ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
---|---|
管理番号 | 1366835 |
審判番号 | 不服2018-17472 |
総通号数 | 251 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-28 |
確定日 | 2020-10-07 |
事件の表示 | 特願2014-129754号「発光モジュール及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月19日出願公開、特開2015-12292号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)6月25日(パリ条約による優先権主張 2013年6月27日 台湾、2014年3月27日 台湾)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成29年 6月22日 :手続補正書 平成30年 3月12日付け:拒絶理由通知 平成30年 6月15日 :意見書及び手続補正書 平成30年 8月31日付け:拒絶査定(謄本送達日 平成30年9月 4日) 平成30年12月28日 :審判請求及び手続補正書 令和元年12月17日付け:拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由」とい う。) 令和2年 3月23日 :意見書及び手続補正書(以下、この手続補正 書による手続補正を「本件補正」という。) 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである(なお、A?Hは、本願発明を分説するために当審で付したものである。)。 「A 端面、第一表面及び第二表面を有し、前記第一表面と前記第二表面が異なる方向に向いている透明基板と、 B 前記第一表面上に固定された複数個の発光ダイオードチップと、 C 前記透明基板と前記複数個の発光ダイオードチップとの間に設けられ、少なくとも2つの透明粘着単層からなる透明粘着積層と、 D 前記複数個の発光ダイオードチップを互いに電気接続させる電気線路と、 E 前記第一表面上に設けられ、前記複数個の発光ダイオードチップと前記電気線路とをほぼ完全に包囲する透明カプセルと、 F 前記端面に接近し、前記第一表面又は前記第二表面に接着され、かつ前記電気線路によって前記複数個の発光ダイオードチップに電気接続されることにより、発光ダイオードモジュールの2つの電源入力端を構成する2つの電極板と、を含み、 G 前記透明粘着単層のうち少なくとも一つが蛍光粉末を含む、 H ことを特徴とする発光ダイオードモジュール。」 第3 拒絶の理由 当審拒絶理由のうち理由3は、次のとおりのものである。 本願発明は、その最先の優先日前の出願であって、その最先の優先日前に出願公開がされた特願2012-28571号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明(以下「先願発明」という。)と同一であり、しかも、この出願の発明者がその先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 先願.特願2012-28571号(特開2013-165228号) 第4 先願の記載及び先願発明 (1)先願には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を光源とする発光モジュール、ランプ及び照明装置に関する。」 イ 「【0016】 [2.各部構成] <LEDモジュール> (構成) 図1?3に示すように、LEDモジュール5は、実装基板21、複数のLED3、封止体23、波長変換部材28を備える。 【0017】 LED3は、実装基板21における2つの主面の一方に配されている。ここで、LED3からの出射光における出射方向のうち、実装基板21側へ向かう出射方向を後方、実装基板21と反対側へ向かう出射方向を前方と定義する。すなわち、実装基板21におけるLED3が配されている側の主面である一方の主面は、前方側の主面ということができる。以下の説明において、『実装基板における前方側の主面』を単に『実装基板の前面』と記載する。 【0018】 実装基板21は、透光性を有する材料により構成されている。よって、LED3から発せられた光は、前方側および後方側へ出射させることができる。実装基板21として用いることが可能な材料としては、例えば、ガラス、アルミナ、サファイア、樹脂等が挙げられる。なお、本実施形態におけるLED3は、青色光を発光色とするものが用いられている。 【0019】 図4,5は、LEDモジュール5の構造を示す図である。図4(a)は、LEDランプ100の前方側から見たLEDモジュール5の平面図であり、図4(b)は、図4(a)におけるB-B’線矢視断面図である。また、図5は、図4(a)におけるC-C’線矢視断面図である。なお、図4(b)および図5の断面図において、図示を省略した部分がある。 【0020】 図4(a)に示すように、実装基板21は平面視形状が矩形状をしている。また、実装基板21におけるLED3が配されている側の主面である実装基板21の前面には、LED3を電気的に接続(直列接続又は/及び並列接続である。)にしたり、回路ユニット15と接続したりするための配線パターン22や、LED3の接続端子と接続される導電ランド(不図示)が形成されている。LEDランプ100では、LED3から出射された光が実装基板21を透過することにより、後方側へも光を出射させることとしている。このため、本実施形態においては、配線パターン22や導電ランドも透光性の材料で構成されることが望ましく、このような透光性の材料としては、例えば酸化インジウムスズ(ITO)等がある。 【0021】 図4(b)に示すように、LED3は実装基板21に複数実装されており、間隔(例えば、等間隔である。)をおいて、実装基板21の長手方向に沿って直線状に2列に配置されている。LED3の個数、配列等は、LEDランプ100に要求される輝度等により適宜決定される。 前方側の波長変換部材としての封止体23は、LED3からの出射光の波長を変換する波長変換機能、およびLED3への空気や水分の侵入を防止する機能を有する。本実施形態の封止体23は、1列分のLED3を被覆している。 【0022】 封止体23は、主に透光性材料で構成されており、封止体23を構成する透光性材料としては、例えばシリコーン樹脂を利用することができる。また、封止体23には、青色光を黄色光に変換する蛍光体粒子が混入されている。これにより、LED3から出射された青色光と、蛍光体粒子により波長変換された黄色光との混色により生成された白色光がLEDモジュール5(LEDランプ100)から発せられることとなる。 【0023】 図4(a),(b)に示すように、実装基板21には、配線パターン22における給電端子22a,22bの周辺に貫通孔26が形成されている。貫通孔26は、回路ユニット15からLED3へ給電するためのリード線49,51(図1?3)を挿通させるためのものである。リード線49,51の一端が、半田24(図1,2)により配線パターン22の給電端子22a,22bと接続されることにより、LEDモジュール5と接続される。リード線49,51の他端は、図2に示すように、回路ユニット15に接続されている。また、実装基板21の略中央に設けられている貫通孔25は、実装基板21と棒状部材17の凸部17a(図2,3)との結合に用いられるものである。 【0024】 本実施形態におけるLEDモジュール5には、図5に示すように、さらに、LED3から後方側へ出射した青色光を黄色光に変換する、後方側に設けられた波長変換部材としての波長変換部材28が設けられている。波長変換部材28は、実装基板21におけるLED3が配されている側の主面である、実装基板21の前面21aに形成された凹部21bに充填されてなるものである。波長変換部材28は封止体23と同様に、シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる。 (・・・途中省略・・・) 【0032】 そして、図6(c)に示すように、不図示のダイアタッチ材(例えば、シリコーン系接着剤である。)により波長変換部材28にLED3を固着させ、さらに、LED3の前方側に封止体23を設けることによりLEDモジュール5が完成する。」 (・・・途中省略・・・) 【0052】 図7は、第2の実施形態に係るLEDモジュール61の構造を示す断面図であり、図4(a)におけるC-C’線矢視断面図(図5)と対応するものである。以下の説明において、第1の実施形態と同様の構成には同じ符号を付して説明を省略する。 図7に示すように、第1の実施形態に係るLEDモジュール5との違いは、LED3と後方側に設けられた波長変換部材28との間に、さらに、透光性を有する無機材料層63が介挿されている点である。無機材料層63は、ダイアタッチ材の浸み込みを防止する機能を有するものである。したがって、無機材料層63は封止性に優れる材料であることが望ましい。また、LED3が発した光を後方側へ透過させる必要があるため、透光性を有する必要がある。封止性に優れ、かつ、透光性を有する材料としては、例えば、ガラス材料、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)等が挙げられる。」 ウ 「【0082】 図11は、変形例(7-1)に係るLEDモジュールの構造を示す断面図である。図11(a)に示すように、実装基板65の前面に波長変換部材67が設けられている。波長変換部材67は、複数のLED3と一対一対応するように複数設けられている。また、個々の波長変換部材67の前方側を覆うように、無機材料層69が形成されている。このようにすることで、第2の実施形態と同様に、LED3を実装する際に用いるダイアタッチ材の波長変換部材67への浸み込みを防止することができる。 【0083】 図11(a)に示すLEDモジュールでは、実装基板65の前方側全体を無機材料層69で覆うこととしたが、これに限られない。図11(b)に示すLEDモジュールのように、無機材料層71を平面視においてダイアタッチ材と重なる領域のみに形成することとしてもよい。」 エ 図1、4及び11は次のとおりである。 オ 上記アないしウの記載を踏まえて上記エの図11を見ると、下記各点が見てとれる。 (ア)透光性を有する(【0018】)実装基板65が、実装基板の前面(【0017】)、後面、側面を有し、前記前面と後面が異なる方向に向いている点。 (イ)複数個のLED3が、実装基板の前面に配されている(【0020】)点。 (ウ)実装基板65の前面にシリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材67が設けられ、波長変換部材67の前方側を覆うように、透光性を有する無機材料層69が形成され(【0024】、【0052】、【0082】)、前記無機材料層71を、LED3を固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材(【0032】、【0082】)と重なる領域に形成した【0083】)、前記波長変換部材67、前記ダイアタッチ材及び前記無機材料層69が、透光性を有する実装基板65と複数個のLED3の間に設けられている点。 (エ)配線パターン22が、複数個のLED3を電気的に接続(【0020】)する点。 (オ)透光性材料で構成されている(【0022】)封止体23が、実装基板の前面に設けられ、複数個のLED3と配線パターン22とをほぼ完全に包囲する点。 (カ)給電端子22a,22bが、実装基板の前面の両側面の近傍に形成されるとともに、配線パターン22によって複数個のLED3に電気接続されることにより、LEDモジュール(【0082】)の2つの電源入力端を構成する点。 (2)先願発明 上記(1)によれば、先願には下記の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる(aないしhは、構成AないしHに対応させて当審が付した。) 「a 実装基板の前面、後面、側面を有し、前記前面と後面が異なる方向に向いている透光性を有する実装基板と(上記「(1)」「オ」「(ア)」)、 b 前記実装基板の前面に配されている複数個のLEDと(上記「(1)」「オ」「(イ)」)、 c 前記透光性を有する実装基板と前記複数個のLEDの間に設けられている、シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材、LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材及び透光性を有する無機材料層と(上記「(1)」「オ」「(ウ)」)、 d 前記複数個のLEDを電気的に接続する配線パターンと(上記「(1)」「オ」「(エ)」)、 e 前記実装基板の前面に設けられ、前記複数個のLEDと前記配線パターンとをほぼ完全に包囲する透光性材料で構成されている封止体と(上記「(1)」「オ」「(オ)」)、 f 前記実装基板の前面の両側面の近傍に形成されるとともに、前記配線パターンによって前記複数個のLEDに電気接続されることにより、LEDモジュールの2つの電源入力端を構成する2つの給電端子と、を含み(上記「(1)」「オ」「(カ)」)、 g 前記波長変換部材は、シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる(【0024】)、 h LEDモジュール(【0082】)。」 第5 本願発明と先願発明との対比・判断 (1)対比 本願発明と先願発明とを対比する。 ア 先願発明の「実装基板の前面、後面、側面を有し、前記前面と後面が異なる方向に向いている透光性を有する実装基板」(構成a)は、本願発明の「端面、第一表面及び第二表面を有し、前記第一表面と前記第二表面が異なる方向に向いている透明基板」(構成A)に相当する。 イ 先願発明の「前記実装基板の前面に配されている複数個のLED」(構成b)は、本願発明の「前記第一表面上に固定された複数個の発光ダイオードチップ」(構成B)に相当する。 ウ 先願発明の「前記透光性を有する実装基板と前記複数個のLEDの間に設けられている、シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材、LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材及び透光性を有する無機材料層」(構成c)は、先願発明の「シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材」(以下「H層」という。)、「LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材及び透光性を有する無機材料層」(以下「M層」という。)が、いずれも透明層を成すものであることは明らかであるから、先願発明のH層及びM層それぞれが本願発明の「透明粘着単層」と「透明単層」の点で一致するとともに、先願発明のH層及びM層の両者からなる層が本願発明の「透明粘着積層」と「透明積層」の点で一致する。 したがって、先願発明の構成cは、本願発明の「前記透明基板と前記複数個の発光ダイオードチップとの間に設けられ、少なくとも2つの透明粘着単層からなる透明粘着積層」(構成C)と、「前記透明基板と前記複数個の発光ダイオードチップとの間に設けられ、2つの透明単層からなる透明積層」(以下「構成C´」という。)の点で一致する。 エ 先願発明の「前記複数個のLEDを電気的に接続する配線パターン」(構成d)は、本願発明の「前記複数個の発光ダイオードチップを互いに電気接続させる電気線路」(構成D)に相当する。 オ 先願発明の「前記実装基板の前面に設けられ、前記複数個のLEDと前記配線パターンとをほぼ完全に包囲する透光性材料で構成されている封止体」(構成e)は、本願発明の「前記第一表面上に設けられ、前記複数個の発光ダイオードチップと前記電気線路とをほぼ完全に包囲する透明カプセル」(構成E)に相当する。 カ 先願発明の「前記実装基板の前面の両側面の近傍に形成されるとともに、前記配線パターンによって前記複数個のLEDに電気接続されることにより、LEDモジュールの2つの電源入力端を構成する2つの給電端子」(構成f)は、本願発明の「前記端面に接近し、前記第一表面又は前記第二表面に接着され、かつ前記電気線路によって前記複数個の発光ダイオードチップに電気接続されることにより、発光ダイオードモジュールの2つの電源入力端を構成する2つの電極板」(構成F)に相当する。 キ 先願発明の「前記波長変換部材は、シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる」(構成g)点は、本願発明の「前記透明粘着単層のうち少なくとも一つが蛍光粉末を含む」(構成G)ことと「前記透明単層のうち一つが蛍光粉末を含む」(以下「構成G´」という。)の点で一致する。 ク 先願発明の「LEDモジュール」(構成h)は、本願発明の「発光ダイオードモジュール。」(構成H)に相当する。 ケ 以上アないしクによれば、本願発明と先願発明は、 「A 端面、第一表面及び第二表面を有し、前記第一表面と前記第二表面が異なる方向に向いている透明基板と、 B 前記第一表面上に固定された複数個の発光ダイオードチップと、 C´ 前記透明基板と前記複数個の発光ダイオードチップとの間に設けられ、2つの透明単層からなる透明積層」と、 D 前記複数個の発光ダイオードチップを互いに電気接続させる電気線路と、 E 前記第一表面上に設けられ、前記複数個の発光ダイオードチップと前記電気線路とをほぼ完全に包囲する透明カプセルと、 F 前記端面に接近し、前記第一表面又は前記第二表面に接着され、かつ前記電気線路によって前記複数個の発光ダイオードチップに電気接続されることにより、発光ダイオードモジュールの2つの電源入力端を構成する2つの電極板と、を含み、 G´ 前記透明単層のうち一つが蛍光粉末を含む、 H 発光ダイオードモジュール。」 の点で一致するとともに、下記点で一応相違すると認められる。 (相違点) 透明基板と複数個の発光ダイオードチップとの間に設けられる層が、本願発明では「2つの透明粘着単層からなる透明粘着積層」であるのに対して、先願発明の「シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材」及び「LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材及び透光性を有する無機材料層」は、「粘着」単層とは特定されない点。 (2)判断 ア 先願発明の「透光性を有する無機材料層」は粘着性を有しないが、LEDを固着させる必要があることは明らかであるところ、LEDと「透光性を有する無機材料層」の間には「LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材」があり、当該「シリコーン系接着剤であるダイアタッチ材」が透明であることも明らかである。 ここで、「LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材」は単なる接着剤であって、先願の発明の詳細な説明及び図面を見ても、当該「ダイアタッチ材」単独で「層」をなすほどの厚みを有するとされないものであるから、「LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材」及び「透光性を有する無機材料層」を合わせたものがLEDを固着させることのできる透明な粘着性を有する単層であるとみなすことができ、当該「LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材」及び「透光性を有する無機材料層」を合わせたものが本願発明の「透明粘着単層」に相当すると認められる。 イ 先願発明の「シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材」は粘着性を有するとされないところ、「波長変換部材」を実装基板に設ける以上何らかの粘着(接着)機能が必要があることは明らかである。 そして、「シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材」を基板に設けるために、当該「波長変換部材」自体が粘着(接着)機能を有することは、後記周知文献1?3に記載されているとおり周知の技術手段であり、また、当該「波長変換部材」に接着材を付加することは例を挙げるまでもなく周知の技術手段である。 したがって、先願発明の「シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材」は、実質的には実装基板に設けるために「波長変換部材」自体が粘着(接着)機能を有するか、あるいは、「波長変換部材」に接着材を付加した、透明な粘着性を有する単層であるといえるから、本願発明の「透明粘着単層」に実質的に相当すると認められる。 ウ 上記アでの検討によれば、先願発明の「LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材」及び「透光性を有する無機材料層」を合わせたものが本願発明の「透明粘着単層」に相当し、また、上記イでの検討によれば、先願発明の「シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材」が本願発明の「透明粘着単層」に実質的に相当するから、先願発明の「LEDを固着させるシリコーン系接着剤であるダイアタッチ材」及び「透光性を有する無機材料層」と、「シリコーン樹脂等の透光性材料に蛍光体粒子が混入されてなる波長変換部材」をあわせたものが、本願発明の「透明粘着積層」に実質的に相当するといえる。 したがって、上記相違点は実質的な相違点ではない。 エ 以上の検討によれば、本願発明は、先願発明と実質的に同一の発明というべきである。 (3)周知文献 ア 周知文献1(特開2001-24238号公報) (ア)周知文献1には下記の記載がある。 「【0018】また、第1の発光ダイオード素子31は、その裏面側に設けた蛍光材含有接着層40を介してカソード電極23aの上面に接着されている。この蛍光材含有接着層40は、図3に示したように、絶縁性の接着剤41をベースとしてその中に適当量の蛍光材42を均一に分散させたものである。」 (イ)上記(ア)によれば、周知文献1には下記の事項が記載されていると認められる。 「発光ダイオード素子は、その裏面側に設けた蛍光材含有接着層を介して接着する点。」 イ 周知文献2(特開2002-280615号公報) (ア)周知文献2には下記の記載がある。 「【0017】一方、発光素子チップ41の下面側に設けられる接着剤層42は、図3に示すように、透明性の接着剤50をベースとした中に適当量の蛍光剤51と、この蛍光剤51よりも粒径が大きなガラスビーズ52と、光拡散剤18を混入し、均一に分散させたものである。この接着剤層42を基板12の上面略中央部に適宜手段で厚く塗布し、その上に発光素子チップ41を載置する。接着剤50が硬化することで、発光素子チップ41の下面が基板12の上面に固定される。」 (イ)上記(ア)によれば、周知文献2には下記の事項が記載されていると認められる。 「発光素子チップの下面側に設けられる接着剤層は、透明性の接着剤をベースとした中に適当量の蛍光剤とガラスビーズと光拡散剤を混入し、均一に分散させたもので、接着剤が硬化することで、発光素子チップの下面が基板の上面に固定する点。」 ウ 周知文献3(特開2009-267289号公報) (ア)周知文献3には下記の記載がある。 「【0036】 本実施形態に係る発光装置20は、図1、2に示すように、ガラスエポキシ樹脂などの樹脂からなる基板21上に配線電極も兼ねた金属膜からなる対をなした反射層22A、22Bを設け、更に、その反射層22A上の一部分に樹脂に蛍光体を含有した第1の蛍光体層24を設け、この第1の蛍光体層24をダイボンドペーストとして用いて窒化ガリウム系化合物半導体なる発光素子25を反射層22A上の所定の位置に固定し、固定した発光素子25と配線電極を兼ねている一対の反射層22A、22Bをボンディングワイヤ26A、26Bで接続し、そして、蛍光体を含有した透光性の樹脂封止体27でもって発光素子25を封止した構成をなしている。」 (イ)上記(ア)によれば、周知文献3には下記の事項が記載されていると認められる。 ・「基板上に配線電極も兼ねた金属膜からなる対をなした反射層を設け、更に、その反射層上の一部分に樹脂に蛍光体を含有した第1の蛍光体層を設け、この第1の蛍光体層をダイボンドペーストとして用いて発光素子を反射層上の所定の位置に固定する点。」 (4)請求人の主張 ア 請求人は、令和2年3月23日提出の意見書の「【意見の内容】」「3.拒絶理由に対して」「(1)進歩性と拡大先願について」において、 「補正後の請求項1の発明は、少なくとも『前記透明基板と前記複数個の発光ダイオードチップとの間に設けられ、少なくとも2つの透明粘着単層からなる透明粘着積層を含み、前記透明粘着単層のうち少なくとも一つが蛍光粉末を含む』いう技術的特徴を有します。このような技術的特徴によって、本願明細書の段落【0029】、【0031】に記載されたように、蛍光粉末を含まない透明接着単層でよりよい接着効果を実現し、蛍光粉末を含む透明接着単層で青色光の漏れを低減する効果が得られます。 一方、引用文献の何れにもこのような技術構成が開示または示唆されていません。従って、当業者であっても、各引用文献の開示内容、または異なる引用文献の組み合わせから本願発明を想到することはできないと思われます。」 と主張する。 イ しかしながら、上記(2)で検討したとおりであるから採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願に係る上記発明をした者と同一の者ではなく、また、本願の出願の時にその出願人が先願の出願人と同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2020-04-22 |
結審通知日 | 2020-04-28 |
審決日 | 2020-05-20 |
出願番号 | 特願2014-129754(P2014-129754) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
WZ
(H01L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大和田 有軌 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 松川 直樹 |
発明の名称 | 発光モジュール及びその製造方法 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |