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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1361457
異議申立番号 異議2018-700920  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-15 
確定日 2020-02-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6368711号発明「形状保持シールドフィルム、及びこの形状保持シールドフィルムを備えた形状保持型シールドフレキシブル配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6368711号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第6368711号の請求項1、3ないし9に係る特許を維持する。 特許第6368711号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6368711号の請求項1-9に係る特許についての出願は、平成26年4月30日(優先権主張 2013年5月28日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年7月13日にその特許権が設定登録され、平成30年8月1日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年11月15日 :特許異議申立人日向ヨシ子により請求項1-9に係る特許に対する特許異議の申立て
平成31年 4月26日付け:取消理由通知
令和 1年 7月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 1年 8月23日 :特許異議申立人日向ヨシ子による意見書の提出
令和 1年 9月18日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 1年11月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 1年12月23日 :特許異議申立人日向ヨシ子による意見書の提出

なお、令和1年11月22日に訂正の請求がなされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、令和1年7月9日になされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和1年11月22日付けの訂正請求の趣旨は、特許第6368711号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-9について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において「塑性変形可能で、厚みが1μm以上であり、かつ6μm以下である金属層と、」とあるのを、「塑性変形可能で、厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする金属層と、」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において「厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層と、」とあるのを、「厚みが3μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層と、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に「前記金属層が圧延加工により形成されている、請求項1又は2に記載の形状保持シールドフィルム。」とあるうち、引用する請求項を請求項1のみに訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に「前記接着剤層は、導電性を有している、請求項1から3の何れかに記載の形状保持シールドフィルム。」とあるうち、引用する請求項を請求項1又は3に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に「前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、厚みが1μm以上、かつ10μm以下である保護層が形成されている、請求項1から4の何れかに記載の形状保持シールドフィルム。」とあるうち、引用する請求項を請求項1、3、又は4に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に
「前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層が更に形成されている、請求項1から4の何れかに記載の形状保持シールドフィルム。」とあるのを、
「塑性変形可能で、厚みが1μm以上であり、かつ6μm以下である金属層と、
前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層と、
を備え、
前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する形状保持シールドフィルムであり、
前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層が更に形成されている、形状保持シールドフィルム。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「前記金属層は、耐食性表面処理が施されたものである、請求項1から7の何れかに記載の形状保持シールドフィルム。」とあるうち、引用する請求項を請求項1及び3から7の何れかとすることに訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から8の何れかに記載の形状保持シールドフィルムと、前記フレキシブル配線板とが、前記接着剤層により前記フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着された、形状保持型シールドフレキシブル配線板。」とあるうち、引用する請求項を請求項1及び3から8の何れかとすることに訂正する。

なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-9〕に対して請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、金属層の厚みについて、訂正前の請求項1に記載されていた「1μm以上であり、かつ6μm以下」を「5μm以上であり、かつ6μm以下」に狭めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
明細書の段落【0032】には「金属層3は、塑性の金属である銅、銀、ニッケル、アルミ等のうちの一種以上を主成分としている。」とあり、「金属層」を「銅を主成分とする」ものとすることが記載されている。
明細書の段落【0036】には「金属層3は、圧延加工により形成されることが好ましい。」と、段落【0037】には「なお、金属層3は、圧延加工により形成された金属箔であることに限定されず、電解による金属箔(特殊電解銅箔など)・・・により形成されるものであってもよい。」とあり、「金属層」を「圧延加工又は電解による金属箔」とすることが記載されている。
また、訂正前の請求項1には「6μm以下」と特定されるとともに、明細書の段落【0070】には「6μmの厚みを有する銅の圧延箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの上面に形成された実施例A2」と、段落【0071】には「5μmの厚みを有する銅の電解箔(金属層)を備えた形状保持フィルムがポリイミドフィルムの上面に形成された実施例A7」とあり、「金属層」を「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下」の金属箔とすることが記載されている。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、接着剤層の厚みについて、訂正前の請求項1に記載されていた「2μm以上であり、かつ15μm以下」を「3μm以上であり、かつ15μm以下」に狭めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正前の請求項1には「15μm以下」と特定されるとともに、明細書の段落【0040】には「接着剤層4の厚みは、2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい」とあり、「接着剤層」を「3μm以上」とすることが記載されている。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
請求項2を削除する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項4は、請求項3が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項5は、請求項4が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項6は、請求項5が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項7は、訂正前の請求項6が請求項1から4の何れかを引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1を引用する請求項6を独立形式請求項へ改めるための訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項8は、請求項8が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項9は、請求項9が引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 小括
以上とおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、3-9に係る発明(以下、「本件発明1、3-9」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3-9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
塑性変形可能で、厚みが5μm以上であり、かつ6μmであり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする金属層と、
前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが3μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層と、
を備え、
前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する形状保持シールドフィルム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記金属層が圧延加工により形成されている、
請求項1に記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項4】
前記接着剤層は、導電性を有している、
請求項1又は3の何れかに記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項5】
前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、厚みが1μm以上、かつ10μm以下である保護層が形成されている、
請求項1、3、又は4に記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項6】
塑性変形可能で、厚みが1μm以上であり、かつ6μm以下である金属層と、
前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層と、
を備え、
前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する形状保持シールドフィルムであり、
前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層が更に形成されている、形状保持シールドフィルム。
【請求項7】
前記金属層の前記接着剤層側とは反対の一方面側に形成された接着剤層が導電性を有している、
請求項6に記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項8】
前記金属層は、耐食性表面処理が施されたものである、
請求項1及び3から7の何れかに記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項9】
請求項1及び3から8の何れかに記載の形状保持シールドフィルムと、前記フレキシブル配線板とが、前記接着剤層により前記フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着された、
形状保持型シールドフレキシブル配線板。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が平成31年4月26日付け取消理由通知及び令和1年9月18日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、いずれも次のとおりである。

下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(1)甲第1号証に記載された発明に基づく容易想到性について
請求項1-5に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第6号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項8-9に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第6号証、甲第7号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)甲第2号証に記載された発明に基づく容易想到性について
請求項1-7に係る発明は、甲第2号証、甲第6号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求項8-9に係る発明は、甲第2号証、甲第6号証、甲第7号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

〈引用文献等一覧〉
甲第1号証:特開2007-294918号公報
甲第2号証:特開2012-156457号公報
甲第6号証:特開2005-183536号公報
甲第7号証:国際公開第2010/113343号

2 引用文献の記載事項、引用発明等
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【請求項1】
絶縁層と耐熱性の高い難燃性樹脂を含有するシールド層とを有することを特徴とするシールドフィルム。
【請求項2】
前記シールド層が、前記絶縁層の少なくとも片面に形成された1層以上の等方導電性接着剤層を有することを特徴とする請求項1に記載のシールドフィルム。
【請求項3】
前記シールド層が、前記絶縁層の少なくとも片面に形成された1層以上の金属層と、1層以上の異方導電性接着剤層とを有することを特徴とする請求項1に記載のシールドフィルム。
【請求項4】
前記導電性接着剤層が難燃剤をさらに含有するものであり、
前記難燃剤が、前記難燃性樹脂100重量部に対して10?180重量部配合されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のシールドフィルム。
【請求項5】
前記難燃性樹脂が、リン含有難燃性樹脂を含有していることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載のシールドフィルム。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載のシールドフィルムを、1層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に有することを特徴とするシールドプリント配線板。
【請求項7】
前記基体がフレキシブルプリント配線板であることを特徴とする請求項6記載のシールドプリント配線板。」

「【0001】
本発明は、コンピュータ、携帯電話、通信機器、ビデオカメラなどの装置内等に使用されているプリント配線板に用いることが可能なシールドフィルム、及び、このシールドフィルムを用いたシールドプリント配線板に関するものである。」

「【0013】
本発明のシールドプリント配線板は、上述のいずれか1つのシールドフィルムを、1層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に有する。上記構成により、グランド回路のパターンと本発明のシールドフィルムにおける金属層とを導電接続させるので、電磁波シールド性に優れたシールドプリント配線板を提供できる。また、UL94の垂直燃焼性試験(V規格)に合格するシールドプリント配線板を提供できる。
【0014】
本発明のシールドプリント配線板は、前記基体がフレキシブルプリント配線板であることが好ましい。上記構成により、電磁波シールド性に優れるとともに、基体が可撓性を有しているフレキシブルプリント配線板であることから、曲げる必要がある部位において用いることができるシールドプリント配線板を提供できる。」

「【0016】
図1に示すシールドフィルム1は、絶縁層2の片面に金属層3と、接着剤層4とを順次設けてなるものである。
【0017】
絶縁層2は、カバーフィルム又は絶縁樹脂のコーティング層からなる。
カバーフィルムは、エンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、アラミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。
あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはアラミドフィルムやポリイミドフィルムが好ましい。
絶縁樹脂は、絶縁性を有する樹脂であればよく、例えば、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びそれらのメタクリレート変性品などが挙げられる。なお、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などどれでもよく、硬化するものであればよい。
なお、絶縁層2の厚みは1μm?10μm、好ましくは3μm?7μmであることが好ましい。
【0018】
金属層3を形成する金属材料としては、銅、アルミ、銀、金などを挙げることができる。金属材料は、求められるシールド特性に応じて適宜選択すればよい。金属層3の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキなどがあるが、量産性を考慮すれば真空蒸着が望ましく、安価で安定して金属薄膜を得ることができる。また、金属層3は、金属薄膜に限られず、金属箔を用いてもよい。金属層3の厚さは、一般に0.01?10μmとするのが好ましい。0.01μmを下回るとシールド効果が不十分となり、逆に10μmを超えると可撓性が悪くなる。特に可撓性が必要な場合には2μm以下が好ましく、特にシールド効果が必要な場合には10μm以下が好ましい。
【0019】
接着剤層4としては、260℃の基板実装(リフロー)に耐えうる耐熱性のある熱硬化性樹脂、好ましくは難燃性の熱硬化性樹脂が用いられ、これに難燃剤や導電性フィラーが添加されており、等方導電性又は異方導電性を有している。接着剤層4の厚さは、5μmから30μmが好ましい。5μmより薄いと十分な密着性が得られず、30μmを超えると柔軟性が損なわれる。なお、接着剤層4が等方導電性である場合には、金属層3はなくてもよい。」

「【0023】
導電性フィラーの配合割合は、フィラーの形状等にも左右されるが、難燃性樹脂100重量部に対して10?100重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは15?50重量部とするのがよい。100重量部を超えると、グランド回路(銅箔)への接着性が低下し、シールドフレキシブルプリント配線板(以下、シールドFPCとする)等の可撓性が悪くなるとともに難燃性能が低下する。また、10重量部を下回ると導電性が著しく低下するとともに難燃性能が低下する。金属フィラーの形状は、球状、針状、繊維状、フレーク状、樹脂状のいずれであってもよい。」

「【0028】
なお、本発明のシールドフィルムは、FPC、COF(チップオンフレックス)、RF(リジットフレックスプリント板)、多層フレキシブル基板、リジット基板などに利用できるが、必ずしもこれらに限られない。なお、FPCに貼付した場合の構造としては、例えば、図2に示すようなシールドプリント配線板10となる。ここで、5はベースフィルム、6はプリント回路、7は絶縁フィルム、8は基体フィルムである。」

「【0032】
上記構成により、グランド回路6bのパターンと上記実施形態のシールドフィルム1における金属層3とを導電接続させるので、電磁波シールド性に優れたシールドプリント配線板10を提供できる。また、35μm以下と非常に薄いフィルムであっても、UL94の垂直燃焼性試験(V規格)に合格するシールドプリント配線板を提供できる。また、基体フィルム8がFPCであるので、電磁波シールド性に優れるとともに、可撓性を有していることから、曲げる必要がある部位において用いることができるシールドプリント配線板10を提供できる。」

「【図2】



・段落【0016】の記載によれば、シールドフィルム1は、絶縁層2の片面に金属層3と、接着剤層4とを順次設けたものである。
・段落【0017】の記載によれば、絶縁層2は、カバーフィルム又は絶縁樹脂のコーティング層からなり、厚みは1μm?10μmである。
・段落【0018】の記載によれば、金属層3は、形成する金属材料は銅であり、金属箔を用い、厚さは0.01?10μmである。
・段落【0019】の記載によれば、接着剤層4は、等方導電性又は異方導電性を有し、厚さは、5μmから30μmである。
・段落【0028】の記載及び図2によれば、FPC(フレキシブルプリント配線板)の基体フィルム8(基体)に接着剤層4が貼付される。
・段落【0013】、【0014】の記載によれば、フレキシブルプリント配線板である基体の少なくとも片面上にシールドフィルムを有する構成により、曲げる必要がある部位において用いることができるシールドプリント配線板を提供する。

イ 引用発明
以上のことから、甲第1号証には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「絶縁層2の片面に金属層3と、接着剤層4とを順次設けたシールドフィルム1であって、
絶縁層2は、カバーフィルム又は絶縁樹脂のコーティング層からなり、厚みは1μm?10μmであり、
金属層3は、銅により形成され、金属箔を用い、厚さは0.01?10μmであり、
接着剤層4は、等方導電性又は異方導電性を有し、厚さは、5μmから30μmであり、
フレキシブルプリント配線板である基体に接着剤層4が貼付された、フレキシブルプリント配線板である基体の少なくとも片面上にシールドフィルムを有する構成とし、曲げる必要がある部位において用いることができるシールドプリント配線板を提供するために用いられる
シールドフィルム。」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
グランド用配線パターンが形成されたベース部材と、当該グランド用配線パターンを覆って当該ベース部材上に設けられた絶縁フィルムと、を有すると共に、電子部品が当該ベース部材の下面に設けられた実装部位に接続されたプリント配線板と、
前記グランド用配線パターンと同電位であると共に前記実装部位に対向する領域まで配置された導電層と、当該導電層上に設けられた絶縁層と、を備え、前記プリント配線板上に設けられたシールドフィルムと、
前記実装部位に対向する領域に配置され、前記シールドフィルム上に設けられた導電性を有する補強部材と、
を有するシールドプリント配線板であって、
前記補強部材は、球状の導電性粒子を含んだ導電性接着剤により前記絶縁層上に接着され、
前記絶縁層は、前記導電性接着剤が接着された後において、当該導電性接着剤から突出した前記導電性粒子の突出長よりも薄い層厚みで形成され、
前記導電性接着剤が前記絶縁層に接着された後において、前記導電性粒子が前記導電層と接触することを特徴とするシールドプリント配線板。」

「【0002】
従来、携帯電話やコンピュータなどの電子機器は、小型化や高速処理化などにより、メイン基板や外部から受ける電磁波などのノイズの影響を受けやすくなっている。そのため、電磁波などのノイズを遮蔽するシールドフィルムを備えたプリント配線板の要求が高くなっている。また、このようなプリント配線板は、携帯電話やコンピュータなどに使用される電子部品が接続されて用いられ、使用時の曲げなどによって、電子部品が実装される実装部位には歪みなどが生じる場合がある。そのため、電子部品が実装される実装部位に対向する位置には、補強部材が設けられる。」

「【0023】
(シールドプリント配線板1の全体構成)
先ず、図1を用いて、本実施形態のシールドプリント配線板1について説明する。図1に示すように、シールドプリント配線板1は、プリント配線板10と、シールドフィルム20と、補強部材35と、を有している。そして、プリント配線板10の下面に設けられた実装部位には電子部品50が接続されるようになっている。また、シールドフィルム20は、プリント配線板10上に設けられており、電子部品50が接続される実装部位に対向する領域まで配置されている。これにより、シールドフィルム20を利用して電子部品50の実装部位に対する外部からの電磁波90bなどのノイズを遮蔽している。」

「【0027】
(プリント配線板10)
プリント配線板10は、図示しない信号用配線パターンやグランド用配線パターン14などの複数の配線パターンが形成されたベース部材12と、ベース部材12上に設けられた接着剤層13と、接着剤層13に接着された絶縁フィルム11と、を有している。
【0028】
図示しない信号用配線パターンやグランド用配線パターン14は、ベース部材12の上面に形成されている。これらの配線パターンは、導電性材料をエッチング処理することにより形成される。また、そのうち、グランド用配線パターン14は、グランド電位を保ったパターンのことを指す。
【0029】
接着剤層13は、信号用配線パターンやグランド用配線パターン14と絶縁フィルム11との間に介在する接着剤であり、絶縁性を保つと共に、絶縁フィルム11をベース部材12に接着させる役割を有する。なお、接着剤層13の厚みは、10μm?40μmであるが、特に限定される必要はなく適宜設定可能である。
【0030】
ベース部材12と絶縁フィルム11は、いずれもエンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が挙げられる。あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。なお、ベース部材12の厚みは、10μm?40μmであり、絶縁フィルム11の厚みは、10μm?30μmであるが、特に限定される必要はなく適宜設定可能である。」

「【0039】
(シールドフィルム20)
シールドフィルム20は、導電材23に接触状態に接着された導電層22と、導電層22上に設けられた絶縁層21と、を有している。
【0040】
導電材23は、等方導電性および異方導電性の何れかの接着剤により形成されている。等方導電性接着剤は、従来のはんだと同様の電気的性質を有している。従って、等方導電性接着剤で導電材23が形成されている場合には、厚み方向および幅方向、長手方向からなる三次元の全方向に電気的な導電状態を確保することができる。一方、異方導電性接着剤で導電材23が形成されている場合には、厚み方向からなる二次元の方向にだけ電気的な導電状態を確保することができる。なお、導電材23が等方導電性の接着剤により形成される場合、導電材23が導電層22の機能を有することができるため、導電層22を設けなくてもよい場合がある。
【0041】
また、導電材23は、絶縁性接着剤と、絶縁性接着剤中に分散された導電性粒子と、から構成されている。具体的に、絶縁性接着剤は、接着性樹脂として、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂で構成されている。また、これら接着性樹脂に金
属、カーボンなどの導電性粒子を混合し、導電性を持たせた導電性接着剤としている。耐熱性が特に要求されない場合は、保管条件などに制約を受けないポリエステル系の熱可塑性樹脂が望ましく、耐熱性もしくはより優れた可撓性が要求される場合においては、信頼性の高いエポキシ系の熱硬化性樹脂が望ましい。また、そのいずれにおいても熱プレス時のにじみ出し(レジンフロー)の小さいものが望ましい。なお、導電材23の厚みは3μm?30μmであるが、特に限定される必要はなく適宜設定可能である。
【0042】
また、導電材23に含まれる導電性粒子は、上述の穴部40内に入り込むように、穴部40の穴径よりも小さな平均粒径を有している。そして、導電性粒子は、金属材料により一部または全部が形成されている。例えば、導電性粒子は、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ-ト銅粉(AgコートCu粉)、金コート銅粉、銀コートニッケル粉(AgコートNi粉)、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、アトマイズ法、カルボニル法などにより作製することができる。また、上記以外にも、金属粉に樹脂を被覆した粒子、樹脂に金属粉を被覆した粒子を用いることもできる。なお、導電性粒子は、AgコートCu粉、またはAgコートNi粉であることが好ましい。この理由は、安価な材料により導電性の安定した導電性粒子を得ることができるからである。なお、導電材23の導電性粒子の形状は、球状に限定される必要はなく、例えばフレーク状や樹枝状であってもよい。
【0043】
導電層22は、メイン基板から送出される電気信号からの不要輻射や外部からの電磁波などのノイズを遮蔽するシールド効果を有する。導電層22は、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、および、これらの材料の何れか、または2つ以上を含む合金により形成された金属層である。なお、金属材料としては、求められるシールド効果に応じて適宜選択すればよいが、銅は大気に触れると酸化しやすいという問題があり、金は高価であることから、安価なアルミまたは信頼性の高い銀が好ましい。また、膜厚は、求められるシールド効果および繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよいが、0.01μm?10μmの厚さが好ましい。厚さが0.01μm未満では、十分なシールド効果が得られず、10μmを超えると屈曲性が問題となる。さらに、導電層22の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキ、箔などがあるが、量産性を考慮すれば真空蒸着が望ましく、安価で安定した導電層22を得ることができる。なお、前述したように、導電材23が等方導電性の接着剤により形成される場合、導電層22は設けなくてもよい場合がある。
【0044】
絶縁層21は、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系、フェノール系、およびウレタン系などの樹脂、またはこれらの混合物によって形成されており、絶縁性を保つと共に、導電層22が直接外部に露出しないようにカバーする役割を果たしている。なお、絶縁層21の厚みは1μm?10μmであり、導電層22に直接コーティングされて形成された方が、例えばフィルム状よりも薄くすることができ、導電性粒子32が絶縁層21を突き破りやすくなる。
【0045】
また、補強部材35がシールドフィルム20上に導電性接着剤30によって設けられる際、導電性接着剤30がシールドフィルム20内の絶縁層21上に接着される。この接着時において、絶縁層21は、補強部材35側から加熱され、軟化されるようになっている。このように、加熱によって絶縁層21が軟化されることによって、導電性接着剤30の導電性粒子32が絶縁層21を突き破りやすくなる。そのため、絶縁層21を形成するエポキシ系などの樹脂は、補強部材35を絶縁層21上に設ける際の加熱温度で軟化される樹脂により形成されている。」

「【0061】
次に、図2(b)に示すように、シールドフィルム接着工程においては、プリント配線板10の絶縁フィルム11上に、シールドフィルム20が接着される。この接着時においては、ヒーターhによってシールドフィルム20の導電材23を加熱しながら、プレス機Pによって上下方向からプリント配線板10とシールドフィルム20とを圧着する。これにより、シールドフィルム20の導電材23がヒーターhの熱によって軟らかくなり、プレス機Pの加圧によって絶縁フィルム11上に接着されると共に、穴部40に充填される。そして、穴部40に充填された導電材23は、やがてグランド用配線パターン14と接触する。この工程により、プリント配線板10の絶縁フィルム11上にシールドフィルム20が設けられると共に、シールドフィルム20の導電層22とグランド用配線パターン14とが、導電材23を介して導通される。これにより、シールドフィルム20の導電層22とグランド用配線パターン14とが同電位に保たれ、シールドフィルム20によって、外部からの電磁波90aなどのノイズを遮蔽することができる。」

「【0068】
図4に示すように、実施例1?5および比較例1、2は、図1に示した本実施形態に係るシールドプリント配線板1と同様の構成を有するものを用いており、比較例3は、図5に示した従来のシールドプリント配線板100と同様の構成を有するものを用いている。より具体的には、補強部材とグランド用配線パターンとの接続形態において、実施例1?5および比較例1、2は、本実施形態に係るシールドプリント配線板1と同様の接続形態を有しており、比較例3のみが、従来のシールドプリント配線板100と同様の接続形態を有している。ここで、実施例および比較例に用いられたプリント配線板10、110において、ベース部材12、112の厚さは25μm、グランド用配線パターン14、114、115の厚みは18μm、接着剤層13、113の厚さは25μm、絶縁フィルム11、111の厚さは12μmとなる。また、実施例および比較例に用いられたシールドフィルム20、120において、導電材23、123の厚みは10μm、導電層22、122の厚みは0.1μm、絶縁層21、121の厚みは5μmである。また、補強部材35、135には導電性を有するニッケルメッキされたステンレス材を用い、その厚みは0.2mmである。
【0069】
さらに、実施例1?5および比較例1、2において、補強部材35を絶縁層21に接着させる導電性接着剤30の厚みは10μmであり、導電性粒子32の平均粒子径は、図4に示すように夫々設定されている。なお、実施例の導電性粒子32の平均粒子径の偏差は±5μm以下である。例えば、実施例1の場合、導電性粒子32の平均粒子径が5μmであり、補強部材35を絶縁層21に接着させた後の導電性接着剤30および導電性粒子32の厚みは10μmとなる。この実施例1の場合、導電性接着剤30の厚み(10μm)より導電性粒子32の平均粒子径(5μm)の方が小さいため、導電性粒子32は導電性接着剤30に埋もれた形で存在し、接着後の厚み(10μm)も導電性接着剤30の厚み
と同じになる。なお、実施例1の場合、偏差を考慮しても導電性粒子32の粒子径は最大で10μmとなるため、導電性粒子32は導電性接着剤30に埋もれた形で存在する。また、例えば、実施例2の場合、導電性粒子32の平均粒子径が10μmであり、補強部材35を絶縁層21に接着させた後の導電性接着剤30および導電性粒子32の厚みは10μmとなる。この実施例2の場合、導電性接着剤30の厚み(10μm)より導電性粒子32の平均粒子径(偏差を考慮すると15μm)の方が大きく、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32の突出長(5μm)は絶縁層21の厚み(5μm)と同じとなる。そのため、導電性粒子32の平均粒子径の偏差を考慮すると、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32は絶縁層21を丁度突き破り、その下の導電層22に接触している。」

・【請求項1】の記載によれば、シールドプリント配線板は、プリント配線板と、前記プリント配線板上に設けられたシールドフィルムと、を有する。
・段落【0039】の記載によれば、シールドフィルム20は、導電材23に接触状態に接着された導電層22と、導電層22上に設けられた絶縁層21と、を有している。
・段落【0040】の記載によれば、導電材23は、等方導電性および異方導電性の何れかの接着剤により形成されている。
・段落【0043】の記載によれば、。導電層22は、銅により形成され、形成方法としては、箔などがあり、膜厚は、求められるシールド効果および繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択できる。
・段落【0045】の記載によれば、導電性接着剤30がシールドフィルム20内の絶縁層21上に接着される。
・段落【0002】、【0061】の記載によれば、シールドフィルム20の導電材23が、使用時に曲げて用いられるプリント配線板10の絶縁フィルム11上に接着される。
・段落【0068】の記載によれば、実施例では、ベース部材12、112の厚さは25μm、導電材23、123の厚みは10μm、導電層22、122の厚みは0.1μm、絶縁層21、121の厚みは5μmである。
・段落【0069】の記載によれば、実施例では、導電性接着剤30の厚みは10μmである。

イ 引用発明
以上のことから、甲第2号証には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「導電材23に接触状態に接着された導電層22と、導電層22上に設けられた絶縁層21と、を有しているシールドフィルム20であって、
導電材23は、等方導電性および異方導電性の何れかの接着剤により形成され、厚みは10μmであり、
導電層22は、銅により形成され、形成方法としては、箔などがあり、膜厚は0.1μmであり、
絶縁層21の厚みは5μmであり、
厚み10μmの導電性接着剤30がシールドフィルム20内の絶縁層21上に接着され、
シールドフィルム20の導電材23が、使用時に曲げて用いられるプリント配線板10の絶縁フィルム11上に接着される
シールドフィルム。」

(3)甲第6号証
ア 甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
可撓性絶縁基板と、
前記可撓性絶縁基板上に設けられた導体パターンと、
前記可撓性絶縁基板上に設けられ、折り曲げられた際にその折り曲げ形状を保持する形状保持部と、
を備えることを特徴とするフレキシブル配線基板。
【請求項2】
前記形状保持部が塑性を有する材料からなること
を特徴とする請求項1に記載のフレキシブル配線基板。」

「【0002】
携帯電話やその他の移動体通信機器などの携帯機器は、表示媒体として液晶表示装置などの電気光学装置が必要不可欠である。このような携帯機器は、携帯性を重視するため軽量化、小型化、薄型化などの要求が厳しい。したがって、液晶表示装置などの電気光学装置にも軽量化、小型化、薄型化などが求められる。そこで、このような要求に対応するために、ポリイミド樹脂等からなる絶縁基板と、この絶縁基板の表面に形成された複数の配線を含む導体パターンや駆動用ICチップ等と、この導体パターンを絶縁基板の反対側から覆う絶縁被膜とを備えてなり、可撓性を有するフレキシブル配線基板が用いられている。」

「【0005】
そして、このような液晶表示装置は、例えば図20に示すように、フレキシブル配線基板211がフレーム205の裏面(液晶パネル201と反対側の面)に重なるように折り曲げて用いられる場合がある。しかし、この場合、絶縁基板自体の可撓性によっては折り曲げ角度が大きくなり、周縁部に大きくはみ出してしまい、液晶表示装置としての大きさがフレキシブル配線基板を使用しない場合とあまり変わらなかったり厚みが増したりするため、省スペース化、すなわち小型化、薄板化という観点から問題がある。」

「【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、折り曲げ方向の自由度が大きく、折り曲げ時の形状保持性の良好なフレキシブル配線基板を提供することを目的とする。また、このフレキシブル配線基板を用いた電気光学装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるフレキシブル配線基板は、可撓性絶縁基板と、可撓性絶縁基板上に設けられた導体パターンと、可撓性絶縁基板上に設けられ、折り曲げられた際にその折り曲げ形状を保持する形状保持部と、を備えることを特徴とする。このフレキシブル配線基板は、形状保持性を向上させてその折り曲げ形状を保持する形状保持部を有することにより、折り曲げられた際のフレキシブル配線基板の形状保持性に優れ、該フレキシブル配線基板を折り曲げるための外力を除去してもその折り曲げ形状を確実に保持することができる。したがって、このフレキシブル配線基板においては、簡略な構造により折り曲げ時の形状保持性の良好なフレキシブル配線基板を実現できるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、形状保持部が塑性を有する材料からなることを特徴とする。形状保持部が塑性を有する材料により形成されることにより、フレキシブル配線基板を折り曲げた後に該フレキシブル配線基板を折り曲げるための外力を除去しても形状保持部が塑性変形し、その折り曲げ形状を保持する。これにより形状保持部が設けられたフレキシブル配線基板自体が元の形状に戻ることが抑制され、折り曲げた形状を効果的に保持することができる。」

「【0039】
以上のような形状保持部11dは、例えば塑性を有する材料により形成される。形状保持部11dが塑性を有する材料により形成されることにより、フレキシブル配線基板11を折り曲げた後に該フレキシブル配線基板11を折り曲げるための外力を除去しても形状保持部11dが塑性変形し、その折り曲げ形状を保持する。これにより形状保持部11dが設けられたフレキシブル配線基板11自体が元の形状に戻ることが抑制され、折り曲げた形状が効果的に保持される。
【0040】
このような塑性を有する材料としては、例えば金属材料が好適であり、一例としてアルミニウム(Al)や銅(Cu)などの金属材料を用いることができる。形状保持部11dの材料としてアルミニウムのような一般的な材料を用いることにより、フレキシブル配線基板11の折り曲げ時の形状保持性の良好な形状保持部11dを容易に実現することができる。また、フレキシブル配線基板11の配線等の導体パターンは銅で形成されることが多く、形状保持部11dも銅によって形成すれば、配線とは別の位置に形状保持部11dを、配線を形成する工程と同一の工程によって形成することもできる。形状保持部11dの構成材料として金属材料を用いる場合には、スパッタリング法や蒸着法、またはエッチングによるパターニングを行うことにより容易に形状保持部11dを形成することができる。但し、形状保持部11dを金属材料により構成する場合は、形状保持部11dは配線等の導体パターンと絶縁状態に設けることが必要である。このフレキシブル配線基板11では、導体パターン上に導体パターンを絶縁基板の反対側から覆う絶縁層11cを備えるため、形状保持部11dと導体パターンとは絶縁状態が確保されているが、絶縁層11cが無い場合には導体パターンを避けて形状保持部11dを設けるか、絶縁層を介して形状保持部11dを設けることが必要である。
【0041】
また、例えば絶縁基板11aが厚み25μm程度のポリイミドフィルムからなり、形状保持部11dをアルミニウムにより形成する場合には、形状保持部11dは、例えば膜厚が0.1μm?0.5μm程度の薄膜や、膜厚が5μm?30μm程度の厚膜として構成することができる。形状保持部11dの厚みは、上述した形状保持部11dとしての機能を発揮可能な厚みであれば特に限定されるものではなく、上記のような薄膜や厚膜として構成することができる。ただし、形状保持部11dの厚みは、配線21aの厚みよりも大きいものとされる。これにより、上述した形状保持部11dの機能を有効に発揮することができる。なお、本実施例においては、絶縁基板11aの厚みが25μmとされ、形状保持部11dは、膜厚9μmのアルミニウム膜により形成している。
【0042】
そして、絶縁基板11aの可撓性が小さい場合や折り曲げ角度が小さい場合には、形状保持部11dの厚みを厚くした厚膜として形成することが好ましい。形状保持部11dの厚みを厚く形成することにより形状保持部11dの形状保持能力が大きくなるため、フレキシブル配線基板11が元の形状に戻ろうとする反発力を有効に抑制し、フレキシブル配線基板11の折り曲げ形状を確実に保持することができる。」

・【請求項1】の記載によれば、フレキシブル配線基板は、可撓性絶縁基板と、前記可撓性絶縁基板上に設けられた導体パターンと、前記可撓性絶縁基板上に設けられ、折り曲げられた際にその折り曲げ形状を保持する形状保持部と、を備える。
・段落【0039】、【0040】の記載によれば、形状保持部11dは、塑性を有する材料により形成され、フレキシブル配線基板11を折り曲げた後に該フレキシブル配線基板11を折り曲げるための外力を除去しても形状保持部11dが塑性変形し、その折り曲げ形状を保持し、塑性を有する材料としては、アルミニウム(Al)や銅(Cu)などの金属材料を用いるものである。
・段落【0041】の記載によれば、形状保持部11dをアルミニウムにより形成する場合には、形状保持部11dは、膜厚が5μm?30μm程度の厚膜として構成することができ、形状保持部11dの厚みは、形状保持部11dとしての機能を発揮可能な厚みであれば特に限定されるものではない。

イ 甲第6号証に記載された技術
以上のことから、甲第6号証には以下の技術(以下、「甲6記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「可撓性絶縁基板と、前記可撓性絶縁基板上に設けられた導体パターンと、前記可撓性絶縁基板上に設けられ、折り曲げられた際にその折り曲げ形状を保持する形状保持部と、を備えるフレキシブル配線基板において、
形状保持部11dは、塑性を有する材料により形成され、フレキシブル配線基板11を折り曲げた後に該フレキシブル配線基板11を折り曲げるための外力を除去しても形状保持部11dが塑性変形し、その折り曲げ形状を保持するものであり、塑性を有する材料としては、アルミニウム(Al)や銅(Cu)などの金属材料を用い、
形状保持部11dの厚みは、形状保持部11dとしての機能を発揮可能な厚みであれば特に限定されるものではなく、形状保持部11dをアルミニウムにより形成する場合には、形状保持部11dは、膜厚が5μm?30μm程度の厚膜として構成する」技術。

(4)甲第7号証
ア 甲第7号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「[0012] 本発明の電磁波シールド材は、銅箔と樹脂フィルムとを積層してなる銅箔複合体を長手方向に複数繋ぎ合わせてなる。通常、この長手方向は、電磁波シールド材が被シールド体の外周に巻回される際の軸方向となる。
<銅箔>
導電性が高い(純度が高い)ほどシールド性能が向上することから、銅箔の組成としては純度が高いものが好ましく、純度は好ましくは99.0%以上、より好ましくは99.8%以上とする。好ましくは屈曲性に優れる圧延銅箔がよいが、電解銅箔であってもよい。
又、銅箔の厚みを4?20μmとすると好ましく、より好ましくは4?15μmとする。」

「[0014]<電磁波シールド材>
図1は、銅箔複合体10を長手方向Lに複数繋ぎ合わせた電磁波シールド材50の構成を示す断面図である。
銅箔複合体10は、8μm厚の銅箔2と、12μm厚の樹脂フィルム(PETフィルム)4とを積層してなり、銅箔2とPETフィルム4との間には接着層3(3μm厚)が介装されている。又、銅箔2の表面には耐食性(耐塩害性)を向上させるため1μm厚のSnめっき層9が形成されている。」

「[0025]<銅箔複合体の製造>
タフピッチ銅インゴットを熱間圧延し、表面切削で酸化物を取り除いた後、冷間圧延、焼鈍と酸洗を繰り返して8μmまで薄くし、最後に焼鈍を行って加工性を確保した銅箔を得た。」

・段落[0014]の記載によれば、銅箔と樹脂フィルムとを積層した電磁波シールド材において、銅箔の表面に耐食性(耐塩害性)を向上させるためSnめっき層が形成されている。

イ 甲第7号証に記載された技術
以上のことから、甲第7号証には以下の技術(以下、「甲7記載の技術」という。)が記載されているといえる。

「銅箔と樹脂フィルムとを積層した電磁波シールド材において、銅箔の表面に耐食性(耐塩害性)を向上させるためSnめっき層を形成する」技術。

3 当審の判断
(1)甲第1号証に記載された発明に基づく容易想到性(特許法第29条第2項)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「金属層3」は「銅により形成され、金属箔を用い」るものである。そして、引用発明1の「金属層3」は「金属箔」から成り、厚さが「0.01?10μm」であるから、「金属層3」が塑性変形可能であることは明らかである。
してみると、引用発明1の「金属層3」は本件発明1の「金属層」とは、「塑性変形可能で、金属箔であり、銅を主成分とする」点で一致する。
ただし、本件発明1の「金属層」は「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔」であるのに対し、引用発明1は銅を主成分とする金属箔であるものの、厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解によるとの特定がなされていない点で相違する。

b 引用発明1は「絶縁層2の片面に金属層3と、接着剤層4とを順次設けた」ものであるから、引用発明1の「接着剤層4」は「金属層3の一方面側に形成され」たものである。また、引用発明1の「接着剤層4」は「フレキシブルプリント配線板である基体」に貼付される「厚さは、5μmから30μm」ものである。
してみると、引用発明1の「接着剤層4」は本件発明1の「接着剤層」と、「前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが3μm以上である」点で一致する。
ただし、本件発明1の「接着剤層」は厚みが「15μm以下」であるのに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

c 引用発明1の「シールドフィルム1」は「金属層3と、接着剤層4とを順次設けた」ものである。そして、上記bで検討したことより、引用発明1の「接着剤層4」は「金属層3をフレキシブルプリント配線板の基体に貼付」しているといえる。
したがって、引用発明1の「シールドフィルム1」は「金属層3を接着剤層4によりフレキシブルプリント配線板に貼付する」ものといえ、本件発明1の「シールドフィルム」と「前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を」「接着する」点で一致する。
ただし、本件発明1の「シールドフィルム」は「形状保持シールドフィルム」であり「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する」のに対し、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。

すると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「塑性変形可能で、金属箔であり、銅を主成分とする金属層と、
前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが3μm以上である接着剤層と、
を備え、
前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を接着するシールドフィルム。」

〈相違点1〉
金属層が、本件発明1では「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする」ものであるのに対し、引用発明1は銅を主成分とする金属箔であるものの、厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解によるとの特定がなされていない点。

〈相違点2〉
接着剤層が、本件発明1では「厚みが」「15μm以下である」のに対し、引用発明1はそのような特定がなされていない点。

〈相違点3〉
シールドフィルムが、本件発明1では「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する形状保持」シールドフィルムであるのに対して、引用発明1はそのような特定がなされていない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点1について検討する。
甲第6号証には、形状保持部をアルミニウムや銅により形成し、アルミニウムにより形成する場合には、膜厚を5?30μmとする甲6記載の技術が開示されているものの、形状保持部を銅により形成した場合に如何なる膜厚とするかは記載されていない。
よって、甲第6号証には、「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする」構成が、記載または示唆されているとはいえない。
また、甲第2号証にも、「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする」構成は、記載または示唆されていない。

したがって、引用発明1に甲第2号証に記載の技術的事項、甲第6号証に記載された技術事項を適用しても、上記相違点1に係る本件発明1の構成を導き出すことはできない。

そして、本件特許明細書の【表1】および図8によれば、厚みが1μmまたは2μmであって圧延加工又は電解による銅の金属箔を上面又は両面に形成したものでは戻り角が63?102度であるのに対し、厚みが5μmまたは6μmであって圧延加工又は電解による銅の金属箔を上面又は両面に形成したものでは戻り角が5?31度であるから、金属層を本件発明1のように「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分」としたものは、厚みが1μmまたは2μmの金属層を上面又は両面に形成したものに対し、変形した状態で形状保持する機能に優れたものであるといえる。

よって、本件発明1は、相違点2,3について検討するまでもなく、引用発明1並びに甲第2号証に記載の技術的事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人日向ヨシ子(以下、「特許異議申立人」という。)は、令和1年12月23日付けの意見書において、本件発明1について、概略、次のように主張をしている。

「一般に剛性(ヤング率)の小さな金属として知られたアルミニウムが5μmの厚みで形状保持機能を有するのであれば、剛性がそれ以上である銅が、同じ厚みでアルミニウム以上の形状保持機能を有するであろうことは、当業者であれば当然に理解することである(甲第13号証:岩波理化学辞典第4版)。したがって、アルミニウムについて好ましい厚みを銅に適用することは十分に動機づけられることであり、反対に、銅への適用を阻害する要因はないと言わざるを得ない。」(第3頁第22-28行)
「金属層の厚みが5?6μmの場合に、『戻り角度が飛躍的に小さくなる』との実験結果は、特定の1条件下において偶然得られたものに過ぎないのであり、これが、フレキシブル配線板や接着剤層構成が如何なる場合であっても、普遍的に再現される結果であるとは、当業者は到底推認することができない。フレキシブル配線板自体も金属回路層を含み一定の剛性を備えた、形状保持機能を有するものであるから、例えば、その配線板自体の持つ形状保持機能が大きいときに、本件実施例の特定の実験体の場合と同様な効果が得られるとする根拠は存在しない。これに対し、本件訂正発明1は、実施例の試験体の構成に特定されたものではない。したがって、特許権者の主張する、銅の厚みが5?6μmの範囲内では、他の厚みの場合に対して顕著に形状保持性が優れているという効果は、本件訂正発明1の特許請求の範囲全体の効果を示したものと認めることはできない(平成30年(行ケ)第10145号参照)。」(第4頁第13-24行)

上記主張について検討する。
ヤング率とは縦弾性係数とも呼ばれる、弾性変形におけるひずみと応力の比例定数である。
これに対し、形状保持の機能は、物質に応力を作用させ塑性変形を起こした場合に、応力を取り除いても変形が元に戻らないことにより得られるものである。
そして、弾性変形に関する定数であるヤング率より、弾性変形とは異なる変形である塑性変形に基づく機能である形状保持機能の有無を判断し得るものとは認められない。
したがって、剛性(ヤング率)の小さな金属として知られたアルミニウムが5μmの厚みで形状保持機能を有するのであれば、剛性がそれ以上である銅が、同じ厚みでアルミニウム以上の形状保持機能を有するとはいえず、アルミニウムについて好ましい厚みを銅に適用することは十分に動機づけられるとする主張は、当を得たものではない。

ポリイミドの基体から成るフレキシブル配線板は極めて一般的なものであるから、フレキシブル配線板を模擬する特定の実験体としてポリイミドフィルムを用い実験を行った本件明細書に記載された実施例により本件発明の作用効果を確認することは十分可能であるといえる。
そして、実験に用いたポリイミドフィルムは金属回路層等を有さないため、実験に用いたポリイミドフィルム自体の持つ形状保持機能はフレキシブル配線板と異なるとしても、実験は同一のポリイミドフィルムに対して各種形状保持フィルムを形成して行っているのであるから、ポリイミドの基体から成るフレキシブル配線板に各種形状保持フィルムを形成した場合も、同様の特性の傾向を示すものと当業者は理解し得るものと認められる。
したがって、本件明細書に記載された実施例と同様の効果が、本件訂正発明1の効果を示したものと認めることはできないとはいえない。

また、上記(イ)で述べたように、金属層を「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分」としたものは、厚みが1μmまたは2μmの金属層を上面又は両面に形成したものに対し、変形した状態で形状保持する機能に優れたものであるといえ、金属層を「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分」とする構成により一定の作用効果を奏するものと推認でき、当該構成に技術的意義が認められないとはいえない。

以上のことより、上記主張を採用することはできない。

イ 本件発明3-5、8-9について
本件発明1を引用する本件発明3-5に係る特許も本件発明1と同様に、引用発明1並びに甲第2号証に記載の技術的事項及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明3-5は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

また、甲第7号証にも、「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする」構成は、記載または示唆されていない。
したがって、本件発明1を引用する本件発明8-9に係る特許も本件発明1と同様に、引用発明1並びに甲第2号証に記載の技術的事項、甲第6号証に記載された技術事項及び甲第7号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明8-9は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

(2)甲第2号証に記載された発明に基づく容易想到性(特許法第29条第2項)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。
a 引用発明2の「導電層22」は「銅により形成され、形成方法としては、箔などがあり、膜厚は0.1μm」であるから、「導電層22」が塑性変形可能であることは明らかである。
してみると、引用発明2の「導電層22」は本件発明1の「金属層」と、「塑性変形可能で、金属箔であり、銅を主成分とする」点で一致する。
ただし、本件発明1の「金属層」は「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔」であるのに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。

b 引用発明2は「導電材23に接触状態に接着された導電層22と、導電層22上に設けられた絶縁層21と、を有している」ものであるから、引用発明2の「導電材23」は「導電層22の一方面側に形成され」たものである。また、引用発明2の「導電材23は、等方導電性および異方導電性の何れかの接着剤により形成され、厚みは10μm」のもので、「使用時に曲げて用いられるプリント配線板10の絶縁フィルム11上に接着される」ものである。
してみると、引用発明2の「導電材23」は本件発明1の「接着剤層」と、「前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが3μm以上であり、かつ15μm以下である」点で一致する。

c 引用発明2の「シールドフィルム20」は「導電材23に接触状態に接着された導電層22」を有しているものである。そして、引用発明2は、「導電材23が、使用時に曲げて用いられるプリント配線板10の絶縁フィルム11上に接着される」ものである。
したがって、引用発明2の「シールドフィルム20」は「導電層22を導電材23により使用時に曲げて用いられるプリント配線板10に接着する」ものといえ、本件発明1の「シールドフィルム」と「前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を」「接着する」点で一致する。
ただし、本件発明1の「シールドフィルム」は「形状保持シールドフィルム」であり「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する」のに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。

すると、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「塑性変形可能で、金属箔であり、銅を主成分とする金属層と、
前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが3μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層と、
を備え、
前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を接着するシールドフィルム。」

〈相違点4〉
金属層が、本件発明1では「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする」ものであるのに対し、引用発明1は銅を主成分とする金属箔であるものの、厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解によるとの特定がなされていない点。

〈相違点5〉
シールドフィルムが、本件発明1では「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する形状保持シールドフィルム」のに対して、引用発明1はそのような特定がなされていない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
甲第6号証には、形状保持部をアルミニウムや銅により形成し、アルミニウムにより形成する場合には、膜厚を5?30μmとする甲6記載の技術が開示されているものの、形状保持部を銅により形成した場合に如何なる膜厚とするかは記載されていない。
よって、甲第6号証には、「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする」構成が、記載または示唆されているとはいえない。

したがって、引用発明2に甲第6号証に記載された技術事項を適用しても、上記相違点4に係る本件発明1の構成を導き出すことはできない。

そして、本件特許明細書の【表1】および図8によれば、厚みが1μmまたは2μmであり、圧延加工又は電解による銅の金属箔を上面又は両面に形成したものでは戻り角が63?102度であるのに対し、厚みが5μmまたは6μmであり、圧延加工又は電解による銅の金属箔を上面又は両面に形成したものでは戻り角が5?31度であるから、金属層を本件発明1のように「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分」としたものは、厚みが1μmまたは2μmの金属層を上面又は両面に形成したものに対し、変形した状態で形状保持する機能に優れたものであるといえる。

よって、本件発明1は、相違点5について検討するまでもなく、引用発明2及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和1年12月23日付けの意見書において、本件発明1について、概略、次のように主張をしている。

「上記引用発明1-1との対比において述べたと同じ理由により、本件訂正発明1は、引用発明2-1に基づいても、当業者が容易になし得た発明である。」(第6頁第22-23行)

しかしながら、上記「(1)ア(ウ)」で検討したように、請求人の主張を採用することはできない。

イ 本件発明3-5について
本件発明1を引用する本件発明3-5に係る特許も本件発明1と同様に、引用発明2及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明3-5は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

ウ 本件発明6について
(ア)対比
本件発明6と引用発明2とを対比する。
a 引用発明2の「導電層22」は「銅により形成され、形成方法としては、箔などがあり、膜厚は0.1μm」であるから、「導電層22」が塑性変形可能であることは明らかである。
してみると、引用発明2の「導電層22」は本件発明6の「金属層」と、「塑性変形可能である」点で一致する。
ただし、本件発明6の「金属層」は「厚みが1μm以上であり、かつ6μm以下である」であるのに対し、引用発明2は「膜厚は0.1μm」である点で相違する。

b 引用発明2は「導電材23に接触状態に接着された導電層22と、導電層22上に設けられた絶縁層21と、を有している」ものであるから、引用発明2の「導電材23」は「導電層22の一方面側に形成され」たものである。また、引用発明2の「導電材23は、等方導電性および異方導電性の何れかの接着剤により形成され、厚みは10μm」のもので、「使用時に曲げて用いられるプリント配線板10の絶縁フィルム11上に接着される」ものである。
してみると、引用発明2の「導電材23」は本件発明6の「接着剤層」とは、「前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である」点で一致する。

c 引用発明2の「シールドフィルム20」は「導電材23に接触状態に接着された導電層22」を有しているものである。そして、引用発明2は、「導電材23が、使用時に曲げて用いられるプリント配線板10の絶縁フィルム11上に接着される」ものである。
したがって、引用発明2の「シールドフィルム20」は「導電層22を導電材23により使用時に曲げて用いられるプリント配線板10に接着する」ものといえ、本件発明6の「シールドフィルム」と「前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を」「接着する」点で一致する。
ただし、本件発明6の「シールドフィルム」は「形状保持シールドフィルム」であり「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する」のに対し、引用発明2はその旨特定されていない点で相違する。

d 引用発明2の「シールドフィルム20」は「導電材23に接触状態に接着された導電層22と、導電層22上に設けられた絶縁層21と、を有している」ものであるから、「導電層22」には「導電材23」側とは反対の一方面側に「絶縁層21」を有しているといえる。そして、引用発明2の「導電性接着剤30」は「シールドフィルム20内の絶縁層21上に接着」されるものであるから、「導電層22には、導電材23側とは反対の一方面側に絶縁層21が形成されたシールドフィルム20内の該絶縁層21上に接着」されたものである。
してみれば、引用発明が「厚み10μmの導電性接着剤30」を有することは、本願発明6の「前記接着剤層側とは反対の一方面側に、厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層が更に形成されている」点で一致する。
ただし、本件発明6の「更に形成されている」「接着剤層」は「前記金属層」に形成されているのに対し、引用発明2の「導電性接着剤30」は「シールドフィルム20内の絶縁層21上」に形成されるものである点で相違する。

すると、本件発明6と引用発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。
〈一致点〉
「塑性変形可能である金属層と、
前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層と、
を備え、
前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を接着するシールドフィルムであり、
前記接着剤層側とは反対の一方面側に、厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層が更に形成されている、シールドフィルム。」

〈相違点6〉
金属層が、本件発明6では「厚みが1μm以上であり、かつ6μm以下である」のに対し、引用発明2は膜厚は0.1μmである点。

〈相違点7〉
シールドフィルムが、本件発明6では「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する形状保持」シールドフィルムであるのに対して、引用発明2はそのような特定がなされていない点。

〈相違点8〉
「更に形成されている絶縁層」が、本件発明6では「前記金属層」に形成されているのに対し、引用発明2は「シールドフィルム20内の絶縁層21上」に形成されるものである点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点8について検討する。
甲第2号証の【請求項1】の「・・・導電層と、当該導電層上に設けられた絶縁層と、を備え、前記プリント配線板上に設けられたシールドフィルムと、・・・補強部材と、を有するシールドプリント配線板であって、前記補強部材は、球状の導電性粒子を含んだ導電性接着剤により前記絶縁層上に接着」なる記載を考慮すると、引用発明2の「導電性樹脂30」は、「シールドフィルム20」に「補強部材」を接着する際に「シールドフィルム20」の「絶縁層」上に設けられるものであり、「シールドフィルム20」自体を構成するものとはいえない。
したがって、本件発明の「形状保持シールドフィルム」と引用発明2の「シールドフィルム」は、その層構造が異なるものである。
また、本件発明6は「前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、・・・接着剤層が更に形成されている」のに対し、引用発明2の「導電性接着剤30」は「絶縁層21」上に形成されるものであるから、この点でも、本件発明6の「形状保持シールドフィルム」と引用発明2の「シールドフィルム」は、その層構造が異なるものである。
そして、当該層構造の構成は、甲第6号証には記載または示唆されていない。

したがって、引用発明2に甲第6号証に記載された技術事項を適用して、上記相違点8に係る本件発明6の構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

よって、本件発明6は、その他の相違点について検討するまでもなく、引用発明2及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和1年12月23日付けの意見書において、本件発明1について、概略、次のように主張をしている。

「例えば甲第2号証の図3(d)は、導電性接着剤30付きのシールドフィルム20を具体的に示しており、この導電性接着剤30をシールドフィルム20の一構成として把握して、導電性接着剤30を含むシールドフィルムと認定することは極めて自然なことである。本件明細書には、本件訂正発明6において、「他方の接着剤層で電子機器の筐体内の他の場所に接着可能である。」(段落0017)ことが記載されているが、貼り付け対象が補強部材であるか、電子機器の筐体内の他の場所であるかは、導電性接着剤付きのシールドフィルムを認定する際に無関係な事項である。また、本件訂正発明6において、「前記接着剤層とは反対の一方面側」にある「接着剤層」が、金属層の全てを覆う大きさで存在するなどとは何ら規定されていない。」(第8頁第5-14行)
「導電性粒子32は導電性接着剤30を構成する一要素であり、その一要素が導電層22と接触して導通しているのであるから(甲第2号証請求項1等)、現に、導電性接着剤30は導電層22に形成されていると言わざるを得ない。ここで、本件明細書には、金属層3と接着剤層4、4’とからなる形状保持フィルム1Dを示す【図6A】と、金属層3と保護層2と接着剤層4、4’とからなる形状保持フィルム1Eを示す【図6B】とが添付されており、『図6Aで示す形状保持型フレキシブル配線板10Dにおける形状保持フィルム1Dのように、保護層2に代えて接着剤層4’が更に形成されてもよい。また、図6Bで示す形状保持型フレキシブル配線板10Eにおける形状保持フィルム1Eのように、保護層2の上に接着剤層4’が更に形成されていてもよい。』(段落0067)と説明されている。上記特許権者の主張は、本件訂正発明6の形状保持シールドフィルムは、【図6A】のものであり【図6B】の形状保持シールドフィルム1Eを含むものではないことを前提とした主張であると思料するが、そもそも、本件訂正発明6は、『金属層は、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、・・・接着剤層が更に形成されている』と規定されるのであるから、【図6B】の形状保持シールドフィルム1Eを除外するフィルムであると一義的に理解することはできない。また、【図6A】の形状保持シールドフィルムであると特定したとしても、上述の理由により金属層と接触して導通された接着剤層を備える甲第2号証のシールドフィルムの構成が除外されているとも言えない。」(第8頁第23行-第9頁11行)

上記主張について検討する。
上記(イ)において検討したように、引用発明2の「導電性樹脂30」は、「シールドフィルム20」に「補強部材」を接着する際に「シールドフィルム20」の「絶縁層」上に設けられるものであり、「シールドフィルム20」自体を構成するものとはいえないから、「導電性接着剤30」を「シールドフィルム20」の一構成ということはできない。
また、本件発明6は「前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、・・・接着剤層が更に形成されている」、すなわち、「金属層」に「接着剤層が更に形成されている」ものであるのに対し、引用発明2の「導電性接着剤30」は「シールドフィルム20内の絶縁層21上」接着されるものであり、「導電層22」に接着されるものではない。
ここで、引用発明の「導電性樹脂層30」を構成する「導電性粒子32」は「導電層22」と接触して導通する、すなわち、「導電性接着剤30」の構成の一部が「導電層22」に接触するものであるが、当該接触は、甲第2号証の段落【0063】-【0064】に「導電性接着剤接着工程においては、シールドフィルム20の絶縁層21上に、導電性接着剤30が接着される。」「次に、・・・補強部材接着工程においては、導電性接着剤30上に、補強部材35が接着される。この接着時においては、ヒーターhによって導電性接着剤30を加熱しながら、緩衝材60を介してプレス機Pによって上下方向からプリント配線板10に設けられたシールドフィルム20と補強部材35とを圧着する。これにより、導電性接着剤30の接着剤31がヒーターhの熱によって軟らかくなり、プレス機Pの加圧によって導電性粒子32が接着剤31から突出する。そして、導電性接着剤30から突出した導電性粒子32は、ヒーターhの熱によって軟らかくなった絶縁層21をプレス機Pの加圧によって突き破り、やがて導電層22と接触する。」と記載されるように、「シールドフィルム20」に「導電性接着剤30」を接着した後に、「補強部材35」を接着する際に加熱・加圧することに生じるものである。
したがって、「接着剤層30」が「シールドフィルム20」の一構成であると解したとしても、「補強部材35」と接着される前の「シールドフィルム20」単体では、「接着剤層30」は「導電層22」に形成されたものではない。
以上のことより、上記主張を採用することはできない。

エ 本件発明7-9について
本件発明6を引用する本件発明7に係る特許も本件発明6と同様に、引用発明2及び甲第6号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明7は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

また、甲第7号証にも、「前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、」「接着剤層が更に形成されている」構成は、記載または示唆されていない。
したがって、本件発明6を引用する本件発明8-9に係る特許も本件発明6と同様に、引用発明2並びに甲第6号証に記載された技術事項及び甲第7号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明8-9は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第2項について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第3号証及び甲第4号証に記載されるとおり、繰り返し折り曲げ使用されるフレキシブル配線基板用途において要求される可撓性を確保するために、金属層(金属箔)を厚みを1μm?5μmの範囲とすることは周知である。」(第19頁第8-10行)、「甲第5号証及び甲第6号証に示されるとおり、フレキシブル配線基板は折り曲げて使用されることがあり、その場合には折り曲げ形状を保持する必要性があって、折り曲げ形状保持のために5μm等の厚みの塑性金属層が用いられることは、本件優先日以前の周知の技術である。」(第20頁第7-10行)と主張し、甲第3-5号証を、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に組み合わせる周知技術を例示する証拠として挙げている。
しかしながら、甲第3号証(特開2009-176853号公報)の段落【請求項1】、【0015】、【0031】、甲第4号証(特開2009-246121号公報)の段落【請求項1】、【0016】、【0052】、甲第5号証(特開2006-66525号公報)の段落【請求項1】、【0002】、【0006】、【0007】、【0011】には、相違点1、相違点4に係る構成である、金属層を「厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする」構成は、記載または示唆されていない。
また、甲第3-5号証の上記段落には、相違点8に係る構成である、「前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、・・・接着剤層が更に形成されている」構成は、記載または示唆されていない。
そして、甲第3-5号証には、他に上記相違点1、4、8に係る構成を示すあるいは示唆する記載はない。
したがって、本件発明1、3-9は、甲第1-7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。
よって、本件発明1、3-9は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとは言えない。

なお、特許異議申立人が令和1年8月23日の意見書に添付した甲第8号証ないし甲第12号証、令和1年12月23日の意見書に添付した甲第13号証にも、上記相違点1、4、8に係る構成を示すあるいは示唆する記載はない。

2 特許法第36条第6項第2号について
特許異議申立人は、特許異議申立書、令和1年8月23日の意見書及び令和1年12月23日の意見書において、概略、本件特許発明1及び9は、「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持する」との「形状保持性」を一構成とする発明であるが、両発明における「変形した状態で形状保持する」とは具体的に、いかなる特性又は現象を意味するものであるのか不明であり、本件明細書を参照しても、その定義規定は見当たらない旨主張するとともに、特許異議申立書において、本件特許発明1において発明の一構成である「形状保持性」なる特性が定まらず、かつ、いかなるフレキシブル配線板を形状保持することができる形状保持シールドフィルムであるかも不明であるので、本件特許発明1の外延は著しく不明であり、また、同じことが本件特許発明9にも該当する旨主張している。
また、特許異議申立人は、令和1年8月23日の意見書において、「本件明細書の実施例及び比較例・・・の記載を参照したとしても、この戻り角度が何度以下のものが本件訂正発明の技術的範囲に属し、あるいは何度以上であれば属さないのか、その境界値ついて当業者は判断することができない。したがって、当業者は本件訂正発明の技術的範囲を確定することができず、本件訂正発明1?9は不明確である」(第9頁第13-20行)と主張している。

しかしながら、「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持する」とはフレキシブル配線板が変形した状態を維持しようとする特性を表していることは、その語意から明らかである。
そして、本件発明1、3-9の「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持する」との発明特定事項は、「形状保持シールドフィルム」または「形状保持シールドフィルム」が接着された「形状保持シールドフレキシブル配線板」が程度の多少に関わらず上記特性を有するという効果を単に表しているにすぎない。
また、本件明細書には、試験体としてポリイミドフィルムを用いた試験を行ったことが記載されているところ、ポリイミドの基体から成るフレキシブル配線板は極めて一般的なものであるから、「変形した状態で形状保持する」対象の「フレキシブル配線板」は通常用いられる一般的なフレキシブル配線板を想定していることは明らかである。
したがって、本件発明1、3-9の「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持する」との発明特定事項は、通常用いられる一般的なフレキシブル配線板が変形した状態を維持しようとする特性を「形状保持シールドフィルム」または「形状保持シールドフィルム」が接着された「形状保持シールドフレキシブル配線板」が有していることを表しているものとして明らかであり、明確でないとすることはできない。
よって、請求項1、3-9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるとはいえない。

3 特許法第36条第6項第1号について
特許異議申立人は、特許異議申立書、令和1年8月23日の意見書及び令和1年12月23日の意見書において、概略、「厚み50μmのポリイミドフィルム」に対しては、該フィルムの戻り角度が小さくなるという効果が本件明細書に示されていても、これをもって、本件特許発明が、様々なフレキシブル配線板に対して有効な効果を奏する発明であるのかは当業者には推認することができず、本件発明は、明細書のサポート要件に適合するということはできない旨主張している。
また、特許異議申立人は、令和1年8月23日の意見書において、「接着剤層の厚みも形状保持特性に寄与するとのことであるので、接着剤層の厚みが10μmではなく20μmであっても同じ効果が奏されるのか、この点も甚だ不明であり、さらに、接着剤層の材料の選択によってシールドフィルムの形状保持性が変わることも、当業者であれば当然に認識することである。したがって、本件訂正発明は、本件明細書において発明の効果を当業者が推認できるように記載された発明ではない。」(第10頁第12-18行)と、令和1年12月23日の意見書において、「本件明細書の実施例で、一つの試験体サンプルに対して偶然に得られた測定結果をもって、それが臨界的意義を有するとして、本件訂正発明の特許請求の範囲全体において奏される効果であると認識できないことは必然である。したがって、本件訂正発明は、本件明細書において発明の効果を当業者が推認できるように記載された発明ではなく、明細書のサポート要件を満たさない。」(第11頁第1-6行)と主張している。

しかしながら、本件明細書には、試験体としてポリイミドフィルムを用いた試験を行ったことが記載されているところ、ポリイミドの基体から成るフレキシブル配線板は極めて一般的なものであるから、通常用いられる一般的なフレキシブル配線板に「形状保持シールドフィルム」を接着した場合に、「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持する」効果が得られることを、当業者は理解し得る。
そして、本件発明1、3-9の「フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持する」との発明特定事項は、フレキシブル配線板が変形した状態を維持しようとする特性を、「形状保持シールドフィルム」または「形状保持シールドフィルム」が接着された「形状保持シールドフレキシブル配線板」が有していることを表すものであり、特段の規定がなされていない場合、当該形状保持されるフレキシブル配線板は、通常使用されるフレキシブル配線板と解するのが自然である。
してみれば、請求項1、3-9に係る発明は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものとはいえず、特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、請求項1、3-9に係る特許は、平成31年4月26日付けの取消理由通知及び令和1年9月18日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、3-9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人日向ヨシ子による特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論とのとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性変形可能で、厚みが5μm以上であり、かつ6μm以下であり、圧延加工又は電解による金属箔であり、銅を主成分とする金属層と、
前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが3μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層と、
を備え、
前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する形状保持シールドフィルム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記金属層が圧延加工により形成されている、
請求項1に記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項4】
前記接着剤層は、導電性を有している、
請求項1又は3に記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項5】
前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、厚みが1μm以上、かつ10μm以下である保護層が形成されている、
請求項1、3、又は4に記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項6】
塑性変形可能で、厚みが1μm以上であり、かつ6μm以下である金属層と、
前記金属層の一方面側に形成され、フレキシブル配線板に接着される厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層と、
を備え、
前記金属層と前記接着剤層により、前記フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着する形状保持シールドフィルムであり、
前記金属層には、前記接着剤層側とは反対の一方面側に、厚みが2μm以上であり、かつ15μm以下である接着剤層が更に形成されている、形状保持シールドフィルム。
【請求項7】
前記金属層の前記接着剤層側とは反対の一方面側に形成された接着剤層が導電性を有している、
請求項6に記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項8】
前記金属層は、耐食性表面処理が施されたものである、
請求項1及び3から7の何れかに記載の形状保持シールドフィルム。
【請求項9】
請求項1及び3から8の何れかに記載の形状保持シールドフィルムと、前記フレキシブル配線板とが、前記接着剤層により前記フレキシブル配線板を変形した状態で形状保持するように接着された、
形状保持型シールドフレキシブル配線板。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-14 
出願番号 特願2015-519752(P2015-519752)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H05K)
P 1 651・ 537- YAA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 山田 正文
石坂 博明
登録日 2018-07-13 
登録番号 特許第6368711号(P6368711)
権利者 タツタ電線株式会社
発明の名称 形状保持シールドフィルム、及びこの形状保持シールドフィルムを備えた形状保持型シールドフレキシブル配線板  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  
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代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
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