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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特174条1項  F21S
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21S
管理番号 1358671
異議申立番号 異議2018-700597  
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-20 
確定日 2020-01-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6264714号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6264714号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6264714号の請求項1に係る特許についての出願は、平成22年10月12日に出願した特願2010-229762号の一部を平成25年5月29日に新たな特許出願(特願2013-112474号)とし、さらにその特許出願の一部を平成26年11月14日に新たな特許出願(特願2014-231851号)とし、さらにその特許出願の一部を平成28年4月26日に新たな特許出願としたものであって、平成30年1月5日に特許権の設定登録がされ、同年1月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年7月20日付けで特許異議申立人西村太一(以下「申立人A」という。)及び特許異議申立人梯京子(以下「申立人B」という。)より特許異議の申立てがなされ、同年11月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成31年2月1日付けで意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年3月7日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年4月12日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ、同年4月24日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和1年7月5日付けで意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年7月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年8月9日付けで申立人Bより意見書が提出され、同年8月19日付けで申立人Aより意見書が提出され、同年9月11日付けで訂正拒絶理由が通知されたが、その指定期間内に意見書の提出はなされなかったものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和1年7月5日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6264714号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下の訂正事項1及び2のとおりである(下線部が訂正箇所である。)。
なお、平成31年2月1日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体と;
表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が表面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部と;
前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された点灯装置と;
前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられる拡散性を有するカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」と記載されているのを、
「金属材料の平板から円形状に形成されており、外周縁部から前記円形状の径方向に延在する平板部および略中央部に前面側へ突出する凹部が形成されるとともに、当該凹部の略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体と;
表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が前面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように、前記器具本体の平板部に配設された光源部と;
前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記凹部に配設された点灯装置と;
前記光源部と、前記開口とを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記外周縁部に取付けられる拡散性を有するカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」に訂正する。

(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0008】に
「本発明の実施形態による照明器具は、略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体と、表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が表面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部と、前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された点灯装置と、前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられる拡散性を有するカバー部材と、を備えている。」と記載されているのを、
「本発明の実施形態による照明器具は、金属材料の平板から円形状に形成されており、外周縁部から前記円形状の径方向に延在する平板部および略中央部に前面側へ突出する凹部が形成されるとともに、当該凹部の略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体と、表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が前面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように、前記器具本体の平板部に配設された光源部と、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記凹部に配設された点灯装置と、前記光源部と、前記開口とを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記外周縁部に取付けられる拡散性を有するカバー部材と、を備えている。」に訂正する。

2 訂正の適否
2-1 訂正事項1について
ア 上記訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1について、訂正前の「前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された点灯装置と;」との記載を「前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記凹部に配設された点灯装置と;」に訂正すること(以下「訂正A」という。) を含むものであるから、まずは、上記訂正Aの訂正内容について検討する。
イ 検討
上記訂正Aは、訂正前の「前記光源部よりも背面側であって」との事項を削除する訂正を含むものであるから、かかる訂正によって、「点灯装置」の配設態様は、「前記光源部よりも背面側」に「配設され」る態様以外の配設態様をも含むものとなり、この点において、上記訂正Aは、本件訂正前の請求項1について、実質上特許請求の範囲を拡張するものであると認められる。要するに、訂正前の「点灯装置」の配設態様は、「前記光源部よりも背面側」に「配設され」るものとして特定されていたが、上記訂正Aによって、かかる特定事項が削除されたため、実質上特許請求の範囲が拡張されることとなった。
したがって、上記訂正Aを含む訂正事項1は、少なくとも特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第6項の規定に適合しない。

2-2 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために訂正されたものであるところ、訂正事項2は、上記訂正事項1と同様の訂正を含むものである。
したがって、訂正事項2は、訂正事項1と同様に、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない。

3 まとめ
以上のとおり、訂正事項1及び2に係る本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものではないから、本件訂正は認められない。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正を認めることができないので、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体と;
表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が表面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部と;
前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された点灯装置と;
前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられる拡散性を有するカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」

第4 取消理由通知の概要
当審が平成31年4月24日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、以下の取消理由1?5のとおりである。
1 取消理由1
本件特許に係る平成29年4月25日付け手続補正書による補正及び平成29年9月22日付け手続補正書による補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、本件発明に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号の規定により取り消すべきものである。
2 取消理由2
本件発明は、発明の詳細な説明にその発明を当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。したがって、本件発明に係る特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
3 取消理由3
本件発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。したがって、本件発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
4 取消理由4
本件発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。したがって、本件発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。
5 取消理由5
本件発明は、甲第1号証Aに記載された発明(甲1A発明)、周知技術1(甲第2?4号証A)及び周知技術2(甲第7?9号証A)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、又は甲第1号証Bに記載された発明(甲1B発明)、周知技術A(甲第2、3号証B)及び周知技術B(甲第6、9、10号証B)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
・甲第1号証A:登録実用新案第3146641号公報
・甲第2号証A:特開2009-218204号公報
・甲第3号証A:特開2007-18878号公報
・甲第4号証A:特開2003-92011号公報
・甲第7号証A:特開2009-283472号公報
・甲第8号証A:特開2007-27072号公報
・甲第9号証A:特開2008-300203号公報
・甲第1号証B:特開2008-124008号公報
・甲第2号証B:特開2006-73767号公報
・甲第3号証B:特開2002-367406号公報
・甲第6号証B:特開2004-103444公報
・甲第9号証B:特開平8-329709号公報
・甲第10号証B:特開2003-272411号公報
上記甲第1?4、7?9号証A(以下「甲1?4、7?9A」という。)は、申立人Aが提出した甲第1?4、7?9号証であり、上記甲第1?3、6、9、10号証B(以下「甲1?3、6、9、10B」という。)は、申立人Bが提出した甲第1?3、6、9、10号証である。

第5 当審の判断
1 取消理由1(特許法第17条の2第3項)について
(1)平成29年4月25日付け手続補正書による補正の内容
平成29年4月25日付け手続補正書による補正(以下「本件補正1」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、請求項1について補正前後の記載を示すと以下のとおりである(下線部が補正箇所である。以下同様。)。
ア 補正前の請求項1の記載
「【請求項1】
略中央部に開口を有する器具本体と;
複数の発光素子が実装された基板を有し、前記器具本体の前面側であって、かつ前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部と;
前記光源部よりも背面側へ突出するように前記器具本体に配設された点灯装置と;
前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられるカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」
イ 補正後の請求項1の記載
「【請求項1】
略中央部に開口を有する器具本体と;
複数の発光素子が実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部と;
前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側に配設された点灯装置と;
前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられるカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」

(2)平成29年9月22日付け手続補正書による補正の内容
平成29年9月22日付け手続補正書による補正(以下「本件補正2」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、上記本件補正1により補正された請求項1の記載(上記「(1)イ」)を、以下のとおり補正するものである。
「【請求項1】
略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体と;
表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が表面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部と;
前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された点灯装置と;
前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられる拡散性を有するカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」

(3)補正事項
上記(1)(2)のとおり、補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記光源部よりも背面側へ突出するように前記器具本体に配設された点灯装置」との事項(以下「事項A」という。)は、本件補正1により「前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側に配設された点灯装置」との事項(以下「事項B」という。)に補正され、さらに、本件補正2により「前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された点灯装置」との事項(以下「事項C」という。)に補正された。
そこで、上記事項B、Cが、本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面を併せて「当初明細書等」という。)、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえるか否か、すなわち、「当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである」か否か(知財高裁特別部判決 平成18年(行ケ)第10563号参照)について、以下検討する。

(4)検討
ア 当初明細書等の記載事項
当初明細書には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
「【0005】
【非特許文献1】シャープ/LEDシーリングライト[平成22年10月5日検索](http://www.sharp.co.jp/corporate/news/100819-a-2.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の照明器具では、横方向に出射されたLEDからの光を反射させて前面側に照射するものであるため、その構成が複雑化する可能性がある。また、照明器具の薄型化が困難になるという課題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、簡素化された構成で、薄型化が可能であり、また、発光素子から出射される光を均一化できる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による照明器具は、略中央部に開口を有する器具本体と、複数の発光素子が実装された基板を有し、前記器具本体の前面側であって、かつ前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部と、前記光源部よりも背面側へ突出するように前記器具本体に配設された点灯装置と、前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられるカバー部材と、を備えている。
・・・
【0013】
図1乃至図3において、照明器具は、本体1と、光源部2と、点灯装置3と、取付部4と、カバー部材5と、反射板6とを備えている。また、器具取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAを備えている。このような照明器具は、丸形の円形状の外観に形成され、前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。
【0014】
図2に代表して示すように、本体1は、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から円形状に形成されており、略中央部に、後述する点灯装置3及び取付部4を配設するための円形状凹部11及び開口12が形成されている。
・・・
【0023】
点灯装置3は、図2及び図3に示すように、略短円筒状のケースと、このケース内に取付けられて収容された回路基板31と、この回路基板に実装された回路部品とを備えている。この点灯装置3は、本体1の中央部に形成された凹部11に配置され取付けられており、アダプタA側が電気的に接続されて、アダプタAを介して商用交流電源に接続される。したがって、点灯装置3は、この交流電源を受けて直流出力を生成し、リード線を介してその直流出力を発光素子22に供給し、発光素子22を点灯制御するようになっている。」
イ また、当初明細書等の図2には、以下の図が示されている。


ウ 当初明細書(上記ア)には、「簡素化された構成で、薄型化が可能であり、また、発光素子から出射される光を均一化できる照明器具を提供すること」を技術課題とし(段落【0007】)、かかる課題を解決するために、少なくとも、「点灯装置」を、「前記光源部よりも背面側へ突出するように前記器具本体に配設」すること(段落【0008】)、より詳細には、「前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている」「照明器具」において(段落【0013】)、「本体1」は、「略中央部に、・・・点灯装置3・・・を配設するための円形状凹部11・・・が形成されている」こと(段落【0014】)、及び「点灯装置3」は、「本体1の中央部に形成された凹部11に配置され取付けられて」いることが記載されている(段落【0023】)。
さらに、当初明細書等の図2(上記イ)には、点灯装置3における、天井面Cに対向する一部分が、光源部2よりも背面側(天井面C側)へ突出するように配設された構造が示されているから、当初明細書等には、確かに、「点灯装置」を、上記事項Aで特定する「前記光源部よりも背面側へ突出する」ように配設すること(要するに、上記「一部分」が光源部よりも背面側へ突出するように配設されること)が記載されていると認められるが、上記事項B及びCの「前記光源部よりも背面側であって」として特定される光源部の配設態様は記載も示唆もない。
補足すれば、「点灯装置」の配設態様として、上記事項Bの「前記光源部よりも背面側であって、・・・前記開口の外周側に配設された」こと、及び、上記事項Cの「前記光源部よりも背面側であって、・・・前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された」ことは、「点灯装置」が全体として、「光源部よりも背面側」に配設されたものと解することができるが、そのような構成は、当初明細書等には記載されていない。また、上述したとおり、図2より、点灯装置3の一部分が、光源部2よりも背面側へ突出するように配設された構造が看取し得るが、そのような配設態様は、あくまでも「前記光源部よりも背面側へ突出する」ように配設するものであって、「前記光源部よりも背面側であって」「配設された」ものではない。そもそも本件発明は、照明器具の「薄型化」が技術課題とされていることからして(段落【0007】)、「光源部よりも背面側」に「点灯装置」の全体が位置するような配設態様が記載されていると解すべき合理性もない。
してみると、上記事項B及びCは、「当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項である」ということはできない。
エ 以上のとおり、上記事項B及びCは、本願の当初明細書等に記載がなされているということはできず、また、上記事項B及びCが、当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるということもできない。
したがって、上記事項B及びCを含む本件補正1及び2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものとはいえないので、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2 理由2(特許法第36条第4項第1号)について
(1)特許法第36条第4項は、「前項第3号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と規定し、特許法施行規則第24条の2(委任省令)は、「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならい。」と規定している。
そこで、本件明細書の発明の詳細な説明に、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が発明の技術上の意義を理解できる程度に記載されているのか、以下検討する。

(2)検討
本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、本件発明は、「簡素化された構成で、薄型化が可能であり、また、発光素子から出射される光を均一化できる照明器具を提供する」という課題(段落【0007】)を解決するために、上記1で述べた事項Cを発明特定事項として特定したものと理解することができる。
しかし、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された本件発明を実施するための形態(段落【0011】?段落【0041】)を検討しても、上記1(4)と同様であって、上記事項Cで特定する「点灯装置」を、「前記光源部よりも背面側であって」、「前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設」することは、記載も示唆もなされていない。
補足すれば、上記1(4)ウで述べたとおり、上記事項Cの「前記光源部よりも背面側であって、・・・前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された」ことは、「点灯装置」が全体として、「光源部よりも背面側」に配設されたものと解することができるが、そのように、「光源部よりも背面側」に「点灯装置」の全体が位置するような配設態様をとることで、何故、照明器具の「薄型化」という課題が解決し得るのか技術的に明らかでなく、その技術上の意義を理解することができない。
したがって、本願明細書の詳細な説明の記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が発明の技術上の意義を理解できる程度に記載されたものとはいえないから、経済産業省令で定めるところにより、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものと認めることができず、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。

3 理由3(特許法第36条第6項第1号)について
(1)特許法第36条第6項は、「第2項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁特別部判決 平成17年(行ケ)第10042号参照)。
以下、この観点に立って検討する。

(2)検討
上記2で述べたとおり、本件発明は、「簡素化された構成で、薄型化が可能であり、また、発光素子から出射される光を均一化できる照明器具を提供する」という課題を解決するために、上記事項Cを発明特定事項として特定したものと理解することができるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、上記事項Cで特定する「点灯装置」を、「前記光源部よりも背面側であって」、「前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設」することで、上記課題が解決できるとする合理的な説明はなされていない(そもそも、そのような「点灯装置」の配設態様は本件明細書の発明の詳細な説明に記載も示唆もなされていない。)。
したがって、上記事項Cは、上記の課題を解決するために足りると認識できる範囲のものと認めることはできないから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

4 理由4(特許法第36条第6項第2号)について
特許請求の範囲の請求項1には、「前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された点灯装置」と記載されているが、「点灯装置」の配設態様として、「前記光源部よりも背面側であって」、「前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された」との構成を技術的に特定することができず、発明が不明確である。
また、特許請求の範囲の請求項1には、「略中央部に開口を有する器具本体と;・・・光源部と;・・・点灯装置と;・・・カバー部材と;を具備することを特徴とする照明器具。」と記載されているが、「器具本体」の構成を必ずしも明確に特定することができず、発明が不明確である。
補足すれば、上記請求項1に記載された「器具本体」と、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された「器具本体」(段落【0029】、【0030】)及び「本体1」(段落【0013】?【0014】、【0022】?【0026】、【0033】?【0034】)の対応関係が明らかでないため、上記請求項1に記載された「器具本体」の構成を必ずしも明確に特定することができない。
したがって、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。

5 理由5(特許法第29条第2項)について
(1)刊行物の記載事項等
(1-1)申立人Aが提出した各甲号証の記載事項等
(1-1-1)甲1Aの記載事項及び甲1Aに記載された発明
ア 甲1Aの記載事項
(ア)甲1Aの10?12頁には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
「【0001】
この考案はLED照明器具に関する。
・・・
【0004】
また、発光面が主に鉛直方向に向いており、天井等からの高さがあることから照射角が狭くなり照らす範囲が制限されることから、広範囲な明るさを必要とする場所には不向きである。
そこで、この考案は、照明器具全体の高さを低く抑えると共に照射角を広くし、広範囲に照らすことを課題とする。
・・・
【0010】
この考案は、LED発光体を配置した円盤状の電子基板と、その外周部にLED発光体を配置した別の電子基板を、傾斜をつけてとりつけることでより広範囲を照らすことができ、本体部分のカップ型の取り付けつまみの内側底に凸型のネジ付口金のオスを取り付け、突起状のネジ付口金のメスに取り付けつまみを覆い被せ、取り付けつまみの底部で口金を結合させることで、照明器具全体の高さを低くし薄型構造を可能としている。
【実施例】
【0011】
本考案の一実施形態を、図1より図5に示す。
図1は本考案の全体を示す斜視図であり、本体部(1)をネジ付口金メス(6)に取り付ける様子を示している。
【0012】
図2は本考案の側面図であり、図3は本考案の側面断面図である。
図3中のカップ型の取り付けつまみ部(4)の底部にネジ付口金オス(A)を取り付けており、図2における取り付け後の高さ(8)がネジ付口金メス(6)のそれとさほど変わらない高さにできる。
【0013】
図3のネジ付口金オス(A)より電源供給コネクタ(K)を通じて電子回路(C)へ電源(AC100V)を供給する。
【0014】
図2の本体外周傾斜部(3)は水平方向より上向きに傾斜をつけており、本体外周傾斜部(3)に配置したLED発光体(2)の照射範囲を水平方向に向けることが可能であり、全体の照射角A(9)を、図6に示す従来品の照射角B(J)よりも広範囲にすることを可能とした。
【0015】
図4は本考案の正面図であり、図中の本体部(1)水平面に配置したLED発光体(2)と本体外周傾斜部(3)に配置したLED発光体(2)により、正面全体に照射可能としている。
「実施形態の効果」
【0016】
図4は本考案の正面図である。図中の本体部(1)に表面透明カバー(5)を取り付けることで、LEDのグレアを軽減させると共に、LED発光体(2)の汚れ付着を防止、金属片混入等によるショートを防止する。
【0017】
図5は本考案の裏面図である。図中の本体部(1)の中心面を金属性の放熱板(B)を取り付けることにより、発熱を抑えると共に、本体部(1)全体の強度を補強する。
・・・
【0020】
図3における電子回路(C)に人感センサーユニットを組み合わせることで、自動に点灯・消灯ができる。
「他の実施形態」
・・・
【0022】
図1におけるネジ付口金メス(6)に変わり、引掛けシーリングのメスに対しても、図3におけるネジ付口金オス(A)に口金変換器具を用いることで同様の利用を可能とする。」
(イ)甲1Aには、以下の図が示されている。





イ 甲1Aに記載された発明
上記アに摘示したとおり、甲1Aには、「LED照明器具」に関する技術について開示されており(段落【0001】)、かかる「LED照明器具」の実施の形態として、以下の事項が認定できる。
(ア)LED照明器具は、本体部1の水平面に配置したLED発光体2と、本体外周傾斜部3に配置したLED発光体2により、正面全体に照射可能としているものであって(段落【0015】)、本体部1、LED発光体を配置した円盤状の電子基板、電子回路C、表面透明カバー5及び放熱板Bを備えること(段落【0010】、【0013】、【0015】?【0017】)
(イ)本体部1は、水平面、本体外周傾斜部3及び本体外周部Dを有し(段落【0015】、図3)、前記水平面には、略中央部にネジ付口金メス6を挿通することができる孔が形成されていること(図1?3)
(ウ)LED発光体2を配置した円盤状の電子基板は、本体部1の水平面の前面側に配設され、LED発光体2が複数設けられており、略中央部にネジ付口金メス6を挿通することができる孔が形成されていること(図1?3)
(エ)電子回路Cは、本体部1の水平面の後面側に配設されていること(図3)
(オ)表面透明カバー5は、本体部1に取り付けられ、LEDのグレアを軽減させること(段落【0016】、図3)
(カ)本体部1の中心面に金属性の放熱板Bを取り付けることにより発熱を抑えること(段落【0017】)

以上によれば、甲1Aには、次の発明(以下「甲1A発明」という。)が記載されているものといえる。
「LED照明器具において、
LED照明器具は、本体部1の水平面に配置したLED発光体2と、本体外周傾斜部3に配置したLED発光体2により、正面全体に照射可能としているものであって、本体部1、LED発光体2を配置した円盤状の電子基板、電子回路C、表面透明カバー5及び放熱板Bを備え、
本体部1は、水平面、本体外周傾斜部3及び本体外周部Dを有し、前記水平面には、略中央部にネジ付口金メス6を挿通することができる孔が形成され、
LED発光体2を配置した円盤状の電子基板は、本体部1の水平面の前面側に配設され、LED発光体2が複数設けられており、略中央部にネジ付口金メス6を挿通することができる孔が形成され、
電子回路Cは、本体部1の水平面の後面側に配設され、
表面透明カバー5は、本体部1に取り付けられ、LEDのグレアを軽減させ、
本体部1の中心面に金属性の放熱板Bを取り付けることにより発熱を抑える、
LED照明器具。」

(1-1-2)甲2Aの記載事項
甲2Aには、以下の事項が記載されている。
「【0020】
基板2の表面には絶縁層が形成されており、この絶縁層上に図示しない配線パターン及び面実装部品のリード端子が接続される接続ランドが形成されている。基板2の中心点を除く中央部には、発光素子3・・・が中心点を回転軸として基板2の表面方向に沿って回転対称(本実施形態では発光素子3の発光中心を基準として45°対称)となるように所定の間隔(3mm?15mm、好ましくは5mm?10mm)をおいて配置されている。・・・」

(1-1-3)甲3Aの記載事項
甲3Aには、以下の事項が記載されている。
「【0017】
次に回路基板2について説明する。回路基板2は略正方形状のプリント配線板からなり、一方の面に複数個の発光ダイオードが実装され、他方の面には発光ダイオードの点灯回路を構成する回路部品が実装される。この回路基板2には、9個の発光ダイオードを直列接続するための配線パターンと、4個の発光ダイオードを直列接続するための配線パターンが共に形成されているので、実装する発光ダイオードの数を9個又は4個の何れかに選択できる。つまり9個用の基板と4個用の基板を1枚の回路基板2で兼用している。また回路基板2には、充填剤の注入時に空気を抜くために、回路基板2の表裏を貫通する複数個の丸孔2cが形成されるとともに、回路基板2の周縁部に矩形状に凹んだ複数の切欠2dが形成されている。」

(1-1-4)甲4Aの記載事項
甲4Aには、以下の事項が記載されている。
「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る照明装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<第1の実施の形態>
1.照明装置の構成
図1は本発明に係る照明装置の全体を示す平面図であり、図2は照明装置の裏面を示す裏面図である。照明装置1は、図1及び図2に示すように、可撓性を有する基板2と、この基板2の表面に形成された配線パターン3と、基板2上の配線パターン3に実装された3個のLED4R、4G、4Bからなる複数のLED群5と、基板2の裏面で表面側のLED群5を実装する位置に対応する部分に装着された放熱板(図2参照)6と、配線パターン3に接続された給電端子7と、この給電端子7に接続され且つ各LED4R、4G、4Bへの給電を制御するコントローラ8と、このコントローラ8に給電するために図外の電源に接続される電気ケーブル9とを備えている。」

(1-1-5)甲7Aの記載事項
ア 甲7Aには、以下の事項が記載されている。
「【0009】
まず、図1と図2に示す天井用照明器具について説明する。この照明器具は、天井C側に設けられ本体を構成する金属製の第一本体1と、第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ本体を構成する金属製の第二本体3と、好ましくは第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられたLEDユニット4と、第二本体3の上方空間に収められ例えば第一本体1の下面に設けられた、LEDユニット4のための点灯制御回路部5と、第一本体1の外周部付近において取り付けられLEDユニット4が覆われる透光性材料(例えば合成樹脂)などによるグローブ6とを備えている。
【0010】
第一本体1、第二本体3の材質としては例えば、鉄、アルミなどを用いる。第一本体1、第二本体3の少なくとも下面側は例えば白色の塗装膜・樹脂コーティング膜・セラミック膜などの薄膜が形成されて光反射性を有し、光反射率を例えば90%以上としている。LEDユニット4の発熱は第一本体1及び第二本体3に放熱されてLEDユニット4の温度上昇を抑えている。第一本体1の下面周部には図示されないグローブ支持具などを設けており、これに対してグローブ6が着脱可能に支持される。第二本体3の略中央には孔7が形成される。第一本体1は第二本体3よりも大径を成し、その略中央には孔8が形成されるとともに孔8の近辺は外周側部分よりも低く形成された段差状を成している。また、第二本体3には点灯制御回路部5から突設されたリモコン信号受信部9が貫通されている。なお、リモコン信号受信部9が第二本体3の上面側に配置され、第二本体3にはリモコン信号受信部9に対応する孔を形成してもよいし、さらに、その孔にリモコン信号が通過可能な樹脂板などを装着しておいてもよい。
【0011】
第一本体1及び第二本体3を含む本体は、その略中央部に天井Cへの取り付け機構が設けられ、LEDユニット4は、その本体の下面に前記取り付け機構を避けるように設けられているものである。次に、その取り付け機構について述べる。天井Cには引掛ローゼット10が固定されており、引掛ローゼット10に対して本照明器具が取り付けられている。引掛ローゼット10はその下端に鍔状の係止部11があるタイプを例示している。第一本体1の中央付近の前記段差状部下面には例えば環状を成す被取付具12が固定され、その略逆L状の被係止部13がその背面側のバネ14により中心孔方向に付勢されて、被係止部13の先端下面が係止部11の上面に係止されることにより、本照明器具が天井Cにいわゆる直付け状態で取り付けられている。」
イ 甲7Aには、以下の図が示されている。



(1-1-6)甲8Aの記載事項
ア 甲8Aには、以下の事項が記載されている。
「【0007】
図1?2に示す第一実施形態による天井用LED照明器具は、金属板1と、金属板1の外周部に設けられた略垂直方向の金属側板2と、金属ベース部3を設けたLEDユニット4とを備え、金属板1にLEDユニット4を金属ベース部3を介して固定して、主として下方向の配光を得るとともに、金属側板2にもLEDユニット4を金属ベース部3を介して固定して、主として側部方向の配光を得ることを特徴としている。
・・・
【0012】
この実施形態では、金属板1および金属側板2は一体的に形成されて照明器具の本体を構成する反射板を成し、この反射板は照明器具の本体を構成する第二金属板6の下面側にビスその他の適宜手段で固定されている。前記反射板すなわち金属板1の略中央には孔7が形成される。第二金属板6は金属板1よりも大径を成し、その略中央には孔8が形成されるとともに孔8の近辺は他の部分よりも低く形成される段差状を成している。点灯制御回路5は第二金属板6側に適宜手段で固定されているのが一般的に好ましい。また、第二金属板6の外周付近には図示されないグローブ支持具などを設けており、これにより合成樹脂製などによる半透光性のグローブ9が前記グローブ支持具に対して着脱可能に支持されている。
【0013】
さらに他の構成について述べると、天井Cには引掛ローゼット10が固定されており、引掛ローゼット10に対して本照明器具が取り付けられている。引掛ローゼット10はその下端に鍔状の係止部11があるタイプを例示している。第二金属板6の中央付近の前記段差状部下面には被取付具12が固定され、その略逆L状の被係止部13がバネ14により中心孔方向に付勢されて、被係止部13の先端下面が係止部11の上面に係止されることにより、本照明器具が天井Cにいわゆる直付け状態で取り付けられている。」
イ 甲8Aには、以下の図が示されている。



(1-1-7)甲9Aの記載事項
ア 甲9Aには、以下の事項が記載されている。
「【0028】
図1?図3に示すように、本実施例の照明器具は、器具取付面Aに設置される器具本体10、半導体発光素子からなる光源体20、レンズ体30、反射体40およびグローブ50で構成する。
【0029】
器具本体10は、鉄板等の金属に白色塗装を施した一辺が約500mmの正方形をなすシャーシーとして構成され、シャーシーの略中央部には天井等の器具取付面Aに設置された引掛シーリング11に着脱可能に設置されるアダプタ12を設ける。さらに、アダプタ12の周囲の空間部に光源体20を点灯するための点灯装置13を取り付け、対向する辺の外縁部14、15に光源体20を設置するための設置部16、17を設ける。図中18は、リモコン受光部である。
・・・
【0033】
グローブ50は、透光性を有する乳白色の半透明な合成樹脂で構成し、浅い皿状の球面状をなす発光部51と、器具本体10の外縁部14、15に対応する部分に外周部を残して上面を開口することにより形成した開口部52とを一体に形成し、器具本体の下方から被せることにより、光源体20および反射体40を覆うように器具本体の下面全体を囲むようにして取り付けられる。グローブ50は、その肉厚を器具本体10の外縁部14、15に対応するグローブの外周部から中央部にいくに従い薄くなるようにして成形し、外縁部から中央部にいくに従い透過率が高くなるように構成する。なお、グローブ50は公知の凹凸の係合手段や取付金具等の手段で器具本体の外縁部に着脱可能に取り付けられる。」
イ 甲9Aには、以下の図が示されている。



(1-2)申立人Bが提出した各甲号証の記載事項等
(1-2-1)甲1Bの記載事項及び甲1Bに記載された発明
ア 甲1Bの記載事項
(ア)甲1Bには、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、LEDユニット、LEDユニットの製造方法、及びLEDユニットを用いた天井用照明器具に関し、詳しくは環状または略C状を成すLEDユニットに画期的な実用性及び経済性をもたらすものである。」
【0002】
LEDユニットは通常、1個または複数個のLEDチップ(素子)を備えている。そして大抵の場合、絶縁基板の全面に貼り付けられた銅箔をエッチングすることにより、所定の回路パターンを形成したプリント基板が用意され、その回路パターンの所定位置にLEDチップが支持されている。しかし、一般的に銅箔の厚さは35μm程度であり、高輝度のLEDチップを、殊に多数搭載する用途には全く適さず、特別な放熱手段を付加してもLEDチップの高温度化は避けられないため、その発光輝度が大幅に低下する上、短寿命になる。従って、一般的な居室の主照明のように、およそ5000?10000ルーメンもの総光束が必要な用途には到底適合しがたい。また、銅箔をエッチングすると、除去された銅が無駄になり、いわゆる材料ロスが大きく発生する。そして、環状のLEDユニットを製造しようとすれば、絶縁基板の中央部を大きく打ち抜く必要があり、これまた、材料ロスが大きく発生する。ところで、いわゆるプリント基板を用いていない環状のLEDユニットとして、特許文献1に開示されたものがある。しかしながら、そのLEDユニットにおいて用いられる電極パターンにあっても、当該公報の図3に示されるように、やはり中央部が相当な大径に打ち抜かれた環状を成している。
・・・
【0007】
まず、図1と図2に示す天井用照明器具について説明する。この照明器具は、天井C側に設けられ本体を構成する金属製の第一本体1と、第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ本体を構成する金属製の第二本体3と、好ましくは第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられたLEDユニット4と、第二本体3の上方空間に収められ例えば第一本体1の下面に設けられた、LEDユニット4のための点灯制御回路部5と、第一本体1の外周部付近において取り付けられLEDユニット4が覆われる透光性材料(例えば合成樹脂)などによるグローブ6とを備えている。
【0008】
第一本体1、第二本体3の材質としては例えば、鉄、アルミなどを用いる。第一本体1、第二本体3の少なくとも下面側は例えば白色の塗装膜・樹脂コーティング膜・セラミック膜などの薄膜が形成されて光反射性を有し、光反射率を例えば90%以上としている。LEDユニット4の発熱は第一本体1及び第二本体3に放熱されてLEDユニット4の温度上昇を抑えている。第一本体1の下面周部には図示されないグローブ支持具などを設けており、これに対してグローブ6が着脱可能に支持される。第二本体3の略中央には孔7が形成される。第一本体1は第二本体3よりも大径を成し、その略中央には孔8が形成されるとともに孔8の近辺は外周側部分よりも低く形成された段差状を成している。また、第二本体3には点灯制御回路部5から突設されたリモコン信号受信部9が貫通されている。なお、リモコン信号受信部9が第二本体3の上面側に配置され、第二本体3にはリモコン信号受信部9に対応する孔を形成してもよいし、さらに、その孔にリモコン信号が通過可能な樹脂板などを装着しておいてもよい。
・・・
【0010】
本照明器具を取り付けるには、引掛ローゼット10に対して孔8を位置合わせしてからグローブ6のない状態の本照明器具を押し上げるとよい。そうすると、下面を斜面とした係止部11に対して先端上面を斜面とした被係止部13がバネ14の付勢方向に逆らって後退してから、図1のように被係止部13は係止部11の上面に係止されるようになる。そして、点灯制御回路部5に給電する引掛プラグ15を引掛ローゼット10下面の一対の給電用円弧孔(図示せず)に差し込んで所定角度回転して受電する。受電された交流電源はコード16を介して点灯制御回路部5に給電される。また、本照明器具を取り外すには、引掛プラグ15を引掛ローゼット10から前記とは反対方向に回転して取り外してから、被取付具12下面の孔17から突出するように被係止部13から下方に向けて形成した操作部18を指で外向きに後退させるとよい。
・・・
【0012】
次に、LEDユニット4について図3?図7を参照して説明する。LEDユニット4は、LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えている。これらのLEDエレメント23は、隣り合う金属板22、22が互いに離間した状態で全体として略環状または略C状に配置され、各LEDエレメント23は、例えば金またはアルミなどの金属線24を用いて、所定の直列順序で電気的接続されているが、少なくとも一箇所において、その電気的接続のループが途切れている。そして、この途切れた箇所は一対の外部端子25、26に電気的接続され、かつ、各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成されている。なお、図5において矢印Xの延長線上で透光性部材27が途切れており、透光性部材27が略C状を成していても光学的性能に別段影響はないが、LEDユニット4を単体で取り扱うときにねじれを発生しやすくなり、強度面ではあまり好ましいとは言えない。なお、各金属板22は、図示されない金属フープ材などの所定の大面積の金属元板を切断することにより形成され、各金属板22が略矩形状であれば、実質的に材料ロスなく切断形成でき、実用性かつ経済性に極めて優れたものとなる。また、金属板22を径方向に所定幅をもつ略円弧状(最大でも略半円周にわたる略円弧状)に切断形成することもでき、この場合でも、略円弧状の金属板22を切断形成する際に、金属板22同士がオーバーラップしない限り、ぎりぎりまで近づけて金属元板から切断形成できるため、従来に比して材料ロスを大幅に低減でき、実用性かつ経済性に優れたものとなる。
・・・
【0029】
次に図25は、以上述べた各実施形態に適用できる点灯制御回路部5を含む回路ブロックの一例を示す。例えば前記引掛プラグ15で受電された交流電源61は整流器62で整流された後、昇圧または降圧型のチョッパー回路などの電源回路63を介してLEDユニット4に対して直流電圧を供給している。・・・」
(イ)甲1Bには、以下の図が示されている。



イ 甲1Bに記載された発明
上記アに摘示したとおり、甲1Bには、「天井照明器具」に関する技術について開示されており(段落【0001】)、かかる「天井照明器具」の実施の形態として、以下の事項が認定できる。
(ア)天井照明器具は、天井C側に設けられ本体を構成する金属製の第一本体1と、第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ本体を構成する金属製の第二本体3と、第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられたLEDユニット4と、第二本体3の上方空間に収められ、第一本体1の下面に設けられた、LEDユニット4のための点灯制御回路部5と、第一本体1の外周部付近において取り付けられLEDユニット4が覆われる透光性材料などによるグローブ6とを備えていること(段落【0007】)
(イ)LEDユニット4の発熱は第一本体1及び第二本体3に放熱されてLEDユニット4の温度上昇を抑えていること、
第一本体1の下面周部にはグローブ支持具などを設けており、これに対してグローブ6が着脱可能に支持されること、及び、
第二本体3の略中央には孔7が形成され、第一本体1は第二本体3よりも大径を成し、その略中央には孔8が形成されこと(段落【0008】)、
(ウ)LEDユニット4は、LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成されていること(段落【0012】)
(エ)グローブ6は、LEDユニット4及び孔7及び孔8を含めた本体の前面側を覆うように構成されていること(図1)

以上によれば、甲1Bには、次の発明(以下「甲1B発明」という。)が記載されているものといえる。
「天井照明器具において、
天井照明器具は、天井C側に設けられ本体を構成する金属製の第一本体1と、
第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ本体を構成する金属製の第二本体3と、第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられたLEDユニット4と、第二本体3の上方空間に収められ、第一本体1の下面に設けられた、LEDユニット4のための点灯制御回路部5と、第一本体1の外周部付近において取り付けられLEDユニット4が覆われる透光性材料などによるグローブ6とを備え、
LEDユニット4の発熱は第一本体1及び第二本体3に放熱されてLEDユニット4の温度上昇を抑え、
第一本体1の下面周部にはグローブ支持具などを設けており、これに対してグローブ6が着脱可能に支持され、
第二本体3の略中央には孔7が形成され、第一本体1は第二本体3よりも大径を成し、その略中央には孔8が形成され、
LEDユニット4は、LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成され、
グローブ6は、LEDユニット4及び孔7及び孔8を含めた本体の前面側を覆うように構成されている、
天井照明器具。」

(1-2-2)甲2Bの記載事項
ア 甲2Bには、以下の事項が記載されている。
「【0019】
図3は、本発明の照明装置10の構成を示す平面図および断面図である。また、図4は、本発明の照明装置10の構成を示す拡大断面図である。照明装置10は、多数のLED31が装着されたプリント配線基板30、光拡散樹脂板34、ブラケット(基台)32、絶縁シート33からなる。プリント配線基板30は中央に開口部を有する円盤形状(リング状)であり、表面には多数の表面実装型のLED31が装着されており、裏面には図示しない各色ごとのリード線が接続されている。
【0020】
図5は、プリント配線基板30上におけるLED31の実装配置を示す平面図である。図5(a)はプリント配線基板30全体を示しており、図5(b)はプリント配線基板30の一部を拡大したものである。図5(b)において、白いLED30はR(赤色)のLEDであることを示しており、斜線のハッチングはG(緑色)、黒はB(青色)のLEDであることを示している。」
イ 甲2Bには、以下の図が示されている。



(1-2-3)甲3Bの記載事項
ア 甲3Bには、以下の事項が記載されている。
「【0017】図2はリング状LED照明装置1のA-A’線で切断した部分の断面図である。この図から分かるように、リング状本体板2は、リング状端板部分21と、この表面22の内外周縁から僅かに内側に入った位置から垂直に起立している内周側板部分23および外周側板部分24とを備えた断面形状をしている。これら側板部分23、24の間の表面22の部分にリング状LED基板5が密着状態で取り付けられており、このリング状LED基板5の表面に多数個のLED6が実装されている。
・・・
【0023】ここで、本例では、リング状LED基板5の裏面52、すなわち、LED実装面51(図2参照)の反対側の面から、導電性のパターンを排除した構成としてある。そして、露出した状態のリング状LED基板の裏面52を熱伝導性の高いアルミニウム製のリング状本体板2の表面21に密着状態に取り付け、LED6で発生した熱をLED基板5からアルミニウム製のリング状本体板2に効率良く伝達し、当該リング状本体板2から外部に放出できるようにしている。」
イ 甲3Bには、以下の図が示されている。



(1-2-4)甲6Bの記載事項
ア 甲6Bには、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、蛍光ランプおよび発光ダイオードを具備している照明器具に関する。
・・・
【0038】
点灯装置6,7が給電されると、蛍光ランプ2,3および発光ダイオード4は点灯する。そして、蛍光ランプ2,3から放射された白色光および発光ダイオード4から放射された光は、グローブ19で拡散されて混光され、グローブ19を透過して下方に出射される。」
イ 甲6Bには、以下の図が示されている。


(1-2-5)甲9Bの記載事項
ア 甲9Bには、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、環状蛍光ランプを用いた照明器具に関する。
・・・
【0047】さらに、セード29の拡散作用により、セード29に映るランプイメージを低減できるとともに、配光を均一にできる。」
イ 甲9Bには、以下の図が示されている。



(1-2-6)甲10Bの記載事項
ア 甲10Bには、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、放電灯を照明用光源として利用する照明器具に関する。
・・・
【0036】図9に示すように、この照明器具は、放電灯点灯装置および可視発光ダイオード2の点灯装置を具備し、放電灯1と複数の可視発光ダイオード2とを照明用光源として組み合わせて器具本体3に配置し、放電灯1と複数の可視発光ダイオード2を覆うように拡散性のカバー4を有する。また、放電灯1と複数の可視発光ダイオード2とを目的に応じて切り替えて点灯、または同時に点灯可能とする点灯切替手段を備えている。」
イ 甲10Bには、以下の図が示されている。


(2)対比・判断
(2-1)甲1A発明を主引用発明とした場合
ア 対比
(ア)甲1A発明の「本体部1」は、「水平面、本体外周傾斜部3及び本体外周部Dを有」するものであって、「前記水平面には、略中央部にネジ付口金メス6を挿通することができる孔が形成され」るものであるところ、上記「(1)(1-1)(1-1-1)」(以下「(1-1-1)」と略記する。以下同様。)に摘示した甲1Aの「図3中のカップ型の取り付けつまみ部(4)の底部にネジ付口金オス(A)を取り付けており、図2における取り付け後の高さ(8)がネジ付口金メス(6)のそれとさほど変わらない高さにできる。」(段落【0012】)との記載及び図2、3の図示内容によれば、上記「水平面」に「形成され」た「孔」は、少なくとも、天井面に取付けるための開口ということもできる。
したがって、甲1A発明の上記「孔」を有する「本体部1」は、本件発明の「略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体」に相当するものといえる。
(イ)甲1A発明の「円盤状の電子基板」には、「略中央部にネジ付口金メス6を挿通することができる孔が形成され」ており、上記「孔」は開口ということもできるから、上記「円盤状の電子基板」は、本件発明の「開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板」に相当するものといえる。
また、甲1A発明の「円盤状の電子基板」には、「LED発光体2が複数設けられて」おり、複数のLED発光体2が電子基板の表面側に実装されていることが明らかであり、さらに、上記「LED発光体2」は、発光素子ということもできるから、甲1A発明の「LED発光体2を配置した円盤状の電子基板」と、本件発明の「表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が表面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板」とは、「複数の発光素子が表面側に実装され、開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板」の限度で共通するものといえる。
(ウ)甲1A発明の「LED発光体2を配置した円盤状の電子基板」は、それが全体として光源部をなすことが明らかである。
また、甲1A発明は、「本体部1の中心面に金属性の放熱板Bを取り付けることにより発熱を抑える」というものであるから、「LED発光体2を配置した円盤状の電子基板」と、本体部1とが熱的に結合されていることも明らかである。
さらに、甲1A発明の「LED発光体2を配置した円盤状の電子基板」は、「本体部1の水平面の前面側に配設され」るものであって、「前記水平面には、略中央部にネジ付口金メス6を挿通することができる孔が形成され」るというものであるから、「本体部1」に対する「LED発光体2を配置した円盤状の電子基板」の配設態様は、本体部1の前面側であって、複数のLED発光体2の実装面が前面側へ向くように本体部1の孔の周囲に配設されたものということもできる。
したがって、甲1A発明の「LED発光体2を配置した円盤状の電子基板」と、本件発明の「表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が表面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部」とは、上記(ア)(イ)をも踏まえると、「複数の発光素子が表面側に実装され、開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部」の限度で共通するものといえる。
(エ)上記(1-1-1)に摘示した甲1Aの「図3における電子回路(C)に人感センサーユニットを組み合わせることで、自動に点灯・消灯ができる。」(段落【0020】)等の記載によれば、甲1A発明の「電子回路C」は、LED照明器具を点灯させための装置を構成することが明らかであるから、本件発明の「点灯装置」に相当する。
また、甲1A発明の「電子回路C」は、「本体部1の水平面の後面側に配設され」るものであって、「前記水平面には、略中央部にネジ付口金メス6を挿通することができる孔が形成され」るというものであるから、上記「本体部1」に対する「電子回路C」の配設態様は、LED発光体2を配置した円盤状の電子基板よりも背面側であって、本体部1における孔の外周側に配設されたものということもできる。
したがって、甲1A発明の「電子回路C」と本件発明の「前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された点灯装置」とは、上記(ア)(ウ)をも踏まえると「前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側に配設された点灯装置」の限度で共通するものといえる。
(オ)甲1A発明の「本体部1に取り付けられ、LEDのグレアを軽減させ」る「表面透明カバー5」と、本件発明の「前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられる拡散性を有するカバー部材」とは、上記(ア)をも踏まえると「前記器具本体に取付けられるカバー部材」の限度で共通するものといえる。
(カ)甲1A発明の「LED照明器具」は、本件発明の「照明器具」に相当する。

以上によれば、本件発明と甲1A発明とは、
「略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体と;
複数の発光素子が表面側に実装され、開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部と;
前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側に配設された点灯装置と;
前記器具本体に取付けられるカバー部材と;
を具備する照明器具。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
「基板」の構成について、本件発明は、「表面側に配線パターンが形成される」ものであり、器具本体の「開口」と比較し、「より大きな開口」が形成されるものであるのに対し、甲1A発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「点灯装置」の配設態様について、本件発明は、「前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設され」るのに対し、甲1A発明は、「本体部1の水平面の後面側に配設され」る点。
<相違点3>
「カバー部材」の構成について、本件発明は、「前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように」取付けられるものであって、「拡散性を有する」ものであるのに対し、甲1A発明は、「本体部1に取り付けられ、LEDのグレアを軽減させ」るものである点。

イ 判断
(ア)相違点1について
a 上記(1-1-2)に摘示した甲2Aには、表面に配線パターン及び面実装部品のリード端子が接続される接続ランドが形成された基板2に発光素子3を配置することが記載され(段落【0020】)、上記(1-1-3)に摘示した甲3Aには、配線パターンが形成された回路基板2に発光ダイオードを実装することが記載され(段落【0017】)、上記(1-1-4)に摘示した甲4Aには、配線パターン3が形成された基板2にLED群5を実装することが記載されているように(段落【0012】)、発光素子を実装する基板の表面側に配線パターンを形成することは、かかる技術分野の周知技術(以下「周知技術1」という。)ということができる。
そして、甲1A発明の「電子基板」に「LED発光体2を配置」するに際し、給電のための配線が必要であることは技術的に明らかであるから、甲1A発明の「電子基板」をその表面側に配線パターンを形成したものとして構成することは、上記周知技術1に接した当業者にとって格別困難なことではない。
b また、甲1A発明において、「円盤状の電子基板」は、「本体部1の水平面の前面側に配設され」るものであって、上記「電子基板」は、上記「水平面」に配設されるように構成されるものであるから、そのような配設を可能ならしめるために、「円盤状の電子基板」に「形成された」「孔」の大きさを、「本体部1」の「水平面」に「形成され」た「孔」の大きさよりも大きな孔として構成することも、あるいは、「本体部1」の「水平面」に「形成され」た「孔」の大きさと同程度に構成することも、当業者が適宜設定する設計事項というべきである。
c したがって、上記相違点1に係る本件発明の構成は、甲1A発明及び上記周知技術1に基いて当業者が容易になし得るものといえる。

(イ)相違点2について
a 甲1A発明は、「電子回路Cは、本体部1の水平面の後面側に配設され」るものであるところ、上記「本体部1」は、「水平面、本体外周傾斜部3及び本体外周部Dを有し」て構成されるものであり、さらに、甲1A発明は、「本体部1の中心面に金属性の放熱板Bを取り付けることにより発熱を抑える」というものである。
ここで、甲1A発明の「水平面」及び「本体外周傾斜部3」は、それらが一体として、「本体外周部D」及び「放熱板B」からなる面に対して、凹部を形成していると理解することもできるから、上記相違点2は実質的な相違点ではない。
b また、仮に、上記相違点2が実質的な相違点であるとしても、甲1A発明は、「照明器具全体の高さを低く抑える」ことを課題とするものであるから(上記(1-1-1)段落【0004】)、少なくとも、上記「水平面」及び「本体外周傾斜部3」からなる「本体部1」の部位を、凹部として構成し、かかる凹部に電子回路Cを配設することで照明器具全体の高さを低く抑えること、すなわち、上記相違点2に係る本件発明の構成は、上記甲1A発明に基いて当業者が容易に想到し得るものといえる。

(ウ)相違点3について
a 甲1A発明の「表面透明カバー5」は、「LEDのグレアを軽減させ」るものであるから、LEDのグレアを軽減させる程度には、拡散性を有するものとして構成されていることが技術的に明らかである。
b また、上記(1-1-5)に摘示した甲7Aには、引掛ローゼット10に取り付けられる天井用照明器具におけるグローブ6の構成として(段落【0009】、【0011】)、上記グローブ6は、第一本体1の下面周部に設けられたグローブ支持具に支持されるものであって、LEDユニット4、第一本体1の略中央に形成された孔8及び第二本体3の略中央に形成された孔7を含めて、第一本体1及び第二本体3の前面側を覆うように取り付けられることが記載され(段落【0010】、図1)、
上記(1-1-6)に摘示した甲8Aには、引掛ローゼット10に取り付けられる天井用LED照明器具におけるグローブ9の構成として(段落【0006】、【0012】、【0013】)、上記グローブ9は、第二金属板6の外周付近に設けられたグローブ支持具に支持されるものであって、LEDユニット4、金属板1の略中央に形成された孔7及び第二金属板6の略中央に形成された孔8を含めて、第二金属板6及び金属板1の前面側を覆うように取り付けられることが記載され(段落【0007】、【0012】、図1)、
上記(1-1-7)に摘示した甲9Aには、引掛シーリング11に取り付けられる照明器具におけるグローブ50の構成として(段落【0028】、【0029】)、上記グローブ50は、器具本体10の外縁部に設けられた取付金具等の手段で取り付けられるものであって、器具本体10の下方から被せることにより、光源体20および反射体40を覆うように器具本体の下面全体を囲むようにして取り付けられることが記載されているように(段落【0028】、【0033】、図1)、
引掛シーリングに取り付けられる照明器具におけるカバー部材の構成として、カバー部材を光源部及び開口を含めた器具本体の前面側を覆うように取り付けることは、かかる技術分野の周知技術(以下「周知技術2」という。)ということができる。
c ここで、上記(1-1-1)に摘示した甲1Aには、「図1におけるネジ付口金メス(6)に変わり、引掛けシーリングのメスに対しても、図3におけるネジ付口金オス(A)に口金変換器具を用いることで同様の利用を可能とする。」(段落【0022】)と記載されているように、甲1A発明は、引掛けシーリングに取り付けられるような構成として設計変更することも予定されているから、甲1A発明を、そのような引掛けシーリングに取り付けられるような構成として設計変更するに際し、そのような照明器具を前提とした上記周知技術2を参考とする動機付けは十分に存在する。
してみると、甲1A発明を、引掛けシーリングに取り付けられるような構成として設計変更するに際し、「本体部1に取り付けられ」る「表面透明カバー5」を、光源部及び開口を含めた器具本体の前面側を覆うようなものとして構成することは、上記周知技術2に接した当業者にとって格別困難なことではない。
d したがって、上記相違点3に係る本件発明の構成は、甲1A発明及び周知技術2に基いて当業者が容易になし得るものといる。

(エ)そして、本件発明の作用効果も、甲1A発明、周知技術1及び周知技術2から当業者が予測し得る範囲のものといえる。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明は、甲1A発明、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2-2)甲1B発明を主引用発明とした場合
ア 対比
(ア)甲1B発明の「本体」は、「金属製の第一本体1」と、「第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ」る「金属製の第二本体3」を備えるものであって、「第二本体3の略中央には孔7が形成され、第一本体1は第二本体3よりも大径を成し、その略中央には孔8が形成され」るものであるところ、上記(1-2-1)に摘示した甲1Bの「本照明器具を取り付けるには、引掛ローゼット10に対して孔8を位置合わせしてからグローブ6のない状態の本照明器具を押し上げるとよい。」(段落【0010】)との記載及び図1の図示内容によれば、甲1B発明の「孔7」及び「孔8」は、少なくとも、天井面に取付けるための開口ということもできる。
したがって、甲1B発明の上記「孔7」及び「孔8」を有する「本体」は、本件発明の「略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体」に相当するものといえる。
(イ)甲1B発明の「LEDチップ21」は、甲1B発明の「発光素子」に相当する。
また、甲1B発明の「LEDユニット4」は、「第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられ」るものであって、「LEDユニット4の発熱は第一本体1及び第二本体3に放熱されてLEDユニット4の温度上昇を抑え」るというものであるから、上記「LEDユニット4」が、本体の前面側であって、本体と熱的に結合されていることは、技術的に明らかである。
さらに、甲1B発明の「LEDユニット4」は、「LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成され」るものであるところ、図1に示された「第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられ」た「LEDユニット4」の配設態様をも加味すれば、複数のLEDチップが前面側へ向くように本体の孔7、8の周囲に配設された光源部ということもできる。
したがって、甲1B発明の「LEDユニット4」と、本件発明の「表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が表面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し、前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子の実装面が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部」とは、上記(ア)をも踏まえると、「前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部」の限度で共通するものといえる。
(ウ)上記(1-2-1)に摘示した甲1Bの「次に図25は、以上述べた各実施形態に適用できる点灯制御回路部5を含む回路ブロックの一例を示す。例えば前記引掛プラグ15で受電された交流電源61は整流器62で整流された後、昇圧または降圧型のチョッパー回路などの電源回路63を介してLEDユニット4に対して直流電圧を供給している。」(段落【0029】)等の記載によれば、甲1B発明の「点灯制御回路部5」は、天井照明器具を点灯させための装置を構成することが明らかであるから、本件発明の「点灯装置」に相当する。
また、甲1B発明の「点灯制御回路部5」は、「第二本体3の上方空間に収められ、第一本体1の下面に設けられ」るというものであるから、「本体」に対する「点灯制御回路部5」の配設態様は、LEDユニット4よりも背面側であって、本体における孔7、8の外周側に配設されたものということもできる。
したがって、甲1B発明の「点灯制御回路部5」と本件発明の「前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側であり、前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設された点灯装置」とは、「前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側に配設された点灯装置」の限度で共通するものといえる。
(エ)甲1B発明の「LEDユニット4及び孔7及び孔8を含めた本体の前面側を覆うように構成されている」、「第一本体1の外周部付近において取り付けられLEDユニット4が覆われる透光性材料などによるグローブ6」と、本件発明の「前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられる拡散性を有するカバー部材」とは、上記(ア)(イ)をも踏まえると「前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられるカバー部材」の限度で共通するものといえる。
(オ)甲1B発明の「天井照明器具」は、本件発明の「照明器具」に相当する。

以上によれば、本件発明と甲1B発明とは、
「略中央部に天井面に取付けるための開口を有する器具本体と;
前記器具本体の前面側であって、前記器具本体と熱的に結合され、かつ複数の発光素子が前面側へ向くように前記器具本体の開口の周囲に配設された光源部と;
前記光源部よりも背面側であって、前記器具本体における前記開口の外周側に配設された点灯装置と;
前記光源部及び開口を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられるカバー部材と;
を具備する照明器具。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点A>
「光源部」の構成について、本件発明は、「表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が表面側に実装され、前記開口より大きな開口が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し」、発光素子の「実装面」が前面側へ向くように配設されているのに対し、甲1B発明は、「LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成され」、「第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられ」ている点。
<相違点B>
「点灯装置」の配設態様について、本件発明は、「前記器具本体の略中央部に形成された凹部に配設され」るのに対し、甲1B発明は、「第二本体3の上方空間に収められ、第一本体1の下面に設けられ」ている点。
<相違点C>
「カバー部材」の構成について、本件発明は、「拡散性を有する」ものであるのに対し、甲1B発明は、「透光性材料などによる」ものである点。

イ 判断
(ア)相違点Aについて
a 上記(1-2-1)に摘示した甲1Bの「LEDユニットは通常、1個または複数個のLEDチップ(素子)を備えている。そして大抵の場合、絶縁基板の全面に貼り付けられた銅箔をエッチングすることにより、所定の回路パターンを形成したプリント基板が用意され、その回路パターンの所定位置にLEDチップが支持されている。」(段落【0002】)との記載によれば、照明器具に用いられる光源部(LEDユニット)を、表面側に配線パターン(回路パターン)が形成された基板(プリント基板)に複数の発光素子(LEDチップ)を実装(支持)して構成することは、かかる技術分野でごく普通に採用されている技術であると理解することができ、周知技術(以下「周知技術A」という。)ということもできる(さらに必要ならば、上記(1-2-2)に摘示した甲2Bの段落【0019】、【0020】、図5)、及び上記(1-2-3)に摘示した甲3Bの段落【0017】、【0023】、図2、4、等参照)。
b 他方、甲1Bには、「しかし、一般的に銅箔の厚さは35μm程度であり、高輝度のLEDチップを、殊に多数搭載する用途には全く適さず、特別な放熱手段を付加してもLEDチップの高温度化は避けられないため、その発光輝度が大幅に低下する上、短寿命になる。従って、一般的な居室の主照明のように、およそ5000?10000ルーメンもの総光束が必要な用途には到底適合しがたい。また、銅箔をエッチングすると、除去された銅が無駄になり、いわゆる材料ロスが大きく発生する。そして、環状のLEDユニットを製造しようとすれば、絶縁基板の中央部を大きく打ち抜く必要があり、これまた、材料ロスが大きく発生する。」(段落【0002】)とも記載されており、上記周知技術Aには、高輝度のLEDチップを殊に多数搭載する用途には適さず、LEDチップの高温度化が避けられないこと、銅箔をエッチングすると除去された銅が無駄になり材料ロスが発生すること、環状のLEDユニットを製造しようとすれば絶縁基板の中央部を大きく打ち抜く必要があり材料ロスが発生すること、などの問題も指摘されている。
c そうすると、甲1B発明は、上記bの問題をも踏まえて光源部(LEDユニット4)を「LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成され」たものとして構成したものと理解することもできるが、一方で、照明器具の用途、コスト、生産性等をも考慮し、かかる技術分野でごく普通に採用されている技術の採用の要否を含めて、そのメリット、デメリットをそれぞれ検討して各技術を適宜選択して採用することも、当業者が通常の創作能力の発揮において行い得ることというべきである。
d そして、上記相違点Aに係る本件発明の構成は、そもそもその構造からして、かかる技術分野でごく普通に採用されている周知技術というべきものであって、さらに、甲1B発明の光源部(LEDユニット4)の構成として、上記周知技術Aを適用し、「表面側に配線パターンが形成されるとともに複数の発光素子が表面側に実装され、開口(孔7、8)より大きな開口(窓孔28)が中央側に形成された平板状の1枚の基板を有し」、発光素子の「実装面」が前面側へ向くように配設したものとして構成しても、照明器具として機能することも技術的に明らかであることからして、上記相違点Aに係る本件発明の構成は、甲1B発明及び上記周知技術Aに基いて当業者が容易になし得るものといえる。

(イ)相違点Bについて
a 甲1B発明は、「第二本体3の上方空間に収められ、第一本体1の下面に設けられ」るものであるところ、上記「第二本体3の上方空間」は、「第一本体1の下面」に対して、略中央部に凹部を形成していると理解することもできるから、上記相違点Bは実質的な相違点ではない。
b また、仮に、上記相違点Bが実質的な相違点であるとしても、甲1B発明は、点灯制御回路部5を、「第二本体3の上方空間に収められ」るように構成するものであるから、「第一本体」及び「第二本体」からなる「本体」を、略中央部に形成された凹部を備えたものとして構成し、かかる凹部に点灯装置(点灯制御回路部5)を配設することは、当業者にとって格別困難なことではない。

(ウ)相違点Cについて
a 上記(1-2-4)に摘示した甲6Bには、照明器具において、発光ダイオード4から放射された光を、グローブ19で拡散させて出射することが記載され(段落【0001】、【0038】)、上記(1-2-5)に摘示した甲9Bには、照明器具において、セード29の拡散作用により、セード29に映るランプイメージを低減できるとともに、配光を均一にできることが記載され(段落【0001】、【0047】)、上記(1-2-6)に摘示した甲10Bには、照明器具において、放電灯1と複数の可視発光ダイオード2を覆うように拡散性のカバー4を設けることが記載されているように(段落【0001】、【0036】)、照明器具を構成するカバー部材を、拡散性を有するもので構成することは、かかる技術分野の周知技術(以下「周知技術B」という。)ということができる。
b してみると、甲1B発明の「透光性材料などによ」り構成される「グローブ6」を拡散性を有するものとして構成することは、上記周知技術Bに接した当業者であれば容易になし得るものといえる。

(エ)そして、本件発明の作用効果も、甲1B発明、周知技術A及び周知技術Bから当業者が予測し得る範囲のものといえる。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明は、甲1B発明、周知技術A及び周知技術Bに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号の規定により取り消すべきものであり、特許法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものであり、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものであり、さらに、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-11-19 
出願番号 特願2016-87826(P2016-87826)
審決分類 P 1 651・ 536- ZB (F21S)
P 1 651・ 55- ZB (F21S)
P 1 651・ 121- ZB (F21S)
P 1 651・ 537- ZB (F21S)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 重幸  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 岡▲さき▼ 潤
氏原 康宏
登録日 2018-01-05 
登録番号 特許第6264714号(P6264714)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 照明器具  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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