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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06K 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06K 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K |
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管理番号 | 1362738 |
審判番号 | 不服2018-16192 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-05 |
確定日 | 2020-06-16 |
事件の表示 | 特願2016-541791「磁気バーコードチップ及びその読取方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月19日国際公開、WO2015/035911、平成28年12月 1日国内公表、特表2016-537742、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2014年9月10日(パリ条約による優先権主張2013年9月10日(以下,「優先日」という。),中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって,平成28年3月9日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され,同年4月26日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図中の説明に限る。)の日本語による翻訳文が提出され,平成30年4月6日付けで拒絶理由通知(同年4月17日発送)がなされ,同年7月17日付けで意見書が提出されるとともに,手続補正がなされたが,同年8月1日付けで拒絶査定(原査定)(同年8月7日謄本送達)がなされ,これに対し,同年12月5日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,平成31年1月17日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がされ,令和元年12月6日付けで当審より拒絶理由通知がなされ(同年12月10日発送),令和2年3月9日付けで意見書が提出されるとともに,手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年8月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.本願の請求項1?11に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.実願昭63-079799号(実開昭63-195459号)のマイクロフィルム 2.特開平08-249412号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1.令和元年12月6日付けの当審拒絶理由について (1)(明確性)本件出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (2)(実施可能要件・委任省令要件)本件出願は,発明の詳細な説明の記載が,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 本願発明 本願の請求項1?11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明11」という。)は,令和2年3月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 バイナリ情報ビットと情報識別ビットとを備え、 前記バイナリ情報ビットは、N行M列のアレイから成り、各バイナリ情報のバイナリ状態は、永久磁石バー又は永久磁石バーが不在であるヌルビットの存在によって表され、M及びNは、1より大きい整数であり、かつ、前記永久磁石バー及び前記ヌルビットは、それぞれ、1及び0、又は、0及び1を表し、 前記情報識別ビットは、磁気バーコードチップの位置及び状態を表すために永久磁石バー識別子から構成され、前記バイナリ情報ビットの開始ビットは、前記情報識別ビットにおける永久磁石バー行の第1列と永久磁石バー列の第1行との交点に形成される座標に配置され、バイナリ情報ビットの開始ビットの行方向は、情報識別ビットの行方向に沿っていて、バイナリ情報ビットの開始ビットの列方向は、情報識別ビットの列方向に沿っていて、 前記情報識別ビットは、前記バイナリ情報ビットの周辺領域に配置されていて、 前記磁気バーコードチップは、マイクロエレクトロニクスリソグラフィによってウェハ上に製造され、バイナリ情報ビットのアレイにおける行と列との間に間隔があり、 バイナリ情報ビットの情報は、予め定義されたコード又は特定のアルゴリズムの方法で、情報識別ビットにおける永久磁石バーを特定のパターンに配列することによって、間接的に決定することができ、 永久磁石バー識別子における永久磁石バーの大きさは、バイナリ情報ビットの永久磁石バー又はヌルビットの大きさよりもわずかに大きく、 前記磁気バーコードチップは、リソグラフィマシンによって日付が記された前記ウェハ上の露光ユニットの内部スライスユニットに対する位置番号が付されている、磁気バーコードチップ。 【請求項2】 前記磁気バーコードチップの前記位置及び状態には、以下のパラメータ値、すなわち、前記バイナリ情報ビットの開始位置、行方向、行間隔、行数、列方向、列間隔、及び、列数が含まれる、請求項1に記載の磁気バーコードチップ。 【請求項3】 前記永久磁石バー識別子は、前記永久磁石バーの位置、方向、数量、大きさ、空間、及び、配置パターンを通じて、前記磁気バーコードチップの前記位置及び状態を表す、請求項1に記載の磁気バーコードチップ。 【請求項4】 前記永久磁石バーは、永久磁石材料からなる単層フィルム又は多層フィルムである、請求項1に記載の磁気バーコードチップ。 【請求項5】 前記永久磁石材料は、Co-Pt磁石又はCo-Cr-Pt磁石である、請求項4に記載の磁気バーコードチップ。 【請求項6】 前記バイナリ情報ビット上の全ての前記永久磁石バー又はヌルビットは、四角形パターンであり、かつ、長さ及び幅が同じであり、さらに、そのアレイは、列間隔及び行間隔も同じである、請求項1に記載の磁気バーコードチップ。 【請求項7】 前記バイナリ情報ビットの前記永久磁石バー又は前記ヌルビットは、幅が10?500μm、長さが10?1000μm、前記アレイの列間隔が10?2000μm、行間隔が10?2500μmである、請求項6に記載の磁気バーコードチップ。 【請求項8】 前記磁気バーコードチップは、宝石、前記宝石パッケージ、又は、前記宝石の値札に固定される、請求項1に記載の磁気バーコードチップ。 【請求項9】 前記磁気バーコードチップを読み取る際に、まず、磁化を設定するために、前記磁気バーコードチップが強磁場に配され、それから、前記磁気バーコードチップ上の前記バイナリ情報ビットに対応する永久磁石バー又はヌルビットと前記情報識別ビットの前記永久磁石バー識別子によって生成される磁場情報とを、前記磁気バーコードチップの前記バイナリ情報と位置情報及び状態情報とにそれぞれ変換するために、前記磁化を読み取るために磁気バーコードチップリーダを用いることとを含むことによって、前記磁気バーコードチップの読み取りを実現する、請求項1に記載の磁気バーコードチップの読取方法。 【請求項10】 前記磁気バーコードチップを設定するための前記強磁場は、磁場強度が3?4キロエルステッド(KOe)であり、かつ、磁場方向は、前記バイナリ情報ビットの行方向に沿っている、請求項9に記載の磁気バーコードチップの読取方法。 【請求項11】 前記磁気バーコードチップリーダは、マルチチャンネル磁場勾配センサ、磁気光学顕微鏡、磁場モニタ、及び、走査磁気抵抗顕微鏡のうちの一つである、請求項9に記載の磁気バーコードチップの読取方法。」 第5 引用文献,引用発明等 1.引用文献1について 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(実願昭63-079799号(実開昭63-195459号)のマイクロフィルム)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) A 「<産業上の利用分野> 本考案は、磁気的情報を内包したラミカードに関する。」(第1頁第16行?第18行) B 「<実施例> 基板1,2は、非磁性材料からなり、例えば紙、プラスチックス、又は一般に非磁性材料と言われている金属、例えばアルミニウム、銅、鉛、ベリリウム銅、金、銀、ステンレス、タングステン、モリブデン等から作られた基板である。基板1と2の間には、多数の情報ドット3を設ける。この磁性ドット3は、軟磁性材の粉末或はFe,Ni,Co等の保磁力が10エルステッド以下の磁性粉末、例えば0.5?5μm程度の粒度のものを主体とした磁性インキ等で直径1?5mm程度の点(ドット)として形成される。磁性ドット3は着磁されることなく、その存在が情報を構成する。基板1,2の表面には、目視情報として文字、数字、記号、写真等が印刷される。基板1,2の厚味は0.1?0.5mm程度で、全体の厚味は0.6?1.2mm程度とするのが良いが、一方の基板の厚味を他方の基板より厚く、例えば、1.0mm程度としても良い。紙を基板として使用するときには、機械的補強及び防湿のためプラスチックスフィルム、例えばポリエステルフィルムで密封被覆する。情報ドット3は基板1又は2の一方の表面に磁性粉末成分を印刷、転写、メッキ等の方法で薄質に定着して形成する。従って情報ドットの厚味は考慮する必要はない。」(第4頁第7行?第5頁第11行) C 「第2図は情報ドットによる固有情報の形成列を説明するもので、ラミカードが矢印4方向に進とするとき、矢印4と直角方向にチャネル区分、図面上では1CH,2CH,3CH,4CH,5CHを設ける。チャネル区分の内の中央のチャネル区分3CHは、クロックチャネルとして設けられ、各行区分に情報ドットを設けてある。他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHは、例えば2進コードの2^(1),2^(2),2^(3),2^(4)ビットに対応し、又行区分は10進数1?15となる。 1の行区分には情報ドット3が全てのチャネル区分1CH?5CHに設けられている。これはラミカードの投入信号となるもので、各チャネルごとに設けられたドット読み取りセンサ部の出力は論理「1」となる。この出力信号を相互に比較回路或は論理積回路で処理する事に依りラミカードの投入の向が正しいかどうかを判別する。 次に、2の行区分には2CH?5CHに情報ドットが設けられている。この信号はラミカードの裏表の判別信号として使用される。又、3?5の行区分は、「TEL」との文字を表示するべく割当られている。情報ドットがない場合には数の「0」を意味し、従って6?14の行区分は数字の「037327271」を意味する位置に情報ドットが設けられている。最後の行区分は読み取り終了信号を得るものである。以上から、このラミカードが持つ固有の情報の意味は、「TEL037327271」となる。 3CHのチャネル区分はクロックチャネルで、行区分1?15の位置情報を与え、他のチャネル区分1CH、2CH、4CH、5CHの読み取り行区分位置を規制する。 ラミカードを読み取り装置に投入したとき、手動に依る場合、自然落下に依る場合、或は搬送速度が一定しない搬送手段を使用する場合等で、ラミカードが読み取りセンサ部の位置を通過するのに、その速度は刻々と変化する。例えば、自然落下では、そのときの状態に依って落下速度が2?200倍も変化する。この様なとき、クロックチャネルは情報ドット位置を時間情報として読取装置に与えるもので、ラミカードの移動速度が大幅に変動しても、他のチャネル区分に設けられた情報ドットを正確に読み取る事が出来る。 又、クロックチャネルは、ラミカードのほぼ中央に設けてあるので、ラミカードを手動や自然落下等で移動させるとき、図面上の前後左右に多少揺れても中央部は周辺部よりも揺れが小さいからクロック情報の読み取り誤差は殆ど生じない。従って、ラミカードの固有情報の読み取りを正確に行う事が出来る。 上述の実施例では5チャネルの例を述べたが、必要に応じて増減する事が出来る。例えば、増設のときは文字を意味する行区分をふやす事が出来る。又、チャネル数を偶数区分設けた場合にはクロックチャネルの左右に非対称な数のチャネル区分が存在する事になるので、この事を利用してラミカードの裏表を判別する信号を得ることが出来、或はチャネル数が奇数区分となる場合もクロックチャネルの左右を非対称とすることで同様に裏表の判別が可能となる。この場合には裏表判別用の行区分は不用になる。更に又、ラミカード読み取りの信頼性を高めるため、パリティビットを得るチャネル区分を設ける事が出来る。このチャネル区分の情報ドットは、行区分に於ける情報ドットの数が例えば奇数となる行区分に設ける。」(第6頁第6行?第9頁第10行) イ 上記AないしCに記載された事項を踏まえると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「基板1,2は,非磁性材料からなり,基板1と2の間には,多数の情報ドット3を設け, 磁性ドット3は,Fe,Ni,Co等の保磁力が10エルステッド以下の磁性粉末,例えば0.5?5μm程度の粒度のものを主体とした磁性インキ等で直径1?5mm程度の点(ドット)として形成され, 情報ドットによる固有情報の形成列として,チャネル区分1CH,2CH,3CH,4CH,5CHを設け,中央のチャネル区分3CHは,クロックチャネルとして設けられ,各行区分に情報ドットを設け, 他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHは,例えば2進コードの2^(1),2^(2),2^(3),2^(4)ビットに対応し,又行区分は10進数1?15となり, 1の行区分には情報ドット3が全てのチャネル区分1CH?5CHに設けられていて,これはラミカードの投入信号となるもので,各チャネルごとに設けられたドット読み取りセンサ部の出力は論理「1」となり, 2の行区分には2CH?5CHに情報ドットが設けられ,この信号はラミカードの裏表の判別信号として使用され, 3?5の行区分は,「TEL」との文字を表示するべく割当られ, 情報ドットがない場合には数の「0」を意味し,6?14の行区分は数字の「037327271」を意味する位置に情報ドットが設けられ, 最後の行区分は読み取り終了信号を得るものであり,ラミカードが持つ固有の情報の意味は,「TEL037327271」となり, 3CHのチャネル区分はクロックチャネルで,行区分1?15の位置情報を与え,他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHの読み取り行区分位置を規制し, クロックチャネルは,ラミカードのほぼ中央に設けてあるので,ラミカードを手動や自然落下等で移動させるとき,前後左右に多少揺れても中央部は周辺部よりも揺れが小さいからクロック情報の読み取り誤差は殆ど生じないことで,ラミカードの固有情報の読み取りを正確に行う事が出来るものであり, チャネル数を偶数区分設けた場合にはクロックチャネルの左右に非対称な数のチャネル区分が存在する事になるので、この事を利用してラミカードの裏表を判別する信号を得ることが出来、或はチャネル数が奇数区分となる場合もクロックチャネルの左右を非対称とすることで同様に裏表の判別が可能となる, 磁気的情報を内包したラミカード。」 2.引用文献2について ア 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平8-249412号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) D 「【0012】図2は、読み取るべき記録担体10の一例を示している。 【0013】この記録担体10には、紙等の記録面20内に、本来記録すべきデジタル情報を記録した矩形の情報記録領域23と、その左辺および上辺に沿って設けられたL状の同期領域13とが設けられている。 【0014】情報記録領域23には、ビットに対応する行列状の枡目を仮想的に設定し、記録すべきデジタル情報に応じた明暗(白黒)を上記各枡目に付与して、上記記録すべきデジタル情報が2次元パターンとして記録されている。実際には、記録面20は本来白色であり、その上にインク等で正方形の黒枡目のみを印刷している。記録すべきデジタル情報は2進数のビット列で表し、2進数の1の値のビットに相当する枡目は白色とし、0の値のビットに相当する枡目は黒色としている。情報記録領域23内の、ある枡目の位置Pcは、横方向の位置(列数)をm(m=1,2,3,…,M_(C))、縦方向の位置(行数)をn(n=1,2,3,…,M_(L))としたとき、この2つの位置の組によって Pc=(m,n) と表される。なお、mの最大値M_(C)は情報記録領域23の横方向の全列数から1を減じた値とする。全列数から1を減じる理由は、情報記録領域23の右端の列に、後述する誤り検出用符号のための領域24を確保するためである。2進数のビット列で表したデータのN番目(N=1,2,3,…,M_(C)×M_(L))のビットに対応する枡目PNを P_(N)=(res(N/M_(C))+1,int(N/M_(C))+1) ただし、res(N/M_(C))は割り算N/M_(C)の余り、int(N/M_(C))は割り算N/M_(C)の商(整数部分) とすれば、ビットと枡目とが1対1に対応し、横方向を優先して並べた2次元パターンができる。すなわち、図2は、情報記録領域23に2進数のビット列 011010100011010011011101 10010101… を記録した例を示している。 ・・・(略)・・・ 【0017】L状の同期領域13は、記録面20上で情報記録領域23と1枡目分の幅だけ離間して設けられている。この同期領域13には、記録面20における情報記録領域23全体の範囲を示すとともに、個々の枡目の位置を示すための位置決め用マークとしての同期セル14,14,…が設けられている。同期セル14には、情報記録領域23内の枡目と同じサイズを持つ黒枡目からなるもの(以下「黒セル」という。)と、情報記録領域23内の枡目と同じサイズを持つ白枡目からなるもの(以下「白セル」という。)とがある。これらの黒セルと白セルとは同期領域13に交互に配置されており、各セル14の位置は、情報記録領域23内の個々の枡目の横方向の位置(列数)と縦方向の位置(行数)に対応している。左上隅に設けられた黒セルは読み取り時に重要な役割を果たすものであり、ここでは左上隅の黒セルを特に基準セル14Aと呼ぶ。」 イ 上記Dに記載された事項を踏まえると,引用文献2には,以下の発明が記載されているものと認められる。 「紙等の記録面20内に,本来記録すべきデジタル情報を記録した矩形の情報記録領域23と,その左辺および上辺に沿って設けられたL状の同期領域13とが設けられ, 情報記録領域23には,ビットに対応する行列状の枡目を仮想的に設定し,記録すべきデジタル情報に応じた明暗(白黒)を各枡目に付与して,記録すべきデジタル情報が2次元パターンとして記録され, 記録すべきデジタル情報は2進数のビット列で表し,2進数の1の値のビットに相当する枡目は白色とされ,0の値のビットに相当する枡目は黒色とされ, L状の同期領域13は,記録面20上で情報記録領域23と1枡目分の幅だけ離間して設けられ,この同期領域13には,記録面20における情報記録領域23全体の範囲を示すとともに,個々の枡目の位置を示すための位置決め用マークとしての複数の同期セル14が設けられ, 同期セル14には,情報記録領域23内の枡目と同じサイズを持つ黒枡目からなる黒セルと,情報記録領域23内の枡目と同じサイズを持つ白枡目からなる白セルとがあり, これらの黒セルと白セルとは同期領域13に交互に配置されており,各セル14の位置は,情報記録領域23内の個々の枡目の横方向の位置(列数)と縦方向の位置(行数)に対応している, 記録担体10。」 3.その他の文献に記載された事項について (1)参考文献1について ア 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされ,前置報告に引用された参考文献1(特開平11-111650号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) E 「【0118】次に、本実施の形態5の半導体ウエハの分割の具体例等について説明する。図25および図26はその一例を示している。図25の格子状の破線は分割線を示している。図26は、サブカット工程203, 203a後のサブウエハ(チップブロックに相当)SWを示している。サブウエハSWは、複数個の半導体チップ2を有している。図26には半導体ウエハ1が9個のサブウエハに分割された状態が示されているが、これに限定されるものではない。 【0119】また、各サブウエハSWには、そのサブウエハの情報を示すマークが付されている。このマークには、ロット番号、ロット内のシリアル番号、製品の種類、半導体ウエハ中におけるサブウエハの位置等の情報が記されている。このようなマークを付すことにより、不良の追跡調査がし易い等の効果が得られる。そのマークの一例を図27?図30に示す。図27は、サブウエハSWの外周に切り欠きによるマークM_(1 )を付した例である。このマークM_(1 )は、例えばサブウエハカット工程203, 203aの際に付されたものである。図28は、サブウエハSWの外周近傍にバーコード表示によるマークM_(2 )を付した例である。マークM_(2 )は、前工程後にレーザにより形成しても良いし、前工程中の所定のパターンを形成する場合のフォトリソグラフィ工程時に形成しても良い。図29は、半導体ウエハの切断領域にバーコード表示によるマークM_(3 )を付した例である。図30はサブウエハをチップブロックCBに切断することを想定した場合であって、サブウエハSW用のマークM_(4 )と、チップブロックCB用のマークM_(5 )とを付した例である。サブウエハSW用のマークM_(4 )は、チップブロックCBの領域外の切断領域に設けられている。また、チップブロックCB用のマークM_(5 )は、チップブロックCBの領域内の切断領域に設けられている。いずれのマークM_(4),M_(5 )もバーコード表示によるものである。ただし、チップブロックCB用のマークM_(5 )を、サブウエハSW用のマークM_(4 )としても良い。」 イ 上記Eに記載された事項を踏まえると,参考文献1には,以下の発明が記載されているものと認められる。 「9個のサブウエハに分割された半導体ウエハ1であって, 各サブウエハSWには,そのサブウエハの情報を示すマークが付され,このマークには,ロット番号,ロット内のシリアル番号,製品の種類,半導体ウエハ中におけるサブウエハの位置等の情報が記されている 半導体ウエハ1。」 (2)参考文献2について ア 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされた登録実用新案第3045458号公報(1997年11月12日公開。以下,「参考文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) F 「【0009】 【考案の実施の形態】 本考案の実施例を図1及び図2を用いて説明する。 図1は各縦列の円形のドット輪郭において最上位の輪郭が塗色されるとそれがその桁の数5を表示し、中間の4個の円形のドット輪郭の塗色された個数が夫々の桁の数1?4に対応した表示をし、また、最下位の円形ドット輪郭や余白部分に数字以外の情報を表示するようにした本考案ドッドコードの一例の平面図、図2は最下に位置した円形ドット輪郭に数5を表示させ、上位側の3個の円形ドット輪郭と余白に数字以外の情報を表示するようにした本考案コードの他の一例の平面図である。 ・・・(略)・・・ 【0011】 この白抜きドット輪郭Aの形状は、円形のほか任意の多角形を選択することができ、また、その大きさも表示対象の大きさ等に合せて任意の大きさとすることができるが、本考案では各輪郭Aを等ピッチで個々に独立して、即ち、隣接ドット輪郭Aと接することなく表示するものとする。 ・・・(略)・・・ 【0013】 Cは、白抜きのドット輪郭列群Pにおける最上位のドット輪郭の横列、Dは最上位の列Cに続く中間の4個の白抜きドット輪郭Aの横列であり、最上位のドット輪郭の横列Cと中間の4個のドット輪郭Aの横列Dはラインl_(1)により区分されている。 【0014】 Eは、中間の4個のドット輪郭Aの横列Dの下に続いて形成した下段のドット輪郭の横列であり、中間の4個のドット輪郭の横列Dとは接することなくラインl_(2)により区分されている。 ・・・(略)・・・ 【0016】 本考案では、各ドット輪郭Aの塗り潰しによる数の表示を、算盤において珠を上げて数字を表示する態様と対応させている。例えば、最上位のドット輪郭の横列Cにおける各ドット輪郭の塗り潰しは、繰上がった数5に対応し、また、中間の4個のドット輪郭の横列Dにおいて、ある桁について上から3ドット塗り潰せば、珠を3個上げて表示する算盤上の数3に対応している。従って、ある桁において、横列Cにおけるドット輪郭と横列Dにおける4個のドット輪郭をともに塗り潰さない場合は、その桁は数0に対応することとなる。 【0017】 最下段のドット輪郭の横列E、或は、その余白には、数字やアルファベット,漢字等の文字や記号を直接記載して上記一連の数情報と関連する情報等を表示する。 【0018】 上記の本考案ドットコードによって表示された一連の数や記号等は、光学的読取装置(図示せず)を、コード上を右から左、或は、左から右等の所定方向に移動させることなどにより機械的に読取らせることができる。各ドット輪郭の塗り潰しが着色乃至は有色磁性体であれば磁気読取りもでき、また、いずれの表示であっても人が肉眼で一見すれば直ちに表示されたコードを数値として判読することができる。」 イ 上記Fに記載された事項を踏まえると,参考文献2には,以下の発明が記載されているものと認められる。 「各縦列の円形のドット輪郭において最上位の輪郭が塗色されるとそれがその桁の数5を表示し,中間の4個の円形のドット輪郭の塗色された個数が夫々の桁の数1?4に対応した表示をし,また,最下位の円形ドット輪郭や余白部分に数字以外の情報を表示するようにしたドッドコードであって, 白抜きドット輪郭Aの形状は,円形のほか任意の多角形を選択することができ, Cは,白抜きのドット輪郭列群Pにおける最上位のドット輪郭の横列,Dは最上位の列Cに続く中間の4個の白抜きドット輪郭Aの横列であり,最上位のドット輪郭の横列Cと中間の4個のドット輪郭Aの横列Dはラインl_(1)により区分され, Eは,中間の4個のドット輪郭Aの横列Dの下に続いて形成した下段のドット輪郭の横列であり,中間の4個のドット輪郭の横列Dとは接することなくラインl_(2)により区分されており, 各ドット輪郭Aの塗り潰しによる数の表示を,算盤において珠を上げて数字を表示する態様と対応させ,最上位のドット輪郭の横列Cにおける各ドット輪郭の塗り潰しは,繰上がった数5に対応し,また,中間の4個のドット輪郭の横列Dにおいて,ある桁について上から3ドット塗り潰せば,珠を3個上げて表示する算盤上の数3に対応しており, 最下段のドット輪郭の横列Eには,数字やアルファベット,漢字等の文字や記号を直接記載して上記一連の数情報と関連する情報等を表示し, 各ドット輪郭の塗り潰しが有色磁性体であれば磁気読取りもできる, ドットコード。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列」として設けられる「チャネル区分1CH,2CH」及び「4CH,5CH」における「情報ドット」は,引用発明において,「他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHは,例えば2進コードの2^(1),2^(2),2^(3),2^(4)ビットに対応し,又行区分は10進数1?15」となることから,本願発明1の「バイナリ情報ビット」に相当する。 また,引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列」として設けられる「中央のチャネル区分3CH」の「クロックチャネルとして設けられ」た「各行区分」の「情報ドット」は,本願発明1の「情報識別ビット」に相当する。 イ 上記アでの認定に加え,引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列」として設けられる「チャネル区分1CH,2CH」及び「4CH,5CH」における「情報ドット」は,引用発明において,「他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHは,例えば2進コードの2^(1),2^(2),2^(3),2^(4)ビットに対応し,又行区分は10進数1?15」となることから,15行4列のアレイと認められるところ,15及び4は,1より大きい整数であることは明らかである。 また,引用発明の「1の行区分には情報ドット3が全てのチャネル区分1CH?5CHに設けられている。これはラミカードの投入信号となるもので,各チャネルごとに設けられたドット読み取りセンサ部の出力は論理「1」となり」との記載,引用発明の「情報ドットがない場合には数の「0」を意味し,6?14の行区分は数字の「037327271」を意味する位置に情報ドットが設けられ」との記載から,引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列」として設けられる「チャネル区分1CH,2CH」及び「4CH,5CH」における「情報ドット」の有無が,本願発明1の「各バイナリ情報の各バイナリ状態」に相当する。 加えて,本件出願の明細書の段落【0023】には,「永久磁石バーは、四角形、三角形、円形、及び、多角形とすることができ、さらに、数字又は記号とすることもできる」と記載されていることから,本願発明1の「永久磁石バー」は,形状として円形である場合を含むと認められるところ,引用発明において,符号の一致から「情報ドット3」に一致すると認められる「磁性ドット3」は,「Fe,Ni,Co等の保磁力が10エルステッド以下の磁性粉末,例えば0.5?5μm程度の粒度のものを主体とした磁性インキ等で直径1?5mm程度の点(ドット)として形成され」るものであるから,引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列」として設けられる「チャネル区分1CH,2CH」及び「4CH,5CH」における「情報ドット」は,本願発明1の「永久磁石バー」の「存在」に相当する。これより,引用発明の「情報ドットがない場合には数の「0」を意味」することは,本願発明1の「永久磁石バーが不在であるヌルビット」の「存在」に相当する。 以上から,引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列」として設けられる「チャネル区分1CH,2CH」及び「4CH,5CH」における「情報ドット」は,本願発明1の「前記バイナリ情報ビットは、N行M列のアレイから成り、各バイナリ情報のバイナリ状態は、永久磁石バー又は永久磁石バーが不在であるヌルビットの存在によって表され、M及びNは、1より大きい整数であり、かつ、前記永久磁石バー及び前記ヌルビットは、それぞれ、1及び0、又は、0及び1を表」すことに相当する。 ウ 引用発明の「3CHのチャネル区分はクロックチャネルで,行区分1?15の位置情報を与え,他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHの読み取り行区分位置を規制」するとの記載は,位置情報として位置を表すことに加え,「チャネル数が奇数区分となる場合もクロックチャネルの左右を非対称とすることで同様に裏表の判別が可能となる」ことから,裏表という状態を表すものともいえる。 よって,上記ア及びイでの認定を加え,引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列」として設けられる「中央のチャネル区分3CH」の「クロックチャネルとして設けられ」た「各行区分」の「情報ドット」は,本願発明1の「前記情報識別ビットは、磁気バーコードチップの位置及び状態を表すために永久磁石バー識別子から構成され」ることと,下記の点で相違するものの,“前記情報識別ビットは,位置及び状態を表すために永久磁石バー識別子から構成され”る点で一致する。 エ 引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列として,チャネル区分1CH,2CH,3CH,4CH,5CHを設け,」「他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHは,例えば2進コードの2^(1),2^(2),2^(3),2^(4)ビットに対応し,又行区分は10進数1?15とな」ることは,情報ドットによる固有情報を識別するため,形成列としてのチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHの間と,各行区分の間に,間隔が必要であることは明らかであるから,引用発明は,本願発明1と,“バイナリ情報ビットのアレイにおける行と列との間に間隔があ”る点で一致する。 オ 上記ア及びイでの認定に加え,引用発明の「他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHは,例えば2進コードの2^(1),2^(2),2^(3),2^(4)ビットに対応し,又行区分は10進数1?15とな」ることは,引用発明の「3CHのチャネル区分はクロックチャネルで,行区分1?15の位置情報を与え,他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHの読み取り行区分位置を規制」との記載から,3CHのチャネル区分のクロックチャネルで,行区分1?15の位置情報を与える特定パターンの配列により,他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHの読み取り行区分位置を規制することで,他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHに係る情報ビットを間接的に決定していると認められる。 よって,引用発明の「他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHは,例えば2進コードの21,22,23,24ビットに対応し,又行区分は10進数1?15とな」ることは,本願発明1の「バイナリ情報ビットの情報は、予め定義されたコード又は特定のアルゴリズムの方法で、情報識別ビットにおける永久磁石バーを特定のパターンに配列することによって、間接的に決定することができ」ることに相当する。 カ 引用発明の「磁気的情報を内包したラミカード」は,本願発明1の「磁気バーコードチップ」と,下記の点で相違するものの,“磁気的情報を内包した記録媒体”である点で一致する。 キ 以上から,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 (一致点) バイナリ情報ビットと情報識別ビットとを備え, 前記バイナリ情報ビットは,N行M列のアレイから成り,各バイナリ情報のバイナリ状態は,永久磁石バー又は永久磁石バーが不在であるヌルビットの存在によって表され,M及びNは,1より大きい整数であり,かつ,前記永久磁石バー及び前記ヌルビットは,それぞれ,1及び0,又は,0及び1を表し, 前記情報識別ビットは,位置及び状態を表すために永久磁石バー識別子から構成され, バイナリ情報ビットのアレイにおける行と列との間に間隔があり, バイナリ情報ビットの情報は,予め定義されたコード又は特定のアルゴリズムの方法で,情報識別ビットを特定のパターンに配列することによって,間接的に決定することができる, 磁気的情報を内包した記録媒体。 (相違点1) 本願発明1は,「前記情報識別ビットは、磁気バーコードチップの位置及び状態を表すために永久磁石バー識別子から構成され、前記バイナリ情報ビットの開始ビットは、前記情報識別ビットにおける永久磁石バー行の第1列と永久磁石バー列の第1行との交点に形成される座標に配置され、バイナリ情報ビットの開始ビットの行方向は、情報識別ビットの行方向に沿っていて、バイナリ情報ビットの開始ビットの列方向は、情報識別ビットの列方向に沿って」いるのに対して, 引用発明は,「行区分1?15の位置情報を与え,他のチャネル区分1CH,2CH,4CH,5CHの読み取り行区分位置を規制」する「3CHのチャネル区分」を有し,本願発明1の「前記情報識別ビットは、」「位置及び状態を表すために永久磁石バー識別子から構成され」る構成に対応する構成を有するといえるものの,「磁気バーコードチップの位置及び状態」を表すこと,「前記バイナリ情報ビットの開始ビットは、前記情報識別ビットにおける永久磁石バー行の第1列と永久磁石バー列の第1行との交点に形成される座標に配置され、バイナリ情報ビットの開始ビットの行方向は、情報識別ビットの行方向に沿っていて、バイナリ情報ビットの開始ビットの列方向は、情報識別ビットの列方向に沿って」いること,「前記バイナリ情報ビットの周辺領域に配置されてい」ることは,特定されていない点。 (相違点2) 本願発明1は,「前記磁気バーコードチップは、マイクロエレクトロニクスリソグラフィによってウェハ上に製造され、バイナリ情報ビットのアレイにおける行と列との間に間隔があ」るのに対して, 引用発明は,「バイナリ情報ビットのアレイにおける行と列との間に間隔があ」ることに相当することは記載されていると認められるものの,「前記磁気バーコードチップは、マイクロエレクトロニクスリソグラフィによってウェハ上に製造され」ることは,特定されていない点。 (相違点3) 本願発明1は,「永久磁石バー識別子における永久磁石バーの大きさは、バイナリ情報ビットの永久磁石バー又はヌルビットの大きさよりもわずかに大き」いのに対して, 引用発明は,本願発明1の「バイナリ情報ビット」に相当する,引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列」として設けられる「チャネル区分1CH,2CH」及び「4CH,5CH」における「情報ドット」と, 本願発明1の「情報識別ビット」に相当する,引用発明の「情報ドットによる固有情報の形成列」として設けられる「中央のチャネル区分3CH」の「クロックチャネルとして設けられ」た「各行区分」の「情報ドット」 における大きさの違いについて,特に特定されていない点。 (相違点4) 本願発明1は,「前記磁気バーコードチップは、リソグラフィマシンによって日付が記された前記ウェハ上の露光ユニットの内部スライスユニットに対する位置番号が付されている」のに対して, 引用発明は,特に特定されていない点。 (相違点5) 本願発明1は,「磁気バーコードチップ」であるのに対して, 引用発明の「磁気的情報を内包したラミカード」は,磁気的情報を内包した記録媒体ではあるものの,バーコードチップであるとは特定されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み,先に相違点1について検討する。 相違点1に係る,特に,本願発明1の「前記バイナリ情報ビットの開始ビットは、前記情報識別ビットにおける永久磁石バー行の第1列と永久磁石バー列の第1行との交点に形成される座標に配置され、バイナリ情報ビットの開始ビットの行方向は、情報識別ビットの行方向に沿っていて、バイナリ情報ビットの開始ビットの列方向は、情報識別ビットの列方向に沿って」いる点は,上記引用文献1及び引用文献2,参考文献1及び参考文献2には記載されておらず,優先日前において周知技術または技術常識であるともいえない。 加えて,本願発明1に係る「情報識別ビット」に相当する,引用発明に係る「中央のチャネル区分3CH」の「クロックチャネルとして設けられ」た「各行区分」の「情報ドット」は, 本願発明1の「バイナリ情報ビット」に相当する,引用発明の「チャネル区分1CH,2CH」及び「4CH,5CH」における「情報ドット」に対して,「チャネル区分1CH,2CH」と「4CH,5CH」の間に設けられるところ, 引用発明は,これにより,「クロックチャネルは,ラミカードのほぼ中央に設けてあるので,ラミカードを手動や自然落下等で移動させるとき,前後左右に多少揺れても中央部は周辺部よりも揺れが小さいからクロック情報の読み取り誤差は殆ど生じないことで,ラミカードの固有情報の読み取りを正確に行う事が出来る」効果を奏するものであって,引用発明に,相違点1に係る上記技術的特徴を適用することは,当該効果に反するものと認められるから,阻害要因というべきである。 したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2に記載された技術的事項,参考文献1及び参考文献2に記載された技術的事項及び当業者の周知技術または技術常識に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2?11について 本願発明2?11も,本願発明1の「前記バイナリ情報ビットの開始ビットは、前記情報識別ビットにおける永久磁石バー行の第1列と永久磁石バー列の第1行との交点に形成される座標に配置され、バイナリ情報ビットの開始ビットの行方向は、情報識別ビットの行方向に沿っていて、バイナリ情報ビットの開始ビットの列方向は、情報識別ビットの列方向に沿って」と同一の構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2に記載された技術的事項,参考文献1及び参考文献2に記載された技術的事項及び当業者の周知技術または技術常識に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 1 理由1(特許法第29条第2項)について 令和2年3月9日付けの補正により,本願発明1?11は,「前記バイナリ情報ビットの開始ビットは、前記情報識別ビットにおける永久磁石バー行の第1列と永久磁石バー列の第1行との交点に形成される座標に配置され、バイナリ情報ビットの開始ビットの行方向は、情報識別ビットの行方向に沿っていて、バイナリ情報ビットの開始ビットの列方向は、情報識別ビットの列方向に沿って」いるという技術的事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1及び引用文献2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由1を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由について 1 令和元年12月6日付けの拒絶の理由について (1)理由1(特許法第36条第6項第2号)について 平成30年12月5日付けの手続補正に係る請求項1の「前記バイナリ情報ビットは、バイナリ情報ビットのN行M列のアレイであり」の記載は,「バイナリ情報ビットの」なる記載があることで,いかなることを特定しているのかが不明確であるとの拒絶理由を通知したが,令和2年3月9日付けの手続補正の請求項1において,「前記バイナリ情報ビットは、N行M列のアレイから成り」と補正された結果,請求項1が引用する請求項2?11も含め,この拒絶理由は解消された。 また,平成30年12月5日付けの手続補正に係る請求項1の「前記バイナリ情報ビットの開始ビットは、前記情報識別ビットにおける永久磁石バー行の第1列と永久磁石バー列の第1行との交点に形成される座標に配置され、その行方向は、情報識別ビット1の行方向に沿っていて、列方向は、情報識別ビット1の列方向に沿っていて」の記載は, 「その行方向」及び「列方向」の記載は,それぞれ,いかなるものの「行方向」及び「列方向」であるのかが不明確であり, 2つの「情報識別ビット1」の記載は,請求項1には「情報識別ビット」及び「前記情報識別ビット」の記載もあるところ,これらの記載との関係が不明確である との拒絶理由を通知したが,令和2年3月9日付けの手続補正の請求項1において,「前記バイナリ情報ビットの開始ビットは、前記情報識別ビットにおける永久磁石バー行の第1列と永久磁石バー列の第1行との交点に形成される座標に配置され、バイナリ情報ビットの開始ビットの行方向は、情報識別ビットの行方向に沿っていて、バイナリ情報ビットの開始ビットの列方向は、情報識別ビットの列方向に沿っていて」と補正された結果,請求項1が引用する請求項2?11も含め,この拒絶理由は解消された。 加えて,平成30年12月5日付けの手続補正に係る請求項9の「前記磁場バーコードチップ」の記載は,請求項9の当該記載以前,請求項9が引用する請求項1のいずれにも「磁場バーコードチップ」に関する記載が認められず,請求項9における「前記磁場バーコードチップ」は,いかなるものを指しているのかが不明確であるとの拒絶理由を通知したが,令和2年3月9日付けの手続補正の請求項9において,「前記磁気バーコード」と補正された結果,請求項9が引用する請求項10,請求項11も含め,この拒絶理由は解消された。 (2)理由2(特許法第36条第4項第1号)について ア 実施可能要件について 平成30年12月5日付けの手続補正に係る請求項1の「バイナリ情報ビットと情報識別ビットとを備え、 前記バイナリ情報ビットは、バイナリ情報ビットのN行M列のアレイであり、各バイナリ情報のバイナリ状態は、永久磁石バー又は永久磁石バーが不在であるヌルビットの存在によって表され、M及びNは、1より大きい整数であり、かつ、前記永久磁石バー及び前記ヌルビットは、それぞれ、1及び0、又は、0及び1を表し、 前記情報識別ビットは、磁気バーコードチップの位置及び状態を表すために永久磁石バー識別子から構成され、前記バイナリ情報ビットの開始ビットは、前記情報識別ビットにおける永久磁石バー行の第1列と永久磁石バー列の第1行との交点に形成される座標に配置され、その行方向は、情報識別ビット1の行方向に沿っていて、列方向は、情報識別ビット1の列方向に沿っていて」 について,本件出願の明細書の段落【0020】における記載を参酌しても,本件出願の【図1】には,いかなるものが「情報識別ビット1」,「バイナリ情報ビット2」,「永久磁石バー及び/又はヌルビット3」,「永久磁石バー識別子4」であるのかが示されていないため,請求項1における「情報識別ビット」,「バイナリ情報ビット」,「永久磁石バー及び/又はヌルビット」,「永久磁石バー識別子」が,それぞれいかなるものであるのかが不明確であり,本件出願の発明の詳細な説明は,請求項1が引用する請求項2?11を含め,発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとの拒絶理由を通知したが,令和2年3月9日付けの手続補正の【図1】において,「情報識別ビット1」,「バイナリ情報ビット2」,「永久磁石バー及び/又はヌルビット3」,「永久磁石バー識別子4」に対応する符号を明示する補正がなされた結果,請求項1が引用する請求項2?11を含め,この拒絶理由は解消された。 イ 委任省令要件について 本件出願の明細書の段落【0027】の記載を参酌しても,本件出願の【図2】の左側におけるコードパターンの記載が不鮮明であるため,上記段落【0027】の記載における「対応するコード」とはいかなるものであるのかが不明確であり,その結果,発明が解決しようとする課題の解決手段が不明確との拒絶理由を通知したが,令和2年3月9日付けの手続補正の【図2】において,出願当初の図の右側に記載された「10111111」等に対応するよう,図の左側におけるコードパターンが鮮明に補正された結果,この拒絶理由は解消された。 また,本件出願の明細書の段落【0030】?【0031】の記載を参酌しても, 本件出願の【図3】にて矢印で示されたものの記載が不鮮明であるため,いかなるものが「ウェハ10」,「露光ユニット6」,「ノッチ7」,「分離領域5」,「スライスユニット8」等に該当するのかが不明確であり, 本件出願の【図4】にて,スライスボックス8における,8行8列のアレイ型四角形ボックスのスライスユニット内の記載が不鮮明であるため,いかなるものがスライスボックス8のコードであるのかが不明確であり, その結果,発明が解決しようとする課題の解決手段が不明確であるとの拒絶理由を通知したが, 令和2年3月9日付けの手続補正の【図3】において,本件出願の明細書の段落【0030】に対応するように,「ウェハ10」,「露光ユニット6」,「ノッチ7」,「分離領域5」,「スライスユニット8」,「露光ユニット」としての「01-01」を,棒線にて示すよう補正された結果, 令和2年3月9日付けの手続補正の【図4】において,スライスボックス8における,8行8列のアレイ型四角形ボックスのスライスユニット内の記載が鮮明に補正された結果, この拒絶理由は解消された。 第9 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-05-27 |
出願番号 | 特願2016-541791(P2016-541791) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WY
(G06K)
P 1 8・ 121- WY (G06K) P 1 8・ 537- WY (G06K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 梅沢 俊 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
松平 英 山崎 慎一 |
発明の名称 | 磁気バーコードチップ及びその読取方法 |
代理人 | 山内 博明 |