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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G06Q
審判 一部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1369021
異議申立番号 異議2020-700714  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-18 
確定日 2020-12-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第6667862号発明「プログラム及び情報処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6667862号の請求項1,3,5,6及び8に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6667862号の請求項1,3,5,6及び8に係る特許についての出願は,令和元年7月18日に出願され,令和2年2月28日にその特許権の設定登録がされ,令和2年3月18日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,令和2年9月18日に特許異議申立人遠藤眞理子(以下,「異議申立人」という。)は,特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6667862号の請求項1,3,5,6及び8の特許に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」,…,「本件発明8」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1,3,5,6及び8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ユーザの端末装置と通信可能なコンピュータを,
ユーザの出発地情報及びユーザのスケジュールを記憶する記憶手段,
前記端末装置に表示されるウェブページの旅行に関する広告に対してユーザの操作があった場合に,当該ユーザの出発地情報及びスケジュールを前記記憶手段から取得するとともに,当該広告に紐づけられている目的地情報を,前記記憶手段,前記端末装置又は前記ウェブページを管理するサーバ装置から取得する取得手段,
前記取得手段が取得したスケジュールに基づき,出発日時を決定し,決定した出発日時に基づき,前記取得手段が取得した出発地情報が示す出発地から前記取得手段が取得した目的地情報が示す目的地までの移動経路を検索する検索手段,
前記検索手段の検索結果を前記端末装置に出力して前記旅行を実現可能な移動経路を前記ユーザに提案する提案手段,
として機能させるためのプログラム。
【請求項3】
ユーザの端末装置と通信可能なコンピュータを,
ユーザの出発地情報,及び交通に関するユーザの嗜好情報を記憶する記憶手段,
前記端末装置に表示されるウェブページの旅行に関する広告に対してユーザの操作があった場合に,当該ユーザの出発地情報及び嗜好情報を前記記憶手段から取得するとともに,当該広告に紐づけられている目的地情報を,前記記憶手段,前記端末装置又は前記ウェブページを管理するサーバ装置から取得する取得手段,
前記取得手段が取得した出発地情報が示す出発地から前記取得手段が取得した目的地情報が示す目的地までの移動経路を検索する検索手段,
前記検索手段の検索結果が複数の場合,前記取得手段が取得した嗜好情報に基づき,前記複数の検索結果の中から検索結果を抽出し,抽出した検索結果を前記端末装置に出力して前記旅行を実現可能な移動経路を前記ユーザに提案する提案手段,
として機能させるためのプログラム。
【請求項5】
ユーザの端末装置と通信可能なコンピュータを,
ユーザの出発地情報を記憶する記憶手段,
前記端末装置に表示されるウェブページの旅行に関する広告に対してユーザの操作があった場合に,当該ユーザの出発地情報を前記記憶手段から取得するとともに,当該広告に紐づけられている目的地情報及び経由地情報を,前記記憶手段,前記端末装置又は前記ウェブページを管理するサーバ装置から取得する取得手段,
前記取得手段が取得した前記経由地情報に基づき,前記取得手段が取得した出発地情報が示す出発地から前記取得手段が取得した目的地情報が示す目的地までの移動経路を検索する検索手段,
前記検索手段の検索結果を前記端末装置に出力して前記旅行を実現可能な移動経路を前記ユーザに提案する提案手段,
として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
ユーザの端末装置と通信可能なコンピュータを,
ユーザの出発地情報を記憶する記憶手段,
前記端末装置に表示されるウェブページの旅行に関する広告に対してユーザの操作があった場合に,当該ユーザの出発地情報を前記記憶手段から取得するとともに,当該広告に紐づけられている目的地情報を,前記記憶手段,前記端末装置又は前記ウェブページを管理するサーバ装置から取得する取得手段,
前記取得手段が取得した出発地情報が示す出発地から前記取得手段が取得した目的地情報が示す目的地までの移動経路を検索する検索手段,
前記検索手段の検索結果を前記端末装置に出力して前記旅行を実現可能な移動経路を前記ユーザに提案する提案手段,
前記提案に対して前記ユーザからの承認が得られた場合,承認が得られた移動経路の料金を含む旅行代金を決済する決済手段,
前記決済手段の決済が完了した場合,前記承認が得られた移動経路をユーザの移動スケジュールとして前記記憶手段に記憶するスケジュール追加手段,
として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
ユーザの端末装置と通信可能な情報処理装置であって,
ユーザの出発地情報及びユーザのスケジュールを記憶する記憶手段と,
前記端末装置に表示されるウェブページの旅行に関する広告に対してユーザの操作があった場合に,当該ユーザの出発地情報及びスケジュールを前記記憶手段から取得するとともに,当該広告に紐づけられている目的地情報を,前記記憶手段,前記端末装置又は前記ウェブページを管理するサーバ装置から取得する取得手段と,
前記取得手段が取得したスケジュールに基づき,出発日時を決定し,決定した出発日時に基づき,前記取得手段が取得した出発地情報が示す出発地から前記取得手段が取得した目的地情報が示す目的地までの移動経路を検索する検索手段と,
前記検索手段の検索結果を前記端末装置に出力して前記旅行を実現可能な移動経路を前記ユーザに提案する提案手段と,
を備える情報処理装置。」

3 申立理由の概要
異議申立人は,主たる証拠として特開2013-15484号公報(甲第1号証)を提出し,請求項5に係る特許は,特許法29条1項3号の規定に違反してされたものである(理由1),又は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(理由2)から請求項5に係る特許を取り消すべきものであり,
特許異議申立人は,上記主たる証拠並びに従たる証拠として特開2002-157307号公報(甲第2号証)及び特開2012-128538号公報(甲第3号証)を提出し,請求項1及び8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(理由3)から,請求項1及び8に係る特許を取り消すべきものであり,
特許異議申立人は,上記主たる証拠並びに従たる証拠として上記甲第2号証,上記甲第3号証及び特開2017-41240号公報(甲第4号証)を提出し,請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(理由4)から,請求項3に係る特許を取り消すべきものであり,
さらに,特許異議申立人は,上記主たる証拠及び従たる証拠として上記甲第2号証を提出し,請求項6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(理由5)から,請求項6に係る特許を取り消すべきものであると主張する。

4 甲号証の記載
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載
甲第1号証には,次のとおり,記載されている。

「【0012】
本発明による旅行計画支援システムは,図1に示すように,さまざまな旅行計画を記憶したデータベース(以下「旅行計画DB」と称する)2と接続され,事業会社のカーナビゲーションポータルサイトを構成する旅行計画支援サーバ1と,インターネット回線3を介し旅行計画DB2に記憶された旅行計画を閲覧できるクライアント端末を構成するパソコン端末5,6を備えている。なお,図1ではパソコン端末5,6を一台ずつ図示しているが,実際にはユーザの数に応じて多数のパソコン端末5,6がインターネット回線3に接続されている。
【0013】(省略)
【0014】
パソコン端末5は,管理者会員が使用するパソコン端末である。一方パソコン端末6は,管理者以外の閲覧者会員が使用するパソコン端末である。これらパソコン端末5,6を操作することにより,ナビゲーションポータルサイトの各会員は,旅行計画支援サーバ1のパブリックサーバ領域1aについては,すべての情報に自由にアクセスできる。一方,コミュニティサーバ領域1bについては,当該会員が所属しているコミュニティの情報のみアクセス可能であり,これは自由にアップロードおよびダウンロードもすることができる。
【0015】
まず,ナビゲーションポータルサイトの旅行計画支援サーバ1を利用するために,ユーザは会員登録をする。その会員登録時に,基準位置情報として,自宅の位置情報を含む自宅POI(Point of interest)を登録し,旅行計画支援サーバ1に保存することができる。この旅行計画支援サーバ1では,様々な種類の施設について,その施設の緯度,経度,住所,電話番号などの情報がPOIとして提供されており,その中に自宅POIも含まれる。各POIはその施設の種類を表す情報を有しており,その中に自宅かどうかを判定するための自宅フラグの情報も含まれる。なお,自宅POIはそれを登録したユーザおよび当該ユーザが公開を許可した他のユーザのみに公開し,それ以外のユーザには公開しないことが好ましい。
【0016】
ここで,旅行計画支援サーバ1とそれぞれのパソコン端末5,6の間では,次の手順で情報の授受が行われる。
【0017】
図2を参照して,旅行計画支援サーバ1とパソコン端末5,6との間における情報授受の手順を説明する。ステップ1で,管理者会員は,パソコン端末5を用いて,事業会社のナビゲーションポータルサイトで提供される旅行計画DB2に保存された旅行計画やこの計画に修正を加えあるいはユーザ独自で旅行計画を作成し,旅行計画支援サーバ1のコミュニティサーバ領域1bにアップロードする。図3は,この作成された旅行計画のパソコン端末5上での表示画面例を示す。すなわち,管理者会員の自宅から,集合場所等の経由地を通り目的地へ向かうルートとタイムスケジュールを併記した旅行計画の表示画面である。この時に,各閲覧者会員(同一コミュニティに所属しており閲覧を許可する会員)のURLを同時にコミュニティサーバ領域1b上にアップロードする。そこで,旅行計画支援サーバ1はアップロードされた旅行計画をコミュニティ領域1bに記憶する。
【0018】
ステップ2で,閲覧者会員は,パソコン端末6からポータルサイトにアクセスし,旅行計画支援サーバ1に旅行計画の表示を要求する。すると旅行計画支援サーバ1は,管理者会員が入力したURLをもとにパソコン端末6を操作している閲覧者会員が管理者会員と同じコミュニティに所属している会員であるか否かを判断し,同じコミュニティに所属している会員であれば旅行計画の表示を許可して次のステップへ進む。一方,パソコン端末6を操作している閲覧者会員が管理者会員と同じコミュニティに所属している会員ではない場合,旅行計画支援サーバ1は旅行計画の表示を禁止し,その旨をパソコン端末6へ通知して処理を中断する。
【0019】(省略)
【0020】
ステップ6で,旅行計画支援サーバ1は,登録済みの自宅POIまたはステップ5で受信した自宅POIを基準位置として読み込む。ステップ7では,ステップ1でアップロードされた旅行計画における自宅とステップ6で読み込んだ自宅POIが一致するか否かを判定する。これらが一致する場合,すなわちステップ2で旅行計画の表示要求を行ったのが管理者会員である場合はステップ10へ進む。一方,旅行計画における自宅と自宅POIが一致しない場合,すなわちステップ2で旅行計画の表示要求を行ったのが管理者会員以外の会員である場合はステップ8へ進む。
【0021】
ステップ8で,旅行計画支援サーバ1は,ステップ6で読み込んだ自宅POIにより旅行計画の自宅を書き換える。ステップ9では,ステップ8で書き換えられた自宅を出発地として,そこから目的地までの経路探索を行うことにより,管理者会員のパソコン端末5からアップロードされた元の旅行計画とは別に新たな旅行計画を算出し,その算出結果を記憶する。このとき前述のように集合場所等の経由地が設定されている場合は,その経由地までの経路探索を行い,経由地から目的地までは元の旅行計画と同じにすればよい。ステップ10では,閲覧者会員のパソコン端末6に対して,ステップ9で記憶した新たな旅行計画を送信する。
【0022】
ステップ11で,閲覧者会員のパソコン端末6は,ステップ10で旅行計画支援サーバ1から送信された旅行計画を表示する。この旅行計画ではステップ8の処理により,出発地が管理者会員の自宅から閲覧者会員の自宅POIに置き換えられている。これにより,図4では図3と比べて,閲覧者会員の自宅POIを出発地として,そこから集合場所としての経由地を通って目的地に至るルートに変更されている。
【0023】
ステップ12で,パソコン端末6は,ステップ11で表示した旅行計画をSDカード等の可搬型のメモリ手段に保存する。これにより,旅行計画支援システムで会員同士が最終的に同意した旅行計画は,メモリ手段を介して各会員のカーナビゲーション装置や携帯端末へ移行され,旅行計画が実行されることとなる。もちろんこれら外部端末がインターネットに接続できる場合は,旅行計画支援サーバ1に直接アクセスして旅行計画を直接ダウンロードすることができる。」

イ 甲第1号証の記載から読み取れる事項
「【0012】
本発明による旅行計画支援システムは,…事業会社のカーナビゲーションポータルサイトを構成する旅行計画支援サーバ1と,インターネット回線3を介し旅行計画DB2に記憶された旅行計画を閲覧できるクライアント端末を構成するパソコン端末5,6を備えている。…」
「【0014】
パソコン端末5は,管理者会員が使用するパソコン端末である。一方パソコン端末6は,管理者以外の閲覧者会員が使用するパソコン端末である。…」
との記載から,「事業会社のカーナビゲーションポータルサイトを構成する旅行計画支援サーバ1と,インターネット回線3を介して接続される,管理者会員が使用するパソコン端末5,閲覧者会員が使用するパソコン端末6を備える旅行計画支援システム」が読み取れる。

「【0015】
…ユーザは会員登録をする。その会員登録時に,基準位置情報として,自宅の位置情報を含む自宅POI(Point of interest)を登録し,旅行計画支援サーバ1に保存することができる。」
との記載から,「ユーザは会員登録時に,自宅の位置情報を含む自宅POI(Point of interest)を登録し,旅行計画支援サーバ1に保存」することが読み取れる。

「【0017】
図2を参照して,旅行計画支援サーバ1とパソコン端末5,6との間における情報授受の手順を説明する。ステップ1で,管理者会員は,パソコン端末5を用いて,事業会社のナビゲーションポータルサイトで提供される旅行計画DB2に保存された旅行計画やこの計画に修正を加えあるいはユーザ独自で旅行計画を作成し,旅行計画支援サーバ1のコミュニティサーバ領域1bにアップロードする。図3は,この作成された旅行計画のパソコン端末5上での表示画面例を示す。すなわち,管理者会員の自宅から,集合場所等の経由地を通り目的地へ向かうルートとタイムスケジュールを併記した旅行計画の表示画面である。この時に,各閲覧者会員(同一コミュニティに所属しており閲覧を許可する会員)のURLを同時にコミュニティサーバ領域1b上にアップロードする。そこで,旅行計画支援サーバ1はアップロードされた旅行計画をコミュニティ領域1bに記憶する。」
との記載から,「管理者会員は,パソコン端末5を用いて,集合場所等の経由地を通り目的地へ向かうルートとタイムスケジュールを併記した旅行計画を作成し,旅行計画支援サーバ1のコミュニティサーバ領域1bにアップロードし,旅行計画支援サーバ1はアップロードされた旅行計画をコミュニティ領域1bに記憶」することが読み取れる。

「【0018】
ステップ2で,閲覧者会員は,パソコン端末6からポータルサイトにアクセスし,旅行計画支援サーバ1に旅行計画の表示を要求する。…」
との記載から,「閲覧者会員は,パソコン端末6からポータルサイトにアクセスし,旅行計画支援サーバ1に旅行計画の表示を要求」することが読み取れる。

「【0020】
ステップ6で,旅行計画支援サーバ1は,登録済みの自宅POIまたはステップ5で受信した自宅POIを基準位置として読み込む。…」
「【0021】
ステップ8で,旅行計画支援サーバ1は,ステップ6で読み込んだ自宅POIにより旅行計画の自宅を書き換える。ステップ9では,ステップ8で書き換えられた自宅を出発地として,そこから目的地までの経路探索を行うことにより,管理者会員のパソコン端末5からアップロードされた元の旅行計画とは別に新たな旅行計画を算出し,その算出結果を記憶する。このとき前述のように集合場所等の経由地が設定されている場合は,その経由地までの経路探索を行い,経由地から目的地までは元の旅行計画と同じにすればよい。ステップ10では,閲覧者会員のパソコン端末6に対して,ステップ9で記憶した新たな旅行計画を送信する。」
との記載から,「旅行計画支援サーバ1は,登録済みの自宅POIを基準位置として読み込み,自宅POIにより旅行計画の自宅を書き換え,書き換えられた自宅を出発地として,そこから目的地までの経路探索を行うことにより,パソコン端末5からアップロードされた元の旅行計画とは別に新たな旅行計画を算出し,このとき集合場所等の経由地が設定されている場合は,その経由地までの経路探索を行い,経由地から目的地までは元の旅行計画と同じにし,パソコン端末6に対して,新たな旅行計画を送信」することが読み取れる。

「【0022】
ステップ11で,閲覧者会員のパソコン端末6は,ステップ10で旅行計画支援サーバ1から送信された旅行計画を表示する。…」
との記載から,「パソコン端末6は,旅行計画支援サーバ1から送信された旅行計画を表示する」ことが読み取れる。

ウ 引用発明1
上記イに示したところによれば,甲第1号証には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「 事業会社のカーナビゲーションポータルサイトを構成する旅行計画支援サーバ1と,インターネット回線3を介して接続される,管理者会員が使用するパソコン端末5,閲覧者会員が使用するパソコン端末6を備える旅行計画支援システムであって,
ユーザは会員登録時に,自宅の位置情報を含む自宅POI(Point of interest)を登録し,旅行計画支援サーバ1に保存し,
管理者会員は,パソコン端末5を用いて,集合場所等の経由地を通り目的地へ向かうルートとタイムスケジュールを併記した旅行計画を作成し,旅行計画支援サーバ1のコミュニティサーバ領域1bにアップロードし,旅行計画支援サーバ1はアップロードされた旅行計画をコミュニティ領域1bに記憶し,
閲覧者会員は,パソコン端末6からポータルサイトにアクセスし,旅行計画支援サーバ1に旅行計画の表示を要求し,
旅行計画支援サーバ1は,登録済みの自宅POIを基準位置として読み込み,自宅POIにより旅行計画の自宅を書き換え,書き換えられた自宅を出発地として,そこから目的地までの経路探索を行うことにより,パソコン端末5からアップロードされた元の旅行計画とは別に新たな旅行計画を算出し,このとき集合場所等の経由地が設定されている場合は,その経由地までの経路探索を行い,経由地から目的地までは元の旅行計画と同じにし,パソコン端末6に対して,新たな旅行計画を送信し,
パソコン端末6は,旅行計画支援サーバ1から送信された旅行計画を表示する,
旅行計画支援システム。」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載
甲第2号証には,次のとおり,記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,携帯端末を所有する旅行者に対し,輸送機関や宿泊施設等の旅行情報を提供する旅行情報提供システム,及び記録媒体に関する。」

「【0012】旅行情報提供サーバ10は,旅行サービスを提供する旅行会社によって管理される端末であり,インターネット上のWebサイトにおいて,各種旅行情報を提供するためのHP(ホームページ)を開設する。このHPで旅行情報提供サーバ10が提供する各種旅行情報とは,旅行会社が提供するツアー旅行情報,旅行者が利用する輸送機関のチケット情報(利用機関名,発車時刻,出発地,目的地,所要時間等),旅行者が利用する宿泊施設のチケット情報(宿泊日,宿泊施設名,住所,最寄り駅等),位置検出サーバ14によって検出される携帯端末12の現在位置情報,及び携帯端末11の現在位置情報に基づいて近隣の店舗や観光施設を紹介する近隣紹介情報等である。」

「【0021】図2は,旅行情報提供サーバ10の要部構成を示すブロック図である。この図2において,旅行情報提供サーバ10は,CPU(Central ProcessingUnit)101,表示部102,入力部103,伝送制御部104,RAM(Random Access Memory)105,記憶装置106,記憶装置106が有する記録媒体107等を備えて構成され,記録媒体107を除く各部はバス108により接続されている。」

「【0034】記憶装置106は,プログラムやデータ等があらかじめ記憶されている記録媒体107を有しており,この記録媒体107は磁気的,光学的記録媒体,若しくは半導体メモリで構成されている。この記録媒体107は記憶装置106に固定的に設けられもの,若しくは着脱自在に装着するものであり,この記録媒体107には,前記サーバプログラム,前記システムプログラム及び当該システムに対応する各種アプリケーションプログラム,通信制御処理プログラム,及び各種処理プログラムで処理されたデータ,文書データ等を記憶する。」

「【0036】図5は,記録媒体107に格納される各種ファイルの構成の一例を示した図である。記録媒体107には,端末情報ファイル107a,旅行情報ファイル107b,サポート情報ファイル107c,及び近隣情報ファイル107dが格納される。
【0037】(省略)
【0038】旅行情報ファイル107bには,旅行者が利用する輸送機関及び宿泊施設のチケット情報が,携帯端末11毎にツアーコードやユーザIDと対応付けられて旅行情報として記憶されている。この旅行情報は,携帯端末11,輸送機関端末12,及び宿泊施設端末13のそれぞれに送信される。そして,輸送機関端末12及び宿泊施設端末13は,この旅行情報提供サーバ10から送信される旅行情報と,携帯端末11から送信される旅行情報とからユーザIDを確認して旅行者を特定し,チケット情報に示される各種サービスを提供する。
【0039】図6に示す図は,旅行情報ファイル107bに格納される旅行情報の一例を示す図である。この図において,旅行情報は各携帯端末11毎に,「ツアーコード」,「ユーザコード」,「種別」,「チケット内容」,及び「利用日」といった項目が設定されている。まず,「ツアーコード」には,旅行者が利用するツアー旅行のコード番号「SUWA1234」が設定されており,「ユーザコード」には,旅行者の所有する携帯端末11を特定するためのユーザID「JPTK0123456」が設定される。
【0040】また,「種別」には,旅行者が利用できる輸送機関や宿泊施設の種別が設定され,輸送機関の場合は,さらに「JR」及び「バス」等の種類が設定される。宿泊施設の場合は,「宿泊」として設定される。そして,「チケット内容」には,旅行者が利用できるサービスの詳細な内容が設定されており,「種別」が輸送機関の場合は,利用できるチケットの種類及び利用区間として,「乗車券(新宿→茅野)」,「特急券(新宿→茅野)」,「乗車券(茅野→白樺湖)」等が設定される。「種別」が宿泊施設の場合は,「宿泊券○○ホテル」として,宿泊施設名が設定される。さらに「利用日」には,それぞれのサービスが利用できる日時が,「2000/10/15」として設定される。
【0041】図5に戻り,サポート情報ファイル107cには,後述するサポート情報提供処理(図11参照)によって生成されるサポート情報が格納される。このサポート情報は,位置検出サーバ14により検出される携帯端末11の現在位置情報と,この現在位置情報に基づいて,現在地から次の目的地に移動するための交通手段の情報を提供する。あるいは,このサポート情報ファイル107cには,サポート情報ファイルを生成するための,各種輸送機関の時刻表等の情報が格納されている。」

「【0079】ここで,希望するツアー旅行を選択してクリックすると,さらに詳細な申し込み画面(図示せず)が表示され,その画面上において携帯端末11の所有者は氏名,携帯端末番号,住所等の申し込みに必要な情報を入力し,旅行情報提供サーバ10に送信して申し込みの指示を完了する。」
【0080】次に,旅行情報提供サーバ10のCPU101によって実行されるサポート情報提供処理について図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0081】CPU101は,ステップS201において,携帯端末11から,サポート情報要求の指示が送信されるのを待機する。指示が送信された場合は,サポート情報要求の指示とともに送信される携帯端末番号を取得して,ステップS202に移行する。
【0082】?【0089】(省略)
「【0090】図8に示す図は,上記サポート情報提供処理において生成されるサポート情報が,携帯端末11の表示画面上に示される表示例を示した図である。サポート情報は,現在地から次の目的地へ移動するための交通手段を知らせる情報であり,この図においては,まず,「次の交通手段」として,「JR中央線新宿駅」が指示されている。
【0091】そして,「あなたの現在位置」として「東京都新宿区歌舞伎町1丁目2番地」のように,旅行者が現在いる場所を住所にて知らせ,さらに,「詳細内容」として「スーパーあずさ5号 松本行き 10:00発」のように,列車名及び発車時間等が指示されている。さらに,「次の目的地」として,「茅野駅」が指示され,「所要時間」が「2時間3分」として指示されている。」

「【0137】CPU101は,携帯端末11からツアー旅行の申し込みの指示が送信されるとステップS304に移行して,希望ツアーコード,申込者氏名,携帯端末番号,住所等の申し込みに必要な情報が漏れなく指示されているかを判断し,指示が完了していない場合は,ステップS303に戻って,指示を待機する。指示が完了している場合は,ステップS305に移行する。
【0138】CPU101は,ステップS305において,さらに携帯端末11から最終目的地が指定されたか否かを確認する。最終目的地が指定されていない場合は,ステップS303に戻って,指示を待機し,最終目的地が指定された場合は,ステップS306に移行して,携帯端末11から送信された申し込みに必要な情報からユーザID及びチケット情報を含む旅行情報を生成し,ステップS307に移行する。
【0139】CPU101は,ステップS306において生成した旅行情報を携帯端末11に送信するとともに,このツアー旅行によって利用される輸送機関端末12及び宿泊施設端末13にもそれぞれ旅行情報を送信する。そして,ステップS308に移行して,携帯端末11から旅行開始の指示が送信されるのを待機する。」

イ 引用発明2
上記アの記載によれば,甲第2号証には,以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「 携帯端末を所有する旅行者に対し,輸送機関や宿泊施設等の旅行情報を提供する旅行情報提供システムであって(【0001】),
旅行情報提供サーバ10は,記録媒体107に,旅行情報ファイル107b,サポート情報ファイル107cを格納し(【0036】,【0021】,【0034】),
旅行情報ファイル107bには,旅行者が利用する輸送機関及び宿泊施設のチケット情報として(【0038】),「JR」や「バス」等の輸送機関のチケットの種類,利用区間,及び利用日時と,宿泊施設の宿泊施設名及び利用日時が記憶され(【0040】),
サポート情報ファイル107cには,サポート情報として,位置検出サーバ14により検出される携帯端末11の現在位置情報と,この現在位置情報に基づいて,現在地から次の目的地に移動するための交通手段の情報が格納され(【0041】),
旅行情報提供サーバ10は,携帯端末11からツアー旅行の申し込みの指示が送信されると,チケット情報を含む旅行情報を生成し(【0079】,【0137】,【0138】),
旅行情報提供サーバ10は,携帯端末11から,サポート情報要求の指示が送信されるのを待機し(【0080】,【0081】),
旅行情報提供サーバ10は,サポート情報提供処理において生成されるサポート情報を,携帯端末11の表示画面上に示す(【0090】),
旅行情報提供システム。」

(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載
甲第3号証には,次のとおり,記載されている。

「【請求項1】
通信ネットワークを介して接続されたユーザ端末から送信されたページリクエストに応じて,複数の広告を記憶しているデータベースを参照し,ウェブページ内の所定領域に表示する広告を決定する配信広告決定手段と,
キーワードを含む広告属性を各広告に関連づけて記憶しているデータベースを参照し,前記配信広告決定手段により決定した広告に関連づけられた前記広告属性を取得する広告属性取得手段と,
個人管理情報を各ユーザの識別子に関連づけて記憶しているデータベースを参照し,前記ページリクエストに含まれるユーザの識別子と前記広告属性取得手段により取得された前記広告属性とに基づいて,該当する個人管理情報を取得する個人管理情報取得手段と,
前記配信広告決定手段により決定した広告と前記個人管理情報取得手段により取得された個人管理情報とを紐づけて表示するページデータを生成するページデータ生成手段と,
前記ページデータ生成手段により生成されたページデータを,前記ユーザ端末に対して送信するページデータ送信手段と,を備えたことを特徴とする情報配信装置。」

「【0001】
本発明は,ウェブ広告の配信に連動して個人管理情報を提供する技術に関する。」

「【0008】
そこで,本発明の目的とするところは,上記双方の課題を一度に解決すべく,ユーザが日常的に行うウェブページ閲覧の際に,そのウェブページ内に表示させる広告に連動させてユーザがサーバ上で管理する個人管理情報を提供することで,個人管理情報をユーザが管理する際の利便を向上させつつ,広告効果を高めることにある。」

「【0032】
なお,より具体的な態様では,個人管理情報には,ユーザが行動を予定している日時及び場所を含むスケジュール情報と,ユーザの知人や友人の連絡先や住所を含むアドレス情報とが含まれている。そして,個人管理情報取得手段44は,ページリクエストに含まれるユーザの識別子に関連づけられた個人管理情報から,広告属性取得手段43により取得された広告属性に含まれる日時及び場所を示すキーワードに該当するスケジュール情報,或いは,広告属性取得手段43により取得された広告属性に含まれる場所を示すキーワードに該当するアドレス情報を個人管理情報として取得する。」

「【0047】
アドレス情報DB14は,図5に示すように,前述の「ユーザID」に,アドレス情報を関連づけて記憶している。アドレス情報は,ユーザの知人の氏名を示す「氏名」,知人のメールアドレスや電話番号を示す「連絡先」,知人の自宅住所や勤務先住所を示す「場所」,知人の生年月日を示す「生年月日」,知人の趣味や嗜好等のプロフィールを示す「プロフィール」といった各種データを含む。」

イ 引用発明3
上記アの記載によれば,甲第3号証には,以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「ウェブ広告の配信に連動して個人管理情報を提供する技術に関する情報配信装置であって(【請求項1】,【0001】,【0008】),
個人管理情報を各ユーザの識別子に関連づけて記憶しているデータベースを参照し,個人管理情報を取得する個人管理情報取得手段を備え(【請求項1】),
個人管理情報には,ユーザが行動を予定している日時及び場所を含むスケジュール情報と,ユーザの知人や友人の住所を含むアドレス情報とが含まれており(【0032】),
アドレス情報は,知人の自宅住所や勤務先住所を示す「場所」,知人の趣味や嗜好等のプロフィールを示す「プロフィール」といった各種データを含む(【0047】),
ことを特徴とする情報配信装置(【請求項1】)。」

(4)甲第4号証
ア 甲第4号証の記載
甲第4号証には,次のとおり,記載されている。

「【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は,旅行計画に関し,個人的な要因に基づいて旅行をランク付けするためのシステム及び方法に関連して特定の用途を見出す。」

「【0030】
1.嗜好情報66:異なる潜在的な輸送モードの使用及び乗り継ぎ回数に関連したユーザの嗜好。考えられる輸送モードは,例えば,場所において利用可能なモードに応じて,徒歩,(例えば,ユーザの個人車両による)運転,トラム,自転車,電車,飛行機及びボートの一部又は全てを含むことができる。輸送モードは,少なくとも1つの公共交通機関モード(例えば,バス,トラム,又は電車)と,少なくとも1つの個人輸送モード(例えば,自動車,自転車,徒歩)を含むことができる。輸送モードのうちの1つ以上は,ディーゼル又は電動バスなどの汚染CO2生成を直接的又は間接的にもたらすモータによって電力供給されてもよい一方で,輸送の1つ以上のモードは,徒歩や自転車などの人力としてもよい。輸送モードのいくつかは,他のものよりも高い金銭的コストに関連付けられてもよく,例えば,バスは,電車よりも安くすることができるが,これはまた,特定旅行のチケット価格の関数であってもよい。
【0031】
モードの嗜好は,ユーザによって規定(規定された嗜好72)及び/又はシステムによって推定(推定された嗜好74)することができる。推定された嗜好74は,規定された嗜好72についてユーザから収集されたもの以外の情報単独に基づいて,システムによって計算されることができる。いくつかの実施形態において,規定された嗜好は,数学的又は他の評価法を使用して,例えば,(5が最も好ましく且つ0が最も好ましくない0?5の評価などの)所定の数値範囲内の数値を使用して,ユーザによって規定されることができる。他の実施形態において,ユーザは,「私はトラムを使用することが好き」又は「私は本当にバスを使用することが好きではない」などのテキストの嗜好を提供することができ,それらは規定された嗜好についての対応する数値評価を特定するようにシステムによって処理される。推定された嗜好74は,ユーザによって行われる選択を反映し,ユーザの前の行動から導出される。これらは,システムによって計画された前の旅行についてユーザによって選択された輸送モード及び/又は監視装置24,26から収集されたデータから推定された追跡経路を含むことができる。それゆえに,規定された及び推定された嗜好は,例えば,0(「絶対にこれを行いたくない」)から5(「これを行うことが非常に好き」)の数値として,同じスケールで表現することができる。規定された及び推定された嗜好値の組み合わせは,候補旅程46の最も正確なリストを提示するために使用することができる。例えば,ユーザがバスを使用したくないことを宣言している場合には,バスを含む旅程は,可能な選択肢46のリストから除外することができる。しかしながら,ユーザは,バスを使用することは好きではないかもしれないが,それを使用することをなおも受け入れることができる。それゆえに,バスの選択肢は,候補旅程の中で表示されるが,他の旅程よりも低くランク付けされる可能性が高い。」

「【0067】
1つの実施形態において,各候補旅程について,基準(嗜好及び目的)のそれぞれのランキングの集計としてスコアが計算される。各基準のスコアは,例えば,(S112において計算された)基準の集計値と,例えば時間的に測定された候補旅程に対する基準の寄与の測定値との積などの関数とすることができる。例えば,旅程についてのスコアSitineraryは,n個の基準の全ての合計,(式1にしたがって計算された)基準の集計値cv,(目的の場合)基準のユニットコストcostc,及び/又は(例えば,時間的に測定される)候補旅程に対するその基準の寄与tcの関数又はその関数として計算される。
【0068】(省略)
【0069】
そして,候補旅程は,例えば,最も高いスコアを有するものが第1位にランク付けされるなど,それらのスコアに基づいてランク付けすることができる。」

イ 引用発明4
上記アの記載によれば,甲第4号証には,以下の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「旅行計画に関し,個人的な要因に基づいて旅行をランク付けするためのシステムであって(【0001】),
各候補旅程について,基準(嗜好及び目的)のそれぞれのランキングの集計としてスコアが計算され(【0067】),候補旅程は,例えば,最も高いスコアを有するものが第1位にランク付けされるなど,それらのスコアに基づいてランク付けすることができるものであって(【0069】),嗜好情報は,異なる潜在的な輸送モードの使用及び乗り継ぎ回数に関連したユーザの嗜好であり,,輸送モードは,少なくとも1つの公共交通機関モード(例えば,バス,トラム,又は電車)と,少なくとも1つの個人輸送モード(例えば,自動車,自転車,徒歩)を含む(【0030】)
システム。」

5 当審の判断
(1)本件発明5(理由1(新規性)及び理由2(進歩性))について
(ア)対比
本件発明5と引用発明1とを対比する。

a コンピュータについて
引用発明1の「ユーザ」,「会員」,「管理者会員」及び「閲覧者会員」(以下,「会員等」と総称する)は,いずれも本件発明5の「ユーザ」に相当する。
引用発明1の会員等が使用する「パソコン端末5」及び「パソコン端末6」は,いずれも本件発明5の「ユーザの端末装置」に相当する。
引用発明1の「パソコン端末5」及び「パソコン端末6」と「インターネット回線3を介して接続される,」「事業会社のカーナビゲーションポータルサイトを構成する旅行計画支援サーバ1」は,本件発明5の「ユーザの端末装置と通信可能なコンピュータ」に相当する。

b 記憶手段について
引用発明1の会員等の「自宅の位置情報を含む自宅POI(Point of interest)」は,「自宅POIを基準位置として読み込み,自宅POIにより旅行計画の自宅を書き換え,書き換えられた自宅を出発地」とすることで,「目的地までの経路探索」に用いられるものであるから,本件発明5の「ユーザの出発地情報」に相当する。
引用発明1は,「ユーザは会員登録時に,自宅の位置情報を含む自宅POI(Point of interest)を登録し,旅行計画支援サーバ1に保存」するものであり,旅行計画支援サーバ1は自宅POIを記憶する手段を有していることは明かであるから,当該記憶する手段は,本件発明5の「ユーザの出発地情報を記憶する記憶手段」に相当する。

c 取得手段について
c-1 「前記端末装置に表示されるウェブページの旅行に関する広告に対してユーザの操作があった場合に,当該ユーザの出発地情報を前記記憶手段から取得する」について
引用発明1において,「閲覧者会員」が「パソコン端末6」からアクセスする「ポータルサイト」は,本件発明5の「前記端末装置に表示されるウェブページ」に相当する。
引用発明1において,「閲覧者会員」が「ポータルサイトにアクセスし」,「旅行計画支援サーバ1に旅行計画の表示を要求」した場合とは,ポータルサイトにアクセスし,旅行計画の表示を求めてポータルサイトに表示される旅行計画へのリンクやボタン(以下,「旅行計画へのリンク等」と総称する)に対して閲覧者会員が所定の操作を行った場合,すなわち,旅行計画へのリンク等に対して閲覧者会員の操作があった場合,であるといえるから,ユーザの操作対象が,引用発明1では「旅行計画へのリンク等」であって,本件発明5の「旅行に関する広告」ではない点で相違するものの(相違点1),引用発明1の「旅行計画へのリンク等」に対して閲覧者会員の操作があった場合は,本件発明5の「旅行に関する広告に対してユーザの操作があった場合」と,「操作対象に対してユーザの操作があった場合」である点で共通する。
引用発明1において,「旅行計画支援サーバ1は,登録済みの自宅POIを基準位置として読み込」むことは,出発地としての閲覧者会員の自宅POIを記憶手段から取得していることであるから,本件発明5において「当該ユーザの出発地情報を前記記憶手段から取得する」ことに相当する。

c-2 「当該広告に紐づけられている目的地情報及び経由地情報を,前記記憶手段,前記端末装置又は前記ウェブページを管理するサーバ装置から取得する」について
引用発明1の「旅行計画」に含まれる「目的地」及び「経由地」は,それぞれ本件発明5の「目的地情報」及び「経由地情報」に相当する。
引用発明1の「旅行計画」に含まれる「目的地」及び「経由地」は,いずれも,操作対象である「旅行計画へのリンク等」からたどることができる(すなわち,紐付けられている)「目的地」及び「経由地」といえるから,上記相違点1は別として,引用発明5の「当該広告に紐づけられている目的地情報及び経由地情報」と「当該操作対象に紐づけられている目的地情報及び経由地情報」である点で共通する。
引用発明1において,「旅行計画支援サーバ1は,…,旅行計画の自宅を書き換え,書き換えられた自宅を出発地として,そこから目的地までの経路探索を行うことにより,パソコン端末5からアップロードされた元の旅行計画とは別に新たな旅行計画を算出し,このとき集合場所等の経由地が設定されている場合は,その経由地までの経路探索を行」うことから,旅行計画支援サーバ1は,「旅行計画」を読み込むことで,「新たな旅行計画」の算出の基礎となる「元の旅行計画」に設定されている「目的地」及び「経由地」を取得しているといえる。そして,「元の旅行計画」は「パソコン端末5を用いて,…旅行計画支援サーバ1のコミュニティサーバ領域1bにアップロード」されたものであるから,引用発明1において,目的地及び経由地を,旅行計画支援サーバ1の「コミュニティサーバ領域1b」から取得することは,コミュニティサーバ領域1bが自宅POIを記憶していることは定かではなく,「前記記憶手段」とまではいえない点で相違するものの(相違点2),引用発明5において,目的地情報及び経由地情報を「前記記憶手段」から「取得する」ことと,「目的地情報及び経由地情報記憶手段から取得する」点で共通する。

c-3 取得手段全体について
以上より,引用発明1に記載の「旅行計画支援サーバ1」は,旅行計画へのリンク等に対して閲覧者会員の操作があった場合に,自宅POIを記憶手段から取得するとともに,目的地及び経由地をコミュニティサーバ領域1bから取得する手段を有しているといえるから,当該取得する手段は,上記相違点1及び2は別として,本件発明5の「前記端末装置に表示されるウェブページの旅行に関する広告に対してユーザの操作があった場合に,当該ユーザの出発地情報を前記記憶手段から取得するとともに,当該広告に紐づけられている目的地情報及び経由地情報を,前記記憶手段,前記端末装置又は前記ウェブページを管理するサーバ装置から取得する取得手段」と,「前記端末装置に表示されるウェブページの操作対象に対してユーザの操作があった場合に,当該ユーザの出発地情報を前記記憶手段から取得するとともに,当該操作対象に紐づけられている目的地情報及び経由地情報を,目的地情報及び経由地情報記憶手段から取得する取得手段」である点で共通する。

d 検索手段について
引用発明1において,「旅行計画支援サーバ1」は,「登録済みの自宅POIを基準位置として読み込み,自宅POIにより旅行計画の自宅を書き換え,書き換えられた自宅を出発地として,そこから目的地までの経路探索を行うことにより,パソコン端末5からアップロードされた元の旅行計画とは別に新たな旅行計画を算出し,このとき集合場所等の経由地が設定されている場合は,その経由地までの経路探索を行い,経由地から目的地までは元の旅行計画と同じに」するものであり,取得した元の旅行計画に含まれる経由地に基づいて,取得した自宅POIを基準として書き換えられた出発地から取得した元の旅行計画に含まれる目的地までの経路探索を行うことで新たな旅行計画を算出することから,算出する手段を有していることは明らかであり,当該算出を行う手段は,本件発明5の「前記取得手段が取得した前記経由地情報に基づき,前記取得手段が取得した出発地情報が示す出発地から前記取得手段が取得した目的地情報が示す目的地までの移動経路を検索する検索手段」に相当する。

e 提案手段について
引用発明1において,「旅行計画支援サーバ1」は,「パソコン端末6に対して,新たな旅行計画を送信」することで,「パソコン端末6は,旅行計画支援サーバ1から送信された旅行計画を表示する」ものであり,経路探索の結果を閲覧者会員のパソコン端末に表示して閲覧者会員の自宅から目的地までの旅行を実現可能な経路を閲覧者会員に提示することによって「提案」しているといえるから,これらの処理を実行する手段は,本願発明5の「前記検索手段の検索結果を前記端末装置に出力して前記旅行を実現可能な移動経路を前記ユーザに提案する提案手段」に相当する。

f プログラムについて
引用発明1の「旅行計画支援サーバ1」はプログラムによって機能していることは明かである。そして,当該プログラムは,上記相違点1及び2は別として,コンピュータを上記b?eの各手段として機能させるプログラムである点で,本件発明5の「プログラム」と共通する。

してみると,本件発明5と引用発明1の一致点及び相違点は,次のとおりである。

<一致点>
ユーザの端末装置と通信可能なコンピュータを,
ユーザの出発地情報を記憶する記憶手段,
前記端末装置に表示されるウェブページの操作対象に対してユーザの操作があった場合に,当該ユーザの出発地情報を前記記憶手段から取得するとともに,当該操作対象に紐づけられている目的地情報及び経由地情報を,目的地情報及び経由地情報記憶手段から取得する取得手段,
前記取得手段が取得した前記経由地情報に基づき,前記取得手段が取得した出発地情報が示す出発地から前記取得手段が取得した目的地情報が示す目的地までの移動経路を検索する検索手段,
前記検索手段の検索結果を前記端末装置に出力して前記旅行を実現可能な移動経路を前記ユーザに提案する提案手段,
として機能させるためのプログラム。

<相違点>
(相違点1)
ユーザの「操作対象」が,本件発明5では「旅行に関する広告」であるのに対し,引用発明1では「旅行計画へのリンク等」である点。

(相違点2)
「ユーザの出発地情報を記憶する記憶手段」及び「目的地情報及び経由地情報記憶手段」が,本件発明5では同一の記憶手段であるのに対し,引用発明1では,ユーザの出発地点情報を記憶する記憶手段が,目的地情報及び経由地情報を記憶しているか定かではなく,同一の記憶手段とまではいえない点。

(イ)当審の判断
a 理由1(新規性)について
本件発明5は,引用発明1と,(ア)に上記した相違点1及び2において相違するから,甲第1号証に記載された発明ではない。

b 理由2(進歩性)について
上記相違点1について検討する。
ユーザの「操作対象」を「旅行に関する広告」とすることが本件発明5の出願当時において公知又は周知であることを示す証拠は示されていない。さらに,引用発明1の「旅行計画へのリンク等」は,閲覧者会員がクリック等の所定の操作を行うことで,旅行計画支援サーバ1に旅行計画の表示を要求するための操作対象にすぎないことから,それによって特段のメッセージを閲覧者会員に伝える意図を有したものであることを甲第1号証から読み取ることはできず,引用発明1において,「旅行情報へのリンク等」を「旅行に関する広告」とする動機はない。
よって,引用発明1に基づき上記相違点1の構成とすることは,当業者が容易になし得たこととはいえない。
そうすると,上記相違点2について判断するまでもなく,本件発明5は,当業者であっても,引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)異議申立人の主張について
異議申立人は,特許異議申立書において,「広告」という言葉の意味は広辞苑では,「広く世間一般に告げ知らせること」と示されている。この意味に照らすのであれば,甲第1号証に記載の「旅行計画」は,閲覧者会員に計画を告げ知らせるものであり,「広告」に値すると考えられる。したがって,甲第1号証に記載の「旅行計画」は,本件特許発明5に記載の「広告」に相当し,仮に,甲第1号証に記載の「旅行計画」が「広告」に相当しないとしても,その差異は設計的事項に過ぎない旨主張するので,以下検討する。

a 甲第1号証に記載の「旅行計画」が本件発明5の「広告」に相当するとの主張について
本件発明5は,「前記端末装置に表示されるウェブページの旅行に関する広告に対してユーザの操作があった場合」に,当該ユーザの出発地情報,当該広告に紐づけられている目的地情報及び経由地情報を取得するものである。一方,引用発明1は,「閲覧者会員は,パソコン端末6からポータルサイトにアクセスし,旅行計画支援サーバ1に旅行計画の表示を要求し,…閲覧者会員のパソコン端末6は,旅行計画支援サーバ1から送信された旅行計画を表示する」ものである。すなわち,本件発明5においては,既に表示されている「広告」に対してユーザが操作を行うのに対し,引用発明1においては,閲覧者会員が表示を要求した後に「旅行計画」を表示しており,両者の構成は相違しているから,引用発明1の「旅行計画」が本件発明5の「広告」に相当するとはいえない。

b 第1号証に記載の「旅行計画」と本件発明5の「広告」との差異は設計的事項にすぎないとの主張について。
引用発明1は,閲覧者会員が表示を要求した後に「旅行計画」を表示するものであるから,閲覧者会員が要求をする前に「旅行計画」を表示させようとすることには動機がなく,当業者が適宜になし得る設計的事項とはいえない。

上記a及びbより,本件発明5について,異議申立人の上記主張を採用することはできない。

(エ)本件発明5についてのまとめ
以上によれば,本件発明5は,甲第1号証に記載された発明ではなく,甲第1号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明1,8(理由3(進歩性))について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると,上記(1)(ア)aないしfと同様のことがいえるから,両者は,上記(1)(ア)に記載した<一致点>と同様な点で一致し,以下の相違点を有する。

(相違点2-1)
ユーザの「操作対象」が,本件発明1では「旅行に関する広告」であり,引用発明1では「旅行計画へのリンク等」である点。

(相違点2-2)
「ユーザの出発地情報を記憶する記憶手段」及び「目的地情報記憶手段」が,本件発明1では同一の記憶手段であるのに対し,引用発明1では,ユーザの出発地点情報を記憶する記憶手段が,目的地情報を記憶しているか定かではなく,同一の記憶手段とまではいえない点。

(相違点2-3)
記憶手段が,本件発明1は,「ユーザの出発地情報」及び「ユーザのスケジュール」を記憶するのに対して,引用発明1では,自宅POIを記憶するものの,会員等のスケジュールを記憶することは特定されていない点。

(相違点2-4)
取得手段が,本件発明1は「当該ユーザの」「スケジュール」を前記記憶手段から取得するのに対し,引用発明1は閲覧者会員のスケジュールを記憶手段から取得することは特定されていない点。

(相違点2-5)
検索手段が,本件発明1は「前記取得手段が取得したスケジュールに基づき,出発日時を決定し,決定した出発日時に基づき」,移動経路を検索するのに対し,引用発明1は閲覧者会員のスケジュールに基づいて出発日時を決定しておらず,当該出発日時に基づいた経路探索を行うものでもない点。

(イ)当審の判断
事案に鑑み,上記の相違点2-1及び相違点2-5について検討する。

上記相違点2-1については,引用発明2及び3を参酌しても,操作対象を「旅行に関する広告」とするものではない。また,(1)(イ)bで検討したとおり,引用発明1において,「旅行情報へのリンク等」を「旅行に関する広告」とする動機はない。よって,引用発明1において,当該相違点に係る構成を採用することは当業者が容易に想到することができたものではない。

上記相違点2-5については,「取得手段が取得したスケジュールに基づき,出発日時を決定し,決定した出発日時に基づき」,移動経路を検索することが,本件発明1の出願当時において公知または周知であったことを示す証拠は示されていない。また,引用発明1は「カーナビゲーション」での利用,すなわち自家用車による移動のための経路探索に用いられるものであり,交通機関の時刻表等を考慮する必要がないから,経路探索にあたって出発日時を決める必要性が無い。なお,引用発明1の管理者会員が作成した「旅行計画」にはタイムスケジュールが併記されていることから,集合場所等の経由地が設定されている場合は集合時間に間に合うように出発時刻が設定される必要があるとしても,当該「タイムスケジュール」は閲覧者会員の「スケジュール」ではなく,甲第1号証には,閲覧者会員の「スケジュール」に基づいて出発日時を決定する動機付けとなる記載はない。
この点,引用発明2の旅行情報提供サーバ10は,旅行者の携帯端末11からサポート情報の要求が送信されると,携帯端末11の現在位置情報と,この現在位置情報に基づいて,現在地から次の目的地に移動するための交通手段の情報を携帯端末11に送信するものであるが,基準となる時点は旅行者の携帯端末11からサポート情報の要求が送信された時点と考えるのが自然であり,旅行者のスケジュールに基づいて出発日時を決定するものではない。また,引用発明3の情報配信装置は,ユーザのスケジュール及びユーザの知人や友人の住所をデータベースから取得するものであるが,当該スケジュールに基づいて出発日時を決定し,移動経路を検索するものではない。
また,引用発明1は「管理者会員が作成した旅行計画を他の会員が閲覧する際に,会員各人に応じた旅行計画を提示することができないという問題」(甲第1号証【0005】)を解決するための「旅行計画支援システム」であって,「旅行計画支援システムで会員同士が最終的に同意した旅行計画は,メモリ手段を介して各会員のカーナビゲーション装置や携帯端末へ移行され,旅行計画が実行される」(甲第1号証【0023】)ものである。すなわち,引用発明1の旅行計画支援システムは旅行計画の作成支援を目的としており,現在位置に基づいたナビゲーション等の作成後の旅行計画の実行は各会員のカーナビゲーション装置等が適宜に実施するものであるから,旅行情報提供サーバ10が,旅行者の現在地から次の目的地に移動するための交通手段の情報を含むサポート情報を送信する引用発明2の技術を引用発明1に適用する動機はなく,ウェブ広告の配信に連動して個人管理情報を提供する技術に関する引用発明3の技術を適用する動機もない。
以上より,引用発明2及び3を参酌しても,本件発明1において,当該相違点2-5に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到することができたものではない。

以上によれば,上記相違点2-2ないし2-4について判断するまでもなく,本件発明1は,引用発明1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明8について
本件発明8は本件発明1に対応する「情報処理装置」の発明であって,引用発明1と対比した場合,上記(ア)に対応する一致点及び相違点を有し,それら相違点の判断は上記(イ)と同様であるから,本件発明8は,引用発明1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3(理由4(進歩性))について
(ア)対比
本件発明3と引用発明1とを対比すると,上記(1)(ア)aないしfと同様なことがいえるから,両者は,上記(1)(ア)に記載した<一致点>と同様な点で一致し,以下の相違点を有する。

(相違点3-1)
ユーザの「操作対象」が,本件発明1では「旅行に関する広告」であり,引用発明3では「旅行計画へのリンク等」である点。

(相違点3-2)
「ユーザの出発地情報を記憶する記憶手段」及び「目的地情報記憶手段」が,本件発明3では同一の記憶手段であるのに対し,引用発明1では,ユーザの出発地点情報を記憶する記憶手段が,目的地情報を記憶しているか定かではなく,同一の記憶手段とまではいえない点。

(相違点3-3)
記憶手段が,本件発明3は,「ユーザの出発地情報」及び「交通に関するユーザの嗜好情報」を記憶するのに対して,引用発明1では,自宅POIを記憶するものの,交通に関する会員等の嗜好情報を記憶することは特定されていない点。

(相違点3-4)
取得手段が,本件発明3は「当該ユーザの」「嗜好情報」を前記記憶手段から取得するのに対し,引用発明1は閲覧者会員の嗜好情報を記憶手段から取得することは特定されていない点。

(相違点3-5)
提案手段が,本件発明3は「前記検索手段の検索結果が複数の場合,前記取得手段が取得した嗜好情報に基づき,前記複数の検索結果の中から検索結果を抽出し,抽出した検索結果を」前記端末装置に出力する,移動経路を検索するのに対し,引用発明1は検索結果が複数の場合の処理について特定していない点。

(イ)当審の判断
事案に鑑み,上記の相違点3-1,相違点3-3ないし相違点3-5について検討する。

上記相違点3-1については,引用発明2ないし4を参酌しても,操作対象を「旅行に関する広告」とするものではない。また,(1)(イ)bで検討したとおり,引用発明1において,「旅行情報へのリンク等」を「旅行に関する広告」とすることは動機がない。よって,引用発明1において,当該相違点に係る構成を採用することは当業者が容易に想到することができたものではない。

上記相違点3-3ないし3-5については,引用発明2は「交通に関するユーザの嗜好」についてなんら特定していない。また,引用発明3の「嗜好」が「交通に関する嗜好」であることは甲第3号証になんら特定されていないから,引用発明2及び3は上記相違点3-1ないし3-3に係る構成を有していない。また,引用発明4は,旅行計画に関して,「異なる潜在的な輸送モードの使用及び乗り継ぎ回数に関連したユーザの嗜好」を基準として候補旅程をランキングするものであるが,「嗜好情報は,異なる潜在的な輸送モードの使用及び乗り継ぎ回数に関連したユーザの嗜好であり,輸送モードは,少なくとも1つの公共交通機関モード(例えば,バス,トラム,又は電車)と,少なくとも1つの個人輸送モード(例えば,自動車,自転車,徒歩)を含む」ものであり,潜在的に利用可能な異なる輸送モード(徒歩,運転,トラム,…)のうちから1以上のどの交通手段を利用するか,及びその乗り継ぎ回数に関するユーザの嗜好であるから,専ら自家用車による移動のための経路探索に用いられる引用発明1に,引用発明4を適用することには阻害要因がある。
以上より,引用発明2ないし4を参酌しても,本件発明1において,当該相違点3-3ないし3-5に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到することができたものではない。

以上によれば,上記相違点3-2について判断するまでもなく,本件発明3は,引用発明1ないし4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明6(理由5(進歩性))について
(ア)対比
本件発明6と引用発明1とを対比すると,上記(1)(ア)aないしfと同様なことがいえるから,両者は,上記(1)(ア)に記載した<一致点>と同様な点で一致し,以下の相違点を有する。

(相違点4-1)
ユーザの「操作対象」が,本件発明6では「旅行に関する広告」であり,引用発明1では「旅行計画へのリンク等」である点。

(相違点4-2)
「ユーザの出発地情報を記憶する記憶手段」及び「目的地情報記憶手段」が,本件発明6では同一の記憶手段であるのに対し,引用発明1では,ユーザの出発地点情報を記憶する記憶手段が,目的地情報を記憶しているか定かではなく,同一の記憶手段とまではいえない点。

(相違点4-3)
本件発明1は「前記提案に対して前記ユーザからの承認が得られた場合,承認が得られた移動経路の料金を含む旅行代金を決済する決済手段」を含むのに対し,引用発明1は当該手段を備えていない点。

(相違点4-4)
本件発明1は「前記決済手段の決済が完了した場合,前記承認が得られた移動経路をユーザの移動スケジュールとして前記記憶手段に記憶するスケジュール追加手段」を含むのに対し,引用発明1は当該手段を備えていない点。

(イ)当審の判断
事案に鑑み,上記の相違点4-1,相違点4-3及び4-4について検討する。

上記相違点4-1については,引用発明2を参酌しても,操作対象を「旅行に関する広告」とするものではない。また,(1)(イ)bで検討したとおり,引用発明1において,「旅行情報へのリンク等」を「旅行に関する広告」とする動機はない。よって,引用発明1において,当該相違点に係る構成を採用することは当業者が容易に想到することができたものではない。

上記相違点4-3及び4-4については,引用発明2の旅行情報提供サーバ10は,携帯端末11からツアー旅行の申し込みの指示が送信されると,チケット情報を含む旅行情報を生成するものであるが,引用発明2は「決済手段」についての開示がなく,当該手段を有しているとはいえず,「前記決済手段の決済が完了した場合,前記承認が得られた移動経路をユーザの移動スケジュールとして前記記憶手段に記憶するスケジュール追加手段」についても有しているとはいえない。
このため,引用発明1に引用発明2を組み合わせたとしても,当該相違点4-3及び4-4に係る本件発明6の構成には至らない。
以上より,引用発明2を参酌しても,本件発明1において,当該相違点4-3及び4-4に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到することができたものではない。

以上によれば,上記相違点4-2について判断するまでもなく,本件発明6は,引用発明1及び2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)小括
以上のとおり,申立理由1ないし5はいずれも理由がない。

6 むすび
以上によれば,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1,3,5,6及び8に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1,3,5,6及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-12-16 
出願番号 特願2019-132604(P2019-132604)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G06Q)
P 1 652・ 113- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松田 岳士  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 速水 雄太
松田 直也
登録日 2020-02-28 
登録番号 特許第6667862号(P6667862)
権利者 株式会社MaaS Tech Japan
発明の名称 プログラム及び情報処理装置  
代理人 小林 功  

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