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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1364890
異議申立番号 異議2019-700934  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-22 
確定日 2020-06-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6518061号発明「リチウムイオン二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6518061号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6518061号の請求項2ないし6に係る特許を維持する。 特許第6518061号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6518061号の請求項1?6に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年12月18日の出願であって、平成31年4月26日付けでその特許権の設定登録がなされ、令和1年5月22日に特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、その特許について、令和1年11月22日付けで特許異議申立人金澤毅(以下、「申立人」という。)より請求項1?6(全請求項)に対して特許異議の申立てがなされ、令和2年1月31日付けで取消理由が通知され、これに対して、同年4月1日に特許権者より意見書(以下、「意見書」という。)が提出されるとともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、同年4月27日付けで特許権者に対して審尋がなされ、これに対して、同年5月19日に特許権者より回答書が提出されたものである。
なお、本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、請求項の削除、それに付随する特許請求の範囲の訂正、及び明細書における誤記の訂正等の軽微なもののみであって、特許法第120条の5第5項に定める「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別な事情があるとき」に該当するから、申立人に対し、本件訂正についての意見を求めなかった。

第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6518061号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
なお、訂正箇所には、当審で下線を付した。

(1)訂正事項1
請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
請求項2の「リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。」を、「黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極と、
下記一般式:
[化1]
Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)
(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)
で表されるリチウム複合酸化物を含む正極と、
を少なくとも備えるリチウムイオン二次電池であって、
当該リチウム複合酸化物が層状結晶構造を有し、比表面積が0.6m^(2)/g以上1.1m^(2)/g以下の粒子であり;
当該リチウム複合酸化物において、zに対するyの比y/zの値が1.70以下であり;
電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比が4.7?8.8m^(2)/Ahである、
ことを特徴とする、前記リチウムイオン二次電池であって、
リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である、リチウムイオン二次電池。」に訂正する。
請求項2を引用する請求項3?6も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項3の「請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。」を「請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。」に訂正する。

(4)訂正事項4
請求項4の「請求項1?3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。」を「請求項2または3に記載のリチウムイオン二次電池。」に訂正する。

(5)訂正事項5
請求項5の「請求項1?4の何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池。」を「請求項2?4の何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池。」に訂正する。

(6)訂正事項6
請求項6の「請求項1?5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。」を「請求項2?5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。」に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書【0039】の【表1】の



」を


」に訂正する。

2 当審の判断
2-1 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正である。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1で請求項1が削除されることに伴い、請求項2を独立項としたものであるから、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(3)訂正事項3?6について
訂正事項3?6は、訂正事項1で請求項1が削除されることに伴い、請求項3?6について、請求項1を引用しないようにするものであるから、「特許請求の範囲の減縮」、「明瞭でない記載の釈明」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

(4)訂正事項7について
願書に添付した本件訂正前の明細書(以下、「本件明細書」という。)【0031】に、「メジアン径9.3μm、比表面積2.6m^(2)/gを有する黒鉛粉末を単独で負極活物質として用いた負極(比較例3)、およびメジアン径5.5μm、比表面積6.0m^(2)/gを有する非晶質性炭素粉末を単独で負極活物質として用いた負極(比較例4)を作製した」(下線は当審で付した。)と記載されているのに対し、本件明細書【0039】の【表1】において、比較例4に「負極炭素系材料として、黒鉛粒子100%のものを使用」を意味する「*」が付され、比較例5に「負極炭素系材料として、非晶質炭素粒子100%のものを使用」を意味する「**」が付されており、両者の記載が矛盾していた。
そして、本件明細書【0039】の【表1】における比較例3は、比較例とされているにもかかわらず、願書に添付した本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の範囲内のものであり、比較例5は、「Ni/Mn比」及び「表面積/電池容量」において、請求項1に係る発明の範囲から外れていることからすると、本件明細書【0039】の【表1】に誤記が存在し、比較例3が「負極炭素系材料として、黒鉛粒子100%のものを使用」したものであり、比較例4が「負極炭素系材料として、非晶質炭素粒子100%のものを使用」したものであるとするのが合理的である。
そして、訂正事項7は、これらの記載を整合させるためになされたものであるから、「誤記の訂正」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

2-2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2?6は請求項1を引用するものであるから、本件訂正前の請求項1?6は一群の請求項である。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とする訂正事項を含むものではあるが、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めはないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1?6〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。

2-3 独立特許要件について
本件訂正請求に係る請求項はいずれも特許異議の申立てがなされているので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

2-4 明細書の訂正について
明細書の訂正である訂正事項7は、訂正前の請求項1に対応する明細書の記載を訂正するものであり、本件訂正前の請求項2?6は請求項1を引用するものであるから、本件訂正請求に係る明細書の訂正は、一群の請求項の全てについて行うものである。

2-5 訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、令和2年4月1日に特許権者が行った訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号?第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕についての訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
令和2年4月1日に特許権者が行った請求項1?6についての訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明(以下、これらを請求項数に応じて、それぞれ「本件発明1」?「本件発明6」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極と、
下記一般式:
[化1]
Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)
(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)
で表されるリチウム複合酸化物を含む正極と、
を少なくとも備えるリチウムイオン二次電池であって、
当該リチウム複合酸化物が層状結晶構造を有し、比表面積が0.6m^(2)/g以上1.1m^(2)/g以下の粒子であり;
当該リチウム複合酸化物において、zに対するyの比y/zの値が1.70以下であり;
電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比が4.7?8.8m^(2)/Ahである、
ことを特徴とする、前記リチウムイオン二次電池であって、
リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である、リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
当該リチウム複合酸化物が、式Li_(x)Ni_(1/3)Mn_(1/3)Co_(1/3)O_(2)で表されるリチウム複合酸化物と、式Li_(x)Ni_(0.4)Mn_(0.3)Co_(0.3)O_(2)(ここで、各式中のxは1以上1.2以下の数である。)で表されるリチウム複合酸化物とを含む、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
負極中に含まれる黒鉛の重量割合が、炭素系負極材料の重量に基づいて50%以上である、請求項2または3に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
リチウム複合酸化物の表面が被覆されている、請求項2?4の何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
リチウム複合酸化物が、さらにドーピング元素を含む、請求項2?5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。」

2 令和2年1月31日付けで通知された取消理由の概要
2-1 特許法第36条第6項第1号について
(1)リチウム複合酸化物のメジアン粒径について
リチウム複合酸化物のメジアン粒径が4.0μm以上7.5μm以下であることが特定されていない、本件訂正前の請求項1、3?6に係る発明は、本件の課題を解決し得るとはいえないものを含み、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)比較例3について
本件訂正前の請求項1?6に係る発明は、本件の課題を解決するとはいえない比較例3を含むものであり、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

2-2 特許法第36条第6項第2号について
(1)電池容量について
本件訂正前の請求項1に記載された「電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比」について、「電池容量」の測定条件が本件明細書に記載されておらず、測定条件によって「電池容量」は変化するものであるから、該記載は不明瞭であって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明は、明確とはいえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)メジアン径(D50)について
本件訂正前の請求項2に記載された「「リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である」事項について、「メジアン粒径」の定義、測定条件が本件明細書に記載されておらず、定義、測定条件によって「メジアン粒径」は変化するものであるから、該記載は不明瞭であって、本件訂正前の請求項2?6に係る発明は、明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

3 上記2以外の特許異議申立理由の概要
3-1 特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について
本件訂正前の請求項1、2、6に係る発明は、本件特許についての出願前日本国内又は外国において頒布された下記甲1の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項1、2、4?6に係る発明は、本件特許についての出願前日本国内又は外国において頒布された下記甲1の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明並びに周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

(刊行物)
甲1 特開2006-134816号公報
(申立人が提出した甲第1号証、以下、「甲1」という。)

また、申立人は、甲1以外に次の証拠を提出している。
甲2 特開2000-203817号公報
(申立人が提出した甲第2号証、以下、「甲2」という。)
甲3 特開2000-123835号公報
(申立人が提出した甲第3号証、以下、「甲3」という。)
甲4 特開2008-251191号公報
(申立人が提出した甲第4号証、以下、「甲4」という。)
甲5 特開2013-254633号公報
(申立人が提出した甲第5号証、以下、「甲5」という。)
甲6 特開2014-143032号公報
(申立人が提出した甲第6号証、以下、「甲6」という。)
甲7 特開2012-99323号公報
(申立人が提出した甲第7号証、以下、「甲7」という。)

3-2 特許法第36条第6項第2号について
(1)リチウム複合酸化物の比表面積、及び、メジアン粒径について
本件訂正前の請求項1に記載された「リチウム複合酸化物」の「比表面積」、及び、請求項2に記載された「リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)」は、組成の異なる複数のリチウム複合酸化物を含有する場合に、どのような値のものか不明であって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明は、明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

4 本件明細書等の記載
本件明細書等には、次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような電気抵抗の低い材料を用いた電池は、万一内部短絡が生じた場合に、大電流が流れて電池が発熱するおそれがあった。そこで本発明は、電池の出力特性を維持しつつ、内部短絡が生じた場合でも電池の発熱が効果的に抑制できるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。」
「【0014】
本実施の形態において、電池の充放電に伴いリチウムイオンを脱蔵・吸蔵するリチウムイオン二次電池正極活物質として、層状結晶構造を有するリチウム複合酸化物を用いることが好ましい。リチウム複合酸化物は粒子の形状をしており、当該粒子のメジアン径は4.0μm以上7.5μm以下であることが特に好ましい。リチウム複合酸化物のメジアン粒径を所定の範囲に制御することにより、電池内部抵抗を所定の範囲に維持することができるため、電池の内部短絡等が発生した場合においても電池の発熱を抑制することが可能となる。」
「【実施例】
【0031】
<負極の作製>
負極活物質として、メジアン径9.3μm、比表面積2.6m^(2)/gを有する黒鉛粉末と、メジアン径5.5μm、比表面積6.0m^(2)/gを有する非晶質性炭素粉末とを80:20(重量比)で混合したものを用いた。混合材料と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンと、導電助剤としてカーボンブラック粉末とを、固形分質量比で92:6:2の割合でN-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」と称する。)中に添加して攪拌し、これらの材料をNMP中に均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、負極集電体となる厚み8μmの銅箔上に塗布した。次いで、125℃にて10分間、スラリーを加熱し、NMPを蒸発させることにより負極活物質層を形成した。更に、負極活物質層をプレスすることによって、負極集電体の片面上に負極活物質層を塗布した負極を作製した。この負極を実施例1?6および比較例1、2および5で用いた。
このほか、メジアン径9.3μm、比表面積2.6m^(2)/gを有する黒鉛粉末を単独で負極活物質として用いた負極(比較例3)、およびメジアン径5.5μm、比表面積6.0m^(2)/gを有する非晶質性炭素粉末を単独で負極活物質として用いた負極(比較例4)を作製した。
【0032】
<正極の作製>
正極活物質として、リチウム複合酸化物と、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデンと、導電助剤としてカーボンブラック粉末とを、固形分質量比で88:8:4の割合で、溶媒であるNMPに添加した。さらに、この混合物に有機系水分捕捉剤として無水シュウ酸(分子量90)を、上記混合物からNMPを除いた固形分100質量部に対して0.03質量部添加した上で攪拌することで、これらの材料を均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、正極集電体となる厚み15μmのアルミニウム箔上に塗布した。次いで、125℃にて10分間、スラリーを加熱し、NMPを蒸発させることにより正極活物質層を形成した。さらに、正極活物質層をプレスすることによって、正極集電体の片面上に正極活物質層を塗布した正極を作製した。
表1に示したとおり、実施例1および2に用いたリチウム複合酸化物はNCM433、実施例3に用いたリチウム複合酸化物はNCM433とスピネル型構造を有するマンガンとを重量割合で70:30に混合したものである。実施例4に用いたリチウム複合酸化物は、NCM433とNCM111とを重量割合で70:30で混合したリチウム複合酸化物混合物である。実施例5に用いたリチウム複合酸化物はNCM433とNCM111とを重量割合で70:30で混合したリチウム複合酸化物混合物にアルミニウム粒子0.1重量%を混合し、その後450℃で焼成して得た被覆リチウム複合酸化物混合物である。さらに実施例6で用いたリチウム複合酸化物は、NCM433とNCM111とを重量割合で70:30で混合したリチウム複合酸化物混合物にジルコニウム粒子0.1mol%を混合して得たジルコニウムドーピングリチウム複合酸化物混合物である。これらのリチウム複合酸化物を用いて、正極を作製した。
【0033】
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記のように作製した各負極と正極を、各々切り出した。このうち、端子を接続するための未塗布部にアルミニウム製の正極端子を超音波溶接した。同様に、正極端子と同サイズのニッケル製の負極端子を負極における未塗布部に超音波溶接した。ポリプロピレンからなるセパレータの両面に上記負極と正極とを活物質層がセパレータを隔てて重なるように配置して電極積層体を得た。2枚のアルミニウムラミネートフィルムの長辺の一方を除いて三辺を熱融着により接着して袋状のラミネート外装体を作製した。ラミネート外装体に上記電極積層体を挿入した。下記非水電解液を注液して真空含浸させた後、減圧下にて開口部を熱融着により封止することによって、積層型リチウムイオン電池を得た。この積層型リチウムイオン電池について高温エージングを数回行い、電池容量5Ahの積層型リチウムイオン電池を得た。
【0034】
なお非水電解液として、プロピレンカーボネート(以下、「PC」と称する。)とエチレンカーボネート(以下、「EC」と称する。)とジエチルカーボネート(以下、「DEC」と称する。)とをPC:EC:DEC=5:15:70(体積比)の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6))を濃度が0.9mol/Lとなるように溶解させたものに対して、添加剤として鎖状ジスルホン酸エステル(メチレンメタンジスルホン酸エステル、MMDS)とビニレンカーボネートとをそれぞれ濃度が1重量%となるように溶解させたものを用いた。」
「【0038】
(実施例1?実施例6)
上記の通り作製した積層型リチウムイオン電池の特性評価を表1に示す。
【0039】
【表1】



5 引用文献等の記載
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池正極用材料として用いられる層状リチウムニッケルマンガン系複合酸化物粉体及びそれを用いたリチウム二次電池正極、並びにリチウム二次電池に関するものである。詳しくは、適度な粒子の解砕され易さを持ち、塗布膜形成能に優れ、かつレート特性に優れたリチウム二次電池正極材料用層状リチウムニッケルマンガン系複合酸化物及びそれを用いたリチウム二次電池正極、並びにリチウム二次電池に関するものである。」
「【0066】
負極活物質層に含まれる負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば任意であるが、通常は安全性の高さの面からリチウムを吸蔵、放出できる炭素材料が用いられる。
【0067】
炭素材料としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)や、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物が挙げられる。有機物の熱分解物としては、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭化物、石炭系又は石油系のピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらのうち、黒鉛、特に種々の原料から得た易黒鉛性ピッチに高温熱処理を施すことによって製造された人造黒鉛若しくは精製天然黒鉛又はこれらの黒鉛にピッチを含む黒鉛材料等であって種々の表面処理を施したものが好ましい。これらの炭素材料は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
「【実施例】
【0083】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
【0084】
(実施例1)
Ni(OH)_(2)、Mn_(3)O_(4)及びCo(OH)_(2)を、Ni:Mn:Co=0.33:0.33:0.33のモル比となるように秤量して混合した後、これに純水を加えてスラリーを調製した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分を平均粒径0.18μmに粉砕した。
【0085】
このスラリーをスプレードライヤーにより噴霧乾燥して得られた粒子に、粉砕したLiOH粉末(平均粒径約8μm)を添加し、よく混合して焼成前駆体混合物を得た。この焼成前駆体混合物を空気雰囲気で990℃で12時間焼成した後、解砕して、組成式がLi_(1.00)Ni_(0.33)Mn_(0.33)Co_(0.33)O_(2)の層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体を得た。
得られた層状リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体について、以下の方法で各種物性及び特性の測定を行い、結果を表1に示した。」
「【0093】
<電池性能の測定方法>
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体75重量%、導電材としてアセチレンブラック20重量%、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)5重量%を乳鉢で十分混合したのち、シート状にのばし、これを直径9mm、7mgになるように円形に打ち抜いた。これにアルミニウム製エキスパンドメタルを圧着し、正極とした。
負極には厚さ0.5mm、直径12のLi箔を用いた。
電解液はエチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/3/4(体積比)の混合溶媒にLiPF_(6)を濃度1mol/Lとなるように溶解させた溶液を用いた。
セパレータとしてはポリエチレンフィルムを用いた。
これらの正極、負極、電解液、セパレータを用いてコイン型電池を組み立てた。
コイン型電池は上限電圧4.2V、下限電圧3.0Vとし、0.2mA/cm^(2)定電流定電圧にて充電し、0.2mA/cm^(2)定電流放電を実施した(初期放電容量(A))。
続けてハイレート特性として0.5mA定電流充電、11mA/cm^(2)定電流放電を実施し、放電容量を測定した(11mA放電容量(B))。
【0094】
(実施例2)
微量のLi原料をスプレードライの前に添加し、残りのLi原料をスプレードライ後に添加する方法でリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体を製造した。
LiOH、NiO、Mn_(3)O_(4)及びCo(OH)_(2)を、Li:Ni:Mn:Co=0.05:0.33:0.33:0.33のモル比となるように秤量して混合した後、これに純水を加えてスラリーを調製した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機を用いて、スラリー中の固形分を粉砕した。
このスラリーをスプレードライヤーにより噴霧乾燥して得られた粒子に、(Ni+Mn+Co)に対して、更に1.00のモル比の粉砕したLiOH粉末(平均粒径8μm)を添加し、よく混合して焼成前駆体混合物を得た。この焼成前駆体混合物を空気雰囲気で950℃で12時間焼成した後、解砕して、組成式がLi_(1.05)Ni_(0.33)Mn_(0.33)Co_(0.33)O_(2)の層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体を得た。
得られたリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体について実施例1と同様に評価を行って、結果を表1に示した。」
「【0100】
【表1】




(2)甲1に記載された発明
ア 上記(1)によれば、甲1には「リチウムイオン二次電池」について記載されている。

イ 上記(1)の【0093】には、甲1の「リチウムイオン二次電池」において、負極としてLi箔を用いたことが記載されている。

ウ 上記(1)の【0094】には、甲1の「リチウムイオン二次電池」において、組成式がLi_(1.05)Ni_(0.33)Mn_(0.33)Co_(0.33)O_(2)の層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体を得たことが記載されている。

エ 上記(1)の【0093】には、甲1の「リチウムイオン二次電池」において、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体、導電材、結着剤を乳鉢で十分混合したのち、シート状にのばし、これを円形に打ち抜き、アルミニウム製エキスパンドメタルを圧着し、正極としたことが記載されている。

オ 上記(1)の【0100】の【表1】によれば、甲1の「リチウムイオン二次電池」において、実施例2に注目すると、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体のBET比表面積が1.1m^(2)/gであり、二次粒子メジアン径が4.5μmであり、それを用いた電池の初期放電容量が151mAh/gであることが記載されている。

カ 上記ア?オより、実施例2のリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体を用いたリチウムイオン電池に注目すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「負極としてLi箔を用い、
組成式がLi_(1.05)Ni_(0.33)Mn_(0.33)Co_(0.33)O_(2)の層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体を得て、このリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体、導電材、結着剤を乳鉢で十分混合したのち、シート状にのばし、これを円形に打ち抜き、アルミニウム製エキスパンドメタルを圧着し、正極とし、
リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体のBET比表面積が1.1m^(2)/gであり、二次粒子メジアン径が4.5μmであり、
初期放電容量が151mAh/gである、
リチウムイオン二次電池。」

(3)甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】 膨張黒鉛部分及び非晶質炭素部分を含有してなる複合炭素粒子。」
「【請求項8】 請求項1?5の何れかに記載の複合炭素粒子又は請求項6若しくは7に記載の製造法により得られる複合炭素粒子を含有してなる負極材料。
【請求項9】 請求項8記載の負極材料を用いてなるリチウム二次電池用負極。
【請求項10】 請求項9記載のリチウム二次電池用負極を有してなるリチウム二次電池。」

(4)甲3の記載
甲3には、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。
「【請求項1】 95.5重量%以上99.5重量%以下の鱗片状黒鉛と、0.5重量%以上4.5重量%以下の難黒鉛化性非晶質炭素とからなる複合体を含むリチウム二次電池用負極活物質材料であって、前記複合体は、前記鱗片状黒鉛と、焼成することにより前記難黒鉛化性非晶質炭素となる難黒鉛化性非晶質炭素原料とを、混合して焼結させたものであることを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質材料。」

(5)周知技術
ア 上記(3)によれば、次のことが記載されている。
「膨張黒鉛部分及び非晶質炭素部分を含有してなる複合炭素粒子を含有してなる負極材料を用いてなる負極を有してなるリチウム二次電池。」

イ また、上記(4)によれば、次のことが記載されている。
「鱗片状黒鉛と、難黒鉛化性非晶質炭素とからなる複合体を含むリチウム二次電池用負極活物質材料。」

ウ そして、上記ア、イからすると、次の技術事項が本件出願時に周知であったといえる。
「リチウムイオン二次電池において、負極活物質材料として、黒鉛及び非晶質炭素を含有してなる複合炭素粒子を用いる事項。」

(6)乙第1号証の記載
特許権者が意見書に添付して提出した乙第1号証(以下、「乙1」という。)には、次の記載がある。
「5. 実験内容
(1)電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比の測定は、以下のように行った:
1-1 リチウムイオン二次電池の作製と高温エージング
明細書【0031】-【0034】の記載されたように、リチウムイオン二次電池を作製した;
この際、【0033】に記載された高温エージングの操作は、以下の順で行った:
1-1-1 25℃、600mA(定電流定電圧[CCCV])、電流60mAカットの条件で、リチウムイオン二次電池を充電した:
1-1-2 45℃の維持し、10日間放置した:
1-1-3 放置後のリチウムイオン二次電池のラミネート外装体を開封してガス抜きを行った:
1-1-4 25℃に維持し、0.2Cの条件で放電した:
1-1-5 25℃、6A(CCCV)、電流60mAカットの条件で、リチウムイオン二次電池を充電し、続いて6A(CCCV)、電圧3Vカットの条件で放電する充放電操作を2回行った。
1-2 電池容量の測定
上記のように得たリチウムイオン二次電池の電池容量は、以下の手順で測定した:
1-2-1 25℃、3V、0.5A(定電流[CC])の条件で放電し、電池容量をゼロにした:
1-2-2 25℃に保ち、10分間放置した。
1-2-3 25℃に保ち、4.2V、1A(CCCV)の条件で6.5時間充電し、満充電の状態にした。
1-2-4 25℃に保ち、10分間放置した。
1-2-5 25℃、3V、1A(CCCV)の条件で放電し、この放電時の電流積算量から電池容量を算出した。
・・・(略)・・・
(2)メジアン粒径(D50)の測定は以下のように行った:
2-1
明細書におけるメジアン粒径は、日本工業規格JIS Z8825-2013「粒子径解析-レーザ回折・散乱法」に基づき測定した。レーザ回折・散乱法で得られる粒子径分布は、球形粒子を前提とした球等価粒子径分布である。」

6 当審の判断
6-1 特許法第36条第6項第1号について
(1)リチウム複合酸化物のメジアン粒径について(上記2の2-1の(1))
ア 本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書等の記載からみて、「電池の出力特性を維持しつつ、内部短絡が生じた場合でも電池の発熱が効果的に抑制できるリチウムイオン二次電池を提供すること」(【0006】)であると認められる。

イ ここで、本件明細書等には、「リチウム複合酸化物は粒子の形状をしており、当該粒子のメジアン径は4.0μm以上7.5μm以下であることが特に好ましい。リチウム複合酸化物のメジアン粒径を所定の範囲に制御することにより、電池内部抵抗を所定の範囲に維持することができるため、電池の内部短絡等が発生した場合においても電池の発熱を抑制することが可能となる」(【0014】)と、リチウム複合酸化物のメジアン粒径と内部短絡による電池の発熱の抑制、すなわち、上記アの課題とが関係することが記載されている。

ウ また、本件明細書等の実施例において、リチウム複合酸化物のメジアン粒径が4.0μm以上7.5μm以下の範囲内である実施例1?6について、内部短絡による電圧降下量が比較例1?5よりも低くなっており(【0039】の表1参照。)、上記アの課題を解決し得ることが読み取れる。

エ 一方、本件訂正により、「リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である」事項を含まない請求項1は削除され、本件発明2?6が当該事項を含むこととなったから、本件発明2?6は、上記アの課題を解決し得るものとなった。

オ したがって、本件発明2?6は、発明の詳細な説明に記載されたものといえ、請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたことを理由として取り消すことはできない。

(2)比較例3について(上記2の2-1の(2))
ア 本件発明の解決しようとする課題は、上記(1)のアで述べたとおりのものである。

イ そして、本件訂正により、本件明細書等【0039】の【表1】に示された比較例3は、本件発明2?6に含まれないこととなったから、本件発明2?6に本件発明の課題を解決しないものが含まれるとはいえない。

ウ したがって、本件発明2?6は、発明の詳細な説明に記載されたものといえ、請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたことを理由として取り消すことはできない。

6-2 特許法第36条第6項第2号について
(1)電池容量について(上記2の2-2の(1))
ア 請求項2には、「電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比が4.7?8.8m^(2)/Ahである」と記載されている。

イ ここで、上記アの「電池容量」について、本件明細書等には、「ラミネート外装体に上記電極積層体を挿入した。下記非水電解液を注液して真空含浸させた後、減圧下にて開口部を熱融着により封止することによって、積層型リチウムイオン電池を得た。この積層型リチウムイオン電池について高温エージングを数回行い、電池容量5Ahの積層型リチウムイオン電池を得た」(【0033】)、「上記のように作製した積層型リチウムイオン電池について、電池電圧が4.2Vと3Vとの間で、1C電流での充放電を55℃環境下で1ヶ月間繰り返した。これによる容量維持率を、(1ヶ月間サイクル後の電池容量)/(初期電池容量)なる計算式で計算した」(【0036】)と記載されているものの、請求項1に記載された「電池容量」がどのような測定条件で測定したものなのか記載されていない。

ウ 一方、意見書には、「明細書における電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比の測定に関し、乙第1号証の実験成績証明書に詳細に記載した」(意見書の5の(5)のア)と記載されており、乙1(上記5の(6)参照。)によれば、請求項1に記載された「電池容量」がどのような測定条件で測定されたものであるかが理解できる。

エ したがって、請求項2に記載された「電池容量」は明確であるといえるから、請求項2の上記アの記載は明確である。

オ よって、本件発明2?6は、明確であり、請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたことを理由として取り消すことはできない。

(2)メジアン径(D50)について(上記2の2-2の(2))
ア 請求項2には、「リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である」ことが記載されている。

イ ここで、一般に、微粒子の粒子径には、長軸径、短軸径、定方向径等の多くの種類の粒子径が存在し、定方向径にも、フェレー径、マーチン径等が存在するものの、意見書には、「明細書におけるメジアン粒径(D50)は、・・・(略)・・・日本工業規格JIS Z8825-2013「粒子径解析-レーザ回折・散乱法」に基づき測定したものである」(意見書の5の(5)のイ)と記載されており、請求項2の「リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)」がどのような定義及び測定方法で測定されたものかが理解できる。

ウ したがって、請求項2の上記アの記載は明確であるといえる。

エ よって、本件発明2?6は、明確であり、請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたことを理由として取り消すことはできない。

(3)リチウム複合酸化物の比表面積、及び、メジアン粒径について(上記3の3-2の(1))
ア 請求項2には、「リチウム複合酸化物が層状結晶構造を有し、比表面積が0.6m^(2)/g以上1.1m^(2)/g以下の粒子であ」ること、及び、「リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である」ことが記載されている。

イ また、本件明細書等に、「実施例3に用いたリチウム複合酸化物はNCM433とスピネル型構造を有するマンガンとを重量割合で70:30に混合したものである。実施例4に用いたリチウム複合酸化物は、NCM433とNCM111とを重量割合で70:30で混合したリチウム複合酸化物混合物である。実施例5に用いたリチウム複合酸化物はNCM433とNCM111とを重量割合で70:30で混合したリチウム複合酸化物混合物にアルミニウム粒子0.1重量%を混合し、その後450℃で焼成して得た被覆リチウム複合酸化物混合物である。さらに実施例6で用いたリチウム複合酸化物は、NCM433とNCM111とを重量割合で70:30で混合したリチウム複合酸化物混合物にジルコニウム粒子0.1mol%を混合して得たジルコニウムドーピングリチウム複合酸化物混合物である。これらのリチウム複合酸化物を用いて、正極を作製した」(【0032】)と記載されているとおり、請求項2の「リチウム複合酸化物」は、複数種の「リチウム複合酸化物」を混合したものであることもあり得る。

ウ そして、複数種の「リチウム複合酸化物」の混合物を用いた場合、請求項2の「比表面積」及び「メジアン粒径(D50)」は、当該混合物について、測定した「比表面積」及び「メジアン粒径(D50)」であることは明らかである。

エ したがって、請求項2の上記アの記載は明確である。

オ よって、本件発明2?6は、明確であり、請求項2?6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたことを理由として取り消すことはできない。

6-3 特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について(上記3の3-1)
(1)本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「負極としてLi箔を用い」る事項と、本件発明2の「黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極」「を少なくとも備える」事項とは、「負極」「を少なくとも備える」事項で共通する。

イ 甲1発明の「組成式がLi_(1.05)Ni_(0.33)Mn_(0.33)Co_(0.33)O_(2)の層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体を得て、このリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体、導電材、結着剤を乳鉢で十分混合したのち、シート状にのばし、これを円形に打ち抜き、アルミニウム製エキスパンドメタルを圧着し、正極と」する事項は、「下記一般式:
[化1]
Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)
(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)で表されるリチウム複合酸化物を含む正極」「を少なくとも備え」、「当該リチウム複合酸化物が層状結晶構造を有」する事項に含まれる。

ウ 甲1発明の「リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体のBET比表面積が1.1m^(2)/gであ」る事項は、本件発明2の「リチウム複合酸化物」の「比表面積が0.6m^(2)/g以上1.1m^(2)/g以下の粒子であ」る事項に含まれる。

エ 甲1発明の「リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物」は、「組成式がLi_(1.05)Ni_(0.33)Mn_(0.33)Co_(0.33)O_(2)」であって、Mn含有量に対するNi含有量が1であるから、甲1発明は、本件発明2の「リチウム複合酸化物において、zに対するyの比y/zの値が1.70以下であ」る事項に含まれるものである。

オ 甲1発明は、「リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物粉体のBET比表面積が1.1m^(2)/gであり、」「初期放電容量が151mAh/gであ」り、また、乙1の「1-2 電池容量の測定」の記載(上記5の(6)参照。)から、上記「初期放電容量」が本件発明2の「電池容量」に相当するといえることも考慮すると、電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比は約7.28m^(2)/Ahと計算されるから、甲1発明は、本件発明2の「電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比が4.7?8.8m^(2)/Ahである」事項に含まれるものである。

カ 甲1発明の「二次粒子メジアン径が4.5μmであ」る事項は、本件発明2の「リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である」事項に含まれる。

キ 上記ア?カからすると、本件発明2と甲1発明とは、
「負極と、
下記一般式:
[化1]
Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)
(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)
で表されるリチウム複合酸化物を含む正極と、
を少なくとも備えるリチウムイオン二次電池であって、
当該リチウム複合酸化物が層状結晶構造を有し、比表面積が0.6m^(2)/g以上1.1m^(2)/g以下の粒子であり;
当該リチウム複合酸化物において、zに対するyの比y/zの値が1.70以下であり;
電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比が4.7?8.8m^(2)/Ahである、
ことを特徴とする、前記リチウムイオン二次電池であって、
リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である、リチウムイオン二次電池。」で一致し、次の相違点で相違する。

(相違点)
「負極」について、本件発明2は、「黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む」ものであるのに対し、甲1発明は、「Li箔を用い」たものである点。

ク 以下、上記相違点について検討する。

ケ 甲1には、「負極活物質層に含まれる負極活物質は、・・・(略)・・・炭素材料が用いられる。・・・(略)・・・炭素材料としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)や、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物が挙げられる。有機物の熱分解物としては、石炭系コークス、石油系コークス・・・(略)・・・ニードルコークス、ピッチコークス・・・(略)・・・等が挙げられる。これらのうち、黒鉛、特に種々の原料から得た易黒鉛性ピッチに高温熱処理を施すことによって製造された人造黒鉛若しくは精製天然黒鉛又はこれらの黒鉛にピッチを含む黒鉛材料等であって種々の表面処理を施したものが好ましい。これらの炭素材料は、それぞれ1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい」(【0066】?【0067】)と記載されており、コークス系の炭素材料は非晶質炭素といえるから、負極活物質として、黒鉛または非晶質炭素を用いることができ、また、炭素系材料を2種以上組み合わせて用いてもよいと記載されている。

コ そして、上記5の(5)より、リチウムイオン二次電池において、負極活物質材料として、黒鉛及び非晶質炭素を含有してなる複合炭素粒子を用いることは、本件出願前の周知技術である。

サ そうすると、上記ケ、コより、甲1発明において、その負極についてLi箔に代えて、黒鉛及び非晶質炭素を含有してなる複合炭素粒子を採用し、本件発明2を構成することに一見困難性は見当たらない。

シ しかしながら、本件明細書等【0039】の【表1】の実施例2と比較例3に注目すると、正極材料はいずれもNCM433を採用し、負極材料として、実施例2は黒鉛及び非晶質炭素を採用し、比較例3は黒鉛のみを採用しているところ、釘指し試験による電圧降下量が、前者は0.1Vであるのに対し、後者は4.1Vと大きな違いが見られ、負極材料として、黒鉛及び非晶質炭素を採用することにより、内部短絡が生じた場合でも電池の発熱が効果的に抑制できるか否かの点で顕著な効果がみられる。

ス そして、上記シの効果は、甲1発明及び周知技術から、当業者が予測可能な効果であるとはいいがたい。

セ そうすると、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明2の発明特定事項を想到することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

ソ よって、本件発明2は、甲1発明ではないし、甲1発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しないし、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものではない。

タ また、本件発明4?6は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明4?6と甲1発明とは、少なくとも上記キの相違点で相違するものである。

チ そして、上記相違点については、上記ク?セで検討したとおり、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明2の発明特定事項を想到することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

ツ よって、本件発明6は、甲1発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないし、本件発明4?6は、甲1発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、請求項2、4?6に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたことを理由として取り消すことはできない。

7 むすび
以上のとおり、本件の請求項2?6に係る特許は、令和2年1月31日付けで通知された取消理由に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできず、他に本件の請求項2?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1は、本件訂正により削除されたから、本件特許の請求項1に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
リチウムイオン二次電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質電池、特にリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車等を含む自動車用電池として実用化されている。このような車載電源用電池としてリチウムイオン二次電池を使用する場合に、エネルギー密度が高く、かつ入出力特性に優れ、寿命の長い電池を提供することが求められている。特に自動車の発進時の加速性能を向上させるために高出力化を図ることが重要である。
【0003】
リチウムイオン電池の出力特性を向上させるために、リチウムイオン電池用負極材料として黒鉛と非晶質炭素(アモルファスカーボン)とを所定の割合で混合した材料を用い、正極材料としてリチウム複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池が提案されている(特許文献1)。特許文献1には、黒鉛材料が非晶質炭素材料と比べて電池電圧を高く維持でき放電末期における出力低下が小さいことから、黒鉛材料と非晶質炭素材料とを混合した材料を用いると、電池の出力特性を向上させることができる旨が開示されている。そして、混合負極材料に用いることができる黒鉛材料と非晶質炭素材料の特性の例がそれぞれ開示されている。また特許文献1には、正極活物質としてリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を用いることが開示されている。
【0004】
このように、電気抵抗が低いとされている混合負極材料とリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物を含む正極材料とを高い出力特性を必要とする電池、たとえば車両用電池などに用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2011-54371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような電気抵抗の低い材料を用いた電池は、万一内部短絡が生じた場合に、大電流が流れて電池が発熱するおそれがあった。そこで本発明は、電池の出力特性を維持しつつ、内部短絡が生じた場合でも電池の発熱が効果的に抑制できるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、「黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極と、下記一般式:
[化1]
Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)
(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)
で表される層状結晶構造を有するリチウム複合酸化物を含む正極と、
を少なくとも備えるリチウムイオン二次電池であって、
当該リチウム複合酸化物が層状結晶構造を有し、メジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である、前記リチウムイオン二次電池。」である。本発明の一の態様は、黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極と、一般式:Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)で表され、層状結晶構造を有し、メジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子であるリチウム複合酸化物を含む正極と、を少なくとも備えるリチウムイオン二次電池である。
【0008】
本態様に用いる負極は、黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む。ここで黒鉛は、六方晶系六角板状結晶の炭素材料であり、石墨、グラファイト等と称されることがある。黒鉛は粒子の形状をしていることが好ましい。
【0009】
また非晶質炭素は、部分的に黒鉛に類似するような構造を有していてもよい、微結晶がランダムにネットワークした構造をとった、全体として非晶質である炭素材料のことを意味する。非晶質炭素として、カーボンブラック、コークス、活性炭、カーボンファイバー、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン等が挙げられる。本発明に用いる非晶質炭素は粒子の形状をしていることが好ましい。
【0010】
本態様に用いる正極は、リチウム複合酸化物を含む。リチウム複合酸化物は、一般式:
[化2]
Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)
で表される、リチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物である。ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。マンガンの割合が大きくなると単一相の複合酸化物が合成されにくくなるため、z≦0.4とすることが望ましい。また、コバルトの割合が大きくなると高コストとなり容量も減少するため、1-y-z<y、1-y-z<zとすることが望ましい。高容量の電池を得るためには、y>z、y>1-y-zとすることが特に好ましい。本態様に用いるリチウム複合酸化物は、層状結晶構造を有することが好ましく、またメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のリチウムイオン二次電池は、粒径を所定の範囲に制御した特定の正極活物質を用いることにより、電池の出力特性を確保しつつ電極の内部抵抗を所定の範囲に維持することができる。これにより、電池の出力特性を低下させることなく、内部短絡が生じた際にも電池の発熱を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態のリチウムイオン電池を表す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第一の実施形態を説明する。第一の実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極と、一般式:Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)で表されるリチウム複合酸化物を含む正極と、を少なくとも備え、当該リチウム複合酸化物が層状結晶構造を有し、メジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子であることを特徴とする。すなわち本実施形態は、黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極と、一般式:Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)で表され、層状結晶構造を有し、メジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子であるリチウム複合酸化物を含む正極と、を少なくとも備えるリチウムイオン二次電池に係る。
【0014】
本実施の形態において、電池の充放電に伴いリチウムイオンを脱蔵・吸蔵するリチウムイオン二次電池正極活物質として、層状結晶構造を有するリチウム複合酸化物を用いることが好ましい。リチウム複合酸化物は粒子の形状をしており、当該粒子のメジアン径は4.0μm以上7.5μm以下であることが特に好ましい。リチウム複合酸化物のメジアン粒径を所定の範囲に制御することにより、電池内部抵抗を所定の範囲に維持することができるため、電池の内部短絡等が発生した場合においても電池の発熱を抑制することが可能となる。
【0015】
本実施の形態において、負極材料として黒鉛粒子と非晶質炭素粒子との混合物を用いることが好ましい。この際、黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とは、通常の方法で混合することができる。たとえば、これらの粒子を所定の重量比で量り取り、ボールミル、ミキサー等に代表される機械的混合手段を用いて混合することができる。
【0016】
本発明の第二の実施の形態は、黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極と、一般式:Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)で表されるリチウム複合酸化物を含む正極と、を少なくとも備えるリチウムイオン二次電池であって、当該リチウム複合酸化物が層状結晶構造を有し、比表面積が0.6m^(2)/g以上1.1m^(2)/g以下の粒子であることを特徴とする。すなわち本実施形態は、黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極と、一般式:Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)で表され、層状結晶構造を有し、比表面積が0.6m^(2)/g以上1.1m^(2)/g以下の粒子であるリチウム複合酸化物を含む正極と、を少なくとも備えるリチウムイオン二次電池に係る。
【0017】
本実施の形態において、電池の充放電に伴いリチウムイオンを脱蔵・吸蔵するリチウムイオン二次電池正極活物質として、層状結晶構造を有するリチウム複合酸化物を用いることが好ましい。リチウム複合酸化物は粒子の形状をしており、当該粒子の比表面積は0.6m^(2)/g以上1.1m^(2)/g以下であることが特に好ましい。ここで比表面積とはBET法により測定した、BET比表面積のことである。物体が粒子である場合は、一般的には比表面積が大きいほど粒子が細かいことを意味する。リチウム複合酸化物の比表面積を所定の範囲に制御することにより、正極材料を流れる電流を所定の範囲に維持することができる。正極活物質の質量当たりの化学反応の速度と、正極材料を流れる電流とは比例関係にあるので、正極材料を流れる電流を特定の範囲に制御するためには正極活物質の質量当たりの化学反応速度を所定の範囲に維持する必要がある。正極活物質における化学反応は、電解液と正極活物質との接触により起こるものであるため、正極活物質における化学反応速度は正極活物質単位重量当たりの面積(比表面積)に依存する。よって、正極活物質の比表面積を所定の範囲に制御して正極材料を流れる電流を所定の範囲に維持することができることになる。正極材料を流れる電流を所定の範囲に維持することは、電池内部抵抗を所定の範囲に維持することを意味し、もって電池の内部短絡時の電池の発熱を抑制することが可能となる。
【0018】
なお、本実施の形態においても、負極材料としては黒鉛粒子と非晶質炭素粒子との混合物を用いることが好ましい。この際、黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とは、通常の方法で混合することができる。たとえば、これらの粒子を所定の重量比で量り取り、ボールミル、ミキサー等に代表される機械的混合手段を用いて混合することができる。
【0019】
第一および第二の実施形態において、電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比が4.7?8.8m^(2)/Ahであることができる。リチウム複合酸化物の総表面積は、BET法により測定したBET比表面積の値とリチウム複合酸化物の重量との積により求められる値である。上に説明したとおり、正極活物質における化学反応は電解液と正極活物質との接触により起こるものであるから、正極活物質における化学反応速度は正極活物質の面積に依存する。リチウム複合酸化物の総表面積と電池容量との比を上記の範囲とすることは、電池の比容量当たりの反応速度を所定の範囲に制御することを意味する。このようにして電池の熱安定性を保持し、電池の出入力特性を向上させることができる。
【0020】
第一および第二の実施形態において、リチウム複合酸化物の一般式:Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)における、zに対するyの比y/zの値が1.70以下であることが好ましい。リチウム複合酸化物中のニッケル元素とマンガン元素との存在比が特定の割合であると、リチウム複合酸化物の結晶構造がより安定になり、正極材料の耐久性が向上する。
【0021】
第一および第二の実施形態において、y:(1-y-z):zが1:1:1であるリチウム複合酸化物と、y:(1-y-z):zが4:3:3であるリチウム複合酸化物と、を少なくとも含むリチウム複合酸化物混合物を用いることができる。ここで、y:(1-y-z):zが1:1:1であるリチウム複合酸化物は、一般的に「NCM111」と称され、y:(1-y-z):zが4:3:3であるリチウム複合酸化物は一般的に「NCM433」と称されるものである。本明細書においても、y:(1-y-z):zが1:1:1であるリチウム複合酸化物を「NCM111」、y:(1-y-z):zが4:3:3であるリチウム複合酸化物を「NCM433」とそれぞれ称することがある。NCM111においてy/zの値は1.0であり、NCM433においてy/zの値は1.3であるから、これらは、ともに単独で正極材料として用いることができる。しかしながらこれらを混合してリチウム複合酸化物混合物として用いることにより、より適切な結晶構造を形成することができ、正極活物質の耐久性をより向上することが可能となる。なお、リチウム複合酸化物の混合は、通常の方法で行うことができる。たとえば、リチウム複合酸化物の粒子を所定の重量比で量り取り、ボールミル、ミキサー等に代表される機械的混合手段を用いて混合することができる。
【0022】
第一および第二の実施形態において、負極中に含まれる炭素系負極材料の重量に基づく黒鉛の割合は、50重量%以上、好ましくは70重量%以上であることができる。負極において、黒鉛粒子、および非晶質炭素粒子とも、電池の充放電サイクル中に膨張と収縮を繰り返すが、黒鉛粒子や非晶質炭素粒子の膨張により、負極電極層に応力が生じることがあり、生じた応力が電極層に不利な影響を及ぼしうる。一方、非晶質炭素粒子は、黒鉛粒子よりも膨張しにくい物質であることが知られている。そこで、黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを混合して用いることによって、黒鉛粒子の膨張により生じうる電極層の応力を緩和することが可能となる。ただし非晶質炭素粒子の重量割合が多すぎると、電池の残容量(以下、「SOC」と称する。)が50%以下であるときの電池電圧が低下し、電池エネルギー低下時の電池出力が低下するという不利益が生じるおそれがあるため、非晶質炭素粒子の重量割合は50%を超えないことが好ましい。
【0023】
第一及び第二の実施形態において、電池容量に対する黒鉛粒子のメジアン径の比が1.3?2.5μm/Ahであり、電池容量に対する黒鉛粒子の比表面積の比が0.35?0.75であり、電池容量に対する非晶質炭素粒子のメジアン径の比が0.7?1.6μm/Ahであり、電池容量に対する非晶質炭素粒子の比表面積の比が0.75?1.70であることが好ましい。このような黒鉛粒子および非晶質炭素粒子の組み合わせを用いることにより、電池の内部抵抗を低くすることが可能となるので、電池の用途をより拡大することができる。
【0024】
第一および第二の実施形態において、リチウム複合酸化物の表面は被覆されていることができる。リチウム複合酸化物の表面を被覆すると正極活物質の比表面積が増加し、正極活物質と電解液との親和性が向上するため、正極の耐久性が向上するという利点がある。リチウム複合酸化物の表面を被覆する物質としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属や、ポリビニリデンフルオライド等の撥水性樹脂コーティング、あるいはSTOBA(登録商標)(三井化学)等の樹木状構造を有するポリマーコーティング等が挙げられる。
【0025】
第一および第二の実施形態において、リチウム複合酸化物は、さらにドーピング元素を含むことができる。リチウム複合酸化物がドーピング元素を含むと、リチウム複合酸化物の結晶構造が安定し、正極の耐久性が向上するという利点がある。ドーピング元素としては、ジルコニウム、マグネシウム、チタニウム、アルミニウム、鉄等の遷移金属元素、あるいはホウ素等が挙げられる。
【0027】
第一および第二の実施形態において、黒鉛粒子および非晶質炭素粒子を含む負極炭素系材料およびリチウム複合酸化物を含む正極活物質は、金属箔等の集電体上に塗布または圧延して乾燥させることにより、負極ならびに正極を形成することができる。この際、結着剤、導電助剤、増粘剤、分散剤、安定剤等の、電極形成のために一般的に用いられる添加剤を適宜使用して、適切な負極ならびに正極を形成することができる。
【0028】
第一および第二の実施形態においては、非水電解液を用いることができる。非水電解液は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート、およびジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネートから選ばれる1種またはそれ以上の有機溶媒の混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6))、ホウフッ化リチウム(LiBF_(4))、過塩素酸リチウム(LiClO_(4))等のリチウム塩を溶解させたものを用いることができる。
【0029】
また第一及び第二の実施形態においては、負極と正極とを隔離して負極・正極間のリチウムイオンの伝導性を確保するためのセパレータを用いることができる。セパレータとしてポリオレフィン類の多孔性膜や微孔性膜を用いることができる。
【0030】
第一及び第二の実施形態にかかるリチウムイオン電池の構成例を、図面を用いて説明する。図1はリチウムイオン電池の断面図の一例を表す。リチウムイオン電池10は、主な構成要素として、負極集電体11、負極活物質層13、セパレータ17、正極集電体12、正極活物質層15を含む。図1では、負極集電体11の両面に負極活物質層13が設けられ、正極集電体12の両面に正極活物質層15が設けられているが、各々の集電体の片面上のみに活物質層を形成することもできる。負極集電体11、正極集電体12、負極活物質層13、正極活物質層15、及びセパレータ17が一つの電池の構成単位である(図中、単電池19)。このような単電池19を、セパレータ17を介して複数積層する。各負極集電体11から延びる延出部を負極リード25上に一括して接合し、各正極集電体12から延びる延出部を正極リード27上に一括して接合してある。複数の単電池を積層してできた電池は、負極リード25および正極リード27を外側に引き出す形で、外装体29により包装される。外装体29の内部には電解液31が注入されている。
【実施例】
【0031】
<負極の作製>
負極活物質として、メジアン径9.3μm、比表面積2.6m^(2)/gを有する黒鉛粉末と、メジアン径5.5μm、比表面積6.0m^(2)/gを有する非晶質性炭素粉末とを80:20(重量比)で混合したものを用いた。混合材料と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンと、導電助剤としてカーボンブラック粉末とを、固形分質量比で92:6:2の割合でN-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」と称する。)中に添加して攪拌し、これらの材料をNMP中に均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、負極集電体となる厚み8μmの銅箔上に塗布した。次いで、125℃にて10分間、スラリーを加熱し、NMPを蒸発させることにより負極活物質層を形成した。更に、負極活物質層をプレスすることによって、負極集電体の片面上に負極活物質層を塗布した負極を作製した。この負極を実施例1?6および比較例1、2および5で用いた。
このほか、メジアン径9.3μm、比表面積2.6m^(2)/gを有する黒鉛粉末を単独で負極活物質として用いた負極(比較例3)、およびメジアン径5.5μm、比表面積6.0m^(2)/gを有する非晶質性炭素粉末を単独で負極活物質として用いた負極(比較例4)を作製した。
【0032】
<正極の作製>
正極活物質として、リチウム複合酸化物と、バインダー樹脂としてポリフッ化ビニリデンと、導電助剤としてカーボンブラック粉末とを、固形分質量比で88:8:4の割合で、溶媒であるNMPに添加した。さらに、この混合物に有機系水分捕捉剤として無水シュウ酸(分子量90)を、上記混合物からNMPを除いた固形分100質量部に対して0.03質量部添加した上で攪拌することで、これらの材料を均一に分散させてスラリーを作製した。得られたスラリーを、正極集電体となる厚み15μmのアルミニウム箔上に塗布した。次いで、125℃にて10分間、スラリーを加熱し、NMPを蒸発させることにより正極活物質層を形成した。さらに、正極活物質層をプレスすることによって、正極集電体の片面上に正極活物質層を塗布した正極を作製した。
表1に示したとおり、実施例1および2に用いたリチウム複合酸化物はNCM433、実施例3に用いたリチウム複合酸化物はNCM433とスピネル型構造を有するマンガンとを重量割合で70:30に混合したものである。実施例4に用いたリチウム複合酸化物は、NCM433とNCM111とを重量割合で70:30で混合したリチウム複合酸化物混合物である。実施例5に用いたリチウム複合酸化物はNCM433とNCM111とを重量割合で70:30で混合したリチウム複合酸化物混合物にアルミニウム粒子0.1重量%を混合し、その後450℃で焼成して得た被覆リチウム複合酸化物混合物である。さらに実施例6で用いたリチウム複合酸化物は、NCM433とNCM111とを重量割合で70:30で混合したリチウム複合酸化物混合物にジルコニウム粒子0.1mol%を混合して得たジルコニウムドーピングリチウム複合酸化物混合物である。これらのリチウム複合酸化物を用いて、正極を作製した。
【0033】
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記のように作製した各負極と正極を、各々切り出した。このうち、端子を接続するための未塗布部にアルミニウム製の正極端子を超音波溶接した。同様に、正極端子と同サイズのニッケル製の負極端子を負極における未塗布部に超音波溶接した。ポリプロピレンからなるセパレータの両面に上記負極と正極とを活物質層がセパレータを隔てて重なるように配置して電極積層体を得た。2枚のアルミニウムラミネートフィルムの長辺の一方を除いて三辺を熱融着により接着して袋状のラミネート外装体を作製した。ラミネート外装体に上記電極積層体を挿入した。下記非水電解液を注液して真空含浸させた後、減圧下にて開口部を熱融着により封止することによって、積層型リチウムイオン電池を得た。この積層型リチウムイオン電池について高温エージングを数回行い、電池容量5Ahの積層型リチウムイオン電池を得た。
【0034】
なお非水電解液として、プロピレンカーボネート(以下、「PC」と称する。)とエチレンカーボネート(以下、「EC」と称する。)とジエチルカーボネート(以下、「DEC」と称する。)とをPC:EC:DEC=5:15:70(体積比)の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6))を濃度が0.9mol/Lとなるように溶解させたものに対して、添加剤として鎖状ジスルホン酸エステル(メチレンメタンジスルホン酸エステル、MMDS)とビニレンカーボネートとをそれぞれ濃度が1重量%となるように溶解させたものを用いた。
【0035】
<リチウムイオン電池の初期性能の測定>
上記のように作製した積層型リチウムイオン電池について、1サイクル充放電した。充放電条件は、温度25℃、充電終止電圧4.2VまでのCCCV充電(2時間)および放電終止電圧3.0Vまでの放電であった。このような充放電サイクルから充電容量および放電容量を求め、これらの比を初回充放電効率とした。一方、残容量(以下、「SOC」と称する。)50%の電池を用意し、10Aで5秒間放電して、電池抵抗を測定した。表には、実施例1の初期電池抵抗の値を100%とし、これと各実施例で測定された初期抵抗との比較をパーセントで表した値を示している。
【0036】
<サイクル特性試験>
上記のように作製した積層型リチウムイオン電池について、電池電圧が4.2Vと3Vとの間で、1C電流での充放電を55℃環境下で1ヶ月間繰り返した。これによる容量維持率を、(1ヶ月間サイクル後の電池容量)/(初期電池容量)なる計算式で計算した。
【0037】
<リチウムイオン電池の電圧降下量の測定>
上記のように作製した積層型リチウムイオン電池について、4.2Vまで充電して電池の電圧を電圧計にて測定した。次いで太さφ=3mmの釘を80mm/秒の速度で電池に貫通させた。釘の貫通から5分間経過した後に再度電池の電圧を測定した。(釘の貫通前の電池電圧)-(釘の貫通後の電池電圧)(V)を求め、電圧降下量とした。
【0038】
(実施例1?実施例6)
上記の通り作製した積層型リチウムイオン電池の特性評価を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明のリチウムイオン二次電池は、電池抵抗が小さくかつ釘指し試験による電圧降下量が少ない。電池抵抗を小さくしすぎると、釘指し等による内部短絡が生じたときに、発熱するおそれがあるが、本発明のリチウムイオン二次電池は内部抵抗が比較的小さいにもかかわらず電圧降下量が少ない。正極材料であるリチウム複合酸化物として、NCM433とNCM111とのリチウム複合酸化物混合物を用いたり、さらにアルミニウムによる被覆を施したり、あるいはジルコニウム元素をドーピングしたりすることにより、1ヶ月間のサイクル試験後の電池容量維持率を向上させることができた(実施例4?6)。すなわち本発明のリチウムイオン二次電池は、安全性が高くかつ電池耐久性に優れることがわかる。
【0041】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例は本発明の実施形態の一例を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲の実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0042】
10 リチウムイオン電池
11 負極集電体
12 正極集電体
13 負極活物質層
15 正極活物質層
17 セパレータ
25 負極リード
27 正極リード
29 外装体
31 電解液
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
黒鉛粒子と非晶質炭素粒子とを含む炭素系負極材料を含む負極と、
下記一般式:
[化1]
Li_(x)Ni_(y)Mn_(z)Co_((1-y-z))O_(2)
(ここで、一般式中のxは1以上1.2以下の数であり、yおよびzはy+z<1を満たす正の数である。)
で表されるリチウム複合酸化物を含む正極と、
を少なくとも備えるリチウムイオン二次電池であって、
当該リチウム複合酸化物が層状結晶構造を有し、比表面積が0.6m^(2)/g以上1.1m^(2)/g以下の粒子であり;
当該リチウム複合酸化物において、zに対するyの比y/zの値が1.70以下であり;
電池容量に対するリチウム複合酸化物の総表面積の比が4.7?8.8m^(2)/Ahである、
ことを特徴とする、前記リチウムイオン二次電池であって、
リチウム複合酸化物のメジアン粒径(D50)が4.0μm以上7.5μm以下の粒子である、リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
当該リチウム複合酸化物が、式Li_(x)Ni_(1/3)Mn_(1/3)Co_(1/3)O_(2)で表されるリチウム複合酸化物と、式Li_(x)Ni_(0.4)Mn_(0.3)Co_(0.3)O_(2)(ここで、各式中のxは1以上1.2以下の数である。)で表されるリチウム複合酸化物とを含む、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
負極中に含まれる黒鉛の重量割合が、炭素系負極材料の重量に基づいて50%以上である、請求項2または3に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
リチウム複合酸化物の表面が被覆されている、請求項2?4の何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
リチウム複合酸化物が、さらにドーピング元素を含む、請求項2?5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-06-08 
出願番号 特願2014-256331(P2014-256331)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01M)
P 1 651・ 113- YAA (H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤原 敬士  
特許庁審判長 粟野 正明
特許庁審判官 平塚 政宏
土屋 知久
登録日 2019-04-26 
登録番号 特許第6518061号(P6518061)
権利者 株式会社エンビジョンAESCジャパン
発明の名称 リチウムイオン二次電池  
代理人 グローバル・アイピー東京特許業務法人  
代理人 グローバル・アイピー東京特許業務法人  

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