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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1355926
異議申立番号 異議2018-700457  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-06 
確定日 2019-08-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6243686号発明「杜仲加工物および生姜加工物を含有する経口組成物、及び杜仲の香り増強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6243686号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の〔1-2〕、3、4について訂正することを認める。 特許第6243686号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6243686号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成25年9月30日に出願され、平成29年11月17日にその特許権の設定登録がされ、平成29年12月6日に特許掲載公報が発行された。
本件異議申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年6月6日:特許異議申立人 甲斐 若菜(以下、「異議申立人」という。)による請求項1ないし4に係る特許に対する異議の申立て
平成30年8月21日付け:取消理由通知書
平成30年10月22日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年10月29日:訂正があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
平成30年11月30日:異議申立人による意見書の提出
平成31年1月24日:取消理由通知書(決定の予告)
平成31年3月29日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成31年4月19日:訂正拒絶理由通知書
令和1年5月23日:特許権者による意見書及び手続補正書の提出
その後、当審は、令和1年5月30日付けで訂正があった旨の通知を行い、期間を指定して異議申立人に意見書を提出する機会を与えたが何らの応答もなかった。

第2 訂正の請求
1 訂正の内容
令和1年5月23日付け特許権者による手続補正書による補正は、訂正請求書の請求の理由及び添付した訂正特許請求の範囲を補正するものであるところ、当該補正は、訂正拒絶理由で新規事項の追加に該当すると指摘された事項を削除するのみのものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
そして、上記手続補正書により補正された平成31年3月29日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の事項よりなる(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「杜仲加工物および生姜科植物加工物を含有する経口組成物」とあるのを、
「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物であって、
前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である経口組成物」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「(ただし、生薬の茯苓、地黄、牛膝、防風、芍薬、桂皮、甘草、細辛、当帰、川きゅう、唐独活、桑寄生、党参、杜仲、秦ぎょう、及び生姜からの抽出物からなる鎮痛作用を有する漢方薬、および呉茱萸3-12重量部、人参3-12重量部、沢瀉3-12重量部、杜仲10-20重量部、生姜2-15重量部、及び大棗5-20重量部を含有する高血圧改善用漢方薬を除く)。」とあるのを、
「(ただし、生薬の茯苓、地黄、牛膝、防風、芍薬、桂皮、甘草、細辛、当帰、川きゅう、唐独活、桑寄生、党参、杜仲、秦ぎょう、及び生姜からの抽出物からなる鎮痛作用を有する漢方薬、
呉茱萸3-12重量部、人参3-12重量部、沢瀉3-12重量部、杜仲10-20重量部、生姜2-15重量部、及び大棗5-20重量部を含有する高血圧改善用漢方薬、
(a)下記の一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物の1種又は2種以上と、(b)ウーロン茶、プアール茶、焙煎ハトムギ、杜仲の葉、ジャスミンの花からなる群から選択される抽出物を含有することを特徴とする錠剤:
【化1】

【化2】

(但し、両式中、R^(1)は水素原子または水酸基もしくはOCH_(3)基、R^(2)は水素原子または糖残基である。)、
焙煎した桑葉と、下記漢方由来素材(a)とを含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶、
下記漢方由来素材(a)を含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶、
野草類、野菜類、果実類、きのこ類及び海藻類の抽出液又は搾汁液を、アルコール発酵及び乳酸発酵して得られる発酵物を有効成分として含有することを特徴とするミネラル吸収促進剤、
(a)チアミン又はその塩、(b)多価フェノール化合物及び(c)トウキ、カンゾウ、クコシ、トチュウ、エゾウコギから選ばれる一種又は二種以上を配合することを特徴とする飲料組成物、
乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉を含有することを特徴とするノニ葉茶、
乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉、及び、ドクダミ、杜仲、アガリクス茸、霊芝、人参、ウコン、桑の葉、ビワの葉、焙煎した大麦(麦茶)、ソバの実、ハトムギの種子、枸杞実から選ばれる少なくとも1種を含有するノニ葉茶を抽出した、ノニ葉茶の抽出茶液、
および
米糠、柿葉、紫蘇、どくだみ、杜仲、ウコン、クローブ、シナモンおよび甜茶よりなる群から選ばれた食品素材の少なくとも1種以上のエキスを含有する培地で乳酸菌を培養して得られることを特徴とする乳酸菌発酵物
を除く)。」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「杜仲加工物に生姜科植物加工物を混合する工程を含む、杜仲の香りの増強方法」とあるのを、
「杜仲加工物に生姜科植物加工物を混合する工程を含み、
前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である、
杜仲の香りの増強方法」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「杜仲加工物に生姜科植物加工物を配合する工程を含む、杜仲加工物を含有する錠剤の崩壊性向上方法」とあるのを、
「杜仲加工物に生姜科植物加工物を配合する工程を含み、
前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である、
杜仲加工物を含有する錠剤の崩壊性向上方法」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の「杜仲加工物」及び「生姜科植物加工物」に関して、「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する」ことを限定するとともに、「杜仲加工物」は「少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり」、「生姜科植物加工物」は「少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である」ことをそれぞれ限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本願明細書の段落【0018】、【0023】ないし【0026】、【0028】、【0035】、【0036】及び【0042】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのように訂正前の請求項1における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の「経口組成物」から除くとした組成物に、
「(a)下記の一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物の1種又は2種以上と、(b)ウーロン茶、プアール茶、焙煎ハトムギ、杜仲の葉、ジャスミンの花からなる群から選択される抽出物を含有することを特徴とする錠剤:
【化1】

【化2】

(但し、両式中、R^(1)は水素原子または水酸基もしくはOCH_(3)基、R^(2)は水素原子または糖残基である。)、
焙煎した桑葉と、下記漢方由来素材(a)とを含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶、
下記漢方由来素材(a)を含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶、
野草類、野菜類、果実類、きのこ類及び海藻類の抽出液又は搾汁液を、アルコール発酵及び乳酸発酵して得られる発酵物を有効成分として含有することを特徴とするミネラル吸収促進剤、
(a)チアミン又はその塩、(b)多価フェノール化合物及び(c)トウキ、カンゾウ、クコシ、トチュウ、エゾウコギから選ばれる一種又は二種以上を配合することを特徴とする飲料組成物、
乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉を含有することを特徴とするノニ葉茶、
乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉、及び、ドクダミ、杜仲、アガリクス茸、霊芝、人参、ウコン、桑の葉、ビワの葉、焙煎した大麦(麦茶)、ソバの実、ハトムギの種子、枸杞実から選ばれる少なくとも1種を含有するノニ葉茶を抽出した、ノニ葉茶の抽出茶液、
および
米糠、柿葉、紫蘇、どくだみ、杜仲、ウコン、クローブ、シナモンおよび甜茶よりなる群から選ばれた食品素材の少なくとも1種以上のエキスを含有する培地で乳酸菌を培養して得られることを特徴とする乳酸菌発酵物」を追加するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、「経口組成物」から除かれる組成物を追加するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのように訂正前の請求項1における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、「杜仲加工物」に対して「杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり」、「生姜科植物加工物」に対して「少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である」ことをそれぞれ限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、本願明細書の段落【0018】、【0023】ないし【0026】、【0035】、【0036】及び【0042】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、上記アのように訂正前の請求項3における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、「杜仲加工物」に対して「杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり」、「生姜科植物加工物」に対して「少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である」ことをそれぞれ限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、本願明細書の段落【0018】、【0023】ないし【0026】、【0035】、【0036】及び【0042】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記アのように訂正前の請求項4における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-2〕、3、4について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明
本件訂正により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1」ないし「訂正発明4」という。また、これらを総称して「訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物であって、
前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である経口組成物
(ただし、生薬の茯苓、地黄、牛膝、防風、芍薬、桂皮、甘草、細辛、当帰、川きゅう、唐独活、桑寄生、党参、杜仲、秦ぎょう、及び生姜からの抽出物からなる鎮痛作用を有する漢方薬、
呉茱萸3-12重量部、人参3-12重量部、沢瀉3-12重量部、杜仲10-20重量部、生姜2-15重量部、及び大棗5-20重量部を含有する高血圧改善用漢方薬、
(a)下記の一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物の1種又は2種以上と、(b)ウーロン茶、プアール茶、焙煎ハトムギ、杜仲の葉、ジャスミンの花からなる群から選択される抽出物を含有することを特徴とする錠剤:
【化1】

【化2】

(但し、両式中、R^(1)は水素原子または水酸基もしくはOCH_(3)基、R^(2)は水素原子または糖残基である。)、
焙煎した桑葉と、下記漢方由来素材(a)とを含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶、
下記漢方由来素材(a)を含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶、
野草類、野菜類、果実類、きのこ類及び海藻類の抽出液又は搾汁液を、アルコール発酵及び乳酸発酵して得られる発酵物を有効成分として含有することを特徴とするミネラル吸収促進剤、
(a)チアミン又はその塩、(b)多価フェノール化合物及び(c)トウキ、カンゾウ、クコシ、トチュウ、エゾウコギから選ばれる一種又は二種以上を配合することを特徴とする飲料組成物、
乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉を含有することを特徴とするノニ葉茶、
乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉、及び、ドクダミ、杜仲、アガリクス茸、霊芝、人参、ウコン、桑の葉、ビワの葉、焙煎した大麦(麦茶)、ソバの実、ハトムギの種子、枸杞実から選ばれる少なくとも1種を含有するノニ葉茶を抽出した、ノニ葉茶の抽出茶液、
および
米糠、柿葉、紫蘇、どくだみ、杜仲、ウコン、クローブ、シナモンおよび甜茶よりなる群から選ばれた食品素材の少なくとも1種以上のエキスを含有する培地で乳酸菌を培養して得られることを特徴とする乳酸菌発酵物
を除く)。
【請求項2】
錠剤である請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
杜仲加工物に生姜科植物加工物を混合する工程を含み、
前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である、
杜仲の香りの増強方法。
【請求項4】
杜仲加工物に生姜科植物加工物を配合する工程を含み、
前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である、
杜仲加工物を含有する錠剤の崩壊性向上方法。」

第4 取消理由(決定の予告)について
1 取消理由(決定の予告)の概要
請求項1ないし4に係る特許に対して当審が平成31年1月24日付け取消理由(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

[理由1]本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

[理由2]本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



(1)請求項1
本件特許発明1は、甲1発明、甲2発明または甲5発明であるか、甲1発明、甲2発明または甲5発明に基いて当業者が容易になし得たものである。

(2)請求項2
本件特許発明2は、甲1発明または甲2発明であるか、甲1発明または甲2発明に基いて当業者が容易になし得たものである。

[理由3]本件特許明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



請求項2及び請求項4には、「経口組成物」が「錠剤」であることが記載されている。
しかし、請求項2が引用する請求項1及び請求項4には、杜仲加工物及び生姜科植物加工物が「希釈液」や「濃縮液」である場合も含むように記載されているところ、発明の詳細な説明において杜仲加工物及び生姜科植物加工物が「希釈液」や「濃縮液」である場合に、どのように錠剤を得るのか不明である。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が出願時の技術常識を考慮しても本件特許発明2及び4を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

[理由4]本件特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



(1)本件特許発明2及び4には、「経口組成物」が「錠剤」であることが特定されているとともに、本件特許発明2が引用する本件特許発明1及び本件特許発明4には、杜仲加工物及び生姜科植物加工物が「希釈液」や「濃縮液」である場合も含むように特定されている。
しかし、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「希釈液」や「濃縮液」である杜仲加工物及び生姜科植物加工物を含有する「錠剤」が記載されていないから、本件特許発明2及び本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

(2)本件特許明細書の発明の詳細な説明における実施例に関する記載(本件特許明細書の段落【0034】ないし【0055】)において、杜仲加工物として、焙煎した杜仲茶葉(本件特許明細書の段落【0035】(製造例1)の記載を参照。)のみが記載されており、生姜加工物として、金時ショウガ末(金時生姜の根茎を乾燥後、粉砕し粉末化したもの)(本件特許明細書の段落【0036】及び【0042】の記載を参照。)のみが記載されており、香りの増強、及び錠剤の崩壊性の向上についても、杜仲加工物として焙煎した杜仲茶葉を用いた場合、及び生姜科植物加工物として金時生姜末を用いた場合について課題が解決できることが示されているのみであって、それ以外の杜仲加工物と生姜科植物加工物を用いた場合において課題が解決できることについて記載や示唆がされていない。
そして、技術常識から、杜仲茶葉を焙煎するか否か、及び生姜科植物の種類や加工方法により香気成分が大きく変化し得ると認められる。例えば、金時ショウガに含まれる何らかの成分が杜仲の香りの増強、錠剤の崩壊性向上に寄与するとしても、他の生姜科植物や溶媒抽出液等にも当該成分が含まれているとは限らない。
よって、本件特許発明1ないし4において特定された全ての杜仲加工物及び生姜科植物加工物において課題が解決できるとは認められない。
よって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

(当審注:甲号証については、下記「2 甲号証一覧」を参照。また、「甲第○号証」を「甲○」、「甲○に記載された発明」を「甲○発明」及び「本件特許の請求項○に係る発明」を「本件特許発明○」という。)

2 甲号証一覧
異議申立人が提出した甲号証は以下のとおりのものである。
甲1:特開2003-310213号公報
甲2:特開2004-292404号公報
甲3:特開2012-12363号公報
甲4:特開2004-305089号公報
甲5:特開2003-289834号公報
甲6:株式会社大日堂 ”「熟成 野草酵素 太陽の恵み」11月24日 新発売!”2009年11月16日
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000001814.html)
甲7:大正製薬株式会社 ”もっと頑張りたい時に!医薬部外品ミニドリンク剤「ゼナF0-III」新発売”、2005年11月14日
(http://www.taisho.co.jp/company/release/2005/05_1114a-j.htm)
甲8:Gigazine ”烏龍茶+杜仲茶+ウコン茶=「キリン分解茶」を飲んでみた”、2007年6月14日
(https://gigazine.net/news/20070614 bunkaicha)
甲9:佐藤製薬株式会社 ニュースリリース、”「ユンケル滋養液ゴールドα」(指定医薬部外品)新発売”、平成23年9月26日
(http://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2011/110901_1/
甲10:国際公開第2006/126476号
甲11:特開平6-107556号公報
甲12:特開平9-227394号公報
甲13:特開平4-370066号公報
甲14:特開2010-279252号公報
甲15:特開2007-135580号公報
甲16:特開平7-135903号公報
甲17:特開2004-73063号公報
甲18:スプリアント 他2名「大豆テンペの香りプロフィルの発酵温度による変化とその主成分分析」、九大農学芸誌、1991年、第46巻、第1・2号 p.17-22
(https://catalog.lib.kyusyu-u.ac.jp/opac_download_md/23361/p017.pdf)
甲19:平良 昭 他11名「ビール製造工程における香気成分の変化について」、南方資源利用技術研究会誌、1988年、Vol.4 No.1
(http://okinawa-repo.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/20.500.12001/13983/1/vol14No1p61.pdf)
甲20:折居 千賀「菌が作るお茶の科学」、生物工学会誌、2010年、第9号、p.489
(https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8809_biomedia_5.p)
甲21:特開平3-240472号公報
甲22:鎌田靖弘 他1名「高品質・低コスト製品を目指した粉体加工技術に関する研究」、沖縄県工業技術センター研究報告書、2006年、第8号、p17-24
(http://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/kogyo/kikaku/kenkyuhoukoku/documents/2005_p017_web.pdf)
甲23:ウィキペディア、ウコン[平成30年11月30日検索]
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B3%E3%83%B3)

3 甲1、2及び5の記載
(1)甲1
ア 甲1に記載された事項
取消理由において引用された甲1には、「痩身用食品」に関して次のような記載がある。
(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)

1a)「【請求項1】(a)下記の一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物の1種又は2種以上と、(b)ウーロン茶、プアール茶、焙煎ハトムギ、杜仲の葉、ジャスミンの花からなる群から選択される抽出物を含有することを特徴とする痩身用食品。
【化1】

【化2】

(但し、両式中、R^(1)は水素原子または水酸基もしくはOCH_(3)基、R^(2)は水素原子または糖残基である。)」

1b)「【0012】
【発明の実施の形態】本発明で用いる痩身用飲食物に含有される前記一般式(1)で示される化合物は、例えばラズベリー果実などに含有されている成分でもあり、式中のR^(1)が水素原子でR^(2)が水素原子である化合物のラズベリーケトンは特徴的な芳香を持ち、また式中のR^(1)がOCH_(3)基でR^(2)は水素原子である化合物のジンゲロンは苦味質を有する物質である。これら化合物は、一部は本発明者によりメラニン生成抑制作用を有する皮膚化粧料として既に提案されているものである(特開2000-239143号公報)。しかし、これらには脂肪分解作用を有していることは何ら記載も示唆もなされていない。また、含有量は香料のごく一部に用いられている成分に過ぎず、極めて少量であり、本発明の食品における有効量を導き出せるものではない。
【0013】また、ラズベリーケトンやジンゲロン及びその誘導体が脂肪組織に蓄積された脂肪の分解を促進、肥満の抑制、又は肥満体質の改善に有効であることを見出しているが(特開2000-169325号公報)、上記の様にラズベリーケトンやジンゲロンは特有の苦み、えぐ味を有しているために含有量や汎用性の点で満足できるものではなかった。
【0014】そこで、前記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物と特定の抽出物を含有することで、苦味やえぐ味が抑えられ、容易に摂取することできるのが本発明の特徴である。」

1c)「【0024】本発明で用いる抽出物は、ウーロン茶、プアール茶、焙煎ハトムギ、杜仲の葉、ジャスミンの花、バンザクロ(グアバの実)、大麦、マテ茶、ルイボスティー、陳皮、決明子、山査子、大豆胚芽、生姜、高麗人参、黄杞茶、ユッカ(ユッカシデゲラ)から得られる抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上である。
【0025】これらの抽出物はの、各植物全草又はその葉、実(種子の脱脂物が好ましい)、樹皮、根、枝等、又はそれらを醗酵させたものの1又は2以上を乾燥し、粉末化する、若しくは、乾燥し、又は乾燥することなく粉砕した後、常温又は加温下に、溶剤により抽出するか、又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることができる。ここで、使用される溶剤は特に限定されず、例えば水、若しくはメタノール、エタノール、プロパノール、1,3-ブチレングリコール等の低級アルコール、ベンゼン、エチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、又はこれら溶媒の1種若しくは2種以上の混液により抽出することができる。
【0026】前記抽出物が液状の場合、そのまま食品に含有することも可能であるが、これを凍結乾燥法やスプレ-ドライ法等で粉末化して使用するほうが望ましい。また、液液分配、吸着クロマトグラフィー等の手段で精製して、液状のもの又は粉末化したものを含有することも可能である。」

1d)「【0042】本発明の食品の用途は、医薬用途、特定保険用食品用途、飼料用途など特に限定することなく使用することができる。」

1e)「【0044】本発明の食品の種類としては、特に制限されない。例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、チューインガム、グミゼリー、チョコレート、キャンディ、飲料、スープ、アイスクリーム、麺類、ベーカリー食品などに含有することができる。また、食品の形態は、特に限定されるものではなく、ジェル、粉末、液体、顆粒、クリーム状、ペースト状、固形などにすることができる。」

1f)「【0052】実施例2
下記表3の処方組成からなる錠剤(チュアブルタイプ)を常法により調製した。
【0053】[表3]
原料 含有量(質量%)
-------------------------------------------------
ラズベリーケトン 5.6
ウーロン茶(乾物換算) 0.72
プアール茶(乾物換算) 0.2
焙煎ハトムギ(乾物換算) 0.2
杜仲葉(乾物換算) 0.16
ジャスミン花(乾物換算) 0.16
バンザクロ(乾物換算) 0.11
大麦(乾物換算) 0.08
マテ茶(乾物換算) 0.08
ルイボスティー(乾物換算) 0.08
陳皮(乾物換算) 0.06
決明子(乾物換算) 0.05
山査子(乾物換算) 0.03
大豆胚芽(乾物換算) 0.03
生姜(乾物換算) 0.02
高麗人参エキス(乾物換算) 0.01
黄杞茶エキス(乾物換算) 0.01
ユッカエキス(乾物換算) 0.01
ギムネマ抽出エキス(乾物換算) 1.0
ユッカサポニン(乾物換算) 1.0
ハトムギエキス末(乾物換算) 1.0
L-ヒスチジン 0.5
フォルスコリ末(乾物換算) 0.1
ビタミンC 34.5
ヒアルロン酸 0.1
ビタミンB6 0.1
ビタミンP 0.5
イノシトール 11.2
マルチトール 20.5
スクロース 0.5
鮭白子抽出物(DNA Na) 0.1
酵母抽出物(RNA) 0.1
賦形剤(セオラス) 残余
香味料(ラズベリーフレーバー) 5.7
------------------------------------------------
合計 100.0

1g)上記1f)には、「ラズベリーケトン5.6質量%、杜仲葉(乾物換算)0.16質量%及び生姜(乾物換算)0.02質量%を含有する錠剤」が記載されている。

1h)上記1c)には、杜仲の葉、生姜の加工方法に関して、杜仲葉抽出物は、その葉を粉末化する、若しくは粉砕した後、溶剤により抽出した液体であるか、液体をさらに粉末化したものであり、生姜抽出物は、その根を粉末化する、若しくは粉砕した後、溶剤により抽出した液体であるか、液体をさらに粉末化したものであることについて示唆されている。

イ 甲1発明
上記アから、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「ラズベリーケトン5.6質量%、杜仲葉(乾物換算)0.16質量%及び生姜(乾物換算)0.02質量%を含有する錠剤。」

(2)甲2
ア 甲2に記載された事項
取消理由において引用された甲2には、「糖質吸収抑制剤および食品」に関して次のような記載がある。

2a)「【請求項1】
焙煎した桑葉と、下記漢方由来素材(a)とを含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤。
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種。
山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶」

2b)「【0023】
杜仲茶は、トチュウ科トチュウの葉である。」

2c)「【0030】
生姜は、ショウガ科の植物であり、その根茎を用いる。」

2d)「【0047】
本発明の糖質吸収抑制剤は、上記原料をそのまま粉砕などしてブレンドした粉砕物や、これらを水、アルコールなどの極性溶媒で抽出した抽出物として用いることができる。
あるいは、上記原料となる葉や種実などの植物組織を、水や各種溶質を含有する溶媒(例えば牛乳、砂糖水、フレーバー水等)などの水性媒体で抽出して得られる。水性媒体は、適宜加温してもよい。なお、水性媒体による抽出は、他の成分を加えた状態で抽出してもよい。
ここで、抽出物とする場合には、抽出方法として、溶媒を糖質吸収抑制剤に添加し、攪拌した後、ろ過する等の方法等が挙げられる。この時、溶媒の温度は好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上が抽出効率の点で望ましい。また、溶媒添加量は、糖質吸収抑制剤の20?40倍重量、更に好ましくは30倍重量とすることが抽出効率の点で望ましい。
【0048】
また、糖質吸収抑制剤の最終剤形としては、錠剤、軟膏、クリーム、エキス、粉末、顆粒、ペースト、香料など、適宜の形態で用いればよい。
【0049】
例えば、糖質吸収抑制剤として、糖質吸収抑制粉末の製造は次のようにして行われる。
まず、予め焙煎した桑葉、漢方由来素材及び必要に応じて副原料を準備する。次に、これらを粉体混合することにより、糖質吸収抑制粉末を得る。なお、基材茶を含有させる場合には、上記焙煎した桑葉、漢方由来素材と共に粉体混合すればよい。」

2e)「【0060】
〈実施例1?4、比較例1?3〉
《糖質吸収抑制剤の調製》
表1に示す組成で、基材茶(b)、漢方由来素材(a)、桑葉(c)を準備し、これらの合計10重量部に、92℃の蒸留水700重量部を添加し、9分間撹拌しながら抽出し、140メッシュの金網によりろ過した。これを約20℃に冷却後、コーヒー用ペーパーフィルター(孔径約20μm)を用いてろ過した。次に、ろ紙(孔径約1μm)を用いてろ過し、缶に190g充填後、巻き締めし、131℃10分レトルト殺菌して流水で約20℃まで冷却することにより糖質吸収抑制剤を得た。
なお、表1中の焙煎桑葉は、ニーダー式回転焙煎機を用いて、70℃55分の条件で焙煎したものである。」

2f)「【0065】
【表1】



2g)上記2f)の【表1】には、漢方由来素材として、比較例2においては、蕃柘榴12.25%、杜仲茶7.70%及び生姜0.05%を含むこと、比較例3においては、蕃柘榴13.50%、杜仲茶8.50%及び生姜0.06%を含むことが記載されている。

イ 甲2発明
上記アから、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。

「漢方由来素材としての、蕃柘榴12.25%、杜仲茶7.70%と生姜0.05%、あるいは蕃柘榴13.50%、杜仲茶8.50%及び生姜0.06%を含有する素材に蒸留水を添加して攪拌しながら抽出し、ろ過して缶に充填後、レトルト殺菌して冷却することにより得たものである糖質吸収抑制剤。」

(3)甲5
ア 甲5に記載された事項
取消理由において引用された甲5には、「ノニ葉茶およびその抽出茶液」に関して次のような記載がある。

3a)「【請求項3】さらにドクダミ、杜仲、アガリクス茸、霊芝、人参、ウコン、桑の葉、ビワの葉、焙煎した大麦(麦茶)、ソバの実、ハトムギの種子、枸杞実から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするノニ葉茶。
【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1項に記載のノニ葉茶を抽出して得られることを特徴とする抽出茶液。」

3b)「【0030】これらの成分の配合割合は特に限定されないが、例えば表2に示した配合割合をあげることができる。これらの成分の配合によりノニ葉茶を飲みやすくするだけでなく、これらの素材に含有される有効成分を同時に摂取することができる。」

3c)「【0031】
【表2】



3d)「【0032】上記条件のもとで配合した各原料を秤量してV型混合機などの混合機で混合して、所望の風味を持った組成のノニ葉茶を製造することができる。なお、このようにして混合したノニ葉茶は必要により粉砕して粒度を小さくして、その1ないし10gを通液性の袋(例えば不織布)袋に充填してティーバッグの形態にしてもよい。
【0033】さらに、本発明のノニ葉茶から抽出茶液を調製する方法は、特に限定されないが、例えば水100部(重量)に対してノニ葉茶1部を添加し5分間沸騰させて抽出して抽出ノニ葉茶液を得ることができる。
【0034】また、配合の異なる抽出ノニ茶液をそれぞれ必要に応じて異なる濃度に濃縮して、2種以上の濃縮ノニ葉茶液を混合してブレンドしたノニ葉茶液を得ることができる。」

3e)「【0043】
【発明の効果】熱帯植物ノニを乾燥あるいは乾燥後焙煎することによって風味を改良してノニの葉をお茶のように飲みやすくする事ができた。
【0044】また、ノニ葉を主成分としてこれに緑茶、番茶、ウーロン茶、甜茶、紅茶などのお茶の1種を配合することによりさらにノニ葉茶の風味を改良して飲みやすくすることができた。
【0045】さらに、ドクダミ、杜仲、アガリクス茸、霊芝、人参、ウコン、桑の葉、ビワの葉、焙煎した大麦(麦茶)、ソバの実、ハトムギの種子、枸杞実から選ばれる少なくとも1種を含有することによって健康によいこれらの成分同時に摂取できるようにした。
【0046】また、これらのいずれかのノニ葉茶をあらかじめ抽出することによって簡単に飲む事のできる抽出茶液。」

3f)上記3c)の表2には、抽出茶液の原料において、杜仲が3.5?30重量%とウコンが3.5?30重量%配合されていることが記載されている。

イ 甲5発明
上記アから、甲5には次の発明が記載されている。
「乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉が30?80重量%、杜仲が3.5?30重量%とウコンが3.5?30重量%配合されているノニ葉茶及びその抽出茶液。」(以下、「甲5発明」という。)、

4 [理由1]及び[理由2]についての判断
(1)甲1を主引用例とした場合
ア 訂正発明1
訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「錠剤」は、訂正発明1における「経口生成物」に相当する。
甲1の上記3(1)ア 1a)及び1c)における【請求項1】及び段落【0024】ないし【0026】の記載を参酌すると、甲1発明における「杜仲葉」は、杜仲の葉の抽出物又はその乾燥末のことであり、甲1発明における「生姜」は、その根を用いることが一般的であるから、生姜の根の粉砕物、乾燥末又は生姜の抽出物の乾燥末のことであると解される。
そうすると、甲1発明における「杜仲葉」は訂正発明1における「杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒」である「杜仲加工物」に相当し、甲1発明における「生姜」は訂正発明1における「少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒」である「生姜科植物加工物」に相当する。
そして、甲1発明における「ラズベリーケトン5.6質量%、杜仲葉(乾物換算)0.16質量%及び生姜(乾物換算)0.02質量%を含有する錠剤」は、杜仲葉(乾物換算)100重量部に対して、生姜(乾物換算)の重量部は、0.02/0.16×100=12.5重量部と換算できるから、訂正発明1における「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物」に相当する。
また、訂正発明1において「除く」とされる事項について、甲1発明における「ラズベリーケトン」は、上記3(1)ア 1b)の甲1の記載からみて、訂正発明1における「一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物の1種又は2種以上」に相当し、甲1発明における「杜仲葉」は、訂正発明1における「杜仲の葉」に相当する。
そして、甲1発明における「杜仲葉」は、錠剤の原料として使用するにあたり粉末化すること、及び粉末化するにあって上記3(1)ア 1c)の甲1の記載にみられるように、その抽出物を凍結乾燥法やスプレ-ドライ法等により粉末化することは技術常識である。
そうすると、甲1発明における「ラズベリーケトン5.6質量%、杜仲葉(乾物換算)0.16質量%及び生姜(乾物換算)0.02質量%を含有する錠剤」は、訂正発明1において「除く」とされる「(a)下記の一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物の1種又は2種以上と、(b)ウーロン茶、プアール茶、焙煎ハトムギ、杜仲の葉、ジャスミンの花からなる群から選択される抽出物を含有することを特徴とする錠剤:
【化1】(略)
【化2】(略)
(但し、両式中、R^(1)は水素原子または水酸基もしくはOCH_(3)基、R^(2)は水素原子または糖残基である。)」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物であって、
前記杜仲加工物は、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である経口組成物。」

[相違点1]
訂正発明1においては、「杜仲加工物」が「少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む」のに対して、甲1発明においては、「杜仲葉」が焙煎した葉を含むか否か不明である点。

[相違点2]
訂正発明1においては、「経口組成物」から「(a)下記の一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物の1種又は2種以上と、(b)ウーロン茶、プアール茶、焙煎ハトムギ、杜仲の葉、ジャスミンの花からなる群から選択される抽出物を含有することを特徴とする錠剤:
【化1】(略)
【化2】(略)
(但し、両式中、R^(1)は水素原子または水酸基もしくはOCH_(3)基、R^(2)は水素原子または糖残基である。)」を「除く」ものであるのに対して、
甲1発明は、訂正発明1における上記「除く」ものに該当する点。

事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。

[相違点2について]
甲1発明は、甲1の請求項1の記載(上記3(1)ア 1a))からみて、相違点2に係る(a)の成分と(b)の成分を含有することを必須としている。
そうすると、甲1発明を、(a)の成分と(b)の成分を含有するもの以外へと変更する動機付けはなく、むしろ阻害要因がある。
よって、甲1発明において上記相違点2に係る訂正発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、訂正発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明し得たということはできない。

イ 訂正発明2
本件訂正により訂正された請求項2は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、訂正発明2は訂正発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、訂正発明2は、訂正発明1と同様の理由により、甲1発明であるか、甲1発明から当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(2)甲2を主引用例とした場合
ア 訂正発明1
訂正発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「糖質吸収抑制材」は、訂正発明1における「経口組成物」に相当し、甲2発明における「杜仲茶」及び「生姜」は、それぞれ、訂正発明1における「杜仲加工物」及び「生姜科植物加工物」に相当する。
そして、甲2発明において、「杜仲茶7.70%」「生姜0.05%」であるから、杜仲茶100重量部に対して、生姜の重量部は、0.05/7.7×100=0.65重量部、あるいは0.06/8.5×100=0.71重量部と換算でき、そこから抽出された糖質吸収抑制剤においても、ほぼ同じ比率であると推認される。
また、訂正発明1において「除く」とする事項に関して、甲2発明における「漢方由来素材としての、蕃柘榴12.25%、杜仲茶7.70%と生姜0.05%、あるいは蕃柘榴13.50%、杜仲茶8.50%及び生姜0.06%を含有する素材に蒸留水を添加して攪拌しながら抽出し、ろ過して缶に充填後、レトルト殺菌して冷却することにより得たものである糖質吸収抑制剤」は、訂正発明1における「下記漢方由来素材(a)を含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物。」

[相違点3]
杜仲加工物、生姜科加工物に関して、訂正発明1においては、「杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である」のに対して、
甲2発明においては、「杜仲茶」及び「生姜」を含有する素材に「蒸留水を添加して攪拌しながら抽出し、ろ過して缶に充填後、レトルト殺菌して冷却することにより得たもの」であって、乾燥末若しくは顆粒の形態を有していない点。

[相違点4]
訂正発明1においては、「経口組成物」から「下記漢方由来素材(a)を含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶」を除くものであるのに対して、
甲2発明においては、訂正発明1における上記「除く」ものに該当する点。
事案に鑑み、まず上記相違点4について検討する。

[相違点4について]
甲2発明は、甲2に比較例(上記3(2)ア 2e)2f)表1に記載された比較例2及び3)として記載されたものにすぎず、これら比較例2及び3に着目して、その組成を変更する動機付けは認められない。
よって、甲2発明の組成を、上記相違点4に係る訂正発明1の発明特定事項を満たすように変更することは当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、上記相違点3について検討するまでもなく、訂正発明1は甲2発明ではなく、甲2発明に基いて当業者が容易に発明し得たということはできない。

イ 訂正発明2
本件訂正特許請求の範囲における請求項2は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、訂正発明2は、訂正発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、訂正発明2は、訂正発明1と同様の理由により、甲2発明であるか、甲2発明から当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

(3)甲5を主引用例とした場合
ア 訂正発明1
訂正発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明における「杜仲」、「ウコン」は、訂正発明1における「杜仲加工物」、「生姜科植物加工物」にそれぞれ相当し、甲5発明における「ノニ葉茶及びその抽出茶液」は、訂正発明1における「経口組成物」に相当する。
そして、甲5発明における「杜仲が3.5?30重量%とウコンが3.5?30重量%配合されている」は、例えば、杜仲を30重量%、ウコンを20重量%とした場合、杜仲100重量部に対して、ウコンは、20/30×100=67重量部であるから、訂正発明1における「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する」に相当する。
また、訂正発明1において「除く」とする事項について、甲5発明における「乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉が30?80重量%、杜仲が3.5?30重量%とウコンが3.5?30重量%配合されているノニ葉茶及び抽出茶液」は、訂正発明1における「乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉を含有することを特徴とするノニ葉茶」又は「乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉、及び、ドクダミ、杜仲、アガリクス茸、霊芝、人参、ウコン、桑の葉、ビワの葉、焙煎した大麦(麦茶)、ソバの実、ハトムギの種子、枸杞実から選ばれる少なくとも1種を含有するノニ葉茶を抽出した、ノニ葉茶の抽出茶液」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物。」

[相違点5]
訂正発明1においては、「前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒」であるのに対して、
甲5発明1においては、「杜仲」が「少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む」か否か明らかでなく、「杜仲」と「ウコン」の加工形態も明らかでない点。

[相違点6]
訂正発明1においては、「経口組成物」から「乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉を含有することを特徴とするノニ葉茶」及び「乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉、及び、ドクダミ、杜仲、アガリクス茸、霊芝、人参、ウコン、桑の葉、ビワの葉、焙煎した大麦(麦茶)、ソバの実、ハトムギの種子、枸杞実から選ばれる少なくとも1種を含有するノニ葉茶を抽出した、ノニ葉茶の抽出茶液」を「除く」ものであるのに対して、
甲5発明は、訂正発明1における上記「除く」ものに該当する点。

事案に鑑み上記相違点6について検討する。

[相違点6について]
甲5発明において、「ノニ葉茶」は「乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉」を含むものであるところ、3(3)ア 3e)には、発明の効果として「熱帯植物ノニを乾燥あるいは乾燥後焙煎することによって風味を改良してノニの葉をお茶のように飲みやすくする事ができた」ことが記載されており、「ノニ葉茶」を「乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉」を含まないものとする動機付けは見出せない。
よって、甲5発明より「乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉」を除くことにより上記相違点6に係る訂正発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。(なお、甲5発明から杜仲とウコンを除けば、上記一致点を維持することができなくなる。)
したがって、上記相違点5について検討するまでもなく、訂正発明1は甲5発明ではなく、甲5発明に基いて当業者が容易に発明し得たということはできない。

5 [理由3]についての判断
本件訂正により特許請求の範囲における請求項1及び4に記載された「杜仲加工物」及び「生姜科植物加工物」は「乾燥末若しくは顆粒」となり、「希釈液」や「濃縮液」である場合を含むものではなくなった。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が訂正発明2及び訂正発明4を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとすることはできない。

6 [理由4]についての判断
(1)本件訂正により特許請求の範囲における請求項1及び4に記載された「杜仲加工物」及び「生姜科植物加工物」は「乾燥末若しくは顆粒」となり、「希釈液」や「濃縮液」である場合を含むものではなくなった。
したがって、訂正発明2及び4は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとはいえない。

(2)本件訂正により訂正発明1、3及び4並びに訂正発明1を引用する訂正発明2において「杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む」ことが特定されたから、「杜仲加工物」に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明における実施例に関する記載(本件特許明細書の段落【0034】ないし【0055】)に対応するものとなった。
また、上記実施例に関する記載において、生姜植物加工物として、具体的には金時ショウガ末を用いた場合についてのみ記載されているが、生姜のうち代表的なものとして金時ショウガを挙げたまでであって、金時生姜が他の種類の生姜と比較して格別異なる成分を有することまではいえないから、金時生姜以外の生姜を用いた場合において杜仲の香りの増強効果が得られないとはいえない。
したがって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとはいえない。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 異議理由
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。

[理由1]本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

[理由2]本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



(1)請求項1
本件特許発明1は、甲3発明、甲4及び甲6ないし甲9発明のうちのいずれかであるか、甲3発明、甲4発明及び甲6ないし甲10発明のうちのいずれかに基いて当業者が容易になし得たものである。

(2)請求項2
本件特許発明2は、甲3発明ないし甲9発明のうちのいずれか、及び甲2、甲11及び甲12にみられるような周知技術に基いて当業者が容易になし得たものである。

(3)請求項4
本件特許発明4は、甲1発明、甲2発明のうちのいずれか、及び甲22に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものである。

[理由3]本件特許明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

[理由4]本件特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



(1)本件特許の請求項1の記載においては、杜仲加工物について何ら製法が規定されていない。一方、本件特許明細書の実施例の記載において香りの増強効果について確認できたのは、杜仲葉を焙煎して抽出し、抽出物を乾燥させたエキス末についてのみである。
そうすると、杜仲葉の焙煎物に対するショウガ粉末による効果が他の製法で得られた杜仲に対しても奏されると当業者は理解することができない。

(2)本件特許の請求項1の記載においては、生姜科植物加工物における植物種、植物部位及び製法について何ら規定されていない。一方、本件特許明細書の実施例の記載には、生姜科植物加工物として、金時ショウガの乾燥粉末を用いたことが記載されているのみである。
そうすると、金時ショウガの乾燥粉末以外の種類・品種及び製法で得られた生姜科植物加工物において、本件特許明細書の実施例で示されたものと同様の杜仲加工物の香りの増強効果が奏されると当業者は理解することができない。

(3)本件特許の請求項1には、杜仲加工物の量は何ら規定されていない。一方、本件特許明細書の実施例の記載において杜仲加工物の香りの増強効果が確認されたのは、経口組成物中に杜仲加工物が60質量%以上含有されている場合のみであり、処方例を考慮しても0.01質量%以上含有されている場合のみである。
そうすると、経口組成物中における杜仲加工物の量が0質量%に近い微量の場合、生姜科植物を配合しても杜仲の香りを感じることができない蓋然性が高いため、そのような場合にまで杜仲加工物の香りの増強効果が奏されると当業者は理解することができない。

(4)本件特許の請求項1には、杜仲加工物と生姜科植物加工物との量比は何ら規定されていない。一方、本件特許明細書の実施例の記載において、杜仲加工物の香りの増強効果が確認されたのは、経口組成物中に杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物が0.1?20重量部含有されている場合のみであり、処方例を考慮しても0.01?70重量部含有されている場合のみである。
そうすると、生姜科植物加工物の割合が杜仲加工物の割合に対して圧倒的に多い場合は、生姜の香りがするのみであり、杜仲の香りについては感じない蓋然性が高いから、このような場合にまで杜仲加工物の香りの増強効果が奏されると当業者は理解することができない。

(5)本件特許の請求項4には、錠剤に用いる生姜科植物加工物の形態や水分量、錠剤中の存在形態は何ら規定されていない。
一方、本件特許明細書の記載において実際に錠剤の崩壊性向上が確認されたのは、金時生姜末を所定量特定の配合で混合させた実施例9のみである。
そうすると、杜仲加工物に対して生姜科植物加工物を配合する全ての場合において生姜科植物加工物を用いることで錠剤の崩壊性が向上するという効果が奏されると当業者は理解することができない。

(6)杜仲の製造方法として発酵が含まれることが周知であるところ、本件請求項1には、杜仲の製造方法において発酵工程の有無は何ら規定されていない。一方、本件特許明細書の実施例に示された生姜科植物加工物による杜仲の香りの増強効果は、杜仲の特定の香気成分の組成に対するものと考えるのが自然であって、杜仲において発酵の程度により香りが異なることが知られている。
そうすると、本件特許明細書の実施例の記載における発酵されていない杜仲の香りに係る生姜による香りの増強効果が発酵した杜仲全般についても奏されると当業者は理解できない。

したがって、上記(1)ないし(6)の理由により、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1ないし4を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

[理由5]本件特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条6項2号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



本件特許の請求項1、3及び4の記載において、「杜仲加工物」が杜仲独特の香りを有するための構成は何ら記載されていない。一方、本件特許明細書の記載(段落【0011】等)を参酌すると、「杜仲加工物」及びそれを含有する「経口組成物」は杜仲独特の香りを有する形態に限定されていると理解できる。
そうすると、当業者は、本件特許の請求項1の「杜仲加工物」について、本件特許明細書を参酌した場合に、どのような「杜仲加工物」が含まれるのかを理解することができない。
したがって、本件特許の請求項1、3及び4並びに請求項1の記載を引用する請求項2の記載は不明確である。

2 異議理由([理由1]及び[理由2])についての判断
(1)訂正発明1
ア 甲3
甲3は、「ミネラル吸収促進剤」に関するものであって、甲3の明細書及び特許請求の範囲(【特許請求の範囲】、段落【0039】、【0047】及び【0048】)の記載によれば、甲3発明は、「杜仲葉を含む野草類、黄金生姜を含む野菜類、果実類、きのこ類及び海藻類の抽出液又は搾汁液をアルコール発酵及び乳酸発酵して得られる発酵物を有効成分として含有する、カルシウム、鉄などの吸収を促進するカルシウム、鉄などの吸収を促進するミネラル吸収促進剤。」である。
次に、訂正発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「杜仲葉を含む野草類」は訂正発明1における「野草類」に相当し、以下同様に、「黄金生姜を含む野菜類」は「野菜類」に、「カルシウム、鉄などの吸収を促進するカルシウム、鉄などの吸収を促進するミネラル吸収促進剤」は「ミネラル吸収促進剤」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲3発明は、訂正発明1において「除く」とされる「野草類、野菜類、果実類、きのこ類及び海藻類の抽出液又は搾汁液を、アルコール発酵及び乳酸発酵して得られる発酵物を有効成分として含有することを特徴とするミネラル吸収促進剤」に該当する。
そして、甲3発明において、甲3の請求項1及び2並びに明細書に実施例として記載されたミネラル吸収促進剤の組成を変更して、訂正発明1の上記「除く」とするものに該当しないものとすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、訂正発明1は甲3発明ではなく、甲3発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 甲4
甲4は、「飲料組成物」に関するものであって、甲4の明細書及び特許請求の範囲(【特許請求の範囲】、段落【0004】、【0020】)の記載によれば、甲4発明は、「硝酸チアミン、没食子酸プロピル、トチュウエキス及びショウキョウ流エキスを含む飲料組成物。」である。
次に訂正発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明における「硝酸チアミン」は訂正発明1における「チアミン又はその塩」に相当し、以下同様に、「没食子酸プロピル」は「多価フェノール化合物」に、「トチュウエキス」は「トチュウ」に、それぞれ相当する。
そうすると、甲4発明は、訂正発明1において「除く」とされる「(a)チアミン又はその塩、(b)多価フェノール化合物及び(c)トウキ、カンゾウ、クコシ、トチュウ、エゾウコギから選ばれる一種又は二種以上を配合することを特徴とする飲料組成物」に該当する。
そして、甲4発明において、甲4の請求項1ないし7並びに明細書に実施例として記載された飲料組成物の組成を変更して、訂正発明1の上記「除く」とするものに該当しないものとすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない
したがって、訂正発明1は甲4発明ではなく、甲4発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 甲6
甲6は、「酵素飲料」に関するものであって、甲6における「『熟成 野草酵素 太陽の恵み』は、114種類の原材料・・・を特製のカメで2段発酵、3年の歳月をかけじっくりと熟成させたビタミン・ミネラル豊富な『酵素飲料』です。」及び「原材料名:<野草類>ウコン・・トチユウ葉・・<野菜類>・・シヨウガ・・」の記載によれば、甲6発明は、「トチユウ葉、ウコン、シヨウガを発酵させたものを含む酵素飲料。」である。
そして、甲6発明において、トチユウ葉を100重量部とした場合のウコン及びシヨウガの重量部が不明であり、訂正発明1における「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物」とは、杜仲加工物と生姜科植物加工物との重量部の関係において異なるものである。
さらに、甲6発明の「トチユウ葉」と「ウコン」及び「シヨウガ」との重量部の関係を、「トチユウ葉」100重量部に対して、「ウコン」及び「シヨウガ」を0.1?70重量部とする動機付けを見出すことはできない。
したがって、訂正発明1は甲6発明ではなく、甲6発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 甲7
甲7は、「ドリンク剤」に関するものであって、甲7における「製品概要」には、成分として「ショウキョウ(生姜)流エキス(生姜300mgに相当)」及び「トチュウ(杜仲)流エキス(杜仲葉250mgに相当)」が含まれることが示されているから、甲7発明は、「トチュウ(杜仲)流エキス(杜仲葉250mgに相当)及びショウキョウ(生姜)流エキス(生姜300mgに相当)を含むドリンク剤。」である。
そして、甲7発明においては、杜仲葉250mg、生姜300mgの割合であるから、杜仲葉100重量部に対して生姜は120重量部(300/250×100=120)となり、訂正発明1における「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物」とは、杜仲加工物と生姜科植物加工物との重量部の関係において異なるものである。
さらに、甲7発明の「トチュウ(杜仲)流エキス」と「ショウキョウ(生姜)流エキス」との重量部の関係を、トチュウ(杜仲)流エキスの杜仲葉相当分100重量部に対してショウキョウ(生姜)流エキスの生姜相当分を0.1?70重量部とする動機付けを見出すことはできない。
したがって、訂正発明1は甲7発明ではなく、甲7発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

オ 甲8
甲8は、「分解茶」に関するものであって、甲8(第3ページ)における分解茶の原材料名の表示において、「杜仲茶」及び「ウコンエキス」が含まれることが示されているから、甲8発明は、「杜仲茶及びウコンエキスが含まれる分解茶。」である。
そして、甲8発明においては、杜仲茶を100重量部とした場合のウコンエキスの重量部が不明であり、訂正発明1における「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物」とは、杜仲加工物と生姜科植物加工物の重量部との関係において異なるものである。
さらに、甲8発明の「杜仲茶」及び「ウコンエキス」との重量部の関係を、杜仲茶100重量部に対してウコンエキスを0.1?70重量部とする動機付けを見出すことはできない。
したがって、訂正発明1は甲8発明ではなく、甲8発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

カ 甲9
甲9は、「栄養ドリンク剤」に関するものであって、甲9における栄養ドリンク剤の成分・分量の表示において、「トチユウ流エキス(トチユウ258.3mg)」及び「ショウキヨウ流エキス(シヨウキヨウ1000mg)」が含まれていることが示されているから、甲9発明は、「トチユウ流エキス(トチユウ258.3mg)及びショウキヨウ流エキス(シヨウキヨウ1000mg)が含まれる栄養ドリンク剤。」である。
そして、甲9発明においては、トチユウ258.3mg、シヨウキヨウ1000mgの割合であるから、トチユウ100重量部に対してシヨウキヨウ387重量部(1000/258.3×100=387)となり、訂正発明1における「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物」とは、杜仲加工物と生姜科植物加工物の重量部との関係において異なるものである。
さらに、甲9発明の「トチユウ」及び「シヨウキヨウ」との重量部の関係を、トチユウ100重量部に対してシヨウキヨウ0.1?70重量部とする動機付けを見出すことはできない。
したがって、訂正発明1は甲9発明ではなく、甲9発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

キ 甲10
甲10は、「乳酸菌発酵物を含有してなる発酵乳食品」に関するものであって、甲10の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば、甲10発明は、「米糠、柿葉、紫蘇、どくだみ、杜仲、ウコン、クローブ、シナモンおよび甜茶よりなる群から選ばれた食品素材の少なくとも1種以上のエキスを含有する培地で乳酸菌を培養して得られる乳酸菌発酵物。」である。
そうすると、甲10発明は、訂正発明1において「除く」とされる「米糠、柿葉、紫蘇、どくだみ、杜仲、ウコン、クローブ、シナモンおよび甜茶よりなる群から選ばれた食品素材の少なくとも1種以上のエキスを含有する培地で乳酸菌を培養して得られることを特徴とする乳酸菌発酵物」に該当する。
そして、甲10発明において、請求項1及び明細書に実施例として記載された食品素材の組成を変更して、訂正発明1の上記「除く」とするものに該当しないものとすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、訂正発明1は、甲10発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)訂正発明2
本件訂正により訂正された請求項2の記載は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、訂正発明2は訂正発明1の発明特定事項を全て含むものである。
そして、上記(1)及び第4 4(3)のとおり、訂正発明1は、甲3発明ないし甲9発明のいずれでもなく、甲3発明ないし甲9発明のいずれからも当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、訂正発明2は、訂正発明1と同様に、甲3発明ないし甲9発明のいずれでもなく、甲2、甲11及び甲12にみられるような周知技術を考慮しても甲3発明ないし甲9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)訂正発明4
ア 甲1
上記「第4 3(1)イ」のとおり、甲1発明は「ラズベリーケトン5.6質量%、杜仲葉(乾物換算)0.16質量%及び生姜(乾物換算)0.02質量%を含有する錠剤。」であって、その「錠剤」の崩壊性については甲1において不明である。
一方、甲22には、「原料にウコンの表示がある製品群では図7に示すように、日本薬局方で言われている基準30分(1,800秒)以内と比較すると、1種類を除いて全てボーダー以下であり、基準をクリアしていた。」(甲22第19ページ右欄第17行ないし20行)と記載されており、原料にウコンを含む製品に関して錠剤品の崩壊性が概ね良好であったことが示されているが、上記甲22の記載において「1種類を除いて全てボーダー以下であり、」とあり、ウコンを含有する錠剤品の全てにおいて崩壊性が良好というのではないから、杜仲加工物に生姜科植物加工物を配合した原料を含む錠剤品の崩壊性が良好か否かについては不明である。
さらに、甲22において錠剤品の崩壊性を向上させる目的でウコンを含有させることについては記載されておらず、それが技術常識であるともいえない。
したがって、訂正発明4は甲1発明及び甲22に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

イ 甲2
上記「第4 3(2)イ」のとおり、甲2発明は「漢方由来素材としての、蕃柘榴12.25%、杜仲茶7.70%と生姜0.05%、あるいは蕃柘榴13.50%、杜仲茶8.50%及び生姜0.06%を含有する素材に蒸留水を添加して攪拌しながら抽出し、ろ過して缶に充填後、レトルト殺菌して冷却することにより得たものである糖質吸収抑制剤。」である。そして、甲2において、その明細書段落【0048】の記載によると、糖質吸収剤の最終剤形を「錠剤」とすることが示唆されているが、その「錠剤」の崩壊性の程度については不明である。
一方、甲22の記載においては、上記アで述べたとおり、錠剤品の崩壊性を向上させる目的でウコンを含有させることについて示唆しておらず、杜仲加工物に生姜科植物加工物を配合した原料を含む錠剤品の崩壊性が良好であるか否かについては不明である。
したがって、訂正発明4は甲2発明及び甲22に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

3 異議理由([理由3]、[理由4])について
(1)訂正発明1、3及び4において、「杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であ」ることが特定された。
そうすると、訂正発明における杜仲加工物は、本件特許明細書における発明の詳細な説明に記載されていないとはいえず、生姜科植物加工物とともに所定の効果を奏するのであるから、発明の詳細な説明は、当業者が訂正発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとすることはできない。

(2)本件特許明細書における実施例に関する記載において、生姜植物加工物として、具体的には金時ショウガ末を用いた場合についてのみ記載されているが、生姜のうち代表的なものとして金時ショウガを挙げたまでであって、金時生姜が他の種類の生姜と比較して格別異なる成分を有するとまではいえないから、金時生姜以外の生姜を用いた場合において杜仲の香りの増強効果が得られないとはいえない。
そうすると、訂正発明における生姜科植物加工物における「生姜」は、金時生姜に限ることなく杜仲の香りの増強効果が得られるのであるから、訂正発明は、「生姜」に関して本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載を超えるものとはいえず、杜仲加工物とともに所定の効果を奏するのであるから、発明の詳細な説明は、当業者が訂正発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとすることはできない。

(3)、(4)訂正発明1において、「杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物」と、杜仲加工物100重量部に対する生姜科植物加工物の重量部が0.1?70重量部であることが特定され、これに伴って杜仲加工物と生姜科植物加工物との重量比も特定されたことになる。
そうすると、訂正発明1における杜仲加工物と生姜科植物加工物は、それらの重量部の関係において、本件特許明細書における発明の詳細な説明に記載されていないとはいえず、杜仲加工物と生姜科植物加工物の上記重量部の関係において所定の効果を奏するのであるから、発明の詳細な説明は、当業者が訂正発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとすることはできない。

(5)訂正発明4において、「生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である」と生姜科植物の錠剤中の形態について特定された。
また、上記(2)で判断したとおり、金時生姜以外の生姜を用いた場合において杜仲の香りの増強効果が得られないとまではいえない。
そうすると、訂正発明4における生姜科植物加工物における「生姜」は、金時生姜に限ることなく杜仲の香りの増強効果が得られるのであるから、訂正発明は、「生姜」に関して本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載を超えるものとはいえず、杜仲加工物とともに所定の効果を奏するのであるから、発明の詳細な説明は、当業者が訂正発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとすることはできない。

(6)訂正発明1、3及び4において、「杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であ」ることが特定された。
一方、本件特許明細書には、
「【0018】
杜仲抽出物を製造する場合、原料である杜仲をそのまま使用しても、粉砕、切断、乾燥、焙煎等の前処理を行ってもよい。抽出方法は、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超臨界抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出等のいずれでもよい。」、
「【0035】
(製造例1)杜仲加工物
杜仲の生葉5kgを、日本茶製造用の送帯蒸機により110℃で90秒間蒸熱した。生葉を送帯蒸し機の投入口から機内に投入し、コンベヤ上を移動する間に上下スチーム供給装置からスチームを当て、110℃で90秒間蒸熱した。次にこの蒸熱後の杜仲葉を、揉捻機を用いて30分間揉捻した後、揉捻物を乾燥機を用いて80℃で5時間、水分量を5%以下に乾燥させた。その後、炒葉機(IR-10SP型:寺田製作所社製)を用いて110℃で30分間焙煎した。焙煎した杜仲茶葉1kgを90℃の熱水15kgに投入し、90℃で30分間抽出し14kg得た。その後150メッシュのフィルターを用いて濾過し、濾液を5℃に冷却し一晩放置した。上澄み液を取り出し、減圧下50℃で濾液を濃縮し1kg得た。濃縮液をクボタ株式会社製、遠心分離器で処理し、1800rpmの回転速度により遠心分離により沈殿物を除去し、得られた上澄み液を加熱殺菌(85℃、2時間)し、杜仲葉水抽出エキスを得た。当該濃縮エキス液をスプレードライ法により乾燥し、杜仲葉エキス粉末(300g)を得た。」と記載されていることからみて、訂正発明1の杜仲加工物の製造において発酵工程が含まれていなくても所定の効果を奏することができる。
したがって、訂正発明4は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものとはいえず、発明の詳細な説明は、当業者が訂正発明4を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとすることはできない。

(7)小括
したがって、訂正発明は発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではなく、発明の詳細な説明に記載された発明ではないとはいえない。よって、特許法第36条第6項1号に規定される要件を満たしてないとはいえない。
また、発明の詳細な説明は、当業者が訂正発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとはいえない。よって、特許法第36条第4項1号に規定される要件を満たしてないとはいえない。

4 異議理由([理由5])について
訂正発明1、3及び4において、「杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であ」ることが特定された。
よって、訂正発明1、3及び4において、「杜仲加工物」は、その形態に関して「少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒」であることが明らかになった。
したがって、本件訂正により訂正された特許の請求項1、3及び4並びに請求項1の記載を引用する請求項2の記載は明確であり、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていないとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杜仲加工物100重量部に対し、生姜科植物加工物を0.1?70重量部含有する経口組成物であって、
前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である経口組成物
(ただし、生薬の茯苓、地黄、牛膝、防風、芍薬、桂皮、甘草、細辛、当帰、川きゅう、唐独活、桑寄生、党参、杜仲、秦ぎょう、及び生姜からの抽出物からなる鎮痛作用を有する漢方薬、
呉茱萸3-12重量部、人参3-12重量部、沢瀉3-12重量部、杜仲10-20重量部、生姜2-15重量部、及び大棗5-20重量部を含有する高血圧改善用漢方薬、
(a)下記の一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される化合物の1種又は2種以上と、(b)ウーロン茶、プアール茶、焙煎ハトムギ、杜仲の葉、ジャスミンの花からなる群から選択される抽出物を含有することを特徴とする錠剤:
【化1】

【化2】

(但し、両式中、R^(1)は水素原子または水酸基もしくはOCH_(3)基、R^(2)は水素原子または糖残基である。)、
焙煎した桑葉と、下記漢方由来素材(a)とを含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶、
下記漢方由来素材(a)を含有することを特徴とする糖質吸収抑制剤、
(a)蕃柘榴と、下記から選ばれた少なくとも1種:山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶、
野草類、野菜類、果実類、きのこ類及び海藻類の抽出液又は搾汁液を、アルコール発酵及び乳酸発酵して得られる発酵物を有効成分として含有することを特徴とするミネラル吸収促進剤、
(a)チアミン又はその塩、(b)多価フェノール化合物及び(c)トウキ、カンゾウ、クコシ、トチュウ、エゾウコギから選ばれる一種又は二種以上を配合することを特徴とする飲料組成物、
乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉を含有することを特徴とするノニ葉茶、
乾燥ノニ葉または乾燥後焙煎したノニ葉、及び、ドクダミ、杜仲、アガリクス茸、霊芝、人参、ウコン、桑の葉、ビワの葉、焙煎した大麦(麦茶)、ソバの実、ハトムギの種子、枸杞実から選ばれる少なくとも1種を含有するノニ葉茶を抽出した、ノニ葉茶の抽出茶液、
および
米糠、柿葉、紫蘇、どくだみ、杜仲、ウコン、クローブ、シナモンおよび甜茶よりなる群から選ばれた食品素材の少なくとも1種以上のエキスを含有する培地で乳酸菌を培養して得られることを特徴とする乳酸菌発酵物
を除く)。
【請求項2】
錠剤である請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
杜仲加工物に生姜科植物加工物を混合する工程を含み、
前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である、
杜仲の香りの増強方法。
【請求項4】
杜仲加工物に生姜科植物加工物を配合する工程を含み、
前記杜仲加工物は、少なくとも焙煎した葉を使用部位に含む、杜仲の溶剤抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒であり、
前記生姜科植物加工物は、少なくとも生姜の根茎を使用部位に含む、生姜科植物の粉砕物(粗粉末及び細粉末を含む)、乾燥末若しくは顆粒、又は、生姜科植物の溶媒抽出物(希釈液及び濃縮液を含む)の乾燥末若しくは顆粒である、
杜仲加工物を含有する錠剤の崩壊性向上方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-08-05 
出願番号 特願2013-204989(P2013-204989)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西 賢二小田 浩代  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 松下 聡
井上 哲男
登録日 2017-11-17 
登録番号 特許第6243686号(P6243686)
権利者 小林製薬株式会社
発明の名称 杜仲加工物および生姜加工物を含有する経口組成物、及び杜仲の香り増強方法  
代理人 特許業務法人安富国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  

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