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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A45D
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A45D
管理番号 1366993
異議申立番号 異議2020-700391  
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-05 
確定日 2020-10-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6632820号発明「フェイスパッドの製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6632820号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯の概略
特許第6632820号の請求項1?3に係る特許(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は,概ね,次のとおりである。すなわち,平成27月7月1日に出願され(特願2015-132897号),令和元年12月20日に特許権の設定登録がされ,令和2年1月22日に特許掲載公報が発行されたところ,これに対し,令和2年6月5日に特許異議申立人江川香代より,特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?3に係る発明(以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って,「本件発明1」などという。)は,特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
【請求項1】
(a)可撓性及び伸縮性を有する第1シート体の一方の面に,非透水性のフィルムを形成する工程と,
(b)可撓性及び伸縮性を有する第2シート体の一方の面に,非透水性のフィルムを形成する工程と,
(c)前記工程(a)で形成した前記フィルムの表面に,クリーム状又はジェル状の美容材を塗布する工程と,
(d)前記工程(c)の後,前記工程(a)及び(b)で形成した前記フィルムの間に前記美容材が挟まれるように,前記第1シート体と前記第2シート体とを重ねる工程と,
(e)前記工程(d)で前記美容材を挟んだ前記第1シート体及び前記第2シート体を所定形状に切り抜く工程と,
を備える,フェイスパッドの製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)及び(b)では,前記一方の面に,前記フィルムとしてポリウレタンフィルムを接着剤で貼着する,請求項1に記載のフェイスパッドの製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)及び(b)では,溶融したポリエチレンを前記一方の面に塗布し,塗布したポリエチレンを乾燥させることにより,前記フィルムとしてポリエチレンフィルムを形成する,請求項1に記載のフェイスパッドの製造方法。

第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は,甲第1号証?甲第4号証(以下,証拠の番号に従って「甲1」などという。)を提出し,請求項1?3に係る特許は,下記の理由により取り消すべき旨主張している。
1 請求項1及び2に係る特許は,特許法29条1項の規定に違反してなされたものである。すなわち,本件発明1及び2は,本件特許の出願前に製造販売されていた甲1に係る商品(以下「甲1商品」という。)の製造方法と同一であるから,特許法29条1項2号に該当する。
2 請求項1?3に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。すなわち,本件発明1及び2は,甲1商品及び甲2?4に係る発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明3は,甲1商品,甲2?4及び周知技術に係る発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(証拠方法)
甲1:刊行物等提出書(本件特許に係る出願(特願2015-132897号)に関し,審査の過程で提出されたもの)
甲2:特開2012-51847号公報
甲3:特開2006-14857号公報
甲4:特開2004-209074号公報

第4 特許異議申立ての理由についての判断
1 甲1について
(1) 甲1に記載された事項
甲1は,本件特許に係る出願(特願2015-132897号)に関し,審査の過程で,平成31年3月12日に提出された「刊行物等提出書」であって,「商品名「濃密アイゾーンケアパック」に関する報告書」(資料1?12)の提出に係る書類であるところ,甲1には以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与した。以下同様。)。
・「【提出する刊行物等】 商品「濃密アイゾーンケアパック」に関する報告書」
・「【提出の理由】 特願2015-132897号(以下,「本願」と称する。)に係る発明は,特許請求の範囲における請求項1?3に記載された下記内容の発明である。 記〔書類名〕特許請求の範囲〔請求項1〕クリーム状又はジェル状の美容材を,可撓性及び伸縮性を有するシート体に担持された2枚のフィルムの間に保持したフェイスパッド。〔請求項2〕 一方の面にフィルムを貼着した可撓性及び伸縮性を有する2枚のシート体と,互いの前記一方の面を対向させた前記2枚のシート体の間に保持されるクリーム状又はジェル状の美容材と,を備えるフェイスパッド。〔請求項3〕 前記フィルムは,15μm程度の厚さの伸縮性を有するポリウレタンフィルムである請求項1又は2に記載のフェイスパッド。 一方,提出した報告書は,「濃密アイゾーンケアパック」なる商品名にて販売されている化粧品に関するものである(資料1,2参照)。この化粧品は,多彩な美容成分を含むクリームを二枚のシートの間に保持させた二枚一組の目もと用パックシートであり,合計六組のパックシートを内包させたプラスチックケースを包装用袋に封入させた商品形態で販売されている(資料3,4参照)。 又,前記化粧品は,前記プラスチックケースから二枚一組のパックシートを取り出した後,各シートを個々に分離してそれぞれを左右の目もとに貼り付ける使用形態となされている(資料5?7参照)。 更に,前記化粧品を構成する各シートは,不織布からなるシート体の片側面にポリウレタン製のフィルムを展着した二層構造を有し(資料8,9参照),前記フィルムが積層された面が合わせ面(即ち,クリームが担持される面)となされている。 なお,前記シートは,可撓性及び伸縮性を有し(資料10,11参照),当然,前記シートを構成するシート体及びフィルムも可撓性及び伸縮性を有する。即ち,前記フェイスパッドは,クリーム状の美容材を,可撓性及び伸縮性を有するシート体に担持された2枚のフィルムの間に保持した化粧品(フェイスパッド)であり,又,一方の面にフィルムを貼着した可撓性及び伸縮性を有する2枚のシート体と,互いの前記一方の面を対向させた前記2枚のシート体の間に保持されるクリーム状又はジェル状の美容材と,を備える化粧品(フェイスパッド)でもあることから,本願の請求項1,2に係る発明の内容を開示する商品といえる。 そして,前記化粧品は,2015年3月11日に購入したものであり(資料12参照),従って,前記化粧品につき,本願の出願日(2015年7月1日)以前に製造され,流通していたことは明らかである。 してみれば,本願の請求項1,2に係る発明は,その特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であり,又,日本国内又は外国において公然実施をされた発明であると判断すべきであり,特許法第29条第1項各号に該当し,特許を受けることができない。 又,シート体を構成するフィルムの素材や厚みの選択は,商品開発にあたり当業者が行う通常の作業であり,明細書の記載を参酌してもこの点において特筆すべき技術的困難性は見受けられない。 これより,本願の請求項3に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
・「


(2) 引用発明について
ア 認定事実
(ア) 甲1商品に関する経緯について
資料1,2は,「濃密アイゾーンケアパック」という名称の商品(甲1商品)のパッケージの写真であるところ,パッケージの表面(資料1)の中央に「Rich EYE ZONE CARE PACK 濃密アイゾーンケアパック」との記載,裏面(資料2)の上方に「DHC 濃密アイゾーンケアパック(クリーム状美容シート)」との記載,裏面の下端に「22624 02J01」との記載がある。
そして,資料12は,2015年3月11日付けの領収書であるところ,上端に「DHC ゆめタウン高松直営店」との記載,中央に商品名として「22624 濃密アイゾーンケアパック」との記載があることから,甲1商品を購入した際の領収書であることがわかり,甲1商品は,本件特許の出願前である2015年(平成27年)3月11日に販売されていたことがわかる。
(イ) 甲1商品の構成について
a 資料2からすると,甲1商品は,「DHC 濃密アイゾーンケアパック(クリーム状美容シート)」で,「多彩な美容成分を含むクリームを挟んだ,2枚1組の目もと用パックシート」で,「目のまわりに密着させ(る)」ことができる所定の形状を有するものであるから,所定の形状の2枚のシートを備え,当該2枚のシートの間に美容成分を含むクリームが挟まれた構造をもつ,目もと用パックシートであることがわかり,資料1からすると,それが専用ケースとともにパッケージ内に収容されていることがわかる。
b 資料3には,甲1商品のパッケージと専用ケース(内部に目もと用パックシートがあり,ケース表面にRich EYE ZONEの文字が見える。)の写真が掲載され,資料4?6,8?11の写真にあるような目もと用パックシートがこの専用ケース内に収容されていると解されるが,この専用ケース及び目もと用パックシートが,2015年(平成27年)3月11日購入の当該甲1商品のパッケージから実際に取り出されたものであるかは,資料3?11からは明らかでない。
よって,資料3?11からは,当該甲1商品に実際に収納された目もと用パックシートの詳細な構造はわからない。
仮に,2015年(平成27年)3月11日購入の当該甲1商品のパッケージから,実際に取り出されたものであるとしても,掲載された写真は不鮮明で,これらの写真から目もと用パックシートの詳細な構造を理解することは困難である。資料8には,目もと用パックシートの拡大写真と解されるものが掲載され,矢印とともに美容材,フィルム,シートなる説明書きがあり,「前記化粧品を構成する各シートは,不織布からなるシート体の片側面にポリウレタン製のフィルムを展着した二層構造を有し(資料8,9参照)」と説明されているが(【提出の理由】),掲載された写真からそのような詳細な構造を把握することはできない。
イ 判断
(ア) 甲1商品から,後記(イ)の甲1商品の製造方法に係る発明を認定することができるところ,前記ア(ア)によれば,甲1商品は,遅くとも平成27年3月11日までには,公然と販売されていたものと認められる。 そして,物を生産する方法の発明の実施とは,その方法の使用をする行為(特許法2条2項2号),その方法により生産した物の使用,譲渡等,輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」(同項3号)であるから,甲1商品の製造方法に係る発明は,本件出願前に公然実施された発明であると認められる。
(イ) 前記ア(イ)によれば,甲1商品は,所定の2枚のシートを備え,当該2枚のシートで美容成分を含むクリームを挟んだ構造をもつ,目もと用パックシートであることがわかり,商品の性質からすれば,当該2枚のシートは,可撓性及び伸縮性を有することは技術的に明らかである。 そして,当該構造からすると,工程の詳細や順序は明らかでないが,当該目もと用パックシートを製造する方法には,2枚のシートで美容成分を含むクリームを挟む行程と2枚のシートを所定の形状にする工程があるものと認められる。 そうすると,甲1商品の製造方法に係る発明は,以下のとおりと認められる(以下「甲1発明」という。)。
(甲1発明)
「可撓性及び伸縮性を有する2枚のシートで美容成分を含むクリームを挟む工程と,
可撓性及び伸縮性を有する2枚のシートを所定形状にする工程と,を備える,目もと用パックシートを製造する方法。」

2 甲2?4について
(1) 甲2に記載された事項
・「【請求項1】 重なり合う二枚のシート状の支持体における合わせ面間に皮膚外用剤が挟み込まれてなり,使用時に重なり合う二枚の支持体を分離することによって,分離された各支持体それぞれにおいて,皮膚外用剤が露出した貼付面が形成される外用貼付剤であって,
この外用貼付剤は,
皮膚外用剤の25℃における粘度が,5000?500000mPa・s,
重なり合う二枚の支持体における合わせ面間に挟み込まれた皮膚外用剤の担持量が,合わせ面の面積に対して100?5000g/m^(2)であり,
15?30℃の温度条件下,重なり合う二枚の支持体がT形剥離されて分離された際に,分離された各支持体において,前記担持量の40?60%の皮膚外用剤が担持された貼付面が形成されることを特徴とする外用貼付剤。」
・「【請求項3】 請求項1又は2に記載の外用貼付剤において,
支持体が,布基材の片側面に高分子材料からなるフィルムを積層した積層シートであり,この積層シートにおける布基材側の面が合わせ面となる外用貼付剤。」
・「【0001】
本発明は,皮膚表面に貼付して使用される外用貼付剤に関する。」
・「【0012】
本発明貼付剤に用いられる支持体としては,皮膚外用剤を担持することができるシート状のものであれば特に限定されるものではない。具体的に例えば,既知の天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材,又は高分子材料からなるシートを挙げることができる。
【0013】
天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材としては,例えば,紙,布,タオル,毛布,編み物,キルト等の不織布或いは織布等を挙げることができる。」
・「【0015】
人造繊維としては,例えば,人絹糸,スフ,ビスコース,ベンベルグ等の再生繊維,又はポリアミド系繊維,ポリエステル系繊維,ポリアクリル系繊維,ポリビニール・アルコール系繊維,ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維,ポリウレタン系繊維,ポリ塩化ビニリデン系繊維,ポリ塩化ビニル系繊維,ポリアクリロニトリル系繊維,ポリエチレン系繊維,ポリプロピレン系繊維等の合成繊維,或いは酢酸人造繊維などのように天然物質と合成物質とを共重合して製造した半合成繊維等が挙げられる。
【0016】
一方,高分子材料からなるシートとしては,例えば,ポリウレタン,ポリエチレン,エチレン‐酢酸ビニル共重合体,ポリ塩化ビニル,ポリブタジエン,ポリプロピレン,セロファン,ポリクロロプレン,ポリアミノ酸,ニトリルゴム,ブチルゴム及びシリコンゴムなどの高分子材料を薄く形成したシートを適宜選択して用いることができる。
【0017】
なお,前記天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材においては,皮膚外用剤の投錨性に優れ,風合いや使用感が良好となる点において利点があり,一方,前記高分子材料からなるシートにおいては,皮膚外用剤の染み出しを抑制することができる点において利点がある。これより,本発明貼付剤においては,天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材の片側面に高分子材料をラミネートした積層シートを用い,この積層シートにおける布基材側の面を合わせ面とすることが好ましい。」
・「【0053】
<本発明第一貼付剤>
図1に,本発明の外用貼付剤の一実施形態を示す。この外用貼付剤1は,重なり合う二枚のシート状の支持体2(2a,2b)における合わせ面間に皮膚外用剤3が挟み込まれたものであり(図1(a)参照),使用時に重なり合う二枚の支持体2(2a,2b)を分離することによって(図1(b)参照),分離された各支持体2(2a,2b)において,皮膚外用剤3が露出した貼付面4が形成されるように構成されたものである(図1(c)参照)。即ち,この外用貼付剤1は,本発明第一貼付剤に相当するものである。【0054】
この外用貼付剤1を製造するにあたっては,一の支持体2aの片側面全面に皮膚外用剤を塗工し,次いで,一の支持体2aに塗工された皮膚外用剤3を覆うようにして他の支持体2bを重ね合わせることによって製造することが,製造工程上の観点から好ましいが,一の支持体2aの片側面及び他の支持体2bの片側面に皮膚外用剤3をそれぞれ塗工し,次いで,各支持体2a,2bに塗工された皮膚外用剤3を対面させるようにして重ね合わせることによっても製造することができる。」
・「【0066】
支持体として,ポリエステル製不織布(10cm×5cm,坪量60g/m^(2),厚さ300μm)の片側面にポリエチレンを厚さ20μmとなるようにラミネート加工したラミネート不織布を2枚用い,前記粘度の異なる皮膚外用剤を各々一の支持体の不織布面側に,担持量500g/m^(2)となるように塗工し,更に,塗工面を覆うようにして他の支持体を重ね合わせることによって粘度の異なる皮膚外用剤を挟み込んでなる外用貼付剤を得た。」
・「【0070】
<皮膚外用剤の担持量についての試験>
前記皮膚外用剤の粘度についての試験と同様にして,25℃における粘度が約10000mPa・sとなるように調整された皮膚外用剤を,一の支持体(前記ラミネート不織布と同様の支持体)の不織布面側に,担持量10?10000g/m^(2)の範囲内となるように塗工し,更に,塗工面を覆うようにして他の支持体を重ね合わせることによって,担持量の異なる皮膚外用剤を挟み込んでなる外用貼付剤を複数種類得た。」
・「


(2) 甲3に記載された事項
・「【請求項1】
表面に凹凸を有する貼付剤用支持体の凹凸面とフェイシングフィルムとの間に粘着層が介在されてなる貼付剤の製造に用いられる貼付剤製造用ロールサンド式塗工機であって,
隙間を隔てて対向配置された一対のローレットロールを有し,該一対のローレットロールのうち一方が前記表面に凹凸を有する貼付剤用支持体シートを前記隙間に導入するとともに前記隙間から導出する支持体ロールとされ,他方が前記フェイシングフィルム用シートを前記隙間に導入するとともに前記隙間から導出するフェイシングフィルムロールとされ,前記隙間に導入された貼付剤用支持体シートの凹凸面とフェイシングフィルム用シートとの間に粘着剤を供給するための粘着剤貯溜槽が設けられ,
前記フェイシングフィルムロールの最外層又は周囲に弾性体層が設けられたことを特徴とする貼付剤製造用ロールサンド式塗工機。」
・「【0001】
本発明は,表面に凹凸を有する貼付剤用支持体に膏体などの粘着剤を塗布して貼付剤を製造するロールサンド式塗工機及び貼付剤の製造方法に関する。」
・「【0050】
図3は,上記のような貼付剤1の製造に好適に用いられる貼付剤製造用ロールサンド式展延機を示す概略構成図であり,図中符号20は本発明の実施形態の貼付剤製造用ロールサンド式塗工機,35はスリッター,45はカッター,51,52,54は搬送用コロ,55はベルトである。
貼付剤製造用ロールサンド式塗工機20は,図3及び図4に示すように隙間を隔てて対向配置された一対のローレットロール22を有している。一対のローレットロール22のうち一方が表面に凹凸を有する貼付剤用支持体シート10aを上記隙間に導入するとともに上記隙間から導出する支持体ロール22aとされ,他方がフェイシングフィルム用シート17aを上記隙間に導入するとともに上記隙間から導出するフェイシングフィルムロール22bとされている。貼付剤用支持体シート10aは,裁断されることにより複数の貼付剤用突起付き支持体10になるものであり,フェイシングフィルム用シート17aは,裁断されることにより複数のフェイシングフィルム17になるものである。」
・「【0055】
上記のような構成の貼付剤製造用ロールサンド式塗工機20では,貼付剤用支持体シート10aとフェイシングフィルム用シート17aをそれぞれ両ロール22a,22bの隙間に一方の側(図面では上側)から送り出しながら両シート10a,17a間に粘着剤貯溜槽27から粘着剤15aを流し込んで両シート10a,17a間に粘着層15を挟み込みこむことができ,さらに粘着層15が介在された両シート10a,17aを上記隙間の他方の側(図面では下側)に導出されるようになっている。粘着層15が介在された両シート10a,17aをサンドイッチシート1aと呼ぶ。
【0056】
スリッター35は,フェイシングフィルムロール22bより下流側(サンドイッチシート1aの移動方向の下流側)で,シート1aの幅方向に複数設けられており,各スリッター35によってシート1aの長さ方向にスリットを入れることで,シート1aを複数の細長いサンドイッチシート1cに分割できるようになっている。 カッター45は,スリッター35より下流側(細長いサンドイッチシート1cの移動方向の下流側)に設けられており,カッター45によってこれらシート1cを幅方向に沿ってカットすることで,複数の貼付剤1が得られるようになっている。
ベルト55は,カッター45より下流側(貼付剤の移動方向の下流側)に設けられており,カッター45でカットされた複数の貼付剤1を載置し,包装工程などの後工程に搬送できるようになっている。」
・「【0059】
ついで,サンドイッチシート1aを幅方向に複数並べられたスリッター35の下側に送りこみ,複数の細長いサンドイッチシート1cに分割する。
ついで,複数の細長いサンドイッチシート1cをカッター45によってこれらシート1cを幅方向に沿ってカットすることで,複数の貼付剤1が得られる。
得られた複数の貼付剤1はベルト55上に載置され,包装工程などの後工程に搬送される。」
・「


(3) 甲4に記載された事項
・「【請求項1】
木酢液と含水ゲルとからなる粘着層が基材上に形成され,該粘着層が剥離フィルムで覆われていることを特徴とする皮膚貼付シート。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は皮膚貼付シート及びその製造方法にかかり,特に,木酢液の効果を長時間にわたり維持できると共に使用性に優れた皮膚貼付シート及びその製造方法に関する。」
・「【0016】
図1の基材としては,高分子フィルム,織布,不織布又はこれらを組み合わせたものが用いられるが,粘着層の保持性から不織布が好適に用いられ,粘着層の皮膚残り及び剥離フィルムへの転移を防止することができる。なお,基材の材質としては,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,レーヨンが用いられる。剥離フィルムは,一般のパッブ(又は湿布)シート用の剥離フィルムが用いられ,具体的にはポリエチレン,ポリエステル,PET等のフィルムのゲルが接触する面をシリコーン加工したものが好適に用いられる。さらに,本発明において,基材としては,不織布/非通気性フィルム又は不織布/非通気性フィルム/不織布の積層構造のものが好適に用いられ,これにより,水分等の蒸散が抑えられる。この結果,木酢液の効果をより長時間持続させることが可能となる。また,粘着層の柔軟性の低下が抑制され,優れた使用感を維持することができる。」
・「【0019】
基材シート1及び剥離フィルム3は,基材ロール39及び剥離フィルムロール40から所定の速度で繰り出され,メインロール35と吸引ロール36との間で重ね合わされ,ここで木酢液含有ゲル2が所定の厚さに挟み込まれ,ニップロール37,ロール38を経て,不図示の打ち抜き機に送られる。混合機30においては,第1液タンクから,木酢液を含む第1液が導入管32を介してミキサー部31に送られる。同時に,第2液タンクから,水溶性ポリマー及び架橋剤が均一に分散された第2液が導入管33を介してミキサー部31に送られる。ここで,第2液の分散媒としては,多価アルコールが用いられるが,グリセリンが特に好適に用いられる。なお,ソルビトールのように水を含むものは避けるべきであり,第2液を調製中にゲル化が開始し,ゲル化の制御が困難となる。」
・「



3 本件発明1についての検討
(1) 対比
ア 本件発明1と甲1発明とを,その機能に照らして対比すると,甲1発明の「2枚のシート」,「美容成分を含むクリーム」,「目もと用パックシート」は,それぞれ,本件発明1の「第1シート体」及び「第2シート体」,「クリーム状又はジェル状の美容材」,「フェイスパッド」に相当する。
イ 甲1発明の「可撓性及び伸縮性を有する2枚のシートで美容成分を含むクリームを挟む工程」は,本件発明1の工程(c)及び(d)と,「可撓性及び伸縮性を有する第1シート体及び第2シート体の間にクリーム状又はジェル状の美容材を挟む工程」との限りで共通する。
ウ 甲1発明の「可撓性及び伸縮性を有する2枚のシートを所定形状にする工程」は,本件発明1の工程(e)と,「可撓性及び伸縮性を有する2枚のシートを所定形状にする工程」との限りで共通する。
エ 甲1発明の「目もと用パックシートを製造する方法」は,本件発明1の「フェイスパッドの製造方法」に相当する。
オ そうすると,本件発明1と甲1発明とは,以下の点で一致し,相違する。
(一致点)
「可撓性及び伸縮性を有する第1シート体及び第2シート体の間にクリーム状又はジェル状の美容材を挟む工程と,
可撓性及び伸縮性を有する第1シート体及び第2シート体を所定形状にする工程と,
を備える,フェイスパッドの製造方法」
(相違点)
本件発明1は,
・「(a)可撓性及び伸縮性を有する第1シート体の一方の面に,非透水性のフィルムを形成する工程」と,「(b)可撓性及び伸縮性を有する第2シート体の一方の面に,非透水性のフィルムを形成する工程」を備え,
・「可撓性及び伸縮性を有する第1シート体及び第2シート体の間にクリーム状又はジェル状の美容材を挟む工程」として,「(c)前記工程(a)で形成した前記フィルムの表面に,クリーム状又はジェル状の美容材を塗布する工程」と,「(d)前記工程(c)の後,前記工程(a)及び(b)で形成した前記フィルムの間に前記美容材が挟まれるように,前記第1シート体と前記第2シート体とを重ねる工程」を備え,
・「可撓性及び伸縮性を有する第1シート体及び第2シート体を所定形状にする工程」として,「(e)前記工程(d)で前記美容材を挟んだ前記第1シート体及び前記第2シート体を所定形状に切り抜く工程」を備えるのに対し,
甲1発明は,
・可撓性及び伸縮性を有する2枚のシートの一方の面にフィルムを形成する工程を備えるか不明であり,
・「可撓性及び伸縮性を有する2枚のシート体で美容成分を含むクリームを挟む工程」を備えるものの,その詳細は不明で,シートの一方の面に形成された非透水性のフィルムの表面に美容成分を含むクリームを塗布した後,2枚のシートの一方の面に形成された非透水性のフィルムの間にクリームが挟まれるように,塗布したシートに他のシートを重ねるような工程を備えるか明らかでなく,
・「可撓性及び伸縮性を有する2枚のシートを所定形状にする工程」を備えるものの,その詳細や順序は不明で,美容成分を含むクリームを挟んだ後,2枚のシートを所定形状に切り抜く工程を備えるか明らかでない点。
(2) 判断
ア このように,甲1発明は,本件発明1と相違し,この点は工程として実質的な相違点であるから,本件発明1は,甲1発明であるとは認められない。
イ(ア) 次に,相違点について検討するに,甲1商品は,その具体的な層構成が不明で,甲1商品のシートが非透水性のフィルムを有するとは認められないから,甲1商品が非透水性のフィルムの間に美容成分をクリームが挟まれるものであるとは認められない(前記1(1),(2)ア(イ)b)。
そして,甲1商品において,シートに非透水性のフィルムを形成し,非透水性のフィルムの間に美容成分をクリームが挟まれるようにする動機付けも特段認められない。
この点に関し,甲2に,「重なり合う二枚のシート状の支持体における合わせ面間に皮膚外用剤が挟み込まれてなり,使用時に重なり合う二枚の支持体を分離することによって,分離された各支持体それぞれにおいて,皮膚外用剤が露出した貼付面が形成される外用貼付剤」において,天然繊維及び/又は人造繊維からなる布基材の片側面に高分子材料をラミネートした積層シートを支持体として用いる点が記載されている(【請求項3】,【0017】,【0066】,【0070】)。
しかしながら,甲2には,布基材の側を合わせ面とすると記載され(【請求項3】,【0017】),甲2に具体的に開示されているのは,布基材の側を合わせ面とし,その間に皮膚外用剤が挟み込まれるもののみである(【0066】,【0070】)。
また,甲3に記載された貼付剤は,2枚の支持体の間に粘着剤を挟むものではなく,甲3には,支持体の表面に非透水性のフィルムを形成する点について特段記載はない。
そして,甲4に,基材として,不織布/非通気性フィルム又は不織布/非通気性フィルム/不織布の積層構造のものが記載されているが(【0016】),2枚の基材の間に粘着層を挟むものではなく,非通気性フィルムの上に粘着層が配されるものであるか明らかでない。
このように,甲2?4をみても,非透水性のフィルムが形成されたシートの間に美容材が挟まれるものであって,非透水性のフィルムの間に当該美容材が挟まれるようにする点は記載されておらず,甲2?4の記載から,非透水性のフィルムが形成されたシートの間に美容材が挟まれるものであって,非透水性のフィルムの間に当該美容材が挟まれるようにする点が示唆されるものとも認められない。
甲2(【0054】)に,一の支持体の片側面に皮膚外用剤を塗工する工程,その工程の後,皮膚外用剤が挟まれるように他の支持体を重ねる工程を実行する外用貼付剤の製造方法が記載され,甲3(【0055】,【0056】),甲4(【0019】)に,2枚のシート間に基剤を挟み込んだ前駆体を作成し,この前駆体を切り抜く手段が開示され,切り抜きによって外用貼付剤を所定形状に切り抜くことが周知の技術事項であるとしても,甲1商品において,シートの一方の面に形成された非透水性のフィルムの間に,美容成分を含むクリームが挟まれるような構造とする動機付けは認められないから,甲1発明において,そのような構造をもつ目もと用パックシートを製造する工程を備えるようにする動機付けも認められない。
(イ) 特許異議申立人は,甲1商品は,一方の面に非透水性のフィルムが形成された可撓性及び伸縮性を有する2枚のシートと,フィルムが形成された面同士を対向させた状態で,2枚のシートの間に美容材が挟まれてなるものであると主張し((4)イ(ア)),それを前提に,本件発明1は,甲1発明と同一である,又は甲1発明及び甲2?4に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである,などと主張している(特許異議申立書3(4)ウ(ア)?(ウ))。
しかしながら,甲1商品の具体的な層構成は不明で,甲1商品のシートが非透水性のフィルムを有するとは認められず,甲1商品が非透水性のフィルムの間に美容成分をクリームが挟まれるものであるとは認められない上,甲1商品において,そのような構造にする動機付けも特段認められない。
よって,特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
ウ 以上のとおりであるから,本件発明1は,甲1発明であるとは認められず,甲1発明及び甲2?4に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。

4 本件発明2及び3についての検討
(1) 本件発明2は,本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから,その余の事項を検討するまでもなく,本件発明2は,本件発明1と同様の理由により,甲1発明であるとは認められず,甲1発明及び甲2?4に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。
(2) 本件発明3は,本件発明1を特定するための事項を全て含むものであるから,その余の事項を検討するまでもなく,本件発明3は,本件発明1と同様の理由により,甲1発明及び甲2?4に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

第5 むすび
以上のとおり,本件特許(請求項1?3に係る特許)は,特許法29条1項及び同条2項の規定に違反してされたものとは認められないから,特許異議申立て理由により取り消すことはできない。
また,他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-09-30 
出願番号 特願2015-132897(P2015-132897)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A45D)
P 1 651・ 112- Y (A45D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 山本 健晴
窪田 治彦
登録日 2019-12-20 
登録番号 特許第6632820号(P6632820)
権利者 株式会社ニチエイ
発明の名称 フェイスパッドの製造方法  
代理人 特許業務法人 楓国際特許事務所  

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