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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C11D
審判 全部申し立て 6項4号請求の範囲の記載形式不備  C11D
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:558  C11D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C11D
管理番号 1360469
異議申立番号 異議2018-700505  
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-20 
確定日 2020-02-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6251296号発明「混合糖組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6251296号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?10〕、〔11?15〕について訂正することを認める。 特許第6251296号の請求項1、7、9、11?15に係る特許を維持する。 特許第6251296号の請求項2?6、8、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6251296号の請求項1?15に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)3月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年3月5日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とするものであって、平成29年12月1日にその特許権の設定登録がされ、同年12月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成30年6月20日に特許異議申立人クラリアント・プロドゥクテ・(ドイチュラント)・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 9月25日付け:取消理由通知
平成30年12月27日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
平成31年 3月14日 :意見書の提出(申立人)
令和 元年 5月31日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 9月 3日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年11月 7日 :意見書の提出(申立人)

2.訂正請求について
(1)本件訂正
上記1.「手続の経緯」のとおり、特許権者から令和元年9月3日に訂正請求書が提出されて、本件特許請求の範囲の訂正がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、平成30年12月27日に提出された訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなす。
以下、令和元年9月3日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。

(2)本件訂正の内容
本件訂正は、特許第6251296号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?15について訂正することを求めるものであり、その訂正の具体的な内容は、以下のとおりである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
ア 訂正事項1 請求項1、7、9に係る訂正
特許請求の範囲の請求項1に記載の、
「第1化学物質と第2化学物質とを含む混合物であって、前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
[化1]

式中、
n^(1)は2?4であり;
n^(2)は1?3であり;
n^(1)はn^(2)より大きく、
R_(1)及びR_(3)は、C_(1)?C_(16)アルキル、C_(1)?C_(3)ヒドロキシ-アルキル、又はメトキシ-アルキルから独立して選択され;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
[化2]

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、ヒドロキシル-アルキル、又はヒドロキシル-アルケニル、並びにこれらの混合物である、混合物。」を、
「第1化学物質と第2化学物質とを含む混合物であって、前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
[化1]

式中、
n^(1)は4であり;
n^(2)は3であり;
R_(1)及びR_(3)は、メチル基であり;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
[化2]

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物であり、前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5であり、
式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来である、混合物。」に訂正する。
請求項1を引用する請求項7、9も同様に訂正する。

イ 訂正事項2 請求項2に係る訂正
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3 請求項3に係る訂正
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

エ 訂正事項4 請求項4に係る訂正
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

オ 訂正事項5 請求項5に係る訂正
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

カ 訂正事項6 請求項6に係る訂正
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

キ 訂正事項7 請求項7係る訂正
特許請求の範囲の請求項7に記載の、
「R_(1)及びR_(3)がメチル基であり、R_(2)及びR_(4)が式IIIの構造を有し、R5がC11とC13との混合物であり、且つC11とC13との重量比が99:1?60:40である、請求項6に記載の混合物。」を、
「R5がC11とC13との混合物であり、且つC11とC13との重量比が99:1?60:40である、請求項1に記載の混合物。」に訂正する。

ク 訂正事項8 請求項8に係る訂正
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

ケ 訂正事項9 請求項9に係る訂正
特許請求の範囲の請求項9に記載の
「前記混合物は第3の化学物質を更に含み、前記第3の化学物質は式IVの化学構造を有し:
[化3]

式中、
R_(6)は、水素、C_(1)?C_(16)アルキル、C_(1)?C_(3)ヒドロキシ-アルキル又はメトキシ-アルキルから選択され;
R_(7)は、C_(8)?C_(22)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、又はトリアルケニル、及びそれらの混合物から独立して選択され;
n^(3)は2?4である、請求項1に記載の混合物。」を、
「前記混合物は第3の化学物質を更に含み、前記第3の化学物質は式IVの化学構造を有し:
[化3]

式中、
R_(6)は、メチルであり;
R_(7)は、C_(8)?C_(22)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、又はトリアルケニル、及びそれらの混合物から独立して選択され;
n^(3)は2?4であり、
式IVの分子の一部は、アラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択される、請求項1に記載の混合物。」に訂正する。

コ 訂正事項10 請求項10に係る訂正
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

サ 訂正事項11 請求項11、13?15に係る訂正
特許請求の範囲の請求項11に記載の
「(a)約0.001重量%?約99.999重量%の、請求項1に記載の混合物と、
(b)約0.001重量%?約99.999重量%の、少なくとも1種類の追加的成分であって、洗浄成分及びパーソナルケア成分からなる群より選択される追加的成分と、を含む組成物。」を、
「(a)約0.001重量%?約99.999重量%の、第1化学物質と第2化学物質とを含む混合物と、
(b)約0.001重量%?約99.999重量%の、少なくとも1種類の追加的成分であって、洗浄成分及びパーソナルケア成分からなる群より選択される追加的成分と、を含む組成物であって、
前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
[化4]

式中、
n^(1)は4であり;
n^(2)は3であり;
R_(1)及びR_(3)は、メチル基であり;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
[化5]

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物であり、前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5であり、
式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来である、組成物。」に訂正する。
請求項11を引用する請求項13?15も同様に訂正する。

シ 訂正事項12 請求項12、13?15に係る訂正
特許請求の範囲の請求項12に記載の
「(a)約0.001重量%?約99.999重量%の、請求項9に記載の混合物と、
(b)約0.001重量%?約99.999重量%の、少なくとも1種類の追加的成分であって、洗浄成分及びパーソナルケア成分からなる群より選択される追加的成分と、を含む組成物。」を、
「(a)約0.001重量%?約99.999重量%の、第1化学物質と第2化学物質と第3の化学物質とを含む混合物と、
(b)約0.001重量%?約99.999重量%の、少なくとも1種類の追加的成分であって、洗浄成分及びパーソナルケア成分からなる群より選択される追加的成分と、を含む組成物であって、
前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
[化6]

式中、
n^(1)は4であり;
n^(2)は3であり;
R_(1)及びR_(3)は、メチル基であり;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
[化7]

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物であり、前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5であり、、
前記第3の化学物質は式IVの化学構造を有し:
[化8]

式中、
R_(6)は、メチルであり;
R_(7)は、C_(8)?C_(22)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、又はトリアルケニル、及びそれらの混合物から独立して選択され;
n^(3)は2?4であり、
式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来であり、
式IVの分子の一部は、アラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択される、組成物。」に訂正する。
請求項12を引用する請求項13?15も同様に訂正する。

なお、訂正事項1?12に係る訂正前の請求項1?15について、請求項2?15は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正後の請求項1?15は訂正事項1?12によって直接又は連動して訂正されるから、本件訂正は一群の請求項1?15について請求されたものである。

(3)訂正の適否についての判断
ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(ア)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた式Iの化学構造及び式IIの化学構造において、
(a)n^(1)を「2?4」から、訂正前の請求項2及び実施例の記載に基づいて「4」に限定し、
(b)n^(2)を「1?3」から、訂正前の請求項4及び実施例の記載に基づいて「3」に限定するとともに、「n^(1)はn^(2)より大きく」を削除し、
(c)R_(1)及びR_(3)を「C_(1)?C_(16)アルキル、C_(1)?C_(3)ヒドロキシ-アルキル、又はメトキシ-アルキルから独立して選択され」るものから、[0037]及び実施例の記載に基づいて「メチル基」に限定し、
また、訂正前の請求項1に記載されていた式IIIの化学構造において、
(d)R_(5)の「C_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、ヒドロキシル-アルキル、又はヒドロキシル-アルケニル、並びにこれらの混合物」という選択肢のうち、「ヒドロキシル-アルキル」及び「ヒドロキシル-アルケニル」を削除して、「C_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物」に限定し、
(e)訂正前の請求項5及び実施例の記載に基づいて、「式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来である」という発明特定事項を加えることにより化合物を限定し、
(f)第1化学物質及び第2化学物質について、訂正前の請求項6、本件明細書の[0053]における「他の実施形態においては、(式Iに基づく)第1化学物質の(式IIに基づく)第2化学物質に対する比率は、混合物中で、50:50?0.5:99.5である。」との記載、及び[0029]における「百分率及び比率は全て、別途記載のない限り重量で計算される」との記載に基づいて、「前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5である」との発明特定事項を付加することにより、それらの重量比を具体的に特定し、混合物の範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項1は、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
さらに、請求項1を引用する請求項7及び9も同様に訂正される。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(イ)訂正事項2?6、8、10について
訂正事項2?6、8、10は、それぞれ請求項2?6、8、10を削除する訂正であるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項2?6、8、10は、いずれも請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項2?6、8、10は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(ウ)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項6を引用し、訂正前の請求項6が訂正前の請求項5を引用し、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1を引用していたところ、上記訂正事項5及び6により請求項5及び6が削除されることに伴い、引用関係が不明瞭になることを避けるために、訂正後の請求項7が訂正後の請求項1を引用するように記載を改めるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項7は、請求項7に係る発明の内容を実質的に変更するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、当該訂正が請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(エ)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項9に記載されていた式IVの化学構造において、
(a)R_(6)の「水素、C_(1)?C_(16)アルキル、C_(1)?C_(3)ヒドロキシ-アルキル又はメトキシ-アルキル」という選択肢のうち、C_(1)アルキルである「メチル」に限定し、
(b)訂正前の請求項10の記載に基づいて、「式IVの分子の一部は、アラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択される」という発明特定事項を加えることにより化合物を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項9は、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(オ)訂正事項11について
訂正事項11は、
(a)訂正前の請求項11が請求項1を引用する記載を含んでいたところ、請求項1を引用しないように、訂正前の請求項1の発明特定事項に基づいて請求項11を書き改めるものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、
また、訂正事項1と同様に、訂正前の請求項1に記載されていた式Iの化学構造及び式IIの化学構造において、
(b)n^(1)を「2?4」から、訂正前の請求項2及び実施例の記載に基づいて「4」に限定し、
(c)n^(2)を「1?3」から、訂正前の請求項4及び実施例の記載に基づいて「3」に限定するとともに、「n^(1)はn^(2)より大きく」を削除し、
(d)R_(1)及びR_(3)を「C_(1)?C_(16)アルキル、C_(1)?C_(3)ヒドロキシ-アルキル、又はメトキシ-アルキルから独立して選択され」るものから、[0037]及び実施例の記載に基づいて「メチル基」に限定し、
訂正前の請求項1に記載されていた式IIIの化学構造において、
(e)R_(5)の「C_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、ヒドロキシル-アルキル、又はヒドロキシル-アルケニル、並びにこれらの混合物」という選択肢のうち、「ヒドロキシル-アルキル」及び「ヒドロキシル-アルケニル」を削除して、「C_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物」に限定し、
(f)訂正前の請求項5及び実施例の記載に基づいて、「式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来である」という発明特定事項を加えることにより化合物を限定し、
(g)第1化学物質及び第2化学物質について、本件明細書の[0053]における「他の実施形態においては、(式Iに基づく)第1化学物質の(式IIに基づく)第2化学物質に対する比率は、混合物中で、50:50?0.5:99.5である。」との記載、及び[0029]における「百分率及び比率は全て、別途記載のない限り重量で計算される」との記載に基づいて、「前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5である」との発明特定事項を付加することにより、それらの重量比を具体的に特定し、混合物の範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記(a)の訂正は請求項11に係る発明の内容を実質的に変更するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、上記(b)?(g)の訂正も、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項11は、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
さらに、請求項11を引用する請求項13?15も同様に訂正される。
よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(カ)訂正事項12について
訂正事項12は、
(a)訂正前の請求項12が請求項9を引用する記載を含み、訂正前の請求項9は訂正前の請求項1を引用していたところ、請求項9及び1を引用しないように、訂正前の請求項9及び1の発明特定事項に基づいて請求項12を書き改めるものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、
また、訂正事項1と同様に、訂正前の請求項1に記載されていた式Iの化学構造及び式IIの化学構造において、
(b)n^(1)を「2?4」から、訂正前の請求項2及び実施例の記載に基づいて「4」に限定し、
(c)n^(2)を「1?3」から、訂正前の請求項4及び実施例の記載に基づいて「3」に限定するとともに、「n^(1)はn^(2)より大きく」を削除し、
(d)R_(1)及びR_(3)を「C_(1)?C_(16)アルキル、C_(1)?C_(3)ヒドロキシ-アルキル、又はメトキシ-アルキルから独立して選択され」るものから、[0037]及び実施例の記載に基づいて「メチル基」に限定し、
訂正前の請求項1に記載されていた式IIIの化学構造において、
(e)R_(5)の「C_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、ヒドロキシル-アルキル、又はヒドロキシル-アルケニル、並びにこれらの混合物」という選択肢のうち、「ヒドロキシル-アルキル」及び「ヒドロキシル-アルケニル」を削除して、「C_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物」に限定し、
(f)訂正前の請求項5及び実施例の記載に基づいて、「式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来である」という発明特定事項を加えることにより化合物を限定し、
(g)第1化学物質及び第2化学物質について、本件明細書の[0053]における「他の実施形態においては、(式Iに基づく)第1化学物質の(式IIに基づく)第2化学物質に対する比率は、混合物中で、50:50?0.5:99.5である。」との記載、及び[0029]における「百分率及び比率は全て、別途記載のない限り重量で計算される」との記載に基づいて、「前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5である」との発明特定事項を付加することにより、それらの重量比を具体的に特定し、混合物の範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、
さらに、訂正事項9と同様に、訂正前の請求項9に記載されていた式IVの化学構造において、
(h)R_(6)の「水素、C_(1)?C_(16)アルキル、C_(1)?C_(3)ヒドロキシ-アルキル又はメトキシ-アルキル」という選択肢のうち、C_(1)アルキルである「メチル」に限定し、
(i)訂正前の請求項10の記載に基づいて、「式IVの分子の一部は、アラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択される」という発明特定事項を加えることにより化合物を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記(a)の訂正は請求項12に係る発明の内容を実質的に変更するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、上記(b)?(i)の訂正も、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項12は、請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
さらに、請求項12を引用する請求項13?15も同様に訂正される。
よって、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

イ 独立特許要件について
本件においては、訂正前のすべての請求項1?15に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1?15に係る訂正事項1?12については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

ウ 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
また、請求人は、訂正が認められる場合には、訂正後の請求項11?15については、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
よって、訂正後の請求項〔1?10〕、〔11?15〕について訂正することを認める。

3.本件発明について
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1?15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明15」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「第1化学物質と第2化学物質とを含む混合物であって、前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
[化1]

式中、
n^(1)は4であり;
n^(2)は3であり;
R_(1)及びR_(3)は、メチル基であり;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
[化2]

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物であり、前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5であり、
式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来である、混合物。
[請求項2]
(削除)
[請求項3]
(削除)
[請求項4]
(削除)
[請求項5]
(削除)
[請求項6]
(削除)
[請求項7]
R5がC11とC13との混合物であり、且つC11とC13との重量比が99:1?60:40である、請求項1に記載の混合物。
[請求項8]
(削除)
[請求項9]
前記混合物は第3の化学物質を更に含み、前記第3の化学物質は式IVの化学構造を有し:
[化3]

式中、
R_(6)は、メチルであり;
R_(7)は、C_(8)?C_(22)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、又はトリアルケニル、及びそれらの混合物から独立して選択され;
n^(3)は2?4であり、
式IVの分子の一部は、アラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択される、請求項1に記載の混合物。
[請求項10]
(削除)
[請求項11]
(a)約0.001重量%?約99.999重量%の、第1化学物質と第2化学物質とを含む混合物と、
(b)約0.001重量%?約99.999重量%の、少なくとも1種類の追加的成分であって、洗浄成分及びパーソナルケア成分からなる群より選択される追加的成分と、を含む組成物であって、
前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
[化4]

式中、
n^(1)は4であり;
n^(2)は3であり;
R_(1)及びR_(3)は、メチル基であり;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
[化5]

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物であり、前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5であり、
式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来である、組成物。
[請求項12]
(a)約0.001重量%?約99.999重量%の、第1化学物質と第2化学物質と第3の化学物質とを含む混合物と、
(b)約0.001重量%?約99.999重量%の、少なくとも1種類の追加的成分であって、洗浄成分及びパーソナルケア成分からなる群より選択される追加的成分と、を含む組成物であって、
前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
[化6]

式中、
n^(1)は4であり;
n^(2)は3であり;
R_(1)及びR_(3)は、メチル基であり;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
[化7]

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物であり、前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5であり、、
前記第3の化学物質は式IVの化学構造を有し:
[化8]

式中、
R_(6)は、メチルであり;
R_(7)は、C_(8)?C_(22)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、又はトリアルケニル、及びそれらの混合物から独立して選択され;
n^(3)は2?4であり、
式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来であり、
式IVの分子の一部は、アラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択される、組成物。
[請求項13]
少なくとも1種類の洗浄成分が、界面活性剤、担体、酵素、ビルダー、アルカリ性系(alkalinitysystem)、有機ポリマー化合物、色相染料、漂白化合物、アルカノールアミン、汚れ懸濁剤、再付着防止剤、腐食防止剤、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項11又は12に記載の組成物。
[請求項14]
前記組成物が、粒状洗剤、バー形状洗剤、液体洗濯洗剤、液体手洗い食器洗浄混合物、硬質表面洗浄剤、錠剤、消毒剤、工業用洗浄剤、超濃縮液(highly compact liquid)、粉末、除毒剤、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、洗顔用石鹸、ボディ洗浄剤、ボディーソープ、入浴用泡剤(foam bath)、化粧落とし、スキンケア製品、ニキビ抑制製品、防臭剤、発汗抑制剤、髭剃り用助剤、化粧品、脱毛剤、芳香剤、ローション、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項11又は12に記載の組成物。
[請求項15]
前記パーソナルケア成分は、油、及び皮膚軟化剤、保湿剤、キャリア、抽出物、ビタミン、鉱物、老化防止化合物、界面活性剤、溶媒、ポリマー、防腐剤、抗菌剤、ワックス、粒子、着色剤、染料、芳香剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11又は12に記載の組成物。」

4.取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の請求項1?15に係る特許に対して令和元年5月31日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1(サポート要件)
訂正前の本件発明1は、式Iの化学構造を有する第1化学物質と、式IIの化学構造を有する第2化学物質とを含み、第1化学物質と第2化学物質との重量比が50:50?0.5:99.5であることが特定された混合物の発明であり、第1化学物質と第2化学物質との組合せ、又はこれら両者に加えて両者以外の成分を含む場合が包含されるが、本件明細書には、訂正前の本件発明1の混合物において熱的特性の改善という課題が解決される作用機序は具体的に記載されていない。
また、実施例(表1?11)を含む発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても、訂正前の本件発明1の混合物が一般的に発明の課題を解決し得るものと解することはできない。
訂正前の本件発明2?5、7、9、10、11?15についても同様である。
よって、訂正前の本件発明1?5、7、9、10、11?15は、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものとすることができないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(2)理由4-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合
訂正前の本件発明1?5、7、9?15は、いずれも甲5発明、甲5に記載された事項及び甲6?甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
る。
<引用文献等一覧>
甲第5号証:特表平8-503734号公報
甲第6号証:Krister Holmberg(編),"Novel Surfactants Preparation, Applications, and Biodegradability", 第2版, Marcel Dekker, 2003, Chapter 1からのLaughlinet al, "N-Alkanoyl-N-Alkyl-1-Glycamines" p.1-33
甲第7号証:Zhu et al, "Surface Properties ofN-Alkanoyl-N-methyl Glucamines and Related Materials", Journal ofSurfactants and Detergents, Vol.2, No.3(July 1999)p.357-362
甲第8号証:特表平6-501733号公報

(3)理由5(明確性)
訂正前の本件発明9、10、12?15に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
訂正前の本件発明9は、訂正前の本件発明1を引用し、「前記混合物は第3の化学物質を更に含み、前記第3の化学物質は式IVの化学構造を有」することが特定された発明であるが、式IVの定義は訂正前の本件発明1に記載された第1化学物質及び第2化学物質のいずれの定義とも重複しているから、当該「第3の化学物質」は「第1化学物質」又は「第2化学物質」と定義上区別がつかないものである。
そうすると、「第3の化学物質」として、「第1化学物質」又は「第2化学物質」と同一の化合物が採用される場合、訂正前の本件発明1に記載された「前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比」に相当する重量比をどのように算出すべきか、理解できない。
また、「第3の化学物質」として、「第1化学物質」及び「第2化学物質」のいずれとも異なる化合物が採用される場合であっても、「第1」?「第3」の区分には多義性があるから、一意に「前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比」を算出することはできない。
よって、訂正前の本件発明9は、特許を受けようとする発明を明確に記載したものとすることができないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
訂正前の本件発明10、12?15についても同様である。

5.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての判断
(1)理由5(明確性)について
ア 本件発明9について
(ア)式I及びIIについて
本件訂正により、本件発明9が引用する本件発明1において、第1化学物質を表す式Iの定義及び第2化学物質を表す式IIの定義が減縮され、さらに、式Iの分子の一部がグルコース由来であり、式IIの分子の一部がキシロースであることが特定された。
具体的には、式Iにおけるn^(1)が4であることが特定されたことから、式IにおけるN原子より左側の部分構造(「式Iの分子の一部」)が6炭糖由来であることが特定され、さらに、当該部分構造がグルコース由来であることが特定されたから、その立体構造も明確に特定されたといえる。また、式IIについても、n^(2)が3であることが特定されたことから、式IIにおけるN原子より左側の部分構造(「式IIの分子の一部」)が5炭糖由来であることが特定され、さらに、当該部分構造がキシロース由来であることが特定されたから、その立体構造も明確に特定されたといえる。

(イ)式IIIについて
本件訂正により、本件発明9において、第3の化学物質を表す式IVの定義が減縮され、さらに、式IVの分子の一部がアラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択されるものであることが特定された。
具体的には、式IVにおけるn^(3)が2?4であることが特定されたことから、式IVにおけるN原子より左側の部分構造(「式IVの分子の一部」)が4?6炭糖由来であることが特定され、さらに、当該部分構造がアラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択されるものであることが特定されたから、その立体構造も含めて、上記特定の5炭糖又は6炭糖に由来するものであることが明確に特定されたといえる。

(ウ)本件発明9の明確性について
本件訂正により、本件発明9における第3の化学物質を表す式IVの定義と、本件発明1における第1化学物質を表す式Iの定義及び第2化学物質を表す式IIの定義とは、重複するところがなくなり、多義性もなくなった。
よって、本件発明9は特許を受けようとする発明を明確に記載したものであり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

イ 本件発明12?15について
本件発明1及び9と同様の式I、II、IVの定義を含む本件発明12についても、本件発明9に説示したことと同様のことがいえる。本件発明12を引用する本件発明13?15も同様である。
よって、本件発明12?15は特許を受けようとする発明を明確に記載したものであり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

ウ 理由5(明確性)についてのまとめ
本件発明9、12?15は、いずれも特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであり、これらの発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由5(明確性)の理由によっては、本件請求項9、12?15に係る特許を取り消すことはできない。

(2)理由1(サポート要件)について
ア 本件発明の課題について
本件明細書の[0002]には、背景技術として、「現在、界面活性剤産業が直面する課題としては、より低温での洗濯、効率性のより低いビルダー、カルシウム制御を伴わない液体製品、並びに界面活性剤による環境に対する影響が認識されたことにより、総合的な界面活性剤の使用量を減少させるようにとの社会的圧力などが挙げられる」ことが記載され、[0003]には、「グルコース、及びココナツオイルのメチルエステル並びにパーム核オイルのメチルエステルのみに基づく、これまでに商業化された糖アミド界面活性剤は、融点及びクラフト点のような高い熱的特性に悩まされていたが、そのことは、消費者向け製品においてより広い用途に用いられ得るという界面活性剤の真の潜在力を制限するものであった」ことが記載され、[0005]には、「持続可能な製品及び材料を求める消費者の欲求が存在する」が、「現行既存の持続可能な界面活性剤には、その処方可能性、コスト、及び、処方の柔軟性に関して、制約がある。それゆえ、高性能の持続可能な界面活性剤で、既存の物質よりも改善された特性を有する界面活性剤への需要が市場に存在する」ことが記載されている。
また、[0004]には、「界面活性剤のテール基とヘッド基との両方に基づく新規の供給原料」が「糖アミド界面活性剤混合物の物理的特性を改善することを可能とし、それにより処方可能性を改善することを可能にする」ことが記載され、[0258]には、「グルコースアミド及びアミンに基づく物質が・・・より短い出発糖又はポリオール基に基づく物質と混合される場合には、物理的熱的特性が・・・一方よりも改善される」こと、及び「熱的特性の改善は・・・DSCで観察される、初期相転移、初期視覚的融点、及びクラフト点を含む」ことが記載されている。
これらの記載、実施例の記載及び請求項の記載を参酌すると、本件発明は、「持続可能な原料に基づく糖アミドの新規の混合物により、混合物をなす一方の糖アミドよりも改善された融点、クラフト点等の熱的特性を有する混合物を提供する」こと、及びそれにより「処方可能性、コスト、及び、処方の柔軟性に関して既存の物質よりも改善された特性を有し、消費者向け製品においてより広い用途に用いられ得る界面活性剤を提供する」ことを課題とするものといえる。

イ 本件発明1について
本件発明1は、上記3.「本件発明について」に記載した特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項により特定される「混合物」の発明であり、式Iの化学構造を有し、式Iの分子の一部がグルコース由来である第1化学物質と、式IIの化学構造を有し、式IIの分子の一部がキシロース由来である第2化学物質とを含み、第1化学物質と第2化学物質との重量比が50:50?0.5?99.5であることが特定されている。

ウ 本件明細書及び図面の記載について
(ウ-1)第1化学物質及び第2化学物質について
本件明細書の[0185]?[0258]には、「実施例」が記載され、[0212]表1?[0256]表11の各表には、糖アミドの単独及び混合物の熱的特性の実験データが記載され、また、[0015]の記載を参酌すると、表1?7の実験データをグラフ化したものが、図1?図7として添付されている。
ここで、表1?11に記載されている第1化学物質と第2化学物質との組合せのうち、例えば、「C12-NMG:C12-NMX混合試料(実施例22、実施例27(表1)、実施例29(表3)、実施例33(表7))」は、本件発明1の式Iの化合物(n^(1)=4、グルコース由来の部分構造を有し、R_(1)がメチル基である)と、式IIの化合物(n^(2)=3、キシロース由来の部分構造を有し、R_(3)がメチル基である)とを含有する混合物の具体例に相当し、R_(2)及びR_(4)については、式IIIの構造を備え、R_(5)がいずれもC_(11)アルキルの例に相当すると理解することができる。
また、同様に、「C12-ene-NMG:C12-ene-NMX混合試料(実施例24、実施例31(表5))」、「C15-ene-NMG:C15-ene-NMX混合試料(実施例25、実施例32(表6))」、「C12/14NMG:NMX:セルロース系不純物混合試料(実施例26)」、「CCO-NMG:CCO-NMX混合試料(実施例37、実施例38(表8)、実施例39(表9))」及び「C1214-NMG:C1214-NMX混合試料(実施例42、43(表10))」は、本件発明1の式Iの化合物(n^(1)=4、グルコース由来の部分構造を有し、R_(1)がメチル基である)と、式IIの化合物(n^(2)=3、キシロース由来の部分構造を有し、R_(3)がメチル基である)とを含有する混合物の具体例に相当し、R_(2)及びR_(4)については、式IIIの構造を備え、R_(5)がC_(11)アルケニル、C_(14)アルケニル、C_(11)アルキル/C_(10)アルキル混合物又はココナッツ油由来脂肪酸残基である例に相当すると理解することができる。

(ウ-2)化学物質の重量比と熱的特性の改善について
本件明細書の上記各表に記載された実験データを参照すると、本件発明1に記載された第1化学物質に相当する化合物と第2化学物質に相当する化合物との混合物において、両者の重量比が、本件発明1に記載された「50:50?0.5:99.5」の間にある場合には、「開始MP」、「終了MP」、「融点」又は「クラフト点」のいずれかの熱的特性が、いずれか一方の成分の単独の熱的特性より数値的に改善されているか、又は、「ペースト状の粘稠度が存在することは、他の試料の粉末状固形分又はろう状固形分に対して熱的特性が改善されていることを示している」([0226]、[0229]、[0241])と記載されているから、上記課題を解決し得ることが示されていると理解することができる。
また、N原子上の脂肪酸残基に着目すると、不飽和結合を有する場合と有さない場合の両方で、R_(5)の炭素数が10?14の範囲、又はココナッツ油由来である場合において、上記課題を解決し得ることが示されていると理解することができる。

エ サポート要件の判断
(エ-1)本件発明1について
本件訂正により、本件発明1における第1化学物質及び第2化学物質の組合せは、グルコースに由来する部分構造を有する化合物とキシロースに由来する部分構造を有する化合物の組合せに限定され、N原子の置換基のうちの一つはいずれもメチル基に限定されており、もう一つの脂肪酸に由来する置換基はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル又はこれらの混合物に限定された。
ここで、本件明細書に記載された上記各表における具体的な化合物の組合せは、糖に由来する化学構造及びN原子上のメチル置換基の構造において本件発明1と一致するものであり、また、N原子の置換基のうちの脂肪酸に由来する残基については、不飽和結合を有する場合と有さない場合の両方で、R_(5)の炭素数が10?14の範囲、又はココナッツ油由来である場合において、上記課題を解決し得ることを裏付けているものであるから、当業者は当該具体例に近い範囲で脂肪酸残基の不飽和基の数及び炭素数を拡張乃至一般化した範囲に相当する本件発明1の範囲内において、具体例と同様に上記課題を解決得し得るものと理解することができる。
そうすると、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者が上記課題を解決できると認識できるものである。

(エ-2)本件発明7、9、11?15について
本件発明1と同様の第1化学物質及び第2化学物質の組合せを含む本件発明7、9、11?15についても、当業者は本件発明1と同様に上記課題を解決し得るものと理解することができる。
そうすると、本件発明7、9、11?15は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者が上記課題を解決できると認識できるものである。

(エ-3)申立人の主張について
申立人は、令和元年11月7日に提出した意見書(10?19頁)において、本件発明の課題について、「混合物を構成する物質のいずれか」ではなく、「混合物をなす個々の糖アミドに対して」改善された融点、クラフト点等の熱的特性を有する混合物を提供することにあると主張している。
しかし、上記5.(2)ア「本件発明の課題について」に記載したとおり、本件明細書の[0258]等の記載を参酌すると、本件発明の課題は、上記のとおり「混合物を構成する物質のいずれか」に対する熱的特性の改善と解することができ、本件明細書に記載された実験データの評価も、そのような課題に即して行われているものと理解することができる。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

オ 理由1(サポート要件)のまとめ
以上のとおり、本件発明1、7、9、11?15は、いずれも発明の詳細な説明において当業者が本件発明の課題を解決できると認識できるものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものであり、これらの発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由1(サポート要件)の理由によっては、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。

(3)理由4-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合について
<引用文献等一覧>
甲第5号証:特表平8-503734号公報
甲第6号証:Krister Holmberg(編),"Novel Surfactants Preparation, Applications, and Biodegradability", 第2版, Marcel Dekker, 2003, Chapter 1からのLaughlin et al, "N-Alkanoyl-N-Alkyl-1-Glycamines" p.1-33
甲第7号証:Zhu et al, "Surface Properties of N-Alkanoyl-N-methyl Glucamines and Related Materials", Journal of Surfactants and Detergents, Vol.2, No.3(July 1999)p.357-362
甲第8号証:特表平6-501733号公報
以下、「甲第5号証」?「甲第8号証」をそれぞれ「甲5」?「甲8」という。まとめて、「甲号証」ということもある。

ア 甲号証に記載された事項
(i)甲5に記載された事項
甲5には以下の事項が記載されている。
(甲5-1)「[特許請求の範囲]
1.N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドおよび1種以上の補助洗剤界面活性剤を含む低起泡性洗剤組成物であって、前記N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドはC_(2)?C_(8)の範囲のN-アルキル置換基を有することを特徴とする、低起泡性洗剤組成物。
2.N-アルキル置換基がn-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、および2-エチルヘキシルからなる群から選ばれるメンバーである、請求項1に記載の祖成物。
3.ポリヒドロキシ脂肪酸アミドのN-アルキル置換基と脂肪酸置換基との中の炭素原子の合計数が20以下である、請求項2に記載の組成物。
4.請求項3に記載の液体組成物。
5.N-n-プロピルグルカミド、N-n-プロピルフルクタミド、N-n-プロピルキシラミド、N-n-ブチルグルカミド、N-n-ブチルフルクタミド、N-n-ブチルキシラミド、N-イソブチルグルカミド、N-イソブチルフルクタミド、N-イソブチルキシラミドのC_(12)?C_(18)脂肪酸エステルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれるメンバー少なくとも2重量%を含有する、請求項1に記載の組成物。
6.補助洗剤界面活性剤が第二級(2,3)アルキルサルフェートである、請求項1に記載の組成物。
7.補助制泡剤を追加的に含む、請求項1に記載の組成物。」(特許請求の範囲)

(甲5-2)「技術分野
本発明は、低い泡量で良好なクリーニングを与えるために特に選択されたポリヒドロキシ脂肪酸アミドを用いた洗剤組成物および方法に関する。本組成物は、低起泡が望まれる状況下で有用である。このような用途としては、例えば、フロント装入「欧州」型布帛洗濯機での用途、壁、窓など用の硬質表面クリーナーでの用途、および高度濃縮水性洗剤液体を使用するが高起泡が問題となることがある他のクリーニング操作での用途が挙げられる。」(第4頁3?9行)

(甲5-3)「発明の開示
本発明は、N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド少なくとも約2%、典型的には2%?約60%および1種以上の補助洗剤界面活性剤(ここで、前記N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドはC_(2)?C_(8)の範囲のN-アルキル置換基を有し且つN-水素、N-メチル、N-ヒドロキシアルキル置換基を実質上含まない)を含む低起泡性洗剤組成物を包含する。・・・
本発明のこのような組成物のうちには、N-アルキル置換基がエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシルなどからなる群から選ばれるメンバーであるものが包含される。N-n-プロピルグルカミド、N-n-プロピルフルクタミド、N-n-プロピルキシラミドのC_(12)?C_(18)脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選ばれるメンバー、または余り好ましくない組成物においては、対応N-エチル化合物少なくとも約2重量%を含有するものが、このような組成物を代表する。
・・・
発明を実施するための最良の形態
本発明は、所定のメンバーの種類のポリヒドロキシ脂肪酸アミド非イオン界面活性剤を含有する低起泡性洗剤組成物を提供する。ここで「低起泡性」とは、N-メチルポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤を含有し且つN-C_(2)?C_(8)物質を含有しない比較組成物で達成されるものより実質上少ない、N-C_(2)-C_(8)アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤を含有する本発明の低起泡性組成物の泡高さまたは泡容量を意味する。典型的には、本組成物は、平均してN-メチル界面活性剤の場合に生ずるものの約70%以下、好ましくは約50%以下である起泡を与える。」(第6頁2行?第7頁27行)

(甲5-4)「より詳細には、本発明の組成物および方法は、式

〔式中、R^(1)はC_(2)?C_(8)、好ましくはC_(3)?C_(6)ヒドロカルビル(直鎖、分枝鎖または環式)、またはそれらの混合物であり;R^(2)はC_(5)?C_(31)ヒドロカルビル部分、好ましくは直鎖C_(7)-C_(19)アルキルまたはアルケニル、より好ましくは直鎖C_(9)-C_(17)アルキルまたはアルケニル、最も好ましくは直鎖C_(11)-C_(19)アルキルまたはアルケニル、またはそれらの混合物であり;Zは鎖に直結された少なくとも2個(グリセルアルデヒドの場合)または少なくとも3個のヒドロキシル(他の還元糖の場合)を有する線状ヒドロカルビル鎖を有するポリヒドロキシヒドロカルビル部分である〕
のポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤を使用する。Zは、好ましくは還元アミノ化反応において還元糖から誘導されるであろうし;より好ましくはZはグリシチル部分である。好適な還元糖としては、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、およびキシロース、並びにグリセルアルデヒドが挙げられる。原料として、高テキストロースコーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ、および高マルトースコーンシロップが前記の個々の糖類と同様に利用できる。これらのコーンシロップは、Z用糖成分のミックスを調製することがある。他の好適な原料を決して排除しようとはしないことを理解すべきである。
Zは、好ましくは-CH_(2)-(CHOH)_(n)-CH_(2)OH、-CH(CH_(2)OH)-(CHOH)_(n-1)CH_(2)OH、-CH_(2)-(CHOH)_(2)(CHOR′)(CHOH)-CH_(2)OH
(式中、nは1?5の整数であり、R′はHまたは環式単糖または多糖である)
からなる群から選ばれるであろう。nが4であるグリシチル、特に
-CH_(2)-(CHOH)_(4)-CH_(2)OHが、最も好ましい。
式(I)中、R^(1)は、例えば、N-エチル、N-n-プロピル、N-イソプロピル、N-n-ブチル、N-イソブチル、N-シクロペンチル、N-シクロヘキシル、N-オクチル、N-2-エチルヘキシルなどであることができる。
R^(2)-CO-N<は、例えば、ココアミド、ステアロアミド、オレオアミド、ラウリンアミド、ミリストアミド、カプリンアミド、パルミトアミド、タローアミド、オレイルアミドなどであることができる。
Zは、1-デオキシグルシチル、2-デオキシフルクチチル、1-デオキシキシリチル、1-デオキシマルチチル、1-デオキシラクチチル、1-デオキシガラクチチル、1-デオキシマンニチル、1-デオキシマルトトリオチチル、2,3-ジヒドロキシプロピル(グリセルアルデヒドから)などであることができる。
非イオン界面活性剤成分としてここで使用するポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤は、各種の置換基R^(1)およびR^(2)を有する物質の混合物であることができることが認識されるであろう。」(第10頁9行?第11頁22行)

(甲5-5)「各種の「洗剤補助剤」物質は、典型的には、本発明の低起泡性界面活性剤を含有する完全に処方された洗剤組成物で使用されるであろうことを理解すべきである。このような補助剤は、最終組成物の所期の最終用途に応じて変化するであろう。下記のものは、このような補助剤の非限定例示であることだけを意図し、それらのより多くの例は熟練処方業者の心に容易に浮かぶであろう。
界面活性剤-本発明の洗濯および皿洗い組成物は、場合によってであるが好ましくは、追加の既知の洗剤界面活性剤、特に陰イオン界面活性剤約3?約60重量%を含むであろう。非常に低い泡量を維持することを助長することを望むならば、本組成物は、特に多量(例えば、20?30%)の高起泡性界面活性剤が組成物に存在する時に、後述のような抑泡剤も含有すべきである。
・・・
R^(1)がメチルであるポリヒドロキシ脂肪酸アミドも、使用できる。他の通常の有用な界面活性剤は、標準のテキストに記載されている。」(第11頁23行?第12頁16行)

(甲5-6)「酵素-洗剤酵素は、例えば、タンパク質をベースとするしみ、炭水化物をベースとするしみ、またはトリグリセリドをベースとするしみの除去および逃避染料移動の防止を含めて各種の目的で、特に布帛洗濯のために洗剤処方物に場合によって配合できる。配合すべき酵素としては、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、およびペルオキシダーゼ、並びにそれらの混合物が挙げられる。他の種類の酵素も、配合してもよい。それらは、いかなる好適な起源、例えば、植物、動物、細菌、真菌および酵母起源を有していてもよい。」(第12頁17?23行)

(甲5-7)「ビルダー-洗浄性ビルダーは、場合によって、鉱物硬度を制御するのを助長するために本組成物に配合できる。無機並びに有機ビルダーが使用できる。ビルダーは、典型的には、粒子汚れの除去を助長するために布帛洗濯組成物で使用される。
・・・
本発明の目的で好適な有機洗浄性ビルダーとしては、限定せずに、各種のポリカルボキシレート化合物が挙げられる。ここで使用する「ポリカルボキシレート」は、複数のカルボキシレート基、好ましくは少なくとも3個のカルボキシレートを有する化合物を意味する。ポリカルボキシレートビルダーは、一般に、組成物に酸形で添加できるが、中和塩の形でも添加できる。塩形で利用する時には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、またはアルカノールアンモニウム塩が、好ましい。」(第15頁16行?第17頁22行)

(甲5-8)「漂白化合物-漂白剤および漂白活性剤-本発明の洗剤組成物は、場合によって、漂白剤、または漂白剤と1種以上の漂白活性剤とを含有する漂白組成物を含有してもよい。存在する時には、漂白剤は、特に布帛漂白のために、典型的には、洗剤組成物の約1%?約20%、より典型的には約1%?約10%の量であろう。存在するならば、漂白活性剤の量は、典型的には、漂白剤と漂白活性剤とを含む漂白組成物の約0.1%?約60%、より典型的には約0.5%?約40%であろう。
ここで使用する漂白剤は、布類クリーニング、硬質表面クリーニング、または今や既知であるか既知になる他のクリーニング目的で洗剤組成物に有用な漂白剤のいずれであることもできる。これらとしては、酸素漂白剤並びに他の漂白剤が挙げられる。ペルボレート漂白剤、例えば、過ホウ酸ナトリウム(例えば、1水和物または4水和物)は、ここで使用できるが、若干の条件下ではポリオール非イオン界面活性剤と望ましくない程相互作用することがある。」(第19頁19行?第20頁4行)

(甲5-9)「高分子防汚剤-当業者に既知のいかなる高分子防汚剤も、場合によって、本発明の組成物および方法で使用できる。高分子防汚剤は、ポリエステル、ナイロンなどの疎水性繊維の表面を親水化するための親水性セグメントと、疎水性繊維上に付着し且つ洗浄およびすすぎサイクルの完了を通して接着したままであり、このように親水性セグメント用錨として役立つための疎水性セグメントとの両方を有することによって特徴づけられる。このことは、防汚剤での処理後に生ずるしみを後の洗浄法でより容易に浄化することを可能にすることができる。」(第21頁10?16行)

(甲5-10)「キレート化剤-また、本発明の洗剤組成物は、1種以上の鉄および/またはマンガンキレート化剤を場合によって含有していてもよい。このようなキレート化剤は、以下に定義のようなアミノカルボキシレート、アミノホスホネート、多官能置換芳香族キレート化剤およびそれらの混合物からなる群から選ぶことができる。理論によって制限しようとはせずに、これらの物質の利益は、一部分、可溶性キレートの生成によって鉄およびマンガンイオンを洗浄液から除去する格別の能力によると考えられる。」(第24頁18?25行)

(甲5-11)「粘土汚れ除去/再付着防止剤-本発明の組成物は、場合によって、粘土汚れ除去性および再付着防止性を有する水溶性エトキシ化アミンも含有できる。これらの化合物を含有する粒状洗剤組成物は、典型的には、水溶性エトキシ化アミン約0.01?約10.0重量%を含有する。液体洗剤組成物は、典型的には、水溶性エトキシ化アミン約0.01?約5重量%を含有する。」(第25頁第24?28行)

(甲5-12)「高分子分散剤-高分子分散剤は、有利には、本発明の組成物で約0.1?約7重量%の量で利用できる。これらの物質も、カルシウムおよびマグネシウム硬度制御を助長できる。技術上既知の他のものも使用できるが、好適な高分子分散剤としては、高分子ポリカルボキシレートおよびポリエチレングリコールが挙げられる。理論によって限定しようとはしないが、高分子分散剤は、他のビルダー(低分子量ポリカルボキシレートを含めて)と併用する時に結晶成長抑制、粒子汚れ放出ペプチゼーションおよび再付着防止により全洗浄性ビルダー性能を高めると考えられる。」(第26頁15?22行)

(甲5-13)「増白剤-技術上既知のいかなる光学増白剤または他の増白剤または白化剤も、本発明の洗剤組成物に典型的には約0.05?約1.2重量%の量で配合できる。本発明で有用であることがある市販の光学増白剤は、亜群に分類でき、亜群としては、必ずしも限定しないが、スチルベン、ピラゾリン、クマリン、カルボン酸、メチンシアニン、ジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド、アゾール、5員環および6員環複素環式化合物の誘導体、および他の雑多な薬剤が挙げられる。このような増白剤の例は、「蛍光増白剤の生産および応用」、M.ザーラドニック、ニューヨークのジョン・ウィリー・エンド・サンズ発行(1982)に開示されている。」(第28頁5?13行)

(甲5-14)「抑泡剤-泡の形成を減少するか抑制するための化合物は、本発明の組成物に配合できる。このような物質(以下「抑泡剤」)の配合は、本発明の混合界面活性剤の既に低い起泡を更に減少するために望ましいことがある。前記のように、追加の抑泡の使用は、本発明の洗剤組成物が本発明の低起泡性ポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤との組み合わせで比較的高起泡性界面活性剤を場合によって包含する時に特定の重要性を有することがある。」(第29頁4?9行)

(甲5-15)「布帛洗濯、皿洗いおよび硬質表面クリーナー(クレンジングおよび消毒目的用)で一般に使用される前記成分に加えて、本発明の低起泡性組成物は、本発明の範囲内の各種の組成物でなお他の利益を与える各種の他の補助剤成分と併用することもできる。下記のものは、各種のこのような補助剤成分を例示するが、限定しようとはしない。
布帛柔軟剤-各種のスルー・ザ・ウォッシュ(through-the-wash)布帛柔軟剤、特に1977年12月13日発行のストームおよびニルシュルの米国特許第4,062,647号明細書の微細なスメクタイト粘土、並びに技術上既知の他の柔軟剤粘土は、典型的には、布帛クリーニングと同時に布帛柔軟化上の利益を与えるために本組成物で約0.5?約10重量%の量で使用できる。本発明のポリヒドロキシ脂肪酸アミドは、技術の通常のポリエチレンオキシド非イオン界面活性剤より粘土の柔軟化性能の妨害を余り生じない。粘土柔軟剤は、例えば、1983年3月1日発行のクリスプ等の米国特許第4,375,416号明細書および1981年9月22日発行のハリス等の米国特許第4,291,071号明細書に開示のようなアミンおよび陽イオン柔軟剤と併用できる。
他の成分-洗剤組成物で有用な各種の他の成分、例えば、他の活性成分、担体、ハイドロトローブ、加工助剤、染料または顔料、液体処方物用溶媒などが、本組成物に配合できる。」(第33頁20行?第34頁10行)

(甲5-16)「例I
フロント装入欧州布帛洗濯機で使用するのに好適なヘビーデューティー低起泡性ビルダー入り洗濯洗剤は、次の通りである。


例II
トップ装入米国布帛洗濯機で使用するための低起泡性洗濯洗剤は、次の通りである。


例III
低起泡性液体洗濯洗剤は、次の通りである。


例IV
組成物IおよびIIIの組成物は、それぞれ低起泡性組成物を達成するためにN-n-プロピルグルカミド界面活性剤を当量の対応N-n-ブチル、N-イソブチル、およびN-n-ヘキシルポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤に取り替えることによって修正する。
例V
例Iの組成物の泡容量は、シリカ/シリコーン抑泡剤
0.5%の添加によって一層低下する。N-プロピルグルカミドに取って代わるためのN-ヘキシルグルカミド界面活性剤の使用は、この組成物で許容可能である。
前記の開示および例は、本発明の実施をかなり詳細に例示する。しかしながら、本発明の紺成物および方法によって与えられる利点は、各種の現代の完全に処方されたクリーニング組成物、特に洗濯洗剤で使用するために開発された各種の他のテクノロジーと共に広く有用であることを認識すべきである。本組成物は、典型的には、例えば、少しばかり汚れた布帛および/または手皿洗いのために、典型的には少なくとも約100ppmの濃度で水性媒体中で使用されるであろう。1,000ppm?8,000ppmの範囲内およびそれ以上の高い使用濃度は、ひどく汚れた布帛に使用される。しかしながら、使用量は、使用者の要望、汚れ負荷、汚れの種類などに応じて変化できる。洗浄温度は、5℃から沸騰までであることができる。」(第37頁6行?第40頁末行)

(ii)甲6に記載された事項
甲6には以下の事項が記載されている(当審注:甲6とともに提出された甲6の翻訳文に従って認定した。)。
(甲6-1)「図13に示す融点/クラフト点データは、上記図と整合する。ヒドロキシル基の数が2(グリセロース)から4(キシロース)?5(グルコース及びその異性体)へ増加すると、融点及びΔT値(親水性)の両方が上昇する。それらは3つの異性体ヘキソースにおいて大体同じである(ガラクトースには当てはまらないと考えられるが)。マルトースは、二糖でありそのアルカノイルアミド誘導体は構造的に複雑である。それは7個のヒドロキシル基、3個のエーテル基および1個のピラノース環を有する;図3参照。マルトース誘導体では、融点が非常に高い一方、クラフト点は非常に低い - これは非常に大きいΔTをもたらす。」(第28頁5?13行)

(iii)甲7に記載された事項
甲7には以下の事項が記載されている(当審注:甲7とともに提出された甲7の翻訳文に従って認定した。)。
(甲7-1)「全てのN-メチルグルカミドは加熱時に水に溶解するが、25℃に冷却すると析出する。それらが溶解する温度、すなわち見かけのクラフト点は、アシル基における炭素数の数に依存し;C_(11)-GAに関しては40℃であり、;C_(12)-GAに関しては51℃であり;C_(13)-GAに関しては50℃であり;C_(14)-GAに関しては67℃であった。これらの温度は融点に関係していると考えられ、アシル基における炭素原子の数の増加に伴い増加し、奇数のアシル基に関してよりも偶数のアシル基に関しての方が高い。従来の非イオン界面活性剤とは異なり、これらの化合物は、100℃に近い温度でも曇り点を示さない。これらの結果に基づくと、多糖類ベースの界面活性剤の水溶性は、単純に分子中のヒドロキシル基の数には依存はしないが、おそらくは、界面活性剤分子間の分子間水素結合の形成と、水との分子間水素結合形成との間のバランスに大きく依存している。」(第358頁左欄下から16行?右欄2行)

(甲7-2)「

」(第358頁表1)

(iv)甲8に記載された事項
甲8には以下の事項が記載されている。
(甲8-1)「ポリヒドロキシ脂肪酸の生成混合物は、一般的には「純粋な」グルコース由来のポリヒドロキシ脂肪酸アミドよりも広範囲の温度および濃度に亙って好ましい溶解特性を示す。したがって、純粋な糖反応体よりも糖混合物を用いることの任意の経済的利益に加え、混合糖から調製されるポリヒドロキシ脂肪酸アミドは性能および/または処方のし易さに関して極めて実質的な利益を提供する。」(第31頁右下欄15?22行)

イ 甲5に記載された発明
甲5には、N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドおよび1種以上の補助洗剤界面活性剤を含む低起泡性洗剤組成物に関し(摘記甲5-1)、式(I)(化学構造式は摘記甲5-4を参照。)で示されたポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤を使用すること、式(I)におけるR^(1)はC_(2)?C_(8)、好ましくはC_(3)?C_(6)ヒドロカルビル(直鎖、分枝鎖または環式)、またはそれらの混合物であり、R^(2)はC_(5)?C_(31)ヒドロカルビル部分、好ましくは直鎖C_(7)-C_(19)アルキルまたはアルケニル、より好ましくは直鎖C_(9)-C_(17)アルキルまたはアルケニル、最も好ましくは直鎖C_(11)-C_(19)アルキルまたはアルケニル、またはそれらの混合物であること、式(I)におけるZは、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、およびキシロース等の還元糖から誘導されること(摘記甲5-3?甲5-4)が記載されているといえる。
してみると、甲5には以下の発明が記載されているといえる(以下「甲5発明」という)。
「式(I)(化学構造式は摘記甲5-4を参照。)で示されたN-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド
〔式(I)中、R^(1)はC_(2)?C_(8)ヒドロカルビル、R^(2)はC_(5)?C_(31)ヒドロカルビル、Zは、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、およびキシロース等の還元糖から誘導されたもの〕
、および、該N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドと1種以上の補助洗剤界面活性剤とを含む低起泡性洗剤組成物」

ウ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲5発明との対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明における式(I)で示されたN-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドと、本件発明1における式Iの化学構造を有する第1化学物質とは、甲5発明の式(I)におけるR^(1)(C_(2)?C_(8)ヒドロカルビル)は、本件発明1の式IにおけるR_(1)(メチル基)と炭素数は異なるが、アルキル基である点で共通し、甲5発明の式(I)における「R^(2)-(C=O)-」は、本件発明1の式IにおけるR_(2)が「R_(5)-(C=O)-」で表される式IIIの構造を有することに相当し、甲5発明の式(I)におけるZは、本件発明1の式Iにおける「HO-CH_(2)(-CH(OH)-)_(n1)-CH_(2)-」に相当し、甲5発明の式(I)のZがグルコースから誘導された残基である場合は、本件発明1の式Iにおけるn^(1)が4であり、式Iの分子の一部がグルコース由来である場合に相当する。
また、甲5発明における「低起泡性洗剤組成物」は、本件発明1の「混合物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲5発明とは、
「N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドを含有する混合物」
の点で一致し、

相違点1:N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドが、本件発明1においては式I(化学構造及びその定義は、上記3.「本件発明について」の請求項1を参照。)で表される第1化学物質であるのに対し、甲5発明においては式(I)(化学構造式は摘記甲5-4を参照。)で示されたN-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドであり、定義が異なっている点
相違点2:混合物が、本件発明1は式II(化学構造及びその定義は、上記3.「本件発明について」の請求項1を参照。)で表される第2化学物質を含有し、「前記第1化学物質と前記第2化学物資との重量比が、50:50?0.5:99.5である」ことが特定されているのに対し、甲5発明においてはそのような物質を所定の重量比で含むことが特定されていない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点1について
(イ-1)甲5発明の式(I)におけるR^(1)について
上記5.(3)ウ(ア)「本件発明1と甲5発明との対比」にも記載したとおり、N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドを表す本件発明1の式Iの定義と甲5発明の式(I)の定義とを対比すると、両者は、
相違点1-1:本件発明1の式IにおけるR_(1)はメチル基であるのに対し、甲5発明の式(I)におけるR^(1)はC_(2)?C_(8)ヒドロカルビルである点
で少なくとも相違している。
そこで、相違点1-1について検討する。

(イ-2)甲5の記載について
甲5の「技術分野」(摘記甲5-2)には、甲5発明が「低い泡量で良好なクリーニングを与える」洗剤組成物であり、「低起泡が望まれる状況下で有用である」ことが記載されている。また、甲5の「発明を実施するための最良の形態」(摘記甲5-3の第7頁18?27行)には、甲5発明が「低起泡性洗剤組成物を提供する」ものであり、「低起泡性」とは、「N-メチルポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤を含有し且つN-C_(2)?C_(8)物質を含有しない比較組成物で達成されるものより実質上少ない、N-C_(2)-C_(8)アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤を含有する本発明の低起泡性組成物の泡高さまたは泡容量を意味する」と記載されており、「典型的には、本組成物は、平均してN-メチル界面活性剤の場合に生ずるものの約70%以下、好ましくは約50%以下である起泡を与える。」ことが記載されている。そして、甲5の「発明の開示」(摘記甲5-3の第6頁2?7行)には、甲5発明が「N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド少なくとも約2%」を含む低起泡性洗剤組成物を包含するものであり、「前記N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミドはC_(2)?C_(8)の範囲のN-アルキル置換基を有し且つN-水素、N-メチル、N-ヒドロキシアルキル置換基を実質上含まない」ことが記載されている。
これらの記載を参酌すると、甲5において、甲5発明の式(I)におけるR^(1)の定義(C_(2)?C_(8)ヒドロカルビル)は、甲5発明が課題とする低起泡性をもたらすために必須のものとして定められたものであり、R^(1)がメチル基である場合の化合物は、低起泡性をもたらさない比較例相当の化合物であると認識されているものと理解することができる。

(イ-3)相違点1-1について
そうすると、甲5発明の式(I)におけるR^(1)を、「C_(2)?C_(8)ヒドロカルビル」から「メチル基」に変更することには阻害要因があるといえるから、甲5を主引用例とする場合に、上記相違点1-1に係る化合物の定義上の相違を埋めることは、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。
また、仮に、上記阻害要因が存在しないとしても、甲5の記載に加えて甲6?甲8(摘記甲6-1?摘記甲8-1)を参照しても、甲5におけるR^(1)を「メチル基」に変更する動機は見当たらないから、上記相違点1-1について当業者が容易に想到し得るものとは認められない。

(イ-4)相違点1についてのまとめ
よって、他の定義上の相違点について検討するまでもなく、上記相違点1については、甲5及び甲6?8に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得る事項とは認められない。

(ウ)本件発明1の効果について
上記5.(2)「理由1(サポート要件)について」に記載したとおり、本件発明1は、相違点1に係る定義を含む式Iで定義される第1化学物質と式IIで定義される第2化学物質とを含む混合物であることにより、「持続可能な原料に基づく糖アミドの新規の混合物により、混合物をなす一方の糖アミドよりも改善された融点、クラフト点等の熱的特性を有する混合物を提供する」という課題を解決でき、それにより「処方可能性、コスト、及び、処方の柔軟性に関して既存の物質よりも改善された特性を有し、消費者向け製品においてより広い用途に用いられ得る界面活性剤を提供する」という課題を解決できるという好ましい効果を奏するものであるところ、そのような効果は、化学構造の異なる化合物を用いている甲5?甲8のいずれに記載された事項からも当業者が予測し得ないものである。

(エ)本件発明1についてのまとめ
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲5発明、甲5に記載された事項及び甲6?8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

エ 本件発明7、9、11?15について
本件発明11、12は、本件発明1と同様に定義される式Iの化学構造を有する第1化学物質と式IIの化学構造を有する第2化学物質との混合物を発明特定事項として備える発明であり、本件発明7、9、13?15は、本件発明1又は本件発明11、12を引用し、それらをさらに限定する発明である。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明7、9、11?15は、いずれも甲5発明、甲5に記載された事項及び甲6?8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

オ 理由4-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1、7、9、11?15は、いずれも甲5発明、甲5に記載された事項及び甲6?8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、取消理由通知に記載した理由4-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合についての取消理由により、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。

6.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。
ア 理由I(サポート要件)
訂正前の本件発明1は、第1化学物質と第2化学物質との組合せについて、化学物質の選択、化学物質の含有量、及び両者以外の追加的化学物質を考慮すると、膨大な組合せが存在するが、本件の発明の詳細な説明からは、本件発明の作用機序は明らかでなく、実施例(表2?11)を参酌しても、本件発明1で特定される組合せの全範囲が発明の課題を解決し得ることは記載されていない。訂正前の本件発明1を引用する訂正前の本件発明2?15についても同様である。
よって、訂正前の本件発明1?15は、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものとすることができないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

イ 理由II(実施可能要件)
一般に、化学物質の混合物の特性は、官能基の種類、長さが変化するだけでも、混合物を構成する成分同士の相互作用が複雑に変化し、当業者が予測することは困難であることからすれば、訂正前の本件発明1?15のうち、実施例に記載された特定の実施形態以外の範囲については、実施に際して当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるといえる。
よって、本件の発明の詳細な説明は、当業者が訂正前の本件発明1?15を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとすることができないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明についての特許は同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

ウ 理由III(新規性)
(ウ-1)理由III-1(新規性)甲第1号証を主とする場合
訂正前の本件発明1?5、9?15は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(甲第10?12号証参照。)。
(ウ-2)理由III-2(新規性)甲第5号証を主とする場合
訂正前の本件発明1?5、9?10は、甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(甲第2?4号証参照。)。

エ 理由IV(進歩性)
(エ-1)理由IV-1(進歩性)甲第1号証を主とする場合
訂正前の本件発明1?15は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(エ-2)理由IV-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合
訂正前の本件発明1?15は、甲第5号証に記載された発明、甲第5号証に記載された事項及び甲第6号証?甲第8号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

<引用文献等一覧>
甲第1号証:国際公開第93/19038号
甲第2号証:Q. Ashton Acton (編),"Advances in Proteobacteria Research and Application 2013 Edition",ScholaryEditions, 2013, p.171
甲第3号証:Tian Xia, Mark A Eiteman, Elliot Altman,"Simultaneous utilization of glucose, xylose and arabinose in the presence of acetate by a consortium of Escherichia coli strains", Microbial Cell Factories, 2012, vol.11, No.11:77, p.1-9
甲第4号証:Jaime Barros-Rios, Aloia Romani, Gil Garrote, Bernardo Ordas, "Biomass, suger, and bioethanol potential of sweet corn", Global Change Biology Bioenergy, 2015, vol.7, No.1, p.153-160
甲第5号証:特表平8-503734号公報)
甲第6号証:Krister Holmberg(編),"Novel Surfactants Preparation, Applications, and Biodegradability", 第2版, Marcel Dekker, 2003, Chapter 1からのLaughlin et al, "N-Alkanoyl-N-Alkyl-1-Glycamines" p.1-33
甲第7号証:Zhu et al, "Surface Properties of N-Alkanoyl-N-methyl Glucamines and Related Materials", Journal of Surfactants and Detergents, Vol.2, No.3(July 1999), p.357-362
甲第8号証:特表平6-501733号公報
甲第9号証:本件特許出願の優先権証明書
甲第10号証:Dr. LinkによるExperimental Report R1
甲第11号証:Dr. ScherlによるExperimental Report R2
甲第12号証:Dr. KalingによるExperimental Report R3
以下、「甲第1号証」?「甲第12号証」をそれぞれ「甲1」?「甲12」という。まとめて、「甲号証」ということもある。
なお、甲5?甲8は、取消理由通知(決定の予告)で引用した文献である。
また、甲2は「2013年発行」とまでしか確認できないから、本件特許に係る出願の優先日である2013年3月5日時点で公知であるか否か不明であり、甲4は「2015年発行」であるから、本件特許に係る出願の優先日時点で公知でない文献である。

オ 理由V(新規事項)
訂正前の本件発明1?15は、平成29年5月1日付けの手続補正書によってなされた請求項1についての補正が、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず(同法第184条の12第2項参照)、それらの発明についての特許は同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し、取り消すべきものである。

(2)理由I(サポート要件)について
申立人が主張する理由I(サポート要件)の取消理由は、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由1(サポート要件)に当たるから、上記5.(2)「理由1(サポート要件)について」に記載したとおりである。
よって、特許異議申立書に記載された理由I(サポート要件)の取消理由によっては、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。

(3)理由II(実施可能要件)について
申立人は、特許異議申立書(54頁)において、「上記『オ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について』で述べたのと同様の理由により、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明は、請求項1の全体にわたって実施可能なように請求項1の混合物を開示していない。そして同様のことが請求項2?15にも当てはまる」と主張している。
しかし、上記5.(2)「理由1(サポート要件)について」における検討を踏まえると、本件明細書の記載に基づいて、当業者は本件訂正後の本件発明1の全体にわたって、上記発明の課題を解決し得るような混合物を製造し、かつ使用することができると理解することができ、また、本件発明1と同様の第1化学物質及び第2化学物質の組合せを含む本件発明7、9、11?15についても、同様に理解することができるといえる。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、7、9、11?15を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであり、これらの発明についての特許は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、特許異議申立書に記載された理由II(実施可能要件)の取消理由によっては、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。

(4)理由III(新規性)及び理由IV(進歩性)について
(4-1)理由III-1(新規性)甲第1号証を主とする場合について
ア 申立ての対象について
申立人は、理由III-1(新規性)甲第1号証を主とする場合の申立ての対象請求項を、訂正前の請求項1?5及び9?15に限っているところ、上記2.(3)ア(ア)「訂正事項1について」に記載したとおり、本件訂正による訂正後の本件発明1は、「前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5」との発明特定事項を備えており、実質的に訂正前の請求項6に相当する発明特定事項を備えるものに訂正されたと解される。
イ 本件発明1について
そうすると、本件発明1は、実質的に、特許異議申立書に記載された理由III-1(新規性)甲第1号証を主とする場合の申立ての対象外の発明に相当するから、当該理由により取り消すことができるものではない。

ウ 本件発明7、9、11?15について
本件発明1を引用する本件発明7及び9、本件発明1と同様に第1化学物質及び第2化学物質の重量比が特定された本件発明11及び12、並びに本件発明11、12を引用する本件発明13?15についても、本件発明1と同様である。
よって、本件発明7、9、11?15は、実質的に、特許異議申立書に記載された理由III-1(新規性)甲第1号証を主とする場合の申立ての対象外の発明に相当するから、当該理由により取り消すことができるものではない。

エ 理由III-1(新規性)甲第1号証を主とする場合についてのまとめ
以上のとおり、特許異議申立書に記載された理由III-1(新規性)甲第1号証を主とする場合の取消理由によっては、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。

(4-2)理由IV-1(進歩性)甲第1号証を主とする場合について
ア 甲号証に記載された事項
(i)甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている(当審注:甲1とともに提出された甲1の翻訳文に従って認定した。)。
(甲1-1)「CLAIMS
1. A process for preparing a primary reaction product comprising a polyhydroxy fatty acid amide surfactant, said reaction product containing undesirable amounts of free fatty acids or nascent source of fatty acids, said process comprising a primary reaction between a polyhydroxy amine and a fatty acid ester, said primary reaction being carried out at a temperature below 100℃ so as to minimize formation of cyclized by-products in said reaction product,characterized by the improvement which comprises running the primary reaction under substantially water-free conditions, whereby the formation of free fattyacids and soaps is minimized, and adding to said primary reaction product anamine reactant and subjecting said reaction product to a secondary reaction,whereby the total level of residual nascent and free fatty acid present in said primary reaction product is reduced to below 1%, by weight.」(第21頁1?15行)
(当審仮訳:特許請求の範囲
1.ポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤を含む一次反応生成物を製造するための方法であって、上記反応生成物が、望ましくない量の遊離脂肪酸または脂肪酸発生源を含み、上記方法が、ポリヒドロキシアミンと脂肪酸エステルとの間の一次反応を含み、上記一次反応が、上記反応生成物における環化された副生成物の形成を最小化するように100℃未満の温度で行われる方法であって、一次反応を実質的に水不含の条件下で実施すること(それにより、遊離脂肪酸およびセッケンの形成が最小化される)および上記一次反応生成物にアミン反応物を添加することおよび上記反応生成物を二次反応に付すことを含む改善を特徴とし、それにより、上記一次反応生成物に存在する残留遊離脂肪酸発生源の合計レベルが1重量%未満に減少される、上記方法。)

(甲1-2)「By "nickel catalyst" herein is meant any of the conventional Raney nickel or "supported" nickel catalysts well-known in the art. Conventional nickel under the trademark RANEY NICKEL 4200(Grace Chemicals)is quite suitable for use herein. RANEY NICKEL 3200,(United Catalyst, Inc.) UCI; G-96B and G-49A and G-49C are also suitable.While not intending to be limited by theory, it is believed that removing oxides of nickel from the catalyst prevents or impedes dissolution of nickel ions into the reaction milieu, and thus results in the formation of reaction products having a desirable low nickel content. Moreover, it has been found that the nickel catalyst pre-treated with pressurized hydrogen can be re-used in multiple subsequent reactions, thereby yielding a substantial overall cost savings.」(第7頁5?17行)
(当審仮訳:本明細書では、「ニッケル触媒」は、慣用のラニーニッケルまたは本技術分野で公知の「担持された」ニッケル触媒を意味する。商標RANEY NICKEL 4200(Grace Chemicals)の慣用のニッケルがここで使用するためには特に適している。RANEY NICKEL 3200,(United Catalyst, Inc.) UCI; G-96BおよびG-49AおよびG-49Cも適している。理論によって限定することは意図しないが、触媒からニッケルの酸化物を除去することにより反応環境へのニッケルイオンの溶解が抑制または妨げられ、従って、所望の低ニッケル含有量を有する反応生成物の形成がもたらされると考えられる。さらに、加圧水素で予め処理されたニッケル触媒を、複数の後続反応で再使用することができ、それにより大幅に全体のコストを削減することができる。)

(甲1-3)「By "sugars" in the polyhydroxy amine-forming reaction herein is meant reducing sugars such as glucose,fructose, mannose, lactose, maltose, xylose and the like. The term "sugars" herein also includes glyceraldehyde. Such "sugars" include plant syrups such as cane syrups, corn syrups, potato starch-derived sugar syrups, hydrolyzed wood pulp-derived sugars and the like. High fructose,high glucose and high maltose syrups are economical and preferred, especially if their Gardner Color is satisfactory.」(第7頁23?30行)
(当審仮訳:本明細書では、ポリヒドロキシアミン形成反応における「糖」は、還元糖、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、キシロース等を意味する。本明細書において、語句「糖」はまた、グリセルアルデヒドを含む。そのような「糖」には、植物シロップ、例えばサトウキビシロップ、コーンシロップ、ジャガイモデンプン由来糖シロップ、加水分解木材パルプ由来糖などが含まれる。高フルクトース、高グルコースおよび高マルトースシロップが、それらのガードナー色数が満足できるものであれば、経済的で好ましい。)

(甲1-4)「EXAMPLE I
Preparation of Polyhydroxyamine Reactant
Catalyst Treatment - Approximately 300 mls of RANEY NICKEL 4200 (Grace Chemicals) is washed with deionized water (1 liter total volume; 3 washings) and decanted. The totalcatalyst solids can be determined by the volume-weight equation provided by Grace Chemicals, i.e.,[(total wt. catalyst + water) - (water.wt. for volume)]X 7/6 =Nickel solids.
308.21 g. of the catalyst Ni solids basis are loaded into a 2 gallon reactor (316 stainless steel baffled autoclave with DISPERSIMAX hollow shaft multi-blade impeller from Autoclave Engineers) with 4 liters of water. The reactor is heated to 130℃ at 1400-1600 psig hydrogen for 50 minutes. The mixture is cooled to room temperature at 1500 psig hydrogen and left overnight. The water is then removed to 10% of the reactor volume using an internal dip tube.
Reaction - The reactants are as follows. 881.82 mls. 50% aqueous monomethylamine (Air Products, Inc.; Lot 060-889-09); 2727.3 g. 55% glucose syrup (Cargill; 71% glucose; 99 dextrose equivalents; Lot 99M501).
The reactor containing the H_(2)O and Raney nickel prepared as noted above is cooled to room temperature and ice cold monomethyl-amine is loaded into the reactor at ambient pressure with H_(2 )blanket. The reactor is pressurized to 1000 psig hydrogen and heat to 50℃ for several minutes. Stirring is maintained to assure absorption of H_(2 )in solution.
The glucose is maintained in a separate reservoir which is in closed communication with the reactor. The reservoir is pressurized to 4000 psig with hydrogen. The glucose (aqueous solution) is then transferred into the reactor under H_(2) pressure over time. (This transfer can be monitored by the pressure change in the reservoir resulting from the decrease in volume of the sugar solution as it is transferred from the reservoir into the main reactor. The sugar can be transferred at various rates, but a transfer rate of ca.100 psig pressure drop per minute is convenient and requires about 20 minutes for the volume used in this run.) An exotherm occurs when the aqueous sugar solution is introduced into the reactor; the 50℃ internal temperature raises to ca.53℃.
Once all the glucose has been transferred to the reactor the temperature is maintained at 50℃ for 30 minutes. Hydrogen uptake is monitored by a pressure gauge. Stirring is continued throughout at 800 - 1,100 rpm or greater.
The temperature of the reactor is increased to 60℃ for 40 minutes, then to 85℃ for 10 minutes, then to 100℃ for 10 minutes. The reactor is then cooled to room temperature and maintained underpressure overnight. The reaction product dissolved in the aqueous reaction medium is conveniently recovered by using an internal dip tube with hydrogen pressure. Particulate nickel can be removed by filtration. Preferably, an internal filter is used to avoid exposure to air, which can cause nickel dissolution. Solid N-methyl glucamine is recovered from the reaction product by evaporation of water.
The foregoing procedure can be repeated using fructose as the sugar to prepare N-methyl fructamines.
The foregoing procedure can also be repeated using glyceraldehyde as the sugar to prepare N-methyl glycerol amin (3-methylamino-1,2-propanediol).
Conversion of Polyhydroxy Amine to Polyhydroxy Fatty Acid Amide Surfactant Reaction Product and Minimization of Nascent Fatty Acids by the Secondary Reaction
As the initial step, the substantially water-free N-methy glucamine prepared above is reacted with fatty acid methyl esters to prepare the corresponding fatty acid amides of N-methylglucamine in the manner disclosed above and in the experimental details, hereinafter. It will be appreciated that coconut fatty acid methyl esters, palm oil fatty acid esters, tallow fatty acid esters, oleyl esters, polyunsaturated fatty acid esters, and the like, can all be used in this reaction, and various N-alkylpolyols, e.g., N-methyl fructamine, N-methyl maltamine, etc., can be used in place of the N-methyl glucamine.
The secondary reaction can thereafter be carried out using primary alkyl amines and alkanolamines. However, it will be appreciated by the chemist that, since alkyl amines generally have undesirable odors, as compared with alkanolamines, it is preferred to employ the alkanolamines. By so doing, removal of traces of unreacted amine material from the final product of the process is unnecessary, since products with improved odor are secured.
Moreover, while secondary amines will function adequately in the process herein to remove the nascent sources of fatty acids, such amines can undesirably form nitrosamines. Accordingly, the primary amines, especially the primary alkanolamines such as ethanolamine ("mono-ethanolamine") are much preferred for use in the secondary reaction herein.
It will be further appreciated that it is desirable that the secondary reaction herein be carried out quickly, such that decomposition of the desired polyhydroxy fatty acid amide surfactant is kept to a minimum. In essence, the secondary reaction is an amidation reaction, and seems to be potentiated and accelerated by having a solvent supportive of nucleophilic reaction present. Since methanol is such a solvent, and is also one of the preferred solvents for use in the primary reaction herein, it suffices quite well to also act as the solvent for the secondary reaction. Preferably, at least about 6-8% by weight of such solvent which is supportive of nucleophilic reactions. especially methanol, is used in the secondary reaction of this invention, as well as some 1,2-propanediol.1,2-propanediol, alone, can also serve as the solvent for the secondary reaction, but does not appear to be quite as effective as when methanol is present. Other lower alcohols, such as ethanol and iso-propanol, could also be used, but may be poorer choices than methanol or mixtures of methano1/1,2-propanediol. Under such circumstances, some minimal loss (ca. about a 1% decrease in overall yield) of polyhydroxy fatty acid amide surfactant may be unavoidable, but this is usually an acceptable trade-off for the desired decrease in fatty acids in the final product.
The reaction temperature for the secondary reaction should preferably be about 85℃, or below, typically in the 65℃-85℃ range. It will be appreciated that use of excessively high temperatures may desirably speed the secondary reaction, but will undesirably begin to cause cyclization of the polyhydroxy fatty acid amides. While temperatures up to about 120℃ might be tolerable for short periods of time, it would, of course, be undesirable to decrease nascent fatty acid content at the expense of increasing the level of cyclized by-product. The following further illustrates the Primary Reaction followed bythe Secondary Reaction.
Apparatus: 500ml three necked flask, paddle stirrer, reflux condenser with drying tube, thermometer reaching into reaction and a gas inlet tube. The flask is heated with a thermostatted oil bath.

Primary Reaction
The apparatus is predried under nitrogen sweep, cooled and the sweep is shut off. A tare weight is taken without the condenser. Pure powdered N-methylglucamine ("NMG") 97.5 g (0.5 mole), 107 g (0.5 mole) 95% methyl dodecanoate and 18.9 g propylene glycol (solvent) are placed into the flask; the moisture content of each reactant is, respectively, 0.3% and 0.1%, and the solvent is dried over molecular sieves. The mixture is heated to 68℃ with stirring to give a viscous paste; 5.4 g(0.025 mole) 25% sodium methoxide in methanol is then added. The time is taken as zero, and the reaction then brought quickly to 85℃, and held at 85℃ with continuous stirring,no vacuum, no nitrogen sweep. Within 5 minutes a thin milky suspension is formed which clears to a homogeneous clear low viscosity liquid at 55 minutes. During this reaction no reflux is observed, although methanol evolution is calculated to reach 9.1% at complete amidation with NMG. At 150 minutes, the weight of the reaction is within 2 g of initial; a small sample is taken.
Secondary Reaction
Immediately following the Primary Reaction, 7.6g (0.125 mole) of dry ethanolamine is added. Vacuum/nitrogen sweep is then applied as stirring and temperature are maintained. At the 210 minute point the vacuum reaches 11 psi(4 psi absolute). Weighing indicatesabout 1.5 to 2% of reaction weight in excess of theoretical removal of all methanol from catalyst and ester. The resulting product has the followinganalysis and is suitable for use in high sudsing detergent compositions.

The following is intended to illustrate the use of the polyhydroxy fatty acid amide surfactants made in accordance with this invention in finished liquid detergent compositions, but is not intended to be limiting thereof. Solid compositions can be prepared by replacing the fluid carrier (e.g., water) in such compositions with a water-soluble solid carrier such as sodium sulfate. Preferred liquid compositions will contain at least about 0.10%, preferably at least about 0.5%, by weight of calcium or magnesium ions, or both. Stated otherwise, the amount (molar ratio) of calcium or magnesium is typically 0.1X to 2.0X that of the anionic (e.g., sulfated or sulfonated) surfactant in such compositions.」(第14頁13行?第19頁2行。)
(当審仮訳:例1
ポリヒドロキシアミン反応物の製造
触媒処理 - 約300mlsのRANEY NICKEL 4200(Grace Chemicals)を脱イオン水で洗浄し(全体積1L;3回洗浄)、デカンテーションを行う。全触媒固形物量を、Grace Chemicalsによる体積-重量式により、すなわち[(全重量触媒+水)-(体積に対する水重量)]×7/6=ニッケル固形物量により決定することが出来る。
308.21gの触媒Ni固体ベースを、2ガロン反応器(Autoclave Engineers製の316 stainless steel baffled autoclave with DISPERSIMAX hollow shaft multi-blade impeller)に4Lの水とともに仕込む。反応器を1400?1600psig水素で130℃に50分間加熱する。混合物を1500psig水素で室温に冷却し、一晩置く。その後、内部浸漬管により、反応器体積の10%まで水を除去する。
反応-反応物質は以下のとおりである。881.82mlの50%水性モノメチルアミン(Air Products, Inc.; Lot 060-889-09);2727.3gの55%グルコースシロップ(Cargill;71%グルコース;99デキストロース当量;Lot 99M501)。
H_(2)Oおよび上記のように製造したラニーニッケルを含む反応器を室温に冷却し、氷冷モノメチルアミンを常圧でH_(2)ブランケット付き反応器中に仕込む。反応器を1000psig水素に加圧し、数分間50℃に加熱する。溶液におけるH_(2)の吸収を保証するために撹拌を維持する。
反応器と閉じて接続されている別のリサーバーにグルコースを維持する。リサーバーを水素で4000psigに加圧する。グルコース(水溶液)をその後、H_(2)圧力下で時間をかけて反応器に移す。(この移行は、糖溶液がリザーバーから主反応器に移行するのに伴う、糖溶液の体積の減少から生じるリザーバーの圧力変化によってモニターできる。糖は種々の速度で移すことができるが、1分あたり約100psigの圧力降下の移行速度が都合がよく、この実施で使用される体積のためには約20分を要する。)糖水溶液が反応器に導入されると発熱が生じ;50℃の内部温度が約53℃に上昇する。
全てのグルコースが反応器に移行したら、温度を50℃で30分間維持する。水素の取込を圧力ゲージでモニターする。800?1,100rpmまたはそれ超で撹拌をずっと継続する。
反応器の温度を60℃に40分間、次いで85℃に10分間、次いで100℃に10分間上昇させる。その後、反応器を室温に冷却し、加圧下で一晩維持する。水性反応媒体に溶解した反応生成物を、都合よくは、水素圧力を用いて内部浸漬管を使用することにより回収する。粒子状ニッケルはろ過により除去することができる。好ましくは、ニッケルの溶解を引き起こし得る空気への暴露を避けるために、内部フィルターを使用する。水の蒸発により、固体のN-メチルグルカミンを反応生成物から回収する。
N-メチルフルクタミンを製造するためにフルクトースを糖として使用して、上記手順を繰り返すことができる。
N-メチルグリセロールアミン(3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール)を製造するためにグリセルアルデヒドを糖として使用して、上記手順を繰り返すことができる。

ポリヒドロキシアミンのポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤反応生成物への転化、および二次反応による脂肪酸源の最小化
初期ステップとして、上記のように製造した実質的に水不含のN-メチルグルカミンを脂肪酸メチルエステルと反応して、上記でおよび以下の実験の詳細で開示されるような方法でN-メチルグルカミンに対応する脂肪酸アミドを製造する。好ましいことに、ヤシ脂肪酸メチルエステル、ヤシ油脂肪酸エステル、獣脂脂肪酸エステル、オレイルエステル、ポリ不飽和脂肪酸エステル等全てをこの反応に使用することができ、種々のN-アルキルポリオール、例えばN-メチルフルクタミン、N-メチルマルタミン等をN-メチルグルカミンの代わりに使用することができる。
その後、二次反応を、一級アルキルアミンおよびアルカノールアミンを用いて実施することができる。しかしながら、当業者に好ましいのは、アルキルアミンは一般的に、アルカノールアミンと比較して望ましくない臭いを有するので、アルカノールアミンを使用するのが好ましい。そうすることにより、微量の未反応アミン材料をプロセスの最終生成物から除去することが不要であり、なぜならば、改善された香りを有する生成物が確保されるからである。
さらに、二級アミンがここでのプロセスにおいて脂肪酸源を除去するために適切に機能する一方で、そのようなアミンは望ましくないことに、ニトロソアミンを形成し得る。従って、一級アミン、特に一級アルカノールアミン、例えばエタノールアミン(「モノエタノールアミン」)が、ここでの二次反応における使用のためには非常に好ましい。
ここでの二次反応は、所望のポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤の分解が最小限に維持されるように迅速に行われるのが好ましいとさらに考えられる。本質的に、二次反応はアミド化反応であり、求核反応を支持する溶媒が存在することにより増強され、促進されると考えられる。メタノールはそのような溶媒であり、ここでの一次反応に使用するための好ましい溶媒の1つでもあるので、それは、二次反応のための溶媒としても非常によくはたらく。好ましくは、少なくとも約6?8重量%の求核反応を支持するそのような溶媒、特にメタノール、場合によっては、1,2-プロパンジオールも同様に、本発明の二次反応において使用される。1,2-プロパンジオールは単独でも二次反応のための溶媒として役立つが、メタノールが存在するときほど有効ではないと思われる。他の低級アルコール、例えばエタノールおよびイソプロパノールもまた使用することができるが、メタノールまたはメタノール/1,2-プロパンジオール混合物よりも芳しくない選択である。そのような状況下では、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤の幾分かの最小限のロス(全収量の約1%の減少)が不可避であり得るが、これは通常は、最終生成物における脂肪酸の所望の減少のために許容可能なトレードオフである。
二次反応のための反応温度は、好ましくは約85℃以下、典型的には65?85℃の範囲であるべきである。過度に高い温度の使用は、二次反応を望ましくは加速し得るが、望ましくないことに、ポリヒドロキシ脂肪酸アミドの環化を引き起こし始めると考えられる。約120℃までの温度が短い時間に関しては認容可能であり得るが、もちろん環化された副生成物のレベルの増加という犠牲を払ってまで脂肪酸源含有量を減少させることは望ましくない。以下さらに、一次反応、それに続く二次反応を説明する。
装置:500mlの三つ口フラスコ、パドルスターラー、乾燥管を有する還流冷却器、反応に到達する温度計およびガス注入管。恒温油浴を用いてフラスコを加熱する。

一次反応
上記装置を窒素掃引下で予め乾燥し、冷却し、掃引を止める。風袋重量を冷却器なしで測定する。純粋な粉末N-メチルグルカミン(「NMG」)97.5g(0.5モル)、107g(0.5モル)の95%メチルドデカノエートおよび18.9gのプロピレングルコール(溶媒)をフラスコに入れ;各反応物の含水率はそれぞれ0.3%および0.1%であり、溶媒を分子篩上で乾燥する。混合物を撹拌しながら68℃に加熱して、粘性のペーストを得;メタノールにおける5.4g(0.025モル)の25%ナトリウムエトキシドをその後添加する。該時間を0とし、その後反応を速やかに85℃にし、撹拌を継続しながら、減圧なし、窒素掃引なしで、85℃で維持する。5分以内に、薄い乳白色の懸濁液が形成し、これは55分で澄んで均一な透明の低粘度の液体になる。この反応の間に還流は観察されないが、メタノールの発生はNMGとの完全なアミド化が完了したときには9.1%に到達すると計算される。150分で、反応の重量が最初の2g以内であり;少量のサンプルを採取する。

二次反応
一次反応の直後に、7.6g(0.125モル)の乾燥エタノールアミンを添加する。撹拌および温度を維持しながら、真空/窒素掃引をその後適用する。210分の点で、真空は11psi(4psi absolute)に到達する。秤量により、触媒およびエステルからの全てのメタノールの理論的な除去量を反応重量の約1.5?2%超過が示される。得られた生成物を以下の分析を有しており、高度に泡立つ洗剤組成物における使用に適している。

以下は、本発明に従って製造されたポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤の最終液体洗剤組成物における使用を示すことを意図しているが、それらに限定することを意図するものではない。固体組成物は、上記組成物において液体キャリア(例えば水)を水溶性固体キャリアー、例えば硫酸ナトリウムで置き換えることにより製造することができる。好ましい液体組成物は、少なくとも約0.10%、好ましくは少なくとも約0.5重量%のカルシウムまたはマグネシウムイオンあるいは両方を含むであろう。別段の記載がない限り、カルシウムまたはマグネシウムの量(モル比)は、上記組成物におけるアニオン(例えばスルフェート化またはスルホン化)界面活性剤の0.1X?2.0Xの量である。)

(甲1-5)「

」(第19頁25?38行)
(当審仮訳:

)

(甲1-6)「

」(第20頁1?16行)
(当審仮訳:

)

(ii)甲10に記載された事項
甲10には以下の事項が記載されている(当審注:甲10とともに提出された甲10の翻訳文に従って認定した。)。
(甲10-1)「実験報告書 R1
・・・
3.実験者
GTI PRT High Pressure Pilot Plant, GTI CHR CCS

4.実験の目的
WO93/19038との比較試験

5.実験の条件および手順
原料は以下のとおりである:
17.5kgの75%水性グルコースシロップ・・・、16.6kgの22%重量%モノメチルアミン水溶液、水中における6.43kgのRaneyニッケル・・・;パイプフラッシング用の3.75kgの水。
・・・
操作ステップは以下のとおりである:
i.反応器に水中のRaneyニッケルを充填する。
ii.窒素ガスを用いて不活性化を行う。
iii.窒素雰囲気を水素により置換し、反応器を30bar水素に加圧する(435psig)。
iv.モノメチルアミン水溶液を室温で反応器に充填する。
v.容器を60℃に加熱し、490rpmで撹拌しながら60bar水素に加圧する。
vi.オペレーターおよび/または反応器の自動制御により水素圧を60bar水素圧力を維持しながら、75重量%のグルコース溶液を加熱した容器から上記反応器に計量添加する。
vii.計量添加後、水素圧力を75barに増加させる。水素化の終了を分析により判断する。
viii.水素化が終了したら、70分間かけて温度を60℃から100℃に上昇させると、温度効果により圧力も100barに上昇する。
ix.100℃で20分後、45分以内に反応器を70℃に冷却する。
x.Raneyニッケル触媒を沈殿物として沈殿させるために攪拌器を停止する。
xi.反応器から浸漬管により排出させ、ろ過容器を使用して生成物から残った触媒を除去し、N-メチルグルカミン(NMG)を得る。
・・・
6.実験の結果および結論
N-メチルグルカミン水溶液は約40%であり、水を蒸発させた後に、WO93/19038に従うグルカミド界面活性剤の合成のための次のステップにおいて使用する。」(第1?3頁)

(iii)甲11に記載された事項
甲11には以下の事項が記載されている(当審注:甲11とともに提出された甲11の翻訳文に従って認定した。)。
(甲11-1)「実験報告書 R2
・・・
3.実験者
GTI CHR Competence Center Surfactants, Lab E

4.実験の目的
WO93/19038のEXAMPLE I、Primary Reaction,Secondary Reactionとの比較試験

5.実験の条件および手順
使用した原料:
N-メチルグルカミン水溶液(GTI PRT High Pressure Pilot Plantによる実験報告書参照)
メチル-ドデカノエート(Aldrich,含水率:<0.05%)
プロピレングリコール天然(Oleon NV,含水率:<0.05%)
エタノールアミン(Merck,含水率:<0.05%)
ナトリウムメチレート(メタノール中25%,BASF,含水率:<0.1%)

操作ステップ N-メチルグルカミン(NMG)溶液の乾燥
・・・最終NMG粉末の含水率を測定すると0.19%であった。

トライアルの実施
WO93/19038のExample IにおけるPrimary ReactionおよびSecondary Reactionに従って、2つのトライアルを実施した。各トライアルは、WO93/19038の記載と同一の量の原料を用いて行った。
トライアルSCF-OBA-00438
・・・
トライアルSCF-OBA-00439
・・・
6.実験の結果および結論
両者の最終生成物をGCにより分析し、転化率を確認した(メタノールは、エキストラランにより決定した):
・・・
両者の生成物をまたLC-MSにより解析した(Clariant Analytical ServicesのDr.カリングによる実験報告書を参照)」(第1?4頁)

(iv)甲12に記載された事項
甲12には以下の事項が記載されている(当審注:甲12とともに提出された甲12の翻訳文に従って認定した。)。
(甲12-1)「実験報告書 R3
・・・
3.実験者
Dr.モーリツ・カーリング

4.実験の目的
実験の目的は、WO 93/19038の方法に従って製造したラウロイル-N-メチルグルカミンにおけるアミド副生成物(3、4または5個の炭素原子を有する糖をベースとする)の検出であった・・・。従って、2つのサンプル、すなわちSCF-OBA-00438およびSCF-OBA-00439を分析した。
・・・
5.実験の条件及び手順
液体クロマトグラフィー-高分解能質量分析法(LC-HR/MS)を、ゲナミンNMG40を調べるために使用した。
・・・
6.実験の結果および結論
2つのサンプルを分析し、両者において、図1に示す3つ全てのアミド副生成物の質量を検出し、それらの正確な質量およびフラグメントパターンに基づいて同定を行った(図2)。
・・・
表1:N-ドデカノイル-メチル-グルカミン(C12-GA)に対する糖誘導体の量(面積%)
SCF-OBA-00438 SCF-OBA-00439
化合物 C12-GA に対する面積% C12-GA に対する面積%
N-ドデカノイル-C3-糖 1.66% 1.74%
N-ドデカノイル-C4-糖 1.10% 1.16%
N-ドデカノイル-C5-糖 0.06% 0.067%」(第1?3頁)

イ 甲1に記載された発明
甲1には、「ポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤を含む一次反応生成物を製造するための方法」(摘記甲1-1)が記載されており、「ポリヒドロキシアミン形成反応における『糖』は、還元糖、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、キシロース等を意味すること(摘記甲1-3)が記載されている。
また、例1(摘記甲1-4)には、脱イオン水での洗浄及び加圧水素による処理を行ったRaneyニッケル触媒を用い、反応物質を50%水性モノメチルアミン、55%グルコースシロップ及び水として、水素圧力下で反応を行い、固体のN-メチルグルカミンを回収したこと、その後、「ポリヒドロキシアミンのポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤反応生成物への転化」を行うための二次反応を、一級アルキルアミン及びアルカノールアミンを用いて実施し、C12グルコースアミドを主成分とする生成物を得たこと、及び得られた生成物は、「高度に泡立つ洗剤組成物における使用に適している」ことが記載されている。
さらに、甲1(摘記甲1-4?甲1-6)には、「本発明に従って製造されたポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤の最終液体洗剤組成物における使用」を示す配合例の成分組成が記載されており、具体的には、C_(12-14)N-メチルグルカミドを含有し、さらにC_(12-13)EO(0.8)スルフェート等の他の界面活性剤を含有する洗剤組成物の配合例が記載されている。
そうすると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。
「C_(12-14)N-メチルグルカミド及び他の界面活性剤を含む洗剤組成物」(以下、「甲1発明」という。)

ウ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「C_(12-14)N-メチルグルカミド」は、本件発明1の第1化学物質を表す式Iにおいて、n^(1)は4であり、R_(1)はメチル基であり、R_(2)は式IIIの構造から独立して選択され、式III中のR_(5)はC_(11)?C_(13)アルキルの混合物であり、式Iの分子の一部がグルコース由来である場合の化合物に相当する。
また、甲1発明における「他の界面活性剤を含む洗剤組成物」は、本件発明1の「混合物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「第1化学物質を含む混合物であって、前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し(当審注:式Iの化学構造及びその定義は、上記3.「本件発明について」の請求項1を参照。)、式Iの分子の一部がグルコース由来である、混合物」
の点で一致し、

相違点1’:混合物が、本件発明1は式II(当審注:式IIの化学構造及びその定義は、上記3.「本件発明について」の請求項1を参照。)で表される第2化学物質を含有し、「前記第1化学物質と前記第2化学物資との重量比が、50:50?0.5:99.5である」ことが特定されているのに対し、甲1発明においてはそのような物質を所定の重量比で含むことが特定されていない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点1’について
(イ-1)甲1について
甲1(摘記甲1-3)には、「ポリヒドロキシアミン形成反応における『糖』は、還元糖、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、キシロース等を意味する」ことが記載されているが、甲1には二種類以上の糖を原料として用いて形成された、ポリヒドロキシ脂肪酸アミドの混合物を含む洗剤組成物は具体的には記載されていない。また、本件発明1において「第2化学物質」は「分子の一部がキシロース由来である」ことが特定されているが、甲1には、上記のように「還元糖、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、キシロース等を意味する」と多数の糖が例示されているに止まり、特にグルコースとキシロースの組合せを選択すべきことは記載されていない。
また、仮に、グルコースとキシロースの組合せを原料として選択することができたとしても、甲1には、グルコースから誘導されたポリヒドロキシ脂肪酸アミドと、キシロースから誘導されたポリヒドロキシ脂肪酸アミドの重量比を、50:50?0.5:99.5の範囲とすることは記載されていない。
よって、上記相違点1’は実質的な相違点である。

(イ-2)甲10?12について
申立人は特許異議申立書(40?42頁)において、甲10?甲12(摘記甲10-1?甲12-1)の実験報告書を引用し、「甲第1号証のEXAMPLE Iに従い、唯一の糖としてのグルコースを用いて出発すると、それにも拘わらずに、C3、C4およびC5糖アミドが無意識的・自動的に形成することが実証される」と主張し、また、特許異議申立書(46頁)において、「本件特許発明1?5、9?15は甲第1号証に記載された発明である」こと、及び「混合物における2つの成分の重量比を適宜調整することは、当業者が通常行う設計事項にすぎないし、式I構造と式II構造との重量比を(訂正前の)本件特許発明6に規定される範囲内にすることにより、当業者が予期できない顕著な効果を奏するとも認められない」と主張している。
しかし、甲10?甲12の実験報告書については、甲10、甲11に記載された糖アミドの合成手順において、Raneyニッケル触媒の前処理ステップが省略されている等、甲1に記載された合成手順とは異なる点があり、甲1の実験を正確に再現したものとは認められないから、甲10?甲12と併せて検討しても、甲1発明が本件発明1の第2化学物質に相当する成分を含むものとは認められない。まして、甲10?甲12を参酌しても、甲1発明において、グルコースとキシロースの組合せを原料として選択することを当業者が容易に想到し得ることにはならないし、グルコースから誘導されたポリヒドロキシ脂肪酸アミドと、キシロースから誘導されたポリヒドロキシ脂肪酸アミドの重量比を、50:50?0.5:99.5の範囲とすることに容易に想到し得るものとも認められない。

(ウ)本件発明1の効果について
上記5.(2)「理由1(サポート要件)について」に記載したとおり、本件発明1は、相違点1’に係る定義を含む式Iで定義される第1化学物質と式IIで定義される第2化学物質とを特定の重量比で含む混合物であることにより、「持続可能な原料に基づく糖アミドの新規の混合物により、混合物をなす一方の糖アミドよりも改善された融点、クラフト点等の熱的特性を有する混合物を提供する」という課題を解決でき、それにより「処方可能性、コスト、及び、処方の柔軟性に関して既存の物質よりも改善された特性を有し、消費者向け製品においてより広い用途に用いられ得る界面活性剤を提供する」という課題を解決できるという好ましい効果を奏するものであるところ、そのような効果は、当業者が甲1の記載等から予測し得ないものである。

(エ)本件発明1についてのまとめ
よって、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

エ 本件発明7、9、11?15について
本件発明1を引用する本件発明7及び9、本件発明1と同様に第1化学物質及び第2化学物質の重量比が特定された本件発明11及び12、並びに本件発明11、12を引用する本件発明13?15についても、本件発明1と同様である。
よって、本件発明7、9、11?15は、いずれも甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

オ 理由IV-1(進歩性)甲第1号証を主とする場合についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1、7、9、11?15は、いずれも甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、特許異議申立書に記載された理由IV-1(進歩性)甲第1号証を主とする場合の取消理由によっては、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。

(4-3)理由III-2(新規性)甲第5号証を主とする場合について
ア 申立ての対象について
申立人は、理由III-2(新規性)甲第5号証を主とする場合の申立ての対象請求項を、訂正前の請求項1?5、9及び10に限っているところ、上記2.(3)ア(ア)「訂正事項1について」に記載したとおり、本件訂正による訂正後の本件発明1は、「前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5」との発明特定事項を備えており、実質的に訂正前の請求項6に相当する発明特定事項を備えるものに訂正されたと解される。

イ 本件発明1について
そうすると、本件発明1は、実質的に、特許異議申立書に記載された理由III-2(新規性)甲第5号証を主とする場合の申立ての対象外の発明に相当するから、当該理由により取り消すことができるものではない。

ウ 本件発明7、9、11?15について
本件発明1を引用する本件発明7及び9、本件発明1と同様に第1化学物質及び第2化学物質の重量比が特定された本件発明11及び12、並びに本件発明11、12を引用する本件発明13?15についても、本件発明1と同様である。
よって、本件発明7、9、11?15は、実質的に、特許異議申立書に記載された理由III-2(新規性)甲第5号証を主とする場合の申立ての対象外の発明に相当するから、当該理由により取り消すことができるものではない。

エ 理由III-2(新規性)甲第5号証を主とする場合についてのまとめ
以上のとおり、特許異議申立書に記載された理由III-2(新規性)甲第5号証を主とする場合の取消理由によっては、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。

(4-4)理由IV-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合について
申立人が主張する理由IV-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合の取消理由は、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由4-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合に当たるから、上記5.(3)「理由4-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合について」に記載したとおりである。
よって、特許異議申立書に記載された理由IV-2(進歩性)甲第5号証を主とする場合の取消理由によっては、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。

(5)理由V(新規事項)について
申立人は、特許異議申立書(54?55頁)において、「本願の審査手続中に、特許請求の範囲の補正がなされた。具体的には、
a)水素がR_(1)およびR_(3)部分の定義から削除され、
b)水素、C_(1)?C_(16)アルキル、C_(1)?C_(3)ヒドロキシ-アルキルもしくはメトキシ-アルキルがR_(2)およびR_(4)部分の定義から削除された。
当該補正は、本願の出願当初の特許請求の範囲、明細書には開示されていなかった特定の新たな定義を生じさせるものであり、従って、新規事項の追加に該当するものである。」と主張している。
しかし、本件訂正後の本件発明1、7、9、11?15は、本件明細書、特許請求の範囲又は図面に記載され、実施例により裏付けられているといえる範囲内のものであり(上記5.(2)理由1(サポート要件)についてを参照。)、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものと認められるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものではない。
よって、特許異議申立書に記載された理由V(新規事項)の取消理由によっては、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。

7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1、7、9、11?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項2?6、8、10は訂正により削除され、本件特許の請求項2?6、8、10に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1化学物質と第2化学物質とを含む混合物であって、前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
【化1】

式中、
n^(1)は4であり;
n^(2)は3であり;
R_(1)及びR_(3)は、メチル基であり;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
【化2】

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物であり、前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5であり、
式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来である、混合物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
R5がC11とC13との混合物であり、且つC11とC13との重量比が99:1?60:40である、請求項1に記載の混合物。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
前記混合物は第3の化学物質を更に含み、前記第3の化学物質は式IVの化学構造を有し:
【化3】

式中、
R_(6)は、メチルであり;
R_(7)は、C_(8)?C_(22)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、又はトリアルケニル、及びそれらの混合物から独立して選択され;
n^(3)は2?4であり、
式IVの分子の一部は、アラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択される、請求項1に記載の混合物。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(a)約0.001重量%?約99.999重量%の、第1化学物質と第2化学物質とを含む混合物と、
(b)約0.001重量%?約99.999重量%の、少なくとも1種類の追加的成分であって、洗浄成分及びパーソナルケア成分からなる群より選択される追加的成分と、を含む組成物であって、
前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
【化4】

式中、
n^(1)は4であり;
n^(2)は3であり;
R_(1)及びR_(3)は、メチル基であり;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
【化5】

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物であり、前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5であり、
式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来である、組成物。
【請求項12】
(a)約0.001重量%?約99.999重量%の、第1化学物質と第2化学物質と第3の化学物質とを含む混合物と、
(b)約0.001重量%?約99.999重量%の、少なくとも1種類の追加的成分であって、洗浄成分及びパーソナルケア成分からなる群より選択される追加的成分と、を含む組成物であって、
前記第1化学物質は式Iの化学構造を有し、且つ前記第2化学物質は、式IIの化学構造を有し:
【化6】

式中、
n^(1)は4であり;
n^(2)は3であり;
R_(1)及びR_(3)は、メチル基であり;
R_(2)及びR_(4)は、式IIIの構造から独立して選択され、
【化7】

式中、R_(5)はC_(7)?C_(23)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、トリアルケニル、又はこれらの混合物であり、前記第1化学物質と前記第2化学物質との重量比が、50:50?0.5:99.5であり、
前記第3の化学物質は式IVの化学構造を有し:
【化8】

式中、
R_(6)は、メチルであり;
R_(7)は、C_(8)?C_(22)アルキル、モノアルケニル、ジアルケニル、又はトリアルケニル、及びそれらの混合物から独立して選択され;
n^(3)は2?4であり、
式Iの分子の一部がグルコース由来であり、且つ式IIの分子の一部がキシロース由来であり、
式IVの分子の一部は、アラビノース、ガラクトース、マンノース、及びそれらの組み合わせ由来のフラグメントからなる群より選択される、組成物。
【請求項13】
少なくとも1種類の洗浄成分が、界面活性剤、担体、酵素、ビルダー、アルカリ性系(alkalinity system)、有機ポリマー化合物、色相染料、漂白化合物、アルカノールアミン、汚れ懸濁剤、再付着防止剤、腐食防止剤、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、粒状洗剤、バー形状洗剤、液体洗濯洗剤、液体手洗い食器洗浄混合物、硬質表面洗浄剤、錠剤、消毒剤、工業用洗浄剤、超濃縮液(highly compact liquid)、粉末、除毒剤、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、洗顔用石鹸、ボディ洗浄剤、ボディーソープ、入浴用泡剤(foam bath)、化粧落とし、スキンケア製品、ニキビ抑制製品、防臭剤、発汗抑制剤、髭剃り用助剤、化粧品、脱毛剤、芳香剤、ローション、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項15】
前記パーソナルケア成分は、油、及び皮膚軟化剤、保湿剤、キャリア、抽出物、ビタミン、鉱物、老化防止化合物、界面活性剤、溶媒、ポリマー、防腐剤、抗菌剤、ワックス、粒子、着色剤、染料、芳香剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11又は12に記載の組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-01-28 
出願番号 特願2015-561570(P2015-561570)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C11D)
P 1 651・ 558- YAA (C11D)
P 1 651・ 538- YAA (C11D)
P 1 651・ 113- YAA (C11D)
P 1 651・ 121- YAA (C11D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉田 邦久  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 日比野 隆治
天野 宏樹
登録日 2017-12-01 
登録番号 特許第6251296号(P6251296)
権利者 ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
発明の名称 混合糖組成物  
代理人 上西 克礼  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 江崎 光史  
代理人 虎山 一郎  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
代理人 特許業務法人谷・阿部特許事務所  

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