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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1357257
審判番号 不服2018-5243  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-17 
確定日 2019-12-11 
事件の表示 特願2016-540529「USB接続により電子デバイスを充電する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月25日国際公開、WO2015/089803、平成29年 1月26日国内公表、特表2017-503262、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月19日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 6月22日 :手続補正書の提出
平成29年 6月 9日付け:拒絶理由通知書
平成29年 9月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年12月11日付け:拒絶査定
平成30年 4月17日 :審判請求書の提出
平成31年 3月28日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 6月27日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(理由1)本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明、及び、引用文献Bに記載された技術的事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.国際公開第2013/097381号
B.特開2012-205007号公報

第3 当審拒絶理由の概要
平成31年3月28日に当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

(理由1)本願請求項1-2、4、6-9、12-13に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(理由2)本願請求項1-4、6-10、12-13に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(理由3)本願請求項1-13に係る発明は、その出願の日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げされたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に国際公開がされた下記の先願3の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「国際出願日における国際出願の明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない

引用文献等一覧
1.国際公開第2013/097381号(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2012-205007号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.PCT/US2013/066847号(国際公開第2014/070610号、特表2015-535384号公報)(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、令和元年6月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
その上でデータ通信も提供することができる接続を用いて第2の電子デバイスによって第1の電子デバイスを充電する方法であって、前記第1の電子デバイスの側において、
前記第2の電子デバイスから第1の電圧レベルで電力供給を受けるステップと、
前記接続においてデータ通信があるかどうかを検出するステップと、
前記接続においてデータ通信がない場合には、前記第1の電圧レベルよりも大きい第2の電圧レベルで充電されるよう要求するためにメッセージを前記第2の電子デバイスへ送信し、且つ前記第2の電圧レベルで充電され続けるように前記メッセージを前記第2の電子デバイスへ周期的に送信するステップと、
前記第2の電子デバイスから前記第2の電圧レベルで電力供給を受けるステップと
を有する方法。」

なお、「その上でデータ通信も提供することができる接続を用いて第2の電子デバイスによって第1の電子デバイスを充電する方法」との記載において、「その」は「接続」を指すものと認める。

また、本願発明2-11の概要は以下のとおりである。

本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明7は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「装置」の発明である。
本願発明8-11は、本願発明7を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1(国際公開第2013/097381号)には、図面とともに、以下の記載がある(原文は省略。訳文は、ファミリー文献である特表2015-503894号公報を参照した当審訳(参照した当該公表特許公報の段落番号を、括弧内に示す。)。下線は、特に着目した箇所を示す。以下、同様。)。

(1) 第1頁第13-21行(段落【0004】-【0005】)
(当審訳:
標準的なUSBホストインタフェースに対しては、5Vの充電電圧と500mAの充電電流を使用しているため、充電電力は2.5Wだけである。大きな容量の電池への急速充電の問題を解決するために、通常、移動端末装置の内部に、電源供給側のタイプを識別可能な特殊な回路が設計されている。ユーザがUSBホストインタフェースではなく電源アダプタを使用して充電することが識別された場合、充電電流を約1Aに向上させることができ、充電電力が約5Wに達し、充電時間を短縮させ、ユーザ体験を向上させる。しかし、標準的なUSBコネクタは接触抵抗の影響を受けるので、充電電流は、任意に向上されることがない。例えば、端末に一般的に使用されるMINIとMICRO型USBコネクタに対して、充電電流が一旦1Aを超えたら、明らかな発熱及び信頼性の低下を引き起こす。したがって、上記のスキームが使用されても、充電電力は、約5Wにしか達することができない。)

(2) 第2頁第6-12行(段落【0009】)
(当審訳:
上記目的を達成するために、本発明の技術的なスキームは、以下のように実現される。
移動端末の充電方法であって、移動端末の内部のUSBインターフェースの電圧バス(VBUS)の電源入力に、VBUSの電源入力をオフ及びオンにすることができるスイッチが接続され、充電期間に、前記移動端末は、前記スイッチを制御することにより、特定の電流波形を生成するように入力電流を制御し、
前記移動端末を充電するための充電装置は、内部に自身の出力電流波形を検出することができる回路を含み、当該回路が前記移動端末により生成された特定の電流波形を検出した場合、充電装置の出力電圧を高く調整して移動端末を充電する。」

(3) 第5頁第3行-第8頁第1行(段落【0025】-【0043】)
(当審訳:
本発明が依拠する主要な思想は、次のように記述される。
移動端末の内部では、USBインターフェースのVBUS(電圧バス)電源入力に、VBUSの電源入力をオフ及びオンにすることができるスイッチが接続されている。充電期間に、当該移動端末は、このスイッチを制御することにより、特定の電流波形を生成するように入力電流を制御することができる。前記電源アダプタは、その出力電圧が調整可能である。前記電源アダプタの内部には、自身の出力電流波形を検出することができる回路が含まれる。当該回路が前記移動端末により生成された特定の電流波形を検出した場合、アダプタの出力電圧を高く調整して、出力電力を向上する目的を達成する。
以下、図面を参照して、1つの実施例に対する記述により、発明内容をさらに説明する。
図1を参照すると、図1は、本発明に係る実施例のUSBインターフェースを介して高電力で充電可能なアダプタ及び移動端末の全体システム原理のブロック図である。当該図は、左側の電源アダプタ及び右側の移動端末の2つの部分に分かられている。
前記移動端末は、制御スイッチ、DC/DC(直流-直流)充電管理回路、電池および他の回路を備える。充電期間に、当該移動端末の内部のソフトウェアは、当該スイッチによりVBUSの電流入力をオン又はオフにして、特定の電流波形を生成することができる。前記制御スイッチを通すVBUS電流は、DC/DC充電管理回路に出力されて、電池を充電し且つ端末の他の回路に電力を供給する。
前記電源アダプタは、AC/DC(交流-直流)変換器と電流波形検出回路を含む。AC/DC変換器の出力電圧は、調整可能である。電流波形検出回路は、出力電流の特定波形に基づいて、論理レベルを生成し、AC/DCの出力電圧を制御することができる。
電源アダプタは、移動端末に接続される前に、その内部の波形検出回路が特定の電流波形を検出しないため、5Vの電圧を出力する。アダプタが移動端末に接続された場合、移動端末は、すぐに制御スイッチにより1つの特定の電流波形を生成し、当該電流波形がアダプタの内部の電流波形検出回路により検出された後、アダプタを制御して出力電圧を向上させて、充電電力を向上する目的を達成する。
図2を参照すると、図2は本発明に係る実施例の移動端末の内部の関連回路を示す図である。充電管理ソフトウェアによって制御されるCTRL(制御)信号は、1つの駆動装置により、PMOS(P型金属-酸化膜-半導体)トランジスタT21が開いているかどうかを制御する。T21を通る電力は、L21とC21からなる低域通過フィルタネットワークを介して充電管理チップMAX8903に電力を供給し、当該低域通過フィルタは、MAX8903の動作パルスがVBUS上の電流波形に影響することを防止することができる。図2におけるZ21とD21は、T21が閉じる瞬間に回路上に誘発された高電圧によるT21への損害を防止することに用いられる。その他、移動端末内で動作しているソフトウェアが現在のVBUS電圧を読み取るように、VBUS信号は、システムのADCに送信される。
図2において、MAX8903は、1つの動的経路管理付けのDC/DC充電チップである。外部電源がある場合、外部電源をDC/DC変換したのち、VSYS(システム電圧)と電池に給電する。外部電源がない場合、電池よりVSYSに電力を供給する。MAX8903の入力電流上限は、本実施例において1Aに設定されている。MAX8903は、16Vの最大入力電圧を許容することができ、入力されたVBUS電圧が10Vに達する時に正常に動作することができる。
図3を参照すると、図3は本発明に係る実施例の移動端末の内部の高電力充電と関連するソフトウェアの動作のフローチャートであり、それは以下のステップを含む。
ステップ301:VBUS電源スイッチをオンにする。
ステップ302:VBUS電圧を読み取る。
ステップ303:VBUS電圧が5.5Vより高いかどうかを判断し、5.5Vより高い場合、ステップ305に進み、5.5Vより低い場合、ステップ304に進む。
ステップ304:11001010を制御信号に送信し、各ビット(BIT)が1msを占める。
ステップ305:1秒遅らせてステップ302に戻る。
ソフトウェアは、1sごとにアナログ-デジタル変換器(ADC)により現在のVBUS電圧を1回判断する。電圧が5.5Vより高い場合、外部アダプタがすでに高電圧出力状態に入り、充電プロセスに干渉しないことを示す。現在のVBUS電圧が5.5Vより低い場合、ソフトウェアは、CTRL信号を用いて制御信号を生成し、T1を制御することにより、予め設定された電流波形を生成し、当該電流波形と制御信号の関係は図7を参照されたい。本実施例において、制御シーケンスが11001010Bである場合、16進数で0CAHであると表す。

・・・(中略)・・・

図4において、直流出力経路に抵抗R44を直列接続し、値が0.05ohmを取る。当該抵抗上の電圧降下は、現在のアダプタの出力電流を反映する。この電圧降下を用いて5mVに固定された1つのバイアス電圧を重畳して、比較器に送信する。出力電流が0.1Aより大きい場合、当該抵抗上の電圧降下が5mVより大きく、比較器の出力が低レベルになり、逆に、出力電流が0.1Aより小さい場合、比較器の出力が高レベルになる。アダプタの出力電流がある時に小さく、ある時に大きい場合、当該比較器は、0.1Aを比較閾値として、電流波形をデジタル化する。デジタル化された電流波形、アダプタ内の比較器の入力電圧波形及び出力電流波形の関係は、図7を参照されたい。
図4における波形検出論理回路は、デフォルトで低レベル信号を出力するので、AC/DCの出力電圧が5Vになる。波形検出論理回路が特定のデジタル波形(本実施例において11001010Bである)を検出した場合、高レベル信号を出力するので、AC/DCの出力電圧は、10Vに上昇する。その後、波形検出論理回路が、一旦高レベルの入力信号を検出すると(出力電流が0.1Aより小さいことに対応する)、端末がすでに高電力充電を必要としないこと、又は当該アダプタが抜かれていることを意味し、当該論理回路は、すぐに低レベルに戻し、アダプタの出力電圧が5Vに戻るように制御する。」

(4) 第8頁第2-21行(段落【0044】-【0048】)
(当審訳:
図5は、前記波形検出論理回路の原理ブロック図である。それは、クロック発生器、シフトレジスタ、デジタル比較器、NORゲート、およびRS(リセット-セット)フリップフロップを含む。
前記クロック発生器は、1kHzの固定クロックを生成してシフトレジスタの動作クロックとする。クロックの立ち上がりエッジに、シフトレジスタは、入力信号をサンプリングし、シフトレジスタのシフトシーケンスにシフトする。
図5におけるデジタル比較器は、一方の入力端がシフトレジスタの並列出力に由来し、他方の入力端が1つの特定の、端末のスイッチング制御信号と同じ値即ち11001010Bに固定される。当該デジタル比較器は、2つのポートの8bitデータが全部一致する時に低電圧を出力し、そうでなく、1ビットが異なると、当該デジタル比較器の出力レベルが高くなる。

・・・(中略)・・・

図6は、本発明に係る実施例の回路の動作原理における論理回路の動作プロセスを示す図である。初期状態において、シフトレジスタの内部のシフトシーケンスがすべて0であり、RSフリップフロップは、低レベルを出力する。入力信号は、2番目のクロック周期から、9番目のクロックの立ち上がりエッジまで、シーケンス11001010Bを送信し、8ビットがすべてシフトレジスタに入り、この場合にシフトレジスタの出力値がちょうど11001010B(即ち16進数の0CAH)になる。この場合、デジタル比較器の2つの入力側信号は、完全に同じであり、出力が1から0に反転し、NORゲートを通して、RSフリップフロップが反転し、その出力が0から1になるように制御する(アダプタの出力電圧が10Vに上がることに対応する)。」

よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 USBインターフェースを介して電源アダプタと移動端末とが接続され、
移動端末内で動作しているソフトウェアは、1sごとにアナログ-デジタル変換器(ADC)により現在のVBUS電圧を1回判断し、
VBUS電圧が5.5Vより高い場合は、アダプタがすでに高電圧出力状態に入っているため充電プロセスに干渉せず、
VBUS電圧が5.5Vより低い場合に、前記ソフトウェアは、CTRL信号を用いて制御信号(11001010B)を生成することにより、予め設定された電流波形を生成するものであって、
電源アダプタは、自身の出力電流の前記電流波形をデジタル化し、電源アダプタの内部の、自身の出力電流波形を検出する電流波形検出回路に入力するものであって、
前記電流波形検出回路の波形検出論理回路は、デフォルトで低レベル信号を出力し、このとき、AC/DCの出力電圧は5Vであり、
前記波形検出論理回路が、移動端末により生成された特定のデジタル波形(11001010B)を検出した場合、高レベル信号を出力し、AC/DCの出力電圧を10Vに上昇し、
その後、波形検出論理回路が、一旦高レベルの入力信号を検出すると(出力電流が0.1Aより小さいことに対応する)、端末がすでに高電力充電を必要としないこと、又は当該アダプタが抜かれていることを意味し、当該論理回路は、すぐに低レベルに戻し、アダプタの出力電圧が5Vに戻るように制御する、
移動端末の充電方法。」

2.引用文献2について
当審拒絶理由に引用された引用文献2(特開2012-205007号公報)には、図面とともに、段落【0027】に、以下の記載がある。

「【0027】
図3は、本発明の実施の形態に係る判定回路14aによるモード判定処理を説明するためのテーブルを示す図である。図3では6種類のモードが規定され、そのうち4種類のモードがチャージを行うモードである。USB-IF(BC)規格では、USB専用チャージャーの判別方法を規定している。具体的には、DP端子とDM端子間のショートを、専用のチャージャー(Dedicated Charger)と規定している。また、一般にUSBのデータ通信では、DP端子およびDM端子がそれぞれ終端される。図3に示す例では、メーカAおよびメーカBがそれぞれ独自仕様のチャージャーを製造販売していることを前提とする。」

3.先願3について
当審拒絶理由に引用された先願3(PCT/US2013/066847号(国際公開第2014/070610号、特表2015-535384号公報)の国際出願日における国際出願の明細書等には、図面とともに、以下の記載がある。なお、英文である、当該国際出願の明細書等の訳文として、先願3の公表特許公報である特表2015-535384号公報の記載を用いる。

(1) 段落【0029】-【0031】
「【0029】
[0036] 図3に示されるように、本開示の原理にしたがう特定の実施形態が、ユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェース(例えば、USB仕様改訂2.0)に組み込まれ得る。より詳細には、図3に示される実施形態は、USBバッテリ充電仕様改訂1.2(BC1.2)に基づいた回路100の実施形態を含み得る。大多数のデバイスは、BC1.2に準拠するため、この実施形態は、製造およびインストールされたユーザベースの観点から望ましい利益を有し得る。したがって、いくつかの実施形態において、回路100は、BC1.2に準拠して動作し得るため、既存のデバイスと互換性があるデバイスを提供し、(回路のほとんどは既に設計されているため)容易に製造することができ、本開示の利益を提供する。
【0030】
[0037] ポータブルデバイス302は、外部デバイス304に接続し得る。ポータブルデバイス302は、USBインターフェース、例えばモバイル通信デバイス、デジタルカメラ、コンピュータタブレット等を組み込む、任意の電子デバイスであり得る。同様に、外部デバイス304は、USBインターフェースを組み込む任意の電子デバイスであり得、電力を、電源、充電器、コンピュータといった他の電子デバイス等を含む、ポータブルデバイス302に提供することができる。
【0031】
[0038] ポータブルデバイス302および外部デバイス304を機械的におよび電気的に接続するケーブル(例えば、図1のケーブル26)は、VBUSと呼ばれる電力線、信号バス線D+およびD-、および接地線を含む、4つのワイヤを備え得る。これらの4つのワイヤは、標準USB AおよびUSB Bプラグ(例えば、図1におけるコネクタ22および24)に見つけられる。したがって、VBUSは、図1に示される電力バス114および134の例を構成する。D+線およびD-線は、図1に示される信号バス112および132を備える信号線の例を表す。」

(2) 段落【0041】-【0043】
「【0041】
[0048] ループ502において、ポータブルデバイス302は、接続事象を検出し得る。例えば、外部デバイスは、VBUS上で電圧を出力し得る。BC1.2にしたがうと、ポータブルデバイス302が予め定められた期間VBUS上の電圧レベル>VOTG_SESSN_VLDであることを検出する場合、ポータブルデバイス302は、外部デバイスへの接続が行われたと決定し得る。
【0042】
[0049] ブロック504において、ポータブルデバイス302は、外部デバイスが専用充電ポート(DCP:dedicated charging port)であるか否かを決定し得る。ブロック506において、DCPが検出された場合、処理は、ブロック508に続き、そうでなければ、標準ダウンストリームポート(SDP)または充電ダウンストリームポート(CDP)が検出される。DCP、SDP、およびCDPは、BC1.2において定義されるポートタイプである。
【0043】
[0050] BC1.2にしたがって、ブロック504は、一次検出ステップおよび二次検出ステップを含み得る。ポータブルデバイス302は、D+線上の電気的構成(すなわち、電圧レベル)をアサートすること、およびD-線上でアサートされた電気的構成(すなわち、電圧レベル)を感知することによって、外部デバイスがSDPであるかを検出するための一次検出を実行し得る。SDPが検出されると、ブロック506の分岐は取られず、ポータブルデバイス302はSDPの検出にしたがって進み得る。外部デバイスがSDPでないと決定されると、ポータブルデバイス302は、D-線上の電気的構成をアサートすること、およびD+線上の電気的構成を感知することによって、外部デバイスがDCPであるかCDPであるかどうかを検出するために、二次検出を実行し得る。CDPが検出されると、ブロック506のNOの分岐が取られ、ポータブルデバイス302はCDPの検出にしたがって進み得る。」

(3) 段落【0045】-【0054】
「【0045】
[0052] 続けて図5について、処理がブロック508に到達する場合、ポータブルデバイス302はDCPに接続されていると決定されている。本開示にしたがう外部デバイス(例えば、図3の304)は、この時点で電気的にDCPのように見える、すなわち、外部デバイスは、例えば図3に示されるようにD+線とD-線との間に接続されたスイッチを使用して、D+線およびD-線をともに短絡する。従来のDCPは、典型的に5Vを出力することに特定される。比較すると、本開示にしたがう外部デバイスは、5Vレベルに加えて、いくつかのより高い電圧レベル(例えば、9V、12V、20V等)のうちのいずれか1つを出力し得る。したがって、本開示にしたがう外部デバイスは、高電圧DCP(HVDCP)と呼ばれ得る。本開示の原理にしたがうと、ポータブルデバイス302は、従来のDCPである外部デバイスとHVDCPとを区別するための追加の検出を実行し得る。したがって、いくつかの実施形態において、ポータブルデバイス302は、ブロック508において、D+線上の電圧レベルVDP_SRCをアサートし得る。
【0046】
[0053] 外部デバイスが従来型のDCPである場合、D+線およびD-線間の短絡は維持されるだろう。したがって、ブロック510において、ポータブルデバイス302は、D-でアサートされた電圧レベルが>VDAT_REFであることを感知し、従来型のDCPが接続されていることを検出するだろう。
【0047】
[0054] 外部デバイスがHVDCP(例えば、図3の304)である場合、本開示にしたがって、HVDCPは、D+線およびD-線間の短絡を開放することによって、VDP_SRCにおいてアサートされているD+線に応答するだろう。したがって、ブロック510において、ポータブルデバイス302は、HVDCPが接続していることを示し得る、≦VDAT_REFであるD-においてアサートされた電圧レベルを感知するだろう。ブロック512において、ポータブルデバイス302がVBUS上の電圧を検出し続ける場合、それは外部デバイスがまだ接続されていること、および外部デバイスはHVDCPであることをポータブルデバイスに示す働きをし得る。
【0048】
[0055] この時点で、ポータブルデバイス302は、HVDCPから受信する動作電圧を選択し得る。5V動作がブロック514において所望される場合、ポータブルデバイス302は、ブロック514aにおいて、D+線およびD-線上の以下の電気的構成、D+上のVDP_SRCおよびD-上の接地電位をアサートし得る。同様に、9V動作がブロック516において所望される場合、ポータブルデバイスは、ブロック516aにおいて、D+線およびD-線上の以下の電気的構成、D+上のVDP_UP、およびD-上のVDM_SRCをアサートし得る。12Vオペレーションがブロック518において所望される場合、ポータブルデバイスは、ブロック518aにおいて、D+線およびD-線上の以下の電気的構成、D+上のVDP_SRCおよびD-上のVDM_SRCをアサートし得る。20Vオペレーションがブロック516において所望される場合、ポータブルデバイスは、ブロック516aにおいて、D+線およびD-線上の以下の電気的構成、D+上のVDP_UPおよびD-上のVDM_UPをアサートし得る。

・・・(中略)・・・

【0050】
[0057] 続けて図5について、いくつかの実施形態において、ブロック522aにおいて電圧レベルがまだVBUS上に存在する場合、処理はブロック514にループバックし得る。ループは、ポータブルデバイス302が、必要に応じて動作電圧を動的に変えることを可能にし、ポータブルデバイス302における動作の高度なフレキシビリティを提供する。したがって、例えば、時間t1において、ポータブルデバイス302は、VBUS上で第1の電圧レベルを受けるために、D+線およびD-線上で第1の電気的構成をアサートし得る。(HVDCPに再接続する必要のない)後続の時間t2において、ポータブルデバイス302は、VBUS上で第2の電圧レベルを受けるために、D+線およびD-線上の第2の電気的構成をアサートし得る。
【0051】
[0058] 図6を参照すると、本開示にしたがう外部デバイス(例えば、図3における304)における処理、すなわちHVDCPが、これから説明される。ブロック602において、HVDCPは、DCPとしての検出のためにそれ自体を初期化し得る。例えば、HVDCPは、VBUS上で5Vをアサートし、D+線およびD-線を短絡し得る。加えて、D+線は、BC1.2に準拠して抵抗RDAT_LKG(約500KΩ)を使用してプルダウンされる。この状態において、このHVDCPは、電気的にDCPであるように見える。HVDCPは、D+線がVDAT_REFを超えるまでループ604に入る。
【0052】
[0059] HVDCPがポータブルデバイス302に接続されているとき、ポータブルデバイスは、上述したようにその検出シーケンスを進むだろう。ポータブルデバイス302がVBUS上で異なる出力電圧レベルを受け入れることができる場合、ポータブルデバイスは、D+線上のVDP_SRCをアサートすること(図5におけるブロック508)によって、この事実をHVDCPに示すことができ、これをHVDCPは、ブロック606および608において検出するだろう。
【0053】
[0060] ブロック606および608において、HVDCPがグリッチフィルタ334(図3)を使用してD-線を感知している一方で、HVDCPにおいてタイマ(図示せず)が開始され得る。グリッチフィルタ334は、ポータブルデバイス302が異なる電圧レベルを受け入れるという偽正極指示(positive indication)を回避することによって、安全性の指標(a measure of safety)を提供し得る。ブロック610において、D+線がタイムアウトの後>VDAT_REFのままとなる場合、これはHVDCPに、ポータブルデバイス302が異なる動作電圧レベルを受信することができ、HVDCPを探していることを示し得る。したがって、ブロック612において、HVDCPは、ポータブルデバイス302にそれがHVDCPに接続されていることを示すために、D+線およびD-線間の短絡を開放し、抵抗RDM_DWNを通じてD-線をプルダウンし得る。
【0054】
[0061] ブロック614において、HVDCPがD-線が>VDAT_REFである電気的構成を感知する場合、ブロック614aにおいて、HVDCPはVBUS上で5Vを出力するだろう。ブロック616において、HVDCPがD+線が>VDAT_REFである電気的構成を感知する場合、ブロック616aにおいて、HVDCPはVBUS上で12Vを出力するだろう。同様に、ブロック618において、HVDCPがD-線が>VSEL_REFである電気的構成を感知する場合、ブロック618aにおいて、HVDCPはVBUS上で20Vを出力するだろう。そうでなければ、ブロック620においてHVDCPはVBUS上で9Vを出力するだろう。いくつかの実施形態において、VSEL_REFは、2V±0.2Vに設定され得る。」

(4) 段落【0056】
「【0056】
[0063] ポータブルデバイス302およびHVDCP間の先の処理は、図8に示されるフローチャートに要約され得る。802において、HVDCPは、ポータブルデバイスに接続されている。HVDCPは、VBUS上で5Vを出力し、そのD+線およびD-線を短絡することによって、DCPとして見なされるように初期構成される。804において、ポータブルデバイスは、BC1.2にしたがって検出を実行する。806において、ポータブルデバイスはDCPを検出し、そして、BC1.2に準拠した検出処理の完了をマーキングする。ポータブルデバイスはその後、接続されたDCPがHVDCPであるかどうかを見るために、本開示の原理にしたがって、D+線上のVDP_SRCをアサートする。808において、HVDCPは、ポータブルデバイスが複数の電圧レベルを受信することができることを示す、VDP_SRCを探すためにD+線を感知する。810において、HVDCPは、HVDCPが接続されていることをポータブルデバイスに知らせるために、D+線およびD-間の短絡を開放し、RDM_DWNをオンにする。812において、ポータブルデバイスは、所望の電圧レベルに対応するD+およびD-上の電気的構成をアサートする。814において、HVDCPは、所望の電圧レベルを出力する。」

よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、先願3の国際出願日における国際出願の明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。

「 USBバッテリ充電仕様に基づき、VBUSと呼ばれる電力線、信号バス線D+およびD-、および接地線を含む、4つのワイヤを備えるケーブルによって、ポータブルデバイス302および外部デバイス304が機械的におよび電気的に接続され、外部デバイス304は、電力をポータブルデバイス302に提供するものであって、
ポータブルデバイス302および外部デバイス304は、それぞれUSBインターフェースを組み込み、
外部デバイスは、高電圧DCP(HVDCP)と呼ばれ、5Vレベルに加えて、いくつかのより高い電圧レベル(例えば、9V、12V、20V等)のうちのいずれか1つを出力するものであり、
HVDCPは、ポータブルデバイス302に接続された状態で、VBUS上で5Vを出力し、そのD+線およびD-線を短絡することによって、専用充電ポート(DCP)として見なされるように初期構成され、
ポータブルデバイス302は、外部デバイスへの接続が行われたと決定すると、D+線上の電気的構成(電圧レベル)をアサートして、D-線上でアサートされた電気的構成(電圧レベル)を感知し、次いで、D-線上の電気的構成をアサートして、D+線上の電気的構成を感知することによって、外部デバイスがDCPであるかどうかを検出し、
外部デバイスがDCPであると決定すると、さらに、ポータブルデバイス302は、従来のDCPである外部デバイスとHVDCPとを区別するため、D+線上の電圧レベルVDP_SRCをアサートし、外部デバイスがHVDCPである場合、HVDCPは、D+線およびD-線間の短絡を開放して、D+線に応答するので、ポータブルデバイス302は、D-においてアサートされた電圧レベル≦VDAT_REFを感知し、そして、ポータブルデバイス302がVBUS上の電圧を検出し続ける場合、それは外部デバイスがまだ接続されていること、および外部デバイスはHVDCPであることをポータブルデバイスに示す働きをするものであって、
この時点で、ポータブルデバイス302は、HVDCPから受信する動作電圧を選択でき、所望の電圧レベルに対応するD+線およびD-線上の電気的構成をアサートすると、HVDCPは、所望の電圧レベルを出力し、
その後、電圧レベルがまだVBUS上に存在する場合、処理がループバックされ、ポータブルデバイス302が、必要に応じて動作電圧を動的に変えることができ、例えば、時間t1において、ポータブルデバイス302は、VBUS上で第1の電圧レベルを受けるために、D+線およびD-線上で第1の電気的構成をアサートし、後続の時間t2において、VBUS上で第2の電圧レベルを受けるために、D+線およびD-線上の第2の電気的構成をアサートできる、
方法。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1) 当審拒絶理由の理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア) 引用発明の「移動端末」、「電源アダプタ」が、それぞれ、本願発明1の「第1の電子デバイス」、「第2の電子デバイス」に相当する。
また、引用発明は、「USBインターフェースを介して電源アダプタと移動端末とが接続され」るところ、USBインターフェイスは、データ通信も提供することができる接続であることは明らかであるから、引用発明の「USBインターフェースを介し」た「接続」を用いた「移動端末の充電方法」は、本願発明1の「その上でデータ通信も提供することができる接続を用いて第2の電子デバイスによって第1の電子デバイスを充電する方法」に相当する。

(イ) 引用発明の「電源アダプタと移動端末とが接続され」、「VBUS電圧が5.5Vより低い場合に、」移動端末の「ソフトウェアは」「予め設定された電流波形を生成」し、電源アダプタは、「前記電流波形をデジタル化し、電源アダプタの内部の」「波形検出論理回路が、移動端末により生成された特定のデジタル波形(11001010B)を検出した場合、高レベル信号を出力し、AC/DCの出力電圧を10V」とし、それ以外の場合は、「AC/DCの出力電圧」を「5V」とするところ、移動端末は、通常の5V直流電圧よりも高い10V直流電圧での供給を受けるため、「予め設定された電流波形を生成」し、これを電源アダプタが検出して携帯端末に10V直流電圧を供給する、と言い換えることができる。
そうすると、引用発明の「AC/DCの出力電圧は5Vであ」る場合が、本願発明1の「第1の電子デバイスの側において、前記第2の電子デバイスから第1の電圧レベルで電力供給を受ける」ことに相当し、引用発明の「電源アダプタ」が「AC/DCの出力電圧を10V」とすることが、本願発明1の「第2の電子デバイスから前記第2の電圧レベルで電力供給を受ける」ことであって、「第2の電圧レベル」は「第1の電圧レベルよりも大きい」ことに相当する。
さらに、引用発明の「移動端末」が「VBUS電圧が5.5Vより低い場合に」、「予め設定された電流波形を生成する」ことが、本願発明1の「前記接続においてデータ通信がない場合には、前記第1の電圧レベルよりも大きい第2の電圧レベルで充電されるよう要求するためにメッセージを前記第2の電子デバイスへ送信する」ことと、「前記第1の電圧レベルよりも大きい第2の電圧レベルで充電されるよう要求するためにメッセージを前記第2の電子デバイスへ送信する」点で共通するといえる。

よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりであるといえる。

[一致点]
「 その上でデータ通信も提供することができる接続を用いて第2の電子デバイスによって第1の電子デバイスを充電する方法であって、前記第1の電子デバイスの側において、
前記第2の電子デバイスから第1の電圧レベルで電力供給を受けるステップと、
前記第1の電圧レベルよりも大きい第2の電圧レベルで充電されるよう要求するためにメッセージを前記第2の電子デバイスへ送信するステップと、
前記第2の電子デバイスから前記第2の電圧レベルで電力供給を受けるステップと
を有する方法。」

[相違点1]
第2の電圧レベルでの電力供給を要求するメッセージの送信に関して、本願発明1では、「接続においてデータ通信があるかどうかを検出するステップ」を有するとともに、「前記接続においてデータ通信がない場合には」、メッセージの送信を行うのに対して、引用発明では、そもそもデータ通信の有無を検出することが特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1では、「前記第2の電圧レベルで充電され続けるように前記メッセージを前記第2の電子デバイスへ周期的に送信する」のに対して、引用発明では、メッセージを周期的に送信していない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。

引用発明は、波形検出論理回路が、移動端末により生成された特定のデジタル波形(11001010B)を検出することにより、電源アダプタがAC/DCの出力電圧を10Vに上昇させる、すなわち、高電圧出力状態に入ると、その状態が、例えば、高電力充電が不要となることや、電源アダプタが移動端末から引き抜かれることにより、高レベルになる入力信号を、波形検出論理回路が検出するまで維持されるものであって、電源アダプタが高電圧出力状態に入ると、移動端末内で動作しているソフトウェアが、充電プロセスに干渉しない、すなわち、制御信号(11001010B)を生成しないものである。

また、本願発明1の上記相違点2に係る、「前記第2の電圧レベルで充電され続けるように前記メッセージを前記第2の電子デバイスへ周期的に送信する」との構成は、引用文献1-2のいずれにも記載も示唆もなく、本願出願前における周知技術であるともいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明ではなく、また、上記相違点1を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献1-2に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

(2) 当審拒絶理由の理由3(特許法第29条の2)について
ア 対比
本願発明1と先願発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア) 先願発明では、「外部デバイス304は、電力をポータブルデバイス302に提供する」ことから、「ポータブルデバイス302」、「高電圧DCP(HVDCP)と呼ばれ」る「外部デバイス304」が、それぞれ、本願発明1の「第1の電子デバイス」、「第2の電子デバイス」に相当する。
また、先願発明は、「ポータブルデバイス302および外部デバイス304は、それぞれUSBインターフェースを組み込み」、「USBバッテリ充電仕様に基づき、VBUSと呼ばれる電力線、信号バス線D+およびD-、および接地線を含む、4つのワイヤを備えるケーブルによって、ポータブルデバイス302および外部デバイス304が機械的におよび電気的に接続され、外部デバイス304は、電力をポータブルデバイス302に提供する」ところ、VBUSと呼ばれる電力線により電力が供給され、信号バス線D+およびD-によってデータ通信が提供されることは自明であるから、先願発明の、「USBバッテリ充電仕様に基づき、・・・4つのワイヤを備えるケーブルによって、ポータブルデバイス302および外部デバイス304が機械的におよび電気的に接続され」る方法は、本願発明1の「その上でデータ通信も提供することができる接続を用いて第2の電子デバイスによって第1の電子デバイスを充電する方法」に相当する。

(イ) 先願発明の「HVDCPは、ポータブルデバイス302に接続された状態で、VBUS上で5Vを出力」することは、本願発明1の「第1の電子デバイスの側において、前記第2の電子デバイスから第1の電圧レベルで電力供給を受けるステップ」に相当する。

(ウ) 先願発明の「HVDCPは」、「D+線およびD-線を短絡することによって、専用充電ポート(DCP)として見なされるように初期構成され」、「ポータブルデバイス302は」、「D+線上の電気的構成(電圧レベル)をアサートして、D-線上でアサートされた電気的構成(電圧レベル)を感知し、次いで、D-線上の電圧レベルをアサートして、D+線上の電圧レベルを感知することによって、外部デバイスがDCPであるかどうかを検出」するところ、ポータブルデバイス302は、D-線及びD+線上の電圧レベルから、D+線及びD-線が短絡されていることを感知して、すなわち、USBインターフェースの信号バス線(D+線、D-線)上でデータ通信がないことを検出して、外部デバイスがDCPであるか否かを検出していると言い換えることができる。
そうすると、先願発明の「ポータブルデバイス302は」、「D+線上の電気的構成(電圧レベル)をアサートして、D-線上でアサートされた電気的構成(電圧レベル)を感知し、次いで、D-線上の電圧レベルをアサートすること、およびD+線上の電圧レベルを感知することによって、外部デバイスがDCPであるかどうかを検出」することは、本願発明1の「前記接続においてデータ通信があるかどうかを検出するステップ」に実質的に相当する。

(エ) 先願発明の「ポータブルデバイス302は」、「外部デバイスがDCPであると決定すると、さらに」、「D+線上の電圧レベルVDP_SRCをアサートし、外部デバイスが」「D+線に応答する」と、「外部デバイス」が「HVDCPである」と検出し、この場合に、「ポータブルデバイス302」が「所望の電圧レベルに対応するD+線およびD-線上の電気的構成をアサートすると、HVDCPは、所望の電圧レベルを出力」するところ、ポータブルデバイス302がアサートする、「D+線上の電圧レベルVDP_SRC」や、これに続く、「所望の電圧レベルに対応するD+線およびD-線上の電気的構成」は、USBインターフェース上でデータ通信がないことを検出した場合に、5Vより高い、所望の電圧レベルでの充電を要求するメッセージといえる。
そうすると、先願発明の、「ポータブルデバイス302」が、「外部デバイスがDCPであると決定」した場合に、「D+線上の電圧レベルVDP_SRCをアサートし」、また、「所望の電圧レベルに対応するD+線およびD-線上の電気的構成をアサートする」ことは、本願発明1の「前記接続においてデータ通信がない場合には、前記第1の電圧レベルよりも大きい第2の電圧レベルで充電されるよう要求するためにメッセージを前記第2の電子デバイスへ送信し、且つ前記第2の電圧レベルで充電され続けるように前記メッセージを前記第2の電子デバイスへ周期的に送信するステップ」と、「前記接続においてデータ通信がない場合には、前記第1の電圧レベルよりも大きい第2の電圧レベルで充電されるよう要求するためにメッセージを前記第2の電子デバイスへ送信」「するステップ」である点で共通するといえる。
さらに、「ポータブルデバイス302」が「所望の電圧レベルに対応するD+線およびD-線上の電気的構成をアサートする」ことに応じて、「HVDCP」が「所望の電圧レベルを出力」することは、本願発明1の、「前記第1の電子デバイスの側において」、「前記第2の電子デバイスから前記第2の電圧レベルで電力供給を受けるステップ」に相当する。

よって、本願発明1と先願発明との一致点・相違点は、次のとおりであるといえる。

[一致点]
「 その上でデータ通信も提供することができる接続を用いて第2の電子デバイスによって第1の電子デバイスを充電する方法であって、前記第1の電子デバイスの側において、
前記第2の電子デバイスから第1の電圧レベルで電力供給を受けるステップと、
前記接続においてデータ通信があるかどうかを検出するステップと、
前記接続においてデータ通信がない場合には、前記第1の電圧レベルよりも大きい第2の電圧レベルで充電されるよう要求するためにメッセージを前記第2の電子デバイスへ送信するステップと、
前記第2の電子デバイスから前記第2の電圧レベルで電力供給を受けるステップと
を有する方法。」

[相違点3]
本願発明1では、「前記接続においてデータ通信がない場合には、前記第1の電圧レベルよりも大きい第2の電圧レベルで充電されるよう要求するためにメッセージを前記第2の電子デバイスへ送信するステップ」において、さらに、「前記第2の電圧レベルで充電され続けるように前記メッセージを前記第2の電子デバイスへ周期的に送信する」のに対して、先願発明では、メッセージを周期的に送信していない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点3について検討する。

先願発明は、ポータブルデバイス302が、例えば、「時間t1」や「後続の時間t2」において、所望の電圧レベルに対応するD+線およびD-線上の電気的構成をアサートすることにより、HVDCPである外部デバイスが、VBUS上で所望の電圧レベルを、D+線がVDAT_REFを下回るまで出力するものである。
すなわち、先願3の国際出願日における国際出願の明細書等には、ポータブルデバイス302が所望の動作に応じて、HVDCPである外部デバイスから受ける動作電圧を動的に選択することが開示されているのみで、本願発明1の「前記第2の電圧レベルで充電され続けるように前記メッセージを前記第2の電子デバイスへ周期的に送信する」との構成は開示されておらず、示唆もない。

また、本願発明1の上記相違点3に係る、「前記第2の電圧レベルで充電され続けるように前記メッセージを前記第2の電子デバイスへ周期的に送信する」との構成は、本願出願前における周知技術であるとはいえず、また、上記相違点3は、課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。

したがって、本願発明1は、先願発明と同一であるとはいえない。

2.本願発明2-11について
上記「第4」のとおり、本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明7は、本願発明1に対応する、カテゴリ表現が異なる「装置」の発明であり、本願発明8-11は、本願発明7を減縮した発明であって、本願発明1の「前記第2の電圧レベルで充電され続けるように前記メッセージを前記第2の電子デバイスへ周期的に送信する」との構成と実質的に同一の構成を備えるものである。

よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-11も、引用発明でなく、また、当業者であっても、引用発明、引用文献1-2に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-11も、先願発明と同一であるとはいえない。

第7 原査定についての判断
本件補正で補正された請求項1-11は、上記「第6」のとおり、本願発明1の「前記第2の電圧レベルで充電され続けるように前記メッセージを前記第2の電子デバイスへ周期的に送信する」との構成を備えるものであり、当該構成は、原査定における引用文献A-Bには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-11は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに記載された発明、及び、引用文献Bに記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-29 
出願番号 特願2016-540529(P2016-540529)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 161- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮下 誠  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 白井 亮
野崎 大進
発明の名称 USB接続により電子デバイスを充電する方法及び装置  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 阿部 豊隆  

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