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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 B29C |
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管理番号 | 1366112 |
異議申立番号 | 異議2019-701026 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-12-16 |
確定日 | 2020-08-31 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第6533428号発明「ブロー成形装置およびブロー成形方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6533428号の請求項1、3ないし7に係る特許を取り消す。 特許第6533428号の請求項2、8に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6533428号(設定登録時の請求項の数は8。以下「本件特許」という。)は、平成27年7月16日に出願された特許出願である特願2015-142192号に係るものであって、令和1年5月31日にその特許権が設定登録された。 そして、令和1年6月19日に本件特許に係る特許掲載公報が発行されたところ、特許異議申立人 大商硝子株式会社及びギバーライフ株式会社(以下、単に「異議申立人1」という。)は、同年12月16日に請求項1?8に係る特許に対して特許異議の申立てをし、特許異議申立人 鳥巣慶太(以下、単に「異議申立人2」という。)は、同年同月19日に請求項1?8に係る特許に対して特許異議の申立てをした。 その後、当審は、本件特許の請求項1、3ないし7に係る特許について、令和2年2月27日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からの応答はなかった。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?8に係る発明は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などという。)。 「【請求項1】 ブロー成形法により合成樹脂製の成形品を製造する成形装置であって、 ダイスヘッドを備え、成形材料を加熱溶融させた略中空円筒形状のパリソンを、その内筒面に1以上の縦溝を設けて前記ダイスヘッドから下方へ押し出す押し出し機構と、 前記押し出し機構から押し出されたパリソンを把持して捻回する捻回機構と、 前記捻回機構により捻回されたパリソンを金型で挟み込んでブロー成形するブロー成形機構と、を含み、 前記捻回機構は、 前記押し出し機構から押し出されたパリソンの端部を把持するための把持手段と、 前記パリソンの押し出し方向に平行な軸を回転軸として、前記パリソンの端部を把持した把持手段を所定の角度分だけ回転するための回転手段とを含み、 前記押し出し機構は、前記パリソンの中空円筒形状を維持するために前記パリソンの中空部にエアーを流通させながら前記パリソンを押し出し、 前記把持手段は、前記エアーの流通を阻害しないように、前記パリソンの端部を把持する、ブロー成形装置。 【請求項2】 ブロー成形法により合成樹脂製の成形品を製造する成形装置であって、 ダイスヘッドを備え、成形材料を加熱溶融させた略中空円筒形状のパリソンを、その内筒面に1以上の縦溝を設けて前記ダイスヘッドから下方へ押し出す押し出し機構と、 前記押し出し機構から押し出されたパリソンを把持して捻回する捻回機構と、 前記捻回機構により捻回されたパリソンを金型で挟み込んでブロー成形するブロー成形機構と、を含み、 前記捻回機構は、 前記押し出し機構から押し出されたパリソンの端部を把持するための把持手段と、 前記パリソンの押し出し方向に平行な軸を回転軸として、前記パリソンの端部を把持した把持手段を所定の角度分だけ回転するための回転手段とを含み、 前記ブロー成形機構は、前記把持手段による把持が解除されたパリソンをブロー成形し、 前記把持手段は、前記パリソンの端部の外筒面を一対のチャックで挟持し、 前記金型は、対向させた合わせ面が離隔接近する少なくとも2つに分割された金型であって、 前記回転手段は、前記チャックが解除されたパリソンにおいて前記チャックにより挟持されたことにより形成された略平らな平面が、前記合わせ面を含む平面と略平行になるように、前記パリソンの端部を把持した把持手段の回転を停止する、ブロー成形装置。 【請求項3】 前記押し出し機構は、前記パリソンを連続的に押し出し、 前記捻回機構は、前記パリソンの押し出し速度に対応させて前記パリソンの端部を把持した把持手段を前記回転軸方向に沿って下方へ移動するための移動手段をさらに含む、請求項1または請求項2に記載のブロー成形装置。 【請求項4】 前記ブロー成形機構は、前記把持手段による把持が解除されたパリソンをブロー成形し、 前記所定の角度は、前記ブロー成形後の成形品における捻り角度に、前記把持が解除されたパリソンが前記金型で挟み込まれるまでに戻る角度に対応させた角度分だけ余分に加えた角度である、請求項1または請求項3に記載のブロー成形装置。 【請求項5】 ブロー成形法により合成樹脂製の成形品を製造する成形方法であって、 成形材料を加熱溶融させた略中空円筒形状のパリソンを、その内筒面に1以上の縦溝を設けてダイスヘッドから下方へ押し出す押出ステップと、 前記押し出されたパリソンの端部を把持して、前記パリソンの押し出し方向に平行な軸を回転軸として所定の角度分だけ前記パリソンを捻回する捻回ステップと、 前記捻回されたパリソンを金型で挟み込んでブロー成形する成形ステップとを含み、 前記押出ステップにおいては、前記パリソンを連続的に押し出し、 前記捻回ステップにおいては、前記パリソンの押し出し速度に対応させてその端部が把持されたパリソンを前記回転軸方向に沿って下方へ移動する、ブロー成形方法。 【請求項6】 前記押し出しステップにおいては、前記パリソンの中空円筒形状を維持するために前記パリソンの中空部にエアーを流通させながら前記パリソンを押し出し、 前記捻回ステップにおいては、前記エアーの流通を阻害しないように、前記パリソンの端部を把持する、請求項5に記載のブロー成形方法。 【請求項7】 前記成形ステップにおいては、その端部の把持が解除されたパリソンをブロー成形し、 前記所定の角度は、前記ブロー成形後の成形品における捻り角度に、前記把持が解除されたパリソンが前記金型で挟み込まれるまでに戻る角度に対応させた角度分だけ余分に加えた角度である、請求項5または請求項6に記載のブロー成形方法。 【請求項8】 前記成形ステップにおいては、その端部の把持が解除されたパリソンをブロー成形し、 前記捻回ステップにおいては、前記パリソンの端部の外筒面を一対のチャックで挟持し、 前記金型は、対向させた合わせ面が離隔接近する少なくとも2つに分割された金型であって、 前記捻回ステップにおいては、前記チャックが解除されたパリソンにおいて前記チャックにより挟持されたことにより形成された略平らな平面が、前記合わせ面を含む平面と略平行になるように、その端部が把持されたパリソンの捻回を停止する、請求項5または請求項6に記載のブロー成形方法。」 第3 特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由の概要 1 異議申立人1は、下記(1)の証拠方法を提示すると共に、特許異議の申立ての理由として、概略、下記(2)の主張をしている。 (1) 証拠方法 甲第1号証:特許第5947987号公報 甲第2号証:プラスチック読本、2009年10月1日改訂第20版、第283頁 甲第3号証:プラスチック金型活用ハンドブック、1990年11月15日初版第1刷発行、第80頁 甲第4号証:実願昭62-62313号(実開昭63-170121号)のマイクロフィルム 甲第5号証:特開平5-228984号公報 甲号証の表記については、甲第4号証を除き、概略、異議申立人1の特許異議申立書の表記に従った。 甲第4号証については、特許異議申立書に添付されている甲第4号証が実開昭63-170121号のマイクロフィルムであって、特許異議申立書に記載の「実開昭63-170121号公報」は、実開昭63-170121号のマイクロフィルムの要部のみの公開公報であることから、実際に添付されている証拠を甲第4号証とした。 以下、上記甲第1ないし5号証を、それぞれ、「申立人1甲1」ないし「申立人1甲5」という。 (2) 申立理由(29条の2) 本件発明1?8は、申立人1甲1の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、この出願の時において、その出願人が同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本件特許の請求項1?8に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 異議申立人2は、下記(1)の証拠方法を提示すると共に、特許異議の申立ての理由として、概略、下記(2)の主張をしている。 (1) 証拠方法 甲第1号証:再表2016/143129号 甲第2号証:特開2008-230118号公報 甲第3号証:実願昭62-62313号(実開昭63-170121号)のマイクロフィルム 甲第4号証:パリソン製造の動画が記録されたCD-R 甲号証の表記については、甲第3号証を除き、概略、異議申立人2の特許異議申立書の表記に従った。 甲第3号証については、特許異議申立書に添付されている甲第3号証が実開昭63-170121号のマイクロフィルムであって、特許異議申立書に記載の「実開昭63-170121号公報」は、実開昭63-170121号のマイクロフィルムの要部のみの公開公報であることから、実際に添付されている証拠を甲第3号証とした。 以下、上記甲第1?4号証を、それぞれ、「申立人2甲1」ないし「申立人2甲4」という。 (2) 申立理由(29条の2) 本件発明1?8は、申立人2甲1の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一でなく、また、この出願の時において、その出願人が同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本件特許の請求項1?8に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 取消理由の概要 当審が令和2年2月27日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 「【理由1】 本件特許の請求項1、3ないし7に係る発明は、その出願前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 ・・・ 1 先願 先願:特願2015-560439号(特許第5947987号) 先願の出願日:平成27年3月12日 先願に係る発明の発明者:徳 洋一 、宇野 勝 先願の出願人:大商硝子株式会社、ギバーライフ株式会社 先願の特許掲載公報の発行日:平成28年7月6日 ・・・」 第5 取消理由についての当審の判断 本件特許の請求項1、3ないし7に係る特許について、令和2年2月27日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許の請求項1、3ないし7に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。 第6 取消理由において採用しなかった特許異議の申立て理由について 申立人1の「申立人1甲1」と申立人2の「申立人2甲1」は、異なる文献であるが、申立人1甲1の特許に係る出願は、特願2015-560439号であり、申立人2甲1である国際出願の日本国内に移行された出願と同じであって、取消理由における先願である特願2015-560439号である。 そうすると、上記取消理由において採用しなかった特許異議の申立て理由は、本件特許の請求項2及び8に対する取消理由で通知した先願に基づく申立理由(29条の2)といえる。 そこで、本件特許の請求項2及び8に対しての先願に基づく申立理由(29条の2)について、以下、検討する。 1 本件特許の請求項2及び8に係る発明 本件特許の請求項2及び8に係る発明は、上記第2に記載のとおりのものである。 2 先願 上記第4に記載の先願。 3 先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)に記載された事項 先願明細書等には、以下の事項が記載されている。なお、下線は合議体において付与した。 ア 「【請求項1】 突条を内面に有したチューブ状のパリソンを形成するパリソン形成工程と、 前記パリソン形成工程後のパリソンの突条を螺旋条にする螺旋条形成工程と、 前記螺旋条形成工程後のパリソンを内側から膨らませて容器を形成する容器形成工程とを備え、 前記螺旋条形成工程は、前記パリソン形成工程時に前記パリソンを形成するダイから押し出されて垂れ下がった前記パリソンを挟持する挟持工程と、前記挟持工程で前記パリソンを挟持した状態のまま前記パリソンを前記突条とともに周方向へ捻る捻り工程とを含んでいることを特徴とする、内面螺旋条付き容器の製造方法。 ・・・ 【請求項3】 突条を内面に有したチューブ状のパリソンを形成するパリソン形成機と、 前記パリソンの突条を螺旋状にする螺旋条形成機と、 前記突条が螺旋状となったパリソンを内側から膨らませて容器を形成する容器形成機とを有し、 前記螺旋条形成機は、前記パリソン形成機が有するダイから押し出されて垂れ下がった前記パリソンを挟持する挟持部と、前記パリソンを前記突条とともに周方向へ捻るため前記挟持部を前記パリソンとともに前記パリソンの周方向へ回転させる回転部とを備えていることを特徴とする、内面螺旋条付き容器の製造装置。」 イ 「【0020】 <内面螺旋条付き容器の製造装置> 次に、この内面螺旋条付き容器の製造装置について説明する。この製造装置は、ダイレクトブロー成形により、簡便に内面螺旋条付き容器を製造することができる。図2は、本発明の一実施形態の内面螺旋条付き容器の製造装置(以下、ダイレクトブロー成形装置と言う。)の概略図である。 【0021】 ダイレクトブロー成形装置は、図2(a)?(c)に示すように、チューブ状のパリソン4を形成するパリソン形成機5と、パリソン4を捻る螺旋条形成機100と、パリソン4を容器形状に膨張させて容器2を得る容器形成機6とを備えている。ダイレクトブロー成形装置では、螺旋条形成機100と容器形成機6とが、パリソン形成機5に対して移動自在に構成されている。」 ウ 「【0023】 パリソン形成機5は、図2(a)に示すように、溶融状態の熱可塑性樹脂をチューブ状に押し出してパリソン4を形成するためのパリソン形成ダイ8と、溶融された樹脂をパリソン形成ダイ8に供給する樹脂材料供給部9とを有している。」 エ 「【0027】 また、パリソン形成機5は、マンドレル18に形成された後述する第1の通風路22と、第1の通風路22に加圧冷却気体を供給する第1の気体供給源23とを有している。 【0028】 第1の気体供給源23は、気体流としての加圧冷却気体を、マンドレル18の第1の通風路22に供給している。第1の通風路22は、パリソン4の内側に通じている。加圧冷却気体は、例えば、所定の圧力の常温の空気である。 【0029】 これにより、加圧冷却気体が、第1の通風路22を通じて、パリソン4内に吹き込まれるようになっている。その結果、パリソン形成ダイ8により形成されたパリソン4をチューブ状に保つことができる。」 オ 「【0046】 (螺旋条形成機) 螺旋条形成機100は、パリソン4の内面の突条407を螺旋形状へ塑性変形させるものである。螺旋条形成機100は、図6に示すように、基台101と、基台101に設置された螺旋条形成部102と、基台101とともに螺旋条形成部102を水平方向及び垂直方向へ移動させる移動機構103と、センサ108と、螺旋条形成部102及び移動機構103の動作を制御する制御部104とを備えている。 【0047】 移動機構103は、基台101とともに螺旋条形成部102をパリソン形成ダイ8の下側へ移動させたり、螺旋条形成部102をパリソン形成ダイ8の下側から退避させたりするものである。 ・・・ 【0055】 螺旋条形成機100の制御部104は、移動機構103を駆動させて螺旋条形成部102をパリソン形成ダイ8の下側へ移動させる。このとき、パリソン4の軸と一対のアーム105の対称軸(アーム間の中央線)とを一致させるように螺旋条形成部102を移動させる。制御部104は、パリソン形成ダイ8から所定の位置まで垂れ下がったパリソン4をセンサ108が検知すると、螺旋条形成部102の開閉機構106を駆動させて、一対のアーム105を閉じて、パリソン4の外周面の下側部分を一対のアーム105に掴ませる。このとき、パリソン4の外周面の下側部分は、アーム105の力で潰れた状態になる。このように、パリソン4の外周面の下側部分を潰すことによって、一対のアーム105にしっかりとパリソン4を掴ませることができる。 【0056】 制御部104は、パリソン4の下側部分を一対のアーム105に掴ませた状態で、回転モータ107を所定の回転速度で所定の回転角度だけ駆動させる。この回転モータ107の駆動により、回転モータ107の回転軸周りに一対のアーム105が回転して、パリソン4が周方向へ捻れる。これにより、パリソン4の内面の突条407が螺旋状になる。その後、制御部104は、移動機構103を駆動させて螺旋条形成部102をパリソン形成ダイ8の下側から退避させる。」 カ 「【0066】 (パリソン形成工程) パリソン形成工程では、図8に示すように、固形状態の樹脂3が、樹脂材料投入口12から加熱筒13に投入される。加熱筒13に投入された樹脂3は、加熱筒13の熱を受け、徐々に溶融する。これとともに、溶融した樹脂3は、電動モータ15により駆動された押し出しスクリュー14の押し出し力により、加熱筒13からパリソン形成ダイ8に運ばれる。 【0067】 パリソン形成ダイ8に達した溶融状態の樹脂3は、環状通路19を通過し、パリソン形成ダイ8の下方へ押し出される。これにより、チューブ状のパリソン4が形成される。 【0068】 また、パリソン4が形成されるときに、第1の通風路22から凹溝36を通して加圧冷却気体が吹き出される。この加圧冷却気体は、弱く加圧(たとえば、0.5?1.0kg/cm2)されており、容器形成機6の第2の通風路32の加圧冷却気体よりも低圧である。第1の通風路22の加圧冷却気体が軟化状態にあるパリソン4に向けて吹き出されたときに、このパリソン4の形状が実質的に変化しないように、第1の通風路22の加圧冷却気体の圧力が設定されている。 【0069】 パリソン4の形成に伴って、パリソン形成ダイ8のマンドレル18の外周35の凹溝36によって、パリソン4の内周406に突条407が形成される。この突条407においてパリソン4の肉厚が相対的に厚くされている。 【0070】 加圧冷却気体(図3のF1)が、第1の通風路22の吹出口50から吹き出されると、パリソン4の内周406の突条407に沿って、マンドレル18の径方向外方へ流れ、また、マンドレル18の軸方向A1に下方へ向けて流れる。また、加圧冷却気体は、突条407に沿って、突条407の頂部から徐々にその周辺へ流れる。やがて、加圧冷却気体は、パリソン4内に吹き込まれる。」 キ 「【0075】 (螺旋条形成工程) パリソン形成工程において、樹脂3が押し出されるのに伴い、パリソン形成ダイ8からパリソン4が垂れ下がる。そして、螺旋条形成工程において、図8に示すように、パリソン4が所定の位置まで垂れ下がったことをセンサ108が検知すると、一対のアーム105がパリソン4の外周面の下側部分を挟持する(挟持工程)。このとき、パリソン4の下側部分は、一対のアーム105の挟持力で潰れた状態になる。その後、パリソン4を挟持させた状態でパリソン4を突条407とともに周方向へ捻る(捻り工程)。これにより、突条407が螺旋条へ変形する。ここで、この捻り工程は、パリソン4をパリソン4の軸回りに捻るのが好ましい。 【0076】 また、パリソン4を捻る場合には、パリソン4の復元力を考慮して、多めに捻るようにするとよい。例えば、3/4回転捻られた螺旋条を形成する場合には、パリソン4が復元力で1/4回転戻ることを考慮して、パリソン4を1回転捻るようにする。これにより、所望の螺旋条を形成することができる。 【0077】 (容器形成工程) 次に、容器形成工程において、図9に示すように、突条407が螺旋形状になったパリソン4の外側に、一対の分割型29が開いた状態で位置決めされる(図9の右側の分割型29)。このとき、パリソン4はダイから垂れ下がった状態である。その後、一対の分割型29がパリソン4を挟み込むことにより、パリソン4の下側が封止される(図9の左側の分割型29)。この挟み込みのとき、一対のアーム105で潰されたパリソン4の下端部分は切断される。次に、下端部が封止されたパリソン4の上端部が、切断面S(図9を参照)でホットカッター(図示せず)により切断される。 【0078】 ここで、パリソン4は半固形状態のため、ホットカッターの切断の直後、パリソン4の切断面のうち螺旋条207に係る部分が下側へ垂れてしまい、パリソン4の切断面が凸凹になってしまう。これは、螺旋条207がパリソン4の内周面から径方向へ突出しているために起こるものと考えられる。螺旋条207がパリソン4の内周面から突出する長さが長ければ長いほど螺旋条207は自重で下側へ垂れやすくなる。しかしながら、一実施形態の製造方法では、パリソンの内面の螺旋条207が冷却工程により冷却されるため、螺旋条207の部分が硬くなっている。このことから、ホットカッターの切断の直後、螺旋条207の切断面の部分は垂れ下がらずに、パリソン4の切断面は平坦のままとなる。パリソン4の切断面は、容器2の口部202の開口端面205に相当する。従って、口部202の開口端面205を平坦にするための切削加工等を行う必要はなく、切削加工等で生じるバリが容器2の中に入ることもない。 【0079】 第1の通風路22からの加圧冷却気体は、パリソン4の形成開始の時点から、パリソン4の所定部が切断されるまでの間、吹き出されている。なお、加圧冷却気体は、所要のタイミングで吹き出されるようにしてもよい。 【0080】 次に、切断されたパリソン4の上端部の開口に、打ち込み装置27のブローピン26が挿入される(図9の左側の分割型29)。その後、ブローピン26の第2の通風路32の吹出口から、約0.39?0.49MPaの加圧空気が、底部が閉塞されたパリソン4内に吹き込まれる。これにより、高温で半固形状態にあるパリソン4は膨張する。その結果、パリソン4の肉厚が薄くなりながら、パリソン4が、容器型25の内面に沿うようになっている。これにより、容器2が、半固形状態で形成される。 ・・・ 【0082】 次いで、容器型25を冷却することにより、容器2を固形化させる。そして、一対の分割型29を互いに離隔させて、一対の分割型29から容器2を取り外す。」 ク 「 」 ケ 「 」 コ 「 」 4 先願明細書等に記載された発明 先願明細書等には、上記3 ア?コの記載からみて、ダイレクトブロー成形装置として、以下の発明(以下、「先願装置発明」という。)が記載されていると認める。 <先願装置発明> 「ダイレクトブロー成形装置であって、 パリソン形成ダイを備え、溶融された樹脂から突条を内面に有したチューブ状のパリソンを形成するパリソン形成機と、 前記パリソンの突条を螺旋状にする螺旋条形成機と、 前記突条が螺旋状となったパリソンを、一対の分割型が当該パリソンを挟み込むことにより、パリソンの下側が封止されて、内側から膨らませて容器を形成する容器形成機とを有し、 前記パリソン形成機は、パリソンが形成されるときに、弱く加圧(たとえば、0.5?1.0kg/cm^(2))された加圧冷却気体が、パリソン成形開始の時点から、パリソンの所定部が切断されるまでの間、吹き出され、 前記螺旋条形成機は、基台と、基台に設置された螺旋条形成部と、基台とともに螺旋条形成部を水平方向及び垂直方向へ移動させる移動機構と、センサと、螺旋条形成部及び移動機構の動作を制御する制御部と、前記パリソン形成機が有するダイから押し出されて垂れ下がった前記パリソンを挟持する挟持部と、前記パリソンを前記突条とともに周方向へ捻るため前記挟持部を前記パリソンとともに前記パリソンの周方向へ回転させる回転部とを備え、当該挟持部は、パリソンの下側部分を一対のアームの挟持力で潰れた状態に挟持し、挟持した状態で捻るものであって、パリソンの復元力を考慮して、多めに捻るようにするものである、 内面螺旋条付き容器のダイレクトブロー成形装置。」 また、内面螺旋条付き容器の製造方法として、以下の発明(以下、「先願方法発明」という。)が記載されていると認める。 <先願方法発明> 「ダイレクトブロー成形による内面螺旋条付き容器の製造方法であって、 突条を内面に有したチューブ状のパリソンをパリソン形成ダイから押し出して形成し、パリソンが形成されるときに、弱く加圧(たとえば、0.5?1.0kg/cm^(2))された加圧冷却気体が、パリソン成形開始の時点から、パリソンの所定部が切断されるまでの間、吹き出されているパリソン形成工程と、 前記パリソン形成工程後のパリソンの突条を螺旋条にする螺旋条形成工程であって、 前記螺旋条形成工程は、前記パリソン形成工程時に前記パリソン形成ダイから押し出されて垂れ下がった前記パリソンを挟持部で挟持する挟持工程と、 前記挟持工程で前記パリソンを挟持した状態のまま前記パリソンを前記突条とともに周方向へ捻る捻り工程とを含んでいて、 前記挟持部は、パリソンの下側部分を一対のアームの挟持力で潰れた状態に挟持し、挟持した状態で捻るものであり、 螺旋条形成機は、基台と、基台に設置された螺旋条形成部と、基台とともに螺旋条形成部を水平方向及び垂直方向へ移動させる移動機構を有していて、 前記螺旋条形成工程後の、ダイから垂れ下がった状態のパリソンを、一対の分割型が当該パリソンを挟み込むことにより、パリソンの下側が封止されて、内側から膨らませて容器を形成する容器形成工程とを備える、 内面螺旋条付き容器の製造方法。」 5 本件発明2について ア 対比 本件発明2と先願装置発明とを対比する。 先願装置発明の「パリソン形成ダイ」、「樹脂」、「チューブ状」、「突条」は、それぞれ、本件発明2における「ダイスヘッド」、「成形材料」、「略中空形状」、「縦溝」に相当し、先願明細書等の段落【0066】及び【0067】(上記3 カ)の記載から、先願装置発明の「パリソン形成機」は、本件発明2の「ダイスヘッドを備え、成形材料を加熱溶融させた略中空円筒形状のパリソンを、その内筒面に1以上の縦溝を設けて前記ダイスヘッドから下方へ押し出す押し出し機構」に相当する。 先願装置発明の「挟持部」、「回転部」は、先願明細書等の段落【0055】、【0075】(上記3 オ及びキ)の記載から、それぞれ、本件発明2における「把持手段」、「回転手段」に相当し、先願装置発明の「螺旋条形成機」は、本件発明2における「押し出し機構から押し出されたパリソンを把持して捻回する捻回機構」に相当するものであって、さらに、本件発明2の「前記押し出し機構から押し出されたパリソンの端部を把持するための把持手段と、前記パリソンの押し出し方向に平行な軸を回転軸として、前記パリソンの端部を把持した把持手段を所定の角度分だけ回転するための回転手段」を有するとともに、「前記把持手段は、前記パリソンの端部の外筒面を一対のチャックで挟持」するものであるといえる。 先願装置発明の「一対の分割型」は、本件発明2における「金型」に相当し、先願装置発明においても、一対の分割型が突条が螺旋状となったパリソンを挟み込んでいるから、先願装置発明の「容器形成機」は、本件発明2における「捻回機構により捻回されたパリソンを金型で挟み込んでブロー成形するブロー成形機構」に相当するし、また、「前記把持手段による把持が解除されたパリソンをブロー成形するもの」であって、また、前記分割型は、「対向させた合わせ面が隔離接近する少なくとも2つに分割された金型」であるといえる。 そうすると、本件発明2と先願装置発明は、 「ブロー成形法により合成樹脂製の成形品を製造する成形装置であって、 ダイスヘッドを備え、成形材料を加熱溶融させた略中空円筒形状のパリソンを、その内筒面に1以上の縦溝を設けて前記ダイスヘッドから下方へ押し出す押し出し機構と、 前記押し出し機構から押し出されたパリソンを把持して捻回する捻回機構と、 前記捻回機構により捻回されたパリソンを金型で挟み込んでブロー成形するブロー成形機構と、を含み、 前記捻回機構は、 前記押し出し機構から押し出されたパリソンの端部を把持するための把持手段と、 前記パリソンの押し出し方向に平行な軸を回転軸として、前記パリソンの端部を把持した把持手段を所定の角度分だけ回転するための回転手段とを含み、 前記ブロー成形機構は、記把持手段による把持が解除されたパリソンをブロー成形し、 前記把持手段は、前記パリソンの端部の外筒面を一対のチャックで挟持し、 前記金型は、対向させた合わせ面が隔離接近する少なくとも2つに分割された金型である、ブロー成形装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 捻回機構の回転手段に関して、本件発明2は、「前記回転手段は、前記チャックが解除されたパリソンにおいて前記チャックにより挟持されたことにより形成された略平らな平面が、前記合わせ面を含む平面と略平行になるように、前記パリソンの端部を把持した把持手段の回転を停止する」と特定するのに対し、先願装置発明は、この点を特定しない点。 イ 判断 相違点1について検討する。 先願装置発明の回転手段は、「前記パリソンを前記突条とともに周方向へ捻るため前記挟持部を前記パリソンとともに前記パリソンの周方向へ回転させる」ものであって、「パリソンの復元力を考慮して、多めに捻るようにするものである」が、先願明細書等には「チャックにより挟持されたことにより形成された略平らな平面」と「金型の合わせ面」との関係についての直接的な記載はない。 また、先願明細書等の図9(下記に再掲)には、分割型の合わせ面と挟持部(チャック)により挟持される部分についての記載があるが、当該図面は設計図ではないから、当該図面の記載からその関係を認定することはできないし、さらに言うならば、分割型によって閉じられるパリソンの部分は、パリソンが挟持部により閉じられていない円筒形状が保たれた部分となっているから、金型の合わせ面と挟持部(チャック)により挟持される部分との関係は不明である。 そして、本件出願時における当業者において、押出ブロー成形に利用されるパリソンをチャックする部材により形成される略平らな平面とブロー成形に利用する金型の合わせ面を含む平面とを略平行となるようにすることが、当然に行われていたことであったことを示す証拠もない。 してみれば、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明2は、先願装置発明、すなわち、先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。 6 本件発明8について 本件発明5を引用する本件発明8と先願方法発明とを対比する。 先願方法発明の「ダイレクトブロー成形」、「内面螺旋条付き容器」、「製造方法」は、それぞれ、本件発明5を引用する本件発明8における「ブロー成形」、「合成樹脂製の成形品」、「製造する成形方法」に相当する。 先願方法発明の「パリソン形成ダイ」、「突条を内面に有した」、「チューブ状のパリソン」は、それぞれ、本件発明5を引用する本件発明8における「ダイスヘッド」、「内筒面に1以上の縦溝を設けた」、「略中空円筒形状のパリソン」に相当し、先願方法発明の「パリソン形成工程」が、「成形材料を加熱溶融させ」て「押し出すステップ」といえることは明らかである。 先願方法発明の「パリソン形成ダイから押し出されて垂れ下がった前記パリソンを挟持部で挟持する挟持工程」は、本件発明5を引用する本件発明8における「押し出されたパリソンの端部を把持」する工程部分に相当する。 先願方法発明の「挟持工程で前記パリソンを挟持した状態のまま前記パリソンを前記突条とともに周方向へ捻る捻り工程」は、本件発明5を引用する本件発明8における「前記パリソンの押し出し方向に平行な軸を回転軸として所定の角度分だけ前記パリソンを捻回する捻回ステップ」に相当し、先願方法発明においても「パリソンの端部の外筒面を一対のチャックで挟持」しているといえる。 先願方法発明の「螺旋条形成工程後のパリソンを、一対の分割型が当該パリソンを挟み込むことにより、パリソンの下側が封止され、内側から膨らませて容器を形成する容器形成工程」は、本件発明5を引用する本件発明8における「捻回されたパリソンを金型で挟み込んでブロー成形する成形ステップ」に相当する。 先願方法発明の「一対の分割型」は、本件発明5を引用する本件発明8における「対向させた合わせ面が隔離接近する少なくとも2つに分割された金型」に相当し、先願方法発明においても、一対の分割型が、ダイから垂れ下がった状態のパリソンを挟み込んでいるから、先願方法発明の「容器形成工程」は、本件発明5を引用する本件発明8における「成形ステップにおいては、その端部の把持が解除されたパリソンをブロー成形」しているといえるし、さらに、前記分割型は、「対向させた合わせ面が隔離接近する少なくとも2つに分割された金型」であるといえる。 そうすると、本件発明5を引用する本件発明8と先願方法発明は、 「ブロー成形法により合成樹脂製の成形品を製造する成形方法であって、 成形材料を加熱溶融させた略中空円筒形状のパリソンを、その内筒面に1以上の縦溝を設けてダイスヘッドから下方へ押し出す押出ステップと、 前記押し出されたパリソンの端部を把持して、前記パリソンの押し出し方向に平行な軸を回転軸として所定の角度分だけ前記パリソンを捻回する捻回ステップと、 前記捻回されたパリソンを金型で挟み込んでブロー成形する成形ステップとを含み、 前記押出ステップにおいては、前記パリソンを連続的に押し出し、 前記成形ステップにおいては、その端部の把持が解除されたパリソンをブロー成形し、 前記捻回ステップにおいては、前記パリソンの端部の外筒面を一対のチャックで挟持し、 前記金型は、対向させた合わせ面が離隔接近する少なくとも2つに分割された金型である、 ブロー成形方法。」 で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 捻回ステップに関し、本件発明5を引用する本件発明8は、「前記パリソンの押し出し速度に対応させてその端部が把持されたパリソンを前記回転軸方向に沿って下方へ移動する」と特定するのに対し、先願方法発明は、この点を特定しない点。 <相違点3> 捻回ステップに関し、本件発明5を引用する本件発明8は、「前記チャックが解除されたパリソンにおいて前記チャックにより挟持されたことにより形成された略平らな平面が、前記合わせ面を含む平面と略平行になるように、その端部が把持されたパリソンの捻回を停止する」と特定するのに対し、先願方法発明はこの点を特定しない点。 事案に鑑み、相違点3から検討する。 相違点3は、上記5における相違点1と実質的に同じであり、上記5での検討のとおり、実質的な相違点である。 そうすると、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明5を引用する本件発明8は、先願方法発明、すなわち、先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。 本件発明6を引用する本件発明8は、本件発明5を引用する本件発明8をさらに請求項6に記載の事項で限定するものであって、本件発明6を引用する本件発明8と先願方法発明とを対比すると、少なくとも上記相違点3で相違することになるから、本件発明6を引用する本件発明8は、本件発明5を引用する本件発明8と同様に、先願方法発明、すなわち、先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。 7 まとめ 以上のとおりであるから、上記取消理由において採用しなかった申立人1及び申立人2の特許異議の申立て理由には、理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1、3ないし7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。 本件特許の請求項2及び8に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項2及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2020-07-17 |
出願番号 | 特願2015-142192(P2015-142192) |
審決分類 |
P
1
651・
161-
ZC
(B29C)
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最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | ▲高▼村 憲司 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 植前 充司 |
登録日 | 2019-05-31 |
登録番号 | 特許第6533428号(P6533428) |
権利者 | ジェーシーシー株式会社 |
発明の名称 | ブロー成形装置およびブロー成形方法 |
代理人 | 岩谷 龍 |
代理人 | 安田 幹雄 |
代理人 | 上田 ▲茂▼ |
代理人 | 岩谷 龍 |
代理人 | 上田 ▲茂▼ |