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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B05D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B05D
管理番号 1368132
異議申立番号 異議2020-700636  
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-12-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-25 
確定日 2020-11-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6654496号発明「被膜形成方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6654496号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6654496号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成28年4月4日の出願であって、令和2年2月3日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月25日に特許異議申立人 渡辺 陽子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし6)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
基材に対し、第1被膜形成材、及び第2被膜形成材を順に塗付する被膜形成方法であって、
前記第1被膜形成材は、エポキシ樹脂とアミン硬化剤を含有し、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が600g/eq以上2000g/eq以下であり、
前記アミン硬化剤の活性水素当量が50g/eq以上150g/eq以下であり、
前記アミン硬化剤の活性水素当量と前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、[アミン硬化剤の活性水素当量/エポキシ樹脂のエポキシ当量]で0.4未満であり、
前記第2被膜形成材は、顔料容積濃度が20%以上80%以下、20℃雰囲気下での伸び率が30%以上800%以下の被膜を形成するものであることを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
前記アミン硬化剤の活性水素当量と前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、[アミン硬化剤の活性水素当量/エポキシ樹脂のエポキシ当量]で0.25以下であることを特徴とする請求項1に記載の被膜形成方法。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂と前記アミン硬化剤の配合比率[(アミン硬化剤の配合量/アミン硬化剤の活性水素当量)/(エポキシ樹脂の配合量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)]が、1.2以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の被膜形成方法。
【請求項4】
前記第1被膜形成材がシラン化合物を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
【請求項5】
前記シラン化合物が、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の被膜形成方法。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の被膜形成方法。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和2年8月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1ないし4及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1号第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 証拠方法
甲第1号証:特開2005-29583号公報
甲第2号証:特開2011-89092号公報
甲第3号証:国際公開第2007/046301号
甲第4号証:特開平10-152648号公報
以下、順に「甲1」のようにいう。

第4 当審の判断
申立理由1及び2を併せて検討する。

1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「塗装方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項1】
被塗面に、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(a)に、二塩基酸(b)及びカルボキシル基含有アクリル樹脂(c-1)を反応させてなる変性エポキシ樹脂(d-1)、及び該エポキシ樹脂(a)に二塩基酸(b)を重付加及び重合性不飽和モノマー(c-2)をグラフト重合又は共重合させてなる変性エポキシ樹脂(d-2)から選ばれる少なくとも1種の変性エポキシ樹脂(I)、該変性エポキシ樹脂用硬化剤(II)、及び有機溶剤(III)を必須成分として含有し、該有機溶剤(III)が、脂肪族炭化水素系溶剤及び高沸点芳香族炭化水素系溶剤から選ばれる炭化水素系溶剤を80重量%以上含有する有機溶剤である下塗り塗料(A)を塗装後、上塗り塗料(B)を塗装することを特徴とする塗装方法。」

・「【0004】
本発明の目的は、脂肪族炭化水素系溶剤及び高沸点芳香族炭化水素系溶剤に可溶で、耐衝撃性、指触乾燥性に優れた塗料組成物を下塗り塗料として用いて、その上に来る中塗り塗膜や上塗り塗膜の種類に寄らず、これらの塗膜に硬化阻害等が生じることなく、複層塗膜を形成できる塗装方法を提供することにある。」

・「【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において下塗り塗料(A)は、変性エポキシ樹脂(I)、該変性エポキシ樹脂用硬化剤(II)、及び有機溶剤(III)を必須成分として含有する。
【0008】
上記変性エポキシ樹脂(I)は、エポキシ樹脂(a)に二塩基酸(b)及びカルボキシル基含有アクリル樹脂(c-1)を反応させてなる変性エポキシ樹脂(d-1)、及びエポキシ樹脂(a)に二塩基酸(b)を重付加及び重合性不飽和モノマー(c-2)をグラフト重合又は共重合させてなる変性エポキシ樹脂(d-2)から選ばれる少なくとも1種である。
【0009】
上記エポキシ樹脂(a)は、1分子中にエポキシ基を2個以上有し、さらに平均エポキシ当量が約150?約1,000の範囲内、好ましくは約150?約500の範囲内であることが適当である。また、例えばエポキシ当量約1,500前後のエポキシ樹脂を使用する場合には、全体として平均エポキシ当量が約150?約1,000の範囲内となるように他のエポキシ樹脂との混合物とすれば使用可能である。
【0010】
上記エポキシ樹脂(a)としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン類とエピクロルヒドリンから誘導されるエポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンから誘導されるアルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、その他のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種以上のエポキシ樹脂を、アルキルフェノール又は/及び脂肪酸によって変性してなる変性エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらは単独で又は混合して使用することができる。」

・「【0032】
変性エポキシ樹脂用硬化剤(II)は、活性水素当量が50?500の範囲内である硬化剤である。
【0033】
上記硬化剤としては、従来公知のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、具体的には、例えば、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン等の脂肪族ポリアミン類;該脂肪族ポリアミンのエポキシ樹脂アダクト物、ケチミン化物、ポリアミドアミン類、ポリアミド樹脂等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上混合して使用することができる。これらのうち、ダイマー酸変性ポリアミド樹脂、ケチミン化ダイマー酸変性ポリアミド樹脂が好適である。該ケチミン化ダイマー酸変性ポリアミド樹脂では、ケチミン化率が80%以上、好ましくは90%以上であることが塗膜の伸び率や付着性の面から望ましい。」

・「【0041】
下塗り塗料(A)には、更に必要に応じて着色顔料、体質顔料、防食顔料等の顔料類;改質樹脂、増粘剤、分散剤、硬化促進剤、カップリング剤(シラン系、チタン系、アルミニウム系など)等の塗料用添加剤等を配合することができる。」

・「【0048】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。尚、各例における「部」及び「%」は、いずれも重量基準である。
【0049】
変性エポキシ樹脂の製造
製造例1
「スワゾール310」87部、「エピクロンHP-820」(大日本インキ化学社製、4-t-ブチルピロカテコール・1-クロロ-2,3-エポキシプロパン重縮合物、エポキシ当量211)276部及びアジピン酸24部を窒素気流下で135℃に加熱し、下記のビニルモノマー及び重合開始剤の混合物を2時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いでテトラブチルアンモニウムブロマイド0.6部を仕込み、約1時間反応を行い、樹脂酸価が1mgKOH/g以下になったところで「スワゾール310」295部を添加し、アクリル変性エポキシ樹脂(I-3)を得た。該樹脂溶液は、不揮発分60%、エポキシ当量749(固形分)であった。
【0050】
アクリル酸 9部
2-エチルヘキシルアクリレート 51部
スチレン 240部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 18部
【0051】
製造例2
ミネラルスピリット93部を窒素気流下で135℃に加熱し、下記のビニルモノマー及び重合開始剤の混合物を3時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いで「エピクロンHP-820」300部、「ハリダイマー200」90部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.6部を仕込み135℃に加熱し、約1時間反応を行い、樹脂酸価が1mgKOH/g以下になったところでミネラルスピリット294部を添加し、アクリル変性エポキシ樹脂(I-4)を得た。該樹脂溶液は、不揮発分60%、エポキシ当量623(固形分)であった。
【0052】
アクリル酸 6部
2-エチルヘキシルアクリレート 36部
スチレン 168部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 13部
【0053】
製造例3
ミネラルスピリット52部及び「エピクロンHP-820」240部を窒素気流下で135℃に加熱し、下記のビニルモノマー及び重合開始剤の混合物を2時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いでミネラルスピリット45部、「ハリダイマー200」60部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.6部を仕込み135℃に加熱し、約1時間反応を行い、樹脂酸価が1mgKOH/g以下になったところでミネラルスピリット294部を添加し、アクリル変性エポキシ樹脂(I-5)を得た。該樹脂溶液は、不揮発分60%、エポキシ当量680(固形分)であった。
【0054】
2-エチルヘキシルアクリレート 60部
スチレン 240部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 9部
【0055】
製造例4
ミネラルスピリット102部及び「エピクロンHP-820」600部を窒素気流下で135℃に加熱し、下記のビニルモノマー及び重合開始剤の混合物を2時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いでミネラルスピリット97部、「ハリダイマー200」180部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド1.2部を仕込み135℃に加熱し、約1時間反応を行い、樹脂酸価が1mgKOH/g以下になったところでミネラルスピリット588部を添加し、アクリル変性エポキシ樹脂(I-6)を得た。該樹脂溶液は、不揮発分60%、エポキシ当量623(固形分)であった。
【0056】
アクリル酸 12部
2-エチルヘキシルアクリレート 72部
スチレン 336部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 13部
【0057】
製造例5
ミネラルスピリット100部及び「エピクロンHP-820」588部を窒素気流下で135℃に加熱し、下記のビニルモノマー及び重合開始剤の混合物を2時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いでミネラルスピリット100部、「ハリダイマー200」168部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド1.2部を仕込み135℃に加熱し、約1時間反応を行った。さらにサリチル酸24部を仕込み、約1時間反応を行い、樹脂酸価が1mgKOH/g以下になったところでミネラルスピリット587部を添加し、アクリル変性エポキシ樹脂(I-7)を得た。該樹脂溶液は、不揮発分60%、エポキシ当量690(固形分)であった。
【0058】
アクリル酸 12部
2-エチルヘキシルアクリレート 72部
スチレン 336部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 13部
【0059】
製造例6(比較例用)
ミネラルスピリット127部及び「エピクロンHP-820」210部を窒素気流下で135℃に加熱し、下記のビニルモノマー及び重合開始剤の混合物を3時間で滴下し、滴下後1時間熟成した。次いでテトラブチルアンモニウムブロマイド0・3部を仕込み、約1時間反応を行い、樹脂酸価が1mgKOH/g以下になったところでミネラルスピリット250部を添加し、アクリル変性エポキシ樹脂(I-9)を得た。該樹脂溶液は、不揮発分60%、エポキシ当量785(固形分)であった。
【0060】
アクリル酸 16部
t-ブチルメタクリレート 39部
2-エチルヘキシルアクリレート 117部
スチレン 218部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート 23部
【0061】
塗料の作成
作成例1?5及び比較作成例1?4
下記表1に示す配合組成で、上記製造例で得た各樹脂溶液に顔料及び添加剤等を混合し、分散処理を行なって塗料用主剤を作成した。これに表1に示す硬化剤を主剤中のエポキシ基と硬化剤中の活性水素の当量比が1.0となるように配合し混合攪拌して各下塗り塗料を作成し、下記性能試験に供した。尚、比較作成例4の塗料として「エスコ」(関西ペイント社製、強溶剤希釈型2液型エポキシ樹脂塗料)を用いた。表1中の(注1)?(注7)は下記の通りである。
【0062】
(注1)「酸化鉄KP-105」:新日本金属化学工業(株)製、酸化鉄主体(有効成分97%)赤錆色着色顔料
(注2)「重質タンカルA」:竹原化学工業(株)製、炭酸カルシウム(体質顔料)
(注3)「Sタルク」:日本滑石精練(株)、酸化マグネシウム、アルミナ主成分の体質顔料
(注4)「ディスパロン6900-10X」:楠本化成(株)製、アマイドワックス系タレ止め剤
(注5)「BYK-066」:ビックケミージャパン(株)製、消泡剤
(注6)「バーサミンK-13」:コグニスジャパン(株)製、ケチミン化合物、活性水素当量91.0
【0063】
【表1】



・「【0072】
塗板の作成
実施例1?28及び比較例1?12
ボンデ鋼板面に、上記作成例及び比較作成例で得た各下塗り塗料を表2?表4に示す通りに刷毛塗りで塗付量120g/m^(2)となるように塗装し、20℃環境下で8時間及び24時間養生を行い、その上に表2?表4における中塗り塗料及び上塗り塗料を刷毛塗りで塗付量100g/m^(2)となるように塗装した際の、中塗り塗膜及び上塗り塗膜へのニジミを目視で評価した(○:ニジミが全く認められない、△:ニジミが若干認められる、×:ニジミが著しく認められる)。尚、使用した中塗り塗料及び上塗り塗料a?qは、下記の通りである。
【0073】
a:「セラマイルドグロス」、関西ペイント社製、有機溶剤(弱溶剤)希釈型アクリル樹脂系上塗り塗料
b:「エコレタン」、関西ペイント社製、有機溶剤(弱溶剤)希釈型ウレタン樹脂系上塗り塗料
c:「セラMレタン」、関西ペイント社製、有機溶剤(弱溶剤)希釈型ウレタン樹脂系上塗り塗料
d:「エコシリコン」、関西ペイント社製、有機溶剤(弱溶剤)希釈型シリコン樹脂系上塗り塗料
e:「ムキフッソ」、関西ペイント社製、有機溶剤(弱溶剤)希釈型シロキサン架橋フッ素樹脂系上塗り塗料
f:「セラアクリル」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型アクリル樹脂系上塗り塗料
g:「ラバテクト」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型塩化ゴム系上塗り塗料
h:「ラバテクト中塗り」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型塩化ゴム系中塗り塗料
i:「エポマリン」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型エポキシ樹脂系塗料
j:「レタン6000」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型ウレタン樹脂系上塗り塗料
k:「セラテクトU」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型ウレタン樹脂系上塗り塗料
l:「シリコテクトAC」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型シリコン樹脂系上塗り塗料
m:「カンペフロンHD」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型フッ素樹脂系上塗り塗料
n:「セラテクトF」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型フッ素樹脂系上塗り塗料
o:「アクアグロス」、関西ペイント社製、水希釈型アクリル樹脂系上塗り塗料
p:「アクアレタン」、関西ペイント社製、水希釈型ウレタン樹脂系上塗り塗料
q:「アクアシリコンAC」、関西ペイント社製、水希釈型シリコン樹脂系上塗り塗料
r:「ユニテクト20マイルド」、関西ペイント社製、有機溶剤(弱溶剤)希釈型エポキシアクリル樹脂系塗料
s:「ユニテクト30マイルド」、関西ペイント社製、有機溶剤(弱溶剤)希釈型エポキシアクリルシリコン樹脂系塗料
t:「ユニテクト20」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型エポキシアクリル樹脂系塗料
u:「ユニテクト30」、関西ペイント社製、有機溶剤希釈型エポキシアクリルシリコン樹脂系塗料
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、脂肪族炭化水素系溶剤及び高沸点芳香族炭化水素系溶剤に可溶で、耐衝撃性、指触乾燥性に優れた塗料組成物を下塗り塗料として用いて、その上に来る中塗り塗膜や上塗り塗膜の種類に寄らずに、これらの塗膜に硬化阻害等が生じることなく、複層塗膜を形成できる。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】



イ 甲1発明
甲1に記載された事項を、実施例15ないし17に関して整理すると、甲1には、次の発明が記載されていると認める。

<甲1実施例15発明>
「ボンデ鋼板面に、製造例1(当審注:甲1の【0049】の記載に基づいて製造されたもの。以下、同様。)で得たエポキシ当量749の変成エポキシ樹脂、酸化鉄KP-105、重質タンカルA、Sタルク、ディスパロン6900-10X、BYK-066及び石油系ナフサを、作成例1(当審注:甲1の表1の記載参照。以下、同様。)に示す配合組成で、混合して作成した塗料用主剤に、ケチミン化合物で活性水素当量91.0のバーサミンK-13及び石油系ナフサからなり、作成例1に示す配合割合からなる硬化剤を配合して得た下塗り塗料を塗装し、その上にアクアグロス(関西ペイント社製、水希釈型アクリル樹脂系上塗り塗料)を塗装する塗装方法。」

<甲1実施例16発明>
「ボンデ鋼板面に、製造例1で得たエポキシ当量749の変成エポキシ樹脂、酸化鉄KP-105、重質タンカルA、Sタルク、ディスパロン6900-10X、BYK-066及び石油系ナフサを、作成例1に示す配合組成で、混合して作成した塗料用主剤に、ケチミン化合物で活性水素当量91.0のバーサミンK-13及び石油系ナフサからなり、作成例1に示す配合割合からなる硬化剤を配合して得た下塗り塗料を塗装し、その上にアクアレタン(関西ペイント社製、水希釈型ウレタン樹脂系上塗り塗料)を塗装する塗装方法。」

<甲1実施例17発明>
「ボンデ鋼板面に、製造例1で得たエポキシ当量749の変成エポキシ樹脂、酸化鉄KP-105、重質タンカルA、Sタルク、ディスパロン6900-10X、BYK-066及び石油系ナフサを、作成例1に示す配合組成で、混合して作成した塗料用主剤に、ケチミン化合物で活性水素当量91.0のバーサミンK-13及び石油系ナフサからなり、作成例1に示す配合割合からなる硬化剤を配合して得た下塗り塗料を塗装し、その上にアクアシリコンAC(関西ペイント社製、水希釈型シリコン樹脂系上塗り塗料)を塗装する塗装方法。」

(2)甲4に記載された事項
甲4には、「厚膜形弾性断熱塗材及びこれを用いた塗装断熱工法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0023】この○1(当審注:○1は○付き数字の1である。以下、
同様。)の機能を付与するために、また○2のみを塗装する場合においても、断熱塗膜上に塗られる塗料が、形成塗膜の伸び率が20℃雰囲気で20%以上の弾性塗料であることが好ましい。ここで塗膜の伸び率は、恒温槽付万能引張試験機(島津製作所製。オ-トグラフAG2000B型)を用い、20℃において引張速度200mm/分で測定したときの値であり、測定に使用する試料はJIS-A-6909に従って作成したものである。」

・「【0042】実施例9?20及び比較例6?10
スレ-ト板上に水性シ-ラ-(「アレスGシ-ラ-」、関西ペイント社製、商品名)を塗布・乾燥させた試験板上に、上記の通り得られた各断熱塗材を上水で15,000?20,000cpsに粘度調整して、塗布量約5kg/m^(2 )となるように吹付け塗装し、20℃・65%RHの恒温恒湿室で1日間放置後、この上に表2に示す上塗り塗装の組み合せ及び順序で各上塗り塗料を同表に示す塗布量で塗装し、20℃・65%RHの恒温恒湿室で7日間乾燥して塗装板を得た。尚、比較例8、9は試験板上に断熱塗材を塗装せず直接表2に示す上塗り塗装を行なった。また実施例1の断熱塗膜上にeの上塗り塗料を塗装したところ、断熱塗膜が溶解してしまい膜を形成できなかった。
【0043】表2に示す上塗り塗料a?nは下記の通りである。
【0044】a. 「アレスホルダ-GII」:水性下地調整材、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率60%
b. 「ア-バンテリア」:水性厚膜形単層弾性上塗り塗料、低汚染形、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率350%
c. 「アレスゴムタイルラフ」:アクリルゴム系複層用主材、防水形、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率300%
d. 「アレスタイルラフ」:アクリルエマルション系複層用主材、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率1%
e. 「アレスセラレタン」:溶剤形アクリルウレタン樹脂系上塗り塗料、シリケ-ト配合による非汚染形、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率30%
f. 「アクアレタン」:水性アクリルウレタン樹脂系上塗り塗料、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率100%
g. 「アレスゴムタイルトップU」:溶剤形アクリルウレタン樹脂系クリヤ-塗料、柔軟形、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率200%
h. 「アレスアクアグロス」:水性アクリル樹脂系上塗り塗料、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率120%
i. 「アレスアクアシリコンAC」:水性アクリルシリコン樹脂系上塗り塗料、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率150%
j. 「オ-デフレシュF-100」:水性フッ素樹脂系上塗り塗料、日本ペイント社製、商品名
k. 「アレスア-バンテリアデコ」:水性厚膜形単層弾性上塗り塗料(玉吹き用)、低汚染形、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率350%
l. 「アレスセラマイルドレタン」:タ-ペン可溶ポリウレタン樹脂系上塗り塗料、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率40%
m. 「アレスセラマイルド」:タ-ペン可溶非水分散形アクリル樹脂系上塗り塗料、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率80%
n. 「アレスセラフッソ」:溶剤形非水分散形フッ素樹脂系上塗り塗料、関西ペイント社製、商品名、形成塗膜の伸び率100%」

2 甲1実施例15発明を主引用発明とした場合
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1実施例15発明を対比する。
甲1実施例15発明における「ボンデ鋼板」は本件特許発明1における「基材」に相当する。
甲1実施例15発明における「ケチミン化合物」である「バーサミンK-13」はアミン化合物であり、活性水素当量の値「91.0」をエポキシ当量の値「749」で割った値は「0.12」であるから、「エポキシ当量749の変成エポキシ樹脂」及び「ケチミン化合物で活性水素当量91.0のバーサミンK-13」を配合してなる甲1実施例15発明の「下塗り塗料」は本件特許発明1における「エポキシ樹脂とアミン硬化剤を含有」し、「前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が600g/eq以上2000g/eq以下であり」、「前記アミン硬化剤の活性水素当量が50g/eq以上150g/eq以下であり」、「前記アミン硬化剤の活性水素当量と前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、[アミン硬化剤の活性水素当量/エポキシ樹脂のエポキシ当量]で0.4未満であ」る「第1被膜形成材」に相当する。
甲1実施例15発明における「アクアグロス(関西ペイント社製、水希釈型アクリル樹脂系上塗り塗料)」は、甲4によると、形成塗膜の伸び率が20℃雰囲気下で120%の塗料であるから、本件特許発明1における「第2被膜形成材」と、「20℃雰囲気下での伸び率が30%以上800%以下の被膜を形成する」「第2被膜形成材」であるという限りにおいて一致する。
甲1実施例15発明における「塗装方法」は本件特許発明1における「基材に対し、第1被膜形成材、及び第2被膜形成材を順に塗付する」「被膜形成方法」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「基材に対し、第1被膜形成材、及び第2被膜形成材を順に塗付する被膜形成方法であって、
前記第1被膜形成材は、エポキシ樹脂とアミン硬化剤を含有し、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が600g/eq以上2000g/eq以下であり、
前記アミン硬化剤の活性水素当量が50g/eq以上150g/eq以下であり、
前記アミン硬化剤の活性水素当量と前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、[アミン硬化剤の活性水素当量/エポキシ樹脂のエポキシ当量]で0.4未満であり、
前記第2被膜形成材は、20℃雰囲気下での伸び率が30%以上800%以下の被膜を形成するものである被膜形成方法。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
「第2被膜形成材」に関して、本件特許発明1においては、「顔料容積濃度が20%以上80%以下」と特定されているのに対して、甲1実施例15発明においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
そこで、相違点1について判断する。
甲1実施例15発明における「下塗り塗料」は、製造例1で得たエポキシ当量749の変成エポキシ樹脂、酸化鉄KP-105、重質タンカルA、Sタルク、ディスパロン6900-10X、BYK-066及び石油系ナフサを混合したものであり、「酸化鉄KP-105」は赤錆色着色顔料であり、「重質タンカルA」及び「Sタルク」は体質顔料であり、残りの成分は顔料ではないから、甲1実施例15発明における「下塗り塗料」は赤錆色をおおむね呈するものであるといえるところ、このような「下塗り塗料」の上に塗布される「上塗り塗料」は「下塗り塗料」が呈する色を見えなくするようなものであるとは考えられない。すなわち、甲1実施例15発明における「上塗り塗料」には顔料は含まれないと解するのが相当である。
また、仮に顔料が含まれているといえたとしても、その容積濃度について、「20%以上80%以下」もの割合で配合されているとは通常考えられない。
したがって、相違点1は実質的な相違点である。
また、甲1を含め他の証拠のいずれにも、「下塗り塗料」が赤錆色である甲1実施例15発明において、「上塗り塗料」に顔料を「顔料容積濃度」が「20%以上80%以下」となるように含ませる動機付けとなる記載はなく
、したがって、甲1実施例15発明において、他の証拠に記載された事項を適用しても、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有するようにすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許明細書に記載された実施例2及び8並びに比較例4及び5の試験結果によると、本件特許発明1は、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することによって、「顔料容積濃度」が「20%」未満のものや「80%」より大きいものと比べて、仕上げ外観(膨れ、剥れ、割れ等)を目視にて評価した場合の仕上り性に優れるようになるという甲1実施例15発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲1実施例15発明であるとはいえないし、また、甲1実施例15発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2ないし4及び6について
請求項2ないし4及び6は請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明2ないし4及び6は、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例15発明であるとはいえないし、また、甲1実施例15発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明5について
請求項5は請求項1を間接的に引用するものであり、本件特許発明5は、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例15発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 甲1実施例16発明を主引用発明とした場合
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1実施例16発明を対比すると、甲1実施例16発明における「アクアレタン(関西ペイント社製、水希釈型ウレタン樹脂系上塗り塗料)」は、甲4によると、形成塗膜の伸び率が20℃雰囲気下で100%の塗料であるから、本件特許発明1における「第2被膜形成材」と、「20℃雰囲気下での伸び率が30%以上800%以下の被膜を形成する」「第2被膜形成材」であるという限りにおいて一致するから、両者は次の点で相違する。
<相違点2>
「第2被膜形成材」に関して、本件特許発明1においては、「顔料容積濃度が20%以上80%以下」と特定されているのに対して、甲1実施例16発明においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
そこで、相違点2について判断するに、相違点2は相違点1と同じであるから、判断も同様である。
すなわち、相違点2は実質的な相違点であり、また、甲1実施例16発明において、他の証拠に記載された事項を適用しても、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有するようにすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないし、本件特許発明1は、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することによって、甲1実施例16発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲1実施例16発明であるとはいえないし、また、甲1実施例16発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2ないし6について
請求項2ないし6は請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例16発明であるとはいえないし、また、甲1実施例16発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

4 甲1実施例17発明を主引用発明とした場合
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1実施例17発明を対比すると、甲1実施例17発明における「アクアシリコンAC(関西ペイント社製、水希釈型シリコン樹脂系上塗り塗料)」は、甲4によると、形成塗膜の伸び率が20℃雰囲気下で150%の塗料であるから、本件特許発明1における「第2被膜形成材」と、「20℃雰囲気下での伸び率が30%以上800%以下の被膜を形成する」「第2被膜形成材」であるという限りにおいて一致するから、両者は次の点で相違する。
<相違点3>
「第2被膜形成材」に関して、本件特許発明1においては、「顔料容積濃度が20%以上80%以下」と特定されているのに対して、甲1実施例17発明においては、そのようには特定されていない点。

イ 判断
そこで、相違点3について判断するに、相違点3は相違点1と同じであるから、判断も同様である。
すなわち、相違点3は実質的な相違点であり、また、甲1実施例17発明において、他の証拠に記載された事項を適用しても、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を有するようにすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえないし、本件特許発明1は、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することによって、甲1実施例17発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲1実施例17発明であるとはいえないし、また、甲1実施例17発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)本件特許発明2ないし6について
請求項2ないし6は請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例17発明であるとはいえないし、また、甲1実施例17発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

5 甲1の実施例1ないし14及び18ないし28に基づいて甲1発明を認定した場合
特許異議申立人は、実施例1ないし14及び18ないし28に基づいて認定した甲1発明からも、新規性違反及び進歩性違反を主張しているので、以下、検討する。
甲1の実施例1ないし14及び18ないし28に基づいて甲1発明を認定した場合、下塗り塗料の成分である変成エポキシ樹脂や上塗り塗料の種類が異なるものの、甲1実施例15発明とほぼ同様の発明を認定することができる。
そこで、本件特許発明1と甲1の実施例1ないし14及び18ないし28に基づいて認定した甲1発明を対比するに、一致点は上記2(1)アと同様であり、少なくとも相違点1と同様の点で相違する。
そして、この相違点についての判断は上記2(1)イと同様である。
したがって、実施例1ないし14及び18ないし28に基づいて甲1発明を認定した場合でも、本件特許発明1ないし6は甲1発明であるとはいえないし、また、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

6 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲1に記載の上塗り塗料21種類の中には本件特許発明1における「前記第2被膜形成材は、顔料容積濃度が20%以上80%以下、20℃雰囲気下での伸び率が30%以上800%以下の被膜」の範囲と重複している上塗り塗料が存在している蓋然性が極めて高い旨主張している(特許異議申立書第15ページ第15ないし18行)。
しかし、特許異議申立人の上記主張は根拠がなく、そして、甲1に記載の上塗り塗料は、顔料を含まないものであるか、顔料を含むとしてもその容積濃度を「20%以上80%以下」もの割合で配合するのが容易でないことは、上記検討のとおりである。

第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-10-30 
出願番号 特願2016-75127(P2016-75127)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B05D)
P 1 651・ 113- Y (B05D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 市村 脩平  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 加藤 友也
神田 和輝
登録日 2020-02-03 
登録番号 特許第6654496号(P6654496)
権利者 ベック株式会社
発明の名称 被膜形成方法  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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