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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1364658
審判番号 不服2019-7618  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-07 
確定日 2020-07-27 
事件の表示 特願2017-46860「リソグラフィー用重合体の製造方法,レジスト組成物の製造方法,およびパターンが形成された基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年7月6日出願公開,特開2017-119881〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2017-46860号(以下「本件出願」という。)は,平成24年10月5日を出願日とする特願2012-222896号の一部を,平成29年3月13日に新たな特許出願としたものであって,その手続等の経緯は,以下のとおりである。
平成30年 2月19日付け:拒絶理由通知書
平成30年 6月15日付け:意見書
平成30年 6月15日付け:手続補正書
平成30年10月11日付け:拒絶理由通知書
平成30年11月27日付け:意見書
平成30年11月27日付け:手続補正書
平成31年 3月 8日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和元年 6月 7日提出:審判請求書
令和元年 6月 7日提出:手続補正書

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年6月7日にした手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正についての判断
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前(平成30年11月27日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。
「 重合溶媒の存在下,重合開始剤を使用して,単量体をラジカル重合させて(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有する重合体の重合反応溶液を得る重合工程と,
前記重合反応工程により得られた重合体を含む,固形分濃度30質量%?60質量%の重合反応溶液を,重合体に対する貧溶媒に40分以上かけて滴下し,重合体を析出させて析出物を得る回収工程を有し,
前記析出物を得る回収工程において下記式(1)を満足する,
リソグラフィー用重合体の製造方法。
0.33≦重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)/(貧溶媒容量(L)×重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分))≦0.65 ・・・式(1)」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。なお,下線は補正箇所を示す。
「 重合溶媒の存在下,重合開始剤を使用して,単量体としてラクトン骨格を含む基,親水性基,及び酸脱離性基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する(メタ)アクリル酸エステルをラジカル重合させて重合反応溶液を得る重合工程と,
前記重合反応工程により得られた重合体を含む,固形分濃度30質量%?60質量%の重合反応溶液を,重合体に対する貧溶媒に40分以上かけて滴下し,重合体を析出させて析出物を得る回収工程を有し,
前記ラクトン骨格を含む基を有する(メタ)アクリル酸エステルを,単量体全構成単位の20モル%以上60モル%以下含有し,
前記酸脱離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを,単量体全構成単位の20モル%以上60モル%以下含有し,
前記貧溶媒が,メタノール,イソプロピルアルコール,ジイソプロピルエーテル,ヘプタン,及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種であり,
かつ,前記析出物を得る回収工程において下記式(1)を満足する,
リソグラフィー用重合体の製造方法。
0.33≦重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)/(貧溶媒容量(L)×重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分))≦0.65 ・・・式(1)」

(3) 本件補正の内容
本件補正は,本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である,[A]「重合工程」を,願書に最初に添付した明細書の【0012】,【0013】及び【0019】の記載に基づいて,「単量体をラジカル重合させて(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有する重合体の重合反応溶液を得る」工程から,「単量体としてラクトン骨格を含む基,親水性基,及び酸脱離性基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する(メタ)アクリル酸エステルをラジカル重合させて重合反応溶液を得る」工程であって,かつ,「前記ラクトン骨格を含む基を有する(メタ)アクリル酸エステルを,単量体全構成単位の20モル%以上60モル%以下含有し」,「前記酸脱離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを,単量体全構成単位の20モル%以上60モル%以下含有し」という構成を具備する工程に限定するとともに,[B]「回収工程」を,願書に最初に添付した明細書の【0030】の記載に基づいて,「前記貧溶媒が,メタノール,イソプロピルアルコール,ジイソプロピルエーテル,ヘプタン,及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種であり」という構成を具備するものに限定する補正である。
また,本件補正前の請求項1に係る発明と,本件補正後の請求項1に係る発明の,産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題は,同一である(本件出願の明細書の【0001】及び【0007】)。
そうしてみると,本件補正は特許法17条の2第3項の規定に適合するとともに,同条第5項2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が,同条第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

2 独立特許要件(進歩性)
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-14906号公報(以下「引用文献1」という。)は,本件出願前に,日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,フォトレジスト用樹脂溶液の製造方法に関する。更に詳しくは,本発明は,フォトレジスト用樹脂に対する熱履歴を少なくすることができ,且つフォトレジスト用樹脂溶液を効率良く製造できるフォトレジスト用樹脂溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては,より高い集積度を得るために,より微細な加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。
…省略…
【0004】
そして,このような樹脂組成物に用いられるフォトレジスト用樹脂の製造方法としては,例えば,(1)単量体を溶剤の存在下に重合して,目的とする重合体を含む溶液を得る工程と,(2)沈殿操作により重合体を精製する工程と,(3)重合体を分離する工程と,(4)必要に応じて,重合体を含む湿粉を乾燥する工程と,備える方法が知られている(例えば,特許文献1,2等を参照)。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレジスト用樹脂の製造方法では,精製工程で用いられる溶媒等の不純物は,重合体における細孔等の内部に取り込まれており,除去しにくく,真空乾燥等の乾燥工程により除去するためには,できるだけ高温且つ長時間の熱履歴を与えて乾燥させる必要がある。…省略…
しかしながら,レジスト用樹脂は,加熱操作によって分解しやすく,高温かつ長時間の熱履歴が与えられると,構成単位の一部が分解されて,変質したりする等の不具合が発生するという問題があった。
そのため,樹脂に与える熱履歴が少なく,高品質な樹脂溶液を効率良く得られるフォトレジスト用樹脂溶液の製造方法が求められているのが現状である。
【0007】
本発明は,フォトレジスト用樹脂に対する熱履歴を従来よりも少なくすることができ,且つ効率良くフォトレジスト用樹脂溶液を製造できるフォトレジスト用樹脂溶液の製造方法を提供することを目的とする。
…省略…
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下,本発明を詳細に説明する。
本発明のフォトレジスト用樹脂溶液の製造方法は,(1)重合性化合物を重合させることにより,フォトレジスト用樹脂を含有する樹脂溶液を調製する樹脂溶液調製工程と,(2)前記樹脂溶液に含まれる樹脂を再沈殿により精製し,スラリーを得る再沈殿工程と,(3)前記スラリーを濾過し,洗浄溶剤を用いて洗浄することにより湿粉を得る洗浄工程と,(4)前記湿粉を乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と,(5)前記乾燥物を再溶解し,前記洗浄溶剤をフォトレジスト用溶剤に置換する溶剤置換工程と,を備えており,前記乾燥工程において,前記湿粉の乾燥を恒率乾燥領域内で行うことを特徴とする。
【0011】
[1]樹脂溶液調製工程
前記樹脂溶液調製工程では,重合性化合物を溶媒(重合溶媒)の存在下で重合させることによりフォトレジスト用樹脂を含有する樹脂溶液が調製される。
…省略…
【0012】
ここで,例えば,レジスト形成用のポジ型感放射線性樹脂組成物に含まれる樹脂は,少なくとも,酸によって分解してアルカリ現像液に可溶となる化学構造を有する繰り返し単位,より具体的には,非極性置換基が酸によって解離してアルカリ現像液に可溶な極性基が発現する化学構造を有する繰り返し単位(1)と,半導体基板等の基板に対する密着性を高めるための極性基を有する繰り返し単位(2)とを必須成分としており,必要に応じて,溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節するための非極性の置換基を有する繰り返し単位(3)を含んで構成されている。
…省略…
【0024】
また,前記重合性化合物の重合方法は特に限定されず,溶液重合等の公知の方法を用いることができる。
前記フォトレジスト用樹脂を含有する樹脂溶液は,例えば,重合開始剤を使用し,更には必要に応じて連鎖移動剤を使用し,前述の重合性化合物(即ち,重合性不飽和単量体)を適当な溶媒中で重合させることにより得ることができる。
…省略…
【0028】
また,重合反応に用いられる重合溶媒は特に限定されないが,例えば,水,アセトン,メチルエチルケトン,メチルアミルケトン,シクロヘキサノン,メチルイソブチルケトン,テトロヒドロフラン,ジオキサン,プロピレングリコールモノメチルエーテル,乳酸エチル,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート,ベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも一種を用いることが好ましい。
…省略…
【0030】
また,前記重合における反応条件は特に限定されないが,反応温度は,通常40?120℃,好ましくは50?100℃である。また,反応時間は,通常1?48時間,好ましくは1?24時間である。
この樹脂溶液調製工程において得られる樹脂溶液の濃度(固形分濃度)は,1?80質量%であることが好ましく,より好ましくは5?50質量%,更に好ましくは10?50質量%である。
【0031】
[2]再沈殿工程
前記再沈殿工程では,再沈殿法により,前記樹脂溶液から,不純物(特に,残存モノマー,ダイマー,トリマー,オリゴマー等の低分子成分)が除去されて,重合体(フォトレジスト用樹脂)の精製が行われ,フォトレジスト用樹脂を含むスラリーが得られる。尚,前記低分子成分の分析は,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行うことができる。
この再沈殿操作は特に限定されず,従来の方法に従って行うことができる。具体的には,例えば,貧溶媒(沈殿溶媒)中に,必要に応じて濃度調整された前記樹脂溶液を滴下することにより行うことができる。
また,必要に応じて良溶媒を用いて,沈殿操作を2回以上繰り返し,樹脂の精製を行ってもよい。
【0032】
前記貧溶媒は所定の樹脂を析出させるものであれば特に限定されないが,例えば,水,メタノール,エタノール,1-プロパノール,2-プロパノール,1-ブタノール,ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン,ベンゼン及びトルエンのうちの少なくとも一種を用いることが好ましい。これらの貧溶媒を用いて沈殿精製を行った場合,樹脂溶液中に残存する不純物を効率良く除去することができ,得られるフォトレジスト用樹脂のスラリーの収率を向上させることができる。
【0033】
また,前記貧溶媒の使用量は特に限定されず,貧溶媒の種類,樹脂溶液中における溶媒の種類やその含有量によって適宜調整される。具体的には,例えば,貧溶媒と接触させる樹脂溶液の全量に対して,質量換算で,0.5?50倍であることが好ましく,より好ましくは1?30倍,更に好ましくは2?20倍である。
…省略…
【0036】
[3]洗浄工程
前記洗浄工程では,前述の再沈殿工程により得られたスラリーが濾過された後,洗浄溶剤を用いて洗浄が行われ,フォトレジスト用樹脂を含む湿粉が得られる。
…省略…
【0039】
[4]乾燥工程
前記乾燥工程では,前述の洗浄工程により得られた湿粉が乾燥されることにより,フォトレジスト用樹脂を含む乾燥物が得られる。
…省略…
【0044】
[5]溶剤置換工程
前記溶剤置換工程では,前述の乾燥工程により得られた乾燥物の再溶解が行われた後,フォトレジスト用溶剤を用いて溶剤置換が行われる。」

ウ 「【実施例】
【0050】
以下,実施例を挙げて,本発明を更に具体的に説明する。但し,本発明は,これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0051】
[1]フォトレジスト用樹脂溶液の製造(実施例1)
(1)樹脂溶液調製工程
3000mLのジムロート管のある三口フラスコに,重合溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)415gをいれて十分に窒素置換した後,スリーワンモーターで攪拌しながら80℃まで昇温した。その後,5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)171g,及び2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(MAdMA)226gをMEK808gに溶かした溶液と,アゾビスイソブチロニトリル7.1gをMEK36gに溶かした溶液と,をそれぞれ滴下漏斗により3時間かけて滴下した。滴下終了後,更に3時間熟成した後,室温まで冷却して,フォトレジスト用樹脂(粗樹脂)を含有する樹脂溶液を調製した。尚,高速液体クロマトグラフィを用いて測定した結果,モノマーの転化率は85%であった。
【0052】
(2)再沈殿工程
得られた樹脂溶液(固形分濃度:約25質量%)1656gをメタノール(貧溶媒)8280gに攪拌しながら,27.6g/minの滴下速度で約1時間滴下し,再沈殿による精製を実施することによりフォトレジスト用樹脂を含むスラリーを得た。
【0053】
(3)洗浄工程
得られたスラリーを濾過した後,メタノール(洗浄溶剤)1656gで2回洗浄し,目的の樹脂を含む湿粉を得た。
…省略…
【0056】
(4)乾燥工程
前記洗浄工程により得られた含液率50%の湿ポリマー40gを,60℃で15分間乾燥させ(即ち,恒率乾燥領域で乾燥させ),湿ポリマー表面における溶媒を一定量除去し,含液率8%の乾燥物22gを得た。
【0057】
(5)溶剤置換工程
得られた乾燥物22gとメチルエチルケトン60gとを混合し,30℃で12分間攪拌することにより,乾燥物を完全に溶解させた。
次いで,得られた溶液をPEGMEA65gに溶解して,60℃で15分間,減圧下で加熱濃縮することにより,フォトレジスト用樹脂溶液66g(固形分濃度:約30質量%)を得た。
そして,得られたフォトレジスト用樹脂溶液中のメタノール量及びメチルケトン量を,それぞれ,ガスクロマトグラフィで測定したところ,メタノール及びメチルケトンは共に検出されなかった。」

(2) 引用発明
引用文献1の【0051】?【0057】には,「フォトレジスト用樹脂溶液の製造(実施例1)」として,「(1)樹脂溶液調製工程」?「(5)溶剤置換工程」からなる各工程が記載されている。そして,これら工程のうち,「(1)樹脂溶液調製工程」及び「(2)再沈殿工程」の工程により,「フォトレジスト用樹脂を含むスラリー」が得られている。
そうしてみると,引用文献1には,「フォトレジスト用樹脂の製造方法」として,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。なお,「メチルエチルケトン(MEK)」と「MEK」は,前者に用語を統一した。
「 (1)樹脂溶液調製工程及び(2)再沈殿工程からなる,フォトレジスト用樹脂の製造方法であって,
(1)樹脂溶液調製工程は,
3000mLのジムロート管のある三口フラスコに,重合溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)415gをいれて十分に窒素置換した後,スリーワンモーターで攪拌しながら80℃まで昇温し,
その後,5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)171g,及び2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(MAdMA)226gをメチルエチルケトン(MEK)808gに溶かした溶液と,アゾビスイソブチロニトリル7.1gをメチルエチルケトン(MEK)36gに溶かした溶液と,をそれぞれ滴下漏斗により3時間かけて滴下し,
滴下終了後,更に3時間熟成した後,室温まで冷却して,フォトレジスト用樹脂(粗樹脂)を含有する樹脂溶液を調製する工程であり,ここで,モノマーの転化率は85%であり,
(2)再沈殿工程は,
得られた樹脂溶液(固形分濃度:約25質量%)1656gをメタノール(貧溶媒)8280gに攪拌しながら,27.6g/minの滴下速度で約1時間滴下し,再沈殿による精製を実施することによりフォトレジスト用樹脂を含むスラリーを得る工程である,
フォトレジスト用樹脂の製造方法。」

(3) 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 重合工程,重合反応工程
引用発明の「フォトレジスト用樹脂の製造方法」は,「(1)樹脂溶液調製工程」として,「3000mLのジムロート管のある三口フラスコに,重合溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)415gをいれて十分に窒素置換した後,スリーワンモーターで攪拌しながら80℃まで昇温し」,「その後,5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)171g,及び2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(MAdMA)226gをメチルエチルケトン(MEK)808gに溶かした溶液と,アゾビスイソブチロニトリル7.1gをメチルエチルケトン(MEK)36gに溶かした溶液と,をそれぞれ滴下漏斗により3時間かけて滴下し」,「滴下終了後,更に3時間熟成した後,室温まで冷却して,フォトレジスト用樹脂(粗樹脂)を含有する樹脂溶液を調製する工程」を具備する。
ここで,引用発明の「メチルエチルケトン(MEK)」は,技術的にみて,重合溶媒である。同様に,引用発明の「アゾビスイソブチロニトリル」は,重合開始剤である。
また,引用発明の「5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)」のうち,「2,6-ノルボルナンカルボラクトン」-5-イル基は,その化学構造からみて,ラクトン骨格を含む基と解釈できる。加えて,引用発明の「5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)」は,「2,6-ノルボルナンカルボラクトン」の5位にメタクリロイルオキシ基が結合しエステルを形成しているから,(メタ)アクリル酸エステルといえる(5-ヒドロキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトンとメタクリル酸がエステル化してなる化合物と考えられる。)。そうしてみると,引用発明の「5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)」は,ラクトン骨格を含む基を有する(メタ)アクリル酸エステルと解釈できる。同様に,引用発明の「2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(MAdMA)」は,酸脱離性基(2-メチルアダマンタン-2-イル基)を有する(メタ)アクリル酸エステルと解釈できる。
そして,技術常識を踏まえて上記の工程を理解すると,引用発明の「(1)樹脂溶液調製工程」は,「メチルエチルケトン(MEK)」の存在下,「アゾビスイソブチロニトリル」を使用して,単量体として「5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)」及び「2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(MAdMA)」をラジカル重合させて重合反応溶液を得る工程である。
以上勘案すると,引用発明の「メチルエチルケトン(MEK)」,「アゾビスイソブチロニトリル」,「5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)」及び「2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(MAdMA)」は,それぞれ,本件補正後発明の「重合溶媒」,「重合開始剤」,「単量体としてラクトン骨格を含む基」「を有する(メタ)アクリル酸エステル」及び「単量体として」「酸脱離性基」「を有する(メタ)アクリル酸エステル」に相当する。また,引用発明の「(1)樹脂溶液調製工程」は,本件補正後発明の,「重合溶媒の存在下,重合開始剤を使用して,単量体としてラクトン骨格を含む基,親水性基,及び酸脱離性基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する(メタ)アクリル酸エステルをラジカル重合させて重合反応溶液を得る」とされる,「重合工程」ないし「重合反応工程」に相当する。

イ 回収工程
引用発明の「フォトレジスト用樹脂の製造方法」は,「(2)再沈殿工程」として,「得られた樹脂溶液(固形分濃度:約25質量%)1656gをメタノール(貧溶媒)8280gに攪拌しながら,27.6g/minの滴下速度で約1時間滴下し,再沈殿による精製を実施することによりフォトレジスト用樹脂を含むスラリーを得る工程」を具備する。
ここで,引用発明の「樹脂溶液」は,上記アで述べた「(1)樹脂溶液調製工程」により得られたものであるから,重合反応工程により得られた重合体を含む重合反応溶液と理解できる。また,上記の工程からみて,引用発明の「メタノール(貧溶媒)」は,引用発明の「フォトレジスト用樹脂」に対する貧溶媒であると理解できる。さらに,上記の工程からみて,引用発明の「再沈殿による精製を実施することによりフォトレジスト用樹脂を含むスラリーを得る工程」は,フォトレジスト樹脂を析出させて析出物を得る,回収工程と理解できる。
そうしてみると,引用発明の「フォトレジスト樹脂」は,本件補正後発明の「重合体」に相当するとともに,「析出物」にも相当する。また,引用発明の「樹脂溶液」,「メタノール(貧溶媒)」及び「(2)再沈殿工程」は,それぞれ,本件補正後発明の,「重合反応溶液」,「貧溶媒」及び「回収工程」に相当する。さらに,引用発明の「27.6g/minの滴下速度で約1時間滴下し」という構成を考慮すると,引用発明の「(2)再沈殿工程」と本件補正後発明の「回収工程」とは,「前記重合反応工程により得られた重合体を含む」「重合反応溶液を,重合体に対する貧溶媒に40分以上かけて滴下し,重合体を析出させて析出物を得る」点で共通する。

ウ 分量
上記アで述べたとおり,引用発明の「フォトレジスト用樹脂の製造方法」は,「(1)樹脂溶液調製工程」を具備する。
ここで,引用発明の「5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)」の分子量は,222.24であるから,その分量である171gは,約0.769モルと計算される。また,引用発明の「2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート」の分子量は,234.34であるから,その分量である226gは,約0.964モルと計算される。そして,引用発明の「フォトレジスト用樹脂」をなす単量体は,上記2つの化合物である。
そうしてみると,引用発明の「フォトレジスト用樹脂」は,「5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)」を,単量体全構成単位の約44モル%含有する。また,引用発明の「フォトレジスト用樹脂」は,「2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート」を単量体全構成単位の,約56モル%含有する。
したがって,引用発明の「フォトレジスト用樹脂の製造方法」は,本件補正後発明の「リソグラフィー用重合体の製造方法」における,「前記ラクトン骨格を含む基を有する(メタ)アクリル酸エステルを,単量体全構成単位の20モル%以上60モル%以下含有し」及び「前記酸脱離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを,単量体全構成単位の20モル%以上60モル%以下含有し」という要件を満たす。

エ 貧溶媒
上記イで述べたとおり,引用発明の「フォトレジスト用樹脂の製造方法」は,「メタノール(貧溶媒)」を用いた「(2)再沈殿工程」を具備する。
そうしてみると,引用発明の「メタノール(貧溶媒)」は,本件補正後発明の「貧溶媒」における,「メタノール,イソプロピルアルコール,ジイソプロピルエーテル,ヘプタン,及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種であり」という要件を満たす。

オ リソグラフィー用重合体の製造方法
引用発明の「フォトレジスト用樹脂」が,技術的にみて,フォトリソグラフィーに用いるに適したものであること,及び上記ア?エの対比結果を考慮すると,引用発明の「フォトレジスト用樹脂の製造方法」は,本件補正後発明の「リソグラフィー用重合体の製造方法」に相当する。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件補正後発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「 重合溶媒の存在下,重合開始剤を使用して,単量体としてラクトン骨格を含む基,親水性基,及び酸脱離性基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する(メタ)アクリル酸エステルをラジカル重合させて重合反応溶液を得る重合工程と,
前記重合反応工程により得られた重合体を含む重合反応溶液を,重合体に対する貧溶媒に40分以上かけて滴下し,重合体を析出させて析出物を得る回収工程を有し,
前記ラクトン骨格を含む基を有する(メタ)アクリル酸エステルを,単量体全構成単位の20モル%以上60モル%以下含有し,
前記酸脱離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを,単量体全構成単位の20モル%以上60モル%以下含有し,
前記貧溶媒が,メタノール,イソプロピルアルコール,ジイソプロピルエーテル,ヘプタン,及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種である,
リソグラフィー用重合体の製造方法。」

イ 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。
(相違点1)
「重合反応溶液」が,本件補正後発明は,「固形分濃度30質量%?60質量%」のものであるのに対して,引用発明は,「固形分濃度:約25質量%」とされたものである点。

(相違点2)
「回収工程」が,本件補正後発明は,「下記式(1)を満足する」,すなわち「0.33≦重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)/(貧溶媒容量(L)×重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分))≦0.65」であるのに対して,引用発明は,「固形分濃度:約25質量%」に基づいて固形分を計算すると,「下記式(1)を満足する」とはいえない点。
(当合議体注:「固形分濃度:約25質量%」に基づいて固形分を計算すると,引用発明における,本件補正後発明の「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)」に対応する量は,「得られた樹脂溶液」1656(g)×25(質量%)÷100=414(g)と計算される。そして,引用発明における,本件補正後発明の1「貧溶媒容量(L)」に対応する量は,メタノールの密度が0.792(g/cm^(3))であることを考慮すると,8280(g)/0.792(g/cm^(3))÷1000=10.5(L)と計算される。したがって,引用発明における,本件補正後発明の「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)/(貧溶媒容量(L)×重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分))」に対応する量は,414(g)÷(10.5(L)×60(分))=0.66と計算され,式(1)を満足するとはいえない。)

(5) 判断
以下,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」のことを,「当業者」という。
ア 相違点1について
相違点1に関して,引用文献1の【0030】には,「この樹脂溶液調製工程において得られる樹脂溶液の濃度(固形分濃度)は,1?80質量%であることが好ましく,より好ましくは5?50質量%,更に好ましくは10?50質量%である。」と記載されている。
そうしてみると,引用発明の「(1)樹脂溶液調製工程」において,「樹脂溶液」の固形分濃度を,相違点に係る本件補正後発明の,「30質量%?60質量%」の範囲内のものとすること,例えば,劇物である「メチルエチルケトン(MEK)」の量を減らして,30質量%とすることは,引用文献1に記載された範囲内の設計変更といえる。

イ 相違点2について
引用発明の「樹脂溶液」は,「固形分濃度:約25質量%」とされ,これに基づいて計算すると,「固形分」は前記(4)イで述べたとおり,414gとなる。しかしながら,材料から計算される引用発明の「樹脂溶液」の「固形分」は,「アゾビスイソブチロニトリル」の全量を「固形分」に含めたとしても,171(g)+226(g)+7.1(g)=401.1(g)である。そして,この値に基づいて計算される,「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)/(貧溶媒容量(L)×重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分))」は,401.1(g)÷(10.5(L)×60(分))=0.64となり,式(1)の要件を満たす。
相違点2は,相違点ではない。

あるいは,引用発明において,「モノマーの転化率は85%であ」る。モノマーの転化率を考慮すると,本件補正後発明の「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)」に対応する量は,「アゾビスイソブチロニトリル」の全量を「固形分」に含めたとしても,(171(g)+226(g))×0.85+7.1(g)=345(g)と計算される。そして,「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)/(貧溶媒容量(L)×重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分))」は,345(g)÷(10.5(L)×60(分))=0.55と計算され,式(1)の要件を満たす。
相違点2は,やはり,相違点ではない。

ところで,本件出願の発明の詳細な説明には,モノマーの転化率に関する記載が一切存在しない(考慮すべきものが考慮されていない。)。また,実施例(【0057】?【0059】及び【0063】?【0067】)においても,【0057】に記載された材料の分量に基づく「30質量%」を用いて,重合反応溶液(976.28g)に0.3を乗じた292.88gが「固形分量」とされている。
加えて,前記相違点1の判断では,「メチルエチルケトン(MEK)」の量を減らして「樹脂溶液」の固形分濃度を30質量%とすることは容易であると判断した。しかしながら,「5-メタクリロイルオキシ-2,6-ノルボルナンカルボラクトン(NLM)」及び「2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート(MAdMA)」(以下「重合性化合物」と総称する。)を増量して,「樹脂溶液」の固形分濃度を30質量%にする場合も考えられる。
そこで,念のため,モノマーの転化率を考慮しないで重合性化合物を増量して固形分濃度を30質量%とした結果,引用発明における,本件補正後発明の「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)」に対応する量が1656(g)×30(質量%)÷100=497gに増えた場合についても検討すると,以下のとおりである。
すなわち,引用発明の「(2)再沈殿工程」に関して,引用文献1の【0031】には,「必要に応じて良溶媒を用いて,沈殿操作を2回以上繰り返し,樹脂の精製を行ってもよい。」と記載されている。加えて,貧溶媒の使用量に関して,【0033】には,「貧溶媒と接触させる樹脂溶液の全量に対して,質量換算で,0.5?50倍であることが好ましく,より好ましくは1?30倍,更に好ましくは2?20倍である。」と記載されている。
また,引用発明において,重合性化合物を増量した場合には,「(2)再沈殿工程」により除かれるべき不純物(引用文献1の【0031】参照。)の量が増えることとなる。
そうしてみると,引用発明において上記のとおり固形分を増やした当業者ならば,沈殿操作を2回行ったり,貧溶媒の増量を試みると考えられ,その結果,「下記式(1)を満足する」ようになるといえる。
(当合議体注:沈殿操作を2回行うと,「重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分)」は120分となる。そして,「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)/(貧溶媒容量(L)×重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分))」は,497(g)÷(10.5(L)×120(分))=0.39と計算され,式(1)の要件を満たす。あるいは,上記【0033】に示唆される範囲内で,「メタノール(貧溶媒)」を8280gから9830gに増やすと,「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)/(貧溶媒容量(L)×重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分))」は0.65以下となる。)

そして,本件補正後発明の効果は,引用発明も奏する効果であるか,あるいは,引用発明のものと類似した効果にとどまると認められる。

(6) 小括
本件補正後発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 独立特許要件(サポート要件)
本件補正後発明の発明が解決しようとする課題は,本件出願の明細書の【0007】の記載からみて,「リソグラフィー用重合体に与えられる熱履歴を抑えつつ,溶媒への溶解性を向上させることができ,また工程通過時間が短縮されることにより生産性を向上させることができ,安定した品質の重合体を効率よく生産できること」にあると認められる(当合議体注:「生産性を向上」という記載について,文章を補って理解した。以下「発明の課題」という。)。
ここで,本件補正後発明は,「下記式(1)を満足する」という構成を具備する。また,「下記式(1)」(の中辺)では,「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)」が分子にあり,「貧溶媒容量(L)」及び「重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分)」が分母にある。
しかしながら,本件出願の発明の詳細な説明に記載された実施例(【0051】?【0068】)において,「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)」は,一定である。また,本件出願の発明の詳細な説明には,「重合反応溶液中の重合体の固形分質量(g)」と発明の課題の関係について,定性的な記載は存在しない。「貧溶媒容量(L)」についても同様であり,実施例における「貧溶媒容量(L)」は一定であり,また,本件出願の発明の詳細な説明には,「貧溶媒容量(L)」と発明の課題の関係について,定性的な記載は存在しない。そして,「重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分)」については,その値を変化させた実施例が存在するが,これは,特定の樹脂と,特定の貧溶媒におけるものにすぎない。樹脂(単量体)の共重合割合や種類が異なれば,貧溶媒が取り除くことができる不純物の量も異なるといえる。例えば,実施例の「下記式(m2)の単量体」(メタクリル酸1-エチルシクロヘキシル)の共重合割合が高ければ,取り除くことができる不純物の量は減ると考えられる(極性溶媒であるメタノールと水の混合溶媒に対する溶解度は,「下記式(m1)の単量体」(メタクリル酸γ-ブチロラクトン-2-イル)よりも低いと考えられる。)。また,樹脂(単量体)の種類が異なれば,その転化率も変化する(不純物の量が増減する)と考えられる。加えて,「貧溶媒容量(L)」が少ないと,「重合反応溶液の貧溶媒への滴下時間(分)」を長くしても,不純物を取り除けなくなると考えられる。貧溶媒が,メタノールと水の混合溶媒ではなく,例えば,水である場合においても同様である。
以上例示するとおり,本件補正後発明の式(1)を,実施例以外の場合についてまで,拡張ないし一般化できるということはできない。
したがって,本件補正後発明は,発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えないものであるということができない。
本件補正後発明は,発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから,本件出願の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たさないものである。

4 補正の却下の決定についてのむすび
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり,本願発明は却下されたので,本件出願の請求項1に係る発明は,前記「第2」[理由]1(1)に記載したとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は,(理由1:サポート要件)本願発明は,発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから,本件出願の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない,(理由2:進歩性)本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2010-14906号公報(引用文献1)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用文献1の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載及び引用発明は,前記「第2」[理由]2(1)及び(2)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,前記「第2」[理由]2において検討した本件補正後発明から,前記「第2」[理由]1(3)で述べた限定を除いたものである。
また,本願発明の構成を全て含み,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正後発明が,前記「第2」[理由]2(3)?(6)に記載したとおり,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そうしてみると,本願発明も,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。また,本願発明は,発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができず,また,本件出願の特許請求の範囲は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-04-28 
結審通知日 2020-05-12 
審決日 2020-06-03 
出願番号 特願2017-46860(P2017-46860)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08F)
P 1 8・ 537- Z (C08F)
P 1 8・ 121- Z (C08F)
P 1 8・ 572- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 純平  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 樋口 信宏
宮澤 浩
発明の名称 リソグラフィー用重合体の製造方法、レジスト組成物の製造方法、およびパターンが形成された基板の製造方法  

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