• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1353664
審判番号 不服2018-9421  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-19 
確定日 2019-07-16 
事件の表示 特願2016-258025「記録情報受渡方法及び情報記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月16日出願公開、特開2018-129560〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許出願は、平成28年12月25日を出願日とするものであって、その手続の経緯は以下の通りである。

平成29年10月 6日付け:拒絶理由の通知
平成29年11月30日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 3月 6日付け:拒絶査定
平成30年 6月19日 :審判請求書及び手続補正書の提出
平成30年 9月 4日付け:前置報告書


第2.平成30年6月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成30年6月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成30年6月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成29年11月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)を、以下の通りの特許請求の範囲(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)に補正することを含むものである。(なお、下線は当審にて付したものである。)

(補正前の特許請求の範囲)
「【請求項1】
コンピュータシステムを備えた情報管理センターが、管理運用する対象物件及び/又は事象のデータベースを更新するために、必要とする情報を収集するにあたり、情報収集に必要な機能を具備した情報記録装置に対し無線通信手段を介して、情報収集に関する指示情報を送信し、該指示情報を受信した該情報記録装置により該指示情報に基づく情報収集と蓄積が為され報告情報として無線通信手段を介して該情報管理センターへ送信することを特徴とする記録情報受渡方法。
【請求項2】
前記指示情報の構成内容は、前記対象物件及び/又は事象に関する必要情報、情報収集期日、過去の記録情報等を含むもので事前に設定した情報保護措置を構じたうえで無線通信手段を介して前記情報記録装置に送信することを特徴とする請求項1記載の記録情報受渡方法。
【請求項3】
前記指示情報に基づいて、前記情報記録装置により収集・蓄積した報告情報を前記情報管理センターに対し無線通信手段を介して送信するが、その際、事前に設定した情報保護措置を構じることを特徴とする請求項1記載の記録情報受渡方法。
【請求項4】
前記情報管理センターは、前記対象物件及び/又は事象のデータベース更新処理を確実に遅滞なく実行するため、前記情報記録装置の所在位置、情報収集の進捗度を前記情報記録装置との無線交信により自動的に把握し、必要に応じて残留記録情報を自動回収することを可能とせしめる請求項1記載の記録情報受渡方法。
【請求項5】
前記情報管理センターは、受信した前記報告情報を使用して前記データベースの更新処理を実行した結果、前記報告情報の不具合や欠落が判明した場合、前記情報記録装置に再度収集指示情報を無線通信手段を介して発信し、必要とする情報の再収集を行なわしめることを特徴とする請求項1記載の記録情報受渡方法。
【請求項6】
請求項1記載の指示情報に基づき、必要情報を収集可能にする機能条件を充足するため、被写体を撮影しデジタル画像を取得する撮像部、前記指示情報の内容・取得したデジタル画像・操作画面等を表示する表示部、取得画像を標準化する画像処理部、指によるタッチや手書きペン入力に対応するタッチパネル部、デジタル画像等を外部と受渡するメモリーカード入出力部、外部撮像機器により撮像されたデジタル画像の取込み画像処理部、外部よりの取込み画像の改ざん検出処理部、前記情報保護措置のためのGPS情報受発信部、収集情報の信頼性を高めるためのセンサー部とセンサー情報処理部、操作者を識別するための生体センサー部・生体認証処理部、受渡情報の安全確保のための暗号化・復号化処理部と電子透かし情報処理部、外部との情報交換用に無線通信部、USBケーブルコネクト部、外部との受渡情報・中間発生情報・システムメモリ用等の記憶部、各機能部の動作を制御するCPU、その他必要デバイスとして圧縮/伸張部・カレンダ/クロック機能部・シャッター部・操作部・電源スイッチを具備していることを特徴とする情報記録装置。
【請求項7】
情報収集を行う操作者が前記情報記録装置を操作開始する際、該情報記録装置の生体センサー部により取得された生体情報と予め該情報記録装置内に登録されている操作者の生体認証情報とが合致した場合に限り操作開始が可能となることを特徴とする請求項6記載の情報記録装置。
【請求項8】
前記指示情報を、前記情報記録装置の無線通信部にて受信し、暗号の復号化・電子透かし画像の可視化等情報保護措置の解除を行い、表示部にて編集・フォーマット化等の処理後、ディスプレイに表示することを特徴とする請求項6記載の情報記録装置。
【請求項9】
前記情報記録装置を操作するにあたり、電源スイッチによる起動と同時に該情報記録装置
を解錠するための操作指示画面がディスプレイに自動表示され操作者が正当に認下された当事者であるか否かを識別する処理工程を備えている請求項6記載の情報記録装置。
【請求項10】
前記指示情報に基づき、情報収集活動を開始する際、前記情報記録装置の表示部に表示された複数の画面領域に前記指示情報の収集サンプル画像と、該情報記録装置により現行収集中の報告情報の内容を並列表示し、左右突合しながら情報収集を実行するため、必要情報の収集漏れや収集内容の不正確性を排除することができる機能を備えた請求項6記載の情報記録装置。
【請求項11】
前記指示情報に基づき、情報収集すべき前記対象物件及び/又は事象の所在場所にて、情報収集期日までに必要情報を収集・蓄積すると同時に収集情報の公的な信憑性と信頼性を保証し、更に自己任務の完遂をも証明するため、GPS情報を採用して被写体撮影時に位置・時刻・高度情報を、電子コンパスによる方位情報を、その他各種センサーによる温度・湿度・照度・気圧等の環境情報を取得したデジタル画像に添付する機能を備えた請求項6記載の情報記録装置。
【請求項12】
前記表示部ディスプレイの全面にタッチインターフェース方式のタッチパネルが併設されており、該表示部ディスプレイに表示された操作画面、取得デジタル画面、指示情報画面等に指先や特定の手書きペンにてタッチすることにより、画面上において表示画像内容の取捨選択・拡大縮小・移動・回転等の単独あるいは複数組合わせた処理が可能であり、情報収集作業を効率よく、内容多彩に遂行させ得る機能を備えた請求項6記載の情報記録装置。
【請求項13】
前記表示部ディスプレイに、前記指示情報に基づいて取得済となっているデジタル画像や収集報告記入フォーマット画像等を下絵として表示し、併設されている前タッチパネルと特定の手書きペンを使用して、種々の色彩や線種による特記事項文字、図形、計測数値等を手書き入力し、必要に応じて画面にソフトキーボードを表示してキーをタッチすることによりテキストコード文字入力も可能とする機能を備えた請求項6記載の情報記録装置。
【請求項14】
前記特定の手書きペンは、前記タッチパネル上に該特定の手書きペンの先端が接触した位置を電磁入力方式によりXY座標値で取得し、接触中は一定時間サイクルごとの時系列情報として該XY座標値を記憶する機能を備えた請求項6記載の情報記録装置。
【請求項15】
前記メモリーカードに記録されたデジタル画像をメモリーカード入出力部を経由して取得する際、取得デジタル画像に入力処理時のGPS情報を添付することが可能な請求項6記載の情報記録装置。
【請求項16】
前記撮像部にて取得したデジタル画像及び前記メモリーカード入出力部を経由して取得したデジタル画像に対し、該デジタル画像自体の削除、全部分または一部分の変更並びに配列順序の変更ができる機能が備えられていないことを特徴とする請求項6記載の情報記録装置。
【請求項17】
当該情報記録装置の起動から電源切断までの稼働の詳細記録をGPS情報準拠で前記記憶部に蓄積し、必要に応じて前記情報管理センターはその内容を出力し、使用することが可能な請求項6記載の情報記録装置。」


(補正後の特許請求の範囲)
「【請求項1】
物件及び/又は事象のデータベースを管理運用するコンピュータシステムと、該データベースを更新維持するために必要なテキストデータ及びデジタル画像を含むアップデート情報を収集記録し、該コンピュータシステムに送信する機能を備えた情報記録装置と、
コンピュータシステムと該情報記録装置との機器間において、該コンピュータシステムからは情報収集指示情報を、該情報記録装置からは情報収集報告情報を、無線通信手段を介して各々の相手機器に対し送信するに際し、改ざん・紛失・盗難に備えるべく情報保護措置として各々の機器からの送信前に情報の暗号化と電子透かし処理の手法を施す手段と、
前記情報収集指示情報と前記情報収集報告情報の受信後に、これらの情報保護措置を解除して表示画面上での可視化を可能とせしめる手段と、
前記情報記録装置からコンピュータシステムに送信される前記情報収集報告情報にGPS情報に基づく情報収集時の日時・場所を示す情報が自動添付される手段が備えられていることを特徴とする記録情報受渡装置。
【請求項2】
前記情報記録装置として、
被写体を撮影しデシタル画像を取得する撮象部、
前記情報収集指示情報の内容・取得したデジタル画像・操作画面等を表示するA4サイズ大の表示部、
取得画像を標準化する画像処理部、
指によるタッチや特定の手書きペンによる入力に対応するタッチパネル部、
デジタル画像等を外部と受渡するメモリーカード入出力部、
外部撮像機器により撮像されたデジタル画像の取り込み画像処理部、
外部よりの取り込み画像の改ざんを検出する改ざん検出処理部、
情報保護措置のためのGPS情報受発信部、
収集情報の信頼性を高めるためのセンサー部とセンサー情報処理部、
操作者を識別するための生体センサー部と生体認証処理部、
受渡情報の安全確保のための暗号化・復合化処理部と電子透かし情報処理部、
外部との情報交換用の無線通信部とUSBケーブルコネクト部、
外部との受渡情報・中間発生情報・システムメモリ用等の記憶部、
各機能部の動作を制御するCPU、
その他必要デバイスとして圧縮/伸張部・カレンダ/クロック機能部・シャッター部・操作部・電源スイッチ、
を、具備していることを特徴とする請求項1記載の情報記録受渡装置。
【請求項3】
データベースを更新するために必要なアップデート情報を収集する際に、所定の収集期日までに所定の場所において、情報収集指示情報に基づく情報収集報告情報を取得するための手段として、コンピュータシステムから情報記録装置に対し緊密な監視と状況報告を要求し、適切な情報収集作業を遅滞なく実行せざるを得ない仕組を備えていることを特徴とする請求項1記載の記録情報受渡装置。
【請求項4】
情報記録装置内に生体センサー部を有し、該情報記録装置を使用して、前記アップデート情報の収集作業を開始する際、該情報記録装置の生体センサー部を経由して生体の一部を画像として取り込み、予め該情報記録装置内に登録されている生体認証情報と合致した場合に限り収集記録の開始が可能となることを特徴とする請求項1記載の記録情報受渡装置。
【請求項5】
情報記録装置は表示部を有し情報収集指示情報に基づき、情報収集作業を開始する際、前記情報記録装置の表示部に表示される複数の画面領域に該情報収集指示情報の収集サンプル画像と、該情報記録装置により現行収集中の情報収集報告情報の内容を左右に並列表示し、各列別々の上下移動と左右突合に基づいた情報収集を実行することが可能となる機能を備えていることを特徴とする請求項1記載の記録情報受渡装置。
【請求項6】
情報記録装置としてアップデート情報を収集記録する際、タッチパネルを併設した表示部ディスプレイに表示される操作画面、取得デジタル画像画面および情報収集指示情報画面に指先または特定の手書きペンにてタッチすることにより、画面上において表示画像内容の取捨選択、編集補正、拡大縮小、移動および回転の単独あるいは複数組合わせた処理を行い、特定の手書きペンの使用により取得画像やフォーマット画像を下絵にして特記事項や計測数値を記録することが可能となる手段を備えており、
該タッチパネル上に該特定の手書きペンの先端が接触した位置を電磁入力方式によりXY座標値で取得し、接触中は一定の時間サイクルごとの時系列情報として該座標値を取得し格納する手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の記録情報受渡装置。」


2.本件補正による新規事項の有無について

本件補正により、補正前の特許請求の範囲に記載されていた「・・・記録情報受渡方法」(補正前の特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項5】)及び「・・・情報記録装置」という発明(補正前の特許請求の範囲の【請求項6】?【請求項17】)が、補正後の特許請求の範囲に記載された「・・・記録情報受渡装置」という発明(補正後の特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項6】)に補正された。

そして、本件特許出願の出願当初の明細書等によると、補正後の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された記録情報受渡装置という発明を特定する各種構成については、例えば、『物件及び/又は事象のデータベースを管理運用するコンピュータシステム』については【0020】等、『情報記録装置』については【0033】?【0061】等、『情報の暗号化と電子透かし処理の手法を施す手段』及び『情報保護措置を解除して表示画面上での可視化を可能とせしめる手段』については【0026】、『情報収集報告情報にGPS情報に基づく情報収集時の日時・場所を示す情報が自動添付される手段』については【0046】に、それぞれ記載されている。

しかしながら、本件特許出願の出願当初の明細書等には、上記各種構成を全て備える「記録情報受渡装置」は記載されておらず、また、その様な「記録情報受渡装置」を想起し得る記載も示唆もない。

してみると、本件補正により、補正後の特許請求の範囲に記載された「・・・記録情報受渡装置」という発明(補正後の特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項6】)に係る補正事項は、本件特許出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものとは認められないので、特許法第17条の2第3項に違反するものである。


3.本件補正の目的要件について

事案に鑑み、本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについても検討する。

3-1.特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)、同第3号(誤 記の訂正)、同第4号(明りょうでない記載の釈明)を目的とする ものであるかについて

本件補正は、上記2.で言及した様に、補正前の特許請求の範囲に記載されていた「・・・記録情報受渡方法」(補正前の特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項5】)及び「・・・情報記録装置」という発明(補正前の特許請求の範囲の【請求項6】?【請求項17】)を補正後の特許請求の範囲に記載された「・・・記録情報受渡装置」という発明(補正後の特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項6】)に補正することを含むものであり、補正の前後において、請求項の数は「17」から「6」と減少しているものの、補正前の特許請求の範囲に記載されていた「・・・記録情報受渡方法」(補正前の特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項5】)を特定する各請求項、及び、補正前の特許請求の範囲に記載されていた「・・・情報記録装置」という発明(補正前の特許請求の範囲の【請求項6】?【請求項17】)を特定する各請求項のうちの何れかを削除するものではないから、特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)を目的とするものではない。

また、上記補正が特許法第17条の2第5項第3号(誤記の訂正)、同第4号(明りょうでない記載の釈明)を目的とするものでないことは明らかである。

3-2.特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)を目的 とするものであるかについて

本件補正は、上記2.で言及した様に、補正前の特許請求の範囲に記載されていた「・・・記録情報受渡方法」(補正前の特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項5】)及び「・・・情報記録装置」という発明(補正前の特許請求の範囲の【請求項6】?【請求項17】)を補正後の特許請求の範囲に記載された「・・・記録情報受渡装置」という発明(補正後の特許請求の範囲の【請求項1】?【請求項6】)に補正することを含むものであるから、補正後の特許請求の範囲に記載された「・・・記録情報受渡装置」は、補正前の特許請求の範囲に記載されていた「・・・記録情報受渡方法」、又は、「・・・情報記録装置」を限定的に減縮するものではない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものではない。

3-3.「補正却下の決定」についてのまとめ

上記「3-1」及び「3-2」で検討した通り、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、特許法第17条の2第5項第1号から同法第4号の規定される事項を目的とするものではないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について

1.本願発明

平成30年6月19日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年11月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される以下の通りのものである。(なお、(a)等の記号は、便宜上、当審にて付した。)

「【請求項6】
(a)請求項1記載の指示情報に基づき、必要情報を収集可能にする機能条件を充足するため、
(b)被写体を撮影しデジタル画像を取得する撮像部、
(c)前記指示情報の内容・取得したデジタル画像・操作画面等を表示する表示部、
(d)取得画像を標準化する画像処理部、
(e)指によるタッチや手書きペン入力に対応するタッチパネル部、
(f)デジタル画像等を外部と受渡するメモリーカード入出力部、
(g)外部撮像機器により撮像されたデジタル画像の取込み画像処理部、
(h)外部よりの取込み画像の改ざん検出処理部、
(i)前記情報保護措置のためのGPS情報受発信部、
(j)収集情報の信頼性を高めるためのセンサー部とセンサー情報処理部、(k)操作者を識別するための生体センサー部・生体認証処理部、
(l)受渡情報の安全確保のための暗号化・復号化処理部と電子透かし情報処理部、
(m)外部との情報交換用に無線通信部、
(n)USBケーブルコネクト部、
(o)外部との受渡情報・中間発生情報・システムメモリ用等の記憶部、
(p)各機能部の動作を制御するCPU、
(q)その他必要デバイスとして圧縮/伸張部・カレンダ/クロック機能部・シャッター部・操作部・電源スイッチ
(r)を具備していることを特徴とする情報記録装置。」

(なお、上記(a)で記載されている「請求項1記載」で特定されている請求項1の記載事項は、以下の通りである。
「【請求項1】
コンピュータシステムを備えた情報管理センターが、管理運用する対象物件及び/又は事象のデータベースを更新するために、必要とする情報を収集するにあたり、情報収集に必要な機能を具備した情報記録装置に対し無線通信手段を介して、情報収集に関する指示情報を送信し、該指示情報を受信した該情報記録装置により該指示情報に基づく情報収集と蓄積が為され報告情報として無線通信手段を介して該情報管理センターへ送信することを特徴とする記録情報受渡方法。」)


2.原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項6?17(平成29年11月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の【請求項6】?【請求項17】)に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-117943号公報
引用文献2:特開2006-178719号公報
引用文献3:特開2009-151610号公報
引用文献4:特開2005-085190号公報
引用文献5:国際公開第2014/109061号


第4 当審の判断

1.引用文献の記載事項

(1)引用文献1(特開2013-117943号公報)

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2013-117943号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(ア)「【0015】
[システム構成]
(全体構成)
図1は、本実施形態に係る全体構成図を示す。本実施形態に係るスマートデバイス1は、工事現場で現場写真の撮影作業に使用する装置である。具体的にスマートフォン、タブレット端末などにより実現されうる。工事現場において作業者は、スマートデバイス1に付属されるカメラを使用し、被写体である撮影現場(撮影対象)の撮影を行う。上述の如く、撮影された現場写真内には各種情報が記入された黒板が写っている必要があるが、本実施形態においては上述のような黒板(黒板現物)は使用せず、スマートデバイス1のカメラによって撮影された撮影現場の写真に対し、アプリケーションが仮想的な電子黒板(以下、仮想黒板と呼ぶ)を挿入することにより、現場写真を構成するようにする(詳細後述)。」

(イ)「【0023】
(ハードウェア)
ここで、本実施形態に係るスマートデバイス1のハードウェア構成について説明しておく。図2は、本実施形態に係るスマートデバイス1の主要構成を示すハードウェア構成図である。スマートデバイス1は、主要な構成として、CPU11、記憶装置12、表示装置13、入力装置14、通信装置15、外部インタフェース装置16、撮影装置17、及びGPS18を含む構成である。」
【0024】
CPU11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路から構成され、装置全体を制御する回路である。スマートデバイス向けOS(Operating System)や各種アプリケーションプログラム等に基づいた処理を実行する。
【0025】
記憶装置12は、スマートデバイス向けOSや各種アプリケーション、その他各種データを格納するメモリである。記憶装置12は、CPU11が各種プログラムを実行して各種の制御を行うときの作業エリア(ワーク領域)として使用するRAM、所定の制御プログラム等を記憶した不揮発性のROM、比較的大容量のデータを記憶したHDD等を含む。本実施形態においては、スマートデバイス用アプリケーション・プログラム(例えば「工事現場黒板アプリ」)をここへ予めインストールしておくものとする。
【0026】
表示装置13は、各種データを表示画面に表示するディスプレイである。また入力装置14は、ユーザが各種入力操作を行うための装置である。本実施形態に係るスマートデバイス1の入力装置14は、ハードウェアキーの他、表示装置13の表示画面上に重畳するように設けられたタッチパネルスイッチを含む。この場合、OSの入力系プログラムによるタッチパネルスイッチ制御により、ソフトウェアキーが実現される。即ち画面上からのタッチ操作、ソフトウェアキー操作だけで、一切の端末操作を行うことが可能となっている。
【0027】
通信装置15は、他の機器との通信を行う装置である。有線ネットワークや無線ネットワークなど含む各種ネットワーク形態に応じた通信をサポートする。本実施形態に係るスマートデバイスでは、具体的に例えば無線LAN(WiFi等)、電話網/IP網回線(3G等)、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等々をサポートする。
【0028】
外部インタフェース装置16は、外部からの記録媒体を接続し、端末内に記録媒体内のデータの入出力を行うインタフェースである。例えばUSBメモリ、SDカード等のメモリカードをセットすることで外部からの情報を取得したり、出力できる。
【0029】
撮影装置17は、スマートデバイス1に備えられているデジタル・カメラである。撮像レンズを備え、撮像された撮像画像(写真画像)を画像データ(写真データ)としてスマートデバイス1内に取り込む。なお撮影装置17から工事資料3のバーコードやQRコード(登録商標)などの各種コード情報を撮像すると、所定のアプリケーションを介し、コード内のテキストデータ等を読み取ることも可能である。
【0030】
GPS18は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)から、地球上の現在位置情報を受信するGPS受信機である。即ちGPS18は、GPS衛星から現在位置情報(位置座標)を取得する。」

(ウ)「【0057】
図10は、本実施形態に係る画面B3変形例を示す。(a)は、ユーザにより選択された仮想黒板である。図8(a)と同様、仮想黒板中の記入項目のうち「位置」には、GPS18より自動で取得された現在地の位置情報(位置座標)が既に入力される。また本変形例では、「工事名」についても既に入力されている。本実施形態に係るスマートデバイス1では上述の如く、通信部104を介し、測量器・測定器2により測量された測量データ(「測点」、「実測寸法」等々)や、サーバ4又は各種コード情報等でも管理される一般的な工事情報(「工事名」、「工事場所」、「施工者」等々)を入力することが可能となっている。従って、仮想黒板の記入項目のうちこの「工事名」には、外部から入力されている工事情報に基づき、その入力値が入力部105により自動入力されたものとなっている。」

(エ)「【0112】
(Exifデータ)
まず、一般的なExifデータ(Exifメタデータ、Exif情報などともいう)について説明する。一般に、デジタルカメラを用いて写真を撮影し、撮影された写真画像をJPEGファイルとして保存した場合、例えば、Exif(Exchangeable Image File Format)形式のメタデータが自動的に作成される。このメタデータをExifデータという。
【0113】
具体的に、デジタルカメラは、撮影写真に対し、カメラの機種や撮影時の条件などの情報を画像にExifデータとして埋め込んでいる。このExifデータは、画像ビューワやExif編集ソフト等で、写真画像とともに参照できる。また、写真画像をプリンタ等で印刷する場合には、Exifデータに含まれる撮影時の情報などを元に、自動的に写真画像の最適化を行ってからプリント出力を行うこともできる。
【0114】
図24は、従来例に係るEXIFデータ例を示す。EXIFデータは、撮影された写真画像をJPEGファイルとして保存した場合、一般のデジタルカメラ(一般のデジタルカメラが有するソフトウェア)により自動的に作成されるデータである。具体的には、図に示されるようなカメラの機種や撮影時の条件などの各種情報を含む。
【0115】
これに対し、図25は、本実施形態に係る出力JPEG画像のEXIFデータ例を示す。図に示されるEXIFデータは、仮想黒板付き写真画像をJPEG画像として出力した場合、本実施形態に係るスマートデバイス1(スマートデバイス1が有する「工事現場黒板アプリ」)により自動的に作成されるデータである。具体的には、図に示されるようなカメラの機種や撮影時の条件などの情報に加え、仮想黒板画像の所定記入項目に入力されたデータ及び暗号化データを含む。
【0116】
Exifデータには、規格上、カメラの機種や撮影時の条件などの情報のほか、「メーカー独自情報」を追加することができるため、本実施形態に係るスマートデバイス1(スマートデバイス1が有する「工事現場黒板アプリ」)により、仮想黒板付き写真画像がJPEG画像として出力される場合、Exifデータの「メーカー独自情報」内に、仮想黒板内の所定の記入項目に入力されたデータ及び暗号化データが追記される。
【0117】
なお、暗号化データとは、仮想黒板内の所定の記入項目に入力されたデータ、又は入力されたデータの一部のデータを、暗号化したデータである。情報の改ざんを防止・抑制するため、特に改ざんを防止・抑制したいデータを対象に暗号化し、同暗号化データをExifデータの「メーカー独自情報」内に含めておく。これにより、暗号化の対象となったデータを同一の暗号アルゴリズムにより復号化し、Exifデータの「メーカー独自情報」内のデータと一致するか否かを確認することで、暗号化の対象となったデータの真正性を担保することができる。」

したがって、上記摘記事項(ア)から(エ)の記載から引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「工事現場で現場写真の撮影作業に使用するスマートデバイス1であって、スマートデバイス1は、主要な構成として、CPU11、記憶装置12、表示装置13、入力装置14、通信装置15、外部インタフェース装置16、撮影装置17、及びGPS18を含み、
CPU11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路から構成され、装置全体を制御する回路であり、
記憶装置12は、スマートデバイス向けOSや各種アプリケーション、その他各種データを格納するメモリであり、
表示装置13は、各種データを表示画面に表示するディスプレイであり、
入力装置14は、タッチパネルスイッチを含み、
通信装置15は、他の機器との通信を行う装置であって、有線ネットワークや無線ネットワークなど含む各種ネットワーク形態に応じた通信をサポートし、
外部インタフェース装置16は、外部からの記録媒体を接続し、端末内に記録媒体内のデータの入出力を行うインタフェースであって、USBメモリ、SDカード等のメモリカードをセットすることで外部からの情報を取得したり、出力でき、
撮影装置17は、スマートデバイス1に備えられているデジタル・カメラであって、撮像レンズを備え、撮像された撮像画像(写真画像)を画像データ(写真データ)としてスマートデバイス1内に取り込み、
GPS18は、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)から、地球上の現在位置情報を受信するGPS受信機であり、
スマートデバイス1により、仮想黒板付き写真画像がJPEG画像として出力される場合、Exifデータの「メーカー独自情報」内に、仮想黒板内の所定の記入項目に入力されたデータ及び暗号化データが追記され、暗号化データとは、仮想黒板内の所定の記入項目に入力されたデータ、又は入力されたデータの一部のデータを、暗号化したデータであって、情報の改ざんを防止・抑制するため、特に改ざんを防止・抑制したいデータを対象に暗号化し、同暗号化データをExifデータの「メーカー独自情報」内に含めておき、これにより、暗号化の対象となったデータを同一の暗号アルゴリズムにより復号化し、Exifデータの「メーカー独自情報」内のデータと一致するか否かを確認することで、暗号化の対象となったデータの真正性を担保することができる、
スマートデバイス1。」(以下、「引用発明」という。)


(2)引用文献2(特開2006-178719号公報)

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2006-178719号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(カ)「【請求項1】
作業指示を行う管理者装置と、この作業指示を受信する担当者端末装置とを備え、この作業指示に応じた作業結果を前記担当者端末装置から受信取得して記憶管理する作業管理システムであって、
前記管理者装置は、作業内容を示す作業指示情報を入力作成する作成手段と、この作成手段によって入力作成された作業指示情報をその指示先である前記担当者端末装置に送信する送信手段とを備え、
前記担当者端末装置は、前記管理者装置から送信された作業指示情報を表示する表示手段と、この作業指示に応じた作業結果を示す報告情報を入力作成する作成手段と、作業現場を撮影した撮影画像を前記作業報告情報に添付して送信する送信手段とを備え、
前記管理者装置は、前記担当者端末装置から受信取得した撮影画像付きの作業報告情報と当該作業指示情報とを対応付けて記憶管理するほか、作業報告情報の出力指示に応答して撮影画像付きの作業報告情報と作業指示情報とを対応付けて表示する、
ようにしたことを特徴とする作業管理システム。」


(3)引用文献3(特開2005-286687号公報)

当審にて周知文献として新たに引用した、特開2005-286687号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(サ)「【0001】
この発明は、業務を構成する各作業毎にその作業状況を報告する業務報告書を作成する業務報告書作成機能付きデジタルカメラおよびプログラムに関する。」

(シ)「【0035】
サーバ2は、無線LAN3に専用回線を介して接続されていると共に、社内のイントラネット4に接続されたもので、データベースサーバ機能、Webサーバ機能等の各種のサーバ機能を有し、デジタルカメラ1との間でデジタル化(パケット化)されたデータの送受信を行う。この場合、サーバ2は、巡回業務の作業手順情報および業務報告用の書式情報を含む業務設定情報をデジタルカメラ1に送信して設定したり、デジタルカメラ1から送信されて来た業務報告書を受信して記憶管理する。なお、サーバ2の構成は、図示省略したが、通常と同様に、CPU、記憶部、無線/有線通信部、表示部、操作部等を有する構成となっている。無線LAN3は、構内全体を網羅するように複数のアクセスポイントが配置された通常の構成で、デジタルカメラ1は、その周囲に存在する複数のアクセスポイントの位置関係に基づいて現在のカメラ位置(構内地図上の現在位置)を検出測定する位置測定機能を有している。
・・・途中省略・・・
【0037】
図3は、デジタルカメラ1の基本的構成要素を示したブロック図である。
CPU11は、記憶部12内のオペレーティングシステムや各種アプリケーションソフトに従ってこのデジタルカメラ1の全体動作を制御する中央演算処理装置である。記憶部12は、ハードディスク等の固定的なメモリであり、プログラム記憶領域とデータ記憶領域とを有している。この記憶部12内のプログラム記憶領域には、後述する図10?図12に示す動作手順に従って本実施例を実現する為のアプリケーションプログラム(業務設定情報取得プログラム、業務報告書作成プログラムなど)が格納され、また、データ記憶領域には、後述する業務設定情報100が格納されている。このプログラムやデータは、必要に応じてワークメモリ13にロードされたり、このワークメモリ13内のデータが記憶部12にセーブされる。なお、記録媒体14は、DVD等の着脱自在なメモリであり、記憶部12やワークメモリ13との間においてプログラムや画像データ等の受け渡しを行う記録メディアである。
【0038】
一方、CPU11には、その入出力周辺デバイスである操作部15、表示部16、カメラ撮影部17、音声入出力部18、計時回路部19、位置測定部20、通信インターフェイス部21がバスラインを介して接続されており、入出力プログラムに従ってCPU11は、これらの入出力デバイスの動作制御を行う。その他、図示省略したが、外部I/Oインターフェイス部等が設けられている。
操作部15は、上述した録音スイッチ1H、カーソルキー1G、動画/静止画撮影モード/再生モード、設定モード等を切り替えるモードスイッチ1L、シャッターボタン1M等を有し、その操作信号はCPU11へ与えられる。表示部16は、タッチパネル付きの液晶表示部であり、モニタ画面/画像再生画面/案内表示画面/作業状況入力画面として使用される。
・・・途中省略・・・
【0045】
ここで、CPU11は、作業手順情報101、作業支援情報102、作業確認情報103に基づいて得られた各種の情報を作業報告用の情報として取得して記録保持する。すなわち、各作業毎にカメラ撮影を促す案内に応答してシャッターボタンが操作されると、CPU11は、その時の撮影画像を取得する他、作業を実際に行ったことの証拠となる実績情報(現在位置および現在日時)を作業報告用の情報として取得して記録保持したり、作業確認の各質問事項に応答してその回答データが入力されると、この回答データを取得して作業状況を示す情報として記憶保持する。この場合、CPU11は、作業毎に得られた一連のデータ(位置、日時、画像、回答)を秘密鍵あるいは電子署名用暗号鍵で暗号化して電子署名データを作成し、この作業毎の電子署名データと元の一連データ(位置、日時、画像、回答)とを対応付けて記憶保持するようにしている。」

(ス)「【0070】
上述した実施例においては、構内巡回警備を行う業務システムを例示したが、巡回警備業務に限らず、任意であり、例えば、ルートセールス業務、機器メンテナンス業務、商品やサービスのクレーム対応業務、弁護士やコンサルタントの就業記録業務、交通事故査定業務、商品配送業務、建築工事現場における施工確認業務などであってもよい。
この場合の業務システムは、移動体通信網、インターネットを含む広域通信システムとし、作業担当者は、カメラ付き携帯電話や携帯情報機器を持参して業務を遂行するようにしてもよい。また、カメラ付き携帯電話や携帯情報機器にGPS受信測位機能を備え、現在位置(経緯度情報)を取得するようにすればよい。」

(セ)「【0079】
また、上述した実施例では業務報告書に日時・位置認証用の電子署名を付加するようにしたが、例えば、客先の貨物を預かる宅配業務や輸送などの業務にあつては、日時と位置とを連続して蓄積記録したり、定期的あるいは間欠的にセンタへ送信する機能を付加するようにしてもよい。また、利用者を個人認証し、業務情報の秘匿のために、RF-IDカード、ICカードのリーダ/ライタあるいは指紋センサなどの生体認証機能を設けてもよい。」


(4)引用文献4(「空気調和・衛生工学」、第86巻 第12号、第61 頁?65頁、空気調和・衛生工学会、平成24年12月 5日発行)

当審にて周知文献として新たに引用した上記引用文献4(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(タ)「(5)設備検査システムの概要と特徴
設備検査システムとしては,品質管理記録システムと立会検査記録システムの2種類のシステムがある。本項では両システムに共通な内容を記す。
図一5.8に設備検査システムの全体構成,図一5.9に現場でのシステム構成,図一5.10に工事事務所でのシステム構成を示す。
日々の品質管理記録や各種立会検査記録に必要な図面をタブレット端末に登録し,現場において実施した検査記録の情報をタブレット端末の画面上で入力する。工事写真については,タブレット端末に搭載されているカメラ機能で撮影するか,デジカメで撮影を行う。デジカメで撮影する場合は,デジカメの無線機能付きSDメモリカードより無線通信(Wi-Fi)でタブレット端末に写真データを転送する。検査完了後,タブレット端末を工事事務所に持ち帰り,タブレット端末の検査晴報を無線ルーターを経由してWi-Fi通信機能により現場サーバーに取り込む。サーバーに取り込んだ品質管理記録や立会検査記録の情報と工事写真データをパソコン上で編集し帳票を自動作成することができる。
設備検査システムの特徴としては,次の5点があげられる。
a タブレット端末での入力
手作業で記録する従来の方法を見直し,タブレット端末にて検査記録を入力する。タブレット端末での入力作業を効率的に行うため,選択画面より検査項目や検査結果を選んで入力できる。
b デジカメ写真の自動転送
デジカメで撮影した写真をその場でタブレット端末へ転送が可能である。デジカメで撮影した写真データは,無線通信によりタブレット端末へ送信される。送信された写真データは,該当する検査項目と紐付けて保存される。また,タブレット端末については内蔵カメラでの撮影も可能である。ただし,フラッシュ機能がないことを留意する必要がある。」


(5)引用文献5(「ノイズ特性にもどづく映像の改ざん検出」、小林理弘 、阿部孝弘、佐藤洋一、画像の認識・理解シンポジウム (MIRU2008)、第1274頁?1279頁、2 008年7月)

当審にて周知文献として新たに引用した上記引用文献5(以下、「引用例5」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(ナ)「以上のような背景を念頭におき、本研究では電子透かしなどの事前のデータを用いずに映像内の改ざんを検出する手法を提案する。検出の手がかりとして、我々は映像内に混入するノイズの特性に注目した。カメラで取得したデータには、信号処理の過程でノイズが付加される。ノイズの特性は画素値の関数として記述することができ、このノイズ特性を決定するパラメータはカメラの種類や撮像時のカメラ設定に依存する。したがって、異なるカメラで撮影された映像や、同じカメラでも異なる設定で撮影された映像を合成して作られた映像では、異なるノイズ特性が混在することになる。提案手法は、画素ごとにノイズ強度を求めてシーン全体のノイズ特性を推定し、周囲と大きく異なる特性をもつ領域は改ざんされた箇所であると判断する。
提案手法の有効性を検証するため、カメラや被写体が移動しない、静止シーンを対象として実験を行った。異なるカメラ設定で撮影した映像が混在する映像に提案手法を適用し、画素単位で改ざん箇所を検出することが確認できたので報告する。」(第1275頁左欄第10行?28行)


(6)引用文献6(「改ざん検出可能な電子透かし」、須藤正之、三井靖博 、沖電気研究開発、第183号 Vol.67 No. 2、第107頁?110頁、2000年7月)

当審にて周知文献として新たに引用した上記引用文献6(以下、「引用例6」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(ハ)「・・・一方,電子透かしは,重要な画像データなどに情報を密かに埋め込むことによって改ざんを検出し,不正を抑止する機能も併せ持つ。・・・電子透かし技術とは,いわゆるマルチメデイアコンテンツなどのデジタルデータの冗長部分に人間には知覚できない, または知覚し難い変更を加えることにより情報を埋め込み,必要時に情報を抽出し,情報の有無や内容を,著作権情報やデータ変更の有無の確認などに利用する技術である。
デジタルデータを盗聴,改ざん等の不正から守るものとして暗号技術がある。・・・本電子透かしを用いると,電子透かし埋込み画像データと電子透かし鍵のみを用いて,画像データが改ざんされているかどうかを検証し,かつ,改ざんされている場合には,埋込み時に指定可能な小矩形である「ブロック」の単位で改ざん位置を特定することができる。検出可能な改ざんの最小サイズは1画素であり,確実に改ざんを検出することができる。・・・そのようなシステムにおいて,改ざん検出可能な電子透かし技術を利用することにより,従来のイメージ処理システムを大幅に変更することなく,画像データに対する改ざんなどの不正を検出したり,防止することができる。つまり電子透かしを埋め込んだ画像データは,これまで通り画像データとして転送,閲覧,蓄積が可能であり,かつ必要時には画像データの電子透かし検証をを行ない,改ざんの有無を調べることができる。・・・」


(7)引用文献7(特開2005-85190号公報)

原査定の拒絶の理由に周知文献として引用された、特開2005-85190号公報(以下、「引用例7」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付した。)

(マ)「【0005】
請求項1に記載の作業支援システムは、施設の保守・点検作業において作業者がウェアラブルコンピュータを装着することにより、作業環境と作業履歴を記録した作業日誌を自動的に生成し、所定のネットワークを介して管理装置に送信する作業支援システムであって、ウェアラブルコンピュータは、作業者のスキルに関するスキル情報を記憶するスキル情報記憶手段と、作業者に対するヘルプ情報を記憶するヘルプ情報記憶手段と、作業者の作業内容に関する情報を記憶する作業内容記憶手段と、作業者の作業現場の状況を示す作業環境情報を取得する取得手段と、取得手段によって取得された作業環境情報と実施済みの作業内容を示す作業履歴情報を記憶する作業履歴情報記憶手段と、スキル情報記憶手段によって記憶されている作業者のスキル情報と、作業履歴情報記憶手段によって記憶されている作業履歴情報とに基づいて、ヘルプ情報記憶手段から作業者に対応する所定のヘルプ情報を読み出す読み出し手段と、読み出し手段によって読み出されたヘルプ情報を出力する出力手段と、作業内容と作業履歴情報とに基づいて作業日誌を作成する作成手段と、作成手段によって作成された作業日誌を記憶する作業日誌記憶手段と、作業履歴情報および作業日誌を管理装置に送信する送信手段とを備え、管理装置は、全作業者の作業内容を記憶する全作業内容記憶手段と、送信手段によって送信された全作業者の作業履歴情報を記憶する全作業履歴情報記憶手段と、全作業者のスキル情報を記憶する全スキル情報記憶手段と、送信手段によって送信された全作業者の作業日誌を記憶する全作業日誌記憶手段とを備えることを特徴とする。」

(ミ)「【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の作業支援システムの一実施の形態の構成例を示している。本実施の形態は、保守・点検作業者とその作業者の作業状況を監視している作業管理者という2つの異なる役割の人が使用することを想定している。保守・点検作業者は、たとえば、GPS(global positioning system)、地磁気センサ、温度センサなどのセンサ類や、デジタルカメラ、マイクロフォンなどからなる入力装置1、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ヘッドフォンなどからなる出力装置2、演算装置3、および通信装置4などの機器を身体に装着して屋内外の保守・点検作業を行う。一方、作業管理者は、保守・点検作業者が装着している機器に、通信装置5を介してネットワーク30経由で接続されている監視装置6を用いて、各作業者の作業状況を監視する。以下に、図1に記載されている各装置、モジュール、情報について説明する。
【0009】
入力装置1には、保守・点検作業中に、作業場所の環境に関するさまざまな情報を自動的に取得するためのセンサ類、作業者のシステムに対する指示に関する情報を獲得するための入力機器等が含まれる。作業場所の環境に関する情報を取得するためのセンサ類としては、例えば、地磁気センサ、加速度センサ、GPSレシーバ、温度センサ、湿度センサ、RF-IDリーダ等がある。これらのセンサを用いることで、指定された時間間隔で、あるいは指定された時刻での作業者の活動内容に関する情報を収集することができる。収集できる情報としては、(a)作業者の向いている方向、(b)作業者の移動速度の変化、(c)作業者の位置に関する情報に加え、(d)活動場所の周りの温度、(e)湿度、(f)作業場所の周りに配備されているRF-IDタグのIDの情報などがある。また、入力機器としては、映像情報(動画、静止画)を取得するデジタルカメラ、音声情報を取得するマイクロフォン、作業者の指示を受付ける携帯マウスやデジタルペン等がある。
【0010】
出力装置2は、作業者に対して情報を提示するための一つ以上の機器で構成される。たとえば、映像情報(動画、静止画、テキスト情報)を提示するための装置であるヘッドマウントディスプレイやタブレットディスプレイ、音声情報を出力するヘッドフォンなどの機器である。」


2.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(2-1)(構成(r)について)
引用発明における「スマートデバイス1」は、「工事現場で現場写真の撮影作業に使用する」ものであるから、本願発明でいう『情報記録装置』に相当する。

(2-2)(構成(b)について)
「スマートデバイス1」が備える「撮影装置17」は、「デジタル・カメラであって、撮像レンズを備え、撮像された撮像画像(写真画像)を画像データ(写真データ)としてスマートデバイス1内に取り込む」のであるから、本願発明でいう『被写体を撮影しデジタル画像を取得する撮像部』に相当する。

(2-3)(構成(c)について)
「スマートデバイス1」が備える「表示装置13」は、「各種データを表示画面に表示するディスプレイ」であるから、本願発明でいう『前記指示情報の内容・取得したデジタル画像・操作画面等を表示する表示部』に相当する。

(2-4)(構成(e)について)
「スマートデバイス1」が備える「入力装置14」は、「タッチパネルスイッチを含む」ものであるから、本願発明でいう『指によるタッチや手書きペン入力に対応するタッチパネル部』に相当する。(なお、ペン入力はタッチパネルに対する入力手段として、文献を示すまでもなく周知の手段である。(必要ならば、引用例7の【0010】を参照。)

(2-5)(構成(f)及び(n)について)
「スマートデバイス1」が備える「外部インタフェース装置16」は、「外部からの記録媒体を接続し、端末内に記録媒体内のデータの入出力を行うインタフェースであって、USBメモリ、SDカード等のメモリカードをセットすることで外部からの情報を取得したり、出力でき」るものであるから、本願発明でいう『デジタル画像等を外部と受渡するメモリーカード入出力部』及び『USBケーブルコネクト部』に相当する。

(2-6)(構成(i)について)
「スマートデバイス1」が備える「GPS18」は、「グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)から、地球上の現在位置情報を受信する」ものであって、仮想黒板中の記入項目のうち「位置」には、GPS18より自動で取得された現在地の位置情報(位置座標)が既に入力されるのであり(【0057】参照。)、これら仮想黒板内の所定の記入項目に入力されたデータは、暗号化されるデータであるから(【0117】参照。)、本願発明でいう『前記情報保護措置のためのGPS情報受発信部』に相当する。

(2-7)(構成(l)の一部について)
「スマートデバイス1」は、「仮想黒板付き写真画像がJPEG画像として出力される場合、Exifデータの「メーカー独自情報」内に、仮想黒板内の所定の記入項目に入力されたデータ及び暗号化データが追記され、暗号化データとは、仮想黒板内の所定の記入項目に入力されたデータ、又は入力されたデータの一部のデータを、暗号化したデータであって、情報の改ざんを防止・抑制するため、特に改ざんを防止・抑制したいデータを対象に暗号化し、同暗号化データをExifデータの「メーカー独自情報」内に含めておき、これにより、暗号化の対象となったデータを同一の暗号アルゴリズムにより復号化し、Exifデータの「メーカー独自情報」内のデータと一致するか否かを確認することで、暗号化の対象となったデータの真正性を担保することができる」のであるから、本願発明でいう『受渡情報の安全確保のための暗号化・復号化処理部』を備えているといえる。

(2-8)(構成(m)について)
「スマートデバイス1」が備える「通信装置15」は、「他の機器との通信を行う装置であって、有線ネットワークや無線ネットワークなど含む各種ネットワーク形態に応じた通信をサポート」するのであるから、本願発明でいう『外部との情報交換用に無線通信部』に相当する。

(2-9)(構成(o)について)
「スマートデバイス1」が備える「記憶装置12」は、「スマートデバイス向けOSや各種アプリケーション、その他各種データを格納するメモリ」であるから、本願発明でいう『外部との受渡情報・中間発生情報・システムメモリ用等の記憶部』に相当する。

(2-10)(構成(p)について)
「スマートデバイス1」が備える「CPU11」は、「マイクロプロセッサ及びその周辺回路から構成され、装置全体を制御する回路」であるから、本願発明でいう『各機能部の動作を制御するCPU』に相当する。

(2-11)(構成(q)の一部について)
引用例1に明示的な記載がなくても、「スマートデバイス1」が、本願発明でいう『その他必要デバイスとして圧縮/伸張部・カレンダ/クロック機能部・シャッター部・操作部・電源スイッチ』を備えていることは自明である。

上記(2-1)から(2-11)で検討した結果、本願発明と引用発明とは、


(b)被写体を撮影しデジタル画像を取得する撮像部、
(c)前記指示情報の内容・取得したデジタル画像・操作画面等を表示する表示部、
(e)指によるタッチや手書きペン入力に対応するタッチパネル部、
(f)デジタル画像等を外部と受渡するメモリーカード入出力部、
(i)前記情報保護措置のためのGPS情報受発信部、
(l)’受渡情報の安全確保のための暗号化・復号化処理部、
(m)外部との情報交換用に無線通信部、
(n)USBケーブルコネクト部、
(o)外部との受渡情報・中間発生情報・システムメモリ用等の記憶部、
(p)各機能部の動作を制御するCPU、
(q)その他必要デバイスとして圧縮/伸張部・カレンダ/クロック機能部・シャッター部・操作部・電源スイッチ
(r)を具備していることを特徴とする情報記録装置。」

で一致しており、以下の点で相違している。

[相違点1]
引用発明に係る「スマートデバイス1」は、「工事現場で現場写真の撮影作業」を行い、撮影したものを、事務所やオフィスもしくはデータセンター等に設置されたサーバ4へ無線ネットワークを介して通信可能なものであるものの、本願発明において『(a)請求項1記載の指示情報に基づき、必要情報を収集可能にする機能条件を充足するため、』と特定されている様に『請求項1記載の指示情報』を契機として、必要情報を収集しているか不明な点。

[相違点2]
引用発明に係る「スマートデバイス1」には、本願発明の情報記録装置が備える以下の構成が備わっていない点。
(d)取得画像を標準化する画像処理部
(g)外部撮像機器により撮像されたデジタル画像の取込み画像処理部
(h)外部よりの取込み画像の改ざん検出処理部
(j)収集情報の信頼性を高めるためのセンサー部とセンサー情報処理部
(k)操作者を識別するための生体センサー部・生体認証処理部
(l)の一部である電子透かし情報処理部


3.判断

[相違点1]について
本願発明において特定されている『請求項1記載の指示情報』とは、引用先である請求項1の『コンピュータシステムを備えた情報管理センターが、管理運用する対象物件及び/又は事象のデータベースを更新するために、必要とする情報を収集するにあたり、情報収集に必要な機能を具備した情報記録装置に対し無線通信手段を介して、情報収集に関する指示情報を送信し、』の記載のものである。

一方、引用例2には、「作業指示を行う管理者装置と、この作業指示を受信する担当者端末装置とを備え、この作業指示に応じた作業結果を前記担当者端末装置から受信取得して記憶管理する作業管理システム」と記載されている様に、「担当者端末が作業指示を行う管理者端末から作業指示を受信し、その作業指示に応じて(を契機として)作業を実行する」という作業手順が開示されている。
更に、引用例3には、「サーバ2は、巡回業務の作業手順情報および業務報告用の書式情報を含む業務設定情報をデジタルカメラ1に送信して設定したり、」と記載されている様に、「サーバから業務の作業手順情報や業務設定情報を受信した上で作業を実行する」という手順が開示されている。

してみると、引用例2の「作業指示を行う管理者装置」や引用例3の「サーバ2」は、いずれも本願発明でいう『情報管理センター』に対応するものであり、これら「作業指示を行う管理者装置」や「サーバ2」から送信される「作業指示」や「作業手順情報や業務設定情報」は、本願発明でいう『請求項1記載の指示情報』に対応するものである。

したがって、本願発明の様に『指示情報』を受信することを契機として、引用発明に係る「スマートデバイス1」を用いて作業者が必要情報を収集する作業を行う様にすることは、当業者であれば容易になし得るものである。


[相違点2]について
●構成(d)について
引用発明に係る「スマートデバイス1」を用いて撮影された「撮像画像(仮想黒板付き写真画像)」は、工事報告書の一部として添付されることを前提とするものであるから(引用例の【0002】?【0005】等参照。)、工事報告書を管理する側にとってその業務上の性格からして、「仮想黒板付き写真画像」の画像形式やサイズ等を標準化することは、当然、求める事項であることは容易に想像し得ることである。
してみると、引用発明に係る「スマートデバイス1」に本願発明が備える構成(d)を備えさせることは、当業者にとって容易になし得るものである。
なお、本願発明の構成(d)については、「取り扱い可能ファイルにつき標準化変換を行い標準化ファイルを生成し後処理に引継ぐ。」(【0052】)との開示しかなく、「標準化」の具体的処理内容としては、様々なものが考え得るから、上述した「画像形式やサイズ等を標準化すること」も本願発明の構成(d)でいう「標準化」に含まれると解するのが妥当である。

●構成(g)及び(h)について
引用例4において、「工事写真については,タブレット端末に搭載されているカメラ機能で撮影するか,デジカメで撮影を行う。デジカメで撮影する場合は,デジカメの無線機能付きSDメモリカードより無線通信(Wi-Fi)でタブレット端末に写真データを転送する。」と記載されている様に、本願発明でいう『外部撮像機器』に相当する「デジカメ」で撮影した写真データをタブレット端末が取り込むことは、本願発明と同様の技術分野において普通に行われている事項であり、本願発明に係る構成(g)は当業者にとっては周知のものである。

引用例5には、カメラで撮影された映像内の改ざんを検出する手法として、「ノイズの特性に注目し、画素ごとにノイズ強度を求めてシーン全体のノイズ特性を推定し、周囲と大きく異なる特性をもつ領域は改ざんされた箇所であると判断する」との手法が開示されており、当該「ノイズ特性を用いた画像の改ざん検出方法」は、本願発明に係る構成(h)に相当するものであって、本願出願前において、画像の改ざん検出方法として周知の事項である。(なお、「ノイズ特性を用いた画像の改ざん検出方法」については、特開2014-10736号公報にも記載されている。)

そして、工事写真として、タブレット端末に搭載されているカメラ機能で撮影したものではなく、外部撮像機器であるデジカメで撮影したものをタブレット端末に取り込むに際して、デジカメで撮影したものが、改ざんされたものであるか否かを検査する「改ざん検出処理」は、工事写真が品質管理記録や各種立会検査記録に用いられるという性格上、当然に行われるであろうことは容易に想像し得ることである。

してみると、引用発明に係る「スマートデバイス1」に引用例4及び引用例5に開示されている周知の事項を備えさせることは、当業者にとって容易になし得るものである。

●構成(j)について
引用例7には、施設の保守・点検作業において、作業者が装着するウェアラブルコンピュータに、作業場所の環境に関するさまざまな情報を自動的に取得するためのセンサ類(例えば、地磁気センサ、加速度センサ、GPSレシーバ、温度センサ、湿度センサ等)を備えさせることが開示されている。 また、センサ類が取得した情報を処理する手段が併せて備わっていることは、当業者にとって自明な事項である
そして、上記「ウェアラブルコンピュータ」は、映像情報(動画、静止画)を取得するデジタルカメラ、映像情報(動画、静止画、テキスト情報)を提示するためのタブレットディスプレイ、演算装置、通信装置などを備えているものであるから、本願発明でいう『情報記録装置』に対応するものといえる。

してみると、引用発明に係る「スマートデバイス1」に本願発明が備える構成(j)を備えさせることは、当業者にとって容易になし得るものである。

●構成(k)について
引用例3には、業務を構成する各作業毎にその作業状況を報告する業務報告書を作成する業務報告書作成機能付きデジタルカメラに、利用者を個人認証し、業務情報の秘匿のために、指紋センサなどの生体認証機能を設けてもよい旨開示されている。
ここで、前記「業務報告書作成機能付きデジタルカメラ」は、「記憶部12内のオペレーティングシステムや各種アプリケーションソフトに従ってこのデジタルカメラ1の全体動作を制御する中央演算処理装置」、入出力周辺デバイスである「操作部15」、「表示部16」、「カメラ撮影部17」、「計時回路部19」、「位置測定部20」、「通信インターフェイス部21」、「作業毎に得られた一連のデータ(位置、日時、画像、回答)を秘密鍵あるいは電子署名用暗号鍵で暗号化して電子署名データを作成する手段」等を備えるものであるから、本願発明でいう『情報記録装置』に対応するものといえる。

してみると、引用発明に係る「スマートデバイス1」に本願発明が備える構成(k)を備えさせることは、当業者にとって容易になし得るものである。

●構成(l)の一部である電子透かし情報処理部について
引用例6には、デジタルデータである画像データに対する改ざんなどの不正を検出したり,防止するために改ざん検出可能な電子透かし技術を利用すること、が開示されており、当該「改ざん検出可能な電子透かし技術」は、本願発明に係る構成(l)の一部である『電子透かし情報処理部』に相当するものであって、本願出願前において、「改ざんを検出し,不正を抑止する機能」(本願発明でいう『情報の安全確保』に対応する。)として周知の事項である。

してみると、引用発明に係る「スマートデバイス1」に本願発明が備える構成(l)の一部である『電子透かし情報処理部』を備えさせることは、当業者にとって容易になし得るものである。


4.まとめ
上記1.から3.で検討した様に、本願発明は、引用発明に対して引用例2から7に開示されている周知の事項を単に付加することで当業者が容易に想到し得たものと認められる。

また、本願発明の構成によって得られる効果は、引用発明及び引用例2から7に開示されている周知技術を単に寄せ集めたことにより得られる程度のものであり、当業者の予測の範囲を逸脱するものとはいえない。


第5 むすび

以上の通り、本願発明は、引用発明に対して引用例2から7に開示されている周知の事項を単に付加することで当業者が容易に想到し得たものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2019-05-08 
結審通知日 2019-05-14 
審決日 2019-05-27 
出願番号 特願2016-258025(P2016-258025)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 571- Z (G06Q)
P 1 8・ 573- Z (G06Q)
P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 561- Z (G06Q)
P 1 8・ 574- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮地 匡人  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 佐藤 智康
相崎 裕恒
発明の名称 記録情報受渡方法及び情報記録装置  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ