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審決分類 |
審判 全部無効 利害関係、当事者適格、請求の利益 G06Q |
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管理番号 | 1358396 |
審判番号 | 無効2019-800026 |
総通号数 | 242 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-02-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2019-03-28 |
確定日 | 2019-12-23 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第6357521号発明「ポイント管理システムおよびポイント管理方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1.出願手続経緯 本件特許第6357521号は、平成28年12月6日を出願日とする出願であって、平成30年4月26日の手続補正を経て、平成30年6月22日に設定登録されたものであり、登録時の請求項の数は7である。 2.審判手続経緯 これに対して、請求人より平成31年3月28日に本件無効審判の請求がなされたものであり、本件無効審判における手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成31年 3月28日 無効審判請求(請求人) (甲第1号証?甲第12号証添付) 令和 元年 6月14日 答弁書(被請求人) (乙第1号証?乙第2号証添付) 令和 元年 8月 2日 審判事件弁駁書(請求人) (甲第12号証?甲第20号証添付) なお、甲第12号証は審判請求書に添付されたものとは異なるものであり、また、甲第16号証は欠番である。以下、合議体は、審判事件弁駁書に添付された甲第12号証を「甲第12号証の2」と称することで、審判請求書に添付された甲第12号証と区別する。 令和 元年 8月27日(起案日) 審尋(合議体) 上記審尋に対する請求人の応答はなかった。 令和 元年10月 2日 電話による応対(合議体) 合議体は、請求人に対し、応答の意思があるか確認したが、本件の審尋については応答しない旨の回答を得た。 第2 請求人適格について 上記令和元年6月14日付け答弁書において、被請求人は、本件無効審判の請求人である「東京総合コンサルティング株式会社」の請求人適格について争っているので、この点について検討する。 1.被請求人の主張 被請求人は、令和元年6月14日付け答弁書にて、請求人適格について以下のとおり主張している。 a)特許法第123条第2項には、「特許無効審判は、利害関係人に限り請求することができる」と規定されている。 b)審判便覧(31?01)には利害関係人について、 「無効審判を請求し得る利害関係人とは、特許(商標)権などの存在によって、法律上の利益や、その権利に対する法律的地位に直接の影響を受けるか、又は受ける可能性のある者をいう。 利害関係人として認められるか否かは、権利内容や請求人の事業内容等との関係において個別具体的に判断されるべきものであって、手続をする能力のように個別の事件と離れて一般的な能力として判断されるものではない。」 と記載されている。 c)審判便覧(31?02)には利害関係人の具体例について、 (1) 当該特許発明と同一である発明を実施している/していた者 (2) 当該特許発明を将来実施する可能性を有する者 (3) 当該特許権に係る製品・方法と同種の製品・方法の製造・販売・使用等の事業を行っている者 (4) 当該特許権の専用実施権者、通常実施権者等 (5) 当該特許権について訴訟関係にある/あった者又は警告を受けた者 (6) 当該特許発明に関し、特許を受ける権利を有する者 と記載されている。(なお、審判便覧には上記(3)、(4)の間に、「当該登録商標により商品の出所の混同による不利益を被る可能性を有する者」とあるが、本件は特許に関する審判請求であるから、検討しない。) d)請求人(「東京総合コンサルティング株式会社」)の法人登記簿(乙第1号証)の目的の欄によれば、 (1)企業の経営に関するコンサルティング (2)財務内容改善及び資金調達に関するコンサルティング (3)企業組織再編及び買収価額に関するコンサルティング (4)事業計画及び利益計画に関するコンサルティング (5)新規起業プランニング及び資金調達に関するコンサルティング (6)金融資産及び不動産の運用並びに投資に関するコンサルティング (7)内部統制システムの体制に関するコンサルティング (8)不正防止及びリスクマネジメントに関するコンサルティング (9)企業の事業継承に関するコンサルティング (10)前記各号に附帯する一切の業務 との記載がある。 e)同法人登記簿の「役員に関する事項」には、代表取締役として「佐々木秀一」、取締役として「清水勤」、「木下朋子」の記載がある。 f)同法人登記簿の「電子公告する。」として記載されたURL「http://www.tokyosogo.jp」で示されるリンク先には「税理士法人 東京総合会計」のウェブページ(乙第2号証の1)があり、当該ウェブページの「会社案内」には、「公認会計士 税理士 佐々木秀一」、「税理士 社会保険労務士 木下朋子」、「税理士 CFP 清水勤」の記載(乙第2号証の2)がある。 g)以上a)ないしf)の特許庁における基準等及び請求人の登記内容等と照らしてみれば、「東京総合コンサルティング株式会社」は、本件特許の利害関係人の具体例の類型にあてはまるものはなく、本件審判は、請求人適格を欠く請求人によって請求されたものであり、本無効審判請求は不適法であるとして却下されるべきである。 2.請求人の主張 請求人が審判事件弁駁書にて主張する、請求人(東京総合コンサルティング株式会社)が請求人適格を有する理由は概略以下のとおりである。 a)請求人は各種コンサルティング業務を行う法人である。 b)コンサルティング業務の内容は、 「コンサルティングファームとは、企業経営に関する課題を様々な角度から検証し、解決策を導き出し、その解決を支援するサービス業です。」(甲第12号証の2、212、213頁) 「そもそもコンサルティング企業とは、『業務における問題の発見・解決策の提案・業務の改善の補助、経営戦略への提言などを中心に、企業の様々な業務を効率化するための提案自体を売り物にしている企業』のことをいう。」(甲第13号証) とあるように、クライアントの抱える課題を発見し検証すること、その課題に対する解決策を導き出してクライアントに提案することを含む。 c)特にポイントシステムは、システムの中でも会計及び税務上の要件が必要であり、・・・ポイントシステム改善へのニーズは高まっている。つまり、このようなニーズに即応して、請求人がポイントシステムの新機能としてポイント投資を顧客に提案することは業務内容の範囲内として当然に予定されているものである。 d)近年、ポイントを投資して増やすことを可能とするポイント投資のサービスが多くの企業から提供されており(甲第17号証)、ポイントを扱う企業向けに、請求人が、ポイントの有効活用を図ることを課題として、ポイント投資を可能とするポイント管理システムを解決策として提案することもコンサルティング会社として当たり前のことである。 e)一般的に、コンサルティング会社においても提案予定のシステムについて第三者特許の対応を事前に検討することは通常業務の範囲内であり、本件特許については、被請求人のウェブページ(甲第18号証)に本件特許の特許番号が記載されていることから、ポイント投資にかかる解決策を提案しようとしたとき、提案前に本件特許に対する対応を検討することは当然のことである。 上記検討に際して、本件特許の権利範囲は広く、その権利範囲外のポイント投資システムを構築することは難しい状況であり、本件特許の存在によって、請求人は、この(ポイント投資投資システム)解決策を提案することができない。 f)また仮に顧客が提案を受け入れたとしても、契約内容によっては、本件特許も含めて特許の抵触に関する義務を請求人が負うから、請求人は本件特許の存在によって、事業活動が制限されるのであるから、本件特許の存在によって、法律上の利益や、その権利に対する法律的地位に直接の影響を受けるか、又は受ける可能性のある者、すなわち利害関係人である。 g)甲第14号証、甲第15号証にあるとおり、コンサルティングサービスにおいてコンサルティング会社と顧客との間で結ばれる業務委託契約にはいわゆる知的財産補償条項が存在することがあり、このような場合、コンサルティング企業にも相応の負担が求められる。そして、本件特許は技術性が高いものではなく、ビジネススキーム又はシステム概要に関する発明であり、コンサルティング会社でも十分に提案内容に含めることができるものであることからみて、本件特許については、コンサルティング企業の事業活動でも制限を受けるから、コンサルティング企業であっても、利害関係人となりうる。 h)以上より、請求人は本件特許の無効審判を請求する利害関係人であり、請求人適格を有する。 3.本件特許 本件特許は、その特許請求の範囲の請求項1-7に記載されたとおりのものであり、その請求項1に記載された特許は以下のとおりである。 【請求項1】 会員の情報端末と通信ネットワークを介して接続可能であるとともに、前記会員に付与されたポイントを管理するポイント管理システムであって、 前記会員に付与されたポイントを、交換対象品目と交換可能な利用可能ポイントとして貯める利用可能ポイント管理部と、 前記会員からの指示操作により前記利用可能ポイントのうちから運用を申し込まれた運用ポイントに対し、バーチャルのポイント運用の運用結果である運用結果ポイントを演算するとともに、前記運用結果ポイントの表示を行う処理を実行するバーチャル運用管理部と、 を備え、 前記バーチャル運用管理部は、 前記会員の指示操作に応じて、前記運用ポイントの申し込みの受け付けを実行可能であるとともに、前記運用結果ポイントから前記利用可能ポイントとしての取り出しを実行可能な運用ポイント管理部と、 前記バーチャル運用管理部の外部の現実の運用結果を参照した運用結果参照情報が入力される運用情報入出力部と、 前記運用結果参照情報に基づいて、前記会員ごとに、運用ポイント数に対する前記バーチャルのポイント運用の運用結果である運用結果ポイント数を算出する運用結果ポイント算出部と、 前記会員ごとの前記運用結果ポイントの表示を行う運用結果表示処理部と、 を備えることを特徴とするポイント管理システム。 なお、請求項2-6に係る特許は、請求項1の記載を引用して更に限定する構成が付加された特許であり、請求項7に係る特許は、請求項1の「システム」の特許のカテゴリを「方法」とした特許である。 以上の請求項1等の記載からみて、本件特許は、「ポイント管理」のサービスを提供する事業(以下、当該事業を「ポイント管理事業」という。)に関する特許であるといえる。 4.当審の判断 a)本件特許と「東京総合コンサルティング株式会社」との関係について 本件特許は上記3.で検討したように「ポイント管理事業」に関する特許であるのに対し、「東京総合コンサルティング株式会社」は、上記2.d)によればコンサルティング業務を行う企業であるから、直接的に「ポイント管理事業」を行う企業ではないから、この点で上記1.c)の要件を満たすとはいえない。 b)コンサルティング企業が利害関係人となり得るかについて 上記2.の請求人の主張において提示された、甲第12号証の2ないし甲第16号証には、いずれもコンサルティング企業及びコンサルティング企業と顧客との関係についての一般的な事情が開示されているのみで、(本件特許に関連する)ポイント管理事業と「東京総合コンサルティング株式会社」との関係を明らかにするものではない。 また、甲第17号証によれば(本件特許と関連する)ポイントを用いた投資サービスを行う企業が複数あることが開示され、甲第18号証によれば、被請求人のポイント投資サービスのウェブページには、本件特許番号が記載されていることが開示されている。 したがって、これらの証拠から明らかになるのは、一般的に、本件特許と関連するポイント管理事業は、いわゆるビジネスモデルであって、コンサルティング企業が、顧客に対して提案することが予測されるものであること、コンサルティング企業は顧客に対して(ポイント管理)事業の提案をするに際して、当該事業モデルについて、第三者の権利を侵害しないように注意を払わなければならないことまでは理解できる。 請求人は、これらの証拠を示し、 「本件特許の権利範囲は広く、その権利範囲外のポイント投資システムを構築することは難しい状況であり、本件特許の存在によって、請求人は、この(ポイント投資投資システム)解決策を提案することができない」、 「契約内容によっては、本件特許も含めて特許の抵触に関する義務を請求人が負うから、請求人は本件特許の存在によって、事業活動が制限されるのであるから、本件特許の存在によって、法律上の利益や、その権利に対する法律的地位に直接の影響を受けるか、又は受ける可能性のある者、すなわち利害関係人である」 「本件特許は技術性が高いものではなく、ビジネススキーム又はシステム概要に関する発明であり、コンサルティング会社でも十分に提案内容に含めることができるものであることからみて、本件特許については、コンサルティング企業の事業活動でも制限を受けるから、コンサルティング企業であっても、利害関係人となりうる」 と述べている。 しかし、上記請求人が立証したのは、あくまでもi)一般的なコンサルティング企業の事業活動、ii)一般的なコンサルティング企業とクライアント企業との関係、iii)本件特許がいわゆるビジネスモデル関連特許であってビジネスモデルを提案するコンサルティング企業である「東京総合コンサルティング株式会社」も本件特許に関連するビジネスモデルを提案する可能性があること、iv)上記提案に際して本件特許について考慮しなければならない可能性があること等であって、具体的に、請求人が、現時点において、なんらかの本件特許に関連するビジネスモデルを提案しているとか、上記提案に際して本件特許について考慮しているということを証明しているわけではない。 請求人適格については、上記1.b)にあるとおり「利害関係人として認められるか否かは、権利内容や請求人の事業内容等との関係において個別具体的に判断されるべきものであって、手続をする能力のように個別の事件と離れて一般的な能力として判断されるものではない。」とあるから、本件について、当審では、権利内容や請求人の事業内容等との関係において個別具体的な事情が存するか、令和元年8月27日付け審尋にて請求人に尋ねたところ、これに対する応答はなく、令和元年10月2日付けの電話応対においても、本件の審尋について応答しないと回答している。 さらに、請求人は甲第19号証、甲第20号証をあげて、請求人適格が争われた事件において請求人適格が認められたことを主張しているが、上記証拠で請求人適格が認められた例と、本件無効事件とは、請求人適格について判断する具体的な事情が異なり、これらの証拠の事実を検討しても、本件について、権利内容や請求人の事業内容等との関係において個別具体的な事情が存することを明らかにしたわけではない。 以上の点を総合すると、本件特許の権利内容と本件無効審判請求人「東京総合コンサルティング株式会社」との間に請求人の事業内容を制限するような個別具体的な事情が存在しているとはいえず、したがって、本件無効審判請求人「東京総合コンサルティング株式会社」は利害関係人ということはできず、本件無効審判請求人としての請求人適格を有しているということはできない。 5.まとめ 以上検討したとおり、本件無効審判請求人「東京総合コンサルティング株式会社」は特許法第123条第2項で規定された要件を満たしていないから、特許法第135条の規定に基づき、本件無効審判の請求を却下する。 |
審理終結日 | 2019-10-28 |
結審通知日 | 2019-10-30 |
審決日 | 2019-11-12 |
出願番号 | 特願2016-236765(P2016-236765) |
審決分類 |
P
1
113・
02-
X
(G06Q)
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最終処分 | 審決却下 |
前審関与審査官 | 松野 広一 |
特許庁審判長 |
佐藤 聡史 |
特許庁審判官 |
渡邊 聡 田内 幸治 |
登録日 | 2018-06-22 |
登録番号 | 特許第6357521号(P6357521) |
発明の名称 | ポイント管理システムおよびポイント管理方法 |
代理人 | 弁護士法人クレオ国際法律特許事務所 |
代理人 | 菅原 英夫 |
代理人 | 西守 有人 |