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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1371222 |
審判番号 | 不服2019-11305 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-08-28 |
確定日 | 2021-02-10 |
事件の表示 | 特願2017-553150「自動販売機トランザクション」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日国際公開、WO2016/162535、平成30年 7月26日国内公表、特表2018-520401〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)4月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年4月10日、英国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成30年10月29日付:拒絶理由通知 平成31年 1月17日 :意見書及び手続補正書の提出 令和 元年 5月 8日付:拒絶査定 令和 元年 8月28日 :審判請求・手続補正書の提出 第2 令和元年8月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年8月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) 本件補正は、特許請求の範囲の請求項について補正するものであり、その補正の一部には、本件補正前の請求項13の記載を本件補正後の請求項13のとおりに補正する補正事項(以下、「本件補正事項」という。)を含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項13の記載 本件補正前の、平成31年1月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項13の記載は次のとおりである。 「【請求項13】 モバイル支払装置とトランザクションを実行するよう適合された自動販売機において、モバイル支払装置との無線通信を確立するよう適合され、販売プラットフォームへの送信のために、前記モバイル支払装置の仮想自動販売機インタフェースであって少なくとも選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付ける仮想自動販売機インタフェースを介して前記モバイル支払装置と自動販売機トランザクションの詳細を確立し、オーソリゼーショントークンを受信する自動販売機無線支払装置インタフェースを含み、 前記オーソリゼーショントークンが受信されたとき、前記自動販売機は、販売を可能にするよう適合される、自動販売機。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項13の記載 本件補正による、特許請求の範囲の請求項13の記載は、次のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。 「【請求項13】 モバイル支払装置とトランザクションを実行するよう適合された自動販売機において、モバイル支払装置との無線通信を確立するよう適合され、販売プラットフォームへの送信のために、前記モバイル支払装置の仮想自動販売機インタフェースであって少なくとも選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付ける仮想自動販売機インタフェースを介して前記モバイル支払装置と自動販売機トランザクションの詳細を確立し、オーソリゼーショントークンを受信する自動販売機無線支払装置インタフェースを含み、 前記オーソリゼーショントークンが受信されたとき、前記自動販売機は、販売を可能にするよう適合され、 前記モバイル支払装置の前記仮想自動販売機インタフェースは更に、前記自動販売機による前記販売の後に残る、ユーザの残高を表示する、自動販売機。」 2 補正の適否 本件補正事項は、本件補正前の請求項13において、「前記モバイル支払装置の前記仮想自動販売機インタフェースは更に、前記自動販売機による前記販売の後に残る、ユーザの残高を表示する」なる事項を特定することを含んでおり、本件補正により、「前記モバイル支払装置の前記仮想自動販売機インタフェース」が「少なくとも選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付ける」ものであることに加え、「前記自動販売機による前記販売の後に残る、ユーザの残高を表示する」ものであるということが特定された。 ここで、本件補正前の請求項13に係る発明は「自動販売機」の発明であって、「モバイル支払装置とトランザクションを実行するよう適合された自動販売機」であること、及び、「モバイル支払装置との無線通信を確立するよう適合され、販売プラットフォームへの送信のために、前記モバイル支払装置の仮想自動販売機インタフェースであって少なくとも選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付ける仮想自動販売機インタフェースを介して前記モバイル支払装置と自動販売機トランザクションの詳細を確立し、オーソリゼーショントークンを受信する自動販売機無線支払装置インタフェースを含」んでいることを発明特定事項として含む発明であるところ、「仮想自動販売機インタフェース」は、「モバイル支払装置」のインタフェースであり、「モバイル支払装置」は「仮想自動販売機インタフェースを介して前記モバイル支払装置と自動販売機トランザクションの詳細を確立」するものであることから、「モバイル支払装置」が「仮想自動販売機インタフェースを介して前記モバイル支払装置と自動販売機トランザクションの詳細を確立」するものであるとの「自動販売機」との関係において、「前記自動販売機による前記販売の後に残る、ユーザの残高を表示する」こと、或いは「少なくとも選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付ける」ことは技術的な関連はない。 してみると、本件補正により追加された技術事項である「前記モバイル支払装置の前記仮想自動販売機インタフェース」が「前記自動販売機による前記販売の後に残る、ユーザの残高を表示する」ということは、本件補正前の請求項13に係る発明である「自動販売機」の技術事項と技術的に関連する事項を特定するものではないことから、補正前の請求項における発明特定事項を、概念的により下位の発明特定事項としたものでない、いわゆる外的付加に相当することは明らかである。 よって、本件補正事項の目的は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものとはいえない。 また、当該補正事項が、特許法第17条の2第5項第3号或いは同項第4号に規定する誤記の訂正や明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことは明らかである。 してみると、本件補正事項による補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反してされたものというほかないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和元年8月28日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし47に係る発明は、平成31年1月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし47に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項13に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)のとおりのものであって、再掲すると、以下のとおりのものである。 「【請求項13】 モバイル支払装置とトランザクションを実行するよう適合された自動販売機において、モバイル支払装置との無線通信を確立するよう適合され、販売プラットフォームへの送信のために、前記モバイル支払装置の仮想自動販売機インタフェースであって少なくとも選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付ける仮想自動販売機インタフェースを介して前記モバイル支払装置と自動販売機トランザクションの詳細を確立し、オーソリゼーショントークンを受信する自動販売機無線支払装置インタフェースを含み、 前記オーソリゼーショントークンが受信されたとき、前記自動販売機は、販売を可能にするよう適合される、自動販売機。」 2 原査定の拒絶の理由 本願発明についての原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、13、21、23、24、27、36及び43に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明および周知技術に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引用文献1:特開2001-338327号公報 引用文献4:特開2004-038843号公報 引用文献5:韓国公開特許第10-2014-0086616号公報 3 引用発明等 (1)引用文献1について ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1(特開2001-338327号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動販売機を用いた商品販売において、自動販売機における現金の収納や管理を不要とする自動販売システムに関する。」 「【0006】 【発明の実施の形態】本発明では、商品提供行為と料金精算行為を分離させ、商品提供時は商品購入を行うユーザの認証を行い、認証に成功したら商品を提供し、料金の精算は後日に金融機関とユーザとの間で行うことにより、自動販売機の中に現金の滞留を不要とした。 【0007】また、商品購入を行うユーザを認証し、預金残高の確認を完了したら、その残高の範囲内での商品しか提供しないようにするとともに、商品提供の完了と同時に料金の自動引き落としを行うことにより、自動販売機の中に現金の滞留を不要とし、セキュリティ機能を向上させた。また、商品提供時に、その情報を課金センタに送り、ここで在庫管理を行うことにより、商品配送の効率化を併せて実現した。 【0008】 【実施例】図2は本発明のシステム構成である。1は商品を購入するユーザが所有する携帯機、2は本発明特有の自動販売機、3は自動販売機ごとの商品管理データを保有する課金センタ、4はユーザの口座情報を管理する金融機関である。携帯機1は小電力か微弱電力の無線で自動販売機2と通信する。自動販売機2は携帯機1と無線で通信する機能と、課金センタと通信する機能を持つ。後者は無線でもいいし有線でもかまわない。課金センタ3には、相当多数の自動販売機2が接続され、それぞれの自動販売機2の販売データを管理する。また、金融機関4とインタフェースし、金融機関4で認証したユーザの情報を自動販売機2に送る機能も持つ。4は銀行やカード会社、等の通常の金融機関でよく、課金センタ3との間は通信回線で接続される。」 「【0012】図1は本発明の第1の実施例における動作フローを示す。ユーザは自動販売機2から商品を購入しようとする場合は、まずその自動販売機2のユーザインタフェース部22に含まれるクレジット購入ボタンを押す(S1)。このとき携帯機1の電源はオンにしておく。自動販売機2は、クレジット購入ボタンが押されると、購買許可信号を携帯機1に送信するとともに、タイマをスタートさせる。このタイマは、次に述べるような携帯機1からの購入命令信号を受信するためのものである。 【0013】購買許可信号を受けた携帯機1はユーザインタフェース部12の中の購買インジケータを点灯させ、自動販売機2が購入命令を受付可能になったことをユーザに知らせる(S2)。ユーザはこのインジケータの表示を見て、ユーザインタフェース部12に含まれる購入ボタンを押す(S3)。携帯機1はこの購入ボタンが押されると、購入命令信号を自動販売機2に送信する。購入命令信号には、ユーザを識別する番号(ユーザID)が含まれる。自動販売機2は、購入命令信号を受信すると、タイマをリセットするとともに携帯機1にパスワード要求信号を送信する。 【0014】もし、この購入命令信号が予め設定した時間以内に届かない場合は、自動販売機2は購入命令信号を無視して初期状態に復旧する。パスワード要求信号を受信した携帯機1は、ユーザに対してパスワード要求があったことを知らせる。ユーザは、これに対して予め登録されているパスワードを入力して送信する(S4)。パスワードを受信した自動販売機2は、このパスワードと購入命令信号に含まれるユーザIDを組み合わせて認証信号を生成して課金センタ3に送信する。」 「【0016】ユーザIDとパスワードを受信した課金センタ3は、その信号を金融機関4に送信するとともにタイマをスタートさせる(S5)。金融機関4は複数存在するが、ユーザID毎に利用する金融機関を予め課金センタ3のユーザ管理データベース35に登録しておくことにより、該当する金融機関4を選択して、そこに送信することができる。このタイマは金融機関4からの認証完了信号を待ち受けるためのものである。 【0017】課金センター3の信号プロトコル変換部33では、金融機関4がユーザIDとパスワードを受信できるような形式に信号形式を変換する。金融機関4では、受信したユーザIDとパスワードから、このユーザがこの金融機関4における正規の加入者であることを確認し、認証完了信号を該当の課金センタ3に返送する(S6)。 【0018】課金センタ3では、認証完了信号を受信したら、タイマをリセットするとともに、認証完了信号を対象の自動販売機2に送信する(S7)。自動販売機2では、この認証完了信号を受信すると、ユーザインタフェース部22に含まれる商品ランプを点灯させる。(S8)。もし、自動販売機2で、加入者認証信号を課金センタ3に送信後(S4)、一定時間内に認証完了信号を受信できない場合には、自動販売機2は初期状態に復旧する。 【0019】ユーザは、商品ランプの点灯を確認したら、購入したい商品のボタンを押す。これにより、商品がユーザに渡される(S9)。この時、自動販売機2は、販売金額・自動販売機コード・商品コードを携帯機1に送信し、またユーザID・販売金額・商品コード・販売機コード・タイムスタンプ(販売日時など)を課金センタ3に送信する(S10)。ここで、もし複数の商品を購入する場合には、商品ボタンを次々に押して複数の商品を販売した後、各々の商品の金額等を携帯機1と課金センタ3に送信する。」 「【0021】自動販売機2から販売金額等の信号を受信した携帯機1は、これらのデータをユーザインタフェース部12に含まれる表示器に表示することにより、ユーザは購入金額の確認をすることができる(S11)。ユーザは、ユーザインタフェース部12に含まれる記憶ボタンを押すことにより、記憶部15にこのデータを保存しておくことができる(S12)。後日、この記憶データを整理することにより、携帯機1を家計簿の代わりとすることも可能である。」 「【0023】課金センタ3では、商品管理データベース32の記憶内容に基づいて、一定期間毎に自動販売機毎の販売金額をまとめ、さらに自動販売機設置業者毎に販売金額の合計を算出し、それを金融機関4に通知する(S15)。これにより、金融機関4では、請求処理S14でユーザから受領した販売代金を自動販売機設置業者に支払うことが可能である(S16)。」 イ 引用発明 上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「自動販売機を用いた商品販売において、自動販売機における現金の収納や管理を不要とする自動販売システムに関し(【0001】)、 自動販売機は、携帯機と無線で通信する機能及び課金センタと通信する機能を有し(【0008】)、 ユーザは、自動販売機から商品を購入しようとする場合は、まずその自動販売機のユーザインタフェース部に含まれるクレジット購入ボタンを押し、自動販売機は、クレジット購入ボタンが押されると、購買許可信号を携帯機に送信し(【0012】)、携帯機は、ユーザによりユーザインタフェース部に含まれる購入ボタンが押されると、ユーザを識別する番号(ユーザID)が含まれる購入命令信号を自動販売機に送信し(【0013】)、自動販売機は、購入命令信号を受信すると、携帯機にパスワード要求信号を送信し(【0013】)、ユーザは、これに対して予め登録されているパスワードを携帯機に入力して自動販売機へ送信し、パスワードを受信した自動販売機は、このパスワードと購入命令信号に含まれるユーザIDを組み合わせて認証信号を生成して課金センタに送信し(【0014】)、ユーザIDとパスワードを受信した課金センタ3は、その信号を金融機関に送信し(【0016】)、金融機関は、受信したユーザIDとパスワードから、このユーザがこの金融機関における正規の加入者であることを確認し、認証完了信号を該当の課金センタに返送し(【0017】)、課金センタは、認証完了信号を対象の自動販売機に送信し、自動販売機は、この認証完了信号を受信すると、ユーザインタフェース部に含まれる商品ランプを点灯させ(【0018】)、ユーザは、商品ランプの点灯を確認したら、購入したい商品のボタンを押し、これにより、商品がユーザに渡されるとともに、自動販売機は、販売金額・自動販売機コード・商品コードを携帯機及び課金センタに送信し(【0019】)、自動販売機から販売金額等の信号を受信した携帯機は、これらのデータをユーザインタフェース部に含まれる表示器に表示し(【0021】)、課金センタは自動販売機設置業者毎に販売金額の合計を計算して金融機関に通知し、金融機関がユーザから受領した販売代金を自動販売機設置業者に支払う(【0023】) 自動販売機を用いた自動販売システム。」 (2)引用文献4について ア 引用文献4に記載された事項 引用文献4(特開2004-38843号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0013】 更に、本システムの特徴として、携帯端末による商品の購入の方法が2通りあり、自動販売機2が携帯端末1にメニューを送信し、携帯端末1がメニューの中から選択したデータを自動販売機2に送信して商品を指定する方法(通常の方法)と、予め自動販売機2から受信して携帯端末1に記憶しておいたデータを用いて、特定キーのワンプッシュといった短縮操作で商品を指定する方法(短縮)がある。」 「【0046】 それと共に、制御部21は、IrDAインタフェース部27を介して携帯端末1に当該自動販売機2で販売している商品のリスト(メニュー)を送信し(111)、携帯端末12がIrDAポート15でメニューを受信して表示部16に表示し、利用者は、入力部14で商品を選択してIrDAポート15から自動販売機2に送信する。 【0047】 ここで、自動販売機2から携帯端末1に送信されるメニューの例について説明する。メニューは、当該自動販売機2で販売している商品であるが、例えば、「ブレンドコーヒー」コーヒー等の飲み物を例にとって説明すると、最初に「ブレンドコーヒー」「ココア」「紅茶」といったメニューが表示され、そこで「ブレンドコーヒー」を選択すると、次は豆の種類、その次はアイスかホットか、そして砂糖の量やミルクの量というように、複数のパラメータを利用者が好みに合わせて順次選択できるようにしているものである。」 「【0050】 自動販売機2の制御部21は、選択された商品の商品コードを自動販売制御部31に出力し、自動販売制御部31は、指示に応じて商品搬出部32から商品を搬出し、自動販売制御部31が搬出した商品の商品コードを制御部21に送出する。 尚、端末1が認証された後の商品の選択は、携帯端末1から行わなくても、通常通りに商品選択ボタン群33を押下することによって選択しても構わない。」 イ 引用文献4の記載事項 上記記載から、引用文献4には、次の事項が記載されているものと認められる。 「自動販売機から携帯端末に送信されるメニュー中から指定すること、又は、自動販売機の商品選択ボタン群を押下することによって、自動販売機から購入する商品を選択すること」 (3)引用文献5について ア 引用文献5に記載された事項 引用文献5(韓国公開特許第10-2014-0086616号公報)には、以下の事項が記載されている。 「 」 (当審訳) 「[0002] 自動販売機は小規模空間に設置して販売製品を展示しながら価格を表示して、内部に展示された販売製品が引き出し装置によって引き出し可能になるように積載して、消費者が購買を希望する製品によって代金投入口で小銭または紙幣を投入した後購買希望製品の選択ボタンを押すと、該当の製品が製品引き出し装置によって排出口で排出されて、精算を通じて残額を逆うように設計されたことで、売人が常在しなくてもよいし小規模空間に設置可能な特徴がある。」 「 」 (当審訳) 「[0038] これをより具体的によく見ると、まずスマートフォンが一定距離以内に近付くようになるとBluetooth通信を通じてスマートフォンと該当の自動販売機がペアリングされて、以後、スマートフォンに設置されたアプリケーションプログラムには該当の自動販売機の情報すなわち、現在販売されている製品の名称、価格などの情報と共に選択ボタンメニューが表示されて、使用者がスマートフォンで該当の選択ボタンを押すとスマートフォンの制御部で自動販売機の制御部で信号を転送して該当の製品が排出されるようにする。そして、このようなメニュー選択過程で費用決済はスマートフォンを通じて決済(携帯電話認証方式を通じる少額決済など)が成り立つようにして、使用によるポイントを積立する。」 イ 引用文献5の記載事項 上記記載から、引用文献5には、次の事項が記載されているものと認められる。 「自動販売機は販売製品を展示しながら価格を表示し購買希望製品の選択ボタンを押すこと、又は、スマートフォンに設置されたアプリケーションプログラムに現在販売されている製品の名称、価格などの情報と共に選択ボタンメニューが表示されて、使用者がスマートフォンで該当の選択ボタンを押すことで、該当の製品が排出されること」 4 対比 (1)本願発明と引用発明との対比 ア 引用発明では、「携帯機は、ユーザによりユーザインタフェース部に含まれる購入ボタンが押されると、ユーザを識別する番号(ユーザID)が含まれる購入命令信号を自動販売機に送信し」、また、「ユーザは、これに対して予め登録されているパスワードを携帯機に入力して自動販売機へ送信し」、「金融機関は、受信したユーザIDとパスワードから、このユーザがこの金融機関における正規の加入者であることを確認し」、「金融機関がユーザから受領した販売代金を自動販売機設置業者に支払う」などの動作が行われ、携帯機によるユーザIDを含む購入命令信号及びパスワードの送信によって、販売代金の自動販売機設置業者への支払いが行われていることから、引用発明の「携帯機」は携帯可能な支払装置、すなわち、「モバイル支払装置」であるといえる。 また、引用発明の「自動販売機」は本願発明の「自動販売機」に相当する。 さらに、引用発明では、「自動販売機は、クレジット購入ボタンが押されると、購買許可信号を携帯機に送信し」、「携帯機は、ユーザによりユーザインタフェース部に含まれる購入ボタンが押されると、ユーザを識別する番号(ユーザID)が含まれる購入命令信号を自動販売機に送信し」、「自動販売機は、購入命令信号を受信すると、携帯機にパスワード要求信号を送信し」、「ユーザは、これに対して予め登録されているパスワードを携帯機1に入力して自動販売機へ送信し」、さらに、「自動販売機は、販売金額・自動販売機コード・商品コードを携帯機に送信し」、「自動販売機から販売金額等の信号を受信した携帯機は、これらのデータをユーザインタフェース部に含まれる表示器に表示し」ていることから、自動販売機は携帯機との間の商品取引の手続き、すなわち、トランザクションを実行するように適合されたものであるといえる。 以上のことから、引用発明の「自動販売機」は本願発明の「モバイル支払装置とトランザクションを実行するよう適合された自動販売機」に相当する。 イ 引用発明では、「自動販売機は、携帯機と無線で通信する機能及び課金センタと通信する機能を有し」ており、自動販売機は携帯機との無線通信を確立するように適合された手段を含んでいることは明らかである。 このことから、引用発明は本願発明の「モバイル支払装置との無線通信を確立するよう適合され」た「自動販売機無線支払装置インタフェース」を含んでいるといえる。 ウ 引用発明では、「課金センタは、認証完了信号を対象の自動販売機に送信し、自動販売機は、この認証完了信号を受信」しているとともに、「商品がユーザに渡されると」、「自動販売機は、販売金額・自動販売機コード・商品コードを携帯機及び課金センタに送信し」ている。 ここで、「課金センタは、認証完了信号を対象の自動販売機に送信し、自動販売機は、この認証完了信号を受信」することで、自動販売機の「商品がユーザに渡され」、「自動販売機は、販売金額・自動販売機コード・商品コードを携帯機及び課金センタに送信」していることから、自動販売機の認証完了信号の受信は、課金センタへの販売金額・自動販売機コード・商品コードの送信のために行われているとみることができる。 また、引用発明の「課金センタ」は、課金の動作を通じて販売の基盤となっていることから、本願発明の「販売プラットフォーム」に相当する。 さらに、引用発明の「認証完了信号」は「オーソリゼーショントークン」に相当し、「自動販売機は、この認証完了信号を受信」することは、自動販売機がオーソリゼーショントークンを受信することに他ならず、引用発明はこのための手段を含んでいるといえる。 以上のことから、引用発明は本願発明の「販売プラットフォームへの送信のために」、「オーソリゼーショントークンを受信する自動販売機無線支払装置インタフェース」を含んでいるといえる。 エ 引用発明では、「ユーザは、自動販売機から商品を購入しようとする場合は、まずその自動販売機のユーザインタフェース部に含まれるクレジット購入ボタンを押し、自動販売機は、クレジット購入ボタンが押されると、購買許可信号を携帯機に送信し」、「携帯機は、ユーザによりユーザインタフェース部に含まれる購入ボタンが押されると、ユーザを識別する番号(ユーザID)が含まれる購入命令信号を自動販売機に送信し」、「自動販売機は、購入命令信号を受信すると、携帯機にパスワード要求信号を送信し」、「ユーザは、これに対して予め登録されているパスワードを携帯機に入力して自動販売機へ送信し」、商品がユーザに渡されると、「自動販売機は、販売金額・自動販売機コード・商品コードを携帯機」「に送信し」、「自動販売機から販売金額等の信号を受信した携帯機は、これらのデータをユーザインタフェース部に含まれる表示器に表示」するという動作を行っており、該動作により自動販売機は携帯機との間で自動販売機の商品の取引、すなわち、携帯機と自動販売機トランザクションの詳細が確立されているといえる。 ここで、「ユーザは、自動販売機から商品を購入しようとする場合は、まずその自動販売機のユーザインタフェース部に含まれるクレジット購入ボタンを押し、自動販売機は、クレジット購入ボタンが押されると、購買許可信号を携帯機に送信し」、「携帯機は、ユーザによりユーザインタフェース部に含まれる購入ボタンが押されると、ユーザを識別する番号(ユーザID)が含まれる購入命令信号を自動販売機に送信し」、「自動販売機は、購入命令信号を受信すると、携帯機にパスワード要求信号を送信し」、「ユーザは、これに対して予め登録されているパスワードを携帯機に入力して自動販売機へ送信」することで、「自動販売機は、このパスワードと購入命令信号に含まれるユーザIDを組み合わせて認証信号を生成して課金センタに送信」することから、自動販売機トランザクションの詳細の確立は、課金センタへの送信のために行われているとみることができる。 また、携帯機は販売機トランザクションの詳細を確立するためのインタフェースの仮想自動販売機インタフェースを含み、携帯機が含む仮想自動販売機インタフェースを介して販売機トランザクションの詳細を確立するインタフェースの自動販売機無線支払装置インタフェースを含んでいるといえる。 そして、上記ア?ウ記載のとおり、引用発明の「携帯機」及び「課金センタ」は本願発明の「モバイル支払装置」及び「販売プラットフォーム」に相当する。 以上のことから、引用発明は本願発明の「販売プラットフォームへの送信のために」、「仮想自動販売機インタフェースを介して前記モバイル支払装置と自動販売機トランザクションの詳細を確立」「する自動販売機無線支払装置インタフェース」を含んでいるといえる。 オ 引用発明では、「課金センタは、認証完了信号を対象の自動販売機に送信し、自動販売機は、この認証完了信号を受信すると、ユーザインタフェース部に含まれる商品ランプを点灯させ」、「ユーザは、商品ランプの点灯を確認したら、購入したい商品のボタンを押し、これにより、商品がユーザに渡される」ことから、自動販売機は、認証完了信号を受信されたとき、商品の販売を可能にするように適合されているといえる。 以上のことから、引用発明の「自動販売機」は本願発明の「前記オーソリゼーショントークンが受信されたとき、前記自動販売機は、販売を可能にするよう適合される、自動販売機」に相当する。 (2)一致点・相違点 上記(1)によれば、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致及び相違する。 (一致点) 「モバイル支払装置とトランザクションを実行するよう適合された自動販売機において、モバイル支払装置との無線通信を確立するよう適合され、販売プラットフォームへの送信のために、仮想自動販売機インタフェースを介して前記モバイル支払装置と自動販売機トランザクションの詳細を確立し、オーソリゼーショントークンを受信する自動販売機無線支払装置インタフェースを含み、 前記オーソリゼーショントークンが受信されたとき、前記自動販売機は、販売を可能にするよう適合される、自動販売機。」 (相違点) ユーザ選択を受ける構成が、本願発明では、「前記モバイル支払装置の仮想自動販売機インタフェースであって少なくとも選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付ける」ものであるのに対して、引用発明では、ユーザは自動販売機のユーザインタフェース部に含まれる商品ランプの点灯を確認したら、購入したい商品のボタンを押すもの、すなわち、自動販売機が選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付けるものである点。 5 当審の判断 引用文献4には、上記3(2)イのごとく、 「自動販売機から携帯端末に送信されるメニュー中から指定すること、又は、自動販売機の商品選択ボタン群を押下することによって、自動販売機から購入する商品を選択すること」 が記載されている。 また、引用文献5には、上記3(3)イのごとく、 「自動販売機は販売製品を展示しながら価格を表示し購買希望製品の選択ボタンを押すこと、又は、スマートフォンに設置されたアプリケーションプログラムに現在販売されている製品の名称、価格などの情報と共に選択ボタンメニューが表示されて、使用者がスマートフォンで該当の選択ボタンを押すことで、該当の製品が排出されること」 が記載されている。 これらの文献の記載から見て、 自動販売機の商品選択として、自動販売機の商品選択ボタンの中から購入したい商品のボタンを押すこと、および、「携帯端末が自動販売機の商品の選択肢メニューを表示し、該選択肢メニューからユーザ選択を受け付けること」 が、本願の出願当時には当業者にとって周知技術であったと認められる。 また、「携帯端末が自動販売機の商品の選択肢メニューを表示し、該選択肢メニューからユーザ選択を受け付けること」は、携帯端末が仮想自動販売機インタフェースを有し、当該仮想自動販売機インタフェースは少なくとも選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付けるものであることといえる。 そして、自動販売機の商品に関するユーザ選択の受け付けにおいて、自動販売機の商品選択ボタンの中から購入したい商品のボタンを押すこと、および、「携帯端末が自動販売機の商品の選択肢メニューを表示し、該選択肢メニューからユーザ選択を受け付けること」は本願の出願当時には当業者にとって周知技術であったことから、上記ユーザ選択の受け付けのいずれを用いるは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項である。 このため、引用発明におけるユーザ選択の受け付けを、ユーザは自動販売機のユーザインタフェース部に含まれる商品ランプの点灯を確認したら、購入したい商品のボタンを押すものに代えて、「前記モバイル支払装置の仮想自動販売機インタフェースであって少なくとも選択肢メニューを表示しユーザ選択を受け付ける」ものとすることは、当業者にとって容易になし得る事項である。 そして、上記相違点を勘案しても、本願発明が奏する作用効果は、引用発明及び周知技術が奏する作用効果から予測できる範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 このため、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された引用発明及び周知技術に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-09-01 |
結審通知日 | 2020-09-08 |
審決日 | 2020-09-24 |
出願番号 | 特願2017-553150(P2017-553150) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松野 広一 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
佐藤 聡史 相崎 裕恒 |
発明の名称 | 自動販売機トランザクション |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 石井 裕充 |