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審決分類 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  B07C
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B07C
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B07C
審判 全部無効 2項進歩性  B07C
管理番号 1352644
審判番号 無効2013-800038  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-03-08 
確定日 2019-07-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第4920841号「果菜自動選別装置用果菜載せ体と、果菜自動選別装置と、果菜自動選別方法」の特許無効審判事件についてされた平成26年 2月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成26年(行ケ)第10071号、平成26年12月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第4920841号の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4920841号(以下、「本件特許」という。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成13年8月16日に特許出願され、その請求項1ないし8に係る発明について、平成24年2月10日に特許権の設定登録がされたものである。
そして、請求人 澁谷工業株式会社(以下、単に「請求人」という。)より、被請求人 日本協同企画株式会社(以下、単に「被請求人」という。)が特許権者である本件特許に対して本件特許無効審判が請求されたところ、本件特許無効審判に係る手続の経緯は、概略以下のとおりである。

平成25年 3月 8日 請求人より特許無効審判の審判請求書の提出
同年 6月 3日 被請求人より審判事件答弁書(以下、「答弁書」
という。)の提出
同年 9月30日 請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書の
提出
同年10月21日 第1回口頭審理
平成26年 2月21日付け審決(以下、「一次審決」という。)
同年12月24日 一次審決を取消す平成26年(行ケ)第1007
1号判決言渡
平成27年12月15日 平成27年(行ノ)第10001号上告受理申立
却下
同年12月22日 被請求人より訂正請求申立書の提出
平成28年 1月 7日 審理再開通知及び訂正請求のための期間指定通知
の発送
同年 1月18日 被請求人より訂正請求書及び訂正明細書の提出
同年 2月10日 訂正請求書副本の送付通知の発送
同年 3月11日 請求人より審判事件弁駁書の提出
同年 7月14日付け審決の予告
同年 9月17日 被請求人より訂正請求書及び訂正明細書の提出
同年11月18日 請求人より審判事件弁駁書(以下、「弁駁書」
という。)の提出
同年12月28日付け訂正拒絶理由通知
平成29年 2月 6日 被請求人により意見書、平成28年9月17日
付け訂正請求書における請求の理由を補正する
補正書及び審判事件答弁書の提出

なお、本件特許について、本件審判の請求人は、同被請求人を被請求人として、平成24年4月19日に無効審判(無効2012-800056号。以下、「前回無効審判事件」という。)を請求し、同無効審判の審決は、請求人及び被請求人に平成25年2月15日に送達され、既に確定している(確定日は同年3月18日。以下、同無効審判の審決を「前回審決」という。)。

当審注:以下の請求人又は被請求人の提出した書類の摘記箇所について、太字等の文字飾りを除し、アンダーラインは一重線に統一し、さらに、各段落における記載の開始位置を改めた。


第2 訂正の請求について
1 訂正の請求の趣旨及び訂正の内容
平成28年7月14日付けで審決の予告がされたところ、被請求人(訂正の請求についての請求人)が平成28年9月17日提出の訂正請求書(以下、単に「訂正請求書」ともいう。)により請求する訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件審判請求時(すなわち、平成23年12月5日に提出された手続補正書により補正された時)の本件出願の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)における特許請求の範囲を、同訂正請求書に添付した訂正明細書における特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし8について訂正を求めるものであって、請求項1ないし5からなる一群の請求項に係る訂正(以下、「本件訂正1」という。)及び請求項6ないし8からなる一群の請求項に係る訂正(以下、「本件訂正2」という。)を求めるものである。
そして、特許明細書における特許請求の範囲の請求項1ないし8は、下記の第3に示すとおりであり、訂正明細書における特許請求の範囲の請求項1ないし8は、下記(A)に示すとおりであり、また、本件訂正1及び2の内容は、下記の(1)及び(2)に示すとおりである(下線は訂正箇所を示すために被請求人が付したものである。)。
なお、被請求人によってされた平成28年1月18日提出の訂正請求書による請求項1ないし8についての訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定に基づき、本件訂正の請求により取り下げたものとみなす。

(A)訂正明細書における特許請求の範囲の請求項1ないし8
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 削除
【請求項2】 削除
【請求項3】
果菜載せ体が無端チェーンに多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて、果菜搬送ラインの搬送方向一側方のみに配置された果菜引受け体に送り出す果菜自動選別装置において、
前記無端チェーンは、果菜載せ体の果菜送り出し方向先方側の無端チェーンと、果菜送り出し方向後方側の無端チェーンの少なくとも二本であり、それら両無端チェーンは果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されており、
前記果菜載せ体はフレームと、果菜搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトと、搬送ベルトに連結された駆動ピンとを備えた往復回転式のベルトコンベアであり、
前記フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラーが回転自在に取り付けられ、先方側の回転ローラーの少なくとも一部は前記フレームの果菜引受け体側の端部よりも果菜引受け体側に突出し、かつ前記先方側の無端チェーンよりも果菜引受け体側に突出しており、
前記フレームは、少なくとも、その果菜送り出し方向先方側の2カ所が前記先方側の無端チェーンに取り付けられ、その果菜送り出し方向後方側の2カ所が前記後方側の無端チェーンに取り付けられており、前記多数の果菜載せ体は、その走行方向に一列に並んでおり、
前記フレームは、その底面に果菜送り出し方向に細長の開口を備え、その開口の短い側の幅は前記駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大きく、当該開口の駆動ピンの移動領域において均一幅又は略均一幅であり、
前記搬送ベルトは、前記先方側の回転ローラーと、前記後方側の回転ローラーの外周に平坦にリング状にして巻いてあり、その上側部分が常に前記回転ローラーの外周に沿って平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であり、前記往復回転のうち往回転は搬送ベルトの上面が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回転であり、復回転は搬送ベルトの上面が当該往回転と反対方向に移動する回転であり、
前記搬送ベルトの上側部分であって、その往回転方向ほぼ中央部分に、果菜を載せることのできる受け部が設けられ、
前記搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記搬送ベルトに連結されて前記受け部よりも上方に突出しており、少なくともその果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻り、
前記駆動ピンは、その下端側が前記開口を貫通してフレームの底面の下方に突出しており、前記果菜載せ体が前記無端チェーンの走行により搬送方向に移動すると、果菜搬送ラインの下側に設けられている往ガイドに沿って前記開口内の一端側から他端側へ移動し、この移動により前記搬送ベルトを往回転させて搬送ベルトの受け部の上の果菜を前記果菜引受け体の上面が平坦又は略平坦であるベルトの上に水平又は略水平に送り出すことができ、前記搬送ベルトの移動量は前記駆動ピンの移動量と同じ又は略同じであり、
前記駆動ピンは、果菜送り出し後に無端チェーンの走行により前記果菜載せ体が移動すると、復ガイドに沿って前記開口内を移動し、この移動により、前記搬送ベルトを復回転させて前記搬送ベルトの受け部及び仕切り体を元の位置に戻すことができ、
前記果菜引受け体の前記ベルトは、上面に果菜を受ける窪みがない平坦又は略平坦である平面状のベルトであり、
前記果菜引受け体は、そのベルトの上面が前記果菜載せ体の搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平になるよう配置されており、
前記多数の果菜載せ体は前記無端チェーンの走行によりその走行方向に移動して、搬送ベルトの受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して計測部を通過するように果菜を搬送でき、
前記計測部はカメラ等の計測装置を備え、果菜搬送ラインに設置されており、前記果菜載せ体の受け部の上に載せられて果菜搬送ラインの搬送方向に一列又は略一列に並んで搬送される果菜の少なくとも形状又はサイズを前記計測装置のカメラ等で計測して等階級等を判別することができ、
前記果菜搬送ラインの下側には、往ガイドと復ガイドが設けられ、
前記果菜載せ体は、果菜搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方の前記果菜引受け体の前記ベルトの上に水平又は略水平に送り出し、
前記果菜引受け体は、前記果菜載せ体の搬送ベルトの往回転により当該果菜引受け体へ果菜が送り出される度に、前記ベルトを果菜搬送ラインの搬送方向側方であって前記果菜が送り込まれる方向に回転させて、そのベルトの回転により前記果菜載せ体の搬送ベルトから送り出される果菜を当該ベルトの上面に引き寄せて水平又は略水平に乗り移らせ、果菜載せ体から果菜が送り出されないときは前記ベルトを回転させず、この繰り返しにより前記ベルトの上面に二以上の果菜をプールすることができるものであり、
前記果菜を送り出した前記果菜載せ体の搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転することができる、
ことを特徴とする果菜自動選別装置。
【請求項4】
請求項3記載の果菜自動選別装置において、複数の果菜引受け体が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜引受け体は搬送方向に間隔をあけて配置され、往ガイドが前記複数の果菜引受け体ごとに配置され、前記往ガイドは果菜搬送ラインの搬送方向に対して斜めであり、それら往ガイドの始端がそれぞれの果菜引受け体のベルトより果菜搬送ラインの搬送方向手前から始まり、果菜載せ体から送り出される果菜が前記果菜引受け体のベルトの上にプールされることを特徴とする果菜自動選別装置。
【請求項5】削除
【請求項6】
果菜載せ体が無端チェーンに多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて果菜搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別方法において、
前記果菜自動選別方法に請求項3記載の果菜自動選別装置を使用し、
果菜載せ体を間隔をあけて平行に配置された無端チェーンの走行によりその走行方向に移動させ、
前記果菜搬送ラインの供給部において、果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に人手で果菜を一個ずつ載せ、
前記果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜の等階級等を判別し、
前記等階級等の判別は搬送中の果菜を一列又は略一列に整列させて計測部に搬送し、当該計測部に設けられたカメラ等の計測装置で果菜の少なくとも形状又はサイズを計測することにより行い、
果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、受け部及び仕切り体を同方向に移動させ、前記受け部の上の果菜を、搬送方向側方の果菜引受け体の果菜を受ける窪みがない平坦又は略平坦である平面状のベルトの上面に送り出し、
前記搬送ベルトの往回転は無端チェーンの走行により移動される果菜載せ体の駆動ピンが、往ガイドに沿って開口内をその一端側から他端側に移動することにより行われ、
前記搬送ベルトの上の果菜の送り出しは、搬送ベルトの前記往回転による水平又は略水平な送り出しであり、
果菜引受け体のベルトを、搬送ベルトから果菜が送り出される度に、果菜搬送ラインの搬送方向側方であって前記果菜が送り込まれる方向に回転させて、そのベルトの回転により前記果菜載せ体の搬送ベルトから送り出される当該果菜を前記ベルトの上面に引き寄せて水平又は略水平に乗り移らせ、果菜が送り出されないときは果菜引受け体のベルトを回転させず、この繰り返しにより前記ベルトの上面に二以上の果菜をプールし、
往回転した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部及び仕切り体を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べ、
搬送ベルトの前記戻り回転は、無端チェーンの走行により移動される果菜載せ体の駆動ピンが復ガイドに沿って前記開口内を移動することにより行われる、
ことを特徴とする果菜自動選別方法。
【請求項7】
請求項6記載の果菜自動選別方法において、判別結果に基づいて果菜載せ体から搬送方向側方に送り出される果菜を、果菜搬送ラインの搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の果菜引受け体にプールし、前記果菜載せ体からの果菜の送り出しは、当該果菜をプールする果菜引受け体のベルトよりも搬送方向手前側の位置から開始することを特徴とする果菜自動選別方法。
【請求項8】
請求項7記載の果菜自動選別方法において、果菜載せ体から果菜が送り出される度に果菜引受け体のベルトを10cm程度だけ回転させて、果菜載せ体の搬送ベルトから送り出される果菜を果菜引受け体のベルトの上に二以上プールさせることを特徴とする果菜自動選別方法。」

(1)本件訂正1(請求項1ないし5からなる一群の請求項に係る訂正)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「無端搬送体」とあるのを、「無端チェーン」と訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に「搬送ライン」とあるのを、「果菜搬送ライン」と訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置において、」とあるのを、「振り分けて、果菜搬送ラインの搬送方向一側方のみに配置された果菜引受け体に送り出す果菜自動選別装置において、」と訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「前記無端チェーンは、果菜載せ体の果菜送り出し方向先方側の無端チェーンと、果菜送り出し方向後方側の無端チェーンの少なくとも二本であり、それら両無端チェーンは果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されており、」との事項を付加する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜載せ体はフレームと、果菜搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトと、搬送ベルトに連結された駆動ピンとを備えた往復回転式のベルトコンベアであり、」との事項を付加する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラーが回転自在に取り付けられ、先方側の回転ローラーの少なくとも一部は前記フレームの果菜引受け体側の端部よりも果菜引受け体側に突出し、かつ前記先方側の無端チェーンよりも果菜引受け体側に突出しており、」との事項を付加する。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームは、少なくとも、その果菜送り出し方向先方側の2カ所が前記先方側の無端チェーンに取り付けられ、その果菜送り出し方向後方側の2カ所が前記後方側の無端チェーンに取り付けられており、前記多数の果菜載せ体は、その走行方向に一列に並んでおり、」との事項を付加する。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームは、その底面に果菜送り出し方向に細長の開口を備え、その開口の短い側の幅は前記駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大きく、当該開口の駆動ピンの移動領域において均一幅又は略均一幅であり、」との事項を付加する。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトは、前記先方側の回転ローラーと、前記後方側の回転ローラーの外周に平坦にリング状にして巻いてあり、その上側部分が常に前記回転ローラーの外周に沿って平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であり、前記往復回転のうち往回転は搬送ベルトの上面が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回転であり、復回転は搬送ベルトの上面が当該往回転と反対方向に移動する回転であり、」との事項を付加する。
シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトの上側部分であって、その往回転方向ほぼ中央部分に、果菜を載せることのできる受け部が設けられ、」との事項を付加する。
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記搬送ベルトに連結されて前記受け部よりも上方に突出しており、少なくともその果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻り、」との事項を付加する。
セ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項3に「前記駆動ピンは、その下端側が前記開口を貫通してフレームの底面の下方に突出しており、前記果菜載せ体が前記無端チェーンの走行により搬送方向に移動すると、果菜搬送ラインの下側に設けられている往ガイドに沿って前記開口内の一端側から他端側へ移動し、この移動により前記搬送ベルトを往回転させて搬送ベルトの受け部の上の果菜を前記果菜引受け体の上面が平坦又は略平坦であるベルトの上に水平又は略水平に送り出すことができ、前記搬送ベルトの移動量は前記駆動ピンの移動量と同じ又は略同じであり、」との事項を付加する。
ソ 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項3に「前記駆動ピンは、果菜送り出し後に無端チェーンの走行により前記果菜載せ体が移動すると、復ガイドに沿って前記開口内を移動し、この移動により、前記搬送ベルトを復回転させて前記搬送ベルトの受け部及び仕切り体を元の位置に戻すことができ、」との事項を付加する。
タ 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜引受け体の前記ベルトは、上面に果菜を受ける窪みがない平坦又は略平坦である平面状のベルトであり、」との事項を付加する。
チ 訂正事項17
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜引受け体は、そのベルトの上面が前記果菜載せ体の搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平になるよう配置されており、」との事項を付加する。
ツ 訂正事項18
特許請求の範囲の請求項3に「前記多数の果菜載せ体は受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して果菜を搬送でき、」とあるのを、「前記多数の果菜載せ体は前記無端チェーンの走行によりその走行方向に移動して、搬送ベルトの受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して計測部を通過するように果菜を搬送でき、」と訂正する。
テ 訂正事項19
特許請求の範囲の請求項3に「前記計測部はカメラ等の計測装置を備え、果菜搬送ラインに設置されており、前記果菜載せ体の受け部の上に載せられて果菜搬送ラインの搬送方向に一列又は略一列に並んで搬送される果菜の少なくとも形状又はサイズを前記計測装置のカメラ等で計測して等階級等を判別することができ、」との事項を付加する。
ト 訂正事項20
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜搬送ラインの下側には、往ガイドと復ガイドが設けられ、」との事項を付加する。
ナ 訂正事項21
特許請求の範囲の請求項3に「搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、」とあるのを、「前記果菜載せ体は、果菜搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方の前記果菜引受け体の前記ベルトの上に水平又は略水平に送り出し、」と訂正する。
ニ 訂正事項22
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜引受け体は、前記果菜載せ体の搬送ベルトの往回転により当該果菜引受け体へ果菜が送り出される度に、前記ベルトを果菜搬送ラインの搬送方向側方であって前記果菜が送り込まれる方向に回転させて、そのベルトの回転により前記果菜載せ体の搬送ベルトから送り出される果菜を当該ベルトの上面に引き寄せて水平又は略水平に乗り移らせ、果菜載せ体から果菜が送り出されないときは前記ベルトを回転させず、この繰り返しにより前記ベルトの上面に二以上の果菜をプールすることができるものであり、」との事項を付加する。
ヌ 訂正事項23
特許請求の範囲の請求項3に「送り出した前記搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転することを特徴とする果菜自動選装置。」とあるのを「前記果菜を送り出した前記果菜載せ体の搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転することができる、ことを特徴とする果菜自動選別装置。」と訂正する。
ネ 訂正事項24
特許請求の範囲の請求項4に「往ガイドが前記複数の果菜引受け体ごとに配置され、前記往ガイドは果菜搬送ラインの搬送方向に対して斜めであり、それら往ガイドの始端がそれぞれの果菜引受け体のベルトより果菜搬送ラインの搬送方向手前から始まり、」との事項を付加する。
ノ 訂正事項25
特許請求の範囲の請求項4に「果菜引受け体にプールされる」とあるのを「果菜引受け体のベルトの上にプールされる」と訂正する。
ハ 訂正事項26
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(2)本件訂正2(請求項6ないし8からなる一群の請求項に係る訂正)
ア 訂正事項27
特許請求の範囲の請求項6に「無端搬送体」とあるのを、「無端チェーン」と訂正する。
イ 訂正事項28
特許請求の範囲の請求項6に「搬送ライン」とあるのを、「果菜搬送ライン」と訂正する。
ウ 訂正事項29
特許請求の範囲の請求項6に「果菜自動選別送方法」とあるのを、「果菜自動選別方法」と訂正する。
エ 訂正事項30
特許請求の範囲の請求項6に「前記果菜自動選別方法に請求項3記載の果菜自動選別装置を使用し、」との事項を付加する。
オ 訂正事項31
特許請求の範囲の請求項6に「果菜載せ体を間隔をあけて平行に配置された無端チェーンの走行によりその走行方向に移動させ、」との事項を付加する。
カ 訂正事項32
特許請求の範囲の請求項6に「前記果菜搬送ラインの供給部において、果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に人手で果菜を一個ずつ載せ、」との事項を付加する。
キ 訂正事項33
特許請求の範囲の請求項6に「果菜載せ体」とあるのを「前記果菜載せ体」と訂正する。
ク 訂正事項34
特許請求の範囲の請求項6に「前記等階級等の判別は搬送中の果菜を一列又は略一列に整列させて計測部に搬送し、当該計測部に設けられたカメラ等の計測装置で果菜の少なくとも形状又はサイズを計測することにより行い、」との事項を付加する。
ケ 訂正事項35
特許請求の範囲の請求項6に「果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、」とあるのを「果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、受け部及び仕切り体を同方向に移動させ、前記受け部の上の果菜を、搬送方向側方の果菜引受け体の果菜を受ける窪みがない平坦又は略平坦である平面状のベルトの上面に送り出し、」と訂正する。
コ 訂正事項36
特許請求の範囲の請求項6に「前記搬送ベルトの往回転は無端チェーンの走行により移動される果菜載せ体の駆動ピンが、往ガイドに沿って開口内をその一端側から他端側に移動することにより行われ、」との事項を付加する。
サ 訂正事項37
特許請求の範囲の請求項6に「前記搬送ベルトの上の果菜の送り出しは、搬送ベルトの前記往回転による水平又は略水平な送り出しであり、」との事項を付加する。
シ 訂正事項38
特許請求の範囲の請求項6に「果菜引受け体のベルトを、搬送ベルトから果菜が送り出される度に、果菜搬送ラインの搬送方向側方であって前記果菜が送り込まれる方向に回転させて、そのベルトの回転により前記果菜載せ体の搬送ベルトから送り出される当該果菜を前記ベルトの上面に引き寄せて水平又は略水平に乗り移らせ、果菜が送り出されないときは果菜引受け体のベルトを回転させず、この繰り返しにより前記ベルトの上面に二以上の果菜をプールし、」との事項を付加する。
ス 訂正事項39
特許請求の範囲の請求項6に「往回動した搬送ベルト」とあるのを、「往回転した搬送ベルト」と訂正する。
セ 訂正事項40
特許請求の範囲の請求項6に「前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、」とあるのを、「前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部及び仕切り体を元の位置に戻して、」と訂正する。
ソ 訂正事項41
特許請求の範囲の請求項6に「、搬送ベルトの前記戻り回転は、無端チェーンの走行により移動される果菜載せ体の駆動ピンが復ガイドに沿って前記開口内を移動することにより行われる、」との事項を付加する。
タ 訂正事項42
特許請求の範囲の請求項7に「二以上の果菜引受け体にプールする」とあるのを「二以上の果菜引受け体にプールし、前記果菜載せ体からの果菜の送り出しは、当該果菜をプールする果菜引受け体のベルトよりも搬送方向手前側の位置から開始する」と訂正する。
チ 訂正事項43
特許請求の範囲の請求項8に「果菜引受け体を移動させて、」とあるのを「果菜引受け体のベルトを10cm程度だけ回転させて、」と訂正する。
ツ 訂正事項44
特許請求の範囲の請求項8に「送り出される果菜を果菜引受け体の上にプールさせる」とあるのを「果菜載せ体の搬送ベルトから送り出される果菜を果菜引受け体のベルトの上に二以上プールさせる」と訂正する。

2 被請求人(訂正の請求についての請求人)の訂正請求書における主張
ア 被請求人の主張の概要
被請求人は、訂正請求書において、本件訂正について概略次の主張をする。
(ア)本件訂正1について
a 訂正事項1ないし3、5ないし22及び24ないし26は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、訂正事項4及び23は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
b 訂正事項1ないし26は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
c 訂正事項1ないし3、5ないし22及び24ないし26は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、訂正事項4及び23は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項1ないし26は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
d 本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、訂正事項1ないし26に対して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

(イ)本件訂正2について
a 訂正事項27、30ないし32、34ないし38及び40ないし44は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、訂正事項28、29及び39は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、訂正事項33は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
b 訂正事項27ないし44は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
c 訂正事項27、30ないし38及び40ないし44は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、訂正事項28、29及び39は、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、訂正事項27ないし44は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
d 本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、訂正事項27ないし44に対して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。

イ 訂正事項6、9ないし13及び30についての主張
下記の4に示す訂正拒絶理由通知において対象とされた、訂正事項6、9ないし13及び30についての被請求人の訂正請求書における主張は次のとおりである。
(ア)訂正事項6についての主張
「(6)訂正事項6
a.訂正の目的について
前記訂正事項6は、「前記無端チェーンは、果菜載せ体の果菜送り出し方向先方側の無端チェーンと、果菜送り出し方向後方側の無端チェーンの少なくとも二本であり、それら両無端チェーンは果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されており、」との構成要件を付加するものである。訂正前の請求項3記載の特許発明では、無端チェーンの本数や配置について何ら特定されていない。これに対して、訂正後の請求項3記載の特許発明では、無端チェーンが、果菜載せ体の果菜送り出し方向先方側の無端チェーンと、果菜送り出し方向後方側の無端チェーンの少なくとも二本であること、及びそれら両無端チェーンが果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されていることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記訂正事項6は、構成要件を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
前記訂正事項6は、明細書の段落番号【0009】の「図1の1は図示されていない駆動機構により矢印a方向に進行されるチェーン(無端搬送帯)であり、平行して2本設けられている。」との記載、並びに図1、図2(a)?(c)、図3及び図6を根拠とするものである。図1、図2(a)?(c)、図3及び図6には、果菜送り出し方向先方側に一本、果菜送り出し方向後方側に一本の合計二本の無端チェーンが間隔をあけて平行に配置されていることが示されている。前記訂正事項6は、明細書の段落番号【0009】の前記記載、並びに図1、図2(a)?(c)、図3及び図6を根拠とするものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d.独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、前記訂正事項6に対して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。」(訂正請求書の第12ページ第22行ないし第14ページ第2行)

(イ)訂正事項9についての主張
「(9)訂正事項9
a.訂正の目的について
前記訂正事項9は、「前記フレームは、少なくとも、その果菜送り出し方向先方側の2カ所が前記先方側の無端チェーンに取り付けられ、その果菜送り出し方向後方側の2カ所が前記後方側の無端チェーンに取り付けられており、前記多数の果菜載せ体は、その走行方向に一列に並んでおり、」との構成要件を付加するものである。訂正前の請求項3記載の特許発明では、果菜載せ体がどこにどのように取り付けられているか特定されていない。これに対して、訂正後の請求項3記載の特許発明では、フレームが、少なくとも、その果菜送り出し方向先方側の2カ所が前記先方側の無端チェーンに取り付けられ、その果菜送り出し方向後方側の2カ所が前記後方側の無端チェーンに取り付けられていること、及び多数の果菜載せ体が、その走行方向に一列に並んでいることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項9は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記訂正事項9は、構成要件を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
前記訂正事項9は、明細書の段落番号【0009】の「図1の1は図示されていない駆動機構により矢印a方向に進行されるチェーン(無端搬送帯)であり、平行して2本設けられている。」との記載、同【0010】の「果菜載せ体2は、・・・2本のチェーン1に跨ぐようにして取り付けられるフレーム10があり、」との記載、並びに図1、図2(a)?(c)、図3及び図6を根拠とするものである。図1、図2(a)?(c)、図3及び図6には、果菜載せ体のフレーム10が間隔をあけて平行に配置された二本の無端チェーンに取り付けられて、その走行方向に一列に並んでいることが、図2(a)?(c)には、少なくとも、果菜送り出し方向先方側の2ヵ所が先方側の無端チェーン1に取り付けられ、後方側の2ヵ所が後方側の無端チェーン1に取り付けられていることが示されている。したがって、前記訂正事項9は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d.独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、前記訂正事項9に対して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。」(訂正請求書の第17ページ第11行ないし第18ページ第23行)

(ウ)訂正事項10についての主張
「(10)訂正事項10
a.訂正の目的について
前記訂正事項10は、「前記フレームは、その底面に果菜送り出し方向に細長の開口を備え、その開口の短い側の幅は前記駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大きく、当該開口の駆動ピンの移動領域において均一幅又は略均一幅であり、」との構成要件を付加するものである。訂正前の請求項3記載の特許発明では、果菜載せ体のフレームについて何ら特定されていない。これに対して、訂正後の請求項3記載の特許発明では、フレームが、その底面に果菜送り出し方向に細長の開口を備えていること、その開口の短い側の幅が前記駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大きいこと、及び当該開口のうち駆動ピンの移動領域において均一幅又は略均一幅であることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項10は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記訂正事項10は、構成要件を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
前記訂正事項10は、明細書の段落番号【0011】の「この駆動ピン14は、フレーム10の幅方向に細長いスリット状の長穴15を貫通してフレーム10の下側に突き出している。」との記載、及び図2(a)を根拠とするものである。図2(a)には細長の開口が示され、その開口の短い側の幅が前記駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大きいこと、及び当該開口の駆動ピンの移動領域において均一幅又は略均一幅であることが示されている。したがって、前記訂正事項10は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d.独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、前記訂正事項10に対して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。」(訂正請求書の第18ページ第24行ないし第19ページ第27行)

(エ)訂正事項11についての主張
「(11)訂正事項11
a.訂正の目的について
前記訂正事項11は、「前記搬送ベルトは、前記先方側の回転ローラーと、前記後方側の回転ローラーの外周に平坦にリング状にして巻いてあり、その上側部分が常に前記回転ローラーの外周に沿って平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であり、前記往復回転のうち往回転は搬送ベルトの上面が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回転であり、復回転は搬送ベルトの上面が当該往回転と反対方向に移動する回転であり、」との構成要件を付加するものである。訂正前の請求項3記載の特許発明では、搬送ベルトの具体的な構成、及び往復回転がどのような回転であるかについて何ら特定されていない。これに対して、訂正後の請求項3記載の特許発明では、搬送ベルトが先方側の回転ローラーと、後方側の回転ローラーの外周に平坦にリング状にして巻かれていること、その上側部分が常に前記回転ローラーの外周に沿って平坦にリング状にして巻いてあること、その搬送ベルトの上側部分が常に前記回転ローラーの外周に沿って平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であること、搬送ベルトの移動量は駆動ピンの移動量と同じ又は略同じであること、往復回転のうち往回転は搬送ベルトの上面が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回転であること、及び復回転は搬送ベルトの上面が当該往回転と反対方向に移動する回転であることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項11は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記訂正事項11は、構成要件を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
前記訂正事項11のうち「前記搬送ベルトは、前記先方側の回転ローラーと、前記後方側の回転ローラーの外周に平坦にリング状にして巻いてあり」は、明細書の段落番号【0010】の「これら回転ローラ11a、11bにステンレス製の搬送ベルト12が回転自在なるように掛け渡されている。」との記載、及び図2(b)を根拠とするものである。図2(b)には、回転ローラの外周に平坦にリング状にして巻かれた搬送ベルトが示されている。前記訂正事項11のうち「その上側部分が常に前記回転ローラーの外周に沿って平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であり、」は、明細書の段落番号【0020】の「果菜載せ体2が、無端搬送帯1に連結されるフレーム10と、同フレーム10の左右2ケ所に取付けられた回転自在の回転ローラー11a、11bと、これら回転ローラー11a、11b間に架け渡された搬送ベルト12と、同搬送ベルト12の下側部分のベルトに下向きに突設された駆動ピン14とを備え、同ピン14を果菜載せ体2の下側に設けられたガイドレール20により果菜載せ体2の搬送方向と直交する左右方向にスライドさせて搬送ベルト12を往復駆動可能とした・・・」との記載、及び図2(a)(b)を根拠とするものである。図2(a)には、上側部分が弛まずに平坦又は略平坦な状態である搬送ベルト12が示されている。また、搬送ベルトの上側部分が平坦又は略平坦な状態であることに加え、明細書の段落番号【0019】に「果菜載せ体2から果菜引受け体4への果菜3の乗り換えが平行移動となり、」と記載されていることから、搬送ベルト12の上側部分が水平又は略水平に移動するように往復回転することも明らかである。図2(b)には、二つの回転ローラの外周に搬送ベルトが弛みなく一周巻かれていることが示されている。前記訂正事項11のうち「前記往復回転のうち往回転は搬送ベルトの上面が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回転であり、復回転は搬送ベルトの上面が当該往回転と反対方向に移動する回転であり、」は明細書の段落番号【0013】の「図1、図2、図3には、果菜載せ体2の搬送ベルト12を図2(a)の矢印b方向に動かす斜めガイドレール20だけを示したが、本発明の装置には矢印b方向に進行させた搬送ベルト12をもとの位置に戻すための逆傾斜のガイドレールも備えられている。」との記載、図1及び図2(a)(b)を根拠とするものである。図1及び図2(a)(b)には、果菜引受け体方向を指す矢印bが示されている。この記載から、往回転が果菜引受け体方向へ向けての回転であり、復回転が当該矢印bと反対方向への回転であることは明らかである。前記訂正事項11は、明細書の段落番号【0010】【0012】【0013】【0019】【0020】図1及び図2(a)(b)を根拠とするものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d.独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、前記訂正事項11に対して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。」(訂正請求書の第19ページ第28行ないし第22ページ第15行)

(オ)訂正事項12についての主張
「(12)訂正事項12
a.訂正の目的について
前記訂正事項12は「搬送ベルトの上に果菜を載せることのできる受け部が設けられ、」との記載を、「前記搬送ベルトの上側部分であって、その往回転方向ほぼ中央部分に、果菜を載せることのできる受け部が設けられ、」と訂正するものである。訂正前の請求項3記載の特許発明では、受け部について、搬送ベルトの上に設けられていること以外何ら特定されていない。これに対して、訂正後の請求項3記載の特許発明では、受け部が、搬送ベルトの上側部分であって、その往回転方向ほぼ中央部分に設けられていることを特定することで特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
なお、訂正事項12のうち「前記搬送ベルトの上・・・に・・・果菜を載せることのできる受け部が設けられ、」の部分は、請求項1の削除に伴って書き下した部分である。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
前記訂正事項12は、図2(a)?(c)を根拠とするものである。図2(a)は果菜載せ体の平面図、図2(b)は図2(a)のB-B断面図である。図2(a)(b)には、果菜が搬送ベルトの上側部分であって、その往回転方向ほぼ中央部分に載っていることが示されており、当該部分が果菜を載せることのできる受け部であることは明らかである。前記訂正事項12は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d.独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、前記訂正事項12に対して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。」(訂正請求書の第22ページ第16行ないし第23ページ第20行)

(カ)訂正事項13についての主張
「(13)訂正事項13
a.訂正の目的について
前記訂正事項13は、「前記搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記搬送ベルトに連結されて前記受け部よりも上方に突出しており、少なくともその果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻り、」との構成要件を付加するものである。訂正前の請求項3記載の特許発明では、仕切り体の具体的な構成及びその位置については何ら特定されていない。これに対して、訂正後の請求項3記載の特許発明では、仕切り体が、搬送ベルトに連結されて前記受け部よりも上方に突出していること、少なくともその果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置していること、及び搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻ることを明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項13は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
なお、訂正事項13のうち「前記搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、・・・搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻り、」の部分は、請求項1の削除に伴って書き下した部分である。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記訂正事項13は、構成要件を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
前記訂正事項13は、明細書の段落番号【0010】の「搬送ベルト12の上側部分には、ゴム製の仕切り部材17が取付けられている。」との記載、同【0020】の「搬送ベルト12を往復駆動可能とした」との記載、及び図2(a)(b)を根拠とするものである。図2(a)は果菜載せ体の平面図、図2(b)は図2(a)におけるB-B断面図である。これらの図から、仕切り体が、搬送ベルトに連結されて前記受け部よりも上方に突出していること、及び仕切り体17の少なくとも果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置していることが把握できる。また、仕切り体は搬送ベルトに連結されているため、搬送ベルトの往回転に伴って往方向に移動し、復回転に伴って復方向に移動することは明らかである。前記訂正事項13は、明細書の段落番号【0010】【0020】及び図2(a)(b)を根拠とするものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d.独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、前記訂正事項13に対して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。」(訂正請求書の第23ページ第21行ないし第25ページ第10行)

(キ)訂正事項30についての主張
「(30)訂正事項30
a.訂正の目的について
前記訂正事項30は、「前記果菜自動選別方法に請求項3記載の果菜自動選別装置を使用し、」との構成要件を付加するものである。訂正前の請求項6記載の特許発明では、果菜自動選別方法に使用される果菜自動選別装置については何ら特定されていない。これに対して、訂正後の請求項6記載の特許発明では、果菜自動選別方法に使用される果菜自動選別装置を特定することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項30は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
前記訂正事項30は、構成要件を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
c.願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
前記訂正事項30は、明細書の全趣旨から明らかなものである。本件明細書には、訂正後の請求項3記載の果菜自動選別装置が開示されている。また、本件明細書には、訂正後の請求項3記載の果菜自動選別装置を用いた果菜自動選別方法が開示されている。したがって、前記訂正事項30は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
d.独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、前記訂正事項30に対して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は適用されない。」(訂正請求書の第50ページ第14行ないし第51ページ第13行)

3 請求人の弁駁書における主張の概要
請求人は、弁駁書において、本件訂正について概略次の主張をする。
(1)本件訂正1について
訂正事項6、8、9、10、12、13及び16は、本件出願の願書に添付した明細書又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第134条の2第9項が準用する同法第126条第5項に違反するものであり、また、同法第134条の2第1項ただし書で規定する事項を目的とするものではない。
よって、本件訂正1は、訂正要件を満たすものではないので認められるべきではない。
(弁駁書第9ページ第13行ないし第18ページ第18行)

(2)本件訂正2について
訂正事項35は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、同法第134条の2第9項が準用する同法第126条第5項に違反するものであり、且つ同法第134条の2第1項ただし書で規定する事項を目的とするものではない。
よって、本件訂正2は、訂正要件を満たすものではないので認められるべきではない。
(弁駁書第18ページ第19行ないし第19ページ第15行)

4 平成28年12月28日付けで通知された訂正拒絶理由
平成28年12月28日付けで通知された訂正拒絶理由の内容は、概略次のとおりである。
「本件審判の手続において、平成28年9月17日付け(受理日:同年9月20日)で被請求人が行った、願書に添付した明細書の訂正の請求は、合議の結果、以下の理由によって拒絶すべきものです。これについて意見がありましたら、この通知の発送の日から30日以内に意見書の正本1通及びその副本2通を提出してください。
なお、引用関係の解消を目的とする訂正を含む場合であって、引用先の請求項の訂正が認められるときは、引用元の請求項とは別の請求単位として扱われるよう求めることができます。引用関係の解消を求めることが必要であって、その求めを訂正請求書に記載していないときは、意見書において引用関係の解消を求める旨を記載してください。審判便覧(特許庁HP掲載)38-01も参照してください。

理 由

1 対象となる訂正の内容
平成28年9月17日提出の訂正請求書による訂正の内容は、特許第4920841号の願書に添付した明細書の特許請求の範囲を、平成28年9月17日提出の訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし8について訂正することを求めるものであって、請求項1ないし5からなる一群の請求項に係る訂正(以下、「本件訂正1」という。)は、次の(1)ないし(6)に示す訂正事項を含み、請求項6ないし8からなる一群の請求項に係る訂正(以下、「本件訂正2」という。)は、次の(7)に示す訂正事項を含むものである。
・・・略・・・
2 当審の判断
・・・略・・・
(1)訂正事項6について
ア 特許明細書等において、訂正事項6に関連する記載は以下のとおりである。
(ア)「【0002】
【従来の技術】
トマトなどの果菜を選別する装置は従来より各種のものがあった。
図6はその一例で、無端搬送帯(チェーン)1に多数の受け皿2が連結されており、各受け皿2は搬送方向横向きに可倒式となっている。」(段落【0002】)

(イ)「【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の果菜自動選別装置の実施形態を部分的に示した平面図であり、トマトを選別する場合の例である。図1の1は図示されていない駆動機構により矢印a方向に進行されるチェーン(無端搬送帯)であり、平行して2本設けられている。図1の2は、トマト3を載せて搬送する果菜載せ体であり、前記チェーン1に一列に等間隔で連結されており、図中の矢印a方向に進行するようになっている。」(段落【0009】)

(ウ)「【0010】
前記図1の果菜載せ体2は、詳細を図2(a)?(c)に示すように、2本のチェーン1に跨ぐようにして取り付けられるフレーム10があり、このフレーム10の幅方向両端に回転ローラー11a、11bが回転自在に取付けられ、これら回転ローラ11a、11bにステンレス製の搬送ベルト12が回転自在なるように掛け渡されている。」(段落【0010】)

イ 特許明細書等における上記ア(ア)ないし(ウ)並びに図1ないし3及び6の記載によると、「無端チェーンは、果菜載せ体の果菜送り出し方向先方側の無端チェーンと、果菜送り出し方向後方側の無端チェーンの二本であり、それら両無端チェーンは果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されて」いることは、特許明細書等に記載されているといえる。
しかしながら、「無端チェーン」が、「少なくとも二本」であることは、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

ウ 被請求人は、訂正請求書(13ページ18行ないし14ページ2行)において、訂正事項6については、特許明細書等の段落【0009】並びに図1、図2(a)?(c)、図3及び図6を根拠とするものである旨主張する。
しかしながら、「無端チェーン」については、上記イで述べたとおり、特許明細書等には、果菜載せ体の果菜送り出し方向先方側の無端チェーンと、果菜送り出し方向後方側の無端チェーンの二本であることが記載されているものの、三本又はそれ以上を含む「少なくとも二本」であることは記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

エ そうすると、訂正事項6は、特許明細書等に記載されておらず、しかも、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえないのであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえず、特許明細書等の記載の範囲内においてしたものとはいえない。

(2)訂正事項9について
ア 特許明細書等において、訂正事項9に関連する記載は以下のとおりである。
(ア)「【0002】
【従来の技術】
トマトなどの果菜を選別する装置は従来より各種のものがあった。
図6はその一例で、無端搬送帯(チェーン)1に多数の受け皿2が連結されており、各受け皿2は搬送方向横向きに可倒式となっている。」(段落【0002】)

(イ)「【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の果菜自動選別装置の実施形態を部分的に示した平面図であり、トマトを選別する場合の例である。図1の1は図示されていない駆動機構により矢印a方向に進行されるチェーン(無端搬送帯)であり、平行して2本設けられている。図1の2は、トマト3を載せて搬送する果菜載せ体であり、前記チェーン1に一列に等間隔で連結されており、図中の矢印a方向に進行するようになっている。」(段落【0009】)

(ウ)「【0010】
前記図1の果菜載せ体2は、詳細を図2(a)?(c)に示すように、2本のチェーン1に跨ぐようにして取り付けられるフレーム10があり、このフレーム10の幅方向両端に回転ローラー11a、11bが回転自在に取付けられ、これら回転ローラ11a、11bにステンレス製の搬送ベルト12が回転自在なるように掛け渡されている。」(段落【0010】)

イ 特許明細書等における上記ア(ア)ないし(ウ)並びに図1ないし3及び6の記載によると、「フレームは、その果菜送り出し方向先方側が前記先方側の無端チェーンに取り付けられ、その果菜送り出し方向後方側が前記後方側の無端チェーンに取り付けられており、多数の果菜載せ体は、その走行方向に一列に並んで」いることは、特許明細書等に記載されているといえる。
しかしながら、「フレーム」が、「少なくとも、その果菜送り出し方向先方側の2カ所が先方側の無端チェーンに取り付けられ、その果菜送り出し方向後方側の2カ所が後方側の無端チェーンに取り付けられて」いることは、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

ウ 被請求人は、訂正請求書(18ページ9行ないし同ページ25行)において、訂正事項9については、特許明細書等の段落【0009】並びに図1、図2(a)?(c)、図3及び図6を根拠とするものである旨主張する。
しかしながら、特許明細書等の図2(c)において、チェーン1がフレーム10の底部に2ヶ所で接している態様が記載されているが、図2(c)はフレーム10をチェーン1が延びる進行方向に沿って切断した場合の断面であり、チェーン1はフレーム10の底部の全長に亘って位置するはずであり、図2(c)における上記態様が誤りであることは明であるから、「フレーム」における「果菜送り出し方向先方側」の「先方側の無端チェーン」に対する取付箇所及び「果菜送り出し方向後方側」の「後方側の無端チェーン」に対する取付箇所については、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

エ そうすると、訂正事項9は、特許明細書等に記載されておらず、しかも、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえないのであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえず、特許明細書等の記載の範囲内においてしたものとはいえない。

(3)訂正事項10について
ア 特許明細書等において、訂正事項10に関連する記載は以下のとおりである。
「【0011】
前記搬送ベルト12の下側部分に位置しているベルトには同搬送ベルト12を回転駆動するために設ける駆動ピン14が下向きに突接されている。この駆動ピン14は、フレーム10の幅方向に細長いスリット状の長穴15を貫通してフレーム10の下側に突き出している。この駆動ピン14の下端は、図1、3に示す果菜引受け体4が設けられている各個所の果菜載せ体2の走行ライン下側に設けられている各斜めガイドレール20と図2(c)に示すように接触可能となっており、ガイドレール20に沿って移動することができるようになっている。
【0012】
図1、図3の各斜めガイドレール20の先端には、図2(a)に示すように、ソレノイドやエアシンリンダなどのデバイスにより回動されて状態Aと状態Bとに高速に切り替えられる切替えピン21が設けられており、状態Dにあるときは駆動ピン14は斜めガイドレール20に接触せずにそのまま直進し、状態Cにあるときは切替えピン21に接触して同ピン21を通じて斜めガイドレール20に乗り移り、この斜めガイドレール20によって駆動ピン14が搬送方向横方向に横スライドされて、搬送ベルト12を回転させるようになっている。斜めガイドレール20による駆動ピン14のスライド量は12cm程度を得られるようにしてあり、搬送ベルト12を12cm程度回転させてその上のトマト3を回転ローラー11a側の端部から確実に排出できるようにしてある。この斜めガイドレール20は、各プール用ベルトコンベア4の少し手前側位置から始まり、同引受け体4の幅方向中央部分くらいで終端するようになっており、プール用ベルトコンベア4の少し手前からトマト3を横送りし始めて、同プール用ベルトコンベア4のちょうど幅中央の位置でトマト3をプール用ベルトコンベア4に乗り移すことができるようにしてある。」(段落【0011】及び【0012】)

イ 特許明細書等における上記ア及び図1ないし3の記載によると、「フレームは、その底面に果菜送り出し方向に細長の開口を備え、当該開口の駆動ピンの移動領域において均一幅又は略均一幅であ」ることは、特許明細書等に記載されているといえる。
しかしながら、「フレーム」の「開口」について、「その開口の短い側の幅は駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大き」いことは、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

ウ 被請求人は、訂正請求書(19ページ23行ないし23ページ5行)において、訂正事項10は、特許明細書等の段落【0011】の記載並びに図2(a)の記載を根拠とする旨主張する。
ここで、訂正請求書の7.II.(1)[1](サ)における「フレーム底面に設けた細長の開口の短い方の幅(開口におけるピンの移動方向に直交する方向の幅)を、駆動ピンのうち当該開口を通過する部分の幅(果菜搬送ラインの搬送方向の幅)よりもわずかに大きいだけとし、往ガイド、復ガイドに案内されて開口内を駆動ピンが移動する際、当該開口により駆動ピンの横ブレが少なくなるようにしてあること。」(訂正請求書76ページ14行ないし同ページ18行)との記載及び訂正請求書の7.II.(1)[2]オ.における「本件発明3は、フレーム底面に設けられた細長い開口の開口幅が、開口の駆動ピンが移動する領域において均一又は略均一であって、駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大きい。ここで、「わずかに大きい」とは、本件特許公報の図2(a)から明らかなように、駆動ピンが開口内を移動可能とする大きさで、駆動ピンが往ガイド又は復ガイドに沿って移動するときに、当該駆動ピンが横ブレしないように案内できる程度のものであることを意味する。」(訂正請求書87ページ16行ないし同ページ22行)との記載によれば、「フレーム」の「開口」を、「その開口の短い側の幅は駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大き」い状態とすることにより、駆動ピンの横ブレを低減する作用効果を奏するものとされている。
しかしながら、特許明細書等の段落【0011】及び図2(a)には、「フレーム」の「開口」が、駆動ピン14が貫通して搬送方向横方向に横スライド可能なように、フレーム10の幅方向に細長いスリット状の長穴15とされていることが記載されているにすぎず、「フレーム」の「開口」が、上記作用効果を奏するように「その開口の短い側の幅は駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大き」い状態とすることについては、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項あるともいえない。

エ そうすると、訂正事項10は、特許明細書等に記載されておらず、しかも、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえないのであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえず、特許明細書等の記載の範囲内においてしたものとはいえない。

(4)訂正事項11について
ア 特許明細書等において、訂正事項11に関連する記載は以下のとおりである。
(ア)「【請求項1】
・・・略・・・ 果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置の果菜載せ体において、
果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え、搬送ベルトの上に果菜を載せることのできる受け部が設けられ、搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻ることを特徴とする果菜自動選別装置用果菜載せ体。
【請求項2】
請求項1記載の果菜自動選別装置用果菜載せ体において、搬送ベルトの受け部が、果菜を載せることのできる受け部材を備えたことを特徴とする果菜自動選別装置用果菜載せ体。
【請求項3】
・・・略・・・ 果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置において、
・・・略・・・ 搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、送り出した前記搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転することを特徴とする果菜自動選装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】)

(イ)「【請求項6】
・・・略・・・ 果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別送方法において、
果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、 ・・・略・・・ 果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べることを特徴とする果菜自動選別方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項6】)

(ウ)「【0006】
・・・略・・・ 果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置の果菜載せ体において、果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え、搬送ベルトの上に果菜を載せることのできる受け部が設けられ、搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻るものである。搬送ベルトの受け部が、果菜を載せることのできる受け部材を備えたものとすることもできる。
【0007】
・・・略・・・ 果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置において、 ・・・略・・・搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、送り出した前記搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転するものである。 ・・・略・・・
【0008】
・・・略・・・ 果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別送方法において、果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、 ・ ・・・略・・・ 果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べるものである。 ・・・略・・・」(段落【0006】ないし【0008】)

(エ)「【0010】
前記図1の果菜載せ体2は、詳細を図2(a)?(c)に示すように、2本のチェーン1に跨ぐようにして取り付けられるフレーム10があり、このフレーム10の幅方向両端に回転ローラー11a、11bが回転自在に取付けられ、これら回転ローラ11a、11bにステンレス製の搬送ベルト12が回転自在なるように掛け渡されている。この搬送ベルト12の上側部分に位置しているベルトの表面にはトマト3を載せ置くための受皿状の受け部材13が取付けられている。同受け部材13は可撓性に富む弾性材で作成され、回転ローラー11aを曲がる際には、搬送ベルト12と共に抵抗なく曲がるようになっている。受け部材13は10cm程度の直径があり、大きなトマト3も無理なく載せることができるようになっている。また弾性があるため、載せたトマト3が痛まず、また搬送中の振動も吸収されるので痛まない。一方、搬送ベルト12の上側部分には、ゴム製の仕切り部材17が取付けられている。また、上側搬送ベルト12の裏にはフレーム10に固定されて板材16が配置されており、搬送ベルト12上のトマト3の荷重はこの板材16で受けることができるようにしてある。なお、荷重が多めにかかるような場合は、この部分に回転自在なフリーローラを敷き詰めるようにしてもよい。」(段落【0010】)

(オ)「【0011】
前記搬送ベルト12の下側部分に位置しているベルトには同搬送ベルト12を回転駆動するために設ける駆動ピン14が下向きに突接されている。 ・・・略・・・
【0012】
・・・略・・・ 斜めガイドレール20による駆動ピン14のスライド量は12cm程度を得られるようにしてあり、搬送ベルト12を12cm程度回転させてその上のトマト3を回転ローラー11a側の端部から確実に排出できるようにしてある。 ・・・略・・・」(段落【0011】及び【0012】)

(カ)「【0014】
(他の実施形態)
図4に示すように、図2の搬送ベルト12の上側部分のベルト面に直径2、3cm程度の丸穴31を開口し、同穴31と一致させて受け皿型の受け部材13にも同様の丸穴30を開口して、トマト3を載せる部分の中央に一連の丸穴30、31ができるようにすることができる。 ・・・略・・・
【0015】
図2の搬送ベルト12に設ける受け部材13は、図5に示すように、搬送ベルトの進行方向と直行する方向に多数の横溝32を形成することにより、受け部材13が回転ローラー11aを回転する際の可撓性を高めることもできる。
・・・略・・・
【0017】
図2の搬送ベルト12としては、ステンレス製のもの以外でも、一般的な布製のベルトを用いることができ、また特殊な例としては、短冊状樹脂部材を多数連結してなるキャタピラ(登録商標)のような構造のものを用いることができる。後者の場合には、ベルト表面に受け部材13を別体ものとして設けず、短冊状樹脂部材そのものの表面部分に凹凸を設けることにより受皿状の受け部を設けることができる。」(段落【0014】ないし【0017】)

(キ)「【0019】
【発明の効果】
本件発明によれば、果菜3を搬送ベルト12上に支持して同搬送ベルト12を果菜載せ体2の進行方向と直交する左右方向に進行させて果菜3を搬送ライン脇の果菜引受け体4に送出し、しかも果菜引受け体4の上面を搬送ベルト12上面と同じか若干低めに設定し、果菜引受け体4の端部を搬送ベルト12の果菜排出側端部と近接して設けるため、果菜載せ体2から果菜引受け体4への果菜3の乗り換えが平行移動となり、乗り換え時に落下して痛んだり、転がって他の果菜3とぶつかったりするようなことがなく、極めて痛みの発生が少ない果菜自動選別装置を提供することができる。
【0020】
本件発明によれば、果菜載せ体2が、無端搬送帯1に連結されるフレーム10と、同フレーム10の左右2ケ所に取付けられた回転自在の回転ローラー11a、11bと、これら回転ローラー11a、11b間に架け渡された搬送ベルト12と、同搬送ベルト12の下側部分のベルトに下向きに突設された駆動ピン14とを備え、同ピン14を果菜載せ体2の下側に設けられたガイドレール20により果菜載せ体2の搬送方向と直交する左右方向にスライドさせて搬送ベルト12を往復駆動可能としたため、果菜載せ体1の搬送ベルト12を無端搬送帯1の力を利用して動かすことができ、しかも搬送ベルト12の移動量もガイドレール20の長さや傾きで簡単かつ正確に設定することができる。」(段落【0019】及び【0020】)

イ 特許明細書等における上記ア(ア)ないし(キ)及び図1ないし5の記載によると、「搬送ベルトは、先方側の回転ローラーと、後方側の回転ローラーの外周に平坦にリング状にして巻いてあり、その上側部分が平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であり、前記往復回転のうち往回転は搬送ベルトの上面が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回転であり、復回転は搬送ベルトの上面が当該往回転と反対方向に移動する回転であ」ることは、特許明細書等に記載されているといえる。
しかしながら、「搬送ベルト」が、「その上側部分が常に前記回転ローラーの外周に沿って平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であ」ることは、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

ウ 被請求人は、訂正請求書(21ページ21行ないし22ページ10行)において、訂正事項11のうち「その上側部分が常に前記回転ローラーの外周に沿って平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であ」ることについて、特許明細書等の段落【0019】及び【0020】の記載並びに図2(a)(b)の記載を根拠とする旨主張する。
しかしながら、「搬送ベルト」の「上側部分」については、特許明細書等(特に、上記ア(エ)及び(カ)並びに図1、2、4及び5)には明確な説明はされていないところ、少なくとも、搬送ベルトにおける.先方側の回転ローラ間と後方側の回転ローラ間に位置する部分は、搬送ベルトの上側部分といえ、この部分は先方側の回転ローラの外周又は後方側の回転ローラの外周には沿っていないのであるから、搬送ベルトの上側部分が常に回転ローラの外周に沿って移動することについては、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

エ そうすると、訂正事項11は、特許明細書等に記載されておらず、しかも、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえないのであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえず、特許明細書等の記載の範囲内においてしたものとはいえない。

オ また、搬送ベルトの上側部分は、回転ローラの外周に沿って移動すると、回転ローラの外周の円弧に沿って曲がることになり、平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動することはできないのであるから、訂正事項11は実現不可能な構成を含むものである。
そうすると、訂正事項11は、平成28年9月17日提出の訂正請求書の6.(1)ウ.〔2〕(11)a.において説明されているような特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか不明であるから、特許法第134条の2第1項ただし書で規定する事項を目的とするものに該当しない。

(5)訂正事項12について
ア 特許明細書等において、訂正事項12に関連する記載は以下のとおりである。
(ア)「【請求項1】
・・・略・・・
果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え、搬送ベルトの上に果菜を載せることのできる受け部が設けられ、搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、 ・・・略・・・
【請求項2】
請求項1記載の果菜自動選別装置用果菜載せ体において、搬送ベルトの受け部が、果菜を載せることのできる受け部材を備えたことを特徴とする果菜自動選別装置用果菜載せ体。
【請求項3】
・・・略・・・
前記果菜載せ体が請求項1又は請求項2記載の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり、前記多数の果菜載せ体は受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して果菜を搬送でき、搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、送り出した前記搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転することを特徴とする果菜自動選装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】)

(イ)「【請求項6】
・・・略・・・
果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜の等階級等を判別し、果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べることを特徴とする果菜自動選別方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項6】)

(ウ)「【0006】
【課題を解決するための手段】
・・・略・・・ 果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え、搬送ベルトの上に果菜を載せることのできる受け部が設けられ、搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻るものである。搬送ベルトの受け部が、果菜を載せることのできる受け部材を備えたものとすることもできる。
【0007】
・・・略・・・ 前記多数の果菜載せ体は受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して果菜を搬送でき、搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、送り出した前記搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転するものである。 ・・・略・・・
【0008】
・・・略・・・ 果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜の等階級等を判別し、果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べるものである。 ・・・略・・・」(段落【0006】ないし【0008】)

(エ)「【0010】
・・・略・・・ この搬送ベルト12の上側部分に位置しているベルトの表面にはトマト3を載せ置くための受皿状の受け部材13が取付けられている。同受け部材13は可撓性に富む弾性材で作成され、回転ローラー11aを曲がる際には、搬送ベルト12と共に抵抗なく曲がるようになっている。受け部材13は10cm程度の直径があり、大きなトマト3も無理なく載せることができるようになっている。また弾性があるため、載せたトマト3が痛まず、また搬送中の振動も吸収されるので痛まない。」(段落【0010】)

(オ)「【0014】
(他の実施形態)
図4に示すように、図2の搬送ベルト12の上側部分のベルト面に直径2、3cm程度の丸穴31を開口し、同穴31と一致させて受け皿型の受け部材13にも同様の丸穴30を開口して、トマト3を載せる部分の中央に一連の丸穴30、31ができるようにすることができる。この丸穴30、31は、トマト3から染み出した液体を下に排出する役割も有するが、透過型の糖度センサを用いて等階級の判別を行う場合には、トマト3の直上から下向き投射した光の透過光をこの丸穴を通して受光素子で観測することにより、効果的に糖度を検出することができる。また、一連の丸穴30、31を設けることにより、トマト3の下部をより下方に沈ませることができるようになり、したがって、受け部材13自体の厚みを減らして、同受け部材13の可撓性を高めることができる。
【0015】
図2の搬送ベルト12に設ける受け部材13は、図5に示すように、搬送ベルトの進行方向と直行する方向に多数の横溝32を形成することにより、受け部材13が回転ローラー11aを回転する際の可撓性を高めることもできる。
【0016】
メロンや小玉すいかなどの搬送選別を行う場合には、図4の丸穴30、31と図5の横溝32を組み合わせて用いることにより、受け部材13の大きさを大きくしまた厚みを増しても、可撓性を高めることもできる。
【0017】
図2の搬送ベルト12としては、ステンレス製のもの以外でも、一般的な布製のベルトを用いることができ、また特殊な例としては、短冊状樹脂部材を多数連結してなるキャタピラ(登録商標)のような構造のものを用いることができる。後者の場合には、ベルト表面に受け部材13を別体ものとして設けず、短冊状樹脂部材そのものの表面部分に凹凸を設けることにより受皿状の受け部を設けることができる。」(段落【0014】ないし【0017】)

(カ)「【0021】
本件発明によれば、搬送ベルト12の表面に、果菜3の下部を受けて支持可能な可撓性、弾性材の受け部材13が取付けられているため、果菜3を置きやすく、また搬送中に揺れたり転がったりすることもない。」(段落【0021】)

イ 特許明細書等における上記ア(ア)ないし(カ)並びに図1、2、4及び5の記載によると、「搬送ベルトの上側部分に、果菜を載せることのできる受け部が設けられ」ることは、特許明細書等に記載されているといえる。
しかしながら、「果菜を載せることのできる受け部」が、「搬送ベルトの上側部分であって、その往回転方向ほぼ中央部分に」設けられることは、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

ウ 被請求人は、訂正請求書(23ページ24行ないし24ページ4行)において、訂正事項12は、特許明細書等の図2(a)ないし(c)の記載を根拠とする旨主張する。
しかしながら、特許明細書等の図2(a)及び(b)の記載によれば、「果菜を載せることのできる受け部」は、搬送ベルトの上側部分であって、果菜載せ体の果菜送り出し方向側に偏って位置しており、搬送ベルトの往回転方向ほぼ中央部分に設けられていないことから、「果菜を載せることのできる受け部」が、「搬送ベルトの上側部分であって、その往回転方向ほぼ中央部分に」設けられることについては、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

エ そうすると、訂正事項12は、特許明細書等に記載されておらず、しかも、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえないのであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえず、特許明細書等の記載の範囲内においてしたものとはいえない。

(6)訂正事項13について
ア 特許明細書等において、訂正事項13に関連する記載は以下のとおりである。
(ア)「【請求項1】
・・・略・・・
果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え、搬送ベルトの上に果菜を載せることのできる受け部が設けられ、搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻ることを特徴とする果菜自動選別装置用果菜載せ体。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

(イ)「【0006】
【課題を解決するための手段】
・・・略・・・ 果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え、搬送ベルトの上に果菜を載せることのできる受け部が設けられ、搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻るものである。搬送ベルトの受け部が、果菜を載せることのできる受け部材を備えたものとすることもできる。」(段落【0006】)

(ウ)「【0010】
前記図1の果菜載せ体2は、詳細を図2(a)?(c)に示すように、2本のチェーン1に跨ぐようにして取り付けられるフレーム10があり、このフレーム10の幅方向両端に回転ローラー11a、11bが回転自在に取付けられ、これら回転ローラ11a、11bにステンレス製の搬送ベルト12が回転自在なるように掛け渡されている。この搬送ベルト12の上側部分に位置しているベルトの表面にはトマト3を載せ置くための受皿状の受け部材13が取付けられている。同受け部材13は可撓性に富む弾性材で作成され、回転ローラー11aを曲がる際には、搬送ベルト12と共に抵抗なく曲がるようになっている。受け部材13は10cm程度の直径があり、大きなトマト3も無理なく載せることができるようになっている。また弾性があるため、載せたトマト3が痛まず、また搬送中の振動も吸収されるので痛まない。一方、搬送ベルト12の上側部分には、ゴム製の仕切り部材17が取付けられている。また、上側搬送ベルト12の裏にはフレーム10に固定されて板材16が配置されており、搬送ベルト12上のトマト3の荷重はこの板材16で受けることができるようにしてある。なお、荷重が多めにかかるような場合は、この部分に回転自在なフリーローラを敷き詰めるようにしてもよい。」(段落【0010】)

(エ)「【0012】
・・・略・・・ この斜めガイドレール20によって駆動ピン14が搬送方向横方向に横スライドされて、搬送ベルト12を回転させるようになっている。斜めガイドレール20による駆動ピン14のスライド量は12cm程度を得られるようにしてあり、搬送ベルト12を12cm程度回転させてその上のトマト3を回転ローラー11a側の端部から確実に排出できるようにしてある。 ・・・略・・・
【0013】
・・・略・・・ また、図1、図2、図3には、果菜載せ体2の搬送ベルト12を図2(a)の矢印b方向に動かす斜めガイドレール20だけを示したが、本発明の装置には矢印b方向に進行させた搬送ベルト12をもとの位置に戻すための逆傾斜のガイドレールも備えられている。」(段落【0012】及び【0013】)

イ 特許明細書等における上記ア(ア)ないし(エ)及び図1ないし3の記載によると、「搬送ベルトの上方であって受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記搬送ベルトに連結されて前記受け部よりも上方に突出しており、前記受け部の後方に位置しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻」ることは、特許明細書等に記載されているといえる。
しかしながら、「仕切り体」が、「少なくともその果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置して」いることは、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

ウ 被請求人は、訂正請求書(25ページ9行ないし同ページ25行)において、訂正事項13は、特許明細書等の段落【0010】及び【0020】並びに図2(a)(b)の記載を根拠とする旨主張する。
しかしながら、訂正事項13は、「少なくとも」という語によって、「仕切り体」の全部が受け部の後方直近に位置している態様を含むものであるところ、特許明細書等の段落【0010】及び【0020】並びに図2(a)(b)には、「仕切り体」が、搬送ベルトの果菜送り出し方向側の一部が受け部の後方直近に位置している態様のみが記載されているのであるから、「仕切り体」が、「少なくともその果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置して」いることについては、特許明細書等には記載されておらず、また、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。

エ そうすると、訂正事項13は、特許明細書等に記載されておらず、しかも、特許明細書等の記載から自明な事項であるともいえないのであるから、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえず、特許明細書等の記載の範囲内においてしたものとはいえない。

(7)訂正事項30について
訂正事項30により、特許請求の範囲の請求項6において、請求項3を引用するものとされたところ、これにより特許請求の範囲の請求項6においても訂正事項6及び9ないし13の訂正がされたことになるから、上記(1)ないし(6)の検討を踏まえると、訂正事項30は、特許明細書等の記載の範囲内においてしたものとはいえない。
・・・略・・・
したがって、訂正事項6、9ないし13及び30は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合せず、また、訂正事項11は特許法第134条の2第1項に適合しないから、本件訂正1及び2は認められない。」

5 平成29年2月6日提出の手続補正書による訂正請求書の補正
平成29年2月6日提出の手続補正書による訂正請求書の補正により、訂正事項6及び9ないし13について、次の補正事項1ないし6のとおり補正がされた。
(1)補正事項1
訂正請求書の4頁に、
「(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「前記無端チェーンは、果菜載せ体の果菜送り出し方向先方側の無端チェーンと、果菜送り出し方向後方側の無端チェーンの少なくとも二本であり、それら両無端チェーンは果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されており、」との事項を付加する。」とあるのを、
「(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3に「前記無端チェーンは、果菜載せ体の果菜送り出し方向先方側の無端チェーンと、果菜送り出し方向後方側の無端チェーンの二本であり、それら両無端チェーンは果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されており、」との事項を付加する。」と補正する(以下、「補正事項1」という。)。

(2)補正事項2
訂正請求書の4頁に、
「(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームは、少なくとも、その果菜送り出し方向先方側の2カ所が前記先方側の無端チェーンに取り付けられ、その果菜送り出し方向後方側の2カ所が前記後方側の無端チェーンに取り付けられており、前記多数の果菜載せ体は、その走行方向に一列に並んでおり、」との事項を付加する。」とあるのを、
「(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームは、その果菜送り出し方向先方側が前記先方側の無端チェーンに取り付けられ、その果菜送り出し方向後方側が前記後方側の無端チェーンに取り付けられており、前記多数の果菜載せ体は、その走行方向に一列に並んでおり、」との事項を付加する。」と補正する(以下、「補正事項2」という。)。

(3)補正事項3
訂正請求書の4頁に、
「(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームは、その底面に果菜送り出し方向に細長の開口を備え、その開口の短い側の幅は前記駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大きく、当該開口の駆動ピンの移動領域において均一幅又は略均一幅であり、」との事項を付加する。」とあるのを、
「(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームは、その底面に果菜送り出し方向に細長の開口を備え、当該開口の駆動ピンの移動領域において均一幅又は略均一幅であり、」との事項を付加する。」と補正する(以下、「補正事項3」という。)。

(4)補正事項4
訂正請求書の5頁に、
「(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトは、前記先方側の回転ローラーと、前記後方側の回転ローラーの外周に平坦にリング状にして巻いてあり、その上側部分が常に前記回転ローラーの外周に沿って平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であり、前記往復回転のうち往回転は搬送ベルトの上面が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回転であり、復回転は搬送ベルトの上面が当該往回転と反対方向に移動する回転であり、」との事項を付加する。」とあるのを、
「(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトは、前記先方側の回転ローラーと、前記後方側の回転ローラーの外周に平坦にリング状にして巻いてあり、その上側部分が平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回転可能であり、前記往復回転のうち往回転は搬送ベルトの上面が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回転であり、復回転は搬送ベルトの上面が当該往回転と反対方向に移動する回転であり、」との事項を付加する。」と補正する(以下、「補正事項4」という。)。

(5)補正事項5
訂正請求書の5頁に、
「(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトの上側部分であって、その往回転方向ほぼ中央部分に、果菜を載せることのできる受け部が設けられ、」との事項を付加する。」とあるのを、
「(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトの上側部分に、果菜を載せることのできる受け部が設けられ、」との事項を付加する。」と補正する(以下、「補正事項5」という。)。

(6)補正事項6
訂正請求書の5頁に、
「(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記搬送ベルトに連結されて前記受け部よりも上方に突出しており、少なくともその果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻り、」との事項を付加する。」とあるのを、
「(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記搬送ベルトに連結されて前記受け部よりも上方に突出しており、前記受け部の後方に位置しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻り、」との事項を付加する。」と補正する(以下、「補正事項6」という。)。

6 平成29年2月6日提出の意見書における被請求人の主張
被請求人は、平成29年2月6日提出の手続補正書による訂正請求書の補正について、次のとおり主張する。
「(2)補正事項1?41が訂正請求書の要旨を変更するものでないこと
前記補正事項1?41は、審判便覧51-14の3.に示す請求事項の削除又は軽微な瑕疵の補正であるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。

(3)結び
本書と同日付で提出の手続補正書によって、第2訂正請求書を補正し、平成28年12月28日付け起案の訂正拒絶理由通知でご指摘の拒絶理由を解消した。第2訂正請求書による第2訂正は適切なものであり、認められるべきものである。また、本補正後の特許請求の範囲に記載の本件特許には無効理由はなく、特許維持されるべきである。」(当審注:「第2訂正請求書」は訂正請求書を意味し、「第2訂正」は本件訂正を意味する。)

7 平成29年2月6日提出の手続補正書による訂正請求書の補正の適否について
特許法第134条の2第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定によれば、訂正請求書の補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであってはならない。
そして、訂正請求書の補正が訂正請求書の要旨を変更するか否かは、補正の前後間で請求の基礎である「請求を申し立てている事項」の同一性や範囲を変更するか否かに基づき判断するところ、補正の前後間で訂正請求の審理範囲が実質的に拡張・変更される場合は訂正請求書の要旨を変更することとなる。
以上を踏まえて、平成29年2月6日提出の手続補正書による訂正請求書における訂正事項10及び13についての補正である補正事項3及び6が、訂正請求書の要旨を変更するものであるか否かを以下に検討する。

(1)補正事項3(訂正事項10の補正)について
補正前の訂正事項10の内容と、補正後の訂正事項10の内容とを対比すると、補正前の「その開口の短い側の幅は前記駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大きく、」という事項(以下、「構成A」という。)が、補正後は削除されている。
ところで、構成Aは、訂正請求書の7.II.(1)〔1〕(サ)における「フレーム底面に設けた細長の開口の短い方の幅(開口におけるピンの移動方向に直交する方向の幅)を、駆動ピンのうち当該開口を通過する部分の幅(果菜搬送ラインの搬送方向の幅)よりもわずかに大きいだけとし、往ガイド、復ガイドに案内されて開口内を駆動ピンが移動する際、当該開口により駆動ピンの横ブレが少なくなるようにしてあること。」(訂正請求書第76ページ第14行ないし同ページ第18行)との記載及び訂正請求書の7.II.(1)〔2〕オ.における「本件発明3は、フレーム底面に設けられた細長い開口の開口幅が、開口の駆動ピンが移動する領域において均一又は略均一であって、駆動ピンのうち少なくとも当該開口を通過する部分の幅よりもわずかに大きい。ここで、「わずかに大きい」とは、本件特許公報の図2(a)から明らかなように、駆動ピンが開口内を移動可能とする大きさで、駆動ピンが往ガイド又は復ガイドに沿って移動するときに、当該駆動ピンが横ブレしないように案内できる程度のものであることを意味する。」(訂正請求書第87ページ第16行ないし同ページ第22行)との記載によれば、駆動ピンの横ブレを低減する作用効果を奏するための事項といえ、フレームの底面に備えた果菜送り出し方向に細長の開口について技術的に限定する事項である。
そうすると、補正事項3は、補正前の訂正事項10から駆動ピンの横ブレを低減する作用効果を奏するための限定事項である構成Aを削除するものであるから、補正の前後間で訂正請求の審理範囲が実質的に拡張・変更されるものである(下線は当審で付したものである。)。

(2)補正事項6(訂正事項13の補正)について
補正前の訂正事項13の内容と、補正後の訂正事項13の内容とを対比すると、補正前において、「仕切り体」は「少なくともその果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置しており」であったのが、補正後において、「仕切り体」は「前記受け部の後方に位置しており」となっており、仕切り体の受け部の後方に対する位置関係を特定する「少なくともその果菜送り出し方向側の一部が」という事項及び「直近」という事項(以下、これら事項を合わせて「構成B」という。)が削除された。
ところで、構成Bは、訂正請求書の7.II.(1)〔1〕(ス)における「搬送ベルトの上側部分であって、往回転方向ほぼ中央部分に設けられた果菜を載せることのできる受け部よりも往回転方向後方に仕切り体を設けたこと。その仕切り体を前記搬送ベルトに連結して前記受け部よりも上方に突出させ、少なくとも果菜送り出し方向側の一部を受け部の後方直近に位置させ、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動するようにして、仕切り体を見れば果菜を載せる受け部の位置がわかるようにし、受け部に果菜を載せ易くしてあること。」(訂正請求書第76ページ第23行ないし同ページ末行)との記載及び訂正請求書の7.II.(1)〔2〕エ.(ケ)における「本件発明3は、仕切り体が、搬送ベルトの上側部分であってその往回転方向ほぼ中央部分の受け部よりも往回転方向後方に設けられており、その仕切り体は搬送ベルトに連結されて前記受け部よりも上方に突出しており、少なくともその果菜送り出し方向側の一部が前記受け部の後方直近に位置している。このため、本件発明3の仕切り体は、搬送ベルトの上側の受け部に果菜を載せる目安となり、果菜を受け部に載せ易くなる。」(訂正請求書第87ページ第1行ないし同ページ第7行)との記載によれば、果菜を載せる受け部の位置がわかるようにし、受け部に果菜を載せ易くする作用効果を奏するための事項といえ、仕切り体について技術的に限定する事項である。
そうすると、補正事項6は、補正前の訂正事項13から果菜を載せる受け部の位置がわかるようにし、受け部に果菜を載せ易くする作用効果を奏するための限定事項である構成Bを削除するものであるから、補正の前後間で訂正請求の審理範囲が実質的に拡張・変更されるものである(下線は当審で付したものである。)。

(3)小括
したがって、平成29年2月6日提出の手続補正書による訂正請求書の補正における補正事項3及び6(訂正事項10及び13についての補正)は、訂正請求書の要旨を変更するものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定により認めることができない。

8 本件訂正の適否についての判断
上記7で検討したとおり、平成29年2月6日提出の手続補正書による訂正請求書の補正における補正事項3及び6(訂正事項10及び13についての補正)は認めることができないのであるから、本件訂正1及び2の請求は、訂正事項10、13及び30について、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合しておらず、平成28年12月28日付けで通知された訂正拒絶理由を解消していない。
なお、上記6の被請求人の主張は、平成29年2月6日提出の手続補正書による訂正請求書の補正が認められた場合の主張であって、当該補正が認められない場合における訂正拒絶理由に対する主張はされていない。

9 まとめ
以上のとおり、本件訂正1及び2の請求は、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合しないのであるから、平成28年12月28日付けで通知された訂正拒絶理由により認めない。


第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正1及び2の請求は認められないので、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明8」という。また、これらを総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、特許明細書における特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置の果菜載せ体において、
果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え、搬送ベルトの上に果菜を載せることのできる受け部が設けられ、搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻ることを特徴とする果菜自動選別装置用果菜載せ体。
【請求項2】
請求項1記載の果菜自動選別装置用果菜載せ体において、搬送ベルトの受け部が、果菜を載せることのできる受け部材を備えたことを特徴とする果菜自動選別装置用果菜載せ体。
【請求項3】
果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置において、
前記果菜載せ体が請求項1又は請求項2記載の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり、前記多数の果菜載せ体は受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して果菜を搬送でき、搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、送り出した前記搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転することを特徴とする果菜自動選装置。
【請求項4】
請求項3記載の果菜自動選別装置において、複数の果菜引受け体が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜引受け体は搬送方向に間隔をあけて配置され、果菜載せ体から送り出される果菜が前記果菜引受け体にプールされることを特徴とする果菜自動選別装置。
【請求項5】
請求項4記載の果菜自動選別装置において、果菜引受け体は果菜載せ体から果菜が送り出される度に回転して、果菜載せ体から送り出される果菜をプールできることを特徴とする果菜自動選別装置。
【請求項6】
果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別送方法において、
果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜の等階級等を判別し、果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べることを特徴とする果菜自動選別方法。
【請求項7】
請求項6記載の果菜自動選別方法において、判別結果に基づいて果菜載せ体から搬送方向側方に送り出される果菜を、果菜搬送ラインの搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の果菜引受け体にプールすることを特徴とする果菜自動選別方法。
【請求項8】
請求項7記載の果菜自動選別方法において、果菜載せ体から果菜が送り出される度に果菜引受け体を移動させて、送り出される果菜を果菜引受け体にプールさせることを特徴とする果菜自動選別方法。」


第4 請求人が主張する無効理由の概要
請求人は、平成25年3月8日に審判請求書とともに甲第1ないし5号証を提出して、本件特許の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求め、その後、平成25年9月30日に口頭審理陳述要領書を提出し、平成28年3月11日に審判事件弁駁書とともに甲第6ないし8号証を提出し、さらに、平成28年11月18日に弁駁書を提出した。
ここで、第2で検討したとおり、本件訂正は認められず、本件発明1ないし8は、特許明細書における特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、請求人は、審判請求書において、本件発明1ないし8についての特許を無効とすべき旨主張する。
そして、請求人による証拠方法と無効理由は次のとおりである。

1 証拠方法
甲第1号証: 実願平4-39182号(実開平6-23936号)のCD-ROM
甲第2号証: 特開平3-256814号公報
甲第3号証: 特開平11-286328号公報
甲第4号証: 米国特許第3231068号明細書
甲第5号証: 特開平10-25014号公報
甲第6号証: 特開平1-242316号公報
甲第7号証: 特公平6-10044号公報
甲第8号証: 特公平7-61810号公報

なお、甲第1ないし8号証を、順に「甲1」ないし「甲8」ともいう。

2 無効理由
請求人は、特許法第36条第6項第1号、同項第2号及び第4項の各規定に基づく無効理由1と、特許法第29条第2項の規定に基づく無効理由2を主張するところ、その概要は次のとおりである。
(1)無効理由1について
ア 無効理由1の概要
・前回審決は本件発明1と甲第1号証に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)とを対比して、次の相違点1が存在すると認定した。
相違点1:搬送ベルトの回転動作及び仕切り体に関し、本件発明1においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、仕切り体は「搬送ベルトの上方であって受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」のに対して、甲1発明においては、ベルト23(搬送ベルト)は「回転可能」であるが「往復回転可能」は否か不明であり、仕切り体は設けられておらず、「ベルト23(搬送ベルト)に設けられたベルト23の上面部(受け部)はベルト23(搬送ベルト)の往回転に伴ってその往回転方向に移動する」が、前記の特定のベルト23の上面部(受け部)復回転に伴ってその復回転方向に戻るか否か不明である点。
また、前回審決は本件発明6と甲1発明とを対比して、次の相違点2が存在すると認定した。
相違点2:搬送ベルトの回転動作及び受け部に関し、本件発明6においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、受け部について「往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の位置に戻して、多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」のに対して、甲1発明においては、ベルト23(搬送ベルト)は「回転可能」であるが「往復回転可能」は否か不明であり、ベルト23の上面部(受け部)についての往回動後の移動動作は不明である点。
そして、前回審決は、両相違点について、前回無効審判事件の甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明は、いずれも「果菜自動選別装置用果菜載せ体において、搬送ベルトに設けられた仕切り体(及び当該仕切り体と特定の位置関係にある受け部)が、往回転後、復回転に伴ってその復回転方向(の特定の戻り位置)に戻る」という点及び「果菜自動選別方法において、搬送ベルトに設けられた受け部について、往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の位置に戻して、多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」という点を有していないと認定した。さらに、前回審決は、前回無効審判事件の甲第2号証又は甲第5号証には、搬送中に物品を計測部で計測して等階級等を判別し、物品の載せ体の上の物品を判別結果に基づいて振り分けることは記載も示唆もされておらず、また、物品として果菜も含むかどうか不明であって傷付きやすい物品を傷付けることなく搬送するという課題や技術思想がないので、甲1発明に組み合わせる動機があるとはいえないと判断したものである。
また、前回審決は、被請求人の主張に依拠して、相違点1に係る構成については、「仕切り体及び当該仕切り体と特定の位置関係にある受け部を、往回転後、復回転に件ってその復回転方向に戻すことにより、特定の戻り位置に戻して、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる。」という技術思想(以下、「(ア)の技術思想」という。)であると解釈し、また、相違点2に係る構成については、「搬送ベルトに設けられた受け部について、往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の特定の位置に戻して、多数の物品の載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べるようにして、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる」という技術思想(以下、「(イ)の技術思想」という。)であると解釈している。
(審判請求書第3ページ第11行ないし第5ページ第7行)

・本件特許の明細書及び図面には、上記ア中の(ア)及び(イ)の技術思想である、
(ア)「仕切り体及び当該仕切り体と特定の位置関係にある受け部を、往回転後、復回転に件ってその復回転方向に戻すことにより、特定の戻り位置に戻して、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる。」という技術思想(審判請求書第4ページ第24ないし26行)、及び
(イ)「搬送ベルトに設けられた受け部について、往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の特定の位置に戻して、多数の物品の載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べるようにして、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる」という技術思想(審判請求書第5ページ第2ないし6行)、
は一切記載されておらず、また、
(ウ)搬送ベルトの回転動作及び仕切り体に関し、本件発明1においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、仕切り体は「搬送ベルトの上方であって受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」事項(審判請求書第3ページ第15ないし20行)、及び
(エ)搬送ベルトの回転動作及び受け部に関し、本件発明6においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、受け部について「往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の位置に戻して、多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」事項(審判請求書第4ページ第2ないし6行)、
を採用した目的及び効果についても明らかにされていないので、上記技術思想を把握することはできない。したがって、本件発明における上記技術思想は、発明の詳細な説明に記載したものではない、若しくは請求項自体から明確ではないので、本件特許は、特許法第36条第6項第1号又は第2号に規定する要件を満たしていない。また、本件特許の発明の詳細な説明には、上記技術思想は一切記載されておらず、また、上記(ウ)及び上記(エ)を採用した目的及び効果についても明らかにされていないので、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が上記技術思想の実現をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。よって、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(審判請求書第5ページ第9ないし23行)

イ 特許明細書の記載について
・前回審決は、本件発明1と甲1発明との相違点1に係る「果菜自動選別装置用果菜載せ体において、搬送ベルトに設けられた仕切り体(及び当該仕切り体と特定の位置関係にある受け部)が、往回転後、復回転に伴ってその復回転方向(の特定の戻り位置)に戻る」という構成について、「このような点により、仕切り体及び当該仕切り体と特定の位置関係にある受け部を、往回転後、復回転に伴ってその復回転方向に戻すことにより、特定の戻り位置に戻して、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる。」と解釈した。
また、前回審決は、本件発明6と甲1発明との相違点2に係る「果菜自動選別方法において、搬送ベルトに設けられた受け部について、往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の位置に戻して、多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」という構成について、「このような点により、搬送ベルトに設けられた受け部について、往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の特定の位置に戻して、多数の物品の載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べるようにして、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる。」と解釈した。
つまり、前回審決では、搬送ベルトが往回転した後、復回転に伴って戻るという構成について、次回の計測部での計測をし易くすることができるという効果を有するものと解釈しているのである。
しかしながら、かかる解釈は、本件特許の明細書及び図面から把握できるものではない。
(審判請求書第9ページ第19行ないし第10ページ第16行)

・本件特許の発明の詳細な説明には、【発明が解決しようとする課題】として、図6の選別装置については転がることによる損傷の問題(【0004】)が、フリートレイの選別装置については余剰トレイをプールするため施設の設置面積が大きくなること及びそれによる故障やトラブルの問題(【0005】)が記載されているだけである。
また、本件特許の発明の詳細な説明は、「図1の2は、トマト3を載せて搬送する果菜載せ体であり、前記チェーン1に一列に等間隔で連結されており、図中の矢印a方向に進行するようになっている。」(【0009】)と記載するだけであり、「果菜載せ体」を一列に等間隔で連結することが記載されているだけであり、果菜載せ体の「受け部」を一列又は略一列に並べることまでは明記していない。さらに、搬送ベルトが往回転した後、復回転に伴って戻る点については、唯一、「図1、2、3には、果菜受け体2の搬送ベルト12を図2(a)の矢印b方向に動かす斜めガイドレール20だけを示したが、本発明の装置には矢印b方向に進行させた搬送ベルト12をもとの位置に戻すための逆傾斜のガイドレールも備えられている。」(【0013】)という記載があるだけであり、搬送ベルト12をもとの位置に戻すことについて特別な目的も効果も記載されていない。
さらに、【発明の効果】においても、果菜受け体2から果菜引受け体4への果菜3の乗り換え時に極めて痛みの発生が少ない果菜自動選別装置を提供することができることを指摘するのみであり、計測部での計測をし易くする点は開示されていないのである。なお、発明の詳細な説明には、他の実施形態において、「この丸穴30、31は、トマト3から染み出した液体を下に排出する役割も有するが、透過型の糖度センサを用いて等階級の判別を行う場合には、トマト3の直上から下向き投射した光の透過光をこの丸穴を通して受光素子で観測することにより、効果的に糖度を検出することができる。」(【0014】)という記載はあるが、これは同段落の記載から明らかなように、搬送ベルト12の上側部分のベルト面及び受け部材13に丸穴31、32を開口した場合に得られる効果を記載しただけであり、搬送ベルトを戻すことによる効果を記載したものではない。
(審判請求書第10ページ第17行ないし第11ページ第17行)

ウ まとめ
以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、搬送ベルトが往回転した後、復回転に伴って戻るという構成について、次回の計測部での計測をし易くするという目的も効果も記載されていない。したがって、本件発明1及び6における技術思想は、発明の詳細な説明に記載したものではない、若しくは請求項自体から明確ではないので、特許法第36条第6項第1号又は第2号に規定する要件を満たしていない。また、本件特許の発明の詳細な説明には、上記技術思想は一切記載されておらず、また、上記アの(ウ)及び(エ)を採用した目的及び効果についても明らかにされていないので、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が上記技術思想の実現をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないのである。
(審判請求書第11ページ第18行ないし第12ページ第3行)

(2)無効理由2について
ア 無効理由2の概要
本件発明は、いずれも甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明(以下、順に「甲1発明」ないし「甲5発明」ともいう。)に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがってその特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
より具体的には、本件発明は、甲1発明を主引用例として、甲2発明ないし甲5発明及び周知技術を適宜組み合わせることにより(無効理由2-1)、または、甲2発明を主引用例として、甲1発明、甲3発明ないし甲5発明及び周知技術を適宜組み合わせることにより(無効理由2-2)、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(審判請求書第5ページ第25行ないし第6ページ第8行)

イ 無効理由2-1について
上記アのとおり、請求人は、本件発明は、甲1発明を主引用例として、甲2発明ないし甲5発明及び周知技術を適宜組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがってその特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである旨の無効理由(以下、「無効理由2-1」という。)を主張するところ、本件発明の各発明に係る特許についての主張の概要は次のとおりである。
(当審注:甲1発明に、甲3発明と甲4発明を共に採用することは主張されていないため、選択的に採用する主張に改めた。)

(ア)本件発明1に係る特許について
本件発明1は、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(イ)本件発明2に係る特許について
本件発明2は、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲4発明に基づいて、又は、甲1発明、甲3発明、甲5発明及び周知技術に基づいて、又は、甲1発明、甲4発明、甲5発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(ウ)本件発明3に係る特許について
本件発明3は、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明3に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(エ)本件発明4に係る特許について
本件発明4は、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明4に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(オ)本件発明5に係る特許について
本件発明5は、甲1発明ないし甲3発明に基づいて、又は、甲1発明、甲2発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明5に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(カ)本件発明6に係る特許について
本件発明6は、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(キ)本件発明7に係る特許について
本件発明7は、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(ク)本件発明8に係る特許について
本件発明8は、甲1発明ないし甲3発明に基づいて、又は、甲1発明、甲2発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明8に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

ウ 無効理由2-2について
上記アのとおり、請求人は、本件発明は、甲2発明を主引用例として、甲1発明、甲3発明ないし甲5発明及び周知技術を適宜組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがってその特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである旨の無効理由(以下、「無効理由2-2」という。)を主張するところ、本件発明の各発明に係る特許についての主張の概要は次のとおりである。
(当審注:甲2発明に、甲3発明と甲4発明を共に採用することは主張されていないため、選択的に採用する主張に改めた。)

(ア)本件発明1に係る特許について
本件発明1は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲4発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明1に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(イ)本件発明2に係る特許について
本件発明2は、甲2発明、甲3発明、甲5発明及び周知技術に基づいて、又は、甲2発明、甲4発明、甲5発明及び周知技術に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明、甲3発明、甲5発明及び周知技術に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明、甲4発明、甲5発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明2に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(ウ)本件発明3に係る特許について
本件発明3は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲4発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明3に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(エ)本件発明4に係る特許について
本件発明4は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲4発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明4に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(オ)本件発明5に係る特許について
本件発明5は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲4発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明5に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(カ)本件発明6に係る特許について
本件発明6は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲4発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明6に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(キ)本件発明7に係る特許について
本件発明7は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲4発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明7に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(ク)本件発明8に係る特許について
本件発明8は、甲2発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲4発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲3発明に基づいて、又は、甲2発明、甲1発明及び甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の本件発明8に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。


第5 被請求人の主張の概要
被請求人は、平成25年6月3日に答弁書とともに乙第1ないし5号証を提出して、本件審判請求は成り立たないとの審決を求め、その後、平成25年9月30日に口頭審理陳述要領書とともに乙第6号証及び乙第7号証を提出し、平成25年10月21日に行われた第1回口頭審理において、乙第2号証を参考資料1、乙第3号証を参考資料2、乙第4号証を参考資料3、乙第5号証を参考資料4にそれぞれ訂正し、平成28年1月18日に訂正請求書及び同訂正請求書に添付した訂正明細書を提出し、平成28年9月17日に訂正請求書及び同訂正請求書に添付した訂正明細書を提出し、さらに、平成29年2月6日に意見書、平成28年9月17日付け訂正請求書における請求の理由を補正する補正書及び答弁書を提出した。
そして、第2で検討したとおり、本件訂正は認められず、本件発明1ないし8は、特許明細書における特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、被請求人は、請求人の主張する無効理由に対して以下の3ないし6のとおり主張している。

1 証拠方法
乙第1号証: 平成23年12月5日提出の意見書(2回目の意見書)
乙第6号証: 小学館ランダムハウス英和大辞典編集委員会編:「<パーソナル版>2冊組(上巻) 小学館ランダムハウス英和大辞典 SHOGAKUKAN RANDOM HOUSE ENGLISH-JAPANESE DICTIONARY」,小学館,第6刷(昭和55年2月26日)
乙第7号証: 財団法人 日本規格協会:「JIS工業用語大辞典【第5版】」,財団法人 日本規格協会,(2001年3月30日)

2 参考資料
参考資料1(乙第2号証): トマトの写真
参考資料2(乙第3号証): ピアノ鍵盤方式(PK方式)の写真
参考資料3(乙第4号証): 横転方式の写真及び図
参考資料4(乙第5号証): フリートレー方式の写真

3 無効理由1に対する主張の概要
被請求人は、無効理由1に対して概略次のとおり主張する。
(1)本件特許の明細書の記載に対する答弁
ア 本件特許公報の【0009】には、果菜載せ体を一列に等間隔で連結することが記載されており、図1、図3には果菜載せ体の受け部(受け部材13)が計測部Bの手前で一列に並んでいる状態が示されている。したがって、本件発明において「もとの位置に戻す」ということは、果菜載せ体の受け部(受け部材13)が図1、図3のように一列に並ぶ、ということに他ならない。一列に並んだ「受け部」に果菜を載せれば、果菜が一列に並んで搬送され、計測部での計測がし易くなり、精度の高い計測が可能となって正確な等階級判別ができる、という効果が奏されることは明らかである。
また、このことは、本件特許公報【0014】の「この丸穴30、31は、トマト3から染み出した液体を下に排出する役割も有するが、透過型の糖度センサを用いて等階級の判別を行う場合には、トマト3の直上から下向き投射した光の透過光をこの丸穴を通して受光素子で観測することにより、効果的に糖度を検出することができる。」との記載に鑑みても明らかである。
請求人は、当該記載は搬送ベルトを戻すことによる効果を記載したものではないとする。しかしながら、搬送ベルトがもとの位置に戻されており、計測部の手前において受け部が一列に並んでおり、測定対象となる果菜の位置が安定しているからこそ、「トマト3の直上から下向き投射した光の透過光をこの丸穴を通して受光素子で観測すること」が可能となる(果菜の位置がばらついていれば、下向き投射した光の透過光が果菜に当たらなかったり、丸穴を通らず受光素子に届かなかったりする事態が生じ得るのは明らかである。)のであるから、当該記載もまた、搬送ベルトがもとの位置に戻されており、計測部の手前において受け部が一列に並んでいることにより、精度の高い計測が可能となることを示しているものといえる。(答弁書第4ページ第2ないし24行)

イ 本件発明では、果菜搬送中に、果菜の形状や大きさ等を計測部で計測するものである。トマトのような果菜は形状や大きさが同じものは二つとしてないため、不揃いで搬送したのでは計測部で精度の高い測定ができず、正確な等階級判別ができない。本件発明において、搬送ベルトを戻し回転させて果菜載せ体の受け部を一列又は略一列に戻すとの構成をとったことにより、形状や大きさが二つとして同じものがない果菜を計測し易くなることは、本件発明の構成、及び本件特許公報の【0014】の記載に接した当業者であれば、当然に理解する作用効果であるといえる。(答弁書第4ページ第25行ないし第5ページ第3行)

(2)まとめ
ア 搬送ベルトの往回転に伴って受け部が元の位置に戻ると、計測部での次回の計測がし易くなることは前記したとおりであり、明細書に「目的」、「効果」として特別に明記するまでもなく、本件発明の構成や、明細書に記載された実施例に関する記載から、当業者が当然奏されると理解できる効果である。(答弁書第5ページ第19ないし23行)

イ 本件発明1及び6における技術思想、すなわち、
(ア)「仕切り体及び当該仕切り体と特定の位置関係にある受け部を、往回転後、復回転に件ってその復回転方向に戻すことにより、特定の戻り位置に戻して、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる。」という技術思想(前記第4 2(1)アにおける(ア)参照。)、及び
(イ)「搬送ベルトに設けられた受け部について、往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の特定の位置に戻して、多数の物品の載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べるようにして、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる」という技術思想(前記第4 2(1)アにおける(イ)参照。) は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、請求項自体から明確であるため、特許法第36条第6項第1号又は第2号に規定する要件を満たしている。(答弁書第5ページ第24ないし27行)

ウ 本件発明において、搬送ベルトが往回転した後、復回転に伴って戻ることによって次回の計測部での計測をし易くするという技術思想は、本件特許公報の【0009】、【0013】、【0014】の記載及び図1ないし図6の記載から明確に把握することができるため、
(ウ)搬送ベルトの回転動作及び仕切り体に関し、本件発明1においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、仕切り体は「搬送ベルトの上方であって受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」事項(前記第4 2(1)アにおける(ウ)参照。)、及び
(エ)搬送ベルトの回転動作及び受け部に関し、本件発明6においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、受け部について「往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の位置に戻して、多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」事項(前記第4 2(1)アにおける(エ)参照。)、
を採用した目的及び効果は明らかである。
従って、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が上記技術思想の実現をすることができる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。(答弁書第5ページ末行ないし第6ページ第8行)

4 無効理由2に対する主張の概要
被請求人は、無効理由2に対して概略次のとおり主張する。
(1)無効理由2-1(甲1発明を主引例とする無効理由)に対して
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1の「受け部」は果菜搬送方向に一列に並ぶように特定できるものである。これに対して、甲1発明の突起26は、その図4(a)、(b)から明らかなように、ベルトの全面に突設されている。しかも、その突起は図4(b)から明らかように、果菜搬送方向両側が高く中央部が低くなっており、V字状になっているだけであり、そのどこに果菜を載置しても良いため、本件発明1の受け部のように果菜搬送方向に一列に並ぶようには特定できない。また、本件発明1の「受け部」は「仕切り体」との関係で特定の位置関係にあるものである。しかし、甲1発明には本件発明1の「仕切り体」に相当するものもないため、「仕切り体」と特定の位置関係にある「受け部」も存在しない。
したがって、甲1発明の「突起26」は本件発明1の「受け部」に相当しないから、請求人の本件発明1と甲1発明との対比はそもそも誤っている。(答弁書第6ページ第13ないし23行)

(イ)甲1発明に甲3発明を適用する際について
a 搬送対象
[甲1発明]
「果菜」。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第5ページ第18行)
[甲3発明]
「果菜」は想定されていない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第5ページ第20行);「小物類」。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第5ページ第22行);甲3発明では搬送物としては、窪み部に安定した状態で保持可能な大きな角形物を想定しており、傷付き易く、小形で不安定な「果菜」は想定されていないといえる。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第7ページ第4ないし6行)

b 課題・効果
[甲1発明]
秤量バケットを可倒させて果菜を落下させる場合の果菜の傷付きを防止することにある。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第8ページ第21及び22行)
[甲3発明]
果菜の傷付きを防止することは存在しない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第9ページ第15行)

c 構造又は技術思想
[甲1発明]
果菜は、大きさ、形状等が二つとして同じものがなく、傷付き易い。甲1発明はこの様な特性の果菜の自動選別装置であり、上記課題を解決するために、一方向転式(循環回転式)のベルトコンベア3を採用し、そのベルトコンベア3に果菜を載せて搬送する間に果菜の形状や大きさを計測し、計測データに基づいて等階級を判別し、判別結果に応じてベルトコンベア3を果菜搬送方向側方に回転させて果菜を送り出して等階級別に振分けるものである。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第9ページ第20ないし25行)
[甲3発明]
甲3発明は、搬送物Pの仕分けコード番号を読み取る(予め判別されて仕分け先が決まっている)方式であり、甲3発明には、果菜を搬送することも、搬送中に果菜を傷付かないようにすることも、搬送中の果菜の形状や大きさを計測して判別することも開示されていないので、甲1発明と技術思想が根本的に異なる。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第10ページ第21ないし25行)

d 動機付けがないことについて
(a)甲1発明と甲3発明は、対象とする搬送物、解決課題(目的)、技術思想のいずれにおいても相違するため、後者を前者に適用する動機付けは存在しない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第11ページ第2ないし4行)
(b)甲3発明の「搬送ユニット1」の「移送シート49」は、本件発明1の「果菜載せ体」の「搬送ベルト」に相当しない。
甲3発明の「搬送ユニット1」の「移送シート49」の構成、機能については、甲3の【0023】及び【0028】ないし【0032】に記載されている。
(b-1)しかし、甲3発明においては、移送シート49が常に弛んで窪んでいるため、果菜を載せるときも果菜を送り出すときも果菜が不安定になり、転倒し易く、果菜に傷が付き易い。例えば、甲3の図2において、移送シート49の左よりに果菜が載置されており、当該果菜が左側へ送り出される場合を想定すると、トマトや桃のような球状で不安定な果菜は、移送シート49に擦られながら、同シートの上で転がり、バー48bに引っかかることで、漸く左側へ送り出されることになるため容易に傷が付くことになる。これに対して、本件発明1の「搬送ベルト」は常に弛むことなく同じ状態に張っているため載せた果菜が安定し、果菜に傷が付く虞もない。
(b-2)甲3の移送シート49には小物類を載せる窪み部はあるが、窪み部と1対のバー48a、48bとの位置関係は特定されていない。
これに対して、本件発明1の搬送ベルトには仕切り体と受け部があり、仕切り体と受け部は、受け部に載せた果菜が仕切り体から僅かに離れているか、果菜が大きい場合は仕切り体の背面に接触する位置関係(特定の位置関係)にある(乙第1号証の写真6)。この特定の位置関係にあるため、「仕切り体は、搬送ベルトの受け部に載せた果菜の搬送状況、送り出し状況等に応じて、果菜を後方から支持して果菜を安定させ、受け部に果菜を載せるときの位置決めの目安となり、搬送ベルトから果菜引き受け体に果菜を送り出すときに、果菜を後方から押し出すことができるものである」(乙第1号証に記載)。
(b-3)従って、甲3発明の「搬送ユニット1」「移送シート49」、「窪み部」及び「バー48b」は、本件発明1の「果菜載せ体」、「搬送ベルト」、「受け部」及び「仕切り体」に相当しない。よって、甲3発明には相違点Aに係る構成が開示も示唆もされていない。
(b-4)また、甲3においては、搬送ユニット1に載せた物品を搬送中に計測部で計測して等階級等を判別可能とするために、仕切り体及び当該仕切り体と特定の位置関係にある受け部が、往回転後、復回転に伴ってその復回転方向の特定の戻り位置に戻るという本件発明1の構成についての開示も示唆もない。
(b-5)よって、仮に甲1発明に甲3発明を組み合わせることができたとしても、当業者は本件発明1を容易に想到することはできない。
(答弁書第6ページ第13ないし第9ページ第24行)
(c)甲3においては、搬送ユニット1に載せた物品を搬送中に計測部で計測して等階級等を判別し、搬送ユニット1の上の物品を判別結果に基づいて振り分けるということについては、開示も示唆もない。
したがって、ベルトコンベア3に載せた物品(果菜)を搬送中に計測部で計測して等階級等を判別して、当該判別結果に基づいてベルトコンベア3上の物品(果菜)を振り分けることを前提とする甲1発明とこのような前提を有しない甲3発明では、そもそも実質的な技術分野が異なるため、両者を組み合わせる動機付けが存在するとはいえない。(答弁書第10ページ第10ないし17行)
(d)甲3発明で、「移送シートの中間部に窪み部を設けて、搬送物Pを安定した状態で保持する」というが、それは甲3発明の図7に示すように、搬送物Pが立方体の箱物の場合のことであり、本件発明1のように、転倒し易い形状の果菜(例えば、トマト)の場合は、「移送シートの中間部に窪み部」があったのでは、むしろ、果菜が転倒し易くなり、傷付きの原因になる。「移送シートの中間部に窪み部」があることは甲1発明と組み合わせて果菜を安定させる場合の阻害要因になる。
よって、甲1発明に甲3発明を採用することは、当業者にとって容易に想到できることではない。(答弁書第11ページ第28行ないし第12ページ第7行)

e まとめ
したがって、当業者は、甲1発明、甲3発明に基づいて本件発明1を容易に想到できたものではない。(答弁書第15ページ第9及び10行)

(ウ)甲1発明に甲4発明を適用する際について
a 搬送対象
[甲1発明]
「果菜」。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第11ページ第24行)
[甲4発明]
(a)「果菜」は想定されていない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第12ページ第1行)
(b)「大企業で扱われる様々な品物、梱包される品物、在庫管理等々が必要な物や小包や郵便袋」。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第12ページ第10及び11行)

b 課題・効果
[甲1発明]
秤量バケットを傾倒させて果菜を落下させる場合の果菜の傷付きを防止することにある。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第13ページ第5及び6行)
[甲4発明]
手動操作なしに物品を幾つかのステーションのうちの任意のものに移すという点で物品の分配と選別で遭遇した問題を克服するコンベア装置を提供すること(甲第4号証翻訳第2ページ第8及び9行)及び上記目的を達成することができ、かつきわめて効率的に動作する機構並びに理想的に小型の構造を特徴とする装置を提供することにある。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第13ページ第8ないし12行)

c 構造又は技術思想
[甲1発明]
甲1発明は大きさ、形状等が二つとして同じものがなく、傷付き易いという特性を有する果菜に関する自動選別装置であり、課題を解決するために、一方回転式(循環回転式)のベルトコンベア3を採用し、そのベルトコンベア3に果菜を載せて搬送する間に果菜の大きさや形状を計測し、計測データに基づいて等階級を判別し、判別結果に応じてベルトコンベア3を果菜搬送方向側方に回転させて果菜を送り出して等階級別に振分けるものである。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第13ページ第21ないし26行)
[甲4発明]
甲4発明は物品 53 の計測、識別(判別)方法については具体的な開示がない。少なくとも、「バー付きウェブ」に載せて搬送中に計測することは開示されていない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第14ページ第18ないし20行)

d 動機付けがないことについて
(a)甲1発明は果菜搬送中に果菜の形状、大きさ等を計測して判別するのに対し、甲4発明は物品 53 の計測、識別(判別)方法については具体的な開示がない。少なくとも、「バー付きウェブ」に載せて搬送中に計測することは開示されていないので、甲1発明と甲4発明は技術思想が根本的に異なり、共通性がない。したがって、甲1発明に甲4発明を適用する動機付けはない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第14ページ第17ないし21行)
(b)甲1発明と甲4発明は、対象とする搬送物、解決課題(目的)、技術思想のいずれにおいても相違するため、後者を前者に適用する動機付けは存在しない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第14ページ第23ないし25行)

e まとめ
したがって、当業者は、甲1発明、甲4発明に基づいて本件発明1を容易に想到できたものではない。(答弁書第15ページ第9及び10行)

イ 本件発明2について(答弁書第15ページ第11行ないし第17ページ第13行)
本件発明2の「受け部材」は果菜搬送方向に一列に並ぶように特定できるものである。これに対して、甲1発明の突起26は、その図4(a)、(b)から明らかなように、ベルトの全面に突設されている。しかも、その突起は図4(b)から明らかように、果菜搬送方向両側が高く中央部が低くなっており、V字状になっている。このため、本件発明2の受け部材のように、果菜搬送方向に一列に並ぶようには特定できない。
また、本件発明2の「受け部材」は、単に果菜の転がりを防止するだけのものではなく、本件発明1の構成を前提とした「受け部材」である。したがって、その「受け部材」は当然に「仕切り体」との関係で特定の位置関係にあるものである。しかしながら、甲1発明には本件発明1の「仕切り体」に相当するものがない上に、甲1発明の「多数の突起26」はベルトの全面に設けられているだけであるから、本件発明2のように「仕切り体」と特定の位置関係にあるものではない。
したがって、甲1発明の「突起26」は本件発明2の「受け部材」に相当しない。
また、甲5発明の【0016】には「また各野菜受け止め体7・円板状の座20ともスポンジ(弾性体の一例)で一体形成して、図10(ロ)、(ハ)に示すように、作業者がレタスをはめ込むに伴って、各野菜受け止体7が弾性変形することで、その果菜受け部7aが径方向外方側に弾性後退するように構成してある。」と記載されていることから、レタスを載せるのではなく、はめ込むものである。
このようにはめ込むのは「葉が全体的に開き気味になっていることが多いレタスを絞り込んで野菜保持部6にはめ込むことで、レタスを野菜受け部7aの弾性復帰力で絞り込み状態のまま安定保持できる」(【0016】)ようにするためである。
しかし、このような野菜受け止め体7は、本件発明2の受け部材のように仕切り体と特定の位置関係にあるものではない。また、上記のように保持したのでは、果菜を側方に送り出す本件発明では、側方に送り出すことができない。
したがって、甲5発明の野菜受止め体7を甲1発明に適用する動機付けはなく、むしろ阻害要因があり、また、仮に適用したとしても、当業者が、仕切り体と特定の位置関係にある本件発明2の受け部材の構成を想到することはない。
よって、本件発明2は甲1発明、甲3発明、甲4発明、甲5発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できた、とする請求人主張は失当である。

ウ 本件発明3について(答弁書第17ページ第14行ないし第20ページ第13行)
ベルトコンベア3に載せた物品(果菜)を搬送中に計測部で計測して等階級等を判別して、当該判別結果に基づいてベルトコンベア3上の物品(果菜)を振り分けることを前提とする甲1発明とこのような前提を有しない甲3発明、甲4発明では、そもそも実質的な技術分野が異なるため、そもそも両者を組み合わせる動機付けが存在するとはいえない。甲3発明の「移送シート49」、「窪み部」及び「バー48b」は、本件発明1の「搬送ベルト」、「受け部」及び「仕切り体」とは構成も動作も全く異なる。このため、甲3発明がその【0029】に、「搬送物Pの仕分けが終了したのち枠部材37は、搬送物の投入路Bに至る以前に図示しないが基盤11上に設けた復元用ガイド板とガイドローラ51との作用により、搬送ユニット1は再び中立位置に導かれ、以上の動作が繰り返される」と記載されているとしても、それによって、本件発明3のように、「送り出後の搬送ベルトの復回転により、仕切り体と特定の位置関係にある受け部が復回転方向の特定の戻り位置に戻り、搬送方向に一列又は略一列に並ぶ」ということはない。
また、請求人が引用する甲4の開示は、「反対方向にウェブ82を移動させて定常位置に戻す」ことのみであって、本件発明3のように、「送り出後の搬送ベルトの復回転により、仕切り体と特定の位置関係にある受け部が復回転方向の特定の戻り位置に戻り、搬送方向に一列又は略一列に並ぶようにする」ものではない。
本件発明3は、甲1発明、甲3発明及び/又は甲4発明から当業者が容易に想到できるものではない。

エ 本件発明4について(答弁書第20ページ第14行ないし第21ページ第6行)
本件発明4は、搬送ベルトが往回転し、果菜を送り出した後に、復回転し、ベルトの上の特定の位置関係にある受け部と仕切り体を元の位置(特定の戻り位置)に戻して搬送方向に一列に揃える果菜載せ体から、果菜を二以上の果菜受け体に送り出し、果菜受け体がこれを引き受けるものである。
このような構成は、往復回転しないベルトから送り出される果菜を果菜選別籠11で受ける甲1発明には開示されていない。
また、甲1発明の果菜選別籠11は固定式であり、別体である数個の果菜選別籠11を横に並べたものではなく、横長のものを仕切り板9で仕切って区画したものに過ぎないため、甲1発明には、別体の果菜選別籠を間隔をあけて複数配置するという技術思想は存在しない。
よって、本件発明4は、甲1発明、甲3発明及び/又は甲4発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものではない。

オ 本件発明5について(答弁書第21ページ第7行ないし第23ページ第21行)
甲2発明の果菜物が移載される毎に回転する整列コンベア5と、本件発明5の果菜が送り出される度に回転する果菜引受け体とは、間欠移動の目的が異なり、その結果その構成も異なるものであるから、甲2発明には本件発明5に対応する構成が開示されているとはいえない。
したがって、本件発明5は、甲1発明ないし甲4発明に基づいて当業者が容易に想到することはできない。

カ 本件発明6について(答弁書第23ページ第22行ないし第24ページ第16行)
甲3発明及び甲4発明には、搬送中に物品を計測部で計測して等階級等を判別し、搬送体上に載せた物品を当該判別結果に基づいて振り分けるということについては開示も示唆もされていないため、ベルトコンベア3に載せた果菜を搬送中に計測部で計測して等階級等を判別して、当該判別結果に基づいてベルトコンベア3上の果菜を振り分けることを前提とする甲1発明とは技術分野が異なり、両者を組み合わせる動機付けは存在しない。
また、甲1発明、甲3発明及び/又は甲4発明には、本件発明6の特徴である搬送ベルトを往回転と反対方向に戻り回転させて、受け部を元の位置に戻して、多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べることは開示も示唆もされていないので、仮に、甲1発明に甲3発明及び/又は甲4発明を組み合わせても本件発明6は完成されない。
したがって、甲1発明に甲3発明及び/又は甲4発明を適用することは当業者にとって容易ではないし、仮に甲1発明に甲3発明及び/又は甲4発明を組み合わせることができたとしても、当業者が本件発明6を容易に想到することはできない。

キ 本件発明7について(答弁書第24ページ第17行ないし第25ページ第16行)
甲1発明の果菜選別籠11は、往復回転しないベルトから送り出される果菜を受け取る一つの籠でしかない。しかも、別体である数個の果菜選別籠11を横に並べたものではなく、横長のものを仕切り板9で仕切って区画したものであるため、そこには、別体の果菜選別籠を間隔を空けて複数配置するという技術思想は存在しない。
よって、本件発明7は、甲1発明、甲3発明及び/又は甲4発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものではない。

ク 本件発明8について(答弁書第25ページ第17行ないし第26ページ第8行)
甲2発明において、受け台8から果菜物が移載される毎に整列コンベア5を移動させることと、本件発明8の果菜載せ体から果菜が送り出される度に果菜引受け体を移動させることとは、間欠移動の目的が異なり、その結果その構成も異なるものであるから、甲2発明には本件発明8に対応する構成が開示されているとはいえない。
また、甲1発明、甲3発明、甲4発明には果菜または物品が送られる度に、果菜選別籠11、シュートC、シュート54をそれぞれ間欠移動させることは何ら開示されていない。
したがって、本件発明8は、甲1発明ないし甲4発明に基づいて当業者が容易に想到することはできない。

(2)無効理由2-2(甲2発明を主引例とする無効理由)に対して
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲2発明との対比
甲2発明の「受け台8」は傾動式であるため、従来技術である甲第1号証の図7の傾動式の「秤量バケットE」と同じであり、本件発明1のベルトコンベア式の「果菜載せ体」とは異なる。(答弁書第26ページ第17ないし19行)

(イ)甲2発明に甲3発明を適用する際について
a 搬送対象
[甲2発明]
「果菜」。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第15ページ第7行)
[甲3発明]
「果菜」は想定されていない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第15ページ第10行)

b 課題・効果
[甲2発明]
ベルトコンベアを回転させて、斜設した受けボックス 58 内にキューイKを連続供給する場合に生ずる次の課題を解決することにある。
(a)ベルトコンベアを回転させて、斜設した受けボックス 58 内にキューイKを連統供給する場合に生ずる課題、即ち、(ベルトコンベアの回転により)キューイKを転動させて受けボックス58内に整列させると、受けボックス58の下流側内壁面にキューイKが当接したり、或いは整列されるキューイKの相互接触により、キューイKの外周面に打ち傷や擦り傷が付くことがあり、キューイKの商品価値が損なわれること。
(b)キューイKを相互接触させて整列するので、左右又は前後に隣接するキューイKの相互接触抵抗により、次列のキューイKの整列が妨げられ、吸着ユニット59に垂設した吸着子60とキューイKとの吸着位置がずれると、キューイKの吸着保持に充分な負圧が得られず、キューイKの吸着保持が困難であったり移動中にキューイKが落下する等の箱詰ミスが生じること。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第15ページ第16行ないし第16ページ第5行)
[甲3発明]
甲3の解決課題には、果菜の傷付きを防止することは存在しない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第9ページ第15行並びに第16ページ第7及び8行)

c 構造又は技術思想
[甲2発明]
甲2発明は搬送される果菜のサイズ、品質、重量を搬送中に測定し、当該測定結果に基づき果菜を振分け選別する自動選別装置において、上記課題解決のために、凹状の受け部15aが一定間隔で設けられた受けベルト15を採用し、傾倒式トレイ(受け台8)から落下された果菜が受け部15aに供給されて一定間隔で一列に並び、吸着具で吸着されて箱詰めされるようにするものである。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第16ページ第17ないし21行)
[甲3発明]
甲3発明は、搬送物Pの仕分けコード番号を読み取る(予め判別されて仕分け先が決まっている)方式であり、甲3発明には、果菜を搬送することも、搬送中に果菜を傷付かないようにすることも、搬送中の果菜の形状や大きさを計測して判別することも開示されていないので、甲1発明と技術思想が根本的に異なる。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第10ページ第21ないし25行並びに第16ページ第23及び24行)

d 動機付けがないことについて
(a)甲2発明と甲3発明は、対象とする搬送物、解決課題(目的)、技術思想のいずれにおいても相違するため、後者を前者に適用する動機付けは存在しない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第17ページ第7ないし9行)
(b)甲2発明、甲3発明のいずれも、ベルトの上に受け部と仕切り体を特定の位置関係で設けることも、搬送ベルトが往回転し、果菜を送り出した後に、復回転し、ベルトの上の特定の位置関係にある受け部と仕切り体を元の位置(特定の戻り位置)に戻して搬送方向一列に揃えて、次回の搬送、計測を容易にするという構成を有しないため、甲2発明及び甲3発明を組み合わせても本件発明1は完成されない。(答弁書第30ページ第4ないし9行)

e まとめ
よって、甲2発明に甲3発明を適用することは当業者にとって容易ではないし、仮に甲2発明に甲3発明を組み合わせることができたとしても、当業者が本件発明1を容易に想到することはできない。(答弁書第30ページ第10ないし12行)

(ウ)甲2発明に甲4発明を適用する際について
a 搬送対象
[甲2発明]
「果菜」。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第17ページ第17行)
[甲4発明]
「果菜」は想定されていない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第17ページ第19行)

b 課題・効果
[甲2発明]
ベルトコンベアを回転させて、斜設した受けボックス 58 内にキューイKを連続供給する場合に生ずる次の課題を解決することにある。
(a)ベルトコンベアを回転させて、斜設した受けボックス 58 内にキューイKを連統供給する場合に生ずる課題、即ち、(ベルトコンベアの回転により)キューイKを転動させて受けボックス58内に整列させると、受けボックス58の下流側内壁面にキューイKが当接したり、或いは整列されるキューイKの相互接触により、キューイKの外周面に打ち傷や擦り傷が付くことがあり、キューイKの商品価値が損なわれること。
(b)キューイKを相互接触させて整列するので、左右又は前後に隣接するキューイKの相互接触抵抗により、次列のキューイKの整列が妨げられ、吸着ユニット59に垂設した吸着子60とキューイKとの吸着位置がずれると、キューイKの吸着保持に充分な負圧が得られず、キューイKの吸着保持が困難であったり移動中にキューイKが落下する等の箱詰ミスが生じること。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第15ページ第16行ないし第16ページ第5行並びに第18ページ第1及び2行)
[甲4発明]
手動操作なしに物品を幾つかのステーションのうちの任意のものに移すという点で物品の分配と選別で遭遇した問題を克服するコンベア装置を提供すること及び上記目的を達成することができ、かつきわめて効率的に動作する機構並びに理想的に小型の構造を特徴とする装置を提供することにある。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第13ページ第8ないし12行並びに第18ページ第4及び5行)

c 構造又は技術思想
[甲2発明]
甲2発明は搬送される果菜のサイズ、品質、重量を搬送中に測定し、当該測定結果に基づき果菜を振分け選別する自動選別装置において、上記課題解決のために、凹状の受け部15aが一定間隔で設けられた受けベルト15を採用し、傾倒式トレイ(受け台8)から落下された果菜が受け部15aに供給されて一定間隔で一列に並び、吸着具で吸着されて箱詰めされるようにするものである。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第16ページ第17ないし21行並びに第18ページ第11及び12行)
[甲4発明]
甲4発明は物品53の計測、識別(判別)方法については具体的な開示がない。少なくとも、「バー付きウェブ」に載せて搬送中に計測することは開示されていない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第14ページ第18ないし20行並びに第18ページ第14及び15行)

d 動機付けがないことについて
(a)甲2発明と甲4発明は、対象とする搬送物、解決課題(目的)、技術思想のいずれにおいても相違するため、後者を前者に適用する動機付けは存在しない。(被請求人の口頭審理陳述要領書の第18ページ第23ないし25行)
(b)甲2発明、甲4発明のいずれも、ベルトの上に受け部と仕切り体を特定の位置関係で設けることも、搬送ベルトが往回転し、果菜を送り出した後に、復回転し、ベルトの上の特定の位置関係にある受け部と仕切り体を元の位置(特定の戻り位置)に戻して搬送方向一列に揃えて、次回の搬送、計測を容易にするという構成を有しないため、甲2発明及び甲4発明を組み合わせても本件発明1は完成されない。(答弁書第30ページ第4ないし9行)

e まとめ
よって、甲2発明に甲4発明を適用することは当業者にとって容易ではないし、仮に甲2発明に甲4発明を組み合わせることができたとしても、当業者が本件発明1を容易に想到することはできない。(答弁書第30ページ第10ないし12行)

イ 本件発明2について(答弁書第30ページ第14行ないし第31ページ第5行)
甲1発明の突起26は本件発明2の受け部材に相当しない。
また、甲5発明の野菜受止め体7を甲1発明に適用する動機付けはなく、むしろ阻害要因があり、また、仮に適用したとしても、当業者が、仕切り体と特定の位置関係にある本件発明2の受け部材の構成を想到することはない。
したがって、本件発明2は、甲2発明と、甲1発明、甲3発明、甲4発明、甲5発明及び周知技術とに基づいて、当業者が容易に想到できたものではない。

ウ 本件発明3について(答弁書第31ページ第6行ないし第32ページ第10行)
甲2発明と甲3発明及び/又は甲4発明にはそもそも組み合わせの動機付けがない。
また、甲2発明、甲3発明、甲4発明のいずれも、ベルトの上に受け部と仕切り体を特定の位置関係で設けることも、搬送ベルトが往回転し、果菜を送り出した後に、復回転し、ベルトの上の特定の位置関係にある受け部と仕切り体を元の位置(特定の戻り位置)に戻して搬送方向一列に揃えて、次回の搬送、計測を容易にするという構成を有しない。したがって、甲3発明及び甲4発明に、相違点Gに係る構成は開示されていない。
加えて、甲3発明において前記のように元に戻るのは、搬送路Aの左右に設けられた仕分けシュートCのいずれにも仕分けできるようにするためであり、甲4発明において前記のように元に戻るのは、搬送路の両サイドのシュート54(図2)のいずれにも仕分けできるようにするためである。これに対して、本件発明3で元に戻るのは、受け部が搬送方向に一列又は略一列に並んで、次に果菜を一列に並べ易くし、計測し易くするためであり、戻りの目的、効果も異なる。
したがって、甲2発明、甲1発明、甲3発明、甲4発明に基づいて、当業者が本件発明3を容易に想到することはない。

エ 本件発明4について(答弁書第32ページ第18ないし25行)
甲2発明の構造4aは、傾動する受け台8から落下されるキューイを受けベルト15の凹部15aに役人することである。これに対して、本件発明4は本件発明3に従属する発明であるため、搬送ベルトが往回転し、果菜を送り出した後に、復回転し、ベルトの上の特定の位置関係にある受け部と仕切り体を元の位置(特定の戻り位置)に戻して搬送方向に一列に揃える果菜載せ体から、果菜を受け体に送り出すものである。このような構成は甲2発明には開示されていない。よって、本件発明4は、甲2発明と、甲1発明、甲3発明及び甲4発明とに基づいて、当業者が容易に想到できたものではない。

オ 本件発明5について(答弁書第32ページ第26行ないし第33ページ第17行)
甲2発明の構造5a(受けベルト15の間欠移動)は、受け台8から落下されるキューイを受けベルト15の凹部15aに投入するための構造である。これに対して、本件発明5の発明特定事項5A(果菜引受け体の間欠移動)は、果菜載せ体から送られる果菜を凹部のないプールコンベアに果菜を送り出す際に、プールコンベアに果菜を受け入れるスベースを確保して、果菜を確実に送り込み可能にし、かつ、後から送られる果菜が、果菜引受け体の上にプールされている果菜へ衝突して傷付けることを防止するためのもので、一つの果菜受け体に多数の果菜を、凹部の数や間隔に制約されることなくプールすることを可能とするものである。
したがって、本件発明5に係る構成は甲2発明には開示も示唆もされていない。よって、本件発明5は、甲2発明と、甲1発明、甲3発明及び甲4発明とに基づいて、当業者が容易に想到できたものではない。

カ 本件発明6について(答弁書第33ページ第18行ないし第34ページ第27行)
甲2発明の「受け台8」は傾倒式であり、本件発明6の「果菜載せ体」は往復回転式のベルトコンベア式であるため、構成、機能において、本件発明6の「果菜載せ体」に相当しない。
甲2発明と甲3発明及び/又は甲4発明にはそもそも組み合わせの動機付けがない。
また、甲2発明、甲3発明、甲4発明のいずれも、ベルトの上に受け部を設け、搬送ベルトが往回転し、果菜を送り出した後に、復回転し、受け部を元の位置(特定の戻り位置)に戻して搬送方向一列に揃えて、次回の搬送、計測を容易にするという構成を有しない。
加えて、甲3発明における排出機構24の戻りは、搬送路Aの左右に設けられた仕分けシュートCのいずれにも仕分けできるようにするためであり、甲4発明におけるプラットホームの戻りは、搬送路の両サイドのシュート54(図2)のいずれにも仕分けできるようにするためである。これに対して、本件発明6で元に戻るのは、受け部が搬送方向に一列又は略一列に並んで、次に果菜を一列に並べ易くし、計測し易くするためであり、戻りの目的、効果が異なる。
したがって、甲2発明、甲1発明、甲3発明、甲4発明に基づいて、当業者が本件発明6を容易に想到することはできない。

キ 本件発明7について(答弁書第34ページ第28行ないし第36ページ第3行)
甲2発明の構造7a(間隔を開けて配置された二以上の整列コンベア)と本件発明7の発明特定事項7A(間隔を開けて配置された二以上の果菜引き受体)は、文言は類似する。しかし、本件発明7は、甲2発明、甲1発明、甲3発明、甲4発明に基づいては、当業者が容易に想到できたものではない本件発明6(果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜の等階級等を判別し、果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べることを特徴とする果菜自動選別方法)の従属発明であり、それを「果菜引受け体が搬送方向に間隔を開けて配置された」ことに特定したものである。
このため、本件発明7の果菜引き受体は、往回転し、果菜を送り出した後に、復回転し、ベルトの上の受け部を元の位置(特定の戻り位置)に戻して搬送方向に一列に揃える搬送ベルトから送り出される果菜を引き継ぐものである。
これに対して甲2発明はあくまでも傾動する受け台8から落下されるキューイを引き継ぐための整列コンベアであって、往回転し、果菜を送り出した後に、受け部が搬送方向に一列又はほぼ一列に揃うように復回転する搬送ベルト(本件発明6のベルト)から送り出される果菜を引き継ぐ整列コンベアを二以上の配置するものではない。
また、甲1発明、甲3発明及び甲4発明にも、往回転し、果菜を送り出した後に、受け部が搬送方向に一列又はほぼ一列に揃うように復回転するベルトから送り出される果菜を引き継ぐ引受け体を二以上配置することは開示されていない。
したがって、本件発明7は、甲1発明、甲3発明及び/又は甲4発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものではない。

ク 本件発明8について(答弁書第36ページ第4ないし19行)
甲2発明の構造8aと、本件発明8の発明特定事項8Aとは、間欠移動の目的が異なり、その結果その構成も異なるものであるから、甲2発明には本件発明8に対応する構成が開示されているとはいえない。
また、甲1発明、甲3発明、甲4発明には果菜または物品が送られる度に、果菜選別籠11、シュートC、シュート54をそれぞれ間欠移動させることは何ら開示されていない。
したがって、本件発明8は、甲2発明と、甲1発明、甲3発明及び甲4発明を組み合わせても完成されず、当業者が容易に想到できたものではない。

(3)「仕切り体」と「受け部」の位置関係及び「仕切り体」の機能について
ア 「仕切り体」と「受け部」の位置関係(被請求人の口頭審理陳述要領書の第2ページ第8ないし16行)
本件発明における「仕切り体」と「受け部」の位置関係は、本件特許請求の範囲に記載のとおり、「仕切り体」が「受け部」よりも往回転方向後方にある。「受け部」に載せた果菜の後部(果菜が迫り出される搬送方向側方の反対側)と「仕切り体」の位置関係は「受け部」に載せる果菜の大きさ及び「受け部」と「仕切り体」の「間隔」により異なる。
果菜が「受け部」と「仕切り体」との「間隔」よりも小さい場合は「受け部」に載せた果菜の後部は「仕切り体」から離れ、上記「間隔」よりも大きい場合は「仕切り体」に接触することもある。

イ 「仕切り体」の機能(被請求人の口頭審理陳述要領書の第2ページ第17行ないし第3ページ第21行)
(ア)位置決め目安機能
「受け部」が「仕切り体」よりも果菜が送り出される搬送方向側方側にあるため、「仕切り体」は果菜を「受け部」に職せる際の目印となる。これが、果菜を載せるときの「位置決め目安機能」である。
(イ)安定化機能
「受け部」が「仕切り体」よりも果菜が送り出される果菜搬送方向側方側にある(「仕切り体」が「受け部」よりも果菜が送り出される果菜搬送方向側方の反対側にある)ため、果菜の後部が「仕切り体」に接触している場合は搬送中に果菜を支持でき、「仕切り体」と接触していない場合であっても、果菜が搬送中に後方ヘスリップしたり、位置ずれしたり、後方に傾いたり、後方に転倒しそうになったりしたときには、「仕切り体」で後方から支持して果菜を安定させて、果菜の傷付きを防止することができる。これが「安定化機能」である。
(ウ)押し出し機能
「受け部」に載せた果菜を「果菜引き受け体」に送り出すときに、果菜が搬送ベルトの回転だけではスムースに送り出されない場合は、搬送ベルトの自転で搬送方向先方に移動する「仕切り体」により、果菜を「果菜引き受け体」に送り出すとことができる。これが「押し出し機能」である。
(エ)他の機能
被請求人が答弁書において主張した機能は上記(1)ないし(3)のとおりである。
本件発明3では「仕切り体」が「受け部」よりも往回転方向後方にあり、果菜を送り出した搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、上記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、上記往回転と逆方向に戻り回転する。このため、戻った搬送ベルトの「受け部」に載せた果菜は一列に揃い、測定(計測)精度を向上させるという機能もある。この機能は搬送ベルトの戻り回転と、特許請求の範囲に特定されている「受け部」により奏することのできる複合機能であり、効果でもある。この機能(効果)は、「受け部」と「仕切り体」との位置関係をこれ以上特定しなければ奏することができないことではない。

ウ まとめ(被請求人の口頭審理陳述要領書の第3ページ第22行ないし第4ページ第1行)
本件発明における「仕切り体」と「受け部」の位置関係及び、「仕切り体」の機能は上記のとおりであって、乙第1号証として提出した意見書及び答弁書で主張したものである。
よって、被請求人は、特許請求の範囲に記載の「仕切り体」と「受け部」の位置関係で十分であり、それ以上の特定は必要がないと考える。

5 無効理由全体に対する答弁の概要(答弁書第36ページ第20行ないし第37ページ第5行)
本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、請求項自体から明確であるので、本件特許は、特許法第36条第6項第1号又は第2号に規定する要件を満たしている。また、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が上記技術思想の実現をすることができる程度に明確かつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているので、本件特許は、特許法第123条第1項第4号に該当せず、無効とされるべきではない。
さらに、本件発明は、甲1発明と、甲2発明ないし甲5発明及び周知技術とを適宜組み合わせても、甲2発明と、甲1発明、甲3発明ないし甲5発明及び周知技術を適宜組み合わせても、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効とされるべきではない。

6 本件発明についての主張の概要
(1)本件発明と甲第1号証ないし甲第5号証との比較
ア 解決課題の比較(答弁書第45ページ第22行ないし第47ページ第14行)
(ア)甲1発明の解決課題(目的)
甲1発明の目的は、傷みやすいトマトや桃等の果菜を傷付けることなく選別することができる自動選別装置を提供することである。
(イ)甲2発明の解決課題(目的)
甲2発明の目的は、キューイKを転動させて受けボックス58内に整列する場合の課題を解決することにある。
(ウ)甲3発明の解決課題(目的)
甲3発明の目的は、甲第3号証の【0003】ないし【0005】に記載の課題(不都合)を解消するものである。その課題は次のとおりであった。
【0003】ところが上記した従来構成のものにおいて、スクレーパを用いる方式の場合は、スクレーパにより搬送物(小物類)を側方に押圧する構成であるため搬送速度が高速となるほど搬送物に対する衝撃が大きくなり搬送物に損傷を与える惧れがあるばかりでなく、ビンなどの破損し易い搬送物の搬送には不適当であり、また搬送面とスクレーパ下面との間に多少とも空隙が存在するので薄物の搬送物の搬送にも不適当であり、搬送物の種類が限定されるという不都合があった。
【0004】また傾動可能なトレイを備えた方式の場合は、トレイを傾動して搬送物を自由落下する構成であるから、落下する搬送物にスピードがついて仕分け受け口で搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じる惧れがあり、従って破損し易い搬送物の搬送には不向きであると共に、底面の摩擦係数が大きい搬送物の場合、自由落下が円滑に行われないという不都合を有する。
【0005】さらにまた、移送ベルトを水平回転させる方式の場合、移送ベルトの表面が水平面であることにより搬送の過程でビンや缶などの円筒物が転動して落下する惧れがあり、また仕分け時に移送ベルトが静止状態から急回転するので、重心の不安定な搬送物は慣性により仕分け方向と反対方向に転勤する惧れがあって仕分けの確実性が劣るなどの不都合があった。
(エ)甲4発明の解決課題(目的)
甲4発明の目的は、手動操作なしに物品を幾つかのステーションのうちの任意のものに移すという点て物品の分配と選別で遭遇した問題を克服するコンベア装置を提供することである。本発明のより特定の目的は、上記の目的を達成することができ、かつきわめて効率的に動作する機構並びに理想的に小型の構造を特徴とする装置を提供することである。
(オ)甲5の解決課題(目的)
甲5発明の目的は、球状野菜を野菜受け部で安定保持できるようにする点にある。
(カ)各号証の解決課題(目的)の小括
前記のように甲1ないし甲5の解決課題はすべて異なっており、共通性がない。したがって、甲1発明ないし甲5発明は少なくとも解決課題においては組み合わせの動機付けがない。

イ 本件発明と甲1発明ないし甲5発明との技術の比較(答弁書第47ページ第15行ないし第49ページ第9行)
(ア)甲1発明との比較
甲1発明には、ベルトコンベアを使用することは開示されているがそれは往復しない循環回転式である。甲1発明には、本件発明のように傷付き防止、正確な計測のための受け部及び仕切り体が存在しない。
したがって、本件発明は甲1発明と技術的共通性がない。
(イ)甲2発明との比較
甲2発明は果菜箱詰め装置であり、傾動式の受け台8を使用するものであり、その受け台8から落下する果菜を、受けベルト15に一定間隔で設けられている凹状の受け部15a内に一列に揃えるために、受けベルト15を間欠移動させるものである。
そのため、この間欠移動は、凹状の受け部15aの間隔に対応した間欠移動であり、また間欠移動するタイミングは、受け部15aにキューイKを受けてからである。これに対して、本件発明は、甲2発明のような凹状の受け部15aを備えていない果菜受け体に、搬送ベルトが往回転し、果菜を送り出す果菜載せ体から果菜を送り込む際に、果菜を引き継ぐスベースを確保し、スムーズに果菜を引き受けるために間欠移動するものである。従って、甲2発明の受けベルト15の間欠移動は本件発明の果菜受け体の間欠移動とは意味合いが異なる。
したがって、本件発明は甲2発明とも技術的共通性がない。
(ウ)甲3発明との比較
甲3発明は、上記した従来のものの不都合を解消するために、搬送路に沿って搬送ユニットを搬送し、その搬送過程において、搬送ユニット上の搬送物を搬送方向と直交方向に設けた仕分けシュートに搬出する小物類の仕分け装置において、搬送ユニットが、搬送方向と直交する方向に走行可能であって端部位置で巻回される搬送物を載置する移送シートを備えて成り、この移送シートは、常態で中間部が窪んであり、この状態で移送シートを仕分けシュートに対応する位置で走行させることにより、搬送物を移送シートの走行方向の端部位置で仕分けシュートに搬出することを特徴とするものである。
しかもその移送シートは図6、図7に示すように中間部で窪んだ状態でスライドして品物を送り出すもので、およそ果菜を傷付けずに送り出すことができるようなものではない。本件発明のベルトコンベア式果菜受け体のベルトのように平坦ではなく、平坦な状態で往回転して果菜を送り出し、平坦な状態で復回転して、特定の位置関係にある受け部と仕切り体を一列に並ぶように戻して、次回の搬送、計測を容易にするものとは異質である。
したがって、本件発明は甲3発明とも技術的共通性がない。
(エ)甲4発明との比較
甲4発明はプラットホームがベルト式であることにおいて、本件発明と共通するが、そのベルトは、本件発明のように、特定の位置関係にある受け部と仕切り体を備えていない。従って、当然に、本件発明のように、復回転して、特定の位置関係にある受け部と仕切り体を一列に並ぶように戻して、次回の搬送、計測を容易にすることもない。
したがって、本件発明は甲4発明とも技術的共通性がない。
(オ)甲5発明との比較
甲5発明は、葉が外側に広がるレタスのように球状野菜の搬送に関するものであり、レタスを弾性変形する菜受止め体7・円板状の座20にはめ込んで、レタスを野菜受け部7aの弾性復帰力で絞り込み状態のまま安定保持するものである。
これに対して、本件発明の受け部材は、甲5発明のようにはめ込むものでも、弾性変形するものでもなく、単に、載せるだけのものである。本件発明において、甲5発明のはめ込み方式の野菜受止め体7・円板状の座20を採用したのでは果菜を果菜引受け体に送り出すことができなくなる。
したがって、本件発明は甲5発明とも技術的共通性がない。

(2)甲1発明ないし甲5発明に基づく本件発明の容易想到性(答弁書第49ページ第10行ないし第50ページ第11行)
以上のように、甲1発明ないし甲5発明には課題(目的)に共通性がなく、その目的達成のための課題解決手段にも共通性がない。
また、甲3発明及び甲4発明は、それら発明の構成上、傷付きにくく、傷みにくく、同じ又は略同じ形状の品物の中から、品種、行き先等を判別して仕分けするための搬送、仕分けに関する技術分野に属するものである。
これに対して甲1発明は、傷付き易く、傷み易く、形状、大きさが一つずつ異なる(二つとして同じものがない)果菜を傷付けることなく搬送し、搬送中に測定し、仕分けして選別するものであるから、単なる搬送に関する技術分野のものではなく、計測並びに傷付き防止に関する技術分野のものである。
したがって、甲1発明と甲3発明及び甲4発明は属する技術分野が異なっている上に、甲3発明及び甲4発明を果菜に適用すれば、傷だらけにしてしまうため、甲1発明に甲3発明又は甲4発明を組み合わせることには阻害要因があるといえる。また、甲2発明もまた傷つきやすい果菜を取り扱うことを前提とする発明であることからすれば、甲2発明に甲3発明又は甲4発明を適用することについても阻害要因があるといえる。
よって、甲1発明ないし甲5発明には課題(目的)の共通性がなく、目的達成のための技術にも共通性がない。また、甲1発明又は甲2発明に甲3発明又は甲4発明の技術を適用することについては阻害要因があるといえる。したがって、甲1発明ないし甲5発明を組み合わせることは、動機付けがなく容易想到でもない。
仮に、甲1発明ないし甲5発明を組み合わせたとしても、甲1発明ないし甲5発明のいずれにも、傷付きやすい果菜を傷付けることなく、二つとして同じ形状、大きさのものが存在しない果菜を正確に計測して等階級の仕分け精度を高めるために、果菜載せ体の搬送ベルトに受け部と仕切り体を特定の位置関係で設け、搬送ベルトが往回転して果菜を側方へ送り出した後に、戻り回転して、受け部及び仕切り部が特定の戻り位置に戻り、受け部が搬送方向に一列に揃うようにして次回の搬送、計測を容易にするという構成は開示も示唆もされていないので、本件発明が完成されることはない。
よって、本件発明は当業者といえども、甲1ないし甲5に基づいて容易に発明することができたものではなく、特許維持される進歩性がある。


第6 無効理由1についての当審の判断
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)及び第2号(明確性要件)の検討
(1)無効理由1における特許法第36条第6項第1号又は第2号に係る請求人の主張について
請求人の主張は、本件特許明細書等には、本件発明1及び6の技術思想としてそれぞれ、
(ア)「仕切り体及び当該仕切り体と特定の位置関係にある受け部を、往回転後、復回転に件ってその復回転方向に戻すことにより、特定の戻り位置に戻して、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる。」、及び
(イ)「搬送ベルトに設けられた受け部について、往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の特定の位置に戻して、多数の物品の載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べるようにして、次回の計測部での計測をし易くすることができることになる」、
は一切記載されておらず、また、本件発明1において、
(ウ)搬送ベルトの回転動作及び仕切り体に関し、本件発明1においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、仕切り体は「搬送ベルトの上方であって受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」という発明特定事項、及び、本件発明6において、
(エ)搬送ベルトの回転動作及び受け部に関し、本件発明6においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、受け部について「往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の位置に戻して、多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」という発明特定事項、
を採用した目的及び効果についても明らかにされていないので、上記技術思想を把握することはできない。したがって、本件発明1及び6における上記技術思想は、発明の詳細な説明に記載したものではない、若しくは請求項自体から明確ではないので、本件特許の特許明細書における特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号又は第2号に規定する要件を満たしていない、というものである。

(2)本件特許明細書等の記載から分かること
ア 特許明細書の段落【0009】には、
「【発明の実施の形態】
・・・(中略)・・・図1の2は、トマト3を載せて搬送する果菜載せ体であり、前記チェーン1に一列に等間隔で連結されており、図中の矢印a方向に進行するようになっている。・・・(後略)・・・」
と記載されているとおり、果菜載せ体を一列に等間隔で連結することが記載されており、特許図面の図1及び図3には果菜載せ体の受け部(受け部材13)が計測部Bの手前で一列に並んでいる状態が示されている。したがって、本件発明1及び6において「元の位置に戻す」ということは、果菜載せ体の受け部(受け部材13)が特許図面の図1及び3のように一列に並ぶ、ということに他ならない。一列に並んだ「受け部」に果菜を載せれば、果菜が一列に並んで搬送され、計測部での計測が可能となる、という効果が奏されることは当業者であれば明らかなことである。

イ また、このことは、特許明細書の段落【0014】の「この丸穴30、31は、トマト3から染み出した液体を下に排出する役割も有するが、透過型の糖度センサを用いて等階級の判別を行う場合には、トマト3の直上から下向き投射した光の透過光をこの丸穴を通して受光素子で観測することにより、効果的に糖度を検出することができる。」との記載に鑑みても明らかである。請求人は、当該記載は搬送ベルトを戻すことによる効果を記載したものではないとする。しかしながら、搬送ベルトがもとの位置に戻されており、計測部の手前において受け部が一列に並んでおり、測定対象となる果菜の位置が安定しているからこそ、「トマト3の直上から下向き投射した光の透過光をこの丸穴を通して受光素子で観測すること」が可能となる(果菜の位置がばらついていれば、下向き投射した光の透過光が果菜に当たらなかったり、丸穴を通らず受光素子に届かなかったりする事態が生じ得るのは明らかである。)のであるから、当該記載もまた、搬送ベルトがもとの位置に戻されており、計測部の手前において受け部が一列に並んでいることにより、計測部での計測が可能となることを示しているものといえる。

ウ また、搬送ベルトの往回転に伴って受け部が元の位置に戻ると、計測部での次回の計測が可能となることは前記したとおりであり、特許明細書に「目的」、「効果」として特別に明記するまでもなく、本件発明1ないし8の発明特定事項や、特許明細書に記載された実施例に関する記載から、当業者が当然に奏されると理解できる効果である。

(3)小括
したがって、本件発明1及び6については、それぞれ順に上記(1)(ウ)に示した発明特定事項及び上記(1)(エ)に示した発明特定事項を含むことにより、上記(2)アないしウに示したように、果菜の計測部での計測が可能となるという効果を奏することが理解できるから、発明の詳細な説明に記載したものである(サポート要件あり)といえ、また、特許請求の範囲の請求項1及び6自体の記載から明確であるため(明確性あり)、特許明細書における特許請求の範囲の請求項1及び6の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしている。また、請求項1を引用する請求項2ないし5並びに請求項6を引用する請求項7及び8についても同様である。

2 特許法第36条第4項第1号の検討
(1)無効理由1における特許法第36条第4項第1号に係る請求人の主張の要旨
上記1(1)の請求人の主張に加え、上記1(1)の(ウ)及び(エ)の発明特定事項を採用した目的及び効果についても明らかにされていないので、特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が上記1(1)の(ア)及び(イ)の技術思想の実現をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。

(2)特許明細書等の記載について
特許明細書には、
(ア)「【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の果菜自動選別装置の実施形態を部分的に示した平面図であり、トマトを選別する場合の例である。図1の1は図示されていない駆動機構により矢印a方向に進行されるチェーン(無端搬送帯)であり、平行して2本設けられている。図1の2は、トマト3を載せて搬送する果菜載せ体であり、前記チェーン1に一列に等間隔で連結されており、図中の矢印a方向に進行するようになっている。この図1では、装置全体のうち、搬送方向手前側部分である果菜載せ体2にトマト3を載せるトマト供給部の一部分Aと、トマト3の等階級を計測するカメラ等の計測装置が設置された計測部Bと、トマト3を等階級別に仕分けする部分のプール用ベルトコンベア(果菜引受け体)4のうちの1本だけを示してある。全体的な構成は図3に示すように、数人の人手で果菜載せ体2にトマト3を載せることができるようトマト供給部の範囲は広く、またプール用ベルトコンベア4も所定の間隔を空けて多数本設けられ、装置全体としては非常に長尺なものとなっている。」(段落【0009】)、
(イ)「【0013】
なお、前記図2の切替えピン21の切替え動作は、図1、図3の計測部Bで作り出される判別信号に基づいて制御されるようになっており、例えば、トマト3の等階級がAMと判別された場合には、AMのトマト3を引き受けるプール用ベルトコンベア4のところに設けられている切替えピン21が動作して該トマト3をAMをプールするためのプール用ベルトコンベア4に引き渡すようになっている。また、図1、図2、図3には、果菜載せ体2の搬送ベルト12を図2(a)の矢印b方向に動かす斜めガイドレール20だけを示したが、本発明の装置には矢印b方向に進行させた搬送ベルト12をもとの位置に戻すための逆傾斜のガイドレールも備えられている。
【0014】
(他の実施形態)
図4に示すように、図2の搬送ベルト12の上側部分のベルト面に直径2、3cm程度の丸穴31を開口し、同穴31と一致させて受け皿型の受け部材13にも同様の丸穴30を開口して、トマト3を載せる部分の中央に一連の丸穴30、31ができるようにすることができる。この丸穴30、31は、トマト3から染み出した液体を下に排出する役割も有するが、透過型の糖度センサを用いて等階級の判別を行う場合には、トマト3の直上から下向き投射した光の透過光をこの丸穴を通して受光素子で観測することにより、効果的に糖度を検出することができる。また、一連の丸穴30、31を設けることにより、トマト3の下部をより下方に沈ませることができるようになり、したがって、受け部材13自体の厚みを減らして、同受け部材13の可撓性を高めることができる。」(段落【0013】及び【0014】)
と記載されており、これらの記載及び特許図面の図1ないし6の記載からみて、本件発明1ないし8において、上記1(1)の(ウ)及び(エ)に示した発明特定事項を採用したことにより、搬送ベルトが往回転した後、復回転に伴って戻ることによって次回の計測部での計測が可能となるという効果を奏することは、直接の記載はないものの、当業者であれば把握可能なことである。

(3)小括
したがって、特許明細書における発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1ないし8の実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載されており、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしている。

3 無効理由1についてのまとめ
上記1及び2のとおり、本件特許の特許明細書における特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号又は第2号に規定する要件を満たしており、また、本件特許の特許明細書における発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしているので、本件発明1ないし8についての特許は、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効とすることはできないから、請求人の主張する無効理由1は理由がない。


第7 無効理由2についての当審の判断
1 各甲号証
1-1 甲第1号証
(1)甲第1号証に記載された事項
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】チェーン等の走行体1に、果菜や小荷物等の物品2を載せることができ且つ走行体1の横方向に回動可能な多数のベルトコンベア3を取り付け、各ベルトコンベア3の回動、停止を外部からの信号により制御可能としたことを特徴とする自動選別装置。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項1】)

イ 「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、各種の品物を大きさ(サイズ)別、重量別などに自動的に選別してより分ける選別装置に関するものであり、特にいたみやすい果菜の自動選別に適するものである。」(段落【0001】)

ウ 「【0005】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、図6の自動選別装置は、コンテナCの秤量バケットEから果菜Bを受台Gに送り出す際に、図7(b)に示すように秤量バケットEを可倒させて、果菜Bを転がして落とすため、例えば完熟トマトや桃等のいたみやすい果菜をこの自動選別装置で選別すると傷が付いたり、つぶれたりするという問題があった。
【0006】
本考案の目的は、いたみやすいトマトや桃等の果菜を傷付けることなく選別することができる自動選別装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案の自動選別装置は、図1、2に示すようにチェーン等の走行体1に、果菜や小荷物等の物品2を載せることができ且つ走行体1の横方向に回動可能な多数のベルトコンベア3を取り付け、各ベルトコンベア3の回動、停止を外部からの信号により制御可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
【作用】
本考案の自動選別装置では、図1、2に示すように、走行体1にベルトコンベア3を設けたので、このベルトコンベア3の上に物品2を載せれば走行体1の走行により、その物品2を搬送できる。また、ベルトコンベア3は走行体1の横方向に回動するので、同ベルトコンベア3を回動させれば、物品2が走行体1の側方に降ろされる。」(段落【0005】ないし【0008】)

エ 「【0009】
【実施例】
本考案の自動選別装置を桃やトマト等の果菜に応用した場合の一実施例を図1に示す。
同図に示す2は各種の物品であるが、ここでは桃やトマト等の果菜である。
同図に示す5は果菜2を搬送する搬送路である。この搬送路5の手前側には光学センサ10が設置されており、さらにその先の搬送路5の片側には仕切り板9でS、M、Lとサイズ別に3つに区分けされた果菜選別籠11が設置されている。
【0010】
前記光学センサ10は搬送路5を移動する果菜1のサイズを測定するもので、その測定値を搬送路5の下の演算装置12で処理して、予めセットされた条件に基づいて果菜2の等級をS、M、Lに分けるものである。この測定結果は、その先の搬送路5の上面に突き出し且つその長手方向に沿って一列に間隔をおいて取り付けられている多数の(図5に示した)電極30へ出力される。
【0011】
同図に示す1は前記搬送路5に沿ってゆっくりと移動する走行体であり、この実施例では平行に配置した2本の金属チェーン20をスプロケットギアとモータとからなる(図示していない)駆動装置で駆動している。この走行体1としてはチェーン20によるもの以外であってもよく、要は下記に説明する小型のベルトコンベア3を前記搬送路5に沿って巡回するように移動させることができるものであれば、例えばベルトコンベア等であってもよい。
【0012】
同図に示す3はベルトコンベアであり、選別する果菜2を載せて運ぶことができるように前記果菜2より少し大きな面積を有した小型のベルトコンベア3である。このベルトコンベア3は、ベルト23を回転させるローラー24と同ローラー24を駆動させるためのモータが内蔵されているもので、図2に示すようにチェーン20にピン21で連結された固定具22に取り外し可能に固定することができる。なお、このベルトコンベア3はチェーン20の走行方向に対して横向きになる。そして、このチェーン20に多数のベルトコンベア3を同チェーン20の移動方向に沿って取り付ける。
【0013】
また、前記ベルトコンベア3には、前記モータへ電流を供給するための(図示されていない)電極も取り付けてある。この電極は各ベルトコンベア3の下面にセットされ、ベルトコンベア3がチェーン20に引かれて移動する際、前記搬送路5上の電極30と接触することができるようになっている。そして、前記光学センサ10が測定した果菜2の等級に基づいて、前記演算装置12が指定したタイミングで、指定した電極30に電流を流し、丁度その電極30と接触しているベルトコンベア3のベルト23が回転し、その上の果菜2を果菜選別籠11へ送り出す。さらに、前記電極30の間隔を詰めてその数を多くすれば、例えば図5に示すように果菜選別籠11のSサイズのところに果菜2を降ろす場合に、その位置を同じSサイズの区域の中で少しづつずらして降ろすことができるようになり、この結果、前に降ろした果菜2と次に降ろす果菜2とがぶつかるようなことがなくなって、箱詰めする人が少し手を休めても、果菜2が選別籠11に一列に並べられていくので、作業者の負担を少なくすることができる。」(段落【0009】ないし【0013】)

オ 「【0014】
なお、トマトや桃等の転がり易い果菜2を前記ベルトコンベア3に載せて選別する場合には、図3に示すような略コ字形のカバー25を各ベルトコンベア3の固定具22に取り付けて、搬送路5を移動するベルトコンベア3上の果菜2が途中で落下するのを防止する必要がある。またこの方法以外にも、各ベルトコンベア3のベルト23に、図4に示すような突起26を多数形成したものを使用して、搬送中の果菜2が転がりにくいようにしても良い。」(段落【0014】)

(2)甲第1号証の記載事項から分かること
ア 上記(1)アないしオ及び図1ないし7の記載からみて、甲第1号証には、ベルトコンベア3が走行体1に多数取付けられた搬送路5の供給部においてベルトコンベア3の上に果菜2を載せて搬送し、搬送中に果菜2を光学センサ10で計測して等階級等を判別し、ベルトコンベア3の上の果菜2を判別結果に基づいて振り分けて搬送路5の搬送方向側方に送り出す自動選別装置、果菜2の自動選別方法、又は、自動選別装置に使用されるベルトコンベア3が記載されていることが分かる。

イ 上記(1)アないしオ及び図1ないし7の記載からみて、ベルトコンベア3について、次のことが分かる。
(ア)特に、段落【0012】及び図3の記載によると、ベルトコンベア3は搬送路5の搬送方向側方に往回転可能なベルト23を備えることが分かる。

(イ)特に、段落【0014】及び図4の記載によると、各ベルトコンベア3のベルト23の外周表面に多数の突起26を形成して、このベルト23の多数の突起26のある外周表面のうち果菜2載置時の上面領域(以下、「ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域」という。)は果菜2を載置可能な領域であり、この「ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域」の全域に果菜2を載置できることが分かる。
そして、ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域は、ベルト23の往回転に伴ってその往回転方向に移動することが分かる。

(ウ)上記(イ)によると、ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域が、果菜2を載せることのできる突起26を備えたものであることが分かる。

ウ 上記(1)アないしオ及び図1ないし7の記載からみて、自動選別装置について、次のことが分かる。
(ア)特に、上記(1)エ及びオ並びに図1及び4の記載、さらに上記イ(イ)によると、多数のベルトコンベア3はベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域が搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して果菜2を搬送でき、搬送中にベルト23が判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域の上の果菜2を搬送方向側方に送り出すことが分かる。

(イ)特に、段落【0009】及び【0013】並びに図1の記載によると、複数の果菜選別籠11の区分けされた部分が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜選別籠11の区分けされた部分は搬送方向に仕切り板9を介して配置され、ベルトコンベア3から送り出される果菜2が前記果菜選別籠11の区分けされた部分にプールされることが分かる。

(ウ)上記(イ)によると、果菜選別寵11の区分けされた部分は、ベルトコンベア3から送り出される果菜2をプールできることが分かる。

エ 上記(1)アないしオ及び図1ないし7の記載からみて、果菜2の自動選別方法について、次のことが分かる。
(ア)特に、段落【0009】及び【0010】及び図1の記載、さらに上記ウ(ア)によると、ベルトコンベア3の往回転可能なベルト23の多数の突起26が形成された載置部の上に載せた果菜2を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜2の等級を判別することが分かる。

(イ)特に、段落【0009】ないし【0014】及び図1ないし5の記載、さらに上記ウ(ア)によると、果菜2搬送中にベルト23を判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域の上の果菜2を搬送方向側方に送り出すことが分かる。

(ウ)特に、段落【0009】及び【0013】及び図1の記載、さらに上記ウ(イ)によると、判別結果に基づいてベルトコンベア3から搬送方向側方に送り出される果菜2を、搬送路5の搬送方向側方に仕切り板9を介して配置された二以上の果菜選別籠11の区分けされた部分にプールすることが分かる。

(エ)特に、段落【0009】及び【0013】及び図1の記載、さらに上記ウ(イ)によると、ベルトコンベア3のベルト23から送り出される果菜2を果菜選別籠11の区分けされた部分に二以上プールさせることが分かる。

(3)甲1発明1
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合して、本件発明1の表現に倣って整理すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。

「ベルトコンベア3が走行体1に多数取付けられた搬送路5の供給部においてベルトコンベア3の上に果菜2を載せて搬送し、搬送中に果菜2を光学センサ10で計測して等階級等を判別し、ベルトコンベア3の上の果菜2を判別結果に基づいて振り分けて搬送路5の搬送方向側方に送り出す自動選別装置のベルトコンベア3において、
ベルトコンベア3は搬送路5の搬送方向側方に往回転可能なベルト23を備え、ベルト23の上に果菜2を載せることのできるベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域が設けられ、前記ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域はベルト23の往回転に伴ってその往回転方向に移動する自動選別装置用のベルトコンベア3。」

(4)甲1発明2
上記(1)ないし(3)及び図面の記載を総合して、本件発明2の表現に倣って整理すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。

「甲1発明1において、ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域が、果菜2を載せることのできる突起26を備えた自動選別装置用のベルトコンベア3。」

(5)甲1発明3
上記(1)ないし(4)及び図面の記載を総合して、本件発明3の表現に倣って整理すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明3」という。)が記載されていると認められる。

「ベルトコンベア3が走行体1に多数取付けられた搬送路5の供給部においてベルトコンベア3の上に果菜2を載せて搬送し、搬送中に果菜2を光学センサ10で計測して等階級等を判別し、ベルトコンベア3の上の果菜2を判別結果に基づいて振り分けて搬送路5の搬送方向側方に送り出す自動選別装置において、
前記ベルトコンベア3が、甲1発明1又は甲1発明2であり、
前記多数のベルトコンベア3は前記ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して果菜2を搬送でき、搬送中にベルト23が判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域の上の果菜2を搬送方向側方に送り出す自動選別装置。」

(6)甲1発明4
上記(1)、(2)及び(5)並びに図面の記載を総合して、本件発明4の表現に倣って整理すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明4」という。)が記載されていると認められる。

「甲1発明3において、複数の果菜選別籠11の区分けされた部分が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜選別籠11の区分けされた部分は搬送方向に仕切り板9を介して配置され、ベルトコンベア3から送り出される果菜2が前記果菜選別籠11の区分けされた部分にプールされる自動選別装置。」

(7)甲1発明5
上記(1)、(2)及び(6)並びに図面の記載を総合して、本件発明5の表現に倣って整理すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明5」という。)が記載されていると認められる。

「甲1発明4において、果菜選別籠11の区分けされた部分は、ベルトコンベア3から送り出される果菜2をプールできる自動選別装置。」

(8)甲1発明6
上記(1)、(2)及び(5)ないし(7)並びに図面の記載を総合して、本件発明6の表現に倣って整理すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明6」という。)が記載されていると認められる。

「ベルトコンベア3が走行体1に多数取付けられた搬送路5の供給部においてベルトコンベア3の上に果菜2を載せて搬送し、搬送中に果菜2を光学センサ10で計測して等階級等を判別し、ベルトコンベア3の上の果菜2を判別結果に基づいて振り分けて搬送路5の搬送方向側方に送り出す果菜2の自動選別方法において、
ベルトコンベア3の往回転可能なベルト23のベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域の上に載せた果菜2を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜2の等階級等を判別し、果菜2搬送中に前記ベルト23を判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域の上の果菜2を搬送方向側方に送り出す、果菜2の自動選別方法。」

(9)甲1発明7
上記(1)、(2)及び(8)並びに図面の記載を総合して、本件発明7の表現に倣って整理すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明7」という。)が記載されていると認められる。

「甲1発明6において、判別結果に基づいてベルトコンベア3から搬送方向側方に送り出される果菜2を、搬送路5の搬送方向側方に仕切り板9を介して配置された二以上の果菜選別籠11の区分けされた部分にプールする果菜2の自動選別方法。」

(10)甲1発明8
上記(1)、(2)及び(9)並びに図面の記載を総合して、本件発明8の表現に倣って整理すると、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明8」という。)が記載されていると認められる。

「甲1発明7において、送り出される果菜2を果菜選別籠11の区分けされた部分にプールさせる果菜2の自動選別方法。」

1-2 甲第2号証
(1)甲第2号証に記載された事項
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「(1)コンベアにより搬送される果菜物を箱詰めする果菜物整列箱詰装置であって、
上記コンベアの搬送面上に果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持する受け部を多数形成した果菜物整列箱詰装置。
(2)コンベアにより搬送される果菜物を吸着保持して箱詰めする果菜物整列箱詰装置であって、
上記コンベアの搬送面上に果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持する受け部を多数形成し、
上記コンベアの搬送面上方に、該コンベアにより搬送される果菜物を吸着保持して箱詰する吸着ユニットを対設した
果菜物整列箱詰装置。
(3)果菜物を搬送する搬送経路に沿って、該果菜物を等階級別に振分ける振分け部を複数設定し、該各振分け部に振分けられる果菜物を吸着保持して箱詰めする果菜物整列箱詰装置であって、
上記振分け部の一つに、該振分け部に振分けられる果菜物を吸着保持して箱詰する一つの吸着ユニットを対設すると共に、
上記吸着ユニットを各振分け部に移動する移動手段を設けた
果菜物整列箱詰装置。」(第1ページ左下欄第5行ないし同ページ右下欄第11行)

イ 「(イ)産業上の利用分野
この発明は、例えば、キューイや茄子等の楕円形状を有する果菜物の箱詰に最適な果菜物整列箱詰装置に関する。」(第1ページ右下欄第13ないし16行)

ウ 「(ハ)発明が解決しようとする問題点
しかし、上述のキューイKを転動させて受けボックス58内に整列させると、受けボックス58の下流側内壁面にキューイKが当接したり、或いは、整列されるキューイKの相互接触により、キューイKの外周面に打ち傷や擦り傷が付くことがあり、キューイKの商品価値が損なわれるという問題点を有している。
また、キューイKを相互接触させて整列するので、左右又は前後に隣接するキューイKの相互接触抵抗により、次列のキューイKの整列が妨げられ、吸着ユニット59に垂設した吸着子60とキューイKとの吸着位置がすれると、キューイKの吸着保持に充分な負圧が得られず、キューイKの吸着保持が困難であったり、移動中にキューイKが落下する等、箱詰ミスが生じるという問題点も有している。
(ニ)問題点を解決するための手段
この発明の第1発明は、コンベアの搬送面上に果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持する受け部を多数形成した果菜物整列箱詰装置であることを特徴とする。
第2発明は、コンベアの搬送面上に果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持する受け部を多数形成し、上記コンベアの搬送面上方に、該コンベアにより搬送される果菜物を吸着保持して箱詰する吸着ユニットを対設した果菜物整列箱詰装置であることを特徴とする。
第3発明は、コンベアの搬送途中に設けた判定部の後位に、該判定部の読取りデータと対応して果菜物を振分ける振分け部を複数配設し、上記振分け部の上方に、該振分け部に振分けられる果菜物を吸着保持して箱詰する一つの吸着ユニットを対設すると共に、上記吸着ユニットを各振分け部の上方に移動する移動手段を設けた果菜物整列箱詰装置であることを特徴とする。
(ホ)作 用
この発明の第1発明は、コンベアの搬送面上に形成した受け部に果菜物を個々に載置し、果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送することで、搬送中に於ける果菜物の接触及び衝突が防止される。
第2発明は、コンベアの搬送面上に形成した受け部に果菜物を個々に載置し、果菜物を所定間隔に離間した姿勢のまま搬送することで、吸着ユニットの吸着間隔と対応した位置及び間隔に果菜物が整列され、果菜物の吸着保持が正確に行える。
第3発明は、移動手段を駆動して、果菜物が集中して振分けられる一つの振分け部に吸着ユニットを移動させ、この振分け部に向けて振分けられる大量の果菜物を吸着ユニットにより吸着保持して箱詰する。
(へ)発明の効果
この発明の第1発明は、果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送するので、搬送中に於ける果菜物の接触及び衝突を確実に防止することができ、果菜物の商品価値を損ねること無く搬送することができる。
第2発明は、上述の第1発明の効果に加えて、果菜物を所定間隔に離間した姿勢のまま搬送するので、吸着ユニットの吸着間隔と対応した位置及び間隔に果菜物を整列させることができ、整列時に於ける果菜物の接触及び衝突を確実に防止され、整列された所定箱詰数の果菜物を吸着ユニットにより正確に吸着保持することができると共に、果菜物の箱詰作業が容易に行える。
第3発明は、第1及び第2発明の効果に加えて、果菜物が集中して振分けられる振分け部に吸着ユニットを移動して、この振分け部に振分けられる果菜物を吸着ユニットにより吸着保持して機械的に箱詰するので、搬送経路上に果菜物を停滞させること無く、振分け量に対応した速度で箱詰めすることができ、箱詰め作業の能率アップが図れると共に、一つの吸着ユニットを各振分け部に移動して箱詰するので、装置全体の構成が簡素化され、製作コストの低減を図ることができる。」(第2ページ左上欄第11行ないし第3ページ左上欄第6行)

エ 「図面は果菜物の一例としてキューイを撰別及び箱詰めする果菜物整列箱詰装置を示し、第1図及び第2図に於いて、この果菜物整列箱詰装置1は、未撰別のキューイKを連続的に搬送する振分けコンベア2と、搬送されるキューイにのサイズ・品質・重量を読取る判定部3と、判定部3の読取りデータに基づいて品質及びサイズ別にキューイKを振分ける振分け部4と、振分けられるキューイKを所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送する整列コンベア5と、整列コンベア5により整列搬送される4個のキューイKを3列箱詰めする箱詰装置6とから構成される。
上述の振分けコンベア2は、搬送方向aに張架したガイドチェーン7の長さ方向に受け台8を所定等間隔に隔てて多数配列し、この受け台8を後述する振分け側に向けて傾動可能に取付けると共に、駆動モータ(図示省略)によりガイドチェーン7を搬送方向aに回転して、受け台8に載置されたキューイKを搬送側始端部から終端部に向けて搬送する。
この振分けコンベア2の搬送経路上には、キューイKを供給する供給部9と、キューイKのサイズ・品質・重量を読取る判定部3と、判定部3の読取りデータに基づいてキューイKを品質及びサイズ別に振分ける振分け部4とを搬送方向aに設定している。」(第3ページ左上欄第10行ないし同ページ右上欄第15行)

オ 「上述の判定部3は、キューイKが載置された受け台8の番地を読取る番地リーダ10と、この番地リーダ10による番地読取りと対応して、キューイKのサイズを読取るサイズセンサ11と、キューイKの品質を読取る品質センサ12と、キューイKの重量を計量する重量センサ13とから構成される。」(第3ページ右上欄第16行ないし同ページ左下欄第2行)

カ 「前述の振分け部4は、例えば、振分けコンベア2の搬送経路上を秀・優・良・並の品質別に分割して品質振分け部A,B,C,Dを設定し、これら品質振分け部A,B,C,Dを、S・M・L・LLのサイズ別に分割してサイズ振分け部E,F,G,Hを設定すると共に、これらサイズ振分け部E,F,G,Hの一側部には、前述の振分けコンベア2と直交して整列コンベア5を夫々張架している。
なお、上述のサイズ振分け部E,F,G,Hと対向する振分けコンベア2の一側部には、受け台8の通過台数を計数するためのカウンタEa,Fa,Ga,Haを各振分け位置の前段に夫々配設している。
上述の整列コンベア5は、搬送側始端部及び終端部に軸支したローラ14,14間に合成ゴム製の受けベルト15を張架し、始端側下部に配設した第1モータ16によりスプロケット17,18及び起動チェーン19を介して受けベルト15を搬送方向bに回転させ、前述の振分けコンベア2から移載されるキューイKを終端部に向けて搬送すると共に、始端部及び終端部に配設した光電センサ20,21により回転を制御する。
すなわち、始端部にキューイKが移載されると光電センサ20が検知し、この光電センサ20による検知に基づいて、キューイKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を回転し、終端部にキューイKが到達するまで受けベルト15を間欠的に回転駆動する。
一方、終端部にキューイKが搬送されると光電センサ21が検知し、この光電センサ21による検知に基づいて受けベルト15の回転を停止し、吸着位置IIに4個のキューイKを整列させる。
上述の受けベルト15の搬送面上には、第3図にも示すように、1個のキューイKと対応する大きさであって、凹状の受け部15aを所定等間隔に隔てて多数形威し、これら各受け部15a…に載置されたキューイKを所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送する。」(第3ページ左下欄第3行ないし第4ページ左上欄第1行)

キ 「先ず、第1図に示すように、供給部9に於いて、搬送方向aに移動する振分けコンベア2の各受け台8…に未撰別のキューイKを順次載置し、判定部3に於いて、番地リーダ10による番地読取りと対応して受け台8に載置されたキューイKのサイズ・品質・重量を読取り、振分け部4に於いて、判定部3の読取りデータに基づいて品質及びサイズ別にキューイKを振分け処理する。
例えば、受け台8上のキューイKが「秀」品質で「M」サイズであると判定された場合、判定データと対応する品質振分け部Aのサイズ振分け部Fに受け台8が移動するまでの通過台数をカウンタFaで計数し、対応するサイズ振分け部Fまで受け台8が移動すると、第2図に示すように、受け台8を振分け側に傾動して整列コンベア5の受けベルト15上にキューイKを移載する。
同時に、移載されるキューイKを光電センサ20が検知し、この光電センサ20による検知に基づいて、キューイKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を間欠的に回転させ、この受けベルト15に形成した各受け部15a…にキューイKを個々に載置して、キューイKを所定間隔に離間した姿勢に保持して吸着位置IIまで搬送し、吸着位置IIにキューイKが搬送されると光電センサ21が検知し、この光電センサ21による検知に基づいて受けベルト15の回転を停止し、吸着位置IIに4個のキューイKを整列させる。
次に、箱詰装置6のエアシリンダ40を作動して、吸着位置IIの上方に待機する吸着ユニット35を垂直降下させ、吸着位置IIに整列された4個のキューイKに吸着子42を密着させて吸着保持した後、再び、エアシリンダ40を作動して、吸着位置IIの上方に吸着ユニット35を垂直上昇させて停止する。
この時、吸着位置IIからキューイKを取り除くと、整列コンベア5が回転駆動して、キューイKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を間欠的に回転させ、吸着位置IIまでキューイKを自動供給する。
次に、エアシリンダ39を作動して、吸着ユニット35を吸着位置IIの上方から箱詰位置IIIの上方に水平移動させた後、エアシリンダ40を作動して、箱詰位置IIIの上方に移動した吸着ユニット35を垂直降下させ、箱詰位置IIIに装填された箱体Jに4個のキューイKを収納した後、吸着子42による吸着を解除してキューイKを分離し、再び、エアシリンダ39,40を作動して、吸着ユニット35を吸着位置IIの上方に復帰移動させ、吸着位置IIに自動供給される4個のキューイKを吸着保持すると共に、第2図に示すように、吸着ユニット35を左右方向に若干移動して、箱詰位置IIIに装填された箱体JにキューイKを千鳥状に箱詰することで箱詰作業が完了する。
この後、箱供給装置43のエアシリンダ54を作動して、昇降台53を垂直降下させ、キューイKが12個詰された箱体Jを搬送ベルト47上に移載し、この搬送ベルト47を搬送方向dに回転して、箱詰作業の完了した箱体Jを次の封函作業等に移送する。
同時に、次に待機する空の箱体Jを昇降台53上に移載し、再び、エアシリンダ54を作動して、箱詰位置IIIに箱体Jを装填すると共に、箱詰作業を継続して行う。
このように整列コンベア5によりキューイKを所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送するので、搬送時及び整列時に於けるキューイKの接触及び衝突が確実に防止され、キューイKの商品価値を損ねること無く搬送することができる。」(第5ページ左上欄第19行ないし第6ページ左上欄第6行)

(2)甲第2号証の記載事項から分かること
ア 上記(1)アないしキ並びに第1及び2図の記載からみて、甲第2号証には、受け台8がガイドチェーン7に多数取付けられた振分けコンベア2の供給部9において受け台8の上にキューイKを載せて搬送し、搬送中にキューイKを判定部3で計測してサイズ・品質・重量を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けて振分けコンベア2の搬送方向側方に送り出す果菜物整列箱詰装置1、果菜物整列箱詰方法、又は、果菜物整列箱詰装置1に使用される受け台8が記載されていることが分かる。

イ 上記(1)アないしキ並びに第1及び2図の記載からみて、受け台8について、次のことが分かる。
(ア)特に、上記(1)エ並びに第1及び2図の記載によると、受け台8は振分けコンベア2の搬送方向側方に傾動可能な受け台8を備えことが分かる。

(イ)特に、上記(1)エ及びカ並びに第2図の記載によると、受け台8の上にキューイKを載せることのできる受け部が設けられることが分かる。

ウ 上記(1)アないしキ並びに第1及び2図の記載からみて、果菜物整列箱詰装置1について、次のことが分かる。
(ア)特に、上記(1)エ及びキ並びに第1及び2図の記載によると、多数の受け台8は受け部が搬送方向に一列又は略一列に並んで移動してキューイKを搬送でき、搬送中に受け台8が判別結果に基づいて搬送方向側方に傾動して前記受け部の上のキューイKを搬送方向側方に送り出しすることが分かる。

(イ)特に、上記(1)エ及びキ並びに第1及び2図の記載によると、受け台8は搬送方向aに回転するガイドチェーンにより循環して再使用することになるから、キューイKを送り出した受け台8は、送り出し後の搬送方向への移動中に、受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、傾動と反対方向に戻り回動することが分かる。

(ウ)特に、上記(1)カ及びキ並びに第1及び2図の記載によると、複数の整列コンベア5がキューイK搬送方向側方に配置され、それら整列コンベア5は搬送方向に間隔をあけて配置され、受け台8から送り出されるキューイKが前記整列コンベア5にプールされることが分かる。

(エ)特に、上記(1)カ及びキ並びに第1及び2図の記載によると、整列コンベア5は受け台8からキューイKが送り出される度に回転して、受け台8から送り出されるキューイKをプールできることが分かる。

エ 上記(1)アないしキ並びに第1及び2図の記載からみて、果菜物整列箱詰方法について、次のことが分かる。
(ア)特に、上記(1)エ及びキ並びに第1及び2図の記載、さらに上記ウ(ア)によると、受け台8の傾動可能な受け台8の受け部の上に載せたキューイKを、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中にキューイKのサイズ・品質・重量を判別し、キューイK搬送中に前記受け台8を判別結果に基づいて搬送方向側方に傾動させて、前記受け部の上のキューイKを搬送方向側方に送り出しすることが分かる。

(イ)特に、上記(1)エ及びキ並びに第1及び2図の記載、さらに上記ウ(イ)によると、傾動した受け台8を送り出し後の搬送方向への移動中に前記傾動と反対方向に戻り回動させて受け部を元の位置に戻して、多数の受け台8の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べることが分かる。

(ウ)特に、上記(1)カ及びキ並びに第1及び2図の記載、さらに上記ウ(ウ)によると、判別結果に基づいて受け台8から搬送方向側方に送り出されるキューイKを、振分けコンベア2の搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の整列コンベア5にプールすることが分かる。

(エ)特に、上記(1)カ及びキ並びに第1及び2図の記載、さらに上記ウ(エ)によると、受け台7からキューイKが送り出される度に整列コンベア5を移動させて、送り出されるキューイKを整列コンベア5にプールさせることが分かる。

(3)甲2発明1
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合して、本件発明1の表現に倣って整理すると、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されていると認められる。

「受け台8がガイドチェーン7に多数取付けられた振分けコンベア2の供給部9において受け台8の上にキューイKを載せて搬送し、搬送中にキューイKを判定部3で計測してサイズ・品質・重量を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けて振分けコンベア2の搬送方向側方に送り出す果菜物整列箱詰装置1の受け台8において、
受け台8は振分けコンベア2の搬送方向側方に傾動可能な受け台8を備え、受け台8の上にキューイKを載せることのできる受け部が設けられた果菜物整列箱詰装置1用受け台8。」

(4)甲2発明3
上記(1)ないし(3)及び図面の記載を総合して、本件発明3の表現に倣って整理すると、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明3」という。)が記載されていると認められる。
「受け台8がガイドチェーン7に多数取付けられた振分けコンベア2の供給部9において受け台8の上にキューイKを載せて搬送し、搬送中にキューイKを判定部3で計測してサイズ・品質・重量を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けて振分けコンベア2の搬送方向側方に送り出す果菜物整列箱詰装置1において、
前記受け台8が甲2発明1であり、
前記多数の受け台8は受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動してキューイKを搬送でき、搬送中に受け台8が判別結果に基づいて搬送方向側方に傾動して前記受け部の上のキューイKを搬送方向側方に送り出し、送り出した前記受け台8は、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記傾動と反対方向に戻り回動する果菜物整列箱詰装置1。」

(5)甲2発明4
上記(1)、(2)及び(4)並びに図面の記載を総合して、本件発明4の表現に倣って整理すると、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明4」という。)が記載されていると認められる。

「甲2発明3において、複数の整列コンベア5がキューイK搬送方向側方に配置され、それら整列コンベア5は搬送方向に間隔をあけて配置され、受け台8から送り出されるキューイKが前記整列コンベア5にプールされる果菜物整列箱詰装置1。」

(6)甲2発明5
上記(1)、(2)及び(5)並びに図面の記載を総合して、本件発明5の表現に倣って整理すると、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明5」という。)が記載されていると認められる。
「甲2発明4において、整列コンベア5は受け台8からキューイKが送り出される度に回転して、受け台8から送り出されるキューイKをプールできる果菜物整列箱詰装置1。」

(7)甲2発明6
上記(1)、(2)及び(4)ないし(6)並びに図面の記載を総合して、本件発明6の表現に倣って整理すると、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明6」という。)が記載されていると認められる。
「受け台8がガイドチェーン7に多数取付けられた振分けコンベア2の供給部9において受け台8の上にキューイKを載せて搬送し、搬送中にキューイKを判定部3で計測してサイズ・品質・重量を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けて振分けコンベア2の搬送方向側方に送り出す果菜物整列箱詰方法において、
受け台8の傾動可能な受け台8の受け部の上に載せたキューイKを、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中にキューイKのサイズ・品質・重量を判別し、キューイK搬送中に前記受け台8を判別結果に基づいて搬送方向側方に傾動させて、前記受け部の上のキューイKを搬送方向側方に送り出し、傾動した受け台8を前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記傾動と反対方向に戻り回動させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の受け台8の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる果菜物整列箱詰方法。」

(8)甲2発明7
上記(1)、(2)及び(7)並びに図面の記載を総合して、本件発明7の表現に倣って整理すると、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明7」という。)が記載されていると認められる。
「甲2発明6において、判別結果に基づいて受け台8から搬送方向側方に送り出されるキューイKを、振分けコンベア2の搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の整列コンベア5にプールする果菜物整列箱詰方法。」

(9)甲2発明8
上記(1)、(2)及び(8)並びに図面の記載を総合して、本件発明8の表現に倣って整理すると、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明8」という。)が記載されていると認められる。
「甲2発明7において、受け台7からキューイKが送り出される度に整列コンベア5を移動させて、送り出されるキューイKを整列コンベア5にプールさせる果菜物整列箱詰方法。」

(10)甲2技術A
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合して、本件発明4及び5の表現に倣って整理すると、甲第2号証には以下の技術(以下、「甲2技術A」という。)が記載されていると認められる。
「受け台8がガイドチェーン7に多数取付けられた振分けコンベア2の供給部9において受け台8の上にキューイKを載せて搬送し、搬送中にキューイKを判定部3で計測してサイズ・品質・重量を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けて振分けコンベア2の搬送方向側方に送り出す果菜物整列箱詰装置1において、
複数の整列コンベア5がキューイK搬送方向側方に配置され、それら整列コンベア5は搬送方向に間隔をあけて配置され、受け台8から送り出されるキューイKが前記整列コンベア5にプールされ、
その際、整列コンベア5は受け台8からキューイKが送り出される度に回転して、受け台8から送り出されるキューイKをプールできるようにした技術。」

(11)甲2技術B
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合して、本件発明7及び8の表現に倣って整理すると、甲第2号証には以下の技術(以下、「甲2技術B」という。)が記載されていると認められる。
「受け台8がガイドチェーン7に多数取付けられた振分けコンベア2の供給部9において受け台8の上にキューイKを載せて搬送し、搬送中にキューイKを判定部3で計測してサイズ・品質・重量を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けて振分けコンベア2の搬送方向側方に送り出す果菜物整列箱詰方法において、
判別結果に基づいて受け台8から搬送方向側方に送り出されるキューイKを、振分けコンベア2の搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の整列コンベア5にプールし、
その際、受け台7からキューイKが送り出される度に整列コンベア5を移動させて、送り出されるキューイKを整列コンベア5の受けベルト15にプールさせるようにした技術。」

1-3 甲第3号証
(1)甲第3号証に記載された事項
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第3号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本願は、薄物や不定形品などの小物類を自動的に仕分ける装置に関する。」(段落【0001】)

イ 「【0002】
【従来の技術】従来、小物類を自動的に仕分ける装置として、搬送コンベアにより移送されてきた小物類を、指定された所定位置に備えたスクレーパをコンベア面上で水平回動することにより側方に押出す方式のもの、或いは搬送路に沿って多数配設され、搬送方向と直交する方向に傾動可能なトレイを指定された所定位置において傾動してトレイ上の小物類を自由落下により側方に移送する方式のもの、或いは搬送路に沿って多数配設され、搬送方向と直交する方向で水平回転するターンテーブルを指定された所定位置に至ったとき該ターンテーブルを水平回転してターンテーブル上の小物類を側方に移送する方式のものなどが存在する。」(段落【0002】)

ウ 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが上記した従来構成のものにおいて、スクレーパを用いる方式の場合は、スクレーパにより搬送物(小物類)を側方に押圧する構成であるため搬送速度が高速となるほど搬送物に対する衝撃が大きくなり搬送物に損傷を与える惧れがあるばかりでなく、ビンなどの破損し易い搬送物の搬送には不適当であり、また搬送面とスクレーパ下面との間に多少とも空隙が存在するので薄物の搬送物の搬送にも不適当であり、搬送物の種類が限定されるという不都合があった。
【0004】また傾動可能なトレイを備えた方式の場合は、トレイを傾動して搬送物を自由落下する構成であるから、落下する搬送物にスピードがついて仕分け受け口で搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じる惧れがあり、従って破損し易い搬送物の搬送には不向きであると共に、底面の摩擦係数が大きい搬送物の場合、自由落下が円滑に行われないという不都合を有する。
【0005】さらにまた、移送ベルトを水平回転させる方式の場合、移送ベルトの表面が水平面であることにより搬送の過程でビンや缶などの円筒物が転動して落下する惧れがあり、また仕分け時に移送ベルトが静止状態から急回転するので、重心の不安定な搬送物は慣性により仕分け方向と反対方向に転動する惧れがあって仕分けの確実性が劣るなどの不都合があった。」(段落【0003】ないし【0005】)

エ 「【0011】
【発明の実施の形態】以下図面にもとづいて本願発明の実施例を詳述する。図1は、本願装置の総体を示す概略平面図であって、横長楕円状の搬送路Aには、その搬送路Aに沿って多数の搬送ユニット1が密接状態にかつ走行可能に配置されており、また搬送路Aの途中には斜状に延びて仕分けしようとする搬送物の投入路Bと、搬送方向と直交する位置に配置されて例えば配送先別に搬送物を仕分ける複数の仕分けシュートCとが配置されている。
【0012】投入路Bには従来と同様に走行中の搬送ユニット1に搬送物Pが移送できるように、コンベア2が設けられていると共に、搬送物Pを指定された仕分けシュートCに搬出できるように搬送物Pに付された仕分けコード番号を読み取る読取り器3が装備されている。
【0013】しかして、投入路Bに搬入された搬送物Pは、コンベア2による走行中に読取り器3により当該搬送物Pに付された仕分けコード番号が読み取られると共に、任意の搬送ユニット1に移送され、搬送物Pを受け取った搬送ユニット1は搬送路Aに沿って搬送される。次いで、搬送物Pを載置した搬送ユニット1が仕分けコード番号の読み取り信号に対応する特定の仕分けシュートCの位置に至ったとき、搬送ユニット1に備えた移動機構が作動して搬送物Pは特定の仕分けシュートCに搬出される。このようにして投入路Bに投入された搬送物Pは、仕分けコード番号により特定位置の仕分けシュートCに自動的に仕分けられる。」(段落【0011】ないし【0013】)

オ 「【0014】図2は総体の縦断面図、図3は搬送ユニット1の総体平面図、図4は搬送ユニット1の縦断した正面図を示している。
【0015】搬送ユニット1は、搬送路Aを形成する断面H型の装置機台10に設けた基盤11上に走行可能に配置されている。即ち基盤11上には、搬送ユニット1を搬送方向に走行するための搬送レール12と後述する作動機構15を構成するガイド板53などが配置されていると共に、載置機台10の側壁上面にはリニアモータ14がそれぞれ敷設されている。
【0016】搬送ユニット1は、下面に前記搬送レール12上を転動する車輪20を備えたユニットフレーム21と、このユニットフレーム21に設けられて搬送方向を直交する左右方向に走行自在の移動機構22と、前記移動機構22に連動機構23を介して搬送物Pを仕分けシュートCに搬出する搬出機構24とから構成されており、前記搬送ユニット1と前記基盤11との間には搬送ユニット1の走行に伴って移動機構22を左右方向に作動する作動機構15が設けてある。」(段落【0014】ないし【0016】)

カ 「【0022】しかして、後述する作動機構15により連動機構23が連動し、これによって移動フレーム31は、案内手段30により案内されながら支持板27に沿って左右方向に往復作動する。
【0023】前記搬出機構24は、前後壁板25の上部間のほぼ全平面を覆う大きさを有し、かつ上面に左右位置で傾斜して中央位置で窪む窪み面45を有すると共に、左右側面を円弧状に形成した受板46と、この受板46に重合されるゴム乃至スポンジなどから成る緩衝シート47と、左右で対向する上位の固定チェーンホイール40,40の間隔とほぼ等しい間隔をもって、両端がチェーンベルト42に軸止された左右1対のバー48a,48bに両側縁が結着された移送シート49とから成り、前記左右1対のバー48a,48bは、枠部材37が搬送ユニット1の左右幅の中央に位置する中立位置において前記緩衝シート47の面上よりもHに相当する高い位置で支持されており、この状態で移送シート49は、その中間部に前記緩衝シート47の面上に重合するように弛みを保有している。」(段落【0022】及び【0023】)

キ 「【0026】しかして、搬送路Aに密接状態に配置された搬送ユニット1は、リニアモータ14により搬送レール12上を走行する。従って投入路Bから投入された搬送物Pは、走行中の搬送ユニット1における移送シート49上に移送されると共に、当該搬送物Pに付された仕分けコード番号が読取り器3により読取られ、この読取り信号により指定された指定位置の搬出シートCに対応する作動機構15のエアシリンダ62が作動して可動切換ガイド部片55が切換えられる。
【0027】他方搬送ユニット1に設けた枠部材37は、常態で図2で示すようにその前後幅の中央の中立位置にあり、この状態でガイドローラ51は、中央ガイド板53に案内されて直進する。
【0028】今図5において切換プレート64が仕分けコード信号により仮想線で示すように回動して案内溝54が搬出用の案内溝57と連通するように切換えられたとすると、中央ガイド板53に案内されたガイドローラ51と同軸の補助ガイドローラ52が案内溝54から案内溝57に導かれ、これによって枠部材37は側方に移動しながら前進すると共に、ガイドローラ51は側方ガイド板61の傾斜部によりさらに側方に誘導され、枠部材37が基盤11の一方の側部に充分移動したのち、ガイドローラ51は側方ガイド板51の直線部と補助ガイド板62との間を走行する。
【0029】このようにして枠部材37が中立位置から側方に充分移動したとき、移動シート49は走行して、移送シート49上の搬送物Pは仕分けシュートCに搬出されて搬送物Pの仕分けが行われる。そして搬送物Pの仕分けが終了したのち枠部材37は、搬送物の投入路Bに至る以前に図示しないが基盤11上に設けた復元用ガイド板とガイドローラ51との作用により、搬送ユニット1は再び中立位置に導かれ、以上の動作が繰り返される。」(段落【0026】ないし【0029】)

ク 「【0030】図6,7は移送シート49上の搬送物Pを仕分けシュートCに搬出する場合の態様を示している。即ち搬送物Pが移送シート49を介して緩衝シート47上の窪んだ中央部に位置し、かつ枠部材37も亦搬送ユニット1の中立位置にある図6仮想線の状態から、すでに述べたように、作動機構15により枠部材37が中立位置から図中右方向に移動すると、その移動に伴って移送シート49を支持している一方のバー48aがチェーンベルト42と共に上位の一方の固定チェーンホイール40の周りに沿って図中反時計方向に回転すると共に、他方のバー48bは高い位置Hを保持しながら図中左方向に移動する。
【0031】次いで、一方のバー48aがチェーンベルト42と共にさらに移動すると、移送シート49は受板46の丸味を帯びた側面に摺接しながら可動チェーンホイール32の方向に走行すると共に、他方のバー48bは高い位置Hを保持した状態でさらに左方向に移動する。
【0032】そして枠部材37が図7で示すように最も右側位置に至ったとき、他方のバー48bは図中最も左位置に達するので、移送シート49上に載置された搬送物Pは最終的には高い位置Hを保持した他方のバー48bに支持されて立ち上がる走行シート49の端部により押圧されながら、受板46の図中左側面から仕分けシュートCに移行する。
【0033】この作用は枠部材37が作動機構15により図中左方向に移動したときも同様であって、この場合は搬送物Pは受板46の右側面から仕分けシュートCに移行される。」(段落【0030】ないし【0033】)

ケ 「【0035】
【発明の効果】以上のように本願発明によれば、搬送ユニットに設けた移送シートを搬送方向と直交する方向に走行してその走行方向の端部位置で、搬送物を仕分けシュートに搬出する構成であるので、搬送物は移送シートの走行によって強制的に搬出でき、特に常態で中間部が窪んでいるので、その窪み部に搬送物が安定した状態で保持されると共に、移送シートの走行により、搬送物を円滑でかつ確実に搬出させることができる。」(段落【0035】)

(2)甲第3号証の記載事項から分かること
ア 上記(1)アないしケ並びに図1ないし7の記載からみて、搬送物Pは小物類であり、実施例の装置は搬送物Pを仕分けコード番号に基づいて自動的に振り分けて搬送物Pの搬送路Aの搬送方向側方に送り出す搬送物Pを仕分ける装置であり、当該装置には往復移動可能な搬送レール12に多数取付けられた搬送物Pを載せる搬送ユニット1が備えられていることが分かる。
また、搬送ユニット1において搬送物Pを載せることのできる部分は、中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域であることが分かる。
さらに、搬送ユニット1において、バー48b及び当該バー48bと側縁の結着した移送シート49の側縁領域は、前記「中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域」よりも上方に突出しており、移送シート49の往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻ることが分かる。

イ 上記(1)アないしケ並びに図1ないし7の記載からみて、搬送物Pは小物類であり、実施例の装置は搬送物Pを仕分けコード番号に基づいて自動的に振り分けて搬送物Pの搬送路Aの搬送方向側方に送り出す搬送物Pを仕分ける装置であり又当該装置は仕分ける方法を行うものであり、当該装置には往復移動可能な搬送レール12に多数取付けられた搬送物Pを載せる搬送ユニット1が備えられていることがわかる。
また、搬送ユニット1において搬送物Pを載せることのできる部分は、中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域であることが分かる。
さらに、搬送物Pを仕分ける前記方法は、搬送ユニット1の移送シート49の前記「中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域」の上に載せた搬送物Pを、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送し、また、往回動した移送シート49を送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて前記「中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域」を元の位置に戻して、搬送ユニット1の前記「中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域」を搬送方向に一列又は略一列に並べる方法であることが分かる。

(3)甲3発明1
上記(1)及び(2)ア並びに図面の記載を総合して、本件発明1の表現に倣って整理すると、甲第3号証には以下の発明(以下、「甲3発明1」という。)が記載されていると認められる。

「小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1が搬送レール12に多数取付けられた小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送物の投入路Bにおいて小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1の上に小物類である搬送物Pを載せて搬送し、搬送中に小物類である搬送物Pを仕分けコード番号に基づいて振り分けて小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送方向側方に送り出す小物類である搬送物Pを自動的に仕分ける装置の小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1において、
小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1は小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送方向側方に往復移動可能な移送シート49を備え、
移送シート49の上に小物類である搬送物Pを載せることのできる、中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域が設けられ、
移送シート49の上方であって前記中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域よりも往方向後方にバー48b及び当該バー48bと側縁の結着した移送シート49の側縁領域が設けられ、
バー48b及び当該バー48bと側縁の結着した移送シート49の側縁領域は前記中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いたた領域よりも上方に突出しており、移送シート49の往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る小物類である搬送物Pを自動的に仕分ける装置用小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1。」

(4)甲3発明2
上記(1)及び(2)イ並びに図面の記載を総合して、本件発明6の表現に倣って整理すると、甲第3号証には以下の発明(以下、「甲3発明2」という。)が記載されていると認められる。

「小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1が搬送レール12に多数取付けられた小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送物の投入路Bにおいて小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1の上に小物類である搬送物Pを載せて搬送し、搬送中に小物類である搬送物Pを仕分けコード番号に基づいて振り分けて小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送方向側方に送り出す小物類である搬送物Pを自動的に仕分ける方法において、
小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1の往復移動可能な移送シート49の中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域の上に載せた小物類である搬送物Pを、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、
前記移送シート49を仕分けコード番号に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域の上の小物類である搬送物Pを搬送方向側方に送り出し、往回動した移送シート49を送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域を元の位置に戻して、前記多数の小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1の中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域を搬送方向に一列又は略一列に並べる小物類である搬送物Pを自動的に仕分ける方法。」

1-4 甲第4号証
(1)甲第4号証に記載された事項
本件出願の出願前に外国において頒布された刊行物である甲第4号証には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、審判請求書において、甲第4号証とともに甲第4号証の翻訳文が提出されている。)。
ア 「This invention relates to a conveyer mechanism adapted to deliver articles in a unique manner. 」(第1欄第9及び10行)

〈甲第4号証の翻訳文〉
「本発明は、物品を独特の手法で配送するように適応されたコンベア機構に関する。」(第1ページ第11行)

イ 「In a copending application of Walter G. Harrison and John Harrison, …(中略)…will take place at the proper time.」(第1欄第35ないし54行)

〈甲第4号証の翻訳文〉
「 Walter G. Harrison と John Harrison による「Automatic Sortation System 」と題する同時係属出願(1961年1月10日に出願された出願番号81,754号、1965年1月26日に登録され、現在は特許第3,167,192号)には、先行技術で遭遇した問題の多くを克服する構造が記載されている。この構造では、複数の傾斜可能なトレイが、コンベア経路に沿って移動可能に位置決めされている。コンベア経路の側部に複数のステーションが位置決めされ、トレイは、トレイ上の物品を特定のステーションに移したいときに傾くように適応される。コンベア経路に沿った幾つかのステーションのそれぞれには、トレイの傾斜運動を引き起こすように適応された手段が配置される。コンベア・システムと符号化操作が組み合わされることが好ましく、それにより、作動手段は、トレイが所望のステーションまで移動したときにトレイを自動的に傾ける。符号化手段は、各トレイ上に配置された各物品の符号を様々な作動装置に転送し、それによりトレイが適切な時間に傾斜されるように適応される。」(第1ページ第24行ないし第2ページ第7行)

ウ 「It is a more particular object of this invention …(中略)… an ideally compact construction.」(第1欄第60ないし64行)

〈甲第4号証の翻訳文〉
「本発明のより特定の目的は、上記の目的を達成することができ、かつきわめて効率的に動作する機構並びに理想的に小型の構造を特徴とする装置を提供することである。」(第2ページ第11及び12行)

エ 「The apparatus of this invention comprises …(中略)… for connecting the drive chain 21.」(第2欄第40行ないし第3欄第35行)

〈甲第4号証の翻訳文〉
「本発明の装置は、物品を受け取ってその物品をステーションに移すように適応された複数の相互接続されたプラットホームを含み、ステーションは、プラットホームの移動経路に沿って配置される。本発明の改良点は、特に、移動可能なコンベア手段を含み、それにより物品をプラットホームから取り出すことができる、物品搬送装置内のプラットホームの提供を対象とする。各プラットホームは、連結されたコンベアを移動させることができる駆動手段を含む。プラットホームの移動経路に沿って、駆動手段を作動させ、それによりプラットホーム・コンベアが物品を放出する働きをするように適応された手段が配置される。
本発明の概念にしたがって設計されたプラットホームは、特に、プラットホームの移動経路のどちらかの側に物品を移すのに適する。したがって、本発明の構造は、理想的には、プラットホームの移動経路に沿って両側に対で配置されたステーションを含む設備に適する。駆動手段は、プラットホーム上にある物品をどのステーションが受け取るかにより、それぞれのプラットホームのコンベアをどちらかの方向に移動させるように適応される。
・・・(中略)・・・
プラットホームのホイール18は、トラック12上に乗って装置による物品の搬送を実現するように適応される。プラットホームを相互接続し、それによりプラットホームがトラック12に沿って一体で移動するように、エンドレス・チェーンや他の適切な手段21を利用することができる。
・・・(中略)・・・
シャフト36にはピニオン46もキー結合され、ピニオン46と同じ平面内に1対のラック48が相補的に取り付けられる。シャフト36の拡張部50は、駆動チェーン21を接続する手段を提供する。」(第3ページ第5行ないし第4ページ第12行)

オ 「FIGURES 7, 8 and 9 illustrate an alternative platform …(中略)… on which of the pins 84 is actuated.」(第3欄第59ないし第4欄第22行)

〈甲第4号証の翻訳文〉
「図7、図8及び図9は、ホイール62を備え、それによりプラットホームがトラック12に乗ることができるプラットホーム構造60の実施形態を示す。ホイール62は、プラットホームの水平フレーム部材64にジャーナル接続される。
フレーム部材64に垂直に延在するように配置された1対のロール68のまわりにエンドレス・ウェブ66が延在する。ウェブ66は、その表面の2分の1を横切って水平方向に延在するリブ70を備え、それによりウェブの把持操作が改善される。ウェブの反対側は、板71によって支持され、それによりウェブの弛みを防ぐことができる。
フレーム部材64の間に取付板72が固定され、シャフト74は、この板内でジャーナル接続される。このシャフトにレバー手段76が結合され、1対のアーム78もシャフトに結合され、それにより、シャフトの動きによりこれらのアームが揺れる。アーム78は、板71の下側に固定されたピン82を収容するように適応されたスロット80を画定する。
プラットホーム60の移動経路に、1対の相補的に取り付けられた作動ピン84が配置される。これらのピン84のうちの1つが上昇すると、レバー76の側面の一方が、上昇したピンと係合し、したがって、プラットホームが動き続けるときにレバーが回る。レバー76のこの動きは、アーム78に伝わり、これらのアームが今度は、ウェブに固定されたピン82の係合によってウェブ66の動きを提供する。
ウェブ82の動きは、ウェブの上面に配置された物品の放出を達成する。レバー76とピン84の係合は、プラットホームが移動し、レバーがピン84を越えたときに終わる。このレバーには復元スプリング86が接続され、それにより、レバーは、ピン84が外れた状態のときの定常位置に戻り、ウェブ66も、アーム78とピン82の操作により戻される。どのピン84が作動するかにより、ウェブ66をどちらの方向にも移動できることを理解されよう。」(第4ページ第25行ないし第5ページ第16行)

カ 「A still further alternative is …(中略)…for insuring movement of a package to either extreme end of the platform conveyor.」(第5欄第18ないし33行)

〈甲第4号証の翻訳文〉
「図15と図16に更に他の実施形態を示す。図示されたプラットホーム160は、水平フレーム部材162と関連ホイール164を有する。ウェブ168を支持するために、フレーム162にジャーナル接続されたロール166が提供される。ウェブ168の両端に1対のバー170が形成され、これらのバーは、ウェブ上に配置された物品と係合するように構成される。
チェーン172が、ロール166とキー結合されたスプロケット174と係合する。前述のタイプの駆動手段を含む任意の適切な駆動手段を使用して、スプロケット174に回転運動を与え、それにより、ウェブ168が、上に配置された物品を放出するのに十分に動くことができる。ウェブ上のリブ又はクリートに代えたバー170の使用は、梱包をプラットホーム・コンベヤのどちらかの末端まで確実に移動させる満足な実施形態を提供する。」(第6ページ下から第2行ないし第7ページ第9行)

キ 「The means for moving the racks 200 and 202 …(中略)… on one of the platforms of the apparatus. 」(第5欄第49ないし55行)

〈甲第4号証の翻訳文〉
「ラック200及び202を移動させる手段と、前述の様々な他の作動手段を移動させる手段は、符号化機構と相互接続されることが好ましい。具体的には、物品が装置のプラットホームの1つの上に最初に配置されたときに物品を符号化できる機構を提供することが望ましい。」(第7ページ第19ないし22行)

ク 「The platform constructions described are particularly advantageous …(中略)… from the path of movement thereof.」(第5欄第70ないし第6欄第8行)

〈甲第4号証の翻訳文〉
「以上述べたプラットホーム構造は、特に、種々様々なあまり複雑でない駆動機構によって操作できるので有利である。プラットホーム構造の更に重要な特徴は、構造が本質的に比較的小型であり、したがってこれらの構造の設置に大きい空間が必要ないことである。したがって、プラットホームと操作手段は、実質的に常に同じ平面内で動作し、したがって、構造物が広範囲で垂直運動することが不要である。更に、プラットホーム構造自体は、その移動経路から外方に延在する機構を使用する必要がない。」(第7ページ最終行ないし第8ページ第5行)

(2)甲第4号証の記載事項から分かること
ア 上記(1)アないしク並びに図1ないし9及び15ないし17の記載からみて、図15及び図16の更に他の実施形態の物品を載せるプラットホーム160は、物品を所定のステーションに配送する装置に備えられるものであることが分かる。
また、移動経路には、物品の供給部があることは明らかである。
さらに、前記物品を所定のステーションに配送する装置は、複数のプラットホーム160の上の物品を符号に基づいて自動的に振り分けて移動経路の搬送方向側方に送り出していることが分かる。なお、この物品を自動的に振り分けて移動経路の搬送方向側方に送り出すために用いられる符号は仕分けの情報といえる。
さらにまた、プラットホーム160は、移動経路の搬送方向側方に往復回転可能なウェブ168を備え、ウェブ168の上に物品を載せることのできる領域は、ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域(以下、「ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域」という。)であることが分かる。
さらにまた、ウェブ168の上方であって前記「ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域」よりも往回転方向後方にバー170が設けられ、バー170は前記「ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域」よりも上方に突出しており、ウェブ168の往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻ることが分かる。

イ 上記(1)アないしク並びに図1ないし9及び15ないし17の記載からみて、図15及び図16の更に他の実施形態の物品を載せるプラットホーム160は、物品を所定のステーションに配送する装置に備えられるものであり、当該装置により物品を所定のステーションに配送する方法が行われることが分かる。
また、移動経路には、物品の供給部があることは明らかである。
さらに、前記物品を所定のステーションに配送する方法は、複数のプラットホーム160の上の物品を符号に基づいて自動的に振り分けて移動経路の搬送方向側方に送り出している方法であることが分かる。なお、この物品を振り分けて移動経路の搬送方向側方に送り出すために用いられる符号は仕分けの情報といえる。
さらにまた、プラットホーム160は、移動経路の搬送方向側方に往復回転可能なウェブ168を備え、上記アに記載したとおり、前記「ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域」は、ウェブ168の上に物品を載せることのできる領域であることが分かる。
さらにまた、前記物品を所定のステーションに配送する方法は、物品搬送中に前記ウェブ168を符号に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記「ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域」の上の物品を搬送方向側方に送り出し、往回動したウェブ168を前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記「ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域」を元の位置に戻して、複数の物品を載せるプラットホーム160の「ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域」を搬送方向に一列又は略一列に並べるといえる。

(3)甲4発明1
上記(1)及び(2)ア並びに図面の記載を総合して、本件発明1の表現に倣って整理すると、甲第4号証には以下の技術(以下、「甲4発明1」という。)が記載されていると認められる。

「物品を載せるプラットホーム160がトラック12に複数取付けられた移動経路の供給部において物品を載せるプラットホーム160の上に物品を載せて搬送し、物品を載せるプラットホーム160の上の物品を符号に基づいて振り分けて移動経路の搬送方向側方に送り出す物品を自動的に所定のステーションに配送する装置の物品を載せるプラットホーム160において、
物品を載せるプラットホーム160は移動経路の搬送方向側方に往復回転可能なウェブ168を備え、
ウェブ168の上に物品を載せることのできるウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域が設けられ、
ウェブ168の上方であって前記ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域よりも往回転方向後方にバー170が設けられ、
バー170は前記ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域よりも上方に突出しており、ウェブ168の往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る物品を自動的に所定のステーションに配送する装置用物品を載せるプラットホーム160。」

(4)甲4発明2
上記(1)及び(2)イ並びに図面の記載を総合して、本件発明6の表現に倣って整理すると、甲第4号証には以下の技術(以下、「甲4発明2」という。)が記載されていると認められる。

「物品を載せるプラットホーム160がトラック12に複数取付けられた移動経路の供給部において物品を載せるプラットホーム160の上に物品を載せて搬送し、物品を載せるプラットホーム160の上の物品を符号に基づいて振り分けて移動経路の搬送方向側方に送り出す物品を自動的に所定のステーションに配送する方法において、
物品を載せるプラットホーム160の往復回転可能なウェブ168のウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域の上に載せた物品を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、物品搬送中に前記ウェブ168を符号に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域の上の物品を搬送方向側方に送り出し、往回動したウェブ168を前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域を元の位置に戻して、前記複数の物品を載せるプラットホーム160のウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域を搬送方向に一列又は略一列に並べる物品を自動的に所定のステーションに配送する方法。」

1-5 甲第5号証
(1)甲第5号証に記載された事項
本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第5号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 コンベア搬送面に設けた野菜保持部で球状野菜を保持して処理装置側に送る球状野菜の搬送用ベルトコンベアであって、
前記野菜保持部は、球状野菜をはめ込み自在に複数の野菜受止め体をコンベア搬送面に平面視で分割環状に突設して構成し、各野菜受止め体の野菜受け部を、球状野菜のはめ込みに伴って径方向外方側に弾性後退自在に構成してある球状野菜の搬送用ベルトコンベア。
【請求項2】 前記各野菜受止め体を弾性体で構成して、前記球状野菜のはめ込みに伴って、各野菜受止め体が弾性変形することで前記野菜受け部が前記径方向外方側に後退するよう構成してある請求項1記載の球状野菜の搬送用ベルトコンベア。
【請求項3】 前記各野菜受止め体を前記径方向に移動自在に構成するとともに、各野菜受止め体を前記径方向内方側に付勢する付勢手段を設けて、前記球状野菜のはめ込みに伴って、各野菜受止め体が前記付勢手段の付勢力に抗して、前記径方向外方側に機械的に弾性後退するよう構成してある請求項1記載の球状野菜の搬送用ベルトコンベア。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】)

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンベア搬送面に設けた野菜受け部で球状野菜を保持して処理装置側に送る球状野菜の搬送用ベルトコンベアに関する。」(段落【0001】)

ウ 「【0004】本発明の目的は、球状野菜を野菜受け部で安定保持できるようにする点にある。」(段落【0004】)

エ 「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、作業者により1個づつ供給されたレタスを複数の野菜保持部6で各別にはめ込み保持して横方向に送るベルトコンベア1と、このベルトコンベア1の横外方側に位置するレタス包装装置2(処理装置の一例で、以下、包装装置と称する)と、前記ベルトコンベア1で所定の取出し位置Aまで送られたレタスを取出して、包装装置2のレタス受入れ部8に送り込むロボットハンド4と、ベルトコンベア1・包装装置2・ロボットハンド4を制御する制御装置5とを設けてレタス包装設備を構成してある。
【0016】前記ベルトコンベア1の野菜保持部6は、図8,図9に示すように、複数のブロック状の野菜受止め体7を、リング板状の座20に平面視で分割環状に突設し、座20の裏面をコンベア搬送面10aに貼着して構成してある。また各野菜受止め体7・円板状の座20ともスポンジ(弾性体の一例)で一体形成して、図10(ロ),(ハ)に示すように、作業者がレタスをはめ込むに伴って、各野菜受止め体7が弾性変形することでその野菜受け部7aが径方向外方側に弾性後退するよう構成してある。図10(イ)に示すように、レタスは葉が全体的に開き気味にあっていることが多く、このような開き気味になっている場合でも作業者がレタスを絞り込んで野菜保持部6にはめ込むことで、そのレタスを野菜受け部7aの弾性復帰力で絞り込み状態のまま安定保持できる。」(段落【0015】及び【0016】)

(2)甲第5号証の記載事項から分かること
上記(1)アないしエ並びに図1、8ないし10の記載からみて、甲第5号証に記載されたベルトコンベア1は、レタス等の球状野菜の搬送用であり、当該球状野菜の搬送用ベルトコンベア1は、ベルトの野菜保持部6に、球状野菜をはめ込みによって載せることのできる複数の野菜受止め体7及び円板状の座20を備えていることが分かる。

(3)甲5発明1
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、甲第5号証には以下の発明(以下、「甲5発明1」という。)が記載されていると認められる。

「球状野菜の搬送用ベルトコンベア1において、ベルトコンベア1のベルトの野菜保持部6が、球状野菜をはめ込みによって載せることのできる複数の野菜受止め体7及び円板状の座20を備えた球状野菜の搬送用ベルトコンベア1。」

2 無効理由2-1の検討
本件発明1ないし8について、無効理由2-1の検討を以下に行う。

2-1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明1における「ベルトコンベア3」は、本件発明1における「果菜載せ体」に相当し、以下同様に、「走行体1」は「無端搬送体」に、「搬送路5」は「果菜搬送ライン」及び「搬送ライン」のそれぞれに、「供給部」は「供給部」に、「果菜2」は「果菜」に、「光学センサ10」は「計測部」に、「等階級等」は「等階級等」に、「自動選別装置」は「果菜自動選別装置」に、「ベルト23」は「搬送ベルト」に、「ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域」は「受け部」に、それぞれ相当する。

・甲1発明1における「往回転可能な」は、本件発明1における「往復回転可能な」に、「回転可能な」という限りにおいて一致する。
また、甲1発明1における「ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域」と本件発明1における「仕切り体」とは、「搬送ベルトに設けられた特定部分」で共通するから、甲1発明1における「前記ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域はベルト23の往回転に伴ってその往回転方向に移動する」は、本件発明1における「仕切り体」は「搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」に、「搬送ベルトに設けられた特定部分は搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動する」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置の果菜載せ体において、
果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に回転可能な搬送ベルトを備え、搬送ベルトの上に果菜を載せることのできる受け部が設けられ、搬送ベルトに設けられた特定部分は搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動する果菜自動選別装置用果菜載せ体。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1A]
果菜自動選別装置用果菜載せ体において、搬送ベルトの回転動作及び仕切り体に関し、
本件発明1においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、仕切り体は「搬送ベルトの上方であって受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」のに対して、
甲1発明1においては、ベルト23(搬送ベルト)は「往回転可能」であるが「復回転可能」か否か不明であり、仕切り体は設けられておらず、「ベルト23(搬送ベルト)に設けられたベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域(受け部)はベルト23(搬送ベルト)の往回転に伴ってその往回転方向に移動する」が、復回転に伴ってその復回転方向に戻るか否か不明である点(以下、「相違点1A」という。)。

(2)判断
請求人は、本件発明1に対して、甲1発明に甲3発明を適用する場合と、甲1発明に甲4発明を適用する場合の主張をするので、それぞれの場合について以下検討を行う。

ア 甲1発明1に甲3発明1を適用する場合について
(ア)相違点1Aについて
a 上記相違点1Aの検討にあたり、まず、甲3発明1について、本件発明1の用語で表現するために本件発明1との対応関係を検討する。
・甲3発明1における「小物類である搬送物P」は、本件発明1における「果菜」に、「物品」という限りにおいて一致する。
また、甲3発明1における「小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1」は、本件発明1における「果菜載せ体」に、「物品載せ体」という限りにおいて一致する。
また、甲3発明1における「搬送レール12」は、本件発明1における「無端搬送体」に、「搬送体」という限りにおいて一致する。
また、甲3発明1における「小物類である搬送物Pの搬送路A」は、本件発明1における「果菜搬送ライン」又は「搬送ライン」に、「物品搬送ライン」という限りにおいて一致する。
また、甲3発明1における「小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送物の投入路B」は、本件発明1における「果菜搬送ラインの供給部」に、「物品搬送ラインの供給部」という限りにおいて一致する。
そして、甲3発明1における「小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1が搬送レール12に多数取付けられた小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送物の投入路Bにおいて小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1の上に小物類である搬送物Pを載せて搬送し」は、本件発明1における「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し」に、「物品載せ体が搬送体に多数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し」という限りにおいて一致する。

・甲3発明1における「搬送中に小物類である搬送物Pを仕分けコード番号に基づいて振り分けて」は、本件発明1における「搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて」に、「搬送中に物品を仕分け情報に基づいて振り分けて」という限りにおいて一致する。
そして、甲3発明1における「搬送中に小物類である搬送物Pを仕分けコード番号に基づいて振り分けて小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送方向側方に送り出す」は、本件発明1における「搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す」に、「搬送中に物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す」という限りにおいて一致する。

・甲3発明1における「小物類である搬送物Pを自動的に仕分ける装置」は、本件発明1における「果菜自動選別装置」に、「物品自動選別装置」という限りにおいて一致する。

・甲3発明1における「移送シート49」は本件発明1における「搬送ベルト」に相当する。
そして、甲3発明1における「小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1は小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送方向側方に往復移動可能な移送シート49を備え」は、本件発明1における「果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え」に、「物品載せ体は物品搬送ラインの搬送方向側方に往復移動可能な搬送ベルトを備え」という限りにおいて一致する。

・甲3発明1における「中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域」は、同領域に小物類である搬送物Pが載置されるのであるから、本件発明1における「受け部」に相当する。

・甲3発明1における「バー48b及び当該バー48bと側縁の結着した移送シート49の側縁領域」は、甲第3号証の段落【0023】及び【0030】並びに図6及び7の記載に照らすと、中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上にあって、中央位置で窪む窪み面45よりも往回転方向後方に高い位置Hを保持しているものであるから、「受け部よりも上方に突出して」取り付けられているものであるといえ、本件発明1における「仕切り体」に相当する。

・甲3発明1における「バー48b及び当該バー48bと側縁の結着した移送シート49の側縁領域は前記中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いたた領域よりも上方に突出しており、移送シート49の往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」は、本件発明1における「仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」に相当する。

したがって、甲3発明1は、本件発明1の用語及び本件発明1の上位概念の用語で表現すると、次のとおりであって、相違点1Aに係る本件発明1の発明特定事項に関する事項を含むものである。
「物品載せ体が搬送体に多数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し、搬送中に物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す物品自動選別装置の物品載せ体において、
物品載せ体は物品搬送ラインの搬送方向側方に往復移動可能な搬送ベルトを備え、
搬送ベルトの上に物品を載せることのできる、受け部が設けられ、
搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往方向後方に仕切り体が設けられ、
仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る物品自動選別装置用物品載せ体。」

b そこで、甲1発明1に甲3発明1を適用する動機付けの存在について検討する。
甲1発明1は、果菜を選別する装置における果菜を載置するベルトコンベアに関するものであり、また、甲3発明1は、上記のとおり、小物類である搬送物を自動的に仕分ける装置の小物類である搬送物を載せる搬送ユニットに関するものであるから、甲1発明1と甲3発明1とは、物品を選別・搬送する装置における物品載せ体、すなわち「物品選別装置用物品載せ体」に関する技術として共通しているといえる。
また、両者が搬送する物品は、甲1発明1では、果菜であるのに対して、甲3発明1では、小物類であるから、物品の大きさや性状に大きな相違はない。
さらに、甲1発明1は、上記1-1(1)ウに記載されているとおり、従来の自動選別装置の場合は、秤量バケットEを可倒させて、果菜Bを転がして落とすため、例えば完熟トマトや桃等のいたみやすい果菜を選別すると傷が付いたり、つぶれたりするという課題を解決するものである。
一方、甲3発明1は、上記1-3(1)ウに記載されているように、従来の傾動可能なトレイを備えた方式の場合は、搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じるおそれがあり、破損しやすい搬送物の搬送には不向きであるという課題を解決するものである。
そうすると、甲1発明1と甲3発明1は、解決しようとする課題としての共通性もある。
そして、甲1発明1と甲3発明1は搬送ベルトにより物品を物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す機構を有する点において共通するところ、甲1発明1が、ベルト23(搬送ベルト)の駆動のためにモータを内蔵し、搬送路5(果菜搬送ライン)の上面に突き出し且つその長手方向に沿って一列に間隔をおいて取り付けられている多数の電極30を備えることが必要であるのに対して、甲3発明1は、移送シート49(搬送ベルト)の駆動のために搬送路Aを走行する動力を利用する駆動機構(搬送ユニット1に枠部材37の下面に設けたガイドローラ51及び補助ガイドローラ52を含む作動機構15を備え、搬送路Aに可動切換ガイド部片55、固定切換ガイド部片59及び側方ガイド板60,61並びに復元用ガイド板を備えたもの)を用いることにより、別途動力発生源を備える必要はなく、甲1発明1に比べてメンテナンスが容易であると共に、設備の費用を低減することができる。
また、甲3発明1は、バー48b及び当該バー48bと側縁の結着した移送シート49の側縁領域(仕切り体)により、小物類である搬送物P(物品)を確実に小物類である搬送物Pの搬送路A(物品搬送ライン)の搬送方向側方に送り出すことができるところ、甲1発明1においても、果菜2(果菜)を確実に搬送路5(果菜搬送ライン)の搬送方向側方に送り出すことは、当然に考慮すべきことである。
以上を総合すると、甲1発明1におけるベルト23(搬送ベルト)により果菜2(果菜)を搬送路5(果菜搬送ライン)の搬送方向側方に送り出す機構に、甲3発明1を適用する動機付けが存在するといえる。

c そうすると、甲1発明1において、甲3発明1を適用することにより、上記相違点1Aに係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)効果について
そして、本件発明1は、全体としてみても、甲1発明1及び甲3発明1から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明1及び甲3発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 甲1発明1に甲4発明1を適用する場合について
(ア)相違点1Aについて
a 上記相違点1Aの検討にあたり、まず、甲4発明1について、本件発明1の用語で表現するために本件発明1との対応関係を検討する。
・甲4発明1における「物品」は、本件発明1における「果菜」に、「物品」という限りにおいて一致する。
また、甲4発明1における「物品を載せるプラットホーム160」は、本件発明1における「果菜載せ体」に、「物品載せ体」という限りにおいて一致する。
また、甲4発明1における「トラック12」は、本件発明1における「無端搬送体」に、「搬送体」という限りにおいて一致する。
また、甲4発明1における「移動経路」は、本件発明1における「果菜搬送ライン」又は「搬送ライン」に、「物品搬送ライン」という限りにおいて一致する。
そして、甲4発明1における「物品を載せるプラットホーム160がトラック12に複数取付けられた移動経路の供給部において物品を載せるプラットホーム160の上に物品を載せて搬送し」は、本件発明1における「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し」に、「物品載せ体が搬送体に複数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し」という限りにおいて一致する。

・甲4発明1における「物品を載せるプラットホーム160の上の物品を符号に基づいて振り分けて」は、本件発明1における「搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて」に、「物品載せ体の上の物品を仕分け情報に基づいて」という限りにおいて一致する。
そして、甲4発明1における「物品を載せるプラットホーム160の上の物品を符号に基づいて振り分けて移動経路の搬送方向側方に送り出す」は、本件発明1における「搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す」に、「物品載せ体の上の物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す」という限りにおいて一致する。

・甲4発明1における「物品を自動的に所定のステーションに配送する装置」は、本件発明1における「果菜自動選別装置」に、「物品自動選別装置」という限りにおいて一致する。

・甲4発明1における「ウェブ168」は、本件発明1における「搬送ベルト」に相当する。
そして、甲4発明1における「物品を載せるプラットホーム160は移動経路の搬送方向側方に往復回転可能なウェブ168を備え」は、本件発明1における「果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え」に、「物品載せ体は物品搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え」という限りにおいて一致する。

・甲4発明1における「ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域」は、同領域に物品が載置されるのであるから、本件発明1における「受け部」に相当する。

・甲4発明1における「バー170」は、本件発明1における「仕切り体」に相当する。

・甲4発明1における「バー170は前記ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域よりも上方に突出しており、ウェブ168の往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」は、本件発明1における「仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」に相当する。

したがって、甲4発明1は、本件発明1の用語及び本件発明1の上位概念の用語で表現すると、次のとおりであって、相違点1Aに係る本件発明1の発明特定事項に関する事項を含むものである。
「物品載せ体が搬送体に複数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し、物品載せ体の上の物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す物品自動選別装置の物品載せ体において、
物品載せ体は物品搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え、
搬送ベルトの上に物品を載せることのできる受け部が設けられ、
搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、
仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る物品自動選別装置用物品載せ体。」

b そこで、甲1発明1に甲4発明1を適用する動機付けの存在について検討する。
甲1発明1は、果菜を選別する装置における果菜を載置するベルトコンベアに関するものであり、また、甲4発明1は、物品を自動的に所定のステーションに配送する装置又は方法に使用されるプラットホーム160に関するものであるから、甲1発明1と甲4発明1とは、物品を選別・搬送する装置の物品載せ体に関する技術として共通しているといえる。
そして、甲4発明1は、バー170(仕切り体)により、物品を確実に移動経路の搬送方向側方に送り出すことができるところ、甲1発明1においても、果菜2(果菜)を確実に搬送路5(果菜搬送ライン)の搬送方向側方に送り出すことは、当然に考慮すべきことである。
以上を総合すると、甲1発明1におけるベルト23(搬送ベルト)により果菜2(果菜)を搬送路5(果菜搬送ライン)の搬送方向側方に送り出す機構に、甲4発明1を適用する動機付けが存在するといえる。

c そうすると、甲1発明1において、甲4発明1を適用することにより、上記相違点1Aに係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)効果について
そして、本件発明1は、全体としてみても、甲1発明1及び甲4発明1から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明1及び甲4発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明1及び甲3発明1に基づいて、又は、甲1発明1及び甲4発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明1に係る特許についての無効理由2-1は理由がある。

2-2 本件発明2について
(1)対比
上記2-1(1)の検討を踏まえて、本件発明2と甲1発明2とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明2における「果菜2を載せることのできる突起26」は、本件発明2における「果菜を載せることのできる受け部材」に相当する。
したがって、両者は、上記2-1(1)で述べた一致点と同じ点で一致し、上記相違点1Aで相違している(但し、甲1発明1を甲1発明2に読み替える。)。

(2)判断
ア 相違点1Aについて
相違点1Aについては、上記2-1(2)ア(ア)及び2-1(2)イ(ア)の検討と同様である。

イ 効果について
そして、本件発明2は、全体としてみても、甲1発明2及び甲3発明1から、又は、甲1発明2及び甲4発明1から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ まとめ
したがって、本件発明2は、甲1発明2及び甲3発明1に基づいて、又は、甲1発明2及び甲4発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明2に係る特許についての無効理由2-1は理由がある。

2-3 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と甲1発明3とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明3における「ベルトコンベア3」は、本件発明3における「果菜載せ体」に相当し、以下同様に、「走行体1」は「無端搬送体」に、「搬送路5」は「果菜搬送ライン」及び「搬送ライン」のそれぞれに、「供給部」は「供給部」に、「果菜2」は「果菜」に、「光学センサ10」は「計測部」に、「等階級等」は「等階級等」に、「自動選別装置」は「果菜自動選別装置」に、「ベルト23」は「搬送ベルト」に、「ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域」は「受け部」に、「判別結果」は「判別結果」に、それぞれ相当する。

・甲1発明3における「前記ベルトコンベア3が、甲1発明1又は甲1発明2であり」は、本件発明3における「前記果菜載せ体が請求項1又は請求項2記載の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり」に、「前記果菜載せ体が所定の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置において、
前記果菜載せ体が所定の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり、
前記多数の果菜載せ体は受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して果菜を搬送でき、搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点3A]
「前記果菜載せ体が所定の果菜自動選別装置用果菜載せ体であ」ることに関して、本件発明3においては、「前記果菜載せ体が請求項1又は請求項2記載の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり」、「送り出した前記搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転する」のに対して、甲1発明3においては、「前記ベルトコンベア3が、甲1発明1又は甲1発明2であ」る点(以下、「相違点3A」という。)。

(2)判断
ア 相違点3Aについて
相違点3Aに係る本件発明3の発明特定事項は、甲1発明3において、その発明特定事項である甲1発明1又は甲1発明2を本件発明1又は2とすることに伴い、必然的に備えられる事項と認められる。
そうすると、上記2-1及び2-2の検討によれば、本件発明1が、甲1発明1において、甲3発明1を適用することにより、又は、甲1発明1において、甲4発明1を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2が、甲1発明2において、甲3発明1を適用することにより、又は、甲1発明2において、甲4発明1を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、甲1発明3において、その発明特定事項である甲1発明1又は甲1発明2を、同様の理由により本件発明1又は2とし、上記相違点3Aに係る本件発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 効果について
そして、本件発明3は、全体としてみても、甲1発明3及び甲3発明1から、又は、甲1発明3及び甲4発明1から、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ まとめ
したがって、本件発明3は、甲1発明3及び甲3発明1に基づいて、又は、甲1発明3及び甲4発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明3に係る特許についての無効理由2-1は理由がある。

2-4 本件発明4について
(1)対比
上記2-3(1)の検討を踏まえて、本件発明4と甲1発明4とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明4における「甲1発明3」は、本件発明4における「請求項3記載の果菜自動選別装置」に、「所定の果菜自動選別装置」という限りにおいて一致する。

・甲1発明4における「複数の果菜選別籠11の区分けされた部分」は、本件発明4における「複数の果菜引受け体」に、「複数の果菜引受け部」という限りにおいて一致する。
そして、甲1発明4における「複数の果菜選別籠11の区分けされた部分が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜選別籠11の区分けされた部分は搬送方向に仕切り板9を介して配置され」は、本件発明4における「複数の果菜引受け体が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜引受け体は搬送方向に間隔をあけて配置され」に、「複数の果菜引受け部が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜引受け部は搬送方向に間隔をあけて配置され」という限りにおいて一致する。

・甲1発明4における「ベルトコンベア3から送り出される果菜2が前記果菜選別籠11の区分けされた部分にプールされる」は、本件発明4における「果菜載せ体から送り出される果菜が前記果菜引受け体にプールされる」に、「果菜載せ体から送り出される果菜が前記果菜引受け部にプールされる」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「所定の果菜自動選別装置において、複数の果菜引受け部が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜引受け部は搬送方向に間隔をあけて配置され、果菜載せ体から送り出される果菜が前記果菜引受け部にプールされる果菜自動選別装置。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点4A-1]
「所定の果菜自動選別装置」に関し、本件発明4においては、「請求項3記載の果菜自動選別装置」であるのに対して、甲1発明4においては、「甲1発明3」である点(以下、「相違点4A-1」という。)。

[相違点4A-2]
「複数の果菜引受け部が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜引受け部は搬送方向に間隔をあけて配置され」ることに関し、本件発明4においては、「複数の果菜引受け体が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜引受け体は搬送方向に間隔をあけて配置され」るのに対して、甲1発明4においては、「複数の果菜選別籠11の区分けされた部分が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜選別籠11の区分けされた部分は搬送方向に仕切り板9を介して配置され」る点(以下、「相違点4A-2」という。)。

[相違点4A-3]
「果菜載せ体から送り出される果菜が前記果菜引受け部にプールされる」ことに関し、本件発明4においては、「果菜載せ体から送り出される果菜が前記果菜引受け体にプールされる」のに対して、甲1発明4においては、「ベルトコンベア3から送り出される果菜2が前記果菜選別籠11の区分けされた部分にプールされる」点(以下、「相違点4A-3」という。)。

(2)判断
ア 相違点4A-1について
相違点4A-1は、言い換えると、本件発明3と甲1発明3との相違であり、上記相違点3Aということができる。
そうすると、上記2-3(2)アの検討と同様の理由により、甲1発明4において、相違点4A-1に係る本件発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点4A-2及び4A-3について
上記相違点4A-2及び4A-3の検討にあたり、甲2技術Aについて、下記3-3(1)、3-4(1)及び3-5(1)の検討を踏まえ、本件発明4の用語及び本件発明4の上位概念の用語で表現すると、「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて、果菜搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置において、複数の果菜引受け体が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜引受け体は搬送方向に間隔をあけて配置され、果菜載せ体から送り出される果菜が前記果菜引受け体にプールされ、その際、果菜引受け体は果菜載せ体から果菜が送り出される度に回転して、果菜載せ体から送り出される果菜をプールできるようにした技術。」といえる。
そうすると、甲2技術Aは、上記相違点4A-2及び4A-3に係る本件発明4の発明特定事項に関する事項を含むところ、甲2技術Aにより、複数の作業場所が確保され、送り出された果菜について、並列処理を行うことが可能となり、作業の効率化が図れることは明らかであるから、甲1発明4において、甲2技術Aを適用し、相違点4A-2及び4A-3に係る本件発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 効果について
そして、本件発明4は、全体としてみても、甲1発明4、甲3発明1及び甲2技術Aから、又は、甲1発明4、甲4発明1及び甲2技術Aから、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

エ まとめ
したがって、本件発明4は、甲1発明4、甲3発明1及び甲2技術Aに基づいて、又は、甲1発明4、甲4発明1及び甲2技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明4に係る特許についての無効理由2-1は理由がある。

2-5 本件発明5について
(1)対比
上記2-3(1)の検討を踏まえて、本件発明5と甲1発明5とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明5における「甲1発明4」は、本件発明5における「請求項4記載の果菜自動選別装置」に、「所定の果菜自動選別装置」という限りにおいて一致する。

・甲1発明5における「果菜選別籠11の区分けされた部分」は、本件発明5における「果菜引受け体」に、「果菜引受け部」という限りにおいて一致する。
そして、甲1発明5における「果菜選別籠11の区分けされた部分は、ベルトコンベア3から送り出される果菜2をプールできる」は、本件発明5における「果菜引受け体は果菜載せ体から果菜が送り出される度に回転して、果菜載せ体から送り出される果菜をプールできる」に、「果菜引受け部は、果菜載せ体から送り出される果菜をプールできる」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「所定の果菜自動選別装置において、果菜引受け部は、果菜載せ体から送り出される果菜をプールできる果菜自動選別装置。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点5A-1]
「所定の果菜自動選別装置」に関し、本件発明5においては、「請求項4記載の果菜自動選別装置」であるのに対して、甲1発明5においては、「甲1発明4」である点(以下、「相違点5A-1」という。)。

[相違点5A-2]
「果菜引受け部は、果菜載せ体から送り出される果菜をプールできる」ことに関し、本件発明5においては、「果菜引受け体は果菜載せ体から果菜が送り出される度に回転して、果菜載せ体から送り出される果菜をプールできる」のに対して、甲1発明5においては、「果菜選別籠11の区分けされた部分は、ベルトコンベア3から送り出される果菜2をプールできる」点(以下、「相違点5A-2」という。)。

(2)判断
ア 相違点5A-1について
相違点5A-1は、言い換えると、本件発明4と甲1発明4との相違であり、上記相違点4A-1ないし4A-3ということができる。
そうすると、上記2-4(2)アないしウの検討と同様の理由により、甲1発明5において、相違点5A-1に係る本件発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点5A-2について
甲2技術Aは、本件発明5の用語及び本件発明5の上位概念の用語で表現すると、上記2-4(2)イに示したとおりの技術といえる。
そうすると、甲2技術Aは、上記相違点5A-2に係る本件発明5の発明特定事項に関する事項を含むところ、甲1発明5において、上記アのとおり相違点5A-1に係る本件発明5の発明特定事項とするのに甲2技術Aを適用することに伴い、相違点5A-2に係る本件発明5の発明特定事項を備えたものとなる。

ウ 効果について
そして、本件発明5は、全体としてみても、甲1発明5、甲3発明1及び甲2技術Aから、又は、甲1発明5、甲4発明1及び甲2技術Aから、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

エ まとめ
したがって、本件発明5は、甲1発明5、甲3発明1及び甲2技術Aに基づいて、又は、甲1発明5、甲4発明1及び甲2技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明5に係る特許についての無効理由2-1は理由がある。

2-6 本件発明6について
(1)対比
本件発明6と甲1発明6とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明6における「ベルトコンベア3」は、本件発明6における「果菜載せ体」に相当し、以下同様に、「走行体1」は「無端搬送体」に、「搬送路5」は「果菜搬送ライン」及び「搬送ライン」のそれぞれに、「供給部」は「供給部」に、「果菜2」は「果菜」に、「光学センサ10」は「計測部」に、「等階級等」は「等階級等」に、「果菜2の自動選別方法」は「果菜自動選別方法」に、「ベルト23」は「搬送ベルト」に、「ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域」は「受け部」に、それぞれ相当する。

・甲1発明6における「往回転可能な」は、本件特許発明6における「往復回転可能な」に、「回転可能な」という限りにおいて一致する。

よって、本件発明6と甲1発明6とは、
「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別方法において、
果菜載せ体の回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜の等階級等を判別し、果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出す、果菜自動選別方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点6A]
果菜自動選別方法において、搬送ベルトの回転動作及び受け部に関し、
本件発明6においては、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であり、受け部について「往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に往回転と反対方向に戻り回転させて受け部を元の位置に戻して、多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」のに対して、
甲1発明6においては、ベルト23(搬送ベルト)は「往回転可能」であるが「復回転可能」か否か不明であり、ベルト23の多数の突起26のある果菜2載置時の上面領域(受け部)についての往回動後の回転動作は不明である点(以下、「相違点6A」という。)。

(2)判断
請求人は、本件発明6に対して、甲1発明に甲3発明を適用する場合と、甲1発明に甲4発明を適用する場合の主張をするので、それぞれの場合について以下検討を行う。

ア 甲1発明6に甲3発明2を適用する場合について
(ア)相違点6Aについて
a 上記相違点6Aの検討にあたり、まず、甲3発明2について、本件発明6の用語で表現するために本件発明6との対応関係を検討する。
・甲3発明2における「小物類である搬送物P」は、本件発明6における「果菜」に、「物品」という限りにおいて一致する。
また、甲3発明2における「小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1」は、本件発明6における「果菜載せ体」に、「物品載せ体」という限りにおいて一致する。
また、甲3発明2における「搬送レール12」は、本件発明6における「無端搬送体」に、「搬送体」という限りにおいて一致する。
また、甲3発明2における「小物類である搬送物Pの搬送路A」は、本件発明6における「果菜搬送ライン」又は「搬送ライン」に、「物品搬送ライン」という限りにおいて一致する。
また、甲3発明2における「小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送物の投入路B」は、本件発明6における「果菜搬送ラインの供給部」に、「物品搬送ラインの供給部」という限りにおいて一致する。
そして、甲3発明2における「小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1が搬送レール12に多数取付けられた小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送物の投入路Bにおいて小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1の上に小物類である搬送物Pを載せて搬送し」は、本件発明6における「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し」に、「物品載せ体が搬送体に多数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し」という限りにおいて一致する。

・甲3発明2における「搬送中に小物類である搬送物Pを仕分けコード番号に基づいて振り分けて」は、本件発明6における「搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて」に、「搬送中に物品を仕分け情報に基づいて振り分けて」という限りにおいて一致する。
そして、甲3発明2における「搬送中に小物類である搬送物Pを仕分けコード番号に基づいて振り分けて小物類である搬送物Pの搬送路Aの搬送方向側方に送り出す」は、本件発明6における「搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す」に、「搬送中に物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す」という限りにおいて一致する。

・甲3発明2における「小物類である搬送物Pを自動的に仕分ける方法」は、本件発明6における「果菜自動選別方法」に、「物品自動選別方法」という限りにおいて一致する。

・甲3発明2における「移送シート49」は本件発明6における「搬送ベルト」に相当する。

・甲3発明2における「中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域」は、同領域に小物類である搬送物Pが載置されるのであるから、本件発明6における「受け部」に相当する。

・甲3発明2における「小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1の往復移動可能な移送シート49の中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域の上に載せた小物類である搬送物Pを、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して」は、本件発明6における「果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して」に、「物品載せ体の往復移動可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた物品を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して」という限りにおいて一致する。

・甲3発明2における「仕分けコード番号」は、本件発明6における「判別結果」に、「仕分け情報」という限りにおいて一致する。
そして、甲3発明2における「前記移送シート49を仕分けコード番号に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域の上の小物類である搬送物Pを搬送方向側方に送り出し」は、本件発明6における「当該搬送中に果菜の等階級等を判別し、果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し」に、「前記搬送ベルトを仕分け情報に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の物品を搬送方向側方に送り出し」という限りにおいて一致する。

・甲3発明2における「往回動した移送シート49を送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域を元の位置に戻して、前記多数の小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1の中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を省いた領域を搬送方向に一列又は略一列に並べる」は、本件発明6における「往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」に、「往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の物品載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」という限りにおいて一致する。

したがって、甲3発明2は、本件発明6の用語及び本件発明6の上位概念の用語で表現すると、次のとおりであって、相違点6Aに係る本件発明6の発明特定事項に関する事項を含むものである。
「物品載せ体が搬送体に多数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し、搬送中に物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す物品自動選別方法において、
物品載せ体の往復移動可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた物品を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、
前記搬送ベルトを仕分け情報に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の物品を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の物品載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる物品自動選別方法。」

b そこで、甲1発明6に甲3発明2を適用する動機付けの存在について検討する。
甲1発明6は、果菜2の自動選別方法に関するものであり、また、甲3発明2は、上記のとおり、小物類である搬送物Pを自動的に仕分ける方法に関するものであるから、甲1発明6と甲3発明2とは、物品を自動的に選別する方法、すなわち「物品自動選別方法」に関する技術として共通しているといえる。
また、両者が搬送する物品は、甲1発明6では、果菜であるのに対して、甲3発明2では、小物類であるから、物品の大きさや性状に大きな相違はない。
さらに、甲1発明6は、上記1-1(1)ウに記載されているとおり、従来の自動選別装置の場合は、秤量バケットEを可倒させて、果菜Bを転がして落とすため、例えば完熟トマトや桃等のいたみやすい果菜を選別すると傷が付いたり、つぶれたりするという課題を解決するものである。
一方、甲3発明2は、上記1-3(1)ウに記載されているように、従来の傾動可能なトレイを備えた方式の場合は、搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じるおそれがあり、破損しやすい搬送物の搬送には不向きであるという課題を解決するものである。
そうすると、甲1発明6と甲3発明2は、解決しようとする課題としての共通性もある。
そして、甲1発明6と甲3発明2は搬送ベルトにより物品を物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す機構を有する点において共通するところ、甲1発明6が、ベルト23(搬送ベルト)の駆動のためにモータを内蔵し、搬送路5(果菜搬送ライン)の上面に突き出し且つその長手方向に沿って一列に間隔をおいて取り付けられている多数の電極30を備えることが必要であるのに対して、甲3発明2は、移送シート49(搬送ベルト)の駆動のために搬送路Aを走行する動力を利用する駆動機構(搬送ユニット1に枠部材37の下面に設けたガイドローラ51及び補助ガイドローラ52を含む作動機構15を備え、搬送路Aに可動切換ガイド部片55、固定切換ガイド部片59及び側方ガイド板60,61並びに復元用ガイド板を備えたもの)を用いることにより、別途動力発生源を備える必要はなく、甲1発明6に比べてメンテナンスが容易であると共に、設備の費用を低減することができる。
また、甲3発明2は、バー48b及び当該バー48bと側縁の結着した移送シート49の側縁領域(仕切り体)により、小物類である搬送物P(物品)を確実に小物類である搬送物Pの搬送路A(物品搬送ライン)の搬送方向側方に送り出すことができるところ、甲1発明6においても、果菜2(果菜)を確実に搬送路5(果菜搬送ライン)の搬送方向側方に送り出すことは、当然に考慮すべきことである。
以上を総合すると、甲1発明6におけるベルト23(搬送ベルト)により果菜2(果菜)を搬送路5(果菜搬送ライン)の搬送方向側方に送り出す機構に、甲3発明2を適用する動機付けが存在するといえる。

c そうすると、甲1発明6において、甲3発明2を適用することにより、上記相違点6Aに係る本件発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)効果について
そして、本件発明6は、全体としてみても、甲1発明6及び甲3発明2からから、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(ウ)小括
したがって、本件発明6は、甲1発明6及び甲3発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 甲1発明6に甲4発明2を適用する場合について
(ア)相違点6Aについて
a 上記相違点6Aの検討にあたり、まず、甲4発明2について、本件発明6の用語で表現するために本件発明6との対応関係を検討する。
・甲4発明1における「物品」は、本件発明1における「果菜」に、「物品」という限りにおいて一致する。
また、甲4発明1における「物品を載せるプラットホーム160」は、本件発明1における「果菜載せ体」に、「物品載せ体」という限りにおいて一致する。
また、甲4発明1における「トラック12」は、本件発明1における「無端搬送体」に、「搬送体」という限りにおいて一致する。
また、甲4発明1における「移動経路」は、本件発明1における「果菜搬送ライン」又は「搬送ライン」に、「物品搬送ライン」という限りにおいて一致する。
そして、甲4発明2における「物品を載せるプラットホーム160がトラック12に複数取付けられた移動経路の供給部において物品を載せるプラットホーム160の上に物品を載せて搬送し」は、本件発明6における「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し」に、「物品載せ体が搬送体に複数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し」という限りにおいて一致する。

・甲4発明2における「物品を載せるプラットホーム160の上の物品を符号に基づいて振り分けて」は、本件発明6における「搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて」に、「物品載せ体の上の物品を仕分け情報に基づいて振り分けて」という限りにおいて一致する。
そして、甲4発明2における「物品を載せるプラットホーム160の上の物品を符号に基づいて振り分けて移動経路の搬送方向側方に送り出す」は、本件発明6における「果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す」に、「物品載せ体の上の物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す」という限りにおいて一致する。

・甲4発明2における「物品を自動的に所定のステーションに配送する方法」は、本件発明6における「果菜自動選別方法」に、「物品自動選別方法」という限りにおいて一致する。

・甲4発明2における「ウェブ168」は、本件発明6における「搬送ベルト」に相当する。

・甲4発明2における「ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域」は、本件発明6における「受け部」に相当する。

・甲4発明2における「物品を載せるプラットホーム160の往復回転可能なウェブ168のウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域の上に載せた物品を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して」は、本件発明6における「果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して」に、「物品載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた物品を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して」という限りにおいて一致する。

・甲4発明2における「符号」は、本件発明6における「判別結果」に、「仕分け情報」という限りにおいて一致する。
そして、甲4発明2における「物品搬送中に前記ウェブ168を符号に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域の上の物品を搬送方向側方に送り出し」は、本件発明6における「当該搬送中に果菜の等階級等を判別し、果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し」に、「物品搬送中に前記搬送ベルトを仕分け情報に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の物品を搬送方向側方に送り出し」という限りにおいて一致する。

・甲4発明2における「往回動したウェブ168を前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記ウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域を元の位置に戻して、前記複数の物品を載せるプラットホーム160のウェブ168上面部のうちバー170の領域を省いた領域を搬送方向に一列又は略一列に並べる」は、本件発明6における「往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」に、「往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記複数の物品載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」という限りにおいて一致する。

したがって、甲4発明2は、本件発明6の用語及び本件発明6の上位概念の用語で表現すると、次のとおりであって、相違点6Aに係る本件発明6の発明特定事項に関する事項を含むものである。
「物品載せ体が搬送体に複数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し、物品載せ体の上の物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す物品自動選別方法において、
物品載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた物品を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、物品搬送中に前記搬送ベルトを仕分け情報に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の物品を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記複数の物品載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる物品自動選別方法。」

b そこで、甲1発明6に甲4発明2を適用する動機付けの存在について検討する。
甲1発明6は、果菜2の自動選別方法に関するものであり、また、甲4発明2は、物品を自動的に所定のステーションに配送する方法に関するものであるから、甲1発明6と甲4発明2とは、物品を自動的に選別する方法、すなわち物品自動選別方法に関する技術として共通しているといえる。
そして、甲4発明2は、バー170(仕切り体)により、物品を確実に移動経路の搬送方向側方に送り出すことができるところ、甲1発明6においても、果菜2(果菜)を確実に搬送路5(果菜搬送ライン)の搬送方向側方に送り出すことは、当然に考慮すべきことである。
以上を総合すると、甲1発明6におけるベルト23(搬送ベルト)により果菜2(果菜)を搬送路5(果菜搬送ライン)の搬送方向側方に送り出す機構に、甲4発明2を適用する動機付けが存在するといえる。

c そうすると、甲1発明6において、甲4発明2を適用することにより、上記相違点6Aに係る本件発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)効果について
そして、本件発明6は、全体としてみても、甲1発明6及び甲4発明2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(ウ)小括
したがって、本件発明6は、甲1発明6及び甲4発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明6は、甲1発明6及び甲3発明2に基づいて、又は、甲1発明6及び甲4発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明6に係る特許についての無効理由2-1には理由がある。

2-7 本件発明7について
(1)対比
上記2-6(1)及び2-4(1)の検討を踏まえて、本件発明7と甲1発明7とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明7における「甲1発明6」は、本件発明7における「請求項6記載の果菜自動選別方法」に、「所定の果菜自動選別方法」という限りにおいて一致する。

・甲1発明7における「判別結果に基づいてベルトコンベア3から搬送方向側方に送り出される果菜2を、搬送路5の搬送方向側方に仕切り板9を介して配置された二以上の果菜選別籠11の区分けされた部分にプールする」は、本件発明7における「判別結果に基づいて果菜載せ体から搬送方向側方に送り出される果菜を、果菜搬送ラインの搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の果菜引受け体にプールする」に、「判別結果に基づいて果菜載せ体から搬送方向側方に送り出される果菜を、果菜搬送ラインの搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の果菜引受け部にプールする」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「所定の果菜自動選別方法において、判別結果に基づいて果菜載せ体から搬送方向側方に送り出される果菜を、果菜搬送ラインの搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の果菜引受け部にプールする果菜自動選別方法。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点7A-1]
「所定の果菜自動選別装置」に関し、本件発明7においては、「請求項6記載の果菜自動選別方法」であるのに対して、甲1発明7においては、「甲1発明6」である点(以下、「相違点7A-1」という。)。

[相違点7A-2]
「判別結果に基づいて果菜載せ体から搬送方向側方に送り出される果菜を、果菜搬送ラインの搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の果菜引受け部にプールする」ことに関し、本件発明7においては、「判別結果に基づいて果菜載せ体から搬送方向側方に送り出される果菜を、果菜搬送ラインの搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の果菜引受け体にプールする」のに対して、甲1発明7においては、「判別結果に基づいてベルトコンベア3から搬送方向側方に送り出される果菜2を、搬送路5の搬送方向側方に仕切り板9を介して配置された二以上の果菜選別籠11の区分けされた部分にプールする」点(以下、「相違点7A-2」という。)。

(2)判断
ア 相違点7A-1について
相違点7A-1は、言い換えると、本件発明6と甲1発明6との相違であり、上記相違点6Aということができる。
そうすると、上記2-6(2)ア及びイの検討と同様の理由により、甲2発明7において、相違点7A-1に係る本件発明7の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点7A-2について
上記相違点7A-2の検討にあたり、甲2技術Bについて、下記3-6(1)、3-7(1)および3-8(1)の検討を踏まえ、本件発明7の用語及び本件発明7の上位概念の用語で表現すると、「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて、果菜搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別送方法において、判別結果に基づいて果菜載せ体から搬送方向側方に送り出される果菜を、果菜搬送ラインの搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の果菜引受け体にプールし、その際、果菜載せ体から果菜が送り出される度に果菜引受け体を移動させて、送り出される果菜を果菜引受け体にプールさせるようにした技術。」といえる。
そうすると、甲2技術Bは、上記相違点7A-2に係る本件発明7の発明特定事項に関する事項を含むところ、甲2技術Bにより、複数の作業場所が確保され、送り出された果菜について、並列処理を行うことが可能となり、作業の効率化が図れることは明らかであるから、甲1発明7において、甲2技術Bを適用し、相違点7A-2に係る本件発明7の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 効果について
そして、本件発明7は、全体としてみても、甲1発明7、甲3発明2及び甲2技術Bから、又は、甲1発明7、甲4発明2及び甲2技術Bから、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

エ まとめ
したがって、本件発明7は、甲1発明7、甲3発明2及び甲2技術Bに基づいて、又は、甲1発明7、甲4発明2及び甲2技術Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明7に係る特許についての無効理由2-1は理由がある。

2-8 本件発明8について
(1)対比
上記2-6(1)及び2-7(1)の検討を踏まえて、本件発明8と甲1発明8とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明8における「甲1発明7」は、本件発明7における「請求項7記載の果菜自動選別方法」に、「所定の果菜自動選別方法」という限りにおいて一致する。

・甲1発明8における「送り出される果菜2を果菜選別籠11の区分けされた部分にプールさせる」は、本件発明8における「果菜載せ体から果菜が送り出される度に果菜引受け体を移動させて、送り出される果菜を果菜引受け体にプールさせる」に、「送り出される果菜を果菜引受け部にプールさせる」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「所定の果菜自動選別方法において、送り出される果菜を果菜引受け部にプールさせる果菜自動選別方法。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点8A-1]
「所定の果菜自動選別装置」に関し、本件発明8においては、「請求項7記載の果菜自動選別方法」であるのに対して、甲1発明8においては、「甲1発明7」である点(以下、「相違点8A-1」という。)。

[相違点8A-2]
「送り出される果菜を果菜引受け部にプールさせる」ことに関し、本件発明8においては、「果菜載せ体から果菜が送り出される度に果菜引受け体を移動させて、送り出される果菜を果菜引受け体にプールさせる」のに対して、甲1発明8においては、「送り出される果菜2を果菜選別籠11の区分けされた部分にプールさせる」点(以下、「相違点8A-2」という。)。

(2)判断
ア 相違点8A-1について
相違点8A-1は、言い換えると、本件発明7と甲1発明7との相違であり、上記相違点7A-1及び7A-2ということができる。
そうすると、上記2-7(2)ア及びイの検討と同様の理由により、甲1発明8において、相違点8A-1に係る本件発明8の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点8A-2について
甲2技術Bは、本件発明8の用語及び本件発明8の上位概念の用語で表現すると、上記2-7(2)イに示したとおりの技術といえる。
そうすると、甲2技術Bは、上記相違点8A-2に係る本件発明8の発明特定事項に関する事項を含むところ、甲1発明8において、上記アのとおり相違点8A-1に係る本件発明8の発明特定事項とするのに甲2技術Bを適用することに伴い、相違点8A-2に係る本件発明8の発明特定事項を備えたものとなる。

ウ 効果について
そして、本件発明8は、全体としてみても、甲1発明8、甲3発明2及び甲2技術Bから、又は、甲1発明8、甲4発明2及び甲2技術Bから、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

エ まとめ
したがって、本件発明8は、甲1発明8、甲3発明2及び甲2技術Bに基づいて、又は、甲1発明8、甲4発明2及び甲2技術Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明8に係る特許についての無効理由2-1は理由がある。

3 無効理由2-2の検討
3-1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲2発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲2発明1における「受け台8」は、本件発明1における「果菜載せ体」に相当し、以下同様に、「振分けコンベア2」は「果菜搬送ライン」に、「供給部9」は「供給部」に、「キューイK」は「果菜」に、「判定部3」は「計測部」に、「サイズ・品質・重量」は「等階級等」に、「受け部」は「受け部」に、それぞれ相当する。

・甲2発明1における「ガイドチェーン7」は、甲第2号証の3ページ右上欄第2行ないし9行の「上述の振分けコンベア2は、搬送方向aに張架したガイドチェーン7の長さ方向に受け台8を所定等間隔に隔てて多数配列し、この受け台8を後述する振分け側に向けて傾動可能に取付けると共に、駆動モータ(図示省略)によりガイドチェーン7を搬送方向aに回転して、受け台8に載置されたキューイKを搬送側始端部から終端部に向けて搬送する。」との記載によれば、「搬送方向aに回転」するのであるから、本件発明1における「無端搬送体」に相当する。

・甲2発明1における「果菜物整列箱詰装置1」は、キューイKを判定部3で計測して等階級を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けるのであるから、本件発明1における「果菜自動選別装置」に相当する。

・甲2発明1における「サイズ・品質・重量を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けて」は、本件発明1における「等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて」に相当する。

・甲2発明1における「傾動可能な受け台8」は、本件発明1における「往復回転可能な搬送ベルト」に、「移動可能な搬送部材」という限りにおいて一致する。

・甲2発明1における「受け台8」は、本件発明1における「搬送ベルト」に、「搬送部材」という限りにおいて一致する。

よって、本件発明1と甲2発明1とは、
「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置の果菜載せ体において、
果菜載せ体は搬送ラインの搬送方向側方に移動可能な搬送部材を備え、搬送部材の上に果菜を載せることのできる受け部が設けられた果菜自動選別装置用果菜載せ体。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1B]
果菜自動選別装置用果菜載せ体において、果菜載せ体の搬送部材に関し、
本件発明1においては、搬送部材が「往復回転可能な搬送ベルト」であり、「搬送ベルトの上方であって受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る」のに対して、
甲2発明1においては、搬送部材が「傾動可能な受け台8」である点(以下、「相違点1B」という。)。

(2)判断
請求人は、本件発明1に対して、甲2発明に甲3発明を適用する場合と、甲2発明に甲4発明を適用する場合の主張をするので、それぞれの場合について以下検討を行う。

ア 甲2発明1に甲3発明1を適用する場合について
(ア)相違点1Bについて
a 上記相違点1Bの検討にあたり、まず、甲3発明1について、本件発明1の用語で表現するために本件発明1との対応関係を検討すると、上記2-1(2)ア(ア)aで検討したとおりである。

したがって、甲3発明1は、本件発明1の用語及び本件発明1の上位概念の用語で表現すると、次のとおりであって、相違点1Bに係る本件発明1の発明特定事項に関する事項を含むものである。
「物品載せ体が搬送体に多数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し、搬送中に物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す物品自動選別装置の物品載せ体において、
物品載せ体は物品搬送ラインの搬送方向側方に往復移動可能な搬送ベルトを備え、
搬送ベルトの上に物品を載せることのできる、受け部が設けられ、
搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往方向後方に仕切り体が設けられ、
仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る物品自動選別装置用物品載せ体。」

b そこで、甲2発明1に甲3発明1を適用する動機付けの存在について検討する。
甲2発明1は、果菜物整列箱詰装置1用受け台8に関するものであり、また、甲3発明1は、上記のとおり、小物類である搬送物Pを自動的に仕分ける装置の小物類である搬送物Pを載せる搬送ユニット1に関するものであるから、甲2発明1と甲3発明1とは、物品を選別・搬送する装置における物品載せ体、すなわち「物品自動選別装置用物品載せ体」に関する技術として共通しているといえる。
また、両者が搬送する物品は、甲2発明1では、キューイ等の果菜であるのに対して、甲3発明1では、薄物や不定形品などの小物類であるから、物品の大きさや性状に大きな相違はない。このことは、甲第1号証において、「各種の品物を、大きさ(サイズ)別、重量別などに自動的に選別してより分ける選別装置」と記載され(【0001】)、「従来より小荷物、果菜その他の各種品物を大きさ、重量、形状等の条件に基づいて自動的に選別する装置には種々のものがあった」として、従来技術について、特に小荷物と果菜とを区別しておらず、「特にいたみやすい果菜の自動選別」(【0001】として、傷みやすい搬送物の典型として特に果菜を挙げながらも、請求項1において、搬送物につき「果菜や小荷物等」との記載をしており、対象とする物品が、果菜と小荷物等とで異なるとしても、これらの物品を選別、搬送する装置としては、同一の技術分野に属するものと捉えていることが明らかである。しかも、果菜が傷みやすく傷付きやすいとはいえ、甲第1号証にも示されるように、従来から、果菜を選別して搬送方向から側方に送り出す際であっても、容器を傾倒する方式が採用されていたのであるから、破損しやすい小物類との間で、技術分野が異なるというほどに相違するものではない。
さらに、甲2発明1は、上記1-2(1)ウに記載されているとおり、キューイを転動させて受けボックス内に整列させると、受けボックスの下流側内壁面にキューイが当接したり、キューイの相互接触により、キューイの外周面に打ち傷や擦り傷が付いたりすることがあり、キューイの商品価値が損なわれるという問題点を解決するために、コンベアの搬送面上に形成した受け部に果菜物を個々に載置し、果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送することで、搬送中における果菜物の接触及び衝突を防止することとしたものであるところ、搬送物を選別振り分けする際に、搬送物が壁等の設備に衝突することを防止したり、搬送物同士の相互接触を防止したりするという課題は、ボックス内に整列させる際のみならず、選別・搬送の全過程を通じて内在していることは明らかである。そして、甲2発明1は、振り分けコンベアの受け台が、載置された搬送物を搬送方向側方に送り出す際に、搬送方向側方に向けて傾動可能な構成であるところ、傾動させて搬送物を搬送方向側方に送り出すには、ある程度の落下による衝撃、あるいは、接触時に衝撃が生じ、搬送物に損傷や破損の生じるおそれがあることは、従来技術の秤量バケットEを可倒させて、果菜Bを転がして落とす自動選別装置において、傷が付いたり潰れたりするという問題を解決するために、バケット式の果菜載せ体をベルト式の果菜載せ体に置換したと甲第1号証(特に、段落【0005】ないし【0008】及び【0015】)に記載されるように、その構成自体から明らかな周知の課題である。
一方、甲3発明1は、上記1-3(1)ウに記載されているように、従来の傾動可能なトレイを備えた方式の場合は、搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じるおそれがあり、破損しやすい搬送物の搬送には不向きであるという課題を解決するものである。
そうすると、甲2発明1と甲3発明1は、課題としての共通性もある。
以上を総合すると、甲2発明1の振分けコンベアの搬送方向側方に向けて傾動可能な構成において生じる搬送物の損傷、破損という技術課題を解決するために、甲3発明1を適用する動機付けが存在するといえる。
また、上述のとおり、甲第1号証には、従来技術の秤量バケットEを可倒させて、果菜Bを転がして落とす自動選別装置において、傷が付いたり潰れたりするという問題を解決するために、バケット式の果菜載せ体をベルト式の果菜載せ体に置換すること(以下、「甲1記載事項」という。)が記載されており、甲1記載事項を考慮することによっても、甲2発明1に甲3発明1を適用する動機付けが存在するといえる。

c そうすると、甲2発明1において、甲3発明1を適用することにより、又は、甲1記載事項を考慮して、甲3発明1を適用することにより、上記相違点1Bに係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)効果について
そして、本件発明1は、全体としてみても、甲2発明1及び甲3発明1から、又は、甲2発明1、甲1記載事項及び甲3発明1から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明1及び甲3発明1に基づいて、又は、甲2発明1、甲1記載事項及び甲3発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 甲2発明1に甲4発明1を適用する場合について
(ア)相違点1Bについて
a 上記相違点1Bの検討にあたり、まず、甲4発明1について、本件発明1の用語で表現するために本件発明1との対応関係を検討すると、上記2-1(2)イ(ア)aで検討したとおりである。

そうすると、甲4発明1は、本件発明1の用語及び本件発明1の上位概念の用語で表現すると、次のとおりであって、相違点1Bに係る本件発明1の発明特定事項に関する事項を含むものである。
「物品載せ体が搬送体に複数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し、物品載せ体の上の物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す物品自動選別装置の物品載せ体において、
物品載せ体は物品搬送ラインの搬送方向側方に往復回転可能な搬送ベルトを備え、
搬送ベルトの上に物品を載せることのできる受け部が設けられ、
搬送ベルトの上方であって前記受け部よりも往回転方向後方に仕切り体が設けられ、
仕切り体は前記受け部よりも上方に突出しており、搬送ベルトの往回転に伴ってその往回転方向に移動し、復回転に伴ってその復回転方向に戻る物品自動選別装置用物品載せ体。」

b そこで、甲2発明1に甲4発明1を適用する動機付けの存在について検討する。
甲2発明1は、果菜物整列箱詰装置1の受け台8に関するものであり、また、甲4技術は、物品を自動的に所定のステーションに配送する装置又は方法に使用されるプラットホーム160に関するものであるから、甲2発明1と甲4発明1とは、物品を選別・搬送する装置の物品載せ体に関する技術として共通しているといえる。
また、甲2発明1においては、受け台8が傾動式の台であり、傾動させるための構造を有するため、装置が大型となる課題を有することは明らかである。
一方、甲4発明1においては、甲第4号証における上記1-4(1)イ、ウ、エ及びクの記載を参照すると、複数の傾斜可能なトレイを備えたコンベア・システムでは、装置が大型であるため、設置に大きな空間を要するという課題を解決するものである。
そうすると、甲2発明1と甲4発明1とは、課題としての共通性もあるから、甲2発明1に甲4技術を適用する動機付けは存在するといえる。
また、上記(2)ア(ア)bで述べたと同様に、甲1記載事項を考慮することによっても、甲2発明1に甲4発明1を適用する動機付けは存在するといえる。

c そうすると、甲2発明1において、甲4発明1を適用することにより、又は、甲1記載事項を考慮して、甲4発明1を適用することにより、上記相違点1Bに係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)効果について
そして、本件発明1は、全体としてみても、甲2発明1及び甲4発明1から、又は、甲2発明1、甲1記載事項及び甲4発明1から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明1及び甲4発明1に基づいて、又は、甲2発明1、甲1記載事項及び甲4発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲2発明1及び甲3発明1に基づいて、又は、甲2発明1、甲1記載事項及び甲3発明1に基づいて、又は、甲2発明1及び甲4発明1に基づいて、又は、甲2発明1、甲1記載事項及び甲4発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明1に係る特許についての無効理由2-2は理由がある。

3-2 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲2発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、両者は、上記3-1(1)で述べた一致点と同じ点で一致し、上記相違点1Bに加え、次の点でも相違している。

[相違点2B]
本件発明2においては、「搬送ベルトの受け部が、果菜を載せることのできる受け部材を備えた」ものであるのに対して、甲2発明1においては、そのような構成は備えていない点(以下、「相違点2B」という。)。

(2)判断
ア 相違点1Bについて
相違点1Bについては、上記3-1(2)ア(ア)及び3-1(2)イ(ア)で検討したとおりである。

イ 相違点2Bについて
相違点2Bについて検討する。
上記1-5で述べたとおり、甲第5号証には、「球状野菜の搬送用ベルトコンベア1において、ベルトコンベア1のベルトの野菜保持部6が、球状野菜をはめ込みによって載せることのできる複数の野菜受止め体7及び円板状の座20を備えた球状野菜の搬送用ベルトコンベア1。」という甲5発明1が記載されているところ、これを本件発明2の用語及び本件発明2の上位概念の用語で表現すると、「果菜用ベルトコンベアにおいて、ベルトの受け部が、果菜をはめ込みによって載せることのできる受け部材を備えた果菜用ベルトコンベア。」ということができる。
そして、甲5発明1において、ベルトの受け部が、果菜をはめ込みによって載せることのできる受け部材を備えることにより、果菜を安定して支持することができることは明らかである。
また、「果菜用ベルトコンベアにおいて、果菜を安定して支持するために、搬送ベルトの受け部に、果菜を載せることのできる受け部材を備える技術。」については、甲第1号証にも記載されているように(特に、段落【0014】及び図4のベルト23に形成された突起26についての記載を参照。)、本件出願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。)であるともいえる。
そうすると、甲2発明1において、相違点1B係る本件発明1の発明特定事項とすることに伴い、果菜を安定して支持することを可能とすべく甲5発明1又は周知技術を適用することは、当業者が適宜なし得ることである。

ウ 効果について
そして、本件発明2は、全体としてみても、甲2発明1、甲3発明1及び甲5発明1若しくは周知技術から、又は、甲2発明1、甲1記載事項、甲3発明1及び甲5発明1若しくは周知技術から、又は、甲2発明1、甲4発明1及び甲5発明1若しくは周知技術から、又は、甲2発明1、甲1記載事項、甲4発明1及び甲5発明1若しくは周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

エ まとめ
したがって、本件発明2は、甲2発明1、甲3発明1及び甲5発明1若しくは周知技術に基づいて、又は、甲2発明1、甲1記載事項、甲3発明1及び甲5発明1若しくは周知技術に基づいて、又は、甲2発明1、甲4発明1及び甲5発明1若しくは周知技術に基づいて、又は、甲2発明1、甲1記載事項、甲4発明1及び甲5発明1若しくは周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明2に係る特許についての無効理由2-2は理由がある。

3-3 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と甲2発明3とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲2発明3における「受け台8」は、本件発明3における「果菜載せ体」に相当し、以下同様に、「振分けコンベア2」は「果菜搬送ライン」及び「搬送ライン」のぞれぞれに、「供給部9」は「供給部」に、「キューイK」は「果菜」に、「判定部3」は「計測部」に、「サイズ・品質・重量」は「等階級等」に、「受け部」は「受け部」に、それぞれ相当する。

・甲2発明3における「ガイドチェーン7」は、甲第2号証の3ページ右上欄第2行ないし9行の「上述の振分けコンベア2は、搬送方向aに張架したガイドチェーン7の長さ方向に受け台8を所定等間隔に隔てて多数配列し、この受け台8を後述する振分け側に向けて傾動可能に取付けると共に、駆動モータ(図示省略)によりガイドチェーン7を搬送方向aに回転して、受け台8に載置されたキューイKを搬送側始端部から終端部に向けて搬送する。」との記載によれば、「搬送方向aに回転」するのであるから、本件発明3における「無端搬送体」に相当する。

・甲2発明3における「果菜物整列箱詰装置1」は、キューイKを判定部3で計測して等階級を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けるのであるから、本件発明3における「果菜自動選別装置」に相当する。

・甲2発明3における「前記受け台8が甲2発明1であり」は、本件発明3における「前記果菜載せ体が請求項1又は請求項2記載の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり」に、「前記果菜載せ体が所定の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり」という限りにおいて一致する。

・甲2発明3における「前記多数の受け台8は受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動してキューイKを搬送でき」は、本件発明3における「前記多数の果菜載せ体は受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して果菜を搬送でき」に相当する。

・甲2発明3における「傾動」は、本件発明3における「往回転」に、「往駆動」という限りにおいて一致する。
そして、甲2発明3における「搬送中に受け台8が判別結果に基づいて搬送方向側方に傾動して前記受け部の上のキューイKを搬送方向側方に送り出し」は、本件発明3における「搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し」に、「搬送中に果菜載せ体が判別結果に基づいて搬送方向側方に往駆動して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し」という限りにおいて一致する。

・甲2発明3における「送り出した前記受け台8は、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記傾動と反対方向に戻り回動する」は、本件発明3における「送り出した前記搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転する」に、「送り出した前記果菜載せ体は、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往駆動と逆方向に戻り駆動する」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別装置において、
前記果菜載せ体が所定の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり、
前記多数の果菜載せ体は受け部が前記搬送方向に一列又は略一列に並んで移動して果菜を搬送でき、搬送中に果菜載せ体が判別結果に基づいて搬送方向側方に往駆動して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、送り出した前記果菜載せ体は、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往駆動と逆方向に戻り駆動する果菜自動選装置。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点3B]
「前記果菜載せ体が所定の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり」、「搬送中に果菜載せ体が判別結果に基づいて搬送方向側方に往駆動して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、送り出した前記果菜載せ体は、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往駆動と逆方向に戻り駆動する」ことに関して、本件発明3においては、「前記果菜載せ体が請求項1又は請求項2記載の果菜自動選別装置用果菜載せ体であり」、「搬送中に搬送ベルトが判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転して前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、送り出した前記搬送ベルトは、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記往回転と逆方向に戻り回転する」のに対して、甲2発明3においては、「前記受け台8が甲2発明1であり」、「搬送中に受け台8が判別結果に基づいて搬送方向側方に傾動して前記受け部の上のキューイKを搬送方向側方に送り出し、送り出した前記受け台8は、送り出し後の搬送方向への移動中に、前記受け部が搬送方向に一列又は略一列に並ぶように、前記傾動と反対方向に戻り回動する」点(以下、「相違点3B」という。)

(2)判断
ア 相違点3Bについて
相違点3Bに係る本件発明3の発明特定事項は、甲2発明3において、その発明特定事項である甲2発明1を本件発明1又は2とすることに伴い、副次的に備えられる事項と認められる。
そうすると、上記3-1及び3-2の検討によれば、本件発明1が、甲2発明1において、甲3発明1を適用することにより、又は、甲1記載事項を考慮して、甲3発明1を適用することにより、又は、甲4発明1を適用することにより、又は、甲1記載事項を考慮して、甲4発明1を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2が、甲2発明1において、これら適用のいずれかにおいて、さらに甲5発明1若しくは周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、甲2発明3において、その発明特定事項である甲2発明1を、同様の理由より本件発明1又は本件発明2とし、上記相違点3Bに係る本件発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 効果について
そして、本件発明3は、全体としてみても、甲2発明3及び甲3発明1から、又は、甲2発明3、甲1記載事項及び甲3発明1から、又は、甲2発明3、甲4発明1から、又は、甲2発明3、甲1記載事項及び甲4発明1から、又は、これらの技術の組合せのいずれかにさらに甲5発明1若しくは周知技術を加えた技術の組合せから、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ まとめ
したがって、本件発明3は、甲2発明3及び甲3発明1に基づいて、又は、甲2発明3、甲1記載事項及び甲3発明1に基づいて、又は、甲2発明3及び甲4発明1に基づいて、又は、甲2発明3、甲1記載事項及び甲4発明1に基づいて、又は、これらの技術の組合せのいずれかにさらに甲5発明1若しくは周知技術を加えた技術の組合せに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明3に係る特許についての無効理由2-2は理由がある。

3-4 本件発明4について
(1)対比
上記3-3(1)の検討を踏まえて、本件発明4と甲2発明4とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲2発明4における「甲2発明3」は、本件発明4における「請求項3記載の果菜自動選別装置」に、「所定の果菜自動選別装置」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「所定の果菜自動選別装置において、複数の果菜引受け体が果菜搬送方向側方に配置され、それら果菜引受け体は搬送方向に間隔をあけて配置され、果菜載せ体から送り出される果菜が前記果菜引受け体のベルトの上にプールされる果菜自動選別装置。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点4B]
「所定の果菜自動選別装置」に関し、本件発明4においては、「請求項3記載の果菜自動選別装置」であるのに対して、甲2発明4においては、「甲2発明3」である点(以下、「相違点4B」という。)。

(2)判断
ア 相違点4Bについて
相違点4Bは、言い換えると、本件発明3と甲2発明3との相違であり、上記相違点3Bということができる。
そうすると、上記3-3(2)アの検討と同様の理由により、甲2発明4において、相違点4Bに係る本件発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 効果について
そして、本件発明4は、全体としてみても、甲2発明4及び甲3発明1から、又は、甲2発明4、甲1記載事項及び甲3発明1から、又は、甲2発明4及び甲4発明1から、又は、甲2発明4、甲1記載事項及び甲4発明1から、これらの技術の組合せのいずれかにさらに甲5発明1若しくは周知技術を加えた技術の組合せから、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ まとめ
したがって、本件発明4は、甲2発明4及び甲3発明1に基づいて、又は、甲2発明4、甲1記載事項及び甲3発明1に基づいて、又は、甲2発明4及び甲4発明1に基づいて、又は、甲2発明4、甲1記載事項及び甲4発明1に基づいて、これらの技術の組合せのいずれかにさらに甲5発明1若しくは周知技術を加えた技術の組合せに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明4に係る特許についての無効理由2-2は理由がある。

3-5 本件発明5について
(1)対比
上記3-3(1)及び3-4(1)の検討を踏まえて、本件発明5と甲2発明5とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲2発明5における「甲2発明4」は、本件発明5における「請求項4記載の果菜自動選別装置」に、「所定の果菜自動選別装置」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「所定の果菜自動選別装置において、果菜引受け体のベルトは果菜載せ体から果菜が送り出される度に回転して、果菜載せ体から送り出される果菜をプールできる果菜自動選別装置。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点5B]
「所定の果菜自動選別装置」に関し、本件発明5においては、「請求項4記載の果菜自動選別装置」であるのに対して、甲2発明5においては、「甲2発明4」である点(以下、「相違点5B」という。)。

(2)判断
ア 相違点5Bについて
相違点5Bは、言い換えると、本件発明4と甲2発明4との相違であり、さらに上記3-4の検討も踏まえると、本件発明3と甲2発明3との相違であり、上記相違点3Bということができる。
そうすると、上記3-3(2)アの検討と同様の理由により、甲2発明5において、相違点5Bに係る本件発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 効果について
そして、本件発明5は、全体としてみても、甲2発明5及び甲3発明1から、又は、甲2発明5、甲1記載事項及び甲3発明1から、又は、甲2発明5及び甲4発明1から、又は、甲2発明5、甲1記載事項及び甲4発明1から、これらの技術の組合せのいずれかにさらに甲5発明1若しくは周知技術を加えた技術の組合せから、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ まとめ
したがって、本件発明5は、甲2発明5及び甲3発明1に基づいて、又は、甲2発明5、甲1記載事項及び甲3発明1に基づいて、又は、甲2発明5及び甲4発明1に基づいて、又は、甲2発明5、甲1記載事項及び甲4発明1に基づいて、これらの技術の組合せのいずれかにさらに甲5発明1若しくは周知技術を加えた技術の組合せに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明5に係る特許についての無効理由2-2は理由がある。

3-6 本件発明6について
(1)対比
本件発明6と甲2発明6とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲2発明6における「受け台8」は、本件発明6における「果菜載せ体」に相当し、以下同様に、「振分けコンベア2」は「果菜搬送ライン」に、「供給部9」は「供給部」に、「キューイK」は「果菜」に、「判定部3」は「計測部」に、「サイズ・品質・重量」は「等階級等」に、「受け部」は「受け部」に、それぞれ相当する。

・甲2発明6における「ガイドチェーン7」は、甲第2号証の3ページ右上欄第2行ないし9行の「上述の振分けコンベア2は、搬送方向aに張架したガイドチェーン7の長さ方向に受け台8を所定等間隔に隔てて多数配列し、この受け台8を後述する振分け側に向けて傾動可能に取付けると共に、駆動モータ(図示省略)によりガイドチェーン7を搬送方向aに回転して、受け台8に載置されたキューイKを搬送側始端部から終端部に向けて搬送する。」との記載によれば、「搬送方向aに回転」するのであるから、本件発明6における「無端搬送体」に相当する。

・甲2発明6における「果菜物整列箱詰方法」は、キューイKを判定部3で計測して等階級を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けるのであるから、本件発明6における「果菜自動選別方法」に相当する。

・甲2発明6における「サイズ・品質・重量を判別し、受け台8の上のキューイKを判別結果に基づいて振り分けて」は、本件発明6における「等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて」に相当する。

・甲2発明6における「受け台8」は、本件発明6における「搬送ベルト」に、「搬送部材」という限りにおいて一致し、甲2発明6における「傾動可能な受け台8」は、本件発明6における「往復回転可能な搬送ベルト」に、「移動可能な搬送部材」という限りにおいて一致する。
そして、甲2発明6における「受け台8の傾動可能な受け台8の受け部の上に載せたキューイKを、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中にキューイKのサイズ・品質・重量を判別し」は、本件発明6における「果菜載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜の等階級等を判別し」に、「果菜載せ体の移動可能な搬送部材の受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜の等階級等を判別し」という限りにおいて一致する。

・甲2発明6における「傾動」は、本件発明6における「往回転」に、「移動」という限りにおいて一致する。
そして、甲2発明6における「キューイK搬送中に前記受け台8を判別結果に基づいて搬送方向側方に傾動させて、前記受け部の上のキューイKを搬送方向側方に送り出し」は、本件発明6における「果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し」に、「
果菜搬送中に前記搬送部材を判別結果に基づいて搬送方向側方に移動させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し」という限りにおいて一致する。

・甲2発明6における「戻り回動」は、本件発明6における「戻り回転」に、「戻り駆動」という限りにおいて一致する。
そして、甲2発明6における「傾動した受け台8を前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記傾動と反対方向に戻り回動させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の受け台8の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」は、本件発明6における「往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」に、「移動した搬送部材を前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記移動と反対方向に戻り移動させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「果菜載せ体が無端搬送体に多数取付けられた果菜搬送ラインの供給部において果菜載せ体の上に果菜を載せて搬送し、搬送中に果菜を計測部で計測して等階級等を判別し、果菜載せ体の上の果菜を判別結果に基づいて振り分けて搬送ラインの搬送方向側方に送り出す果菜自動選別方法において、
果菜載せ体の移動可能な搬送部材の受け部の上に載せた果菜を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、当該搬送中に果菜の等階級等を判別し、果菜搬送中に前記搬送部材を判別結果に基づいて搬送方向側方に移動させて、前記受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、移動した搬送部材を前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記移動と反対方向に戻り移動させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の果菜載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる果菜自動選別方法。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点6B]
果菜自動選別方法において、果菜載せ体の搬送部材に関し、
本件発明6においては、搬送部材が「往復回転可能な搬送ベルト」であり、「果菜搬送中に前記搬送ベルトを判別結果に基づいて搬送方向側方に往回転させて、受け部の上の果菜を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して」いるのに対して、
甲2発明6においては、搬送部材が「傾動可能な受け台8」であり、「キューイK搬送中に前記受け台8を判別結果に基づいて搬送方向側方に傾動させて、受け部の上のキューイKを搬送方向側方に送り出し、傾動した受け台8を前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記傾動と反対方向に戻り回動させて前記受け部を元の位置に戻して」いる点(以下、「相違点6B」という。)。

(2)判断
請求人は、本件発明6に対して、甲2発明に甲3発明を適用する場合と、甲2発明に甲4発明を適用する場合の主張をするので、それぞれの場合について以下検討を行う。

ア 甲2発明6に甲3発明2を適用する場合について
(ア)相違点6Bについて
a 上記相違点6Bの検討にあたり、まず、甲3発明2について、本件発明6の用語で表現するために本件発明6との対応関係を検討すると、上記2-6(2)ア(ア)aで検討したとおりである。
したがって、甲3発明2は、本件発明6の用語及び本件発明6の上位概念の用語で表現すると、次のとおりであって、相違点6Bに係る本件発明6の発明特定事項に関する事項を含むものである。
「物品載せ体が搬送体に多数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し、搬送中に物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す物品自動選別方法において、
物品載せ体の往復移動可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた物品を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、
前記搬送ベルトを仕分け情報に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の物品を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記多数の物品載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる物品自動選別方法。」

b そこで、甲2発明6に甲3発明2を適用する動機付けの存在について検討する。
甲2発明6は、本件発明6における「果菜自動選別方法」に相当する果菜物整列箱詰方法に関するものであり、また、甲3発明2は、上記のとおり、小物類である搬送物Pを自動的に仕分ける方法に関するものであるから、甲2発明1と甲3発明1とは、物品を自動的に選別する方法、すなわち「物品自動選別方法」に関する技術として共通しているといえる。
また、両者が搬送する物品は、甲2発明6は、キューイ等の果菜であるのに対して、甲3発明2では、薄物や不定形品などの小物類であるから、物品の大きさや性状に大きな相違はない。このことは、甲第1号証において、「各種の品物を、大きさ(サイズ)別、重量別などに自動的に選別してより分ける選別装置」と記載され(【0001】)、「従来より小荷物、果菜その他の各種品物を大きさ、重量、形状等の条件に基づいて自動的に選別する装置には種々のものがあった」として、従来技術について、特に小荷物と果菜とを区別しておらず、「特にいたみやすい果菜の自動選別」(【0001】として、傷みやすい搬送物の典型として特に果菜を挙げながらも、請求項1において、搬送物につき「果菜や小荷物等」との記載をしており、対象とする物品が、果菜と小荷物等とで異なるとしても、これらの物品を選別、搬送する装置としては、同一の技術分野に属するものと捉えていることが明らかである。しかも、果菜が傷みやすく傷付きやすいとはいえ、甲第1号証にも示されるように、従来から、果菜を選別して搬送方向から側方に送り出す際であっても、容器を傾倒する方式が採用されていたのであるから、破損しやすい小物類との間で、技術分野が異なるというほどに相違するものではない。
さらに、甲2発明6は、上記1-2(1)ウに記載されているとおり、キューイを転動させて受けボックス内に整列させると、受けボックスの下流側内壁面にキューイが当接したり、キューイの相互接触により、キューイの外周面に打ち傷や擦り傷が付いたりすることがあり、キューイの商品価値が損なわれるという問題点を解決するために、コンベアの搬送面上に形成した受け部に果菜物を個々に載置し、果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送することで、搬送中における果菜物の接触及び衝突を防止することとしたものであるところ、搬送物を選別振り分けする際に、搬送物が壁等の設備に衝突することを防止したり、搬送物同士の相互接触を防止したりするという課題は、ボックス内に整列させる際のみならず、選別・搬送の全過程を通じて内在していることは明らかである。そして、甲2発明6は、振り分けコンベアの受け台が、載置された搬送物を搬送方向側方に送り出す際に、搬送方向側方に向けて傾動可能な構成であるところ、傾動させて搬送物を搬送方向側方に送り出すには、ある程度の落下による衝撃、あるいは、接触時に衝撃が生じ、搬送物に損傷や破損の生じるおそれがあることは、従来技術の秤量バケットEを可倒させて、果菜Bを転がして落とす自動選別装置において、傷が付いたり潰れたりするという問題を解決するために、バケット式の果菜載せ体をベルト式の果菜載せ体に置換したと甲第1号証(特に、段落【0005】ないし【0008】及び【0015】)に記載されるように、その構成自体から明らかな周知の課題である。
一方、甲3発明2は、上記1-3(1)ウに記載されているように、従来の傾動可能なトレイを備えた方式の場合は、搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じるおそれがあり、破損しやすい搬送物の搬送には不向きであるという課題を解決するものである。
そうすると、甲2発明6と甲3発明2は、課題としての共通性もある。
以上を総合すると、甲2発明6の振分けコンベアの搬送方向側方に向けて傾動可能な構成において生じる搬送物の損傷、破損という技術課題を解決するために、甲3発明2を適用する動機付けが存在するといえる。
また、上記3-1(2)ア(ア)bで述べたのと同様に、甲1記載事項を考慮することによっても、甲2発明6に甲3発明2を適用する動機付けが存在するといえる。

c そうすると、甲2発明6において、甲3発明2を適用することにより、又は、甲1記載事項を考慮して、甲3発明2を適用することにより、上記相違点6Bに係る本件発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)効果について
そして、本件発明6は、全体としてみても、甲2発明6及び甲3発明2から、又は、甲2発明6、甲1記載事項及び甲3発明2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明6及び甲3発明2に基づいて、又は、甲2発明6、甲1記載事項及び甲3発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 甲2発明6に甲4発明2を適用する場合について
(ア)相違点6Bについて
a 上記相違点6Bの検討にあたり、まず、甲4発明2について、本件発明6の用語で表現するために本件発明6との対応関係を検討すると、上記2-6(2)イ(ア)aで検討したとおりである。

そうすると、甲4発明2は、本件発明6の用語及び本件発明6の上位概念の用語で表現すると、次のとおりであって、相違点6Bに係る本件発明6の発明特定事項に関する事項を含むものである。
「物品載せ体が搬送体に複数取付けられた物品搬送ラインの供給部において物品載せ体の上に物品を載せて搬送し、物品載せ体の上の物品を仕分け情報に基づいて振り分けて物品搬送ラインの搬送方向側方に送り出す物品自動選別方法において、
物品載せ体の往復回転可能な搬送ベルトの受け部の上に載せた物品を、搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して、物品搬送中に前記搬送ベルトを仕分け情報に基づいて搬送方向側方に往回転させて、前記受け部の上の物品を搬送方向側方に送り出し、往回動した搬送ベルトを前記送り出し後の搬送方向への移動中に前記往回転と反対方向に戻り回転させて前記受け部を元の位置に戻して、前記複数の物品載せ体の受け部を搬送方向に一列又は略一列に並べる物品自動選別方法。」

b そこで、甲2発明6に甲4発明2を適用する動機付けの存在について検討する。
甲2発明6は、本件発明6における「果菜自動選別方法」に相当する果菜物整列箱詰方法に関するものであり、また、甲4発明2は、物品を自動的に所定のステーションに配送する方法に関するものであるから、甲2発明6と甲4発明2とは、物品を自動的に選別する方法、すなわち「物品自動選別方法」に関する技術として共通しているといえる。
また、甲2発明6においては、受け台8が傾動式の台であり、傾動させるための構造を有するため、装置が大型となる課題を有することは明らかである。
一方、甲4発明2においては、甲第4号証における上記1-4(1)イ、ウ、エ及びクの記載を参照すると、複数の傾斜可能なトレイを備えたコンベア・システムでは、装置が大型であるため、設置に大きな空間を要するという課題を解決するものである。
そうすると、甲2発明6と甲4発明2とは、課題としての共通性もあるから、甲2発明6に甲4技術を適用する動機付けは存在するといえる。
また、上記3-1(2)ア(ア)bで述べたのと同様に、甲1記載事項を考慮することによっても、甲2発明6に甲4発明2を適用する動機付けは存在するといえる。

c そうすると、甲2発明6において、甲4発明2を適用することにより、又は、甲1記載事項を考慮して、甲4発明2を適用することにより、上記相違点6Bに係る本件発明6の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)効果について
そして、本件発明6は、全体としてみても、甲2発明6及び甲4発明2から、又は、甲2発明6、甲1記載事項及び甲4発明2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

(ウ)小括
したがって、本件発明6は、甲2発明6及び甲4発明2に基づいて、又は、甲2発明6、甲1記載事項及び甲4発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明6は、甲2発明6及び甲3発明2に基づいて、又は、甲2発明6、甲1記載事項及び甲3発明2に基づいて、又は、甲2発明6及び甲4発明2に基づいて、又は、甲2発明6、甲1記載事項及び甲4発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明6に係る特許についての無効理由2-2は理由がある。

3-7 本件発明7について
(1)対比
上記3-6(1)の検討を踏まえて、本件発明7と甲2発明7とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲2発明7における「受け台8」は、本件発明7における「果菜載せ体」に相当し、以下同様に、「キューイK」は「果菜」に、「振分けコンベア2」は「果菜搬送ライン」に、「整列コンベア5」は「果菜引受け体」に、それぞれ相当する。

・甲2発明7における「甲2発明6」は、本件発明7における「請求項6記載の果菜自動選別方法」に、「所定の果菜自動選別方法」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「所定の果菜自動選別方法において、判別結果に基づいて果菜載せ体から搬送方向側方に送り出される果菜を、果菜搬送ラインの搬送方向側方に間隔をあけて配置された二以上の果菜引受け体にプールする果菜自動選別方法。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点7B]
「所定の果菜自動選別装置」に関し、本件発明7においては、「請求項6記載の果菜自動選別方法」であるのに対して、甲2発明7においては、「甲2発明6」である点(以下、「相違点7B」という。)。

(2)判断
ア 相違点7Bについて
相違点7Bは、言い換えると、本件発明6と甲2発明6との相違であり、上記相違点6Bということができる。
そうすると、上記3-6(2)ア及びイの検討と同様の理由により、甲2発明7において、相違点7Bに係る本件発明7の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 効果について
そして、本件発明7は、全体としてみても、甲2発明7及び甲3発明2から、又は、甲2発明7、甲1記載事項及び甲3発明2から、又は、甲2発明7及び甲4発明2から、又は、甲2発明7、甲1記載事項及び甲4発明2から、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ まとめ
したがって、本件発明7は、甲2発明7及び甲3発明2に基づいて、又は、甲2発明7、甲1記載事項及び甲3発明2に基づいて、又は、甲2発明7及び甲4発明2に基づいて、又は、甲2発明7、甲1記載事項及び甲4発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明7に係る特許についての無効理由2-2は理由がある。

3-8 本件発明8について
(1)対比
上記3-6(1)及び3-7(1)の検討を踏まえて、本件発明8と甲2発明8とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲2発明8における「甲2発明7」は、本件発明8における「請求項7記載の果菜自動選別方法」に、「所定の果菜自動選別方法」という限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「所定の果菜自動選別方法において、果菜載せ体から果菜が送り出される度に果菜引受け体を移動させて、送り出される果菜を果菜引受け体にプールさせる果菜自動選別方法。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点8B]
「所定の果菜自動選別装置」に関し、本件発明8においては、「請求項7記載の果菜自動選別方法」であるのに対して、甲2発明8においては、「甲2発明7」である点(以下、「相違点8B」という。)。

(2)判断
ア 相違点8Bについて
相違点8Bは、言い換えると、本件発明7と甲2発明7との相違であり、さらに上記3-7の検討も踏まえると、本件発明6と甲2発明6との相違であり、上記相違点6Bということができる。
そうすると、上記3-6(2)ア及びイの検討と同様の理由により、甲2発明8において、相違点8Bに係る本件発明8の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 効果について
そして、本件発明8は、全体としてみても、甲2発明8及び甲3発明2から、又は、甲2発明8、甲1記載事項及び甲3発明2から、又は、甲2発明8及び甲4発明2から、又は、甲2発明8、甲1記載事項及び甲4発明2から、予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

ウ まとめ
したがって、本件発明8は、甲2発明8及び甲3発明2に基づいて、又は、甲2発明8、甲1記載事項及び甲3発明2に基づいて、又は、甲2発明8及び甲4発明2に基づいて、又は、甲2発明8、甲1記載事項及び甲4発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明8に係る特許についての無効理由2-2は理由がある。


第8 むすび
第6のとおり、本件発明1ないし8に係る特許についての無効理由1はいずれも理由がない。
しかしながら、第7のとおり、本件発明1ないし8に係る特許についての無効理由2-1及び無効理由2-2はいずれも理由がある。
したがって、本件特許の本件発明1ないし8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-25 
結審通知日 2017-05-30 
審決日 2017-06-12 
出願番号 特願2001-285930(P2001-285930)
審決分類 P 1 113・ 536- ZB (B07C)
P 1 113・ 537- ZB (B07C)
P 1 113・ 121- ZB (B07C)
P 1 113・ 841- ZB (B07C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 日下部 由泰  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 槙原 進
三島木 英宏
登録日 2012-02-10 
登録番号 特許第4920841号(P4920841)
発明の名称 果菜自動選別装置用果菜載せ体と、果菜自動選別装置と、果菜自動選別方法  
代理人 磯田 志郎  
代理人 小林 正英  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 小栗 久典  
代理人 小林 正治  
代理人 永島 孝明  
代理人 安國 忠彦  

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