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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  H04M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04M
管理番号 1361500
異議申立番号 異議2019-700117  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-14 
確定日 2020-03-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6382356号発明「腕時計、移動端末、通信提示システム及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6382356号の請求項9に係る特許を取り消す。 同請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6382356号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成29年1月4日(パリ条約による優先権主張2016年10月28日、台湾(TW))に出願され、平成30年8月10日にその特許権の設定登録がされ、同年8月29日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1?9に係る特許について、平成31年2月14日に特許異議申立人越川真紀による特許異議の申立てがされ、そのうち請求項9に係る特許について、令和1年5月27日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。

第2 本件発明
「【請求項1】
通信提示システムであって、
通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースを提供し、当該通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースは、通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供し、
ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選んだ、通信及びコミュニティソフトと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先とを選別データとして記憶し、新しい着信又は新しい情報を受信すると、前記新しい着信又は前記新しい情報を伝送した伝送者を前記選別データと比較し、前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする移動端末と、
提示情報を提供するためのウェアラブルデバイスと、を備え、
前記ウェアラブルデバイスは、無線通信方式で前記移動端末の発した前記要求提示信号を受信することによって、前記提示情報を発する通信提示システム。
【請求項2】
前記移動端末は、前記ユーザーに提示モードを選択させるための提示モード選択インターフェースを提供する請求項1に記載の通信提示システム。
【請求項3】
前記移動端末は、前記新しい着信又は前記新しい情報の出所タイプを判断し、異なる出所タイプに基づいて異なる要求提示信号を発生し、前記ウェアラブルデバイスが異なる提示情報を発生するようにする請求項1に記載の通信提示システム。
【請求項4】
前記ウェアラブルデバイスは、腕時計又は腕輪を含む請求項1に記載の通信提示システム。
【請求項5】
前記腕時計又は腕輪は、
前記移動端末の送信した前記要求提示信号を受信するように前記移動端末と無線通信する無線通信モジュールと、
前記無線通信モジュールから伝送される前記要求提示信号を受信することによって制御命令を発生するプロセッサユニットと、
前記プロセッサユニットの前記制御命令により制御され、前記制御命令を受信した時、前記提示情報を発する提示器と、
を備える機能モジュールを含む請求項4に記載の通信提示システム。
【請求項6】
前記提示情報は振動提示情報を含む請求項1に記載の通信提示システム。
【請求項7】
ディスプレイを含む移動端末であって、
前記ディスプレイに表示され、
通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供する、通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースと、
ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選んだ、通信及びコミュニティソフトと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先とを選別データとして記憶するための記憶手段と、
前記移動端末が新しい着信又は新しい情報を受信した時、前記新しい着信又は前記新しい情報を伝送した伝送者を前記選別データと比較する比較手段と、
前記移動端末は前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする無線信号送受信機と、
を含む移動端末。
【請求項8】
前記ディスプレイ上に表示され、提示モードを前記ユーザーに選択させる提示モード選択インターフェースをさらに備える請求項7に記載の移動端末。
【請求項9】
ダイアルと、少なくとも一つの実体針と、ムーブメントとを備え、前記ダイアル上には実体の時間目盛りが設けられ、前記実体針は前記ダイアルの上方に設けられ、前記ムーブメントは前記実体針を駆動するためのものであり、さらに、前記実体針は前記ダイアル上の時間目盛りと合わせて時間情報を表示する腕時計であって、機能モジュールをさらに含み、前記機能モジュールは、
要求提示信号を受信する無線通信モジュールと、
前記無線通信モジュールから伝送される前記要求提示信号を受信して、制御命令を生じるプロセッサユニットと、
前記プロセッサユニットの前記制御命令により制御され、前記制御命令を受信した時、提示情報を発する提示器と、を少なくとも含み、
前記無線通信モジュールは、請求項7又は8に記載された移動端末の新しい着信又は新しい情報の出所タイプによって発生した異なる要求提示信号を受信し、前記提示器は、これらの異なる要求提示信号に応じて、異なる提示情報を生じさせる腕時計。」

第3 取消理由の概要
当審が令和1年5月27日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1:請求項9に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、本件特許の優先日後に出願公開された特願2016-11641号(特開2017-133858号(以下、「甲第1号証」という。))の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許の優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の優先日の時において、その出願人が本件特許の優先日前の上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
理由2:請求項9に係る発明は、特開2013-172235号公報(以下、「甲第3号証」という。)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してしてされたものである。
理由3:請求項9に係る発明は、特開2013-172235号公報(「甲第3号証」)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第4 当審の判断
1 理由1について
(1)引用文献の記載
取消理由で通知した、甲第1号証(特願2016-11641号(特開2017-133858号))には、段落[0001]?[0009]、段落[0034]?[0059]、図1?3を参照すると、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「文字板10と、時刻を示す指針である秒針21、分針22及び時針23を備え(【0035】)、文字板には円周上に12の長方形が表記され(図1)、文字板の上方に設けられている秒針等を駆動する機構を有し(【0037】)、アナログ時計の外観を有する電子腕時計(【0034】)であって、時計通信部と通知部を含み、時計通信部は携帯端末の端末通信部と無線通信を行うものであり(【0039】)、通知部が備える運針部は時計通信部で受信した判断結果及び通知態様に従って指針位置及び指針動作を行い、秒針により電子メール受信表示や電話着信表示を指すことでユーザへの通知が行われる(【0047】)、電子腕時計。」

(2)対比、判断
請求項9に係る発明(以下、「本件発明9」という。)と、甲1発明を対比する。
・甲1発明の「文字板10」、「時刻を示す指針である秒針21、分針22及び時針23」は、本件発明9の「ダイアル」、「少なくとも一つの実体針」にそれぞれ相当する。
・甲1発明の、アナログ時計の外観を有する電子腕時計における円周上の12の長方形は、本件発明9の、「実体の時間目盛り」であり、時刻を示す指針である秒針、分針及び時針である「実体針」と合わさって「時間情報を表示」するものといえる。
・甲1発明の「秒針等を駆動する機構」は、腕時計において一般にムーブメントと呼ばれるものであり、当該構成について、本件発明9と差異はない。
・甲1発明の「時計通信部と通知部」は、本件発明9の「機能モジュール」に相当し、さらに甲1発明の「時計通信部」は、本件発明9の「無線通信モジュール」に相当する。
・甲1発明の時計通信部で受信する「判断結果及び通知態様」は、本件発明9の「要求提示信号」に相当する。
・甲1発明の「指針位置及び指針動作」、「通知部が備える運針部」は、本件発明9の「提示情報」、「提示器」にそれぞれ相当する。
・甲1発明の「判断結果及び通知態様に従って」、「秒針により電子メール受信表示や電話着信表示を指すこと」について、電子メール受信と電話着信は、いずれも本件発明9の「移動端末の新しい着信又は新しい情報の出所タイプ」に対応する。甲1発明において、電子メール受信表示と電話着信表示の指針位置は異なる位置であるから、異なる提示情報を生じさせており、本件発明9の「出所タイプによって異なる提示情報を生じさせること」と差異はない。また、甲1発明において、判断結果及び通知態様に従って、異なる表示を行うことから、「判断結果及び通知態様」は異なっているといえる。
・甲1発明の「携帯端末」と本件発明9の「移動端末」は、「端末」である点で一致する。

そうしてみると、本件発明9と甲1発明は、
「ダイアルと、少なくとも一つの実体針と、ムーブメントとを備え、前記ダイアル上には実体の時間目盛りが設けられ、前記実体針は前記ダイアルの上方に設けられ、前記ムーブメントは前記実体針を駆動するためのものであり、さらに、前記実体針は前記ダイアル上の時間目盛りと合わせて時間情報を表示する腕時計であって、機能モジュールをさらに含み、前記機能モジュールは、
要求提示信号を受信する無線通信モジュールと、
無線通信モジュールから伝送される前記要求提示信号を受信して、提示情報を発する提示器と、を少なくとも含み、
前記無線通信モジュールは、端末の新しい着信又は新しい情報の出所タイプによって発生した異なる要求提示信号を受信し、前記提示器は、これらの異なる要求提示信号に応じて、異なる提示情報を生じさせる腕時計。」
である点で一致し、

次の点で、一応相違する。
相違点1:「端末」について、本件発明9は、「請求項7又は8に記載された移動端末」、具体的には、移動端末は、請求項7に記載の
「 ディスプレイを含む移動端末であって、
前記ディスプレイに表示され、
通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供する、通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースと、
ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選んだ、通信及びコミュニティソフトと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先とを選別データとして記憶するための記憶手段と、
前記移動端末が新しい着信又は新しい情報を受信した時、前記新しい着信又は前記新しい情報を伝送した伝送者を前記選別データと比較する比較手段と、
前記移動端末は前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする無線信号送受信機と、
を含む」移動端末であるのに対し、甲1発明には、携帯端末が当該構成を有することは、明記されていない点。

相違点2:本件発明9において、機能モジュールは、「要求提示信号を受信して、制御命令を生じるプロセッサユニット」を含み、「前記プロセッサユニットの前記制御命令により」提示器を制御するのに対して、甲1発明は、当該構成を有していない点。

当該相違点について検討する。
相違点1について、
相違点1は、移動端末が「ディスプレイ」、「インターフェース」、「記憶手段」、「比較手段」、「無線信号送受信機」を備えることを特定するものであるが、移動端末のみを特定する事項であり、本件発明9の「腕時計」の構造、機能等を何ら特定するものではない。
したがって、当該相違点1の事項は、本件発明9の「腕時計」を特定するための意味を有しないものであり、当該相違点1は、相違点とはいえない。

相違点2について、
制御命令を生成するためにプロセッサユニットを使用することは、周知慣用技術にすぎず、当該相違点2は、周知技術、慣用技術の付加であって、新たな効果を奏するものではない。よって、当該相違点2は、課題解決のための具体化手段における微差であり、実質的な相違点とはいえない。

そうすると、本件発明9と甲第1号証に記載された甲1発明とは、実質的に同一である。

2 理由2、理由3について
(1)引用文献の記載
取消理由で通知した、甲第3号証(特開2013-172235号公報)には、段落[0012]?[0019]、段落[0030]?[0034]、図1?3、5,9を参照すると、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「文字板11と、分針13及び時針14と、分針及び時針を運針駆動する機構とを備え(【0013】)、文字板上には円周上に12の長方形が表記され(図2)、分針及び時針は文字板の上方に設けられ、分針及び時針は文字板上で時刻を表示するためのものである腕時計(【0013】、図2)であって、回路構成をさらに含み、該回路構成は、着信有りデータを受信する近距離無線通信モジュールと、受信した着信有りデータに基づいて、表示制御を行うCPUと、CPUにより制御される液晶表示部を備え、近距離無線通信モジュールは、携帯電話から着信有りデータとして、電話着信有りデータ及び発信者データ、またはメール着信有りデータとメールデータを受信し、液晶表示部は、発信者属性である電話番号又は名前と発信時刻の表示、または発信者属性であるメールアドレス又は名前と発信時刻と件名とメール本文の表示を行う(【0019】、【0030】?【0033】)腕時計。」

(2)対比、判断
本件発明9と、甲3発明を対比する。
・甲3発明の「文字板11」、「分針13及び時針14」、「分針及び時針を運針駆動する機構」、「円周上に12の長方形」、「回路構成」は、それぞれ本件発明9の「ダイアル」、「少なくとも一つの実体針」、「ムーブメント」、「実体の時間目盛り」、「機能モジュール」に相当する。
・甲3発明の「着信有りデータ」は、本件発明9の「要求提示信号」に相当する。
・甲3発明の「CPU」は、本件発明9の「プロセッサユニット」に相当する。
・甲3発明の「表示」、「液晶表示部」は、それぞれ本件発明9の「提示情報」、「提示器」に相当する。
・甲3発明の「携帯電話」と本件発明9の「移動端末」は、「端末」である点で一致する。
・甲3発明の「電話着信有りデータ及び発信者データ」、または「メール着信有りデータとメールデータ」は、それぞれ、電話着信に対する着信有りデータと、メール着信に対する着信有りデータであり、電話着信、メール着信という、新しい着信又は新しい情報の出所タイプに対応する異なる要求提示信号といえる。
・甲3発明の液晶表示部は、「電話着信有りデータ及び発信者データ、またはメール着信有りデータとメールデータ」に応じて、「発信者属性である電話番号又は名前と発信時刻の表示、または発信者属性であるメールアドレス又は名前と発信時刻と件名とメール本文の表示」という異なる表示を行うものであるから、本件発明9の「異なる要求提示信号を受信し、前記提示器は、これらの異なる要求提示信号に応じて、異なる提示情報を生じさせる」ことと差異はない。

そうしてみると、本件発明9と甲3発明は、
「 ダイアルと、少なくとも一つの実体針と、ムーブメントとを備え、前記ダイアル上には実体の時間目盛りが設けられ、前記実体針は前記ダイアルの上方に設けられ、前記ムーブメントは前記実体針を駆動するためのものであり、さらに、前記実体針は前記ダイアル上の時間目盛りと合わせて時間情報を表示する腕時計であって、機能モジュールをさらに含み、前記機能モジュールは、
要求提示信号を受信する無線通信モジュールと、
前記無線通信モジュールから伝送される前記要求提示信号を受信して、制御命令を生じるプロセッサユニットと、
前記プロセッサユニットの前記制御命令により制御され、前記制御命令を受信した時、提示情報を発する提示器と、を少なくとも含み、
前記無線通信モジュールは、端末の新しい着信又は新しい情報の出所タイプによって発生した異なる要求提示信号を受信し、前記提示器は、これらの異なる要求提示信号に応じて、異なる提示情報を生じさせる腕時計。」である点で一致し、

次の点で、一応相違する。
相違点1:「端末」について、本件発明9は、「請求項7又は8に記載された移動端末」、具体的には、移動端末は、請求項7に記載の
「 ディスプレイを含む移動端末であって、
前記ディスプレイに表示され、
通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供する、通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースと、
ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選んだ、通信及びコミュニティソフトと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先とを選別データとして記憶するための記憶手段と、
前記移動端末が新しい着信又は新しい情報を受信した時、前記新しい着信又は前記新しい情報を伝送した伝送者を前記選別データと比較する比較手段と、
前記移動端末は前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする無線信号送受信機と、
を含む」移動端末であるのに対し、甲3発明には、携帯電話が当該構成を有することは、明記されていない点。

当該相違点について検討する。
相違点1は、移動端末が「ディスプレイ」、「インターフェース」、「記憶手段」、「比較手段」、「無線信号送受信機」を備えることを特定するものであるが、移動端末のみを特定する事項であり、本件発明9の「腕時計」の構造、機能等を何ら特定するものではない。
したがって、当該相違点1の事項は、本件発明9の「腕時計」を特定するための意味を有しないものであり、当該相違点1は、相違点とはいえない。

そうすると、本件発明9と甲第3号証に記載された甲3発明には、相違点は存在しない(理由2)。
また、本件発明は、甲第3号証に記載された甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(理由3)。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
(1)特許法第29条の2
請求項1?8に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、本件特許の優先日後に出願公開された甲第1号証(特願2016-11641号(特開2017-133858号))の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許の優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の優先日の時において、その出願人が本件特許の優先日前の上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
(2)特許法第29条第1項
請求項1?8に係る発明は、特開2010-245668号公報(以下、「甲第2号証」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(3)特許法第29条第2項
(3-1)請求項1?8に係る発明は、甲第2号証(特開2010-245668号公報)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3-2)請求項1?8に係る発明は、甲第3号証(特開2013-172235号公報)に記載された発明に、甲第2号証(特開2010-245668号公報)の記載事項を考慮して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 当審の判断
以下、「請求項1に係る発明」を、「本願発明1」といい、同様に、請求項2?8に係る発明を、それぞれ、「本願発明2」?「本願発明8」という。
(1)特許法第29条の2
ア 甲第1号証(特願2016-11641号(特開2017-133858号))に記載された発明
甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同じ。)。
(ア)「【0002】
電子時計は、いわゆるスマートフォン等のコンピュータと通信して、コンピュータからの通知を受け、コンピュータに関する情報を表示する場合がある。具体的には、電子時計は、コンピュータに電子メールや電話等のユーザへの通知があった場合にコンピュータから通知を受けて、コンピュータにユーザへの通知があった旨を表示する場合がある。」
(イ)「【0005】
スマートフォン等のコンピュータによって受信されるユーザへの通知は、種々雑多であり、その重要度は通知毎に大きく異なる場合がある。そのため、コンピュータで受信した全ての通知を電子時計によりユーザに通知すると、必ずしも重要でない情報までユーザに通知されることとなり、煩わしさを感じる場合がある。
【0006】
ここで、ユーザが電子時計を操作して、通知の重要度に応じたフィルタを設定することも考えられるが、操作手段が限られる電子時計にあっては、フィルタの設定に必要とされる複雑な操作が困難である場合がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンピュータから電子時計に通知する情報について、容易にフィルタを設定することのできる電子時計、通知システム、コンピュータ及び通知方法を提供することである。」
(ウ)「【0039】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る通知システム100の機能ブロック図である。本実施形態に係る通知システム100は、電子腕時計1と携帯端末30を含む。携帯端末30は、フィルタ情報記憶部31と、通知要否判断部32と、通知態様決定部33と、端末通信部34と、電話部35と、電子メール部36とを有する。また、電子腕時計は、ユーザ入力受付部40と、時計通信部41と、通知部42とを有する。端末通信部34と時計通信部41は、無線通信を行う。本実施形態に係る通知システム100において、端末通信部34と時計通信部41は、近距離無線通信により通信を行う。なお、本実施形態に係る携帯端末30はスマートフォンであるが、タブレットPC等の持ち運び可能なコンピュータであってもよい。また、通知システム100に含まれるコンピュータは、持ち運び可能なコンピュータに限られず、据え置き型のコンピュータであってもよい。
【0040】
フィルタ情報記憶部31は、携帯端末30(コンピュータ)で編集され、携帯端末30にユーザへの通知があることを示す通知存在情報についてのユーザへの通知の要否を示すフィルタ情報を記憶する。携帯端末30にユーザの通知がある場合とは、電話回線を介して電話部35に着信があった場合や、インターネット回線を介して電子メール部36に電子メールの受信があった場合である。
【0041】
フィルタ情報記憶部31に記憶されるフィルタ情報は、電話部35に着信又は電子メール部36に受信があった場合に、ユーザに通知するか否かを示す情報を含んでよい。電話部35に着信又は電子メール部36に受信があった場合に、ユーザに通知するか否かを示す情報は、電話や電子メールの送信者に関する重要度を示す情報であってもよいし、電子メールの内容に関する重要度を示す情報であってもよいし、電話や電子メールに対する即時応答の要否に関する情報であってもよい。
【0042】
通知要否判断部32は、通知存在情報について、フィルタ情報に基づいてユーザへの通知の要否を判断する。また、通知態様決定部33は、ユーザへの通知の態様である通知態様を決定する。ここで、通知態様とは、ユーザの視覚、聴覚及び触覚を介した通知の態様をいう。
【0043】
端末通信部34は、電話部35や電子メール部36によりユーザへの通知を受信した場合に、ユーザへの通知があることを示す通知存在情報を電子腕時計1に送信する端末送信部34aと、電子腕時計1から通知存在情報やユーザ入力情報を受信する端末受信部34bと、を含む。
【0044】
電話部35は、電話回線を通じた電話の送受信を行う。なお、電話部35は、インターネット回線を通じたものであってもよいし、その他の回線を通じたものであってもよい。電子メール部36は、電子メールの送受信を行う。携帯端末30は、インターネット回線を利用するSNS(Social Networking Service)アプリケーション部を含んでもよく、SNSアプリケーションからユーザへの通知があった場合に、電子腕時計1に通知存在情報を送信することとしてもよい。SNSアプリケーション部は、携帯端末30において実行されるSNSアプリケーションを制御し、ユーザからの投稿を受け付けたり、ユーザへの通知を行う。
【0045】
電子腕時計1のユーザ入力受付部40は、後述する通知部42によるユーザへの通知に対するユーザの入力を受け付ける。ユーザの入力は、竜頭2やプッシュボタン4の操作の他、ジェスチャーによるものを含んでよい。ジェスチャーは、電子腕時計1を装着した手首を振る動作等のユーザの特定の動作を検出するものである。電子腕時計1は、ジェスチャー検出のために加速度センサを含んでよく、手首を振る回数等のユーザの複数のジェスチャーを区別して検出するものであってよい。
【0046】
時計通信部41は、携帯端末30の通知要否判断部32に、通知存在情報を送信する時計送信部41aと、携帯端末30(コンピュータ)にユーザへの通知があることを示す通知存在情報を受信する時計受信部41bと、ユーザ入力受付部40により受け付けられたユーザの入力を、携帯端末30(コンピュータ)に送信するユーザ入力送信部41cと、を含む。時計受信部41bは、通知要否判断部32による判断結果を受信し、ユーザへの通知の態様である通知態様も受信する。
【0047】
通知部42は、フィルタ情報による判断結果に基づいて、ユーザへの通知を行う。通知部42は、携帯端末30の通知態様決定部33により決定された通知態様により、ユーザへの通知を行う。ここで、通知態様は、音、振動、指針位置及び指針動作の少なくともいずれかであり、これらの組み合わせであってもよい。通知部42は、音によりユーザへの通知を行うアラーム部42aと、振動によりユーザへの通知を行う振動部42bと、指針位置や指針動作によりユーザへの通知を行う運針部42cと、を含む。通知態様決定部33は、重要な通知であれば、音、振動、指針位置及び指針動作を組み合わせた通知態様としてユーザに感知されやすいようにして、比較的重要でない通知であれば、振動、指針位置及び指針動作を組み合わせた通知態様として静寂性を保つようにして、さらに重要度の低い通知であれば、指針位置及び指針動作を組み合わせた通知態様としてユーザを煩わさないようにしてもよい。なお、本実施形態に係る電子腕時計1において、運針部42cによる通知は、秒針により電子メール受信表示13や電話着信表示14を指すことで行なわれるが、運針部42cによる通知はこれに限られない。運針部42cは、円盤やレトログラードにより通知を行ってもよい。
【0048】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る通知システム100における通知方法を示すフローチャートである。同図では、携帯端末30で行なわれる処理を左側に示し、電子腕時計1で行なわれる処理を右側に示している。
【0049】
携帯端末30の電話部35に着信があるか又は電子メール部36に受信があると(S1)、携帯端末30にユーザへの通知があることを示す通知存在情報を、端末送信部34aにより電子腕時計1に送信する(S2)。通知存在情報は、電子腕時計1の時計受信部41bにより受信され(S3)、時計送信部41aにより電子腕時計1へ送信される(S4)。この際、ユーザへの通知は行なわれない。電話部35や電子メール部36は、その機能が携帯端末30のメーカーにより用意されており、通知要否判断部32等の他の機能ブロックとの連携が自由に行えない場合がある。そのため、本実施形態に係る携帯端末30は、通知存在情報を電子腕時計1に送信し、携帯端末30に送り返させることで、間接的に、電話部35や電子メール部36と、通知要否判断部32等の他の機能ブロックとの連携を実現している。
【0050】
本実施形態に係る携帯端末30において、電話部35を制御するアプリケーションと電子メール部36を制御するアプリケーションは、フィルタ情報記憶部31を制御するアプリケーション、通知要否判断部32を制御するアプリケーション及び通知態様決定部33を制御するアプリケーションのいずれとも異なるアプリケーションである。それぞれのアプリケーションは、個別にインストールされ、個別にアップデートされる。そのため、本実施形態に係る携帯端末30は、アプリケーションの仕様変更や機能追加に柔軟に対応できる。本実施形態に係る携帯端末30によれば、電話部35を制御するアプリケーションと電子メール部36を制御するアプリケーションが携帯端末30のメーカーによりアップデートされる場合であっても、フィルタ情報記憶部31を制御するアプリケーション、通知要否判断部32を制御するアプリケーション及び通知態様決定部33を制御するアプリケーションを独立してアップデートすることができ、保守管理が容易となる。
【0051】
電子腕時計1から送り返された通知存在情報は、端末受信部34bにより受信され(S5)、通知要否判断部32により、フィルタ情報に基づいてユーザへの通知が必要であるか否かが判断される(S6)。ユーザへの通知が必要でないと判断された場合、通知が不要であるという判断結果を端末送信部34aにより電子腕時計1に送信する(S7)。電子腕時計1は、時計受信部41bにより判断結果を受信し(S8)、ユーザへの通知が不要との判断結果に従って、処理を終了する。なお、携帯端末30の通知要否判断部32によりユーザへの通知が不要であると判断された場合、当該判断結果を電子腕時計1に送信せず、処理を終了することとしてもよい。一方、通知要否判断部32によりユーザへの通知が必要であると判断された場合、通知態様決定部33により、ユーザへの通知態様が決定される(S9)。そして、通知要否判断部32による判断結果(通知が必要であるという判断結果)及び通知態様決定部33により決定された通知態様を、端末送信部34aにより電子腕時計1に送信する(S10)。電子腕時計1は、時計受信部41bにより判断結果及び通知態様を受信し(S11)、当該通知態様に従って、通知部42によりユーザへの通知を行う(S12)。
【0052】
本実施形態に係る通知システム100によれば、電子腕時計1に比べて複雑な編集操作が行える携帯端末30においてフィルタ情報を設定・編集できるため、フィルタ情報の設定・編集が容易となる。その結果、通知すべき情報か否かの判断がより精緻に行なわれ、必ずしも通知が必要でない情報については電子腕時計1により通知しないように設定でき、ユーザが大量の通知により煩わされることがなくなる。」

(エ)上記(ア)?(ウ)から、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 通知システム100であって、
フィルタ情報記憶部31を備え、フィルタ情報記憶部に記憶されるフィルタ情報は、電話部35に着信又は電子メール部36に受信があった場合に、ユーザに通知するか否かを示す、電話や電子メールの送信者に関する重要度を示す情報であり、
電話部35と電子メール部36とSNSアプリケーション部を含み、
携帯端末30においてフィルタ情報を設定・編集できるものであり、
電話部35に着信があるか又は電子メール部36に受信があると、通知存在情報を電子腕時計1に送信し、電子腕時計から送り返される通知存在情報を受信して、フィルタ情報に基づいてユーザへの通知が必要であるか否かを判断し、ユーザへの通知が必要でないと判断された場合、処理を終了し、ユーザへの通知が必要であると判断された場合、通知態様を決定して、通知が必要であるという判断結果及び通知態様を近距離無線通信により電子腕時計へ送信する、スマートフォンやタブレットPC等である携帯端末30と、
携帯端末30から送信された通知存在情報を携帯端末30に送り返し、携帯端末30から送信された判断結果及び通知態様を受信して、通知態様に従って、通知部42によりユーザへの通知を行う電子腕時計を含み、
通知態様は、音、振動、指針位置及び指針動作を組合わせたものである、
通知システム。」

イ 対比、判断
本願発明1と引用発明1を対比する。
(ア)引用発明1の「近距離無線通信」は、本願発明1の「無線通信方式」に相当する。
(イ)引用発明1の「音、振動、指針位置及び指針動作を組合わせた」通知態様に従って行われる「ユーザへの通知」は、本願発明1の「提示情報を提供」に相当し、引用発明の「判断結果及び通知態様」は、本願発明1の「要求提示信号」に相当する。
(ウ)引用発明1の「スマートフォンやタブレットPC等である携帯端末」、「電子腕時計」は、それぞれ、本願発明1の「移動端末」、「ウェアラブルデバイス」に含まれる。
(エ)引用発明1の「通知システム」は、本願発明1の「通信提示システム」に対応する。
(オ)引用発明1の「電話部35に着信があるか又は電子メール部36に受信があると」は、本願発明1の「新しい着信又は新しい情報を受信すると」に相当する。
(カ)引用発明1は、「フィルタ情報に基づいてユーザへの通知が必要であるか否かを判断し、ユーザへの通知が必要でないと判断された場合、処理を終了し、ユーザへの通知が必要であると判断された場合、通知態様を決定して、通知が必要であるという判断結果及び通知態様を近距離無線通信により電子腕時計へ送信する」ものであり、「フィルタ情報」は、電子腕時計へ「判断結果及び通知態様」を送信しないか、送信するかを判断するための情報といえるから、本願発明1の「伝送者を前記選別データと比較し、前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする」「選別データ」と、要求提示信号を送信し、要求提示信号を送信しないようにすることを「判断するための情報」である点で共通する。
また、引用発明1の「フィルタ情報」は「設定・編集できるもの」であり、本願発明1の「選別データ」は「ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選んだ」ものであるから、いずれも「設定された」という点で共通する。
そうすると、引用発明1の「記憶されるフィルタ情報は」、「ユーザに通知するか否かを示す、電話や電子メールの送信者に関する重要度を示す情報であり」、「フィルタ情報に基づいてユーザへの通知が必要であるか否かを判断し、ユーザへの通知が必要でないと判断された場合、処理を終了し、ユーザへの通知が必要であると判断された場合、通知態様を決定して、通知が必要であるという判断結果及び通知態様を近距離無線通信により電子腕時計へ送信する」ことと、本願発明1の「ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選んだ、通信及びコミュニティソフトと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先とを選別データとして記憶し」、「前記新しい着信又は前記新しい情報を伝送した伝送者を前記選別データと比較し、前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする」とは、「設定された判断するための情報を記憶し」、「判断するための情報に基づいて、無線通信方式で要求提示信号を送信し、要求提示信号を送信しないようにする」点で一致する。

以上のことから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
一致点:
「通信提示システムであって、
設定された判断するための情報を記憶し、
新しい着信又は新しい情報を受信すると、判断のための情報に基づいて、無線通信方式で要求提示信号を送信し、要求提示信号を送信しないようにする移動端末と、
提示情報を提供するためのウェアラブルデバイスと、を備え、
前記ウェアラブルデバイスは、無線通信方式で前記移動端末の発した前記要求提示信号を受信することによって、前記提示情報を発する通信提示システム。」

相違点1:「設定された」について、本願発明1は、「通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースを提供し、当該通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースは、通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供し、 ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選」ぶのに対して、引用発明1は、「携帯端末において設定・編集できる」とのみ特定され、「通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースを提供し、当該通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースは、通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供し、 ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選」ぶことについて、記載されていない点。

相違点2:「判断のための情報に基づいて、無線通信方式で要求提示信号を送信し、要求提示信号を送信しないようにする」について、本願発明1は、「通信及びコミュニティソフトと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先」である「選別データ」に基づいて、「前記新しい着信又は前記新しい情報を伝送した伝送者を前記選別データと比較し、前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする」のに対して、引用発明1では、「ユーザに通知するか否かを示す、電話や電子メールの送信者に関する重要度を示す情報」である「フィルタ情報に基づいてユーザへの通知が必要であるか否かを判断し、ユーザへの通知が必要でないと判断された場合、処理を終了し、ユーザへの通知が必要であると判断された場合、通知態様を決定して、通知が必要であるという判断結果及び通知態様を近距離無線通信により電子腕時計へ送信する」点。

本願発明1と引用発明1とは、上記のように、実質的な相違点1、2が存在することから、同一であるとはいえない。
なお、特許異議申立書において、甲第1号証において、「ディスプレイに表示された各種インターフェースにより設定されることは明らかである」旨、記載されるが、引用発明1において、インターフェースにより設定することが明らかであるとしても、上記相違点1の、「通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースを提供し、当該通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースは、通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供し、 ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選」ぶことまでが明らかであるとはいえない。

ウ 小括
よって、本願発明1と引用発明1とは、同一とはいえない。
また、本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むことから、少なくとも上記相違点1、2を有するものであり、上記と同様の理由により、同一とはいえない。
本願発明7は、ディスプレイ、インターフェース、記憶手段、比較手段、無線信号送受信機を発明特定事項として含む「移動端末」に係る発明であって、実質的に、本願発明1と相違しない。また、本願発明8は、本願発明7の発明特定事項を全て含むものであって、実質的に、本願発明2と相違しない。
そうしてみると、本願発明7、8と甲第1号証に記載された発明とは、少なくとも上記相違点1、2が存在することは明らかであり、上記と同様の理由により、同一とはいえない。

(2)特許法第29条第1項
ア 甲第2号証(特開2010-245668号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
従来、携帯電話機などの通信端末装置が有している情報を別の通信端末装置に送信する技術が知られている。例えば、携帯電話機で受信したメールやニュース、音声通話の着信があったことを示す着信情報などの各種情報を、ユーザが装着している腕時計(別の通信端末装置)に送信するようにした技術が開発されている(特許文献1参照)。」
(イ)「【0004】
しかしながら、携帯電話機側で受信したメール、ニュース、着信情報などの各種情報を全て一律に別の通信端末装置に対して送信してしまうことは、適切ではない場合がある。例えば、ユーザが装着している腕時計(別の通信端末装置)に送信する場合、ユーザの走行時には、歩行時や停止時に比べて、腕時計の情報を確認することが困難となるために、ユーザにとって特に有益な情報のみを送信することが望ましい。一方、ユーザが腕時計を装着していない場合に、第三者に見られたくない情報を送信してしまうことは望ましくはないが、ユーザが装着したときにすぐに情報を確認できるように、第三者に見られたくない情報以外の情報(緊急度の高い情報など)を送信することは望ましい。
【0005】
本発明の課題は、別の通信端末装置への情報の送信を、この別の通信端末装置の状況と、この情報の内容に応じて適切に制御できるようにすることである。」
(ウ)「【0026】
以下、図1?図25を参照して本発明の実施形態を説明する。
本実施形態は、通信端末装置として携帯電話機に適用した場合を例示したもので、図1は、この携帯電話機が利用可能な通信ネットワークシステムを示したブロック図である。
携帯電話機1は、例えば、2つの筐体(操作部筐体、表示部筐体)が開閉可能に取り付けられた折り畳み自在なもので、この折り畳みタイプの携帯電話機1には音声通話機能、電子メール機能、インターネット接続機能(Webアクセス機能)、近距離通信機能などが備えられている。この近距離通信機能は、別の通信端末装置(この実施形態では通信機能付き腕時計)2との間で近距離通信を行うものであるが、携帯電話機1と腕時計2との間での通信は、近距離通信に限らず、例えば、ホームネットワーク、会社ネットワークなどの無線LAN(図示省略)などを介して行うようにしてもよい。
【0027】
携帯電話機1は、最寄りの基地局3A、交換機3Bから無線通信網(移動体通信網)3に接続されると、この無線通信網3を介して他の携帯電話機(図示省略)との間で通話可能な状態となる。また、携帯電話機1は、無線通信網3を介してインターネット4に接続されると、メール管理装置5を介して電子メールの送受信が可能となったり、Webサイトをアクセスして閲覧可能となったり、また、ニュース配信装置6から配信されるニュースをインターネット4、無線通信網3を介してダウンロード可能となったりする。また、携帯電話機1や腕時計2は、GPS(Global Positioning System)衛星7からのGPS情報(位置情報)を受信して現在位置を取得するようにしている。
【0028】
ここで、本実施形態において携帯電話機(通信端末装置)1は、後で詳述するが、腕時計2に情報(音声着信、メール、ニュース)を送信する場合に、この腕時計2の状況(移動状況、所在地、時間帯、動作モード、装着/非装着)を判別すると共に、腕時計2に送信する情報の内容(種別、緊急度、送信元)を判別し、この状況の判別結果と内容の判別結果に基づいて、腕時計2への情報の送信を制御する(送信する/しない、報知させる/させない)ようにしている。この場合、腕時計2に情報を送信する/しない、あるいは、情報を受信したことを腕時計2側で報知させる/させない、ようにしている。例えば、移動状況の場合、走行中であれば、会社関係などの重要なメールや緊急なメールを腕時計2側に送信したり、停止中であれば、特に制限せずに全てのメールを送信したり、山本○○さんから情報を受信したことを腕時計2側で報知させたりする、など、腕時計2の状況と情報の内容によってその情報の送信を制御するようにしている。このことは所在地、時間帯、動作モード、装着/非装着の場合であっても同様で、腕時計2の状況と情報の内容によってその情報の送信を制御するようにしている。
【0029】
図2は、携帯電話機1の基本的な構成要素を示したブロック図である。
中央制御部101は、二次電池(図示省略)を備えた電池部102からの電力供給によって動作し、記憶部103内の各種のプログラムに応じてこの携帯電話機1の全体動作を制御する中央演算処理装置やメモリ(図示省略)などを有している。記憶部103には、プログラム記憶部M1-1、各種情報一時記憶部M1-2、情報テーブル記憶部M1-3、状況テーブル記憶部M1-4、制御テーブル記憶部M1-5、判別方法記憶部M1-6、設定情報記憶部M1-7、着信履歴記憶部M1-8、メール記憶部M1-9、ニュース記憶部M1-10、アドレス帳記憶部M1-11などが設けられている。なお、記憶部103は、例えば、SDカード、ICカードなど、着脱自在な可搬型メモリ(記録メディア)を含む構成であってもよく、図示しない所定の外部サーバ上にあってもよい。」
(エ)「【0032】
近距離通信部106は、アンテナAT2を有し、通常、一緒に携帯している複数の通信端末装置である携帯電話機1と腕時計2との間において非接触タイプのBluetooth(登録商標)による近距離通信を行うもので、その通信可能エリア内(例えば、半径5m以内)で交信が行われる。なお、携帯電話機1と腕時計2との間での交信時には互いの装置識別情報を送受信して通信相手を特定するようにしている。GPS受信部107は、GPS(Global Positioning System)衛星7からのGPS情報を、アンテナAT3を介して受信するもので、中央制御部101は、このGPS情報に基づいて携帯電話機1の現在位置を腕時計2の状況(現在位置)として判別する。表示部108は、高精細液晶を使用し、例えば、文字情報、待受画像などの表示情報を表示する。
【0033】
操作部109は、ダイヤル入力、文字入力、コマンド入力などを入力するもので、中央制御部101は、この操作部109からの入力操作信号に応じた処理を実行する。RTC(リアルタイムクロックモジュール)110は、時計部を構成するもので、中央制御部101は、RTC110から現在日時を取得する。報知部111は、サウンドスピーカ111A、LED(発光ダイオード)111B、振動モータ111Cを備え、着信時に駆動されて着信報知を行うほか、アラーム報知時などでも駆動される。」
(オ)「【0038】
近距離通信部204は、アンテナAT4を有し、通常、一緒に携帯している複数の通信端末装置である携帯電話機1と腕時計2との間において非接触タイプのBluetooth(登録商標)による近距離通信を行うもので、その通信可能エリア内(例えば、半径5m以内)で交信が行われる。GPS受信部205は、アンテナAT5を介してGPS衛星7からのGPS情報を受信するもので、中央制御部201は、このGPS情報に基づいて腕時計2の現在位置を判別する。表示部206は、高精細液晶を使用し、例えば、文字情報、画像情報などの表示情報を表示する。操作部207は、ダイヤル入力、文字入力、コマンド入力などを入力するもので、中央制御部201は、この操作部207からの入力操作信号に応じた処理を実行する。RTC208は、時計部を構成するもので、中央制御部201は、RTC208から現在日時を取得する。報知部209は、サウンドスピーカ209A、LED209B、振動モータ209Cを備え、着信時に駆動されて着信報知を行うほか、アラーム報知時などでも駆動される。」
(カ)「【0050】
図8は、設定情報記憶部M1-7を説明するための図である。
設定情報記憶部M1-7は、情報テーブル記憶部M1-3、状況テーブル記憶部M1-4、制御テーブル記憶部M1-5の任意の内容をユーザ操作によって対応付けて任意に設定した設定情報を記憶するもので、「状況」、「情報」、「制御」の各フィールドを有している。また、「状況」は更に「項目」、「状況ID」を有し、「情報」は更に「項目」、「情報ID」を有し、「制御」は「制御ID」を有している。ここで、図示の例の設定情報は、「腕時計2の移動状況に応じて特定種別の情報を送信する」という設定内容を示したもので、「状況」の「項目」として、“移動状況”が設定され、「状況」の「状況ID」として“b11”、“b12”、“b13”、“b14”が設定されている。
【0051】
「情報」の「項目」として“種別”が設定され、「状況ID」の“b11(停止中)”あるいは“b14(乗り物移動中)”に対応する「情報ID」として“a11(音声着信)+a12(メール)+a13(ニュース)”が設定され、「制御ID」として“c11(送信する)”が設定されている場合には、腕時計2の移動状況が停止中あるいは乗り物で移動中(例えば、乗車中)であることを条件に、いずれかの情報(音声着信、メール、ニュース)を送信することを示している。なお、図中、+は、論理和を示しているが、これに限らず、論理積であってもよい(以下、同様)。
【0052】
「状況ID」の“b12(歩行中)”に対応する「情報ID」として“a11(音声着信)+a12(メール)”が設定され、「制御ID」として“c11(送信する)”が設定されている場合には、腕時計2の移動状況が歩行中であることを条件に、ニュースを除いた情報として音声着信、メールのいずれかを送信することを示している。「状況ID」の“b13(走行中)”に対応する「情報ID」として“a11(音声着信)”が設定され、「制御ID」として“c11(送信する)”が設定されている場合には、腕時計2の移動状況が歩行中であることを条件に、メール、ニュースを除いた情報として音声着信を送信することを示している。」
(キ)「【0064】
また、待ち受け状態において情報の受信(音声着信、メール受信、ニュース受信)を検出すると(ステップA5でYES)、後述する情報受信処理Aの実行に移る(ステップA6)。また、電源オフ操作が行われると(ステップA7でYES)、電源オフ処理を実行したのち(ステップA8)、このフローの終了となるが、その他の操作が行われたときには(ステップA9でYES)、その操作に応じた処理として、例えば、発信操作に応じて発信処理、受信メール表示操作に応じてメール開封処理などを行ったのち(ステップA10)、上述のステップA3に戻る。
【0065】
図16は、情報受信(音声着信、メール受信、ニュース受信)に応じて実行開始される情報受信処理A(図15のステップA6)を詳述するためのフローチャートである。
先ず、中央制御部101は、情報受信が音声着信であれば(ステップB1でYES)、この音声着信に関する履歴情報を着信履歴記憶部M1-8に記憶させたのち(ステップB2)、報知部111を駆動して着信報知を行うと共に(ステップB3)、情報(伝言メッセージ)を受信したときには、この伝言メッセージを着信履歴記憶部M1-8に記憶させる(ステップB4)。そして、後述する情報内容判別処理(ステップB5)、状況判別処理A(ステップB6)、実行処理(ステップB7)を順次実行したのち、図15のステップA3に戻る。
【0066】
情報受信がメール受信であれば(ステップB8でYES)、メール受信に関する情報をメール記憶部M1-9に記憶させたのち(ステップB9)、報知部111を駆動してメール受信報知を行う(ステップB10)。そして、後述する情報内容判別処理(ステップB5)、状況判別処理A(ステップB6)、実行処理(ステップB7)を順次実行する。また、情報受信がニュース受信であれば(ステップB8でNO)、受信したニュースに関する情報をニュース記憶部M1-10に記憶させたのち(ステップB11)、報知部111を駆動してニュース受信報知を行うと共に(ステップB12)、受信したニュースを表示させる(ステップB13)。そして、後述する情報内容判別処理(ステップB5)、状況判別処理A(ステップB6)、実行処理(ステップB7)を順次実行する。」
(ク)「【0077】
図20は、実行処理(図16ステップB7)を詳述するためのフローチャートである。
この実行処理は、情報内容判別処理(図16のステップB5)の判別結果と状況判別処理A(ステップB6)の判別結果に基づいて、腕時計2への情報の送信を制御する処理を実行するものである。
先ず、中央制御部101は、上述の情報内容判別処理で一時記憶させた「情報ID」と上述の状況判別処理Aで一時記憶させた「状況ID」とを読み出し(ステップE1)、この「情報ID」と「状況ID」に基づいて設定情報記憶部M1-7から当該「情報ID」及び「状況ID」に対応する「制御」の「制御ID」を読み出す(ステップE2)。そして、この「制御ID」に対応する「内容」を制御テーブル記憶部M1-5から読み出し(ステップE3)、その「内容」が“送信する”であれば(ステップE4でYES)、上述の受信した情報(音声着信、受信メール、受信ニュース)を読み出して(ステップE5)、腕時計2に対してその情報を送信したのち(ステップE6)、このフローチャートを終了する。
【0078】
「制御ID」に対応する「内容」が“送信しない”であれば(ステップE7でYES)、この時点で図20のフローから抜けるが、「内容」が“送信する”、“送信しない”のいずれでもなければ(ステップE7でNO)、その「内容」が“報知”の場合であるから、上述の受信した情報(音声着信、受信メール、受信ニュース)を読み出し(ステップE8)、この受信した情報に、報知に関する「制御ID」を付加して腕時計2に送信したのち(ステップE9)、このフローチャートを終了する。なお、「制御ID」が“c22(所定の状況になったとき受信音鳴動する)”と“c25(所定の状況になったとき表示する)”の場合には、どのような状況になったときに受信音を鳴動するのか、あるいは表示するのかを示すためにその「状況ID」を更に付加して送信するようにしている。」
(ケ)「【0082】
一方、図21のフローにおいて、携帯電話機1から情報を受信したときには(ステップF6でYES)、後述する情報受信処理Bを実行する(ステップF7)。
図23は、情報受信処理B(図21のステップF7)を詳述するためのフローチャートである。先ず、中央制御部201は、携帯電話機1からの情報を受信して記憶させる(ステップH1)。この場合、携帯電話機1から音声着信に関する情報(例えば、伝言メッセージ)を受信した場合には、必要に応じてその記憶内容をユーザ操作によって音声出力させ、メールやニュースに関する情報を受信した場合には、必要に応じてその記憶内容をユーザ操作によって表示出力させることができる。
【0083】
そして、受信した情報に、報知に関する「制御ID」が付加されているかを調べる(ステップH2)。ここで、上述したように図20の実行処理においては、腕時計2への情報の送信を制御する場合に、その制御が「報知」であれば、報知に関する「制御ID」を当該情報に付加して送信し、「送信」であれば、受信した情報に、報知に関する「制御ID」を付加しないで送信するようにしているため、「制御ID」が付加されていない場合には(ステップH2でNO)、次のステップH5に移り、情報受信を報知するために報知部209内のスピーカ209Aを駆動して受信音を鳴動させたのち、図21のステップF2に戻る。
【0084】
受信した情報に、報知に関する「制御ID」が付加されていれば(ステップH2でYES)、「制御ID」に基づいて制御テーブル記憶部M2-4を参照し、「制御ID」に対応する「内容」を読み出し(ステップH3)、その「内容」は、“受信音鳴動する”であるか(ステップH4)、“所定の状況になったときに受信音鳴動する”であるか(ステップH6)、“受信音鳴動しない”であるか(ステップH9)、“表示する”であるか(ステップH10)、“所定の状況になったときに表示する”であるか“表示しない”であるかを調べる(ステップH12)。いま、“受信音鳴動する”であれば(ステップH4でYES)、情報受信を報知するために報知部209内のスピーカ209Aを駆動して受信音を鳴動させたのち(ステップH5)、図21のステップF2に戻る。」

(コ)上記(ア)?(ケ)の記載より、甲第2号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「 設定情報記憶部M1-7に、情報テーブル記憶部M1-3、状況テーブル記憶部M1-4、制御テーブル記憶部M1-5の任意の内容をユーザ操作によって対応付けて任意に設定した設定情報を記憶し、
待ち受け状態において情報の受信を検出し、受信した情報についての情報テーブル記憶部M1-3を用いた情報内容判別処理による情報IDと、腕時計の状況についての状況テーブル記憶部M1-4を用いた状況判別処理Aによる状況IDに基づいて、設定情報記憶部M1-7から制御IDを読み出し、該制御IDに対応する制御テーブル記憶部M1-5の内容に従って、腕時計2へBluetoothを用いた近距離通信により、情報を送信する、情報を送信しないを制御する携帯電話機と、
腕時計は、携帯電話機からBluetoothによる近距離通信で情報を受信した場合、情報受信を報知するために受信音を鳴動させる、通信ネットワークシステム。」

イ 対比、判断
本願発明1と引用発明2を対比する。
(ア)引用発明2の「Bluetoothを用いた近距離通信」は、本願発明1の「無線通信方式」に相当する。
(イ)引用発明2の「受信音」は、本願発明1の「提示情報」に相当する。
(ウ)引用発明2の腕時計2へ送信される「情報」は、該「情報」を受信することにより腕時計で受信音を鳴動させる制御が行われることから、本願発明1の「要求提示信号」に対応する。
(エ)引用発明2の「携帯電話機」、「腕時計」は、それぞれ、本願発明1の「移動端末」、「ウェアラブルデバイス」に含まれる。
(オ)引用発明2の「通信ネットワークシステム」は、本願発明1の「通信提示システム」に対応する。
(カ)引用発明2の「待ち受け状態において情報の受信を検出し」は、本願発明1の「新しい着信又は新しい情報を受信すると」に相当する。
(キ)引用発明2の「設定情報記憶部M1-7」に記憶される「設定情報」は、設定情報に含まれる制御IDに基づいて、情報を送信する、情報を送信しないを制御するものであり、送信するか、送信しないかを判断するための情報といえるから、本願発明1の「伝送者を前記選別データと比較し、前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする」「選別データ」と、要求提示信号を送信し、要求提示信号を送信しないようにすることを「判断するための情報」である点で共通する。
また、引用発明2の「設定情報」は「ユーザ操作によって対応付けて任意に設定した」ものであり、本願発明1の「選別データ」は「ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選んだ」ものであるから、いずれも「設定された」という点で共通する。
そうすると、引用発明2の「 設定情報記憶部M1-7に、情報テーブル記憶部M1-3、状況テーブル記憶部M1-4、制御テーブル記憶部M1-5の任意の内容をユーザ操作によって対応付けて任意に設定した設定情報を記憶し」、「受信した情報についての、情報テーブル記憶部M1-3を用いた情報内容判別処理による情報IDと、腕時計の状況についての、状況テーブル記憶部M1-4を用いた状況判別処理Aによる状況IDに基づいて、設定情報記憶部M1-7から制御IDを読み出し、該制御IDに対応する制御テーブル記憶部M1-5の内容に従って」、「情報を送信する、情報を送信しないを制御する」ことと、本願発明1の「ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選んだ、通信及びコミュニティソフトと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先とを選別データとして記憶し」、「前記新しい着信又は前記新しい情報を伝送した伝送者を前記選別データと比較し、前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする」とは、「設定された判断するための情報を記憶し」、「判断するための情報に基づいて、無線通信方式で要求提示信号を送信し、要求提示信号を送信しないようにする」点で一致する。

以上のことから、本願発明1と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
一致点:
「通信提示システムであって、
設定された判断するための情報を記憶し、
新しい着信又は新しい情報を受信すると、判断のための情報に基づいて、無線通信方式で要求提示信号を送信し、要求提示信号を送信しないようにする移動端末と、
提示情報を提供するためのウェアラブルデバイスと、を備え、
前記ウェアラブルデバイスは、無線通信方式で前記移動端末の発した前記要求提示信号を受信することによって、前記提示情報を発する通信提示システム。」

相違点1:「設定された」について、本願発明1は、「通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースを提供し、当該通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースは、通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供し、 ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選」ぶのに対して、引用発明2は、「ユーザ操作によって対応付けて任意に設定した」ことが特定されるものであり、「通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースを提供し、当該通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースは、通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供し、 ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選」ぶことについて、記載されていない点。

相違点2:「判断のための情報に基づいて、無線通信方式で要求提示信号を送信し、要求提示信号を送信しないようにする」について、本願発明1は、「通信及びコミュニティソフトと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先」である「選別データ」に基づいて、「前記新しい着信又は前記新しい情報を伝送した伝送者を前記選別データと比較し、前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする」のに対して、引用発明2では、「受信した情報についての情報テーブル記憶部M1-3を用いた情報内容判別処理による情報IDと、腕時計の状況についての状況テーブル記憶部M1-4を用いた状況判別処理Aによる状況IDに基づいて、設定情報記憶部M1-7から制御IDを読み出し、該制御IDに対応する制御テーブル記憶部M1-5の内容に従って」、「情報を送信する、情報を送信しないを制御する」点。

本願発明1と引用発明2とは、上記のように、相違点1、2が存在することから、同一であるとはいえない。
なお、特許異議申立書において、甲第2号証において、「表示部108に表示される各種インターフェースにより設定されることは明らかである」旨、記載されるが、引用発明2において、インターフェースにより設定することが明らかであるとしても、上記相違点1の、「通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースを提供し、当該通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースは、通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供し、 ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選」ぶことまでが明らかであるとはいえない。

ウ 小括
よって、本願発明1と引用発明2とは、同一とはいえない。
また、本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むことから、少なくとも上記相違点1、2を有するものであり、上記と同様の理由により、同一とはいえない。
本願発明7は、ディスプレイ、インターフェース、記憶手段、比較手段、無線信号送受信機を発明特定事項として含む「移動端末」に係る発明であって、実質的に、本願発明1と相違しない。また、本願発明8は、本願発明7の発明特定事項を全て含むものであって、実質的に、本願発明2と相違しない。
そうしてみると、本願発明7、8と甲第2号証に記載された発明とは、少なくとも上記相違点1、2が存在することは明らかであり、上記と同様の理由により、同一とはいえない。

(3)特許法第29条第2項
(3-1)甲第2号証(特開2010-245668号公報)を主引例とする場合
ア 甲第2号証
甲第2号証には、上記(2)アで記載した引用発明2が記載されていると認められる。

イ 対比、判断
本願発明1と引用発明2は上記(2)イの点で一致ないし相違する。
そして、上記相違点1、2の構成が、本件特許出願時に公知または周知であることを示す証拠はなく、自明な事項でもないことから、本願発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易になし得たものとはいえない。

ウ 小括
よって、本願発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易なし得たものとはいえない。
また、本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むことから、少なくとも上記相違点1、2を有するものであり、上記と同様の理由により、当業者が容易になし得たものとはいえない。
本願発明7は、ディスプレイ、インターフェース、記憶手段、比較手段、無線信号送受信機を発明特定事項として含む「移動端末」に係る発明であって、実質的に、本願発明1と相違しない。また、本願発明8は、本願発明7の発明特定事項を全て含むものであって、実質的に、本願発明2と相違しない。
そうしてみると、本願発明7、8と甲第2号証に記載された発明とは、少なくとも上記相違点1、2が存在することは明らかであり、上記と同様の理由により、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(3-2)甲第3号証(特開2013-172235号公報)を主引例とする場合
ア 甲第3号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
一般的な携帯電話では、外部からメール着信や音声着信があると音、振動、発光等により着信が報知されるとともに、発信者の情報などが画面に表示される。しかし、移動中等に携帯電話をカバンの中に入れておいたり、マナーモード時などに携帯電話を振動が伝わりにくい服のポケットに入れておいたりした場合、着信があってもユーザがその報知に気付かない場合がある。
【0003】
そこで、従来、携帯電話と腕装着型端末とを組み合わせて、携帯電話に着信があった場合に携帯電話から腕装着型端末に発信者の番号や氏名などの情報を送信して、腕装着型端末でこれらの情報を表示出力するようにした報知制御システムが提案されている(例えば特許文献1)。」
(イ)「【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施形態の報知制御システムの構成図である。
この実施形態の報知制御システム1は、報知制御装置を備える腕装着型端末の一例である腕時計10と、外部通信装置である携帯電話50とを備えている。
ここで、腕時計10は、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの近距離無線通信機能を有している。また、携帯電話50は、基地局との無線通信機能と、ブルートゥースなどの近距離無線通信機能とを有している。
以下、腕時計10及び携帯電話50の詳細をこの順に説明する。
【0013】
図2は腕時計10の正面図であり、図3は腕時計10の内部構造の一部を示す断面図である。
この腕時計10の本体を構成している機器本体である時計本体100に配置された文字板11上には、時刻を表示するために、常時、運針駆動している分針13及び時針14が設けられている。
また、文字板11には、時計の6時方向に第1の液晶表示部15a、時計の12時方向に第2の液晶表示部15bがそれぞれ設けられている。」
(ウ)「【0025】
図7は、携帯電話50のCPU51により実行される電話着信時処理のフローチャートである。
この電話着信時処理は、携帯電話50に電話着信があったとき、CPU51により開始される。この処理が開始されると、先ず、CPU51は近距離無線通信モジュール64に問い合わせを行って腕時計10の近距離無線通信モジュール40と通信リンク中か否かを判別する(ステップS1)。
この判定の結果、通信リンク中でなければ、携帯電話一般で行われる電話着信処理を実行する(ステップS2)。この電話着信処理には、応答の操作入力があった場合に実行される通話処理、応答の操作入力がなかった場合に実行される不在着信処理が含まれる。
【0026】
一方、通信リンク中であれば、CPU51は近距離無線通信モジュール64を介して腕時計10に電話着信有りデータ及び発信者データを送信する(ステップS3)。この発信者データには、発信者の電話番号データ又は当該電話番号データに基づき携帯電話50が認定した名前データと、発信時刻データとが含まれる。その後、CPU51は、一定時間応答の操作入力を待ち不在着信か否かを判別する(ステップS4)。その後、CPU51は、不在着信でなければ(応答の操作入力があれば)携帯電話一般で行われる通話処理を行い(ステップS5)、この電話着信時処理を終了する。
一方、不在着信の場合には、CPU51は、携帯電話一般で行われる不在着信処理を行い(ステップS6)、この電話着信時処理を終了する。
【0027】
図8は、携帯電話50のCPU51により実行されるメール着信時処理のフローチャートである。
【0028】
このメール着信時処理は、携帯電話50にメール着信があったとき、CPU51により開始される。この処理が開始されると、先ずCPU51は携帯電話一般で行われるメール着信処理を実行する(ステップS11)。次に、CPU51は、近距離無線通信モジュール64に問い合わせを行って腕時計10の近距離無線通信モジュール40と通信リンク中か否かを判別する(ステップS12)。
この判別の結果、通信リンク中でなければ、CPU51はメール着信時処理を終了する。
【0029】
一方、通信リンク中であれば、CPU51は、近距離無線通信モジュール64を介して腕時計10にメール着信有りデータとメールデータとを送信する(ステップS13)。このメールデータには、メール発信者のメールアドレスデータ又は当該メールアドレスに基づき携帯電話50が認定した名前データと、発信時刻データと、メール本文データとが含まれる。そして、CPU51はメール着信時処理を終了する。
【0030】
図9は、腕時計10のCPU33によって実行される報知処理のフローチャートである。
この報知処理は、携帯電話50から着信有りデータを受信したとき、CPU33により開始される。この処理が開始されると、先ずCPU33はドライバ43を介して振動モータ42を作動制御し、腕時計10を振動させる(ステップS21)。
【0031】
続いて、CPU33は、着信有りデータが電話着信有りデータか否かを判別し(ステップS22)、電話着信有りデータであれば、電話着信報知処理(ステップS23?25)に移行する。一方、CPU33は、電話着信有りデータでなければ、つまりメール着信有りデータであれば、メール着信報知処理(ステップS26?28)に移行する。
【0032】
電話着信報知処理においては、CPU33は、発信者データをRAM35に記憶させる(ステップS23)。その後、CPU33は、発信者データに基づいて発信者の帰属グループを3つの中から1つ特定し、ドライバ49を介して指針駆動モータ48を作動制御し、特定したグループに対応付けられた区分領域9a,9b,9cの中の1つの位置まで分針13を運針させる(ステップS24)。例えば、発信者が家族のグループに帰属する場合には、区分領域9aの位置まで分針13を運針させ、発信者が友人のグループに帰属する場合には、区分領域9bの位置まで分針13を運針させ、発信者がその他のグループに帰属する場合には、区分領域9cの位置まで分針13を運針させる。また、ステップS24で、CPU33は、ドライバ44を介して発光ダイオード27を点灯又は点滅させる。
また、CPU33は、ドライバ38を介して液晶表示部15bに発信者属性である電話番号又は名前と発信時刻とを表示させる(ステップS25)。
なお、液晶表示部15bの表示と、発光ダイオード27の点滅とは所定時間なされる。
【0033】
一方、メール着信報知処理においては、CPU33は、メールデータをRAM35に記憶させる(ステップS26)。その後、CPU33は、メールデータに含まれる発信者データに基づいて発信者のグループを3つの中から1つ特定し、ドライバ49を介して指針駆動モータ48を作動制御し、特定したグループに対応付けられた区分領域9a,9b,9cの中の1つの位置まで分針13を運針させる(ステップS27)。また、ステップS27で、CPU33は、ドライバ44を制御して発光ダイオード27を点灯又は点滅させる。
また、CPU33は、ドライバ38を介して、発信者属性であるメールアドレス又は名前と発信時刻と件名とを液晶表示部15bに表示させると共に、メール本文を液晶表示部15aに表示させる。
なお、液晶表示部15a,15bの表示と、発光ダイオード27の点滅とは所定時間なされる。」

(エ)上記(ア)?(ウ)の記載より、甲第3号証には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「 報知制御システムであって、
電話着信またはメール着信があったとき、ブルートゥースによる通信リンクにより、電話着信有りデータ及び発信者データ、あるいは、メール着信有りデータとメールデータを送信する携帯電話50と、
分針13を運針させ、発光ダイオード27の点灯又は点滅させる腕時計10と、を備え、
前記腕時計10は、ブルートゥースによる通信リンクで前記携帯電話が出力する電話着信有りデータ及び発信者データ、あるいは、メール着信有りデータとメールデータを受信することによって、分針13を運針させ、発光ダイオード27の点灯又は点滅させる報知制御システム。」

イ 対比、判断
本願発明1と引用発明3を対比する。
(ア)引用発明3の「ブルートゥース」は、本願発明1の「無線通信方式」に相当する。
(イ)引用発明3の「分針13を運針させ、発光ダイオード27の点灯又は点滅させ」ることは、本願発明1の「提示情報を提供する」ことに相当する。
(ウ)引用発明3の腕時計10へ送信される「電話着信有りデータ及び発信者データ、あるいは、メール着信有りデータとメールデータ」は、腕時計が、「電話着信有りデータ及び発信者データ、あるいは、メール着信有りデータとメールデータ」を受信することで、分針13を運針させ、発光ダイオード27の点灯又は点滅させることから、本願発明1の「要求提示信号」に対応する。
(エ)引用発明3の「携帯電話50」、「腕時計10」は、それぞれ、本願発明1の「移動端末」、「ウェアラブルデバイス」に含まれる。
(オ)引用発明3の「報知制御システム」は、本願発明1の「通信提示システム」に対応する。
(カ)引用発明3の「電話着信またはメール着信があったとき」は、本願発明1の「新しい着信又は新しい情報を受信すると」に相当する。

(キ)以上のことから、本願発明1と引用発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。
一致点:
「通信提示システムであって、
新しい着信又は新しい情報を受信すると、無線通信方式で要求提示信号を送信する移動端末と、
提示情報を提供するためのウェアラブルデバイスと、を備え、
前記ウェアラブルデバイスは、無線通信方式で前記移動端末の発した前記要求提示信号を受信することによって、前記提示情報を発する通信提示システム。」

相違点1:本願発明1は、「通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースを提供し、当該通信及びコミュニティソフトを設定するインターフェースは、通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェースと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースとを提供し、 ユーザーの前記通信及びコミュニティソフト選別の設定を行うインターフェース、及び前記通信及びコミュニティソフトの連絡先選別の設定を行うインターフェースを介して選んだ、通信及びコミュニティソフトと、前記通信及びコミュニティソフトの連絡先とを選別データとして記憶」し、「前記新しい着信又は前記新しい情報を伝送した伝送者を前記選別データと比較し、前記伝送者が前記選別データに含まれると判断した時、無線通信方式で要求提示信号を送信し、前記伝送者が前記選別データに含まれないと判断した時、要求提示信号を送信しないようにする」のに対して、引用発明3は、当該構成を有しない点。

当該相違点について、検討する。
甲第2号証には、上記(2)ア(ア)?(ケ)の事項が記載されている。
そして、甲第2号証には、上記(2)イでの検討を踏まえると、相違点1の構成は、記載されているとはいえない。
また、上記相違点1の構成が、本件特許出願時に公知または周知であることを示す証拠はなく、自明な事項でもないことから、本願発明1は、当業者が容易になし得たものとはいえない。

ウ 小括
よって、本願発明1は、引用発明3、及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易なし得たものとはいえない。
また、本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含むことから、少なくとも上記相違点1を有するものであり、上記と同様の理由により、当業者が容易になし得たものとはいえない。
本願発明7は、ディスプレイ、インターフェース、記憶手段、比較手段、無線信号送受信機を発明特定事項として含む「移動端末」に係る発明であって、実質的に、本願発明1と相違しない。また、本願発明8は、本願発明7の発明特定事項を全て含むものであって、実質的に、本願発明2と相違しない。
そうしてみると、本願発明7、8と甲第3号証に記載された発明とは、少なくとも上記相違点1が存在することは明らかであり、上記と同様の理由により、当業者が容易になし得たものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、請求項9に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたもの(取消理由の理由1)であり、同法第29条第1項の規定に違反してされたもの(取消理由の理由2)であり、同法第29条第2項の規定に違反してされたもの(取消理由の理由3)であって、いずれも同法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。
請求項1?8に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。また、他に本件請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
別掲
 
異議決定日 2019-11-19 
出願番号 特願2017-137(P2017-137)
審決分類 P 1 651・ 113- ZC (H04M)
P 1 651・ 161- ZC (H04M)
P 1 651・ 121- ZC (H04M)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 松平 英  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 衣鳩 文彦
中野 浩昌
登録日 2018-08-10 
登録番号 特許第6382356号(P6382356)
権利者 巨擘科技股▲ふん▼有限公司
発明の名称 腕時計、移動端末、通信提示システム及び方法  
代理人 廣田 浩一  

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