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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B23P 審判 全部申し立て 2項進歩性 B23P |
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管理番号 | 1354083 |
異議申立番号 | 異議2018-700438 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-05-28 |
確定日 | 2019-07-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6319844号発明「疲労亀裂の進展抑制ペースト、進展抑制方法、進展検出ペースト、及び進展検出方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6319844号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕、〔13-27〕について訂正することを認める。 特許第6319844号の請求項1ないし8、11ないし21、24ないし27に係る特許を維持する。 特許第6319844号の請求項9、10、22及び23に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6319844号の請求項1-27に係る特許についての出願は、平成26年9月25日(優先権主張 平成25年9月26日)に出願され、平成30年4月13日にその特許権の設定登録がされ、平成30年5月9日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年5月28日に特許異議申立人松川哲広(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成31年1月30日付け(同年2月1日発送)で取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成31年3月29日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、令和元年5月21日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 一群の請求項〔1-12〕に係る訂正について (1)訂正の内容 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに88(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに13?490(Pa・s)としたこと」 とあるのを、 「メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたこと」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3?8、11及び12も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに2.1?76(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.33?12(Pa・s)としたこと」 とあるのを、 「メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたこと」 に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3?8、11及び12も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「前記油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6である」 とあるのを、 「前記油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2である」 に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4?8、11及び12も同様に訂正する。)。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「前記油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに58(Pa・s)以上とする」 とあるのを、 「前記油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とする」 に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5?8、11及び12も同様に訂正する。)。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「前記油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに9.1?490(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.22?12(Pa・s)とした」 とあるのを、 「前記油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)とした」 に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6?8、11及び12も同様に訂正する。)。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項11に 「前記進展抑制ペーストの塗布する厚さを、前記母材の板厚に応じて変えたことを特徴とする請求項6から請求項10のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制方法。」 とあるのを、 「前記進展抑制ペーストの塗布する厚さを、前記母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制方法。」 に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。 ケ 訂正事項9 明細書の段落【0007】に 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに88(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに13?490(Pa・s)としたこと・・・」 とあるのを、 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたこと・・・」 に訂正する。 コ 訂正事項10 明細書の段落【0008】に 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに2.1?76(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.33?12(Pa・s)としたこと・・・また、進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに2.1?76(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.33?12(Pa・s)とすることで・・・」 とあるのを、 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたこと・・・また、進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)とすることで・・・」 に訂正する。 サ 訂正事項11 明細書の段落【0009】に 「・・・油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6である・・・」 とあるのを、 「・・・油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2である・・」 に訂正する。 シ 訂正事項12 明細書の段落【0010】に 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに58(Pa・s)以上とする・・・」 とあるのを、 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とする・・・」 に訂正する。 ス 訂正事項13 明細書の段落【0011】に 「・・・油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに9.1?490(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.22?12(Pa・s)とした・・・」 とあるのを、 「・・・油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)とした・・・」 に訂正する。 セ 訂正事項14 明細書の段落【0015】を削除する。 ソ 訂正事項15 明細書の段落【0016】を削除する。 タ 訂正事項16 明細書の段落【0017】に 「・・・請求項6から請求項10のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制方法において、進展抑制ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて変えたことを特徴とする。・・・」 とあるのを、 「・・・請求項6から請求項8のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制方法において、進展抑制ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする。・・・」 に訂正する。 チ 訂正事項17 明細書の段落【0035】に 「・・・進展抑制ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.3?1.6とする場合・・・」 とあるのを、 「・・・進展抑制ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.6?1.2とする場合・・・」 に訂正する。 ツ 訂正事項18 明細書の段落【0036】に 「・・・進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに88(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに13?490(Pa・s)とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)とした場合・・・」 に訂正する。 テ 訂正事項19 明細書の段落【0037】に 「・・・進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに2.1?76(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.33?12(Pa・s)とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)とした場合・・・」 に訂正する。 ト 訂正事項20 明細書の段落【0038】に 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径とした場合・・・」 に訂正する。 ナ 訂正事項21 明細書の段落【0039】を削除する。 ニ 訂正事項22 明細書の段落【0042】に 「・・・油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.3?1.6とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.6?1.2とした場合・・・」 に訂正する。 ヌ 訂正事項23 明細書の段落【0043】に 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに58(Pa・s)以上とする場合・・・」 とあるのを、 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とする場合・・・」 に訂正する。 ネ 訂正事項24 明細書の段落【0044】に 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が1(1/s)のときに9.1?490(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.22?12(Pa・s)とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)とした場合・・・」 に訂正する。 ノ 訂正事項25 明細書の段落【0048】を削除する。 ハ 訂正事項26 明細書の段落【0017】に 「・・・請求項6から請求項10のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制方法において、進展抑制ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて変えたことを特徴とする。・・・」 とあるのを、 「・・・請求項6から請求項8のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制方法において、進展抑制ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする。・・・」 に訂正する。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1-12〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-12〕について請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1 訂正事項1は、粒子の粒径並びに進展抑制ペーストのチクソトロピー指数TI及びみかけ粘度η_(P)をより具体的に特定し、更に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、「粒径の粒子」に係る説明として、段落【0076】には、「微細粒としては、粒径をメッシュサイズ10μm及び20μmの2種類のふるいを用いて平均粒径15.2μmに揃えたアルミナ粒子(見掛密度1.2g/cm^(3))を用いた。」との記載がなされており、図2には、アルミナの粒径が「10?20μm(平均15.2μm)」との記載がなされている。 また、「進展抑制ペーストのチクソトロピー指数TI及びみかけ粘度η_(P)」に係る説明として、段落【0084】には、「各回転速度におけるアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)を比較すると、実施例3のみかけ粘度η_(P)を1とした場合、最も高粘度の実施例4で約2.4倍、最も低粘度の実施例1で約0.4倍であった。」との記載がなされている。 訂正事項1は、この実施例に合わせて、上記0.4倍から2.4倍の範囲にチクソトロピー指数TI及びみかけ粘度η_(P)を限定するものである。 ここで、図10は0.4倍から2.5倍で表示されているので、0.4倍から2.4倍の範囲に計算し直さないとならないが、図9、図10から認識できるチクソトロピー指数TIが0.5?1.2、進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)が、せん断速度が1(1/s)のときに32?205(Pa・s)よりも若干狭い範囲になることは明らかであり、チクソトロピー指数TIを0.6?1.2、η_(P)を32?197と計算したことが、例えば205×2.4/2.5が197となることからして、明細書からは導き出すことができない数値とまではいうことはできない。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 イ 訂正事項2 訂正事項2は、粒子の粒径並びに進展抑制ペーストのチクソトロピー指数TI及びみかけ粘度η_(P)をより具体的に特定し、更に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1と同様に、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 訂正事項3 訂正事項3は、油のチクソトロピー指数TIをより具体的に特定し、更に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、明細書の段落【0089】には、「図4?図6で示すように、ペーストと油のチクソトロピー指数TIはほぼ同一であるため」との記載がなされていることから、訂正事項1と同様に、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 エ 訂正事項4 訂正事項4は、油のみかけ粘度η_(G)をより具体的に特定し、更に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、明細書の段落【0086】には、「油粘度の下限値は、最低粘度の実施例1でアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と油のみかけ粘度η_(G)の比が約1.25であったことから、ペースト粘度下限値/1.5とした。」との記載がなされていることから、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 オ 訂正事項5 訂正事項5は、油のみかけ粘度η_(G)をより具体的に特定し、更に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、明細書の段落【0086】には、「油粘度の下限値は、最低粘度の実施例1でアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と油のみかけ粘度η_(G)の比が約1.25であったことから、ペースト粘度下限値/1.5とした。また、油粘度の上限値は、最高粘度の実施例4で等しかったことから、ペースト粘度上限値とした。」との記載がなされていることから、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 カ 訂正事項6 訂正事項6は、請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 キ 訂正事項7 訂正事項7は、請求項10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ク 訂正事項8 訂正事項8は、進展抑制ペーストの塗布する厚さをより具体的に特定し、更に限定するものであり、削除された請求項9及び10を引用しないものとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、明細書の段落【0123】には、「ペースト2の塗布する厚さを、母材1の板厚に応じて変えることによって、母材1に発生した疲労亀裂3内に進入するペースト4の量を適正なものとすることができる。具体的には、図24に示すように、母材1に塗布するペースト2の塗布する厚さは、母材1の板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、板厚が5?200mmの場合には母材1の板厚の1/10以上とし、板厚が200mm以上の場合には20mm以上とする。」との記載がなされており、図24には、母材の板厚に応じてペースト塗布厚を比例的に変えたことが記載されている。 したがって、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ケ 訂正事項9 訂正事項9は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 コ 訂正事項10 訂正事項10は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 サ 訂正事項11 訂正事項11は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 シ 訂正事項12 訂正事項12は、上記訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ス 訂正事項13 訂正事項13は、上記訂正事項5に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 セ 訂正事項14 訂正事項14は、上記訂正事項6に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ソ 訂正事項15 訂正事項15は、上記訂正事項7に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 タ 訂正事項16 訂正事項16は、上記訂正事項8に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 チ 訂正事項17 訂正事項17は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ツ 訂正事項18 訂正事項18は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 テ 訂正事項19 訂正事項19は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ト 訂正事項20 訂正事項20は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ナ 訂正事項21 訂正事項21は、上記訂正事項7に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ニ 訂正事項22 訂正事項22は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ヌ 訂正事項23 訂正事項23は、上記訂正事項4に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ネ 訂正事項24 訂正事項24は、上記訂正事項5に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ノ 訂正事項25 訂正事項25は、上記訂正事項6に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ハ 訂正事項26 訂正事項26は、上記訂正事項8に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 2 一群の請求項〔13-27〕に係る訂正について (1)訂正の内容 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項13に 「メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに88(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに13?490(Pa・s)としたこと」 とあるのを、 「メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたこと」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15?21及び24?27も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項14に 「メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに2.1?76(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.33?12(Pa・s)としたこと」 とあるのを、 「メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたこと」 に訂正する(請求項14の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15?21及び24?27も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項16に 「前記油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6である」 とあるのを、 「前記油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2である」 に訂正する(請求項16の記載を直接的又は間接的に引用する請求項17?21及び24?27も同様に訂正する。)。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項17に 「前記油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに58(Pa・s)以上とする」 とあるのを、 「前記油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とする」 に訂正する(請求項17の記載を直接的又は間接的に引用する請求項18?21及び24?27も同様に訂正する。)。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項18に 「前記油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに9.1?490(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.22?12(Pa・s)とした」 とあるのを、 「前記油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)とした」 に訂正する(請求項18の記載を直接的又は間接的に引用する請求項19?21及び24?27も同様に訂正する。)。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項22を削除する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項23を削除する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項24に 「請求項19から請求項22のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。」 とあるのを、 「請求項19から請求項21のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。」 に訂正する(請求項24の記載を直接的又は間接的に引用する請求項25?27も同様に訂正する)。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項25に 「前記進展検出ペーストの塗布する厚さを、前記母材の板厚に応じて変えたことを特徴とする請求項19から請求項24のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。」 とあるのを、 「前記進展検出ペーストの塗布する厚さを、前記母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする請求項19から請求項21又は請求項24のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。」 に訂正する(請求項25の記載を直接的又は間接的に引用する請求項26及び27も同様に訂正する。)。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項27に 「請求項19から請求項26のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。」 とあるのを、 「請求項19から請求項21又は請求項24から請求項26のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。」 に訂正する。 サ 訂正事項11 明細書の段落【0019】に 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに88(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに13?490(Pa・s)としたこと・・・」 とあるのを、 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたこと・・・」 に訂正する。 シ 訂正事項12 明細書の段落【0020】に 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに2.1?76(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.33?12(Pa・s)としたこと・・・」 とあるのを、 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたこと・・・」 に訂正する。 ス 訂正事項13 明細書の段落【0022】に 「・・・油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6である・・・」 とあるのを、 「・・・油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2である・・」 に訂正する。 セ 訂正事項14 明細書の段落【0023】に 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに58(Pa・s)以上とする・・・」 とあるのを、 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とする・・・」 に訂正する。 ソ 訂正事項15 明細書の段落【0024】に 「・・・油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに9.1?490(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.22?12(Pa・s)とした・・・」 とあるのを、 「・・・油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)とした・・・」 に訂正する。 タ 訂正事項16 明細書の段落【0028】を削除する。 チ 訂正事項17 明細書の段落【0029】を削除する。 ツ 訂正事項18 明細書の段落【0030】に 「・・・請求項19から請求項22のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法・・・」 とあるのを、 「・・・請求項19から請求項21のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法・・・」 に訂正する。 テ 訂正事項19 明細書の段落【0031】に 「・・・請求項19から請求項24のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法において、進展検出ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて変えたことを特徴とする。・・・」 とあるのを、 「・・・請求項19から請求項21又は請求項24のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法において、進展抑制ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする。・・・」 に訂正する。 ト 訂正事項20 明細書の段落【0033】に 「・・・請求項19から請求項26のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法・・・」 とあるのを、 「・・・請求項19から請求項21又は請求項24から請求項26のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法・・・」 に訂正する。 ナ 訂正事項21 明細書の段落【0052】に 「・・・進展検出ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.3?1.6とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・進展検出ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.6?1.2とした場合・・・」 に訂正する。 ニ 訂正事項22 明細書の段落【0053】に 「・・・進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに88(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに13?490(Pa・s)とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)とした場合・・・」 に訂正する。 ヌ 訂正事項23 明細書の段落【0037】に 「・・・進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに2.1?76(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.33?12(Pa・s)とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)とした場合・・・」 に訂正する。 ネ 訂正事項24 明細書の段落【0055】に 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径とした場合・・・」 に訂正する。 ノ 訂正事項25 明細書の段落【0056】を削除する。 ハ 訂正事項26 明細書の段落【0060】に 「・・・油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.3?1.6とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.6?1.2とした場合・・・」 に訂正する。 ヒ 訂正事項27 明細書の段落【0061】に 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに58(Pa・s)以上とする場合・・・」 とあるのを、 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とする場合・・・」 に訂正する。 フ 訂正事項28 明細書の段落【0062】に 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が1(1/s)のときに9.1?490(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.22?12(Pa・s)とした場合・・・」 とあるのを、 「・・・油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)とした場合・・・」 に訂正する。 ヘ 訂正事項29 明細書の段落【0066】を削除する。 ホ 訂正事項30 明細書の段落【0068】に 「・・・進展検出ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて変えた場合には・・・」 とあるのを、 「・・・進展検出ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて比例的に変えた場合には・・・」 に訂正する。 本件訂正請求は、一群の請求項〔13-27〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔13-27〕について請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 一群の請求項〔1-12〕が「疲労亀裂の進展抑制ペースト」及び「疲労亀裂の進展抑制ペースト」を塗布することを特徴とする「疲労亀裂の進展抑制方法」であるのに対し、一群の請求項〔13-27〕は「疲労亀裂の進展検出ペースト」及び「疲労亀裂の進展検出ペースト」を塗布することを特徴とする「疲労亀裂の進展検出方法」であり、その内容は対応しているものである。 ア 訂正事項1-7 上記1(2)の訂正事項1-7と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 イ 訂正事項8 削除された請求項22を引用しないものとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 ウ 訂正事項9 上記1(2)の訂正事項8と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 エ 訂正事項10 削除された請求項22及び請求項23を引用しないものとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 オ 訂正事項11-30 訂正事項11-20はそれぞれ訂正事項1-10に、訂正事項21は訂正事項1及び2に、訂正事項22は訂正事項1に、訂正事項23は訂正事項2に、訂正事項24は訂正事項1及び2に、訂正事項25訂正事項7に、訂正事項26-29はそれぞれ訂正事項3-6に、訂正事項30は訂正事項9に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕、〔13-27〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1-27に係る発明(以下「本件発明1-27」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-27に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 母材の疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストであって、前記進展抑制ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたことを特徴とする疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項2】 母材の疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストであって、前記進展抑制ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項3】 前記油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項4】 前記油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項5】 前記油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項6】 請求項1から請求項5のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペーストのうち、前記母材の硬度以上の硬度を有する前記粒子が混合されている進展抑制ペーストを、前記疲労亀裂の発生が予測される前記母材の部位を特定して塗布することを特徴とする疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項7】 請求項1から請求項5のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペーストのうち、前記母材の硬度以上の硬度を有する前記粒子が混合されている進展抑制ペーストを、前記疲労亀裂が発生している前記母材の部位に塗布することを特徴とする疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項8】 前記疲労亀裂の開口を増大させる方向の荷重を、前記母材を含む構造物に載荷して前記進展抑制ペーストを塗布することを特徴とする請求項7に記載の疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項9】(削除) 【請求項10】(削除) 【請求項11】 前記進展抑制ペーストの塗布する厚さを、前記母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項12】 前記進展抑制ペーストの塗布する前記厚さを、前記母材の前記板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、前記板厚が5?200mmの場合には前記母材の前記板厚の1/10以上とし、前記板厚が200mm以上の場合には20mm以上としたことを特徴とする請求項11に記載の疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項13】 母材の疲労亀裂の進展を検出する進展検出ペーストであって、前記進展検出ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展検出ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたことを特徴とする疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項14】 母材の疲労亀裂の進展を検出する進展検出ペーストであって、前記進展検出ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展検出ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項15】 前記粒子を、淡色又は透明の前記アルミナを含むセラミックス粒子としたことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項16】 前記油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であることを特徴とする請求項13から請求項15のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項17】 前記油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とすることを特徴とする請求項13から請求項16のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項18】 前記油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする請求項13から請求項17のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項19】 請求項13から請求項18のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペーストのうち、前記母材の硬度以上の硬度を有する前記粒子が混合されている進展検出ペーストを、前記疲労亀裂の発生が予測される前記母材の部位を特定して塗布することを特徴とする疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項20】 請求項13から請求項18のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペーストのうち、前記母材の硬度以上の硬度を有する前記粒子が混合されている進展検出ペーストを、前記疲労亀裂の発生している前記母材の部位に塗布することを特徴とする疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項21】 前記疲労亀裂の開口を増大させる方向の荷重を、前記母材を含む構造物に載荷して前記進展検出ペーストを塗布することを特徴とする請求項20に記載の疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項22】(削除) 【請求項23】(削除) 【請求項24】 前記母材に塗布した前記進展検出ペーストの前記疲労亀裂に対応した表面部分が、前記疲労亀裂の進展に伴い変色することにより、疲労亀裂の進展を判断することを特徴とする請求項19から請求項21のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項25】 前記進展検出ペーストの塗布する厚さを、前記母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする請求項19から請求項21又は請求項24のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項26】 前記進展検出ペーストの塗布する前記厚さを、前記母材の前記板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、前記板厚が5?200mmの場合には前記母材の前記板厚の1/10以上とし、前記板厚が200mm以上の場合には20mm以上としたことを特徴とする請求項25に記載の疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項27】 前記進展検出ペーストを用いて、前記母材の前記疲労亀裂の進展の抑制も行うことを特徴とする請求項19から請求項21又は請求項24から請求項26のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1-27に係る特許に対して、当審が平成31年1月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)請求項1-7及び13-20に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。 また、請求項9、10、22-24及び27に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。 よって、請求項1-7、9、10、13-20、22-24及び27に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)請求項1-27に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (3)請求項9-12及び22-27に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 甲号証の記載 甲第1号証:特開2005-28462号公報 甲第2号証:高橋一比古,外4名,“アルミナペースト塗布による疲労き裂進展の自動抑制および目視検出”,溶接学会論文集,一般社団法人溶接学会,平成16年4月,第22巻,第4号,p.531-541 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、図面と共に下記の(ア)ないし(タ)が記載されている。ここで、甲第1号証は平成16年7月2日提出の手続補正書により明細書全文が補正されており、下記の(ア)ないし(タ)は当該補正後のものである。 (ア)【0001】 「【発明の属する技術分野】 本発明は、金属等の表面に発生する疲労亀裂の進展を抑制する方法、及び、疲労亀裂を検出する方法に関する。さらに、本発明は、それらの方法に用いられるペーストに関する。」 (イ)【0011】 「【発明が解決しようとする課題】 そこで、上記の点に鑑み、本発明は、比較的初期の段階においても目視により容易に疲労亀裂を検出することが可能な疲労亀裂の検出方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、疲労亀裂の進展を抑制することができる疲労亀裂の進展抑制方法、及び、それらの方法に用いられるペーストを提供することを目的とする。」 (ウ)【0017】 「まず、金属又はセラミックス等の微細粒を、適度の粘性を有する油に混合して、ペースト状の微細粒ペーストを作成しておく。図1の(A)に示すように、金属や強化プラスチック等の母材1において、疲労亀裂の発生及び拡大が予め予想される個所の表面に、この微細粒ペースト2を塗布する。」 (エ)【0018】 「ここで、微細粒としては、母材の硬度と同等、又は、それよりも大きい硬度を有する材料を使用することが望ましい。例えば、母材が200程度のビッカース硬度を有する金属である場合には、微細粒として、ビッカース硬度が200以上の材料を使用する。微細粒の粒径は、ふるいを用いて、2μm?40μm(平均15μm)程度に揃えることが望ましい。」 (オ)【0019】 「また、微細粒を混合する油としては、5000?15000cP(センチポワズ)程度の粘度を有する油を使用する。なお、1000cP=10P=1Pa・s(パスカル秒)である。特に、例えばシリコーングリース等の様に、温度変化による粘度の変化が小さい油を使用することが望ましい。」 (カ)【0020】 「図1の(A)に示すように、繰返し応力による疲労損傷の蓄積によって、金属表面に微小亀裂が発生する。さらに、図1の(B)に示すように、引張り荷重が加えられることにより亀裂が開口し、亀裂が進展する。微細粒ペースト2は、亀裂の開閉に伴うポンプ作用や亀裂先端の毛細管現象によって、開口した亀裂の内部に入り込む。」 (キ)【0021】 「ここで、図1の(C)に示すように、引張り荷重を除去した場合においても、微細粒ペースト2は亀裂の内部にくさびとして残留し、亀裂の閉口を妨げる。したがって、図1の(D)に示すように、再び引張り荷重が加えられた場合においても、亀裂面の変位が抑制されるために、亀裂の開閉による亀裂の進展速度を低下させて疲労寿命を延ばすことができる。」 (ク)【0022】 「次に、微細粒ペーストによる亀裂進展抑制効果について、疲労試験の結果に基づいて説明する。・・・」 (ケ)【0024】 「・・・これらの微細粒を油に混合し、液垂れしない程度のペースト状にして、試験片の切欠き部及び予想される亀裂進展経路に塗布した。」 (コ)【0026】 「・・・▽印は、平均粒径15.2μmのアルミナ粒子(Al2O3)を用いたアルミナペーストを塗布した場合の試験結果である。」 (サ)【0029】 「それに対し、平均粒径15.2μmのアルミナ粒子を用いたアルミナペーストを塗布した場合の破断寿命は、何も塗布しない場合の破断寿命に比べて、40万?70万回程度延びている。この場合に、今回試験した中では最も顕著な亀裂進展抑制効果が得られた。」 (シ)【0031】 「本実施形態に係る疲労亀裂の検出方法においては、アルミナやジルコニア等のセラミックスのような淡色の微細粒を油に混合することにより、淡色のペースト状の微細粒ペーストを作成する。・・・」 (ス)【0032】 「図1を参照しながら説明したように、亀裂の内部に残留した微細粒ペースト2がくさびを形成するために、亀裂の開閉による亀裂の進展を抑制することができる。・・・」 (セ)【0033】 「さらに、図4の(B)に示すように、母材粉は、亀裂の開閉に伴うポンプ作用により、微細粒ペースト2の油及び細粒化した微細粒と混然となって、微細粒ペースト2の表面に滲み出る。一般に、金属の粉末は黒色を呈するため、母材粉が混然となった微細粒ペースト3は、黒色を呈する。ここで、母材粉が混然となっていない微細粒ペースト2は白色であるため、白色と黒色のコントラストにより色彩の変化が生じ、亀裂の位置及び長さ等が容易に視認できる。」 (ソ)【0035】 「図5の(A)に示すように、白色の微細粒ペースト上において、亀裂部分を示す黒色が発色するので、亀裂の位置及び長さ等が容易に視認できる。また、図5の(A)における黒色部に比べて、図5の(B)における黒色部が延びているように、亀裂の進展状況を容易に視認できる。」 (タ)【0039】 「本実施形態によれば、比較的初期の段階の疲労亀裂においても、目視検査で容易に確認することができ、各種機械や構造物等の安全性の向上に寄与することができる。また、微細粒ペーストがくさびを形成することにより、亀裂の進展が自動的に抑制され、各種機械や構造物等の疲労寿命が延びる。さらに、疲労亀裂の検出及び進展の抑制において、予め、疲労亀裂が発生すると予想される位置に微細粒ペーストを塗布しておくだけで良く、超音波探傷、浸透探傷、又は、磁粉探傷等の非破壊検査手法と比べて実施が遥かに容易且つ安価である。」 イ 甲第1号証の認定事項 シリコーングリース単体及び該シリコーングリースに微粒子を添加してペースト状にしたものが、いずれも、せん断速度に応じてみかけ粘度が変化するチクソトロピック性を有することは、優先日前には技術常識であったから、当該技術常識を踏まえれば、記載事項(ウ)及び(オ)から、微細粒とシリコーングリースを混合したペーストはチクソトロピック性を有する、と認められる。 ウ 甲第1号証に記載されている発明 上記ア及びイから、甲第1号証には次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。 「母材1の疲労亀裂の進展を抑制する微細粒ペースト2であって、前記微細粒ペースト2が、微細粒とシリコーングリースとを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記微細粒が、アルミナであって、ふるいを用いて平均粒径15.2μm程度に揃えられており、疲労亀裂の内部に残留した微細粒ペースト2がくさびを形成するために、疲労亀裂の開閉による疲労亀裂の進展を抑制することができる、微細粒ペースト2。」 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、下記の(ア)及び(イ)が記載されている。 (ア)第1ページ右欄第3ないし10行 「著者らは,Al-Mg合金A5083P-Oの平板試験片を用いた疲労き裂進展試験において,アルミナ等の微細粒を油と混ぜてペースト状にし,疲労き裂の発生・伝播が予想される経路に予め塗布しておくと,き裂の開閉口に伴うポンプ作用等によって微細粒がき裂先端近傍まで自動的に輸送されて詰まり,これがくさびとなって上述のくさび効果を発現し,き裂の進展が著しく抑制される場合のある事を実験的に示した.」 (イ)第2ページ左欄第2ないし5行 「平均粒径15.2μmのアルミナ粒子を用いた.粒径はメッシュサイズ10μmおよび20μmの2種類のふるいを用いて揃えており,粒子の見掛密度は1.2g/cm^(3)である.」 イ 甲第2号証に記載されている技術的事項 上記アから、甲第2号証には次の技術的事項が記載されていると認められる(以下「甲2技術」という。)。 「アルミナ等の微細粒を油と混ぜてペースト状にし,疲労き裂の発生・伝播が予想される経路に予め塗布しておくことにより、くさび効果を発現して、き裂の進展を抑制する技術において、メッシュサイズ20μmのふるいを用いて、平均粒径15.2μmのアルミナ粒子を揃える技術。」 3 当審の判断 (1)特許法第29条第2項について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明は「金属等の表面に発生する疲労亀裂の進展を抑制する」「ペーストに関する」ものであり、本件発明1と技術分野及び課題が共通する。 また、甲1発明の「母材1」は本件発明1の「母材」に相当する。 以下同様に、甲1発明の「微細粒ペースト2」は本件発明1の「進展抑制ペースト」に、甲1発明の「微細粒」は本件発明1の「粒子」に、甲1発明の「シリコーングリース」は本件発明1の「油」に、それぞれ相当する。 また、甲1発明の「アルミナ」は、本件発明1の「アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上」に対応する。 以上から、本件発明1と甲1発明の一致点は、本件発明1の用語を用いて整理すると、次のとおりである。 【一致点】 「母材の疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストであって、前記進展抑制ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記粒子が、アルミナである、疲労亀裂の進展抑制ペースト。」 そして、本件発明1と甲1発明の相違点1及び2は、各々次のとおりである。 【相違点1】 粒子の粒径に関し、本件発明1は「メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μm」のものであるのに対し、甲1発明は「ふるいを用いて平均粒径15.2μm程度に揃えられて」いるものの、当該ふるいのメッシュサイズは不明である点。 【相違点2】 ペーストのチクソトロピック性に関し、本件発明1は「チクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)とした」のに対し、甲1発明は、チクソトロピー指数TI、せん断速度が0.1又は1(1/s)のときのみかけ粘度(以下単に「みかけ粘度」という。)がいずれも不明である点。 イ 判断 まず、相違点2について検討する。 甲第1号証には、微細粒ペーストの粘度を液垂れしない程度のものとする事項が記載されているから、甲1発明が、疲労亀裂が無い箇所では、高粘度でタレを生じることなく母材表面において形状や均質性を保持することは明らかである。 また、甲1発明はチクソトロピック性を有するものであり、疲労亀裂口近傍でのせん断速度が上がった箇所では粘度が低下して流動性が増すことで「疲労亀裂の内部に残留した微細粒ペースト2がくさびを形成するために、疲労亀裂の開閉による疲労亀裂の進展を抑制することができる」ものである。 そうすると、当業者が甲1発明を実施しようとすれば、シリコーングリースの粘度を、液垂れしない程度に低粘度すぎず、亀裂の内部に入り込むことができる程度に高粘度すぎない範囲のものとして、実施することになる。 しかしながら、このようにして実施したものが、相違点2に係る数値範囲を満たすか否かは不明であり、相違点2に係る数値範囲を満たす「疲労亀裂の進展抑制ペースト」が、本件出願前に知られていたと認めることはできない。また、他の甲号証にも、そのような開示や示唆があったものとは認められない。 そして、相違点2に係る数値範囲を満たすことにより、明細書の段落【0006】に記載された「疲労亀裂の無いせん断速度が極小の箇所では高粘度であり、疲労亀裂の発生、伝播や疲労亀裂の開閉挙動に伴いせん断速度が上がった箇所では低粘度となる疲労亀裂の進展抑制ペースト」を提供することができるのであるから、意味のない数値範囲ということもできず、相違点2に係る構成は容易に想到し得たものとは認められない。 したがって、相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明2、本件発明13、本件発明14も同様に「チクソトロピー指数TI」及び「みかけ粘度η_(P)」が規定されており、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、これらの請求項を引用する本件発明3-12、本件発明15-27も同様である。 (2)特許法第36条第6項第1号について ア 請求項に記載された「みかけ粘度η_(P)」は、訂正により実施例に記載された範囲と整合することとなった。 よって、本件発明1-27は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明により裏付けられている範囲を超えるものとはいえない。 イ 請求項に記載された「粒子」の「粒径」は、訂正により明細書に記載された範囲と整合することとなった。 よって、本件発明1-27は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明により裏付けられている範囲を超えるものとはいえない。 ウ 請求項11、25及び27に記載された「ペーストの塗布する厚さ」は、訂正により明細書に記載された範囲と整合することとなった。 よって、本件発明11、25及び27は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明により裏付けられている範囲を超えるものとはいえない。 (3)特許法第36条第6項第2号について 請求項9、10、22及び23は削除された。よってこれらの請求項に記載された「寸法予測値」という不明瞭な記載は存在しなくなった。 (4)特許異議申立人の意見について ア 特許異議申立人は、訂正の請求により限定された数値は新規事項の追加である旨主張している。しかしながら、上記第2の1(2)アに記載したとおり、限定された数値は、明細書からは導き出すことができない数値とまではいうことはできない。 したがって、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。 イ 特許異議申立人は、訂正の請求により限定された数値は設計的事項である旨主張しているが、上記(1)イのとおり、意味のない数値範囲とまではいうことができない。 したがって、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1及び2には、みかけ粘度η_(P)について、「せん断速度が大きいとき」及び「せん断速度が小さいとき」の一方しか記載されていないので不明瞭である旨主張しているが、一方しか記載されていなくても、請求項の記載から理解される技術的範囲は明確である。 したがって、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1-8、11-21、24-27に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件請求項1-8、11-21、24-27に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項9、10、22及び23に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項9、10、22及び23に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 疲労亀裂の進展抑制ペースト、進展抑制方法、進展検出ペースト、及び進展検出方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、圧力容器、車両、航空機又は工作機械等の構造物において、疲労亀裂の発生及び進展が懸念される箇所並びに疲労亀裂の発生及び進展が認められた箇所に対して適用する疲労亀裂の進展抑制ペースト、進展抑制方法、進展検出ペースト、及び進展検出方法に関する。 【背景技術】 【0002】 船舶、海洋構造物、橋梁等の各種金属製構造物の損傷に占める疲労損傷の割合は高く、維持管理における疲労損傷対策が必須となるが、構造物の老朽化や耐用年数の延長による損傷件数の増大に伴い、より効率的で省力化可能な補修方法や補修ツールが求められている。また、疲労亀裂が生じていなくても、応力集中等により疲労亀裂の発生が懸念される箇所については、発生直後の初期亀裂に対してその進展を抑制したり早期にかつ効果的に検出したりするための方策を予め施しておくことは、構造物のメンテナンスや安全性を考える上で極めて重要である。 一方、各種構造物の疲労亀裂の検査は、現状、その殆どが目視検査に依っているが、実構造物における検査環境は想像以上に厳しく、スペースや時間が限られることはもとより、電源や照明設備を期待できない場合も多いため、溶接部等の複雑形状部分に生じた疲労亀裂を現場で発見し、その寸法を把握することは容易でない。 【0003】 本出願人は、母材の硬度以上の硬度を有する粒子と粘性を有する油とが混合されたペーストを準備し、母材の所望の個所にペーストを塗布することで、母材に生じた疲労亀裂の内部に流入した粒子がくさびとして作用し、疲労亀裂の進展を抑制するとともに、亀裂面の母材を強く圧迫して研削することにより生じた黒色の母材粉が、ペーストの表面に移動して生じた色彩の変化によって、比較的初期の段階においても目視により容易に疲労亀裂を検出することができる疲労亀裂の検出方法及び進展抑制方法等を既に提案している(特許文献1)。 また、本出願人は、流動性を有する疲労亀裂検出・進展抑制剤を金属製基材の表面上に塗布し、さらにこの疲労亀裂検出・進展抑制剤層の表面に薄膜被覆を形成することのできるプライマー樹脂組成物を塗布し薄膜被覆を形成させることにより多層被膜を形成することで、施工後も安定して機能を果たし、かつ視認性の向上した疲労亀裂検出・進展抑制方法を既に提案している(特許文献2)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特許第3808846号公報 【特許文献2】特許第5257882号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本出願人が既に提案している疲労亀裂検出・進展抑制方法に用いるペースト(疲労亀裂検出・進展抑制剤)を、実際の各種構造物に用いる場合には、母材の鉛直面に塗布してもタレを生じることなく形状や均質性を保持するだけの高粘度が要求される反面、疲労亀裂の発生や進展に対しては、十分な流動性を有する低粘度が要求される。 【0006】 そこで本発明は、疲労亀裂の無いせん断速度が極小の箇所では高粘度であり、疲労亀裂の発生、伝播や疲労亀裂の開閉挙動に伴いせん断速度が上がった箇所では低粘度となる疲労亀裂の進展抑制ペースト、及び進展検出ペーストを提供するとともに、疲労亀裂の進展抑制方法、及び進展検出方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 請求項1記載の本発明に対応した疲労亀裂の進展抑制ペーストにおいては、母材の疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストであって、進展抑制ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、進展抑制ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたことを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることで、疲労亀裂が無い箇所では高粘度でタレを生じることなく母材表面において形状や均質性を保持し、疲労亀裂が発生して開閉口を始めると疲労亀裂口近傍でのせん断速度が上がった箇所では粘度が低下して流動性が増すことで疲労亀裂内に粒子が進入しやすくなり、疲労亀裂に進入した粒子のくさび効果によって疲労亀裂進展を抑制できる。また、粒子と混合する流体として、チクソトロピック性を有した油を用いることで、粒子の混合比率にかかわらず、チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることが可能となる。 なお、白金属元素としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金が挙げられる。 【0008】 請求項2記載の本発明に対応した疲労亀裂の進展抑制ペーストにおいては、母材の疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストであって、進展抑制ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、進展抑制ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることで、疲労亀裂が無い箇所では高粘度でタレを生じることなく母材表面において形状や均質性を保持し、疲労亀裂が発生して開閉口を始めると疲労亀裂口近傍でのせん断速度が上がった箇所では粘度が低下して流動性が増すことで疲労亀裂内に粒子が進入しやすくなり、疲労亀裂に進入した粒子のくさび効果によって疲労亀裂進展を抑制できる。また、進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)とすることで、疲労亀裂の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂に進入した粒子によって疲労亀裂進展を抑制できる。また、粒子と混合する流体として、チクソトロピック性を有した油を用いることで、粒子の混合比率にかかわらず、チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることが可能となる。 【0009】 請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の疲労亀裂の進展抑制ペーストにおいて、油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であることを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることができ、疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストとして適したものにできる。 【0010】 請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペーストにおいて、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とすることを特徴とする。請求項4に記載の本発明によれば、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることができ、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 【0011】 請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペーストにおいて、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることができ、疲労亀裂の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂に進入した粒子によって疲労亀裂進展を抑制できる。 【0012】 請求項6記載の本発明に対応した疲労亀裂の進展抑制方法においては、請求項1から請求項5のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペーストのうち、母材の硬度以上の硬度を有する粒子が混合されている進展抑制ペーストを、疲労亀裂の発生が予測される母材の部位を特定して塗布することを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できるため、あらかじめ疲労亀裂発生が予測される部位に塗布しておくことができ、疲労亀裂が発生した場合には、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂に進入した粒子によって疲労亀裂進展を抑制できる。 【0013】 請求項7記載の本発明に対応した疲労亀裂の進展抑制方法においては、請求項1から請求項5のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペーストのうち、母材の硬度以上の硬度を有する粒子が混合されている進展抑制ペーストを、疲労亀裂が発生している母材の部位に塗布することを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、疲労亀裂が発生した部位に塗布することで、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂に進入した粒子によって疲労亀裂進展を抑制できる。 【0014】 請求項8記載の本発明は、請求項7に記載の疲労亀裂の進展抑制方法において、疲労亀裂の開口を増大させる方向の荷重を、母材を含む構造物に載荷して進展抑制ペーストを塗布することを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、繰り返し荷重に伴う疲労亀裂の開閉口によるポンプ作用や毛細管現象によってペーストが疲労亀裂内に徐々に流入していくのを待つことなく、疲労亀裂が大きく開口した状態で塗布することで、相当量の粒子が疲労亀裂内に流入するため、進展抑制効果の発現を早めることができる。 【0015】(削除) 【0016】(削除) 【0017】 請求項11記載の本発明は、請求項6から請求項8のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制方法において、進展抑制ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする。請求項11に記載の本発明によれば、母材に発生した疲労亀裂内に進入する進展抑制ペーストの量を適正なものとすることができる。 【0018】 請求項12記載の本発明は、請求項11に記載の疲労亀裂の進展抑制方法において、進展抑制ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、板厚が5?200mmの場合には母材の板厚の1/10以上とし、板厚が200mm以上の場合には20mm以上としたことを特徴とする。請求項12に記載の本発明によれば、母材に発生した疲労亀裂の最先端部近傍まで進展抑制ペーストを十分に行き渡らせることができる。 【0019】 請求項13記載の本発明に対応した疲労亀裂の進展検出ペーストにおいては、母材の疲労亀裂の進展を検出する進展検出ペーストであって、進展検出ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、進展検出ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたことを特徴とする。請求項13に記載の本発明によれば、チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることで、疲労亀裂が無い箇所では高粘度でタレを生じることなく母材表面において形状や均質性を保持し、疲労亀裂が発生して開閉口を始めると疲労亀裂口近傍でのせん断速度が上がった箇所では粘度が低下して流動性が増すことで疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂内で発生する黒色物質によって疲労亀裂を検出できる。また、粒子と混合する流体として、チクソトロピック性を有した油を用いることで、粒子の混合比率にかかわらず、チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることが可能となる。 【0020】 請求項14記載の本発明に対応した疲労亀裂の進展検出ペーストにおいては、母材の疲労亀裂の進展を検出する進展検出ペーストであって、進展検出ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、進展検出ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする。請求項14に記載の本発明によれば、チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることで、疲労亀裂が無い箇所では高粘度でタレを生じることなく母材表面において形状や均質性を保持し、疲労亀裂が発生して開閉口を始めると疲労亀裂口近傍でのせん断速度が上がった箇所では粘度が低下して流動性が増すことで疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂内で発生する黒色物質によって疲労亀裂を検出できる。また、進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに2.1?76(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.33?12(Pa・s)とすることで、疲労亀裂の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂内で発生する黒色物質によって疲労亀裂を検出できる。また、粒子と混合する流体として、チクソトロピック性を有した油を用いることで、粒子の混合比率にかかわらず、チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることが可能となる。 【0021】 請求項15記載の本発明は、請求項13又は請求項14に記載の疲労亀裂の進展検出ペーストにおいて、粒子を、淡色又は透明のアルミナを含むセラミックス粒子としたことを特徴とする。請求項15に記載の本発明によれば、黒色物質とのコントラストによって目視による検出が容易となる。 【0022】 請求項16記載の本発明は、請求項13から請求項15のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペーストにおいて、油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であることを特徴とする。請求項16に記載の本発明によれば、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることができ、疲労亀裂の進展を検出する進展検出ペーストとして適したものにできる。 【0023】 請求項17記載の本発明は、請求項13から請求項16のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペーストにおいて、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とすることを特徴とする。請求項17に記載の本発明によれば、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることができ、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 【0024】 請求項18記載の本発明は、請求項13から請求項17のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペーストにおいて、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする。請求項18に記載の本発明によれば、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることができ、疲労亀裂の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂に進入した粒子によって黒色物質を発生させ、疲労亀裂を検出できる。 【0025】 請求項19記載の本発明に対応した疲労亀裂の進展検出方法においては、請求項13から請求項18のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペーストのうち、母材の硬度以上の硬度を有する粒子が混合されている進展検出ペーストを、疲労亀裂の発生が予測される母材の部位を特定して塗布することを特徴とする。請求項19に記載の本発明によれば、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できるため、あらかじめ疲労亀裂発生が予測される部位に塗布しておくことができ、疲労亀裂が発生した場合には、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂に進入した粒子によって黒色物質を発生させ、疲労亀裂を検出できる。 【0026】 請求項20記載の本発明に対応した疲労亀裂の進展検出方法においては、請求項13から請求項18のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペーストのうち、母材の硬度以上の硬度を有する粒子が混合されている進展検出ペーストを、疲労亀裂の発生している母材の部位に塗布することを特徴とする。請求項20に記載の本発明によれば、疲労亀裂が発生した部位に塗布することで、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂に進入した粒子によって黒色物質を発生させ、疲労亀裂を検出できる。 【0027】 請求項21記載の本発明は、請求項20に記載の疲労亀裂の進展検出方法において、疲労亀裂の開口を増大させる方向の荷重を、母材を含む構造物に載荷して進展検出ペーストを塗布することを特徴とする。請求項21に記載の本発明によれば、繰り返し荷重に伴う疲労亀裂の開閉口によるポンプ作用や毛細管現象によってペーストが疲労亀裂内に徐々に流入していくのを待つことなく、疲労亀裂が大きく開口した状態で塗布することで、相当量の粒子が疲労亀裂内に流入するため、疲労亀裂に進入した粒子の亀裂面研削作用による黒色物質の発生を早め、疲労亀裂を早期にかつ効果的に検出できる。 【0028】(削除) 【0029】(削除) 【0030】 請求項24記載の本発明は、請求項19から請求項21のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法において、母材に塗布した進展検出ペーストの疲労亀裂に対応した表面部分が、疲労亀裂の進展に伴い変色することにより、疲労亀裂の進展を判断することを特徴とする。請求項24に記載の本発明によれば、目視による疲労亀裂検出を容易に行うことができる。 【0031】 請求項25記載の本発明は、請求項19から請求項21又は請求項24のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法において、進展検出ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする。請求項25に記載の本発明によれば、母材に発生した疲労亀裂内に進入する進展検出ペーストの量を適正なものとすることができる。 【0032】 請求項26記載の本発明は、請求項25に記載の疲労亀裂の進展検出方法において、進展検出ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、板厚が5?200mmの場合には母材の板厚の1/10以上とし、板厚が200mm以上の場合には20mm以上としたことを特徴とする。請求項26に記載の本発明によれば、母材に発生した疲労亀裂の最先端部近傍まで進展検出ペーストを十分に行き渡らせることができる。 【0033】 請求項27記載の本発明は、請求項19から請求項21又は請求項24から請求項26のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法において、進展検出ペーストを用いて、母材の疲労亀裂の進展の抑制も行うことを特徴とする。請求項27に記載の本発明によれば、疲労亀裂進展の検出だけでなく、くさび効果による疲労亀裂進展の抑制も行うことができる。 【発明の効果】 【0034】 本発明の疲労亀裂の進展抑制ペーストによれば、チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることで、疲労亀裂が無い箇所では高粘度でタレを生じることなく母材表面において形状や均質性を保持し、疲労亀裂が発生して開閉口を始めると疲労亀裂口近傍でのせん断速度が上がった箇所では粘度が低下して流動性が増すことで疲労亀裂内に粒子が進入しやすくなり、疲労亀裂に進入した粒子のくさび効果によって疲労亀裂進展を抑制できる。 【0035】 また、進展抑制ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.6?1.2とする場合には、疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストとして適している。 【0036】 また、進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)とした場合には、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 【0037】 また、進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)とした場合には、疲労亀裂の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂に進入した粒子によって疲労亀裂進展を抑制できる。 【0038】 また、粒子を、メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径とした場合には、疲労亀裂内への進入効果及び進入した粒子によるくさび効果が高く、疲労亀裂に進入した粒子によって疲労亀裂進展を抑制できる。 【0039】(削除) 【0040】 また、粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維の1種以上を含む場合には、母材の硬度との関係で、これらの材料を単独又は混合して用いることができる。 【0041】 また、流体を、チクソトロピック性を有した油とした場合には、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることができる。 【0042】 また、油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.6?1.2とした場合には、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることができ、疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストとして適したものにできる。 【0043】 また、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とする場合には、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることができ、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 【0044】 また、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)とした場合には、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとすることができ、疲労亀裂の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂に進入した粒子によって疲労亀裂進展を抑制できる。 【0045】 本発明の疲労亀裂の進展抑制方法によれば、疲労亀裂の発生が予測される母材の部位を特定して塗布することで、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できるため、あらかじめ疲労亀裂発生が予測される部位に塗布しておくことができ、疲労亀裂が発生した場合には、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂に進入した粒子によって疲労亀裂進展を抑制できる。 【0046】 本発明の疲労亀裂の進展抑制方法によれば、疲労亀裂が発生している母材の部位に塗布することで、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂に進入した粒子によって疲労亀裂進展を抑制できる。 【0047】 また、疲労亀裂の開口を増大させる方向の荷重を、母材を含む構造物に載荷して進展抑制ペーストを塗布する場合には、繰り返し荷重に伴う疲労亀裂の開閉口によるポンプ作用や毛細管現象によってペーストが疲労亀裂内に徐々に流入していくのを待つことなく、疲労亀裂が大きく開口した状態で塗布することで、相当量の粒子が疲労亀裂内に流入するため、進展抑制効果の発現を早めることができる。 【0048】(削除) 【0049】 また、進展抑制ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて比例的に変えた場合には、母材に発生した疲労亀裂内に進入する進展抑制ペーストの量を適正なものとすることができる。 【0050】 また、進展抑制ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、板厚が5?200mmの場合には母材の板厚の1/10以上とし、板厚が200mm以上の場合には20mm以上とした場合には、母材に発生した疲労亀裂の最先端部近傍まで進展抑制ペーストを十分に行き渡らせることができる。 【0051】 本発明の疲労亀裂の進展検出ペーストによれば、チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることで、疲労亀裂が無い箇所では高粘度でタレを生じることなく母材表面において形状や均質性を保持し、疲労亀裂が発生して開閉口を始めると疲労亀裂口近傍でのせん断速度が上がった箇所では粘度が低下して流動性が増すことで疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂内で発生する黒色物質によって疲労亀裂を検出できる。 【0052】 また、進展検出ペーストのチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを0.6?1.2とした場合には、疲労亀裂の進展を検出する進展検出ペーストとして適している。 【0053】 また、進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)とした場合には、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 【0054】 また、進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)とした場合には、疲労亀裂の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂内で発生する黒色物質によって疲労亀裂を検出できる。 【0055】 また、粒子を、メッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径とした場合には、疲労亀裂内への粒子の進入効果及び進入した粒子による亀裂面の研削効果が高く、疲労亀裂内で発生する黒色物質によって疲労亀裂を検出できる。 【0056】(削除) 【0057】 また、粒子と油を選択することにより、母材の疲労亀裂の進展の抑制も行う場合には、疲労亀裂進展の検出だけでなく、くさび効果による疲労亀裂進展の抑制も行うことができる。 【0058】 また、粒子を、淡色又は透明のアルミナを含むセラミックス粒子とした場合には、黒色物質とのコントラストによって目視による検出が容易となる。 【0059】 また、流体を、チクソトロピック性を有した油とした場合には、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることが可能となる。 【0060】 また、油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIを、0.6?1.2とした場合には、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることができ、疲労亀裂の進展を検出する進展検出ペーストとして適したものにできる。 【0061】 また、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とする場合には、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることができ、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 【0062】 また、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)とした場合には、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展検出ペーストとすることができ、疲労亀裂の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂に進入した粒子によって黒色物質を発生させ、疲労亀裂を検出できる。 【0063】 本発明の疲労亀裂の疲労亀裂の進展検出方法によれば、進展検出ペーストを疲労亀裂の発生が予測される母材の部位を特定して塗布することで、疲労亀裂の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できるため、あらかじめ疲労亀裂発生が予測される部位に塗布しておくことができ、疲労亀裂が発生した場合には、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂に進入した粒子によって黒色物質を発生させ、疲労亀裂を検出できる。 【0064】 本発明の疲労亀裂の疲労亀裂の進展検出方法によれば、疲労亀裂の発生している母材の部位に塗布することで、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂内に粒子が進入し、疲労亀裂に進入した粒子によって黒色物質を発生させ、疲労亀裂を検出できる。 【0065】 また、疲労亀裂の開口を増大させる方向の荷重を、母材を含む構造物に載荷して進展検出ペーストを塗布する場合には、繰り返し荷重に伴う疲労亀裂の開閉口によるポンプ作用や毛細管現象によってペーストが疲労亀裂内に徐々に流入していくのを待つことなく、疲労亀裂が大きく開口した状態で塗布することで、相当量の粒子が疲労亀裂内に流入するため、疲労亀裂に進入した粒子による黒色物質の発生を早め、疲労亀裂を早期にかつ効果的に検出できる。 【0066】(削除) 【0067】 また、母材に塗布した進展検出ペーストの疲労亀裂に対応した表面部分が、疲労亀裂の進展に伴い変色することにより疲労亀裂の進展を判断する場合には、目視による疲労亀裂検出を容易に行うことができる。 【0068】 また、進展検出ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚に応じて比例的に変えた場合には、母材に発生した疲労亀裂内に進入する進展検出ペーストの量を適正なものとすることができる。 【0069】 また、進展検出ペーストの塗布する厚さを、母材の板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、板厚が5?200mmの場合には母材の板厚の1/10以上とし、板厚が200mm以上の場合には20mm以上とした場合には、母材に発生した疲労亀裂の最先端部近傍まで進展検出ペーストを十分に行き渡らせることができる。 【図面の簡単な説明】 【0070】 【図1】 本発明の実施形態による高チクソトロピック性を有するペーストの作用原理を示す説明図 【図2】 本発明の実施形態による高チクソトロピック性を有するペーストの各実施例におけるアルミナの粒径、油の構成、アルミナペーストの相対的な粘度を示す表 【図3】 実施例3の中粘度アルミナペーストについて粘度測定を行った結果を示す特性図 【図4】 実施例1におけるアルミナペースト及び油のみかけ粘度とスピンドルの回転速度の関係を示す特性図 【図5】 実施例2におけるアルミナペースト及び油のみかけ粘度とスピンドルの回転速度の関係を示す特性図 【図6】 実施例3におけるアルミナペースト及び油のみかけ粘度とスピンドルの回転速度の関係を示す特性図 【図7】 実施例4におけるアルミナペースト及び油のみかけ粘度とスピンドルの回転速度の関係を示す特性図 【図8】 実施例1から実施例4におけるアルミナペーストのみかけ粘度とスピンドルの回転速度の関係を示す特性図 【図9】 実施例3におけるペースト粘度の0.4倍?2.5倍におけるせん断速度別のペーストのみかけ粘度と油(流体)のみかけ粘度を示す表 【図10】 同粘度範囲におけるアルミナペーストのみかけ粘度とせん断速度の関係を示す特性図 【図11】 実施例3におけるペースト粘度の0.25倍?4倍におけるせん断速度別のペーストのみかけ粘度と油(流体)のみかけ粘度を示す表 【図12】 同粘度範囲におけるアルミナペーストのみかけ粘度とせん断速度の関係を示す特性図 【図13】 実施例3におけるペースト粘度の0.167倍?6倍におけるせん断速度別のペーストのみかけ粘度と油(流体)のみかけ粘度を示す表 【図14】 同粘度範囲におけるアルミナペーストのみかけ粘度とせん断速度の関係を示す特性図 【図15】 疲労亀裂進展試験に用いた切欠き付き平板試験片を示す図 【図16】 実施例1?実施例4と比較例1、2についての試験結果を示す表 【図17】 実施例1における疲労亀裂進展試験中のアルミナペーストの変化を示す写真 【図18】 実施例2における疲労亀裂進展試験中のアルミナペーストの変化を示す写真 【図19】 実施例3における疲労亀裂進展試験中のアルミナペーストの変化を示す写真 【図20】 実施例4における疲労亀裂進展試験中のアルミナペーストの変化を示す写真 【図21】 本発明の疲労亀裂の進展抑制方法及び進展検出方法の一実施形態を示す説明図 【図22】 本発明の疲労亀裂の進展抑制方法及び進展検出方法に高比重の粒子を用いたペーストを適用した状態を示す模式図 【図23】 本発明の疲労亀裂の進展抑制方法及び進展検出方法の他の実施形態を示す説明図 【図24】 本発明の疲労亀裂の進展抑制方法及び進展検出方法で用いるペーストの塗布厚の規定を示す図 【図25】 ペーストの塗布厚さを変えて行った疲労亀裂進展試験に用いた切欠き付き平板試験片を示す図 【図26】 実施例5における疲労亀裂進展試験に用いた試験片のボルト・ナット締結及びペースト塗布仕様を示す図 【図27】 実施例6及び7における疲労亀裂進展試験に用いた試験片のボルト・ナット締結及びペースト塗布仕様を示す図 【図28】 比較例3における疲労亀裂進展試験に用いた試験片のボルト・ナット締結仕様を示す図 【図29】 実施例5?実施例7と比較例3についての試験結果を示す表 【図30】 実施例5?7の疲労試験終了後にアセトンにより超音波洗浄した破面を示す写真 【発明を実施するための形態】 【0071】 図1は本発明の実施形態による高チクソトロピック性を有するペーストの作用原理を示す説明図である。 図1(a)は、母材1としての金属素地の鉛直面に、母材1の硬度以上の硬度を有する粒子又は母材1の剛性以上の剛性を有する粒子と流体とを混合した高チクソトロピック性を有するペースト2を塗布した状態を示している。疲労亀裂3が発生していない状態では、せん断速度がゼロなのでペースト2は高粘度であり、タレを生じることなく形状や均質性を保持している。 【0072】 図1(b)は、疲労亀裂3が発生して母材1の表面で開閉口を始めた疲労亀裂発生初期状態を示している。疲労亀裂3近傍のペースト2のせん断速度が上がることで、疲労亀裂3近傍の低粘度となったペースト4は、疲労亀裂3内に進入しやすくなる。 【0073】 図1(c)は、疲労亀裂3の開閉口が盛んに行われた後の状態を示している。疲労亀裂3の開閉口の動きの影響を受ける範囲でペースト2のせん断速度が上がって粘度が低下し、低粘度のペースト4が疲労亀裂3内に流入し、また疲労亀裂3内の黒色物質が低粘度のペースト4表面に流出しやすくなる。疲労亀裂3内に流入した低粘度のペースト4中に存在する、母材1の硬度以上の硬度を有する粒子又は母材1の剛性以上の剛性を有する粒子は、疲労亀裂3内で、くさびとしての機能を有することで疲労亀裂3の閉動作を妨げるため、疲労亀裂3に次サイクルの引っ張り荷重が作用しても、疲労亀裂3の変位が小さく抑えられ(くさび効果)、疲労亀裂3の進展が抑制される。また、引っ張り荷重が除荷されると、疲労亀裂3面と粒子との間に強い反発力が作用して、疲労亀裂3面の母材1が研削され、この研削された母材粉は顕著な黒色を呈し、疲労亀裂開閉口に伴うポンプ効果により疲労亀裂3内から滲み出て発色する。 一方、疲労亀裂3からある程度離れた所にあるペースト2は高粘度のままなので、ペースト2全体としてはタレを生じることなく形状は保持される。 【0074】 このように、母材1の硬度以上の硬度を有する粒子又は母材1の剛性以上の剛性を有する粒子と流体とを混合した高チクソトロピック性を有したペーストとすることで、疲労亀裂3が無い箇所では高粘度でタレを生じることなく母材1表面において形状や均質性を保持し、疲労亀裂3が発生して開閉口を始めると疲労亀裂口近傍でのせん断速度が上がった箇所では粘度が低下して流動性が増すことで疲労亀裂3内に粒子が進入しやすくなり、疲労亀裂3内に進入した粒子のくさび効果によって疲労亀裂3の進展を抑制できる。 従って、高チクソトロピック性を有したペーストを、母材1の疲労亀裂3の進展を抑制する進展抑制ペーストとして用いることができる。母材1の硬度以上の硬度を有する粒子又は母材1の剛性以上の剛性を有する粒子を用いることにより、疲労亀裂3が発生して開閉口を始め母材1により粒子が荷重を受けても、粒子の硬度や剛性が母材1の硬度や剛性に比べて優っているため、くさび効果を有効に発揮することが可能となる。 【0075】 また、母材1の硬度以上の硬度を有する粒子又は母材1の剛性以上の剛性を有する粒子と流体とを混合した高チクソトロピック性を有したペーストとすることで、疲労亀裂3が無い箇所では高粘度でタレを生じることなく母材1表面において形状や均質性を保持し、疲労亀裂3が発生して開閉口を始めると疲労亀裂口近傍でのせん断速度が上がった箇所では粘度が低下して流動性が増すことで疲労亀裂3内に粒子が進入し、疲労亀裂3内でくさびとしての機能を発現した粒子が疲労亀裂3面を強く圧迫して研削することにより疲労亀裂3内で発生する黒色物質が、粘度が低下して流動性を増したペースト4と共にペースト表面まで輸送されて黒く発色することによって疲労亀裂3を目視検出できる。 従って、高チクソトロピック性を有したペーストを、母材1の疲労亀裂3の進展を検出する進展検出ペーストとして用いることができる。 なお、均質性とはペースト中における粒子の分布や粒径の分布が均質であること等を言っており、高粘度の油が粒子をしっかりと保持したり、油だけが粒子を残してタレ落ちたり、粒径分布が偏在して来ることのないこと等を指している。 【実施例】 【0076】 図2は本発明の実施形態による高チクソトロピック性を有するペーストの各実施例におけるアルミナの粒径、油の構成、アルミナペーストの相対的な粘度を示す表である。 微細粒としては、粒径をメッシュサイズ10μm及び20μmの2種類のふるいを用いて平均粒径15.2μmに揃えたアルミナ粒子(見掛密度1.2g/cm^(3))を用いた。これを適量の白色シリコーングリース、又は白色シリコーングリースと透明シリコーンオイルの混合物と十分に撹拌混合し、鉛直面でもタレを生じない程度のペースト状に調整した。 【0077】 図3は実施例3の中粘度アルミナペーストについて粘度測定を行った結果を示す特性図である。図3では、みかけ粘度η_(P)とせん断速度Dの関係を示している。 粘度測定には、レオメーター(Reologica lnstruments社製VAR-50、C25-4°スピンドル)を用いた。 図3において、白丸はペースト試料を-40℃で1ヶ月保存した後、常温に戻して行った測定値を、黒丸はペースト試料を80℃で1ヶ月保存した後、常温に戻して行った測定値を示している。また、破線細線は白丸によるプロットの最小二乗法による回帰直線、実線細線は黒丸によるプロットの最小二乗法による回帰直線を示している。 図3に示す通り、-40℃と80℃での保存温度の違いによる影響は殆ど認められなかった。元々シリコーングリースの粘度の温度依存性は非常に小さいので、本実施例によるアルミナペーストは、低温・高温の環境下においても疲労亀裂3の進展の抑制及び目視検出の機能発現が期待できる。 【0078】 一方、アルミナペーストのみかけ粘度η_(P)はせん断速度(ずり速度)Dに大きく依存しており、プロット点はすべて両対数座標上で右下がり(傾き約-0.8)の直線上にほぼ位置している。アルミナペーストは、このように低せん断速度域では相対的に高粘度、高せん断速度域では相対的に低粘度となる特性(広義のチクソトロピック特性(揺変性)、擬塑性)を有するため、鉛直面等にそのまま塗布しても自重で垂れることなく塗布時の形状を保ち続け、施工性及び形状安定性に優れている。一方、アルミナペーストは、母材1に疲労亀裂3が生じてその開閉口挙動の影響で疲労亀裂3近傍のペーストのせん断速度Dが上がると局所的に粘度が下がって流動性が増し、疲労亀裂進展抑制機能及び目視検出機能を発現しやすくなる。 【0079】 本発明におけるチクソトロピック特性を示すチクソトロピー指数TIは以下のように定義している。 TI=-[図3(両対数座標で表したみかけ粘度η_(P)-せん断速度Dの関係)における回帰直線の傾き] ただし、油の場合はη_(P)を油のみかけ粘度η_(G)に置き換えるものとする。 なお、日本工業規格 JISZ3284-1994ソルダペーストの5.2節では、粘度-ずり速度(せん断速度)曲線からチクソトロピー指数TIを求める方法が示されており、この方法では特定の2点を通る直線の傾きで定義されている。本発明におけるチクソトロピー指数TIは、このJISで定める方法と考え方は同じであるが、特定の2点を通る直線の傾きで定義するものではない。 また、油として対象とする一般的なシリコーングリースやシリコーンオイル、又はそれらの混合物等のチクソトロピー指数TIは大きいものから小さいものまで様々であり、進展抑制ペースト用あるいは進展検出ペースト用としては、絞り込んで使用する必要がある。 【0080】 図4は実施例1におけるアルミナペースト及び油のみかけ粘度(η_(P)、η_(G))とスピンドルの回転速度N_(R)の関係を示す特性図である。 最も低粘度である実施例1について、アルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と、原料に用いた油(図2参照)の粘度η_(G)を、B型回転式粘度計(Fungilab社製Viscolead one、R7スピンドル使用)により常温で測定した結果である。 スピンドルの回転速度N_(R)が順次上がりせん断速度Dが上昇するにつれてアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)及び油のみかけ粘度η_(G)は低下しており、両対数座標上で最小二乗法により直線回帰すると直線の傾きは両者とも-0.82となり、高チクソトロピック特性を示している。各回転速度におけるアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と油のみかけ粘度η_(G)の比を見ると約1.25であった。 【0081】 図5は実施例2におけるアルミナペースト及び油のみかけ粘度(η_(P)、η_(G))とスピンドルの回転速度N_(R)の関係を示す特性図である。 低粘度である実施例2について、アルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と、原料に用いた油(図2参照)の粘度η_(G)を、同じくB型回転式粘度計(同上)により常温で測定した結果である。 スピンドルの回転速度N_(R)が順次上がりせん断速度Dが上昇するにつれてアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)及び油のみかけ粘度η_(G)は低下しており、両対数座標上で最小二乗法により直線回帰すると直線の傾きは両者とも-0.86となり、高チクソトロピック特性を示している。各回転速度におけるアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と油のみかけ粘度η_(G)の比を見ると約1.32であった。 【0082】 図6は実施例3におけるアルミナペースト及び油のみかけ粘度(η_(P)、η_(G))とスピンドルの回転速度N_(R)の関係を示す特性図である。 中粘度である実施例3について、アルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と、原料に用いた油(図2参照)の粘度η_(G)を、同じくB型回転式粘度計(同上)により常温で測定した結果である。 スピンドルの回転速度N_(R)が順次上がりせん断速度Dが上昇するにつれてアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)及び油のみかけ粘度η_(G)は低下しており、両対数座標上で最小二乗法により直線回帰すると直線の傾きはそれぞれ-0.87及び-0.88となり、高チクソトロピック特性を示している。各回転速度におけるアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と油のみかけ粘度η_(G)の比を見ると約1.65であった。 【0083】 図7は実施例4におけるアルミナペースト及び油のみかけ粘度(η_(P)、η_(G))とスピンドルの回転速度N_(R)の関係を示す特性図である。 最も高粘度である実施例4について、アルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と、原料に用いた油(図2参照)の粘度η_(G)を、同じくB型回転式粘度計(同上)により常温で測定した結果である。 スピンドルの回転速度N_(R)が順次上がりせん断速度Dが上昇するにつれてアルミナペーストと油のみかけ粘度(η_(P)、η_(G))は低下しており、油のデータに対して両対数座標上で最小二乗法により直線回帰すると直線の傾きは-0.87となり、高チクソトロピック特性を示している。実施例4では、油(高粘度シリコーングリース)が高粘度のためアルミナ粒子混合によるみかけ粘度の変化は殆どなく、アルミナペーストのデータは油のデータとほぼ重なっている。 【0084】 図8は実施例1から実施例4におけるアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)とスピンドルの回転速度N_(R)の関係を示す特性図である。 図8では、アルミナペーストの粘度η_(P)をB型回転式粘度計(同上)により常温で測定した結果をまとめて示している。 実施例1?4に共通して、スピンドルの回転速度N_(R)が順次上がりせん断速度Dが上昇するにつれてアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)は低下しており、両対数座標上で最小二乗法により直線回帰すると直線の傾きは-0.87?-0.82であり、高チクソトロピック特性を示している。また、各回転速度におけるアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)を比較すると、実施例3のみかけ粘度η_(P)を1とした場合、最も高粘度の実施例4で約2.4倍、最も低粘度の実施例1で約0.4倍であった。 【0085】 図9は実施例3におけるペースト粘度の0.4倍?2.5倍におけるせん断速度D別のペーストのみかけ粘度η_(P)と油(流体)のみかけ粘度η_(G)を示す表、図10は同粘度範囲におけるアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)とせん断速度Dの関係を示す特性図である。 なお、『接着剤と接着技術』CMCテクニカルライブラリー272、永田宏二監修(p.313の図7)には、塗料のせん断速度履歴が記載されており、タレ及び沈降安定性に関して考慮すべきせん断速度の範囲は大凡0.01?1(1/s)、塗料の搬送・塗装に関して考慮すべきせん断速度の範囲は大凡10?100(1/s)であるとされている。 これを参考にすると、せん断速度D=0.01?1(1/s)の範囲が、垂直面等でもタレを生じずに塗布時の形状を保持、均質に分散した微細粒を保持、水分(雨水、揺水)等のマイルドな環境要因からペースト内部を保護できる機能を発揮し、疲労亀裂3の無い箇所に塗布されたペーストに相当する。 また、せん断速度D=10?100(1/s)の範囲が、疲労亀裂3内に進入して微細粒を疲労亀裂3先端近傍まで輸送、疲労亀裂3面で生じた黒色物質をペースト外表面まで輸送できる機能を発揮し、疲労亀裂3の近傍及び疲労亀裂3内のペーストに相当する。 【0086】 このことから、疲労亀裂3の無い箇所におけるせん断速度D(1/s)は、D<0.1とD=1とし、疲労亀裂3の近傍及び内部のせん断速度D(1/s)は、D=10とD=100とした。 油粘度の下限値は、最低粘度の実施例1でアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と油のみかけ粘度η_(G)の比が約1.25であったことから、ペースト粘度下限値/1.5とした。また、油粘度の上限値は、最高粘度の実施例4で等しかったことから、ペースト粘度上限値とした。 【0087】 図10において、白丸はペースト試料を-40℃で1ヶ月保存した後、常温に戻して行った測定値を、黒丸はペースト試料を80℃で1ヶ月保存した後、常温に戻して行った測定値を示している。また、破線細線は白丸によるプロットの最小二乗法による回帰直線、実線細線は黒丸によるプロットの最小二乗法による回帰直線を示している。また「×2.5」で示す実線太線は、ペースト粘度上限値による直線(Upper limit)、「×0.4」で示す破線太線は、ペースト粘度下限値による直線(Lower limit)を示している。 【0088】 TIの上限値であるTI(max)は、ペースト粘度上限値による直線(Upper limit)におけるせん断速度D=1(1/s)と、ペースト粘度下限値による直線(Lower limit)におけるせん断速度D=100(1/s)とによって規定できる。 また、TIの下限値であるTI(min)は、ペースト粘度下限値による直線(Lower limit)におけるせん断速度D=0.1(1/s)と、ペースト粘度上限値による直線(Upper limit)におけるせん断速度D=100(1/s)とによって規定できる。 【0089】 図9で規定するペーストと油の粘度範囲によれば、図10に示すTI(max)とTI(min)の直線の傾きで示すように、本規定範囲におけるペーストのチクソトロピー指数TIは、0.5?1.2である。 また、図4?図6で示すように、ペーストと油のチクソトロピー指数TIはほぼ同一であるため、本規定範囲における油のチクソトロピー指数TIについても、0.5?1.2である。 【0090】 以上のように、ペーストの高チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.5?1.2であれば、進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして、最も適している。 また、油の高チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.5?1.2であれば、進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして、最も適している。 【0091】 また、ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度Dが0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度Dが1(1/s)のときに32?205(Pa・s)とすることで、疲労亀裂3の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる効果が最も高い。 また、ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度Dが10(1/s)のときに5.1?32(Pa・s)、せん断速度Dが100(1/s)のときに0.8?4.9(Pa・s)とすることで、疲労亀裂3の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂3内に進入した粒子によって疲労亀裂3の進展を抑制できる効果が最も高い。また、疲労亀裂3内で発生する黒色物質によって疲労亀裂3を検出できる効果が最も高い。 【0092】 また、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度Dが0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とすることで、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして、最も適しており、疲労亀裂3の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 また、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度Dが1(1/s)のときに21?205(Pa・s)、せん断速度Dが100(1/s)のときに0.5?4.9(Pa・s)とすることで、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして、最も適しており、疲労亀裂3の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂3に進入した粒子によって疲労亀裂3の進展を抑制でき、疲労亀裂3内で発生する黒色物質によって疲労亀裂3を検出できる。 また、流体を、高チクソトロピック性を有した油としたことで、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペースト及び亀裂検出ペーストとすることができる。 【0093】 図11は実施例3におけるペースト粘度の0.25倍?4倍におけるせん断速度D別のペーストのみかけ粘度η_(P)と油(流体)のみかけ粘度η_(G)を示す表、図12は同粘度範囲におけるアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)とせん断速度Dの関係を示す特性図である。 図9で示す場合と同様に、疲労亀裂3の無い箇所におけるせん断速度D(1/s)は、D<0.1とD=1とし、疲労亀裂3の近傍及び内部のせん断速度D(1/s)は、D=10とD=100とした。 また、図9で示す場合と同様に、油粘度の下限値は、最低粘度の実施例1でアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と油のみかけ粘度η_(G)の比が約1.25であったことから、ペースト粘度下限値/1.5とした。また、油粘度の上限値は、最高粘度の実施例4で等しかったことから、ペースト粘度上限値とした。 【0094】 図12において、白丸はペースト試料を-40℃で1ヶ月保存した後、常温に戻して行った測定値を、黒丸はペースト試料を80℃で1ヶ月保存した後、常温に戻して行った測定値を示している。また、破線細線は白丸によるプロットの最小二乗法による回帰直線、実線細線は黒丸によるプロットの最小二乗法による回帰直線を示している。また「×4」で示す実線太線は、ペースト粘度上限値による直線(Upper limit)、「×0.25」で示す破線太線は、ペースト粘度下限値による直線(Lower limit)を示している。 【0095】 TIの上限値であるTI(max)は、ペースト粘度上限値による直線(Upper limit)におけるせん断速度D=1(1/s)と、ペースト粘度下限値による直線(Lower limit)におけるせん断速度D=100(1/s)とによって規定できる。 また、TIの下限値であるTI(min)は、ペースト粘度下限値による直線(Lower limit)におけるせん断速度D=0.1(1/s)と、ペースト粘度上限値による直線(Upper limit)におけるせん断速度D=100(1/s)とによって規定できる。 【0096】 図11で規定するペーストと油の粘度範囲によれば、図12に示すTI(max)とTI(min)の直線の傾きで示すように、本規定範囲におけるペーストのチクソトロピー指数TIは、0.4?1.4である。 また、図4?図6で示すように、ペーストと油のチクソトロピー指数TIはほぼ同一であるため、本規定範囲における油のチクソトロピー指数TIについても、0.4?1.4である。 【0097】 以上のように、ペーストの高チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.4?1.4であれば、進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして、より適している。 また、油の高チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.4?1.4であれば、進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして、より適している。 【0098】 また、ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度Dが0.1(1/s)のときに130(Pa・s)以上、せん断速度Dが1(1/s)のときに20?330(Pa・s)とすることで、疲労亀裂3の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる効果が高い。 また、ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度Dが10(1/s)のときに3.1?51(Pa・s)、せん断速度Dが100(1/s)のときに0.49?7.9(Pa・s)とすることで、疲労亀裂3の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂3内に進入した粒子によって疲労亀裂3の進展を抑制できる効果が高い。また、疲労亀裂3内で発生する黒色物質によって疲労亀裂3を検出できる効果が最も高い。 【0099】 また、油のみかけ粘度η^(G)を、せん断速度Dが0.1(1/s)のときに88(Pa・s)以上とすることで、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして、より適しており、疲労亀裂3の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 また、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度Dが1(1/s)のときに13?330(Pa・s)、せん断速度Dが100(1/s)のときに0.33?7.9(Pa・s)とすることで、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして、より適しており、疲労亀裂3の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂3に進入した粒子によって疲労亀裂3の進展を抑制でき、疲労亀裂3内で発生する黒色物質によって疲労亀裂3を検出できる。 また、流体を、高チクソトロピック性を有した油としたことで、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペースト及び亀裂検出ペーストとすることができる。 【0100】 図13は実施例3におけるペースト粘度の0.167倍?6倍におけるせん断速度別のペーストのみかけ粘度η_(P)と油(流体)のみかけ粘度η_(G)を示す表、図14は同粘度範囲におけるアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)とせん断速度Dの関係を示す特性図である。 図9で示す場合と同様に、疲労亀裂3の無い箇所におけるせん断速度D(1/s)は、D<0.1とD=1とし、疲労亀裂3の近傍及び内部のせん断速度D(1/s)は、D=10とD=100とした。 また、図9で示す場合と同様に、油粘度の下限値は、最低粘度の実施例1でアルミナペーストのみかけ粘度η_(P)と油のみかけ粘度η_(G)の比が約1.25であったことから、ペースト粘度下限値/1.5とした。また、油粘度の上限値は、最高粘度の実施例4で等しかったことから、ペースト粘度上限値とした。 【0101】 図14において、白丸はペースト試料を-40℃で1ヶ月保存した後、常温に戻して行った測定値を、黒丸はペースト試料を80℃で1ヶ月保存した後、常温に戻して行った測定値を示している。また、破線細線は白丸によるプロットの最小二乗法による回帰直線、実線細線は黒丸によるプロットの最小二乗法による回帰直線を示している。また「×6」で示す実線太線は、ペースト粘度上限値による直線(Upper limit)、「×0.167」で示す破線太線は、ペースト粘度下限値による直線(Lower limit)を示している。 【0102】 TIの上限値であるTI(max)は、ペースト粘度上限値による直線(Upper limit)におけるせん断速度D=1(1/s)と、ペースト粘度下限値による直線(Lower limit)におけるせん断速度D=100(1/s)とによって規定できる。 また、TIの下限値であるTI(min)は、ペースト粘度下限値による直線(Lower limit)におけるせん断速度D=0.1(1/s)と、ペースト粘度上限値による直線(Upper limit)におけるせん断速度D=100(1/s)とによって規定できる。 【0103】 図13で規定するペーストと油の粘度範囲によれば、図14に示すTI(max)とTI(min)の直線の傾きで示すように、本規定範囲におけるペーストのチクソトロピー指数TIは、0.3?1.6である。 また、図4?図6で示すように、ペーストと油のチクソトロピー指数TIはほぼ同一であるため、本規定範囲における油のチクソトロピー指数TIについても、0.3?1.6である。 【0104】 以上のように、ペーストの高チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であれば、進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして適している。 また、油の高チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.3?1.6であれば、進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして適している。 【0105】 また、ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度Dが0.1(1/s)のときに88(Pa・s)以上、せん断速度Dが1(1/s)のときに13?490(Pa・s)とすることで、疲労亀裂3の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 また、ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度Dが10(1/s)のときに2.1?76(Pa・s)、せん断速度Dが100(1/s)のときに0.33?12(Pa・s)とすることで、疲労亀裂3の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂3内に進入した粒子によって疲労亀裂3の進展を抑制できる。また、疲労亀裂3内で発生する黒色物質によって疲労亀裂3を検出できる。 【0106】 また、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度Dが0.1(1/s)のときに58(Pa・s)以上とすることで、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして適しており、疲労亀裂3の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できる。 また、油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度Dが1(1/s)のときに9.1?490(Pa・s)、せん断速度Dが100(1/s)のときに0.22?12(Pa・s)とすることで、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペーストとして、また進展検出ペーストとして適しており、疲労亀裂3の近傍や内部での粘度を低下させて、粒子の流動性を高めて、疲労亀裂3内に進入した粒子によって疲労亀裂3の進展を抑制でき、疲労亀裂3内で発生する黒色物質によって疲労亀裂3を検出できる。 また、流体を、高チクソトロピック性を有した油としたことで、粒子の混合比率にかかわらず、高チクソトロピック性を有した進展抑制ペースト及び亀裂検出ペーストとすることができる。 【0107】 図15は疲労亀裂進展試験に用いた切欠き付き平板試験片を示す図である。試験片には、JIS SM490A鋼製の板厚5mmの平板試験片中央部に、長さ10mm×幅0.3mmの切欠きを加工したものを用いた。 実施例1?実施例4は、図2に示すペーストを図15に示す試験片に塗布して試験を行ったものである。ペーストは、プラスチック板の簡易アプリケータを用いて、ペースト厚さが約0.7mmとなるように試験片の切欠き周辺に塗布した。 比較例1、2は、ペーストを塗布せず、金属素地のままの試験片で試験を行ったものである。 試験機には、電気-油圧サーボ式疲労試験機(島津製作所製、動的容量10tonf)を用い、試験条件は、公称応力レンジΔσ_(n)=104MPa、応力比R=0(完全片振り)、荷重周波数4.2Hzとした。なお、ペーストを鉛直面に塗布し、タレの有無も調べた。 【0108】 (試験結果) 図16は、実施例1?実施例4と比較例1、2についての試験結果を示す表である。また、図17から図20は実施例1?実施例4における疲労亀裂進展試験中のアルミナペーストの変化を示す写真である。 比較例1、2では、破断寿命N_(f)=448,020回、及び523,368回となり、平均では485,694回となった。 【0109】 実施例1では、破断寿命N_(f)=1,111,910回に延伸し、比較例1、2の平均に対して約2.3倍となった。図17に示すように、進展した疲労亀裂3に沿って黒く線上に発色した。健全部に塗布されたペーストから少量の油垂れが認められた。 【0110】 実施例2では、破断寿命N_(f)=1,023,670回に延伸し、比較例1、2の平均に対して約2.1倍となった。図18に示すように、進展した疲労亀裂3に沿って黒く線上に発色した。健全部に塗布されたペーストのタレはまったく見られず、ペーストの塗布時にできた凹み模様も完全に保持されていた。 【0111】 実施例3では、破断寿命N_(f)>1,536,000回に延伸し、比較例1、2の平均の約3.2倍以上となった。図19に示すように、進展した疲労亀裂3に沿って黒く線上に発色した。健全部に塗布されたペーストのタレはまったく見られず、ペーストの塗布時にできた凹み模様も完全に保持されていた。 【0112】 実施例4では、破断寿命N_(f)=772,811回に延伸し、比較例1、2の平均の約1.6倍となり、進展抑制効果は小さめとなった。図20に示すように、切欠き左側では進展した疲労亀裂3に沿って黒く線上に発色しているが、切欠き右側に進展した疲労亀裂3に沿っては発色していないことから、検出効果は必ずしも完全であるとは言えなかった。健全部に塗布されたペーストのタレはまったく無かった。 【0113】 図21は疲労亀裂の進展抑制方法及び進展検出方法の一実施形態を示す説明図である。 図21では、例えば橋梁のような一対の支承1aで支えられた構造物1に荷重5(重量物)を載荷して疲労亀裂3を開口させた状態でペースト2を塗布するイメージを示している。 【0114】 図21に示すように、疲労亀裂3が発生した部位にペースト2を塗布することで、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂3内にペースト2中の粒子が進入し、疲労亀裂3内に進入した粒子のくさび効果によって疲労亀裂3の進展を抑制できる。 【0115】 また、疲労亀裂3が発生した部位にペースト2を塗布することで、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂3内に粒子が進入し、疲労亀裂3内に進入した粒子による疲労亀裂3面の研削作用によって黒色物質を発生させ、疲労亀裂3を目視検出できる。 また、疲労亀裂3の開口を増大させる方向の荷重5を、母材1を含む構造物1に載荷してペースト2を塗布することで、繰り返し荷重に伴う疲労亀裂3の開閉口によるポンプ作用や毛細管現象によってペースト2が疲労亀裂3内に徐々に流入していくのを待つことなく、疲労亀裂3が大きく開口した状態で塗布することで、相当量の粒子が疲労亀裂3内に流入するため、進展抑制効果の発現を早めることができる。また、疲労亀裂3が大きく開口した状態で塗布することで、相当量の粒子が疲労亀裂3内に流入するため、疲労亀裂3に進入した粒子による黒色物質の発生を早め、疲労亀裂3を早期にかつ効果的に検出できる。勿論、荷重5を載荷しないで、疲労亀裂3の発生が予測される母材1の部位を特定して塗布することもできる。また、荷重5を載荷するに当たり、時間的に荷重5を変え疲労亀裂3の開閉口をさせながら塗布することも可能である。 【0116】 なお、疲労亀裂の進展抑制ペースト又は疲労亀裂の進展検出ペーストに用いる粒子は、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維の1種以上を含むことが好ましく、母材1の硬度又は剛性との関係で、母材1の硬度以上の硬度を有する材料、又は母材1の剛性以上の剛性を有する材料を単独又は混合して用いることができる。 また、母材1の硬度以上の硬度を有する粒子と母材1の剛性以上の剛性を有する粒子を適宜、混合して用いることもできる。進展抑制ペーストとしては、硬度と剛性の双方の特性を備えているものが望ましいが、閉じようとする疲労亀裂3面の母材1の剛性に負けて変形しないように剛性重視のものであってもよい。また、進展抑制ペーストの対象となる母材1の材料は、疲労亀裂3の生じる材料であればあらゆるものに適用が可能である。例えば、金属材料としての鉄、鋼以外にもアルミニウム合金やチタン合金等各種の金属材料が対象となり得る。また、セラミックスや樹脂、繊維強化樹脂等の金属材料以外の材料であってもよい。 【0117】 疲労亀裂の進展検出ペーストでは、粒子として、淡色又は透明のアルミナを含むセラミックス粒子とすることが好ましい。淡色又は透明の粒子とすることで、黒色物質とのコントラストによって目視による検出が容易となる。なお、透明には半透明を含み、黒色物質と実質的に目視で識別できるものを、本実施例では淡色又は透明としている。 また、進展検出ペーストの対象とする母材1は、発色の関係から基本的には金属材料が適している。硬度の低い金属材料の場合、用いる粒子はセラミックス粒子以外の粒子であってもよい。また、進展検出ペーストの検出対象とする母材1は、研削作用によって発色される材料であれば、金属以外の材料にも適用し得る。 粒子は、メッシュサイズ20μmのふるいを通る粒径とすることで、疲労亀裂3内への進入効果や疲労亀裂3内でのくさび効果が高く、疲労亀裂3内に進入した粒子によって疲労亀裂3の進展を抑制できる。 なお、対象とする疲労亀裂3の開口寸法よりも大きい粒径の粒子を含んでいてもよい。 疲労亀裂3の開口寸法は、見かけ上の先端開口寸法だけでは議論できない部分がある。 実際の疲労亀裂3の破面は複雑に入り組んでおり、立体的な開口寸法を考慮すると先端開口寸法よりも大きい場合もあり得る。また、母材1の内部の開口の方が寸法的に大きくなっている場合もあり得る。更に、実際使用する粒子自体も球形や立方体のような対称的な形状ではなく、一般的には複雑な形をしていることが多い。 このため、例えば見かけ上の疲労亀裂3の開口寸法よりも実態としての疲労亀裂の立体的開口寸法が大きい場合、対象とする疲労亀裂3の開口寸法よりも大きい粒径の粒子を含んでいると、くさび効果を増すことができる。 すなわち、複雑な形状をした粒子の一部が疲労亀裂3の開口に食い込むことでも疲労亀裂3の進展を抑制でき、開閉口の動作による母材1からの圧縮力によって疲労亀裂3内で粒子が砕けること、ならびに砕けた粒子がより小粒径の細かい粒子となって疲労亀裂3の深部に進入することでも疲労亀裂3の進展を抑制できる。 【0118】 本実施形態では、疲労亀裂3が発生した部位にペースト2を塗布する方法を説明したが、ペースト2を、疲労亀裂3の発生が予測される母材1の部位を特定して塗布することもできる。本実施例によるペースト2は、疲労亀裂3の無い箇所での高粘度を実現でき、タレを生じることなく、粒子を均質に保持できるため、あらかじめ疲労亀裂3の発生が予測される部位に塗布しておくことができ、疲労亀裂3が発生した場合には、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂3内に粒子が進入し、疲労亀裂3に進入した粒子のくさび効果によって疲労亀裂3の進展を抑制できる。また、あらかじめ疲労亀裂3の発生が予測される部位に塗布しておくことで、疲労亀裂3が発生した場合には、疲労亀裂口近傍でのせん断速度上昇によって粘度が低下して流動性が増すため、疲労亀裂3内に粒子が進入し、疲労亀裂3内に進入した粒子による疲労亀裂3面の研削作用によって黒色物質を発生させ、疲労亀裂3を目視検出できる。 【0119】 また、母材に対して母材との相対的な方向がほぼ一定の重力加速度あるいはみかけの加速度が作用し、疲労亀裂がほぼその方向に進展する場合、疲労亀裂の進展抑制ペースト又は疲労亀裂の進展検出ペーストには、高比重の粒子を用いたペーストを適用することが好ましい。 図22は疲労亀裂の進展抑制方法及び進展検出方法に高比重の粒子を用いたペーストを適用した状態を示す模式図である。 母材1中を重力加速度あるいはみかけの加速度の方向に進展する疲労亀裂3の開閉口により、あらかじめ母材1に塗布しておいたペースト2のうち、疲労亀裂3の開閉口の影響を受ける範囲にあるペースト4のせん断速度が上がり粘度が低下して流動性を増す。また、ペースト4中に分散した粒子6の比重が相対的に大きいと、重力加速度あるいはみかけの加速度の影響により粒子6には加速度方向の相対的に大きな力が作用して、疲労亀裂3の亀裂先端部近傍7に粒子6が集まりやすくなる。このように、粒子6が亀裂先端部近傍7に集まると、疲労亀裂3の自由な閉口を阻害するくさび効果が高まり、亀裂進展抑制機能や亀裂検出機能を発現しやすくなる。 ここで、みかけの加速度とは、母材1に加速度aが作用した時に、母材1を基準とした系で粒子6に作用する、aと大きさが等しく反対向きの加速度-aのことである。回転する母材1にペースト2を塗布した場合に粒子6に作用する遠心加速度などはその代表例である。 また、相対的に比重の大きい粒子6としては、炭化タングステン(WC、比重15?16)、超硬合金(WC-Co、比重14)、白金属元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)があり、これらの内の1種以上を含んで用いることができる。なお、参考値として、アルミナの比重は約3.9、本発明の実施例で使用したペーストに用いたアルミナ粉の嵩比重は約1.2である。 また、疲労亀裂3の進展方向は、重力加速度あるいはみかけの加速度の方向と完全に一致している必要はなく、重力加速度あるいはみかけの加速度の方向を疲労亀裂3の進展方向のベクトル成分として含んでいればよい。 なお、疲労亀裂3の進展方向、重力加速度あるいはみかけの加速度の方向、ベクトル成分の大きさ等の異なる用途に応じて適宜、適したチクソトロピー指数の油や粒子6の比重は選ぶことができる。 【0120】 図23は疲労亀裂の進展抑制方法及び進展検出方法の他の実施形態を示す説明図である。 図23では、例えば圧力容器や航空機胴体のような構造物1に、荷重5として内圧を付与して疲労亀裂3を開口させた状態でペースト2を塗布するイメージを示している。 この内圧を付与すること、また内圧を時間的に変動させることも荷重5を載荷する定義のうちに入る。 【0121】 図21?図23を用いて進展抑制方法及び進展検出方法の実施形態を示したが、荷重5を載荷しない場合も含めて、母材1の疲労亀裂3の開口寸法の寸法予測値又は実寸法に応じて、粒子の粒径分布が異なるペースト2を塗布することが好ましい。粒子の粒径分布が異なるペースト2を塗布することで、疲労亀裂3内への粒子の進入効果や進入した粒子のくさび効果を高めて、疲労亀裂3の進展抑制を早めたり強めたりすることができる。また、粒子の粒径分布が異なるペースト2を塗布することで、疲労亀裂3内への粒子の進入効果や進入した粒子の疲労亀裂3面の研削作用を高めて、疲労亀裂3内に進入した粒子による黒色物質の発生を早めたり強めたりすることで、疲労亀裂3を早期にかつ効果的に目視検出できる。 また、ペースト2における粒子と流体を選択することにより、疲労亀裂3の進展検出を行うとともに母材1の疲労亀裂3の進展の抑制も行うことができる。 【0122】 本実施形態における疲労亀裂の進展検出方法では、母材1に塗布した進展検出ペーストの疲労亀裂3に対応した表面部分が、疲労亀裂3の進展に伴い変色することにより、疲労亀裂3の進展を判断することができ、目視による疲労亀裂3の検出を容易に行うことができる。 【0123】 また、ペースト2の塗布する厚さは、母材1の板厚に応じて変えることが好ましい。 図24は疲労亀裂の進展抑制方法及び進展検出方法で用いたペーストの塗布厚の規定を示す図である。 ペースト2の塗布する厚さを、母材1の板厚に応じて変えることによって、母材1に発生した疲労亀裂3内に進入するペースト4の量を適正なものとすることができる。 具体的には、図24に示すように、母材1に塗布するペースト2の塗布する厚さは、母材1の板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、板厚が5?200mmの場合には母材1の板厚の1/10以上とし、板厚が200mm以上の場合には20mm以上とする。ペースト2の塗布厚さが小さいと、疲労亀裂3の開閉口により粘度が低下し流動性を増して疲労亀裂3内に流入するペースト4の供給量が不足し、疲労亀裂3の亀裂先端近傍部7までペースト4が十分に行き渡らず、疲労亀裂3の進展抑制作用又は検出作用が制限される場合があるが、ペースト2の塗布厚さの下限を母材1の板厚ごとに規定することによって、母材1に発生した疲労亀裂3内の亀裂先端近傍部7まで進展抑制ペースト又は進展検出ペーストを十分に行き渡らせることができる。 【0124】 また、ペースト2を進展検出ペーストとして用いる場合は、ペースト2の塗布厚さを、母材1の板厚が5mm以下の場合には0.5?2mmとし、板厚が5?50mmの場合には母材1の板厚の1/10?4/10とし、板厚が50?200mmの場合には母材1の板厚の1/10?20mmとし、板厚が200mm以上の場合には20mmとすることがより好ましい。ペースト2の塗布厚さが大きすぎると、疲労亀裂3の亀裂口から黒色物質が流出してもそれがペースト4の外表面に達して視認されるまでに時間がかかり過ぎるか、あるいは外側のペースト4に覆われて外表面まで達せず視認できない場合があるが、塗布厚さの下限に加えて上限も規定することによって、ペースト4の量を適正なものとし、疲労亀裂3の亀裂口から流出した黒色物質を確実に視認することができる。 【0125】 図25はペーストの塗布厚さを変えて行った疲労亀裂進展試験に用いた切欠き付き平板試験片を示す図である。試験片には、JIS_SM490A鋼製の板厚10mmの平板試験片中央部に、Φ12mmの貫通ボルト穴を開け、穴の両端に長さ2mm×幅0.3mmの切欠きを加工したものを用いた。 実施例5は、図26に示すように、平板試験片のボルト穴に実施例3のアルミナペーストを塗布し、ボルト・ナットを締結して試験を行ったものである。また、実施例6及び7は、図27に示すように、平板試験片のボルト穴に実施例3のアルミナペーストを塗布し、ボルト・ナットを締結した後、疲労亀裂3の進展が予想される母材1の表裏面にもアルミナペーストを塗布して試験を行ったものである。なお、実施例6においては、プラスチック板の簡易アプリケータを用いて、ペースト厚さが約0.7mm(母材1の板厚の7%)となるように塗布し、実施例7においては、プラスチック板の簡易アプリケータを用いて、ペースト厚さが約1.4mm(母材1の板厚の14%)となるように塗布した。 比較例3は、図28に示すように、アルミナペーストを塗布せず、平板試験片のボルト穴にボルト・ナットを締結して試験を行ったものである。 試験機には、電気-油圧サーボ式疲労試験機(島津製作所製、動的容量10tonf)を用い、試験条件は、ボルト穴及び切欠きの無い断面における公称応力レンジΔσ_(n)=78MPa、応力比R=0(完全片振り)、荷重周波数4.2Hzとした。 【0126】 (試験結果) 図29は実施例5?7と比較例3についての試験結果を示す表である。また、図30は実施例5?7の疲労試験終了後にアセトンにより超音波洗浄した破面を示す写真であり、図30(a)は実施例5の破面を、図30(b)は実施例6の破面を、図30(c)は実施例7の破面をそれぞれ示す。 比較例3では、破断寿命N_(f)=721,812回となった。 【0127】 実施例5では、破断寿命N_(f)=1,345,990回に延伸し、比較例3に対して約1.9倍となった。また、進展した疲労亀裂3により明瞭に黒発色した。 【0128】 実施例6では、破断寿命N_(f)=1,297,000回に延伸し、比較例3に対して約1.8倍となった。また、進展した疲労亀裂3により明瞭に黒発色した。 【0129】 実施例7では、破断寿命N_(f)=2,012,260回に延伸し、比較例3に対して約2.8倍、実施例5に対して約1.8倍となり、母材1の表裏面にアルミナペーストを塗布した効果が認められた。また、進展した疲労亀裂3により明瞭に黒発色した。 さらに、図30に示すように、疲労亀裂3内にペースト4が流入し粒子6がくさびとして作用した部分では、研削された母材1の黒色微粉末や粉砕された粒子6の砕片が亀裂面に圧着し、周囲の母材1のままの明灰色の破面とは明らかに異なる黒っぽい暗色の破面を呈しているが、疲労亀裂3の亀裂先端近傍部7が通過する板厚中央付近を見ると、実施例5及び6に比べ、実施例7では暗色の破面の範囲が左右により広がっており、母材1の表裏面に厚さ1.4mmで塗布したペースト4が疲労亀裂3内に流入し、亀裂先端近傍部7が通過する板厚中央付近まで十分に供給されていたことがわかる。従って、板厚10mmの母材1に対し、実施例6のペースト塗布厚さ0.7mmではやや不十分で、実施例7のペースト塗布厚さ1.4mm(規定:1/10t以上)なら十分であるということができる。 【産業上の利用可能性】 【0130】 本発明は、船舶、海洋構造物、橋梁、圧力容器、車両、航空機又は工作機械等の構造物において、疲労亀裂の発生及び進展が懸念される箇所並びに疲労亀裂の発生及び進展が認められた箇所に対して適用することができる。 【符号の説明】 【0131】 1 母材 2 ペースト 3 疲労亀裂 4 低粘度のペースト 5 荷重 6 粒子 7 亀裂先端近傍部 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 母材の疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストであって、前記進展抑制ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたことを特徴とする疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項2】 母材の疲労亀裂の進展を抑制する進展抑制ペーストであって、前記進展抑制ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展抑制ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展抑制ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項3】 前記油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項4】 前記油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項5】 前記油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペースト。 【請求項6】 請求項1から請求項5のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペーストのうち、前記母材の硬度以上の硬度を有する前記粒子が混合されている進展抑制ペーストを、前記疲労亀裂の発生が予測される前記母材の部位を特定して塗布することを特徴とする疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項7】 請求項1から請求項5のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制ペーストのうち、前記母材の硬度以上の硬度を有する前記粒子が混合されている進展抑制ペーストを、前記疲労亀裂が発生している前記母材の部位に塗布することを特徴とする疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項8】 前記疲労亀裂の開口を増大させる方向の荷重を、前記母材を含む構造物に載荷して前記進展抑制ペーストを塗布することを特徴とする請求項7に記載の疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項9】(削除) 【請求項10】(削除) 【請求項11】 前記進展抑制ペーストの塗布する厚さを、前記母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項12】 前記進展抑制ペーストの塗布する前記厚さを、前記母材の前記板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、前記板厚が5?200mmの場合には前記母材の前記板厚の1/10以上とし、前記板厚が200mm以上の場合には20mm以上としたことを特徴とする請求項11に記載の疲労亀裂の進展抑制方法。 【請求項13】 母材の疲労亀裂の進展を検出する進展検出ペーストであって、前記進展検出ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展検出ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに210(Pa・s)以上、せん断速度が1(1/s)のときに32?197(Pa・s)としたことを特徴とする疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項14】 母材の疲労亀裂の進展を検出する進展検出ペーストであって、前記進展検出ペーストが、粒子と油とを混合したチクソトロピック性を有したペーストであり、前記粒子が、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、炭化ジルコニウム、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン、超硬合金、白金属元素、鉄、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、イットリア、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、酸化チタン、銅、銅合金、ダイヤモンド、炭素、及び炭素繊維のうちの1種以上を含むメッシュサイズ20μmのふるいを通る10?20μmの粒径の粒子であり、前記進展検出ペーストの前記チクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であり、前記進展検出ペーストのみかけ粘度η_(P)を、せん断速度が10(1/s)のときに5.1?31(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.8?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項15】 前記粒子を、淡色又は透明の前記アルミナを含むセラミックス粒子としたことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項16】 前記油のチクソトロピック性を表すチクソトロピー指数TIが、0.6?1.2であることを特徴とする請求項13から請求項15のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項17】 前記油のみかけ粘度η_(G)を、せん断速度が0.1(1/s)のときに140(Pa・s)以上とすることを特徴とする請求項13から請求項16のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項18】 前記油の前記みかけ粘度η_(G)を、前記せん断速度が1(1/s)のときに21?197(Pa・s)、せん断速度が100(1/s)のときに0.5?4.7(Pa・s)としたことを特徴とする請求項13から請求項17のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペースト。 【請求項19】 請求項13から請求項18のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペーストのうち、前記母材の硬度以上の硬度を有する前記粒子が混合されている進展検出ペーストを、前記疲労亀裂の発生が予測される前記母材の部位を特定して塗布することを特徴とする疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項20】 請求項13から請求項18のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出ペーストのうち、前記母材の硬度以上の硬度を有する前記粒子が混合されている進展検出ペーストを、前記疲労亀裂の発生している前記母材の部位に塗布することを特徴とする疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項21】 前記疲労亀裂の開口を増大させる方向の荷重を、前記母材を含む構造物に載荷して前記進展検出ペーストを塗布することを特徴とする請求項20に記載の疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項22】(削除) 【請求項23】(削除) 【請求項24】 前記母材に塗布した前記進展検出ペーストの前記疲労亀裂に対応した表面部分が、前記疲労亀裂の進展に伴い変色することにより、疲労亀裂の進展を判断することを特徴とする請求項19から請求項21のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項25】 前記進展検出ペーストの塗布する厚さを、前記母材の板厚に応じて比例的に変えたことを特徴とする請求項19から請求項21又は請求項24のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項26】 前記進展検出ペーストの塗布する前記厚さを、前記母材の前記板厚が5mm以下の場合には0.5mm以上とし、前記板厚が5?200mmの場合には前記母材の前記板厚の1/10以上とし、前記板厚が200mm以上の場合には20mm以上としたことを特徴とする請求項25に記載の疲労亀裂の進展検出方法。 【請求項27】 前記進展検出ペーストを用いて、前記母材の前記疲労亀裂の進展の抑制も行うことを特徴とする請求項19から請求項21又は請求項24から請求項26のいずれかに記載の疲労亀裂の進展検出方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-06-26 |
出願番号 | 特願2014-194733(P2014-194733) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(B23P)
P 1 651・ 121- YAA (B23P) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山本 忠博 |
特許庁審判長 |
栗田雅弘 |
特許庁審判官 |
平岩正一 小川悟史 |
登録日 | 2018-04-13 |
登録番号 | 特許第6319844号(P6319844) |
権利者 | 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 |
発明の名称 | 疲労亀裂の進展抑制ペースト、進展抑制方法、進展検出ペースト、及び進展検出方法 |
代理人 | 金子 一郎 |
代理人 | 太田 貴章 |
代理人 | 清水 善廣 |
代理人 | 辻田 幸史 |
代理人 | 阿部 伸一 |
代理人 | 太田 貴章 |
代理人 | 金子 一郎 |
代理人 | 辻田 幸史 |
代理人 | 清水 善廣 |
代理人 | 阿部 伸一 |