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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1346603
審判番号 不服2017-14314  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-27 
確定日 2018-12-25 
事件の表示 特願2013-130587「画像処理装置、画像処理方法、及び、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日出願公開、特開2015- 5176、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月21日の出願であって、平成29年1月16日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年6月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成30年7月10日付けの拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知1」という。)に対し、平成30年9月12日に手続補正がされ、平成30年9月25日付けの拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知2」という。)に対し、平成30年11月8日に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年6月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献A-Cに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2013-084256号公報
B.特開2012-194731号公報
C.特開2012-043214号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

ア 当審拒絶理由通知1について

1.本願請求項1-5,9,10に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1,2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-084256号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2010-118015号公報(当審において新たに引用した文献)

イ 当審拒絶理由通知2について

1.本願請求項1-9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.本願請求項1-9に係る発明は、明確でないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成30年11月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取処理、及び、画像データに基づいて用紙上に画像を形成する画像形成処理、の少なくとも一方に関する画像処理を制御する制御部と、前記画像処理の動作に関する操作を受け付けるための操作ボタンを表示して、前記画像処理の操作をユーザから受け付ける、複数点のタッチを検出可能な操作部と、を備え、前記制御部は、表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別し、識別したタッチ点数に応じた設定に基づく各々の前記画像処理を実行する、画像処理装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記操作ボタンとして、前記画像処理の実行を開始するためのスタートボタンを表示し、前記制御部は、前記スタートボタンの操作を検知すると、前記スタートボタンの表示領域内のタッチ点数を識別して、識別したタッチ点数に応じた動作モードでの画像処理の実行を開始する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御部が制御する前記画像処理は、画像データに基づいて用紙上に画像を形成する画像形成処理を含み、前記制御部は、前記操作ボタンがタッチされたとき、前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別し、各々の前記画像形成処理に基づく設定のうち、識別したタッチ点数に応じた前記画像形成処理に基づく設定での画像形成処理を実行する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記制御部が制御する前記画像処理は、原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取処理を含み、前記制御部は、前記操作ボタンがタッチされたとき、前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別し、各々の前記画像読取処理に基づく設定のうち、識別したタッチ点数に応じた前記画像読取処理に基づく設定での画像読取処理を実行する、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作部を操作するための操作子によるタッチが離れた時のタッチ点数に応じた動作モードでの画像処理を実行する、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記操作子によるタッチが継続している間、前記制御部は、前記タッチ点数に応じた動作モードの内容を表示する、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記動作モードの内容を、前記操作子によりタッチしている操作ボタンの近傍に表示する、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取処理、及び、画像データに基づいて用紙上に画像を形成する画像形成処理、の少なくとも一方に関する画像処理を制御するコンピュータが、前記画像処理の動作に関する操作を受け付けるための操作ボタンを表示して、前記画像処理の操作をユーザから受け付けるステップと、表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別し、識別したタッチ点数に応じた設定に基づく各々の前記画像処理を実行するステップと、を実行する画像処理方法。
【請求項9】
原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取処理、及び、画像データに基づいて用紙上に画像を形成する画像形成処理、の少なくとも一方に関する画像処理を制御するコンピュータに、前記画像処理の動作に関する操作を受け付けるための操作ボタンを表示して、前記画像処理の操作をユーザから受け付けるステップと、表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別し、識別したタッチ点数に応じた設定に基づく各々の前記画像処理を実行するステップと、を実行させるためのプログラム。」

第5 引用文献1、引用発明について
平成30年7月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付与したものである。

ア 段落【0014】-【0029】
「【0014】
<実施例>
図1に、本願に係る実施例として例示される多機能機10のブロック図を示す。多機能機のことを、Multifunction Peripheralと記述することもある。また、Multifunction PeripheralのことをMFPと略すこともある。
【0015】
<多機能機10の構成>
多機能機10は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、電話機能などを有する装置である。多機能機10は、制御部12、タッチパネル50、ハードキー52、印刷部54、スキャン部56、FAX部58、ネットワークインターフェイス60、等を備える。制御部12は、CPU14、ROM16、RAM30、NVRAM(Non Volatile RAMの略)40、等を有する。
【0016】
ROM16は、多機能機10の基本的な動作を制御するための基本機能プログラム18を記憶している。CPU14は、ROM16に記憶されているプログラムに従って様々な処理を実行する。CPU14が実行する処理については、後で詳しく説明する。RAM30は、揮発性のメモリであり、基本機能プログラム18に従って処理が実行される過程で生成される各種データを記憶するための記憶領域である。
【0017】
図1に示すように、多機能機10の上面正面側には、タッチパネル50が設けられている。タッチパネル50は、ユーザの指や、スタイラスが接触または接近された指示座標を検出する機能を有する。スタイラスのことをタッチパネル用ペンと記述することもある。また、タッチパネル50は、各種の画像を表示する機能を有する。図4に、タッチパネル50に表示される待機画面71の表示例を示す。待機画面71は、階層構造のメニュー表示における、最上層の表示画面である。階層構造は、ある階層の表示画面内のボタン画像を選択すると次の階層の画面に遷移し、別のボタン画像が表示される、という構造である。待機画面71には、カスタムボタンB1ないしB4、追加ボタンB5、メニューボタンB6、が表示されている。これらのボタンは、基本機能プログラム18のAPI(Application Program Interface)を使って表示される。
【0018】
カスタムボタンB1ないしB4の各々は、多機能機10の動作に関する動作設定を、予めユーザ好みの設定値に編集した上で割り当てておくことができるボタンである。カスタムボタンB1は、「カスタムスキャン」に関するボタンである。カスタムボタンB1には、予め編集されたスキャン設定を対応付けて記憶しておくことができる。スキャン設定は、スキャン部56でスキャン処理を実行する際の各種の設定(例えば、解像度、ファイル種類、用紙サイズ、など)である。ユーザは、カスタムボタンB1にタッチすることによって、予め編集されたスキャン設定に基づいて、スキャン処理を実行することができる。ここで、「タッチする」あるいは「タッチされる」とは、タッチパネル50上の何れかの座標に、ユーザの指や、スタイラスが接触または接近することを意味する。
【0019】
カスタムボタンB2は、「カスタムコピー」に関するボタンである。カスタムボタンB2には、予め編集されたコピー設定を対応付けて記憶しておくことができる。コピー設定は、コピー処理を実行する際の、各種の設定(例えば、カラー設定、用紙サイズ、コピー部数など)である。コピー処理とは、スキャン部56で読み取った原稿を印刷部54を用いて印刷する処理である。ユーザは、カスタムボタンB2にタッチすることによって、予め編集されたコピー設定に基づいて、コピー処理を実行することができる。
【0020】
カスタムボタンB3は、「カスタム印刷」に関するボタンである。カスタムボタンB3には、予め編集された印刷設定を対応付けて記憶しておくことができる。印刷設定は、印刷部54を用いて印刷処理を実行する際の、各種の設定(例えば、カラー設定、用紙サイズ、両面印刷の有無、など)である。ユーザは、カスタムボタンB3にタッチすることによって、予め編集された印刷設定に基づいて、印刷処理を実行することができる。
【0021】
カスタムボタンB4は、「カスタムFAX」に関するボタンである。カスタムボタンB4には、予め編集されたFAX設定を対応付けて記憶しておくことができる。FAX設定は、FAX部58を用いてFAX送信処理を実行する際の各種の設定(例えば、送信モード、通信速度など)である。ユーザは、カスタムボタンB4にタッチすることによって、予め編集されたFAX設定に基づいて、FAX送信処理を実行することができる。
【0022】
追加ボタンB5は、カスタムボタンの追加に関するボタンである。ユーザは、追加ボタンB5のボタン画像にタッチすることによって、新たなカスタムボタンを待機画面71に表示させることができる。メニューボタンB6は、メニュー画面の表示に関するボタンである。メニューボタンB6のボタン画像がタッチされると、待機画面71よりも下層のメニュー画面が、タッチパネル50に表示される。
【0023】
NVRAM40は、不揮発性のメモリである。NVRAM40は、設定テーブルTB1ないしTB4、および、変更対象設定テーブルTBAを記憶する。設定テーブルTB1ないしTB4はそれぞれ、「カスタムスキャン」「カスタムコピー」「カスタム印刷」「カスタムFAX」用フォーマットの設定テーブルである。多機能機10の製造時に、設定テーブルTB1ないしTB4へ、各設定項目についての初期設定値が設定される。多機能機10の製造時に、バックアップ用の初期設定値が、NVRAM40の、設定テーブルTB1ないしTB4とは異なる領域に記憶される。多機能機10の製造時に、「カスタムスキャン」「カスタムコピー」「カスタム印刷」「カスタムFAX」用の設定テーブルのフォーマットを示すフォーマット情報がNVRAM40に記憶される。設定テーブルTB1は、カスタムボタンB1に対応付けられている、スキャン設定101、特定入力態様102、変更対象設定103を記憶するテーブルである。図7に、設定テーブルTB1の一例を示す。スキャン設定101は、解像度111、ファイル種類112、用紙サイズ113、カラー設定114、の設定項目を備える。解像度111は、スキャン部56で原稿をスキャンする際の解像度である。ファイル種類112は、スキャン処理によって生成された画像データを保存する際の種類(例:PDF、JPEG、ビットマップ、など)である。用紙サイズ113は、原稿のサイズ(例:A4、B4など)である。カラー設定114は、カラーまたはモノクロの何れでスキャン処理を実行するかについての設定項目である。
【0024】
特定入力態様102は、カスタムボタンB1に対応付けられる入力の態様である。特定入力態様102として選択されている入力の態様で、カスタムボタンに対して指示座標が入力されると、後述する設定画面(例:図5の画面)を表示することなく、スキャン設定101に基づいて即座にスキャン処理が開始される。ここで「指示座標が入力される」、あるいは「指示座標を入力する」とは、タッチパネル50上の何れかの座標に、ユーザの指や、スタイラスが接触または接近することを意味する。入力の態様の例としては、長押しやダブルクリックなどが挙げられる。長押しは、カスタムボタンへの指示座標の入力を所定時間以上連続させる入力である。ダブルクリックは、カスタムボタンへの短時間の指示座標の入力を2回続けて行う入力である。
【0025】
変更対象設定103は、カスタムボタンB1に特定入力態様102に設定された入力態様で指示座標が入力された後において、特定の入力数値を入力することにより変更することができる設定である。変更対象設定103には、スキャン設定101のうちの何れか1つを選択することができる。スキャン設定101には、解像度111、ファイル種類112、用紙サイズ113、カラー設定114が含まれる。
【0026】
図8に、設定テーブルTB2の一例を示す。設定テーブルTB2は、カスタムボタンB2に対応付けられているコピー設定201、特定入力態様202および変更対象設定203を記憶するテーブルである。コピー設定201は、解像度211、用紙サイズ212、カラー設定213、コピー部数214、の設定項目を備える。コピー部数214は、コピーを行う部数についての設定項目である。特定入力態様202の設定値は、前述の特定入力態様102の設定値と同様である。変更対象設定203は、カスタムボタンB2に特定入力態様202に設定された入力態様で指示座標が入力された後において、特定の入力数値を入力することにより変更することができる設定である。変更対象設定203の設定値には、コピー設定201のうちの何れか1つを選択することができる。コピー設定201には、解像度211、用紙サイズ212、カラー設定213、コピー部数214が含まれる。
【0027】
図9に、設定テーブルTB3の一例を示す。設定テーブルTB3は、カスタムボタンB3に対応付けられている印刷設定301、特定入力態様302および変更対象設定303を記憶するテーブルである。印刷設定301は、用紙サイズ311、カラー設定312、両面印刷設定313、印刷部数314、の設定項目を備える。両面印刷設定313は、片面印刷または両面印刷の何れを行なうかについての設定である。印刷部数314は、印刷を行う部数についての設定項目である。特定入力態様302の設定値は、前述の特定入力態様102の設定値と同様である。変更対象設定303は、カスタムボタンB3に特定入力態様302に設定された入力態様で指示座標が入力された後において、特定の入力数値を入力することにより変更することができる設定である。変更対象設定303の設定値には、印刷設定301のうちの何れか1つを選択することができる。印刷設定301には、用紙サイズ311、カラー設定312、両面印刷設定313、印刷部数314が含まれる。
【0028】
図10に、設定テーブルTB4の一例を示す。設定テーブルTB4は、カスタムボタンB4に対応付けられているFAX設定401、特定入力態様402および変更対象設定403を記憶するテーブルである。FAX設定401は、送信モード411、用紙サイズ412、送信速度413、の設定項目を備える。送信モード411は、FAX送信時のモード(例えば、ファインモード、通常モードなど)についての設定項目である。送信速度413は、FAX送信時の通信速度についての設定項目である。特定入力態様402の設定値は、前述の特定入力態様102の設定値と同様である。変更対象設定403は、カスタムボタンB4に特定入力態様402に設定された入力態様で指示座標が入力された後において、特定の入力数値を入力することにより変更することができる設定である。変更対象設定403の設定値には、FAX設定401のうちの何れか1つを選択することができる。FAX設定401には、送信モード411、用紙サイズ412、送信速度413が含まれる。
【0029】
図12に、変更対象設定テーブルTBAの一例を示す。変更対象設定テーブルTBAは、設定テーブルTB1ないしTB4における変更対象設定103ないし403に設定可能な設定について、変更対象設定項目511、設定値521ないし525を記憶するテーブルである。変更対象設定項目511は、解像度512、ファイル種類513、用紙サイズ514、カラー設定515、部数516、両面印刷設定517、送信モード518、送信速度519の設定項目を備える。設定値521ないし525は、変更対象設定項目511が備える設定項目についての入力数値1ないし5に対応する設定値である。例えば、解像度512については、入力数値1に対応する設定値521は100dpiであり、入力数値2に対応する設定値522は300dpiであり、入力数値3に対応する設定値523は600dpiであり、入力数値4に対応する設定値524は1200dpiであり、入力数値5に対応する設定値525は2400dpiである。設定値521ないし525のうち、図12において「-」と記載されている設定値は、設定項目について、入力数値に対応する設定値が設定されていないことを示している。例えば、ファイル種類513については、入力数値5に対する設定値が設定されていない。解像度512は、設定テーブルTB1の解像度111に対応している。具体的に、設定テーブルTB1の変更対象設定103に解像度111が設定されている場合を説明する。この場合は、カスタムボタンB1に特定入力態様102に設定された態様で指示座標が入力された後において、入力数値5が入力されると、解像度512について入力数値5に対応する設定値として変更対象設定テーブルTBAに記憶されている2400dpiが、解像度111に設定される。また、この場合に、入力数値1、2、3、4が入力されると、100dpi、300dpi、600dpi、1200dpiが解像度111に設定される。解像度512は、設定テーブルTB2の解像度211にも対応している。すなわち、カスタムボタンB2に特定入力態様202に設定された態様で指示座標が入力された後において、入力数値5が入力されると、2400dpiが、解像度211に設定される。ファイル種類513は、ファイル種類112に対応している。用紙サイズ514は、用紙サイズ113、212、311、412に対応している。カラー設定515は、カラー設定114、213、312に対応している。部数516は、コピー部数203、印刷部数314に対応している。両面印刷設定517は、両面印刷設定313に対応している。送信モード518は、送信モード411に対応している。送信速度519は、送信速度413に対応している。またNVRAM40には、各種のパラメータが記憶されている。記憶されるパラメータの例としては、追加クリック時間、クリック判定時間、が挙げられる。追加クリック時間は、後述する追加クリック操作の有無を判定するための時間である。クリック判定時間は、カスタムボタンに対する指示座標の入力の態様が、クリックであるか長押しであるかを判定するための時間である。これらのパラメータは、予めユーザによって設定されてもよい。」

イ 段落【0034】-【0048】
「【0034】
図3のフローを説明する。図3のフローでは、タッチされたカスタムボタンに対応付けられた動作が、多機能機10で実行される。S102において、CPU14は、待機画面71をタッチパネル50に表示する。図13の表示画面例に示すように、待機画面71には、カスタムボタンB1ないしB4、およびB7が、互いに区別可能な態様で表示されている。具体的には、カスタムボタンB1ないしB4、追加ボタンB5、あるいは、追加されたカスタムボタンB7などうち、いずれか一つを表示するための表示領域であるカスタム表示領域を示す座標が、ROM16に予め記憶されている。ROM16は、複数のカスタム表示領域についての座標を記憶している。複数のカスタム表示領域は、連番が割り当てられており、1番目の表示領域は、もっとも左上に表示される表示領域であり、2番目以降の表示領域もそれぞれ、表示される座標が決まっている。CPU14は、カスタムボタンB1ないしB4を、1番目ないし4番目の表示領域に表示させ、追加カスタムボタン情報がNVRAM40に記憶されていれば、追加カスタムボタン情報に対応するカスタムボタンを5番目の表示領域に表示させる。複数の追加カスタムボタン情報が記憶されていれば、2つ目以降の追加カスタムボタン情報に対応するカスタムボタンを、6番目以降の表示領域に表示させる。そして、CPU14は、もっともカスタムボタンが表示されている表示領域のうち、もっとも後位の表示領域の次の順番の表示領域に、追加ボタンを表示させる。図13は、追加カスタムボタン情報としては追加カスタムボタン情報BD7のみがNVRAM40に記憶されている場合の待機画面71の表示例である。この場合、CPU14は、カスタムボタンB7を5番目の表示領域に表示させ、追加ボタンを6番目の表示領域に表示させる。
【0035】
S104において、CPU14は、カスタムボタンが表示されている表示領域の何れかに指示座標が入力されたか否かを判断する。具体的な判断方法の例を説明する。CPU14は、タッチパネル50上のタッチ点の指示座標を、基本機能プログラム18から取得する。取得された指示座標が、カスタムボタンが表示されている表示領域の何れかを示す座標内に位置する場合には、指示座標が位置しているカスタムボタンに指示座標が入力されていると判断することができる。カスタムボタンが表示されている表示領域の何れにも指示座標が入力されていない場合(S104:NO)にはS104へ戻り、何れかに指示座標が入力された場合(S104:YES)にはS112へ進む。
【0036】
S112において、CPU14は、カスタムボタンに対する指示座標の入力の態様が、シングルクリックであるか、長押しまたはダブルクリックであるか、それ以外の態様であるか、を判断する。具体的な判断方法の例を説明する。

・・・(中略)・・・

【0043】
一方、S112において、指示座標の入力の態様が長押しまたはダブルクリックであると判断された場合(S112:長押しまたはダブルクリック)には、S113へ進む。以下、説明の簡略化のため、S113ないしS118において、カスタムボタンB2へ長押しの態様の指示座標が入力された場合の動作を説明する。なお、カスタムボタンB1、B3、B4に対して長押しまたはダブルクリックの態様の指示座標が入力された場合の動作は、カスタムボタンB2に対して長押しまたはダブルクリックの態様の指示座標が入力された場合の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0044】
S113においてCPU14は、指示座標の入力の態様が、特定入力態様に一致するか否かを判断する。一致しない場合(S113:NO)にはS102へ戻り、一致する場合(S113:YES)にはS114へ進む。本実施形態の説明例では、カスタムボタンB2への指示座標の入力の態様(例えば、長押し)が、設定テーブルTB2に記憶されている特定入力態様202と一致するため(S113:YES)、S114へ進む。なお、CPU14は、S114へ進むときに、設定テーブルTB2に記憶されている設定値を、ロード中設定テーブルとしてRAM30に記憶させる。
【0045】
S114において、CPU14は、特定入力態様の指示座標が入力されたカスタムボタンに対して、数値を追加入力する操作がなされたかを判断する。具体的には、CPU14は、カスタムボタンに特定入力態様の指示座標が入力された時点から、予め定められた追加クリック時間内に、特定入力態様の指示座標が入力されたカスタムボタンの表示領域内で、指示座標が新たに検出されたか否かを判断する。すなわち、追加クリック操作が行われたか否かを判断する。追加クリック操作が行われていない場合(S114:NO)にはS118へ進み、追加クリック操作が行われた場合(S114:YES)にはS116へ進む。
【0046】
S116において、CPU14は、追加クリック操作の回数を計測する。具体的には、カスタムボタンの表示領域内に、指示座標が新たに検出された回数を計測する。そして、計測された追加クリック操作の回数を入力数値と判断し、変更対象設定テーブルTBAに基づいて、ロード中設定テーブルに変更対象設定として記憶されている設定項目の設定値を変更する。本実施形態の説明例では、図8に示す設定テーブルTB2と同等のロード中設定テーブルに変更対象設定203として選択されているコピー部数214の設定値が、クリック操作の回数に応じて1部ずつ増加していく。
【0047】
S117において、CPU14は、追加クリック操作によって変更された設定値を、特定入力態様の指示座標が入力されたカスタムボタンの表示領域内に表示する。本実施形態の説明例では、追加クリック操作が2回行われた場合には、コピー部数214=「3」となる。そして、図6のカスタムボタンの表示例に示すように、カスタムボタンB2の表示領域内の左上隅部に、コピー部数214の設定値=「3部」を表示する。そしてS118へ進む。
【0048】
S118において、CPU14は、ロード中設定テーブルの設定値に従って、カスタムボタンに対応付けられている動作を実行する。このとき、S116において設定値が変更されている場合には、変更後の設定値に従って動作を実行する。本実施形態の説明例では、変更後の設定値に従って、コピー処理が実行される。そしてS102へ戻る。」

ウ 段落【0055】-【0058】
「【0055】
<変形例>
特定入力態様102ないし402として選択される入力の態様は、長押しやダブルクリックに限られない。例えば、3回以上の連続クリック、スライド、フリック、特定の記号やアルファベットを示すジェスチャー入力、複数点タッチ、などが挙げられる。3回以上の連続クリックは、カスタムボタンへの短時間の指示座標の入力を3回以上続けて行う入力である。スライドは、カスタムボタンへのタッチがあり、タッチがされたまま、タッチされている指示座標が一定方向へ移動していく入力のことである。フリックは、カスタムボタンへのタッチがあり、タッチがされたまま、タッチされている指示座標が所定の速さ以上の速さで移動していく入力のことである。また、指示座標がカスタムボタンが表示されている表示領域のいずれかで検出され、その後に指示座標の軌跡がボタン表示領域の外へ移動した場合には、フリックの入力の態様であると判断してもよい。ジェスチャー入力は、カスタムボタンへのタッチがあり、タッチがされたまま、タッチされている指示座標が特定の記号や文字やアルファベットを描くように移動していく入力のことである。例えば、カスタムボタンが表示されている表示領域のいずれかで検出される指示座標の移動軌跡の形状が、予め定められた形状(例えば、丸形、L型、V型など)に対応する場合には、ジェスチャー入力の態様であると判断してもよい。複数点タッチは、2点以上の指示座標の入力が同時期に行われる入力のことである。2点以上の指示座標がカスタムボタンが表示されている表示領域のいずれかで同時に検出された場合には、複数点タッチの入力の態様であると判断してもよい。また、ユーザの指やスタイラスを接触または接近させずとも、離れた位置からなされた指示座標の入力を検知する指示座標検知パネルを、タッチパネル50に換えて用いてもよい。指示座標検知パネルを用いる場合、S112において、CPU14は、カスタムボタンへのタッチによる指示座標の入力があった場合にS132へ進むようにしてもよい。指示座標検知パネルを用いた場合、S112において、CPU14は、指示座標検知パネルから離れた位置からカスタムボタンへの指示座標の入力があった場合にS113に進むようにしてもよい。また、3次元の指示座標を検出できる指示座標検知パネルを用いてもよい。3次元の指示座標を検出できる指示座標検知パネルを用いる場合、S112において、CPU14は、カスタムボタンの表示領域に対応する3次元空間へ指示座標が入力されたまま、指示座標の移動軌跡の形状が、予め定められた3次元の形状に対応する場合には、ジェスチャー入力の態様であると判断してもよい。また、音声入力を特定入力態様として用いてもよい。音声入力を特定入力態様として用いる場合、S112においてCPU14は、カスタムボタンを指定する音声入力があった場合に、S132に進むようにしてもよい。

・・・(中略)・・・

【0058】
追加クリック操作(S114、S116、S118)の受け付けを行わない形態であってもよい。この場合、図3のフローにおいて、指示座標の入力の態様が特定入力態様に一致する場合(S113:YES)には、S118へ進んで、カスタムボタンに対応付けられている動作を実行するとすればよい。また、変更対象設定の設定値を変更するための数値入力の態様は、追加クリック操作に限られない。例えば、スライド、フリック、特定の記号やアルファベットを示すジェスチャー入力、複数点タッチ、などが挙げられる。これらの態様を用いる場合は、S114において、CPU14は、カスタムボタンへの新たなタッチがあった場合に、YESと判断してもよい。スライドを数値入力のために用いる場合は、S116において、CPU14は、カスタムボタンへのタッチがされたままで、タッチされている指示座標が移動していく長さを計測してもよい。CPU14は、タッチされなくなったときに、タッチされてからタッチされなくなるまでの移動の長さに応じて、入力数値が1ないし5のいずれであるかを判断してもよい。CPU14は、判断した入力数値に応じて、変更対象設定の設定値を変更する。フリックを数値入力に用いる場合は、S116においてCPU14は、カスタムボタンへタッチされている指示座標が所定加速度以上で移動してからタッチされなくなった場合に、指示座標の移動の加速度に応じて入力数値1ないし5のいずれであるかを判断してもよい。CPU14は、判断した入力数値に応じて、変更対象設定の設定値を変更してもよい。CPU14は、カスタムボタンへタッチされている指示座標が所定加速度未満で移動してタッチされなくなった場合には、スライドによる数値入力と判断し、カスタムボタンへタッチされている指示座標が所定加速度以上で移動してタッチされなくなった場合には、フリックによる数値入力と判断してもよい。また、CPU14は、カスタムボタンへタッチされている指示座標が所定加速度未満で移動している間は、タッチされてからの指示座標の移動長さに応じて数値を加算していき、所定加速度以上で移動してタッチされなくなった場合には、加速度に応じて、さらに数値を加算するようにしてもよい。ジェスチャー入力を数値入力に用いる場合は、S116においてCPU14は、カスタムボタンへのタッチがされたままで、タッチされている指示座標が描く記号やアルファベットに応じて、入力数値が1ないし5のいずれであるかを判断してもよい。CPU14は、判断した入力数値に応じて、変更対象設定の設定値を変更してもよい。ジェスチャー入力に用いられる記号や文字やアルファベットの例としては、図14(C)に示すような、数字が挙げられる。例えば、CPU14は、「3」が描かれた場合に、入力数値を「3」に決定してもよい。複数点タッチを数値入力に用いる場合は、S116においてCPU14は、同時にいくつの指示座標に対してタッチがなされたのかを計測する。CPU14は、タッチされた指示座標の数に応じて、入力数値が1ないし5のいずれであるかを判断してもよい。CPU14は、判断した入力数値に応じて、変更対象設定の設定値を変更してもよい。また、変更対象設定の設定値を変更するための数値入力の態様は、数値入力のためのオブジェクトを用いてもよい。オブジェクトを用いる場合は、S114において、CPU14は、カスタムボタンへの新たなタッチがあった場合に、YESと判断してもよい。S116において、CPU14は、数値入力のためのオブジェクトをカスタムボタンに重ねて表示させてもよく、あるいは、数値入力のためのオブジェクトをカスタムボタンの横に表示させてもよい。CPU14は、表示させたオブジェクトへの新たな入力に基づいて、入力数値が1ないし5のいずれであるかを判断する。CPU14は、判断した入力数値に応じて、変更対象設定の設定値を変更してもよい。また、オブジェクトを用いる場合の別の例として、CPU14は、S113でYESと判断したときに、数値入力のためのオブジェクトをカスタムボタンに重ねて表示させる、あるいは、数値入力のためのオブジェクトをカスタムボタンの横に表示させてもよい。S114において、CPU14は、表示させたオブジェクトへの新たなタッチがあった場合に、YESと判断してもよい。S116において、CPU14は、表示させたオブジェクトへの新たな入力に基づいて、入力数値が1ないし5のいずれであるかを判断する。CPU14は、判断した入力数値に応じて、変更対象設定の設定値を変更してもよい。オブジェクトの例としては、図14(A)、図14(B)、あるいは図14(D)に示すようなスライダオブジェクトが挙げられる。スライダオブジェクトを表示した場合、S116において、CPU14は、スライダオブジェクトへのスライド入力に応じて入力数値が1ないし5のいずれかであるかを判断してもよい。また、ユーザの指やスタイラスを接触または接近させずとも、離れた位置からなされた指示座標の入力を検知する指示座標検知パネルを、タッチパネル50に換えて用いてもよい。指示座標検知パネルを用いる場合、S114において、CPU14は、指示座標検知パネルから離れた位置からカスタムボタンへの指示座標の入力があった場合にYESと判断するようにしてもよい。指示座標検知パネルを用いる場合、S114において、CPU14は、離れた位置からのカスタムボタンへの指示座標の入力に基づいて、入力数値が1ないし5のいずれであるかを判断してもよい。また、3次元の指示座標を検出できる指示座標検知パネルを用いてもよい。3次元の指示座標を検出できる指示座標検知パネルを用いる場合、S116において、CPU14は、カスタムボタンの表示領域に対応する3次元空間へ指示座標の入力に基づいて、入力数値が1ないし5のいずれであるかを判断してもよい。また、音声入力を数値の追加入力に用いてもよい。音声入力を数値の追加入力に用いる場合、S113においてCPU14は、音声入力があった場合に、YESと判断してもよい。音声入力を数値の追加入力に用いる場合、S116においてCPU14は、音声入力された数値が1ないし5のいずれであるかを判断してもよい。」

エ 【図12】

図12より、「変更対象設定テーブルTBAにおける、入力数値に対する変更対象設定項目の設定値は、解像度の場合、100dpi、300dpi、600dpi、1200dpi、2400dpiであり、ファイル種類の場合、BMP、JPG、PDF、PNGであり、カラー設定の場合、モノクロ、グレースケール、カラーであり、両面印刷設定の場合、片面、両面である」ことを読み取ることができる。

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「多機能機10は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、電話機能などを有する装置であり、制御部12、タッチパネル50、ハードキー52、印刷部54、スキャン部56、FAX部58、ネットワークインターフェイス60、等を備え、制御部12は、CPU14、ROM16、RAM30、NVRAM(Non Volatile RAMの略)40、等を有し、
タッチパネル50に表示される待機画面71には、カスタムボタンB1ないしB4、追加ボタンB5、メニューボタンB6、が表示され、
カスタムボタンB1は、「カスタムスキャン」に関するボタンであり、ユーザは、カスタムボタンB1にタッチすることによって、予め編集されたスキャン設定に基づいて、スキャン処理を実行することができ、
カスタムボタンB2は、「カスタムコピー」に関するボタンであり、ユーザは、カスタムボタンB2にタッチすることによって、予め編集されたコピー設定に基づいて、コピー処理を実行することができ、
カスタムボタンB3は、「カスタム印刷」に関するボタンであり、ユーザは、カスタムボタンB3にタッチすることによって、予め編集された印刷設定に基づいて、印刷処理を実行することができ、
カスタムボタンB4は、「カスタムFAX」に関するボタンであり、
NVRAM40は、設定テーブルTB1ないしTB4、および、変更対象設定テーブルTBAを記憶し、設定テーブルTB1ないしTB4はそれぞれ、「カスタムスキャン」「カスタムコピー」「カスタム印刷」「カスタムFAX」用フォーマットの設定テーブルであり、
設定テーブルTB1は、カスタムボタンB1に対応付けられている、スキャン設定101、特定入力態様102、変更対象設定103を記憶するテーブルであり、
特定入力態様102は、カスタムボタンB1に対応付けられる入力の態様であり、特定入力態様102として選択されている入力の態様で、カスタムボタンに対して指示座標が入力されると、設定画面を表示することなく、スキャン設定101に基づいて即座にスキャン処理が開始され、
設定テーブルTB2は、カスタムボタンB2に対応付けられているコピー設定201、特定入力態様202および変更対象設定203を記憶するテーブルであり、特定入力態様202の設定値は、前述の特定入力態様102の設定値と同様であり、
設定テーブルTB3は、カスタムボタンB3に対応付けられている印刷設定301、特定入力態様302および変更対象設定303を記憶するテーブルであり、特定入力態様302の設定値は、前述の特定入力態様102の設定値と同様であり、
設定テーブルTB4は、カスタムボタンB4に対応付けられているFAX設定401、特定入力態様402および変更対象設定403を記憶するテーブルであり、特定入力態様402の設定値は、前述の特定入力態様102の設定値と同様であり、
変更対象設定テーブルTBAは、設定テーブルTB1ないしTB4における変更対象設定103ないし403に設定可能な設定について、変更対象設定項目511、設定値521ないし525を記憶するテーブルであり、変更対象設定項目511は、解像度512、ファイル種類513、用紙サイズ514、カラー設定515、部数516、両面印刷設定517、送信モード518、送信速度519の設定項目を備え、設定値521ないし525は、変更対象設定項目511が備える設定項目についての入力数値1ないし5に対応する設定値であり、
S104において、CPU14は、カスタムボタンが表示されている表示領域の何れかに指示座標が入力されたか否かを判断し、
S112において、CPU14は、カスタムボタンに対する指示座標の入力の態様が、シングルクリックであるか、長押しまたはダブルクリックであるか、それ以外の態様であるか、を判断し、
S112において、指示座標の入力の態様が長押しまたはダブルクリックであると判断された場合(S112:長押しまたはダブルクリック)には、S113へ進み、
カスタムボタンB2へ長押しの態様の指示座標が入力された場合の動作は、
S113においてCPU14は、指示座標の入力の態様が、特定入力態様に一致するか否かを判断し、カスタムボタンB2への指示座標の入力の態様(例えば、長押し)が、設定テーブルTB2に記憶されている特定入力態様202と一致するため(S113:YES)、S114へ進み、このとき、設定テーブルTB2に記憶されている設定値を、ロード中設定テーブルとしてRAM30に記憶させ、
カスタムボタンB1、B3、B4に対して長押しまたはダブルクリックの態様の指示座標が入力された場合の動作は、カスタムボタンB2に対して長押しまたはダブルクリックの態様の指示座標が入力された場合の動作と同様であり、
S114において、CPU14は、特定入力態様の指示座標が入力されたカスタムボタンに対して、数値を追加入力する操作がなされたかを判断し、具体的には、CPU14は、カスタムボタンに特定入力態様の指示座標が入力された時点から、予め定められた追加クリック時間内に、特定入力態様の指示座標が入力されたカスタムボタンの表示領域内で、指示座標が新たに検出されたか否かを判断し、すなわち、追加クリック操作が行われたか否かを判断し、追加クリック操作が行われた場合(S114:YES)にはS116へ進み、
S116において、CPU14は、追加クリック操作の回数を計測し、計測された追加クリック操作の回数を入力数値と判断し、変更対象設定テーブルTBAに基づいて、ロード中設定テーブルに変更対象設定として記憶されている設定項目の設定値を変更し、
S117において、CPU14は、追加クリック操作によって変更された設定値を、特定入力態様の指示座標が入力されたカスタムボタンの表示領域内に表示し、
S118において、CPU14は、ロード中設定テーブルの設定値に従って、カスタムボタンに対応付けられている動作を実行し、このとき、S116において設定値が変更されている場合には、変更後の設定値に従って動作を実行し、
特定入力態様102ないし402として選択される入力の態様は、長押しやダブルクリックに限られず、例えば、3回以上の連続クリック、スライド、フリック、特定の記号やアルファベットを示すジェスチャー入力、複数点タッチ、などが挙げられ、
複数点タッチは、2点以上の指示座標の入力が同時期に行われる入力のことであり、2点以上の指示座標がカスタムボタンが表示されている表示領域のいずれかで同時に検出された場合には、複数点タッチの入力の態様であると判断してもよく、
変更対象設定の設定値を変更するための数値入力の態様は、追加クリック操作に限られず、例えば、スライド、フリック、特定の記号やアルファベットを示すジェスチャー入力、複数点タッチ、などが挙げられ、
複数点タッチを数値入力に用いる場合は、S116においてCPU14は、同時にいくつの指示座標に対してタッチがなされたのかを計測し、CPU14は、タッチされた指示座標の数に応じて、入力数値が1ないし5のいずれであるかを判断してもよく、CPU14は、判断した入力数値に応じて、変更対象設定の設定値を変更してもよく、
変更対象設定テーブルTBAにおける、入力数値に対する変更対象設定項目の設定値は、解像度の場合、100dpi、300dpi、600dpi、1200dpi、2400dpiであり、ファイル種類の場合、BMP、JPG、PDF、PNGであり、カラー設定の場合、モノクロ、グレースケール、カラーであり、両面印刷設定の場合、片面、両面である、
多機能機10。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「多機能機10」は、「プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能」を有する「装置」であり、「制御部12、タッチパネル50」、「印刷部54、スキャン部56」を備え、「制御部12」は「CPU14」、「NVRAM40」を有している。
そして、「タッチパネル50」に表示される「待機画面71」には、「カスタムボタンB1ないしB4、追加ボタンB5、メニューボタンB6」が表示され、「カスタムボタンB1は、「カスタムスキャン」に関するボタンであり、ユーザは、カスタムボタンB1にタッチすることによって、予め編集されたスキャン設定に基づいて、スキャン処理を実行することができ、カスタムボタンB2は、「カスタムコピー」に関するボタンであり、ユーザは、カスタムボタンB2にタッチすることによって、予め編集されたコピー設定に基づいて、コピー処理を実行することができ、カスタムボタンB3は、「カスタム印刷」に関するボタンであり、ユーザは、カスタムボタンB3にタッチすることによって、予め編集された印刷設定に基づいて、印刷処理を実行することができ」、この「スキャン処理」、「コピー処理」、「印刷処理」は、本願発明1の「原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取処理、及び、画像データに基づいて用紙上に画像を形成する画像形成処理、の少なくとも一方に関する画像処理」に相当する。
また、「CPU14」は、「カスタムボタンB2へ長押しの態様の指示座標が入力された場合」、「指示座標の入力の態様が、特定入力態様に一致するか否かを判断し」、「カスタムボタンB2への指示座標の入力の態様(例えば、長押し)が、設定テーブルTB2に記憶されている特定入力態様202と一致するため」、「設定テーブルTB2に記憶されている設定値を、ロード中設定テーブルとしてRAM30に記憶させ」、「ロード中設定テーブルの設定値に従って、カスタムボタンに対応付けられている動作を実行し」、「カスタムボタンB1、B3、B4に対して長押しまたはダブルクリックの態様の指示座標が入力された場合の動作は、カスタムボタンB2に対して長押しまたはダブルクリックの態様の指示座標が入力された場合の動作と同様であ」るから、「カスタムボタンB1ないしB3」に対応付けられている「スキャン処理」、「コピー処理」又は「印刷処理」を実行するものといえる。
そうすると、「CPU14」を有する「制御部12」は、本願発明1の「原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取処理、及び、画像データに基づいて用紙上に画像を形成する画像形成処理、の少なくとも一方に関する画像処理を制御する制御部」に相当する。

イ 上記アで述べたとおり、引用発明では、「タッチパネル50」に表示される「待機画面71」には、「カスタムボタンB1ないしB4、追加ボタンB5、メニューボタンB6」が表示され、「カスタムボタンB1は、「カスタムスキャン」に関するボタンであり、ユーザは、カスタムボタンB1にタッチすることによって、予め編集されたスキャン設定に基づいて、スキャン処理を実行することができ、カスタムボタンB2は、「カスタムコピー」に関するボタンであり、ユーザは、カスタムボタンB2にタッチすることによって、予め編集されたコピー設定に基づいて、コピー処理を実行することができ、カスタムボタンB3は、「カスタム印刷」に関するボタンであり、ユーザは、カスタムボタンB3にタッチすることによって、予め編集された印刷設定に基づいて、印刷処理を実行することができ」るから、この「タッチパネル50」は、「画像処理の動作に関する操作を受け付けるための操作ボタンを表示して、前記画像処理の操作をユーザから受け付ける」ものといえる。
また、引用発明では、「複数点タッチを数値入力に用いる場合は」、「同時にいくつの指示座標に対してタッチがなされたのかを計測し」、「タッチされた指示座標の数に応じて、入力数値が1ないし5のいずれかであるかを判断し」、「判断した入力数値に応じて、変更対象設定の設定値を変更してもよい」から、「タッチパネル50」が「複数点のタッチを検出可能」であることは明らかである。
そうすると、引用発明の「タッチパネル50」は、本願発明1の「前記画像処理の動作に関する操作を受け付けるための操作ボタンを表示して、前記画像処理の操作をユーザから受け付ける、複数のタッチを検出可能な操作部」に相当する。

ウ 引用発明では、「CPU14」が、「カスタムボタンに対する指示座標の入力の態様が、シングルクリックであるか、長押しまたはダブルクリックであるか、それ以外の態様であるか、を判断し」、例えば、「カスタムボタンB2へ長押しの態様の指示座標が入力された場合の動作は」、「指示座標の入力の態様が、特定入力態様に一致するか否かを判断し、一致する場合」、「設定テーブルTB2に記憶されている設定値を、ロード中設定テーブルとしてRAM30に記憶させ」、「カスタムボタンに特定入力態様の指示座標が入力された時点から、予め定められた追加クリック時間内に、特定入力態様の指示座標が入力されたカスタムボタンの表示領域内で、指示座標が新たに検出されたか否かを判断し、すなわち、追加クリック操作が行われたか否かを判断し、追加クリック操作が行われた場合」、「追加クリック操作の回数を計測し、計測された追加クリック操作の回数を入力数値と判断し、変更対象設定テーブルTBAに基づいて、ロード中設定テーブルに変更対象設定として記憶されている設定項目の設定値を変更し」、「追加クリック操作によって変更された設定値を、特定入力態様の指示座標が入力されたカスタムボタンの表示領域内に表示し」、「ロード中設定テーブルの設定値に従って、カスタムボタンに対応付けられている動作を実行し」、このとき、「設定値が変更されている場合には、変更後の設定値に従って動作を実行」し、「変更対象設定テーブルTBAにおける、入力数値に対する変更対象設定項目の設定値は、解像度の場合、100dpi、300dpi、600dpi、1200dpi、2400dpiであり、ファイル種類の場合、BMP、JPG、PDF、PNGであり、カラー設定の場合、モノクロ、グレースケール、カラーであり、両面印刷設定の場合、片面、両面である」。
さらに、引用発明では、「変更対象設定の設定値を変更するための数値入力の態様は、追加クリック操作に限られず」、「複数点タッチを数値入力に用いる場合は、S116においてCPU14は、同時にいくつの指示座標に対してタッチがなされたのかを計測し、CPU14は、タッチされた指示座標の数に応じて、入力数値が1ないし5のいずれであるかを判断してもよく、CPU14は、判断した入力数値に応じて、変更対象設定の設定値を変更してもよい」から、「制御部12」に含まれる「CPU14」が、「カスタムボタンの表示領域内での」「タッチされた指示座標の数に応じて」、「入力数値を判断して」、「変更対象設定の設定値を変更」し、「変更後の設定値に従って」「カスタムボタンに対応付けられている動作を実行」するものといえ、このことは、本願発明1の「前記制御部は、表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別し、識別したタッチ点数に応じた設定に基づく各々の前記画像処理を実行する」ことと、「前記制御部は、前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別し、識別したタッチ点数に応じた設定に基づく各々の前記画像処理を実行する」ことで共通するといえる。

エ 上記アで述べたとおり、引用発明の「多機能機10」は、「プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能」を有する「装置」であるから、「画像処理装置」といい得るものである。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
原稿の画像を読み取って画像データを生成する画像読取処理、及び、画像データに基づいて用紙上に画像を形成する画像形成処理、の少なくとも一方に関する画像処理を制御する制御部と、前記画像処理の動作に関する操作を受け付けるための操作ボタンを表示して、前記画像処理の操作をユーザから受け付ける、複数点のタッチを検出可能な操作部と、を備え、前記制御部は、前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別し、識別したタッチ点数に応じた設定に基づく各々の前記画像処理を実行する、画像処理装置。

(相違点)
本願発明1は、「表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別」するものであるのに対し、引用発明は、カスタムボタンに対して特定入力態様の指示座標が入力されたことを検出した後に、タッチされた指示座標の数を識別するものである点。

(2)相違点についての判断
上述のとおり、引用発明はカスタムボタンに対して特定入力態様の指示座標が入力されたことを検出した後に、タッチされた指示座標の数を識別するものであるため、画像処理を行うためには、カスタムボタンに対して、特定入力態様の入力、複数タッチという2回の操作が必要である。
これに対し、本願発明1は1回のタッチ操作におけるタッチ点数を識別するため、1回の操作で画像処理を行うことができるものであり、この点は引用発明には記載されておらず、また、操作の単純化という効果を奏するものであるから、このようにすることが単なる設計的事項であるとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-7について
本願発明2-7も、本願発明1と同様に、「表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別」するという構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明8について
本願発明8も、本願発明1と同様に、「表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別」するという構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明9について
本願発明9も、本願発明1と同様に、「表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別」するという構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
平成30年11月8日付けの補正により、本願発明1-9は「表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別」するという事項を有するものとなっているため、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献A-Cに基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
ア 当審拒絶理由通知1について
1.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
平成30年11月8日付けの補正により、本願発明1-5,8,9は「表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別」するという事項を有するものとなっているため、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。したがって、この拒絶の理由は解消した。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
平成30年11月8日付けの補正により、本願発明1-9は「表示後の前記操作ボタンに対する1回のタッチ操作が行われるだけで、当該タッチ操作における前記操作ボタンの表示領域内のタッチ点数を識別」するという事項を有するものとなっているため、当業者であっても、引用文献1,2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、この拒絶の理由は解消した。

イ 当審拒絶理由通知2について
1.理由1(特許法第36条6項1号)について
当審では、請求項1,8,9の「識別したタッチ点数に応じて各々の前記画像処理に基づく設定を実行する」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年11月8日付けの補正により、「識別したタッチ点数に応じた設定に基づく各々の前記画像処理を実行する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

2.理由2(特許法第36条6項2号)について
当審では、請求項1,8,9の「識別したタッチ点数に応じて各々の前記画像処理に基づく設定を実行する」との記載では,この「各々の前記画像処理に基づ」いて、何の「設定を実行する」のか,すなわち,設定対象が何であるのかを特定することができず不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年11月8日付けの補正により、「識別したタッチ点数に応じた設定に基づく各々の前記画像処理を実行する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-10 
出願番号 特願2013-130587(P2013-130587)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 菊地 陽一
稲葉 和生
発明の名称 画像処理装置、画像処理方法、及び、プログラム  
代理人 堅田 裕之  

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