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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01N
管理番号 1369028
異議申立番号 異議2020-700495  
総通号数 253 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-01-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-15 
確定日 2020-12-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6629267号発明「ポリマーを用いた殺生物剤の抗微生物活性の増強」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6629267号の請求項1?14に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6629267号の請求項1?14に係る特許についての出願は、2013年2月19日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年2月20日米国(US) 及び 同日欧州特許庁(EP) 及び 2012年3月16日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特願2014-557163号の一部を特許法第44条第1項の規定に基づいて平成29年7月3日に新たな特許出願としたものであり、令和1年12月13日にその特許権の設定登録がされ、令和2年1月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年7月15日に特許異議申立人竹口美穂は、特許異議の申立てを行った。


第2 本件発明
特許第6629267号の請求項1?14の特許に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明14」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
a)フェノキシエタノール及び2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種の抗微生物剤、並びに
b)400g/molより高い分子量のポリエチレンイミン
を含み、水溶液である組成物。
【請求項2】
ポリエチレンイミンが500g/molから2000000g/molの範囲における数平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエチレンイミンが、4から5のpHで測定された場合の範囲5meq/gから25meq/gの電荷密度を有するポリカチオン性ポリマーから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
1重量部の抗微生物剤(a)で、0.001重量部から1000重量部の構成成分(b)を含む、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
組成物の総重量に対して0.001重量%から5重量%の抗微生物剤(a)を含有する、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ポリエチレンイミンが、ホモポリマー、又は1重量部のポリエチレンイミンで0.01重量部から100重量部のエチレンオキシドを用いてグラフトされているオリゴマー若しくはポリマーである、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
ポリエチレンイミンが分岐ポリエチレンイミンホモポリマーであり、その非電荷形態は、nが10から100000の範囲である経験式-(CH_(2)-CH_(2)-NH)_(n)-に一致する、又はそのグラフトされた変形体である、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
表面活性剤、屈水剤、抗微生物効果を改善し得るさらなる添加剤、並びに処方物中の抗微生物剤(a)及び/又はポリエチレンイミン(b)を安定化する薬剤からなる群から選択される、少なくとも1種のさらなる構成成分を含む、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤からなる群から選択される、少なくとも1種のさらなる構成成分を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
組成物の総重量に対して0.001重量%から80重量%の界面活性剤を含有する、請求項8又は9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1から3及び6から7のいずれかに記載されているポリエチレンイミン及び場合により請求項8、9又は10に記載されているさらなる構成成分の、液体殺生物組成物への組込みを含む、請求項1に記載されている水溶液における抗微生物剤の抗微生物活性を増強する方法。
【請求項12】
請求項1に記載されている抗微生物剤の抗微生物活性を増強するための、請求項1から3及び6から7のいずれかに記載されているポリエチレンイミンの使用。
【請求項13】
消毒剤、多目的清浄剤、洗濯洗剤、皿洗い液体、脱臭剤、織物コンディショナー、硬質表面の消毒及び衛生化のための製品、床清浄剤、ガラス清浄剤、キッチン清浄剤、浴室清浄剤、サニタリー清浄剤、織物のための衛生リンス製品、カーペット清浄剤、家具清浄剤、又は硬質及び軟質の表面をコンディショニング、シール、ケア若しくは処理するための製品の製造のため;又は脱臭剤、皮膚ケア製剤、浴用製剤、化粧用ケア製剤、フットケア製剤、光保護製剤、皮膚タンニング製剤、脱色製剤、昆虫忌避剤、制汗剤、傷のある皮膚を清浄及びケアするための製剤、毛髪除去製剤、シェービング製剤、芳香製剤、化粧用毛髪処理製剤、抗フケ製剤、口腔ケア組成物の製造のための、請求項1から10のいずれかに記載の水溶液組成物の使用。
【請求項14】
消毒剤、多目的清浄剤、洗濯洗剤、皿洗い液体、脱臭剤、織物コンディショナー、硬質表面の消毒及び衛生化のための製品、床清浄剤、ガラス清浄剤、キッチン清浄剤、浴室清浄剤、サニタリー清浄剤、織物のための衛生リンス製品、カーペット清浄剤、家具清浄剤、又は硬質及び軟質の表面をコンディショニング、シール、ケア若しくは処理するための製品として;又は脱臭剤、皮膚ケア製剤、浴用製剤、化粧用ケア製剤、フットケア製剤、光保護製剤、皮膚タンニング製剤、脱色製剤、昆虫忌避剤、制汗剤、傷のある皮膚を清浄及びケアするための製剤、毛髪除去製剤、シェービング製剤、芳香製剤、化粧用毛髪処理製剤、抗フケ製剤、口腔ケア組成物としての、請求項1から10のいずれかに記載の水溶液組成物の使用。」


第3 申立理由の概要
特許異議の申立ての理由の概要は、以下のとおりである。

理由1-1
本件発明1?7、11?13は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明1?7、11?13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

理由1-2
本件発明1?6、8?14は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明1?6、8?14に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

理由2-1 本件発明7は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第3号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

理由2-2
本件発明1?14は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第4号証、甲第5号証に記載された発明、又は甲第4乃至6号証に記載された発明と、必要により甲第7号証に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1?14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

理由2-3
本件発明1?8、11、12は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第8号証に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

理由3
本件発明1?14は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件発明1?14に係る特許は、同法第113条4項に該当し、取り消すべきものである。



甲第1号証:国際公開第2010/077940号
甲第2号証:BASF社 「Technical Information Lupasol(R) types」 2010年4月発行
甲第3号証:米国特許出願公開第2004/0116320号明細書
甲第4号証:Araujo, P., et al., 「Antimicrobial resistance to disinfectants in biofilms」, Science against microbial pathogens: communicating current research and technological advances, 2011年, 第826-834頁
甲第5号証:Helander, I. M., et al., 「Polyethyleneimine is an effective permeabilizer of Gram-negative bacteria」, Microbiology, 1997年, 第143巻, 第3193-3199頁
甲第6号証:米国特許出願公開第2002/0068014号明細書
甲第7号証:米国特許出願公開第2008/0274929号明細書
甲第8号証:国際公開第2010/077738号


第4 当審の判断
1 各号証の記載
(1)甲第1号証の記載
(1a)請求項1
「1. A water-insoluble reaction product comprising at least one oil-soluble high carbon polar modified polymer and at least one polyamine.」
仮訳
「1. 少なくとも1つの油溶性高炭素極性変性ポリマー及び少なくとも1つのポリアミンを含む非水溶性反応生成物。」

(1b)段落0001
「[0001] The present invention relates to a water-insoluble reaction product of at least one polyamine compound having at least two amine groups and at least one oil-soluble high carbon polar modified polymer. The water-insoluble reaction product can act as a carrier or matrix for desired agents. Such reaction products have industrial, pharmacological and/or cosmetic applicability.」
仮訳
「[0001] 本発明は、少なくとも2つのアミン基を有する少なくとも1つのポリアミン化合物と、少なくとも1つの油溶性高炭素極性変性ポリマーとからなる非水溶性反応生成物に関する。非水溶性反応生成物は、所望の化学物質に対して担体又はマトリックスとして作用することができる。このような反応生成物は、工業的に、薬理学的に及び/又は化粧品として利用可能である。」

(1c)段落0054?0055
「[0054] REACTION PRODUCT
[0055] According to the present invention, the oil-soluble high carbon polar modified polymer is reacted with the polyamine compound to form a reaction product of an oil-soluble high carbon polar modified polymer and a polyamine. In accordance with the present invention, the reaction product is water-insoluble.」
仮訳
「[0054] 反応生成物
[0055] 本発明によれば、油溶性高炭素極性変性ポリマーはポリアミン化合物と反応して、油溶性高炭素極性変性ポリマーとポリアミンからなる反応生成物を形成する。本発明によれば、反応生成物は非水溶性である。」

(1d)段落00106?00107
「[00106] Examples 4 and 5:
[00107] Water-insoluble reaction products in the presence of water greater than 10% by weight

(*) CM401 is an Alpha olefin hydrocarbon - maleic anhydride copolymer wax commercially available from Clariant under the tradename LICOCARE CM 401 LP 3345

PROCEDURE
1. In container A, CM401 was melted in the isododecane and until fully dissolved. The temperature was brought to 90℃. Then the surfactant Potassium Cetyl Phosphate was added.
2. In a separate container B, Lupasol G 35 PEI (PolyEthyleneImine), Phenoxyethanol and water were mixed at temperature of 80℃ - 90℃.
3. Container B was then added to Container A slowly at high shear (?1,000 rpm).
4. Heat was maintained at 70℃ - 80℃ for 30 minutes while maintaining high shear mixing.
5. High shear mixing was maintained while the batch cooled to room temperature.」
仮訳
「[00106] 実施例4、実施例5
[00107] 10重量%を超える水の存在下における非水溶性反応生成物

(*) CM401は、クラリアント製アルファオレフィン炭化水素-無水マレイン酸コポリマーワックス(商品名: LICOCARE CM401 LP3345) である。

手順
1. 容器Aにおいて、CM401をイソドデカンに完全に溶解させた。温度を90℃まであげ、界面活性剤としてセチルリン酸カリウムを添加した。
2. 別の容器Bにおいて、Lupasol G35 PEI (ポリエチレンイミン)、フェノキシエタノール及び水を80℃?90℃の温度で混合した。
3. 次に、容器Bの内容物を、高せん断下(?1,000rpm) でゆっくりと容器Aに加えた。
4. 高いせん断の混合を維持しながら、温度を30分間70℃?80℃に維持した。
5. バッチを室温まで冷却しながら、高せん断の混合を維持した。」

(2)甲第2号証の記載
(2a)第2頁



仮訳
「Lupasol製品は、分岐ポリマー構造を有する多官能カチオン性ポリエチレンイミン(PEI) である。…(構造式略)…」

(2b)第4頁



仮訳




(3)甲第3号証の記載
(3a)請求項1
「1. A laundry and cleaning composition comprising a detersive ingredient and a product of reaction between a primary and/or secondary amine compound and a perfume component selected from ketone, aldehyde, and mixtures thereof, characterised in that said amine compound has an Odor Intensity Index of less than that of a 1% solution of methylanthranilate in dipropylene glycol, and the product of reaction has a Dry Surface Odor Index of more than 5.」
仮訳
「1. 洗浄成分と、一級および/または二級アミン化合物ならびにケトン、アルデヒドおよびそれらの混合物から選択される香料成分の反応生成物とを含有する洗濯およびクリーニング組成物であって、アミン化合物がジプロピレングリコール中メチルアントラニレートの1%溶液の場合より低い臭気強度指数を有し、反応生成物が5より大きい乾燥表面臭気指数を有することを特徴とする、洗濯およびクリーニング組成物。」

(3b)段落0274
「[0274] Typically the laundry and cleaning composition comprises a detersive ingredient and further optional ingredients as described hereinafter as optional ingredients.」
仮訳
「[0274] 典型的には、洗濯およびクリーニング組成物は洗浄成分とさらなる任意成分であってここから先に述べられている任意成分を含む。」

(3c)段落0332?0333
「[0332] Bactericides
[0333] Examples of bactericides used in the compositions of this invention include glutaraldehyde, formaldehyde, 2-bromo-2-nitro-propane-1,3-diol sold by Inolex Chemicals, located in Philadelphia, Pa., under the trade name Bronopol(R), and a mixture of 5-chloro-2-methyl-4-isothiazoline-3-one and 2-methyl-4-isothiazoline-3-one sold by Rohm and Haas Company under the trade name Kathon 1 to 1,000 ppm by weight of the agent.」
仮訳
「[0332] 殺菌剤
[0333] 本発明の組成物で用いられる殺菌剤の例としては、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、フィラデルフィア、ペンシルバニアのInolex ChemiCalsからBronopol (登録商標)の商品名で販売されている2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、およびRohm and Haas CompanyからKathonの商品名で販売されている、薬剤の重量で約1?約1,000ppmの、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの混合物が挙げられる。」

(3d)段落0402?0403
「[0402] Form of the Composition
[0403] The composition of the invention may take a variety of physical form including liquid, gel, foam in either aqueous or non-aqueous form, granular and tablet forms.」
仮訳
「[0402] 組成物の形態
[0403] 本発明の組成物は、水性または非水性形態の液体、ゲル、発泡材料、顆粒、および錠剤形態を包含する様々な物理的形態を取ることができる。」

(3e)段落0417
「[0417] In the detergent compositions, the abbreviated component identifications have the following meanings:
LAS Sodium linear C_(11-13) alkyl benzene sulfonate
…(略)…
CxyEzS Sodium C_(1x)-C_(1y) alkyl sulfate condensed with z moles of ethylene oxide
CxyEz C_(1x)-C_(1y) predominantly linear primary alcohol condensed with an average of z moles of ethylene oxide
…(略)…
PEI Polyethyleneimine with an average molecular weight of 1800 and an average ethoxylation degree of 7 ethyleneoxy residues per nitrogen
…(略)…
ARP1 Amine reaction product of ethyl 4-aminobenzoate with 2,4-dimethyl-3-cyclohexen-1-carboxaldehyde as made from Synthesis example I
ARP2 Amine reaction product of Lupasol P with α-Damascone as made from Synthesis example III
…(略)…
ARP4 Amine reaction product of tyrosine ethylate with α-Damascone as made from Synthesis example IV method b
…(略)…
ARP6 Amine reaction product of Lupasol HF with δ-Damascone as made from Synthesis example III」
一部仮訳
「[0417] 洗剤組成物中、省略記載される成分識別記号は以下の意味を有する:
LAS C_(11-13)の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
…(略)…
CxyEzS zモルのエチレンオキシドと縮合されたC_(1x)-C_(1y)アルキル硫酸ナトリウムCxyEz 平均zモルのエチレンオキシドと縮合されたC_(1x)-C_(1y)で主に直鎖の1級アルコール
…(略)…
PEI ポリエチレンイミン、平均分子量1800、平均エトキシル化度7エチレンオキシ残基/窒素
…(略)…
ARP1 合成例Iから作製されたエチル4-アミノベンゾエートの2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒドとのアミン反応生成物
ARP2 合成例IIIから作製されたLupasol Pのα-ダマスコンとのアミン反応生成物
…(略)…
ARP4 合成例IV方法bから作製されたチロシンエチラートのα-ダマスコンとのアミン反応生成物
…(略)…
ARP6 合成例IIIから作製されたLupasol HFのδ-ダマスコンとのアミン反応生成物」

(3f)段落0447
「EXAMPLE 9
[0447] The following detergent formulations, according to the present invention were prepared:


一部仮訳
「実施例9
[0447] 下記の洗剤処方物を本発明に従い調製した。



(3g)段落0464
「EXAMPLE 26
[0464] The following laundry bar detergent compositions were prepared in accord with the invention (levels are given in parts per weight).


仮訳
「実施例26
[0464] 下記の固形洗濯洗剤組成物を本発明に従い調製した(レベルは部/重量で示す)。



(4)甲第4号証の記載
(4a)Table 1



仮訳
「表1 細胞標的と抗菌作用による、複数の殺生物剤の相互作用のメカニズム([18] から採用)



(4b)第831頁第5?15行
「6. Factors affecting biocide action
Cleaning is often not efficient in the removal of biofilms. Bactericidal activity is influenced by the surrounding media but a correct cleaning plan is also very important. The main environmental factors that could influence the activity of a biocide are pH, water hardness, presence of additives and temperature [19].
…(略)…
The activity of biocides against Gram-negative organisms may be enhanced by permeabilisers, which increase the cell permeability. Russell[27] reported that ethylenediaminetetraacetic acid (EDTA), chelates divalent cations from the outer membrane, especially on P.aeruginosa. Also, polylysine and polyethyleneimine act by cation displacement.」
仮訳
「6. 殺生物剤の作用に影響を及ぼす要因
洗浄はしばしば生物膜の除去において効率的ではない。殺菌活性は周囲の培地の影響を受けるが、正しい洗浄計画も非常に重要である。殺生物剤の活性に影響を及ぼす主な環境要因は、pH、水の硬度、添加物の存在及び温度である[19]。
…(略)…
グラム陰性菌に対する殺生物剤の活性は、細胞透過性を増加させる透過性物質により増強される。Russell [27] はエチレンジアミン四酢酸(EDTA) が、特に緑膿菌上で外側の膜組織の二価のカチオンにキレートすることを報告した。ポリリジン及びポリエチレンイミンもカチオン置換により作用する。」

(5)甲第5号証の記載
(5a)タイトル
「Polyethyleneimine is an effective permeabilizer of Gram-negative bacteria」
仮訳
「ポリエチレンイミンはグラム陰性菌の効果的な透過剤である」

(5b)第3194頁右欄第2段落
「The antimicrobial activity of PEI and novobiocin against S. typhimurium ATCC 13311 was studied by dispensing 30 μl of a 10^(-1) dilution from a culture that had been grown in IsoSensitest broth (ISB, Oxoid) for 5 h (200 r.p.m., 37℃) to microtitre plate wells with 270 μl test medium (ISB supplemented with PEI or PEI and novobiocin) and incubated at 37℃ for 24 h. The tested PEI concentrations were 2 and 10 μg ml^(-1) ; novobiocin was tested at 10, 50 and 100 μg ml^(-1). In the control sample wells, the antimicrobial agent was replaced by an equal volume of sterile water or ethanol. All determinations were replicated five times and results were expressed as mean values. The area under the growth curve was used as a measure of microbial growth, and the percentage reduction of area was used to express the growth inhibition in the presence of the antimicrobials.」
仮訳
「イソ-センシテスト培地(ISB、オキソイド)で5時間(200rpm、37℃)増殖させた培養物の10^(-1)希釈物30μLを、270μLの試験培地(PEI又はPEI及びノボビオシンを加えたISB) を有するマイクロタイタープレートウェルに分注し、37℃で24時間インキュベートすることにより、S.typhimurium ATCC13311に対するPEI及びノボビオシンの抗微生物活性を調べた。試験したPEI濃度は2μg/mL及び10μg/mLであった。ノボビオシンは10、50、100μg/mlで試験した。コントロール試料ウェルでは、抗微生物剤を等量の滅菌水又はエタノールで置換した。すべての測定を5回繰り返し、結果を平均値で表した。増殖曲線下の面積を微生物増殖の尺度として用い、面積の減少率を用いて、抗微生物剤存在下での増殖阻害を表した。」

(6)甲第6号証の記載
(6a)請求項1
「1. An antibacterial composition comprising:
A) a compound of formula I,

wherein m is an integer from 0 to 4; n is an integer from 0 to 5; the sum of m+n is greater than zero; a is 0 or 1; b is 0 or 1; g is 0 or 1; when b is 0, one of a and g must be 0; Z and Z' are independently selected from O and S; X and X', when present, are selected from O, S, and NR^(1), where R^(1) is independently selected from the group consisting of H, C_(1)-C_(16) linear or branched, substituted or unsubstituted alkyl, alkenyl, alkynyl, cycloalkyl, cycloalkenyl, alkaryl, aralkyl, and aryl; T, when present, is selected from C=O, C=S, S=O, and SO_(2); when T is S=O or SO_(2), X and X' may not be S; when either a, b or g is 1 for a radical R-(X)_(a)-(T)_(b)-(X')_(g)-, R for that radical is independently selected from the group consisting of H, C_(1)-C_(16) linear or branched, substituted or unsubstituted alkyl, alkenyl, alkynyl, cycloalkyl, cycloalkenyl, alkaryl, aralkyl, and aryl; when a, b and g are all 0 for a radical and neither Z nor Z' is S, R for that radical may be further selected from the group consisting of F, Cl, Br, I, CN, R^(2)N→O, NO_(2); when Z or Z' is S, R for that radical may be further selected from the group consisting of CN, R^(2)N→O, NO_(2); when all a, b and g are 0, at least one R must be non-H; further provided that the total number of halogen atoms in the molecule excluding any present in G does not exceed two; G is H, a suitable charge balancing counterion (Mn^(+))_(1/n), or a cleaveable group selected from the group consisting of Si((O)_(p)R^(2))_(3), where p is independently 0 or 1; C(O)_(q)((O)_(p)R^(2))_(r), wherein p is independently 0 or 1 and when q is 1, r is 1, and when q is 0, r is 3; R^(2) is independently selected from the group consisting of C_(1)-C_(16) linear or branched, substituted or unsubstituted alkyl, alkenyl, alkynyl, cycloalkyl, cycloalkenyl, alkaryl, aralkyl, and aryl, and mixtures thereof; and
B) at least one additional component selected from the group consisting of:
i) at least 1 wt % of a surfactant, wherein the ratio of the weight of the surfactant divided by the weight of said compound I is greater than or equal to 1.0;
ii) from 0.5% to 90% of a solvent whose Hildebrand solubility parameter d_(S) (cal/cm^(3))^(1/2 )meets the following criterion: 5 iii) a perfume wherein the perfume has a C log P greater than or equal to 2.0.
iv) an enzyme from 0.001 to 1.0% by weight of the composition;
v) mixtures thereof.」
仮訳
「1. 式Iで表される化合物A)
…(式略)…
(式中、mは0?4の整数を表し、nは0?5の整数を表し、m+nの和は0より大きい。aは0又は1を表し、bは0又は1を表し、gは0又は1を表し、bが0の場合、aとgのいずれか一方は0を表わす。Z及びZ'は独立に、O及びSから選択される。X及びX'が存在する場合、O、S及びNR^(1)から選択され、R^(1)は独立に、H及び炭素数1?16の直鎖又は分岐の置換又は末置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルアリール、アラルキル及びアリールからなる群から選択される。Tが存在する場合、C=O、C=S、S=O及びSO_(2)から選択され、TがS=O又はSO_(2)の場合、X及びX'はSでなくてもよい。ラジカルR- (X)_(a)- (T)_(b) - (X')_(g) - におけるa、b又はgのいずれかが1である場合、ラジカルにおけるRは独立に、H及び炭素数1?16の直鎖又は分岐の置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルアリール、アラルキル及びアリールからなる群から選択される。ラジカルにおけるa、b及びgがすべて0であり、Z及びZ'のどちらもSではない場合、ラジカルにおけるRは、さらにF、Cl、Br、I、CN、R^(2)N→O及びNO_(2)からなる群から選択されてもよい。Z又はZ'がSである場合、ラジカルにおけるRは、さらにCN、R^(2)N→O、NO_(2)からなる群より選択されてもよい。すべてのa、b及びgが0の場合、少なくとも1つのRはH以外である。さらに、G中に存在するハロゲン原子を除く、分子中のハロゲン原子の総数が2を超えない。Gは、H、適切な電荷平衡対イオン(Mn^(+))_(1/n),又はSi ((O)_(p) R^(2))_(3) (式中、pは独立に0又は1である。)及びC(O)_(q)((O)_(p)R^(2))_(r) (式中、pは独立に0又は1であり、qが1の場合、rは1であり、qが0の場合、rは3である。)からなる群から選択される切断可能な基である。R^(2)は独立に、炭素数1?16の直鎖状又は分岐状の置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルアリール、アラルキル及びアリール、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される。)と、
i) 界面活性剤の重量を化合物Iの重量で割った比が1.0以上となる、少なくとも1重量%の界面活性剤、
ii) ヒルデブランド(Hildebrand) 溶解度パラメータd_(s) (cal/cm^(3))^(1/2)が5 iii) ClogPが2.0以上である香料、
iv) 組成物に対して0.001?1.0重量%の酵素及び
v) それらの混合物、
からなる群から選択される少なくとも1つの追加成分B) とを含むことを特徴とする抗菌性組成物。」

(6b)段落0080?0085
「[0080] In still yet another embodiment of the present invention, a bacteria-reducing system comprising:
[0081] a) an effective amount, preferably from about 0.001%, more preferably from about 0.01%, even more preferably from about 0.05% to about 15%, more preferably to about 10%, even more preferably to about 5%, most preferably to about 2.5% by weight of the system of an antibacterial agent of the present invention;
[0082] b) at least 1% by weight of the composition of a surfactant;
[0083] wherein the weight ratio of the surfactant to the antibacterial agent is greater than or equal to 1.0; and
[0084] c) from about 0.5% to about 90% by weight of the composition of a solvent whose Hildebrand solubility parameter δ_(S) (cal/cm^(3))^(1/2) meets the following criterion: 5<δ_(S)<20;
[0085] wherein a 10wt % aqueous solution of the composition has a pH≧(pKa-1) where pKa is the calculated pKa of the antibacterial agent where -Z-G is -Z-H, is provided.」
仮訳
「[0080] 本発明のさらに別の実施形態では、細菌減少系は、
[0081] a) 本発明の系における抗菌剤を有効量、好ましくは約0.001重量%以上、より好ましくは約0.01重量%以上、さらにより好ましくは約0.05重量%?約15重量%、より好ましくは約10重量% 以下、さらにより好ましくは約5重量%以下、最も好ましくは約2.5重量%以下を含み、
[0082] 少なくとも1重量%の界面活性剤組成物を含み、
[0083] 前記界面活性剤の前記抗菌剤に対する重量比が1.0以上であって、
[0084] c) ヒルデブランド溶解度パラメータδ_(S) (cal/cm^(3))^(1/2)が5<δ_(S)<20を満たす溶媒の組成物を約0.5重量%?約90重量%含み、
[0085] 組成物の10重量%水溶液のpH がpH≧(pKa-1) を満たす(式中、pKaは、-Z-Gが-Z-Hである抗菌剤の算出pKaである。)。」

(6c)段落0120?0125
「[0120] Adjunct Ingredients
[0121] In addition to the antibacterial agent, one or more adjunct ingredients as described below may optionally, but preferably, be included in the compositions, products and/or systems comprising the antibacterial agent.
[0122] Examples of suitable adjunct ingredients include, but are not limited to, builders, bleaches, bleach activators, bleach catalysts, enzyme stabilizing systems, chelants, optical brighteners, soil release polymers, dye transfer agents, dispersants, suds suppressors, dyes, colorants, filler salts, hydrotropes, photoactivators, fluorescers, fabric conditioners, hydrolyzable surfactants, perservatives, anti-oxidants, anti-shrinkage agents, anti-wrinkle agents, germicides, fungicides, color speckles, silvercare, anti-tarnish and/or anti-corrosion agents, alkalinity sources, solubilizing agents, carriers, processing aids, pigments and pH control agents as described in U.S. Pat. Nos. 5,705,464, 5,710,115, 5,698,504, 5,695,679, 5,686,014 and 5,646,101. Specific cleaning adjunct materials are exemplified in detail hereinafter.
[0123] Preferred Adjunct Ingredients
[0124] Surfactants - A wide range of surfactants can be used in the compositions of the present invention.
[0125] Surfactants included in the fully-formulated compositions afforded by the present invention comprise at least 0.01%, preferably at least about 0.1%, more preferably at least about 0.5%, even more preferably at least about 1%, most preferably at least about 3% to about 80%, more preferably to about 60%, most preferably to about 50% by weight of composition depending upon the particular surfactants used and the desired effects to be achieved.」
仮訳
「[0120] 補助成分
[0121] 上記抗菌剤を含む組成物、生成物及び/又は系は、抗菌剤に加えて、下記の1つ以上の補助成分を任意に、しかし好ましく含んでもよい。
[0122] 適切な補助成分としては限定されず、米国特許第5,705,464号、第5,710,115号、第5,698,504号、第5,695,679号、第5,686,014号及び第5,646,101号に記載されているような、ビルダー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、酵素安定化系、キレート剤、光増白剤、土壌放出ポリマー、色素移動剤、分散剤、泡抑制剤、染料、着色剤、充填剤塩、ハイドロトロープ、光活性化剤、蛍光剤、織物質改良剤、加水分解性界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、収縮防止剤、しわ防止剤、殺菌剤、防かび剤、カラースペックル、シルバーケア、変色防止剤及び/又は腐食防止剤、アルカリ源、可溶化剤、担体、加工助剤、顔料及びpH調整剤等が挙げられる。特定の洗浄用補助材料を以下に詳細に例示する。
[0123] 好ましい補助成分
[0124] 界面活性剤-本発明の組成物には幅広い界面活性剤を使用することができる。
[0125] 本発明によって与えられる十分に配合された組成物に含まれる界面活性剤は、使用される特定の界面活性剤及び達成されるべき所望の効果にもよるが、組成物を少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約0.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも約1重量%、最も好ましくは少なくとも約3重量%?約80重量%、より好ましくは約60重量%以下、最も好ましくは約50重量%以下含む。」

(6d)段落0212?0213
「[0212] A nonlimiting list of suitable other antimicrobial agents for use in the compositions of the present invention follows:
[0213] …(略)…; 2-bromo-2-nitropropane-1,3-diol; …(略)…」
仮訳
「[0212] 本発明の組成物に使用する適切な他の抗菌剤の非限定的なリストは以下のとおり:
[0213] …(略)…、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、…(略)…」

(6e)段落0228
「[0228] Nonlimiting examples of suitable products and/or compositions and/or bacteria-reducing systems in which the antibacterial agents may be used may be in any product form known to those of ordinary skill in the art, such as granules, powder, paste, foam, tablets, dimple tablets, bars, sprays, liquids, dryer-added forms, impregnated sheets, coated sheets, gels, etc. The products and/or compositions and/or bacteria-reducing systems in which the antibacterial agents may be used include, but are not limited to, heavy duty liquid compositions (TIDE commercially available from The Procter & Gamble Company), light duty liquid compositions (i.e. DAWN commercially available from The Procter & Gamble Company), heavy duty granule or powder compositions (i.e., TIDE commercially available from The Procter & Gamble Company), automatic dishwashing compositions (i.e. CASCADE commercially available from The Procter & Gamble Company). household cleaning compositions (i.e., MR. CLEAN commercially available from The Procter & Gamble Company). household deodorizing compositions (i.e., FEBREZE commercially available from The Procter & Gamble Company), produce washing compositions (i.e., FIT commercially available from The Procter & Gamble Company), fabric treatment compositions (i.e., DRYEL commercially available from The Procter & Gamble Company), cleaning/sanitizing wipes (i.e. MR CLEAN WIPES commercially available from The Procter & Gamble Company), fabric care compositions (i.e. DOWNY and/or VIBRANT commercially available from The Procter & Gamble Company)」
仮訳
「[0228] 抗菌剤を使用してもよい適切な生成物及び/又は組成物及び/又は細菌減少系としては限定されず、顆粒状、粉末状、ペースト状、泡状、錠剤、ディンプル錠、棒状、スプレー、液体、乾燥剤添加形態、含浸シート、コーティングシート、ゲル状などの当業者に公知の任意の製品形態であってよい。抗菌剤を使用してもよい生成物及び/又は組成物及び/又は細菌減少系としては限定されないが、ヘビーデューティー(heavy duty)液体組成物(Procter&GambleCompany製のTIDE)、ライトデューティー(light duty)液体組成物(すなわち、Procter&Gamble Company製のDAWN)、ヘビーデューティー(heavy duty)顆粒又は粉末組成物(すなわち、Procter&Gamble Company製のTIDE) 、食洗機用組成物(すなわち、Procter&Gamble Company製のCASCADE) 、家庭用洗剤組成物(P&G社製のMR.CLEAN)、家庭用消臭組成物(すなわち、Procter&Gamble Company製のFEBREZE)、農産物洗浄用組成物(すなわち、Procter&Gamble Company製のFIT)、ファブリックトリートメント用組成物(すなわち、Procter&Gamble Company製のDRYEL)、洗浄/殺菌ワイプ(すなわち、Procter&Gamble Company製のMR CLEAN WIPES)、ファブリックケア用組成物(すなわち、Procter&Gamble Company製のDOWNY及び/又はVIBRANT)等が挙げられる。」

(7)甲第7号証の記載
(7a)請求項1
「1. A method for removing microbial biofilm on surfaces in contact with a system which comprises adding to the system an effective amount of a polyethyleneimine surfactant.」
仮訳
「1. 系に有効量のポリエチレンイミン界面活性剤を添加することを含む、系と接触する表面上の微生物バイオフィルムを除去する方法。」

(7b)段落0027(一部)



仮訳




(8)甲第8号証の記載
(8a)請求項1
「1. A water-in-oil mascara composition comprising:
(a) at least one polyamine;
(b) at least one oil-soluble polar modified polymer;
(c) water;
(d) at least one non-volatile oil capable of solubilizing the oil-soluble polar modified polymer; and
(e) at least one volatile solvent.」
仮訳
「1. (a) 少なくとも1つのポリアミンと、
(b) 少なくとも1つの油溶性極性変性ポリマーと、
(c) 水と、
(d) 油溶性極性変性ポリマーを溶解することができる少なくとも1つの不揮発性油と、
(e) 少なくとも1種の揮発性溶剤とを
含むことを特徴とする油中水型マスカラ組成物。」

(8b)段落0020?0021
「[0020] According to particularly preferred embodiments, the polyamine compound is a polyalkyleneimine, preferably a C2-C5 polyalkyleneamine compound, more preferably a polyethyleneimine or polypropyleneimine. Most preferably, the polyalkylenamine is polyethyleneimine (“PEI”). The polyalkyleneamine compound preferably has an average molecular weight range of from 500-200,000, including all ranges and subranges therebetween.
[0021] According to preferred embodiments, compositions of the present invention contain polyethyleneimine compounds in the form of branched polymers. Commercially available examples of such polymers are available from BASF under the tradename LUPASOL or POLYIMIN. Non-limiting examples of such polyethyleneimines include Lupasol(R) PS, Lupasol(R) PL, Lupasol(R) PR8515, Lupasol(R) G20, Lupasol(R) G35.」
仮訳
「[0020] 特に好ましい態様によれば、ポリアミン化合物は、ポリアルキレンイミン、好ましくは炭素数2?5のポリアルキレンアミン化合物、より好ましくはポリエチレンイミン又はポリプロピレンイミンである。最も好ましくは、ポリアルキレンアミンがポリエチレンイミン(PEI) である。ポリアルキレンアミン化合物の平均分子量は、500?200,000の範囲であることが好ましく、これらの範囲及びサブ範囲を全て含む。
[0021] 好ましい態様によれば、本発明の組成物は、分枝ポリマー状のポリエチレンイミン化合物を含有する。このようなポリマーの市販品としては、BASF製のLUPASOL又はPOLYIMINが挙げられる。このようなポリエチレンイミンとしては、Lupasol (登録商標) PS、Lupasol (登録商標) PL、Lupasol (登録商標) PR8515、Lupasol (登録商標) G20、Lupasol (登録商標) G35が挙げられるが、これらに限定されるものではない。」

(8c)段落0046?0047
「[0046] According to preferred embodiments, the oil-soluble polar modified polymer is in an oil carrier, and the polyamine compound is in an aqueous carrier, and the reaction occurs by combining the oil carrier and the aqueous carrier. Because the oil-soluble polar modified polymer is typically solid at room temperature, the oil carrier is preferably heated to liquefy the polymer prior to combination with the aqueous carrier. Preferably, the oil carrier is heated beyond the melting point of the oil-soluble polar modified polymer, typically up to about 80℃, 90℃ or 100℃.
[0047] Without intending to be bound by any particular theory, it is believed that the reason for this is that due to the chemical and physical reactions which take place when the oil-soluble polar modified polymer is combined with the polyamine, the subsequent reaction product that is formed is surprisingly and unexpectedly able to entrap large amounts of water molecules within its hydrophobic matrix. The resultant product is eminently capable of forming a film, is self-emulsifying, waterproof. Moreover, the product is both stable and capable of carrying various types of ingredients.」
仮訳
「[0046]好ましい実施形態によれば、油溶性極性変性ポリマーは油担体中にあり、ポリアミン化合物は水性担体中にあり、反応は油担体と水性担体を混合することによって起こる。油溶性極性変性ポリマーは通常、室温で固体であるため、水性担体と組み合わせる前に、油担体を加熱してポリマーを液化することが好ましい。好ましくは、油担体は、油溶性極性変性ポリマーの融点を超えて、典型的には約80℃、90℃または100℃まで加熱される。
[0047] 特定の理論に拘束されることは意図しないが、この理由は、油溶性極性変性ポリマーがポリアミンと混合されるときに起こる化学的および物理的反応のためと考えられており、その後に形成される反応生成物は、驚くべきことに、予想外に、その疎水性マトリックス内に大量の水分子を閉じ込めることができる。得られた製品は、フィルムを形成する能力が非常に高く、自己乳化性で防水性がある。さらに、この製品は安定しており、さまざまな種類の材料を運ぶことができる。」

(8d)段落0080
「[0080] EXAMPLE 1-2 Washable Mascara

Procedures
1. In the main beaker A, the following were added Isododecane, Caprylic/capric Triglyceride, Polypropylene-ethylene-Maleic Anhydride Copolymer wax, Propylparaben. The contents were then heated to 90℃ until all solids melted.
2. Added Iron Oxides into main beaker and started homogenizing batch for 1h at 850 RPM. (Temperature maintained at 85-90℃)
3. In another beaker B, added deionized water, Disodium EDTA, Potassium Cetyl Phosphate, Methylparaben, Pentylene Glycol. Mixed until uniform. Heated contents to 90℃.
4. In beaker B, added PEI; then mixed until PEI dissolved. (Temperature maintained at 85-90℃)
5. Slowly added contents of beaker B to beaker A. Then added Simethicone to the mixture. The gel formation was observed in 5 minutes after mixing A and B.
6. During the gel formation, slowed down the mixing speed from 250RPM to 100RPM to 50RPM.
7. Once the gel network became thick enough, changed to sweep blade. Started cooling using 50 RPM.
8 . At 35℃ , added a mixture of Phenoxyethanol (and) Methylparaben(and) Isopropylparaben (and) Isobutylparaben (and) Butylparaben.
9. Continued cooling to 25℃.」
仮訳
「実施例1、実施例2 水でおとせるマスカラ

手順
1 . メインビーカーAに、イソドデカン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ポリプロピレン-エチレン-無水マレイン酸コポリマーワックス、プロピルパラベンを添加した。次に内容物を全ての固体が融解するまで90℃に加熱した。
2. 酸化鉄をメインビーカーに添加し、850rpmで1時間の均質化バッチを開始した(温度は85℃?90℃に維持した)。
3. 別のビーカーBに、脱イオン水、EDTA2ナトリウム、セチルリン酸カリウム、メチルパラベン、ペンチレングリコールを加え、均ーになるまで混合した。内容物を90℃に加熱した。
4. ビーカーBにPEIを添加し、PEIが溶けるまで混合した(温度は85℃?90℃に維持した)。
5. ビーカーAにビーカーBの内容物をゆっくり加え、得られた混合物にシメチコンを加えた。AとBの混合後5分で、ゲル形成が観察された。
6. ゲル形成の間、混合速度を250rpmから100rpmへ、更に50rpmへ落した。
7. ゲルネットワークが十分に厚くなったら直ちに、掃引ブレードに交換した。50 rpmで冷却を開始した。
8. 35℃で、フェノキシエタノール(及び)メチルパラベン(及び)イソプロピルパラベン(及び)イソブチルパラベン(及び)ブチルパラベンの混合物を加えた。
9 . 25℃に冷却し続けた。」


2 理由1-1についての判断
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、摘記(1a)及び(1b)のとおり、少なくとも1つの「ポリアミン化合物」と、少なくとも1つの「油溶性高炭素極性変性ポリマー」とからなる「非水溶性反応生成物」に関する発明が記載されている。そして、該「非水溶性反応生成物」は、摘記(1b)のとおり、所望の化学物質に対して担体又はマトリックスとして作用することができ、工業的に、薬理学的に及び/又は化粧品として利用可能である。
具体的には、摘記(1d)のとおり、容器Aに「CM401」(「クラリアント製アルファオレフィン炭化水素-無水マレイン酸コポリマーワックス(商品名:LICOCARE CM401 LP3345)」)をイソドデカンに溶解させ、「界面活性剤としてのセチルリン酸カリウム」を添加し、別の容器Bに「Lupasol G35 PEI(ポリエチレンイミン)」、フェノキシエタノール、及び脱イオン水を混合し、容器B内容物を容器Aに加え、高いせん断の混合を維持しながら30分間70?80℃に維持することによって得られた、「非水溶性反応生成物」を含む組成物が記載されている。
したがって、甲第1号証には下記の発明が記載されている。
「CM401(アルファオレフィン炭化水素-無水マレイン酸コポリマーワックス)をイソドデカンに溶解させ、界面活性剤としてのセチルリン酸カリウムを添加した混合物に、Lupasol G35 PEI(ポリエチレンイミン)、脱イオン水及びフェノキシエタノールを含む混合物を添加し、高せん断混合を維持しながら30分70?80℃に維持して得られた非水溶性反応生成物を含む組成物」(以下、「甲1発明」という。)

(2)甲1発明と本件発明1との対比
甲1発明は「脱イオン水」を含むものであるから、甲1発明の「組成物」は、本件発明1の「水溶液である組成物」に相当する。また、摘記(1a)及び(1d)より、甲1発明では、「油溶性高炭素極性変性ポリマー」として「CM401(アルファオレフィン炭化水素-無水マレイン酸コポリマーワックス)」を用い、「ポリアミン化合物」として「Lupasol G35 PEI(ポリエチレンイミン)」を用いたと認められるため、甲1発明はこれらの成分から構成される「非水溶性反応生成物」を含有すると認められる。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは「フェノキシエタノールを含み、水溶液である組成物。」の点で一致するが、下記の点で相違する。
相違点1ア 本件発明1は、「400g/molより高い分子量のポリエチレンイミン」を含んでいるのに対して、甲1発明は、「CM401(アルファオレフィン炭化水素-無水マレイン酸コポリマーワックス)」と「Lupasol G35 PEI(ポリエチレンイミン)」との「非水溶性反応生成物」を含んでいる点。
相違点1イ 本件発明1は、フェノキシエタノールについて抗微生物剤と特定しているのに対して、甲1発明はそのように特定していない点。

(3)検討
相違点1アについて検討すると、甲1発明において、「CM401(アルファオレフィン炭化水素-無水マレイン酸コポリマーワックス)」と「Lupasol G35 PEI(ポリエチレンイミン)」との「非水溶性反応生成物」は、文字通り、これらの2成分が反応することで得られた生成物であると認められる。このことは、摘記(1c)の「油溶性高炭素極性変性ポリマーはポリアミン化合物と反応して、油溶性高炭素極性変性ポリマーとポリアミンからなる反応生成物を形成する」との記載によっても裏付けられている。すなわち、ポリエチレンイミンはアルファオレフィン炭化水素-無水マレイン酸コポリマーワックスと化学的に反応して非水溶性反応生成物に変化しているから、甲1発明の「非水溶性反応生成物を含む組成物」中にポリエチレンイミンは実質的に含まれないと認められる。
また、ポリエチレンイミンの各種製品と物性が記載されている甲第2号証の記載の事項を考慮したとしても、甲1発明の「非水溶性反応生成物を含む組成物」にポリエチレンイミンが含有されているとは認められない。
したがって、相違点1アは実質的な相違点である。

(4)小括
上記のとおり、本件発明1は甲1発明に対して実質的な相違点である相違点1アを有しているから、相違点1イについて検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明とはいえない。
本件発明1を直接、間接に引用する本件発明2?7、11?13に関しても同様に、甲1発明ではない。
したがって、上記理由1-1には、理由がない。


3 理由1-2及び理由2-1についての判断
(1)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証は、摘記(3a)に記載されるとおり「洗濯及びクリーニング組成物」の発明であって、特に、摘記(3e)及び(3f)のとおり、平均分子量が1800であるPEIを含み、水を含まない洗剤処方物が記載されている。また、特に、摘記(3e)及び(3g)のとおり、平均分子量が1800であるPEIを含む固形洗濯洗剤組成物が記載されている。
また、摘記(3b)及び(3c)より、洗濯及びクリーニング組成物は任意成分として殺菌剤を含有すること、並びに殺菌剤として2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールが選択しうることが記載されている。しかしながら、摘記(3f)及び(3g)に記載される上記PEIを含む洗剤処方物又は固形洗濯洗剤組成物は、具体的に殺微生物剤として2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールを含むものではない。
したがって、甲第3号証には、下記の発明が記載されている。
「平均モル分子量が1800であるポリエチレンイミンを含有する、水を含まない洗剤処方物、又は固形洗濯洗剤組成物。」(以下、「甲3発明」という。)

(2)甲3発明と本件発明1との対比
甲3発明の「平均分子量が1800であるポリエチレンイミン」は、本件発明1の「400g/molより高い分子量のポリエチレンイミン」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは「400g/molより高い分子量のポリエチレンイミンを含む組成物。」の点で一致するが、下記の点で相違する。
相違点3ア 本件発明1は、フェノキシエタノール及び2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種の抗微生物剤を含むのに対して、甲3発明は、フェノキシエタノール又は2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールを含まない点。
相違点3イ 本件発明1は水溶液である組成物であるのに対し、甲3発明は水を含まない洗剤処方物、又は固形洗濯洗剤組成物である点。

(3)検討
相違点3アについて検討すると、上述のとおり、摘記(3b)及び(3c)には洗濯及びクリーニング組成物は任意成分として殺菌剤を含有すること、並びに殺菌剤として2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールが選択しうることが記載されている。しかしながら、これらは摘記(3b)に記載されるとおり任意成分であって、甲第3号証に記載される洗濯及びクリーニング組成物において、フェノキシエタノール又は2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールを含む組成物は具体的に記載されていない。
また、甲第3号証は、摘記(3a)のとおりポリエチレンイミン等の「一級および/または二級アミン化合物」と「ケトン、アルデヒドおよびそれらの混合物から選択される香料成分」の「反応生成物」を含有する洗濯及びクリーニング組成物に関する特許文献であるが、この「反応生成物」は、摘記(3f)に記載される洗剤処方物および摘記(3g)に記載される固形洗濯洗剤組成物において、成分「ARP1」、「ARP2」、「ARP4」及び「ARP6」に相当するものと認められる(摘記(3e)?(3g)参照)。そのため、摘記(3f)に記載される洗剤処方物又は摘記(3g)に記載される固形洗濯洗剤組成物に含まれる「PEI」は任意成分として添加されているものと解される。すなわち、甲第3号証では、「PEI」も殺菌剤も任意成分として記載されているのみであり、任意成分である両者を組み合わせて配合した実施例の記載はなく、それを示唆する記載もない。
したがって、相違点3アは実質的な相違点である。

(4)小括
理由1-2について、上記のとおり、本件発明1は甲3発明に対して実質的な相違点である相違点3アを有しているから、相違点3イを検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明とはいえない。本件発明1を直接、間接に引用する本件発明2?6、8?14に関しても同様にである。
したがって、上記理由1-2には、理由がない。
また、上記の通り理由1-2には理由がないため、理由1-2の新規性欠如を前提とした理由2-1の進歩性欠如についても採用できない。また、甲第3号証、及び甲第2号証の記載を考慮しても、本件発明7は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたといえる理由も見いだせない。
したがって、上記理由2-1には、理由がない。


4 理由2-2についての判断
(1)甲第4号証に記載された発明
甲第4号証には、摘記(4b)のとおり、「殺生物剤の作用に影響を及ぼす要因」の一つとして「添加物の存在」があることが記載されている。具体的には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が、グラム陰性菌、特に緑膿菌の外膜組織の二価カチオンをキレートすることが記載され、並びにポリエチレンイミンもまたカチオン置換により作用することが記載されている。また、ポリエチレンイミンがグラム陰性菌に対して有効な細胞透過剤であることは、甲第5号証によっても裏付けられている(摘記(5a)及び(5b)参照)。
したがって、甲第4号証には、下記の発明が記載されている。
「殺生物剤の作用に影響を及ぼす細胞透過剤であるポリエチレンイミンを含む組成物。」(以下、「甲4発明」という。)。

(2)甲4発明と本件発明1との対比
本件発明1と甲4発明を対比すると、「ポリエチレンイミンを含む組成物。」の点で一致するが、下記の点で相違する。
相違点4ア 本件発明1は、「フェノキシエタノール及び2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種の抗微生物剤」を含むのに対して、甲4発明は、これらの抗微生物剤を含む点について特定されていない点。
相違点4イ 本件発明1は、「400g/molより高い分子量のポリエチレンイミン」を含んでいるのに対して、甲4発明は、ポリエチレンイミンの分子量について特定されていない点。
相違点4ウ 本件発明1は、「水溶液」である組成物であるのに対し、甲4発明は、組成物の溶媒について特定されていない点。

(3)検討
相違点4アについて検討すると、甲第4号証の摘記(4a)には、殺生物剤としてフェノキシエタノールが例示されている。また、甲第6号証の摘記(6d)に記載されるように、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールも抗菌剤、すなわち殺生物剤としてよく知られたものである。
しかしながら、抗微生物剤はフェノキシエタノールや2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール以外にも多数存在する。また、甲第4号証には、確かに、摘記(4b)のとおり、殺生物剤の作用に影響を及ぼす要因として添加物の存在が示され、ポリエチレンイミンがエチレンジアミン四酢酸(EDTA)と同様に細胞透過剤として作用することが示唆されているものの、甲第4号証において具体的にポリエチレンイミンを細胞透過剤として用いたことは記載されていない。また、甲第5号証においても、摘記(5b)のとおり、ポリエチレンイミンとノボビオシン等の抗微生物剤と共に使用したことが記載されているものの、ポリエチレンイミンをフェノキシエタノール又は2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールと共に用いた場合の効果は確認されていない。
そうすると、当業者が甲4発明において、多数の抗微生物剤の中から、甲4号証に記載されたフェノキシエタノールや、甲第6号証に記載された2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールに特に着目してそれらを採用するという動機付けはない。また、仮に甲4発明において、ポリエチレンイミンと共に用いる抗微生物剤としてフェノキシエタノールや2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールを採用することができたとしても、抗微生物活性の増強の効果が得られることを予測し得たとはいえない。摘記(7a)のとおり、微生物のバイオフィルムを除去するためにポリエチレンイミンを使用することを開示する甲第7号証の記載を考慮しても同様である。
したがって、相違点4アは当業者が容易に想到し得るものではない。

(4)小括
上記のとおり相違点4アは、甲第5号証、甲第6号証及び甲第7号証を参酌したとしても、当業者が甲4発明において容易に想到し得るものではないから、相違点4イ及び4ウを検討するまでもなく、本件発明1は、甲4明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明1を直接、間接に引用する本件発明2?14に関しても同様に、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、上記理由2-2には、理由がない。


5 理由2-3についての判断
(1)甲第8号証に記載された発明
甲第8号証には、摘記(8a)及び(8b)に記載のとおり、ポリアミン、油溶性極性変性ポリマー、水、油溶性極性変性ポリマーを溶解することができる不揮発性油、並びに揮発性溶剤とを含む油中水型マスカラ組成物に関する発明が記載されている。
具体的には、摘記(8d)のとおり、「水で落とせるマスカラであって、イソドデカン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ポリプロピレン-エチレン-無水マレイン酸コポリマーワックス、プロピルパラベン、及び酸化鉄を含むビーカーAの内容物に、脱イオン水、EDTA2ナトリウム、セチルリン酸カリウム、メチルパラベン、ペンチレングリコール、及びPEIを含むビーカーBの内容物を添加し、ゲル形成したものに、フェノキシエタノール、メチルパラベン、イソプロピルパラベン、イソブチルパラベン、ブチルパラベンの混合物を加えることで得られたマスカラ組成物。」(以下、「甲8発明」という。)が記載されている。

(2)甲8発明と本件発明1との対比
甲8発明において、摘記(8b)より「PEI」は「ポリエチレンイミン」に相当する。しかしながら、摘記(8c)によれば、ポリアミンは油溶性極性変性ポリマーと混合されるときに化学的および物理的反応が起こると考えられている。そして、甲8発明では、「油溶性極性変性ポリマー」として「ポリプロピレン-エチレン-無水マレイン酸コポリマーワックス」を用い、「ポリアミン化合物」として「PEI」(ポリエチレンイミン)を用いたと認められるため、甲8発明はこれらの成分が反応して得られた反応生成物を含有すると認められる。
そうすると、本件発明1と甲8発明とは「フェノキシエタノールを含む組成物。」の点で一致するが、下記の点で相違する。
相違点8ア 本件発明1は、「400g/molより高い分子量のポリエチレンイミン」を含んでいるのに対して、甲1発明は、「ポリプロピレン-エチレン-無水マレイン酸コポリマーワックス」と「PEI」(ポリエチレンイミン)との反応生成物を含んでいる点。
相違点8イ 本件発明1は、「水溶液の組成物」であるのに対して、甲4発明は、「ゲル形成した組成物」である点。
相違点8ウ 本件発明1は、フェノキシエタノールについて抗微生物剤と特定しているのに対して、甲8発明はそのように特定していない点。

(3)検討
相違点8アについて検討すると、摘記(8c)には「この理由は、油溶性極性変性ポリマーがポリアミンと混合されるときに起こる化学的および物理的反応のためと考えられており、その後に形成される反応生成物は、驚くべきことに、予想外に、その疎水性マトリックス内に大量の水分子を閉じ込めることができる。」と記載されている。したがって、甲8発明において「ポリプロピレン-エチレン-無水マレイン酸コポリマーワックス」と「PEI」(ポリエチレンイミン)とは化学的及び物理的に反応して反応生成物に変化しているから、甲8発明の「組成物」中にポリエチレンイミンは実質的に含まれないと認められる。
また、ポリエチレンイミンの各種製品と物性が記載されている甲第2号証の記載の事項を考慮したとしても、甲8発明の「組成物」にポリエチレンイミンが含有されているとは認められない。また、甲8発明に対して、最終組成物がポリエチレンイミンを含有するよう添加することを示唆する文献も見当たらない。
したがって、相違点8アは実質的な相違点であり、甲第8号証及び甲第2号証を参酌したとしても、当業者が甲8発明を容易に想到し得るものではない。

(4)小括
上記のとおり、本件発明1は甲8発明に対して実質的な相違点である相違点8アを有しており、相違点8アは甲第8号証及び甲第2号証を参酌したとしても、当業者が甲8発明において採用することを容易に想到し得るものではない。したがって、相違点8イ及び8ウを検討するまでもなく、本件発明1は甲8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、上記理由2-3には、理由がない。


6 理由3についての判断
(1)申立ての対象
理由3について、(1)申立書第55頁8行?第56頁10行(以下、「理由3-1」という。)、並びに(2)申立書第56頁11行?第57頁2行(以下、「理由3-2」という。)は、具体的理由としていずれも本件特許発明1-14はサポート要件違反である旨記載している。一方で、申立書第8頁の理由の要点では「請求項6」、及び「請求項1-14」を特許法第36条第6項第1号違反の対象として記載している。
この点につき、申立書第8頁の「請求項6」との記載は誤記であって、本件発明1-14に対して理由3-1及び理由3-2が申立てされたものと解して、以下の通り判断する。

(2)サポート要件の考え方
特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たすか否かの判断は、請求項に係る発明と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものとを対比、検討してなされ、請求項において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決する為の手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる場合、サポート要件を満たさないと判断される。

(3)本件発明における課題について
本件発明の詳細な説明の段落0005には、発明が解決しようとする課題について次のとおり記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、一般に、
a)抗微生物剤、及び
b)ポリアミン、特にはポリエチレンイミン(PEI)
を含む組成物に関する。」
また、段落0001?0003には、技術分野及び背景技術について次の通り記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミンとの組合せで殺生物剤(biocide)を含む抗微生物組成物、殺生物剤の抗微生物活性を増強するための方法、及び抗微生物剤のためのブースターとしてのこうしたアミノポリマーの対応する使用に関する。
【背景技術】
【0002】
第四級アンモニウム基を含有する特定のポリマーの抗微生物効果は、とりわけWO06/117382、WO97/32477に記載されている。US-2011-171,279は、ポリエチレンイミン主鎖に化学的に結合されたトリクロサンの抗微生物活性を記載している。
【0003】
ここで、一般的な殺生物剤の抗微生物作用は、ポリアミンの添加によって大きく増強され得ることが見出された。」
また、段落0042?0078には、発明の効果について記載されており、特に段落0042?0047には以下の通り記載されている。
「【0042】
本発明において見出される効果を要約し、以下を注記する。
【0043】
1.PEIなどのポリアミンは、抗微生物性、保存性及び/又は微生物体付着阻害の効果を示し得る。
【0044】
2.特には、上に記載されている通りの(1ページ22行から3ページ37行を範囲とする一節を参照されたい)好ましい構造的特徴を有するPEIは、抗微生物効果、保存効果及び/又は微生物体付着阻害効果を示し得る。
【0045】
3.1及び2の下に記載されている効果以外に、低い濃度のPEI及びそれ自体では抗微生物効果又は保存活性効果又は微生物体付着阻害効果を示さないPEIの組合せは、殺生物剤の抗微生物効力を増加させることができる。
【0046】
4.驚くべきことに、特には、上に記載されている通りのPEI(1ページ22行から3ページ37行を範囲とする一節を参照されたい)、及びこれらのPEIの組合せは、抗微生物活性若しくは保存活性を通常示さないか又は非常に弱い抗微生物活性しか示さないPEIの濃度で、殺生物剤の抗微生物効力を増加させる。
【0047】
5.上に記載されている通りのPEI(1ページ22行から3ページ37行を範囲とする一節を参照されたい)は、特には、以下の殺生物剤:フェノキシエタノール、ブロノポール、Tinosan HP100、グルタルアルデヒドの活性を増加させることができる。」
これらの発明の詳細な説明の記載を考慮すると、本件発明の課題は、ポリエチレンイミンとの組み合わせで、フェノキシエタノール又は2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールの抗微生物剤の抗微生物活性が増強された抗微生物組成物の提供といえる。

(4)検討
本件実施例には、以下の通り記載されている。
「[実施例1]
ポリエチレンイミンとの組合せにおける殺生物剤の相乗的効力(常用対数(log redn.)として表した生細胞の数の低減)を実証する微生物学的データは、以下の表に要約されている。灰色影付における系統は、対照試料を指し示す(PEI又は殺生物剤は添加されていない):
【表29】

【表30】

【0243】
非依存性研究(対照)は、1000 ppm (活性成分) Lupasol(登録商標) FGは単独で、S. aureus ATCC 6538に対して、5分の接触時間で殺細菌活性を有しない(<1 対数低減)ことを示す。
【0244】
[実施例2]
いくつかの典型的な細菌又は菌類損傷微生物体に対する、Eur. Pharm. 7.1版に記載されている局所的生成物についての試験方法に従う保存チャレンジ試験。界面活性剤処方物(水中45%ココアミドプロピルベタイン)は、0.5%フェノキシエタノールを単独で、又は0.1%ポリエチレンイミン(活性成分を指す)との組合せで用いて保存される。
【0245】
試料は、下記の表5において指し示されている通り1.5から3.5×105cfu/mlで接種される。20℃でのインキュベーションの7日後、試料は取り出され、合計の生存可能カウントが決定される。対数低減は、初期の病原菌ロードを参照して算出される。結果は、フェノキシエタノールとポリエチレンイミンとの組合せが、抗微生物活性に関してフェノキシエタノール単独より良好に行うことを示している。表4は処方物の組成を示し、表5は接触時間後7目の抗微生物効力(対数低減)を示す。
【表32】

【表33】


これらの記載から、表1、2に示される数値は、EN1040(化学消毒剤及び防腐剤の殺菌活性を評価するための定量的懸濁試験に関する試験方法と要件に関する欧州規格と解される。)によって測定された「接触時間後の対数低減」、すなわち「常用対数(log redn.)として表した生細胞の数の低減」であって、「殺細菌活性を有しない(<1 対数低減)ことを示す」といえる。
また、表5は、「Eur. Pharm. 7.1版に記載されている局所的生成物についての試験方法」に従って測定された結果であって、数値は「接触時間後7目の抗微生物効力(対数低減)」(「7目」は「7日目」の誤記と解される)であって、初期の病原菌ロードを参照して算出されたものである。
そうすると、表1、2、5には、フェノキシエタノール又は2-ブロモ-2-ニトロプロパン1,3-ジオールを単独で用いるよりも、ポリエチレンイミンとの組み合わせで、「接触時間後の対数低減」の数値がより大きく、すなわち抗微生物活性が増強された結果が示されており、これは、上記の課題に合致している。
そうすると、本件発明の方法は、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決する為の手段が反映されており、サポート要件は満たしているといえる。

この点につき、特許異議申立人は、申立書第55頁8行?第56頁10行(理由3-1)において、表1におけるLupasol WFを用いた場合の結果、Lupasol FGやPEI(II)を用いた場合の24時間後の結果、並びに表2におけるPEI(IV)とフェノキシエタノールやブロノポールとの混合物を用いた場合の1時間後、3時間後、6時間後の結果は、ポリエチレンイミンやフェノキシエタノールを単独で用いた場合と同等の効果か効果が劣っていることを指摘している。
しかしながら、上述の通り、表1、2、5の数値は対数低減の値であって、「>5」、すなわち生存する微生物数が10万分の1よりも少なく低減されていれば十分に抗微生物剤としての効果を発揮していると認められる。また、ポリエチレンイミンの種類、抗微生物剤の種類、並びに微生物の組み合わせにおいて、確かに一部の結果は単独で用いた場合と同等の効果であるといえるが、一方で表1、2及び5には相乗的な効果が得られたことを示すデータも記載されているから、当業者であれば、各種のポリエチレンイミンと、フェノキシエタノール又は2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールとの組み合わせによって、抗微生物剤の抗微生物活性を増強すること、すなわち課題を解決できることを認識し得たと認められる。

また、特許異議申立人は、申立書第56頁11行?第57頁2行(理由3-2)において、ポリエチレンイミンによる殺生物剤の相乗的殺菌効果が発揮されるためには、殺生物剤に対して所定の割合でポリエチレンイミンを配合することが必要となるのは明らかであり、組成物中のポリエチレンイミンの配合量にかかわらずフェノキシエタノールや2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールの殺細菌効果を増加させる効果が発揮されるとは考えられないため、実施例の結果を本件特許発明1-14の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない旨主張している。
しかし、抗微生物剤の技術分野において、主に対象とする微生物種、製剤の用途、当該用途において求められる抗微生物剤の効果の程度等に応じて、所望の抗微生物の効果が得られる量で抗微生物剤の配合量を調整することは当業者が通常行うことである。また、発明の詳細な説明には、シャンプー(段落0112)や各種製剤(段落0239?0240)における配合例も記載されている。そうすると、これらの記載や、実施例の具体的な配合量及び配合比の記載に接した当業者であれば、各製剤における従来の抗微生物剤の配合量や配合比を基準として、抗微生物剤の配合量とポリエチレンイミンの種類や配合量を調整し決定することで、本件発明の課題を解決できる程度に抗微生物活性が増強できると理解できたといえる。

(5)小括
上記のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、上記理由3-1及び3-2には、理由がない。


第5 むすび
したがって、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件特許1?14を取消すことができない。
また、他に本件特許1?14を取消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-12-07 
出願番号 特願2017-130006(P2017-130006)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A01N)
P 1 651・ 113- Y (A01N)
P 1 651・ 537- Y (A01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 雅雄  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 黒川 美陶
関 美祝
登録日 2019-12-13 
登録番号 特許第6629267号(P6629267)
権利者 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
発明の名称 ポリマーを用いた殺生物剤の抗微生物活性の増強  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  

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