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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1370560
審判番号 不服2019-14773  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-05 
確定日 2021-02-09 
事件の表示 特願2015-114146「情報表示端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日出願公開、特開2017- 4055、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月4日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年11月 7日付け:拒絶理由通知書
平成31年 1月 9日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 3月22日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 元年 5月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 7月30日付け:令和元年5月21日の手続補正についての
補正却下の決定、拒絶査定
令和 元年11月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 8月31日付け:拒絶理由通知書(当審拒絶理由)
令和 2年10月30日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年7月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 1-2,4-6
・引用文献等 A

●理由2(進歩性)について
・請求項 3
・引用文献等 A

・請求項 7
・引用文献等 A,B

<引用文献等一覧>
A.特開2007-97170号公報
B.特開2010-273163号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



●理由1(新規性)について
・請求項1-3
・引用文献等 1

●理由2(進歩性)について
・請求項1-7
・引用文献等 1-4

<引用文献等一覧>
1.特開2012-147371号公報(令和元年7月30日付け補正却下
の決定で引用した引用文献1)
2.特開2012-226679号公報(当審で新たに引用した文献)
3.特開2007-27806号公報(当審で新たに引用した文献)
4.特開2010-273163号公報(拒絶査定時の引用文献B)


第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明は、令和2年10月30日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、本願請求項1ー7に係る発明は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
表示面を有する表示部と、
前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央に位置するように配置されるとともに、前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央で、把持可能なように配置され、矩形平板状である把持部と、を備え、
前記表示面の短手方向において前記表示部の最大寸法より前記把持部の最大寸法が小さいことを特徴とする情報表示端末装置。
【請求項2】
前記表示面の長手方向において前記表示部の最大寸法より前記把持部の最大寸法が小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の情報表示端末装置。
【請求項3】
前記表示部が前記把持部と接する部分における前記把持部の前記短手方向および長手方向の最大寸法は、前記表示部の前記短手方向および長手方向の最大寸法よりも小さい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報表示端末装置。
【請求項4】
前記把持部は、前記表示部の前記表示面とは反対側の面の内側から外側へと一部が突出するように、前記表示部に対して移動自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の情報表示端末装置。
【請求項5】
前記表示部の前記表示面とは反対側の面の内側から外側へと前記把持部の一部が突出した状態において、前記把持部の前記表示面と同じ側の面から露出する入力部を備えることを特徴とする請求項4に記載の情報表示端末装置。
【請求項6】
前記表示部に対して前記把持部が移動する方向が、前記表示面に表示される情報の上下方向と一致していることを特徴とする請求項5に記載の情報表示端末装置。
【請求項7】
前記表示部の鉛直方向に対する向きに応じて、前記表示面に表示される情報の上下方向の向きが切り替わることを特徴とする請求項6に記載の情報表示端末装置。」

第5 引用文献1、引用発明等
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に設けられたスピーカ等の操作音、指示音を出力する音孔と、光学読取部を有し、荷物等に貼られたシールのコード、文字を読み取る携帯端末に関し、特に、携帯端末の通常操作において、操作者が良好な音を聞き取れるようにする技術に関する。」

「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる第1の携帯端末は、表示部と操作部と光学読取開始スイッチとを筐体上面に設け、光学読取手段とグリップ部と操作に関連した音を出力する音孔とを筐体下面に設け、前記表示部は光学読取時には読取っている画像を表示するものであり、前記音孔が前記光学読取手段と前記光学読取開始スイッチとの間に設けたものとしている。」

「【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、携帯端末の上面の読取開始ボタンを使用する場合、最も自然な姿勢で携帯端末を把持して用いれば操作指示音の出力部を指で塞ぐことの無い配置としている、また、携帯端末側面の読取開始ボタンを用いた場合でも掌で音孔を塞ぐことが無い構成としている。さらに読取開始ボタン以外の操作部を操作する場合に、机上等に携帯端末を置いて操作するような場合にも光学読取部である凸部と筐体を把持する部分に指がかかりやすくした第2の凸部とで音孔周辺に隙間が構成され、特に机上では机での操作指示音の反射が操作者に返って来易いため操作音が確認しやすい携帯端末を提供するものである。」

「【0017】
本実施の形態の携帯端末は図1ないし図3に示すように筐体の上面に表示部2、操作部3、光学読取開始のスイッチであり請求項では光学読取開始スイッチとしたスキャンボタン4を設けている。また表示部横の筐体の側面には同じく光学読み取りを開始する第2スキャンボタンを両側に設けている。また、筐体下面の前縁付近に光学ヘッド7を設け、携帯端末から操作音、指示音声、動作のイベントを知らせる確認音を出力する音孔5を設けている。」

「【0020】
また装置下部の音孔より後縁に近い部分にグリップ部6を設けている。これは装置下面が平らでなんら引っかかりがないと、携帯端末の保持がしにくいためである。また通常はこのグリップ部が携帯端末の電池蓋に形成されていて、重量がかさむ電池の部分が掌の中に納まり、全体として携帯端末の保持性を向上させている。」

「【0023】
携帯端末で画像を取得する場合に操作者が表面のスキャンボタン4を用いる場合を想定してみる。操作者はおおむね親指でスキャンボタン4を操作するものと思われる。この場合残りの4本の指はグリップ部6を包むようにして携帯端末1を保持する。このように保持すると4本の指は親指の位置より装置後縁に位置するため、スキャンボタン4より携帯端末前縁に近い位置に音孔5を設ければ携帯端末1を保持する指が音孔5を塞いでしまうことは無い。」

「【0025】
このため自然と操作者は操作部3スキャンボタン4の真下である装置後縁近くを保持する、このため左手の掌がグリップ部6を包み込むようにして保持する。この場合も指が音孔5のところに掛かることは無い。この場合はスキャンボタン4と操作部3は近接していることが好ましい。より好ましくは操作部3の一部にスキャンボタン4が取り込まれているのが良い。」

「【0027】
また、グリップ部6を掌に置き、携帯端末下面から親指と人差し指を第2スキャンボタン9a,9bに伸ばして画像を取り込む場合も考えられるがこのときは親指と人差し指が大きく開きV字上になるため携帯端末下面の音孔はこのVの中、あるいはVの字より携帯端末前縁側にあるため塞がれることはない。
(実施の形態1の効果)
本実施の形態によれば、表示部2、操作部3、スキャンボタン4、音孔5、グリップ部6を本実施例のように配置すれば、どの様な保持方法としても音孔5を指、掌が塞ぐことはないため、操作者は明瞭に携帯端末1からの音を確認できるという効果を得ることができる。」

「【図2】



図2は、第1の実施例の携帯端末の下面を示す図であり、図中、1は携帯端末、5は音孔、6はグリップ部、7は光学ヘッド、8は光学コード読取口、9a,9bは第2スキャンボタンを示す。

上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a 引用文献1に記載された技術は、荷物等に貼られたシールのコード、文字を読み取る携帯端末に関するものであり(【0001】)、携帯端末1は、表示部と操作部と光学読取開始スイッチとを筐体上面に設け、光学読取手段とグリップ部と操作に関連した音を出力する音孔とを筐体下面に設け、前記表示部は光学読取時には読取っている画像を表示するものである(【0009】)。

b 携帯端末1は、筐体上面に表示部2、操作部3、光学読取開始スイッチとしたスキャンボタン4を設け、また、筐体下面の前縁付近に光学ヘッド(光学読取手段)7を設け、確認音を出力する音孔5を設け(【0017】)、音孔より後縁に近い部分にグリップ部6を設けて、グリップ部6は携帯端末の保持性を向上させている(【0020】)。

c 操作者は、親指でスキャンボタン4を操作する場合、残りの4本の指はグリップ部6を包むようにして携帯端末1を保持し(【0023】)、装置後縁近くを保持する場合、左手の掌がグリップ部6を包み込むようにして保持し(【0025】)、グリップ部6を掌に置き、携帯端末下面から親指と人差し指を第2スキャンボタン9a,9bに伸ばして画像を取り込む場合も考えられる(【0027】)。

d 第1の実施例の携帯端末の下面を示す図2には、携帯端末1の筐体下面の前縁付近に光学ヘッド(光学読取手段)7を設け、その一部に光学コード読取口8があり、また、音孔5より後縁に近い部分にグリップ部6を設けていることが図示されており、この図2を参照すると、グリップ部6は、筐体上面の表示部2とは反対側の筐体下面の領域であって、筐体下面の領域からはみ出すことなく、筐体が設けられる領域の内側に位置するように配置されていること、前記表示部2の短手方向において前記筐体下面の最大寸法よりグリップ部6の最大寸法が小さいことが見て取れる。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉
「荷物等に貼られたシールのコード、文字を読み取る携帯端末1であって、
前記携帯端末1は、表示部2と操作部3と光学読取開始スイッチとを筐体上面に設け、光学読取手段7とグリップ部6と操作に関連した音を出力する音孔5とを筐体下面に設け、前記表示部2は光学読取時には読取っている画像を表示するものであり、
前記携帯端末1は、筐体上面に表示部2、操作部3、光学読取開始スイッチとしたスキャンボタン4を設け、また、筐体下面の前縁付近に光学読取手段7を設け、確認音を出力する音孔5より後縁に近い部分にグリップ部6を設けて、前記グリップ部6は携帯端末の保持性を向上させ、
グリップ部6は、筐体上面の表示部2とは反対側の筐体下面の領域であって、筐体下面の領域からはみ出すことなく、筐体が設けられる領域の内側に位置するように配置され、
操作者は、親指以外の4本の指で前記グリップ部6を包むようにして携帯端末1を保持し、あるいは、手の掌が前記グリップ部6を包み込むようにして保持し、
前記表示部2の短手方向において、前記筐体下面の最大寸法より前記グリップ部6の最大寸法が小さい、携帯端末1。」

第6 対比・判断
(1)対比
ア 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
(ア)まず、本願発明における「表示面を有する表示部」に関して、本願明細書及び図面には以下の記載がある。
「【0019】
表示部2は、全体として略矩形平板状に形成されている。表示部2は、矩形状(長方形状)の表示面2aを構成する、例えば液晶表示パネルや有機ELパネルなどの表示パネルを有している。また、表示部2の表示面2aの下方には、情報を入力操作する操作キーなどの入力部4が設けられている。・・・
【0020】
表示部2の先端側には、商品に付された情報を光学的に読み取る情報読取部5が設けられている。・・・
【0021】
・・・また、把持部3は、表示部2の背面2bの内側に位置するように、表示部2よりも小さく形成されている。すなわち、この情報表示端末装置1では、表示面2aの短手方向(図1中のX軸方向)における表示部2の寸法(幅)X1よりも把持部3の寸法(幅)X2が小さく、表示面2aの長手方向(図1中のY軸方向)における表示部2の寸法(長さ)Y1よりも把持部3の寸法(長さ)Y2が小さくなっている。」

【図1】

これらの記載を参照すると、「表示部2」は、全体として略矩形平板状に形成され、表示部2の寸法(幅)X1、寸法(長さ)Y1であり、「表示面2aを構成する表示パネル」を有し、また、表示部2の表示面2aの下方には、「入力部4」が設けられ、表示部2の先端側には、「情報読取部5」が設けられ、表示部2の背面2bの内側に位置するように「把持部3」が形成された情報表示端末装置の筐体を意味すると解され、また、「表示面2a」は、「表示部2」の「背面2b」の反対側の面における、情報が視認可能に表示出力される表示パネルの表面となる矩形エリアを意味すると解される。

そうすると、引用発明の「筐体上面」に設けられた、光学読取時には読取っている画像を表示する「表示部2」は、本願発明の「表示面」(2a)に相当し、引用発明の「筐体」は、本願発明の「表示面を有する表示部」に相当する。

(イ)引用発明の「グリップ部6」は、筐体上面の表示部2とは反対側の筐体下面の領域であって、筐体下面の領域からはみ出すことなく、筐体が設けられる領域の内側に位置するように配置されている。
また、引用発明では、操作者は、親指以外の4本の指で前記グリップ部6を包むようにして携帯端末1を保持し、あるいは、手の掌が前記グリップ部6を包み込むようにして保持していることから、引用発明の「グリップ部6」は、筐体上面の表示部2とは反対側の筐体下面の領域であって、筐体下面の領域からはみ出すことなく、筐体が設けられる領域の内側で、把持可能なように配置されていると認められる。
そうしてみると、引用発明の「グリップ部6」は、筐体上面の表示部2とは反対側の筐体下面の領域であって、筐体下面の領域からはみ出すことなく、筐体が設けられる領域の内側に位置するように配置されるとともに、筐体上面の表示部2とは反対側の筐体下面の領域であって、筐体下面の領域からはみ出すことなく、筐体が設けられる領域の内側で、把持可能なように配置されているといえる。
ここで、引用発明における「筐体上面の表示部2とは反対側の筐体下面の領域」、「筐体が設けられる領域の内側」は、本願発明における「表示部の表示面とは反対側の面の領域」、「表示部が設けられる領域の内側」に相当する。
してみれば、引用発明の「グリップ部6」と本願発明の「把持部」とは、「前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、「前記表示部が設けられる領域の内側」に位置するように配置される」とともに、「前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側で、把持可能なように配置される」点で共通するものといえる。

(ウ)引用発明は、「前記表示部2の短手方向において、前記筐体下面の最大寸法より前記グリップ部6の最大寸法が小さい」から、引用発明と本願発明とは、「前記表示面の短手方向において前記表示部の最大寸法より前記把持部の最大寸法が小さい」点で共通するものといえる。

(エ)引用発明の「携帯端末1」は、「荷物等に貼られたシールのコード、文字を読み取る携帯端末1であって、表示部2に光学読取時には読取っている画像といった情報を表示するものであるから、本願発明の「情報表示端末装置」に相当する。

イ 以上のことから、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

〈一致点〉
「表示面を有する表示部と、
前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側に位置するように配置されるとともに、前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側で、把持可能なように配置される把持部と、を備え、
前記表示面の短手方向において前記表示部の最大寸法より前記把持部の最大寸法が小さいことを特徴とする情報表示端末装置。」

〈相違点〉
本願発明の把持部は、「前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央に位置するように配置されるとともに、前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央で、把持可能なように配置され、矩形平板状である」のに対し、引用発明のグリップ部6は、装置下部の音孔より後縁に近い部分に設けられており、中央に位置するように配置されてはおらず、また、矩形平板状ではない点。

(2)相違点についての判断
引用文献1には、「図1における上方向が携帯端末前縁部であり、図1における下方向が携帯端末後縁部であり、操作者は通常、装置後縁部を自分に近い方向に向けて使用する。」(段落【0016】)、「また装置下部の音孔より後縁に近い部分にグリップ部6を設けている。これは装置下面が平らでなんら引っかかりがないと、携帯端末の保持がしにくいためである。また通常はこのグリップ部が携帯端末の電池蓋に形成されていて、重量がかさむ電池の部分が掌の中に納まり、全体として携帯端末の保持性を向上させている。」(段落【0020】)と記載されるように、引用発明におけるグリップ6の配置及びその形状は、操作者が携帯端末を使用する際の保持性などを考慮して採用されたものであるから、グリップ6の配置や形状を変更することが、適宜成し得る設計変更程度のことは認められない。
一方、 引用文献1には、図4から図6とともに携帯端末の第2の実施の形態について記載されているところ、この携帯端末の外観を示す図4を参照すると、グリップ部6の形状が矩形平板状であるように見られるものの、携帯端末の下面を示す図6を参照すると、グリップ部6の形状は台形錐状であり、矩形平板状でないことが確認できる。
【図4】

【図6】


また、「表示部の表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央に位置するように配置されるとともに、前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央で、把持可能なように配置され、矩形平板状である把持部」について、上記引用文献2-4には記載も示唆もなく、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
そして、本願発明は、このような把持部を設けたことで、「表示部の表示面に表示される情報を他者に見せ易くすることを可能とする」という作用効果を奏するものである。

したがって、本願発明は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願請求項2-7に係る発明について
本願請求項2-7に係る発明は、本願発明の「前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央に位置するように配置されるとともに、前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央で、把持可能なように配置され、矩形平板状である把持部」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和2年10月30日付けの補正により、補正後の請求項1-7は、「表示部の表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央に位置するように配置されるとともに、前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央で、把持可能なように配置され、矩形平板状である把持部」という技術的事項を有するものとなった。
原査定における引用文献Aには、「表示部の表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央に位置するように配置されるとともに、前記表示部の前記表示面とは反対側の面の領域であって、前記表示部が設けられる領域の内側の中央で、把持可能なように配置され、矩形平板状である把持部」について記載はなく、このような把持部を設けることを示唆する記載もない。また、引用文献B(当審拒絶理由における引用文献4)にも、このような把持部について記載も示唆もなく、本願出願日前における周知技術でもないので、本願請求項1-7に係る発明は、当業者であっても、原査定における引用文献A、Bに基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-19 
出願番号 特願2015-114146(P2015-114146)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三橋 竜太郎  
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 野崎 大進
▲吉▼田 耕一
発明の名称 情報表示端末装置  
代理人 三木 雅夫  
代理人 西澤 和純  
代理人 覚田 功二  
代理人 野村 進  

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