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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1369266 |
審判番号 | 不服2019-17006 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-17 |
確定日 | 2021-01-12 |
事件の表示 | 特願2014-171481「光硬化性樹脂組成物、該組成物から形成される硬化被膜および防眩フィルム、画像表示装置、並びに硬化被膜および防眩フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 4日出願公開、特開2016- 45448、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続等の経緯 特願2014-171481号(以下「本件出願」という。)は、平成26年8月26日にされた特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 平成30年 3月27日付け:拒絶理由通知書 平成30年 6月 1日 :意見書 平成30年 6月 1日 :手続補正書 平成30年11月30日付け:拒絶理由通知書 平成31年 4月 2日 :意見書 平成31年 4月 2日 :手続補正書 令和 元年 9月 9日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 元年12月17日 :審判請求書 令和 元年12月17日 :手続補正書 令和 2年 8月28日付け:拒絶理由通知書 (この拒絶理由通知書によって通知された拒絶の理由を、以下、「当審拒絶理由」という。) 令和 2年11月 2日 :意見書 令和 2年11月 2日 :手続補正書 (この手続補正書による補正を、以下「本件補正」という。) 2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1?14に係る発明(平成31年4月2日にした手続補正後のもの)は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2006-154770号公報 引用文献2:特開2014-149504号公報 引用文献3:特表2008-530031号公報 引用文献4:特開2004-82613号公報 引用文献5:特開2012-53178号公報 引用文献6:特開2012-63430号公報 引用文献7:国際公開第2013/008680号 (当合議体注:主引用例は引用文献1又は引用文献2であり、引用文献3?引用文献7は、副引用例又は周知技術を示す文献である。) 3 当審拒絶理由通知の概要 当審拒絶理由は、概略、本件出願の特許請求の範囲の請求項2?請求項14の記載は、特許を受けようとする発明が、明確であるということができないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、というものである。 4 本願発明 本件出願の請求項1?請求項14に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項14に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「【請求項1】 光重合性成分(A)、微粒子(B)および光重合開始剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、 前記光重合性成分(A)は、重量平均分子量が10,000以上である光重合性(メタ)アクリル樹脂(a1)のみを含み、 前記微粒子(B)は、平均粒子径が1.0μm以上2.8μm以下の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子であり、 23℃における粘度が13mPa・s以上1000mPa・s以下であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。 【請求項2】 光重合性成分(A)、微粒子(B)および光重合開始剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物であって、 前記光重合性成分(A)が、重量平均分子量が10,000以上である光重合性(メタ)アクリル樹脂(a1)と、前記光重合性(メタ)アクリル樹脂(a1)以外の光重合性の(メタ)アクリレート系モノマー及び/または(メタ)アクリレート系樹脂(a2)のみからなり、前記(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系樹脂(a2)を前記光硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して40質量部以下の量で含有し、 前記微粒子(B)は、平均粒子径が1.0μm以上2.8μm以下の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子であり、 23℃における粘度が13mPa・s以上1000mPa・s以下であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 前記微粒子(B)を、前記光硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項4】 防眩フィルム形成用である、請求項1?3のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。 【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物から形成され、前記微粒子(B)による凹凸を表面に有することを特徴とする硬化被膜。 【請求項6】 表面粗さRaが0.01μm以上0.17μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の硬化被膜。 【請求項7】 凹凸の平均間隔Smが30μm以上300μm以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の硬化被膜。 【請求項8】 JIS K5600-4-7に準拠して測定される60°鏡面光沢度が120%以下であることを特徴とする請求項5?7のいずれかに記載の硬化被膜。 【請求項9】 透明性基材と、前記透明性基材上に設けられる請求項5?8のいずれかに記載の硬化被膜と、を備えることを特徴とする防眩フィルム。 【請求項10】 JIS K7136に準拠して測定される濁度が40%以下であることを特徴とする請求項9に記載の防眩フィルム。 【請求項11】 JIS K7374に準拠して、スリット幅が0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmの光学櫛を用いて測定される像鮮明度の合計値が350%以上であることを特徴とする請求項9又は10に記載の防眩フィルム。 【請求項12】 請求項9?11のいずれかに記載の防眩フィルムを備えることを特徴とする画像表示装置。 【請求項13】 請求項1?4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を光照射により硬化させる硬化工程を有することを特徴とする硬化被膜の製造方法。 【請求項14】 請求項1?4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を透明性基材の少なくとも一方の主面に塗布する塗布工程と、 前記塗布工程の後、光照射により前記光硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化被膜を形成する硬化工程と、を有することを特徴とする防眩フィルムの製造方法。」 第2 当合議体の判断 1 引用文献の記載及び引用発明 (1) 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2006-154770号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、防眩性反射防止フィルム、それを用いた偏光板および画像表示装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、液晶表示装置(LCD)は大画面化が進み、光学機能フィルム、例えば反射防止フィルムを配置した液晶表示装置が増大している。 …中略… 反射防止フィルムに反射防止能を付与するための1手段として防眩層が設置されることもある。この層に透光性粒子を含有することで、効果の一つとして防眩性等が発現される。防眩性は反射防止フィルムの表面形状に大きく依存し、防眩層に含有する透光性粒子が表面凹凸を大きくすることで、反射光を散乱させ、画像の映り込みを減らしている。また、反射防止フィルムには、防眩効果と合わせて反射光量を減らすために低屈折率層を上層に設けることも行われる。ところが透明機能層を複数塗設した光学フィルムでは、密着性が問題となることがあり、このために関係する層にある種の透明高分子化合物を含有することも行われる(特許文献1)。 【0003】 他方、近年、表面凹凸を大きくする因子のひとつに透光性粒子自身の層内分散性(または凝集性)があげられ、この透光性粒子の層内分散性が該層を形成するための塗布液の物性に依存することが分かってきた(特許文献2)。 発明者らの研究によって、この物性制御のために特許文献1で用いられたような高分子化合物類が有効であることが分かったが、この高分子化合物を単に用いただけでは改良効果が十分ではなく、特定の高分子化合物が有効であること、また特定の物性に制御することが特に有効であることも分かった。また、組み合わせて用いる他の素材においても、層内分散性効果を高めるための素材選定や、使用方法のあることも分かってきた。 …中略… 【0005】 【特許文献1】特開2001-83327号公報 【特許文献2】特開2001-281407号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、防眩性に優れ、塗布面状の良好な反射防止フィルムを安定に提供することである。 さらに、本発明の別の目的は、適切な手段により反射防止処理がされている偏光板、画像表示装置を提供することである。 …中略… 【発明の効果】 【0011】 本発明の反射防止フィルムは、防眩性に優れ、塗布面状が良好であり、しかも安定に提供することができる。本発明の偏光板、画像表示装置は、上記反射防止フィルムを用いているので、視認性に優れた高品質の画像が得られる。」 イ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 …中略… 本発明の反射防止フィルムは、該フィルムを構成する防眩層が、防眩層を形成するための塗布液に高分子化合物を含有することによって含有しない塗布液に対して、塗布液(塗布組成物)の粘度を3mPa・s?10mPa・sの範囲で増加させて、塗布、形成された層であることを特徴とする。 【0013】 まず、上記防眩層について説明する。 (防眩層) 防眩層は、主にモノマー類が電離放射線等で硬化して形成する透光性ポリマーからなる主バインダー、透光性粒子、および高屈折率化または低屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための微細無機フィラー、高分子化合物から形成される。 防眩層の厚さは、通常0.5μm?30μm程度で、好ましくは1μm?15μm、さらに3μm?10μmがより好ましい。厚さが上記範囲であると、カール、ヘイズ値、高コスト等の欠点がなく、しかも防眩性と光拡散効果の調整も容易である。 【0014】 〈主バインダー〉 防眩層を形成する主バインダーとしては、電離放射線等により硬化した後に飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有する透光性ポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、硬化後の主バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。 硬化後に飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマー(バインダー前駆体)の重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。 高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。 【0015】 防眩層を形成するための、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3-クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4-ビニルベンゼン、4-ビニル安息香酸-2-アクリロイルエチルエステル、1,4-ビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミド等が挙げられる。 さらに、二個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマーまたはプレポリマー等もあげられる。これらのモノマーは2種以上併用してもよく、また、二個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂はバインダー全量に対して10?70%含有することが好ましい。 …中略… 【0017】 これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。 従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラー、その他の添加剤を含有する硬化組成物を調製し、該硬化組成物を透明支持体上に塗布後、電離放射線あるいは熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成する。電離放射線硬化と熱硬化を合わせて行うことも好ましい。 …中略… 防眩層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して20?95質量%の範囲で添加することが好ましい。 …中略… 【0018】 光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3-アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2-エトキシアセトフェノン、p-メチルアセトフェノン、1-ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-4-メチルチオ-2-モルフォリノプロピオフェノンおよび2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4-クロロベンゾフェノン、4,4-ジクロロベンゾフェノンおよびp-クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。 最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。 市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。 光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1?15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1?10質量部の範囲である。 …中略… 【0022】 〈高分子化合物〉 本発明に係る防眩層は、高分子化合物を含有する。高分子化合物は塗布組成物に添加する時点で既に重合体を形成しており、主として透光性粒子の分散安定性(凝集性)に関わる塗布組成物の粘度調整や、乾燥過程での固化物の極性を制御して透光性粒子の凝集挙動を変えたり、乾燥過程での乾燥ムラを減じたりする目的で含有される。 本発明に係る高分子化合物としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、エーテル系樹脂等が挙げられる。 本発明に係る(メタ)アクリル系樹脂の単量体化合物について具体的に示すと、アクリル酸エステル類としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、tert-オクチルアクリレート,2-クロロエチルアクリレート、2-ブロモエチルアクリレート、4-クロロブチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、2-アセトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2-クロロシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、5-ヒドロキシベンジルアクリレート、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-iso-プロポキシアクリレート、2-ブトキシエチルアクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、ω-メトキシポリエチレングリコールアクリレート(付加モル数n=9)、1-ブロモ-2-メトキシエチルアクリレート、1,1-ジクロロ-2-エトキシエチルアクリレート等があげられる。 【0023】 メタクリル酸エステル類の例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、N-エチル-N-フェニルアミニエチルメタクリレート、2-(3-フェニルプロピルオキシ)エチルメタクリレート、ジメチルアミノフェノキシエチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、トリチエレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、2-アセトキシエチルメタクリレート、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-iso-プロポキシエチルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、ω-メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(付加モル数n=6)、アリルメタクリレート、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、などをあげることができる。 …中略… 【0027】 このような単量体化合物よりなる高分子化合物は単独で重合した高分子化合物でもよいし、複数が重合した共重合体よりなる高分子化合物でもよいが、共重合体のほうが重合しやすさ、溶解性等の点で好ましい。 これらからなる高分子化合物のうち、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル/メタアクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂が好ましい。 【0028】 高分子化合物の具体例としては例えば以下のものがあげられる。 K1: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10) Mw=1.6万 K2: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10) Mw=5.4万 K3: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10) Mw=17万 K4: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10) Mw=35万 K5: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10) Mw=68万 K6: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=95/5) Mw=17.3万 K7: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=80/20) Mw=17万 K8: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=60/40) Mw=17.2万 K9: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル=90/10) Mw=17.4万 K10: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル=80/20) Mw=16.7万 K11: ポリ(メタクリル酸メチル/メタアクリル酸ブチル=80/20) Mw=17.8万 K12: ポリ(メタクリル酸メチル/スチレン=80/20) Mw=17.4万 K13: ポリ(メタクリル酸メチル/メタクリル酸=90/10 Mw=17万 K14: ポリメタクリル酸メチル Mw=12.4万 K15: ポリメタクリル酸メチル Mw=4.6万 これらの具体例の中で、K2、K3、K9、K10が特に好ましい。 …中略… 【0033】 高分子化合物は必要に応じて、前記樹脂を2種類以上使用することもできる。 高分子化合物は、塗布組成物の粘度増加効果の発現及び含有層の膜強度維持の観点から、高分子化合物を含有する層に含む全バインダーに対して、好ましくは3質量%?40質量%、より好ましくは5質量%?30質量%、さらに好ましくは8質量%?25質量%の範囲で含有することが好ましい。 また、高分子化合物を含有することによって、含有しない場合の塗布組成物の粘度を含有前の粘度に対して、好ましくは2mPa・s?20mPa・s、よりこのましくは3mPa・s?15mPa・s、さらに好ましくは3mPa・s?10mPa・s、特に好ましくは3mPa・s?7mPa・sの範囲で増加して塗布形成することが好ましい。これによって粘度増加により防眩性が強くなりすぎるのを抑制することができる。塗布面状故障、防眩性、ディスプレイ表面に適用した場合の黒しまりの見え方、などの観点から粘度増加を上記範囲にすることは好ましい。 また、高分子化合物を含有する塗布組成物の粘度は、主として防眩性制御と塗布面状の観点から、4mPa・s?30mPa・sの範囲が好ましく、6mPa・s?20mPa・sがより好ましく、7mPa・s?15mPa・sが最も好ましい。 粘度は振動式粘度計CJV-5000([株]エー・アンド・デイ社製)(25℃で)等により測定できる。 …中略… 【0034】 〈透光性粒子〉 防眩層には、後記の微細無機フィラー粒子より粒径が大きく、平均粒径が0.5μm?10μm、好ましくは1μm?8μmの透光性粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。これは、ディスプレイ表面で反射する外光を散らして弱めたり、液晶表示装置の視野角(特に下方向視野角)を拡大し、観察方向の視角が変化してもコントラスト低下、黒白反転または色相変化を起こりにくくする目的で用いられる。平均粒径が上記範囲であれば、防眩効果が発現し、しかもザラツキ感が起こらない。 …中略… 粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。平均粒径は得られた粒子分布から算出する。 【0035】 …中略… 上記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、中空シリカ粒子、アルミナ粒子、TiO_(2)粒子等の無機化合物の粒子、ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート-スチレン共重合体粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリ塩化ビニル粒子等の樹脂粒子などが好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート-スチレン共重合体粒子、シリカ粒子が好ましい。 透光性粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できるが、ヘイズ値と拡散性の制御性、塗布面状の均質性から単分散粒子が好ましい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つ粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布の粒子を得ることができる。 …中略… 【0186】 以下、本発明によるフッ素系面状改良剤の具体的な構造の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。」 ウ 「【0217】 (防眩層用塗料B-1の調製) ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(KAYARAD PET-30、日本化薬(株)製)47.0質量部に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2.0質量部、フッ素系面状改良剤(FP-7-12)0.75質量部、オルガノシラン化合物(KBM-5103、信越化学工業(株)製)10.0質量部、高分子化合物K3の30%トルエン溶液16.0質量部、トルエン22.5質量部を添加して撹拌した。この溶液を塗布したのち、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。 さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX-350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液12.6質量部、及び、ポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液10.0質量部を添加して撹拌した。 孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩散層用塗料B-1を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.51であった。 この防眩層用塗料B-1の粘度は9.8mPa・sで、表面張力は27mN/mであった。 尚、高分子溶液を添加しない後述の比較塗料BR-3の粘度は4.7mPa・sであり、高分子溶液の添加による粘度の上昇は5.1mPa・sであった。 【0218】 …中略… (防眩層用塗料B-3の調製) 前記防眩層用塗料B-1に対して、高分子化合物をK4に変えた以外は塗料B-1と全く同様に行って、防眩層用塗料B-3を調製した。この塗料の粘度は、14.6mPa・sであった。」 エ 「【0233】 [実施例1] 膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製)上に、帯電防止層用塗料(AS-1)を、スロットダイ塗布方式で、搬送速度25m/分の条件で塗布した。 100℃で150秒乾燥した後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm^(2)、照射量500mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、帯電防止層を有するフィルムを作製した。 【0234】 膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製)上に、または、前記で作製した帯電防止層の上に、防眩層用塗料(B-1?B-13)および防眩層用比較塗料(BR-1?BR-3)をスロットダイ塗布方式で、搬送速度25m/分の条件で塗布した。 60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm^(2)、照射量250mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、防眩層つきフィルムを作製した。 【0235】 上記防眩層の上に、低屈折率層用塗料(L-1?L-8)をスロットダイ塗布方式で、搬送速度25m/分の条件で塗布した。 その後、L-1?L-3についての乾燥、硬化条件は、以下で行った。 120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm^(2)、照射量900mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、低屈折率層(最外層)を形成した。 L-4についての乾燥、硬化条件は、以下で行った。 120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で20分熱処理して塗布層を硬化させ低屈折率層(最外層)を形成した。 また、L-5?L-8についての乾燥、硬化条件は、以下でのように行った。 90℃で30秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm^(2)、照射量600mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させ低屈折率層(最外層)を形成した。 【0236】 本発明に掛かる反射防止フィルム試料の前記帯電防止層、前記防眩層および前記低屈折率層の塗設組み合わせを、表1に記載したとおりに行った。 【0237】 【表1】 【0238】 膜厚:各塗設層の乾燥、UV照射後または熱処理後の膜厚を示す。 【0239】 (反射防止フィルムの評価) 得られた反射防止フィルム試料について、以下の項目の評価を行った。結果を表2に示す。 【0240】 (1)表面抵抗の評価 反射防止フィルムの低屈折率層(最外層)を有する側の表面の表面抵抗を、超絶縁抵抗/微小電流計TR8601((株)アドバンテスト製)を用いて、25℃、相対湿度60%の条件下で測定した。 【0241】 (2)塵埃除去性の評価 反射防止フィルムをモニターに張り付け、モニター表面に塵埃(布団、衣服の繊維屑)を振りかけた。クリーニングクロスで塵埃を拭き取り、塵埃の除去性を調べ、下記3段階で評価した。 ○;塵埃が完全に取り除けたもの。 △;塵埃が若干残ったもの(許容範囲内)。 ×;塵埃がかなり残ったもの。 【0242】 (3)防眩性の評価 作製した反射防止フィルムにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/cm^(2))を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。 ◎ :蛍光灯の輪郭がほとんどわからない。 ○ :蛍光灯の輪郭がわずかにわかる。 △ :蛍光灯の周囲が白っぽく見えるが、輪郭は識別できる(許容範囲内)。 ×_((1)):蛍光灯がほとんどボケない。 ×_((2)):蛍光灯の輪郭が全く分からず、かつ全体がかなり白っぽく見える。 (4)平均反射率の評価 分光光度計(日本分光(株)製;V-550)を用いて、380?780nmの波長領域において、積分球を用いて、入射角5°における分光反射率を測定した。分光反射率の評価において、450?650nmの平均反射率を用いた。 【0243】 (5)塗布面状の評価 反射防止フィルム試料を全塗布幅のまま塗布方向に30cm切り取って黒布の上に塗布層側を上向きにして置き、白熱灯下で面状を目視で観察して以下の基準で評価した。 ◎ :塗布方向のスジ状の塗布ムラが全くない。 ○ :注意深く見ると、上記スジ状のごく弱い塗布ムラが一部で見られる。 △ :上記スジ状の弱い塗布ムラが一部で見られる。 △×:上記スジ状の弱い塗布ムラが全幅で見られる。 × :上記スジ状の強い塗布ムラが全幅で見られる。 【0244】 【表2】 【0245】 表1と表2に示した結果より、防眩層に高分子化合物を含有しない比較例の塗布組成物(試料No.123、125)に対して、高分子化合物を含有して塗布組成物の粘度を所定範囲で上げた本発明の組成物(試料No.101?122)は、防眩性が強すぎて全体が白っぽく見えるのを防いで丁度適切な防眩性を発現していることがわかる。また、塗布組成物の粘度を必要以上に上げた比較の塗布組成物(試料No.124)は蛍光灯の輪郭が見えて防眩性が不十分であり、かつ塗布面状も悪いことがわかる。これらの結果から、本発明は防眩性および塗布面状などにおいて優れた効果を発揮することは明らかである。」 (2) 引用発明 引用文献1の【0218】には、「(防眩層用塗料B-3の調製)」について記載されているところ、この「防眩層用塗料B-3」は、「前記防眩層用塗料B-1に対して、高分子化合物をK4に変えた以外は塗料B-1と全く同様に行って」「調製した」ものであり、その「粘度は、14.6mPa・sであ」る。 ここで、「防眩層用塗料B-1」は、引用文献1の【0217】に記載されたとおりの方法によって調製されたものである。 さらに、引用文献1の【0028】には、高分子化合物K4について、「K4: ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10) Mw=35万」であることが記載されている。 そうしてみると、引用文献1には、「防眩層用塗料B-3」として、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。 「 ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(KAYARAD PET-30、日本化薬(株)製)47.0質量部に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2.0質量部、フッ素系面状改良剤(FP-7-12)0.75質量部、オルガノシラン化合物(KBM-5103、信越化学工業(株)製)10.0質量部、高分子化合物K4(ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10) Mw=35万)の30%トルエン溶液16.0質量部、トルエン22.5質量部を添加して撹拌し、 さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX-350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液12.6質量部、及び、ポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液10.0質量部を添加して撹拌し、 孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して調製された、 粘度14.6mPa・sである、防眩層用塗料B-3。」 2 対比及び判断 (1) 対比 本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。 ア 光重合性成分(A) 引用発明の「防眩層用塗料B-3」は、「ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(KAYARAD PET-30、日本化薬(株)製)」を含むものである。 ここで、「ペンタエリスリトールトリアクリレート」及び「ペンタエリスリトールテトラアクリレート」は、その化合物名からみてアクリロイルオキシ基を具備するから、光重合性のものである。 そうしてみると、引用発明の「ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(KAYARAD PET-30、日本化薬(株)製)」は、本願発明1の「光重合性成分(A)」に相当する。 イ 微粒子(B) 引用発明の「防眩層用塗料B-3」は、「平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX-350、綜研化学(株)製)」及び「平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)」を含むものである。 ここで、上記「架橋ポリスチレン粒子」及び「架橋アクリル-スチレン粒子」は、その名称からみて粒状のものであり、また、その平均粒径からみて微小なものといえるから、「微粒子」といえる。 そうしてみると、引用発明の「架橋ポリスチレン粒子」及び「架橋アクリル-スチレン粒子」は、いずれも本願発明1の「微粒子(B)」に相当する。 ウ 光重合開始剤(C) 引用発明の「防眩層用塗料B-3」は、「重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)」を含む。 また、「イルガキュア184」が、光ラジカル性の重合開始剤であることは、技術常識である。 そうしてみると、引用発明の「重合開始剤」は、本願発明1の「光重合開始剤(C)」に相当する。 エ 光硬化性樹脂組成物 引用発明の「防眩層用塗料B-3」は、その組成からみて、紫外線の照射により硬化する、樹脂組成物である(当合議体注:引用文献1の【0234】の記載からも確認可能な事項である。) そうしてみると、引用発明の「防眩層用塗料B-3」は、本願発明1の「光硬化性樹脂組成物」に含まれるものである。 また、上記ア?ウの対比結果も踏まえると、引用発明の「防眩層用塗料B-3」は、本願発明1の「光硬化性樹脂組成物」における、「光重合性成分(A)、微粒子(B)および光重合開始剤(C)を含有する」という要件を満たす。 (2) 一致点及び相違点 ア 一致点 本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。 「 光重合性成分(A)、微粒子(B)および光重合開始剤(C)を含有する光硬化性樹脂組成物。」 イ 相違点 本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。 (相違点1) 「光重合性成分(A)」が、本願発明1は、「重量平均分子量が10,000以上である光重合性(メタ)アクリル樹脂(a1)のみを含み」と特定されたものであるのに対し、引用発明は、「ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(KAYARAD PET-30、日本化薬(株)製)」である点。 (相違点2) 「微粒子(B)」が、本願発明1は、「平均粒子径が1.0μm以上2.8μm以下の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子」であるのに対し、引用発明は、「平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX-350、綜研化学(株)製)」及び「平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)」である点。 (相違点3) 「光硬化性樹脂組成物」が、本願発明1は、「23℃における粘度が13mPa・s以上1000mPa・s以下である」のに対して、引用発明は、粘度の測定温度が、一応明らかでない点。 (3) 判断 (相違点2について) 引用発明の「架橋ポリスチレン粒子」及び「架橋アクリル-スチレン粒子」に関しては、引用文献1の【0034】及び【0035】に一般的な記載がある。しかしながら、そこに開示された平均粒径は、「0.5μm?10μm、好ましくは1μm?8μm」というものにとどまる。また、材質についても、「例えばシリカ粒子、中空シリカ粒子、アルミナ粒子、TiO_(2)粒子等の無機化合物の粒子、ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート-スチレン共重合体粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリ塩化ビニル粒子等の樹脂粒子などが好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート-スチレン共重合体粒子、シリカ粒子が好ましい。」と開示されるにとどまる。 そうしてみると、引用文献1には、粒径及び材質の双方の観点から、本願発明1の「平均粒子径が1.0μm以上2.8μm以下の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子」が記載ないし示唆されているとは、いうことができない。 原査定の拒絶の理由において引用された他の文献(引用文献2?引用文献7)についても、同様である。 さらに進んで検討すると、特開平4-204748号公報(以下「引用文献8」という。)の2頁右上欄10行?左下欄2行、特開平6-285363号公報(以下「引用文献9」という。)の段落【0004】?【0011】、特開2012-201780号公報(以下「引用文献10」という。)の請求項1、段落【0002】、【0003】及び【0010】、特開2005-78005号公報(以下「引用文献11」という。)の段落【0037】には、一応、本願発明1の「酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子」に該当する又は類似する微粒子が開示されている。 しかしながら、引用文献8に記載の技術は「静電荷像現像用トナー」であり、引用文献9に記載の技術は「合成樹脂等の補強材などとして有用である疎水性無機化合物微粒子の調整方法」であり、引用文献10に記載の技術は「酸化アルミニウム粒子をポリオルガノシルセスキオキサン粒子内に内包してなる複合粒子の製造方法および該複合粒子を配合した化粧料」であり、引用文献11に記載の技術は「マイクロレンズの製造方法、マイクロレンズ、光学膜、プロジェクション用スクリーンおよびプロジェクタシステム」である。 そうしてみると、これら引用文献に記載された技術は、引用発明において、「酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子」を採用することを動機づけるものとまではいえない。 加えて、「酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子」の平均粒径についてみると、引用文献8に記載された粒子径は「1μm?2μm」(2頁左下欄1行)、引用文献10に記載された粒子径は「0.5μm?10μm」(【0010】)であり、引用文献9及び引用文献11には記載がない。 そうしてみると、仮に、引用発明に引用文献8?引用文献11に記載の技術を組み合わせたとしても、本願発明1の構成には到らない。 (4) 小括 以上のとおりであるから、本願発明1は、たとえ当業者といえども、引用文献1に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。 (5) 請求項2?請求項14について 本件出願の請求項2?請求項14に係る発明は、いずれも少なくとも上記相違点2に係る本願発明1の構成を具備するものである。 そうしてみると、これら発明についても、たとえ当業者といえども、引用文献1に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたものであるということができない。 3 引用文献2を主引用例とした場合の判断 本願発明1と引用文献2に記載された発明を対比すると、「前記微粒子(B)は、平均粒子径が1.0μm以上2.8μm以下の酸化アルミニウム微粒子内包型ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子であり」という構成が相違点として抽出される。また、この相違点についての判断は、前記2(3)で述べたのと同様である。 したがって、本願発明1は、たとえ当業者といえども、引用文献2に記載された発明に基づいて、容易に発明することができたものであるということができない。請求項2?請求項14に係る発明についても、同様である。 第3 当審拒絶理由(特許法36条6項2号)について 本件補正により、当審拒絶理由は解消した。 第4 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては本件出願を拒絶することはできない。 また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する |
審決日 | 2020-12-25 |
出願番号 | 特願2014-171481(P2014-171481) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 池田 博一 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
関根 洋之 福村 拓 |
発明の名称 | 光硬化性樹脂組成物、該組成物から形成される硬化被膜および防眩フィルム、画像表示装置、並びに硬化被膜および防眩フィルムの製造方法 |
代理人 | 奥山 知洋 |
代理人 | 橘高 英郎 |
代理人 | 福岡 昌浩 |
代理人 | 阿仁屋 節雄 |