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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項2号公然実施 A41D 審判 一部申し立て 2項進歩性 A41D 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A41D |
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管理番号 | 1345834 |
異議申立番号 | 異議2017-701160 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-12-07 |
確定日 | 2018-09-18 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6143972号発明「マスク」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6143972号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、5、6について訂正することを認める。 特許第6143972号の請求項1-4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6143927号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成28年6月10日(優先権主張 平成27年6月10日(以下「本件優先日」という。) 日本国)に国際出願され、平成29年5月19日にその特許権の設定登録がされ(同年6月7日登録公報発行。登録時の本件特許の明細書を以下「本件明細書」という。)、その後、同年12月7日に特許異議申立人山岡 篤実(以下「本件申立人」という。)によって、請求項1?4に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、平成30年2月27日付けで取消理由が通知され、同年4月27日に意見書の提出及び訂正の請求(以下訂正の請求に係る訂正を「本件訂正」という。)がされ、同年6月15日に本件申立人から意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正の適否について 1 本件訂正の内容(決定注:当審で訂正箇所に下線を付した。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の二箇所に記載された「不織布マスク」のうち、前者を「プリーツ加工型不織布マスク」に訂正し、後者を「プリーツ加工型不織布マスク(但し、除染作業や粉じん対策に使用する防じんマスクを除く)」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2?4も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に「厚みが1.0mm以上である」と記載されているのを「JIS L 1913A法に従って測定した厚みが1.0mm以上である」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5に「前記口許層は、公定水分率1%以上の繊維を使用した不織布からなる、請求項1から4のいずれか1項に記載の不織布マスク」と記載されているのを「使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有した不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、アクリレート系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.5?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.4?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記口許層は、公定水分率1%以上の繊維を使用した不織布からなる、不織布マスク」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6に「前記中間層として更に捕集フィルターを1層又は2層以上含み、前記口許層と緩衝層とが隣接するよう配置される、請求項1から5のいずれか1項に記載の不織布マスク。」と記載されているのを「使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有した不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、アクリレート系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.5?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.4?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記中間層として更に捕集フィルターを1層又は2層以上含み、前記口許層と緩衝層とが隣接するよう配置される、不織布マスク。」と訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落0038を削除する。 明細書の段落0047に記載の「並びに比較例1及び比較例4」の記載を「並びに比較例1」に訂正する。 明細書の段落0049に記載の表3から「比較例4」に関する箇所を削除する。(訂正後の明細書を以下「訂正明細書」という。) 2 訂正要件について (1)一群の請求項についての検討 訂正前の請求項1?6について、請求項2?6は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2)各訂正事項の訂正要件の検討 ア 訂正事項1 (ア)訂正の目的について 訂正前の請求項1に係る発明では、「不織布マスク」がいかなる型の不織布マスクであるか何ら特定されていない。 これに対して、訂正後の請求項1に係る発明では、当該不織布マスクがプリーツ型であることを限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 さらに、訂正前の請求項1に係る「不織布マスク」から、「除染作業や粉じん対策に使用する防じんマスク」という特定の用途を除くことで、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 訂正事項1のうち、当該不織布マスクがプリーツ型であることについては、本件明細書の段落【0012】の記載、及び図1等に基づいて導き出される構成である。また、訂正事項1のうち、「除染作業や粉じん対策に使用する防じんマスク」を除く訂正は、本件明細書の段落【0001】?【0003】に記載された「技術分野」や「背景技術」には、本件特許に係るマスクを「除染作業や粉じん対策に使用する」ことの記載がないし、示唆する記載もないから、これにより新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、当該訂正事項1は、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上の拡張または変更の有無 上記(ア)の理由から明らかなように、訂正事項1は、不織布マスクをプリーツ型に減縮すること、及び特定の目的で使用される不織布マスクを除くこと、を目的としており、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (エ)独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1?4について特許異議の申し立てがされているので、訂正前の請求項1?4に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 イ 訂正事項2 (ア)訂正の目的について 訂正前の請求項4に係る発明では、「マスクの厚み」がいかなる方法で測定されたか明記されていないところ、訂正後の請求項4に係る発明ではマスクの厚みが「JIS L 1913A法に従って測定した」ことを特定することで、特許請求の範囲を明確にしようとするものである。 したがって、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載を釈明することを目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 訂正事項2は、明細書の段落【0034】の記載「なお、不織布及びマスクの厚さはJIS L 1913A法に従って測定した値である」との記載に基づくものである。 したがって、当該訂正事項2は、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上の拡張または変更の有無 上記理由から明らかなように、訂正事項2は、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものであることから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (エ)独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1?4について特許異議の申し立てがされているので、訂正前の請求項4に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 ウ 訂正事項3 (ア)訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項5の記載が訂正前の請求項1?4の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1?4を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を、当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無及び実質上の拡張または変更の有無 訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (ウ)独立特許要件 当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を、当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、請求項5に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 エ 訂正事項4 (ア)訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項6の記載が訂正前の請求項1?5の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1?5を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を、当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無及び実質上の拡張または変更の有無 訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (ウ)独立特許要件 当該訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を、当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、請求項6に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 オ 訂正事項5 (ア)訂正の目的について 訂正前の明細書段落【0038】等に記載されていた「比較例4」には、その厚みの数値に誤記があり、そのため、比較例4のマスクの厚みが、マスクを構成する各層の厚みから計算したものと一致しないのが、この点で不明瞭であった。そのため、当該「比較例4」を明細書から削除することで不明瞭な記載を解消しようとするものである。 したがって、当該訂正事項5は、特許法第120条の5第2項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加の有無 上記のとおり、訂正事項5は誤記を含んだ比較例4に係る記載を単に削除するためのものであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上の拡張または変更の有無 上記のとおり、訂正事項5は比較例4に係る記載を削除するためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 (エ)訂正の対象とする請求項 上記(1)で検討したように、訂正前の請求項1?6は、一群の請求項を構成するものであり、訂正事項5と同時に請求項1?6からなる一群の請求項が訂正されているから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。 (3)別の訂正単位とする求め 請求項5及び6に係る訂正は、引用関係を解消するためのものであるから、当該請求項について訂正が認められる場合は、一群の請求項の他の請求項とは、別途訂正することが求められている。 (4)小括 以上から、上記訂正事項1?5は、いずれも訂正要件を満たしているから、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに本件明細書を訂正することを認める。また、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに、訂正後の請求項〔1-4〕、5、6について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正後の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明4」といい、合わせて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有したプリーツ加工型不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、アクリレート系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.5?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.4?2.0gf・cm/cm^(2)である、プリーツ加工型不織布マスク(但し、除染作業や粉じん対策に使用する防じんマスクを除く)。 【請求項2】 前記緩衝層は、目付が30g/m^(2)以上の不織布からなる、請求項1に記載の不織布マスク。 【請求項3】 前記緩衝層は、ニードルパンチ不織布を用いたものである、請求項1又は2に記載の不織布マスク。 【請求項4】 前記マスク本体は、JIS L 1913A法に従って測定した厚みが1.0mm以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の不織布マスク。」 2 KESシステムについて (1)KESについて KESとは、Kawabata Evaluation Systemの略語であって、繊維製品の風合いを数値化するために、1970年に開発された計測技術の体系である。 (2)圧縮試験について 本件明細書の段落【0017】及び【0044】に記載されているKESFB3の製品紹介のウェブサイト(http://keskato.co.jp/products/kes-fb3.html)によると、「生地の風合い判断をする際に、職人や専門家が行う「指で押す」という手の動きを分析、機械化し、客観的な数値データに置き換える事を可能にした試験機です。」とされている。 (3)圧縮特性WC 圧縮特性WCについて、本件明細書には次の記載がある。 ア 段落【0018】 「図3に、圧縮特性WCを測定し、算出するためのグラフを示す。 図3中、y軸方向(縦軸方向)は不織布への圧力P(gf/cm^(2))を示し、図中x軸方向(横軸方向)は不織布の厚みT(mm)を示す。 図3中x軸上のBは圧力Pが0である場合の不織布の厚みT_(0)を示し、図中x軸上のCは圧力Pが最大圧縮荷重である50gf/cm^(2)である場合の不織布の厚みT_(M)を示す。 そしてWCは、TがT_(0)からT_(M)におけるPの積分値、即ち図中のa+bの面積として算出される。」 イ 段落【0019】 「一方で、図3中の2本の曲線のうち、P値が大きい側の曲線(図中上方に位置する曲線)は、不織布に圧縮荷重を掛けていく際の厚みTの動きを示し、P値が小さい側の曲線(図中下方に位置する曲線)は、不織布から圧縮荷重を開放する際の厚みTの動きを示す。 圧縮特性は上記WCの他、圧縮かたさを示すLC、及び圧縮回復性を示すRCも存在し、以下のように定義される。 LC:(a+bの面積)/△ABCの面積 RC:bの面積/(a+bの面積) 本発明ではこれらの圧縮特性のうち、圧縮特性WCが特定の範囲を満たすことで、マスクのつけ心地が劇的に改善されることを見出したものである。」 ウ 【図3】 「 」 3 取消理由通知の概要 本件訂正前の請求項1?4に係る特許に平成30年2月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、特許異議の申立てにおいて主張された理由はすべて通知した。 (1)取消理由1 ア 本件発明1、2及び4は、本件優先日前、公然実施をされた下記1.又は2.の発明であるから、特許法第29条第1項2号の発明に該当し、特許を受けることができない。 イ 公然実施発明 1.商品名「ストレッチマスクFV」(クラレクラフレックス株式会社製)(以下「甲1発明」という。) 2.商品名「ハイテクマスクメントール」(ミナト製薬株式会社製)(以下「甲3A発明」という。) (2)取消理由2.1 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件優先日前、日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明若しくは公然実施をされた発明に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・対象請求項:引用例 請求項1、2及び4:引用例1.?5. 請求項3:引用例1.?9. ・引用例一覧 1.甲1発明 2.甲3A発明 3.商品名「Vフレックス」(スリーエムヘルスケア株式会社製)(以下「甲3B発明」という。) 4.商品名「Clean Top Mask C650V」(EVERGREEN社製)(以下「甲3C発明」という。) 5.商品名「ジャストフィット X-3501」(日本バイリーン株式会社製)(以下「甲9発明」という。) 6.特開2007-21030号公報(甲15) 7.特開2013-52153号公報(甲16) 8.特開2014-106号公報(甲17) 9.特開2011-167419号公報(甲18) (3)取消理由2.2 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明若しくは公然実施をされた発明に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・対象請求項:引用例 請求項1、2及び4:引用例3.?5.、10.?12. 請求項3:引用例3.?12. ・引用例一覧 3.甲3B発明 4.甲3C発明 5.甲9発明 6.特開2007-21030号公報(甲15) 7.特開2013-52153号公報(甲16) 8.特開2014-106号公報(甲17) 9.特開2011-167419号公報(甲18) 10.実願昭62-70944号(実開昭63-182766号)のマイクロフィルム(甲12) 11.特開昭61-25572号公報(甲13) 12.実願昭60-70438号(実開昭61-185448号)のマイクロフィルム(甲14 ) (4)取消理由2.3 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・対象請求項:引用例 請求項1?4:引用例6.?9.及び13. ・引用例一覧 6.特開2007-21030号公報(甲15) 7.特開2013-52153号公報(甲16) 8.特開2014-106号公報(甲17) 9.特開2011-167419号公報(甲18) 13.特開2000-289132号公報(甲19) (5)取消理由3 本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 ア 各実施例において、最外層、フィルター層、緩衝層、口元層の各層の厚さの合計と、マスク全体の厚さとが合致していない(実施例1について、各層の厚さを合計した厚さは、1.3mmであるのに対し、全体の厚さが1.1mmと合致しない)ため、どのように製造したのか不明である。 イ 比較例4は、実施例1から緩衝層を取り除いた例であるが、厚さが1.1mmとされており、緩衝層0.7mmの厚さと整合しておらず、どのように製造したのかが不明である。 (6)取消理由4 本件特許に係る特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 ア 本件発明の課題は、「つけ心地が大幅に改善されたマスクを提供する」(本件明細書の段落【0005】)ことであり、解決手段として、「マスク本体に特定の圧縮特性を付与するため、マスクの中間層に緩衝層を設ける」(同段落【0006】)とされているが、本件明細書には、緩衝層を設け、かつ、マスク本体の圧縮特性が本件発明1の範囲外である場合の例が記載されていない。(本件明細書の比較例は、いずれも緩衝層を持たないものである。)そうすると、上記解決手段により、課題が解決できるということはできず、特許請求の範囲の記載は、サポート要件を満たさない。 イ 本件発明においては、「マスク本体は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.5?2.0gf・cm/cm^(2)」とされているが、本件明細書に記載された実施例のうち官能評価された実施例においては、最小値が1.122gf・cm/cm^(2)であるから、0.5?1.122gf・cm/cm^(2)の間では、課題が解決できるということはできず、サポート要件を満たさない。 (7)取消理由5 本件特許に係る特許請求の範囲の請求項4の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。すなわち、請求項4には、「厚みが1.0mm以上」という発明特定事項があるが、どのような測定条件で測定した厚みなのかが不明確である。 4 本件申立人主張の公然実施発明について (1)甲1発明(商品名「ストレッチマスクFV」)について ア 証拠から直ちに認定できる事実 (ア)製造時期 甲1発明に付された、ロット番号は「28054-39」であって(甲2の写真1-7)、2014年5月28日に39号機で製造された(甲1)製品であることから、甲1発明は、本件優先日以前に流通していたと推認できる。 (イ)包装箱から読み取れる事項 a 天面(甲2の写真1-2)からは、次の記載が読み取れる。 (a)「クラレフレックス ストレッチマスク」 (b)「FV スペースキーパータイプ フィルター入り簡易マスク」 (c)「軽くて呼吸が楽 使い捨てなので衛生的 優れたフィルター性能 顔にぴったりフィット」 b 前面(甲2の写真1-3)から読み取れる事項 (a)「粉じんの発生する様々な作業場に」 (b)「30枚入り」 c 後面(甲2の写真1-4)から読み取れる事項 (a)「ゴムひも ソフトなゴムが、耳への負担を軽減します。」 (b)「ノーズブリッジ 顔にぴったりフィット、粉じんの侵入を防ぎます。」 (c)「スペースキーパー 口元に空間を作ることができ、顔への圧迫・息苦しさを軽減します。」 (d)「超極細繊維フィルター 超極細繊維からなるフィルターにより、優れた捕集性能を発揮します。」 (e)「プレフィルター プレフィルターが、捕集効率を高めます。」 (f)「ご使用にあたってのご注意 ・本製品は国家検定マスクではありませんので、法令で指定された場所には禁止されています。これらの場所では必ず国家検定マスクをご使用下さい。・・(省略)・・」 (g)「着用方法 1○(決定注:1は、○の中。以下同様) ノーズブリッジ(樹脂)のついてる方を上に、ゴムひもの接着部のある側を口側にして顔にかけて下さい。 2○ノーズブリッジを鼻の両側でおさえて顔の形に合わせて下さい。上下に伸ばして、マスクの下側がアゴの下まで来るようにして下さい。」 d 左側面(甲2の写真1-6)から読み取れる事項 (a)「品名|マスク(商品名:ストレッチマスクFV)」 (b)「素材|本体:レーヨン・ポリプロピレン |耳部:ポリウレタン・ポリエステル |フィルター部:ポリプロピレン・ポリエチレン」 (c)「製造・販売者名|クラレクラフレックス株式会社」 (ウ)マスクの層構造 a 一般財団法人カケンテストセンターによる平成29年11月21日付け試験証明書(甲2)によると、ノーズブリッジ側を1層目として、最外層まで4層とも、不織布から構成されていることが、各層の表面拡大写真から読み取れる。 b 1層目(最内層) 材質はレーヨンであって、厚さ(JIS L1913A法による、以下同じ)は0.18mm、目付は22.1g/m^(2)である(甲2の1頁)。 c 2層目 材質は複合繊維(ポリプロピレン/ポリエチレン及びポリエステル/ポリエチレン)であって、厚さは0.72mm、目付は32.1g/m^(2)である(甲2の1頁)。 d 3層目 材質はポリプロピレンであって、厚さは0.24mm、目付は21.0g/m^(2)である(甲2の1頁)。 e 4層目(最外層) 材質はポリプロピレンであって、厚さは0.20mm、目付は18.8g/m^(2)である(甲2の1頁)。 (エ)マスクの圧縮特性WC 平成29年11月21日に測定された圧縮特性の測定値の平均値は、1.451gf・cm/cm^(2)である(甲2の5頁)。 イ 認定事実 (ア)緩衝層について マスクの上記4層のうち、どの層が緩衝層かは明示されていない。甲1の表面拡大画像からみて、3層目の繊維が最も細くまた、最も接近していることから、3層目は、フィルター層であると認められる。そして、最も厚くなっている2層目を緩衝層であると把握することが可能である。 そして、2層目の平成29年11月21日に測定された圧縮特性WCの平均値は、1.016gf・cm/cm^(2)である(甲2の4頁)。 (イ)プリーツについて 上記ア(イ)c(g)の記載から、甲1発明は上下に伸びるものであって、プリーツ加工型であることが読み取れる。 (イ)用途について 上記ア(イ)b(a)の記載から、甲1発明は、粉じんの多い作業に用いられるものであって、「粉じん対策に使用する防じんマスク」であると認定できる。 ウ 甲1発明の認定 上記ア、イから、次のような甲1発明が認定できる。 「使用者の顔面の使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有したプリーツ型不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが1.451gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが1.016gf・cm/cm^(2)であるプリーツ加工型粉じん対策用に使用する防じん不織布マスク。」 (2)甲3A発明(商品名「ハイテクマスクメントール」)について ア 証拠から直ちに認定できる事実 (ア)外装箱底面に印字された数字が「17016-46」である(甲3の写真1-1)。 (イ)販売者名はミナト製薬株式会社(甲3の写真1-5)。 イ 認定事実 甲1発明と甲3A発明とは、製造・販売者が異なるところ、その商品外装箱に付されたロット番号の意味は必ずしも同じであるとは限らないが、仮に、甲1と同様に、甲3A発明との外装箱底面に印字されたものがロット番号であって、そのハイフン直前の数値が、西暦年の1桁を表記したものであるとして、製造日を判断すると、2006年1月17日または2016年1月17日のいずれかと考えられる。本件申立人は、甲3において、2006年に入手したと主張するが、それを認めるに足りる領収書などの証拠は提出されていない。そうすると、甲3A発明が2006年1月17日に製造されたものであるとの本件申立人の主張は採用できず、甲3A発明は、2016年1月に製造されたものと認定するほかない。 ウ 小括 本件優先日は、2015年6月10日であるから、甲3A発明は、本件優先日前に公然実施をされたものと認めることができない。よって、以降では、甲3A発明は引用例としない。 (3)甲3B発明について ア 証拠から直ちに認定できる事実 (ア)製造時期 スリーエムヘルスケア株式会社の平成24年4月10日付けのニュースリリース(甲5)に、「すでに事業者向けとして20枚入りで販売しています」(甲5の1頁)と記載され、甲3の写真2-1から、2011.11との印字が読み取れるから、甲3B発明は、本件優先日前に製造され、流通していたと認められる。 (イ)マスクの層構造 a 最外層、中間層、口元層の3層(甲3の写真2-4)である。 b 3層とも不織布であると視認できる(甲3の写真2-3)。 (ウ)マスクの圧縮特性WC a マスク本体 平成29年11月1日に測定され、測定箇所4か所の表裏平均が、0.826、0.979、1.070、1.042gf・cm/cm^(2)である(甲6の1頁)。 b 中間層(緩衝層) 平成29年11月1日に測定され、測定箇所4か所の表裏平均が、0.417、0.422、0.490、0.484gf・cm/cm^(2)である(甲6の2頁)。 (エ)耳掛け部 甲5の1頁の写真から、マスク本体の両側に耳掛け部を有していることが看取できる。 (オ)マスクの用途 甲5の1頁には、「空気中の有害粒子をブロック!国家検定合格品 3M Vフレックス^(TM) 防じんマスク」と記載され、「除染作業者の粉じん対策、放射能被ばく対策にも有効」と記載されていることから、甲3B発明の用途は、除染作業や粉じん対策に使用する防じんマスクであるといえる。 イ 認定事実 中間層の材質について 甲3試験報告書の2頁7?8行によれば、「(4)中間層は、フーリエ変換赤外分光法の全反射測定(ATR)法による繊維鑑別の結果、ポリプロピレン繊維を含んでいた。」としているが、その結果を認めるに足りる証拠はない。甲3B発明における中間層の材質は明らかでないと認定する。 ウ 甲3B発明の認定 上記ア、イから、次の甲3B発明が認定できる。 「使用者の顔面の使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有した不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.826?1.070gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.417?0.490gf・cm/cm^(2)である、除染作業にもちいる防じん用不織布マスク。」 (4)甲3C発明(商品名「Clean Top Mask C650V」)について ア 証拠から直ちに認定できる事実 (ア)製造時期 甲3C発明が掲載されたカタログ(甲7)に2013年7月1日作成と記載されていることから、甲3C発明は、遅くとも2013年7月には、製造・販売されていたと推認できる。 (イ)耳掛け部 カタログ(甲7)16頁のC650Vの写真及びその下段の使用方法の絵と説明から理解出来るように、マスク本体とその両端に固定された耳掛け部を有するマスクである。 (ウ)マスクの層構成 a 甲3の写真3-2によれば、甲3C発明のマスクは、最外層、中間層1、中間層2、中間層3、口元層の5層構造である。 (エ)マスクの圧縮特性WC a マスク本体 平成29年11月1日に測定され、測定箇所4か所の表裏平均が、2.000、2.000、2.000、2.000gf・cm/cm^(2)である(甲8の1頁)。 b 中間層2 平成29年11月1日に測定され、測定箇所4か所の表裏平均が、1.554、1.259、1.539、1.495gf・cm/cm^(2)である(甲8の2頁)。 イ 認定事実 (ア)中間層の材質について 甲3試験報告書の2頁下11?10行によれば、「(4)中間層2は、フーリエ変換赤外分光法の全反射測定(ATR)法による繊維鑑別の結果、ポリプロピレン繊維とアクリル繊維を含んでいた。」としているが、その結果を認めるに足りる証拠はない。甲3C発明における中間層の材質は明らかでないと認定する。 (イ)マスクの用途 甲7には、「1級 粉じん、ミスト、ヒューム」と記載され、認証番号も記載されていることから、韓国国内の基準を充たした防じんマスクであると推認できる。 ウ 甲3C発明の認定 上記ア、イから、次の甲3C発明が認定できる。 「使用者の顔面の使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有した不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが2.000gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが1.259?1.554gf・cm/cm^(2)である、除染作業にもちいる防じん用不織布マスク。」 (5)甲9発明(商品名「ジャストフィット X-3501」)について ア 証拠から直ちに認定できる事実 (ア)製造時期 甲3の写真4-1から「2014.12製造」と読み取れるから、甲9発明は本件優先日前に製造され、流通していたと認められる。 (イ)マスクの層構造 a 最外層、中間層1、中間層2、口元層の4層(甲3の写真4-4)である。 b 4層とも不織布であると視認できる(甲3の写真4-3)。 c 中間層2は、製造した日本バイリーン株式会社の証明書(甲10)によると、アクリル繊維とポリプロピレン繊維とのニードルパンチ不織布であると認められる。 (ウ)マスクの圧縮特性WC a マスク本体 平成29年11月21日に測定され、測定箇所4か所の表裏平均が、1.865、1.848、2.000、1.867gf・cm/cm^(2)である(甲11の1頁)。 b 緩衝層である中間層2 平成29年11月21日に測定され、測定箇所4か所の表裏平均が、1.576、1.690、1.281、1.330gf・cm/cm^(2)である(甲11の2頁)。 (エ)マスクのゴムバンド a 甲9の3頁下段の「装着の手順」には、次のように記載されている。 b 「2 ゴムバンドを掛ける マスクを顔に当て、まず下のゴムバンドを首の後ろに掛け、次に上のゴムバンドを後頭部に掛けます。」 c そうすると、甲9発明において、マスク本体の両側に設けられた上下一対のゴムバンドは、上同士及び下同士が連続したであり、下のゴムバンドは使用者の首の後側で支持され、一方、上のゴムバンドは、使用者の頭で支持されると認められる。そうすると、甲9発明は、「耳掛け部」を有しないものである。 (オ)マスクの用途 a 甲9の2頁1行以下には、次の記載がある。 「粉じんやヒューム、オイルミストなどの有害物質から働く人を守るバイリーンマスク。国家検定合格防じんマスクの定番、X-3500シリーズが進化して新登場!」 b 甲9の3頁2行以下には、次の記載がある。 (a)「製品ラインアップ 新X-3500シリーズ フィット性に優れ、装着感がアップ!マスクは今快適フィットの時代へ。」 (b)X-3501の表の部分には、次の記載がある。 「X-3501 DS1 形式検定合格番号|国家検定合格第TM595号 使用限度時間 |18時間 粒子捕捉効率 |85.0%以上(平均93.5%) 吸気抵抗値 |28Pa以下(平均20Pa) 排気抵抗値 |28Pa以下(平均20Pa) 梱包単位 |20枚/箱、10箱/梱」 c 上記a、bから、甲9発明の用途は、「防じんマスク」であるといえる。 ウ 以上から、甲9発明は、次のように認定できる。 「使用者の顔面の使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体を有した不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として、ポリプロピレン系繊維およびアクリレート系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが1.848?2.000gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが1.281?1.690gf・cm/cm^(2)である、不織布マスク。」 5 刊行物の記載事項 (1)引用例6.(特開2007-21030号公報(甲15) ) 引用例6には、次の記載がある。 ア 特許請求の範囲 (ア)【請求項1】 「口及び鼻先を含む顔面の対象部位を覆う本体部と、この本体部を身体に係止するための係止部とを有するマスクにおいて、 少なくとも前記本体部の一部または全部が、外側層、内側層およびこれらの間に配置された圧縮復元層からなる三層構造を有することを特徴とするマスク。」 (イ)【請求項3】 「前記圧縮復元層の圧縮レジリエンスRCが50%以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載のマスク。」 (ウ)【請求項5】 「 前記口及び鼻先と対向する部分が、その周囲部分よりも外側に膨出する立体形状を有する立体マスクである、請求項1?4のいずれか1項に記載のマスク。」 イ 明細書の段落【0008】、【0009】 「<請求項1記載の発明> ・・(省略)・・ (作用効果) 本発明では、圧縮復元層を有することにより、顔面形状に追従して厚さが変化するため、顔面に対するフィット性に優れたものとなる。また、圧縮復元層は外側層と内側層との間に配置されるため、圧縮復元層が外面や内面に露出する場合と異なり、外観や肌触りの悪化を防止しつつフィット性を向上できる。特に、圧縮復元層を不織布等の繊維集合体により形成する場合には嵩高な素材を使用することになるが、このような素材は肌触りが悪くなりやすいため、本発明の三層構造を採用することによる利益が大きい。なお、本明細書で使用する「フィット性」は肌全体に密着することを意味するのではなく、マスクとして密着が必要な部位においては密着し、内部に呼吸に必要な空間を確保しながら、顔面に対して良好に追従することを意味するのである。」 ウ 同段落【0012】、【0013】 「<請求項3記載の発明> ・・(省略)・・ (作用効果) 圧縮レジリエンスRCがこの範囲内にあると、顔面凹凸に対する形状追従性が十分に発揮され、特にフィット性に優れたものとなる。なお、圧縮レジリエンス(RC)とは、素材が圧縮されたときの回復性を表すパラメータであり、回復性がよければ、圧縮レジリエンスが大きくなる。この圧縮レジリエンスは、ハンディー圧縮試験機(KES-G5、カトーテック社製)によって測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:STD、DEF感度:20、加圧面積:2cm^(2)、取り込間隔:0.1(標準)、STROKE SET:5.0、上限荷重:50gf/cm^(2)である。」 エ 同段落【0019】 「以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。 (第1の実施の形態) 図1?図3は、立体マスクの第1の実施の形態を示したもので、口及び鼻先を含む顔面の対象部位を覆う本体部10と、耳に掛け止めるための孔を有する係止部20とを備えている。図1は接合加工前の展開状態を示したもので、図面の左右方向が横方向、上下方向が縦方向である。本体部10の上部には谷状の切欠部が形成され、その谷に沿う部分Bにおいて、超音波接合や熱溶着により接合され、図3に示すように、口及び鼻先と対向する部分がその周囲部分よりも外側に膨出する立体形状を有する立体マスクとされる。なお、この立体形状は、立体的な寸法関係のみにより形成されるものであり、素材の伸縮やプリーツ等の伸縮構造を要せずに立体となるものである。」 オ 同段落【0020】 「ただし、本発明は立体化手段に限定されるものではない。図示例では、立体マスクとするために、中央部分の上部で縦方向に接合する形態を採ったが、接合部は2以上でもよいし、横方向に接合するようにしてもよい。その他、適宜の方法を採ることができる。」 カ 同段落【0021】 「本第1の実施形態では、外側層30により本体部10及び係止部20を含むマスク全体形状を形成し、本体部10の内面側全体を覆うように肌と接触する内側層50を設け、この内側層50と外側層30との間における、鼻の両脇と対向する本体部上縁部に全体にわたり圧縮復元層40を介在させている。」 キ 同段落【0022】 「この圧縮復元層40を内包する三層構造の部位は適宜定めれば良いが、本体部10の遮断性を高めるために、周縁部の一箇所、複数箇所または全部に設けることができる。またこの三層構造の部位は、本体部10の全体としたり、本体部10のみならず係止部20の一部(係止部20の周縁部の一箇所、複数箇所または全部)あるいは全部としたりすることができる。」 ク 同段落【0023】 「圧縮復元層40は、不織布や発泡素材等の圧縮復元性素材により形成することができる。不織布としては、メルトブローン、スパンボンド、エアスルー、ポイントボンド、ニードルパンチ、スパンレース等の製造方法から得られる不織布を用いることができる。また、発泡素材としては、ポリウレタン等を用いることができる。」 ケ 段落【0024】 「圧縮復元層40の厚さは適宜定めることができるが、好ましくは1?10mmであり、さらに好ましくは1.5?5.0mmである。過度に厚くなると違和感を生じやすく、過度に薄くなると圧縮復元量が少なくなるため、形状追従性に乏しくなる。」 コ 【図面の簡単な説明】、段落【0043】 「【図1】第1の実施形態の接合加工前の展開図である。 【図2】図1のY-Y断面図である。 【図3】装着状態の概要説明図である。・・・・」 サ 【図1】 「 」 シ 【図2】 「 」 ス 【図3】 「 」 (2)引用例7.(特開2013-52153号公報(甲16)) 引用例7には、次の記載がある。 ア 特許請求の範囲の【請求項1】 「鼻及び口を含む顔面の対象部を覆うマスク本体部と、このマスク本体部の左右両側に設けられた耳に係止するための耳掛け部と、を備えるマスクであって、 前記マスク本体部の鼻及び口を含む顔面の対象部に接触する側の不織布層の表面に、当該不織布層を構成する各繊維を波打つ様に弧状に無数配置して該各繊維の弧状部の頂部を前記鼻及び口を含む顔面の対象部に接触するようにすると共に、前記鼻及び口を含む顔面の対象部に接触する各繊維の前記弧状部を前記不織布の厚さ方向に弾力を持って移動可能に構成したことを特徴とするマスク。」 イ 明細書の段落【0020】 「マスク本体部2は、シート材によって形成されており、このシート材を構成する繊維としては、一般にマスク材料として周知の繊維を用いることができる。 具体的には、マスク本体部2は、羊毛、絹糸、リネン及び錦糸のような天然繊維、レイヨン、アセテートのような再生繊維、ポリエステル、ポリアミド、ビニロン、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、スパンデックスのような合成繊維などの各種繊維で構成することができる。また、より好ましくは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドである。」 ウ 同段落【0026】 「マスク本体部2は、耐久性の観点から複数のシート材からなる積層構造を有することが望ましく、例えば、図2に示すように、最内層4、中間層5、最外層6の3枚のシート材から形成された三層構造を有して構成される。このようにマスク本体部2が三層構造を有することにより、マスク本体部2の耐久性を向上させることができる。」 エ 同段落【0041】 「また、マスク本体部2の中間層5及び最外層6を形成するシート材としては、織布、不織布、編布といった柔軟で通気性を有するシート材を用いることができるが、埃や花粉等の捕捉性に優れるとともに通気性にも優れ、かつ安価に製造できて使い捨てにし易いことから、前記素材の内、不織布を用いることが好ましい。」 オ 同段落【0042】 「また、中間層5及び最外層6を形成する不織布は、特に限定されるものではなく、どのような加工によって製造されたものであっても良い。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ケミカルボンド法、SMS法(スパンボンド不織布とメルトブローン不織布との張り合わせ)等の方法が挙げられる。」 カ 同段落【0043】 「なお、中間層5及び最外層6の少なくとも一方を形成する不織布は、埃、花粉、ウイルス飛沫等の捕捉性を高めるために、フィルター機能を有する不織布により形成されることが望ましい。このフィルター機能を有する不織布としては、例えば、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布などの見掛け密度の高い不織布や、これらの不織布を貼り合わせたSMS不織布を用いることが有効であり、好適には帯電処理を施したメルトブローン不織布が用いられる。」 (3)引用例8.(特開2014-106号公報(甲17) ) 引用例8には、次の記載がある。 ア 特許請求の範囲 (ア)【請求項1】 「複数の不織布シートが重ね合わされた積層体からなる衛生マスク用不織布基材であって、 前記積層体のうち肌に接する側の最内層を形成する不織布シートは、摩擦係数が0.05?0.12であり、かつ、JIS L1096に規定する剛軟度(45°カンチレバー法)が45?60mmであることを特徴とする衛生マスク用不織布基材。」 (イ)【請求項4】 「鼻部及び口部を覆うマスク本体と該マスク本体の両側縁に備えた耳掛け部とで構成される衛生マスクにおいて、 請求項1?3のいずれか一に記載の衛生マスク用不織布基材を前記マスク本体に用いることを特徴とする衛生マスク。」 イ 明細書の段落【0015】 「本発明の衛生マスク用不織布基材は、複数の不織布シートが重ね合わされた積層体からなる。本実施形態では、積層体が、最外層と中間層と最内層の3層の不織布シートで形成されている場合について説明する。」 ウ 同段落【0019】 「[中間層] 中間層の不織布シートは、最外層の不織布シートと同様に、ポリオレフィン系繊維またはポリエステル系繊維で構成される不織布からなる。ポリオレフィン系繊維またはポリエステル系繊維としては、芯部/鞘部が、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)/低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリプロピレン(PP)/ポリプロピレン(PP)などの芯鞘複合繊維のほか、PP単体またはPET単体で構成されるレギュラー繊維が用いられる。」 エ 同段落【0020】 「中間層の不織布シートとしては、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布、メルトブロー不織布、ニードルパンチ不織布を用いることができるが、なかでも花粉や粉塵の捕集性からメルトブロー不織布が好適に用いられる。」 (4)引用例9.(特開2011-167419号公報(甲18) ) ア 特許請求の範囲の請求項1 「着用者の口を覆うマスク本体部と、着用者の耳に掛けられる第1の耳掛け部および第2の耳掛け部を備え、前記第1の耳掛け部および前記第2の耳掛け部は、それぞれ第1の方向に沿って設けられている第1の接合部および第2の接合部によって前記マスク本体部に接合されているマスクであって、 前記第1の耳掛け部は、第1の基部と、前記第1の基部から延び、開口を形成する第1の縁部を有しており、 前記第1の基部の少なくとも一部は、前記第1の接合部によって前記マスク本体部の一方の面に接合されており、 前記第1の縁部は、前記第1の基部から、前記前記第1の方向の一方方向側に延びており、 前記第2の耳掛け部は、第2の基部と、前記第2の基部から延び、開口を形成する第2の縁部を有しており、 前記第2の基部の少なくとも一部は、前記第2の接合部によって前記マスク本体部の前記一方の面に接合されており、 前記第2の縁部は、前記第2の基部から、前記前記第1の方向の他方方向側に延びており、 少なくともマスク着用時には、前記第1の耳掛け部が前記第1の接合部の箇所で前記第1の方向に沿って折り返されるとともに、前記第2の耳掛け部が前記第2の接合部の箇所で前記第1の方向に沿って折り返されることを特徴とするマスク。」 イ 段落【0018】 「マスク本体部20は、好適には、熱可塑性繊維からなる不織布シートが、反着用者側に配置される外側層、フィルター層(中間層)、着用者側に配置される内側層の3層に積層された積層シートにより形成される。不織布シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、サーマルボンド法、スパンレース法、ポイントボンド法、メルトブロー法、ステッチボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法等により製造され、目付が10?150g/m^(2)のものが用いられる。外側層および内側層を形成する不織布シートとしては、通気性と肌触りがよいものが、また、フィルター層を形成する不織布シートとしては、通気性と遮断性(捕集性)がよいものを用いるのが好ましい。」 (5)引用例10.(実願昭62-70944号(実開昭63-182766号)のマイクロフィルム(甲12)) 引用例10には、次の事項が記載されている。 ア 2.実用新案登録請求の範囲 「所要形状に裁断形成されたマスク本体の両端に耳部を形成し、この耳部を内側又は外側に折り返し、折り返し部の内側に耳掛用ゴム紐を挾み、折り返し耳部を接着剤でマスク本体に接着して耳掛け紐を取付ける防塵マスクの耳掛け紐取付装置。」 イ 4.図面の簡単な説明 「図面は本考案の実施例を示すものにして、・・・・第3図は耳掛け紐を取付けたマスクの正面図である。 1…マスク本体、2…耳片、3…耳掛け紐。」 ウ 第3図 「 」 (6)引用例11.(特開昭61-25572号公報(甲13)) 引用例11には、次の記載がある。 ア 2.特許請求の範囲の項 「(1)ほぼ鼻と口とを覆う充分な大きさのシート状繊維層と、この繊維層の左右両端部にループを形成するように取付けた紐またはバンドとからなるマスクにおいて、前記繊維層は少なくとも内・外二層重ね合わせると共に、その間には活性炭繊維の不織布シートを介挿した多重積層構造とし、紐またはバンドが長短伸縮調節可能にしたことを特徴とする簡易防毒防塵マスク。」 イ 4.図面の簡単な説明 「・・・第3図は同上マスクの他の実施例の斜視図である。 1・・・・・・・・・マスク部 2・・・・・・・・・係止具 10・・・・・・・・マスク 11・・・・・・・・内層 12・・・・・・・・中間層 13・・・・・・・・外層」 ウ 第3図 「 」 (7)引用例12.(実願昭60-70438号(実開昭61-185448号)のマイクロフィルム(甲14 )) 引用例12には、次の記載がある。 ア 2.実用新案登録請求の範囲 「1 ガーゼ(1)を三つ折りの重ね合わせとし、これが両側に耳掛けゴム紐(2)を取付け、ガーゼ正面の周縁を上向きコ字形に縫着(3)し、内部に仕切(4)を設けたマスク(A)を構成し、該マスク(A)の仕切(4)の前方には真綿状に緻密に交錯した細繊維(5)をガーゼ袋(6)に収納し、該ガーゼ袋(6)の上縁にはビニール細線(L)を縁取りしてなる防塵フイルター(B)を、後方には活性炭素不織布の防毒フイルター(C)を夫々装填してなることを特徴とする防塵防毒マスク。」 イ 4.図面の簡単な説明 「第1図は一部切り欠き正面図・・・ 尚、図中符号 (A)・・・マスク (1)・・・ガーゼ (2)・・・耳掛けゴム紐 (3)・・・縫着部 ・・(省略)・・ (B)・・・防塵フイルター ・・(省略)・・」 ウ 第1図 「 」 (8)引用例13.(特開2000-289132号公報(甲19)) 引用例13.には、次の記載がある。 ア 特許請求の範囲の【請求項1】 「不織布層と、 前記不織布層の表面に塗工された砥粒層とを備える不織布シート。」 イ 明細書の段落【0035】 「・・・・ 圧縮特性: 1/100m^(2)の試料を用い、ハンディ圧縮試験機(カトーテック株式会社製 KES-G5 )で測定。WC(圧縮仕事量)、RC(圧縮レジリエンス)、LC(圧縮線形性)、EMC(50gf/cm^(2)加重時の圧縮率)で評価した。WCが大きいほど圧縮され易く、RCが100に近いほど回復性が良く、LCが1に近いほど圧縮剛く、EMCが100に近いほど圧縮性が良いことを示す。」 ウ 実施例(段落【0021】) 「【実施例】不織布層の材料や処理方法を種々変更して不織布シートを製造し、その特性や性能を測定評価した。 〔不織布層〕」 (ア)製造例1(段落【0021】?【0022】) 「親水性繊維層(レーヨン2d*44mm)に、ウォータージェット処理を施した。ウォータージェット処理装置として、一対の噴出口(孔径0.1mm)が1mm間隔で配置されているととにも、この一対1組の噴出口が5mm間隔で配置された噴射装置を用いて、間欠処理を行った。圧力は50kgf/cm^(2)であった。 処理後の親水性繊維層に疎水性繊維層(NBF-SH2d*51mm:ダイワボウ社製)を重ねて、前記同様のウォータージェット間欠処理を行い、両繊維層を絡合一体化させた。このときの圧力は100kgf/cm^(2)であった。」 (イ)製造例2(段落【0022】?【0023】) 「親水性繊維層(レーヨン0.8d*38mmが80%とPET6d*51mmが20%)に、前記同様のウォータジェット間欠処理(圧力50kgf/cm^(2) )を行った。 処理後の親水性繊維層に、疎水性繊維層(NBF-SH2d*51mm)を重ねて、前記同様のウォータージェット間欠処理(圧力100kgf/cm^(2))を行い、両繊維層を絡合一体化させた。」 (ウ)製造例3(段落【0023】?【0024】) 「親水性繊維層(レーヨン0.8d*38mmが80%とPET6d*51mmが7%とPET3D*51mmが13%)に、前記同様のウォータジェット間欠処理(圧力50kgf/cm^(2))を行った。 処理後の親水性繊維層に疎水性繊維層(NBF-SH2d*51mm)を重ねて、前記同様のウォータージェット間欠処理(圧力100kgf/cm^(2))を行い、両繊維層を絡合一体化させた。 (エ)製造例4(段落【0024】?【0025】) 「親水性繊維層(レーヨン2d*51mmが80%とPET6d*51mmが7%とPET3D*51mmが13%)に、前記同様のウォータジェット間欠処理(圧力50kgf/cm^(2))を行った。 処理後の親水性繊維層に疎水性繊維層(NBF-SH2d*51mm)を重ねて、前記同様のウォータージェット間欠処理(圧力100kgf/cm^(2))を行い、両繊維層を絡合一体化させた。」 (オ)製造例5(段落【0025】?【0026】) 「疎水性繊維層(NBF-SH2d*51mm)の全面に1mm間隔で均等にウォータージェット処理(圧力30kgf/cm^(2))を行った。 処理後の疎水性繊維層を、親水性繊維層(レーヨン2d*51mmが80%とPET6D*51mmが20%)の両面に重ね、前記同様のウォータージェット間欠処理(圧力100kgf/cm^(2))を行い、両繊維層を絡合一体化させた。 (カ)製造例6(段落【0026】?【0027】) 「疎水性繊維層(NBF-SH2d*51mmが70%と綿繊維30%)の全面に1mm間隔で均等にウォータージェット処理(圧力30kgf/cm^(2))を行った。 処理後の疎水性繊維層に、親水性繊維層(レーヨン2d*51mmが80%とPET6D*51mmが20%)を重ね、前記同様のウォータージェット間欠処理(圧力100kgf/cm^(2))を行い、両繊維層を絡合一体化させた。」 (キ)製造例7(段落【0027】?【0028】) 「疎水性繊維層(NBF-SH2d*51mmが10%とPET2d*51mmが90%で20g/cm^(2)のウェブ)の全面に一様なウォータージェット処理(圧力30kgf/cm^(2))を行った。このウォータージェット処理後の疎水性繊維層の上に、同じ組成の疎水性繊維層を重ねて、さらにウォータージェット全面処理(圧力20+50kgf/cm^(2))を行った。 親水性繊維層(レーヨン2d*51mmを60%と羊毛繊維40%で20g/cm^(2)のウェブ)の全面に一様なウォータージェット処理(圧力30kgf/cm^(2))を行った。前工程で得られた疎水性繊維層の上に、上記ウォータージェット処理後の親水性繊維層を3枚と、同じ組成の親水性繊維層とを順次重ね、前記同様のウォータージェット間欠処理(圧力150kgf/cm^(2))を行い、5枚の繊維層を絡合一体化させた。」 (ク)製造例8(段落【0029】?【0030】) 「親水性繊維層(レーヨン2d*51mmが80%とPET6d*51mmが7%とPET3D*51mmが13%)に、噴流口(孔径0.08mm)が1mm間隔で均等に配置されたウォータージェット処理装置を用いて、全面に一様なウォータージェット処理(圧力50kgf/cm^(2))を行った。 処理後の親水性繊維層に疎水性繊維層(NBF-SH2d*51mm)を重ねて、前記同様のウォータージェット全面処理(圧力100kgf/cm^(2))を行い、両繊維層を絡合一体化させた。」 (ケ)製造例9(段落【0030】?【0031】) 「疎水性繊維層(NBF-SH2d*51mmが70%と綿繊維30%)の全面に1mm間隔で均等にウォータージェット処理(圧力30kgf/cm^(2))を行った。 処理後の疎水性繊維層に、親水性繊維層(レーヨン2d*51mmが80%とPET6D*51mmが20%)を重ね、前記同様のウォータージェット全面処理(圧力100kgf/cm^(2))を行い、両繊維層を絡合一体化させた。」 (コ)製造例10(段落【0031】) 「親水性繊維と疎水性繊維とを混合して抄紙することで湿式製造法による不織布を製造した。」 エ 測定結果 (ア)段落【0036】、【表1】 「 」 (イ)段落【0037】、【表2】 「 」 6 判断 (1)取消理由1について ア 甲1発明を主引用例とした検討 上記4(1)イ(イ)で認定したように甲1発明は、「粉じん対策に使用する防じんマスク」であると認められる。本件発明1、2、4は、いずれも「不織布マスク(但し、除染や粉じん対策に使用する防じんマスクを除く)。」と特定されており、除染や粉じん対策に使用する防じんマスクを包含しない発明となっているから、本件発明1、2、4は、公然実施をされた甲1発明とは実質的に相違する(以下「甲1相違点」という。)。 イ 甲3A発明を主引用例とする検討 上記4(2)イで検討したように、甲3A発明は、本件優先日前に実施されたとは認められないから、対比するまでもなく、本件発明1、2、4は、甲3A発明に基づく新規性違背があるとはいえない。 ウ 小括 本件発明1、2、4は、公然実施をされた発明と認めることはできず、特許法第29条第1項第2項に該当することで特許を受けることができない発明とはいえないから、本件発明1、2、4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当することを理由として取り消すことはできない。 (2)取消理由2.1について ア 取消理由2.1は、甲1発明を主引用例とする主張である。上記(1)イで検討したように、本件発明1は、甲1相違点で、甲1発明と相違する。 イ 上記4(1)で認定したように、甲1発明を防じん用マスク以外のマスクとして用いることは、甲1及び甲2には、記載も示唆もないことである。 ウ そして、防じん用マスク以外のマスクが、引用例6等に記載のように周知技術であったとしても、上記4(1)ウにおいて認定した甲1発明は、防じん不織布マスクの製品自体であるから、甲1発明自体から、「前記マスク本体は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが1.451gf・cm/cm^(2)であり、」かつ「前記緩衝層は、本件優先日後にKESシステムにより測定された圧縮特性WCが1.016gf・cm/cm^(2)である」という条件を満たしつつ、甲1発明を防じん用マスク以外のマスクに転用しようとする動機付けを把握することは困難であるし、そのような動機付けが存在することを示す証拠はない。したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものということはできない。また、本件発明1を包含し、さらに特定を加えた本件発明2?4についても同様である。 エ 小括 取消理由2.1は理由がなく、本件発明1?4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないので、本件発明1?4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 (3)取消理由2.2について ア 取消理由2.2は、引用例3?5(甲3B発明、甲3C発明及び甲9発明)を主引用例とした主張である。それらの引用例と本件発明1とは甲1相違点と同じ相違点で相違しているから、(2)アないしエにおける検討と同様に、本件発明の進歩性を否定することはできない。 イ 小括 取消理由2.2は理由がなく、本件発明1?4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないので、本件発明1?4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 (4)取消理由2.3について ア 甲15発明について 上記5(1)に摘記した本件優先日前に頒布された引用例6(甲15)には、次の発明が記載されている。 「口及び鼻先を含む顔面の対象部位を覆う本体部10と、この本体部を耳に掛け止めるための係止部20とを有するマスクにおいて、 少なくとも前記本体部の一部または全部が、外側層30、内側層50およびこれらの間に配置された圧縮復元層40からなる三層構造を有し、 圧縮復元層は、メルトブローン、スパンボンド、エアスルー、ポイントボンド、ニードルパンチ、スパンレース等の製造方法から得られる不織布であり、 圧縮復元層の圧縮レジリエンスRCが50%以上であることを特徴とするマスク。」 イ 対比判断 (ア)甲15発明における「口及び鼻先を含む顔面の対象部位を覆う本体部10」、「本体部を耳に掛け止めるための係止部20」、「外側層30」、「圧縮復元層40」、「内側層50」は、それぞれ、本件発明1における「使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体」、「マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部」、「最外層」、「中間層」、「口元層」に相当する。 (イ)本件発明1における「中間層」は「緩衝層」を含むことから、「中間層」は、「緩衝層」そのものでもよいことから、甲15発明における「不織布である圧縮復元層40」は、「不織布からなる緩衝層」に相当する。 (ウ)甲15発明における「圧縮レジリエンスRC」とは、前記第2、2(3)において説明されている圧縮回復性をしめすRCであるから、KESシステムにより測定されていることがわかる。 ウ 一致点 そうすると、本件発明1と甲15発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有した不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として、不織布からなる緩衝層を含み、 前記緩衝層は、KESシステムにより測定された圧縮特性が所定の範囲である、不織布マスク。」 エ 相違点 本件発明1と甲15発明とは、以下の点で相違する。 <相違点> (ア)相違点1 本件発明1は、「プリーツ加工型」であるのに対し、甲15発明においては、その点が明らかでない点。 (イ)相違点2 緩衝層の不織布について、本件発明1においては、「ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、アクリレート系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む」のに対して、甲15発明においては、材質が明らかでない点。 (ウ)相違点3 マスクの用途に関し、本件発明1においては、除染作業や粉じん対策に使用する防じんマスクを除かれているのに対して、甲15発明ではその点が明らかでない点。 (エ)相違点4 緩衝層の圧縮特性に関し、本件発明1においては、「圧縮特性WCが0.4?2.0gf・cm/cm^(2)である」とされているのに対し、甲15発明においては、圧縮特性RCが50%以上とされている点。 (オ)相違点5 マスク本体の圧縮特性に関し、本件発明1においては、「KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.5?2.0gf・cm/cm^(2)であ」るのに対し、甲15発明においては、明らかでない点。 オ 相違点についての判断 (ア)相違点1について 甲15発明においては、上記5(1)エに摘記したように、「図3に示すように、口及び鼻先と対向する部分がその周囲部分よりも外側に膨出する立体形状を有する立体マスクとされる。なお、この立体形状は、立体的な寸法関係のみにより形成されるものであり、素材の伸縮やプリーツ等の伸縮構造を要せずに立体となるものである。」とされているのであるから、あえてプリーツ加工型を採用することには、阻害事由があり、相違点1は、当業者が容易に想到し得ることということはできない。なお、上記5(1)オに「本発明は立体化手段に限定されるものではない。」との記載はあるが、この記載は、上記5(1)ア(ア)に摘記した甲15の請求項1に立体化に関する限定がないことを説明していると解され、プリーツ加工型とすることを示唆するものとはいえない。 (イ)相違点2について マスク用の不織布に用いられる繊維として、引用例7(甲16)の前記5(2)イに摘記した「より好ましくは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドである。」、または、引用例8(甲17)の前記5(3)ウに摘記した「中間層の不織布シートは、最外層の不織布シートと同様に、ポリオレフィン系繊維またはポリエステル系繊維で構成される不織布からなる。」との記載されているように、本件発明1に規定された材質を用いることは、本件優先日前から周知技術である。したがって、相違点2は、当業者が容易に想到することができることである。 (ウ)相違点3について 甲15発明は、防じんマスクとであるとの特定はなく、引用例6(甲15)を精査しても、作業時に用いるものともいえないから、相違点3は実質的な相違点ではない。 (エ)相違点4及び5について a 引用例13(甲19)について 前記5(8)ウ?エで摘記したように、製造例1、3?10まで、各種の条件で、不織布を製造し、その不織布の圧縮特性WCと圧縮特性RCとが測定されたものである。なお、引用例13(甲19)には、不織布マスクに関する記載は見当たらない。 b 本件申立人は、上記製造例のうち、圧縮特性RCが50%であるものは、圧縮特性WCが0.4以上であることを指摘し、甲15発明における圧縮特性RCが50%以上であることから、圧縮特性WCが、0.4以上であることが推認できると主張する。 c しかしながら、前記第3、2(3)に摘記したように、圧縮特性WCは、前記第3、2(3)ウに摘記した図3の、a+bの面積であるのに対し、圧縮特性RCは、b/(a+bの面積)の面積であるので、それらの間に相関関係があるとはいえない。また、引用例13(甲19)におけるWCとRCとの関係が、甲15発明において成り立つとも考えられない。 d 取消理由2.3において提示された他の引用例を検討しても、圧縮特性WCに関しては記載も示唆もないから、相違点4の緩衝層の圧縮特性WCを数値限定すること自体当業者が容易に想到できることではない。さらに、相違点5のマスク自体の圧縮特性WCについても、同様である。 カ 小括 上記のように、本件発明1と甲15発明との相違点1、4及び5は、当業者が容易に想到し得るものということはできない。そうすると、本件発明1は、甲15発明及び引用例7?9、13に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできない。 本件発明1を引用する本件発明2?4についても同様である。 (5)取消理由3について ア 厚みについて 本件特許発明において、シートの厚みは、JIS L 1913A法に従って測定した値である(本件発明4、明細書段落【0034】)。JIS 1913A法には、「試験片に0.5kPaの圧力を10秒間かけて測定する」と記載されており、複数層を有する不織布マスク本体の厚みを測定する際に圧力をかけるため、各層の合計厚みとマスク本体の厚みとが一致しないことは通常に起こり得ることである。したがって、本件明細書の各実施例は実施可能に訂正明細書に記載されていると認められる。 イ 比較例4について 本件明細書に記載されていた比較例4は、上記第2の訂正事項5により削除されたため、比較例4の不明確さは解消されており、取消理由3イは理由がない。 ウ 小括 取消理由3は理由がなく、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合しないものとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではないから、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 (6)取消理由4について ア 本件申立人が主張するように、訂正明細書には、本件発明1に規定された範囲外の圧縮特性WCを持つ緩衝層を有する比較例は記載されていない。しかしながら、このような比較例が記載されていないからといって、訂正後の本件発明1?4の課題である「つけ心地が大幅に改善されたマスクを提供する」(本件明細書の段落【0005】)ことを、訂正明細書全体の記載からみて解決できていないということはできない。本件特許の特許請求の範囲の記載は、以下に示すように、課題が解決できるように記載されているといえる。 イ 実施例1では、圧縮特性WCは、1.122gf・cm/cm^(2)であり、比較例の圧縮特性WCは、4.0gf・cm/cm^(2)であることから、圧縮特性WCが5.0gf・cm/cm^(2)であれば、比較例よりも少しであっても「つけ心地」の改善が期待できるといえる。サポート要件違背があるということはできない。 ウ 上記ア、イで検討したように、取消理由4は理由がなく、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しないものとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではないから、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 (7)取消理由5について ア 前記第2、1(2)において記載した訂正事項2によって、「厚み」の測定条件が特定され、明確性要件違背とはいえなくなったため、取消理由5は理由がない。 イ したがって、取消理由5は理由がなく、本件発明4は、特許法第36条第6項第2号に適合しないものとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではないから、本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。。 (8)平成30年6月15日付け本件申立人の意見書での主張に対して ア 本件発明1の明確性要件についての主張 (ア)本件申立人は、本件発明1における「粉じん」の文言が、どのような粉体を包含するかが、本件訂正明細書に何ら説明されていないので、不明確であって、本件訂正後の本件発明1?4は、特許法第36条第6項第2号の要件に適合しないから、特許法第113条第4号に該当し、本件発明1?4に係る特許は取り消されるべきと主張する。 (イ)しかしながら、上記第2、1(1)における訂正事項1に含まれる訂正は、「不織布マスク」を「不織布マスク(但し、除染作業や粉じん対策に使用する防じんマスクを除く)」と訂正(以下「本件除く訂正」という。)するものであるから、「除染作業や粉じん対策に使用する防じんマスク」が明確であるかどうかが、特許請求の範囲の明確性に影響するものである。本件除く訂正で除かれたマスクは、産業用の防じんマスクであって、花粉などを防ぐためのマスクは除かれていないことは明らかである。「粉じん」の意味は、そのように解釈すべきであって、本件除く訂正により除かれたマスクのカテゴリーは明確であるといえる。 イ 甲1発明が国家検定マスクでないことについて (ア)本件申立人は、甲1発明について、上記4(1)ア(イ)c(f)に摘記したように、国家検定マスクではないことから、本件除く訂正により除かれたものではなく、本件発明が甲1発明と相違しないと主張する。 (イ)しかしながら、上記4(1)ア(イ)b(a)に「粉じんの発生する様々な作業場に」とあり、同a(b)に「簡易マスク」とあることから、国家検定マスクほど厳格でない簡易型の「防じんマスク」であると読み取れる。甲1発明が、本件除く訂正により、除かれる対象外であると認めることはできず、本件申立人の主張は採用できない。 第4 むすび 以上のとおり、本件発明1、2、4は、本件優先日前公然実施をされた引用例1(甲1発明)であるということはできず、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない発明ということはできない。 また、本件発明1?4は、甲1発明、甲3B発明、甲3C発明、甲9発明をそれぞれ主引用例として、これらに基いて当業者が容易に発明をすることができたという理由は成り立たないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできない。 さらに、本件発明1?4は、甲15発明及び引用例7?9、13に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明することできたとも認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできない。 そして、本件発明1?4及び訂正明細書に記載不備があるとは認められないから、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び同第2号の規定に違背するとはいえない。 したがって、本件発明1?4に係る特許は、いずれも特許法第113条第2号または第4号の規定に該当するとはいえず、取消理由通知に記載した理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 マスク 【技術分野】 【0001】 本発明は、つけ心地が大幅に改善された、長時間快適に装着できるマスクに関する。 【背景技術】 【0002】 花粉症対策やウィルス対策、また風邪予防のために、マスクを装着する機会が増加している。また、このような状況に併せて、様々な機能を有するマスクが提案されている。 【0003】 例えば、快適性を有した立体形状マスクとして、内層部に再生セルロース繊維を特定量含む不織布を用いることで、マスク内の空間のムレ感をなくしたマスクが提案されている(特許文献1参照)。 また、アレルゲンやウィルスを不活化する機能を有するマスクとして、濾過層と特定の目付を有する酵素層とを備えることで、着用時に呼吸がしやすいマスクが提案されている(特許文献2参照)。 更に、着用感を向上することができるマスクとして、着用者の顔面に接触する側の表面が、特定の透湿性素材で構成されているマスクが提案されている(特許文献3参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2007-000276号公報 【特許文献2】特開2011-103924号公報 【特許文献3】特開2011-072479号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上記特許文献には、着用時に呼吸がし易いことやムレ感がないこと、即ち着用感を向上させることができるマスクが開示されている。 一方で、マスクを装着する機会が増加したことで、マスクに要求される機能も多様化している。本発明は、マスクに要求される機能の一つとして「つけ心地」に着目し、つけ心地が大幅に改善されたマスクを提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、つけ心地を改善させるために必要なファクターとして、マスク本体の圧縮特性が重要であるとの知見を得た。そしてマスク本体に特定の圧縮特性を付与するため、マスクの中間層に緩衝層を設けることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。 【0007】 本発明は、使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有した不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、前記中間層として、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、アクリレート系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.5?2.0gf・cm/cm^(2)である、不織布マスクである。 【0008】 前記緩衝層は、目付が30g/m^(2)以上の不織布からなることが好ましく、また、ニードルパンチ不織布を用いたものであることが好ましい。 また、前記マスク本体は、厚みが1.0mm以上であることが好ましく、前記口許層は、公定水分率1%以上の繊維を使用した不織布からなることが好ましい。 また、前記中間層として更に捕集フィルターを1層又は2層以上含み、前記口許層と緩衝層とが隣接するよう配置されることが好ましい。 【発明の効果】 【0009】 本発明により、息苦しさ、ムレなどの着用感を低下させることなく、つけ心地が大幅に改善された不織布マスクが提供される。 【図面の簡単な説明】 【0010】 【図1】一実施形態に係るマスクの正面図である。 【図2】図1のA-A線断面におけるマスク本体の層構成を示す模式図である。 【図3】KES試験における圧縮特性を説明するグラフである。 【発明を実施するための形態】 【0011】 以下、本発明について具体的な実施態様を例示して詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、説明に用いる図面は、いずれも本発明に係る不織布マスクを模式的に示すものであって、各構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。 【0012】 本発明に係るマスクは、使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有した不織布マスクである。本発明に係るマスクの一実施形態を図1に示す。 図1に示すマスク10は、マスク本体1及びマスク本体1の両側に設けられた一対の耳掛け部2を有する。マスク10はプリーツ加工型マスクであり、複数の図中横方向の折り目から形成されるプリーツを有する。図1では、マスク本体1の中央に左右方向に沿って箱ヒダ(ボックスプリーツ)が設けられており、中央の箱ヒダより上方向に2つの上向きの車ヒダ(ワンウェイプリーツ)、及び下方向に2つの下向きの車ヒダが設けられている。したがって、マスク10を着用していない状態ではマスク本体1は嵩張らないように略平面形状に折り畳まれており、着用時にマスク本体1を展開すると外側に向かって膨らむ立体形状となるように構成される。 図1中では1つの箱ヒダ、2つの上向きの車ヒダ及び2つの下向きの車ヒダが形成されているが、本発明においてプリーツ形状はマスク中央の箱ヒダに対して上下独立にそれぞれ0?3つの車ヒダが形成されていてよく、1?2つの車ヒダが形成されていることが好ましい。また、本発明に係るマスクは全て車ヒダで構成されていてもよく、その場合はマスク本体1の左右方向に1?6つの車ヒダが形成されていればよい。 【0013】 また、マスク本体1の上辺部分にはノーズフィッターを設けてもよく、例えば金属薄板やポリエチレン薄板、ポリプロピレン薄板をノーズフィッターとして使用することができる。 さらに、マスク本体1の中央部には、着用時のマスク形状保持のためにマウスバーを設けてもよく、その素材はノーズフィッターに使用可能なものと同じものが適用できる。 なお、本発明に係るマスクは、プリーツ加工されていない平面マスクとすることもできる。 【0014】 マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造である。 中間層としては、少なくとも緩衝層を含み、これ以外にも捕集フィルターや抗菌フィルターなどを有してもよい。層構成の一例を図2に示す。 図2は、図1のA-A線断面におけるマスク本体の層構成を示す模式図であり、図中右の顔面側から、口許層6、緩衝層5、2層のフィルター層4、及び最外層3が順に積層された構成を有する。本発明では、これ以外の層を含んでもよく、また、フィルター層を省略したり、層の数を変更してもよい。 【0015】 前記マスク本体は、KESシステムにより測定された圧縮特性WC(gf・cm/cm^(2))が0.5以上である。マスク本体がこのような圧縮特性を有することで、つけ心地の良いマスクを達成できることに、本発明者らは到達した。圧縮特性WC(gf・cm/cm^(2))は0.6以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることが更に好ましく、0.85以上であることが特に好ましい。一方圧縮特性WCは高すぎると口許のムレ感や息苦しさなどを引き起こして使用感が低下する傾向にあることから、通常2.0以下であり、1.8以下であることが好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.5以下であることが更に好ましい。 【0016】 また、同じくKESシステムにより測定された、圧縮特性WCを算出するための初期厚みT_(0)(mm)が1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましく、1.6以上であることが特に好ましい。一方上限は特段限定されないが、通常4.0以下であり、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.8以下であることが更に好ましく、2.5以下であることが特に好ましい。 加えて、同じくKESシステムにより測定された、圧縮特性WCを算出するための最大圧縮時の厚みT_(M)(mm)が0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.6以上であることが更に好ましい。一方上限は通常1.2以下であり、1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.75以下であることが更に好ましく、0.7以下であることが特に好ましい。 圧縮特性WCを算出する際のT_(0)、T_(M)が上記範囲にあることで、本発明に係るマスクが実現するつけ心地を達成するための手段である圧縮特性WCを、上記範囲に調整でき易くなる。なお、上記T_(0)はマスク本体の厚みを表している。 【0017】 本発明において、圧縮特性WC、T_(0)、T_(M)は以下の方法により測定できるが、圧縮特性の測定は、例えば「風合いと衣服 要点のやさしい解説 川端季雄 繊維機械学会誌(繊維工学)Vol.33 No.2(1980年)(以下、参考文献1とも称する。)」を参照することができる。 測定に用いる測定機器は、例えばカトーテック株式会社製 KESFB3-AUTO-A 自動化圧縮試験機を用いることができるが、これ以外の測定機器であって、上記参考文献1に記載された測定方法を実現できる測定機器を用いてもよい。KESFB3-AUTO-Aを用いる場合、不織布への加圧板の面積は2.0cm^(2)で行い、圧縮変形速度は0.02mm/secとし、最大圧縮荷重を50gf/cm^(2)とする。 なお、マスク本体の圧縮測定を測定する際には、プリーツ加工型のマスクであればマスクを展開した状態、即ち各層が1層ずつ積層している状態で測定する。 【0018】 図3に、圧縮特性WCを測定し、算出するためのグラフを示す。 図3中、y軸方向(縦軸方向)は不織布への圧力P(gf/cm^(2))を示し、図中x軸方向(横軸方向)は不織布の厚みT(mm)を示す。 図3中x軸上のBは圧力Pが0である場合の不織布の厚みT_(0)を示し、図中x軸上のCは圧力Pが最大圧縮荷重である50gf/cm^(2)である場合の不織布の厚みT_(M)を示す。そしてWCは、TがT_(0)からT_(M)におけるPの積分値、即ち図中のa+bの面積として算出される。 【0019】 一方で、図3中の2本の曲線のうち、P値が大きい側の曲線(図中上方に位置する曲線)は、不織布に圧縮荷重を掛けていく際の厚みTの動きを示し、P値が小さい側の曲線(図中下方に位置する曲線)は、不織布から圧縮荷重を開放する際の厚みTの動きを示す。圧縮特性は上記WCの他、圧縮かたさを示すLC、及び圧縮回復性を示すRCも存在し、以下のように定義される。 LC:(a+bの面積)/△ABCの面積 RC:bの面積/(a+bの面積) 本発明ではこれらの圧縮特性のうち、圧縮特性WCが特定の範囲を満たすことで、マスクのつけ心地が劇的に改善されることを見出したものである。 【0020】 マスク本体が、上記圧縮特性を満たすためには、マスクの中間層に少なくとも緩衝層を含むことが必要である。 緩衝層は、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、アクリレート系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなり、1種の繊維からなる不織布であってもよく、2種以上の繊維からなる混合不織布であってもよい。 2種以上の繊維からなる混合不織布としては、例えばアクリレート系繊維とポリプロピレン系繊維との混合不織布、アクリレート系繊維とポリエステル系繊維との混合不織布、レーヨン系繊維とポリプロピレン系繊維との混合不織布、などが挙げられ、吸湿性能を向上させる観点からは、アクリレート系繊維を含むことが好ましい。 なお、本発明に使用するアクリレート系繊維は、アクリレート系繊維にヒドラジン系化合物による架橋の導入及び加水分解並びに必要なら中和により金属塩型カルボキシル基の導入を施されてなる繊維であることが好ましい。このような架橋型ポリアクリレート系繊維としては、流通しているものとして例えば東洋紡株式会社製の「エクス(登録商標)」、「モイスケア(登録商標)」、「ディスメル(登録商標)」、「エチケット(登録商標)」、「モイスファイン(登録商標)」等が挙げられる。 【0021】 本発明では、緩衝層を構成する不織布として、目付が大きい不織布を用いることが好ましく、30g/m^(2)以上であることが好ましく、40g/m^(2)以上であることがより好ましく、45g/m^(2)以上であることが更に好ましく、50g/m^(2)以上であることが特に好ましい。上限は通常80g/m^(2)以下であり、70g/m^(2)以下であることが好ましい。このように目付が大きい不織布を用いることで、つけ心地が大きく改善されたマスク本体とすることができる。 なお、通常マスクにおいては着用感を考慮して、口許のムレや息苦しさを防ぐために目付が20g/m^(2)程度の不織布が使用される。本発明では、このように通常マスクには用いられない目付の不織布を採用することで、つけ心地が大きく改善されることを見出したものである。 【0022】 また、緩衝層の厚みは0.3mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましい。また通常1.5mm以下であり、より好ましくは1.0mm以下である。ここで、厚みの測定方法はJIS L 1913A法(一定圧力0.5kPa)に従うものとする。 【0023】 また、緩衝層は、上記KESシステムにより測定された圧縮特性WC(gf・cm/cm^(2))が通常0.4以上であり、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることが更に好ましく、0.8以上であることが特に好ましい。また通常2.0以下であり、1.8以下であることが好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.5以下であることが更に好ましい。緩衝層の圧縮特性WCを上記範囲とすることで、マスク本体の圧縮特性WCを所望の範囲とし易くなる。 緩衝層の圧縮特性WCを上記範囲とするためには、緩衝層を構成する不織布の目付を大きくしたり、緩衝層の厚みを厚くするなどにより達成することができる。 【0024】 緩衝層を構成する不織布は、既知の製造方法により製造することができる。具体的には、スパンボンド、サーマルボンド、スパンレース、エアスルー、メルトブロー、ニードルパンチなどが適用される。本発明においては、ニードルパンチ又はエアスルーで製造した不織布が好ましく適用される。緩衝層に、ニードルパンチ又はエアスルーで製造した不織布を採用することで、圧縮特性WCの過度な上昇を抑えつつ好ましい厚みに調節することが容易になる。また、ニードルパンチで製造した不織布は嵩高く毛羽立つため、ふんわりと柔らかい風合いにすることが容易であり、本発明の緩衝層にはニードルパンチで製造した不織布を採用することが最も好ましい。また、緩衝層は単一の製法で製造された不織布を単層又は2層以上の複層で使用してもよく、さらに複数の製造方法で製造されたそれぞれの不織布を積層又は貼りあわせたものを使用しても良い。さらに、本発明の緩衝層は口許層及び/又は最外層と一体に形成されていてもよい。 【0025】 本発明において最外層の不織布は、特段限定されず一般的にマスクの材料として周知の繊維を使用できる。具体的にはポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、ナイロン系繊維、アクリレート系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、ポリエチレン系繊維などが挙げられる。これら1種の繊維からなる不織布であってもよく、2種以上の繊維からなる混合不織布であってもよい。 【0026】 これらの中でも、公定水分率が1%以上を有する繊維を使用することが好ましい。公定水分率が1%以上の繊維としては、例えば、レーヨン系繊維、ナイロン系繊維、アクリレート系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維が挙げられ、特にナイロン系繊維が好ましい。なお、公定水分率とは、20℃60%RHの環境下において繊維が有する水分量をいう。 最外層の不織布の目付は、40g/m^(2)以下であることが好ましく、35g/m^(2)以下であることがより好ましく、30g/m^(2)以下であることが更に好ましい。一方、10g/m^(2)以上であることが好ましく、15g/m^(2)以上であることがより好ましい。 【0027】 本発明において口許層の不織布は、特段限定されず一般的にマスクの材料として周知の繊維を使用できる。具体的にはポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、ナイロン系繊維、アクリレート系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、ポリエチレン系繊維などが挙げられる。これら1種の繊維からなる不織布であってもよく、2種以上の繊維からなる混合不織布であってもよい。 【0028】 これらの中でも、公定水分率が1%以上の繊維を使用することが好ましい。公定水分率が1%以上の繊維としては、例えば、レーヨン系繊維、ナイロン系繊維、アクリレート系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維が挙げられ、特にナイロン系繊維が好ましい。ナイロン系繊維等の公定水分率が1%以上の繊維を使用した不織布を採用することで、一般的なマスクの口許層に使用されているポリプロピレンやポリエチレンなどの素材よりも水分率が高く肌なじみがよくなり、更に繊維が柔らかいことから、つけ心地が改善する傾向にある。 口許層の不織布の目付は、40g/m^(2)以下であることが好ましく、30g/m^(2)以下であることがより好ましく、20g/m^(2)以下であることが更に好ましい。一方、5g/m^(2)以上であることが好ましく、10g/m^(2)以上であることがより好ましい。 また、口許層を構成する不織布として、繊維が細いものを用いることが好ましい。具体的には、平均繊維直径が18μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。このように繊維が細い不織布を用いることで、より柔らかく、つけ心地が大きく改善されたマスク本体とすることができる。 また、口許層の不織布の厚さは薄いものが好ましく、具体的な厚さとしては0.2mm以下であることが好ましく、0.15mm以下であることが更に好ましい。 【0029】 本発明においては中間層として、フィルター層を有してもよい。フィルター層は、花粉、粉塵、ウィルスなどの微粒子を捕集すべく、微細繊維からなる不織布である。用いられる繊維としては、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維などが挙げられる。 フィルター層の製造方法は既知の方法が用いられるが、メルトブローン法により製造されることが好ましい。 フィルター層に用いる不織布の目付は、40g/m^(2)以下であることが好ましく、30g/m^(2)以下であることがより好ましく、20g/m^(2)以下であることが更に好ましく、15g/m^(2)以下であることが最も好ましい。一方、下限は5g/m^(2)以上であることが好ましく、10g/m^(2)以上であることがより好ましい。 フィルター層は、1層のみ有してもよく、2層以上有してもよいが、微粒子の捕集効率安定化の観点からは2層以上有することが好ましい。 【0030】 本発明においてマスク本体は、最外層と口許層の間に中間層を有する多層構造である。中間層として緩衝層を有する限り層構成はどのようなものでもよいが、口許層と緩衝層が隣接することが、マスクのつけ心地を改善するためには好ましい。 【0031】 本発明のマスク本体に使用される不織布の合計目付は、150g/m^(2)以下であることが好ましく、140g/m^(2)以下であることがより好ましく、130g/m^(2)以上であることがさらに好ましい。一方、85g/m^(2)以上であることが好ましく、90g/m^(2)以上であることがより好ましく、100g/m^(2)以上であることがさらに好ましい。 【0032】 本発明に係るマスクの製造方法は、特段限定されるものではなく、既知の方法に従い、製造することが可能である。例えば、最外層、フィルター層、緩衝層及び口許層を構成する不織布を重ね合わせてマスク本体を製造し、これに必要に応じてプリーツ加工を施し、耳紐、ノーズフィッター、及び/又はマウスバーの設置等の公知慣用の工程を経て完成される。 【実施例】 【0033】 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例の実施形態にのみ限定されないことはいうまでもない。 【0034】 <実施例1> 最外層として目付30g/m^(2)のナイロン不織布(厚み:0.18mm)、 フィルター層として目付10g/m^(2)のポリプロピレン不織布を2層(各々厚み:0.18mm)、 緩衝層として目付55g/m^(2)、厚さ0.70mmの混合不織布(ポリエステルからなるスパンボンド不織布の表層と、アクリレート系繊維及びポリエステル繊維からなるニードルパンチ不織布の裏層を有する不織布)、 口許層として目付20g/m^(2)、厚さ0.14mm、平均繊維径14.4μmのナイロン不織布、 を準備し、常法に従ってこの順で積層した5層構造を有するマスク(厚み:1.1mm、合計目付:125g/m^(2))を製造した。 なお、不織布及びマスクの厚さはJIS L 1913A法(一定圧力0.5kPa)に従って測定した値である。また、平均繊維直径は、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VHX-1000/VH-Z75)を使用し、光学顕微鏡下で繊維の側面から直径を測定した値(n=50)の平均値である。 【0035】 <比較例1> 最外層として目付25g/m^(2)のポリプロピレン不織布(厚み:0.23mm)、 中間層として目付18g/m^(2)のポリプロピレン不織布、 フィルター層として目付10g/m^(2)のポリプロピレン不織布を2層(各々厚み:0.18mm)、口許層として目付18g/m^(2)、厚さ0.2mm、平均繊維径19.3μmのポリプロピレン不織布を準備し、常法に従ってこの順で積層した5層構造を有するマスク(厚み:0.85mm、合計目付:81g/m^(2))を製造した。なお、不織布の厚さおよび平均繊維径の測定条件は実施例1と同じである。 【0036】 <比較例2> 市販のマスク(A社製マスク、2015年4月購入)を使用した。このマスクに使用されている不織布を層ごとに分け、各層の目付及び口許層の厚さを実測したところ、 外側層:目付31g/m^(2)及び厚さ0.3mm、 フィルター層:目付27g/m^(2)及び厚さ0.17mm、 口許層:目付25g/m^(2)及び厚さ0.25mmであり、 この3層構造のマスクの合計目付は83g/m^(2)であった。 なお、不織布の厚さは実施例1と同様の条件で測定した。 【0037】 <比較例3> 市販のマスク(B社製マスク、2015年4月入手)を使用した。このマスクに使用されている不織布を層ごとに分け、各層の目付並びに口許層の厚さ及び平均繊維径を実測したところ、 外側層:目付29g/m^(2)及び厚さ0.29mm、 フィルター層:目付19g/m^(2)及び厚さ0.18mm、 口許層:目付33g/m^(2)、厚さ0.30mm、平均繊維径16.6μmであり、 この3層構造のマスクの合計目付は81g/m^(2)であった。 なお、不織布の厚さ及び平均繊維径は実施例1と同様の条件で測定した。 【0038】(削除) 【0039】 <実施例2> 実施例1のマスクにおいて、緩衝層を目付55g/m^(2)、厚さ0.93mmの混合不織布(ポリエステルからなるスパンボンド不織布の表層と、レーヨン系繊維及びポリエステル繊維からなるニードルパンチ不織布の裏層を有する不織布)を用い、実施例2に係る5層構造を有するマスク(厚み:1.5mm、合計目付:125g/m^(2))を製造した。なお、不織布の厚さおよび平均繊維径の測定条件は実施例1と同じである。 【0040】 <実施例3> 実施例1のマスクにおいて、緩衝層を目付55g/m^(2)、厚さ1.4mmの混合不織布(ポリエステルからなるスパンボンド不織布の表層と、アクリル系繊維及びポリエステル繊維からなるニードルパンチ不織布の裏層を有する不織布)を用い、実施例3に係る5層構造を有するマスク(厚み:1.9mm、合計目付:125g/m^(2))を製造した。なお、不織布の厚さおよび平均繊維径の測定条件は実施例1と同じである。 【0041】 <実施例4> 実施例1のマスクにおいて、緩衝層を目付35g/m^(2)、厚さ0.81mmの混合不織布(エアスルー式のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレンの混合不織布)を用い、実施例4に係る5層構造を有するマスク(厚み:1.3mm、合計目付:105g/m^(2))を製造した。なお、不織布の厚さおよび平均繊維径の測定条件は実施例1と同じである。 【0042】 <実施例5> 実施例1のマスクにおいて、最外層に隣接する位置に緩衝層を配置させ(最外層→緩衝層→フィルター層2層→口許層の順に配置)、実施例5に係る5層構造を有するマスク(厚み:1.1mm、合計目付:125g/m^(2))を製造した。なお、不織布の厚さおよび平均繊維径の測定条件は実施例1と同じである。 【0043】 <実施例6> 実施例1のマスクから、2層のフィルター層をのぞいたものを実施例6に係る3層構造を有するマスク(厚み:0.95mm、合計目付:105g/m^(2))とした。なお、不織布の厚さおよび平均繊維径の測定条件は実施例1と同じである。 【0044】 <緩衝層、口許層及びマスク圧縮特性評価> 実施例及び比較例に係るマスクの、圧縮特性評価を行った。併せて実施例1乃至6の緩衝層の圧縮特性評価、並びに比較例2及び3の口許層の圧縮特性評価を行った。圧縮特性評価は、カトーテック株式会社製 KESFB3-AUTO-A 自動化圧縮試験機を用いた。不織布への加圧板の面積は2.0cm^(2)、圧縮変形速度は0.02mm/sec、最大圧縮荷重を50gf/cm^(2)の条件で評価を行った。 圧縮特性WC、LC、RC、T_(0)、T_(M)の測定結果を表1に示す。 【0045】 【表1】 【0046】 <マスク官能試験評価1> 製造した実施例1、比較例1、及び比較例3に係るマスクの、官能試験評価を行った。具体的には、20代?40代の女性10人及び20代?40代の男性8人の合計18人に、実施例1、比較例1、及び比較例3に係るマスクをそれぞれ1日5時間程度着用してもらい、表2に示す評価項目及び評価基準に基づいて、評価を行った。それぞれの評価項目において該当する評価基準を選択した人数を、表2に示す。 【0047】 <マスク官能試験評価2> 上記マスク官能試験評価1と同様に、製造した実施例2及び実施例4、並びに比較例1に係るマスクの、官能試験評価を行った。結果を表3に示す。 【0048】 【表2】 【0049】 【表3】 【0050】 以上より、本発明に係るマスクは、マスク着用時の肌あたり、マスクのやわらかさ、及びさらさら感といった、つけ心地に関する評価が極めて良好になった一方で、息苦しさやマスク内のムレ感など、使用感に関しても問題ない評価を得られた。これに加え、マスクのにおいも抑制されており、口許層として採用したナイロン不織布、及びつけ心地を改良すべくマスク本体の圧縮特性WCの値を特定の値にする緩衝層が、何らかのにおい低減にも作用したものと考えられる。本発明に係るマスクは、このような予測できない効果も併せて奏する。 【符号の説明】 【0051】 10 マスク 1 マスク本体 2 耳掛け部 3 最外層 4 フィルター層 5 緩衝層 6 口許層 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有したプリーツ加工型不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、アクリレート系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.5?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.4?2.0gf・cm/cm^(2)である、プリーツ加工型不織布マスク(但し、除染作業や粉じん対策に使用する防じんマスクを除く)。 【請求項2】 前記緩衝層は、目付が30g/m^(2)以上の不織布からなる、請求項1に記載の不織布マスク。 【請求項3】 前記緩衝層は、ニードルパンチ不織布を用いたものである、請求項1又は2に記載の不織布マスク。 【請求項4】 前記マスク本体は、JIS L 1913A法に従って測定した厚みが1.0mm以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の不織布マスク。 【請求項5】 使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有した不織布マスクであって、 前記マスク本体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構造であり、 前記中間層として、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、アクリレート系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛糸繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.5?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は.KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.4?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記口許層は、公定水分率1%以上の繊維を使用した不織布からなる、不織布マスク。 【請求項6】 使用者の顔面の少なくとも一部を覆うマスク本体、及び該マスク本体の両側に設けられた一対の耳掛け部、を有した不織布マスクであって、 前記マスク大体は、少なくとも最外層、中間層、及び口許層を有する多層構浩であり、 前記中間層として、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、レーヨン系繊維、アクリレート系繊維、ナイロン系繊維、アセテート系繊維、羊毛系繊維、コットン系繊維、ウレタン系繊維、およびポリエチレン系繊維から選択される少なくとも1種以上を含む不織布からなる緩衝層を含み、 前記マスク本体は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.5?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記緩衝層は、KESシステムにより測定された圧縮特性WCが0.4?2.0gf・cm/cm^(2)であり、 前記中間層として更に捕集フィルターを1層又は2層以上含み、前記口許層と緩衝層とが隣接するよう配置される、不織布マスク。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-09-07 |
出願番号 | 特願2016-559379(P2016-559379) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YAA
(A41D)
P 1 652・ 537- YAA (A41D) P 1 652・ 112- YAA (A41D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 杏子 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 門前 浩一 |
登録日 | 2017-05-19 |
登録番号 | 特許第6143972号(P6143972) |
権利者 | 興和株式会社 |
発明の名称 | マスク |
代理人 | 丹羽 武司 |
代理人 | 下田 俊明 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 丹羽 武司 |
代理人 | 佐貫 伸一 |
代理人 | 下田 俊明 |
代理人 | 佐貫 伸一 |