてウォームホイールとは反対側の領域であるので、ピニオン軸の軸線である第1軸線からみると境界基準面側、ウォームシャフトの軸線である第2軸線側といえる。そうすると、後者の「ラック軸3がモータ側ピニオン軸9の軸線よりもウォームシャフト側に配置される」ことは、前者の「ラック軸が第1軸線よりも残余の2つの締結部が設けられる側に配置される」ことと、「ラック軸が第1軸線よりもウォームシャフト側に配置される」ことである限りにおいて一致する。 そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 〔一致点2〕 「ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達するラック軸と、該ラック軸に噛合するピニオン軸とから構成される操舵機構と、 前記操舵機構に操舵力を付与する電動モータと、 前記電動モータの出力軸に連結されたウォームシャフトと、前記ピニオン軸の外周に一体回転可能に設けられ、前記ウォームシャフトに噛合して前記電動モータの回転を減速して前記ピニオン軸に伝達するウォームホイールとから構成される減速機と、 前記電動モータを駆動制御する電子コントローラユニットと、 前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、 前記ウォームシャフトを収容するシャフト収容部と、前記ウォームホイールを収容するホイール収容部とを有し、前記ホイール収容部が前記ピニオン収容部と相互に連通するかたちで前記第1ハウジングに締結される第2ハウジングと、 前記第1ハウジングにおいて前記ウォームホイールの円周方向の少なくとも3箇所に設定され、前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と対向するかたちで前記第2ハウジングに設定され、前記第1ハウジングに対する前記第2ハウジングの締結に供する第2ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と前記第2ハウジング側締結部とを締結する少なくとも3つのボルトと、 を備え、電動モータが第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリングであって、 前記ピニオン軸の軸線を第1軸線とすると共に前記ウォームシャフトの軸線を第2軸線とし、前記第1軸線及び第2軸線の両軸線に平行であって且つ前記第2軸線上を通る仮想面を境界基準面としたとき、 前記ラック軸が前記第1軸線よりもウォームシャフト側に配置される、電動パワーステアリング装置。」 〔相違点2〕 本件発明1は、「電動モータの減速機と反対側に設けられ、電動モータを駆動制御する電子コントローラユニット」を備え、「電動モータ及び電子コントローラユニットが第2ハウジングに片持ち状態に支持され」ていると特定されるとともに、「第1ハウジング側締結部」が「3箇所」であり、「第1ハウジング側締結部と第2ハウジング側締結部とを締結する3つのボルト」と特定されており、第1ハウジング側締結部及び第2ハウジング側締結部の「各3つの締結部のうち1つが境界基準面よりもウォームホイール側の領域において設定され、残余の2つがウォームホイールの反対側の領域に設定され」、ラック軸が第1軸線よりも「残余の2つの締結部が設けられる側」に配置されると特定されているのに対して、引用発明2は、電動モータMが前記のように電子コントローラユニットを備えるものではなく、第1締結部は「少なくとも3箇所」であり、「各3つの第1締結部及び第2締結部の全てが境界基準面BLよりもウォームホイール側の領域に設定され」ており、ラック軸3の配置が第1締結部、第2締結部の配置により特定されていない点。 イ 判断 上記相違点2について以下検討する。 (ア) 本件特許の願書に添付した明細書の段落【0018】、【0031】には、電子コントローラユニット4と電動モータ5とを一体としてモータユニットを第2ハウジング20に複数のボルトT0をもっていわゆる片持ち状態で支持固定するときに、その重量やその振動等に基づいた比較的大きな荷重が作用するシャフト収容部20a側の領域に2つのシャフト側締結部12?13,22?23を設定したことによって、数少ない限られた締結部で効果的に両ハウジング10,20を締結させることができる旨記載されている(上記「第4 2.(1)イ」参照)。 そうすると、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、電動パワーステアリング装置において、電子コントローラユニット4と電動モータ5とを一体としたモータユニットを前提として、このモータユニットを第2ハウジング20に片持ち状態で支持固定するときの、3箇所の締結部の位置を特定するものといえる。 (イ) 電動パワーステアリングにおいて、電動モータにその駆動を制御する電子コントローラユニットを一体に設けることは周知の事項といえる(例えば、特開2012-197051号公報の段落【0017】、【図2】の記載、特開2012-218701号公報の段落【0014】、【図3】の記載等を参照)。 また、引用文献2には、アクチュエータ30の、電動モータ48の回転軸54に一体に設けられたウオーム59と、ウオーム59に噛合するウオームホイール58とを収納するギヤハウジング42を、取り付けベース41を介して内燃機関のアッパーヘッド14の壁部29に締結する際、3本のボルト46を用いることが記載されており、図面から、ボルトは、1つをウオーム59の軸線からみてウオームホイール58側に、2つをウオーム59の軸線からみてウオームホイール58とは反対側に配置することが看取できる(段落【0011】、【0015】、【0016】、【0018】、【0021】、【図2】?【図5】参照)。 さらに、引用文献3には、アクチュエータ20の、モータ36のアーマチュア軸37に形成されたウオーム38と、該ウオーム38に噛合した駆動ギヤ32とを収納した第1のアクチュエータケース21と、第2のアクチュエータケース21a(当審注、17の誤記と思われる)とをボルトを介して取り付けることが記載されており、図面から、ボルトは、1つをウオーム38の軸線からみて駆動ギヤ32側に、2つをウオーム38の軸線からみて駆動ギヤとは反対側に配置することが看取できる(段落【0018】、【0019】、【図1】?【図3】参照)。 引用文献2及び引用文献3には、アクチュエータのケースを固定する際、モータの回転軸であるウォームの軸線を基準として、その内側のウォームホイール側の1箇所をボルトで締結し、その外側でウォームホイール側とは反対側の2箇所をボルトで締結することが記載または示唆されているといえる。 (ウ) 上記の周知の事項、または、引用文献2及び3に記載の事項は、いずれも相違点2に係る本件発明1の構成を部分的に示唆するものであって全体を示唆するものではないので、引用発明2に、上記の周知の事項、または、引用文献2及び3に記載の事項を適用しても、直ちに相違点2に係る本件発明1の構成のようにすることはできない。 また、引用文献2及び3は、上記「(ア)」で述べたような、電動パワーステアリング装置において、電子コントローラユニットと電動モータとを一体としたモータユニットをハウジングに片持ち状態に支持する際の課題の解決を示唆するものでもないので、引用発明2の「少なくとも3箇所」の「第1締結部」及び「少なくとも3つのボルト」に対して、引用文献2及び3に記載の3箇所のボルトの配置を適用する動機付けもないといえる。 加えて、引用発明2に、周知の電動モータに電子コントローラユニットを一体に設けるとの事項を付加した上で、さらに、引用文献2、3に記載のモータの回転軸に対する3つのボルトの配置を適用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 したがって、本件発明1は、引用発明2、引用文献2、3に記載の事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2 ア 対比 本件発明2は、本件発明1に「ピニオン軸の外周域において前記第1ハウジングに設けられる第1ハウジング側嵌合部と第2ハウジングに設けられる第2ハウジング側嵌合部とを相互に凹凸嵌合させてなる嵌合連結手段」を追加し、「各3つの締結部」に関して、「1つが境界基準面よりもウォームホイール側」を「1つが境界基準面よりも第1嵌合部及び第2嵌合部側」とし、「残余の2つがウォームホイールの反対側」を「残余の2つが第1嵌合部及び第2嵌合部の反対側」としたものである。 本件発明2と引用発明2とを対比すると、上記「(1)ア」で述べたと同様の相当関係を有するとともに、以下の関係を有する。 すなわち、後者の「モータ側ピニオン軸9の外周域においてラックハウジング(H)に設けられる凹部(C)」は、前者の「ピニオン軸の外周域において第1ハウジングに設けられる第1ハウジング側嵌合部」に相当し、同様に、「ウォームハウジング11に設けられる凸部(D)」は「第2ハウジングに設けられる第2ハウジング側嵌合部」に、「相互に凹凸嵌合した嵌合連結手段」は「相互に凹凸嵌合させてなる嵌合連結手段」に、それぞれ相当する。 そうすると、両者は、上記「(1)ア」で述べた「一致点2」に加えて「ピニオン軸の外周域において第1ハウジングに設けられる第1ハウジング側嵌合部と第2ハウジングに設けられる第2ハウジング側嵌合部とを相互に凹凸嵌合させてなる嵌合連結手段」を備える点で一致し、次の点で相違する。 〔相違点3〕 本件発明2は、「電動モータの減速機と反対側に設けられ、電動モータを駆動制御する電子コントローラユニット」を備え、「電動モータ及び電子コントローラユニットが第2ハウジングに片持ち状態に支持され」ていると特定されるとともに、「第1ハウジング側締結部」が「3箇所」であり、「第1ハウジング側締結部と第2ハウジング側締結部とを締結する3つのボルト」と特定されており、第1ハウジング側締結部及び第2ハウジング側締結部の「各3つの締結部のうち1つが境界基準面よりも第1嵌合部及び第2嵌合部側の領域において設定され、残余の2つが第1嵌合部及び第2嵌合部の反対側の領域に設定され」、ラック軸が第1軸線よりも「残余の2つの締結部が設けられる側」に配置されると特定されているのに対して、引用発明2は、電動モータMが前記のように電子コントローラユニットを備えるものではなく、第1締結部は「少なくとも3箇所」であり、「各3つの第1締結部及び第2締結部の全てが境界基準面BLよりもウォームホイール側の領域に設定され」ており、ラック軸3の配置が第1締結部、第2締結部の配置により特定されていない点。 イ 判断 上記相違点3について以下検討する。 本件発明2の「第1ハウジング側嵌合部」と「第2ハウジング側嵌合部」は、「ピニオン軸の外周域において」第1ハウジングまたは第2ハウジングに設けられるものであるので、本件発明2の「境界基準面よりも第1嵌合部及び第2嵌合部側の領域」とは、境界基準面よりピニオン軸の外周域側、すなわちウォームホイール側に等しいといえる。 そうすると、相違点3は実質的に相違点2に等しく、上記「(1)イ」で述べたと同様に、引用発明2を、相違点3に係る本件発明2のようにすることは、引用文献2、3に記載の事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 したがって、本件発明2は、引用発明2、引用文献2、3に記載の事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3.小括 よって、本件発明1?2は、引用発明2及び引用文献2、3に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたということはできない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第2号証に記載の発明及び甲第6号証に記載の発明から当業者が容易に想到し得る旨主張している(31頁11行?33頁下から2行、35頁4?6行、同頁12?14行を参照)。 しかしながら、甲第6号証には、歯車装置ケーシング102に設けられる4つの締結部のうち、2つの締結部(特許異議申立書に添付された甲第6号証の参考図の図5aに符号S1、S2で示したもの)が境界基準面(甲第6号証の参考図の図5aに符号BLで示したもの)よりもウォーム歯車104側の領域に設定され、残余の2つの締結部(甲第6号証の参考図の図5aに符号S3、S4で示したもの)が境界基準面よりもウォーム歯車104の反対側の領域に設定されることが看取できるかもしれないが、上記「第5 2.(1)ア」で述べた「相違点2」のうちの、「3つの締結部」に関する構成を示唆するものとはいえない。 よって、特許異議申立人の上記主張は理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるので、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達するラック軸と、該ラック軸に噛合するピニオン軸とから構成される操舵機構と、 前記操舵機構に操舵力を付与する電動モータと、 前記電動モータの出力軸に連結されたウォームシャフトと、前記ピニオン軸の外周に一体回転可能に設けられ、前記ウォームシャフトに噛合して前記電動モータの回転を減速して前記ピニオン軸に伝達するウォームホイールとから構成される減速機と、 前記電動モータの前記減速機と反対側に設けられ、前記電動モータを駆動制御する電子コントロールユニットと、 前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、 前記ウォームシャフトを収容するシャフト収容部と、前記ウォームホイールを収容するホイール収容部とを有し、前記ホイール収容部が前記ピニオン収容部と相互に連通するかたちで前記第1ハウジングに締結される第2ハウジングと、 前記第1ハウジングにおいて前記ウォームホイールの円周方向の3箇所に設定され、前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と対向するかたちで前記第2ハウジングに設定され、前記第1ハウジングに対する前記第2ハウジングの締結に供する第2ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と前記第2ハウジング側締結部とを締結する3つのボルトと、 を備え、前記電動モータ及び前記電子コントロールユニットが前記第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリングであって、 前記ピニオン軸の軸線を第1軸線とすると共に前記ウォームシャフトの軸線を第2軸線とし、前記第1軸線及び第2軸線の両軸線に平行であって且つ前記第2軸線上を通る仮想面を境界基準面としたとき、 前記各3つの締結部のうち1つが前記境界基準面よりも前記ウォームホイール側の領域において設定され、残余の2つが前記ウォームホイールの反対側の領域に設定され、 前記ラック軸が前記第1軸線よりも前記残余の2つの締結部が設けられる側に配置されることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 【請求項2】 ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達するラック軸と、該ラック軸に噛合するピニオン軸とから構成される操舵機構と、 前記操舵機構に操舵力を付与する電動モータと、 前記電動モータの出力軸に連結されたウォームシャフトと、前記ピニオン軸の外周に一体回転可能に設けられ、前記ウォームシャフトに噛合して前記電動モータの回転を減速して前記ピニオン軸に伝達するウォームホイールとから構成される減速機と、 前記電動モータの前記減速機と反対側に設けられ、前記電動モータを駆動制御する電子コントロールユニットと、 前記ラック軸の少なくとも一部を収容するラック収容部と、前記ピニオン軸の少なくとも一部を収容するピニオン収容部とを有する第1ハウジングと、 前記ウォームシャフトを収容するシャフト収容部と、前記ウォームホイールを収容するホイール収容部とを有し、前記ホイール収容部が前記ピニオン収容部と相互に連通するかたちで前記第1ハウジングに締結される第2ハウジングと、 前記第1ハウジングにおいて前記ウォームホイールの円周方向の3箇所に設定され、前記第2ハウジングに対する前記第1ハウジングの締結に供する第1ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と対向するかたちで前記第2ハウジングに設定され、前記第1ハウジングに対する前記第2ハウジングの締結に供する第2ハウジング側締結部と、 前記第1ハウジング側締結部と前記第2ハウジング側締結部とを締結する3つのボルトと、 前記ピニオン軸の外周域において前記第1ハウジングに設けられる第1ハウジング側嵌合部と前記第2ハウジングに設けられる第2ハウジング側嵌合部とを相互に凹凸嵌合させてなる嵌合連結手段と、 を備え、前記電動モータ及び前記電子コントロールユニットが前記第2ハウジングに片持ち状態に支持された電動パワーステアリングであって、 前記ピニオン軸の軸線を第1軸線とすると共に前記ウォームシャフトの軸線を第2軸線とし、前記第1軸線及び第2軸線の両軸線に平行であって且つ前記第2軸線上を通る仮想面を境界基準面としたとき、 前記各3つの締結部のうち1つが前記境界基準面よりも前記第1嵌合部及び第2嵌合部側の領域において設定され、残余の2つが前記第1嵌合部及び第2嵌合部の反対側の領域に設定され、 前記ラック軸が前記第1軸線よりも前記残余の2つの締結部が設けられる側に配置されることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-11-30 |
出願番号 | 特願2013-59541(P2013-59541) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B62D)
P 1 651・ 16- YAA (B62D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 粟倉 裕二 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 平田 信勝 |
登録日 | 2016-09-02 |
登録番号 | 特許第5998088号(P5998088) |
権利者 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 |
発明の名称 | 電動パワーステアリング装置 |
代理人 | 富岡 潔 |
代理人 | 小林 博通 |
代理人 | 小林 博通 |
代理人 | 富岡 潔 |
代理人 | 高嶋 一彰 |
代理人 | 高嶋 一彰 |