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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1363701
審判番号 不服2018-5184  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-16 
確定日 2020-07-01 
事件の表示 特願2014-556674「Bスライス中の予測ユニットの単方向インター予測への制限」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月15日国際公開、WO2013/119816、平成27年 4月 2日国内公表、特表2015-510357〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)2月7日(優先権主張日 平成24年2月8日、平成24年4月11日、平成24年9月27日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年10月 6日 :国際出願翻訳文提出
平成26年10月16日 :手続補正
平成28年 1月22日 :手続補正
平成28年11月10日 :手続補正
平成28年12月8日付け :拒絶理由通知
平成29年 3月21日 :意見書提出および手続補正
平成29年 6月15日付け :拒絶理由通知
平成29年 9月20日 :意見書提出および手続補正
平成29年12月12日付け :拒絶査定
平成30年 4月 16日 :拒絶査定不服審判請求および手続補正
令和 1年 6月 12日付け:当審拒絶理由通知
令和 1年 9月18日 :意見書提出および手続補正

1. 本件発明について
令和1年9月18日付の手続補正書により補正された本件出願の特許請求の範囲の請求項24に記載された発明(以下、本件発明という)は、以下のとおりのものである。(符号A?Fは請求項の記載を分節するため当審で付したものであり、請求項の記載を符号を用いて、以下、「発明特定事項A」?「発明特定事項F」と称する。)

[請求項24]
A ビデオ復号のためのデバイスであって、前記デバイスは、
B ビデオデータのBスライス中の予測ユニット(PU)を特徴づけるサイズがしきい値を下回ることに基づいて、前記PUが単方向インター予測に制限されると判断するための手段と、
C 前記PUのためのマージ候補リストを生成するための手段、ここにおいて、前記マージ候補リストを生成することは、前記マージ候補リストから重複マージ候補をプルーニングすることを備え、前記マージ候補リストは、単方向マージ候補と双方向マージ候補とを備える、と、
D 前記マージ候補リスト中からマージ候補を選択するための手段、ここにおいて、前記選択されたマージ候補は、前記双方向マージ候補である、と、
E 前記選択されたマージ候補によって指定された動き情報に関連付けられた、1つまたは複数の参照ブロックを識別するための手段と、
F 前記PUが単方向インター予測に制限されることに基づいて、前記PUのための予測ビデオブロックが、前記識別された1つまたは複数の参照ブロックのうちの1つ以下に基づいて生成されるように、前記選択されたマージ候補のリスト0動きベクトルを保ち、前記選択されたマージ候補のリスト1動きベクトルを無視することによって、前記選択されたマージ候補を単方向マージ候補であることに変換するための手段と
A を備える、デバイス。

2. 当審拒絶理由の概要
令和1年6月19日付けで通知した当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。

(拡大先願)本件出願の請求項1-27に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。


(1)本件発明24について
平成30年4月16日付の手続補正書により補正された本件出願の特許請求の範囲の請求項24に記載された発明(以下、本件発明24という)は、以下のとおりのものである。
(中略)
(2)先願について
先願(PCT/JP2012/075200号)は、本件出願の優先日前の優先権を主張する特許出願であって、その出願後に国際公開がされた特許出願である。
(中略)
先願の優先権主張の基礎となる出願である、特願2011-289936号(以下、「先願の優先権基礎出願」という。)は、本件出願の優先日以前の平成23年12月28日を出願日とする特許出願である。
(中略)
ここで、先願明細書等と先願の優先権基礎出願の明細書等に共通して記載された事項から、先願に記載された発明を認定し、先願は、先願の優先権基礎出願の出願日である、平成23年12月28日に出願がなされたものとして扱う。
(3)先願発明について
先願には、以下のとおりの先願発明が記載されている。
(中略)
(4)本件発明24と先願発明との対比
本件発明24と上記先願発明とを比較すると、両者は一致し、実質的な相違点は見当たらず、本件発明24は上記先願発明と同一の発明であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
(5)請求項1?23、25?27に係る発明は、上記先願発明と同一の発明ということができ、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

3. 先願及び先願発明
(1) 先願について

先願(PCT/JP2012/075200号)は、本件出願の優先日前の優先権を主張する特許出願であって、その出願後に国際公開2013/047811号として国際公開がされた特許出願である。
先願の優先権主張の基礎となる出願である、特願2011-289936号(以下、「先願の優先権基礎出願」という。)は、本件出願の優先日以前の平成23年12月28日を出願日とする特許出願である。
先願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲、又は図面(以下、「先願の明細書等」という。)と、先願の優先権基礎出願の出願日における出願の明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「先願の優先権基礎の明細書等」という。)と、を比較すると、少なくとも先願の優先権基礎出願の明細書等の段落[0213]?[0247]、[0303]?[0328]、[0468]?[0781]及び図2、図3、図12、図17、図29?図75は、先願明細書等の段落[0019]?[0053]、[0109]?[0134]、[0274]?[0588]及び図2、図3、図12、図17、図29?図75と共通の記載がなされている。
ここで、先願明細書等と先願の優先権基礎出願の明細書等に共通して記載された事項から、先願に記載された発明を認定し、先願は、先願の優先権基礎出願の出願日である、平成23年12月28日に出願がなされたものとして扱う。

(2) 先願に記載されている事項

先願には、以下の記載がある(下線は強調のために当審で付した。各構成の末尾の段落番号及び図の番号は、先願明細書等のものである。)。

ア 「[0025] 動画像復号装置1には、動画像符号化装置2が動画像を符号化した符号化データ#1が入力される。動画像復号装置1は、入力された符号化データ#1を復号して動画像#2を外部に出力する。動画像復号装置1の詳細な説明に先立ち、符号化データ#1の構成を以下に説明する。
[0026] 〔符号化データの構成〕
図3を用いて、動画像符号化装置2によって生成され、動画像復号装置1によって復号される符号化データ#1の構成例について説明する。符号化データ#1は、例示的に、シーケンス、およびシーケンスを構成する複数のピクチャを含む。
[0027] 符号化データ#1におけるピクチャレイヤ以下の階層の構造を図3に示す。図3の(a)?(d)は、それぞれ、ピクチャPICTを規定するピクチャレイヤ、スライスSを規定するスライスレイヤ、ツリーブロック(Tree block)TBLKを規定するツリーブロックレイヤ、ツリーブロックTBLKに含まれる符号化単位(Coding Unit;CU)を規定するCUレイヤを示す図である。
[0028] (ピクチャレイヤ)
ピクチャレイヤでは、処理対象のピクチャPICT(以下、対象ピクチャとも称する)を復号するために動画像復号装置1が参照するデータの集合が規定されている。ピクチャPICTは、図3の(a)に示すように、ピクチャヘッダPH、及び、スライスS1?SNSを含んでいる(NSはピクチャPICTに含まれるスライスの総数)。
(中略)
[0033] (スライスレイヤ)
スライスレイヤでは、処理対象のスライスS(対象スライスとも称する)を復号するために動画像復号装置1が参照するデータの集合が規定されている。スライスSは、図3の(b)に示すように、スライスヘッダSH、及び、ツリーブロックTBLK1?TBLKNC(NCはスライスSに含まれるツリーブロックの総数)を含んでいる。
[0034] スライスヘッダSHには、対象スライスの復号方法を決定するために動画像復号装置1が参照する符号化パラメータ群が含まれる。スライスタイプを指定するスライスタイプ指定情報(slice_type)は、スライスヘッダSHに含まれる符号化パラメータの一例である。
[0035] スライスタイプ指定情報により指定可能なスライスタイプとしては、(1)符号化の際にイントラ予測のみを用いるIスライス、(2)符号化の際に単予測、又は、イントラ予測を用いるPスライス、(3)符号化の際に単予測、双予測、又は、イントラ予測を用いるBスライスなどが挙げられる。
[0036] また、スライスヘッダSHには、動画像復号装置1の備えるループフィルタ(不図示)によって参照されるフィルタパラメータが含まれていてもよい。
[0037] (ツリーブロックレイヤ)
ツリーブロックレイヤでは、処理対象のツリーブロックTBLK(以下、対象ツリーブロックとも称する)を復号するために動画像復号装置1が参照するデータの集合が規定されている。
[0038] ツリーブロックTBLKは、ツリーブロックヘッダTBLKHと、符号化単位情報CU1?CUNL(NLはツリーブロックTBLKに含まれる符号化単位情報の総数)とを含む。ここで、まず、ツリーブロックTBLKと、符号化単位情報CUとの関係について説明すると次のとおりである。
[0039] ツリーブロックTBLKは、イントラ予測またはインター予測、および、変換の各処理ためのブロックサイズを特定するためのユニットに分割される。
[0040] ツリーブロックTBLKの上記ユニットは、再帰的な4分木分割により分割されている。この再帰的な4分木分割により得られる木構造のことを以下、符号化ツリー(coding tree)と称する。
[0041] 以下、符号化ツリーの末端のノードであるリーフ(leaf)に対応するユニットを、符号化ノード(coding node)として参照する。また、符号化ノードは、符号化処理の基本的な単位となるため、以下、符号化ノードのことを、符号化単位(CU)とも称する。
[0042] つまり、符号化単位情報CU1?CUNLは、ツリーブロックTBLKを再帰的に4分木分割して得られる各符号化ノード(符号化単位)に対応する情報である。
(中略)
[0050] (CUレイヤ)
CUレイヤでは、処理対象のCU(以下、対象CUとも称する)を復号するために動画像復号装置1が参照するデータの集合が規定されている。
[0051] ここで、符号化単位情報CUに含まれるデータの具体的な内容の説明をする前に、CUに含まれるデータの木構造について説明する。符号化ノードは、予測ツリー(prediction tree;PT)および変換ツリー(transformtree;TT)のルートのノードとなる。予測ツリーおよび変換ツリーについて説明すると次のとおりである。
[0052] 予測ツリーにおいては、符号化ノードが1または複数の予測ブロックに分割され、各予測ブロックの位置とサイズとが規定される。別の表現でいえば、予測ブロックは、符号化ノードを構成する1または複数の重複しない領域である。また、予測ツリーは、上述の分割により得られた1または複数の予測ブロックを含む。
[0053] 予測処理は、この予測ブロックごとに行われる。以下、予測の単位である予測ブロックのことを、予測単位(prediction unit;PU)とも称する。」

イ 「[0109] (動画像復号装置の構成)
再び、図2を参照して、動画像復号装置1の概略的構成について説明すると次のとおりである。図2は、動画像復号装置1の概略的構成について示した機能ブロック図である。
[0110] 図2に示すように動画像復号装置1は、復号モジュール10、CU情報復号部11、PU情報復号部12、TU情報復号部13、予測画像生成部14、逆量子化・逆変換部15、フレームメモリ16および加算器17を備えている。」
(中略)
[0122] [PU情報復号部]
PU情報復号部12は、復号モジュール10を用いて、CU情報復号部11から供給されるPT情報PTIについて、PUレベルでの復号処理を行う。PU情報復号部12は、具体的には、以下の手順によりPT情報PTIを復号する。
[0123] PU情報復号部12は、PU分割タイプ情報Part_typeを参照して、対象予測ツリーにおけるPU分割タイプを決定する。続いて、PU情報復号部12は、対象予測ツリーに含まれる各PUを順に対象PUとして、対象PUに対応するPU情報の復号処理を実行する。
[0124] すなわち、PU情報復号部12は、対象PUに対応するPU情報から、予測画像の生成に用いられる各パラメータの復号処理を行う。
[0125] PU情報復号部12は、対象PUについて復号したPU情報を、予測画像生成部14に供給する。
(中略)
[0131] [予測画像生成部]
予測画像生成部14は、対象CUに含まれる各PUについて、PT情報PTIに基づいて予測画像を生成する。具体的には、予測画像生成部14は、対象予測ツリーに含まれる各対象PUについて、対象PUに対応するPU情報PUIに含まれるパラメータに従ってイントラ予測またはインター予測を行うことにより、復号済み画像である局所復号画像P’から予測画像Predを生成する。予測画像生成部14は、生成した予測画像Predを加算器17に供給する。
[0132] なお、予測画像生成部14が、動き補償予測パラメータ(動きベクトル、参照画像インデックス、インター予測フラグ)に基づいて対象CUに含まれるPUの予測画像を生成する手法について説明すると以下のとおりである。
[0133] インター予測フラグが単予測を示す場合、予測画像生成部14は、参照画像インデックスの示す参照画像の動きベクトルが示す場所に位置する復号画像に相当する予測画像を生成する。
[0134] 一方、インター予測フラグが双予測を示す場合には、予測画像生成部14は、2組の参照画像インデックスと動きベクトルとの組み合わせのそれぞれについて動き補償により予測画像を生成し、平均を算出することで、もしくは、各予測画像を対象ピクチャと各参照画像との表示時間間隔に基づいて重み付け加算することで、最終的な予測画像を生成する。」

ウ 「[0276] (PU情報復号部)
図12に示すように、PU情報復号部12は、動き補償パラメータ導出部(双予測制限手段、候補決定手段、推定手段)121、マージ候補優先順位情報記憶部122、および参照フレーム設定情報記憶部123を備える。
[0277] 動き補償パラメータ導出部121は、符号化データから対象CUに含まれる各PUの動き補償パラメータを導出する。
[0278] 動き補償パラメータ導出部121は、具体的には、以下の手順にて、動き補償パラメータを導出する。ここで、対象CUがスキップCUである場合に、マージインデックスの代わりに、スキップインデックスを復号し、その値に基づいてスキップCUにおける予測パラメータを導出してもよい。
[0279] まず、動き補償パラメータ導出部121は、スキップフラグを判定する。その結果、対象CUが非スキップCUであれば、動き情報復号部1021を用いて、マージフラグを復号する。
[0280] ここで、対象CUが、スキップCUまたはマージPUである場合、動き補償パラメータ導出部121は、マージインデックスを復号して、復号したマージインデックスの値に基づいて予測パラメータ(動きベクトル、参照画像インデックス、インター予測フラグ)を導出する。なお、動き補償パラメータ導出部121は、マージ候補優先順位情報記憶部122に記憶されているマージ候補情報に従って、マージインデックスで指定されるマージ候補を決定する。」

エ 「[0319] [2-3-1]小サイズPUでの双予測制限
動き補償パラメータ導出部121は、参照フレーム設定情報記憶部123に記憶される参照フレーム設定情報を参照して、インター予測において単予測および双予測のいずれの予測方式を適用するかを決定してもよい。
[0320] 動き補償パラメータ導出部121は、小サイズのPUでは、双予測を制限する構成であってもよい。そこで、参照フレーム設定情報を、小PUサイズ123Aおよび大PUサイズ123Bの2つの定義情報を含む構成とする。
[0321] 大PUサイズ123Bは、大きいサイズのPUにおいて選択可能な予測方式が定義される。大PUサイズ123Bでは、大きいサイズのPUにおいて双予測および単予測いずれの予測方式も制限なく選択できるよう定義される。
[0322] 小PUサイズ123Aは、小さいサイズのPUにおいて選択可能な予測方式が定義される。小PUサイズ123Aでは、小さいサイズのPUにおいて双予測が制限されるよう定義される。
[0323] 小PUサイズ123Aの定義の一例としては、インターCUに含まれる、マージを適用しないPUであって、サイズが16×16未満のPUにおいて、インター予測フラグの復号を省略して単予測を適用する旨定義する。
[0324] また、小PUサイズ123Aの定義の他の例としては、インターCUに含まれる、マージを適用するPUであって、サイズが16×16未満のPUにおいて、単予測を適用する旨定義する。」

オ 「[0348] (双予測制限における動き補償パラメータ導出部)
図29は、動き補償パラメータ導出部121の構成を示す。動き補償パラメータ導出部121は、スキップ動き補償パラメータ導出部1211、マージ動き補償パラメータ導出部1212、基本動き補償パラメータ導出部1213、双予測制限PU判定部1218、および、双単予測変換部1219から構成される。
(中略)
[0351] マージ動き補償パラメータ導出部1212は、対象PUがマージの場合に、対象PUの動き補償パラメータを導出し、双単予測変換部1219に入力する。双単予測変換部1219は、双予測限定条件に応じて動き補償パラメータを変換し、マージ動き補償パラメータ導出部1212に戻す。マージ動き補償パラメータ導出部1212は、双予測限定条件に応じて変換された動き補償パラメータを、対象PUの動き補償パラメータとして外部に出力する。なお、マージインデックスによって、動き補償パラメータが定まる場合には、マージ候補の各々に対して、双単予測変換部1219で変換を行い、変換後のマージ候補を、マージインデックスで選択する構成でも構わない。
(中略)
[0357] (マージ動き補償パラメータ導出部1212の詳細)
図43は、マージ動き補償パラメータ導出部1212の構成を示すブロック図である。なお、スキップPUの場合に用いられる場合には、以下のマージ候補をスキップ候補に置き換えて動作させる。
[0358] マージ動き補償パラメータ導出部1212は、隣接マージ候補導出部1212A、時間的マージ候補導出部1212B、ユニーク候補導出部1212C、結合双予測マージ候補導出部1212D、非スケール双予測マージ候補導出部1212E、ゼロベクトルマージ候補導出部1212F、マージ候補導出制御部1212G、マージ候補格納部1212H、マージ候補選択部1212Jから構成される。図43では図示しないが、隣接マージ候補導出部1212Aおよび時間的マージ候補導出部1212Bには、フレームメモリ16に格納されている既に復号されたCU及びPUの復号パラメータ、特に、PU単位の動き補償パラメータが供給される。なお、以下では、隣接マージ候補導出部1212A、時間的マージ候補導出部1212B、ユニーク候補導出部1212C、結合双予測マージ候補導出部1212D、非スケール双予測マージ候補導出部1212E、ゼロベクトルマージ候補導出部1212Fのことを、まとめて、マージ候補導出手段と称する。」

カ 「[0359] マージ動き補償パラメータ導出部1212においては、マージ候補導出制御部1212Gが、各マージ候補導出手段を制御し、所定の数MRG_MAX_NUM_CANDSのマージ候補を導出しマージ候補格納部1212Hに格納する。ここで、マージ候補は、PUの動き補償パラメータである予測リスト利用フラグpredFlagL0とpredFlagL1、参照インデックス番号refIdxL0とrefIdxL1、動きベクトルmvL0とmvL1から構成される。マージ候補格納部1212Hには、上記動きパラメータの組がマージ候補として格納される。格納するマージ候補は格納順に順序づけられたリスト(マージ候補リスト)として管理される。マージ候補選択部1212Jは、マージインデックスで指定されるマージ候補を選択し予測情報PUIとして出力する。」

キ 「[0361] 図44は、マージ動き補償パラメータ導出部1212の動作を示すフロー図である。なお、各マージ候補導出手段が、マージ候補を導出する手法については、別の図を用いて後述する。始めに、隣接マージ候補導出部1212Aにおいて、隣接ブロックの動き補償パラメータを用いてマージ候補A0?マージ候補B2が求められる(S101)。続いて、時間的マージ候補導出部1212Bにおいて、既に復号した参照ピクチャの動き補償パラメータを用いてマージ候補Tが求められる(S102)。S103では、導出したマージ候補A0?マージ候補Tの中で重複するマージ候補が取り除かれ、マージ候補格納部1212Hに格納される。
(中略)
[0368] ユニーク候補導出部1212Cは、マージ候補リストの各マージ候補が互いにユニークになるように、マージ候補リストを更新する。」

ク 「[0381] (双予測制限PU判定部1218の詳細:双予測制限の判定方法)
双予測制限PU判定部1218において、双予測制限を行うべき小サイズのPUであるか否かを判定する方法の好適な例を以下に説明する。なお、判定方法は以下の例に限定されるものではなく、PUサイズ情報として他のパラメータを用いることも可能である。
[0382] (判定方法の例1)
判定方法の例1では、PUサイズの判定に用いる閾値をTHとした場合に、THxTH未満のPUの場合に双予測制限を行う。この時の対象CUサイズ(ここではCU Width)とPU分割タイプを用いた判定式は以下の通りである。
[0383] DisableBiPred = ((CU Width == TH&&PU 分割タイプ != 2Nx2N) || CU Width < TH) ?true : false
具体的には、
TH = 16の場合には、16x8、8x16、12x16、4x16、16x12、16x4、8x8、8x4、4x8、4x4の各PUにおいて双予測制限が行われる。
TH = 8の場合には、8x4、4x8、4x4の各PUにおいて双予測制限が行われる。」

ケ 「[0393] (双単予測変換部1219の詳細)
双単予測変換部1219は、入力された動き補償パラメータが双予測を示しており、さらに、双予測制限PU判定部においてスキップPU及びマージPUの双予測制限を行うと判定された場合において、双単予測変換部1219に入力される動き補償パラメータを単予測に変換する。
(中略)
[0396] 動き補償パラメータは、時間的及び空間的に近接するPUの動き補償パラメータのコピー、もしくは、時間的及び空間的に近接するPUの動き補償パラメータの組み合わせから導出される動き補償パラメータのインター予測フラグinter_pred_flagが双予測を示す2である場合には、単予測を示す1に変換する。また、内部の処理に用いるインター予測フラグ(内部インター予測フラグ)がL0予測を示す1、L1予測を示す2、双予測を示す3からなるフラグである場合には、以下の動作を行う。内部インター予測フラグが3である場合には、内部インター予測フラグの値がL0予測を意味する1、もしくは、L1予測を意味する2に変換する。また、L0予測に変換する場合にはL1予測に関する動き補償パラメータを例えばゼロにリフレッシュすることも可能である。L1予測に変換する場合には、L0予測に関する動き補償パラメータを例えばゼロにリフレッシュすることも可能である。なお、内部インター予測フラグと、予測リスト利用フラグpredFlagL0、predFlagL1の関係は以下のように相互に変換可能である。
[0397] 内部インター予測フラグ = (predFlagL1<<1) + predFlagL0
predFlagL0 =内部インター予測フラグ & 1
predFlagL1 =内部インター予測フラグ >> 1
単予測に変換する方法としては、インター予測フラグ(及び内部インター予測フラグ)を変更する方法の他、予測リスト利用フラグpredFlagL0、predFlagL1の両者が利用するを示す値である1の場合に、予測リスト利用フラグの一方を使用しないことを示す値の0に変換すること、で行うこともできる。
[0398] 図51は、単予測への変換の方法(双予測変換方法)の例を説明する図である。L0選択は、予測リスト利用フラグpredFlagL1を0に変更する。」

コ 「[0541] [2-3-3] 部分的な双予測制限を行うための構成
以下では、再び図61を参照しながら、部分的な双予測制限を行うための構成について説明する。図61に示す構成は、図43に示した構成において、双単予測変換部1219を、双単予測変換部1219Aに変更したものである。
(中略)
[0547] つまり、双単予測変換部1219Aは、選択したマージ候補に対して双単変換を行う。双単変換については上述したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
(中略)
[0555] (変形例1)
双単予測変換部1219Aは、すべてのマージ候補が導出され、マージ候補リストが、マージ候補格納部1212Hに格納されてから、双単予測処理を行う構成であってもよい。
[0556] そこで、図72に示すように構成変更する。図72に示す構成は、図61に示す構成において、双単予測変換部1219Aを、マージ候補導出制御部1212Gからのマージ候補リスト完成通知に基づいてマージ候補格納部1212Hに格納されているマージ候補リストに対して双単変換処理を行う双単予測変換部1219Bに変更したものである。
[0557] なお、双単予測変換部1219Bにおける双単変換処理自体は、双単予測変換部1219Aと同様であるのでその説明を省略する。
[0558] [処理の流れ]
図73を用いて、図72に示す双単予測変換部1219Bの処理の流れについて説明すると、以下のとおりである。図73は、マージ動き補償パラメータ導出部1212および双単予測変換部1219Bの処理の流れの一例について示すフローチャートである。
[0559] S731?S733は、図44を用いて示したS101?S103と同様であるので、その説明を省略する。
[0560] S733に続くS734において、Bスライスであれば(S734においてYES)、双予測制限PU判定部1218Aが、双予測制限を行うか否かを判定する(S735)。
[0561] 双予測制限を行う場合(S735においてYES)、双単予測変換部1219Bは、マージ候補リストの先頭N個のマージ候補の双単変換を行う(S736)。そして、双単変換の実行後、その他のマージ候補が導出される(S737)。」

(3) 先願に記載された発明

ア 動画像復号装置の構成について

上記(2)イの[0110]によれば、先願には、「(a1)復号モジュール10、CU情報復号部11、PU情報復号部12、TU情報復号部13、予測画像生成部14、逆量子化・逆変換部15、フレームメモリ16および加算器17を備えている動画像復号装置1」が記載されている。
また、上記(2)ウの[0276]、オの[0348]、[0358]によれば、「(a2)PU情報復号部12は、動き補償パラメータ導出部(双予測制限手段、候補決定手段、推定手段)121、マージ候補優先順位情報記憶部122、および参照フレーム設定情報記憶部123を備え」、「(a3)動き補償パラメータ導出部121は、スキップ動き補償パラメータ導出部1211、マージ動き補償パラメータ導出部1212、基本動き補償パラメータ導出部1213、双予測制限PU判定部1218、および、双単予測変換部1219から構成され」、「(a4)マージ動き補償パラメータ導出部1212は、隣接マージ候補導出部1212A、時間的マージ候補導出部1212B、ユニーク候補導出部1212C、結合双予測マージ候補導出部1212D、非スケール双予測マージ候補導出部1212E、ゼロベクトルマージ候補導出部1212F、マージ候補導出制御部1212G、マージ候補格納部1212H、マージ候補選択部1212Jから構成され」ること、が記載されているといえる。

イ 動画像復号装置によって復号される符号化データの構成について

上記(2)アによれば、先願には、「(a5)動画像復号装置1によって復号される符号化データは、複数のピクチャを含み、ピクチャPICTは、ピクチャヘッダPH、及び、スライスS1?SNSを含んでおり、スライスSは、スライスヘッダSH、及び、ツリーブロックTBLK1?TBLKNCを含んでおり」、
「(a6)スライスタイプを指定するスライスタイプ指定情報は、スライスヘッダSHに含まれる符号化パラメータの一例であり、スライスタイプ指定情報により指定可能なスライスタイプとして(1)符号化の際にイントラ予測のみを用いるIスライス、(2)符号化の際に単予測、又は、イントラ予測を用いるPスライス、(3)符号化の際に単予測、双予測、又は、イントラ予測を用いるBスライスが挙げられ」、
「(a7)ツリーブロックTBLKは、ツリーブロックヘッダTBLKHと、符号化単位情報CU1?CUNLとを含むものであり、符号化単位情報CU1?CUNLは、ツリーブロックTBLKを再帰的に4分木分割して得られる各符号化ノード(符号化単位)に対応する情報であり、予測ブロックは、符号化ノードを構成する1または複数の重複しない領域であり、予測の単位である予測ブロックのことを、予測単位(PU)とも称する」ものであることが記載されているといえる。

ウ 双予測制限PU判定部1218について

上記(2)クによれば、先願には、「(b1)双予測制限PU判定部1218において、双予測制限を行うべき小サイズのPUであるか否かを判定する方法であって、PUサイズの判定に用いる閾値をTHとした場合に、THxTH未満のPUの場合に双予測制限を行い、TH =16の場合には、16x8、8x16、12x16、4x16、16x12、16x4、8x8、8x4、4x8、4x4の各PUにおいて双予測制限が行われ」ることが記載されているといえる。

エ 双予測制限について

上記(2)エによれば、先願には、「小サイズPUでの双予測制限」について、「(b2)動き補償パラメータ導出部121は、参照フレーム設定情報記憶部123に記憶される参照フレーム設定情報を参照して、インター予測において単予測および双予測のいずれの予測方式を適用するかを決定し、小サイズのPUでは、双予測を制限する構成であってもよいものであり、参照フレーム設定情報を、小PUサイズ123A定義情報を含む構成とするものであり、小PUサイズ123Aの定義の一例としてサイズが16×16未満のPUにおいてインター予測フラグの復号を省略して単予測を適用する旨定義する」ものであることが記載されているといえる。

オ マージ候補を導出することについて

上記(2)カによれば、先願には、「(c1)マージ候補は、PUの動き補償パラメータである予測リスト利用フラグpredFlagL0とpredFlagL1、参照インデックス番号refIdxL0とrefIdxL1、動きベクトルmvL0とmvL1から構成され、マージ候補格納部1212Hには、上記動きパラメータの組がマージ候補として格納され、格納するマージ候補は格納順に順序づけられたリスト(マージ候補リスト)として管理され」ることが記載されているといえる。
また、上記(2)オの[0351]、(2)キによれば、先願には、「(c2)マージ動き補償パラメータ導出部1212は、対象PUの動き補償パラメータを導出し、双単予測変換部1219に入力するものであって、マージ動き補償パラメータ導出部1212の動作として、隣接マージ候補導出部1212Aにおいて、マージ候補A0?マージ候補B2が求められ(S101)、時間的マージ候補導出部1212Bにおいてマージ候補Tが求められ(S102)、S103では、導出したマージ候補A0?マージ候補Tの中で重複するマージ候補が取り除かれ、マージ候補格納部1212Hに格納され、ユニーク候補導出部1212Cは、マージ候補リストの各マージ候補が互いにユニークになるように、マージ候補リストを更新」すること、が記載されているといえる。

カ マージ候補を選択することについて

上記(2)イの[0123]、[0125]によれば、先願には、「(d1)PU情報復号部12は、対象PUに対応するPU情報の復号処理を実行し、対象PUについて復号したPU情報を、予測画像生成部14に供給」することが記載されているといえる。
また、上記(2)ウの[0277]、[0280]によれば、先願には「(d2)動き補償パラメータ導出部121は、符号化データから各PUの動き補償パラメータを導出し、マージインデックスを復号して、復号したマージインデックスの値に基づいて予測パラメータ(動きベクトル、参照画像インデックス、インター予測フラグ)を導出」することが、記載されているといえる。
さらに、上記(2)カによれば、先願には「(d3)マージ候補選択部1212Jは、マージインデックスで指定されるマージ候補を選択し予測情報PUIとして出力」することが、それぞれ記載されている。

キ 予測画像を生成することについて

上記(2)イの[0131]?[0134]によれば、先願には、「(e)予測画像生成部14は、対象PUに対応するPU情報PUIに含まれるパラメータに従って予測を行うことにより、予測画像を生成するものであり、予測画像生成部14が、動き補償予測パラメータ(動きベクトル、参照画像インデックス、インター予測フラグ)に基づいてPUの予測画像を生成するにあたり、インター予測フラグが単予測を示す場合、予測画像生成部14は、参照画像インデックスの示す参照画像の動きベクトルが示す場所に位置する復号画像に相当する予測画像を生成し、インター予測フラグが双予測を示す場合には、予測画像生成部14は、2組の参照画像インデックスと動きベクトルとの組み合わせのそれぞれについて動き補償により予測画像を生成」することが記載されているといえる。

ク 双単変換処理を行うことについて

上記(2)オの[0351]、(2)ケによれば、先願には「(f1)双単予測変換部1219は、双予測限定条件に応じて動き補償パラメータを変換し、マージ動き補償パラメータ導出部1212に戻すものであって、入力された動き補償パラメータが双予測を示しており、双予測制限を行うと判定された場合において、双単予測変換部1219に入力される動き補償パラメータを単予測に変換するものであり、単予測に変換する方法としては、予測リスト利用フラグpredFlagL0、predFlagL1の両者が利用することを示す値である1の場合に、予測リスト利用フラグの一方を使用しないことを示す値の0に変換するものであり、単予測への変換の方法の例として、L0選択は、予測リスト利用フラグpredFlagL1を0に変更することであり、L0予測に変換する場合にはL1予測に関する動き補償パラメータを例えばゼロにリフレッシュする」(ここで、[0397]の「両者が利用するを示す」という記載は、「両者が利用することを示す」という記載の誤記と認められる)ことが記載されているといえる。

次に、上記(2)コの[0541]、[0547]によれば、先願には「双単予測変換部1219を双単予測変換部1219Aに変更したものについて、双単予測変換部1219Aは、選択したマージ候補に対して双単変換を行う」ことが記載されているといえる。
ここで、双単予測変換部1219Aは、選択されたマージ候補に対して双単変換を行うものの、マージ候補に対する双単変換の処理自体は双単予測変換部1219と変わるものではないといえる。

さらに、上記(2)コの[0555]?[0561]によれば、先願には、「変形例」として、双単予測変換部1219Bにおける双単変換処理自体は、双単予測変換部1219Aと同様であること、双単予測変換部1219Bの処理の流れについて、S731?S733は、図44を用いて示したS101?S103と同様であり、S733に続くS734において、Bスライスであれば双予測制限を行うか否かを判定し、双予測制限を行う場合、双単予測変換部1219Bは、マージ候補リストのマージ候補の双単変換を行うことが記載されているといえる。
ここで、上記オによれば、S103で重複するマージ候補が取り除かれることがいえるから、先願には、S103と同様のS733において、重複するマージ候補が取り除かれる処理がおこなわれ、S733に続くS734において、双予測制限を行うかどうかを判定し、双予測制限を行う場合、マージ候補リストのマージ候補の双単変換を行うことが記載されているといえ、また、双単予測変換部1219Aは、選択されたマージ候補に対して双単変換を行うものの、マージ候補に対する双単変換の処理自体は双単予測変換部1219と変わるものではなく、「双単予測変換部1219Bにおける双単変換処理自体は、双単予測変換部1219Aと同様である」から、双単予測変換部1219Bにおける双単変換の処理自体は双単予測変換部1219と変わるものではないといえる。

これを総合すると、先願には、「(f2)双単予測変換部1219の変形例として、重複するマージ候補を取り除き、続いて双予測制限を行うか否かを判定し、双予測制限を行うと判定されている場合、マージ候補リストのマージ候補の双単変換を行う」ことが記載されているといえる。

ケ まとめ

以上によれば、先願には、次の発明(以下、「先願発明」という)が記載されているものと認められる。先願発明の各構成は、符号(a1)?(f2)を用いて、以下、構成(a1)?(f2)と称する。

(先願発明)

(a1) 復号モジュール10、CU情報復号部11、PU情報復号部12、TU情報復号部13、予測画像生成部14、逆量子化・逆変換部15、フレームメモリ16および加算器17を備えている動画像復号装置1であって、
(a2) PU情報復号部12は、動き補償パラメータ導出部(双予測制限手段、候補決定手段、推定手段)121、マージ候補優先順位情報記憶部122、および参照フレーム設定情報記憶部123を備え、
(a3) 動き補償パラメータ導出部121は、スキップ動き補償パラメータ導出部1211、マージ動き補償パラメータ導出部1212、基本動き補償パラメータ導出部1213、双予測制限PU判定部1218、および、双単予測変換部1219Bから構成され、
(a4) マージ動き補償パラメータ導出部1212は、隣接マージ候補導出部1212A、時間的マージ候補導出部1212B、ユニーク候補導出部1212C、結合双予測マージ候補導出部1212D、非スケール双予測マージ候補導出部1212E、ゼロベクトルマージ候補導出部1212F、マージ候補導出制御部1212G、マージ候補格納部1212H、マージ候補選択部1212Jから構成され、
(a5) 動画像復号装置1によって復号される符号化データは、複数のピクチャを含み、ピクチャPICTは、ピクチャヘッダPH、及び、スライスS1?SNSを含んでおり、スライスSは、スライスヘッダSH、及び、ツリーブロックTBLK1?TBLKNCを含んでおり、
(a6) スライスタイプを指定するスライスタイプ指定情報は、スライスヘッダSHに含まれる符号化パラメータの一例であり、スライスタイプ指定情報により指定可能なスライスタイプとして、(1)符号化の際にイントラ予測のみを用いるIスライス、(2)符号化の際に単予測、又は、イントラ予測を用いるPスライス、(3)符号化の際に単予測、双予測、又は、イントラ予測を用いるBスライスが挙げられ、
(a7) ツリーブロックTBLKは、ツリーブロックヘッダTBLKHと、符号化単位情報CU1?CUNLとを含むものであり、符号化単位情報CU1?CUNLは、ツリーブロックTBLKを再帰的に4分木分割して得られる各符号化ノード(符号化単位)に対応する情報であり、予測ブロックは、符号化ノードを構成する1または複数の重複しない領域であり、予測の単位である予測ブロックのことを、予測単位(PU)とも称するものであり、
(b1) 双予測制限PU判定部1218において、双予測制限を行うべき小サイズのPUであるか否かを判定する方法であって、PUサイズの判定に用いる閾値をTHとした場合に、THxTH未満のPUの場合に双予測制限を行い、TH = 16の場合には、16x8、8x16、12x16、4x16、16x12、16x4、8x8、8x4、4x8、4x4の各PUにおいて双予測制限が行われ、
(b2) 動き補償パラメータ導出部121は、参照フレーム設定情報記憶部123に記憶される参照フレーム設定情報を参照して、インター予測において単予測および双予測のいずれの予測方式を適用するかを決定し、小サイズのPUでは、双予測を制限する構成であってもよいものであり、参照フレーム設定情報を、小PUサイズ123Aの定義情報を含む構成とするものであり、小PUサイズ123Aの定義の一例としては、サイズが16×16未満のPUにおいて、単予測を適用する旨定義するものであり、
(c1) マージ候補は、PUの動き補償パラメータである予測リスト利用フラグpredFlagL0とpredFlagL1、参照インデックス番号refIdxL0とrefIdxL1、動きベクトルmvL0とmvL1から構成され、マージ候補格納部1212Hには、上記動きパラメータの組がマージ候補として格納され、格納するマージ候補は格納順に順序づけられたリスト(マージ候補リスト)として管理され、
(c2) マージ動き補償パラメータ導出部1212は、対象PUの動き補償パラメータを導出し、双単予測変換部1219に入力するものであって、マージ動き補償パラメータ導出部1212の動作として、隣接マージ候補導出部1212Aにおいて、マージ候補A0?マージ候補B2が求められ(S101)、時間的マージ候補導出部1212Bにおいて、マージ候補Tが求められ(S102)、S103では、導出したマージ候補A0?マージ候補Tの中で重複するマージ候補が取り除かれ、マージ候補格納部1212Hに格納され、ユニーク候補導出部1212Cは、マージ候補リストの各マージ候補が互いにユニークになるように、マージ候補リストを更新し、
(d1) PU情報復号部12は、対象PUに対応するPU情報の復号処理を実行し、対象PUについて復号したPU情報を、予測画像生成部14に供給するものであって、
(d2) 動き補償パラメータ導出部121は、符号化データから各PUの動き補償パラメータを導出し、マージインデックスを復号して、復号したマージインデックスの値に基づいて予測パラメータ(動きベクトル、参照画像インデックス、インター予測フラグ)を導出するものであり、
(d3) マージ候補選択部1212Jは、マージインデックスで指定されるマージ候補を選択し予測情報PUIとして出力するものであり、
(e) 予測画像生成部14は、対象PUに対応するPU情報PUIに含まれるパラメータに従って予測を行うことにより、予測画像を生成するものであり、予測画像生成部14が、動き補償予測パラメータ(動きベクトル、参照画像インデックス、インター予測フラグ)に基づいてPUの予測画像を生成するにあたり、インター予測フラグが単予測を示す場合、予測画像生成部14は、参照画像インデックスの示す参照画像の動きベクトルが示す場所に位置する復号画像に相当する予測画像を生成し、インター予測フラグが双予測を示す場合には、予測画像生成部14は、2組の参照画像インデックスと動きベクトルとの組み合わせのそれぞれについて動き補償により予測画像を生成するものであり、
(f1) 双単予測変換部1219は、双予測限定条件に応じて動き補償パラメータを変換し、マージ動き補償パラメータ導出部1212に戻すものであって、入力された動き補償パラメータが双予測を示しており、双予測制限を行うと判定された場合において、双単予測変換部1219に入力される動き補償パラメータを単予測に変換するものであり、単予測に変換する方法としては、予測リスト利用フラグpredFlagL0、predFlagL1の両者が利用することを示す値である1の場合に、予測リスト利用フラグの一方を使用しないことを示す値の0に変換するものであり、単予測への変換の方法の例として、L0選択は、予測リスト利用フラグpredFlagL1を0に変更することであり、L0予測に変換する場合にはL1予測に関する動き補償パラメータを例えばゼロにリフレッシュすることであって、
(f2) 双単予測変換部1219の変形例として、重複するマージ候補を取り除き、続いて双予測制限を行うか否かを判定し、双予測制限を行うと判定されている場合、マージ候補リストのマージ候補の双単変換を行う、
(a1) 動画像復号装置1。

(4) 本件発明と先願発明との対比及び判断

次に、本件発明と先願発明とを対比する。

ア 先願発明の構成(a1)「復号モジュール、CU情報復号部、PU情報復号部、TU情報復号部、予測画像生成部、逆量子化・逆変換部、フレームメモリおよび加算器を備えている動画像復号装置」は、本件発明の発明特定事項A「ビデオ復号のためのデバイス」に相当する。

イ 先願発明の構成(b1)の「双予測制限」について、先願発明の構成(a6)に「スライスタイプ指定情報により指定可能なスライスタイプとしては、(1)符号化の際にイントラ予測のみを用いるIスライス、(2)符号化の際に単予測、又は、イントラ予測を用いるPスライス、(3)符号化の際に単予測、双予測、又は、イントラ予測を用いるBスライスが挙げられ」るように、イントラ予測のみを用いるIスライスや単予測またはイントラ予測を用いるPスライスに対しては双予測を行わないことから、双予測制限を行うことがあるのは、入力されるビデオデータがBスライスにおいて予測を行う部分に限られることは自明である。

また、先願発明の構成(b2)において特定されるように、小サイズPUでの双予測制限として、小サイズが16×16未満のPUにおいて、単予測を適用する旨定義することで、先願発明の構成(b1)のように、「TH = 16の場合には、16x8、8x16、12x16、4x16、16x12、16x4、8x8、8x4、4x8、4x4の各PUにおいて双予測制限が行われ」るものといえる。
そうすると、構成(b1)の双予測制限とは単予測を適用する旨定義することで、PUに対して単予測が行われるように制限することであるといえる。

次に、先願発明の構成(a5)において、動画像復号装置1によって復号されるピクチャはピクチャヘッダ及びスライスを含んでおり、スライスはスライスヘッダ及びツリーブロックを含んでおり、構成(a7)において、ツリーブロックはツリーブロックヘッダ及び符号化単位情報を含み、符号化単位情報はツリーブロックを4分木分割して得られる各符号化ノード(符号化単位)に対応する情報であり、予測ブロックは符号化ノードを構成する1または複数の重複しない領域であり、予測の単位である予測ブロックのことを予測単位(PU)とも称することが特定されていることから、先願発明において、予測の単位である予測単位PUはピクチャ中のスライス中に含まれるといえる。
また、動画像復号装置1によって復号されるピクチャは動画像、すなわちビデオデータ、であることは明らかである。
そうすると、Bスライスにおいて予測を行う部分は、ビデオデータであるピクチャに含まれるスライスのうち、Bスライスに含まれる予測単位PUを含むといえる。

以上のことから、先願発明の構成(b1)の「双予測制限」を行う対象のPUは、動画像復号装置によって復号されるピクチャに含まれるスライス中のPUを予測単位とするものであり、かつ当該PUはBスライス中に含まれるものであって、PUサイズが閾値THxTH未満のPUの場合に単予測が行われるように制限するものといえるから、先願発明の構成(b1)は、本件発明の発明特定事項B「前記ビデオデータのBスライス中の予測ユニット(PU)を特徴づけるサイズがしきい値を下回ることに基づいて、前記PUが単方向インター予測に制限されると判断するための手段」に相当する。

ウ 先願発明の構成(c2)の「重複するマージ候補が取り除かれ」ることは、「重複マージ候補をプルーニング」することといえるから、本件発明の発明特定事項Cのうち「前記PUのためのマージ候補リストを生成すること、ここにおいて、前記マージ候補リストを生成することは、前記マージ候補リストから重複マージ候補をプルーニング」することに相当する。

また、先願発明の構成(c2)の「導出したマージ候補」は、「PUの動き補償パラメータから構成され」(構成(c1))ることから、PUに対応するものである。
ここで、上記イのとおり、当該PUは動画像復号装置によって復号されるピクチャに含まれるスライス中のPUを予測単位とするものであり、当該PUはBスライス中に含まれる場合があることから、先願発明の構成(a6)「双予測、単予測、又はイントラ予測を行うBスライス」と合わせると、上記「導出したマージ候補」に対応するPUには、単予測を行うPUと双予測を行うPUの両者が含まれることは明らかである。
そうすると、先願発明の構成(c2)の「導出したマージ候補」は、単予測を行うPUに対応するマージ候補と双予測を行うPUに対応するマージ候補の両者があるものということができ、本件発明の発明特定事項Cと同様に「単方向マージ候補と双方向マージ候補とを備える」ものといえる。

以上のことから、先願発明の構成(c2)の「マージ動き補償パラメータ導出部1212」は、本件発明の発明特定事項C「前記PUのためのマージ候補リストを生成するための手段、ここにおいて、前記マージ候補リストを生成することは、前記マージ候補リストから重複マージ候補をプルーニングすることを備え、前記マージ候補リストは、単方向マージ候補と双方向マージ候補とを備える」に相当する。

エ 先願発明の構成(d3)の「マージインデックスで指定されるマージ候補」は、先願発明の構成(c1)に特定されるように、格納順に順序づけられたリスト(マージ候補リスト)として管理されていることは明らかである。

また、上記ウにおいて対比したとおり、導出したマージ候補には双予測を行うマージ候補が含まれることから、構成(d3)のマージ候補選択部1212Jは双予測を行うマージ候補を選択することがあるといえる。

以上のことから、先願発明の構成(d3)の「マージ候補選択部1212J」は、本件発明の発明特定事項Dの「前記マージ候補リスト中からマージ候補を選択するための手段、ここにおいて、前記選択されたマージ候補は、前記双方向マージ候補である」に相当する。

オ 先願発明の構成(e)の「予測画像生成部14」は、対象PUに対応するPU情報PUIに含まれるパラメータに従って予測を行うことにより、予測画像を生成するものであって、動き補償予測パラメータ(動きベクトル、参照画像インデックス、インター予測フラグ)に基づいてPUの予測画像を生成するものであるから、PUIに含まれるパラメータは動き補償予測パラメータであり、これは動き情報の一種である。また、先願発明の構成(d3)によれば、PUIは選択されたマージ候補であるといえる。
そうすると、構成(e)の「対象PUに対応するPUIに含まれるパラメータ」は、本件発明の発明特定事項Eにおける「前記選択されたマージ候補によって指定された動き情報」に相当する。

さらに、動き補償予測パラメータに基づいてPUの予測画像を生成するにあたり、先願発明の構成(e)の「参照画像インデックスの示す参照画像の動きベクトルが示す場所に位置する復号画像に相当する予測画像を生成」すること、または「2組の参照画像インデックスと動きベクトルとの組み合わせのそれぞれについて動き補償により予測画像を生成する」ことが、本件発明の発明特定事項Eの「動き情報に関連付けられた、1つまたは複数の参照ブロックを識別する」ことに相当する。

カ 先願発明の構成(f1)の「双予測制限を行うと判定されている場合」、「マージ候補を双単変換する」ことは、本件発明の発明特定事項Fの「前記PUが単方向インター予測に制限されることに基づいて、前記選択されたマージ候補を、双方向マージ候補であることから単方向マージ候補であることに変換する」ことに相当するといえる。

また、先願発明の構成(f1)の「単予測への変換の方法の例として、L0選択」は、予測リスト利用フラグpredFlagL1を0に変更することで、「L1予測に関する動き補償パラメータを例えばゼロにリフレッシュする」のであるから、先願発明は、L0予測に関する動き補償パラメータである動きベクトルや参照画像インデックスに基づいて予測画像が生成されるが、L1予測に関する動きベクトルや参照画像インデックスがゼロにリフレッシュされることで、L1予測に関する動きベクトルや参照画像インデックスが無視され予測画像が生成されないものといえる。
そうすると、先願発明の構成(f1)の「単予測への変換の方法の例として、L0選択」は、本件発明の発明特定事項Fの「前記選択されたマージ候補を変換することは、前記PUのための予測ビデオブロックが、前記識別された1つまたは複数の参照ブロックのうちの1つ以下に基づいて生成されるように、前記選択されたマージ候補のリスト0動きベクトルを保つことと、前記選択されたマージ候補のリスト1動きベクトルを無視する」ことに相当する。

以上のことから、先願発明の構成(f1)は、本件発明の発明特定事項Fの「前記PUが単方向インター予測に制限されることに基づいて、前記PUのための予測ビデオブロックが、前記識別された1つまたは複数の参照ブロックのうちの1つ以下に基づいて生成されるように、前記選択されたマージ候補のリスト0動きベクトルを保ち、前記選択されたマージ候補のリスト1動きベクトルを無視することによって、前記選択されたマージ候補を単方向マージ候補であることに変換する」ことに相当する。

(5) 小括

以上のア?カの対比に基づき、本件発明と上記先願発明とを比較すると、両者は一致し、実質的な相違点は見当たらず、本件発明は上記先願発明と同一の発明であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

(6) 審判請求人の主張について

審判請求人は令和1年9月18日付け意見書の「3.理由2(特許法第29条の2に規定の要件違反)について」において、以下のような主張をしているので、これらについて検討する。

(6-1)発明特定事項B(構成a)について
(請求人の主張)
「(2)最初に、上記構成のうち構成a「ビデオデータのBスライス中の予測ユニット(PU)を特徴づけるサイズがしきい値を下回ることに基づいて、前記PUが単方向インター予測に制限されると判断するための手段」は、先願に開示も示唆もされていないと思料いたします。
先願の明細書の段落[0381]-[0387]等を参照すると、先願は、閾値より小さいPUの場合、双予測制限を双予測制限PU判定部で行うことを開示していると思料いたします。しかしながら、先願のPUはビデオデータのBスライス中のPUであることを開示も示唆もしていないと思料いたします。
先願の図29および図29に関連する明細書の記載、および明細書の段落[0361]等を参照すれば明らかなように、先願は、スライスが、(ビデオデータの)Bスライスであるかどうかの判断を、マージ動き補償パラメータ導出部で行っていることを開示していると思料いたします。そして、このマージ動き補償パラメータ導出部は、上記双予測制限PU判定部の後に動作することが明示されていると思料いたします。したがって、先願は、上記構成aを開示も示唆もしていないと思料いたします。」

上記主張について検討する。
本件発明は「あるPUがBスライス中のPUであることを判断した後、該PUを特徴付けるサイズが閾値を下回ること」を判断するのではなく、「Bスライス中のPUを特徴づけるサイズがしきい値を下回ること」を判断することを特定するものである。
そして、上記(4)イの対比で示したように、入力されるビデオデータがIスライスやPスライスであれば、双予測がなされない以上、双予測制限を行う必要はなく、双予測制限を行うことがあるのは入力されるビデオデータがBスライスの場合における予測を行う部分に限られる。
そうすると、先願発明においても、Bスライス中のPUに対して当該PUを特徴づけるサイズが閾値を下回ることを判断するものといえ、先願発明は発明特定事項B(構成a)を有する点において、本件発明との差異はない。

(6-2)発明特定事項C(構成b)について
(請求人の主張)
「(3)次に、上記構成のうち構成b「前記PUのためのマージ候補リストを生成するための手段、ここにおいて、前記マージ候補リストを生成することは、前記マージ候補リストから重複マージ候補をプルーニングすることを備え、前記マージ候補リストは、単方向マージ候補と双方向マージ候補とを備える」は、先願に開示も示唆もされていないと思料いたします。
上記(2)で説明したように、先願に開示されるPUは、Bスライス中のPUを開示も示唆もしていません。そのため、先願は、前記PU(ビデオデータのBスライス中のPU)のためのマージ候補リストを生成することを開示も示唆もしていないと思料いたします。」
「さらに、先願の明細書の段落[0361]に「双予測制限を行う場合、ここでは、双方向マージ候補導出をスキップする場合に相当する小サイズPUの場合も、S107、S108の双予測動き候補導出の処理をスキップし、S109に遷移する(S106)。」と記載されています。上記先願の記載から、先願に開示されるマージ候補リストは、双方向マージ候補を導出しないことを明示しており、上記構成bを開示も示唆もしていないことは明らかであると思料いたします。」

上記主張について検討する。
先願の段落[0361]に記載されているのは、双予測制限を行う場合、図44のS107の結合予測マージ候補導出及びS108の非スケール双予測マージ候補導出を行わないということであり、S103までの処理において双方向マージ候補を導出しないことではない。
上記(4)ウの対比で示したように、先願発明の構成(c2)の「導出したマージ候補」に対応するPUはBスライス中に含まれる場合があることから、単予測を行うPUに対応するマージ候補と、双予測に対するPUに対応するマージ候補の両者があることは明らかであり、本件発明の発明特定事項Cの「PUのためのマージ候補リストを生成するための手段」を備えるものといえる。

(6-3)発明特定事項D(構成c)について
(請求人の主張)
「(4)さらに、上記構成のうち構成c「前記マージ候補リスト中からマージ候補を選択するための手段、ここにおいて、前記選択されたマージ候補は、前記双方向マージ候補である、と」は、先願に開示も示唆もされていないと思料いたします。
上記(2)?(3)で説明したように、先願は、マージ候補リスト中に双方向マージ候補を有しておりません。そのため、先願は、上記構成cを開示も示唆もしていないことは明らかであると思料いたします。」

上記主張について検討する。
上記(4)ウの対比で示したように、先願発明の構成(c2)の「導出したマージ候補」は、双予測を行うPUに対応するマージ候補があることから、上記(4)エの対比で示したように、先願発明の構成(d3)におけるマージ候補選択部1212Jは双予測を行うマージ候補を選択することがあるといえ、本件発明の発明特定事項D「前記マージ候補リスト中からマージ候補を選択するための手段、ここにおいて、前記選択されたマージ候補は、前記双方向マージ候補である」を含むものといえる。

(6-4)発明特定事項E(構成d)について
(請求人の主張)
「(5)さらに、上記構成のうち構成d「前記選択されたマージ候補によって指定された動き情報に関連付けられた、1つまたは複数の参照ブロックを識別するための手段と、
前記PUが単方向インター予測に制限されることに基づいて、前記PUのための予測ビデオブロックが、前記識別された1つまたは複数の参照ブロックのうちの1つ以下に基づいて生成されるように、前記選択されたマージ候補のリスト0動きベクトルを保ち、前記選択されたマージ候補のリスト1動きベクトルを無視することによって、前記選択されたマージ候補を単方向マージ候補であることに変換するための手段」を開示も示唆もしていないと思料いたします。
拒絶理由通知に開示されるように、たとえ、予測パラメータを導出することにより、参照画像の参照ブロックを得ることが技術常識であるとしても、先願は、選択されたマージ候補によって指定された動き情報に関連付けられた1つまたは複数の参照ブロックを識別することを開示または実質的に開示していないことは明らかであると思料いたします。」

上記主張について検討する。
上記(4)オの対比のとおり、先願発明の(e)の予測画像生成部14が動き補償予測パラメータ(動きベクトル、参照画像インデックス)を導出することにより参照画像の参照ブロックを得ることは、動き情報に関連づけられた1つまたは複数の参照ブロックを識別することに他ならず、先願発明は本件発明における発明特定事項E「前記選択されたマージ候補によって指定された動き情報に関連付けられた、1つまたは複数の参照ブロックを識別するための手段」を有する点において、本件発明との差異はない。

(6-5)発明特定事項F(構成d)について
(請求人の主張)
「また、先願の明細書の段落[0397]に「インター予測フラグ(及び内部インター予測フラグ)を変更する方法の他、予測リスト利用フラグpredFlagL0、predFlagL1の両者が利用するを示す値である1の場合に、予測リスト利用フラグの一方を使用しないことを示す値の0に変換すること、で行うこともできる。」と記載されています。
上記記載から明らかなように、先願は、predFlagL1の値を変換することを開示しているのであってこの値を無視することを開示も示唆もしていないと思料いたします。
また、先願は、参照ブロックのうちの1つ以下に基づいて単方向マージ候補に変換することを開示も示唆もしていないと思料いたします。」

上記主張について検討する。
本件発明は、「参照ブロックのうちの1つ以下に基づいて単方向マージ候補に変換する」のではなく、発明特定事項Fにあるように「参照ブロックのうちの1つ以下に基づいてPUのための予測ビデオブロックが生成されるように、選択されたマージ候補のリスト0動きベクトルを保ち、選択されたマージ候補のリスト1動きベクトルを無視することによって、選択されたマージ候補を単方向マージ候補であることに変換する」ものである。
そして、上記(4)カの対比において示したように、先願発明における構成(f1)の「単予測への変換の方法の例として、L0選択は、予測リスト利用フラグpredFlagL1を0に変更する」ことについて、L0予測に変換する場合には予測リスト利用フラグpredFlagL1を0に変更することで、「L1予測に関する動き補償パラメータを例えばゼロにリフレッシュする」のであるから、L0予測に関する動き補償マラメータである動きベクトルや参照画像インデックスに基づいて予測画像が生成され、L1予測に関する動きベクトルや参照画像インデックスがゼロにリフレッシュされて、L1予測に関する動きベクトルや参照画像インデックスが無視され、予測画像が生成されないものといえる。
してみると、先願発明における構成(f1)は、本件発明の発明特定事項F同様に「参照ブロックのうちの1つ以下に基づいてPUのための予測ビデオブロックが生成されるように、選択されたマージ候補のリスト0動きベクトルを保ち、選択されたマージ候補のリスト1動きベクトルを無視することによって、選択されたマージ候補を単方向マージ候補であることに変換する」といえる。

(6-6)重複マージ候補をプルーニングするタイミングについて
(請求人の主張)
「(6)最後に上記構成は、先願に開示も示唆もされていないと思料いたします。
先願の明細書の図29、図29に関連する明細書の記載、双予測制限PU判定部1218、双単予測変換部1219、およびマージ動き補償パラメータ導出部1212に関連する明細書の記載等を参照すれば明らかなように、先願は、マージ候補の中で重複するマージ候補を取り除くのは、双単変換処理を行った後であることが明示されていると思料いたします。」

上記主張について検討する。
上記(3)クにおいて認定したように、先願発明の構成(f2)の「双単予測変換部1219の変形例」では、「双単予測変換部1219Bの処理の流れ」として、「S731?S733は、図44のS101?S103と同様」、すなわち、段落[0361]に記載されるS101?S103と同じであり、段落[0361]に「S103では、導出したマージ候補A0?マージ候補Tの中で重複するマージ候補が取り除かれ、マージ候補格納部1212Hに格納される」と記載されるように、S103と同じ処理であるS733においてマージ候補の中で重複するマージ候補が取り除かれることで、「重複するマージ候補を取り除き、続いて双予測制限を行うか否かを判定し、双予測制限を行うと判定されている場合、取得したマージ候補の双単変換を行う」ことから、マージ候補の中で重複するマージ候補を取り除いた後、双単変換処理を行う場合を含んでいるといえる。

以上(6-1)?(6-6)のとおり、先願発明は発明特定事項B?発明特定事項F(構成a?構成d)を含むものであって、重複マージ候補を取り除いた後、双単変換処理を行うものであり、審判請求人の主張は採用できない。

第4 むすび

以上のとおり、本件発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた上記先願発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-01-30 
結審通知日 2020-02-04 
審決日 2020-02-17 
出願番号 特願2014-556674(P2014-556674)
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷川 素直  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 川崎 優
鳥居 稔
発明の名称 Bスライス中の予測ユニットの単方向インター予測への制限  
代理人 岡田 貴志  
代理人 福原 淑弘  
代理人 中丸 慶洋  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  

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