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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1359866
審判番号 不服2019-13478  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-08 
確定日 2020-02-14 
事件の表示 特願2019- 26513「空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月 4日出願公開、特開2019-109041〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月24日に出願した特願2017-58616号の一部を平成31年2月18日に新たな特許出願としたものであって、平成31年3月12日に手続補正書及び上申書が提出され、平成31年3月22日付けで拒絶理由通知書が通知され、令和元年5月20日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年7月3日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和元年10月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明は、令和元年5月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
底板に区画されて外面に開口する開口を有する筐体と、
前記開口から連続して前記筐体の内側に配置される円筒形状の囲い壁と、
回転軸線回りに回転可能に前記囲い壁の内側に配置されて、前記囲い壁に向き合う円筒面を有するセンサケースと、
前記センサケースに区画される窓孔と、
前記センサケース内に収容されて前記窓孔に臨み、前記センサケースの回転に応じて、前記囲い壁に向き合って前記囲い壁との間に格納される第1位置、および、前記囲い壁から外側に露出する第2位置の間で移動するセンサと、
前記センサケースの前記回転軸線に対して、前記底板から立ち上がる前壁から遠ざかる方向に偏り、前記センサケースの回転軸線方向に変位させずに前記回転軸線回りで前記第1位置および前記第2位置の間で前記センサケースを駆動する駆動力を発揮する動力源とを備えることを特徴とする空気調和機。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願の日(原出願日)前の出願であって、その出願後に出願公開された下記の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願の日(原出願日)前の出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人がその出願の日(原出願日)前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない、というものである。
〈引用文献〉
出願1:特願2015-249747号(特開2017-116140号公報参照)
以下、上記出願1を「先願」という。

第4 先願発明
1 先願明細書等について
(1)先願明細書及び図面には、次の事項が記載されている(下線は、参考のため、当審で付した。)。
「【0026】
(2)空調室内機10の詳細構成
(2‐1)ケーシング20の外観
ケーシング20は、空調室内機10の横方向(左右方向)に細長い直方体状の箱形状を呈する。ケーシング20は、空調室内機10の天面部21、前面板22、背面板23、右側板24、左側板25及び底面部26によって内部の立体空間を囲んでいる。つまり、天面部21、前面板22、背面板23、右側板24、左側板25及び底面部26の表面は、室内空間に露出した外表面ということである。天面部21には、室内空気を吸込むための天面吸込口16が形成されている。空調室内機10の正面を構成する前面板22は、その上端が天面部21にヒンジ(図示せず)で回転自在に支持されている。右側板24及び左側板25は、それぞれ空調室内機10の右側面及び左側面を構成する。背面板23は、空調室内機10の背面を構成する。そして、底面部26は、第1水平フラップ41及び第2水平フラップ42とともに空調室内機10の底面を構成する。」
「【0033】
図5に示されている空調室内機10においては、底面部26に形成された円形の取付開口26aにセンサユニット50が設置されている。取付開口26aは、吹出開口17の上に形成された底面部26の外表面に形成されている。取付開口26aからは、ケーシング20の内部に向かって円柱状の空間が延びている。センサユニット50は、取付開口から延びる円柱状の空間に嵌め込まれるので、円柱状の空間に嵌る部分の自身の形状も円柱状である。空調室内機10が鉛直の壁に取り付けられたときには、取付開口26aから延びる円柱状の空間は、鉛直上方に向かって延びる。そして、センサユニット50は、この円柱状の空間の中心軸CA(図8参照)を中心にモータM6(図7参照)によって回転させることができるように構成されている。」
「【0034】
図8及び図10には、図5の一部が拡大して示されている。また、図9には図8のII-II線に沿って切断した断面が示され、図11には図10のIII-III線に沿って切断した断面が示されている。空調室内機10が鉛直の壁に取り付けられたときの底面部26について、センサユニット50が嵌め込まれる取付開口26aの周囲は、水平面に対して前方が上に上がるとともに後方が下に下がるように斜めに傾いている。また、取付開口26aの周囲は、左右方向に沿って同じ高さになる。従って、センサユニット50で検知を行わないときには、図9に示されているように、センサユニット50の下端面である化粧面51が底面部26と同じように水平面に対して角度θ1で傾いている。そして、検知を行わないときには、化粧面51と底面部26の高さも一致していて化粧面51と底面部26とが面一になっている。図8及び図9に示されている状態が、ケーシング20の外表面の内側に検知部が入り込んだ第1状態である。」
「【0035】
センサユニット50による検知が行われるときは、センサユニット50が図10及び図11に記載されているように、検知部55が底面部26よりも下方に突出した状態になる。つまり、図11に示されている状態が、ケーシング20の外表面の外側にセンサユニット50の検知部55が突出した第2状態である。」
「【0042】
このように、室内状態検知センサユニット50が第1状態と第2状態とを切換可能に構成されていて、室内状態検知センサユニット50による検知の必要がないときに室内状態検知センサユニット50は、第1状態に切り換えられて底面部26の外表面の内側に検知部55を入り込ませることができる。その結果、底面部26の外表面が室内状態検知センサユニット50の検知の邪魔になることがなくなる。例えば、吹出し気流空間FS1で冷風又は温風の気流が発生していても、底面部26の外表面の外側に突出した検知部55が外表面の外側の空間から悪影響を受けることがなくなる。さらには、検知時以外のときに外表面の内側に検知部55を入り込ませることができ、室内状態検知センサユニット50が目立たなくなることによって外観の意匠性が悪くなるのを抑制することができる。このように、室内状態検知センサユニット50の検知性能低下が抑制されるとともに空調室内機10の外観が損なわれるのが防がれている。」
「【図面の簡単な説明】
【0023】

【図8】図5の一部を拡大した部分拡大斜視図。
【図9】図8のII-II線に沿って切断した空調室内機の部分断面図。
【図10】図5の一部が拡大した部分拡大斜視図。
【図11】図10のIII-III線に沿って切断した空調室内機の部分断面図。
…」(「…」は、記載の省略を意味する。)












(2)上記(1)の記載された事項から、先願明細書等には、次の技術的事項が記されていると認められる。
ア 空調室内機のケーシング20は、底面部26を備え、前記底面部26に円形の取付開口26aが形成されて、前記取付開口26aからは、ケーシング20の内部に向かって円柱状の空間が延びている(【0026】、【0033】)。
イ センサユニット50は、取付開口から延びる円柱状の空間に嵌め込まれ、自身の形状も円柱状であり、円柱状の空間の中心軸CAを中心にモータM6によって回転する(【0033】)。
ウ センサユニット50の検知部55は、ケーシング20の外表面の内側に検知部55が入り込んだ第1状態と、ケーシング20の外表面の外側にセンサユニット50の検知部55が突出した第2状態とに、切り替え可能に構成されている(【0034】、【0035】、【0042】、図8?図11)。
(3)上記(2)の記載された事項から、先願明細書等には、「空調室内機」に関する次の発明 (以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「空調室内機のケーシングは、底面部を備え、前記底面部に円形の取付開口が形成され、
前記取付開口からは、前記ケーシングの内部に向かって円柱状の空間が延び、
前記センサユニットは、前記取付開口から延びる前記円柱状の空間に嵌め込まれ、自身の形状も円柱状であり、前記円柱状の空間の中心軸CAを中心にモータM6によって回転され、
前記センサユニットの検知部は、前記ケーシングの外表面の内側に前記センサユニットの検知部が入り込んだ第1状態と、前記ケーシングの外表面の外側に前記センサユニットの検知部が突出した第2状態とに、切り替え可能に構成されている、空調室内機。」

第5 原査定についての判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と先願発明とを対比する。
先願発明における、「ケーシング」、「底面部」、「取付開口」、「円柱」、「センサユニット」、「モータM6」、「検知部」、「第1状態」、「第2状態」、「空調室内機」は、各文言の意味、機能又は作用等からみて、それぞれ本願発明1における「筺体」、「底板」、「開口」、「円筒」、「センサケース」、「動力源」、「センサ」、「第1位置」、「第2位置」、「空気調和機」に相当する。
先願発明における「取付開口」は、「前記取付開口からは、前記ケーシングの内部に向かって円柱状の空間が延び」ることから、外面に開口しているものであり、本願発明1の「外面に開口する開口」に相当する。
先願発明の「前記底面部に円形の取付開口が形成され」ていることは、形成された「取付開口」により底面部が区切られ、区画されているといえるから、本願発明1の「底板に区画され」た「開口」に相当する。
先願発明における「円柱状の空間」は、「取付開口から」、「前記ケーシングの内部に向かって」「延び」る「空間」であり、「前記センサユニットは、前記取付開口から延びる前記円柱状の空間に嵌め込まれ」ているので、「センサユニット」は、「円柱状の空間」をなす壁に囲まれ、また、「円形」の「取付開口」は、「円柱状の空間」に連続したものである。そうすると、先願発明における「前記取付開口からは、前記ケーシングの内部に向かって円柱状の空間が延び」る態様は、本願発明1の「前記開口から連続して前記筐体の内側に配置される円筒形状の囲い壁」を備えた様態に相当する。
先願発明の「前記円柱状の空間の中心軸CAを中心にモータM6によって回転され」る「自身の形状も円柱状であ」る「センサユニット」は、「円柱状の空間」をなす壁に囲まれており、壁に向き合っているといえる。そうすると、先願発明の「センサユニット」は、本願発明1の「回転軸線回りに回転可能に前記囲い壁の内側に配置されて、前記囲い壁に向き合う円筒面を有するセンサケース」に相当する。
先願発明の「センサユニット」は、「前記円柱状の空間の中心軸CAを中心にモータM6によって回転さ」れることで、「第1状態」、「第2状態」が切り替えられていることは明かである。そして、先願発明の「センサユニット」は「前記円柱状の空間に嵌め込まれ」ていることより、先願発明の「前記センサユニットの検知部」が「前記ケーシングの外表面の内側に」「入り込んだ第1状態」は、本願発明1の「センサ」が「前記囲い壁に向き合って前記囲い壁との間に格納される第1位置」に相当し、先願発明の「前記センサユニットの検知部」が「ケーシングの外表面の外側に」「突出した第2状態」は、本願発明1の「センサ」が「前記囲い壁から外側に露出する第2位置」に相当する。そうすると、先願発明の「前記センサユニットの検知部は、前記ケーシングの外表面の内側に前記センサユニットの検知部が入り込んだ第1状態と、前記ケーシングの外表面の外側に前記センサユニットの検知部が突出した第2状態とに、切り替え可能に構成されている」ことは、本願発明1の「前記センサケースの回転に応じて、前記囲い壁に向き合って前記囲い壁との間に格納される第1位置、および、前記囲い壁から外側に露出する第2位置の間で移動するセンサ」を備えた構成と一致する。
また、先願明細書等の図9及び11を参照すると、先願発明の「センサユニット」を、「前記円柱状の空間の中心軸CAを中心に」「回転」させる「モータM6」は、センサユニットを中心軸方向に変位させずに回転しており、本願発明1の「前記センサケースの回転軸線方向に変位させずに前記回転軸線回りで前記第1位置および前記第2位置の間で前記センサケースを駆動する駆動力を発揮する動力源」に相当する。
したがって、両者は以下の点で一致し、以下の点で一応相違する。
【一致点】
底板に区画されて外面に開口する開口を有する筐体と、
前記開口から連続して前記筐体の内側に配置される円筒形状の囲い壁と、
回転軸線回りに回転可能に前記囲い壁の内側に配置されて、前記囲い壁に向き合う円筒面を有するセンサケースと、
前記センサケースの回転に応じて、前記囲い壁に向き合って前記囲い壁との間に格納される第1位置、および、前記囲い壁から外側に露出する第2位置の間で移動するセンサと、
前記センサケースの回転軸線方向に変位させずに前記回転軸線回りで前記第1位置および前記第2位置の間で前記センサケースを駆動する駆動力を発揮する動力源とを備える空気調和機。
【相違点1】
本願発明1では、「前記センサケースに区画される窓孔」を有し、「センサ」が「前記センサケース内に収容されて前記窓孔に臨」むように配置されているのに対し、先願発明では、「検知部」が「センサユニット」にどのように配置されているか不明である点。
【相違点2】
「動力源」について、本願発明1では、「前記センサケースの前記回転軸線に対して、前記底板から立ち上がる前壁から遠ざかる方向に偏」って配置されているのに対し、先願発明では、「モータM6」の具体的な配置については不明である点。
(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1について
「検知部」を「センサユニット」に配置する際に、「センサユニット」に「窓孔」を設け、「検知部」を「臨」むように配置することは、当該技術分野において普通に実施されるものであり(必要ならば、特開2012-42183号公報 段落【0040】、図6など参照。)、係る配置は、先願発明の「検知部」と「センサユニット」とが通常備えている構成である。
したがって、上記一応の相違点1は技術の具体化における微差にすぎず、実質的に相違点ではない。
イ 上記相違点2について
先願発明の「モータM6」を「センサユニット」に対して、どこに配置するかは、ケーシング内の「センサユニット」の配置場所や取り付ける「モータM6」の形状等を考慮して当業者が適宜定め得る設計的事項である。してみれば、「センサユニット」の取付け位置を考慮し、「モータM6」を、相違点2に係る本願発明1の如く配置することは、本願発明1の課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
したがって、上記一応の相違点2は実質的に相違点ではない。
ウ まとめ
以上のとおり、本願発明1は、先願発明と実質的に同一である。
そして、この出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、本願発明1は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
本願発明1は、特許法第29条の2の規定により、特許をすることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-12-05 
結審通知日 2019-12-11 
審決日 2019-12-26 
出願番号 特願2019-26513(P2019-26513)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 町田 豊隆  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 紀本 孝
塚本 英隆
発明の名称 空気調和機  
代理人 特許業務法人落合特許事務所  

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