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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1367309
審判番号 不服2019-17445  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-24 
確定日 2020-10-15 
事件の表示 特願2017-119999号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月10日出願公開、特開2019- 541号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月19日の出願であって、平成31年3月8日付けの拒絶理由通知に対して、令和1年5月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたところ、同年9月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和1年12月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年12月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、明細書及び特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前の令和1年5月17日付けの手続補正書において、

「【請求項1】
遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
前記有利状態に制御されることを示唆する示唆演出を実行可能な示唆演出実行手段と、
前記示唆演出に対応したタイトルを報知可能なタイトル報知手段と、を備え、
前記タイトル報知手段は、前記示唆演出の開始から所定期間経過したときに当該示唆演出に対応したタイトルを報知可能であり、
前記示唆演出実行手段は、複数種類の前記示唆演出を実行可能であって、
複数種類の前記示唆演出において、前記所定期間内の演出の少なくとも一部は共通の態様で実行可能であり、
前記所定期間経過後の複数の実行タイミングにおいて、前記有利状態に制御されることを示唆する特定演出を実行可能であり、
前記所定期間経過前には前記特定演出の実行タイミングが設けられず、
前記示唆演出に対応したタイトルの報知態様が複数あり、該タイトルの報知態様に応じて前記有利状態に制御される割合が異なる
ことを特徴とする遊技機。」

とあったものを、

「【請求項1】
A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されることを示唆する示唆演出を実行可能な示唆演出実行手段と、
C 前記示唆演出に対応したタイトルを報知可能なタイトル報知手段と、を備え、
D 前記タイトル報知手段は、前記示唆演出の開始から所定期間経過したときに当該示唆演出に対応したタイトルを報知可能であり、
E 前記示唆演出実行手段は、複数種類の前記示唆演出を実行可能であって、
F 複数種類の前記示唆演出において、前記所定期間内の演出の少なくとも一部は共通の態様で実行可能であり、
G 前記所定期間経過後の複数の実行可能タイミングのいずれかにおいて、前記有利状態に制御されることを示唆する特定演出を実行可能であり、
H 前記所定期間経過前に前記特定演出の実行可能タイミングが設けられず、
I 前記示唆演出に対応したタイトルの報知態様が複数あり、該タイトルの報知態様に応じて前記有利状態に制御される割合が異なる
J ことを特徴とする遊技機。」

と補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。記号A?Jは、分説するため当審で付した。)。

2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記有利状態に制御されることを示唆する特定演出」に関して、補正前の「前記所定期間経過後の複数の実行タイミングにおいて」「実行可能であって」から「前記所定期間経過後の複数の実行可能タイミングのいずれかにおいて」「実行可能であって」へと限定しようとするものであり、併せて、補正前の「前記所定期間経過前には前記特定演出の実行タイミングが設けられず」を、意味内容の変わらない「前記所定期間経過前に前記特定演出の実行可能タイミングが設けられず」という表現へと言い改めるものである(なお、補正前後の「実行タイミング」と「実行可能タイミング」とは、いずれも「示唆演出を実行可能」なタイミングであるから、表現は異なっても意味内容は変わらない。)。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、審判請求書にて請求人が主張するとおり、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(2)新規事項
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における段落【0195】等の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に公開された特開2017-56051号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0017】
以下、本発明の実施形態では、遊技機の一例であるパチンコ機Pについて図面を参照しながら具体的に説明する。」

イ 「【0047】
つまり、アタッカー装置27は、常態では蓋部材27aが大入賞口28を閉じているため、大入賞口28に遊技球が入賞することはないが、大当たり遊技に移行すると、蓋部材27aが所定のラウンド数だけ開放されて大入賞口28が露呈されることとなる。このため、大当たり遊技においては、遊技球を大入賞口28内に入賞させることが可能となる。そして、大入賞口28に遊技球が入賞すると、所定個数の遊技球が賞球として遊技者に払い出される。すなわち、遊技者は、大入賞口28に遊技球を入賞させることによって出玉を獲得できるのである。・・・」

ウ 「【0180】
なお、ここで決定される変動パターン番号には、上述した制御コマンドが副制御基板200に送信されたときに、演出表示装置40,41,42における演出図柄のリーチ成立後からの変動態様が対応づけられており、この変動パターン番号が決まると、演出表示装置40,41,42において、リーチ成立以降の変動態様が決まることとなる。
ここでいう、リーチ成立以降の変動態様とは、例えば、ノーマルリーチや、スーパーリーチに発展する、あるいはリーチが一旦ハズレでから再始動する逆転リーチ等を経由して大当たりとなる組み合わせまたはハズレとなる組み合わせにて演出図柄が停止するまでの変動態様のことをいう。」

エ 「【0466】
詳細は後述するが、チャンスアイコンには、ボタン演出における内容を変更させる権利が対応付けられており、チャンスアイコンが1個付与されると、1回のボタン演出について、その内容を変更することができる権利が与えられるものとなっている。
・・・・・
【0468】
また、本実施形態では、チャンスアイコン付与処理においては、チャンスアイコンが付与される場合には、1個のチャンスアイコンのみが付与されるものとしているが、複数個のチャンスアイコンが付与される構成としてもよい。」

オ 「【0491】
次に、図40を用いて、変動演出設定処理について説明する。
・・・・・
【0496】
(ステップS3204)
次に、サブCPU200aは、上記ステップS3201において取得した変動演出B用乱数値と、上記ステップS3202における解析結果に基づいて、後半の変動演出の態様を決定する。
【0497】
具体的には、変動パターン指定コマンドに含まれる変動パターンコマンドの解析結果に基づいて、サブROM200bに格納されている複数の後半変動演出決定テーブル(図示しない)から1つのテーブルを選択する。このテーブルは、変動演出B用乱数値のとり得る乱数範囲内で対応付けられた複数の演出パターンから構成されている。この複数の演出パターンには、リーチ成立後から演出図柄停止までの演出態様が対応づけられている。また、この中には、ボタン演出を実行させる演出パターン(以下、「ボタン演出パターン」という)も含まれている。このように、当該テーブルと上記ステップS3201で取得した変動演出B用乱数値とを照合させることにより1つの後半用の演出パターンを決定することができる。
・・・・・
【0503】
(ステップS3207)
次に、サブCPU200aは、ボタン演出パターンではない統合演出パターンの場合であって、チャンスアイコンが付与されているときには、当該変動演出においてボタン演出を実行させるために、ボタン演出追加処理を実行する。
【0504】
このボタン演出追加処理では、ボタン演出を実行させるにあたり、実行させるボタン演出の内容を、上記ステップS3201において取得したボタン演出追加用乱数値と、ボタン演出パターン決定テーブル(図示しない)と、に基づいて決定する。
そして、このとき決定したボタン演出パターンを、上記ステップS3204において決定した後半用の演出パターンに差し替える。これにより、本来であれば、ボタン演出が実行されないはずであった当該変動演出においてボタン演出が実行されることとなる。
【0505】
なお、このような差し替えを可能とするため、ボタン演出パターンには、後半用の演出パターンとして決定される演出パターンと態様(内容)が同じであって、かつ、ボタン演出が実行される演出パターンが複数含まれている。このようにしているため、本ステップS3207において後半用の演出パターンを差し替えることが容易に行えるものとなる。
・・・・・
【0510】
(ステップS3210)
次に、サブCPU200aは、上記ステップS3203およびステップS3204において決定した前半用の演出パターンおよび後半用の演出パターン(上記ステップS3207においてボタン演出パターンに差し替えられている場合も含む)を、画像制御基板400およびランプ制御基板500に伝達すべく、前半用の演出パターンおよび後半用の演出パターンに基づいて演出実行コマンドを生成し、この演出実行コマンドをサブRAM200cの送信バッファにセットする。
・・・・・
【0512】
なお、演出実行コマンドが画像制御基板400およびランプ制御基板500に送信されると、この演出実行コマンドに基づいて演出表示装置40,41,42、駆動装置51,52、演出役物装置55、スピーカ11,12、演出操作装置60(LED60b)等が制御される。」

カ 「【0600】
変動演出が開始されると、図46(a)に示すように、表示画面40a,41a,42aでは、演出図柄48a,48b,48cの変動表示がそれぞれ開始される。また、表示画面40aの右上側には、チャンスアイコンが付与されていることを示す画像CI(以下、「チャンスアイコンCI」という)が表示されている。
【0601】
図46(b)は、図46(a)の後であって、ノーマルリーチの発生後、さらにSPリーチに発展したときの様子を示している。このとき、表示画面41aには、演出図柄48a(数字の「7」を模した図柄、以下、図柄「7」という)が停止表示し、表示画面42aには、演出図柄48c(図柄「7」)が停止表示している。また、表示画面40a(左下側)では、未だ演出図柄48bが変動表示している。すなわち、図柄「7」でSPリーチが発生している様子が示されている。
なお、この時点では、まだ、チャンスアイコンCIは、表示画面40aの右上側に表示されたままとなっている。」

【図46】(b)

キ 「【0603】
図46(c)は、図46(b)の後であって、SPリーチ中の様子を示している。すなわち、表示画面40aの中央上方側において、この中央上方側を左右に延びる直線状のタイムゲージTGが表示される。このタイムゲージTGの左端には、当該SPリーチの名称を示すリーチ名称画像RM(この例では、「SPリーチ」という名称)が表示されている。また、このタイムゲージTG上には、1回目ボタン演出の開始時期を示す「ボタン」と書かれた画像B1(以下、「ボタンB1」という)と、2回目ボタン演出の開始時期を示す「ボタン」と書かれた画像B2(以下、「ボタンB2」という)と、が表示されている。さらに、このタイムゲージTG上には、チャンスアイコンCIが表示されている。
【0604】
このように、SPリーチが開始されると、表示画面40aの右上側に表示されていたチャンスアイコンCIがタイムゲージTG上に表示される。
【0605】
この後、タイムゲージTG上を、チャンスアイコンCIが、時間の経過と共に右方向へ移動していく内容の演出が行われる。そして、チャンスアイコンCIが、タイムゲージTGの右端まで移動しきると、当該SPリーチが終了するようになっている。すなわち、このタイムゲージTGは、当該SPリーチの開始から終了まで表示されるものであり、チャンスアイコンCI等により、当該SPリーチの進行状況を把握することが可能となっている。
・・・・・
【0607】 また、これら(タイムゲージTG、ボタンB1、ボタンB2、チャンスアイコンCI、進行状況アイコンSI、リーチ名称画像RM)の表示は、上記ステップS3210においてセットされるボタン演出パターンに係る演出実行コマンドに基づいて表示される内容である。本実施形態では、チャンスアイコンが付与されていない場合には、タイムゲージTGおよびボタンB1、ボタンB2が表示されるとともに、進行状況アイコンSIがタイムゲージTG上に表示されるようになっている。したがって、チャンスアイコンCIは表示されない。そして、この進行状況アイコンSIが、当該SPリーチの進行と共に、タイムゲージTG上を右方向に移動していく内容の演出が行われることとなる。」

【図46】(c)

ク 「【0608】
図47(a)は、上記図46(c)の後であって、当該SPリーチが進行していくとともに、タイムゲージTG上をチャンスアイコンCIが移動していき、1回目ボタン演出の開始5秒前となった場合の一例を示している。すなわち、チャンスアイコン行使演出が実行されているときの様子が示されている。チャンスアイコン行使演出では、表示画面40aのほぼ中央に、「チャンスアップできます。どうしますか?」というメッセージM1と、タッチボタン61を押下操作することを促すボタン促進画像M2と、が表示される。これにより、もうすぐ開始されるボタン演出(この場合は、1回目ボタン演出)における内容の変更をするか否か(内容変更権利を使うか否か)についての判断を、遊技者に促すようにしている。」

【図47】(a)

ケ 「【0609】
図47(b)は、図47(a)の後であって、チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作した場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使ったときの様子を示している。このとき、タイムゲージTG上のボタンB1が「赤」に変化している。これにより、遊技者が1回目ボタン演出については内容変更権利を使ったことが示される。したがって、1回目ボタン演出の結果は、予め決められていた内容から、良い内容に変更され、この良い内容が導出されることとなる。
【0610】
なお、この例では、遊技者が内容変更権利を使った場合、タイムゲージTG上のボタンB1を「赤」に変化させるものとしているが、これに限られず、例えば、1回目ボタンカラー変更処理などと同様に、大当たりの当選の期待値等に基づいて、他の色彩に変化可能な構成としてもよい。」

【図47】(b)

コ 「【0611】
一方、図47(c)は、図47(a)の後であって、チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作しなかった場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使わなかったときの様子を示している。このとき、タイムゲージTG上のボタンB1が消えている(なお、消えたボタンB1を点線で示している)。これにより、遊技者が1回目ボタン演出については内容変更権利を使わなかったことが示される。したがって、1回目ボタン演出の結果は、予め決められていた内容が導出されることとなる。」

【図47】(c)

サ 「【0616】
図49(a)は、上記図47(c)の後であって、タイムゲージTG上をチャンスアイコンCIが移動していき、2回目ボタン演出の開始5秒前となった場合の一例を示している。すなわち、1回目ボタン演出の前に行われるチャンスアイコン行使演出において、内容変更権利が使われなかった場合であって、2回目ボタン演出の前に行われるチャンスアイコン行使演出が実行されているときの様子が示されている。この例でも、上記図47(a)と同様に、表示画面40aのほぼ中央に、「チャンスアップできます。どうしますか?」というメッセージM1と、タッチボタン61を押下操作することを促すボタン促進画像M2と、が表示される。これにより、遊技者に、もうすぐ開始されるボタン演出(この場合は、2回目ボタン演出)における内容の変更をするか否か(内容変更権利を使うか否か)についての判断を、遊技者に促すようにしている。」

【図49】(a)

シ 「【0617】
図49(b)は、図49(a)の後であって、チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作した場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使ったときの様子を示している。このとき、タイムゲージTG上のボタンB2が「赤」に変化している。これにより、遊技者が2回目ボタン演出については内容変更権利を使ったことが示される。したがって、2回目ボタン演出の結果は、予め決められていた内容から、良い内容に変更され、この良い内容が導出されることとなる。
【0618】
なお、この例では、遊技者が内容変更権利を使った場合、タイムゲージTG上のボタンB2を「赤」に変化させるものとしているが、これに限られず、例えば、2回目ボタンカラー変更処理などと同様に、大当たりの当選の期待値等に基づいて、他の色彩に変化可能な構成としてもよい。」

【図49】(b)

ス 「【0619】
一方、図49(c)は、図49(a)の後であって、チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作しなかった場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使わなかったときの様子を示している。このとき、タイムゲージTG上のボタンB2が消えている(なお、消えたボタンB2を点線で示している)。これにより、遊技者が2回目ボタン演出については内容変更権利を使わなかったことが示される。したがって、2回目ボタン演出の結果は、予め決められていた内容が導出されることとなる。」

【図49】(c)

セ 「【0627】
なお、上記実施形態では、ボタン演出が実行される前に内容変更権利を使うことによって、当該ボタン演出の結果として表示(導出)される画像(カットイン画像)や、発展演出パターンを変更するものとしたが、変更するものは、これに限られない。例えば、当該SPリーチから別のSPリーチに変更する(切り替える)ようにしてもよい。このとき、変更させるSPリーチは、当該SPリーチよりも大当たりの当選の期待値の高いSPリーチとすることにより、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。」

上記ア?セの記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?jは、本願補正発明の構成A?Jに対応させて付した。なお、引用発明には本願補正発明の記号F、H、Iに対応する構成がないため、記号f、h、iは用いていない。また、括弧内に引用文献1における引用箇所を示した。)。

「a 大当たり遊技に移行すると、蓋部材27aが所定のラウンド数だけ開放されて大入賞口28が露呈されることとなり、このため、大当たり遊技においては、遊技球を大入賞口28内に入賞させることが可能となる(【0047】)、遊技機の一例であるパチンコ機Pであって(【0017】)、

b 変動パターン番号には、制御コマンドが副制御基板200に送信されたときに、演出表示装置40,41,42における演出図柄のリーチ成立後からの変動態様が対応づけられており、リーチ成立以降の変動態様とは、例えば、スーパーリーチに発展する変動態様のことをいい(【0180】)、
サブCPU200aは(【0496】)、変動パターン指定コマンドに含まれる変動パターンコマンドの解析結果に基づいて、複数の後半変動演出決定テーブルから1つのテーブルを選択し、このテーブルは、複数の演出パターンから構成されており、この複数の演出パターンには、リーチ成立後から演出図柄停止までの演出態様が対応づけられており、また、この中には、ボタン演出を実行させる演出パターンも含まれており、当該テーブルと変動演出B用乱数値とを照合させることにより1つの後半用の演出パターンを決定し(【0497】)、
サブCPU200aは、前半用の演出パターンおよび後半用の演出パターンに基づいて演出実行コマンドを生成し、この演出実行コマンドをサブRAM200cの送信バッファにセットし(【0510】)、演出実行コマンドが画像制御基板400およびランプ制御基板500に送信されると、この演出実行コマンドに基づいて演出表示装置40,41,42、駆動装置51,52、演出役物装置55、スピーカ11,12、演出操作装置60(LED60b)等が制御され(【0512】)、

cd ノーマルリーチの発生後、さらにSPリーチに発展したとき(【0601】)の後であって、SPリーチ中の様子として、表示画面40aの中央上方側において、この中央上方側を左右に延びる直線状のタイムゲージTGが表示され、このタイムゲージTGの左端には、当該SPリーチの名称を示すリーチ名称画像RM(「SPリーチ」という名称)が表示されており、また、このタイムゲージTG上には、1回目ボタン演出の開始時期を示す「ボタン」と書かれた画像B1と、2回目ボタン演出の開始時期を示す「ボタン」と書かれた画像B2と、が表示されており、さらに、このタイムゲージTG上には、チャンスアイコンCIが表示されており(【0603】)、
これら(タイムゲージTG、ボタンB1、ボタンB2、チャンスアイコンCI、リーチ名称画像RM)の表示は、ボタン演出パターンに係る演出実行コマンドに基づいて表示される内容であり(【0607】)、

e 当該SPリーチから別のSPリーチに変更する(切り替える)ようにしてもよく、このとき、変更させるSPリーチは、当該SPリーチよりも大当たりの当選の期待値の高いSPリーチとすることができ(【0627】)、ボタン演出パターンには、後半用の演出パターンとして決定される演出パターンと態様(内容)が同じであって、かつ、ボタン演出が実行される演出パターンが複数含まれており(【0505】)、

g チャンスアイコンが1個付与されると、1回のボタン演出について、その内容を変更することができる権利が与えられ(【0466】)、チャンスアイコン付与処理においては、チャンスアイコンが付与される場合には、1個のチャンスアイコンのみが付与され(【0468】)、
当該SPリーチが進行していくとともに、タイムゲージTG上をチャンスアイコンCIが移動していき、1回目ボタン演出の開始5秒前となった場合、チャンスアイコン行使演出が実行され(【0608】)、チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作した場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使ったとき、タイムゲージTG上のボタンB1が「赤」に変化し(【0609】)、これに限られず、大当たりの当選の期待値等に基づいて、他の色彩に変化可能な構成としてもよく(【0610】)、チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作しなかった場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使わなかったとき、タイムゲージTG上のボタンB1が消え(【0611】)、
タイムゲージTG上をチャンスアイコンCIが移動していき、2回目ボタン演出の開始5秒前となった場合、すなわち、1回目ボタン演出の前に行われるチャンスアイコン行使演出において、内容変更権利が使われなかった場合であって、2回目ボタン演出の前に行われるチャンスアイコン行使演出が実行されているとき(【0616】)、チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作した場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使ったとき、タイムゲージTG上のボタンB2が「赤」に変化し(【0617】)、これに限られず、大当たりの当選の期待値等に基づいて、他の色彩に変化可能な構成としてもよく(【0618】)、チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作しなかった場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使わなかったとき、タイムゲージTG上のボタンB2が消える(【0619】)、

j パチンコ機P(【0017】)。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願補正発明の構成A?Jについて、それぞれ(a)?(j)の見出しを付けて行った。)。

(a)引用発明の「大当たり遊技に移行すると、蓋部材27aが所定のラウンド数だけ開放されて大入賞口28が露呈されることとなり、このため、大当たり遊技においては、遊技球を大入賞口28内に入賞させることが可能となる」ことは、本願補正発明の「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能」であることに相当する。
また、引用発明の「遊技機の一例であるパチンコ機P」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
そうすると、引用発明の構成aは、本願補正発明の構成Aに相当する。

(b)引用発明において、「リーチ以降の変動態様とは、例えば、スーパーリーチに発展する変動態様のことをい」うものであり、「サブCPU200aは」「当該テーブルと変動演出B用乱数値とを照合させることにより1つの後半用の演出パターンを決定」するものであるところ、「このテーブルは、複数の演出パターンから構成されており、この複数の演出パターンには、リーチ成立後から演出図柄停止までの演出態様が対応づけられており、また、この中には、ボタン演出を実行させる演出パターンも含まれて」いるから、引用発明は、「ボタン演出を伴うスーパーリーチ」の演出を含むものといえる。そして、スーパーリーチが大当たり遊技の状態(前記有利状態)に制御されることを示唆するものであることは技術常識であるから、引用発明の「ボタン演出を伴うスーパーリーチ」は、本願補正発明の「前記有利状態に制御されることを示唆する示唆演出」に相当する。
また、「サブCPU200aは」「1つの後半用の演出パターンを決定」するとともに、「サブCPU200aは、前半用の演出パターンおよび後半用の演出パターンに基づいて演出実行コマンドを生成し、この演出実行コマンドをサブRAM200cの送信バッファにセットし、演出実行コマンドが画像制御基板400およびランプ制御基板500に送信されると、この演出実行コマンドに基づいて演出表示装置40,41,42、駆動装置51,52、演出役物装置55、スピーカ11,12、演出操作装置60(LED60b)等が制御され」るから、上記の「ボタン演出を伴うスーパーリーチ」を含む後半用の演出パターンは、「サブCPU200a」、「画像制御基板400」及び「ランプ制御基板500」により実行可能なものということができる。そうすると、引用発明の「サブCPU200a」、「画像制御基板400」及び「ランプ制御基板500」は、本願補正発明の「示唆演出実行手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成bは、本願補正発明の構成Bに相当する。

(c)引用発明の「当該SPリーチの名称を示すリーチ名称画像RM(「SPリーチ」という名称)が表示され」ることは、本願補正発明の「前記示唆演出に対応したタイトルを報知可能」であることに相当する。
また、引用発明において、「これら(タイムゲージTG、ボタンB1、ボタンB2、チャンスアイコンCI、リーチ名称画像RM)の表示は、ボタン演出パターンに係る演出実行コマンドに基づいて表示される内容であ」るところ、「サブCPU200aは、」「演出実行コマンドを生成し、この演出実行コマンドをサブRAM200cの送信バッファにセットし、演出実行コマンドが画像制御基板400およびランプ制御基板500に送信されると、この演出実行コマンドに基づいて演出表示装置40,41,42、駆動装置51,52、演出役物装置55、スピーカ11,12、演出操作装置60(LED60b)等が制御され」るから(構成b)、引用発明の「サブCPU200a」、「画像制御基板400」及び「演出表示装置40,41,42」は、本願補正発明の「タイトル報知手段」に相当する。
してみると、引用発明の構成cdは、本願補正発明の構成Cに相当する構成を有している。

(d)引用発明の「当該SPリーチの名称を示すリーチ名称画像RM(「SPリーチ」という名称)」は、本願補正発明の「前記示唆演出に対応したタイトル」に相当するところ、当該「リーチ名称画像RM」は、「ノーマルリーチの発生後、さらにSPリーチに発展したときの後であって、SPリーチ中の様子として」「表示され」るものであるから、示唆演出(ボタン演出を伴うスーパーリーチ)の開始から所定期間経過したときに報知可能なものということができる。
そうすると、引用発明の構成cdは、本願補正発明の構成Dに相当する構成を有している。

(e)引用発明は、「当該SPリーチから別のSPリーチに変更する(切り替える)ようにしてもよく、このとき、変更させるSPリーチは、当該SPリーチよりも大当たりの当選の期待値の高いSPリーチとすることができ」るものであるから、「当該SPリーチ」の他に、例えば「当該SPリーチよりも大当たりの当選の期待値の高いSPリーチ」などの「別のSPリーチ」を含むものといえる。それに加えて、引用発明は、「ボタン演出パターンには、後半用の演出パターンとして決定される演出パターンと態様(内容)が同じであって、かつ、ボタン演出が実行される演出パターンが複数含まれて」いるものであるから、「複数種類のボタン演出を伴うスーパーリーチを実行可能」な構成を有するものということができる。
そして、引用発明における上記の「複数種類のボタン演出を伴うスーパーリーチを実行可能」である構成は、本願補正発明の「複数種類の前記示唆演出を実行可能であ」る構成に相当する。
さらに、上記(b)で検討したとおり、引用発明は、本願補正発明の「示唆演出実行手段」に相当する構成を有している。
してみると、引用発明の構成eは、本願補正発明の構成Eに相当する。

(g)引用発明の「チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作した場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使ったとき、タイムゲージTG上のボタンB1が「赤」に変化し、これに限られず、大当たりの当選の期待値等に基づいて、他の色彩に変化可能な構成としてもよ」いという演出(以下、「ボタンB1変化演出」という。)、及び、「チャンスアイコン行使演出において、遊技者がタッチボタン61を押下操作した場合、つまり、遊技者が内容変更権利を使ったとき、タイムゲージTG上のボタンB2が「赤」に変化し、これに限られず、大当たりの当選の期待値等に基づいて、他の色彩に変化可能な構成としてもよ」いという演出(以下、「ボタンB2変化演出」という。)は、いずれも「大当たりの当選の期待値等に基づいて、他の色彩に変化可能な構成」を含むものであるから、本願補正発明の「前記有利状態に制御されることを示唆する特定演出」に相当する。
また、引用発明において、ボタンB1変化演出が実行されるのは、「当該SPリーチが進行していくとともに、タイムゲージTG上をチャンスアイコンCIが移動していき、1回目ボタン演出の開始5秒前となった場合、チャンスアイコン行使演出が実行され」るときであり、ボタンB2変化演出が実行されるのは、「タイムゲージTG上をチャンスアイコンCIが移動していき、2回目ボタン演出の開始5秒前となった場合、すなわち、1回目ボタン演出の前に行われるチャンスアイコン行使演出において、内容変更権利が使われなかった場合であって、2回目ボタン演出の前に行われるチャンスアイコン行使演出が実行されているとき」であるところ、いずれも「タイムゲージTG上をチャンスアイコンCIが移動してい」るタイミングであり、「当該SPリーチの名称を示すリーチ名称画像RM(「SPリーチ」という名称)が表示」される(構成cd)よりも後のタイミングであるから、引用発明におけるボタンB1変化演出が実行されるタイミングとボタンB2変化演出が実行されるタイミングは、本願補正発明の「前記所定期間経過後の複数の実行可能タイミング」に相当する。
さらに、引用発明は、「チャンスアイコンが1個付与されると、1回のボタン演出について、その内容を変更することができる権利が与えられ、チャンスアイコン付与処理においては、チャンスアイコンが付与される場合には、1個のチャンスアイコンのみが付与され」るものであるから、チャンスアイコンが付与された変動演出において、ボタン演出の内容を変更できるのは1回のみであるといえる。また、引用発明のボタンB1変化演出は、「1回目ボタン演出の開始5秒前となった場合」であり「遊技者が内容変更権利を使ったとき」に実行されるとともに、「遊技者が内容変更権利を使わなかったとき、タイムゲージTG上のボタンB1が消え」る、すなわち、ボタンB1変化演出は実行されないものであり、同ボタンB2変化演出は、「2回目ボタン演出の開始5秒前となった場合」であり「遊技者が内容変更権利を使ったとき」に実行されるとともに、「遊技者が内容変更権利を使わなかったとき、タイムゲージTG上のボタンB2が消える」、すなわち、ボタンB2変化演出は実行されないものである。そうすると、チャンスアイコンが付与された変動演出において、ボタンB1変化演出とボタンB2変化演出の両方が実行されることはなく、その「いずれか」が実行されるものであることが分かる。
してみると、引用発明のボタンB1変化演出とボタンB2変化演出は、本願補正発明の「前記所定期間経過後の複数の実行可能タイミングのいずれかにおいて」「実行可能」であることに相当する構成を有するものといえる。
したがって、引用発明の構成gは、本願補正発明の構成Gに相当する。

(j)引用発明の「パチンコ機P」は、本願補正発明の「遊技機」に相当するから、引用発明の構成jは、本願補正発明の構成Jに相当する。

上記(a)?(j)の検討により、本願補正発明と引用発明とは、

(一致点)
「A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されることを示唆する示唆演出を実行可能な示唆演出実行手段と、
C 前記示唆演出に対応したタイトルを報知可能なタイトル報知手段と、を備え、
D 前記タイトル報知手段は、前記示唆演出の開始から所定期間経過したときに当該示唆演出に対応したタイトルを報知可能であり、
E 前記示唆演出実行手段は、複数種類の前記示唆演出を実行可能であって、
G 前記所定期間経過後の複数の実行可能タイミングのいずれかにおいて、前記有利状態に制御されることを示唆する特定演出を実行可能である
J 遊技機。」

である点で一致し、構成F,H,Iに関する以下の点で相違している。

(相違点1)
「複数種類の前記示唆演出」について、本願補正発明では、「前記所定期間内の演出の少なくとも一部は共通の態様で実行可能であ」る(構成F)のに対して、引用発明では、そのような構成を有するのか明らかでない点。

(相違点2)
本願補正発明では、「前記所定期間経過前に前記特定演出の実行可能タイミングが設けられ」ていない(構成H)のに対して、引用発明では、そのような構成を有するのか明らかでない点。

(相違点3)
本願補正発明では、「前記示唆演出に対応したタイトルの報知態様が複数あり、該タイトルの報知態様に応じて前記有利状態に制御される割合が異なる」(構成I)のに対して、引用発明では、そのような構成を有しない点。

(3)判断
ア 相違点1の判断について
まず相違点1について検討すると、複数種類のスーパーリーチにおいて開始してから途中までの演出態様を共通とすることは、遊技機の技術分野において本願の出願前に周知の技術である。
例えば、本願の出願前に公開された特開2001-87504号公報の段落【0028】には、「本実施の形態のアニメーションシーンとしては、8つのリーチパターンα?θ(ノーマルリーチ、ロングリーチ、スーパーリーチA?C、プレミアムリーチA?C)に対応するシーンに加えて、2つの共通シーン(全リーチ共通シーン、スーパーリーチ共通シーン)が設定されている。」と記載され、その【図4】には、スーパーリーチA?C系において、スーパーリーチの開始(t_(1))から途中(t_(s))までの期間にスーパーリーチ共通シーンが表示されることが図示されている。
また、例えば、本願の出願前に公開された特開2015-208572号公報の段落【0045】には、「本実施形態では、「リーチ変動パターン」として、「ノーマルリーチ」、「スーパーリーチA」及び「スーパーリーチB」が設定されている。また、「スーパーリーチA」として、「スーパーリーチA1」?「スーパーリーチA3」が設定され、・・・「スーパーリーチA」では、リーチ演出として「リーチ演出A」が実行され、・・・「リーチ演出A」では、第1演出画像表示装置31の表示画面31aにおいて、キャラクターAに係る演出画像が表示され、当該演出画像において、所定のタイミングで、キャラクターAが発する所定の台詞(以下、「カットイン台詞」とする)が表示される。そして、「スーパーリーチA1」では、「カットイン台詞」の色が「黒色」に表示され、「スーパーリーチA2」では、「カットイン台詞」の色が「緑色」に表示され、「スーパーリーチA3」では、「カットイン台詞」の色が「赤色」に表示される。」と記載されているから、複数種類のスーパーリーチ(スーパーリーチA1?A3)において開始してから途中(所定のタイミング)までの演出態様(リーチ演出AでキャラクターAに係る演出画像が表示される態様)を共通とすることが開示されているといえる。
そうすると、引用発明において、スーパーリーチ開始後に遊技者にいずれのスーパーリーチになるかの期待感を抱かせて興趣の向上を図るなどの観点から、ボタン演出を伴う複数種類のスーパーリーチ(示唆演出)に対して上記の周知技術を適用して、これらのスーパーリーチの開始から途中までの演出態様を共通とし、それにより、「前記所定期間内の演出の少なくとも一部は共通の態様で実行可能」として、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点2の判断について
次に相違点2について検討すると、引用発明において、ボタンB1変化演出及びボタンB2変化演出(前記特定演出)は、いずれも「タイムゲージTG上をチャンスアイコンCIが移動してい」くタイミングで実行されるものであり、タイムゲージTG上のボタンB1又はボタンB2の色を変化させるという演出内容を有するものであるから、タイムゲージTG、タイムゲージTG上のチャンスアイコンCI、及び、ボタンB1又はB2の表示を前提として実行されるものといえる。
このため、そのような前提のないタイミングでは、ボタンB1変化演出及びボタンB2変化演出(前記特定演出)が実行されないことは明らかであるから、引用発明において、「前記所定期間経過前」、すなわち、リーチ名称画像RM(示唆演出に対応したタイトル)の表示前のタイミングに、タイムゲージTG、ボタンB1、ボタンB2、チャンスアイコンCIなどが表示されない構成(上記の前提が成立しない構成)とすることが当業者にとって容易といえるのであれば、引用発明において、「前記所定期間経過前には前記特定演出の実行タイミングが設けられ」ない構成とすることも、必然的に容易といえることになる。
そこで検討するに、引用発明は、構成cdとして、「ノーマルリーチの発生後、さらにSPリーチに発展したときの後であって、SPリーチ中の様子として、表示画面40aの中央上方側において、この中央上方側を左右に延びる直線状のタイムゲージTGが表示され、このタイムゲージTGの左端には、当該SPリーチの名称を示すリーチ名称画像RM(「SPリーチ」という名称)が表示されており、また、このタイムゲージTG上には、1回目ボタン演出の開始時期を示す「ボタン」と書かれた画像B1と、2回目ボタン演出の開始時期を示す「ボタン」と書かれた画像B2と、が表示されており、さらに、このタイムゲージTG上には、チャンスアイコンCIが表示されており、これら(タイムゲージTG、ボタンB1、ボタンB2、チャンスアイコンCI、リーチ名称画像RM)の表示は、ボタン演出パターンに係る演出実行コマンドに基づいて表示される内容であり」という構成を有するから、【図46】(c)などの記載も参照すると、リーチ名称画像RM(示唆演出に対応したタイトル)は、タイムゲージTG、ボタンB1、ボタンB2、チャンスアイコンCIなどとともに、表示画面40aの上方側に1つのまとまった画像として表示されるものであると理解できる。
そうすると、引用発明において、これらの1つのまとまった画像の一部のみを異なるタイミングで表示する理由もなく、かえって表示が不自然で見難くなることから、これらを同一のタイミングで表示すること、すなわち、「前記所定期間経過前」(リーチ名称画像RM(示唆演出に対応したタイトル)の表示前)にはタイムゲージTG、ボタンB1、ボタンB2、チャンスアイコンCIなどが表示されないように構成することは、当業者であれば容易になし得ることであり(現にSPリーチに発展したときの様子を示す引用文献1の【図46】(b)にタイムゲージTG等は表示されていない。)、そのようなボタンB1変化演出及びボタンB2変化演出(前記特定演出)の前提となる表示がないタイミングにおいて、「前記特定演出の実行可能タイミングが設けられ」ない構成とすることは、当業者であれば当然になすべきことというべきである。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、当業者が容易に想到できたものである。

ウ 相違点3の判断について
続いて相違点3について検討すると、遊技機の技術分野において、スーパーリーチに対応したタイトルの報知態様が複数あり、該タイトルの報知態様に応じて有利状態(大当たり状態)に制御される割合が異なるようにすることは、本願の出願前に周知の技術である。
例えば、「ぱちんこCR北斗の拳剛掌」,パチンコ攻略マガジン2010年12月11日号,株式会社双葉社,2010年11月11日,p.51-55における55頁の「リーチタイトル色別信頼度」の表や、「CRぱちんこウルトラバトル烈伝 戦えゼロ!若き最強戦士」,パチンコ必勝ガイド2015年5月2日号,株式会社ガイドワークス,2015年5月2日,p.14-20における18頁の「vsベリアルSPSPリーチタイトル色別信頼度」の表には、リーチタイトルの色や色変化の態様により信頼度が異なることが開示されている。
そうすると、興趣の向上は遊技機の技術分野における一般的な課題であるから、興趣向上の観点から、引用発明のリーチ名称画像RMの表示(タイトル報知)に対して上記の周知技術を適用して、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

エ 本願補正発明の作用効果について
本願補正発明の作用効果は、引用発明及び各周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「引用文献1の図46?図50は、ボタン演出が実行される場合の演出態様の一例(段落0597)であり、積極的に所定期間経過前(タイトルの報知前)に特定演出の実行可能タイミングが設けないことは、引用文献1には記載されていません。」(2頁17?20行)と主張している。
しかしながら、上記イで説示したとおり、「前記所定期間経過前に前記特定演出の実行可能タイミングが設けられ」ていない構成は、当業者であれば容易に想到できたものであるから、請求人の上記主張は採用できない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び各周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?5に係る発明は、令和1年5月17日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特開2017-56051号公報

3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定については、上記「第2[理由]3(1)引用文献1に記載された事項」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、構成要件である「前記有利状態に制御されることを示唆する特定演出」に関して、「前記所定期間経過後の複数の実行可能タイミングのいずれかにおいて」「実行可能であって」から「前記所定期間経過後の複数の実行タイミングにおいて」「実行可能であって」へと拡張するとともに、意味内容の変わらない「前記所定期間経過前に前記特定演出の実行可能タイミングが設けられず」という表現へと言い改めていたものを、元の「前記所定期間経過前には前記特定演出の実行タイミングが設けられず」との表現に戻したものである。
そうすると、本願発明の特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2[理由]3(2)対比、(3)判断」に記載したとおり、引用発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-08-05 
結審通知日 2020-08-11 
審決日 2020-08-25 
出願番号 特願2017-119999(P2017-119999)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 井海田 隆
小島 寛史
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  

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