• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07G
管理番号 1360269
審判番号 不服2018-17524  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-28 
確定日 2020-03-06 
事件の表示 特願2014- 71002号「POS端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 5日出願公開,特開2015-194791号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年3月31日の出願であって,平成29年11月20日付けで拒絶理由が通知され,平成30年1月22日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,同年5月15日付けで拒絶理由が通知され,同年7月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,同年9月25日付けで拒絶査定がされ,同年12月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年12月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年12月28日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された(下線部は,補正箇所であり,当審で付した。)。
「撮像手段によって撮像された対象の画像から該対象を物体認識する物体認識手段と,
前記対象の画像に基づいて,前記対象の大きさを識別する識別手段と,
前記物体認識手段によって認識された物体を,認識結果に基づいて当該物体を分類し,当該物体における複数の区分の中から,前記対象の大きさに基づいて該対象を区分に分類する分類手段と,
を有することを特徴とするPOS端末装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の平成30年7月23日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「対象を物体認識する物体認識手段と,
撮像手段から撮像された前記対象の画像に基づいて,前記対象の大きさを識別する識別手段と,
前記物体認識手段によって認識された物体における複数の区分の中から,前記対象の大きさに基づいて該対象を区分に分類する分類手段と,
を有することを特徴とするPOS端末装置。」

2.補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「対象」を,「撮像手段によって撮像された対象の画像から該対象」と,「前記物体認識手段によって認識された物体における複数の区分の中から」を「前記物体認識手段によって認識された物体を,認識結果に基づいて当該物体を分類し,当該物体における複数の区分の中から」と限定するものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア.引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-69259号公報(平成25年4月18日出願公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
・「【請求項1】
入力された撮像画像から商品の品種を認識する品種認識手段と,
入力された撮影画像から前記商品に付加される所定の付加物の特徴を認識する特徴認識手段と,
前記品種認識手段が認識した商品の品種および前記特徴認識手段が認識した所定の付加物の特徴から,前記商品に係る所定情報を特定する特定手段と,
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記特定手段は,商品の産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す前記所定情報を特定する,請求項1に記載の情報処理装置。 」
・「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は,情報処理装置およびプログラムに関する。
・「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,従来では,撮像装置が撮像した商品の画像から商品の種別や商品名を特定することはできるものの,撮像装置が撮像した商品の画像から商品(例えば,りんご)の産地,サイズ,個数,重量,等級,階級などを特定するのは困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本実施形態の情報処理装置は,品種認識手段と,特徴認識手段と,特定手段とを有する。品種認識手段は,入力された撮像画像から商品の品種を認識する。特徴認識手段は,入力された撮影画像から前記商品に付加される所定の付加物の特徴を認識する。特定手段は,前記品種認識手段が認識した商品の品種および前記特徴認識手段が認識した所定の付加物の特徴から,前記商品に係る所定情報を特定する。」
・「【0008】
図1は,本実施形態に係る情報処理装置およびプログラムを適用したチェックアウトシステム1の外観構成を示す斜視図である。
【0009】
図1に示すように,このチェックアウトシステム1は,一取引にかかる商品の登録,精算を行うPOS端末11を備える。POS端末11は,チェックアウト台51上のドロワ21上面に載置されている。ドロワ21は,POS端末11によって開放動作の制御を受ける。
・・・
【0013】
カウンタ台151の荷受面152には,POS端末11とデータ送受信自在に接続された商品読取装置101が設置されている。商品読取装置101は,薄型矩形形状のハウジング102を備える。」
・「【0015】
このような商品読取装置101は,商品読取部110(図2参照)を備えている。商品読取部110は,読取窓103の奥側に撮像部(撮像装置)164(図2参照)を配置している。
【0016】
顧客によって持ち込まれた第1の買物カゴ153aには,一取引にかかる商品Aが収納されている。商品Aは,オペレータの手によって第2の買物カゴ153bへと移動される。この移動過程で,商品Aが商品読取装置101の読取窓103に向けられる。この際,読取窓103の奥側に配置された撮像部164(図2参照)は商品Aを撮像する。」
・「【0025】
撮像部164は,カラーCCDイメージセンサやカラーCOMSイメージセンサなどであり,CPU161の制御の下で読取窓103からの撮像を行う撮像手段である。例えば撮像部164では30fpsの動画像の撮像を行う。撮像部164が所定のフレームレートで順次撮像したフレーム画像はRAM163に保存される。」
・「【0027】
さらに,CPU161には,POS端末11の接続インターフェース65に接続して,POS端末11との間でデータ送受信を可能にする接続インターフェース175が接続されている。CPU161の制御の下,商品読取装置101の撮像部164によって撮像された撮像画像から認識された商品Aの品種および商品Aに付加される付加物ATの特徴に基づいて特定された商品の所定情報(産地,サイズ,個数などを示す情報)と,商品の品種を示す品種情報とは,接続インタフェース175を介して出力され,接続インタフェース65を介してPOS端末11に入力される。」
・「【0029】
即ち,本実施形態の商品読取装置101は,撮像部164が撮像した撮像画像から商品Aの品種および商品Aに付加される付加物ATの特徴を認識し,当該商品Aの産地,サイズまたは個数などを示す所定情報を特定し,商品Aの品種を示す品種情報と上記特定した所定情報をPOS端末11に送信する。一方,本実施形態のPOS端末11は,商品読取装置101から受信した情報(上記品種情報および上記所定情報)に基づいて,商品Aの単価を示す価格情報を取得し,一取引にかかる商品の会計処理を実行する。
【0030】
次に,CPU161,CPU61がプログラムを順次実行することで実現されるCPU161,CPU61の機能部について,図3を参照して説明する。図3は,CPU161,CPU61の機能構成を示すブロック図である。
【0031】
図3に示すように,CPU161は,プログラムを順次実行することにより,表示処理部161aと,操作入力部161bと,撮像画像取込部161cと,品種認識部161dと,特徴認識部161eと,所定情報特定部161fと,値引き情報特定部161hと,情報送信部161gとしての機能を備える。
【0032】
ここで,表示処理部161aは,オペレータ用の表示デバイス106に情報を表示するものであり,本実施形態では,図9に示す商品特定画面Sを表示するものである。図9は,表示デバイス106に表示される商品特定画面Sの一構成例を示す模式図である。図9に示すように,この商品特定画面Sは,撮像部(撮像装置)164が撮像した商品Aの画像(撮像画像)Pを表示する撮像エリアA1と,撮像エリアA1に表示される商品Aの品種の認識候補(商品候補)Iを表示する候補表示エリアA2とを有している。
【0033】
操作入力部161bは,キーボード107やタッチパネル105からのオペレータの操作を入力するものであり,本実施形態では,図9に示す商品特定画面Sにおいてオペレータによる商品候補の選択操作を受け付ける。
【0034】
撮像画像取込部161cは,撮像部164に撮像オン信号を出力して撮像部164に撮像動作を開始させるとともに,撮像動作開始後に撮像部164が撮像してRAM163に保存されたフレーム画像(撮像画像)を順次取り込むものである。なお,撮像画像取込部161cによるフレーム画像の取り込みは,RAM163に保存された順に行われる。
【0035】
品種認識部161dは,撮影部164が撮像した撮像画像から商品Aの品種を認識するものである。より具体的には,この品種認識部161dは,撮像画像から,特徴量として商品Aの表面の状態(表面の色合い,模様(パターン),凸凹状況など)を読み取って,予め登録されている商品Aの品種毎の特徴量と比較することにより,特定の物体としての商品Aの品種を認識するものである。
【0036】
なお,上記のように画像中に含まれる商品を認識することは一般物体認識(generic objectrecognition)と呼ばれている。」
・「【0038】
特徴認識部161eは,撮影部164が撮影した撮像画像から商品Aに付加される所定の付加物AT(図4参照)と,付加物ATに付加された所定の付加マークM(図4参照)の特徴を認識するものである。ここで,所定の付加物ATとは,例えば,商品Aを載置する部材(トレイ)や,商品Aに貼付される部材(シール)や,商品Aを収容する部材(ネット)などであり,所定の付加マークMとは,例えば,付加物ATに貼付される部材(シール)や,付加物ATに結び付けられる部材(紐)などであり,特徴認識部161eは,それら各部材の色や形状などの特徴を認識する。なお,図4は,商品Aに付加される付加物ATの一構成例を示す模式図である。図4の例では,付加物ATが,複数の商品Aを一つに纏めたパック商品PAのトレイである場合を示している。なお,この例では,付加物ATとしてのトレイの色が「オレンジ色」となっている。
【0039】
所定情報特定部161fは,品種認識部161dが認識した商品Aの品種および特徴認識部161eが認識した付加物ATおよび付加マークMの特徴(色や形状など)から,商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報を特定するものである。
【0040】
より具体的には,この所定情報特定部161fは,上記認識された商品Aの品種および付加物ATの特徴をもとに,予め記憶している情報特定テーブルT1(図5参照)を参照して,上記商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報を特定する。図5は,情報特定テーブルT1の一構成例を示す模式図である。図5に示すように,情報特定テーブルT1は,商品Aの品種と付加物ATの特徴とに対応付けて商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報を登録するテーブルである。なお,図5の例では,商品Aの品種「りんご(ふじ)」と,付加物ATがパック商品PAのトレイである場合の付加物ATの色「オレンジ色」および付加物ATに付加される付加マークM「丸マーク」とに対応付けて所定情報として「青森県産,サイズS,3個」が登録され,商品Aの品種「松茸」と,付加物ATがパック商品PAのトレイである場合の付加物ATの色「ブルー色」および付加物ATに付加される付加マークM「四角マーク」とに対応付けて所定情報として「中国産,重量300g」が登録されている様子を示している。
【0041】
値引き情報特定部161hは,上記した一般物体認識技術などを用いて,撮影部164が撮像した撮像画像からパック商品PAに付加される値引きラベルALが示す値引き情報(例えば,50円引き)を特定するものである。具体的には,この値引き額特定部161hは,撮像画像から,特徴量として値引きラベルALの表面の状態{表面の色合い,「50円引きなどのパック商品PAに関する値引き額を示す値引き情報を含む模様(パターン)など}を読み取って,予め登録されている値引きラベルALの特徴量と比較することにより,値引きラベルALが示す値引き情報を特定するものである。
【0042】
情報送信部161gは,品種認識部161dが認識した商品Aの品種を示す品種情報,所定情報特定部161fが特定した商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報,値引き情報特定部161hが特定した値引き情報などをPOS端末11に送信するものである。
【0043】
また,図3に示すように,CPU61は,プログラムを順次実行することにより,情報受信部61a,単価取得部61b,商品価格算出部61c,売上登録部61d,会計処理部61eとしての機能を備える。
【0044】
情報受信部61aは,商品読取装置101の情報送信部161gから送信される情報,即ち,上記品種情報,上記所定情報,上記値引き情報などを含む情報を受信するものである。
【0045】
単価取得部61bは,情報受信部61aが受信した情報(即ち,商品Aの品種を示す品種情報と,商品Aの産地,サイズを示す情報やパック商品PAの重量を示す情報)をもとに,上記品種情報で特定される商品Aの単価を示す価格情報を図6に示すPLUファイルF1から検索して取得するものである。図6は,PLUファイルF1の一構成例を示す模式図である。図6に示すように,PLUファイルF1は,商品Aごとに,ユニークに割り当てられた商品ID(商品コード),商品名,単価などの商品Aに関する情報などを格納するファイルである。」
・「【0049】
次に,上記した構成を有するチェックアウトシステム1における処理動作の詳細について説明する。
【0050】
まず,最初に商品読取装置101の処理動作について説明する。図7は,商品読取装置101における処理動作の流れを示すフローチャートである。
【0051】
図7に示すように,POS端末11による商品登録の開始などに応じて処理が開始されると,撮像画像取込部161cは,撮像部164に撮像オン信号を出力して撮像部164による撮像を開始する(ステップS1)。続いて,撮像画像取込部161cは,撮像部164が撮像してRAM163に保存されたフレーム画像(撮像画像)を取り込む(ステップS2)。
【0052】
続いて,品種認識部161dは,取り込んだ撮像画像から商品Aの品種{りんご(ふじ)など}を認識する(ステップS3)。
【0053】
ここで,ステップS3における認識の結果,商品Aの品種の認識候補が複数出てくる場合がある。そこで,商品Aの品種の認識候補が複数ある場合には(ステップS4:Yes),CPU161は,表示デバイス106に図9に示すような商品特定画面Sを表示し,その商品特定画面Sに含まれる候補表示エリアA2に商品Aの品種の認識候補(商品候補)を表示して(ステップS5),オペレータ(キャッシャ)に商品候補が複数あることを報知する。
【0054】
その後,CPU161は,オペレータがタッチパネル105を介して正しいと思われる商品候補を選択したと判定すると(ステップS6:Yes),処理をステップS7に進める。
【0055】
一方,商品Aの品種の認識候補が複数ない場合,即ち,一つの品種に絞り込めた場合には(ステップS4:No),CPU161は,上記ステップS5,S6の処理は実行せずに,処理をそのままステップS7に進める。
【0056】
続いて,ステップS7において,特徴認識部161eが,取り込んだ撮像画像から商品Aに付加される所定の付加物ATの特徴(色や形状など)を認識する。なお,このステップS7の処理において,付加物ATの特徴を認識できなかった場合,即ち,付加物ATが撮像部164で撮像されなかった場合には,オペレータ用の表示デバイス106が表示する商品特定画面S(図9参照)上に,「トレイを読取窓103にかざして下さい。」や「商品Aを読取窓103の前で回転させて下さい。」などオペレータ(キャッシャ)に付加物ATを撮像部164に撮像させるための指示情報を表示するのが好ましい。
【0057】
その後,所定情報特定部161fが,ステップS3で認識した商品Aの品種と,ステップS7で認識した付加物ATの特徴をもとに,情報特定テーブルT1を参照し,該当する所定情報(産地,サイズ,個数,重量,等級,階級などを示す情報)を特定する(ステップS8)。
【0058】
続いて,値引き額特定部161hが,ステップS2で取り込んだ撮像画像中にパック商品PAに付加される値引きラベルALの画像が含まれている場合,撮像画像から値引きラベルALが示す値引き情報(例えば,50円引き)を特定する(ステップS12)。
【0059】
続いて,情報送信部161gが,ステップS3で認識した商品Aの品種を示す品種情報,ステップS8で特定された所定情報,ステップS12で特定された値引き額を示す値引き情報などをPOS端末11に送信する(ステップS9)。
【0060】
続いて,CPU161は,POS端末11から商品登録の終了通知などによる業務終了の有無を判定する(ステップS10)。ここで,業務を継続する場合(ステップS10:No),CPU161は,ステップS2へ処理を戻して処理を継続させる。他方,業務を終了する場合(ステップS10:Yes),撮像画像取込部161cは,撮像部164に撮像オフ信号を出力して撮像部164による撮像を終了し(ステップS11),処理を終了する。
【0061】
次に,POS端末11の処理動作について説明する。図8は,POS端末11における処理動作の流れを示すフローチャートである。
【0062】
図8に示すように,POS端末11では,情報受信部61aが,商品読取装置101から上記品種情報,上記所定情報,上記値引き情報などを含む情報や商品コードを示す情報などを受信すると(ステップS21),続いて,単価取得部61bが,上記受信した情報をもとに,PLUファイルF1を参照し,上記品種情報で特定される商品Aの単価を示す価格情報などを含む登録情報を取得する(ステップS22)。」
・「【0066】
次に,上記図7および図8の具体的な処理の一例について説明する。
【0067】
例えば,客が,図4に示すパック商品PA{即ち,商品Aとしての3個のりんご(ふじ)が丸マークが付加されたオレンジ色のトレイATに入れられ,ラップLで収容された商品}を一つのみ入れた買物カゴ153をカウンタ台151に持ってきて会計する場合であって,上記パック商品PAに含まれる商品Aの品種を特定できた場合(即ち,一つの品種に絞り込めた場合)の処理について説明する。
【0068】
この場合,まず,オペレータ(キャッシャ)が,キーボード22などを用いて,POS端末11による商品登録の開始指示を行い,続いて,買物カゴ153から上記パック商品PAを取り上げて読取窓103に向け,パック商品PAを撮像部164に撮像させる。即ち,このとき,商品読取装置101では,ステップS1において,撮像画像取込部161cが,撮像部164に撮像オン信号を出力して撮像部164による撮像を開始し,ステップS2において,撮像画像取込部161cが,撮像部164が撮像してRAM163に保存されたフレーム画像(撮像画像),即ち,パック商品PAの撮像画像を取り込む。
【0069】
続いて,ステップS3において,品種認識部161dが,取り込んだ撮像画像からパック商品PAに含まれる商品Aの品種として「りんご(ふじ)」を認識する。その後,ステップS7において,特徴認識部161eが,取り込んだ撮像画像から商品Aに付加される所定の付加物ATの色として「オレンジ色」を認識し,付加マークMの形状として「丸」を認識する。
【0070】
その後,ステップS8において,所定情報特定部161fが,ステップS3で認識した商品Aの品種「りんご(ふじ)」と,ステップS7で認識した付加物ATの特徴「オレンジ色」および付加マークMの特徴「丸」をもとに,情報特定テーブルT1を参照し,該当する所定情報として「青森県産,サイズS,3個」を特定する。
【0071】
続いて,ステップS9において,情報送信部161gが,ステップS3で認識した商品Aの品種「りんご(ふじ)」を示す品種情報と,ステップS8で特定された所定情報,即ち,「青森県産,サイズS,3個」を示す情報とをPOS端末11に送信する。
【0072】
一方,POS端末11では,ステップS21において,情報受信部61aが,商品読取装置101から上記品種情報(即ち,商品Aの品種「りんご(ふじ)」を示す情報)および上記所定情報(即ち,「青森県産,サイズS,3個」を示す情報)を含む情報を受信すると,続いて,ステップS22において,単価取得部61bが,上記受信した情報,即ち,商品Aの品種「りんご(ふじ)」を示す情報および「青森県産,サイズS」を示す所定情報をもとに,PLUファイルF1を参照し,上記品種情報で特定される商品Aの単価を示す単価情報「150円」を含む登録情報を取得する。
【0073】
その後,ステップS23において,売上登録部61dが,ステップS22で取得した登録情報に基づいて商品の売上情報を登録し,その後,ステップS24において,業務終了と判定された場合(ステップS24:Yes),続く,ステップS25において,会計処理部61eが,一取引にかかる商品の会計処理を実行する。即ち,この場合,会計処理部61eは,ステップS22で取得した単価情報「150円」と,ステップS21で受信した情報に含まれる個数情報「3個」とから,パック商品PAの価格を算出して会計処理(釣銭算出処理やレシート発行処理など)を実行する。」
・「【0084】
以上,例示的な実施形態に基づいて説明したが,本発明は,上記した実施形態により限定されるものではない。
【0085】
例えば,上記した実施形態では,商品Aに付加される所定の付加物ATとして,商品Aを載置する部材としてのパック商品PAの「トレイ」の場合について説明したが,これに限定されず,付加物ATとして,商品Aに貼付される部材としての「シール」や,商品Aを収容する部材としての「ネット」などのその他の付加物を適用することも可能である。
【0086】
また,上記した実施形態では,所定の付加物ATとして付加マークMが付加されている付加物ATを用い,付加物ATおよび付加マークMの特徴(色,形状など)を認識する形態について説明したが,付加マークMが付加されていない付加物ATを用い,付加物ATの特徴(色,形状など)のみを認識するような形態とすることも可能である。
【0087】
また,上記した実施形態では,付加物ATに付加される付加物として付加マークMの場合について説明したが,これに限定されず,タグや紐などのその他の付加物を利用することも可能である。」
・「【0090】
また,上記した実施形態では,商品読取装置101において商品Aの産地,サイズおよび個数の少なくとも一つを示す所定情報を特定する処理(処理A)を行い,POS端末11において商品読取装置101から受信した情報に基づいて商品Aまたは複数の商品Aを一つに纏めた商品(パック商品PA)の価格を求める処理(処理B)を行う形態について説明したが,これに限定されるものではない。即ち,上記処理Aおよび処理Bの両方を,商品読取装置101またはPOS端末11のいずれか一方で行わせても良い。」
・「【0095】
また,上記した実施形態では,本実施形態に係る情報処理装置およびプログラムをPOS端末11および商品読取装置101に適用した場合について説明したが,これに限定されず,その他の情報処理装置に適用することも可能である。」
・「【符号の説明】
【0098】
1 チェックアウトシステム
11 POS端末(情報処理装置)
101 商品読取装置(情報処理装置)
61,161 CPU
161a 表示処理部
161b 操作入力部
161c 撮像画像取込部
161d 品種認識部(品種認識手段)
161e 特徴認識部(付加物認識手段)
161f 所定情報特定部(特定手段,記憶手段)
161g 情報送信部
161h 値引き情報特定部(値引き情報特定手段)
61a 情報受信部
61b 単価取得部
61c 商品価格算出部(取得手段)
61d 売上登録部
61e 会計処理部
A 商品
AT 付加物
M 付加マーク
T1 情報特定テーブル
F1 PLUファイル」

また,「単価取得部61b」が「商品Aの品種「りんご(ふじ)」を示す情報および「青森県産,サイズS」を示す所定情報をもとに,PLUファイルF1を参照し,上記品種情報で特定される商品Aの単価を示す単価情報「150円」を含む登録情報を取得する際に参照するPLUファイルF1は,図6を参照すると,商品Aの品種「リンゴ(ふじ)」の複数の商品名「リンゴ(ふじ)青森産」,「リンゴ(ふじ)長野産」・・・の区分の中から商品Aのサイズに基づいて商品Aの単価を区分していることが理解できる。

そうすると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「撮影部164が撮像した撮像画像から特定の物体としての商品Aの品種を認識する品種認識部161dと,
撮影部164が撮影した撮像画像から商品Aに付加される所定の付加物ATの特徴を認識する特徴認識部161eと,
上記認識された商品Aの品種および付加物ATの特徴をもとに,予め記憶している,商品Aの品種と付加物ATの特徴とに対応付けて商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報を登録するテーブルである情報特定テーブルT1を参照して,上記商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報を特定する所定情報特定部161fと,
商品Aの品種「りんご(ふじ)」を示す情報および「青森県産,サイズS」を示す所定情報をもとに,PLUファイルF1を参照し,上記品種情報で特定される商品Aの単価を示す単価情報「150円」を含む登録情報を取得する単価取得部61bと,
商品Aの品種「リンゴ(ふじ)」の複数の商品名「リンゴ(ふじ)青森産」,「リンゴ(ふじ)長野産」・・・の区分の中から商品Aのサイズに基づいて商品Aの単価を区分するPLUファイルF1と,
を有する情報処理装置を適用したチェックアウトシステム1。」

イ.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として示され,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2001-216571号公報(平成13年8月10日出願公開。以下「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
・「【請求項4】 トレイ上に載置された商品を識別し,該識別した商品の精算を行う料金精算装置において,
所定の間隔で配設された第1の撮像手段および第2の撮像手段と,
前記第1の撮像手段により取得された第1の画像と前記第2の撮像手段により取得された第2の画像とに基づいて前記商品の高さ情報を取得する高さ認識手段と,
前記第1の画像と前記第2の画像の少なくとも一方に基づいて前記商品の形状情報を取得する形状認識手段と,
前記第1の画像と前記第2の画像の少なくとも一方に基づいて前記商品の色情報を取得する色認識手段と,
前記高さ認識手段が取得した高さ情報,前記形状認識手段が取得した形状情報,前記色認識手段が取得した色情報に基づいて商品を識別する商品識別手段とを具備することを特徴とする料金精算装置。」
・「【請求項6】 前記形状認識手段は,
取得する形状情報に前記商品の大きさを示す情報を含むことを特徴とする請求項4または5記載の料金精算装置。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,料金精算方法および装置に関し,特に,カフェテリア方式の飲食店等において,料金を自動精算する料金精算方法および装置に関する。」
・「【0014】図2は,料金精算装置10の構成を示すブロック図である。同図に示すように,料金精算装置10は,2つの撮像部11-1および11-2と,記憶部12,認識部13,識別部14,精算部15,表示部16,入力部17,データ転送部18を具備して構成される。また,認識部13は,高さ認識部13aと形状認識部13b,色認識部13cを具備して構成される。
【0015】撮像部11-1および11-2は,それぞれトレイ20およびトレイ20上に載置された商品を撮像する。記憶部12は,撮像部11-1,11-2が撮像した画像データを記憶し,認識部13が,この画像データに基づいて各商品の画像を認識する。認識部13では,高さ認識部13aが2つの画像データから各商品の高さを認識し,形状認識部13bが2つの画像データのいずれかから各商品の形状を認識し,色認識部13cが2つの画像データのいずれかから各商品の色を認識する。
【0016】識別部14は,認識部13により得られた各商品の高さ,形状,色の各情報に基づいて商品の識別を行い,この識別結果に基づいて精算部15が料金の精算を行う。このとき,識別部14により識別できなかった商品が存在した場合には,表示部16にその旨を表示し,これを受けた店員が商品の識別を行い,入力部17より商品名(種別)を入力し,精算部15が精算を行う。精算部15が精算した料金データは,データ転送部18よりPOSシステム等へ転送される。
【0017】ここで,認識部13における各情報の取得方法について説明する。認識部13では,まず,高さ認識部13aが商品の高さ情報を取得する。高さ情報の取得は,図3に示すようにカメラ101-1,101-2(撮像手段11-1,11-2に相当,102-1,102-2は光源)の間隔をA,焦点距離をF,後述する視差をDとすれば,カメラからの距離Z,つまり,商品の高さ情報は式1から得ることができる。
【0018】
【式1】・・・」
・「【0024】
【式3】・・・
このように,視差Dを求めることで,カメラ101-1,101-2からの距離を計算し,深さ方向の距離画像を得る。つまり,各画素毎にカメラ101-1,101-2からの距離情報を持った距離画像を得ることができ,この距離画像から商品の高さ情報を取得することができる。」
・「【0029】このようにして商品の高さ毎に分類された画像を得た後に,認識部13は,形状認識部13bにより商品の形状を認識し,色認識部13cにより商品の色を認識する。
【0030】形状認識部13bでは,商品の高さ毎に分類された画像から商品の形状および大きさを認識する。」
・「【0034】このようにして,認識部13が認識した商品の高さ,形状,色に基づいて識別部14が商品の識別を行うが,この識別は,図9に示すようなテーブルを参照して行う。この際,コーヒーフレッシュ22のように課金外のものは,精算対象から除外する。なお,図9に示す商品とその価格とは,別途テーブルとして精算部15に持っておくか,図9のテーブルに価格も含めておく。
【0035】なお,トレイ20上に商品が接触している状態で載置されていた場合であっても,商品の高さが異なれば高さ認識部13aで別個の商品として分離され,色が異なっていれば色認識部13cで別個の商品として分離される。また,高さ,色が同じであっても,形状認識部13bで商品の大きさを認識しているため,別個の商品としての認識は可能である。ただし,商品が垂直方向に重ねられていた場合にはこの限りではない。」
・「【0044】なお,上述の説明では,精算対象の商品をファーストフードとして説明したが,対象商品は,ファーストフードに限らず,カフェテリア形式のようなセルフピッキング方式で販売する商品の精算に適用することができる。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように,この発明によれば,商品の高さや形状,色等に基づいて商品を直接識別して精算を行うように構成したので,自動精算用の皿やタグなどを準備することなく精算を自動化することが可能となり,効率よく商品の販売を行うことができる。」

そうすると,引用文献2には,以下の事項(以下,「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されているといえる。
「所定の間隔で配設された第1の撮像手段および第2の撮像手段と,前記第1の撮像手段により取得された第1の画像と前記第2の撮像手段により取得された第2の画像とに基づいて前記商品の高さ情報を取得する高さ認識手段と,前記第1の画像と前記第2の画像の少なくとも一方に基づいて前記商品の大きさを示す情報を含む前記商品の形状情報を取得する形状認識手段と,前記第1の画像と前記第2の画像の少なくとも一方に基づいて前記商品の色情報を取得する色認識手段と,前記高さ認識手段が取得した高さ情報,前記形状認識手段が取得した形状情報,前記色認識手段が取得した色情報に基づいて商品を識別する商品識別手段とを具備する,料金精算装置であって,タグなどを準備することなく精算を自動化することが可能となり,効率よく商品の販売を行うことができる,料金精算装置。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「撮影部164」は前者の「撮影手段」に相当し,以下同様に,「商品A」は「対象」又は「物体」に,「撮像画像」は「画像」に,「品種認識部161d」は「物体認識手段」に,「サイズ」は「大きさ」に,「所定情報特定部161f」は「識別手段」に,それぞれ相当する。
後者の「撮影部164が撮像した撮像画像から特定の物体としての商品Aの品種を認識する品種認識部161d」は前者の「撮像手段によって撮像された対象の画像から該対象を物体認識する物体認識手段」に相当する。
後者の「撮影部164が撮影した撮像画像から商品Aに付加される所定の付加物ATの特徴を認識する特徴認識部eと,上記認識された商品Aの品種および付加物ATの特徴をもとに,予め記憶している,商品Aの品種と付加物ATの特徴とに対応付けて商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報を登録するテーブルである情報特定テーブルT1を参照して,上記商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報を特定する所定情報特定部161f」と前者の「対象の画像に基づいて,前記対象の大きさを識別する識別手段」とは,「前記対象の大きさを識別する識別手段」において共通する。
後者の「品種認識部161d」が「商品Aの品種を認識」することにより「商品Aの品種」を特定しているから,後者の「商品Aの品種を認識する品種認識部161d」は前者の「前記物体認識手段によって認識された物体を,認識結果に基づいて当該物体を分類」するものといえる。
後者の「商品Aの品種「リンゴ(ふじ)」の複数の商品名「リンゴ(ふじ)青森産」,「リンゴ(ふじ)長野産」・・・の区分の中から商品Aのサイズに基づいて商品Aの単価を区分するPLUファイルF1」は,前者の「当該物体における複数の区分の中から,前記対象の大きさに基づいて該対象を区分に分類する分類手段」に相当する。
後者の「情報処理装置を適用したチェックアウトシステム1」は,段落【0008】,【0009】を参照すると,POS端末11を備えるから,前者の「POS端末装置」に相当するといえる。
そうすると,両者は,
「撮像手段によって撮像された対象の画像から該対象を物体認識する物体認識手段と,
前記対象の大きさを識別する識別手段と,
前記物体認識手段によって認識された物体を,認識結果に基づいて当該物体を分類し,当該物体における複数の区分の中から,前記対象の大きさに基づいて該対象を区分に分類する分類手段と,
を有する,POS端末装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違する。
<相違点>
前記対象の大きさを識別する識別手段に関して,本件補正発明では,「前記対象の画像に基づいて」,前記対象の大きさを識別する識別手段であるのに対して,引用発明では,「撮影部164が撮影した撮像画像から商品Aに付加される所定の付加物ATの特徴を認識する特徴認識部eと,上記認識された商品Aの品種および付加物ATの特徴をもとに,予め記憶している,商品Aの品種と付加物ATの特徴とに対応付けて商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報を登録するテーブルである情報特定テーブルT1を参照して,上記商品Aの産地,サイズ,個数,重量,等級および階級の少なくとも一つを示す所定情報を特定する所定情報特定部161f」である点。

(4)相違点の判断
上記(2)で述べたように,引用文献2に記載された事項は,
「所定の間隔で配設された第1の撮像手段および第2の撮像手段と,前記第1の撮像手段により取得された第1の画像と前記第2の撮像手段により取得された第2の画像とに基づいて前記商品の高さ情報を取得する高さ認識手段と,前記第1の画像と前記第2の画像の少なくとも一方に基づいて前記商品の大きさを示す情報を含む前記商品の形状情報を取得する形状認識手段と,前記第1の画像と前記第2の画像の少なくとも一方に基づいて前記商品の色情報を取得する色認識手段と,前記高さ認識手段が取得した高さ情報,前記形状認識手段が取得した形状情報,前記色認識手段が取得した色情報に基づいて商品を識別する商品識別手段とを具備する,料金精算装置であって,タグなどを準備することなく精算を自動化することが可能となり,効率よく商品の販売を行うことができる,料金精算装置。」
であり,「画像」によって商品である「対象」の大きさを認識することは,ごくありふれた技術である。
そして,引用発明を開示する引用文献1は,本願の明細書の背景技術の特許文献1と同様に,マーク(付加物)がなければ等級等が判別できないという本件補正発明と同様の課題を内在するものである上に,引用文献1の段落【0085】?【0087】には付加物の特徴からサイズ(大きさ)等を抽出する付加物としてタグなどを備えることが記載されている一方,引用文献2の段落【0045】には,発明の効果の記載として,「この発明によれば,商品の高さや形状,色等に基づいて商品を直接識別して精算を行うように構成したので,自動精算用の皿やタグなどを準備することなく精算を自動化することが可能となり,効率よく商品の販売を行うことができる。」と記載されているから,引用発明における「上記認識された商品Aの品種および付加物ATの特徴をもとに」商品のサイズ等を特定する際に,引用文献1の付加物として例示されるタグなどに代えて,タグなどを準備することなく精算を自動化することが可能となり,効率よく商品の販売を行うことができることを目的とした引用文献2に記載された事項のごくありふれた技術である「『画像』によって『対象』の大きさを認識すること」を適用することにより,相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,本件補正発明の効果について検討しても,引用発明及び引用文献2に記載された事項から当業者が予測し得る範囲のものであって,格別なものとはいえない。

(5)請求人の主張の検討
ア.請求人は,平成30年7月23日の意見書において,
「引用文献1に記載された情報処理装置は,付加物の特徴を得ることによって大きさを特定可能であるため,対象の画像から大きさを識別する必要性はありません。更に述べれば,引用文献1の発明(商品の大きさを付加物の特徴を識別することで特定する手法)は,登録済みのデータ内から付加物の特徴をキーに商品の大きさを呼び出すこと,すなわち“特定”できておりますので,加えて対象の画像から大きさを“識別”する必要性はありません。このように,引用文献1の情報処理装置は,対象(物体,商品)の大きさを識別することを要さずに,付加物の特徴を読み込むことでPOSの商品コード等を“特定”できます。したがって,主引用発明の引用文献1に,引用文献2に記載された発明を適用する利点が無く,動機付けは生じません。
また,引用文献1の主引用発明は,商品の画像以外を用いてサイズを特定することを目的としており,引用文献2の副引用発明の商品の画像から高さを識別することを主引用発明に適用されると,引用文献1に記載された主引用発明がその目的を反するものとなります。すなわち,両文献に記載された発明を組み合わせるとの考え方には阻害要因があります。このため,引用文献1の主引用発明に引用文献2の副引用発明を組み合わせるとの動機付けは生じません。
すなわち,引用文献1と引用文献2を知る当業者であっても,本願発明の構成を,引用文献1に記載された発明を基礎として,容易に想到し得るとのことは論理の飛躍があります。」旨主張する。
しかしながら,前記(4)で述べたように,引用発明を開示する引用文献1は,本願の明細書の背景技術の特許文献1と同様に,マーク(付加物)がなければ等級等が判別できないという本件補正発明と同様の課題を内在するものである上に,引用文献1には,付加物の特徴からサイズ(大きさ)等を抽出する付加物としてタグなどを備えることが記載されている一方,引用文献2の段落【0045】には,発明の効果の記載として,「この発明によれば,商品の高さや形状,色等に基づいて商品を直接識別して精算を行うように構成したので,自動精算用の皿やタグなどを準備することなく精算を自動化することが可能となり,効率よく商品の販売を行うことができる。」と記載されているから,引用発明を開示する引用文献1のタグなどの付加物に代えて,引用文献2に記載された事項を適用することの動機付けは十分にあるといえる。
イ.請求人は,審判請求書において,
「すなわち,引用文献1及び引用文献2はいずれも商品を認識しているものを開示しているにすぎません。また,たとえ引用文献1に引用文献2に適用したとしても,大きさから直接的に商品を認識する構成になるにすぎず,本願のように「大きさに基づいて,物体認識によって分類した物体における複数の区分の中から区分に分類する」という本願の特徴に到達し得ません。」旨主張する。
しかしながら,前述したように,引用発明の「PLUファイルF1」は,「商品Aの品種「リンゴ(ふじ)」の複数の商品名「リンゴ(ふじ)青森産」,「リンゴ(ふじ)長野産」・・・の区分の中から商品Aのサイズに基づいて商品Aの単価を区分する」ものであり,「大きさに基づいて,物体認識によって分類した物体における複数の区分の中から区分に分類する」ことは,開示されているといえる。
よって,請求人の意見書及び審判請求書における上記主張は採用することができない。

(6)まとめ
したがって,本願補正発明は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される第2 1.(2)に記載したとおりのものと認められる。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?14に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1,2に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2013-69259号公報(上記第2 2.(2)ア.の引用文献1と同じ)
引用文献2:特開2001-216571号公報(上記第2 2.(2)イ.の引用文献2と同じ)

3.引用文献とその記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献,その記載事項及び引用発明は,上記「第2 2.(2)ア」,「第2 2.(2)イ」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は,上記「第2」で検討した本件補正発明の「撮像手段によって撮像された対象の画像から該対象」を「対象」と,「前記物体認識手段によって認識された物体を,認識結果に基づいて当該物体を分類し,当該物体における複数の区分の中から」を「前記物体認識手段によって認識された物体における複数の区分の中から」として,下線部の特定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2 2.(4)相違点の判断」に記載したとおり,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-12-24 
結審通知日 2020-01-07 
審決日 2020-01-20 
出願番号 特願2014-71002(P2014-71002)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07G)
P 1 8・ 575- Z (G07G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小島 哲次毛利 太郎  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 岡▲さき▼ 潤
藤井 昇
発明の名称 POS端末装置  
代理人 佐々木 敬  
代理人 池田 憲保  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ