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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1364725
審判番号 不服2019-10124  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-01 
確定日 2020-08-18 
事件の表示 特願2017-121442「スタンプタッチ認証方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日出願公開、特開2017-188144、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2013年11月19日を国際出願日とする特願2015-542959号(パリ条約による優先権主張2012年11月19日,韓国,2013年9月9日,韓国,2013年10月8日,韓国)の一部を平成29年6月21日に新たな特許出願としたものであって,平成30年6月18日付けで拒絶の理由が通知され,同年10月3日に意見書とともに手続補正書が提出され,平成31年3月22日付けで拒絶査定(謄本送達日同年4月2日。以下,「原査定」という。)がなされ,これに対して令和1年8月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年10月10日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。
なお,本願に対しては,平成30年12月28日付け,令和1年8月21日付けで刊行物提出書が提出されている。


第2 原査定の概要

原査定(平成31年3月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1について

・請求項 1-4
・引用文献等 1-2、5

・請求項 5
・引用文献等 1-3、5

・請求項 6-11
・引用文献等 1-5

・請求項 12
・引用文献等 1-6

・請求項 13
・引用文献等 1-7

・請求項 14
・引用文献等 1-8


<引用文献等一覧>
1.米国特許第8310453号明細書
2.特開平11-149454号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2012-168619号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2003-346077号公報(周知技術を示す文献)
5.特開平11-120311号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2010-282322号公報(周知技術を示す文献)
7.蛭子隆彦,音響信号を利用した個人認証システム,沖テクニカルレビュー,沖電気工業株式会社,2006年 1月 1日,第205号,Vol.73,No.1,52-55頁(周知技術を示す文献)
8.特開平5-89220号公報(周知技術を示す文献)


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正(以下,「本件補正」という。)は,特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって,請求項1に「前記単一の設計上のタッチ点が認識された際に、前記タッチ点、または算出された前記幾何学的位置関係が、前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするように、前記認識された設計上のタッチ点を前記基準点として利用することにより座標回転を行うこと」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,「前記単一の設計上のタッチ点が認識された際に、前記タッチ点、または算出された前記幾何学的位置関係が、前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするように、前記認識された設計上のタッチ点を前記基準点として利用することにより座標回転を行うこと」という事項は,当初明細書等の特許請求の範囲の請求項8(本件補正前の請求項7)に記載されているから,当該補正は新規事項を追加するものではない。
そして,以下第4乃至第6に示すように,補正後の請求項1乃至13に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1乃至13に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明13」という。)は,令和1年8月1日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載された,次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
多重タッチを支援する静電式タッチスクリーンと連携されたシステムにおいて実行されるスタンプタッチ認証方法であって、
タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件を保存媒体に保存する第1段階と、
前記タッチスタンプの前記タッチ部を前記静電式タッチスクリーンにタッチすることにより認識される構成要素値を含むタッチ認識情報を受信する第2段階と、
前記構成要素値を利用して前記静電式タッチスクリーン上のタッチを通じて認識されたタッチ点間の相互位置関係を読み取り、前記タッチ点間の前記相互位置関係が、前記タッチスタンプの前記タッチ部を前記静電式タッチスクリーン上にタッチすることにより形成できる位置関係の範囲内に入るか否かを判定する第3段階と、
前記タッチ点間の前記相互位置関係が、前記タッチスタンプの前記タッチ部をタッチすることにより形成できる前記位置関係の範囲内に入ると判定された場合に、前記構成要素値を利用して、前記設計上の幾何学的位置関係と比較するための前記タッチ点の幾何学的位置関係を算出する第4段階と、
算出された前記タッチ点の前記幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析する第5段階と、
算出された前記タッチ点の前記幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析したタッチ認証結果を生成する第6段階と、を含み、
前記第2段階は、
前記タッチ部の前記静電式タッチスクリーンへのタッチを、同時タッチ条件、固定タッチ条件、静的タッチ条件、動的タッチ条件の少なくとも1つのタッチ条件を選択的に適用して判断すること、を含み、
前記第5段階は、
前記タッチ点間の前記相互位置関係を読み取ることにより、前記タッチスタンプにおける設計上の固定位置に配置される単一の設計上のタッチ部に対応する単一の設計上のタッチ点を認識することと、
前記認識された設計上のタッチ点を基準点として利用することにより、算出された前記幾何学的位置関係が、許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析すること、
を含み、
前記単一の設計上のタッチ点が認識された際に、前記タッチ点、または算出された前記幾何学的位置関係が、前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするように、前記認識された設計上のタッチ点を前記基準点として利用することにより座標回転を行うこと、
をさらに含むスタンプタッチ認証方法。
【請求項2】
前記設計上の幾何学的位置関係は、前記タッチスタンプを設計または製作する過程で、予め定められた数のタッチ部を配置するための座標関係をさらに含む請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項3】
前記タッチ認識情報の前記構成要素値は、前記タッチスタンプがタッチされる前記静電式タッチスクリーンに対応する座標系上の座標値を含み、
前記構成要素値を、前記設計上の幾何学的位置関係に対応する座標系上の座標値に変換すること、
を含む請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項4】
前記第3段階は、前記構成要素値を利用して確認された有効なタッチ点の数と前記タッチスタンプに具備された前記タッチ部の数を比較することと、それらの数が互いに同じか否かを判定すること、
を含む請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項5】
前記第3段階は、前記構成要素値を利用して確認された前記タッチ点間の距離と前記タッチスタンプに前記タッチ部を配置するために設定される最小区別認識距離を比較することと、前記タッチ点間の距離が前記最小区別認識距離と等しいか、あるいはそれより大きいか否かを判定すること、
を含む請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項6】
前記第3段階は、前記構成要素値を利用して確認された前記タッチ点の位置と前記タッチスタンプに前記タッチ部を配置するために設定される設計上のエリア条件を比較することと、前記タッチ点の前記位置が、前記設計上のエリア条件に従って前記タッチ部が配置されるエリア内の位置か否かを判定すること、
を含む請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項7】
前記タッチスタンプは、単一の設計上のタッチ部を、設計上の固定位置で前記静電式タッチスクリーンにタッチされるN(N≧5)個のタッチ部内に配置すること、
n(n≧4)個のタッチ部を算出された位置に配置すること、
により設計製作される請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項8】
前記第5段階は、
前記静電式タッチスクリーンを通じてタッチされる前記N個のタッチ点の相互位置関係を読み取ることにより N個のタッチ点内の前記タッチスタンプの前記設計上の固定位置に配置される前記単一の設計上のタッチ部に対応する単一の設計上のタッチ点を認識することと、
前記認識された設計上のタッチ点を基準点として利用することにより算出された前記N個のタッチ点の幾何学的位置関係が、許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析すること、
を含む請求項7に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項9】
前記単一の設計上のタッチ点が認識された際に、N-1個のタッチ点、または算出された前記幾何学的位置関係が、前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするように、前記認識された設計上のタッチ点を基準点として利用することにより座標回転を行うこと、
をさらに含む請求項8に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項10】
前記タッチスタンプは、単一の設計上のタッチ部を、分割されたn(n≧4)個の分割エリア内の設計上のエリアにおける固定位置に配置すること、
単一のタッチ部を、前記設計上のエリアにおける算出された位置に配置すること、
残りのタッチ部を、n-1個の分割エリアにおける算出された位置にそれぞれ配置すること
により設計製作される請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項11】
前記タッチ認証条件は、前記タッチスタンプを利用するスタンプ利用先の位置情報とマッピングされて保存され、
前記タッチ認識情報を伝送した無線端末の位置情報を確認することと、
前記保存媒体に保存されたタッチ認証条件のうち、前記無線端末の前記位置情報とマッチングされる位置情報とマッピングされ保存されたタッチ認証条件を、前記タッチ点の算出された前記幾何学的位置関係と比較される設計上の幾何学的位置関係を含む比較対象タッチ認証条件で確認すること、
をさらに含む請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項12】
前記タッチ認証条件は、前記タッチスタンプに提供された音声出力機能を通じて出力される音声信号で符号化された固有コードまたはワンタイムコードを認証するための認証条件をさらに含み、
前記タッチ認識情報が、前記音声信号で符号化された固有コードまたはワンタイムコードを含む場合に、前記タッチ認識情報に含まれる前記固有コードまたは前記ワンタイムコードを確認することと、
前記タッチ認証条件の認証条件を利用して確認された前記固有コードまたは前記ワンタイムコードの有効性を認証することと、をさらに含み、
前記第6段階は、前記タッチ点の前記幾何学的位置関係の解析結果と前記固有コードまたは前記ワンタイムコードの認証結果を組み合わせて前記タッチ認証結果を生成することをさらに含む、
請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。
【請求項13】
前記タッチ認証条件は、前記タッチスタンプに提供されたNFCチップを通じて送信される無線周波数信号で符号化された固有コードまたはワンタイムコードを認証するための認証条件をさらに含み、
前記タッチ認識情報が、前記NFCチップから受信された固有コードまたはワンタイムコードを含む場合に、前記タッチ認識情報に含まれる前記固有コードまたは前記ワンタイムコードを確認することと、
前記タッチ認証条件の認証条件を利用して確認された前記固有コードまたは前記ワンタイムコードの有効性を認証することと、をさらに含み、
前記第6段階は、前記タッチ点の前記幾何学的位置関係の解析結果と前記固有コードまたは前記ワンタイムコードの認証結果を組み合わせて前記タッチ認証結果を生成することをさらに含む、
請求項1に記載のスタンプタッチ認証方法。」


第5 引用例

1 引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-542959)の第一国出願前に既に公知である,米国特許第8310453号明細書(2012年11月13日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A “FIELD OF THE INVENTION
The invention relates generally to security systems and more specifically to security systems for touch-screen electronic devices.

BACKGROUND
Many electronic devices such as Personal Computers (PCs), portable email retrieval devices, cellular phones, Personal Digital Assistants (PDAs), laptops, and other communication devices as well as point-of-sale (e.g., cash registers) systems utilize a touch-screen as a user input device. The popularity of touch-screens has further increased as a result of their increased functionality. More specifically, legacy touch-screen technology reacts to only a single point-of-contact. Now, touch-screen technology recognizes commands that include multiple points-of-contact on the touch-screen.
As electronic devices have become increasingly smaller and capable of providing increased functionality, so too has the need to maintain the security of such electronic devices. Traditionally passwords were used to maintain the security of such electronic devices. While the use of passwords helps to ensure that only licensed users are allowed access to the electronic device and applications stored thereon, the passwords can become cumbersome to enter, especially when the user needs to enter it quickly to access the electronic device (i.e., like when the user is attempting to answer a call to their cellular phone).
The primary means of entering a sign-in password with touch screen devices is via a “stylus pen,” where the user is required to enter the password by either pressing keys on a virtual keyboard or using specialized graffiti language. This specialized graffiti language can also tend to take a long time to enter a password. Moreover, passwords on these portable electronic devices tend to be short and weak, given the inconvenience of requiring the user to enter a complex password with current methods.
It would be desirable to provide a portable electronic device that leverages the emerging technology of touch-screen devices as well as the drivers associated therewith to provide a more secure portable electronic device that is also easily accessible.”(1欄3-45行)
(当審訳:
「発明の分野

本発明は,概してセキュリティシステムに関し,より詳細には,タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステムに関するものである。

背景

PC(Personal Computer),携帯電子メール検索装置,携帯電話,携帯情報端末(PDA),ラップトップ,および他の通信デバイスなどの多くの電子デバイスはもちろんのこと,POS(例えば,キャッシュレジスタ)システムは,ユーザ入力装置としてタッチスクリーンを利用する。タッチスクリーンの人気は,それらの増大した機能の結果としてさらに増加している。より具体的には,従来のタッチスクリーン技術は,単一接触点に反応する。ここでは,タッチスクリーン技術はタッチスクリーン上の複数の接点を含むコマンドを認識する。
電子デバイスが小型化され,高機能化するほど,ますますこのような電子デバイスのセキュリティを維持する必要がある。伝統的に,パスワードはそのような電子デバイスのセキュリティを維持するために使用した。パスワードの使用は,ライセンスを受けたユーザが,格納された電子デバイスおよびアプリケーションへのアクセスを許可されることを保証するのに役立つが,パスワードを入力することは厄介になることがあり,特に,ユーザが迅速にそれを入力することで,電子デバイス(すなわち,ユーザは,ユーザの携帯電話に呼に応答しようとしているときなど)にアクセスする必要がある場合がある。
タッチスクリーンデバイスにログインパスワードを入力するための主たる入力手段は“スタイラスペン”を介して,ユーザは,仮想キーボード上のキーを押すか,または特殊化されたグラフィティ言語を用いてパスワードを入力することを要求される。この特殊なグラフィティ言語はまた,パスワードを入力するまでに時間が掛かる傾向がある。また,これらの携帯型電子機器にパスワードは短く且つ弱くなる傾向があり,ユーザは,現在の方法を用いた,複雑なパスワードの入力をユーザに要求するという不都合が生じるのである。
なお,タッチスクリーンデバイス並びにそれに関連するドライバの新興技術を利用しても容易にアクセス可能であるが,よりアクセスしやすくかつセキュアな携帯電子機器を提供することが望ましい。」)

B “SUMMARY

These and other needs are addressed by various embodiments and configurations of the present invention. The present invention is directed generally to a system, device, and method for facilitating a touch screen sign-in key. The method generally comprises:
simultaneously detecting a plurality of contact points on a touch-screen of an electronic device, wherein the contact points correspond to contact sensing elements of the touch-screen that have been activated by receiving contact from a sign-in key;
analyzing the plurality of contact points;
determining key information based on the plurality of contact points; and
making a determination to admit or deny a user access to the electronic device based on the determined key information.
In accordance with at least some embodiments of the present invention, a sign-in key containing a plurality of pins or contactors laid out in a random order is provided. This sign-in key may be presented to the touch-screen thus creating the contact points. The device touch-screen driver is then operable to recognize the relative orientation of the contact points (i.e., the pattern and configuration of the contact points) and make a determination to either admit or deny a user access to the electronic device and/or applications stored thereon. This low-cost sign-in key may be produced of plastic, metal, composite, or any other type of material suitable for contacting a touch-screen.
This approach of authenticating one's self to an electronic device (e.g., via presenting a sign-in key to a touch-screen of an electronic device) is faster than previously proposed security systems as there is no longer a need to enter a username and password using the touch-screen graffiti language via a stylus, for example.”(1欄47行-2欄15行)
(当審訳:
「発明の概要

これらの必要性および他の必要性は,本発明の様々な実施形態および構成によって述べられる。本発明は,一般的にシステム,装置,およびタッチスクリーンのサインインキーを容易に用いる方法を対象とする。この方法は,一般的に以下を含む。
サインインキーからの接触を受けることによって活性化された,タッチスクリーンの接触感知素子に対応する,電子デバイスのタッチスクリーン上の複数の接触点を検出すると同時に,
複数の接触点を分析し,
複数の接触点に基づいたキー情報を決定し,
決定されたキー情報に基づいて,電子デバイスへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をする。
本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば,ランダムに配置された複数のピン又は接触子を含んでいるサインインキーが提供される。このサインインキーはタッチスクリーンに提示され,それにより接触点を形成することができる。デバイスのタッチスクリーンドライバは,接触点(すなわち,接触点のパターン及び形状)の相対的な向きを認識し,かつ電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能である。この低コストなサインインキーは,プラスチック,金属,複合材,またはタッチスクリーンに接触するのに適したその他の種類の材料で製造することができる。
電子デバイスへ自分自身を認証するこのアプローチ(例えば,電子デバイスのタッチスクリーンにサインインキーを提示するなど)は,従来提案されたセキュリティシステムよりも高速であり,例えば,スタイラスを介してユーザ名とパスワードをタッチスクリーングラフィティ言語を用いて入力する必要性がもはやなくなる。」)

C “In accordance with at least some embodiments of the present invention, the touch-screen 104 may comprise a series of contact grids uniformly spaced elements. Each element may be sensitive to contact as an input. In accordance with at least one embodiment of the present invention, the elements may comprise dimensions of about 1 mm by 1 mm. In such an embodiment, the elements may be assigned a 1 mm area and each element may be reactive to simultaneously detect contact. The contact detecting elements of the touch-screen 104 may be of any size and/or shape. As an example, the elements may be circular, rectangular, square, triangular, or any other shape. The greater the granularity of the elements (e.g., the smaller the elements), the more elements that can be fit in the touch-screen 104. If smaller contact detecting elements are used in the touch-screen 104 then there is a possibility to secure the electronic device 100 with a stronger password because more contact points can define a key.
With reference now to FIGS. 2A and 2B, a first key 200 will be described in accordance with at least some embodiments of the present invention. The key 200 may comprise a base 204 having a plurality of contactors 208 located thereon. The contactors 208 of the first key 200 may be in a two-dimensional configuration as can be seen in FIG. 2A. The location of the contactors 208 on the base 204 may be randomly assigned and the size of the contactors 208 may correspond to the size of the contact detecting elements used in the touch-screen 104. In accordance with at least some embodiments of the present invention, each contactor 208 may comprise a first end for connecting to the base 204 and a second end for contacting the touch-screen 104. The contactors 208 may comprise a conical shape whereby the connecting end of the contactor 208 comprises a larger radius that the contacting end of the contactor 208. The contacting end of the contactors 208 may come to a point that is equal to or smaller in size than the contact detecting elements of the touch-screen 104. Of course, various other shapes of contactors 208 may be employed to further secure the electronic device 100. If the proper shape contactor 208 is not detected on the touch-screen 104, then access to the electronic device 100 may be denied. A combination of differently shaped contactors 208 may also be employed on the same key 200 to help maintain the security of the electronic device 100.”(5欄30行-6欄4行)
(当審訳:
「本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば,タッチスクリーン104は,接触グリッドの均一に離間された一連の要素を備え得る。それぞれの要素は,入力として接触に敏感であってもよい。本発明の少なくとも1つの実施形態では,要素は,約1mm×1mmの寸法を有していてもよい。このような実施形態では,要素は,1mmの領域を割り当てることができ,各要素は,同時に接触を検出するために反応性であってもよい。タッチスクリーン104の接触検知要素は,任意のサイズおよび/または形状のものであってもよい。一例として,要素は,円形,長方形,正方形,三角形,または任意の他の形状であってもよい。要素(たとえば,要素より小さい)粒度が大きく,タッチスクリーン104に嵌め込むことができる要素である。小さい接触検知要素は,タッチスクリーン104が使用される場合,キーを定義することができるより多くの接触点が電子機器100をより強いパスワードを確保する可能性がある。
図2A及び図2Bを参照し,本発明の少なくともいくつかの実施形態に従って,第1のキー200が説明される。第1のキー200は,その上に配置される複数の接触子208を有するベース204を含んでいてもよい。第1のキー200の接触子208は,図2Aに見ることができるような2次元形状であってもよい。ベース204上に,接触子208の位置はランダムに割り当てられてもよく,また接触子208のサイズは,タッチスクリーン104に使用される接触検知要素のサイズに対応することができる。本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば,各接触子208は,ベース204に接続するための第1の端部と,タッチスクリーン104と接触するための第2の端部を含むことができる。接触子208は円錐形状でよく,当該接触子208の接触端部より大きな半径を有する接続端部を有している。接触子208の端部の接触は,タッチスクリーン104の検知要素よりも小さいか同じくらいの点になってもよい。当然のことながら,電子機器100をさらにセキュアにするため,接触子208の種々の他の形状が採用されてもよい。適切な形状の接触子208は,タッチスクリーン104で検出されない場合,電子機器100へのアクセスは拒否されることがある。異なる形状の接触子208との組合せはまた,電子デバイス100のセキュリティを維持するのを助けるために同じキー200に使用することができる。」)

D 「

図2A,2B」

E “FIGS. 4A-4D depict the various ways that a key 200, 300 can be presented to a touch-screen 104 for a user to activate the electronic device 100 or otherwise gain access to one or more applications stored thereon. The key 200, 300 may be presented to the touch-screen 104 in any location where the touch-screen 204 is sensitive and responsive to multiple simultaneous contact points. As can be seen in FIGS. 4A and 4B, a two-dimensional key 200 may contact the touch-screen 104 at a contact area 400. As can be seen in FIGS. 4C and 4D, the one-dimensional key 300 may be presented to the touch-screen 104 at any location or rotational orientation. Although not depicted, one skilled in the art will also recognize that the two-dimensional key 200 may be presented to the touch-screen 104 in any location and/or rotational orientation.
The contact area 400 may comprise a plurality of contact sensitive elements that are contacted by the contactors 204, 208 of the key 200, 300. These points of contact also referred to herein as contact points 404 are registered by the electronic device 100 to determine if the user presenting the key 200, 300 is allowed access to the electronic device 100 or applications stored thereon. In accordance with at least some embodiments of the present invention, the location of the contact area 400 and contact points 404 on the electronic device 100 is not limited to a particular location on the touch-screen 104 or a particular orientation (i.e., rotational orientation). Rather, the key 200, 300 can be presented to the touch-screen 104 in any location or orientation, thereby making use of the key 200, 300 significantly easier than would otherwise be required if a strict location/orientation were enforced. Of course, however, a certain area on the touch-screen 104 may be designated for multiple point contacts and keyed entry access, in which case the key 200, 300 would have to be presented to the touch-screen in the designated area.”(6欄15-47行)
(当審訳:
「図4A?図4Dは,ユーザが電子デバイス100やその他で実行されるアプリケーションへのアクセスを得るため,タッチスクリーン104上にキー200,300がタッチされる,様々な態様を示す。キー200,300は,タッチスクリーン104上のどのような位置にも配置され,複数の同時接触点に反応して検知可能である。図4A,4Bに見ることができるように,2次元キー200は,コンタクト領域400のタッチスクリーン104と接触することができる。図4Cと4Dに見ることができるように,一次元キー300は,任意の位置又は回転位置でタッチスクリーン104に表示されてもよい。図示していないが,当業者はまた,2次元配列のキー200は,任意の位置および/または回転配向においてタッチスクリーン104に提示されてもよいことを認識するであろう。
接触領域400は,接触子204,200,208,300により接触される接触感知する複数の要素を備えていてもよい。本明細書で接触点404とも呼ばれるこれらの接触点は,キー200,300を提示しているユーザが,電子デバイス100へのアクセス,またはその上に格納されたアプリケーションへのアクセスが許可されるよう決定されるように,電子デバイス100によって登録されている。本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば,電子デバイス100上の接触領域400及び接触点404の場所は,タッチ画面104上の特定の位置又は特定の方位(すなわち回転方位)に限定されるものではない。むしろ,キー200,300は,任意の位置又は向きでタッチスクリーン104に提示することができ,厳密な位置/配向が実施された場合よりもより容易にキー200,300を使用することにより顕著になる。しかし,当然ながら,タッチスクリーン104上の所定の領域が複数の点接触,及びキー項目のアクセスのために指定されてもよく,この場合には,キー200,300は,指定された領域にタッチスクリーンに提示しなければならない。」)

F “Referring now to FIG. 6, a method of initializing security features of the electronic device 100 will be described in accordance with at least some embodiments of the present invention. The method begins by identifying a user that is requesting protection of an electronic device 100 (step 604). The step of identifying a user and the user's information is useful in situations where there are more than one user allowed to use and/or access a particular electronic device 100. The information retrieved during this identification step may include the user name, employee number, access credentials, and the like. The user then presents a key 200, 300 to the touch-screen 104 of the electronic device 100 that the user would like to use when signing back in to the electronic device 100.
After the user has been identified and presented the key 200, 300 to the touch-screen 104, the method continues with the device security application 528 employing the contact detection module 532 and contact analysis module 536 to determine the number of contact points 404 on the touch-screen 104 (step 608). In this step, the contact detection module 532 determines which contact detecting elements have been contacted by the contactors 208, 308 of a key 200, 300. The contact detection module 532 identifies the number of contact detection elements that have been activated by a contactor 208, 308.
Once the number of contact points 404 have been determined, the method continues with the contact analysis module 536 determining, for each contact point 404, the distance to the closest two contact points 404 (step 612). A valid key 200, 300 may be defined for each contact point 404 based on the two closest contact points 404 to that contact point 404.
The contact analysis module 536 may then determine, for each contact point 404, the relative angle created between the contact point 404 under inspection and the two closest contact points 404 (step 616). In addition to a key 200, 300 being defined by the distance between contact points 404, a key 200, 300 may also be defined by the relative angles created between a contact point 404 and the two closest contact points 404. The angle measured may be the angle created with the contact point 404 of interest as the vertex connecting the other two closest contact points 404. The angle created between the contact points 404 may be any value less than or equal to 180 degrees. Alternatively, the angle may be defined as any value greater than or equal to 180 degrees.
After the distances and angles have been determined for each contact point 404, the device security application 528 may save the key information so that a user can present the same key 200, 300 at a later point-in-time and access the electronic device 100 (step 620). In this step, the device security application 528 may store the determined distances and relative angles for each contact point 404. These determined distances and relative angles may be used to recognize when the same key 200, 300 is presented at a later time. The key information may also be stored with the identified user information to define what applications and/or preferences the electronic device 100 will provide the user when the key 200, 300 is pressed to the touch-screen 104.”(8欄24行-9欄13行)
(当審訳:
「ここで図6を参照して,本発明の少なくともいくつかの実施形態に従って電子デバイス100のセキュリティ機能を初期化する方法が説明される。この方法は,電子デバイス100の保護を要求するユーザを識別することから始まる(ステップ604)。ユーザおよびユーザの情報を識別するステップは,特定の電子デバイス100を使用及び/又はアクセスする2人以上のユーザが存在する状況において有用である。この識別ステップの間に検索された情報は,ユーザ名,従業員番号,アクセス証明書などを含むことができる。ユーザはそして,後に電子デバイス100にサインインしたいときに,キー200,300を電子デバイス100のタッチスクリーン104上に提示する。
ユーザが識別され,キー200,300をタッチスクリーン104上に提示した後,方法は,接触検知モジュール532,接触解析モジュール536を使用して,デバイスセキュリティアプリケーション528によってタッチスクリーン104の接触点404の数を決定する(ステップ608)。この工程では,接触検出モジュール532が,キー200,300の接触子208,308によって接触を検知した要素を決定する。接触検出モジュール532は,接触子208,308により活性化された接触検知要素の数を識別する。
接触点404の数が決定されると,方法は,各接触点404につき,距離が最も近い2点の接触点404の相対角度を決定するように進む(ステップ612)。2つの近接する接触点404を基に,有効なキー200,300が規定されてよい。
接触解析モジュール536は,次いで,各接触点404について,検査中の接触点404と2つの近接する接触点とで形成される相対角度を決定してよい(ステップ616)。キー200,300は,接触点404の間の距離によって規定されることに加えて,接触点404および2つの近接する接触点404との間に形成される相対角度によって定義することができる。測定された角度は,他の2個の最も近い接触ポイント404を連結する頂点の接触点404によって形成される角度であってよい。接触点404との間に形成される角度は,180度より小さいか又はこれに等しい任意の値であってもよい。また,この角度は,180度よりも大きい任意の値として定義することができる。
各接触点404毎に距離及び角度が決定された後,デバイスセキュリティアプリケーション528は,キー情報を保存することができる。これにより,ユーザは,後の時点で同一のキー200,300を提示し,電子デバイス100にアクセスすることができるようになる(ステップ620)。このステップにおいて,デバイスセキュリティアプリケーション528は,各接触点404のために決定された距離及び相対角度を記憶してよい。これらの決定された距離及び相対角度は,同一のキー200,300が後に提示される場合に認識するために使用されてよい。キー情報は,キー200,300は,タッチスクリーン104に押圧されたときに電子機器100をユーザに提供するアプリケーションおよび/またはプリファランスにユーザ情報を格納してもよい。」)

G “With reference now to FIG. 7, a method of completing a user sign-in process will be described in accordance with at least some embodiments of the present invention. The method is initiated when the contact detection module 532 detects at least one point of contact at the user input 512 (step 704). In response to detecting the contact, the device security application 528 determines whether a valid key is required to be presented to the touch-screen 104 prior to allowing the user access to the electronic device 100 and/or applications stored thereon (step 708). In other words, the device security application 528 determines whether the electronic device 100 is under password/key protection. Device security is generally desirable in circumstances where the electronic device 100 contains some amount of sensitive information or if the owner/user of the electronic device 100 wants to prevent a potential thief of the electronic device 100 from being able to use it.
If a key is not required, then the device security application 528 allows the user to access the electronic device 100 and the user may utilize the electronic device 100 in the normal fashion (step 732). On the other hand, if there is some security desired for the electronic device 100 and a key is required to be presented before the user can access the electronic device 100, then the method continues with the device security application 528 employing the contact detection module 532 to determine the number of contact points 404 on the touch-screen 104 (step 712). This step is similar to step 608 described in connection with FIG. 6.
After the contact detection module 532 has determined the number of contact points 404 detected, it can access the stored key information to determine which, if any, keys have the same number of contact points 404. The contact analysis module 536 can then analyze the key 200, 300 currently being presented with only those keys identified as having the same number of contact points 404. The contact analysis module 536 continues by determining the location information for each contact point 404 (step 716). More specifically, the contact analysis module 536 determines when contact detecting elements in the touch-screen 104 have been contacted by a contactor 208, 308. In determining the location information, the contact analysis module 536 can determine, for each contact point 404, the distance to the closest two contact points 404 as well as the relative angle created there between. This location information for the key 200, 300 is useful because it neither depends upon the location of the contact area 400 in the touch-screen 104 nor the rotational orientation of the key 200, 300 on the touch-screen 104. Accordingly, the key information may be defined by the relative distances and angles created within the contact area 400, thereby making use of the key 200, 300 more user friendly.
Once the contact analysis module 536 has determined the necessary location information for the key 200, 300 currently being presented to the touch-screen 104, the location information is compared to the stored key information to determine if there are any matches between the currently presented key 200, 300 and any validated keys. The comparison between the contact point distances and relative angles helps to make the determination as to whether or not the key 200, 300 is recognized by the electronic device 100. If a match is found, then the relevant user information and key information is transferred from the contact analysis module to the device security application 528 (step 720). The device security application 528 then analyzes the key location information as well as the user information to determine if the key 200, 300 and its associated user are allowed access to the electronic device 100 and/or applications stored thereon (step 724). If the user is not validated, based either on the user information or the lack of having presented a valid key 200, 300, then the device security application 528 denies the user access to the electronic device 100 (step 728). Alternatively, if the device security application 528 validates the user and the key 200, 300 presented to the touch-screen 104 as a valid key, then the user is allowed access to the electronic device 100 (step 732). In accordance with at least some embodiments of the present invention, the device security application 528 may determine what applications the user is allowed access to based on the key 200, 300 presented and/or the user information. This way a plurality of users can be allowed general access to an electronic device 100 while only specified users are allowed access to certain sensitive information and/or applications.
As can be appreciated by one skilled in the art, although specific methods and algorithms have been described for determining key information based on the location of contact points 404 on a touch-screen 104 (e.g., via distance and angle calculations for near contact points 404), other known pattern recognition methods can be employed to determine key information and further determine whether a valid key has been presented to a touch-screen 104 based on the relative location of contact points 404.”(9欄14行-10欄35行)
(当審訳:
「図7を参照して,本発明の少なくともいくつかの実施形態にしたがってユーザサインインプロセスを完了するための方法が説明される。この方法では,接触検出モジュール532が,ユーザ入力512の少なくとも1つの接触点を検出することによって開始される(ステップ704)。接触を検出したことに応答して,デバイスセキュリティアプリケーション528は,電子デバイス100及び/または格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可するよりも前に,有効なキーのタッチスクリーン104への提示が求められるかを決定する(ステップ708)。つまり,デバイスセキュリティアプリケーション528は,電子デバイス100が,パスワード/キーの保護下にあるかどうかを判定する。電子デバイス100がいくらかの量の機密情報を含む場合,あるいは,電子デバイス100の所有者/ユーザが電子デバイス100の潜在的な泥棒がそれを使用することを防止することを望む場合の状況においては,デバイスセキュリティが一般的に望まれる。
キーが必要とされない場合,デバイスセキュリティアプリケーション528は,ユーザが電子デバイス100にアクセスすることを許可し,ユーザは,電子デバイス100を通常の方法で利用することができる(ステップ732)。他方,電子デバイス100のために某かのセキュリティが必要とされ,ユーザが電子デバイス100にアクセスする際にキーの提示が求められるなら,方法は,デバイスセキュリティアプリケーション528が接触検知モジュール532を用いてタッチスクリーン104上の接触点404の数を決めるように続く(ステップ712)。このステップは,図6に関連して説明したステップ608と同様である。
接触検出モジュール532が接触点404の数を決定した後,格納されているキー情報にアクセスし,もしあるならば,どのキーが同じ接触点404の数をもつのかを決定することができる。次に,接触解析モジュール536は,接触点404の数と同じ数を有すると同定された,これらのキーのみを用いて提示された現在のキー200,300を解析することができる。接触解析モジュール536は続いて,各接触点404のための位置情報を判断する(ステップ716)。より具体的には,接触解析モジュール536は,タッチスクリーン104における接触検出要素が,接触子208,308によりいつ接触されたかを決定する。位置情報を決定する際に,接触解析モジュール536は,各接触点404毎に,近接2接触点間の距離とそれらの間で形成される相対角度を決定することができる。キー200,300のこの位置情報は,タッチスクリーン104上の接触領域400に依存しないばかりか,キー200,300の回転方向の位置にも依存しないので,有用である。これにより,キー情報が接触領域400内に生成される相対距離や角度により定義することができるので,キー200,300の使用は,よりユーザフレンドリになる。
接触解析モジュール536は,現在タッチスクリーン104に提示されているキー200,300の必要な位置情報を決定すると,当該位置情報と,タッチスクリーン104上に現在提示されているキー200,300と任意の有効キーとの間で一致するか否かを決定する情報である保存されたキー情報とが比較される。接触点間の距離と相対角度の比較により,キー200,300が電子デバイス100によって認識されたか否かを決定するのに役立つ。一致が見つかった場合には,関連する利用者情報及びキー情報は,接触解析モジュールからデバイスセキュリティアプリケーション528に転送される(ステップ720)。デバイスセキュリティアプリケーション528は,キー200,300とそれに関連するユーザが電子デバイス100および/またはその上に記憶されたアプリケーションへのアクセスが許可されるかどうかを判定するために,キー位置情報をユーザ情報と同様に解析する(ステップ724)。ユーザ情報または有効キー200,300の提示がない,のいずれかに基づいてユーザが確認されない場合,デバイスセキュリティアプリケーション528は,電子デバイス100へのユーザアクセスを拒否する(ステップ728)。あるいは,デバイスセキュリティアプリケーション528は,ユーザ及びタッチスクリーン104に提示されるキー200,300を有効とする場合,ユーザは電子デバイス100へのアクセスを許可される(ステップ732)。本発明の少なくともいくつかの実施形態によると,デバイスセキュリティアプリケーション528は,提示されるキー200,300及び/又はユーザ情報に基づいて,ユーザのアクセスが許可されるのはどのアプリケーションかを決定することができる。このようにして,複数のユーザによる電子デバイス100への一般的なアクセスを許可することができ,特定のユーザだけが,所定の機密情報および/またはアプリケーションへのアクセスが許可される。
当業者であれば理解されるように,特定の方法及びアルゴリズムは,タッチ画面104上の接触点404の位置に基づいて(例えば,近くの接触点404の距離・角度の計算を介して),キー情報を決定することについて記載されているが,キー情報を決定し,接触点404の相対的な位置に基づいて有効キーがタッチスクリーン104に表示されているかどうかを更に決定するための他の既知のパターン認識方法を使用することができる。」)

2 引用発明

ア 上記記載事項Aの「本発明は…(中略)…タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステムに関するものである。」との記載,及び,上記記載事項Bの「ランダムに配置された複数のピン又は接触子を含んでいるサインインキーが提供される。このサインインキーはタッチスクリーンに提示され,それにより接触点を形成することができる。…(中略)…接触点(すなわち,接触点のパターン及び形状)の相対的な向きを認識し,かつ電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能である。」との記載から,引用例1には,“タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステムに関し,ランダムに配置された複数のピン又は接触子を含んでいるサインインキーをタッチスクリーンに提示し,それにより接触点を形成することができ,接触点のパターン及び形状の相対的な向きを認識し,かつ電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能である方法”について記載されているといえる。

イ 上記記載事項Cの「タッチスクリーン104は,接触グリッドの均一に離間された一連の要素を備え…(中略)…各要素は,同時に接触を検出するために反応性であってもよい。…(中略)…第1のキー200は,その上に配置される複数の接触子208を有するベース204を含んでいてもよい。第1のキー200の接触子208は,図2Aに見ることができるような2次元形状であってもよい。ベース204上に,接触子208の位置はランダムに割り当てられてもよく,また接触子208のサイズは,タッチスクリーン104に使用される接触検知要素のサイズに対応することができる。」との記載,及び上記記載事項Dの図2Aに図示されている様子から,引用例1には,“タッチスクリーンは,接触グリッドの均一に離間された一連の要素を備え,各要素は,同時に接触を検出するために反応性であ”ることが記載されているといえる。
また,上記記載から,「第1のキー200」が「タッチスクリーン104」の上に接触されることを読取ることができ,このことは,当該「第1のキー200」が上記アの「タッチスクリーンに提示」されるところの「サインインキー」を表しているといえることから,引用例1には,“前記サインインキーは,その上に配置される複数の接触子を有するベースを含み,前記サインインキーの接触子は2次元形状であり,前記ベース上に,接触子の位置がランダムに割り当てられ,そのサイズは前記タッチスクリーンに使用される接触検知要素のサイズに対応する”ことが記載されているといえる。

ウ 上記記載事項Eの「2次元配列のキー200は,任意の位置および/または回転配向においてタッチスクリーン104に提示され…(中略)…接触点404とも呼ばれるこれらの接触点は,キー200…を提示しているユーザが,電子デバイス100へのアクセス,またはその上に格納されたアプリケーションへのアクセスが許可されるよう決定されるように,電子デバイス100によって登録されている。」との記載,及び上記イでの「サインインキー」の認定も踏まえると,引用例1には,“2次元配列のサインインキーは,任意の位置および/または回転配向においてタッチスクリーンに提示され,接触点は,サインインキーを提示しているユーザが,電子デバイスへのアクセス,またはその上に格納されたアプリケーションへのアクセスが許可されるよう決定されるように,電子デバイスによって登録され”ていることが記載されているといえる。

エ 上記記載事項Fの「ユーザが識別され,キー200…をタッチスクリーン104上に提示した後,…接触検知モジュール532,接触解析モジュール536を使用して,デバイスセキュリティアプリケーション528によってタッチスクリーン104の接触点404の数を決定する…(中略)…接触点404の数が決定されると,方法は,各接触点404につき,距離が最も近い2点の接触点404の相対角度を決定するように進む…(中略)…接触解析モジュール536は,次いで,各接触点404について,検査中の接触点404と2つの近接する接触点とで形成される相対角度を決定してよい…(中略)…各接触点404毎に距離及び角度が決定された後,デバイスセキュリティアプリケーション528は,キー情報を保存することができる。これにより,ユーザは,後の時点で同一のキー200…を提示し,電子デバイス100にアクセスすることができるようになる…(中略)…これらの決定された距離及び相対角度は,同一のキー200…が後に提示される場合に認識するために使用されてよい。」との記載,及び上記イでの「サインインキー」の認定も踏まえると,引用例1には,“ユーザが識別され,サインインキーをタッチスクリーン上に提示した後,接触検知モジュール及び接触解析モジュールを使用して,デバイスセキュリティアプリケーションによってタッチスクリーンの接触点の数を決定し,接触点の数が決定されると,各接触点につき,距離が最も近い2点の接触点の相対角度を決定し,接触解析モジュールは,次いで,各接触点について,検査中の接触点と2つの近接する接触点とで形成される相対角度を決定し,各接触点毎に距離及び角度が決定された後,デバイスセキュリティアプリケーションは,キー情報を保存し,これにより,ユーザは,後の時点で同一のサインインキーを提示し,電子デバイスにアクセスすることができるようになり,これらの決定された距離及び相対角度は,同一のサインインキーが後に提示される場合に認識するために使用され”ることが記載されているといえる。

オ 上記記載事項Gの,「ユーザサインインプロセスを完了するための方法が説明される。この方法では,接触検出モジュール532が,ユーザ入力512の少なくとも1つの接触点を検出することによって開始される…(中略)…接触検出モジュール532が接触点404の数を決定した後,格納されているキー情報にアクセスし,もしあるならば,どのキーが同じ接触点404の数をもつのかを決定することができる。」との記載から,引用例1には,“ユーザサインインプロセスにおいて,接触検出モジュールが,ユーザ入力の少なくとも1つの接触点を検出することによって開始され,接触点の数を決定した後,格納されているキー情報にアクセスし,もしあるならば,どのキーが同じ接触点の数をもつのかを決定する”ことが記載されているといえる。
また,同じく上記記載事項Gの,「接触解析モジュール536は続いて,各接触点404のための位置情報を判断する…(中略)…接触解析モジュール536は,タッチスクリーン104における接触検出要素が,接触子208…によりいつ接触されたかを決定する。…(中略)…接触解析モジュール536は,各接触点404毎に,近接2接触点間の距離とそれらの間で形成される相対角度を決定することができる。」との記載,及び,「接触解析モジュール536は,現在タッチスクリーン104に提示されているキー200…の必要な位置情報を決定すると,当該位置情報と,タッチスクリーン104上に現在提示されているキー200…と任意の有効キーとの間で一致するか否かを決定する情報である保存されたキー情報とが比較される。…(中略)…一致が見つかった場合には,関連する利用者情報及びキー情報は,接触解析モジュールからデバイスセキュリティアプリケーション528に転送される。」との記載,及び上記イでの「サインインキー」の認定も踏まえると,引用例1には,“接触解析モジュールは続いて,各接触点のための位置情報を判断し,タッチスクリーンにおける接触検出要素が,接触子によりいつ接触されたかを決定し,各接触点毎に,近接2接触点間の距離とそれらの間で形成される相対角度を決定し,現在タッチスクリーンに提示されているサインインキーの必要な位置情報を決定すると,当該位置情報と,タッチスクリーン上に現在提示されているキーと任意の有効キーとの間で一致するか否かを決定する情報である保存されたキー情報とが比較され,一致が見つかった場合には,関連する利用者情報及びキー情報は,接触解析モジュールからデバイスセキュリティアプリケーションに転送され”ることが記載されているといえる。
また,同じく上記記載事項Gの,「デバイスセキュリティアプリケーション528は,ユーザ及びタッチスクリーン104に提示されるキー200…を有効とする場合,ユーザは電子デバイス100へのアクセスを許可される…(中略)…このようにして,複数のユーザによる電子デバイス100への一般的なアクセスを許可することができ,特定のユーザだけが,所定の機密情報および/またはアプリケーションへのアクセスが許可される。」との記載から,引用例1には,“デバイスセキュリティアプリケーションは,タッチスクリーンに提示されているサインインキーが有効な場合,ユーザは電子デバイスへのアクセスを許可され,このようにして,複数のユーザによる電子デバイスへの一般的なアクセスを許可することができ,特定のユーザだけが,所定の機密情報および/またはアプリケーションへのアクセスが許可され”ることが記載されているといえる。
また,同じく上記記載事項Gの,「キー200…のこの位置情報は,タッチスクリーン104上の接触領域400に依存しないばかりか,キー200…の回転方向の位置にも依存しない」との記載,及び上記イでの「サインインキー」の認定も踏まえると,引用例1には,“サインインキーの位置情報は,タッチスクリーン上の接触領域に依存しないばかりか,キーの回転方向の位置にも依存しない”ことが記載されているといえる。

カ 以上上記ア乃至オより,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステムに関し,ランダムに配置された複数のピン又は接触子を含んでいるサインインキーをタッチスクリーンに提示し,それにより接触点を形成することができ,接触点のパターン及び形状の相対的な向きを認識し,かつ電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能である方法であって,
タッチスクリーンは,接触グリッドの均一に離間された一連の要素を備え,各要素は,同時に接触を検出するために反応性であり,
前記サインインキーは,その上に配置される複数の接触子を有するベースを含み,前記サインインキーの接触子は2次元形状であり,前記ベース上に,接触子の位置がランダムに割り当てられ,そのサイズは前記タッチスクリーンに使用される接触検知要素のサイズに対応し,
2次元配列のサインインキーは,任意の位置および/または回転配向においてタッチスクリーンに提示され,接触点は,サインインキーを提示しているユーザが,電子デバイスへのアクセス,またはその上に格納されたアプリケーションへのアクセスが許可されるよう決定されるように,電子デバイスによって登録されており,
ユーザが識別され,サインインキーをタッチスクリーン上に提示した後,接触検知モジュール及び接触解析モジュールを使用して,デバイスセキュリティアプリケーションによってタッチスクリーンの接触点の数を決定し,接触点の数が決定されると,各接触点につき,距離が最も近い2点の接触点の相対角度を決定し,接触解析モジュールは,次いで,各接触点について,検査中の接触点と2つの近接する接触点とで形成される相対角度を決定し,各接触点毎に距離及び角度が決定された後,デバイスセキュリティアプリケーションは,キー情報を保存し,これにより,ユーザは,後の時点で同一のサインインキーを提示し,電子デバイスにアクセスすることができるようになり,これらの決定された距離及び相対角度は,同一のサインインキーが後に提示される場合に認識するために使用され,
ユーザサインインプロセスにおいて,接触検出モジュールが,ユーザ入力の少なくとも1つの接触点を検出することによって開始され,接触点の数を決定した後,格納されているキー情報にアクセスし,もしあるならば,どのキーが同じ接触点の数をもつのかを決定し,
接触解析モジュールは続いて,各接触点のための位置情報を判断し,タッチスクリーンにおける接触検出要素が,接触子によりいつ接触されたかを決定し,各接触点毎に,近接2接触点間の距離とそれらの間で形成される相対角度を決定し,現在タッチスクリーンに提示されているサインインキーの必要な位置情報を決定すると,当該位置情報と,タッチスクリーン上に現在提示されているキーと任意の有効キーとの間で一致するか否かを決定する情報である保存されたキー情報とが比較され,一致が見つかった場合には,関連する利用者情報及びキー情報は,接触解析モジュールからデバイスセキュリティアプリケーションに転送され,
デバイスセキュリティアプリケーションは,タッチスクリーンに提示されているサインインキーが有効な場合,ユーザは電子デバイスへのアクセスを許可され,このようにして,複数のユーザによる電子デバイスへの一般的なアクセスを許可することができ,特定のユーザだけが,所定の機密情報および/またはアプリケーションへのアクセスが許可され,
サインインキーの位置情報は,タッチスクリーン上の接触領域に依存しないばかりか,キーの回転方向の位置にも依存しない
方法。」

3 引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-542959)の第一国出願前に既に公知である,特開平11-149454号公報(平成11年6月2日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

H 「【0021】座標検出器6は、入力された座標値を検出したり、抵抗式の場合には入力された座標に対応する抵抗値を検出したりなどするものである。この座標検出器6は、CRT上に表示された画面、液晶上に表示された画面、タブレットなどの入力された座標値を検出するものである。これらの、CRT上に表示された画面、液晶ディスプレイ上に表示された画面、タッチパネル、タブレット、抵抗式のタブレットなどの全ての座標を検出するものを含めて本願発明では座標検出器と呼んでいる。例えば、液晶ディスレイ、プラズマ放電パネルの上に薄膜抵抗式のデジタイザを配したタッチパネルや、液晶ディスプレイやプラズマ放電パネルの下に電磁誘導方式のデジタイザを配したタッチパネル等でも良い。電磁誘導方式の場合は、画面(例えば液晶ディスプレイ)の下方に配置した座標検出器により、ペン(又はスタイラス)からの磁気を感知して座標を検出する。」

I 「【0082】図17は、本発明の比較説明図(固定値)を示す。位置検出装置で検出した座標には、検出誤差が含まれ、かつユーザ個人のペンの当て方にもクセがあり、検出座標と登録座標の比較には必ず許容範囲を設ける必要がある。図17において、ステップS121は、許容範囲Δx、Δyを設定する。これは、既述した画面11上に表示されたカード枠12にカードを当ててペンで押下して座標入力して検出ときの許容範囲を固定値のΔx、Δyと設定する。」

J 「【0085】以上によって、許容範囲Δx、Δy(固定値)を設定し、画面11上から検出した座標入力(X、Y)が登録データの許容範囲Δx、Δyにあるときに座標一致として判定し、座標入力時の誤差がある程度あっても許容範囲内のときは正しく判定されることとなる。図18は、本発明のセキュリティレベル設定説明図を示す。」

4 引用例3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-542959)の第一国出願前に既に公知である,特開2012-168619号公報(平成24年9月6日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

K 「【0035】
ステップ304において、CPU102は、ステップ302で検出されたタッチがマルチタッチ(複数点に同時にタッチされている状態)であるか否かを判定する。具体的には、CPU102は、ステップ302で記憶した複数の座標データのうち、最初に受信した座標データとその後に受信した座標データとの距離を計算する。距離が所定値以上であればマルチタッチであると判定し、所定値未満であればシングルタッチであると判定する。
【0036】
タッチ検出周期は短く、また、各点へのタッチは若干の時間差があるので、マルチタッチであってもタッチされた順にタッチ検出部112から座標データが出力される。したがって、最初に受信した座標データと、2番目以降に受信した数個の座標データの距離を計算すれば、シングルタッチであるかマルチタッチであるかを判定することができる。マルチタッチで同時にタッチされている点は2点に限らず、3点以上である場合があるので、連続する複数の点について距離が計算される。マルチタッチか否を判定する基準となる距離は、適宜設定することができ、ユーザが検出周期の間にタッチ点を通常移動させる距離よりも大きければよい。マルチタッチであると判定された場合、ステップ320に移行し、マルチタッチでないと判定された場合、ステップ310に移行する。」

5 引用例4に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-542959)の第一国出願前に既に公知である,特開2003-346077号公報(平成15年12月5日公開。以下,これを「引用例4」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

L 「【0013】ここで、本実施例において使用する2次元コード例えばマイクロQRコードについて、図3ないし図9を参照して説明する。まず、図3に従って、周知のマイクロQRコード31について簡単に説明する。このマイクロQRコード31は、情報単位であるデータセルを配置したデータセル領域31a(多数の白黒セルで埋まった幅広い逆L字状の領域)と、このデータセル領域31aの位置情報を記録したファインダーパターン領域31bと、これらデータセル領域31a及びファインダーパターン領域31bの周囲に位置するように設けられ上記2つの領域31a、31bを他の領域と区画する周辺領域31c(矩形枠状の空白の領域)とから構成されている。」

6 引用例5に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-542959)の第一国出願前に既に公知である,特開平11-120311号公報(平成11年4月30日公開。以下,これを「引用例5」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

M 「【0016】又、2次元コードは図4(A)に示すように、図2(A)に示すデータLijと同じであるが、右端セルLn15(ここで、nは1?7)の基準マークを略して簡便に形成した点と、左端セルLn1の左側に1セルの読取基準マークMaが、右端セルLn15の右側には1セルの読取基準マークMbが、前記拡大マーク10a(又は10b)に対応させてほぼ中央に付記してある点を異にする。
【0017】この2次元コードは、図4(C)に示すように、先ず、コードリーダの先端部1bを番組欄上におき、拡大鏡6を見ながら、読取基準マークMa、Mbを拡大マーク10a(又は10b)に合わせると、CCDカメラは、2次元コードが基準位置に一致した状態で読み取ることができ、縦横の回転等のデータ補正を行うことなく解読可能となる。その結果、2次元コードを迅速に且つ正確に読み取ることができ、番組予約を簡便に行うことが可能となる。このように、2次元コードに読取基準マークMa、Mbを附すと共に、拡大鏡6を取り付けると、容易に基準位置合わせができるので迅速に2次元コードを解読できる。
【0018】尚、前記2次元コードに附す読取基準マークMa、Mbは、左右側の他、上下側であってもよいし、何れか1箇所であってもよい。即ち、拡大マーク10a(又は10b)によって、読取基準マークMa(又はMb)を介して基準位置合わせを行うので、データの回転補正を行う必要がなく、例えば、読取基準マークMa(又はMb)との基準位置合わせが行える程度の長さに形成してあれば、1個の読取基準マークMa(又はMb)であってもよい。」

7 引用例6に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-542959)の第一国出願前に既に公知である,特開2010-282322号公報(平成22年12月16日公開。以下,これを「引用例6」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

N 「【0060】
図9は、認証IDデータベース577のデータ構成の一例を示す図である。認証IDデータベース577は、擬似衛星4が発信する認証IDの履歴が記憶された認証IDデータ578(578-1,578-2,578-3,・・・)が、擬似衛星別に蓄積・記憶されたデータベースである。
【0061】
認証IDデータ578には、当該擬似衛星4の配置位置5781と対応付けて、認証ID5783と、当該認証IDの生成日時5785と、当該認証IDの有効期間5787とが対応付けて新しい順に記憶されている。本実施形態では、認証IDの今回の生成日時から次回の生成日時までの期間(図9では10分間の期間)に、所定の猶予期間(例えば2分間)を付加した期間を有効期間として設定する。
【0062】
例えば、図9において、認証IDデータ578-1は、配置位置の座標が(X1,Y1,Z1)である擬似衛星4が発信する認証IDについてのデータである。認証ID「12895695」は、「2009年5月20日12時00分」に生成された認証IDであり、その有効期間は、「2009年5月20日12時00分?2009年5月20日12時12分」である。」

O 「

図9」

8 引用例7に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-542959)の第一国出願前に既に公知である,『蛭子 隆彦,音響信号を利用した個人認証システム,沖テクニカルレビュー,沖電気工業株式会社,2006年 1月 1日,第205号,Vol.73,No.1』(2006年1月1日発行。以下,これを「引用例7」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

P 「音響署名カードシステムとは
カード型の認証トークン「音響署名カード」から“音”になったワンタイムパスワードを発生し,ネットワークを経由して送られるこのワンタイムパスワードを認証サーバで検証する個人認証用のシステムである。図1に音響署名カードの外観と操作の様子を示す。

(1)適用分野
各種システム,ネットワーク,アプリケーションでの個人認証ステージに適用が可能であり,
●リモートアクセスユーザ認証
●ASPサービスユーザ認証
●電子商取引本人確認
●コンタクトセンタ本人確認
等の不正侵入やなりすましの防止が強く求められる応用システムへの適用が効果的である。

(2)特徴
■ マイクロフォン入力
PC,PDA,Thin Client,電話等のマイクロフォンにより“音”を入力できる端末が利用でき,ワンタイムパスワード表示器,ICカードリーダ等の特殊な認証機器が不要である。
■ 2要素認証
暗証番号(PIN Code,数字4桁)認証と組み合わせた2要素認証により,セキュアな本人確認が可能である。」(52ページ左欄18行-右欄16行)

9 引用例8に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の原出願(特願2015-542959)の第一国出願前に既に公知である,特開平5-89220号公報(平成5年4月9日公開。以下,これを「引用例8」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

Q 「【0013】上記構成のうち電子印鑑1は、その刻印面に相当する側から所定の識別信号を発する構成を有しており、表示させようとする捺印イメージに応じて別々の識別信号を発する電子印鑑1が夫々別個に設けられている。図2に示される電子印鑑1の構成は、信号発信源10aから発せられる識別信号を、固定的なパターンを持って配置されている複数の信号発信孔11a、11b、11c等を通して外部に発信する(信号発信に複数の位置座標を有している)構成となっている。その発信順序は同時でも良いがメモリ12aに格納されている発信順序に従って順々に発信する構成でも良い。一方図3は電子印鑑1の他の構成例を示しており、この構成では単独の信号発信孔11dを通って発せられる信号発信源10bの識別信号は、メモリ12b内に格納されたデータに基づき時系列的な発信順序に従って生成されるシーケンス信号から成る。両構成とも発信する識別信号としては、光、電波、その他の電磁波や超音波等を用いることができる。」

R 「【0016】前記検出装置4は上述の様に表示器3と一体となったディスプレイ付きタブレットXの構成から成っており、捺印待ち状態にある時に、電子印鑑1の接触でそこから発せられる前記識別信号を検出する。この検出装置4は受光子、受振子で構成される。」

S 「【0020】前記照合装置8は、前記信号変換装置5で変換された識別データと識別データ登録ファイル7に登録された識別データとの照合を行ない、照合された識別データに対応するイメージデータ格納ファイル6中の捺印イメージ用データの格納位置を照合結果として後述する捺印イメージ選択装置9に渡す機能を有している。」

10 引用例9に記載された事項
平成30年12月28日付けの刊行物提出書において「文献7」として,令和1年8月21日付けの刊行物提出書において「文献1」として引用され,本願の原出願(特願2015-542959)の第一国出願前に既に公知である,特表2008-528226号公報(平成20年7月31日公表。以下,これを「引用例9」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

T 「【0024】
図1aは、本発明による駒10の例である実施例の側面図を示す。駒10は、絶縁本体13、2つの導電性起動可能サブパーツ11及び12を有する。図1bは、当該駒10の底面図を示す。駒10は、盤の盤表面に駒を支持する接触表面10aを有する。接触表面10aは、2つの電極接点11a及び12aを有する。起動可能サブパーツ11及び12は、それぞれ個々の電極接点11a及び12aと電極により結合される。駒10の最上部の起動可能サブパーツ11を中央の電極接点11aに結合する電極は、駒10の内部に埋め込まれる。当該電極は従って、損傷から良く保護される。駒10の側面の起動可能サブパーツ12を外側の電極接点12aに結合する電極は、駒10の表面に沿って走行し、広い起動可能面積を提供する。

…(中略)…

【0034】
図5a、5b及び5cは、接触表面10a内の電極接点14、15、16のパターンを有する駒の3個の方位を示す。パターンは、回転非対称である。図5aでは、駒の1つの無作為な方位が示される。図5b及び5cは、電極14、15、16のパターンの盤に対する方位を変化することなく、駒を回転及び/又は置き換えることが不可能であることを示す。3個の電極14、15、16位置が分かると、駒の方位が決定され得る。」

U 「

図5a-5c」


第6 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(あ)引用発明の「タッチスクリーン」は,「接触グリッドの均一に離間された一連の要素を備え,各要素は,同時に接触を検出するために反応性であ」ることから,本願発明1の「静電式タッチスクリーン」とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“多重タッチを支援するタッチスクリーン”である点で一致するといえる。
また,引用発明の「タッチスクリーン式の電子デバイスのためのセキュリティシステム」と,本願発明1の「多重タッチを支援する静電式タッチスクリーンと連携されたシステム」とは,同じく下記の点(相違点1)で相違するものの,“多重タッチを支援するタッチスクリーンと連携されたシステム”である点で一致するといえる。
また,引用発明の「ランダムに配置された複数のピン又は接触子を含んでいるサインインキー」は,「タッチスクリーンに提示し,それにより接触点を形成することができ,接触点のパターン及び形状の相対的な向きを認識」した上で,「電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能」となるよう用いられるものである。
引用発明で,「電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能」となることは,当該ユーザが認証されることを意味することから,引用発明の「サインインキーをタッチスクリーンに提示し,それにより接触点を形成することができ,接触点のパターン及び形状の相対的な向きを認識し,かつ電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能である方法」は,本願発明1の「スタンプタッチ認証方法」と,互いに認証方法である点で共通するといえるから,以上を総合して,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“多重タッチを支援するタッチスクリーンと連携されたシステムにおいて実行されるスタンプタッチ認証方法”である点で一致するといえる。

(い)引用発明の「サインインキー」に含まれる「ランダムに配置された複数のピン又は接触子」は,本願発明1の「タッチスタンプに具備されたタッチ部」に相当する。
引用発明は,「デバイスセキュリティアプリケーションによってタッチスクリーンの接触点の数を決定し」た上,「各接触点につき,距離が最も近い2点の接触点の相対角度を決定」したり,「各接触点毎に距離」が「決定された」りするものであり,このうち,「距離が最も近い2点の接触点の相対角度」や「距離」は,「サインインキー」の「接触子」同士の角度及び距離にほかならず,本願発明1の「タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係」に対応する。そして,当該「相対角度」や「距離」はまた,「サインインキー」に含まれる「ランダムに配置された複数のピン又は接触子」の位置によって決まるものであるから,設計上の幾何学的位置関係ともいえ,そうすると,引用発明と本願発明1とは,“タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係”を共に含むものである点で共通する。
また,引用発明の「サインインキー」は,「任意の位置および/または回転配向においてタッチスクリーンに提示され,接触点は,サインインキーを提示しているユーザが,電子デバイスへのアクセス,またはその上に格納されたアプリケーションへのアクセスが許可されるよう決定されるように,電子デバイスによって登録されて」いて,引用発明の「デバイスセキュリティアプリケーション」によって「保存」されるところの「キー情報」は,「ユーザ」が「後の時点で同一のサインインキーを提示し,電子デバイスにアクセスすることができるようになり,これらの決定された距離及び相対角度は,同一のサインインキーが後に提示される場合に認識するために使用され」るものであって,ユーザを認証するために使用しているともいえるから,本願発明1の「タッチ認証条件」に相当するものといえる。さらに,「キー情報」の「保存」は,所定の保存媒体への保存であることは自明であることから,以上を総合して,引用発明と本願発明1とは,“タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件を保存媒体に保存する第1段階”を含む点で一致するといえる。

(う)引用発明は,「ユーザサインインプロセス」において,「接触検出モジュールが,ユーザ入力の少なくとも1つの接触点を検出することによって開始され」るところ,当該「少なくとも1つの接触点を検出」する前提として,当然にタッチスクリーンに接触することが行われていると認められ,当該タッチスクリーンに接触することが,本願発明1の「前記タッチスタンプの前記タッチ部を前記静電式タッチスクリーンにタッチすること」に対応する。引用発明はさらに,「接触解析モジュール」が「各接触点のための位置情報を判断」するところ,当該「判断」するために,上記「接触点」の位置に関する座標値等のなんらかの情報を含む,タッチされたことを認識するための情報,すなわち本願発明1の「構成要素値を含むタッチ認識情報」を取得することは明らかであり,したがって,引用発明と本願発明1とは,“前記タッチスタンプの前記タッチ部を前記タッチスクリーンにタッチすることにより認識される構成要素値を含むタッチ認識情報を受信する第2段階”を含む点で一致するといえる。

(え)引用発明は,「各接触点毎に,近接2接触点間の距離とそれらの間で形成される相対角度を決定」するものであるところ,各接触点毎に決定される近接2接触点間の距離とそれらの間で形成される相対角度は,本願発明1の「タッチ点間の相互位置関係」に相当し,また当該決定により,当該「タッチ点間の相互位置関係」を取得しているといえるから,上記(う)で認定した「構成要素値」の対応を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点1及び相違点3)で相違するものの,“前記構成要素値を利用して前記タッチスクリーン上のタッチを通じて認識されたタッチ点間の相互位置関係を読み取る第3段階”を含む点で一致するといえる。

(お)引用発明は,「接触解析モジュール」が,「各接触点のための位置情報を判断し,タッチスクリーンにおける接触検出要素が,接触子によりいつ接触されたかを決定し,各接触点毎に,近接2接触点間の距離とそれらの間で形成される相対角度を決定し,現在タッチスクリーンに提示されているサインインキーの必要な位置情報を決定すると,当該位置情報と,タッチスクリーン上に現在提示されているキーと任意の有効キーとの間で一致するか否かを決定する情報である保存されたキー情報とが比較され」るものであり,当該「比較」される,「保存されたキー情報」には,上記(い)で検討した,「設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件」が含まれていることは明らかであり,また,当該「保存されたキー情報」と比較される,「位置情報」は,本願発明1の「タッチ点の幾何学的位置関係」に相当するといえるから,上記(う)で認定した「構成要素値」の対応を踏まえると,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点3)で相違するものの,“前記構成要素値を利用して,前記設計上の幾何学的位置関係と比較するための前記タッチ点の幾何学的位置関係を算出する第4段階”を含む点で一致するといえる。

(か)引用発明はさらに,「当該位置情報と,タッチスクリーン上に現在提示されているキーと任意の有効キーとの間で一致するか否かを決定する情報である保存されたキー情報とが比較され,一致が見つかった場合には,関連する利用者情報及びキー情報は,接触解析モジュールからデバイスセキュリティアプリケーションに転送され」るものであり,上記(お)で認定した「タッチ点の幾何学的位置関係」の対応を踏まえると,当該「比較」及び「一致が見つか」るための処理を行うことは,本願発明1の「マッチングするか否かを解析」することに対応するといえるから,引用発明と本願発明1とは,“算出された前記タッチ点の前記幾何学的位置関係が前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析する第5段階”を含む点で一致するといえる。
また,引用発明は,「一致が見つかった場合」に「接触解析モジュールからデバイスセキュリティアプリケーション」に,「関連する利用者情報及びキー情報」を「転送」しているところ,当該転送を行う前提として,当該「一致が見つかった」ことを示す情報を当然に生成しているものと認められるが,当該「一致が見つかった」ことを示す情報が,本願発明1の「タッチ認証結果」に相当する。よって,引用発明の「接触解析モジュールは続いて,各接触点のための位置情報を判断し,タッチスクリーンにおける接触検出要素が,接触子によりいつ接触されたかを決定し,各接触点毎に,近接2接触点間の距離とそれらの間で形成される相対角度を決定し,現在タッチスクリーンに提示されているサインインキーの必要な位置情報を決定すると,当該位置情報と,タッチスクリーン上に現在提示されているキーと任意の有効キーとの間で一致するか否かを決定する情報である保存されたキー情報とが比較され,一致が見つかった場合には,関連する利用者情報及びキー情報は,接触解析モジュールからデバイスセキュリティアプリケーションに転送され」ることと,本願発明1の「算出された前記タッチ点の前記幾何学的位置関係が許容された誤差範囲内で前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析したタッチ認証結果を生成する第6段階」とは,下記の点(相違点2)で相違するものの,“算出された前記タッチ点の前記幾何学的位置関係が前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析したタッチ認証結果を生成する第6段階”を含む点で一致するといえる。

(き)本願発明1の「第2段階」において,「適用して判断」されるところの,「同時タッチ条件」は,例えばタッチスタンプに具備されたN個のタッチ部が静電式タッチスクリーンに同時にタッチされるかを判断する条件を意味し(本願明細書段落0113),二つ以上のタッチ点が認識されるかを確認した上,一定時間内に確認されたタッチ点の個数がN個であれば,前記同時タッチ条件を満足するとして判断されるものである(同段落0115)。
これに対し,引用発明は,「ユーザサインインプロセス」において,「接触検出モジュールが,ユーザ入力の少なくとも1つの接触点を検出」して「接触点の数を決定」しているところ,上記「接触点の数」の「決定」においては,複数の接触点を同時に検出していることが明らかである。
してみれば,上記「接触点の数」の「決定」は,本願発明1の「前記タッチ部の前記静電式タッチスクリーンへのタッチ」を判断するための「タッチ条件」のうちの1つである,「同時タッチ条件」を適用して判断していることに対応するから,引用発明と本願発明1とは,“第2段階は,前記タッチ部の前記タッチスクリーンへのタッチを,同時タッチ条件,固定タッチ条件,静的タッチ条件,動的タッチ条件の少なくとも1つのタッチ条件を選択的に適用して判断すること,を含む”点で一致するといえる。

(く)以上,(あ)乃至(き)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
多重タッチを支援するタッチスクリーンと連携されたシステムにおいて実行されるスタンプタッチ認証方法であって,
タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係を含むタッチ認証条件を保存媒体に保存する第1段階と,
前記タッチスタンプの前記タッチ部を前記タッチスクリーンにタッチすることにより認識される構成要素値を含むタッチ認識情報を受信する第2段階と,
前記構成要素値を利用して前記タッチスクリーン上のタッチを通じて認識されたタッチ点間の相互位置関係を読み取る第3段階と,
前記構成要素値を利用して,前記設計上の幾何学的位置関係と比較するための前記タッチ点の幾何学的位置関係を算出する第4段階と,
算出された前記タッチ点の前記幾何学的位置関係が前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析する第5段階と,
算出された前記タッチ点の前記幾何学的位置関係が前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析したタッチ認証結果を生成する第6段階と,を含み,
前記第2段階は,
前記タッチ部の前記タッチスクリーンへのタッチを,同時タッチ条件,固定タッチ条件,静的タッチ条件,動的タッチ条件の少なくとも1つのタッチ条件を選択的に適用して判断すること,を含む
スタンプタッチ認証方法。

〈相違点1〉
本願発明1の「タッチスクリーン」が,「静電式タッチスクリーン」であるのに対し,引用発明の「タッチスクリーン」は,静電式であることが特定されていない点。

〈相違点2〉
本願発明1が,「算出された前記タッチ点の前記幾何学的位置関係」と「タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係」との間で,「許容された誤差範囲内で」マッチングするか否かを解析するのに対し,引用発明は,「接触解析モジュール」により,「位置情報と,タッチスクリーン上に現在提示されているキーと任意の有効キーとの間で一致するか否かを決定する情報である保存されたキー情報とが比較され」るものの,当該「比較」において,許容された誤差範囲内での「一致」をみるかについては特定されていない点。

〈相違点3〉
本願発明1の「第3段階」が,「静電式タッチスクリーン上のタッチを通じて認識されたタッチ点間の相互位置関係」の「読み取り」のほかに,「前記タッチ点間の前記相互位置関係が、前記タッチスタンプの前記タッチ部を前記静電式タッチスクリーン上にタッチすることにより形成できる位置関係の範囲内に入るか否かを判定する」ものであり,「第4段階」において,「前記タッチ点間の前記相互位置関係が、前記タッチスタンプの前記タッチ部をタッチすることにより形成できる前記位置関係の範囲内に入ると判定された場合」に,「タッチ点の幾何学的位置関係を算出する」ものであるのに対し,引用発明は,「接触解析モジュール」が「各接触点のための位置情報を判断し,タッチスクリーンにおける接触検出要素が,接触子によりいつ接触されたかを決定し,各接触点毎に,近接2接触点間の距離とそれらの間で形成される相対角度を決定」するものであるが,タッチ部のタッチスクリーン上へのタッチにより形成できる位置関係の範囲内に入るか否かの判定を行うことが特定されていない点。

〈相違点4〉
本願発明1の「第5段階」が,「前記タッチ点間の前記相互位置関係を読み取ることにより、前記タッチスタンプにおける設計上の固定位置に配置される単一の設計上のタッチ部に対応する単一の設計上のタッチ点を認識すること」と,「前記認識された設計上のタッチ点を基準点として利用することにより、算出された前記幾何学的位置関係が、許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析すること」を含むのに対し,引用発明は,「タッチスタンプにおける設計上の固定位置に配置される単一の設計上のタッチ部に対応する単一の設計上のタッチ点を認識する」ことの特定がなく,したがって,「前記認識された設計上のタッチ点を基準点として利用することにより、算出された前記幾何学的位置関係が、許容された誤差範囲内で前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするか否かを解析すること」についての特定もない点。

〈相違点5〉
本願発明1が,「前記単一の設計上のタッチ点が認識された際に、前記タッチ点、または算出された前記幾何学的位置関係が、前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするように、前記認識された設計上のタッチ点を前記基準点として利用することにより座標回転を行うこと」をさらに含むのに対し,引用発明は,「設計上のタッチ点」を「基準点」とすることや,検出された「サインインキー」の「接触点」に関し,座標回転を行うことが特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に相違点3乃至5について検討する。
本願発明1は,スマートフォンなどの無線端末に具備された静電式タッチスクリーンは,ユーザの指によるタッチを入力手段で利用するように設計されており,それによって動作するように最適化されていて,当該静電式タッチスクリーンは多重タッチを支援し,指を利用した多重タッチを入力手段で利用するように設計されていることを技術的背景とし(本願明細書段落0003),従来の入力手段で最適化された多重タッチ方式だけでは認証手段または識別手段で利用されるスタンプの固有性と便宜性を提供することが困難であったことを,その解決しようとする課題とし,複数のタッチ部を具備したスタンプを静電式タッチスクリーンのどの位置またはどの方向からタッチしてもいつも認識及び認証可能にして(同段落0004),前記タッチスタンプを無線端末の静電式タッチスクリーンにタッチして指定されたサービスが提供されるようにすることを目的としたものである(同段落0005)。
一方,引用発明は,小型化された電子デバイスのセキュリティを維持するため,従来,パスワードを使用して,ライセンスを受けたユーザが,格納された電子デバイスおよびアプリケーションへのアクセスを許可されていたが,当該パスワードの入力は厄介であり,また,タッチスクリーンデバイスにログインパスワードを入力するための主たる入力手段は,スタイラスペンを介して,仮想キーボード上のキーを押すか,または特殊化されたグラフィティ言語を用いてパスワードを入力していたことを背景とし(上記記載事項A),「その上に配置される複数の接触子を有するベース」を含み,当該「接触子は2次元形状であり,前記ベース上に,接触子の位置がランダムに割り当てられ,そのサイズは前記タッチスクリーンに使用される接触検知要素のサイズに対応し」た「サインインキー」を用いることにより,「複数のピン又は接触子がランダムな配置で含むサインインキーをタッチスクリーンに提示し,それにより接触点を形成することができ,接触点のパターン及び形状の相対的な向きを認識し,かつ電子デバイスおよび/またはそこに格納されているアプリケーションへのユーザのアクセスを許可または拒否の判定をするように動作可能」としたものである。
そして,本願発明1と引用発明とは,上記一致点に示したとおり,“タッチスタンプに具備されたタッチ部の距離関係と角度関係の中で少なくとも一つを含む設計上の幾何学的位置関係”と“タッチ点の幾何学的位置関係”とが“マッチングするか否か”の“解析”を行うことにより,“タッチ認証結果を生成する”点では共通するものの,「前記タッチ点間の前記相互位置関係が、前記タッチスタンプの前記タッチ部を前記静電式タッチスクリーン上にタッチすることにより形成できる位置関係の範囲内に入るか否かを判定する」こと(相違点3),「タッチスタンプにおける設計上の固定位置に配置される単一の設計上のタッチ部に対応する単一の設計上のタッチ点を認識」すること(相違点4),及び,当該「単一の設計上のタッチ点」を「基準点として利用することにより座標回転を行うこと」(相違点5)については,引用例1には記載も示唆もされておらず,当該事項は,その他引用例2乃至8の上記記載事項H乃至Sにも記載されていない。
さらに,平成30年12月28日及び令和1年8月21日受付で提出された刊行物提出書における上記引用例9にも,「電極接点」(本願発明1の「タッチスタンプに具備されたタッチ部」に対応。)が,「回転非対称」であったり,「電極14、15、16のパターンの盤に対する方位を変化することなく、駒を回転及び/又は置き換えることが不可能である」ことまでは記載されている(上記記載事項T参照。)ものの,「前記タッチ点間の前記相互位置関係が、前記タッチスタンプの前記タッチ部を前記静電式タッチスクリーン上にタッチすることにより形成できる位置関係の範囲内に入るか否かを判定する」こと(相違点3),「タッチスタンプにおける設計上の固定位置に配置される単一の設計上のタッチ部に対応する単一の設計上のタッチ点を認識」すること(相違点4),及び,当該「単一の設計上のタッチ点」を「基準点として利用することにより座標回転を行うこと」(相違点5)については同様に開示が認められない。
そうすると,引用発明に対し,引用例2乃至9に記載された技術的事項を適用しても,引用発明において,「タッチ点間の前記相互位置関係が、前記タッチスタンプの前記タッチ部を前記静電式タッチスクリーン上にタッチすることにより形成できる位置関係の範囲内に入るか否かを判定」する構成,及び,「タッチスタンプにおける設計上の固定位置に配置される単一の設計上のタッチ部に対応する単一の設計上のタッチ点を認識」し,当該「単一の設計上のタッチ点」を「基準点として利用することにより」,「前記タッチ点、または算出された前記幾何学的位置関係が、前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするように」,「座標回転を行う」構成を採用することに想到するまでには至らない。また,上記の構成が,本願の原出願の第一国出願前の周知技術であるとする証拠もない。さらに,そもそも,引用発明自体から,上記構成を採用する動機付けを見いだすこともできない。
したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,及び引用例2乃至8に記載された技術的事項,さらに刊行物提出書において提示された引用例9に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2乃至13について
本願発明2乃至13は,本願発明1を直接ないし間接的に引用するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2乃至8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

<特許法29条2項について>
審判請求時の補正により,本願発明1乃至13は,「前記単一の設計上のタッチ点が認識された際に、前記タッチ点、または算出された前記幾何学的位置関係が、前記タッチ認証条件に含まれる前記設計上の幾何学的位置関係とマッチングするように、前記認識された設計上のタッチ点を前記基準点として利用することにより座標回転を行う」という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1乃至8(上記第5の引用例1乃至8)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-07-22 
出願番号 特願2017-121442(P2017-121442)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 拓也  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
▲はま▼中 信行
発明の名称 スタンプタッチ認証方法及びシステム  
代理人 山川 茂樹  
代理人 山川 政樹  

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