• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1365527
審判番号 不服2019-15846  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-26 
確定日 2020-08-20 
事件の表示 特願2017-149927号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日出願公開、特開2017-192820号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成27年3月16日に出願した特願2015-52672号の一部を平成29年8月2日に新たな特許出願としたものであって、平成30年5月30日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月17日付けで拒絶の理由が通知されると同時に指令書により協議をしてその結果を届け出るべき旨を出願人に命じ、平成31年3月5日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年8月26日付け(送達日:同年9月3日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対し、令和1年11月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年11月26日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を 却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成31年3月5日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「可変表示を行い、特定表示結果が表示されたことに基づいて遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
複数種類の可変表示パターンの何れかにより可変表示を実行する可変表示実行手段を備え、
前記可変表示実行手段は、
可変表示を開始し、所定の動作を伴う仮停止態様を経て、可変表示を確定停止させる第1手段と、
可変表示を開始し、仮停止態様を経て特定演出を実行した後に前記特定表示結果を確定停止させる第2手段とを含み、
仮停止態様とする期間は、可変表示パターンの種類によって異なり、
可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であり、
仮停止態様には、前記有利状態に制御されることを示唆する第1仮停止態様と、前記有利状態に制御されないことを示唆する第2仮停止態様とがあり、
前記第1仮停止態様のときには、前記第2仮停止態様には変化しない一方、
前記第2仮停止態様のときには、前記第1仮停止態様に変化する場合と、前記第1仮停止態様に変化しない場合とがあり、
前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化する場合は、前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化しない場合よりも、前記第2仮停止態様とする期間が長い、
ことを特徴とする遊技機。」 とあったものを、

「可変表示を行い、特定表示結果が表示されたことに基づいて遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
複数種類の可変表示パターンの何れかにより可変表示を実行する可変表示実行手段を備え、
前記可変表示実行手段は、
可変表示を開始し、所定の動作を伴う仮停止態様を経て、可変表示を確定停止させる第1手段と、
可変表示を開始し、仮停止態様を経て特定演出を実行した後に前記特定表示結果を確定停止させる第2手段とを含み、
仮停止態様とする期間は、可変表示パターンの種類によって異なり、
可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であり、
仮停止態様には、前記有利状態に制御されることを示唆する第1仮停止態様と、前記有利状態に制御されないことを示唆する第2仮停止態様とがあり、
前記第1仮停止態様のときには、前記第2仮停止態様には変化しない一方、
前記第2仮停止態様のときには、前記第1仮停止態様に変化する場合と、前記第1仮停止態様に変化しない場合とがあり、
前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化する場合は、前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化しない場合よりも、前記第2仮停止態様とする期間が長く、
可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで前記有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示する、
ことを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

2 補正の適否について
(1)補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「有利状態」に関して、「可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで前記有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示する」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項
本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0279】ないし【0280】や図24等の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)についても、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(なお、記号AないしMは、分説するため合議体が付した。)。
「A 可変表示を行い、特定表示結果が表示されたことに基づいて遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 複数種類の可変表示パターンの何れかにより可変表示を実行する可変表示実行手段を備え、
D 前記可変表示実行手段は、
可変表示を開始し、所定の動作を伴う仮停止態様を経て、可変表示を確定停止させる第1手段と、
E 可変表示を開始し、仮停止態様を経て特定演出を実行した後に前記特定表示結果を確定停止させる第2手段とを含み、
F 仮停止態様とする期間は、可変表示パターンの種類によって異なり、
G 可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であり、
H 仮停止態様には、前記有利状態に制御されることを示唆する第1仮停止態様と、前記有利状態に制御されないことを示唆する第2仮停止態様とがあり、
I 前記第1仮停止態様のときには、前記第2仮停止態様には変化しない一方、
J 前記第2仮停止態様のときには、前記第1仮停止態様に変化する場合と、前記第1仮停止態様に変化しない場合とがあり、
K 前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化する場合は、前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化しない場合よりも、前記第2仮停止態様とする期間が長く、
L 可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで前記有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示する、
M ことを特徴とする遊技機。」

(2)同日出願
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日と同日の平成27年3月16日に出願した特願2015-52671号の一部を平成29年8月2日に新たな特許出願とした特願2017-149926号(特開2017-192819号公報)の請求項1に係る発明(以下、「同日発明」という。)は、平成31年3月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、aないしmは、本願補正発明のAないしMに対応させて合議体が付した。)。
「a 可変表示を行い、特定表示結果が表示されたことに基づいて遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
b 複数種類の可変表示パターンの何れかにより可変表示を実行する可変表示実行手段と、
c 可変表示に対応する表示を実行する対応表示実行手段とを備え、
d 前記可変表示実行手段は、
可変表示を開始し、所定の動作を伴う仮停止態様を経て、可変表示を確定停止させる第1手段と、
e 可変表示を開始し、仮停止態様を経て特定演出を実行した後に前記特定表示結果を確定停止させる第2手段とを含み、
f 仮停止態様とする期間は、可変表示パターンの種類によって異なり、
h 仮停止態様には、前記有利状態に制御されることを示唆する第1仮停止態様と、前記有利状態に制御されないことを示唆する第2仮停止態様とがあり、
i 前記第1仮停止態様のときには、前記第2仮停止態様には変化しない一方、
j 前記第2仮停止態様のときには、前記第1仮停止態様に変化する場合と、前記第1仮停止態様に変化しない場合とがあり、
k 前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化する場合は、前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化しない場合よりも、前記第2仮停止態様とする期間が長く、
l 前記対応表示実行手段は、可変表示の開始から前記特定表示結果が確定停止するまでの間において可変表示に対応する表示を表示可能である
m ことを特徴とする遊技機。」

(3)対比
本願補正発明と同日発明を対比する(見出し(a)ないし(m)は、本願補正発明の特定事項AないしMに対応する。)。

(a)(m)同日発明のaの「可変表示を行い、特定表示結果が表示されたことに基づいて遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」は、本願補正発明のAの「可変表示を行い、特定表示結果が表示されたことに基づいて遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。

(b)同日発明のbの「複数種類の可変表示パターンの何れかにより可変表示を実行する可変表示実行手段」「を備え」ることは、本願補正発明のBの「複数種類の可変表示パターンの何れかにより可変表示を実行する可変表示実行手段を備え」ることに相当する。

(d)(e)同日発明のd、eの「前記可変表示実行手段は、可変表示を開始し、所定の動作を伴う仮停止態様を経て、可変表示を確定停止させる第1手段」と、「可変表示を開始し、仮停止態様を経て特定演出を実行した後に前記特定表示結果を確定停止させる第2手段とを含」むことは、本願補正発明のD、Eの「前記可変表示実行手段は、可変表示を開始し、所定の動作を伴う仮停止態様を経て、可変表示を確定停止させる第1手段」と、「可変表示を開始し、仮停止態様を経て特定演出を実行した後に前記特定表示結果を確定停止させる第2手段とを含」むことに相当する。

(f)同日発明のfの「仮停止態様とする期間は、可変表示パターンの種類によって異なり、」は、本願補正発明のFの「仮停止態様とする期間は、可変表示パターンの種類によって異なり、」に相当する。

(h)同日発明のhの「仮停止態様には、前記有利状態に制御されることを示唆する第1仮停止態様と、前記有利状態に制御されないことを示唆する第2仮停止態様とがあり、」は、本願補正発明のHの「仮停止態様には、前記有利状態に制御されることを示唆する第1仮停止態様と、前記有利状態に制御されないことを示唆する第2仮停止態様とがあり、」に相当する。

(i)同日発明のiの「前記第1仮停止態様のときには、前記第2仮停止態様には変化しない一方、」は、本願補正発明のIの「前記第1仮停止態様のときには、前記第2仮停止態様には変化しない一方、」に相当する。

(j)同日発明のjの「前記第2仮停止態様のときには、前記第1仮停止態様に変化する場合と、前記第1仮停止態様に変化しない場合とがあり、」は、本願補正発明のJの「前記第2仮停止態様のときには、前記第1仮停止態様に変化する場合と、前記第1仮停止態様に変化しない場合とがあり、」に相当する。

(k)同日発明のkの「前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化する場合は、前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化しない場合よりも、前記第2仮停止態様とする期間が長く、」は、本願補正発明のKの「前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化する場合は、前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化しない場合よりも、前記第2仮停止態様とする期間が長く、」に相当する。

そうすると、本願補正発明と同日発明とは、
「A 可変表示を行い、特定表示結果が表示されたことに基づいて遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 複数種類の可変表示パターンの何れかにより可変表示を実行する可変表示実行手段を備え、
D 前記可変表示実行手段は、
可変表示を開始し、所定の動作を伴う仮停止態様を経て、可変表示を確定停止させる第1手段と、
E 可変表示を開始し、仮停止態様を経て特定演出を実行した後に前記特定表示結果を確定停止させる第2手段とを含み、
F 仮停止態様とする期間は、可変表示パターンの種類によって異なり、
H 仮停止態様には、前記有利状態に制御されることを示唆する第1仮停止態様と、前記有利状態に制御されないことを示唆する第2仮停止態様とがあり、
I 前記第1仮停止態様のときには、前記第2仮停止態様には変化しない一方、
J 前記第2仮停止態様のときには、前記第1仮停止態様に変化する場合と、前記第1仮停止態様に変化しない場合とがあり、
K 前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化する場合は、前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化しない場合よりも、前記第2仮停止態様とする期間が長い、
M 遊技機。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。

・相違点1(特定事項c、l)
同日発明では、「可変表示に対応する表示を実行する対応表示実行手段」「を備え、」「前記対応表示実行手段は、可変表示の開始から前記特定表示結果が確定停止するまでの間において可変表示に対応する表示を表示可能である」のに対し、
本願補正発明では、そのような特定がない点。

・相違点2(特定事項G)
本願補正発明では、「可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であ」るのに対し、
同日発明では、そのような特定がない点。

・相違点3(特定事項L)
本願補正発明では、「可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで前記有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示する」のに対し、
同日発明では、そのような特定がない点。

(4)同日発明を先願とし、本願補正発明を後願とした場合について判断する。
ア 相違点1について
(ア)本願補正発明は、同日発明の「可変表示に対応する表示を実行する対応表示実行手段」「を備え、」「前記対応表示実行手段は、可変表示の開始から前記特定表示結果が確定停止するまでの間において可変表示に対応する表示を表示可能である」との特定事項を有しないものであり、この点において、同日発明の特定事項を上位概念化しているものであり、上記相違点1に係る同日発明(先願)の特定事項は、本願補正発明(後願)に含まれるものである。

(イ)さらに検討すると、パチンコ遊技機において、可変表示の開始から特定表示結果が確定停止するまでの間において可変表示に対応する表示を表示可能とする対応表示実行手段を備えることは周知(以下「周知技術1」という。例.原査定で引用した特開2015-39494号公報(特に「【0031】・・・アクティブ保留表示部18dにおいて、実行中の変動表示に対応するアクティブ保留表示が表示され、・・・アクティブ保留表示は複数種類の表示態様(例えば、通常態様、第1特別態様または第2特別態様)で表示され、いずれの表示態様で表示されるかによって、変動表示の表示結果が大当りとなる期待度が異なるように構成されている。」、「【0351】次いで、変動表示が停止して、はずれ図柄の導出表示が行われると(図44(H))、アクティブ保留表示および保留表示がシフトされるとともに、新たな変動表示が開始される。・・・」、図44参照。)、特開2014-117517号公報(特に【0277】ないし【0309】、特に「【0278】・・・変動アイコン表示領域800には、当該特図1変動遊技に対応する変動アイコン801が表示されている。」、図20参照。)。その他、例示するまでなく、一般的なパチンコ遊技機における、液晶表示装置等からなる装飾図柄表示装置の可変表示と、該可変表示に対応した7セグ等からなる特別図柄表示装置の可変表示(対応表示)との関係。)である。
そして、本願補正発明及び同日発明の課題は、本願又は同日出願の明細書の【0005】等の記載を参酌すると、仮停止態様とする期間に期待感を持たせることであって、同日発明の「可変表示の開始から特定表示結果が確定停止するまでの間において可変表示に対応する表示を表示可能である」「対応表示実行手段」「を備える」との特定は、前記課題の解決手段に対応する本質的な発明特定事項と直接関連がないから、前記課題の解決に影響を及ぼすものではない。
そうすると、同日発明において、可変表示の開始から特定表示結果が確定停止するまでの間において可変表示に対応する表示を表示可能とするとの周知技術1を削除することは、前記課題の解決のための具体化手段における微差(周知技術の削除)であって、新たな効果を奏するものではない。

以上のとおり、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について
(ア)可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であることは周知(以下「周知技術2」という。例.原査定で引用した特開2001-321516号公報(特に【0077】、【0207】ないし【0298】、図11、図14ないし図51参照。当該箇所には、パターン1から9の再変動パターンで、それぞれ一旦停止する時間が異なり、一旦停止の態様には、再変動パターンがどのパターンであっても図柄が上下に揺動するという共通の動作が含まれている点が記載されている。)、特開2012-179180号公報(特に【0188】、図11-1、図12-3参照。仮停止表示は、微細に揺れているように装飾図柄を表示する。仮停止表示と各変動演出パターンとの関連について言及がないから、いずれの変動パターンにおいても微細に揺れるという共通の動作を含むと認められる。)である。

(イ)本願補正発明及び同日発明の課題は、前述のとおり、仮停止態様とする期間に期待感を持たせることであって、本願補正発明の「可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であ」るとの特定は、仮停止態様はいかなる状況でも共通の動作をするものといえるから、前記課題の解決に影響を及ぼすものではない。
そうすると、同日発明において、可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であるとの周知技術2を付加することは、前記課題の解決のための具体化手段における微差(周知技術の単なる付加)であって、新たな効果を奏するものではないから、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

ウ 相違点3について検討する。
(ア)パチンコ遊技機において、可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示することは周知(以下「周知技術3」という。例.特開2014-117517号公報(特に【0302】ないし【0306】、図21参照。変動アイコン805の表示態様が「赤」である点が「示唆演出」に相当する。スーパーリーチB(剣豪対決)が開始すると、変動アイコン805が消去され、スーパーリーチB(剣豪対決)が終了すると、変動アイコン805が再度表示されている。)、特許第5681306号公報(特に【0701】ないし【0713】、図44参照。保留アイコン902の表示態様が緑色円形である点が「示唆演出」に相当する。吉宗と剣豪との対決演出(剣豪対決)のスーパーリーチが開始されると、変動アイコン表示領域870および保留アイコン表示領域890が消滅し、変動アイコン882および保留アイコン902が消去され、前記スーパーリーチが終了すると、変動アイコン882および保留アイコン902が再度表示される。)である。

(イ)本願補正発明及び同日発明の課題は、前述のとおり、仮停止態様とする期間に期待感を持たせることであって、本願補正発明の「可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで前記有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示する」との特定は、前記課題の解決手段に対応する本質的な発明特定事項と直接関連がないから、前記課題の解決に影響を及ぼすものではない。
そうすると、同日発明において、可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示するとの周知技術2を付加することは、前記課題の解決のための具体化手段における微差(周知技術の単なる付加)であって、新たな効果を奏するものではないから、上記相違点3は実質的な相違点ではない。

したがって、本願補正発明(後願)と同日発明(先願)とは実質的に同一の発明である。

(5)本願補正発明を先願とし、同日発明を後願とした場合について判断する。
ア 相違点1について
前述のとおり、本願補正発明及び同日発明の課題は、仮停止態様とする期間に期待感を持たせることであって、同日発明の「可変表示の開始から特定表示結果が確定停止するまでの間において可変表示に対応する表示を表示可能である」「対応表示実行手段」「を備える」との特定は、前記課題の解決手段に対応する本質的な発明特定事項と直接関連がないから、前記課題の解決に影響を及ぼすものではない。
そうすると、本願補正発明において、可変表示の開始から特定表示結果が確定停止するまでの間において可変表示に対応する表示を表示可能とするとの周知技術1を付加することは、前記課題の解決のための具体化手段における微差(周知技術の単なる付加)であって、新たな効果を奏するものではないから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について
(ア)同日発明は、本願補正発明の「可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であ」るとの特定事項を有しないものであり、この点において、本願補正発明の特定事項を上位概念化しているものであり、上記相違点2に係る本願補正発明(先願)の特定事項は、同日発明(後願)に含まれるものである。

(イ)さらに検討すると、本願補正発明及び同日発明の課題は、仮停止態様とする期間に期待感を持たせることであって、本願補正発明の「可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であ」るとの特定は、仮停止態様はいかなる状況でも共通の動作をするものであるから、前記課題の解決に影響を及ぼすものではない。
そうすると、本願補正発明において、「可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であ」るとの周知技術2を削除することは、前記課題の解決のための具体化手段における微差(周知技術の削除)であって、新たな効果を奏するものではない。

ウ 相違点3について
(ア)同日発明は、本願補正発明の「可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで前記有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示する」との特定事項を有しないものであり、この点において、本願補正発明の特定事項を上位概念化しているものであり、上記相違点3に係る本願補正発明(先願)の特定事項は、同日発明(後願)に含まれるものである。

(イ)さらに検討すると、本願補正発明及び同日発明の課題は、仮停止態様とする期間に期待感を持たせることであって、本願補正発明の「可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで前記有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示する」との特定は、前記課題の解決手段に対応する本質的な発明特定事項と直接関連がないから、前記課題の解決に影響を及ぼすものではない。
そうすると、本願補正発明において、「可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで前記有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示する」との周知技術3を削除することは、前記課題の解決のための具体化手段における微差(周知技術の削除)であって、新たな効果を奏するものではない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本願補正発明と同日発明とは、どちらの発明に着目しても、他の発明と実質的に同一であるといえるから、本願補正発明と同日発明とは、相互に同一である。

(7)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「本願発明が特許されるべき理由」の「2.本願発明と引用発明等との対比」において、「こうした特徴の相違は、周知技術や慣用技術の付加、削除、転換等に該当し得るものではありません。特に、示唆演出は、リーチ演出中は表示を消去することで、リーチ演出の視認性を阻害することがなくなります。よってリーチ演出に注目させることができます。さらに、リーチ演出が終了すると示唆演出を再度表示するため、可変表示がどのタイミングで終了するかを正確に遊技者に伝えることが可能となります。」と主張している。
しかしながら、請求人が主張する効果は、周知技術3の効果そのものであり、周知技術3が付加されれば自ずと付随する効果であり、新たな効果とは認められないから、上記主張は採用できない。
したがって、上記主張は採用できない。

(8)まとめ
以上のように、本願補正発明と同日発明は同一の発明であると認められ、かつ、指令書で指定した期間内に、いずれかの一の出願を定める届出がなく、特許法第39条第7項の規定により協議が成立しなかったものとみなされるから、同法同条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成31年3月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「A 可変表示を行い、特定表示結果が表示されたことに基づいて遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 複数種類の可変表示パターンの何れかにより可変表示を実行する可変表示実行手段を備え、
D 前記可変表示実行手段は、
可変表示を開始し、所定の動作を伴う仮停止態様を経て、可変表示を確定停止させる第1手段と、
E 可変表示を開始し、仮停止態様を経て特定演出を実行した後に前記特定表示結果を確定停止させる第2手段とを含み、
F 仮停止態様とする期間は、可変表示パターンの種類によって異なり、
G 可変表示パターンの種類に関わらず共通の動作を含む仮停止態様により仮停止可能であり、
H 仮停止態様には、前記有利状態に制御されることを示唆する第1仮停止態様と、前記有利状態に制御されないことを示唆する第2仮停止態様とがあり、
I 前記第1仮停止態様のときには、前記第2仮停止態様には変化しない一方、
J 前記第2仮停止態様のときには、前記第1仮停止態様に変化する場合と、前記第1仮停止態様に変化しない場合とがあり、
K 前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化する場合は、前記第2仮停止態様のときに前記第1仮停止態様に変化しない場合よりも、前記第2仮停止態様とする期間が長い、
M ことを特徴とする遊技機。」 (合議体がAないしMに分説した。)

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の平成31年3月5日提出の手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、同日出願の平成31年3月5日提出の手続補正書により補正された請求項1に係る発明(同日発明)と同一と認められ、かつ、両出願人の間で協議が成立しなかったものとみなされるから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
1.特願2017-149926号(特開2017-192819号)(同日出願)
2. 特開2001-321516号公報(周知技術を示す文献)
3. 特開2015-39494号公報(周知技術を示す文献)

3 同日出願
原査定の拒絶の理由に引用された同日発明は、上記第2の3(2)に示したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「L 可変表示を開始してからリーチ演出が開始するまで前記有利状態に制御させることを示唆する示唆演出を表示し、当該リーチ演出が開始した後に当該示唆演出を消去し、当該リーチ演出が終了したときに当該示唆演出を再度表示する、」という限定事項を削除するものである。
そして、本願発明と同日発明とを対比すると、相違点は、上記第2の2(3)で説示した相違点1及び2と同様のものとなるから、上記第2の2(4)ないし(6)で説示したとおり、本願発明と同日発明は同一の発明である。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-06-10 
結審通知日 2020-06-16 
審決日 2020-06-30 
出願番号 特願2017-149927(P2017-149927)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 4- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 進藤 利哉  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 鉄 豊郎
鷲崎 亮
発明の名称 遊技機  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ