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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M
管理番号 1359949
審判番号 不服2018-15353  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-20 
確定日 2020-02-13 
事件の表示 特願2015-2105「高圧燃料ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月11日出願公開、特開2016-125460〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月8日の出願であって、平成30年2月22日付け(発送日:平成30年2月27日)で拒絶理由が通知され、平成30年4月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成30年9月4日付け(発送日:平成30年9月11日)で拒絶査定がされた。これに対して、平成30年11月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成30年4月13日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「エンジン側のポンプ取付け面(4a)に支持されるポンプハウジング(3)と、
このポンプハウジング(3)の前記ポンプ取付け面(4a)と直交する方向(以下、軸方向と呼ぶ)に延びて形成され、その軸方向の一端側に加圧室(6)を構成する円筒孔(5)と、
前記エンジンに設けられて軸上にカム(13)を有するシャフト(12)の回転により、前記カム(13)に駆動されて前記円筒孔(5)内を往復動するプランジャ(2)と、
前記ポンプハウジング(3)に対して前記プランジャ(2)を前記カム(13)側へ付勢するスプリング(14)とを備え、
前記プランジャ(2)が前記円筒孔(5)内を他端側へ移動する際に前記加圧室(6)に燃料を吸入し、その吸入した燃料を前記プランジャ(2)が前記円筒孔(5)内を一端側へ移動する際に加圧して前記加圧室(6)より吐出する高圧燃料ポンプ(1)であって、
前記エンジンの機種によって前記ポンプ取付け面(4a)から前記シャフト(12)の回転中心までの軸方向距離が異なる場合に、前記スプリング(14)の仕様が同一となるように前記スプリング(14)のセット長を調整する調整部材(16)を備え、
この調整部材(16)は、前記プランジャ(2)に接触しないことを特徴とする高圧燃料ポンプ。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
平成30年9月4日付け拒絶査定(以下「原査定」という。)の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(特許法第29条第1項第3号)、理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項1、2、7
・引用文献等1

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項3-6
・引用文献等1-2

<引用文献等一覧>
1.特開昭64-35075号公報
2.特開2003-148229号公報

第4 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開昭64-35075号公報(以下「引用文献」という。)には、「内燃機関用の燃料噴射ポンプ」に関して、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同じ。)。

ア 「従来の技術
外部駆動装置用の差込み式燃料噴射ポンプは組み込まれた駆動カム軸を有していない。このようなポンプは多くの場合機関から機関カム軸における付加的なカムを介して駆動される。この場合上部にフランジを備えた構造形式が普通である。」(公報第2頁右上欄第3行ないし第7行)

イ 「このような構造形式のポンプは内燃機関への取付けの前に検査支持の使用下で検査台において、同列のすべてのポンプのための等しい目標吐出量に調節され、調整装置を用いて内燃機関の所属のポンプ嵌込み部に差し込まれ、そこで固定される。固定ピンを備えた調整装置は上記ポンプでは単にポンプ嵌込み部におけるその取付は位置を規定するだけなので、機関は検査スタンドにおいて個々の差込みポンプの吐出量をもう1度正確に調節されねばならず、この作業は極めて面倒である。この際に機関固有の調整棒の調節可能な連結部分は差込みポンプの吐出量調節部材に連結されて調節されねばならない。個々のポンプの補充時にはこの検査動作がもう1度行われねばならない。同列のポンプは固定フランジと差込みポンプの駆動側の最外位の制限部との間における等しい突出値で供給され、内燃機関のポンプ嵌込み部において等しい突出値はぴったりの厚さで準備された調節板の選択によって調節され、この結果前行程を規定する寸法を特別に合わせることなしに、同列の各差込みポンプを内燃機関の恣意のポンプ嵌込み部に差し込むことができる。吐出開始を規定する前行程はこれによって大変な嵌込み作業及び適合作業なしにかつ面倒な検査作業を行うことなしに確実に保証され、同時に調節板は前行程調節円板として働く。」(公報第2頁左下欄第6行ないし右下欄第12行)

ウ 「第1図には所属の内燃機関のケーシングに差込み可能で傾斜縁制御される単シリンダ・差込み式燃料噴射ポンプ(以下においては単に差込みポンプと呼ぶ)が縦断面図で示されている。ポンプケーシング6の内部には圧力弁7を介して管状螺合部材8を用いてバレル9が自体公知の形式でポンプケーシング6に固定されている。バレル9内においてプランジャ10は軸方向運動及び回転運動可能に案内されていて、その周面に斜めの制御縁11を有しており、この制御縁11は吐出量を規定するためにバレル9の壁に設けられた制御孔12と協働する。所属の差込みポンプは等しいシリンダ間隔をおいてポンプケーシング6の各ポンプ嵌込み部14で内燃機関に差し込まれ、各ポンプ嵌込み部14は差込みポンプ固定のために取付は側にフランジ面15を有している。
プランジャ10の足部にはばね受1が固定されていて、この場合ばね受1は厚さeの調節板4を受容しており、調節板4の外端面は差込みポンプの駆動側の制限部16を形成している。調節板4の厚さeの選択によって、プランジャ10の前行程VHを規定する突出値UTつまりプランジャ下死点におけるフランジ面15と駆動側最外位の制限部16との間の間隔である突出値UTが調節される。前行程VHは、プランジャ10のポンプ作業室側端面が制御孔12を閉鎖するまで進むプランジャ行程部分のことである。」(公報第4頁左上欄第3行ないし右上欄第11行)

エ 上記イの記載から、目標吐出量に調整された燃料噴射ポンプを内燃機関に固定したとき、行程を規定する寸法が異なった場合、調整する必要があることが開示されているといえる。

オ FIG.1及びFIG.2には、調整板4は、プランジャ11とは接触しない、ものが示されている。

カ 上記ウの記載から、ポンプ固定のためのフランジ面15を有するポンプケーシング6が開示されているといえ、内燃機関側からみれば、内燃機関側のポンプ固定のためのフランジ面15に対向する面に支持されるポンプケーシング6であることは、自明である。

キ FIG.1及び上記ウの記載から、ポンプケーシング6のフランジ面15と直交する方向に延びて形成され、その軸方向の一端側に加圧される空間を有する円筒の孔が開示されているといえる。

ク 上記アの従来技術の記載及び上記ウ及びFIG.1から、前記内燃機関に設けられ付加的なカムを有する機関カム軸の回転により、前記カムに駆動されて前記円筒の孔内を往復動するプランジャ10が開示されており、また、プランジャ10をカム側へ付勢する戻しばね2が開示されているといえる。

上記記載事項及び認定事項並びに図示内容を総合すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「内燃機関側のポンプ固定のためのフランジ面15に対向する面に支持されるポンプケーシング6と、
このポンプケーシング6の前記ポンプ固定のためのフランジ面15に対向する面と直交する方向に延びて形成され、その軸方向の一端側に加圧される空間を有する円筒の孔と、
前記内燃機関に設けられ付加的なカムを有する機関カム軸の回転により、前記カムに駆動されて前記円筒の孔内を往復動するプランジャ10と、
前記ポンプケーシング6に対して前記プランジャ10を前記カム側へ付勢する戻しばね2とを備え、
前記プランジャ10が前記円筒の孔内を他端側へ移動する際に燃料を吸入し、その吸入した燃料を前記プランジャ10が前記円筒の孔内を一端側へ移動する際に加圧して加圧される空間より吐出する燃料噴射ポンプであって、 目標吐出量に調整された燃料噴射ポンプを内燃機関に固定したとき、行程を規定する寸法が異なった場合、プランジャ下死点におけるフランジ面15と駆動側最外位の制限部16との間の間隔である突出値UTを調整する調整板4を備え、
この調整板4は、プランジャ10に接触しない燃料噴射ポンプ。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「内燃機関」は、その機能・技術的意義からみて、前者の「エンジン」に相当し、以下同様に、「ポンプ固定のためのフランジ面15に対向する面」は「ポンプ取付け面(4a)」に、「ポンプケーシング6」は「ポンプハウジング(3)」に、「加圧される空間を有する」は「加圧室を構成する」に、「円筒の孔」は「円筒孔(5)」に、「付加的なカムを有する」は「軸上にカムを有する」に、「機関カム軸」は「シャフト(12)」に、「プランジャ10」は「プランジャ(2)」に、「戻しばね2」は「スプリング(14)」に、「燃料噴射ポンプ」は「高圧燃料ポンプ(1)」に、「調整板4」は「調整部材(16)」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「プランジャ下死点におけるフランジ面15と駆動側最外位の制限部16との間の間隔である突出値UTを調整する調整板4」と、本願発明の「エンジンの機種によってポンプ取付け面(4a)からシャフト(12)の回転中心までの軸方向距離が異なる場合に、スプリング(14)の仕様が同一となるように前記スプリング(14)のセット長を調整する調整部材(16)」とは、上記相当関係及び技術的意義を踏まえると、「ポンプ取付け面(4a)からの軸方向距離を調整する調整部材(16)」の限りで一致する。

そうすると、両者の一致点、相違点は、下記のとおりとなる。

[一致点]
「エンジン側のポンプ取付け面に支持されるポンプハウジングと、
このポンプハウジングの前記ポンプ取付け面と直交する方向に延びて形成され、その軸方向の一端側に加圧室を構成する円筒孔と、
前記エンジンに設けられて軸上にカムを有するシャフトの回転により、前記カムに駆動されて前記円筒孔内を往復動するプランジャと、
前記ポンプハウジングに対して前記プランジャを前記カム側へ付勢するスプリングとを備え、
前記プランジャが前記円筒孔内を他端側へ移動する際に前記加圧室に燃料を吸入し、その吸入した燃料を前記プランジャが前記円筒孔内を一端側へ移動する際に加圧して前記加圧室より吐出する高圧燃料ポンプであって、
前記ポンプ取付け面からの軸方向距離を調整する調整部材を備え、
この調整部材は、前記プランジャに接触しない、高圧燃料ポンプ。」

[相違点]
「ポンプ取付け面からの軸方向距離を調整する調整部材」に関し、本願発明は、「エンジンの機種によってポンプ取付け面(4a)からシャフト(12)の回転中心までの軸方向距離が異なる場合に、スプリング(14)の仕様が同一となるように前記スプリング(14)のセット長を調整する」ものであるのに対し、引用発明は「目標吐出量に調整された燃料噴射ポンプを内燃機関に固定したとき、行程を規定する寸法が異なった場合、プランジャ下死点におけるフランジ面15と駆動側最外位の制限部16との間の間隔である突出値UTを調整する」ものである点。

上記相違点について検討する。
引用発明の調整板4は、「プランジャ下死点におけるフランジ面15と駆動側最外位の制限部16との間の間隔である突出値UTを調整する」ことにより、プランジャ10のポンプ作業室側端面が制御孔12を閉鎖するまでのプランジャの行程を、取付けるエンジンが異なっても均一に調整するものであって、これは戻しばね2の仕様が、取付けるエンジンが異なっても、同一となるように戻しばね2のセット長を調整することと言い換えることができる。
また、引用発明の「目標吐出量に調整された燃料噴射ポンプを内燃機関に固定したとき、行程を規定する寸法が異なった場合」とは、プランジャの行程を規定する寸法が異なるのは、燃料噴射ポンプとこれを駆動するシャフトとカムの構造を踏まえると、例えば、カムとシャフトの構造が同じものであれば、ポンプを固定するフランジ面からカムを駆動させるシャフトの回転軸中心までの軸方向距離が異なった場合を含むことは、当業者であれば容易に想定できる状況というべきある。
そうすると、引用発明に基づき、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を想到することは、当業者であれば、容易になし得た範囲内のものである。
また、本願発明が奏する効果を検討しても、当業者であれば引用発明から予測し得た範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基づき、当業者であれば容易に想到し得たものである。

なお、審判請求人は、審判請求書において、「これに対し、今回の拒絶査定において、『引用文献1に記載された発明も、調整部材(調整板4)はプランジャ(プランジャ10)に接触しておらず(調整板4が接触しているのはプランジャ10ではなくばね受1である。第4ページ左上欄第20行-右上欄第3行、図1等参照。)、出願人が主張する点は相違点とはなり得ない。』と認定されました。
しかし、引用文献1の構成は、例えば、532ページの左上欄の最終行から右上欄の第1行にかけて記載されているように、プランジャ10の足部にばね受1が固定されており、プランジャ10とばね受1とは一体部品です。このため、ばね受1に接触していると、プランジャ10に接触しているのと同等のストレスがかかります。このため、引用文献1の構成によれば、プランジャ10が調整部材(調節板4)に接触している、とみなすのが妥当であると考えます。
よって、前述のとおり、スプリング仕様の変更を回避する目的で、引用文献1のような、プランジャ10に接触を受ける調節板4を利用することは、実質的に不可能ですから、引用文献1に基づき、本願発明に想到することは容易ではないものと思料します。」と主張している。
ここで、本願発明の「プランジャ」の技術的範囲を検討するに、平成30年4月13日の手続補正により、請求項1に「調整部材はプランジャに接触しない」点が追加され、同日付け意見書において、「(2)補正の根拠 本願発明における補正事項『この調整部材(16)は、前記プランジャ(2)に接触しない』は、出願当初の明細書の段落〔0011〕、〔0012〕、〔0015〕?〔0023〕、および、図1?図6等に記載された事項であり、新規事項の追加に該当しないものと確信します。」との記載がある。
そこで本願明細書の発明の詳細な説明の段落[0021]及び[0022]並びに図面の図5及図6をみると、実施例4及び実施例5として、プランジャ2には接触していないが、プランジャ2に固定されているロアシート15に接触している調整部材16が示されている。
そうすると、本願発明は、プランジャに固定されているロアシート15をも含めてプランジャとみなすようなものまでをも技術的範囲に含むものではないと解するのが自然である。これは、出願人自らが、請求項1の従属項として請求項6としていることとも整合する。
したがって、原査定の「引用文献1に記載された発明も、調整部材(調整板4)はプランジャ(プランジャ10)に接触しておらず」との認定に誤りがあるとはいえず、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-12-04 
結審通知日 2019-12-10 
審決日 2019-12-24 
出願番号 特願2015-2105(P2015-2105)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 謙一  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 渋谷 善弘
鈴木 充
発明の名称 高圧燃料ポンプ  
代理人 長谷 真司  
代理人 石黒 健二  
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