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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1357980
審判番号 不服2018-17594  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-20 
確定日 2019-12-18 
事件の表示 特願2017- 49184「連動回転盤発電機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月13日出願公開、特開2018-143080〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成29年2月24日の出願であって、平成29年4月21日付で手続補正書が提出され、平成30年5月24日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成30年6月5日)、出願人からは意見書等が提出されず平成30年11月30日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成30年12月11日)、これに対し、平成30年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、平成31年2月21日付で平成30年12月20日付手続補正書を補正する手続補正書が提出されたものである。


2.平成30年12月20日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月20日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の補正は行われていないが、本件補正の内容検討のため、特許請求の範囲を以下に示す。
「【請求項1】
(図2)回転盤上部、中部、下部に取り付けられた連動回転磁力盤(A)の永久磁石(F)の磁力により隣接するユニットの連動回転磁力盤(A)が連動して回転。(図3
先頭ユニット(図1)以外の発電ユニットは磁力の力だけで連動回転し発電をする機構。(図3
【請求項2】
(図1)の先頭ユニットのみモーターがついてますが各ユニットが発電しだすと各ユニットが発電した電力だけでモーターを可動。
外部からの電力を必要とせず発電し続けるシステム。」

本件補正により、図面の全図の補正が行われ、図面の数が3から4となった。
本件補正後の図3には、1つの連動回転磁力盤における側面に設けられる複数の連動回転用永久磁石がN極のみ又はS極のみであり、隣接する連動回転磁力盤における側面に設けられる複数の連動回転用永久磁石がS極のみ又はN極のみである発電機が示されている。
本件補正後の図4には、各発電ユニットが駆動用モーター電源切り替え装置に接続され、駆動用モーター電源切り替え装置からモーターに電力が供給されることに加え余剰電力が蓄電装置に供給されるように記載されたシステムが示されている。なお、請求人が、審判請求書で「コイル層(G),連動回転磁力盤(A)を多層にすることで、駆動用モーター(C)駆動し、それ以上の余剰電力を発電できると考えます。」と主張している点からも明らかである。



(2)新規事項
拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時に補正をするときは、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしなければならない(特許法第17条の2第3項)。

(ア)本件補正により、請求項1の連動回転磁力盤に関し、図3に、1つの連動回転磁力盤における側面に設けられる複数の連動回転用永久磁石がN極のみ又はS極のみであって、隣接する連動回転磁力盤における側面に設けられる複数の連動回転用永久磁石がS極のみ又はN極のみであるものだけが具体的に示されることとなった。
そこで、当該補正が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、
「他回転軸連動磁石盤は円形の盤の側面に永久磁石をS極N極が交互に貼り付けられた円盤です。」(【0004】)
と記載されるにすぎず、1つの連動回転磁力盤における側面に設けられる複数の連動回転用永久磁石がS極N極が交互になることは記載はあるが、1つの連動回転磁力盤における側面に設けられる複数の連動回転用永久磁石がN極のみ又はS極のみであり、隣接する連動回転磁力盤における側面に設けられる複数の連動回転用永久磁石がS極のみ又はN極のみであるものは記載も示唆も無い。
なお、請求人は、審判請求書で、「拒絶理由2については、提出した図面の連動回転用永久磁石(F)の配列では駆動用モーターを有する先頭ユニットに隣接する他ユニットが、その連動回転用磁石(F)の影響で回転しないように思われるので図面を修正して提出します。先頭ユニットの連動回転用永久磁石(F)をすべて「S極」か「N極」すべて同極にし、先頭ユニットの連動回転用永久磁石(F)を 「S]極にすれば、その隣のユニットの連動回転用永久磁石(F)は「N]極にします。(図2)」と主張し、当初明細書等に1つの連動回転磁力盤における側面に設けられる複数の連動回転用永久磁石がN極のみ又はS極のみであり、隣接する連動回転磁力盤における側面に設けられる複数の連動回転用永久磁石がS極のみ又はN極のみであるものが記載されていないことを認めている。

(イ)本件補正により、請求項2の発電し続けるシステムに関し、図4に、各発電ユニットが電源切り替え装置に接続され、電源切り替え装置からモータに電力が供給されることに加え余剰電力が蓄電装置に供給されるものが示されることとになった。
そこで、当該補正が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものか否か検討する。
当初明細書等には、
「ある程度各ユニットが発電するとバッテリスターターの電力をカットし連動回転盤発電機のみの電力でモーターを可動し先頭のユニットを回転し続けて他ユニットを連動回転させ発電し続ける。」(【0006】)
と記載されるにすぎず、発電機の出力はモーターに供給されることは記載はあるが、発電機の出力を駆動用モーター電源切り替え装置からモータに供給されることに加え余剰電力が蓄電装置に供給されることは記載も示唆も無い。

したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願について
本願の特許請求の範囲には、上記した平成29年4月21日付手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものが示されている。

(1)拒絶の理由
原査定の理由である平成30年5月24日付の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「1.(発明該当性)この出願の下記の請求項に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


●理由1(発明該当性)について

・請求項 1、2
特許法第29条第1項柱書には、「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定され、同法第2条第1項には、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定されている。
したがって、請求項に記載されたものが「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないときは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないことになるから、特許を受けることができない。例えば、請求項に記載されたものが、自然法則に反するものであるときには、自然法則を利用したものとはいえないため、「発明」に該当しない。

そこで、本願の請求項1に記載されたものが、「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるか否か、即ち特許法第2条第1項に定義された「発明」に該当するか否かについて、検討する。

請求項1には、「回転盤上部、中部、下部に取り付けられた連動回転磁力盤(A)の永久磁石(F)の磁力により隣接するユニットの連動回転磁力盤(A)が連動して回転。先頭ユニット以外の発電ユニットは磁力の力だけで連動回転し発電をする機構。」と記載されており、発電をする機構において、機構には外部からエネルギーが加えられていないにも関わらず、運動を続けることが記載されていると認められる。

また、請求項2には、「(図1)の先頭ユニットのみモーターがついてますが各ユニットが発電しだすと各ユニットが発電した電力だけでモーターを可動。外部からの電力を必要とせず発電し続けるシステム。」と記載されており、システムにおいて、外部からエネルギーが加えられていないにも関わらす、運動を続けることが記載されていると認める。

したがって、請求項1及び2に記載されたものは、エネルギー保存則等の物理法則、すなわち、自然法則に反するものである。

以上のとおりであるから、請求項1及び2に記載されたものは、自然法則に反するものとなっているため、特許法第29条第1項柱書でいう発明に該当しない。


●理由2(実施可能要件)について

・請求項 1、2
上記「理由1(発明該当性)について」で述べたように、本願の請求項1及び2に記載されたものは、エネルギー保存則に反するものであり、発明の詳細な説明、及び図面を参酌しても、なぜ、先頭ユニット以外のユニットが回転運動を行い発電し続けることが可能なのか、不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及び2に記載されたものを実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。


●理由3(明確性)について
(1)請求項1において、「回転盤上部、中部、下部に取り付けられた連動回転磁力盤(A)の永久磁石(F)の磁力により隣接するユニットの連動回転磁力盤(A)が連動して回転」という記載は明確ではない。各連動回転磁力盤に永久磁石がどのように配置されているか不明(磁石の極性をどのように配置しているか不明)であり、連動回転磁力盤それぞれが何によってどのように配置されているのか不明である。何故、連動して回転することが可能なのかも不明である。
よって、請求項1に係る発明は明確でない。

(2)請求項1の「ユニット」とは具体的に何を指しているのかが不明である。(発明の詳細な説明の段落0002には、支柱(D)に固定されたコイル層(G)と円盤に永久磁石が配列された回転部(図2)が1つのユニットである旨の記載があるが、そもそも、回転部とは何を指しているのか。図2を見る限りにおいては、一部ではなく回転する部分全体を指しているように認められる。そうするとユニットという概念と矛盾する。)

(3)請求項2において、先頭ユニットと他の各ユニットとの相互関係が不明である。また、どのような構成により、各ユニットが発電を始めるのかも不明である。さらに、各ユニットが発電した電力をどのようにモータに還元するのかも不明である。
よって、請求項2に係る発明は明確でない。」


(2)当審の判断
理由1
請求項2に、「(図1)の先頭ユニットのみモーターがついてますが各ユニットが発電しだすと各ユニットが発電した電力だけでモーターを可動。外部からの電力を必要とせず発電し続けるシステム。」と記載されており、各ユニットが発電を開始すると当該発電出力だけでモーターを動かし、外部からのエネルギー供給が不要となるが、発電機には、鉄心内の磁界が変化することに起因する鉄損、軸受等による機械損、発電時にコイルに電流が流れることに起因する銅損、発電機内にうず電流が流れることに起因する漂遊負荷損が発生するから、発電機で発生した電力はこれら損失により漸次減少していき、たとえ外部に電力を供給し得るとしても、外部からの電力供給無しで発電をし続けることはできないから、エネルギー保存則等の物理法則、すなわち、自然法則に反するものであり、請求項2に記載されたものは特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。
なお、請求人は審判請求書で本願は永久機関ではない旨主張するが、上述の様に外部からの電力を必要とせず発電し続けるシステムは自然法則に反しているから、請求人の上記主張は採用できない。


理由2
発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならない(特許法第36条第4項第1号)。
平成29年4月21日付で手続補正書の明細書【0005】には、「各ユニットが発電しだすまでは外部からの電力で先頭ユニットのモーターを駆動させ、各ユニットが発電しだせばその電力でモーターを駆動。以後、外部からの電力を必要とせず、先頭ユニットの回転でその他のユニットを磁力の力のみで連動回転し発電する。(図3」と記載されているが、理由1で述べたように、請求項2に記載されたものはエネルギー保存則に反するものであるから、発明の詳細な説明及び図面を参酌しても、同様に何故本願のシステムが発電し続けることができるのか不明であり、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項2に記載されたものを実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


理由3
特許請求の範囲の記載は、発明が明確でなければならない(特許法第36条第6項第2号)。
請求項1に、「回転盤上部、中部、下部に取り付けられた連動回転磁力盤(A)の永久磁石(F)の磁力により隣接するユニットの連動回転磁力盤(A)が連動して回転」との記載があるが、各連動回転磁力盤に永久磁石がどのように配置されているか不明(磁石の極性をどのように配置しているか不明)であり、連動回転磁力盤それぞれが何に対してどのように配置されているのか不明であり、何故連動して回転することが可能なのか不明である。
更に、請求項1の「ユニット」とあり、ユニットとは構成単位のことであるが、当該ユニットは具体的に何を指していて何が必要な構成であるのか特定できず不明である。
更に、請求項2に、「(図1)の先頭ユニットのみモーターがついてますが各ユニットが発電しだすと各ユニットが発電した電力だけでモーターを可動。外部からの電力を必要とせず発電し続けるシステム。」との記載があるが、先頭ユニットと他の各ユニットがどの様な構成であって互いにどの様な作用を及ぼすのか不明であり、ユニットの構成が不明のため各ユニットが何故発電するのか不明であり、各ユニットが発電した電力をどのようにしてモーターに供給するのか構成が特定できず不明である。
したがって、特許請求の範囲の記載は、明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(3)むすび
したがって、請求項2に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、請求項1-2の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項2に記載のものを実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-10-03 
結審通知日 2019-10-08 
審決日 2019-10-24 
出願番号 特願2017-49184(P2017-49184)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H02K)
P 1 8・ 536- Z (H02K)
P 1 8・ 14- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 聡遠藤 秀明  
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 堀川 一郎
長馬 望
発明の名称 連動回転盤発電機  

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