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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C09K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09K
審判 全部無効 2項進歩性  C09K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
管理番号 1352523
審判番号 無効2017-800148  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-11 
確定日 2019-05-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5789090号発明「撥水撥油剤組成物、機能性繊維製品及び機能性繊維製品の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5789090号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、7について訂正することを認める。 特許第5789090号の請求項1?7に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第5789090号(以下「本件特許」という。)の請求項1?7に係る発明についての出願(以下、「本件特許出願」という。)は、平成22年7月30日を出願日とする出願であって、平成27年8月7日に特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、請求人 アークロマ アイピー ゲーエムベーハー は平成29年12月11日に、上記請求項1?7に係る発明についての特許を無効にすることについて、本件特許無効審判を請求した。
以後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 3月19日付け 審判事件答弁書及び訂正請求書(被請求人)
平成30年 4月 9日付け 手続補正書(被請求人)
平成30年 4月 9日付け 手続補正書(被請求人)
平成30年 7月10日付け 審判事件弁駁書(請求人)
平成30年 8月 6日付け 訂正拒絶理由通知書(当審)
平成30年 8月 7日付け 職権審理結果通知書(当審)
平成30年 9月 7日付け 手続補正書及び意見書(被請求人)
平成30年11月 9日付け 書面審理通知書(当審)


第2 訂正の内容及び訂正の可否に対する判断

1 訂正の内容

平成30年3月19日付け訂正請求書(平成30年9月7日付け手続補正により補正されたもの)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許に係る特許請求の範囲(以下、「本件訂正前特許請求の範囲」ともいい、請求項の順に従い、「本件訂正前発明1」などという。)を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲(以下、「本件訂正特許請求の範囲」ともいう。)のとおりに訂正しようとするものである。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において「を含み、」とあるのを、「を含み、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において「前記撥水撥油性成分が、」とあるのを、「前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下であり、
前記撥水撥油性成分が、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において「ピラゾール基である。
【化1】

{式(II)中、」とあるのを、「ピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化1】

【化3】

{式(II)及び(III)中、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1において「-NO_(2)、ハロゲン原子又は-CO-O-R^(2)(式中R^(2)は水素原子又は炭素数1?6のアルキル基である)を示す」とあるのを、「-NO_(2)又はハロゲン原子を示す」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2において「水に混合した場合に分層する、」とあるのを、「20℃での密度が1.00g/cm^(3)以下であり、20℃での水への溶解度が25g/100ml以下である、」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3?6も同様に訂正する。)。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3において「水に混合した場合に分層する、」とあるのを、「20℃での密度が1.00g/cm^(3)以下であり、20℃での水への溶解度が25g/100ml以下である、」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4?6も同様に訂正する。)。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7において「工程を備え、」とあるのを、「工程を備え、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下であり、」に訂正する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7において「前記撥水撥油性成分が、」とあるのを、「前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下であり、
前記撥水撥油性成分が、」に訂正する。

(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項7において「ピラゾール基である。
【化2】

{式(II)中、」とあるのを、「ピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化2】

【化4】

{式(II)及び(III)中、」に訂正する。

(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項7において「-NO_(2)、ハロゲン原子又は-CO-O-R^(2)(式中R^(2)は水素原子又は炭素数1?6のアルキル基である)を示す」とあるのを、「-NO_(2)又はハロゲン原子を示す」に訂正する。


2 訂正の可否についての判断

これらの訂正事項について検討する。
(1) 訂正の目的について
ア 訂正事項1は、請求項1に記載されたピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートを、「エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下」のものに限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 訂正事項2は、請求項1に記載されたピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートを、「カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下」のものに限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

ウ 訂正事項3は、請求項1に記載された活性水素含有化合物を更に限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

エ 訂正事項4は、請求項1において択一形式で記載されたR^(1)の一部の選択肢を削除することにより、ピラゾール基及びピラゾール化合物を更に限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

オ 訂正事項5は、請求項2に記載された「水に混合した場合に分層する」有機溶剤を具体的に特定し、当該有機溶剤に包含される有機溶剤を明らかにするものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

カ 訂正事項6は、請求項3に記載された「水に混合した場合に分層する」有機溶剤を具体的に特定し、当該有機溶剤に包含される有機溶剤を明らかにするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

キ 訂正事項7は、請求項7に記載されたピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートを、「エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下」のものに限定するものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

ク 訂正事項8は、請求項7に記載されたピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートを、「カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下」のものに限定するものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

ケ 訂正事項9は、請求項7に記載された活性水素含有化合物を更に限定するものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

コ 訂正事項10は、請求項7において択一形式で記載されたR^(1)の一部の選択肢を削除することにより、ピラゾール基及びピラゾール化合物を更に限定するものである。
したがって、訂正事項10は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(2) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でないことについて

訂正事項1?10は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1?10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3) 願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であることについて

ア 訂正事項1?訂正事項3、訂正事項7?訂正事項9について
本件特許明細書等には、ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートに関し、「エチレンオキシ基の含有割合3質量%以下であることが好ましく」(段落【0037】)、「カルボキシレート基、スルホネート基若しくはホスホネート基の含有割合が1質量%以下であることが好ましく」(段落【0037】)、「上記一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、例えば、上記のポリイソシアネート化合物と、活性水素含有化合物として上記一般式(III)で表されるピラゾール化合物と、必要に応じて、上記その他のブロック剤や低分子量鎖伸長剤や親水性化合物とを所定の割合で、20?150℃で数分?数日間反応させることにより得られる。」(段落【0053】)と記載され、一般式(III)で表されるピラゾール化合物以外の活性水素含有化合物として、「メチルエチルケトンオキシム」(段落【0036】)、「エチレングリコール」(段落【0039】)及び「ジメチロールプロピオン酸」(段落【0042】)が記載されている。
したがって、訂正事項1?訂正事項3、訂正事項7?訂正事項9は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

イ 訂正事項4、10について
訂正事項4、10は、本件特許明細書等には、「R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、・・・、-NO_(2)、ハロゲン原子又は-CO-O-R^(2)(式中R^(2)は水素原子又は炭素数1?6のアルキル基である)を示す」(請求項1、段落【0010】、【0019】、【0022】、【0024】)と記載されているところ、選択肢から、「-CO-O-R^(2)(式中R^(2)は水素原子又は炭素数1?6のアルキル基である)」を削除したものであるから、これにより、新たな技術的事項が導入されるわけではない。
したがって、訂正事項4、10は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

ウ 訂正事項5、6について
本件特許明細書等には、有機溶剤に関し、「密度が1.00g/cm^(3)(20℃)以下で、水への溶解度が25g/100ml(20℃)以下のものが好ましい。」(段落【0083】)と記載されている。
したがって、訂正事項5、6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

(4) 一群の請求項ごとに訂正の請求をするものであることについて

訂正前の請求項1?6は、請求項2?6が直接又は間接的に請求項1を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1?6を訂正の請求の対象とする本件訂正は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。

(5) 小括

以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第134条の2第3項の規定並びに同法第134条の2第9項で準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


第3 本件発明

前記のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
下記一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートと非イオン界面活性剤とを含有するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液、及び、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分、を含み、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下であり、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下であり、
前記撥水撥油性成分が、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体である、撥水撥油剤組成物。
R(-NH-CO-Z)m ・・・(I)
[式(I)中、mは2以上の整数を示し、Rはm個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物からm個のイソシアネート基を除いた残基を示し、Zは同一でも異なっていてもよく、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基を示し、Zのうちの少なくとも2つは、下記一般式(II)で表されるピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトンオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化1】

【化3】

{式(II)及び(III)中、nは0?3の整数を示し、nが1以上の場合、R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1?6のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数7?12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO_(2)又はハロゲン原子を示す。}]
【請求項2】
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液の液状媒体が、水、又は、水と、20℃での密度が1.00g/cm^(3)以下であり、20℃での水への溶解度が25g/100ml以下である、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類及び脂肪族炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶剤とを含む混合物である、請求項1に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項3】
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液の液状媒体が、水と、20℃での密度が1.00g/cm^(3)以下であり、20℃での水への溶解度が25g/100ml以下である、エーテル類とを含む混合物である、請求項1又は2に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤が、HLB10以上の非イオン界面活性剤である、請求項1?3のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項5】
前記一般式(I)中のZの全てが前記一般式(II)で表されるピラゾール基である、請求項1?4のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物を接触させることにより撥水撥油性が付与された機能性繊維製品。
【請求項7】
撥水撥油性を有する機能性繊維製品を製造する方法であって、
繊維基材を、下記一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートと非イオン界面活性剤とを含有するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液が含まれる処理液A及び炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分が含まれる処理液Bに接触させる、又は、下記一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートと非イオン界面活性剤とを含有するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液及び炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分が含まれる処理液Cに接触させる、工程を備え、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下であり、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下であり、
前記撥水撥油性成分が、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体である、機能性繊維製品の製造方法。
R(-NH-CO-Z)m ・・・(I)
[式(I)中、mは2以上の整数を示し、Rはm個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物からm個のイソシアネート基を除いた残基を示し、Zは同一でも異なっていてもよく、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基を示し、Zのうちの少なくとも2つは、下記一般式(II)で表されるピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトンオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化2】

【化4】

{式(II)及び(III)中、nは0?3の整数を示し、nが1以上の場合、R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1?6のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数7?12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO_(2)又はハロゲン原子を示す。}]」

(以下、本件訂正特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明を、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」ともいう。)


第4 当事者の主張の要点

1 請求人の主張の要点

(1) 本件審判の請求の趣旨
請求人が提出した審判請求書における請求の趣旨は、「特許第5789090号の請求項1?7に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」である。

(2) 請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人は、以下の無効理由I?無効理由IVを主張し、証拠方法として、甲1?甲5号証を提出している。

ア 無効理由I
本件訂正前発明1?7は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。
(審判請求書30頁12行?35頁9行、同49頁1行?50頁6行、同50頁22行?51頁6行、同52頁1?12行、同52頁21行?53頁24行、同54頁23行?55頁13行及び同58頁10行?59頁2行)

イ 無効理由II
以下の(ア)?(キ)のとおり、本件訂正前発明1は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1号証に記載された発明及び甲2、3号証に記載された技術的事項に基いて、また、甲4号証に記載された発明及び甲1号証に記載された技術的事項に基づいて、さらに、甲5号証に記載された発明及び甲1号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前発明2?4は、甲1号証に記載された発明に基いて、本件訂正前発明5は、甲4号証に記載された発明及び甲1号証に記載された技術的事項に基づいて、加えて、本件訂正前発明6、7は、甲4号証又は甲5号証に記載された発明、及び甲1号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効にされるべきものである。

(ア) 本件訂正前発明1の進歩性欠如(甲1号証を主引例とする)
甲1号証に記載された発明において、甲2号証及び甲3号証に示された技術的事項に基いて、生体蓄積性や防汚性能を考慮して、炭素数が6以下のフルオロカーボン基を有している(メタ)アクリルモノマーを用いて本件訂正前発明1とすることは、当業者が容易になし得ることであり、本件特許明細書に記載された段落【0005】の本件訂正前発明の課題は、生体蓄積性を低下させるという甲2号証及び防汚性能を向上させるという甲3号証に記載の課題であることから、本件訂正前発明1の効果は、甲1号証に記載された発明に、甲2号証及び甲3号証に示された技術的事項を組み合わせることによって、当業者が予測可能な範囲のものに過ぎず、何ら有利なものではない。
(審判請求書35頁10行?37頁24行)

(イ) 本件訂正前発明1の進歩性欠如(甲4号証を主引例とする)
甲4号証に記載された発明において、甲1号証に示された技術的事項に基いて、安定化剤、つまり、ブロッキング剤として公知のピラゾール、界面活性剤(乳化剤)として非イオン性界面活性剤(乳化剤)を用いて本件訂正前発明1とすることは、当業者が容易に着想し得ることである。そして、甲1、4号証に記載の発明は、本件訂正前発明1と同様、繊維に対して撥水撥油性を付与するための撥水撥油性組成物に関するものであり、クリーニング堅牢度、つまり撥水撥油性の耐久性を高める点において課題が一致しているから、当該効果を高めるために、甲4号証に記載された発明に、甲1号証に示された技術的事項を組み合わせ、これらの効果を向上させることは、当業者が予測可能な範囲のものに過ぎず、何ら有利なものではない。
(審判請求書37頁25行?43頁16行)

(ウ) 本件訂正前発明1の進歩性欠如(甲5号証を主引例とする)
甲5号証に記載された発明において、甲1号証に示された技術的事項に基いて、界面活性剤(乳化剤)として公知の非イオン性界面活性剤(乳化剤)を用いて本件訂正前発明1とすることは、当業者が容易に着想し得ることである。そして、甲1、5号証に記載の発明は、本件訂正前発明1と同様、繊維に対して撥水撥油性を付与するための撥水撥油性組成物に関するものであり、クリーニング堅牢度、つまり撥水撥油性の耐久性を高める点において課題が一致しているから、当該効果を高めるために、甲5号証に記載された発明に、甲1号証に示された技術的事項を組み合わせ、これらの効果を向上させることは、当業者が予測可能な範囲のものに過ぎず、何ら有利なものではない。
(審判請求書43頁17行?47頁23行)

(エ) 本件訂正前発明2?4の進歩性欠如(甲1号証)
本件訂正前発明2?4における有機溶剤、非イオン界面活性剤については、いずれも甲1号証に記載されているので、仮に相違点があるとしても、本件訂正前発明2?4は、甲1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
(審判請求書49頁1行?50頁6行、同50頁22行?51頁6行、同52頁1行?12行)

(オ) 本件訂正前発明5の進歩性欠如(甲4号証を主引例とする)
甲4号証に記載された発明において、多官能ポリイソシアネートとしてを甲1号証に示されたピラゾールによりブロッキングすることは当業者が容易になし得ることであることは、上記(イ)のとおりであるが、ここで多官能ポリイソシアネートとして甲4号証に例示されている、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を用いて本件訂正前発明5とすることも、当業者が容易に着想し得ることである。
(審判請求書52頁21行?53頁24行)

(カ) 本件訂正前発明6の進歩性欠如(甲4号証又は甲5号証を主引例とする)
甲4号証又は甲5号証に記載された発明において、甲1号証に記載の技術的事項を引用し、本件訂正前発明1とすることは当業者が容易になし得ることであることは、上記(イ)及び(ウ)のとおりであるが、甲4号証又は甲5号証に記載された発明において、撥水撥油性組成物を付与する対象は繊維材料であることから、甲4号証又は甲5号証に記載された発明において、甲1号証に記載の技術的事項を引用し、本件訂正前発明6とすることも、当業者が容易に着想し得ることである。
(審判請求書54頁23行?55頁13行)

(キ) 本件訂正前発明7の進歩性欠如(甲4号証又は甲5号証を主引例とする)
甲4号証又は甲5号証に記載された発明において、甲1号証に記載の技術的事項を引用し、本件訂正前発明1の撥水撥油性組成物とすることは当業者が容易になし得ることであることは、上記(イ)及び(ウ)のとおりであるが、甲4号証又は甲5号証に記載された発明において、撥水撥油性組成物を付与する対象は繊維材料であることから、甲4号証又は甲5号証に記載された発明において、甲1号証に記載の技術的事項を引用し、本件訂正前発明7の撥水撥油性を有する機能性繊維製品を製造する方法とすることも、当業者が容易に着想し得ることである。
(審判請求書58頁10行?59頁2行)

(証拠方法)
甲1号証:国際公開第99/52961号
甲2号証:米国特許公開第2009/018294号公報
甲3号証:国際公開第2009/145234号
甲4号証:特開昭56-165072号公報
甲5号証:国際公開第2004/050736号
(以上、審判請求書に添付。)

ウ 無効理由III
以下の(ア)及び(イ)のとおり、本件訂正前発明1?7は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されておらず、また、本件訂正前発明1?7は発明の詳細な説明に記載されていないため、本件特許は、特許法第36条第4項第1号又は同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。

(ア) 実施可能要件(ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートについて)
本件訂正前発明1において、一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、Rがm個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物から、m個のイソシアネート基を除いた残基であること以外、何ら規定されていない。
同様に、Zについても、一般式(II)で表されるピラゾール基と異なる場合、当該Zはイソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基であることが規定されていること以外、何ら規定されていない。
よって、例えば、イソシアネート基に反応したポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、及びポリエチレングリコール等も、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基であることから、本件訂正前発明1におけるZに該当する。
そうすると、本件特許明細書の段落【0037】には、ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートが「疎水性」であるとは、水に自己乳化しないものであると記載されているものの、本件訂正前発明1は、一般式(I)において自己乳化型であるポリイソシアネートをも含まれるように記載されていることになる。
したがって、本件訂正前発明1は、水に自己乳化するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートを用いる発明を包含しており、水に自己乳化するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートを用いる発明は、本件特許明細書において記載された発明ではない。
さらに、本件訂正前発明2?6はいずれも、本件訂正前発明1に従属していること、本件訂正前発明7は、ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートについて同様の規定がされているにすぎないため、同様に、発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(審判請求書59頁3行?60頁16行)

(イ) サポート要件
上記(ア)と同じ理由によって、本件訂正前発明1?7は発明の詳細な説明に記載したものではない。
(審判請求書59頁3行?60頁16行)

エ 無効理由IV
以下のとおり、本件訂正前発明2?本件訂正前発明7は、特許を受けようとする発明が明確ではないため、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とされるべきものである。
本件訂正前発明2には、ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート分散液の液状媒体が、水に混合した場合に分層する、ケトン類・・・等を含むことが特定されている。
しかしながら、例えば、本件明細書の段落【0084】には、メチルイソブチルケトンの溶解度が1.91g/100ml(20℃)であることが記載されているが、メチルイソブチルケトンは、水100mlに対して1.91gよりも少ない場合、水に混合しても分離することはなく、1.91gよりも多い場合、水に混合すると分離する。すなわち、ケトン類、エーテル類等の有機溶剤が、水に混合した場合に分層するか否かは、その有機溶剤特有の溶解度、及び混合する水の量によって異なる。ケトン類、エーテル類によらず、有機溶剤には、水に混合した場合に分層しない条件が存在する。
よって、本件発明2において、水に混合した場合に分層する有機溶剤とは、どのような有機溶剤であることを意味するのか明確ではない。
したがって、本件訂正前発明2は明確でなく、本件発明3?本件発明7はいずれも本件発明2に従属しているため、本件発明2と同様に明確でない。
(審判請求書60頁17行?61頁11行)

2 被請求人の主張の要点
被請求人が提出した審判事件答弁書によれば、被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、前記無効理由I?無効理由IVはいずれも理由がない旨を主張している。


第5 当審の判断

1 無効理由I(甲1号証に記載された発明に対する新規性欠如)について

(1) 甲1号証(以下、「甲1」という。各甲号証においても同様。)に記載された発明
甲1には、以下の記載1-a.?記載1-g.がある。
1-a.
「It has now been found that using the hereinbelow defined mixtures (G) of blocked oligomeric isocyanates surprisingly makes it possible to improve the oil- and water-repellent properties and also the fastnesses of the finishes mentioned at the outset.
・・・
In a first aspect, the invention accordingly provides self-dispersible mixtures (G) of oligomeric isocyanates (C) reacted in part with polyethylene glycol monoalkyl ether (A), which optionally contains propyleneoxy units, and optionally with a chain extender (K) and exhaustively blocked with an isocyanate-blocking pyrazole (B).
(対応日本国公表特許公報「特表2002-511507号公報」の部分訳)(以下、「部分訳」という。)
【0005】
今回、ブロック化オリゴマーイソシアネートの以下に規定する混合物を使用すると、驚くべきことに、上記の仕上剤の撥油および撥水性並びに堅牢度を改良させることができることを発見した。
・・・
【0007】
第一の態様において、本発明は、プロピレンオキシ単位を含んでよいポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)と部分的に反応しており、所望により連鎖延長剤(K)と反応しており、そしてイソシアネートブロック化性ピラゾール(B)により完全にブロックされているオリゴマーイソシアネート(C)の自己分散性混合物(G)を提供する。」(2頁6行?9行)

1-b.
「As oligomeric isocyanates (C) are suitable generally known isocyanates, advantageously having two to ten NCO groups, for example hydrocarbon oligoisocyanates or oligomers of hydrocarbon diisocyanates, especially

(C1) oligomers of aliphatic diisocyanates
or (C2) diphenylmethane diisocyanate or polyphenylenepolymethylene polyisocyanates.

The monomeric aliphatic diisocyanates from which the oligomers (C1) derive preferably have at least one isocyanate group bonded to a methylene. The oligomeric isocyanates (C1) can be for example di-, tri- or tetramers of aliphatic, optionally cyclic diisocyanates having for example 2 to 16, preferably 4 to 10, carbon atoms in the basic hydrocarbon skeleton. Of these, hexamethylene diisocyanate, isophorone diisocyanate and 2,4,4 - trimethylhexylene - 1,6 - diisocyanate are preferred, especially hexamethylene diisocyanate. The oligomers can be cyclic or open-chain; suitable trimers include in particular those having an isocyanurate or biuret structure, while suitable dimers include especially those having a uretidione structure; optionally it is also possible to use oligomers thereof.
(部分訳)
【0011】
一般的に知られているイソシアネート、有利には2?10個のNCO基を有するイソシアネート、例えば、炭化水素オリゴイソシアネートまたは炭化水素ジイソシアネートオリゴマー、特に、
(C1 )脂肪族ジイソシアネートのオリゴマー、または、
(C2 )ジフェニルメタンジイソシアネートまたはポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、
はオリゴマーイソシアネート(C)として適切である。
【0012】
オリゴマー(C1)を誘導するモノマー脂肪族ジイソシアネートは、好ましくは、メチレンに結合したイソシアネート基を少なくとも1個有する。オリゴマーイソシアネート(C1)は、例えば、基本炭化水素骨格中に2?16個、好ましくは4?10個の炭素原子を有する、脂肪族で、環式であってよいジイソシアネートのダイマー、トリマーまたはテトラマーであることができる。これらの中で、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび2,4,4-トリメチルヘキシレン-1,6-ジイソシアネートは好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートは特に好ましい。オリゴマーは、環式であってもまたは開鎖式であってもよく、適切なトリマーは特にイソシアヌレートまたはビウレット構造を有するものを含み、一方、適切なダイマーは特にウレチジオン構造を有するものを含み、所望により、それらのオリゴマーを用いることも可能である。」(2頁下から3行?3頁10行)

1-c.
「The polyethylene glycol monoalkyl ethers (A), which optionally contain propyleneoxy units, preferably conform to the average formula

R? (O? CH_(2) ? CH_(2))_(n) ? OH (I),

where

R is C_(1-4) -alkyl ? (O-propylene)_(m) ? ,
n is from 5 to 30
and m is from 0 to 10,
subject to the proviso that m is ≦ ^(1)/_(3) of n.

n is preferably from 8 to 24, particularly preferably from 12 to 20.

m is advantageously ≦ ^(1)/_(4) of n and is for example from 0 to 4, preferably zero.

In the first process tep (a), the oligomers (C) are first reacted with oligoethylene glycol monoalkyl ether (A), which optionally contains propyleneoxy units, the quantitative ratio of (A) to (C) being selected in such a way that only a portion of the available isocyanate groups is reacted with (A). The mixing ratio of (A) to (C) is advantageously selected in such a way that more than one mole equivalent of (C) is used per mole of (A). One equivalent of (C) is the weight, determinable by titration, which corresponds to one NCO group. One mole equivalent of (C) is this number in grams. The equivalents ratio of (A) to (C) is consequently the ratio of the number of moles of (A) to the number of mole equivalents of (C). This ratio is chiefly within the range from 1/50 to 1/2, preferably within the range of 1/40 to 1/4, particularly preferably within the range from 1/30 to 1/10.

The reaction of (A) with (C) can be carried out in the presence or absence of solvents, in which case suitable solvents are advantageously non-protogenic solvents, for example propylene carbonate, acetone, methyl ethyl ketone or methyl isobutyl ketone. When no (K) is used, the reaction is preferably carried out in the absence of solvents. The reaction takes place for example at elevated temperature, advantageously > 30°C, for example at temperatures within the range from 60 to 95°C, and advantageously under an inert atmosphere, for example under argon or preferably nitrogen.

The reaction of (A) with (C) first gives rise to an alkyl polyglycol ether urethane product (Ul), which contains urethane groups resulting from the reaction of the hydroxyl group in (A) with a portion of the isocyanate groups in (C) and preferably conforming to the formula

R? (O? CH_(2)? CH_(2)) _(n) ? O? CO? NH? (u).

Depending on the molar ratio of (A) to (C), the content of urethane components in (Ul) can vary, so that the reaction product (Ul), besides urethane components, can also contain unreacted components which are free of urethane groups derived from (A), i.e. fractions of (C) which have essentially not reacted with (A).
(部分訳)
【0014】
プロピレンオキシ単位を含んでよいポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)は、好ましくは、平均式が
【化2】
R? (O? CH_(2) ? CH_(2))_(n) ? OH (I)
(式中、RはC_(1-4) アルキル(O-プロピレン)_(m) -であり、
nは5?30であり、そして
mは0?10であり、
但し、mは≦(nの1/3)である)である。
【0015】
nは好ましくは8?24であり、特に好ましくは12?20である。
mは有利には≦(nの1/4)であり、例えば、0?4であり、好ましくは0である。
【0016】
第一の工程(a)において、オリゴマー(C)は、最初に、プロピレンオキシ単位を含んでいてよいオリゴエチレングリコールモノアルキルエーテル(A)と反応し、(A):(C)の量比はイソシアネートの一部のみが(A)と反応するように選択される。(A)の(C)に対する混合比は、(A)1モル当たり1モル当量を越える(C)が使用されるように有利に選択される。(C)の1当量は1個のNCO基に対応する重量であり、滴定により決定できる。(C)の1モル当量はグラムで表してこの数値となる量である。(A)/(C)の当量比は、結果として、(A)のモル数/(C)のモル当量数の比である。この比は、主に、1/50?1/2の範囲であり、好ましくは1/40?1/4の範囲であり、特に好ましくは1/30?1/10の範囲である。
【0017】
(A)と(C)との反応は、溶剤の存在下で行ってもまたは不在下で行ってもよく、この場合、適切な溶剤は有利には非プロトン性溶剤であり、例えば、プロピレンカーボネート、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンである。(K)を用いないときには、反応は好ましくは溶剤の不在下に行われる。反応は、例えば、昇温下、有利には>30℃、例えば、60?95℃の範囲の温度で行われ、そして有利には不活性雰囲気下、例えば、アルゴンまたは好ましくは窒素下に行われる。
【0018】
(A)と(C)との反応は、最初に、アルキルポリグリコールエーテルウレタン製品(U1)を生じさせ、それは(A)中のヒドロキシル基と(C)中のイソシアネート基の一部との反応により得られるウレタン基を含み、そして好ましくは、下記式
【0019】
【化3】
R? (O? CH_(2)? CH_(2)) _(n) ? O? CO? NH? (u)
のものである。
【0020】
(A)/(C)のモル比によって、(U1)中のウレタン成分の含有量は変化することができ、その為、反応生成物(U1)は、ウレタン成分以外に、(A)から得られるウレタン基を含まない未反応成分、即ち、(A)と本質的に反応しなかった(C)の部分をも含む。」(3頁15行?4頁20行)

1-d.
「Suitable chain extenders (K) for the reaction of (U1) with a chain extender (K) are generally difunctional compounds, i.e. compounds which contain at least two (e.g. 2 to 5) reactive hydrogen atoms capable of reaction with isocyanate groups, chiefly hydroxyl groups and/or primary amino groups, and which in particular do not introduce any ionic groups. Suitable (K) for the purposes of the invention include chiefly aliphatic diols, diamines or aminoalcohols which contain 2 to 6 carbon atoms and in which, if they contain 4 to 6 carbon atoms, the aliphatic radicals can optionally be interrupted by oxygen, or also especially water, water being included among the chain extenders (K) insofar as it will take part in a two-step reaction (with CO_(2) elimination) according to the general reaction scheme

R_(o)-NCO + H_(2)O → R_(o)-NH_(2) + CO_(2)
R_(o)-NH_(2) + OCN-R_(o) → R_(o)-NH-CO-NH-R_(o)

which leads to urea bridging. Specific examples of (K) are ethylene glycol, propylene glycol, butylene glycol, 1,4-butanediol, hexylene glycol, diethylene glycol, triethylene glycol, dipropylene glycol, ethylenediamine, tri-, tetra-, penta- or hexamethylenediamine, ethanolamine, isopropanolamine and water, of which the diols, especially ethylene glycol and propylene glycol, and particularly water are preferred.
(部分訳)
【0024】
(U1)と連鎖延長剤(K)との反応のための適切な連鎖延長剤(K)は一般に二価の化合物であり、即ち、イソシアネート基と反応することができる反応性水素原子、主としてヒドロキシル基および/または第一級アミノ基を少なくとも2個(例えば、2?5)含み、特にイオン性基を導入しない化合物である。本発明の目的のために適切な(K)は、主として、脂肪族ジオール、ジアミンまたはアミノアルコールを含み、それらは2?6個の炭素原子を含み、そしてその中で、もし4?6個の炭素原子を含むならば、脂肪族基は、酸素によってさえぎられてよく、また、特に、水を含み、水は以下の一般反応スキームによる2工程反応(CO_(2)の除去を伴う)に参加するかぎり、連鎖延長剤(K)に含まれる。
【0025】
【化4】

【0026】
上記の反応は尿素橋かけを生じさせる。(K)の特定の例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレンジアミン、トリ-、テトラ-、ペンタ-またはヘキサメチレンジアミン、エタノールアミン、イソプロパノールアミンおよび水であり、そのうち、ジオール、特に、エチレングリコールおよびプロピレングリコール、そして水は特に好ましい。」(5頁5行?19行)

1-e.
「The isocyanate-blocking pyrazoles (B) used can generally be any pyrazoles known to be useful for blocking or masking polyisocyanates, for example as described in EP-A 0500495, particularly those wherein the substituents optionally present on the pyrazole ring are non-ionogenic and also non- NCO-reactive (i.e. they do not react with NCO groups and therefore do not interfere with the blocking reaction either). As pyrazoles (B) can advantageously be employed those of the average formula


,

where

R_(1), R_(2) and R_(3) are each, independently of the others, hydrogen, alkyl, allyl, aralkyl, aryl or alkoxy or R_(2) and R_(3) together with the carbon atoms to which they are bonded, form a benzenic ring which is condensed to the pyrazole ring and is optionally substituted with alkyl, aryl or alkoxy.

In the formula (II), the alkyl and alkoxy groups advantageously contain 1 to 3 carbon atoms, aryl is preferably phenyl, aralkyl is preferably benzyl; when R_(2) and R_(3) together with the carbon atoms to which they are bonded form a condensed benzenic ring, this benzo ring is preferably unsubstituted. R_(2) is advantageously hydrogen, C_(1-3) - alkyl, benzyl or allyl. R_(1) and R_(3) are each, independently of the other, advantageously hydrogen or C_(1-3) - alkyl. C_(1-3) -Alkyl is preferably methyl. R_(2) is particularly preferably hydrogen.

Particularly preferred pyrazoles (B) are those of the formula (II) wherein R_(1) is hydrogen or methyl, R_(2) is hydrogen and R_(3) is methyl.

The reaction of the pyrazoles (B) with (U1) or preferably with (U2) can be effected by simply bringing the reagents together, for example by addition of (B) into the reaction product (U1) or preferably (U2), advantageously directly after its synthesis. The blocking of the isocyanate groups with the pyrazole (B) can take place in the presence or absence of a catalyst (e.g. dibutyltin dilaurate, dioctoate or diacetate), preferably in the absence of catalysts. The reaction is exothermic, and initial gentle heating is sufficient to get the reaction going. The reaction is advantageously carried out within the temperature range from 15 to 60°C. The amount used of pyrazole (B) is expediently sufficient to exhaustively block the isocyanate groups which are present in the employed product (U1) or (U2) - which may be determined by titration, for example. The reaction with (B) is advantageously also carried out under an inert atmosphere, for example under argon or preferably nitrogen, as described above for the synthesis of (U1).

The product thus prepared is a mixture (G) - at least to the extent that (U1) or (U2) is a mixture - and is essentially nonionic and self-dispersible in water, i.e. it forms very fine, aqueous dispersions by simple addition of water or by simply stirring it into water, even without the assistance of emulsifiers or other surfactants. The aqueous dispersions (D) of the mixtures (G) also form part of the subject-matter of the present invention. They are preparable in a conventional manner, by simply stirring (G) into water, or vice versa; if desired, it is also possible to add further additives, for example a non-ionogenic, surface- active stabilizer (E) and/or a solubilizer (L).

Suitable non-ionogenic stabilizers (E) are chiefly addition products of ethylene oxide to polypropylene glycol or to an aliphatic and/or aromatic alcohol having, for example, 9 to 24, preferably 11 to 18, carbon atoms, the degree of oxyethylation being advantageously such that the HLB is advantageously ≧ 8, preferably within the range from 10 to 18. Block polymers of ethylene oxide and propylene oxide which have the appropriate HLB are also suitable. When a non-ionogenic stabilizer (E) is used, it is advantageously used in smaller amounts than (G), for example within the range from 0.5 to 40 %, preferably 1 to 20 %, based on (G).

The concentration of (G) in the aqueous dispersions (D) is of itself discretionary; for concentrated dispersions (D) it is advantageously within the range from 5 to 70 % by weight, preferably 10 to 60 % by weight, based on total dispersion (D).

Examples of suitable solubilizers (L) are mono- or oligoalkylene glycols and their C_(1-4) - alkyl monoethers (e.g. ethylene glycol, propylene glycol, hexylene glycol, dipropylene glycol, dipropylene glycol monomethyl ether, mono- or diethylene glycol monobutyl ether), ethylene carbonate, propylene carbonate or N-methylpyrrolidone.
(部分訳)
【0031】
使用されるイソシアネートブロック化性ピラゾール(B)は、一般に、例えば、EP-A0500495に記載されている通り、ポリイソシアネートをブロック化またはマスク化することが知られているピラゾールであることができ、特に、ピラゾール環上に存在してよい置換基は非イオン生成性であり、そして非NCO反応性(NCO基と反応せず、従って、ブロック化反応を阻害しない)であるものである。ピラゾール(B)として、有利には、下記の平均式
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、R_(1)、R_(2)およびR_(3)は各々互いに独立に、水素、アルキル、アリル、アラルキル、アリールまたはアルコキシであり、または、R_(2)およびR_(3)は結合している炭素原子と一緒に、ピラゾール環に縮合しており、アルキル、アリールまたはアルコキシにより置換されていてよいベンゼン環を形成する)のものが使用される。
【0034】
式(II)において、アルキルおよびアルコキシ基は有利には1?3個の炭素原子を含み、アリールは、好ましくはフェニルであり、アラルキルは好ましくはベンジルであり、R_(2)およびR_(3)が結合している炭素原子とともに縮合ベンゼン環を形成するときには、このベンゾ環は好ましくは置換されていない。R_(2)は有利には水素、C_(1-3)アルキル、ベンジルまたはアリルである。R_(1)およびR_(3)は、各々互いに独立に、有利には、水素またはC_(1-3)アルキルである。C_(1-3)アルキルは好ましくはメチルである。R_(2)は特に好ましくは水素である。
【0035】
特に好ましいピラゾール(B)は式(II)のものであり、R_(1)は水素またはメチルであり、R_(2)は水素であり、そしてR_(3) はメチルである。
【0036】
(U1)または好ましくは(U2)とピラゾール(B)との反応は、単純に試薬を合わせることにより行え、例えば、反応生成物(U1)または好ましくは(U2)に、有利にはその合成の直後に、(B)を添加することにより行える。ピラゾール(B)によるイソシアネート基のブロック化は触媒(例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクトエートまたはジアセテート)の存在下または不在下で行うことができ、好ましくは触媒の不在下に行うことができる。反応は発熱であり、最初のゆるやかな加熱で反応を進行させ続けるために十分である。反応は15?60℃の範囲の温度で有利に行われる。ピラゾールの使用量は、適切には使用する製品(U1)または(U2)中に存在するイソシアネート基を完全にブロックするために十分な量である-それは、例えば、滴定により決定できる。(B)との反応も、有利には、(U1)の合成について上記に記載したように、不活性雰囲気下、例えば、アルゴンまたは好ましくは窒素下に行ってよい。
【0037】
このように製造される製品は混合物(G)であり((U1)または(U2)が混合物であるのと少なくとも同程度に)、そして本質的に非イオン性でありかつ水中に自己分散性であり、即ち、それは、水の単純な添加または水中への単純な攪拌により、乳化剤または他の界面活性剤の補助がなくても、非常に微細な水性分散体を形成する。混合物(G)の水性分散体(D)も本発明の主題の一部を構成する。水性分散体は、水中への(G)の単純な攪拌またはその逆により調製可能であり、所望ならば、さらなる添加剤、例えば、非イオン生成性界面活性安定剤(E)および/または可溶化剤(L)を添加することも可能である。
【0038】
適切な非イオン生成性安定剤(E)は、主として、プロピレングリコールまたは脂肪族および/または芳香族アルコールへのエチレンオキシド付加生成物であり、この脂肪族および/または芳香族アルコールは例えば、9?24個の炭素原子を有し、好ましくは11?18個の炭素原子を有し、オキシエチレン化度は、有利には、HLBが有利には≧8、好ましくは10?18の範囲となるようなものである。適切なHLBを有するエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックポリマーも適切である。非イオン生成性安定剤(E)を用いるときには、それは有利には(G)よりも少量で使用され、例えば、(G)を基準にして、0.5?40%、好ましくは1?20%である。
【0039】
水性分散体(D)中の(G)の濃度は、それ自体は自由に選択できるが、濃厚な分散体(D)では、合計の分散体(D)を基準として、有利には5?70重量%、好ましくは10?60重量%の範囲である。
【0040】
適切な可溶化剤(L)の例は、モノ-もしくはオリゴアルキレングリコールおよびそのC_(1-4)アルキルモノエーテル(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、モノ-もしくはジエチレングリコールモノブチルエーテル)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートまたはN-メチルピロリドンである。」(6頁12行?8頁7行)

1-f.
「Suitable fluorocarbon polymers (F) are generally any of those polymers which contain perfluoro- hydrocarbon radicals ("fluorocarbon radicals") and which are known to be used for oil- and/or water- repellent finishes. The fluorocarbon radicals are chiefly perfluoroalkyl radicals, especially monovalent radicals R_(F) of the formula

-C_(p)F_((2p+1)) (f),

where p is from 3 to 21, preferably 4 to 16, or also those wherein a fluorine atom has been replaced by a chlorine atom.

These radicals R_(F) can be linear or also branched; preferably they are linear. They are preferably radicals of the formulae

or

where q is from 3 to 15, preferably 5 to 13, and r is from 2 to 12, preferably 2 to 8.

They can for example be attached to a polymer main chain directly or via a low molecular weight aliphatic radical and optionally via an ester or ether bridge; optionally, they may also be attached to the low molecular weight aliphatic radical via an amide group. The polymer main chain is generally a hydrocarbon chain as produced by free-radical polymerization of ethylenically unsaturated monomers, for example from appropriate vinylic or (meth)acrylic monomers.

The radicals R_(F) can for example also be attached, via a bridging member, to a nitrogen compound, for example to a condensation product of an aldehyde and a urea or melamine, chiefly to etherified methylol derivatives of urea or heterocyclic nitrogen compounds, particularly of an optionally cyclic urea (e.g. N,N'-dimethylolurea, N,N'-dimethylolethyleneurea, N,N'-dimethylolpropyleneurea or N,N'-dimethyloldihydroxyethyleneurea or a precondensate thereof) or of a methylolmelamine (e.g. tri- to hexamethylolmelamine), as condensates which are heat-curable optionally in the presence of suitable catalysts.

The fluorocarbon polymers (F) are chiefly

(F_(A)) copolymers which contain constituent comonomer units containing fluorocarbon radicals R_(F)

or (F_(B)) nitrogen-containing polycondensates which contain fluorocarbon radicals R_(F) .

Copolymers (F_(A)) containing fluorocarbon radicals R_(F) are well known and extensively described in the technical literature, for example in US patents 3849521, 4742140, 5057577 and 5344903 and in EP-A 0198252 and 0294648. Polycondensates (F_(B)) containing fluorocarbon radicals R_(F) are likewise well known and described in the technical literature, for example in US patents 3362782 and 3510455 and in EP-A 0073364.

It is preferred to use fluorocarbon polymers of the type (F_(A)) for the process of the invention. They are chiefly copolymers of fluorocarbon-radicals-containing monomers (M1) of the formulae

or

where R_(4) is C_(1-12) -alkyl,

R_(5) is hydrogen or methyl,

R_(6) is hydrogen or acetyl,

X is -CO- or -SO_(2)-,

Y is C_(2-3) - alkylene,

Z is C_(1-12) - alkylene,

x is zero or 1,

y is zero or 1

and z is zero or 1,

and further ethylenically unsaturated non-ionogenic monomers, especially

(M2) ethylenically unsaturated non-ionogenic monomers which contain lipophilic hydrocarbon radicals, for example (C_(9-24) - alkyl) (meth)acrylates, preferably (C_(12-20) - alkyl) (meth)acrylates,

and optionally

(M3) further non-ionogenic, ethylenically unsaturated monomers which are preferably lower in molecular weight than the first two, for example (C_(1-8) - alkyl) (meth)acrylates (wherein alkyl radicals having 6 to 8 carbon atoms may also by cyclic), vinyl chloride, vinylidene chloride, styrene, ethylene or propylene.

If desired, (F_(A)) may also contain minor proportions of

(M4) ethylenically unsaturated non-ionogenic comonomers which contain a reactive moiety, chiefly a reactive hydrogen attached via a heteroatom (e.g. nitrogen, sulfur or oxygen) or an epoxy group,

as polymerized units. These reactive moieties are especially moieties which, after the copolymerization of the respective monomer, are capable of crosslinking with other parts of the polymer and/or with the substrate and are, for example, hydroxyl, thiol or epoxy groups, each attached via a hydrocarbon radical, and/or a secondary amide group.

Suitable comonomers (M4) are chiefly comonomers (M4a) of the formula

CH_(2) = CR_(5) - CO - O - R_(7) (VII),

where

R_(7) is hydroxy - C_(2-4) - alkyl, -(CH_(2) - CH_(2) - O)_(t) - H, dihydroxy - C_(3-5) - alkyl, 3- chloro- 2- hydroxypropyl or glycidyl
and t is from 1 to 20
or (M4b) comonomers of the formula

CH_(2) = CH - CO - NH - CHR_(8) - OH (VIII),

where R_(8) is hydrogen, C_(1-3) - alkyl or ω-acetyloxy- C_(2-4) -alkyl,
and their alkyl ethers, for example (C _(2-8) -alkyl) ethers.

Preferred radicals R_(7) are e.g. 2-hydroxyethyl, 2-hydroxypropyl, 2,3-dihydroxypropyl, glycidyl, 3-chloro-2-hydroxypropyl and radicals of the formula -(CH_(2) -CH_(2) -O) _(t) -H, wherein t is from 1 to 10, preferably 1 to 5.

R_(8) is preferably hydrogen or 3- acetyloxy- 2,2-dimethyl-l-hydroxy-propyl-1.

(Ml) can be a single compound or also a mixture, for example a technical grade or random mixture, for example as described in US patents 3849521, 4742140 or 5344903.

Unlike the comonomers (M4), which contain a reactive moiety which, after the free-radical polymerization and after the application of the polymer to the substrate, is capable of crosslinking, the comonomers (M2) and (M3) do not contain such reactive moieties.

As (M2) can be employed one or also more compounds, for example those described in US patent 5344903. Particular preference is given to lauryl (meth)acrylate and stearyl (meth)acrylate.

As (M3) can likewise be employed one or also more compounds, for example those described in US patents 3849521 and 5344903 or in EP-A 0294648, among which C_(2-8) -alkyl (meth) acrylates [particularly ethyl (meth)acrylate, n-butyl (meth)acrylate, isobutyl (meth)acrylate, cyclohexyl (meth)acrylate and 2-ethylhexyl (meth)acrylate], vinyl chloride and vinylidene chloride are particularly preferred.

As (M4) can also be employed one or more comonomers, for example those described in US patents 3849521 and 5344903 or in EP-A 0294648, preferably at least one comonomer (M4a) and at least one comonomer (M4b).

The weight ratio of the monomers is advantageously chosen so that the resulting copolymer has the desired water- and oil-repellent effect. Based on the total quantity of the comonomers [i.e. in particular (Ml) and (M2) and, if present, (M3) and/or (M4)], the comonomers (Ml) are used in an amount which is advantageously within the range from 25 to 90 % by weight, preferably within the range from 40 to 90 % by weight, particularly preferably within the range from 40 to 75 % by weight. The comonomers (M2) are used in an amount which is advantageously within the range from 5 to 50 % by weight, preferably within the range from 15 to 35 % by weight, based on total comonomers. The comonomers (M3) are used in an amount which is advantageously within the range from 5 to 50 % by weight, preferably within the range from 5 to 25 % by weight, based on total comonomers. A preferred embodiment also utilizes comonomers (M4) in minor proportions, advantageously up to 20 % by weight based on total comonomers. The amount of (M4) employed is preferably 0.1 to 20 % by weight, particularly preferably 2 to 15 % by weight, for example 0.2 to 5 % by weight of (M4a) and 1.5 to 12 % by weight of (M4b). The copolymerization can take place in a manner conventional per se, advantageously in aqueous emulsion in the presence of suitable emulsifiers and optionally solubilizers. Any suitable emulsifiers can be used, especially non-ionogenic and/or cationic emulsifiers. Examples of suitable non-ionogenic emulsifiers are addition products of ethylene oxide with higher fatty alcohols (e.g. with 9 to 24 carbon atoms in the fatty radical) or with fatty acid partial esters of oligoalkanols such as glycerol, sorbitol or sorbitan wherein the fatty acid radicals advantageously contain 12 to 24 carbon atoms. The HLB value of the non-ionogenic surfactants is advantageously ≧ 10, preferably within the range from 12 to 18. Examples of cationic surfactants are simple fatty amines having, for examples, 12 to 24 carbon atoms in the fatty radical, or protonation or quaternization products thereof. Small amounts of the emulsifiers are sufficient for the polymerization in aqueous emulsion, for example 1 to 20 % by weight, preferably 2 to 15 % by weight, based on the total monomers or respectively on (F).
(部分訳)
【0045】
適切なフルオロカーボンポリマー(F)は、一般に、ペルフルオロ炭化水素基(フルオロカーボン基)を含みかつ撥油および/または撥水性仕上剤のために使用されることが知られているいずれかのポリマーである。フルオロカーボン基は、主としてペルフルオロカーボン基であり、特に、下記式
【0046】
【化6】

【0047】
(式中、pは3?21であり、好ましくは4?16である)の一価基RFであるか、または、上式中のフッ素原子が塩素原子に置き換えられたRFである。
【0048】
これらの基R_(F)は、直鎖であってもまたは枝分かれであってもよく、好ましくは直鎖である。これは好ましくは下記式
【化7】

または

【0049】
(式中、qは3?15であり、好ましくは5?13であり、
rは2?12であり、好ましくは2?8である)の基である。
【0050】
それは、例えば、ポリマー主鎖に直接的に結合していても、または、低分子量脂肪族基を介して結合していてもよく、そして場合によってはエステルもしくはエーテル橋かけ基を介して結合されていてもよい。所望により、それはアミド基を介して低分子量脂肪族基に結合されていてもよい。ポリマー主鎖は、一般に、エチレン系不飽和モノマー、例えば、適切なビニルもしくは(メタ)アクリルモノマーのラジカル重合により製造された炭化水素鎖である。
【0051】
基R_(F) は、例えば、橋かけ部分を介して、窒素化合物に結合していてよく、この窒素化合物は、例えば、アルデヒドと尿素またはメラミンの縮合生成物、主として尿素もしくは複素環式窒素化合物のエーテル化メチロール誘導体、特に、所望により環式であるウレアの誘導体(例えば、N,N’-ジメチロールウレア、N,N’-ジメチロールエチレンウレア、N,N’-ジメチロールプロピレンウレアもしくはN,N’-ジメチロールジヒドロキシエチレンウレアまたはそれらの予備縮合体)またはメチロールメラミンの誘導体(例えば、トリ-?ヘキサメチロールメラミン)であり、所望により適切な触媒の存在下に熱硬化可能な縮合物として存在する。
【0052】
フルオロカーボンポリマー(F)は、主として、
(F_(A))フルオロカーボン基R_(F)を含む構成コモノマー単位を含むコポリマー、または、
(F_(B))フルオロカーボン基R_(F)を含む窒素含有重縮合体、
である。
【0053】
フルオロカーボン基R_(F)を含むコポリマー(F_(A))はよく知られており、そして技術文献、例えば、米国特許第3,849,521号、同第4,742,140号、同第5,057,577号および同第5,344,903号並びにEP-A-0198252号およびEP-A-0294648号明細書中に詳述されている。フルオロカーボン基R_(F)を含む重縮合体(F_(B))も同様によく知られており、そして技術文献、例えば、米国特許第3,362,782号および同第3,510,455号およびEP-A0073364号明細書に記載されている。
【0054】
本発明の方法のために、タイプ(F_(A))のフルオロカーボンポリマーを使用することが好ましい。それは、主として、下記式
【0055】
【化8】

または

【0056】
(式中、R_(4)はC_(1-12)アルキルであり、
R_(5)は水素またはメチルであり、
R_(6)は水素またはアセチルであり、
Xは-CO-または-SO_(2)-であり、
YはC_(2-3)アルキレンであり、
ZはC_(1-12)アルキレンであり、
xは0または1であり、
yは0または1であり、そして
zは0または1である)のフルオロカーボン基含有モノマー(M1)と、
さらなるエチレン系不飽和非イオン生成性モノマー、特に、
(M2)親油性炭化水素基を含むエチレン系不飽和非イオン生成性モノマー、例えば、(C_(9-24)アルキル)(メタ)アクリレート、好ましくは(C_(12-20)アルキル)(メタ)アクリレート、および、所望により、
(M3)最初の2つよりも分子量が好ましくは低いさらなる非イオン生成性エチレン系不飽和モノマー、例えば、(C_(1-8)アルキル)(メタ)アクリレート(6?8個の炭素原子を有するアルキル基は環式であってもよい)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、エチレンまたはプロピレン、
とのコポリマーである。
【0057】
所望ならば、(F_(A))は半分に満たない割合の(M4)反応性部分を含み、主として、ヘテロ原子(例えば、窒素、硫黄または酸素)を介して結合されている反応性水素、または、エポキシ基を含む、エチレン系不飽和非イオン生成性コモノマー、を重合単位として含んでもよい。これらの反応性部分は、特に、それぞれのモノマーの共重合の後に、ポリマーの他の部分および/または基材と架橋することができる部分であり、そして例えば、炭化水素基および/または第二級アミド基を介して各々結合した、ヒドロキシル、チオールまたはエポキシ基である。
【0058】
適切なコモノマー(M4)は、主として、(M4a)下記式
【0059】
【化9】

【0060】
(式中、R_(7)はヒドロキシ-C_(2-4)アルキル、-(CH_(2)-CH_(2)-O)_(t)-H、ジヒドロキシ-C_(3-5)アルキル、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルまたはグリシジルであり、そして
tは1?20である)のコモノマー、または、
(M4b)下記式
【0061】
【化10】

【0062】
(式中、R_(8)は水素、C_(1-3)アルキルまたはω-アセチルオキシ-C_(2-4)アルキルである)のコモノマーおよびそれらのアルキルエーテル、例えば、(C_(2-8)アルキル)エーテルである。
【0063】
好ましい基R_(7)は、例えば、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、2,3-ジヒドロキシプロピル、グリシジル、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルおよび式-(CH_(2)-CH_(2)-O)_(t)-H(式中、tは1?10であり、好ましくは1?5である)の基である。
R_(8)は好ましくは水素または3-アセチルオキシ-2,2-ジメチル-1-ヒドロキシ-プロピル-1である。
【0064】
(M1)は単一の化合物であってもまたは混合物であってもよく、例えば、工業銘柄であり、またはランダム混合物であり、例えば、米国特許第3,849,521号、同第4,742,140号または同第5,344,903号明細書に記載されている通りである。
【0065】
ラジカル重合の後および基材へのポリマーの適用の後に、架橋することができる反応性部分を含むコモノマー(M4)とは異なり、コモノマー(M2)および(M3)はこのような反応性部分を含まない。
【0066】
(M2)として、1種以上の化合物、例えば、米国特許第5,344,903号明細書に記載されているものを使用することができる。特に好ましいのは、ラウリル(メタ)アクリレートおよびステアリル(メタ)アクリレートである。
【0067】
(M3)としても、同様に、1種以上の化合物を使用することができ、例えば、米国特許第3,849,521号および同第5,344,903号およびEP-A 0294648号明細書に記載されているものを使用することができ、その中で、C_(2-8)アルキル(メタ)アクリレート(特に、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート)、塩化ビニルおよび塩化ビニリデンは特に好ましい。
【0068】
(M4)としても、1種以上の化合物を使用することができ、例えば、米国特許第3,849,521号および同第5,344,903号またはEP-A 0294648号明細書に記載されているものを使用することができ、好ましくは少なくとも1種のコモノマー(M4a)および少なくとも1種のコモノマー(M4b)が使用される。
【0069】
モノマーの重量比は、有利には、得られるコポリマーが所望の撥水および撥油性効果を有するように選択される。コモノマーの合計重量を基準として〔即ち、(M1)および(M2)および、存在するならば、(M3)および/または(M4)〕、コモノマー(M1)は、有利には25?90重量%の範囲、好ましくは40?90重量%の範囲、特に好ましくは40?75重量%の範囲の量で使用される。コモノマー(M2)は、モノマーの合計を基準として、有利には5?50重量%の範囲、好ましくは15?35重量%の範囲の量で使用される。コモノマー(M3)は、モノマーの合計を基準として、有利には5?50重量%の範囲、好ましくは5?25重量%の範囲の量で使用される。好ましい態様は、半分に満たない割合のコモノマー(M4)も使用し、有利には、モノマーの合計を基準として20重量%以下の量で使用する。(M4)の使用量は好ましくは0.1?20重量%、特に好ましくは2?15重量%、例えば、0.2?5重量%の(M4a)、および、1.5?12重量%の(Mb4)である。共重合は本質的に既知の方法で行うことができ、有利には、適切な乳化剤および所望により可溶化剤の存在下に水性エマルジョン中に行う。どの適切な乳化剤を使用してもよく、特に、非イオン生成性および/またはカチオン性乳化剤を使用してよい。適切な非イオン生成性乳化剤の例は、高級脂肪族アルコール(例えば、脂肪族基中に9?24個の炭素原子を有する)とエチレンオキシドの付加生成物、または、オリゴアルカノール、例えば、グリセロール、ソルビトールまたはソルビタンの脂肪酸部分エステル(脂肪酸基は有利には12?24個の炭素原子を含む)のエチレンオキシドの付加生成物である。非イオン生成性界面活性剤のHLB値は有利には≧10であり、好ましくは12?18の範囲である。カチオン性界面活性剤の例は、脂肪族基中に、例えば、12?24個の炭素原子を有する単純脂肪族アミン、またはそのプロトン化生成物もしくは第四級化生成物である。少量の乳化剤は水性エマルジョン中における重合のために十分であり、例えば、合計のモノマーまたは(F)を基準として、1?20重量%、好ましくは2?15重量%である。」(8頁下から5行?13頁19行)

1-g.
「The mixtures (G) of the invention serve as additives for improving the oil- and water-repellent effect of (F)-finishes and their fastnesses, especially fastnesses to cleaning. Suitable substrates for the finish of the invention include any materials known to be given an oil- and water-repellent finish with fluorocarbon polymers, for example fibrous materials composed of natural, semisynthetic or fully synthetic materials, especially optionally modified cellulose (e.g. cotton, hemp, jute, viscose rayon, cellulose acetates) and blends thereof with synthetic fibres (especially cotton/polyester, cotton/polyamide, cotton/polyurethane, cotton viscose, cotton/polyester/polyurethane), and synthetic fibres (e.g. polyamide, polyester, polyacrylonitrile). The fibrous materials can be present in any desired suitable processing form used for finishing with fluorocarbon polymers, especially as wovens, knits, carpets, felts, webs and nonwovens, or else textiles coated with a polymeric film as are used for example for manufacturing weatherproof products (raincoats, anoraks, windcheaters, tents, tarpaulins, etc.), or products which are cleaned by shampooing (e.g. carpets, upholstery covers). The finishing can be carried out before or also after the making up.

The mixtures (G) of the invention are advantageously applied together with (F) to the substrate to be finished; for this purpose, it is possible to combine them, advantageously in the form of their aqueous dispersions (D), with (F) in a suitable treatment liquor, or (D) can for example be formulated beforehand with (F) to form a stock liquor, or (D) can be formulated with a polymer (F) during or after the synthesis of (F) into an aqueous, concentrated composition. The polymers (F) are advantageously employeded in the form of aqueous dispersions (which may include conventional additives, such as emulsifiers or solubilizers) whose concentration of (F) is for example within the range from 5 to 50 % by weight, preferably 10 to 40 % by weight. The aqueous compositions (P) comprising (G) and (F), especially the concentrated compositions (PI), the prediluted compositions (P2) (especially stock liquors) and the diluted compositions (P3) (particularly treatment liquors), likewise form part of the subject-matter of the present invention. These compositions, especially (PI), advantageously comprise at least one component (L) and/or (Z) which may each derive for example from the production of a corresponding (F)-dispersion and/or from the production of (D), or may also be added separately.
(部分訳)
【0072】
本発明の混合物(G)は(F)仕上剤の撥油および撥水性効果およびその堅牢度、特に、クリーニングに対する堅牢度を改良するための添加剤として作用する。本発明の仕上剤にとって適切な基材は、フルオロカーボンポリマーにより撥油および撥水性仕上を与えられることが知られている材料を含み、例えば、天然材料、半合成材料または完全合成材料を含む繊維材料であり、特に、変性されていてよいセルロース(例えば、綿、ヘンプ、ジュート、ビスコースレイヨン、セルロースアセテート)および合成繊維とのブレンド(特に、綿/ポリエステル、綿/ポリアミド、綿/ポリウレタン、綿/ビスコース、綿/ポリエステル/ポリウレタン)、および、合成繊維(例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル)である。繊維材料は、フルオロカーボンポリマーによる仕上のために使用される所望の適切な加工形態のいずれかで存在してよく、特に、織物、編物、カーペット、フエルト、ウェブおよび不織布、或いは、ポリマーフィルムにより被覆される他のテキスタイルとして、例えば、防水性製品(レインコート、アノラック、ウィンドチーター、テント、ターポーリン等)、または、シャンプーイングによりクリーニングされる製品(例えば、カーペット、アップホルステリーカバー)を製造するために使用されるような形態として存在してよい。仕上は製造の前または後に行われてよい。
【0073】
本発明の混合物(G)は、有利には、仕上を行おうとする基材に(F)とともに適用される。この目的のために、適切な処理リカー中、有利には水性分散体(D)の形態で(F)と調合することができ、または、例えば、(D)を(F)と事前に配合して原料リカーを形成することができ、または、ポリマー(F)の合成の間またはその間に、(D)を(F)と配合して水性の濃厚な組成物とすることができる。ポリマー(F)は、有利には、水性分散体の形態(従来の添加剤、例えば、乳化剤または可溶化剤を含んでよい)で用いられ、その(F)の濃度は、例えば、5?50重量%、好ましくは10?40重量%の範囲である。(G)および(F)を含む水性組成物(P)、特に、濃厚組成物(P1)、予備希釈組成物(P2)(特に原料リカー)および希釈組成物(P3)(特に処理リカー)は、同様に、本発明の主題の一部を構成する。これらの組成物、特に(P1)は、有利には、少なくとも1種の成分(L)および/または(Z)を含み、これらは、例えば、対応する(F)-分散体の製造および/または(D)の製造から各々得られたものであっても、または、別個に添加されたものであってもよい。」(13頁下から2行?14頁24行)

甲1の上記1-a.?1-g.に記載された事項から、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「イソシアネートブロック化性ピラゾールにより完全にブロックされているオリゴマーイソシアネートと非イオン性界面活性剤とを含有する自己分散性混合物、及び、炭素数が3?21のペルフルオロ炭化水素基を有する(メタ)アクリルモノマーとこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体の撥水撥油性成分を含む撥水撥油剤組成物であって、
当該オリゴマーイソシアネートは、モル比にして1/50?1/2の範囲内のポリイソシアネートにおける2?10個のイソシアネート基のうちの1つが、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルと反応しており、残りすべてのイソシアネート基が、ピラゾールによってブロックされている
(ピラゾールは、下記の平均式

(式中、R_(1)、R_(2)およびR_(3)は各々互いに独立に、水素、アルキル、アリル、アラルキル、アリールまたはアルコキシであり、または、R_(2)およびR_(3)は結合している炭素原子と一緒に、ピラゾール環に縮合しており、アルキル、アリールまたはアルコキシにより置換されていてよいベンゼン環を形成する)である。)。」

(2) 本件発明1について

(ア) 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「イソシアネートブロック化性ピラゾールにより完全にブロックされているオリゴマーイソシアネート」、「自己分散性混合物」、「ペルフルオロ炭化水素基を有する(メタ)アクリルモノマーとこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体」はそれぞれ、本件発明1における「ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート」、「水分散液」、「ペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートと非イオン性界面活性剤とを含有する水分散液、及び、炭素数が3?21のペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体の撥水撥油性成分を含む撥水撥油剤組成物。」で一致し、以下の[相違点1-1]及び[相違点1-2]で相違する。

[相違点1-1]
ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートが、本件発明1では「エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下であり、カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下であ」るのに対し、甲1発明では規定されていない点。

[相違点1-2]
ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートのイソシアネート基のブロックが、本件発明1では「少なくとも2つは、下記一般式(II)で表されるピラゾール基であり」、その残りが「イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基を示し」、「前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトンオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化1】

【化3】

{式(II)及び(III)中、nは0?3の整数を示し、nが1以上の場合、R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1?6のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数7?12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO_(2)又はハロゲン原子を示す。}」であるのに対し、甲1発明では、「モル比にして1/50?1/2の範囲内のポリイソシアネートにおける2?10個のイソシアネート基のうちの1つが、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルと反応しており、残りすべてのイソシアネート基が、ピラゾールによってブロックされている
(ピラゾールは、下記の平均式

(式中、R_(1)、R_(2)およびR_(3)は各々互いに独立に、水素、アルキル、アリル、アラルキル、アリールまたはアルコキシであり、または、R_(2)およびR_(3)は結合している炭素原子と一緒に、ピラゾール環に縮合しており、アルキル、アリールまたはアルコキシにより置換されていてよいベンゼン環を形成する)である。)」である点。

(イ) 事例に鑑みて、まず、[相違点1-2]について、以下に検討する。
上記1-a.及び1-c.には、オリゴマーイソシアネートは、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルと部分的に反応している旨記載されており、また、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとオリゴマーイソシアネートとの反応比は、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのモル数とオリゴマーイソシアネートのモル当量数の比で1/50?1/2の範囲、特に好ましくは1/30?1/10の範囲であることが記載されている。
してみると、甲1発明のピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、イソシアネート基が、本件発明1と異なり、ピラゾール化合物、メチルエチルケトンオキシム、エチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸以外のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルと反応しているといえる。
したがって、甲1発明におけるイソシアネート基をブロックする活性水素含有化合物が、実質的に本件発明1における範囲内にあるとはいえず、[相違点1-2]は実質的な相違点である。

(ウ) 以上(ア)、(イ)により、本件発明1と甲1発明の間には、[相違点1-2]が存在するから、[相違点1-1]について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではない。

(3) 本件発明2?7について
本件発明2?6はいずれも、本件発明1にさらなる発明特定事項を付加したものであるから、上記(ウ)のとおり、本件発明1が甲1発明ではない以上、本件発明2?6はいずれも、甲1発明ではない。
本件発明7は、本件発明1の撥水撥油剤組成物を用いた機能性繊維製品の製造方法の発明である。しかし、上記(ウ)に示したとおり、本件発明1が甲1発明ではない以上、本件発明7も甲1に記載された発明ではない。

(4) 小括
上記(2)及び(3)のとおり、本件発明1?6、本件発明7はいずれも、甲1に記載された発明(甲1発明)ではないから、無効理由Iには理由がない。

2 無効理由II(進歩性欠如)について

(1) 甲1に記載された発明を主引用例とする進歩性欠如

ア 甲1発明
甲1発明は前記1(1)に記載のとおりである。

イ 甲2に記載された事項
2-a.
「[0007]It has been reported that compounds, in which the terminal perfluoroalkyl groups of the resulting telomer have about 8 carbon atoms, a high degree of biological accumulation, i.e. a serious environmental problem, resulting in a fear of less prospective future production and use thereof. However, compounds, whose perfluoroalkyl groups have 6 or less carbon atoms, are regarded as having a low degree of biological accumulation.
(対応国際公開第2007/102371号の部分訳)
【0003】
ここで得られるテロマー末端パーフルオロアルキル基の炭素数が8前後の化合物は生体蓄積性が高く、環境に問題がみられるとの報告がなされており、今後はその製造や使用が困難になることが懸念される。ただし、パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下の化合物にあっては、生体蓄積性が低いといわれている。」

ウ 甲3に記載された事項
3-a.
「また従来のフッ素系のSR加工剤に用いられるポリフルオロアルキル基(以下、ポリフルオロアルキル基をR^(f)基という。)は主に炭素数が8以上である。しかし、最近、EPA(米国環境保護庁)によって、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基(以下、パーフルオロアルキル基をR^(F)基という。)を有する化合物は、環境または生体中で分解し、分解生成物が蓄積する点、すなわち環境負荷が高い点が指摘されている。そのため、化合物中のR^(f)基を炭素数6以下の短鎖とすることが推奨されており、R^(f)基が短鎖でありながら、防汚性能に優れた防汚剤組成物が要求されている。」

エ 本件発明1について(無効理由II(ア))
本件発明1と甲1発明を対比すると、その一致点、相違点は、前記1(2)に記載のとおりであり、そのうち相違点は、[相違点1-1]及び[相違点1-2]である。

(ア) [相違点1-1]について
甲1号証には、上記1-a.及び1-c.を参酌するに、オリゴマーイソシアネートにポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを部分的に反応させ、次いでイソシアネートブロック化性ピラゾールにより完全にブロックさせたオリゴマーイソシアネートを得る旨記載されている。
上記1-c.には、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルには、エチレンオキシ基の重合度が5?30である旨記載されており、これを基に前記イソシアネートブロック化性ピラゾールにより完全にブロックさせたオリゴマーイソシアネートのエチレンオキシ基の含有割合を計算すると、明らかに本件発明1の範囲から外れる。一方、当該オリゴマーイソシアネートは、カルボキシレート基を含まないことから、本件発明1の範囲を満たす。
甲1発明においてエチレンオキシ基を3質量%以下で含むようにする点について検討すると、上記1-a.及び1-c.を参酌するに、甲1発明において、オリゴマーイソシアネートにポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを部分的に反応させ、次いでイソシアネートブロック化性ピラゾールにより完全にブロックさせたオリゴマーイソシアネートを得ることは、必須の構成であることから、甲1発明において、エチレンオキシ基の含有割合を3質量%以下とすること、すなわち、オリゴマーイソシアネートにポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを反応させることを除くことは、阻害事由があるというべきである。
よって、甲1発明を[相違点1-1]に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。この点は、本件発明1のような特定の基でイソシアネート基を反応又はブロックしたことが記載されていない甲2、3の記載を参酌しても、同様である。

(イ) [相違点1-2]について
[相違点1-2]が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。
上記(ア)で検討したとおり、甲1発明において、エチレンオキシ基の含有割合を3質量%以下とすること、すなわち、オリゴマーイソシアネートにポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを反応させることを除くことは、阻害事由があるというべきである。
よって、甲1発明を[相違点1-2]に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。この点は、本件発明1のような特定の基でイソシアネート基を反応又はブロックしたことが記載されていない甲2、3の記載を参酌しても、同様である。

(ウ) 効果について
本件発明1は、本件特許明細書の段落【0053】、【0054】、【0058】、【0088】?【0091】、【0111】?【0118】、【0124】?【0182】等、特に段落【0124】?【0182】において、当該撥水撥油剤組成物と機能性繊維製品の製造方法が、ポリエステルやナイロン等の繊維製品に対する撥水撥油性や洗濯耐久性、撥水撥油剤組成物の安定性という効果を奏することが記載されており、当業者に予想されない顕著な効果を奏するものと認められる。

(エ) まとめ
上記(ア)?(ウ)から、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、ましてや、甲1発明において、生体蓄積性や防汚性能を考慮して、炭素数が6以下のフルオロカーボン基を有している(メタ)アクリルモノマーを用いるという甲2号証及び甲3号証に示された技術的事項に基いて、本件発明1とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

オ 本件発明2?4について(無効理由II(エ))
本件発明2?4はいずれも、本件発明1にさらなる発明特定事項を付加したものであるから、上記エのとおり、本件発明1が甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2?4のいずれも、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 小括
上記エ及びオのとおり、本件発明1?4はいずれも、甲1発明、又は甲1発明及び甲2,3に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2) 甲4に記載された発明を主引用例とする進歩性欠如

ア 甲4に記載された発明
甲4には、以下の記載4-a.?記載4-e.がある。
4-a.
「 撥水撥油性を有するフルオロアルキル基含有化合物で繊維製品の撥水撥油加工を行なうに際し、前記フルオロアルキル基含有化合物100重量部に対し多官能インシアネートを5?500重量部配合することを特徴とする繊維製品の撥水撥油加工法。」(特許請求の範囲)

4-b.
「 本発明で使用される撥水撥油性能を有するフルオロアルキル基含有化合物とは、3?20個好ましくは6?12個の炭素原子を有するフルオロアルキル基を有し、水不浴性(25℃で1重重%以下)で主要転移温度即ち融点、ガラス転移点あるいは軟化点が20℃以上で分子量が約700?約200,000の非粘着性化合物である。」(2頁左上欄10行?15行)

4-c.
「 このような有機フッ素化合物の例を挙げれば次のとおりである。
(1)炭素数3?20のフルオロアルキル基を有するビニル単量体の単独重合体またはフッ素を含まないビニル単量体との共重会体。
・・・
フッ素を含まないビニル単量体の例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリル酸のアルコールまたはアルキルアミン(いずれも炭素数20以下)とのエステルまたはアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリルアミド、ビニルアセテート、シロキサン結合を有するビニル化合物などがあげられる。いずれの単量体も混合して使用することもできる。」(2頁右上欄1行?右下欄7行)

4-d.
「 次に本発明で使用される多官能イソンアネートとは、分子中に2個以上のインシアネート官能基を含む有機化合物ならいずれでも良く、その一例としては2,4-、2,6-トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジインシアネートアダクト、トリメチロ-ルエタントリレンジイソシアネートアダクト、グリセリントリレンジイソシアネートアダクト、トリフエニルメタントリイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジインシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびそれらの混合物などがある。さらにポリオールと過剰のポリインシアネートであらかじめポリマー化したイソシアネート官能基末端プレポリマーも好ましく使用される。該化合物のインシアネート官能基はそのままでもあるいは安定化されていても良い。安定化剤としては、加熱時に解離して活性なイソシアネート基が再生する程度に安定化するフェノール類、ε-カプロラクタム、マロン酸ジエチルエステル、メチルエチルケトキシム、重亜硫酸ソーダ、イミダゾール類などがある。
多官能インシアネートは有機溶剤溶液あるいは水分散液の形で配合することが多い。
撥水撥油性を有するフルオロアルキル基含有化合物と多官能インシアネートの配合比は、前者100部に対して後者5?300部が適当である。何故ならは300部より多い場合は撥水撥油性が不足するし、5部より少ない場合はその耐ドライクリーニング性が劣るからである。多官能インシアネートはあらかじめ撥水撥油剤に配合しておいても良く、加工時に加工浴中に配合しても良い。
また多官能インシアネートのほかに、柔軟にしたり、帯電を防止したり、撥水撥油性を改良したり、家庭洗濯に対する耐久性を改善したりする目的で、帯電防止剤、アミノプラスト樹脂、アクリルポリマー、天然ワックス、シリコーン樹脂等を本発明の効果が阻害されない程度に配合することもさしつかえない。」(3頁右下欄11行?4頁左上欄15行)

4-e.
「〔実施例5?7、比較例3、4〕
撥水撥油性を有するフルオロアルキル基含有化合物としてC_(8)F_(17)SO_(2)F(CH_(3))CH_(2)CH_(2)OCOCH=CH_(2) 85部、2-エチルへキシルメタクリレート10部、N-メチロールアクリルアミド5部を、オクタデシルジメチルアミン・酢酸塩2部、およびポリエチレンオキシドノニルフエニルエーテル〔HLB20〕5gで乳化重合した分散液(ポリマー濃度20%、F-2と称す)を使用した。
多官能インシアネートとして、1,6-ヘキサンジオール・アジペート(数平均分子量3000)・トリレンジインシアネートアダクト(イソシアネート基はメチルエチルケトキシムでブロック)なるイソシアネート官能基末端プレポリマー100部をオクタデシルジメチルアミン・酢酸塩5部で乳化した分散液(有効成分濃度20%、P-1と称す)を使用した。両者を併用してポリエステル/綿(65/35)混紡(ボブリン)へ加工した結果を表-2に示す。」(5頁左下欄1行?右下欄2行)

甲4の上記4-a.?4-e.に記載された事項から、甲4には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。

「1,6-ヘキサンジオール・アジペート(数平均分子量3000)・トリレンジインシアネートアダクト(イソシアネート基はメチルエチルケトキシムでブロック)なるイソシアネート官能基末端プレポリマーとオクタデシルジメチルアミン・酢酸塩で乳化した分散液、及び、C_(8)F_(17)SO_(2)F(CH_(3))CH_(2)CH_(2)OCOCH=CH_(2)、2-エチルへキシルメタクリレート、N-メチロールアクリルアミドを乳化重合した撥水撥油性を有するフルオロアルキル基含有化合物を含む組成物。」

イ 本件発明1について(無効理由II(イ))
(ア) 本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「1,6-ヘキサンジオール・アジペート(数平均分子量3000)・トリレンジインシアネートアダクト(イソシアネート基はメチルエチルケトキシムでブロック)なるイソシアネート官能基末端プレポリマー」、「オクタデシルジメチルアミン・酢酸塩」、「分散液」、「C_(8)F_(17)SO_(2)F(CH_(3))CH_(2)CH_(2)OCOCH=CH_(2)、2-エチルへキシルメタクリレート、N-メチロールアクリルアミドを乳化重合した撥水撥油性を有するフルオロアルキル基含有化合物」、「組成物」は、本件発明1の「ポリイソシアネート」、「界面活性剤」、「水分散液」、「ペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体」、「撥水撥油剤組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、「ポリイソシアネートと界面活性剤を含む水分散液、及び、ペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体を含む撥水撥油剤組成物。」で一致し、以下の[相違点4-1]、[相違点4-2]及び[相違点4-3]で相違する。

[相違点4-1]
ポリイソシアネートが、本件発明1では「下記一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート」であり、「前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下であり、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下であり、」
「R(-NH-CO-Z)m ・・・(I)
[式(I)中、mは2以上の整数を示し、Rはm個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物からm個のイソシアネート基を除いた残基を示し、Zは同一でも異なっていてもよく、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基を示し、Zのうちの少なくとも2つは、下記一般式(II)で表されるピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトンオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化1】

【化3】

{式(II)及び(III)中、nは0?3の整数を示し、nが1以上の場合、R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1?6のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数7?12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO_(2)又はハロゲン原子を示す。}]」であるのに対し、甲4発明は、「1,6-ヘキサンジオール・アジペート(数平均分子量3000)・トリレンジインシアネートアダクト(イソシアネート基はメチルエチルケトキシムでブロック)なる」点。

[相違点4-2]
水分散液の界面活性剤について、本件発明1では「非イオン界面活性剤」であるのに対し、甲1発明では「オクタデシルジメチルアミン・酢酸塩」である点。

[相違点4-3]
ペルフルオロアルキル基について、本件発明1では「炭素数が6以下」であるのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点。

(イ) [相違点4-1]について
甲4の上記4-a.?4-e.には、ポリイソシアネートのブロッキング剤として、そもそもピラゾール化合物を使用する旨記載されていない。
一方、甲1の上記1-a.?1-g.を参酌しても、上記2(1)エ(ア)で検討したとおり、本件発明1の特定のブロッキング剤でブロックしたピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは記載されていない。
したがって、甲1に記載された技術的事項を参酌しても、甲4発明から[相違点4-1]に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ) [相違点4-2]について
甲4の上記4-e.には、ポリイソシアネート分散液と混合するフルオロアルキル基含有化合物の分散液に使用する界面活性剤として、ポリエチレンオキシドノニルフェニルエーテル(非イオン界面活性剤)を使用しており、ポリイソシアネート分散液においても、オクタデシルジメチルアミン・酢酸塩の界面活性剤のみならず、当該非イオン界面活性剤を添加することは、当業者が容易になし得ることである。
よって、甲4発明を[相違点4-2]に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

(エ) [相違点4-3]について
甲4の上記4-c.には、フルオロアルキル基含有化合物として、炭素数3?20のフルオロアルキル基を有するビニル単量体とフッ素を含まないビニル単量体との共重合体が示唆されており、甲4の上記記載を見れば、当業者にとって、甲4発明を[相違点4-3]に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、容易になし得ることである。

(オ) 効果について
本件発明1は、本件特許明細書の段落【0053】、【0054】、【0058】、【0088】?【0091】、【0111】?【0118】、【0124】?【0182】等、特に段落【0124】?【0182】において、当該撥水撥油剤組成物と機能性繊維製品の製造方法が、ポリエステルやナイロン等の繊維製品に対する撥水撥油性や洗濯耐久性、撥水撥油剤組成物の安定性という効果を奏することが記載されており、当業者に予想されない顕著な効果を奏するものと認められる。

(カ) まとめ
上記(ウ)及び(エ)から、甲4発明から[相違点4-2]及び[相違点4-3]に係る本件発明1の構成に至るのが容易になし得たことであったとしても、上記(イ)及び(オ)のとおり[相違点4-1]が実質的な相違点であり、またそれにより当業者に予想されない顕著な効果を奏するものである以上、本件発明1は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、ましてや、本件発明1のような特定の基でイソシアネート基を反応又はブロックしたことが記載されていない甲1の記載を参酌しても、同様である。

ウ 本件発明5、6について(無効理由II(オ)、(カ))
本件発明5、6はいずれも、本件発明1にさらなる発明特定事項を付加したものであるから、上記(イ)及び(オ)のとおり、本件発明1が甲4発明及び甲1に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明5、6のいずれも、甲4発明及び甲1に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明7は、本件発明1の撥水撥油剤組成物を用いた機能性繊維製品の製造方法の発明である。しかし、上記(イ)及び(オ)に示したとおり、本件発明1が、甲1を参酌しても、甲4発明から容易に導き出せない以上、本件発明7も甲4発明及び甲1に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
上記イ及びウのとおり、本件発明1、5?7はいずれも、甲4発明及び甲1に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3) 甲5に記載された発明を主引用例とする進歩性欠如

ア 甲5に記載された発明
甲5には、以下の記載5-a.?記載5-d.がある。
5-a.
「CLAIMS
1. Aqueous dispersions of non-ionic blocked polyisocyanates obtained from the reaction of a polyisocyanate, a blocking agent and a non-ionic alkoxylated diol having general formula I:
R_(1)CH_(2)O-(-CH_(2)CH_(2)O)n-(CH_(2)CHCH_(3)O)m-R_(2)
(I)
wherein:

or

R_(2) and R_(3) are equal or different and are chosen among methyl, ethyl, n-propyl, i-propyl, n-butyl, i-butyl;
n is a number from 0 to 40;
m is a number from 0 to 40;
n + m is a number from 20 to 80.
・・・
5. Aqueous dispersions of non-ionic blocked polyisocyanates according to any of the preceding claims, wherein the blocking agent is 3,5- dimethylpyrazole.
(対応日本国公表特許公報「特表2006-508226号公報」の部分訳)(以下、「部分訳」という。)
【請求項1】
(i)ポリイソシアネート;
(ii)ブロッキング剤;
(iii)一般式Iを有する非イオン性アルコキシ化ジオール;
【化1】

の反応から得られる、非イオン性ブロックポリイソシアネートの水溶性分散剤であって、
ここで:
【化2】

または

であり、
R_(2)およびR_(3)は、同じかまたは異なっており、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチルから選択され;
nは、0?40の数字であり;
mは、0?40の数字であり;
n+mは、20?80の数字である、
で表される前記分散剤。
・・・
【請求項5】
ブロッキング剤(ii)が3,5-ジメチルピラゾールである、請求項1?4のいずれかに記載の非イオン性ブロックポリイソシアネートの水溶性分散剤。」(特許請求の範囲の請求項1,5)

5-b.
「The polyisocyanates utilisable according to the present invention are those commercially available and containing from 2 to 10 isocyanate groups per molecule and may be either of the aromatic, or the aliphatic, or the cycloaliphatic or the mixed type.
Examples of suitable polyisocyanates include:
A)diisocyanates, such as 1,6-hexamethylenediisocyanate, l-isocyanate-3- isocyanate -methyl -3,5,5-trimethyl-cyclohexane (or isophoronediisocyanate), 4,4'- dicyclohexyl- methanediisocyanate, 2,4- toluenediisocyanate either alone or in admixture with 2,6- toluenediisocyanate, 4,4'-diphenyl-methanediisocyanate, meta- tetramethylxilylenediisocyanate or mixtures thereof;
B) tri- and higher-functionalised polyisocyanates, such as the compounds obtained by condensation of trimethylol propane or other polyols having functionality higher than three, and the diisocyanates of point A);
C) compounds obtained by trimerisation, biuretisation, urethanisation or allophanation of the polyisocyanates of the points A) and B), containing at least three isocyanate groups per molecule.
For the realisation of the present invention the preferred polyisocyanates are the isocyanurate obtained from 1,6-hexamethylenediisocyanate and the reaction product of trimethylol propane and toluenediisocyanate (its isomers 2,4 and 2,6 being in a weight ratio of 80:20). The blocking agents useful for the realisation of the invention- are the normally used blocking agents of the reversible kind, thermally de- blockable, such as the compounds containing active methylenic groups (such as the derivatives of malonic acid and its esters, acetylacetone, acetoacetic acid and its esters); oximes; ε-caprolactames and lactames; pyrazoles; imidazoles.
The preferred blocking agents are the ones de-blockable at a temperature of 90°-160°C.
Particularly useful for the realisation of the present invention are oximes and pyrazoles, and more specifically butanone oxime and 3,5- dimethylpyrazole.
(部分訳)
【0008】
・・・
利用可能な本発明のポリイソシアネートは、商業的に入手可能であり、分子当たり2?10のイソシアネート基を含有するものであり、芳香族、もしくは脂肪族、もしくは脂環式、または混合タイプでもよい。
【0009】
好適なポリイソシアネートの例は、
A)ジイソシアネート、例えば1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1-イソシアネート-3-イソシアネート-メチル-3,5,5-トリメチル-シクロヘキサン(またはイソフォロンジイソシアネート)、4,4’-ジシクロヘキシル-メタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート単独か、または2,6-トルエンジイソシアネートとの混合物、4,4’-ジフェニル-メタンジイソシアネート、メタ-テトラメチルキシレンジイソシアネート、またはそれらの混合物;
B)トリ-およびより高度に官能基化されたポリイソシアネート、例えば、トリメチロールプロパンまたは3より多くの官能基を有する他のポリオールとポイントA)のジイソシアネートとの縮合により得られる化合物;
C)分子当たり少なくも3つのイソシアネート基を含有する、ポイントA)およびB)のポリイソシアネートの、三量化(trimerisation)、ビウレット化(biuretisation)、ウレタン化(urethanisation)、またはアロファネート化(allophanation)により得られる化合物;
を含む。
【0010】
本発明の実現のために、好ましいポリイソシアネート(i)は、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートから得られるイソシアヌレート、およびトリメチロールプロパンおよびトルエンジイソシアネート(その2,4異性体および2,6異性体は、80:20の重量比である)の反応生成物である。
本発明の実現のために、有益なブロッキング剤は、可逆的、熱的に非ブロッグできる通常用いられるブロッキング剤であり、例えば、活性なメチレン基を含有する化合物(例えば、マロン酸およびそのエステルの誘導体、アセチルアセトン、アセト酢酸およびそのエステル);オキシム;ε-カプロラクタムおよびラクタム;ピラゾール;イミダゾールである。
好ましいブロッキング剤は、90°?160℃の温度で非ブロッグできるものである。
本発明の実現のためには、オキシムおよびピラゾール、ならびにより具体的には、ブタノンオキシムおよび3,5-ジメチルピラゾールが特に有益である。」(3頁22行?4頁30行)

5-c.
「According to a fundamental aspect of the invention the process for the preparation of the aqueous dispersions of non-ionic blocked polyisocyanates comprises the following steps:

a. a polyisocyanate and a non-ionic alkoxylated diol of the general formula
R_(1)CH_(2)O-(-CH_(2)CH_(2)O)n-(CH_(2)CHCH_(3)O)m-R_(2)
(I)
wherein

or

R_( 2) and R_(3) are equal or different and are chosen among methyl, ethyl, n- propyl, i-propyl, n-butyl, i-butyl;
n is a number from 0 to 40;
m is a number from 0 to 40;
n + m is a number from 20 to 80, preferably from 20 to 40
are reacted at a temperature of 0°-120°C, their equivalent ratio being such that the percentage of free isocyanate groups in the resulting oligomer is from 3 to 10 and the percentage in weight of ethoxyl groups is from 10- to 40%, preferably from 20 to 30%;

b. the thus obtained oligomer is reacted with an amount of blocking agent such that the equivalent ratio of the isocyanate groups of the oligomer and the blocking agent is from 1:0.98 to 1: 1.30, preferably from 1:1 to 1: 1,20;
c. the thus obtained mixture is dispersed into water under vigorous stirring to obtain a dispersion having a solid content of from 20 to 40% by weight, preferably from 25 to 35% by weight.
(部分訳)
【0011】
本発明の基本的な面によれば、非イオン性ブロックポリイソシアネートの水溶性分散剤の製造方法は、以下のステップを含む:
a.ポリイソシアネートおよび一般式
【化5】

ここで
【化6】

または

R_(2)およびR_(3)は、同じかまたは異なっており、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチルから選択され;
nは、0?40の数字であり;
mは、0?40の数字であり;
n+mは、20?80、好ましくは20?40の数字である、
で表される非イオン性アルコキシ化ジオールを、0°?120℃の温度で反応させ、それらの等量比は、生成するオリゴマーのフリーのイソシアネート基のパーセンテージが3?10であり、エトキシ基の重量%が10?40%、好ましくは20?30%である;
b.オリゴマーのイソシアネート基およびブロッキング剤の等量比が1:0.98?1:1.30、好ましくは1:1?1:1.20になる量で、得られるオリゴマーをブロッキング剤と反応させる;
c.得られる混合物を、激しい攪拌下、水に分散させ、20?40重量%、好ましくは25?35重量%の固形分を有する分散剤を得る;」(4頁31行?6頁5行)

5-d.
「Said polymeric compounds are those normally used for these applications; among them we cite:
1) homopolymers of acrylic monomers having general formula :
C_(n)F_(2n+1)CH_(2)CH_(2)OC(O)-C(R)=CH_(2)
wherein:
R is methyl or hydrogen and n is a number from 5 to 12;
2) homopolymers of acrylic monomers having general formula:
C_(n)F_(2n+1)SO_(2)N(R')CH_(2)CH_(2)OC(O)-C(R)=CH_(2)
wherein:
R and R' are an alkyl group or hydrogen and n is a number from 5 to 12.
3) copolymers of the above cited fluorinated acrylic monomers with: butadiene, isoprene, chloroprene, styrene, α-methylstyrene, p- methylstyrene, vinyl halides (such as vinyl chloride, vinylidene chloride, vinylidene fluoride), vinyl esters (such as vinyl acetate, vinyl propionate, vinyl stearate), vinyl methyl ketones, esters or acrylic or methacrylic acid (such as methyl acrylate, methyl methacrylate, ethyl acrylate, ethyl methacrylate, propyl acrylate, butyl acrylate, 2-ethylhexyl acrylate or methacrylate, decyl acrylate, lauryl acrylate or methacrylate, stearyl methacrylate, N,N-dimethylaminoethyl methacrylate, 2-hydroxyethyl methacrylate, 2-hydroxypropyl methacrylate or glycidyl methacrylate), acrylamide, methacrylamide, N-methylol acrylamide, acrylonitrile, methacrylonitrile, N-substituted maleic imides, acrylates or methacrylates of ethoxylated alcohols having molecular weight smaller than 2000 daltons or mixture thereof.
For the preparation of the compositions useful for the oil- and/or water- repellent finishing of textiles, the dispersions of the invention are normally used in an amount of from 0.1 to 10% by weight on the total weight of the composition.
Advantageously the weight ratio between the solid fraction of the dispersion of the invention and the perfluorinated polymeric organic compounds of the oil- and/or water-repellent compositions is comprised between 1:1 and 1:15, more preferably between 1:2 and 1:7. The finishing step can be performed by using the conventional techniques, for example by impregnation or spray technique, at a temperature of from 80° to 110°C followed by heat treatment at 130°-200°C for 0.5 -6 minutes. The compositions for the oil- and/or water-repellent finishing of texiles containing the aqueous dispersions of the invention are stable and the textiles treated therewith exhibit high washing stability of the finishing.
(部分訳)
【0014】
前記高分子化合物は、これらの適用のために通常用いられるものである;それらの中で列挙する:
1) アクリル系モノマーの一般式を有するホモポリマー:
C_(n)F_(2n+1)CH_(2)CH_(2)OC(O)-C(R)=CH_(2)
ここで:
Rはメチルまたは水素であり、およびnは5?12の数字である;
2)アクリル系モノマーの一般式を有するホモポリマー:
C_(n)F_(2n+1)SO_(2)N(R’)CH_(2)CH_(2)OC(O)-C(R)=CH_(2)
ここで:
RおよびR’は、アルキル基または水素であり、およびnは5?12である
3)ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル)、ビニルメチルケトン、エステルまたはアクリル酸もしくはメタクリル酸(例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、2-エチルヘキシルアクリレートまたはメタクリレート、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリルまたはメタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはグリシジルメタクリレート)、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N-置換マレイン酸イミド、2000ドルトンより小さい分子量を有するエトキシ化アルコールのアクリレートまたはメタクリレート、またはそれらの混合物と、前記フッ素化されたアクリル系モノマーとのコポリマー。
【0015】
繊維の撥油および/または撥水仕上げのために有益な組成物の製造のために、本発明の分散剤は、通常、組成物の全重量に対し、0.1?10重量%の量で用いられる。
有利には、本発明の分散剤の固体の一部と、撥油および/または撥水組成物のペルフルオロ化有機高分子化合物との重量比は、1:1と1:15との間、より好ましくは、1:2と1:7との間に含まれる。
【0016】
仕上げステップは、通常の技術を用いて、例えば、80°?110℃の温度で、含浸またはスプレーし、130°?200℃で0.5?6分間、熱処理することにより、行うことができる。繊維の撥油および/または撥水仕上げのための、本発明の水溶性分散剤を含有する組成物は安定であり、それを用いて処理された繊維は、仕上げの高い洗浄安定性を示す。」(6頁21行?7頁25行)

甲5の上記5-a.?5-d.に記載された事項から、甲5には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。

「ポリイソシアネート、3,5-ジメチルピラゾールのブロッキング剤、非イオン性アルコキシ化ジオールの反応から得られる、非イオン性ブロックポリイソシアネートの水溶性分散剤、及び、ペルフルオロ化有機高分子化合物を含む撥油および/または撥水組成物。」

イ 本件発明1について(無効理由II(ウ))
(ア) 本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明における「ポリイソシアネート、3,5-ジメチルピラゾールのブロッキング剤、非イオン性アルコキシ化ジオールの反応から得られる、非イオン性ブロックポリイソシアネート」、「ペルフルオロ化有機高分子化合物」、「撥油および/または撥水組成物」は、本件発明1の「ピラゾールブロックポリイソシアネート」、「ペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分」、「撥水撥油剤組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲5発明とは、「ピラゾールブロックポリイソシアネートの水溶性分散剤、及び、ペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分を含む撥水撥油剤組成物。」で一致し、以下の[相違点5-1]、[相違点5-2]及び[相違点5-3]で相違する。

[相違点5-1]
ピラゾールブロックポリイソシアネートが、本件発明1では「下記一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート」であり、「前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下であり、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下であり、」
「R(-NH-CO-Z)m ・・・(I)
[式(I)中、mは2以上の整数を示し、Rはm個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物からm個のイソシアネート基を除いた残基を示し、Zは同一でも異なっていてもよく、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基を示し、Zのうちの少なくとも2つは、下記一般式(II)で表されるピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトンオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化1】

【化3】

{式(II)及び(III)中、nは0?3の整数を示し、nが1以上の場合、R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1?6のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数7?12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO_(2)又はハロゲン原子を示す。}]」であるのに対し、甲5発明は、そのように特定されていない点。

[相違点5-2]
ピラゾールブロックポリイソシアネートが、本件発明1では「非イオン界面活性剤とを含有するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート分散液」であるのに対し、甲5発明ではそのような特定がない点。

[相違点5-3]
ペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分が、本件発明1では「炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体である」のに対し、甲5発明ではそのような特定がない点。

(イ) [相違点5-1]について
甲5の上記5-a.及び5-c.には、ポリイソシアネートと非イオン性アルコキシ化ジオールを反応させること、それらの当量比は、生成するオリゴマーのフリーのイソシアネート基のパーセンテージが3?10であり、エトキシ基の重量%が10?40%、好ましくは20?30%であることが記載されており、甲5発明のピラゾールブロックポリイソシアネートにおいて、ポリイソシアネートと非イオン性アルコキシ化ジオールと反応させることが必須の構成であり、エチレンオキシ基の含有割合は、明らかに本件発明1の範囲外であることから、甲5発明において、ポリイソシアネートに非イオン性アルコキシ化ジオールを特定量反応させることを除くことは、阻害事由があるというべきである。一方、当該ピラゾールブロックポリイソシアネートは、カルボキシレート基を含まないことから、本件発明1の範囲を満たす。
よって、甲5発明において、エチレンオキシ基の含有割合を3質量%以下にすることは阻害事由があるのであるから、甲5発明を[相違点5-1]に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
一方、甲1の上記1-a.?1-g.を参酌しても、上記2(1)エ(ア)で検討したとおり、本件発明1の特定のブロッキング剤でブロックしたピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは記載されていない。
したがって、甲1に記載された技術的事項を参酌しても、甲5発明から[相違点5-1]に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ) [相違点5-2]について
甲1の上記1-e.には、ピラゾール化合物でブロックしたポリイソシアネート分散液に使用する界面活性剤として、非イオン生成性界面活性安定剤(E)を使用してもよい旨記載されており、甲5発明の非イオン性ブロックポリイソシアネートにおいても、当該非イオン界面活性剤を添加することは、当業者が容易になし得ることである。
よって、甲5発明を[相違点5-2]に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

(エ) [相違点5-3]について
甲5の上記5-d.には、ペルフルオロアルキル基の炭素数が5?12である旨記載されており、当該炭素数を有するペルフルオロアルキル基を有するアクリル系モノマーと他のビニル単量体との共重合体が示唆されており、甲5の上記記載を見れば、当業者にとって、甲5発明を[相違点5-3]に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、容易になし得ることである。

(オ) 効果について
本件発明1は、本件特許明細書の段落【0053】、【0054】、【0058】、【0088】?【0091】、【0111】?【0118】、【0124】?【0182】等、特に段落【0124】?【0182】において、当該撥水撥油剤組成物と機能性繊維製品の製造方法が、ポリエステルやナイロン等の繊維製品に対する撥水撥油性や洗濯耐久性、撥水撥油剤組成物の安定性という効果を奏することが記載されており、当業者に予想されない顕著な効果を奏するものと認められる。

(カ) まとめ
上記(ウ)及び(エ)から、甲5発明から[相違点5-2]及び[相違点5-3]に係る本件発明1の構成に至るのが容易になし得たことであったとしても、上記(イ)及び(オ)のとおり[相違点5-1]が実質的な相違点であり、またそれにより当業者に予想されない顕著な効果を奏するものである以上、本件発明1は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、ましてや、本件発明1のような特定の基でイソシアネート基を反応又はブロックしたことが記載されていない甲1の記載を参酌しても、同様である。

ウ 本件発明6、7について(無効理由II(カ)、(キ))
本件発明6は、本件発明1にさらなる発明特定事項を付加したものであるから、上記イのとおり、本件発明1が甲5発明及び甲1に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明6のいずれも、甲5発明及び甲1に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明7は、本件発明1の撥水撥油剤組成物を用いた機能性繊維製品の製造方法の発明である。しかし、上記イに示したとおり、本件発明1が、甲1を参酌しても、甲5発明から容易に導き出せない以上、本件発明7も甲5発明及び甲1に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小括
上記イ及びウのとおり、本件発明1、6、7はいずれも、甲5発明及び甲1に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4) 以上(1)?(3)のとおりであるから、無効理由IIには理由がない。

3 無効理由III(実施可能要件違反及びサポート要件違反)について
(1) 無効理由III(ア)について
無効理由III(ア)は実施可能要件についての主張である。いわゆる実施可能要件を定めた特許法36条4項1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めるところ、この規定にいう「実施」とは、物の発明においては、当該発明にかかる物の生産、使用等をいうものであるから、実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明に係る物を生産し、使用することができる程度のものでなければならない。
そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1に係る物を生産し、使用することができる程度のものであるか否かについて、出願時の技術常識に照らして検討する。

ア 本件発明1について
本件訂正特許請求の範囲の請求項1において、「前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート」の「-NH-CO-Z」基のZが、「Zは同一でも異なっていてもよく、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基を示し、Zのうちの少なくとも2つは、下記一般式(II)で表されるピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトンオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化1】

【化3】

{式(II)及び(III)中、nは0?3の整数を示し、nが1以上の場合、R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1?6のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数7?12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO_(2)又はハロゲン原子を示す。}]」と特定され、前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートには、イソシアネート基に反応したポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、及びポリエチレングリコール等の水に自己乳化するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは包含されない。
そして、本件特許明細書の段落【0053】、【0054】、【0058】、【0088】?【0091】、【0111】?【0118】、【0124】?【0182】等に、本件発明1の撥水撥油剤組成物と、当該組成物を繊維製品に適用し、機能性繊維製品を製造した方法が記載されており、特に、段落【0124】?【0182】において、当該撥水撥油剤組成物と機能性繊維製品の製造方法により所期の効果を奏することが記載されている。
よって、本件発明1には、水に自己乳化するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートが包含されなくなったこと、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例に示される撥水撥油剤組成物及び機能性繊維製品の製造方法より、当業者が本件発明1を実施することができるといえる。
したがって、無効理由III(ア)は、本件発明1について理由がない。
なお、請求人は、一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートに関し、「Rが、m個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物から、m個のイソシアネート基を除いた残基であること以外、何ら規定されていない」などと主張している。
しかしながら、本件特許明細書の段落【0026】?【0032】には、原料となるm個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物について、詳述されており、これらは慣用のものであるから、当業者は、本件特許明細書の記載に基づき、適切なm個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を原料として選択し、一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートを製造し、使用することが可能であるから、請求人の主張は採用できない。

イ 本件発明2?7について
また、本件訂正前発明2?6についての請求人の主張は、無効理由III(ア)が本件訂正前発明1について理由があるという前提の下、本件訂正前発明2?6が本件訂正前発明1に従属していることのみをその根拠とするものであるから、上記のとおり、無効理由III(ア)は、本件発明1について理由がない以上、無効理由III(ア)は、本件発明2?6についても理由がない。
そして、本件訂正前発明7についての請求人の主張は、本件訂正前発明1と同じ特定の撥水撥油剤組成物を繊維製品に適用した方法であるから、上記のとおり、無効理由III(ア)は、本件発明1について理由がない以上、無効理由III(ア)は、本件発明7についても理由がない。

(2) 無効理由III(イ)について
無効理由III(イ)はサポート要件についての主張である。いわゆるサポート要件については、特許請求の範囲が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくても、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるとされる。
そこで、以下に本件発明1?7が、発明の詳細な説明に記載された発明であるか、また、当該発明が、当業者に発明の課題を解決できる範囲のものであるかを以下に検討する。

本件発明1?本件発明7の課題は、訂正特許請求の範囲の記載及び本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0007】の記載から、以下のとおりであると認める。

(本件発明1?本件発明7の課題)
本発明は、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分を用いて十分な耐久撥水撥油性を付与できる撥水撥油剤組成物、並びに、十分な耐久撥水撥油性を有する機能性繊維製品及び機能性繊維製品の製造方法を提供することを目的とする。

一方、本件訂正特許請求の範囲の請求項1において、「前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート」の「-NH-CO-Z」基のZが、「Zは同一でも異なっていてもよく、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基を示し、Zのうちの少なくとも2つは、下記一般式(II)で表されるピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトンオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化1】

【化3】

{式(II)及び(III)中、nは0?3の整数を示し、nが1以上の場合、R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1?6のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数7?12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO_(2)又はハロゲン原子を示す。}]」と特定されている。
そして、本件特許明細書の段落【0053】、【0054】、【0058】、【0088】?【0091】、【0111】?【0118】、【0124】?【0182】等に、本件発明1の撥水撥油剤組成物と、当該組成物を繊維製品に適用し、機能性繊維製品を製造した方法が記載されており、特に、段落【0124】?【0182】において、当該撥水撥油剤組成物と機能性繊維製品の製造方法により上記課題を解決できることが記載されている。
したがって、上記記載に接した当業者は、本件発明1?本件発明6に係る撥水撥油剤組成物及び本件発明7に係る機能性繊維製品を製造する方法が、その課題を解決できるものであると認識できる。
よって、本件発明1?本件発明7は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、無効理由III(イ)は、本件発明1?本件発明7について理由がない。
上記に示したとおり、無効理由III(イ)には、理由がない。

(3) まとめ
以上、(1)、(2)により、無効理由IIIには理由がない。

4 無効理由IV(明確性要件違反)について
本件訂正により請求項2の「前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液の液状媒体」の有機溶剤は、「水に混合した場合に分層する、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類及び脂肪族炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶剤」から、「20℃での密度が1.00g/cm^(3)以下であり、20℃での水への溶解度が25g/100ml以下である、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類及び脂肪族炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶剤」に訂正された。
これにより、請求項2には、有機溶剤として、特定の温度条件で前記密度及び溶解度を有する有機溶剤を使用することが明記され、当該パラメータを有する有機溶剤は明確に選択できることから、その発明特定事項が明確でないとはいえない。
したがって、無効理由IVは、本件発明2について理由がない。
また、無効理由IVの本件訂正前発明3?6についての請求人の主張は、無効理由IVが本件訂正前発明2について理由があるという前提の下、本件訂正前発明3?6が本件訂正前発明2に従属していることのみをその根拠とするところ、上記のとおり、無効理由IVは、本件発明2について理由がない以上、無効理由IVは、本件発明3?6についても理由がない。
以上により、無効理由IVには理由がない。


第6 結び
以上のとおり、無効理由I?IVによって、本件発明1?7に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートと非イオン界面活性剤とを含有するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液、及び、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分、を含み、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下であり、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下であり、
前記撥水撥油性成分が、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体である、撥水撥油剤組成物。
R(-NH-CO-Z)m ・・・(I)
[式(I)中、mは2以上の整数を示し、Rはm個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物からm個のイソシアネート基を除いた残基を示し、Zは同一でも異なっていてもよく、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基を示し、Zのうちの少なくとも2つは、下記一般式(II)で表されるピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化1】

【化3】

{式(II)及び(III)中、nは0?3の整数を示し、nが1以上の場合、R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1?6のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数7?12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO_(2)又はハロゲン原子を示す。}]
【請求項2】
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液の液状媒体が、水、又は、水と、20℃での密度が1.00g/cm^(3)以下であり、20℃での水への溶解度が25g/100ml以下である、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類及び脂肪族炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶剤とを含む混合物である、請求項1に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項3】
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液の液状媒体が、水と、20℃での密度が1.00g/cm^(3)以下であり、20℃での水への溶解度が25g/100ml以下である、エーテル類とを含む混合物である、請求項1又は2に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤が、HLB10以上の非イオン界面活性剤である、請求項1?3のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項5】
前記一般式(I)中のZの全てが前記一般式(II)で表されるピラゾール基である、請求項1?4のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物を接触させることにより撥水撥油性が付与された機能性繊維製品。
【請求項7】
撥水撥油性を有する機能性繊維製品を製造する方法であって、
繊維基材を、下記一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートと非イオン界面活性剤とを含有するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液が含まれる処理液A及び炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分が含まれる処理液Bに接触させる、又は、下記一般式(I)で表されるピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートと非イオン界面活性剤とを含有するピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネート水分散液及び炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有する撥水撥油性成分が含まれる処理液Cに接触させる、工程を備え、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、エチレンオキシ基の含有割合が3質量%以下であり、
前記ピラゾールブロック疎水性ポリイソシアネートは、カルボキシレート基の含有割合が1質量%以下であり、
前記撥水撥油性成分が、炭素数が6以下のペルフルオロアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートと、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体である、機能性繊維製品の製造方法。
R(-NH-CO-Z)m ・・・(I)
[式(I)中、mは2以上の整数を示し、Rはm個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物からm個のイソシアネート基を除いた残基を示し、Zは同一でも異なっていてもよく、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有化合物から水素原子を除いた残基を示し、Zのうちの少なくとも2つは、下記一般式(II)で表されるピラゾール基であり、
前記活性水素含有化合物は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物、又は、
下記一般式(III)で表されるピラゾール化合物及びメチルエチルケトオキシム、エチレングリコール若しくはジメチロールプロピオン酸である。
【化2】

【化4】

{式(II)及び(III)中、nは0?3の整数を示し、nが1以上の場合、R^(1)は同一であっても異なっていてもよく、炭素数1?6のアルキル基、炭素数2?6のアルケニル基、炭素数7?12のアラルキル基、N-置換カルバミル基、フェニル基、-NO_(2)又はハロゲン原子を示す。}]
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-12-12 
結審通知日 2018-12-17 
審決日 2019-01-15 
出願番号 特願2010-172120(P2010-172120)
審決分類 P 1 113・ 113- YAA (C09K)
P 1 113・ 536- YAA (C09K)
P 1 113・ 121- YAA (C09K)
P 1 113・ 537- YAA (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福山 則明松波 由美子  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 日比野 隆治
阪▲崎▼ 裕美
登録日 2015-08-07 
登録番号 特許第5789090号(P5789090)
発明の名称 撥水撥油剤組成物、機能性繊維製品及び機能性繊維製品の製造方法  
代理人 清水 義憲  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 財部 俊正  
代理人 財部 俊正  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 吉住 和之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 財部 俊正  
代理人 清水 義憲  
代理人 吉住 和之  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 吉住 和之  

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