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審決分類 審判 全部無効 1項1号公知  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A61K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A61K
管理番号 1352521
審判番号 無効2018-800068  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-24 
確定日 2019-05-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第6072965号発明「非水系毛髪化粧料および毛髪処理方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6072965号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?5]について、訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6072965号の請求項1?5に係る発明についての出願(特願2016-128392号)は、平成27年12月17日を出願日とする特願2015-245750号の一部を、平成28年6月29日に新たな特許出願としたものであって、平成29年1月13日にその発明について特許権の設定登録がなされたものである。
請求人は、平成30年5月24日付けで当該特許の請求項1?5に係る発明について、特許無効審判請求を行った。本件特許無効審判手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 5月24日 審判請求書の提出
同年 8月22日 答弁書の提出
同年 8月22日 訂正請求書の提出
同年 10月18日 弁駁書の提出
同年 11月 7日 審理事項通知書(請求人、日付は起案日)
同年 11月 7日 審理事項通知書(被請求人、日付は起案日)
同年 12月17日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同年 12月17日 上申書の提出(請求人)
平成31年 1月 7日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年 1月28日 口頭審理
同年 1月30日 上申書の提出(被請求人)
同年 2月 8日 上申書の提出(請求人)
同年 2月15日 審尋(被請求人、日付は起案日)
同年 2月21日 上申書の提出(被請求人)


第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
被請求人が平成30年8月22日付け訂正請求書により請求する訂正のうち、訂正事項1は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。その請求の内容は、請求項1?5からなる一群の請求項に係る訂正であって、下記(1)のとおりのものである(下線部が訂正箇所である。)。
また、被請求人が同訂正請求書により請求する訂正のうち、訂正事項2?4は、本件特許の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その請求の内容は、下記(2)?(4)のとおりのものである(下線部が訂正箇所である。)。

(1)訂正事項1(請求項1?5に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1に
「下記(A)?(C)の成分が配合されており、濡れた毛髪に塗布後」
と記載されているのを、
「下記(A)?(C)の成分が配合されており、(A)紫外線吸収剤として、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含み、(A)成分の配合量が3質量%以上であって、濡れた毛髪に塗布後」
に訂正する(請求項1を直接的ないし間接的に引用する請求項2?5も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2(明細書の段落【0008】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0008】に記載された
「下記(A)?(C)の成分が配合されており、濡れた毛髪に塗布後」

「下記(A)?(C)の成分が配合されており、(A)紫外線吸収剤として、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含み、(A)成分の配合量が3質量%以上であって、濡れた毛髪に塗布後」
に訂正する。

(3)訂正事項3(明細書の段落【0014】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0014】に記載された
「これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」

「これらのうちの2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含み、2種以上を併用してもよい。」
に訂正する。

(4)訂正事項4(明細書の段落【0016】に係る訂正)
願書に添付した明細書の段落【0016】に記載された
「、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。」

「、3質量%以上である。」
に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「(A)紫外線吸収剤」について、訂正前は該(A)紫外線吸収剤に含まれる具体的成分及び該(A)紫外線吸収剤の配合量が特定されていなかったところ、「(A)紫外線吸収剤として、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含み、」と特定することにより(A)紫外線吸収剤に含まれる成分を限定するとともに、「(A)成分の配合量が3質量%以上であって、」と特定することにより(A)紫外線吸収剤の配合量をその下限値で限定するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
同様に、訂正後の請求項2?5は、訂正後の請求項1の記載を引用することにより、訂正後の請求項2?5に係る発明を限定するものであり、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項1のうち、「(A)紫外線吸収剤として、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含み、」との発明特定事項は、訂正前の明細書の段落【0014】における「(A)成分である紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、・・・などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」との記載、及び段落【0015】における「紫外線A波を吸収する紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルが挙げられる。」との記載に基づいて導き出されるものであり、「(A)成分の配合量が3質量%以上であって、」との発明特定事項は、訂正前の明細書の段落【0016】における「非水系毛髪化粧料における(A)成分の配合量は、・・・3質量%以上であることがより好ましい。」との記載に基づいて導き出されるものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることが明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
上記アで述べたとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「(A)紫外線吸収剤」について、該(A)紫外線吸収剤に含まれる成分及び該(A)紫外線吸収剤の配合量を限定する訂正であり、発明のカテゴリーや目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1?5を訂正事項1のとおりに訂正したことに伴い、明細書の記載を整合させるための訂正である。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項2は、訂正事項1と同様、訂正前の明細書の段落【0014】における「(A)成分である紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、・・・などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」との記載、段落【0015】における「紫外線A波を吸収する紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルが挙げられる。」との記載、及び段落【0016】における「非水系毛髪化粧料における(A)成分の配合量は、・・・3質量%以上であることがより好ましい。」との記載に基づいて導き出されるものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることが明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項2は、請求項1?5に記載された「(A)紫外線吸収剤」に関し、その解釈に影響を与え得る訂正であるが、当該訂正事項2は、(A)紫外線吸収剤に含まれる成分及び(A)紫外線吸収剤の配合量を限定する訂正であり、請求項1?5に記載された発明のカテゴリーや目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項1?5を訂正事項1のとおりに訂正したことに伴い、明細書の記載を整合させるための訂正である。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項3は、訂正事項1と同様、訂正前の明細書の段落【0014】における「(A)成分である紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、・・・などが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、」との記載、及び段落【0015】における「紫外線A波を吸収する紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルが挙げられる。」との記載に基づいて導き出されるものである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることが明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項3は、請求項1?5に記載された「(A)紫外線吸収剤」に関し、その解釈に影響を与え得る訂正であるが、当該訂正事項3は、(A)紫外線吸収剤に含まれる成分を限定する訂正であり、請求項1?5に記載された発明のカテゴリーや目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項1?5を訂正事項1のとおりに訂正したことに伴い、明細書の記載を整合させるための訂正である。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項4は、訂正事項1と同様、訂正前の明細書の段落【0016】における「非水系毛髪化粧料における(A)成分の配合量は、・・・3質量%以上であることがより好ましい。」との記載に基づいて導き出されるものである。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることが明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項4は、請求項1?5に記載された「(A)紫外線吸収剤」に関し、その解釈に影響を与え得る訂正であるが、当該訂正事項4は、(A)紫外線吸収剤の配合量を限定する訂正であり、請求項1?5に記載された発明のカテゴリーや目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 訂正請求についての結論
以上のとおり、本件訂正は、訂正の要件を全て満たすものであるから、これを認める。


第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1?5に係る発明は、平成30年8月22日付け訂正請求書に添付の訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、以下、本件訂正後の請求項1?5に係る発明を、その請求項に付された番号にしたがって「本件特許発明1」?「本件特許発明5」のように記載し、また、これらをまとめて「本件特許発明」という。

「【請求項1】
下記(A)?(C)の成分が配合されており、(A)紫外線吸収剤として、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含み、(A)成分の配合量が3質量%以上であって、濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用されることを特徴とする非水系毛髪化粧料。
(A)紫外線吸収剤
(B)イソノナン酸2-エチルヘキシル、または、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシル
(C)揮発性の環状シリコーン
【請求項2】
(D)揮発性の直鎖状ジメチルポリシロキサンが更に配合されている請求項1に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項3】
上記(C)として、(c1)デカメチルシクロペンタシロキサンと(c2)ドデカメチルシクロペンタシロキサンとが配合されている請求項1または2に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項4】
(E)マカデミアナッツ油またはメドウフォーム油が更に配合されている請求項1?3のいずれか1項に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法。」


第4 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第6072965号発明の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、証拠方法として以下の書証を提出し、本件特許が無効とされるべき理由として、以下に要約される無効理由1?4を主張している。

1 無効理由1(公然知られた発明に基づく新規性要件違反)
本件特許発明1は、甲第3号証及び甲第4号証の記載から認定される、本件特許の出願前に公然知られた、甲第3号証の製品に係る発明と同一であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により特許無効とされるべきである。

2 無効理由2(公然知られた発明に基づく進歩性要件違反)
本件特許発明2?5は、甲第3号証及び甲第4号証の記載から認定される、本件特許の出願前に公然知られた、甲第3号証の製品に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により特許無効とされるべきである。

3 無効理由3(公然知られた発明に基づく進歩性要件違反)
本件特許発明1?5は、甲第3号証及び甲第4号証の記載から認定される、本件特許の出願前に公然知られた、甲第3号証の製品に係る発明に、甲第30号証?甲第32号証に記載されたいずれかの発明を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定により特許無効とされるべきである。

4 無効理由4(サポート要件違反)
本件特許発明1?5は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、その特許は、同法第123条第1項第4号の規定により特許無効とされるべきである。

請求人は、審判請求の際には、(1)「本件特許発明1は、本件特許の出願前に公然実施をされた、甲第3号証の製品に係る発明と同一であるから、特許法第29条第1項第2号の規定に該当し、特許を受けることができないものである旨の、公然実施発明に基づく新規性要件違反」の無効理由、及び、(2)「本件特許発明2?5は、上記公然実施をされた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨の、進歩性要件違反」の無効理由を主張し、また請求人は、平成30年12月27日付け上申書において、(3)「本件特許発明1?5は、甲第3号証及び甲第4号証の記載から認定される、本件特許の出願前に公然実施をされた甲第3号証の製品に係る発明に、甲第30号証?甲第32号証に記載された発明のいずれかを適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨の、進歩性要件違反」の無効理由を主張したが、これらの公然実施発明に基づく無効理由(1)?(3)については、平成31年2月8日付け上申書にて、請求人がその無効理由を取り下げる旨を申し出、被請求人が、同年同月21日付けの上申書にて、その取下げを承諾したため、これらの無効理由(1)?(3)は取り下げられた。
また、上記無効理由3は、特許法第131条の2第2項の規定に基づき、本件の口頭審理において行われた補正許否の決定により、許可すると決定した無効理由である(平成31年1月28日付け口頭審理調書参照)。なお、当該補正許否の決定の際には、上記無効理由(3)の取下げに係る請求人の申出は未だなされていなかったところ、上述のとおり、「公然実施発明に基づく無効理由」は取り下げられたため、上記無効理由3は、その取下げの点を反映したものとなっている。

5 証拠方法
甲第1号証:特許第6072965号(本件特許)に係る特許公報
甲第2号証:特許第6072965号の特許原簿
甲第3号証の1:「ナプラHBヘアエッセンス」製品容器の正面写真、
平成30年4月18日に請求人が作成
甲第3号証の2:「ナプラHBヘアエッセンス」製品容器の裏面写真、
平成30年4月18日に請求人が作成
甲第3号証の3:「ナプラHBヘアエッセンス」製品容器の裏面拡大
写真、平成30年4月18日に請求人が作成
甲第4号証:「ナプラHBヘアエッセンス」リーフレット、
2005年3月13日
(後掲の甲第44号証には、「ナプラHBヘアエッセンス」のリーフレットを掲載したホームページについて「MAR 13 2005」との記載があり、これは、甲第4号証に係る「ナプラHBヘアエッセンス」のリーフレットを掲載したホームページがウェイバックマシーンにより2005年3月13日にアーカイブとして保存されたことを意味すると認められるので、甲第4号証は「2005年3月13日」に電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったものと認める。)
甲第5号証:日光ケミカルズ株式会社 外、化粧品ハンドブック、
平成8年11月1日、第405及び410頁
甲第6号証:化粧品成分用語事典2006 初版、中央書院、
平成17年11月30日、第374?375頁
甲第7号証:日本化粧品工業連合会編、日本化粧品成分表示名称事典
第3版、株式会社薬事日報社、2013年4月15日、
第193頁
甲第8号証:宇山ミツ男(ミツはにんべんに光)外編著、
化粧品成分ガイド 第5版、フレグランスジャーナル社、
2010年4月26日、第92頁
甲第9号証:第12回化粧品原料基礎セミナー資料、株式会社マツモト
交商、2008年5月28日/29日東京、同年6月3日
/4日大阪
甲第10号証:化粧品製造製品販売名届書、平成15年4月14日に
請求人が徳島県知事に届出
甲第11号証:売上一覧表、ただし平成17年7月21日?平成18年
7月20日分全23頁のうち1頁と23頁、
平成30年4月20日に株式会社ナプラが出力
甲第12号証:大阪地裁平成29年(ワ)第6334号 特許権侵害行為
差止等請求事件(以下、「本件関連侵害訴訟」という。)
の平成29年11月14日付け原告第1準備書面(なお、
本件関連侵害訴訟の原告は、本件特許無効審判事件の
被請求人である。)
甲第13号証:特開2015-168664号公報
甲第14号証:「揮発性シリコン配合枝毛用コート剤の代替品につい
て」、日本化粧品工業連合会 技術委員長 木村 勝
昭和63年7月21日(平成16年2月6日打ち直し)
甲第15号証:「揮発性シリコン配合頭髪用化粧品の処方変更につい
て」、日本化粧品工業連合会、平成4年9月28日
甲第16号証:日油株式会社「PARLEAM(パールリーム)」(登録
商標)についてのウェブページ<https://web.archive.
org/web/20150918020804/https://www.nof.co.jp/cosme
ticlounge/material/parleam.html>、
2015年9月18日、
平成30年5月22日に請求人代理人が出力
甲第17号証:日油株式会社、「パールリーム」(登録商標)技術資料の
ウェブページ<https://web.archive.org/web/20151010
072342/http://www.nof.co.jp:80/cosmeticlounge/ma
terial/pdf/parleam.pdf>、
平成30年5月22日に請求人代理人が出力
甲第18号証:デミコスメティクス「パタゴニックオイル イセベルグ
モイスト」製品外箱及び容器の正面及び裏面写真、
平成30年5月22日に請求人が印刷
甲第19号証:「ミュリアム リニューオイル」製品容器の正面、裏面
及び裏面拡大写真、平成30年5月22日に請求人が印刷
甲第20号証:デミコスメティクス「ユント インバス コンクオイル」
製品容器の正面及び裏面写真、平成30年5月22日に
請求人が印刷
甲第21号証:株式会社パイモア「パイモア キャドゥ シャインオイル
モイスト」製品外箱及び容器の正面及び裏面写真、
平成30年5月22日に請求人が印刷
甲第22号証:デミコスメティクス「パタゴニックオイル」のウェブペ
ージ、<https://web.archive.org/web/2013100911
2106/http://www.demi.nicca.co.jp:80/patagonicoil
/index.html>、2013年10月9日
甲第23号証:トリートメント解析ドットコム、「ミュリアム リニュー
オイル」のウェブページ<https://web.archive.org/web
/20150112233725/https://www.ishampoo.jp/treatment
/myuriumrenewoil.html>、2015年1月12日、
平成30年5月22日に請求人代理人が出力
甲第24号証:トリートメント解析ドットコム、「ユント インパス
コンクオイル」ウェブページ<https://web.archive.org/
web/20130130232125/https://www.ishampoo.jp/treatmen
t/juntoinpass.html>、2013年1月30日、
平成30年5月22日に請求人代理人が出力
甲第25号証:アマゾン「パイモア キャドゥ シャインオイルモイス
ト」のウェブページ<https://www.amazon.co.jp/s/
ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF
%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Daps&
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2%E3%82%A2%E3%80%80%E3%82%AD%E3%83%A3%E
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%B7%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AA
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%82%B9%E3%83%88&rh=i%3Aaps%2Ck%3A%E3%83
%90%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%82%A2%E3%80%80%
E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%
82%A5%E3%80%80%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%
A4%E3%83%B3%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%
E3%83%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%88>、
平成30年5月22日に請求人代理人が出力
(以上、審判請求書に添付。)

甲第26号証:化粧品製造製品販売名届書、平成15年4月14日に
請求人が徳島県知事に届出(甲第10号証と同じ)
甲第27号証:売上一覧表、ただし平成17年7月21日?平成18年
7月20日分全23頁のうち1頁と23頁、
平成30年4月20日に株式会社ナプラが出力
(甲第11号証に黄色蛍光ペンのマーキングがされた
もの)
甲第28号証の1:「ナプラHBヘアエッセンス」製品容器の底面写真
(斜め下より撮影)、平成30年8月に請求人代理人
が作成
甲第28号証の2:「ナプラHBヘアエッセンス」製品容器の底面写真
(下方より撮影)、平成30年8月に請求人代理人が
作成
甲第29号証:製造番号早見表、請求人が作成
甲第30号証:日本化粧品技術者会誌、平成26年3月20日、
第48巻、第1号、第2?10頁
甲第31号証:一般社団法人 化粧品成分検定協会編、
化粧品成分検定公式テキスト 初版、実業之日本社、
2015年4月10日、第148頁
甲第32号証:2013マツモト交商処方集<全180処方>、
株式会社マツモト交商
第119、122、131、133、137、148及び
150頁、並びに「サンカットミストSPF23」が掲載
されたページ(頁番号が一部不明)
(甲第32号証には発行日が明記されていないが、甲第32号証冊子の最終頁(後掲の甲第35号証)には、株式会社マツモト交商の東京本社の住所の記載があり、そこには、6月16日以前の住所の記載の後に、「≪6月17日以後の住所≫ 〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-13-7 PMO室町5階」と記載されていて、6月17日に株式会社マツモト交商の東京本社の移転があった年に当該甲第32号証が発行されたことが認められる。そして、同株式会社マツモト交商のウェブページ(後掲の甲第36号証)には、現在の東京本社の住所が「〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1丁目13番7号 PMO日本橋室町5階」であることの記載と共に、マツモト交商の歴史を紹介するページにおいて、東京本社の移転について、2013年に「創業350周年を迎え東京本社移転」との記載がされており、また、そもそも甲第32号証冊子のタイトルも、「2013マツモト交商処方集<全180処方>」と2013年作成の冊子であることをうかがわせるものであることからみて、上記甲第32号証最終頁(甲第35号証)に記載された「6月17日」とは「2013年6月17日」のことであり、甲第32号証は、この日よりも前の2013年に作成されたものであると解される。
被請求人は、甲第32号証の各頁左上に「Confidential」という機密性である旨の記載があることから、甲第32号証が公知文献ではないと主張している。この点について請求人は、甲第32号証は「『Confidential』と明示されているが、当該証拠は作成者である株式会社マツモト交商が自己の宣伝のために作成した資料であり、資料受領者から無限定にさらなる複製が流出することを避ける目的で『Confidential』の文字を記載したに過ぎない。また、受領者全員が2013年の配布から少なくとも本件特許出願に至るまで守秘義務を負っていたものではない」との主張をしているところ、甲第32号証が、180もの処方が記載された、処方を紹介する冊子の体裁を採っていることや、本件特許の出願が上記「2013年6月17日」から3年以上も経過してなされたものであることを考慮すると、当該請求人の主張には一定の合理性が認められること、また、当該証拠を本件特許の出願前に頒布された刊行物として採用しても、結論に変わりはないことから、本審決では、甲第32号証を本件特許の出願前に頒布された刊行物として採用し、当該証拠の記載に基づく請求人の主張について判断を示すこととする。)
(以上、弁駁書に添付。)

甲第33号証:本件関連侵害訴訟の平成30年11月16日付け被告の
準備書面6(なお、本件関連侵害訴訟の被告は、本件特許
無効審判事件の請求人及び株式会社ナプラである。)
甲第34号証:「ナプラHBヘアエッセンス 製作/製造パッケージ&
リーフレット」の仕入元帳、平成15年3月20日に
株式会社ナプラが作成
甲第35号証:2013マツモト交商処方集<全180処方>、
株式会社マツモト交商、最終頁
甲第36号証:株式会社マツモト交商の企業ウェブページ、
<http://www.matsumoto-trd.co.jp/outline/histor
y/>、2018年12月11日に請求人代理人が出力
甲第37号証:株式会社ナプラ開発部 上原正典の陳述書、
平成30年11月13日作成
(なお、当該陳述書は、本件関連侵害訴訟において大阪地方裁判所に提出されたものである。当該陳述書に「乙第16号証」と記載されている証拠は、本件特許無効審判事件の「甲第29号証」に該当する(平成31年1月28日付け口頭審理調書参照)。)
甲第38号証:作業日誌の一部、平成15年8月28日から同年10月
8日に請求人の徳島工場製造部門トリートメント充填班
猪本登美子が作成
(以上、平成30年12月17日付け口頭審理陳述要領書に添付。)

甲第39号証:作業日誌の全体、平成15年3月28日から同年11月
22日に請求人の徳島工場製造部門トリートメント充填
班 猪本登美子が作成
甲第40号証:「『紫外線吸収剤・散乱剤』及び『ビタミンC』を配合
した商品の表示基準について」、化粧品公正取引協議会、
平成9年2月26日
甲第41号証:「化粧品基準の一部を改正する件について」、
厚生労働省医薬食品局長、平成17年10月18日
甲第42号証:特開2016-141625号公報
甲第43号証:製造番号早見表、請求人が作成(甲第29号証の原本と
して請求人が提出)
甲第44号証:「ナプラHBヘアエッセンス」のリーフレットが掲載さ
れたウェブページがウェイバックマシーンによりアーカ
イブとして保存されたことを示すウェブページ、
2005年3月13日<https://web.archive.org/web
/20050313070457/http://www.napla.co.jp:80/products/
pdf/hair.pdf>
甲第45号証:請求人の徳島工場製造部門トリートメント充填班
猪本登美子の陳述書、平成31年2月4日作成
(以上、平成31年2月8日付け上申書に添付。)

以下、「甲第1号証」ないし「甲第45号証」をそれぞれ「甲1」ないし「甲45」(「甲第3号証の1」等の枝番については、「甲3-1」等)ということがある。


第5 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由は、いずれも理由がないと主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。

乙第1号証:被請求人研究開発部国内薬事室 川村拓哉の陳述書、
平成30年7月10日作成
乙第2号証:分析報告書、平成30年7月4日に被請求人研究開発部分析
研究室 長野庸一が作成
(以上、答弁書に添付。)

乙第3号証:請求人製品「ビジュロワ UVケアオイル」包装箱の写し、
平成28年6月頃に株式会社ナプラ及び請求人が作成
乙第4号証:化粧品販売サイト「@cosme」における請求人製品
「ビジュロワ UVケアオイル」紹介ページ出力物、
<http://www.cosme.net/product/product_id/10114659/
top>、平成29年6月7日に被請求人代理人が作成
乙第5号証:請求人製品「ビジュロワ UVケアオイル」添付リーフレ
ット、平成28年6月頃に株式会社ナプラが作成
乙第6号証:請求人製品「ビジュロワ UVケアオイル」のパンフレ
ット、平成28年6月頃に株式会社ナプラが作成
乙第7号証:分析報告書、平成30年7月4日に被請求人研究開発部
分析研究室 長野庸一が作成
乙第8号証:乙第2号証の別紙1-1?別紙7-2と同一内容を再出力
したもの、平成30年7月4日に被請求人研究開発部分析
研究室 長野庸一が作成
乙第9号証:湯浅正治 外編著、全成分表示に対応した化粧品成分ガイド
第3版、フレグランスジャーナル社、
平成16年4月10日、第107?108頁
乙第10号証:最新・化粧品成分用語事典、中央書院、
平成8年10月10日、第24頁
乙第11号証:分析報告書、平成30年9月27日に被請求人研究開発部
分析研究室 長野庸一が作成
乙第12号証:一般社団法人 化粧品成分検定協会編、
化粧品成分検定公式テキスト 初版、実業之日本社、
2015年4月10日、
目次並びに第065、083、103、107、112、
116、135、138、146及び148?149頁
乙第13号証:ルベルコスメティックス著、サロンワークのための科学、
株式会社女性モード社、2005年4月25日第4刷、
第170?171頁
乙第14号証:日本化粧品工業連合会編、化粧料分野における公知技術集
2012年版 第1版、日本化粧品工業連合会、
平成24年3月16日、第158、197?198、
332?333、358及び380頁
乙第15号証:2013マツモト交商処方集<全180処方>、
株式会社マツモト交商、第9頁
乙第16号証:Eusolex(R) 第2版、メルク株式会社、
平成24年6月1日、第16?17頁
乙第17号証:株式会社ニコダームリサーチの「SPF/PA測定試験」
のウェブページ出力物、<https://www.nikoderm.com/%
E6%9C%89%E7%94%A8%E6%80%A7%E8%A9%95%E4%BE
%A1/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AF%
E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3/spf-pa%E6%B8%AC
%E5%AE%9A/>、
平成30年12月13日に請求人代理人が作成
乙第18号証:日光ケミカルズ株式会社他、化粧品ハンドブック、
平成8年11月1日、第405頁
乙第19号証:クラーレンス・R・ロビンス原著、毛髪の科学 第4版、
フレグランスジャーナル社、平成18年7月10日、
目次第XIV頁、並びに第204及び214頁
(以上、平成31年1月7日付け口頭審理陳述要領書に添付。)

乙第20号証:実験報告書、2019年1月21日に被請求人研究開発部
研究開発グループ 宮崎貴成が作成
乙第21号証:実験報告書、2019年1月21日に被請求人研究開発部
特許室 安久都卓哉が作成
(以上、平成31年1月30日付け上申書に添付。)

以下、「乙第1号証」ないし「乙第21号証」をそれぞれ「乙1」?「乙21」ということがある。


第6 甲号証の記載事項
以下の甲号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。

1 甲3-1
甲3-1記載事項-ア




2 甲3-3
甲3-3記載事項-ア
「ナプラ HB ヘアエッセンス
<洗い流さないヘアトリートメント>
有効成分の働きで髪に艶とうるおいを与えサラサラのスタイリングしやすい髪に仕上げます。
<ご使用法>洗髪後、タオルドライした髪に適量を全体になじませるように塗布して下さい。」

甲3-3記載事項-イ
「成分:シクロメチコン・ジメチコン・イソノナン酸オクチル・レシチン・ミネラルオイル・スクワラン・イソステアロイル加水分解コラーゲン・カロットエキス・カミツレエキス・マロニエエキス・ローズマリーエキス・セージエキス・センキュウエキス・酢酸トコフェロール・オキシベンゾン・ブチルパラベン」

甲3-3記載事項-ウ
「50mL ¥1,300(税抜)」

甲3-3記載事項-エ
「ナプラコスメティック
株式会社ビー・エス・ピー」

なお、甲3-3の写真は以下のとおりである。




3 甲5
甲5記載事項-ア


」(第410頁の表17・1つづき)

4 甲6
甲6記載事項-ア



〔ベンゾフェノン系〕
オキシベンゾン(表示名:オキシベンゾン-3)
微黄色の結晶性粉末の紫外線吸収剤である。UVBからUVAまで吸収波長領域をもつ。つまり、吸収波長領域が広くサンバーン、サンタンを共に防止するのに効果がある。」(第374頁)

5 甲7
甲7記載事項-ア
「イソノナン酸エチルヘキシル (563103)
・・・
定義:本品は、イソノナン酸と2-エチルヘキシルアルコールのエステルであり、次の化学式で表される。」(第193頁右欄)

甲7記載事項-イ
「イソノナン酸オクチル (550692)
〔改正表示名称〕イソノナン酸エチルヘキシル」(第193頁右欄)

6 甲8
甲8記載事項-ア
「【表示名称】シクロメチコン
【INCIコード】CYCLOMETHICONE
基原・組成・性状 環状ジメチルシロキサン化合物で、4?6量体の無色透明の液状です。4量体は揮発性があり、6量体になると揮発性は少くなり残留性があります。」(第92頁第10?14行)

7 甲9
甲9記載事項-ア
「シクロメチコン(環状シリコーン)」(スライド3枚目第1行)

8 甲28-1
甲28-1記載事項-ア




9 甲29




10 甲30
甲30記載事項-ア
「また,UVAからUVBまで波長領域ごとに活用される化合物が異なっており,多様な組み合わせで紫外線防御機能を向上させることができる。当初は,サンバーンを効率よく抑制するためにUVBの紫外線吸収剤が主に活用されてきたが,前述のように,アンチエイジングの意識の高まりに伴い,UVAの紫外線吸収剤も汎用されるようになった。」(第6頁左欄第4?10行)

甲30記載事項-イ
「5.1.2. UVB?UVA吸収剤
●ベンゾフェノン誘導体
代表的な化合物としてオキシベンゾン(Fig.-12,13)があり,UVBからUVAまで幅広い紫外線吸収領域を有する(分子量:228.2,極大吸収波長:286nm,325nm,薄黄色粉末)。用いられる溶媒は限られているが,メトキシケイヒ酸オクチルとの相溶性に優れているため,併用によって紫外線防御機能を高めることができる。」(第7頁左欄第1?9行)

甲30記載事項-ウ
「5.1.3. UVA吸収剤
・・・
●ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(Fig.-18,19)
薄黄色粉末の化合物(分子量:397.5,極大吸収波長:356nm)である。ジベンゾイルメタン誘導体より光安定性に優れており,近年急速に紫外線ケア化粧品で使用されるようになった吸収剤である。」(第7頁右欄第14行?第8頁左欄第1行)

甲30記載事項-エ
「5.2. 配合組み合わせによる相乗効果
より少ない紫外線吸収剤の配合量で効率的にSPF,PFA値を上げるために,各種吸収剤を併用して相乗的に効果率を上げる試みが各化粧品メーカー,各原料メーカーで積極的に行われてきた。
例えば,・・・ポリシリコーン誘導体は・・・他の紫外線散乱剤や紫外線吸収剤と併用した場合にそれらを均一に取り込みやすいため,・・・より高い効率で紫外線を防御することができる。
さらに,・・・t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンは光安定性に課題があるが,このポリシリコーン誘導体やオクトクリレンを併用することによって,光安定性を向上させることができる。」(第8頁左欄第5?19行)

甲30記載事項-オ
「5.1.1. UVB吸収剤
●桂皮酸誘導体
ケイヒ酸誘導体の一種であるメトキシケイヒ酸オクチル(Fig.-6,7)は,紫外線ケア化粧品において現在最も多く使用されている紫外線吸収剤である・・・。」(第6頁左欄第23?28行)

甲30記載事項-カ


Fig.-7 メトキシケイヒ酸オクチルの構造式」

11 甲31
甲31記載事項-ア
「【日焼け止めの全成分表示例】


(第148頁の表)

12 甲32
甲32記載事項-ア




13 甲35
甲35記載事項-ア




14 甲36
甲36記載事項-ア
「創業350年を超えるマツモト交商の歴史
・・・
2013 創業350周年を迎え東京本社移転、本社内に研究室(オープンラボ)を統合」

甲36記載事項-イ
「本社 〒103-0022
東京都中央区日本橋室町1丁目13番7号
PMO日本橋室町5階」

15 甲37
下記、甲37の文中に「乙第16号証」とあるのは、本件における「甲第29号証」のことである。

甲37記載事項-ア
「陳述書
大阪裁判所 御中
2018年11月13日
・・・
株式会社 ナプラ 開発部
上原 正典
【私の経歴】
私の在籍する株式会社ナプラと株式会社ビー・エス・ピーは資本においても業務においても緊密な関係にあり、株式会社ビー・エス・ピーが製造する全製品を株式会社ナプラが販売しており、株式会社ビー・エス・ピーがメーカーとして製品を製造するに際しても私たち株式会社ナプラの従業員が製造や開発に関与しております。
私は、1976年4月に関西化研工業株式会社(現在の株式会社ナプラ)に入社し1988年3月まで12年間製造部門に所属し、1988年4月より現在に至るまで開発部において開発に係る業務に従事しており、入社以来概ね42年間にわたり製造及び開発に係る業務を行っております。
私は2003年当時、前述のとおり開発部に所属しており、製品の製造に関する諸々の内部規定等に関して携わり、指導、監督する立場にあり、内情を熟知しております。

【製造番号早見表の制定について】
御庁に乙第16号証として提出した製造番号の記載につきましては、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(改正薬事法)の第61条に「化粧品は、その直接の容器又は直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。・・・三 製造番号又は製造記号」と規定されておりますが、この規定は旧薬事法の時代から規定されておりました。
株式会社ビー・エス・ピーは、この規定による義務付けに従い、平成4年6月29日に化粧品製造業の許可を得て以来、「製造番号又は製造記号」を株式会社ビー・エス・ピーの製造する化粧品すべてに記載してきました。
製造番号の付け方にきまりはなく、各社独自でルールを設定し運用しているのが現状ですが、株式会社ビー・エス・ピーでもその時々に応じてルールを定め運用してきました。
2003年5月頃に運用していたルールとしては、1997年12月に株式会社ビー・エス・ピー徳島工場の製造部門において、年(アルファベットの逆順)・日付(バルク製造日)・月(アルファベットの正順)で表記する乙第16号証のルールを作成し、自社で製造するすべての化粧品に適用するものとして、当時の徳島工場責任技術者の承認のもとにルール決めしました。その承認と同時に製造部門の担当者(作成者は不明)が製造番号早見表をコンピューター上で作成し、1998年1月より順次運用を開始しました。そして、コンピューター上で作成した製造番号早見表を必要部門がそこから印刷して活用するというスタイルをとってきました。その後、年月の経過に従い年の箇所を順次書き換えながら運用してきました。現在証拠として提出しているものは2003年当時に作成した内容になります。

【製造番号早見表の内容について】
乙第5号証の製品の製造番号は「H25W」と印字しています。乙第16号証の「製造番号早見表」のとおり、Hは8月、25は25日、Wは2003年を表しており、当該製品の製造年月日は、「2003年8月25日」であることは間違いありません。
なお、製造番号早見表を制定する際、早見表の中で年のアルファベットの「I」「O」「Q」「U」は、数字の「1」「0」や「V」と誤認し易い為、除外しております。
・・・
以上のとおり間違いありません。」

16 甲38
甲38記載事項-ア




17 甲41
甲41記載事項-ア
「化粧品基準の一部を改正する件について
・・・
2.改正の内容
・・・紫外線吸収剤である2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル・・・を化粧品へ配合できる成分に追加した。」

18 甲45
甲45記載事項-ア
「陳述書
私、猪本登美子は昭和60年11月1日に関西化研工業株式会社(現在の株式会社ナプラ)に入社し、平成27年7月10日に退職しました。そして、平成15年ごろは関連会社のビー・エス・ピーの徳島工場において製造部門のトリートメント充填班に従事していました。
甲第38号証として示されたノートは私の直筆で記録した製造ノートであり、平成15年3月28日から同年11月22日までのビー・エス・ピーのトリートメント充填班において製造し、容器詰めを行った各種毛髪化粧料について記載したものです。そして、各項には記録した日付、容器単位当たりの量目、製造数量、梱包数量(甲)、およびロット記号を記載しています。ロット記号については、その当時採用していたルールに基づいて製造した日付を早見表で置き換えて決定していました。その当時採用していたルールは、甲第29号証に記載されたものを利用していました。なお、一番右側の備考については私の備忘録的な内容であり、必要に応じて記載したり記載しなかったりしています。
このノートは、将来的にいつ製造したかを確認するためのロット記号を決定するための重要な内容が記載されていますので、その保管、管理は当時の主任であった山田一郎氏が行い、ノートに記載する必要が生じた場合に私に手渡され、必要事項を記載した後には山田氏に返却して管理されていました。山田氏は、ノートの管理を行っていましたが、記載内容をチェックする立場にはなく、記載内容については私の責任において行っていました。
私は現在は退職していますが、今般、株式会社ナプラから、甲第38号証を作成した経緯を説明するよう依頼を受けましたが、現在記憶している限りにおいて上記陳述した内容に誤りはありません。
以上、陳述します。




第7 乙号証の記載事項
以下の乙号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。

1 乙1
乙1記載事項-ア


」(添付書面2)

乙1記載事項-イ


」(添付書面3)

乙1記載事項-ウ


」(添付書面4)

(※合議体注
添付書面2は「パイモア キャドゥ シャインオイルモイスト<ヘアトリートメント>」という名称の製品の箱及び容器を掲載したものであり、添付書面3は上記製品と同一名称の製品の箱及び容器を掲載したものである。また、添付書面4は、添付書面2及び3の各箱に記載されている成分表示を表にして対比したものであり、左には「脂肪酸(C14-28)」及び「分岐脂肪酸(C14-28)」が記載され、右には「ラノリン脂肪酸」及び「ヒマワリ種子油」が記載され、同一名称の製品であっても成分表示が異なることが示されている。)

乙1記載事項-エ


」(添付書面5)

乙1記載事項-オ
「ミュリアム リニューオイルの全成分:
シクロメチコン、ジメチコノール、安息香酸アルキル(C12-15)、アモジメチコン、ジメチコン、水添ポリイソブテン、フラーレン、ワサビノキ種子油、ローズヒップ油、マカデミアナッツ油、ホホバ種子油、オリーブ油、ヒマワリ種子油、リンゴ酸、マカデミアナッツ脂肪酸エチル、イソステアロイル加水分解シルク、イソステアロイル加水分解コラーゲン、スクワラン、ポリシリコーン-15、オクトクリレン、ホモサレート、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、イソステアリン酸、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トコフェロール、ラノリン脂肪酸、アルガニアスピノサ核油、コレステロール、香料」(添付書面6)

乙1記載事項-カ


」(添付書面7)

(※合議体注
添付書面5は「ミュリアム リニューオイル」という名称の製品の容器を掲載したものであり、添付書面6は上記製品と同一名称の製品の容器の成分表示を掲載したものである。また、添付書面7は、添付書面5及び6の各容器に記載されている成分表示を表にして対比したものであり、左には「ジメチコノール」が記載されておらず、右には「ジメチコノール」が記載され、同一名称の製品であっても成分表示が異なることが示されている。)

2 乙20
乙20記載事項-ア
「4.実験の目的
本件訴訟の乙5製品(平成29年(ワ)第6334号の「ナプラHBヘアエッセンス」)の容器に表示されていた「オキシベンゾン」を配合した組成物について、「訂正A成分(2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル)」と比較した低温安定性を確認する。

5.実験方法
[1]([1]は1に○)組成物の組成
表1の通りに各組成物を調製した。
表1.組成物の組成


・・・
6.結果
本件特許の(A)成分である訂正A成分又はオキシベンゾンを配合した組成物の低温安定性(0?10℃・一晩放置後)について、製造直後の外観と共に、表3に示す。
表3に示している通り、0?10℃・一晩放置後の外観について、訂正A成分は、透明で低温安定性に問題はなかった一方で、オキシベンゾンは、白濁以上に低温安定性が悪い析出の結果となった(この結果より、オキシベンゾンを配合する場合には、紫外線吸収剤の配合量は3質量%よりも大幅に低減する必要があると考えられる。)。

表3.(A)成分を3質量%配合した組成物の外観




第8 当審の判断
1 無効理由1(公然知られた発明に基づく新規性要件違反:甲3及び甲4)について
(1)甲3-1?甲3-3に掲載された製品が本件特許の出願前に製造され、販売されていたことについて
ア 甲3-1?甲3-3に掲載された製品(以下、「甲3製品」という。)の製造日に関して、請求人は甲28-1及び甲28-2を示し、当該甲3製品の容器の底には「H25W」との記載が印字されており、これは、甲3製品の製造番号(いわゆるロット記号)として印字されているものであるところ、請求人の社内資料である製造番号早見表(甲29(甲43))にあるとおり上記製造番号(ロット記号)は甲3製品が2003年8月25日に製造されたことを示すから、甲3製品は約15年前に製造されたものであり、同製品が本件特許出願前から市場に存在していたことは明らかである旨主張する。

イ そしてこのことを裏付けるために請求人は、株式会社ナプラ(本件関連侵害訴訟において、本件無効審判事件請求人とともに被告)開発部の上原正典の陳述書(甲37)や、作業日誌(甲38(甲39))、猪本登美子の陳述書(甲45)などを提出し、甲29(甲43)の製造番号早見表の内容は2003年当時の請求人会社の製造番号(ロット記号)の付与ルールであり、甲38(甲39)の作業日誌が示すように、当時請求人が製造する製品については当該ルールに従って製造番号(ロット記号)が付与されたこと、甲3製品については甲38(甲39)の平成15年8月29日などの欄に「HBエッセンス 50ml 1440本 20甲 H25W」と記載されているように、製造番号(ロット記号)が付与されたこと、同年9月18日、9月19日及び10月2日の追加充填時にも同一の製造番号(ロット記号)が付与されたこと、このように甲29(甲43)の製造番号早見表は、当時請求人が製造日を標記するに際して採用していたルールであり、甲3製品についても当該ルールを適用した製造番号(ロット記号)が付与されたことが明らかであることを主張する。

ウ なお請求人は、甲29(甲43)について、策定当時のルールに基づき、株式会社ナプラに所属する星野仁美が最近使用しているファイル形式であるエクセルファイルにて平成30年5月に再現したものであって、策定当初の製造番号早見表そのものを完全にコピーしたものではないが、甲29(甲43)は、2003年当時に採用していたルールの内容は正確に再現していると説明している。また、甲38(甲39)の作業日誌については、甲45の陳述書に示すとおり、当時請求人会社に従事していた猪本登美子(以下、「猪本」という。)が作成したもので、当時の製造番号早見表のルールに従って各種製造品に対して製造番号(ロット記号)を付与した事実が日を追って記載されたものであることを説明し、また甲38は、作業日誌の全頁である甲39の一部の頁であることを述べている。

エ そこで、請求人が提示する各証拠に基づき、甲3製品が本件特許の出願前に製造され、販売されていたといえるかについて検討する。

(ア)まず、甲45には、以下の記載がある。

「私、猪本登美子は昭和60年11月1日に関西化研工業株式会社(現在の株式会社ナプラ)に入社し、平成27年7月10日に退職しました。そして、平成15年ごろは関連会社のビー・エス・ピーの徳島工場において製造部門のトリートメント充填班に従事していました。
甲第38号証として示されたノートは私の直筆で記録した製造ノートであり、平成15年3月28日から同年11月22日までのビー・エス・ピーのトリートメント充填班において製造し、容器詰めを行った各種毛髪化粧料について記載したものです。そして、各項には記録した日付、容器単位当たりの量目、製造数量、梱包数量(甲)、およびロット記号を記載しています。ロット記号については、その当時採用していたルールに基づいて製造した日付を早見表で置き換えて決定していました。その当時採用していたルールは、甲第29号証に記載されたものを利用していました。なお、一番右側の備考については私の備忘録的な内容であり、必要に応じて記載したり記載しなかったりしています。
このノートは、将来的にいつ製造したかを確認するためのロット記号を決定するための重要な内容が記載されていますので、その保管、管理は当時の主任であった山田一郎氏が行い、ノートに記載する必要が生じた場合に私に手渡され、必要事項を記載した後には山田氏に返却して管理されていました。山田氏は、ノートの管理を行っていましたが、記載内容をチェックする立場にはなく、記載内容については私の責任において行っていました。
私は現在は退職していますが、今般、株式会社ナプラから、甲第38号証を作成した経緯を説明するよう依頼を受けましたが、現在記憶している限りにおいて上記陳述した内容に誤りはありません。
以上、陳述します。」(甲45記載事項-ア)

そうすると、甲45の陳述書において猪本は、平成15年頃は請求人会社である株式会社ビー・エス・ピーの徳島工場において製造部門のトリートメント充填班に従事し、甲38として提出されたノートは、自身の直筆で記録したものであって、平成15年3月28日から同年11月22日までの同班で製造し容器詰めを行った各種毛髪化粧料について記載したものであること、各項には記録した日付、容器単位当たりの量目、製造数量、梱包数量(甲)及びロット記号を記載していたこと、ロット記号については、その当時採用していたルールに基づいて製造した日付を早見表で置き換えて決定しており、その当時採用していたルールは甲29に記載されたものを利用していたこと、当該ノートは将来的にいつ製造したかを確認するためのロット記号を決定するための重要な内容が記載されているので、その保管、管理は当時の主任が行い、ノートに記載する必要が生じた場合に猪本に手渡され、必要事項を記載した後に返却して管理されていたこと、その記載内容については猪本の責任において行っていたことを陳述している。

甲45において猪本は、平成15年当時、請求人会社である株式会社ビー・エス・ピーの徳島工場の製造部門のトリートメント充填班に従事し、トリートメント充填班の日々の作業を甲38のノートである作業日誌に直筆で記載していたと陳述しており、その陳述内容も具体的である。そして猪本は、当該ノートにはロット記号を決定するために重要な内容が記載されていることを認識した上で、その「記載内容については私の責任において行っていました。」と述べており、かつその陳述内容は、後述のとおり、2003年当時に作成されたことが認められる甲38及び甲39の記載と整合していることも併せて考慮すれば、同氏による、当該作業日誌(ノート)に記載された内容についての陳述には信ぴょう性がある。

(イ)そこで、甲45の陳述内容を踏まえて、甲38及び甲39(なお甲39は作業日誌に係るノート全てであり、甲38は甲39全98頁のうちの第64?79頁であり、甲38には、「HBエッセンス」の記載がある部分に青のマーキングが施されている。)の記載をみると、「HBエッセンス 50ml・・・H25W」なる、ロット記号が「H25W」の「HBエッセンス」が、請求人会社の徳島工場の製造部門のトリートメント充填班において、「8/29」に1440本、「8/30」に780本、「9/18」に1500本、「9/19」に300本、及び「10/2」に300本、いずれも50mlずつ容器に充填されて、「8/29」に20甲、「8/30」に10甲、「9/22」に15甲、及び「10/3」に14甲梱包されたということが認められる(甲38記載事項-ア参照)。ここで、甲3製品が、株式会社ビー・エス・ピーが製造する(甲3-3記載事項-エ)、名称が「ナプラHBヘアエッセンス」の内容量50mlのものであり(甲3-3記載事項-ア及びウ)、その容器の底に「H25W」と印字されていること(甲28-1記載事項-ア参照。)と照らし合わせると、甲38(甲39)に記載の「HBエッセンス 50ml・・・H25W」は、甲3製品に相当するものと認められる。そして、甲38(甲39)の表紙には「H15.3?」との記載があり、甲39の第1頁の記述は「3/28」からはじまり、「4/1」等の「4/○」に係る記載、「5/1」等の「5/○」に係る記載、「6/2」等の「6/○」に係る記載、及び「7/1」等の「7/○」に係る記載に続き、「8/1」等の「8/○」に係る記載を経た後に、上記の「8/29」、「8/30」、「9/18」、「9/19」及び「10/2」に至る記載があることから、「HBエッセンス 50ml・・・H25W」の記載がある「8/29」等の日付は、H15、すなわち平成15年である2003年の日付であると解される。
したがって、甲3製品に係る「HBエッセンス 50ml・・・H25W」なる、ロット記号が「H25W」の「HBエッセンス」が、2003年8月29日等に充填及び梱包されたことが認められる。そしてこのことは、当時請求人が採用していたと甲45において猪本が、また甲37において上原正典(以下、「上原」という。)が陳述しているルールである甲29の製造番号早見表を「H25W」に適用し、甲37において上原が陳述しているように「Hは8月、25は25日、Wは2003年」として導かれる「2003年8月25日」に甲3製品の内容物(バルク)が製造され、その後充填及び梱包されたと解することとの間に矛盾はない。
そうすると、甲3製品の内容物(バルク)は2003年8月25日に製造され、その後続いて、8月29日、8月30日、9月18日、9月19及び10月2日の複数回にわたって繰り返し充填、梱包されており、そして、繰り返し充填、梱包されるということは、製造したものが販売されたことを受けてその都度、充填、梱包を行っていると認められるから、甲3製品は、販売されたものであると認められる。
なお、甲39には、「HBエッセンス」について、「H25W」以外にも、「C18W」(甲29(甲43)のルールに従うと2003年3月18日製造)が4/17及び4/18に充填及び梱包され、「D19W」(同2003年4月19日製造)が4/26に充填及び梱包され、「D22W」(同2003年4月22日製造)が4/28、4/30、5/7、5/9、5/13、5/20及び5/21に充填及び梱包され、「E19W」(同2003年5月19日製造)が5/26、5/27、5/31、6/10、6/11、6/26、7/14、7/15、7/18及び8/7に充填及び梱包され、「H12W」(同2003年8月12日製造)が8/18、8/19及び8/21に充填及び梱包され、「J07W」(同2003年10月7日製造)が10/8、10/10及び10/15に充填及び梱包され、「J16W」(同2003年10月16日製造)が10/17、10/20、10/21、10/23、10/24、10/25及び11/17に充填及び梱包されたことが記載されており、2003年当時に製造及び充填・梱包された「HBエッセンス」が、甲29(甲43)のルールに従って複数回にわたり製造番号が付与されたことが確認できるから、このことも、「HBエッセンス」に係る甲3製品の内容物(バルク)が、甲29(甲43)に示されるルールに従って製造番号が付与され、すなわち、2003年8月25日に製造され、その後充填及び梱包されたことをさらに裏付けるものである。

(ウ)したがって、甲3-3、甲28-1、甲29(甲43)、甲37、甲38(甲39)及び甲45に基づき、甲3製品は、少なくとも本件特許の出願前には製造され、販売されていたものと認められる。

オ 被請求人の反論について
(ア)被請求人は、甲29の作成者、作成日、作成経緯、及び甲29が適用される製品が不明であることを理由として、また、甲38の作成者、作成目的及び作成日が不明であることを理由として、甲29及び甲38の証拠の成立を争う旨主張する。

甲38については、上記エで述べたとおり、甲38の作業日誌(ノート)の作成者は猪本であり、作成日は「平成15年3月28日から同年11月22日まで」であり、作成目的は、請求人である株式会社ビー・エス・ピー徳島工場の製造部門トリートメント充填班において製造し、容器詰めを行った各種毛髪化粧料について、将来的にいつ製造したかを確認するためのロット記号を決定するための重要な内容として、猪本の責任において直筆により記載されたものである。したがって、甲38の作成者、作成日及び作成経緯は明確であるから、被請求人の上記主張は採用できない。
なお特に甲38(甲39)の作業日誌ノートが2003年に作成されたものであることについては、甲45の猪本による陳述書の内容に加え、ノートの各頁の最左列に記載された日付を2003年の暦に当てはめると、すべての日が日曜日(一般的な休業日)以外であることや、甲38(甲39)のノート自体、作成から相当期間が経過したと思われる古い外観であり、一部の頁が挿入又は抜き去られた形跡や、他の者が加筆・修正した形跡等の不審な点もみられないことからも、信用できる。(なお、当該ノートには、2003年の暦に存在しない「5/7(火)」の記載があるところ、その前後の「4/18(金)」、「5/9(金)」等の記載からみて「5/6(火)」あるいは「5/7(水)」の誤記と解される。)

また、甲29については、甲29の原本である甲43の作成者は株式会社ナプラに所属する星野仁美(以下、「星野」という。)であり、作成日は平成30年5月であり、作成経緯は2003年当時に請求人である株式会社ビー・エス・ピー徳島工場が採用していたルールの内容を最近使用しているファイル形式であるエクセルファイルにて再現したというものである。したがって、甲29の作成者、作成日及び作成経緯は明確であるから、被請求人の上記主張は採用できない。
なお、甲3-3、甲28-1、甲29(甲43)、甲37、甲38(甲39)及び甲45に基づけば、甲29に示されるルールに従った製造番号が2003年当時に請求人の製品である甲3製品に付与され、甲3製品が少なくとも本件特許の出願前には製造され、販売されていたものと認められることは上記エで述べたとおりであるから、甲29(甲43)が平成30年5月に作成されたものであって2003年当時に作成されたものではないことはその結論を左右するものではない。

(イ)被請求人はさらに、製造番号早見表(甲29及び甲43)について次のように主張する。
甲43(甲29)の作成者について、証拠説明書上は「(株)ビー・エス・ピー」とされているが、請求人の主張によれば、甲43の元データを作成したのは、別会社である株式会社ナプラの従業員である星野とのことであり、結局、甲43(甲29)の作成者・作成日は不明である。また、別会社の従業員で入社日不明の星野が早見表策定当時のルールを知っていたはずがなく、請求人自身、「甲43は、策定当初の製造番号早見表そのものを完全にコピーしたものではないと認めており、甲43は証拠価値がない。
甲37の陳述書では「自社で製造するすべての化粧品に適用するものとしてルール決めした」旨主張していたのに、請求人製品(乙7)に付された製造番号「KD18FG1」が甲43のルールに従っていないと指摘を受けるや、「数度の改訂を経た製造番号早見表に従って附されたものであり、甲29のルールを適用したものではない」と主張を変更した。甲29(甲43)について、請求人は証拠を示さず抽象的に改訂を重ねてきたと主張するのみで、いつどのような改訂がなされたか不明であるし、甲29(甲43)には2025年までが記載されているのに、最近のものと思われる上記請求人製品(乙7)が甲29(甲43)のルールに則らず、甲3製品だけがルールに則っているのは不自然である。結局、「H25W」が何を指すのか不明である。

そこで検討するに、株式会社ナプラは、甲37において上原が陳述しているように、請求人株式会社ビー・エス・ピーが製造する全製品を販売し、その製造及び開発に関与している会社であるから、当該ナプラの従業員が当該ビー・エス・ピーにおいて策定されたルールの内容を再現することに不自然な点はない。
また、請求人製品(乙7)の製造番号「KD18FG1」が甲29(甲43)のルールに則っていないことについては、甲29(甲43)を自社で製造するすべての化粧品に適用するものとしてルール決めしたという当初の主張と、その後しばらくの間は年をPC上でずらしながら更新したものを利用していたが、その後製造数量の増大に応じて何度かルール及び製造番号早見表の改定を行い、現在では2003年当時とは異なるルールを策定しそれに基づく製造番号早見表を使用しているという後の主張は矛盾するものではなく、改定後のルールに従って製造番号が附された製品(すなわち、甲29(甲43)のルールに則らない製品)が存在しているからといって、甲3製品が2003年当時に製造され、製造番号「H25W」が付与された事実が覆されるものではない。
そうすると、甲29(甲43)は策定当初の製造番号早見表そのものを完全にコピーしたものではないにしても、当該表から把握されるルールの内容と、甲3-3、甲28-1、甲37、甲38(甲39)及び甲45の内容とを合わせ考えれば、甲3製品の容器の底に印字された「H25W」の記載は、2003年8月25日に製造されたことを指すものと認められる。
したがって、「H25W」の意味する内容は明らかであるから、被請求人の上記主張には理由がなく、採用できない。

(2)甲3製品から認定される公然知られた発明について
ア 甲3-1?甲3-3には、上記のとおり、本件特許出願前に製造され、販売されていたものと認められる甲3製品の容器の写真が掲載され、当該容器には甲3-3記載事項ア?エに係る表示があるところ、当該表示は、甲3製品が本件特許出願前に販売されることにより公然に知られるところとなったことが認められる。そうすると、甲3-3記載事項-ア及びイの記載から、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が本件特許の出願前に公然知られていたと認められる。

「成分としてシクロメチコン、ジメチコン、イソノナン酸オクチル、レシチン、ミネラルオイル、スクワラン、イソステアロイル加水分解コラーゲン、カロットエキス、カミツレエキス、マロニエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、センキュウエキス、酢酸トコフェロール、オキシベンゾン及びブチルパラベンが配合され、洗髪後、タオルドライした髪に塗布することにより、髪に艶とうるおいを与えサラサラのスタイリングしやすい髪に仕上げる、洗い流さないヘアトリートメント。」

なお被請求人は、2018年に行った分析の結果(乙2)、甲3製品には容器記載の成分のうちオキシベンゾン及びスクワランが含まれていなかったことから、容器に成分名が記載されているからといって当該成分が入っているわけではなく、化粧品容器の記載からその内容物である化粧品の組成の存在を認定することはできない旨を主張する。しかし、上記分析より約15年前の甲3製品の製造当時、甲3製品にオキシベンゾンやスクワランが含まれていなかったかは明らかではないし、販売された化粧品の容器に成分名が具体的に記載されていれば、その成分が配合された化粧品として認識され、知られることとなるのであるから、甲3製品の容器の表示に基づいて、上記の甲3発明を本件特許の出願前に公然知られた発明として認定する。

イ 甲4リーフレットについて
請求人は、甲3製品に係る発明の認定にあたり、甲3製品容器の表示のみならず、甲4リーフレットに記載の内容も併せて用いて認定すべきである旨主張する。
しかし、甲4リーフレットには、「ナプラHBヘアエッセンス」という甲3製品と同一名称の商品が紹介されているものの、その組成については何ら記載されておらず、甲4リーフレット記載の製品が甲3製品の成分表示と同じ成分表示を有する製品であることを確認できる記載はない。
請求人は、甲44を提示し、甲4と同内容のリーフレットを掲載したウェブページがアーカイブとして保存された際のタイムスタンプの日付が本件特許の出願前の2005年3月13日であると主張する。しかし、この日付は甲3製品の製造日である2003年8月25日から1年6月以上も経過しているところ、乙1添付書面2?7(乙1記載事項-ア?カ)に示されるように、同一名称で配合成分の異なる商品が現に複数存在していることを考慮すると、同一の商品名であるからといって、甲4リーフレット記載の製品が甲3製品と同じ成分表示を有する製品について述べたものであるとすることはできない。
したがって、甲3製品に係る発明の認定にあたり、甲4リーフレットに記載の内容を併せて用いることはできないから、甲3製品に係る発明の認定は、甲3製品のみを用いて行う。

(なお、請求人は、甲4には「洗い流さない簡単ステップ」として「シャンプー&タオルドライ」、「ナプラHBエッセンス塗布」、「自然乾燥またはドライヤー」及び「サラサラのつややかヘア」の工程が記載され、当該記載は本件特許発明における「濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用される」を充足すると主張するが、後述するように、「濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる」との構成は、甲3製品の容器の表示内容からも把握できると合議体は判断した。)

(3)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
・甲3発明における「シクロメチコン」は、甲8記載事項-アから「揮発性」であると認められ、甲9記載事項-アから「環状シリコーン」であると認められるから、本件特許発明1における「(C)揮発性の環状シリコーン」に相当する。
・甲3発明における「イソノナン酸オクチル」は、「イソノナン酸エチルヘキシル」の別名称であり(甲7記載事項-イ)、イソノナン酸エチルヘキシルは、イソノナン酸と2-エチルヘキシルアルコールのエステルであって(甲7記載事項-ア)、「イソノナン酸2-エチルヘキシル」とも記載し得るものであるから、本件特許発明1における「(B)イソノナン酸2-エチルヘキシル」に相当する。
・甲3発明における「オキシベンゾン」は、甲5記載事項-ア及び甲6記載事項-アからみて、紫外線吸収能を有する化合物であるから、本件特許発明1における「(A)紫外線吸収剤」に相当する。
・甲3発明における「ヘアトリートメント」は、本件特許発明1における「毛髪化粧料」に相当する。
・甲3発明は、甲3-3の成分表示に「水」が記載されておらず、「水」を含まないと解されるから、本件特許発明1における「非水系」に相当する。
・甲3発明は、シクロメチコン、イソノナン酸オクチル及びオキシベンゾン以外の成分も含むものであるが、本件特許発明1は、配合成分について、「(A)?(C)の成分が配合されており」と特定され、(A)?(C)以外の成分を含まないことは特定されていないから、この点は相違点にはならない。

そうすると、本件特許発明1と甲3発明とは、
「(A)紫外線吸収剤、(B)イソノナン酸2-エチルヘキシル、(C)揮発性の環状シリコーンが配合されており、毛髪に塗布後、洗い流さない方法で使用されることを特徴とする非水系毛髪化粧料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:塗布する毛髪が、本件特許発明1は「濡れた毛髪」と特定されているのに対し、甲3発明は「タオルドライした髪」である点。

相違点2:塗布後の使用方法について、本件特許発明1は「毛髪を乾燥させる」と特定されているのに対し、甲3発明はそのように特定されていない点。

相違点3:紫外線吸収剤について、本件特許発明1は「2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含」むことが特定されているのに対し、甲3発明は「2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル」を含まず、「オキシベンゾン」を含む点。

相違点4:紫外線吸収剤の配合量について、本件特許発明1では「3質量%以上」と特定されているのに対し、甲3発明では紫外線吸収剤の配合量が不明である点。

加えて、本件特許発明1は、(B)成分について、「イソノナン酸2-エチルヘキシル」を配合する場合と、「安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシル」を配合する場合の2つの場合が択一的に記載されているところ、後者はさらに以下の点でも甲3発明と相違する。

相違点5:(B)成分として、本件特許発明1にはさらに「安息香酸アルキル」が配合されているのに対し、甲3発明には「安息香酸アルキル」が配合されていない点。

イ 判断
(ア)相違点1について
タオルドライ後、すなわちタオルで拭いただけの毛髪は通常濡れた状態にあるから、甲3発明における「タオルドライした髪に塗布」することは、「濡れた毛髪に塗布」することにほかならない。したがって、この点は相違点ではない。

(イ)相違点2について
甲3発明は、「塗布」後に「洗い流さない」方法で使用されるところ、ヘアトリートメント塗布後の髪は、自然乾燥又はドライヤーなどの何らかの方法により乾燥させるものであるから、甲3発明は「洗い流さずに毛髪を乾燥させる工程」を含むものと認められる。したがって、この点は相違点ではない。

(ウ)相違点3及び4について
甲3発明は、「2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル」を含まず、紫外線吸収剤の配合量も明らかでないから、これらの点は相違点である。

(エ)したがって、本件特許発明1は、少なくとも相違点3及び4で甲3発明と相違しており、甲3製品に係る発明によって本件特許の出願前に公然知られた発明であるとすることはできない。

(4)小括
よって、請求人の主張する無効理由1には、理由がない。

2 無効理由3(進歩性要件:甲3、甲4、及び甲30?甲32)について
(1)本件特許発明1についての判断
ア 対比
上記1(3)ア及びイで述べたとおり、本件特許発明1と甲3発明とは、少なくとも上記相違点3及び4において相違する。

イ 判断
(ア)相違点3について
請求人は、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルは、甲3製品製造当時の平成15年頃は化粧料への配合が認められていなかったが、平成17年頃から配合できるようになった紫外線吸収剤であるため(甲41記載事項-ア)、甲3製品には配合されていないが、許された成分として原料メーカーが積極的に紹介した結果(甲32)、甲30?甲32に示すように、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルは本件特許の出願時には化粧料に配合する紫外線吸収剤として当業者に広く知られていたから、甲3製品(及び甲4リーフレット)に記載された主引用発明に甲30?甲32(副引例)のいずれかに記載された公知成分である2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを適用することに困難性はなく、また、本件特許明細書【0014】によれば、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルは、(A)紫外線吸収剤として配合可能な多数の既知の成分の一つであって、当該成分をあえて配合することの格別の技術的意義が本件特許明細書に記載されているわけではないから、本件特許発明1において(A)紫外線吸収剤が2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含むことを特定したからといって、本件特許発明1が進歩性を獲得できる理由にはならない旨主張する。

しかしながら、甲3製品の容器の表示には(甲3-3)、当該製品に配合されている16種類の成分名が列記されているに留まり、それらの列記された成分に加えて、他の成分を配合する旨の記載などはなく、また、そのような他の成分を加えることの示唆となる記載も存在しないから、当業者は、当該製品にさらに他の成分を配合することを通常想到し得ず、ましてや、特に2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを選んで当該製品に配合することを当業者は想到し得ないと認める。
また、甲3発明にすでに配合されている「オキシベンゾン」は、紫外線吸収剤の中でも、UVAからUVBにかけて広範囲の吸収波長領域をもつ成分であるから(甲5記載事項-ア及び甲6記載事項-ア)、さらに他の紫外線吸収剤を配合したり、オキシベンゾンに代えて他の紫外線吸収剤を配合したりする積極的な動機付けが認められず、特に2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを選んで甲3発明に配合することなどを当業者は容易に想到し得たとはいえない。
請求人が挙げる甲30には、UVA吸収剤として「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」(2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルに相当する。)が記載され(甲30記載事項-ウ)、紫外線吸収剤の配合組み合わせについて、「UVAからUVBまで波長領域ごとに活用される化合物が異なっており,多様な組み合わせで紫外線防御機能を向上させることができる」と記載されているが(甲30記載事項-ア)、甲3発明に含まれる「オキシベンゾン」はUVAからUVBにかけて広範囲の吸収波長領域をもつ成分であるから、波長領域を考慮して他の紫外線吸収剤をさらに配合する動機付けが認められない。また甲30には、波長領域以外の点での紫外線吸収剤の配合組み合わせによる効果向上の試みについても記載されているが(甲30記載事項-エ)、ポリシリコーン誘導体等の他の成分に係るものの例示があるに留まり、オキシベンゾンのようなベンゾフェノン誘導体と2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルとの組合せを示唆するものではない。
甲31には、日焼け止めの全成分表示例として、全17成分のうちの6番目と11番目に紫外線吸収剤であるメトキシケイヒ酸エチルヘキシルとジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルに相当する。)を含む表示例が記載され(甲31記載事項-ア)、甲32には、紫外線吸収剤として、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルに相当する。)とともにメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(合議体注:一部に「エチルエキシル」とあるが「エチルヘキシル」の誤記と解される。)を配合した処方例が複数記載されているが(甲32記載事項-ア)、いずれも、UVB吸収剤であるメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(甲30記載事項-オ及びカ参照。なお、甲30記載事項-カの構造式より、メトキシケイヒ酸オクチルはメトキシケイヒ酸エチルヘキシルの別名称である。)と、UVA吸収剤である2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル(甲30記載事項-ウ)を配合した処方例を記載するにすぎず、UVAからUVBにかけて広範囲の吸収波長領域をもつオキシベンゾンが配合されている甲3発明に、さらにUVAだけを吸収する2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを組み合わせて配合したり、オキシベンゾンに代えて配合したりすることを動機付けるものではない。
また甲41も、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを化粧品へ配合できる成分として追加したことが記載されているだけであり、特にオキシベンゾンと共に配合することや、オキシベンゾンに代えて用いることなどを示唆するものではない。
さらに、オキシベンゾンについて記載された甲5及び甲6にも、オキシベンゾンを2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルと組み合わせることを示唆する記載などは存在しない。
そして、甲3、甲30?甲32、甲41、甲5、甲6のいずれにも、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを、(B)イソノナン酸2-エチルヘキシルと(C)揮発性の環状シリコーンの配合された非水系毛髪化粧料に配合することなどは記載も示唆もされておらず、当該甲号証の記載を組み合わせてみても、当業者が当該成分を(B)成分及び(C)成分と共に配合し、非水系毛髪化粧料とすることを想到し得ない。
そうすると、甲3発明に対し、特に動機付けがないにも拘わらず、甲30?甲32に示される2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを選んでさらに配合することを当業者が容易に想到し得たとは認められない。

一方、本件特許発明1は、本件特許明細書の段落【0045】?【0059】の実施例に示されるように、(A)成分である「2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル」、(B)成分であるイソノナン酸2-エチルヘキシル、及び(C)成分である揮発性の環状シリコーンを配合することにより、非水系毛髪化粧料の低温安定性を高められ、かつドライ後の指通り性も良好にするという顕著な効果を奏するものであると認める。

(イ)したがって、相違点4及び5について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明、及び甲30?甲32の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 実験報告書(乙20)について
(ア)なお、被請求人の提出した実験報告書(乙20)によると、(B)成分であるイソノナン酸2-エチルヘキシルと(C)成分であるデカメチルシクロペンタシロキサンを配合した組成物に、(A)成分として「2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル」を配合した組成物と、オキシベンゾンを配合した組成物について、0?10℃での一晩放置後の外観を比較した結果、前者は透明で低温安定性に問題がなかった一方で、後者は白濁以上に低温安定性が悪い「析出」となったことが記載されており、当該結果から、(B)成分と(C)成分を配合した組成物に配合したときに、本件特許発明1の「2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル」が、甲3発明の「オキシベンゾン」よりも低温安定性の点で優れたものであることが認められる。そうすると、本件特許発明1は、紫外線吸収剤として「2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル」を用いることにより、オキシベンゾンのみを用いた甲3発明よりも顕著に優れたものであることが認められ、当業者が本件特許発明1を発明することが一層容易ではなかったことが認められる。

(イ)乙20について請求人は、当該実験は、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルのみを3質量%配合した組成物と、オキシベンゾンのみを3質量%配合した組成物とを比較しているところ、後者についてはオキシベンゾンを単剤で3質量%配合した合理的根拠が不明であり、前者については、本件特許明細書の段落【0014】に記載されるように、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル以外にオキシベンゾン等の低温安定性が悪い成分を含む態様も包含されるのであるから、乙20の実験報告書の結果は何ら意味を持つものではない旨主張する。
しかしながら、本件特許発明1は、紫外線吸収剤として必ず2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含むものであるところ、上記(ア)で述べたとおり、(B)成分と(C)成分を配合した組成物に配合したときに、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルが、甲3発明で用いられるオキシベンゾンよりも低温安定性に優れていることは乙20の結果から十分に確認できるから、乙20は、本件特許発明1が甲3発明から予測し得ない顕著な効果を有することを確認するに足りる実験結果を提示するものであり、請求人の上記主張は採用できない。

エ したがって、本件特許発明1は、甲3製品に係る発明に、甲30?甲32に記載された発明のいずれを適用しても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件特許発明2?5について
本件特許発明2?4は、本件特許発明1をさらに限定した発明であるから、上記(1)で述べた理由と同じ理由により、甲3製品に係る発明に、甲30?甲32に記載された発明のいずれを適用しても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件特許発明5も、本件特許発明1?4の非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法であるから、同様に、甲3製品に係る発明に、甲30?甲32に記載された発明のいずれを適用しても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
よって、請求人の主張する無効理由3には、理由がない。

3 無効理由2(進歩性要件:甲3及び甲4)
(1)本件特許発明2?5について
まず、甲4リーフレット記載の製品が甲3製品と同じ成分表示を有する製品について述べたものであるとすることはできず、甲3製品に係る発明の認定にあたり、甲4リーフレットに記載の内容を併せて用いることができないことは、上記1(2)イで述べたとおりである。
そして、本件特許発明2?5は、上記2(2)で述べたとおり、甲3製品に係る発明に、甲30?甲32に記載された発明のいずれを適用しても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない発明であるから、上記甲3製品に係る発明のみに基づいても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない発明である。

(2)小括
よって、請求人の主張する無効理由2には、理由がない。

4 無効理由4(サポート要件)
(1)請求人は、本件特許発明1?5の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第123条第1項第4号の規定により特許無効とされるべきであると主張するので、以下、検討する。

本件特許明細書には、
「【0005】
一方、例えば、洗い流さずに使用されるリーブオンタイプの毛髪化粧料に紫外線吸収剤を配合して、毛髪を紫外線から保護する機能を持たせるニーズもある。ところが、紫外線吸収剤を配合した毛髪化粧料を濡れた毛髪に塗布し、ドライヤーを用いるなどして乾燥させると、乾燥途中に毛髪が束になりやすく、乾燥後の指通りが悪くなってしまう。
【0006】
また、紫外線吸収剤を配合した毛髪化粧料は、寒冷地の冬季の気温のような低温下に置かれると、白濁が生じやすい。エアゾール式スプレーとは異なり、リーブオンタイプの毛髪化粧料では、内容物が視認できる透明容器に入れて商品化される場合もあるが、流通時や倉庫などでの保管時に低温に曝されることで白濁してしまうと、商品価値が低下する虞もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、紫外線吸収剤が配合されており、低温安定性に優れ、かつドライ後の毛髪の指通りを良好にし得る非水系毛髪化粧料と、前記非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法とを提供することにある。」
と記載されている。
したがって、従来「紫外線吸収剤を配合した毛髪化粧料を濡れた毛髪に塗布し、ドライヤーを用いるなどして乾燥させると、乾燥途中に毛髪が束になりやすく、乾燥後の指通りが悪くなってしまう」という問題や、「紫外線吸収剤を配合した毛髪化粧料は、寒冷地の冬季の気温のような低温下に置かれると、白濁が生じやすい」という問題があったため、「紫外線吸収剤が配合されており、低温安定性に優れ、かつドライ後の毛髪の指通りを良好にし得る非水系毛髪化粧料と、前記非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法とを提供すること」が、本件特許発明が解決しようとする課題であると認められる。

(2)本件特許明細書の段落【0008】には、課題を解決するための手段について、
「上記目的を達成し得た本発明の非水系毛髪化粧料は、下記(A)?(C)の成分が配合されており、濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用されることを特徴とするものである。
(A)紫外線吸収剤
(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシル
(C)揮発性の環状シリコーン」
と記載され、また、本件特許発明の説明として、
「【0011】
・・・(A)紫外線吸収剤は、紫外線による毛髪の損傷を防止するための成分であり、(C)揮発性の環状シリコーンは、非水系毛髪化粧料の媒体(溶媒)となる成分であるが、これらは相溶性が低い。
【0012】
本実施形態の非水系毛髪化粧料は、(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシルを使用することで、(A)成分の(C)成分への溶解性を高めて透明な外観とすることを可能とし、かつ低温下でもその透明な外観を維持できるといった低温安定性の確保も可能とした。
【0013】
また、上記の通り、(A)成分を配合した毛髪化粧料を濡れた毛髪に塗布し、乾燥させると、乾燥途中に毛髪が束となって、乾燥後にもその束の状態が維持されてしまうため、乾燥後(ドライ後)の毛髪の指通り性が悪くなる。しかし、(A)成分および(C)成分と共に(B)成分も配合することで、毛髪が束になることを抑制できるため、本実施形態の非水系毛髪化粧料を用いた場合には、ドライ後の毛髪の指通り性も良好となる。」
と記載されている。

そして、本件特許発明の非水系毛髪化粧料を得るための各構成成分について、より詳細に、「(A)紫外線吸収剤」の種類及び配合量については段落【0014】?【0016】に、「(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシル」の配合量については段落【0017】?【0019】に、「(C)揮発性の環状シリコーン」の種類及び配合量については段落【0020】?【0027】に、それぞれ記載されている。

さらに、本件特許明細書の段落【0045】?【0094】には本件特許発明の実施例に係る非水系毛髪化粧料の実施例が数多く挙げられており、とりわけ、表1に記載の非水系毛髪化粧料(段落【0045】?【0059】)は、(A)成分をパラメトキシケイヒ酸2-エチルヘキシル3.8質量%及び2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル0.7質量%とし、(C)成分をデカメチルシクロペンタシロキサン77.35質量%又は71.35質量%とし、(B)成分については、安息香酸アルキル6.0質量%、イソノナン酸2-エチルヘキシル6.0質量%を配合したものをそれぞれ実施例1a、1bとし、(B)成分を含まないものを比較例1aとし、(B)成分の代わりに他のエステル油(B)’を含むものをそれぞれ比較例1b?1gとして非水系毛髪化粧料を調製したものであり、ドライヤー乾燥後の毛束におけるすべりのある指通りを「ドライ後の指通り性」として評価し、また、-10℃の冷暗所で1か月静置保管後の透明性を「低温安定性」として評価したところ、実施例1a及び1bでは、「ドライ後の指通り性」も「低温安定性」も共に良好、優れていると評価されたのに対し、比較例では、「ドライ後の指通り性」、「低温安定性」のいずれか、もしくは両方が基準と同等、もしくは劣るとされ、実施例1a、1bとは異なり、改善がなされなかったことが記載されている。

(3)そうすると、これらの記載によれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、非水系毛髪化粧料において、(A)及び(C)成分に加え、(B)成分を配合することで、本件特許発明の「ドライ後の指通り」の課題を解決できること、並びに、(A)?(C)成分を配合することで、本件特許発明の「低温安定性」の課題を解決できることが、実施例を含め具体的な説明をもって記載されていることが認められる。
そして、そのように課題を解決するための態様、すなわち各原料の種類や配合量については、当業者であれば、上記実施例の配合を端緒とし、明細書の各成分の種類や配合量についての記載及び本件特許出願時の技術常識を参酌しつつ、明細書の段落【0014】?【0027】の記載に基づいて各成分の配合量を増減したり、各成分の種類を少しずつ変更したりしながら、徐々にその範囲を広げることで、実施例以外の態様をも十分に把握し得るものと認められるから、当業者であれば、本件特許発明1の(A)?(C)成分に該当する成分を適宜適量組み合わせて配合し、課題を解決できるものとして認識できるものである。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細の説明には、本件特許発明1が記載されているといえ、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものと認められる。
また、本件特許発明2、4は、それぞれ「(D)揮発性の直鎖状ジメチルポリシロキサン」、「(E)マカデミアナッツ油またはメドウフォーム油」がさらに配合されることが特定された発明であり、本件特許発明3は、(C)成分が「(c1)デカメチルシクロペンタシロキサンと(c2)ドデカメチルシクロペンタシロキサン」に特定された発明であるが、実施例には、それらの成分が配合された非水系毛髪化粧料が記載されているから(本件特許発明2の「(D)揮発性の直鎖状ジメチルポリシロキサン」については実施例1a、1b、3a?3c及び4a?4gに、本件特許発明3の「(c1)デカメチルシクロペンタシロキサンと(c2)ドデカメチルシクロペンタシロキサン」については実施例3cに、本件特許発明4の「マカデミアナッツ油またはメドウフォーム油」については実施例3a?3d、4a及び4bに記載)、同様に、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明2?4の発明が記載されていることが認められる。
本件特許発明5は、本件特許発明1?4の非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法であるが、実施例では、当該非水系毛髪化粧料を濡れた髪に塗布後、毛髪を乾燥させているから、同様に、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明5の発明が記載されていることが認められる。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は以下の2点を特に主張する。

(ア)本件特許発明1?5においては、(A)紫外線吸収剤、(B)イソノナン酸2-エチルヘキシル、又は安息香酸アルキル及びイソノナン酸2-エチルヘキシル、(C)揮発性の環状シリコーンについて、全量成分における(A)?(C)成分の配合比が限定されていないところ、本件特許明細書には限られた数値の実施例しか開示されていないので、本件特許発明の組成からなる化粧料が所定の効果を発揮し、発明の目的を達成することができるものであるかどうかについて、発明の詳細な説明の記載にはサポートされていない。
また、明細書の段落【0016】、【0019】及び【0026】には、(A)?(C)成分について、それぞれ好ましいとされる数値範囲が記載されているが、これらの数値範囲を全て満たす実施例2でさえも、「ドライ中の指通り性」及び「均一感のある柔らかさ」において、(A)成分を含まない比較例より劣っており、発明の効果と矛盾している。
したがって、本件特許発明1?5は、発明が解決しようとする目的効果を達成することができない範囲を広く含んでいる。
(審判請求書の第7頁第19行?第9頁第14行)

(イ)明細書の表1には、(B)成分として安息香酸アルキルを配合した実施例1a、及びイソノナン酸2-エチルヘキシルを配合した実施例1bが示されているが、「安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシル」の両者を配合した実施例はなく、明細書の段落【0017】に「両方を用いてもよい。」という技術的根拠を欠いた表現があるのみである。
そうすると、本件特許発明のうち、「安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシル」を同時に配合した部分については、所定の効果を奏することの技術的な裏付けがないため、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるということはできない。
(審判請求書の第9頁下から第4行?第11頁第8行)

イ 主張についての検討
(ア)上記ア(ア)について、上記(1)?(3)で述べたように、当業者であれば、本件特許明細書の記載及び本件特許出願時の技術常識に基づき、明細書の記載に基づいて成分の配合量等を調整することで、実施例以外の配合についても、本件特許発明の課題を解決できる態様を十分に把握できるものと認められ、そのような調整を行う中で、好ましくない性質変化が生じた場合には、本件特許出願時の技術常識に基づき、それを回避するよう成分の種類や配合量を変更することも当業者が通常行うことである。
したがって、本件特許発明において(A)?(C)成分の配合量が特定されていないこと、及び、本件特許明細書に限られた数値の実施例しか開示されていないことを根拠として、本件特許発明がサポート要件を満たさないとする請求人の主張は採用できない。
また、実施例2が「ドライ中の指通り性」と「均一感のある柔らかさ」の点で比較例より劣るものであることから、実施例に記載された配合でさえも発明の課題を解決できないという主張については、本件特許発明が解決しようとする課題は「ドライ後の指通り性」と「低温安定性」であるところ、「ドライ中の指通り性」と「均一感のある柔らかさ」が比較例より劣ることにより当該課題が解決できないものではないから、上記主張は採用できない。

(イ)上記ア(イ)について、本件特許明細書の実施例1a及び1bの結果から、(B)成分として「安息香酸アルキル」及び「イソノナン酸2-エチルヘキシル」のいずれか一方を含む態様については、ドライ後の指通り性及び低温安定性に優れた毛髪化粧料を得られることが理解できる。
そして、本件特許明細書の段落【0017】には「本実施形態の非水系毛髪化粧料において、(B)成分には、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシルのうちのいずれか一方のみを用いてもよく、両方を用いてもよい。」と記載されていることから、各々単独で効果を発揮する安息香酸アルキルとイソノナン酸2-エチルヘキシルであれば、両者を配合して用いた場合についても同様の効果を奏すると解するのが相当であるところ、これらの2成分を配合するとドライ後の指通り性や低温安定性において所望の効果を奏さなくなる、あるいは、何らかの性質変化により毛髪化粧料として使用できなくなるといった事情が存在したとも認められない。
したがって、両成分を配合した実施例がないことを根拠として、本件特許発明のうち両成分を配合する部分についてサポート要件を満たさないとする請求人の主張は採用できない。

(5)小括
よって、請求人の主張する無効理由4には、理由がない。


第9 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求に係る訂正は適法であり、本件の請求項1?5に係る特許は、請求人が主張するいずれの理由によっても無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担するものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非水系毛髪化粧料および毛髪処理方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤が配合されており、低温安定性に優れ、かつドライ後の毛髪の指通りを良好にし得る非水系毛髪化粧料と、前記非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紫外線による悪影響を回避するために、日焼け止めクリームなどの皮膚用の化粧料に紫外線吸収剤を配合することが行われているが、最近では、紫外線による毛髪の損傷防止を可能とすべく、紫外線吸収剤を配合した毛髪化粧料も開発されている。
【0003】
こうした毛髪化粧料としては、例えば、毛髪に噴霧して紫外線吸収剤を含む各種成分を付着させるエアゾール式スプレータイプのものが提案されている(特許文献1)。このようなタイプの毛髪化粧料であれば、例えば整髪後の毛髪に、その髪型を崩すことなく効果的に紫外線吸収剤を付着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-113281号公報(特許請求の範囲など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、例えば、洗い流さずに使用されるリーブオンタイプの毛髪化粧料に紫外線吸収剤を配合して、毛髪を紫外線から保護する機能を持たせるニーズもある。ところが、紫外線吸収剤を配合した毛髪化粧料を濡れた毛髪に塗布し、ドライヤーを用いるなどして乾燥させると、乾燥途中に毛髪が束になりやすく、乾燥後の指通りが悪くなってしまう。
【0006】
また、紫外線吸収剤を配合した毛髪化粧料は、寒冷地の冬季の気温のような低温下に置かれると、白濁が生じやすい。エアゾール式スプレーとは異なり、リーブオンタイプの毛髪化粧料では、内容物が視認できる透明容器に入れて商品化される場合もあるが、流通時や倉庫などでの保管時に低温に曝されることで白濁してしまうと、商品価値が低下する虞もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、紫外線吸収剤が配合されており、低温安定性に優れ、かつドライ後の毛髪の指通りを良好にし得る非水系毛髪化粧料と、前記非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得た本発明の非水系毛髪化粧料は、下記(A)?(C)の成分が配合されており、(A)紫外線吸収剤として、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含み、(A)成分の配合量が3質量%以上であって、濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用されることを特徴とするものである。
(A)紫外線吸収剤
(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシル
(C)揮発性の環状シリコーン
【0009】
また、本発明の毛髪処理方法は、本発明の非水系毛髪化粧料を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紫外線吸収剤が配合されており、低温安定性に優れ、かつドライ後の毛髪の指通りを良好にし得る非水系毛髪化粧料と、前記非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の非水系毛髪化粧料は、(A)紫外線吸収剤、(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシル、および(C)揮発性の環状シリコーンが配合されている。(A)紫外線吸収剤は、紫外線による毛髪の損傷を防止するための成分であり、(C)揮発性の環状シリコーンは、非水系毛髪化粧料の媒体(溶媒)となる成分であるが、これらは相溶性が低い。
【0012】
本実施形態の非水系毛髪化粧料は、(B)安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシルを使用することで、(A)成分の(C)成分への溶解性を高めて透明な外観とすることを可能とし、かつ低温下でもその透明な外観を維持できるといった低温安定性の確保も可能とした。
【0013】
また、上記の通り、(A)成分を配合した毛髪化粧料を濡れた毛髪に塗布し、乾燥させると、乾燥途中に毛髪が束となって、乾燥後にもその束の状態が維持されてしまうため、乾燥後(ドライ後)の毛髪の指通り性が悪くなる。しかし、(A)成分および(C)成分と共に(B)成分も配合することで、毛髪が束になることを抑制できるため、本実施形態の非水系毛髪化粧料を用いた場合には、ドライ後の毛髪の指通り性も良好となる。
【0014】
(A)成分である紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチルなどの安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸ホモメンチルなどのサリチル酸系紫外線吸収剤;パラメトキシケイ皮酸2-エトキシエチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジイソプロピルケイ皮酸エステルなどのケイ皮酸系紫外線吸収剤;ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウムなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;)2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸2-エチルヘキシルエステル;アントラニル酸メンチル;テレフタリリデンジカンフルスルホン酸;2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン;4-tert-ブチル-4’-メトキシ-ジベンゾイルメタン;2,2’-メチレンビス(6-(2Hベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール);などが挙げられ、これらのうちの2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含み、2種以上を併用してもよい。
【0015】
なお、紫外線から毛髪を保護する機能を良好に確保する観点から、紫外線A波を吸収する紫外線吸収剤と、紫外線B波を吸収する紫外線吸収剤とを併用するとよい。紫外線A波を吸収する紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルが挙げられる。紫外線B波を吸収する紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0016】
非水系毛髪化粧料における(A)成分の配合量は、紫外線から毛髪を保護する機能をより良好に確保する観点から、3質量%以上である。また、非水系毛髪化粧料中の(A)成分の量をある程度制限して、非水系毛髪化粧料における低温安定性をより良好に高める観点から、非水系毛髪化粧料における(A)成分の配合量は、10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
本実施形態の非水系毛髪化粧料において、(B)成分には、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシルのうちのいずれか一方のみを用いてもよく、両方を用いてもよい。
【0018】
なお、安息香酸アルキルには、例えば、安息香酸と脂肪族アルコールとのエステルである安息香酸アルキル(C_(12?15))、安息香酸アルキル(C_(16,17))(Cの後の数値は、アルキル部分の炭素数を意味している)などを用いることができる。
【0019】
非水系毛髪化粧料における(B)成分の配合量〔安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシルのうちのいずれか一方のみを用いる場合は、その量であり、両方を用いる場合は、それらの合計量である。非水系毛髪化粧料における(B)成分の配合量について、以下同じ。〕は、(B)成分の使用による上記の効果をより良好に確保する観点から、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、(B)成分の配合量が多くなるとドライ後の毛髪の柔らかさが損なわれる虞があることから、非水系毛髪化粧料における(B)成分の配合量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
【0020】
(C)成分である揮発性の環状シリコーンとしては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
【0021】
【化1】

【0022】
上記式(1)中、xは4?6の整数である。
【0023】
上記式(1)で表される揮発性の環状シリコーンは、具体的には、オクタメチルシクロテトラシロキサン、(c1)デカメチルシクロペンタシロキサン、(c2)ドデカメチルシクロヘキサシロキサンである。
【0024】
(C)成分である揮発性の環状シリコーンには、上記例示のもののうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
なお、非水系毛髪化粧料には、(C)成分として、(c1)デカメチルシクロペンタシロキサンと(c2)ドデカメチルシクロヘキサシロキサンとが配合されていることが好ましく、この場合には、ドライ後の毛先のまとまりが、より良好となる。
【0026】
非水系毛髪化粧料における(C)成分の配合量は、例えば、50?90質量%である。
【0027】
なお、(C)成分として(c1)と(c2)とを配合する場合には、それらの配合比率は、質量基準で、例えば、(c2)/(c1)=0.001?0.1とすればよい。
【0028】
本実施形態の非水系毛髪化粧料における、非水系とは、毛髪化粧料の外相が水系ではないものを意味する。そのため、水を全く含有しないものであってもよく、外相が水系でない限りにおいて水を含有するものであってもよい。本実施形態の非水系毛髪化粧料における水の含有量は、例えば、5質量%以下である。
【0029】
なお、本実施形態の非水系毛髪化粧料には、エタノールは配合しないことが好ましい。エタノールを配合すると非水系毛髪化粧料が吸湿してしまい、白濁が生じやすくなる虞がある。
【0030】
また、本実施形態の非水系毛髪化粧料には、(D)揮発性の直鎖状ジメチルポリシロキサンが配合されていることが好ましい。(D)成分を配合した非水系毛髪処理剤であれば、塗布した濡れた髪をドライヤーなどで乾かす際の指通り性、すなわち、ドライ中の指通り性がより良好となる。
【0031】
(D)成分である揮発性の直鎖状ジメチルポリシロキサンとしては、例えば、粘度(25℃での動粘度)が0.5mm^(2)/s以上5mm^(2)/s以下の直鎖状ジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0032】
本明細書でいう(D)成分の粘度(25℃での動粘度)は、化粧品原料基準一般試験法粘度測定法第1法に準拠して測定した値である。
【0033】
非水系毛髪化粧料における(D)成分の配合量は、(D)成分の使用による上記の効果をより良好に確保する観点から、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、(D)成分の配合量が多くなると毛先のまとまりが損なわれる虞があることから、非水系毛髪化粧料における(D)成分の配合量は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
また、本実施形態の非水系毛髪化粧料には、(E)マカデミアナッツ油またはメドウフォーム油が配合されていることが好ましい。(E)成分を配合した非水系毛髪化粧料であれば、例えば染毛処理が施されるなどして特に毛先にダメージを受けた毛髪であっても、その全体にわたって均一感のある柔らかさを付与できるようになる。
【0035】
非水系毛髪化粧料における(E)成分の配合量は、(E)成分の使用による上記の効果をより良好に確保する観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、(E)成分の配合量が多くなるとドライ後のすべりのある指通り性の向上効果が小さくなる虞があることから、非水系毛髪化粧料における(E)成分の配合量は、10質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態の非水系毛髪化粧料には、上記の(A)?(E)の各成分以外にも、例えば、通常のトリートメント剤などの毛髪化粧料に配合されている各種の成分を、本実施形態の非水系毛髪化粧料の効果を損なわない範囲で配合することができる。このような成分としては、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、炭化水素、ロウ、エステル油、植物油、シリコーン、湿潤剤、防腐剤、キレート剤、香料、着色剤などが挙げられる〔ただし、上記の各成分のうち、(A)?(E)の各成分に該当するものを除く〕。
【0037】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、モノ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウムなど)、ジ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩またはエチレンオキサイド(E.O.)付加型の第4級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン(ポリオキシエチレンオレイルアミンなど)、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどが挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、α-オレフィン酸ナトリウムなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ベタインなどが挙げられる。
【0038】
炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる(炭化水素の配合量は、例えば、0.01?10質量%)。ロウとしては、例えば、ミツロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウなどが挙げられる(ロウの配合量は、例えば、0.01?5質量%)。エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2-エチルヘキサン酸セチル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、ジメチルオクタン酸2-オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、ステアリン酸コレステリルなどが挙げられる〔(B)成分を除くエステルの配合量は、例えば、0.01?10質量%〕。植物油としては、例えば、アボガド油、オリーブ油、コメヌカ油、パーム核油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、バオバブ種子油、アルガニアスピノサ核油、ローズヒップ油などが挙げられる〔(E)成分を除く植物油の配合量は、例えば、0.01?10質量%〕。
【0039】
シリコーンとしては、例えば、高重合メチルポリシロキサン、ジメチコノール、ポリエーテル変性シリコーン(ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体など)、ポリグリセリン変性シリコーン(ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコーンなど)、アミノ変性シリコーン(アミノエチルアミノプロピルメチコン・ジメチコン共重合体など)、フェニル変性シリコーン(メチルフェニルポリシロキサンなど)などが挙げられる。なお、(C)成分と(D)成分を除くシリコーンの配合量は、例えば、0.1?30質量%である。
【0040】
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ピロリドンカルボン酸などが挙げられる。防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノールなどが挙げられる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸またはその塩、ジエチレントリアミン五酢酸またはその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸またはその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸またはその塩などが挙げられる。
【0041】
本実施形態の非水系毛髪化粧料の剤型は、例えば、透明の液状剤型である。
【0042】
本実施形態の非水系毛髪化粧料の粘度は、例えば10?1000mPa・sである。本明細書でいう「非水系毛髪化粧料の粘度」は、B型粘度計を使用し、適宜なローターを用いて、25℃でローター回転数30rpmとして計測したときの、計測開始から60秒後の値である。
【0043】
本実施形態の非水系毛髪化粧料は、リーブオンタイプのトリートメント剤などの用途として、濡れた毛髪に塗布し、洗い流すことなく、ドライヤーなどを用いて前記毛髪を乾燥して仕上げる方法によって使用される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0045】
実施例1a
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルおよび2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル〔(A)成分〕、安息香酸アルキル(C_(12?15))〔(B)成分〕、デカメチルシクロペンタシロキサン〔(c1)成分〕、直鎖状ジメチルポリシロキサン〔(D)成分。25℃での動粘度が1.4mm^(2)/s。〕、高重合メチルポリシロキサン、直鎖状ジメチルポリシロキサン(25℃での動粘度が20mm^(2)/s)、ジメチコノール、高重合ジメチルシロキサン・メチル(アミノプロピル)シロキサン共重合体、流動パラフィンおよび香料を表1に示す量で配合して、非水系毛髪化粧料を調製した。
【0046】
実施例1b
(B)成分として、安息香酸アルキル(C_(12?15))に代えてイソノナン酸2-エチルヘキシルを配合した以外は、実施例1と同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0047】
比較例1a
表1に示すように、(B)成分である安息香酸アルキル(C_(12?15))を配合せず、デカメチルシクロペンタシロキサンの配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0048】
比較例1b?1g
(B)成分である安息香酸アルキル(C_(12?15))に代えて、表1に示すエステル油を配合した以外は、実施例1と同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0049】
実施例1a、1b、および比較例1a?1gの各非水系毛髪化粧料について、下記の各評価を行った。
【0050】
<ドライ後の指通り性>
染毛処理が施され、毛先にダメージを受けている毛髪の毛束を複数用意し、水洗した後に、毛髪が濡れた状態で実施例および比較例のいずれかの非水系毛髪化粧料を適量塗布し、ドライヤーを用いて乾燥させた。乾燥後の各毛束に指を通したときに、すべりのある指通りを、「ドライ後の指通り性」として評価した。
【0051】
ドライ後の指通り性の評価は、比較例1aの非水系毛髪化粧料を用いた場合を基準として3名の評価者がそれぞれ行い、下記の評価基準に従ってクラス分けを行った。
【0052】
(ドライ後の指通り性の評価基準)
◎ : 基準と比較して、ドライ後の指通り性が優れていると3名の評価者の全員が評価した。
○ : 基準と比較して、ドライ後の指通り性が優れていると3名の評価者のうちの2名が評価し、ドライ後の指通り性が同等と残りの1名が評価した。
? : 基準と比較して、ドライ後の指通り性が同等と3名の評価者のうちの2名以上が評価した。
△ : 基準と比較して、ドライ後の指通り性が劣っていると3名の評価者のうちの2名が評価し、ドライ後の指通り性が同等と残りの1名が評価した。
× : 基準と比較して、ドライ後の指通り性が劣っていると3名の評価者の全員が評価した。
【0053】
<低温安定性>
実施例および比較例の各非水系毛髪化粧料を透明のガラス瓶に充填して密封した後、-10℃の冷暗所で1か月静置して保管し、その後に-10℃の環境下のままで、各非水系毛髪化粧料の透明性を目視によって評価し、透明であった場合を「○」とし、白濁していた場合を「×」とした。
【0054】
上記の各評価結果を表1に併記する。
【0055】
【表1】

【0056】
表1において、「(B’)」は、(B)成分に代えて使用した成分であることを意味している。また、表1において、「直鎖状ジメチルポリシロキサン(1)」は、25℃での動粘度が1.4mm^(2)/sのもの〔(D)成分に該当するもの〕を、「直鎖状ジメチルポリシロキサン(2)」は、25℃での動粘度が20mm^(2)/sのもの〔(D)成分に該当しないもの〕を、それぞれ意味している(後記の表3および表4においても、同様である)。
【0057】
表1に示す通り、(B)成分である安息香酸アルキルまたはイソノナン酸2-エチルヘキシルを配合した実施例1a、1bの非水系毛髪化粧料は、基準である比較例1aの非水系毛髪化粧料〔(B)成分およびその他のエステル油を配合していない例〕を用いた場合よりも、ドライ後の毛髪の指通り性が良好であり、また、-10℃で1か月保管しても透明なままで、低温安定性にも優れていた。
【0058】
一方、(B)成分に代えて他のエステル油を配合した比較例1b?1gの非水系毛髪化粧料のうち、エステル油がモノエステルであった比較例1b、1cの非水系毛髪化粧料は、-10℃で1か月保管しても透明なままで、低温安定性が良好であったが、エステル油がジエステルであった比較例1d?1gの非水系毛髪化粧料は、-10℃での保管によって白濁してしまい、低温安定性が劣っていた。なお、比較例1d?1gの非水系毛髪処理剤を、-10℃で1か月の保管後に室温に戻すと、紫外線吸収剤と推測される黄色い沈殿物が生じ、また、剤に分離が生じるものもあった。
【0059】
そして、比較例1b?1gの非水系毛髪化粧料は、ドライ後の毛髪の指通り性が、基準である比較例1aの非水系毛髪化粧料を用いた場合と同等であり、実施例1a、1bの非水系毛髪化粧料を用いた場合よりも劣っていた。
【0060】
実施例2
メチルポリシロキサン(25℃での動粘度が20mm^(2)/s)、および高重合ジメチルシロキサン・メチル(アミノプロピル)シロキサン共重合体を配合せず、他の成分の配合量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0061】
比較例2
(A)成分であるパラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルおよび2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを配合せず、(c1)成分であるデカメチルシクロペンタシロキサンの配合量を表2に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0062】
実施例2および比較例2の各非水系毛髪化粧料について、下記の各評価を行った。
【0063】
<ドライ中の指通り性>
染毛処理が施され、毛先にダメージを受けている毛髪の毛束を複数用意し、水洗した後に、毛髪が濡れた状態で実施例2または比較例2の非水系毛髪化粧料を適量塗布し、ドライヤーを用いて乾燥させた。そして、ドライヤーで乾燥途中の各毛束に指を通したときに、すべりのある指通りを、「ドライ中の指通り性」として評価した。
【0064】
ドライ中の指通り性の評価は、比較例2の非水系毛髪化粧料を用いた場合を基準として3名の評価者がそれぞれ行い、下記の評価基準に従ってクラス分けを行った。
【0065】
(ドライ中の指通り性の評価基準)
◎ : 基準と比較して、ドライ中の指通り性が優れていると3名の評価者の全員が評価した。
○ : 基準と比較して、ドライ中の指通り性が優れていると3名の評価者のうちの2名が評価し、ドライ中の指通り性が同等と残りの1名が評価した。
? : 基準と比較して、ドライ中の指通り性が同等と3名の評価者のうちの2名以上が評価した。
△ : 基準と比較して、ドライ中の指通り性が劣っていると3名の評価者のうちの2名が評価し、ドライ中の指通り性が同等と残りの1名が評価した。
× : 基準と比較して、ドライ中の指通り性が劣っていると3名の評価者の全員が評価した。
【0066】
<均一感のある柔らかさ>
ドライ中の指通り性の評価のための上記操作におけるドライヤーでの乾燥後に、各毛束中の毛髪の根元部分から毛先までの均一な柔らかさを、「均一感のある柔らかさ」として評価した。
【0067】
均一感のある柔らかさの評価は、比較例2の非水系毛髪化粧料を用いた場合を基準として3名の評価者がそれぞれ行い、下記の評価基準に従ってクラス分けを行った。
【0068】
(均一感のある柔らかさの評価基準)
◎ : 基準と比較して、均一感のある柔らかさが優れていると3名の評価者の全員が評価した。
○ : 基準と比較して、均一感のある柔らかさが優れていると3名の評価者のうちの2名が評価し、均一感のある柔らかさが同等と残りの1名が評価した。
? : 基準と比較して、均一感のある柔らかさが同等と3名の評価者のうちの2名以上が評価した。
△ : 基準と比較して、均一感のある柔らかさが劣っていると3名の評価者のうちの2名が評価し、均一感のある柔らかさが同等と残りの1名が評価した。
× : 基準と比較して、均一感のある柔らかさが劣っていると3名の評価者の全員が評価した。
【0069】
上記の各評価結果を表2に併記する。
【0070】
【表2】

【0071】
表2に示す通り、実施例2の非水系毛髪化粧料を用いた場合の、毛髪におけるドライ中の指通り性および均一感のある柔らかさは、(A)成分を配合していない比較例2の非水系毛髪化粧料よりも劣っており、(A)成分の配合によってこれらの特性が損なわれることが判明した。
【0072】
実施例3a、3b
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルおよび2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル〔(A)成分〕、安息香酸アルキル(C_(12?15))〔(B)成分〕、デカメチルシクロペンタシロキサン〔(c1)成分〕、直鎖状ジメチルポリシロキサン〔(D)成分。25℃での動粘度が1.4mm^(2)/s。〕、メドウフォーム油〔(E)成分〕、高重合メチルポリシロキサン、ジメチコノール、バオバブ種子油、アルガニアスピノサ核油、スクワラン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、ビサボロールおよび香料を表3に示す量で配合して、非水系毛髪化粧料を調製した。
【0073】
実施例3c
ドデカメチルシクロヘキサシロキサン〔(c2)成分〕を表3に示す量で配合し、デカメチルシクロペンタシロキサンの配合量を表3に示すように変更した以外は、実施例3bと同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0074】
実施例3d
直鎖状ジメチルポリシロキサン(25℃での動粘度が1.4mm^(2)/s)を配合せず、デカメチルシクロペンタシロキサンの配合量を表3に示すように変更した以外は、実施例3aと同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0075】
実施例3a?3dの非水系毛髪化粧料について、実施例2の非水系毛髪化粧料などと同じ方法で、実施例3dの非水系毛髪化粧料を用いた場合を基準としてドライ中の指通り性を評価すると共に、下記の方法で毛先のまとまりを評価した。
【0076】
<毛先のまとまり>
ドライ中の指通り性の評価のための操作におけるドライヤーでの乾燥後に、各毛束の毛先のまとまりを目視によって評価した。
【0077】
毛先のまとまりの評価は、実施例3dの非水系毛髪化粧料を用いた場合を基準として3名の評価者がそれぞれ行い、下記の評価基準に従ってクラス分けを行った。
【0078】
(毛先のまとまりの評価基準)
◎ : 基準と比較して、毛先のまとまりが優れていると3名の評価者の全員が評価した。
○ : 基準と比較して、毛先のまとまりが優れていると3名の評価者のうちの2名が評価し、毛先のまとまりが同等と残りの1名が評価した。
? : 基準と比較して、毛先のまとまりが同等と3名の評価者のうちの2名以上が評価した。
△ : 基準と比較して、毛先のまとまりが劣っていると3名の評価者のうちの2名が評価し、毛先のまとまりが同等と残りの1名が評価した。
× : 基準と比較して、毛先のまとまりが劣っていると3名の評価者の全員が評価した。
【0079】
上記の各評価結果を表3に併記する。
【0080】
【表3】

【0081】
表3に示す通り、実施例3a?3cの非水系毛髪化粧料を用いた場合の、毛髪におけるドライ中の指通り性は、基準とした実施例3dの非水系毛髪化粧料〔(D)成分を配合していない非水系毛髪化粧料〕を用いた場合に比べて良好であった。
【0082】
また、(C)成分として(c1)成分のみを配合した実施例3a、3bの非水系毛髪化粧料を用いた場合には、毛先のまとまりが、基準とした実施例3dの非水系毛髪化粧料を用いた場合と同等であったが、(c1)成分と(c2)成分とを併用した実施例3cの非水系毛髪化粧料を用いた場合には、毛先のまとまりが向上していた。
【0083】
実施例4a
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルおよび2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル〔(A)成分〕、安息香酸アルキル(C_(12?15))〔(B)成分〕、デカメチルシクロペンタシロキサン〔(c1)成分〕、直鎖状ジメチルポリシロキサン〔(D)成分。25℃での動粘度が1.4mm^(2)/s。〕、マカデミアナッツ油〔(E)成分〕、高重合メチルポリシロキサン、ジメチコノール、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、流動パラフィン、ビサボロールおよび香料を表4に示す量で配合して、非水系毛髪化粧料を調製した。
【0084】
実施例4b
(E)成分として、マカデミアナッツ油に代えてメドウフォーム油を用いた以外は、実施例4aと同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0085】
実施例4c
(E)成分であるマカデミアナッツ油に代えてオリーブ油を用いた以外は、実施例4aと同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0086】
実施例4d
(E)成分であるマカデミアナッツ油に代えてホホバ油を用いた以外は、実施例4aと同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0087】
実施例4e
(E)成分であるマカデミアナッツ油を配合せず、デカメチルシクロペンタシロキサンの配合量を表4に示すように変更した以外は、実施例4aと同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0088】
実施例4f
(E)成分であるマカデミアナッツ油を配合せず、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびジメチコノールの配合量を表4に示すように変更した以外は、実施例4aと同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0089】
実施例4g
(E)成分であるマカデミアナッツ油を配合せず、デカメチルシクロペンタシロキサンおよび高重合メチルポリシロキサンの配合量を表4に示すように変更した以外は、実施例4aと同様にして非水系毛髪化粧料を調製した。
【0090】
実施例4a?4gの非水系毛髪化粧料について、実施例2の非水系毛髪化粧料などと同じ方法で、実施例4eの非水系毛髪化粧料を用いた場合を基準として、毛髪の均一感のある柔らかさを評価した。これらの評価結果を表4に併記する。
【0091】
【表4】

【0092】
表4において、「(E’)」は、(E)成分に代えて使用した成分であることを意味している。
【0093】
表4に示す通り、(E)成分であるマカデミアナッツ油やメドウフォーム油を配合した実施例4a、4bの非水系毛髪化粧料を用いた場合には、毛髪の均一感のある柔らかさが、基準とした実施例4eの非水系毛髪化粧料〔(E)成分を配合していない非水系毛髪化粧料〕を用いた場合に比べて良好であった。
【0094】
これに対し、(B)成分に代えて他の植物油を配合した実施例4c、4dの非水系毛髪化粧料、および(B)成分を配合せずに、毛髪に柔らかさを付与する成分として知られている高重合メチルポリシロキサンやジメチコノールの配合量を多くした実施例4f、4gの非水系毛髪化粧料を用いた場合は、毛髪の均一感のある柔らかさが、基準とした実施例4eの非水系毛髪化粧料を用いた場合と同等であった。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)?(C)の成分が配合されており、(A)紫外線吸収剤として、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステルを含み、(A)成分の配合量が3質量%以上であって、濡れた毛髪に塗布後、洗い流さずに前記毛髪を乾燥させる方法で使用されることを特徴とする非水系毛髪化粧料。
(A)紫外線吸収剤
(B)イソノナン酸2-エチルヘキシル、または、安息香酸アルキルおよびイソノナン酸2-エチルヘキシル
(C)揮発性の環状シリコーン
【請求項2】
(D)揮発性の直鎖状ジメチルポリシロキサンが更に配合されている請求項1に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項3】
上記(C)として、(c1)デカメチルシクロペンタシロキサンと(c2)ドデカメチルシクロペンタシロキサンとが配合されている請求項1または2に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項4】
(E)マカデミアナッツ油またはメドウフォーム油が更に配合されている請求項1?3のいずれか1項に記載の非水系毛髪化粧料。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか1項に記載の非水系毛髪化粧料を用いた毛髪処理方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-03-28 
結審通知日 2019-04-01 
審決日 2019-04-12 
出願番号 特願2016-128392(P2016-128392)
審決分類 P 1 113・ 853- YAA (A61K)
P 1 113・ 537- YAA (A61K)
P 1 113・ 121- YAA (A61K)
P 1 113・ 851- YAA (A61K)
P 1 113・ 111- YAA (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松村 真里  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 冨永 みどり
長谷川 茜
登録日 2017-01-13 
登録番号 特許第6072965号(P6072965)
発明の名称 非水系毛髪化粧料および毛髪処理方法  
代理人 川口 太一郎  
代理人 合路 裕介  
代理人 合路 裕介  
代理人 藤野 睦子  
代理人 村上 雅秀  
代理人 三嶋 隆子  
代理人 川口 太一郎  
代理人 村上 雅秀  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 濱田 俊明  
代理人 藤野 睦子  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 三嶋 隆子  

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