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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D |
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管理番号 | 1372276 |
審判番号 | 不服2020-10379 |
総通号数 | 257 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-27 |
確定日 | 2021-03-18 |
事件の表示 | 特願2017-103641「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日出願公開、特開2018- 44756〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年5月25日(優先権主張 平成28年9月9日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年 1月20日付け:拒絶理由通知書 令和2年 3月23日 :意見書および手続補正書 令和2年 5月11日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和2年 7月27日 :審判請求書および手続補正書 なお、令和2年7月27日提出の手続補正書による手続補正は、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものであり、適法にされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年7月27日提出の手続補正書に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「開口部を有し、外箱と内箱との2重構造を有する断熱箱体と、 前記断熱箱体と組み合う扉部と、 前記断熱箱体と前記扉部との間に位置するガスケットと、を含み、 前記外箱と前記内箱との内箱外箱接合領域は、前記扉部と前記断熱箱体とが接合される扉断熱箱接合領域より前記断熱箱体の外側であり、 前記内箱外箱接合領域には、前記外箱の穴有り部と穴無し部とがあり、 前記内箱外箱接合領域には、前記内箱の突起有り部と突起無し部とがあり、 前記穴有り部の穴に前記突起有り部の突起が挿入され、 前記穴無し部と前記突起無し部とが積層されている、 または、 前記内箱外箱接合領域には、前記内箱の穴有り部と穴無し部とがあり、 前記内箱外箱接合領域には、前記外箱の突起有り部と突起無し部とがあり、 前記穴有り部の穴に前記突起有り部の突起が挿入され、 前記穴無し部と、前記突起無し部とが積層され、 前記突起は、内側へ折られて前記穴へ挿入され、 前記穴有り部と前記穴無し部は、それぞれ複数あり、交互に位置する冷蔵庫。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。 この出願の請求項1ないし8に係る発明は、下記の引用文献1、3および5に記載された発明および周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2002-168559号公報 引用文献3:国際公開第2011/124426号(周知技術を示す文献) 引用文献5:実願昭50-168041号(実開昭52-81653号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献) 第4 引用文献 1.引用文献1 (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-168559号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、庫内を密閉させるために扉(引出の蓋等を含む)を筐体の開口縁部に磁着させる際の密閉機構を改善した冷蔵庫に関する。 【0002】 【従来の技術】今日一般家庭において広く利用されている冷蔵庫(冷凍冷蔵庫を含む)は扉のパッキンに埋設された永久磁石により開口部を密閉する構造となっている。 【0003】このような冷蔵庫を図3、図4を参照して説明する。図3は冷蔵庫の斜視図であり、図4はその断面図である。 【0004】当該冷蔵庫は、外箱11と内箱12との間に断熱材13が充填されて形成された筐体を有し、内部空間は冷蔵室側仕切壁14aや冷凍室側仕切壁14b等の仕切壁14により区画されて、例えば冷蔵室18、冷凍室22、野菜室19、セレクトルーム21等の部屋が複数形成されている。 【0005】各部屋には食品等を出し入れするために前面側が開口され、その開口縁部30に樹脂等により形成された扉25が取付けられている。」 「【0021】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図を参照して説明する。なお、冷蔵庫の基本構成は従来と略同じであるので同一構成に関しては同一符号を用い説明を適宜省略する。 【0022】図1は本発明に係る扉25の密閉機構を説明するための部分断面図である。当該密閉機構は、開口縁部30内に埋設された電磁石75、扉25側のパッキン部材77に内設された被磁着部材76、電磁石75への通電を制御する図示しない扉スイッチ等により構成されている。 【0023】そして、外箱11と内箱12とのオーバーラップ領域Bは、図6と比較すると容易に解るように小さく、かつ、扉25を閉めた際に電磁石75が被磁着部材76と対向する位置より庫外側に位置している。即ち、電磁石75と被磁着部材76とは内箱12を介して対向するようになっている。 【0024】このように、オーバーラップ領域Bを庫外側に設けることにより、金属製の外箱11を介して庫外の熱が庫内へ伝わりにくくなり庫内と庫外との断熱性が改善される。 【0025】即ち、庫内の冷熱が逃げ難くなり、保冷性が高まると共に開口縁部30での結露発生が押えられる。」 「【図1】 」 「【図3】 」 「【図4】 」 (2)引用文献1に記載された技術的事項 上記段落【0004】、図1、図4の記載から、冷蔵庫は、外箱11と内箱12との間に断熱材13が充填されて形成された筐体を有しているといえる。 上記段落【0001】、【0004】、【0005】、図1、図3の記載から、冷蔵庫の上記筐体は開口縁部30を備えているといえる。 上記【0005】、図1、図3の記載から、冷蔵庫は、筐体の開口縁部30に扉25が取り付けられるといえる。 上記段落【0022】および図1の記載から、冷蔵庫のパッキン部材77は、扉25側に取り付けられると共に、扉25と開口縁部30の間に位置しているといえる。 上記段落【0022】および図1の記載から、冷蔵庫は、開口縁部30に電磁石75が埋設され、前記パッキン部材77には被磁着部材76が内設されているといえる。 上記段落【0023】および図1の記載から、冷蔵庫は、外箱11と内箱12とのオーバーラップ領域Bが扉25を閉めた際に電磁石75が被磁着部材76と対向する位置より庫外側に位置しているといえる。 (3)引用発明 上記(1)、(2)の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「外箱11と内箱12との間に断熱材13が充填されて形成された筐体を有し、筐体は開口縁部30を備えており、 筐体の開口縁部30に扉25が取り付けられ、 パッキン部材77が、扉25側に取り付けられると共に、扉25と開口縁部30の間に位置し、開口縁部30に電磁石75が埋設され、前記パッキン部材77には被磁着部材76が内設され、 外箱11と内箱12とのオーバーラップ領域Bが扉25を閉めた際に電磁石75が被磁着部材76と対向する位置より庫外側に位置している 冷蔵庫」 2.引用文献3 (1)引用文献3の記載 原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された国際公開第2011/124426号には、以下の事項が記載されている。(当審注:「括弧」内は、当審による翻訳である。また、下線は参考のため当審で付与したものである。以下、同様である。) 「 (第5ページ第29-33行)」 (図1に示される冷凍デバイスは、二つの相互に連絡するプラスチック製の内部コンテナを有しており、これらの内部コンテナは深絞り加工で製作され、それぞれが冷凍室と冷蔵室を規定している。図2で示されるとおり、デバイスの外壁3とともに、内部コンテナの内壁7は、断熱フォーム5が充填される空間を規定する。) 「 (第6ページ第11-15行)」 (冷凍デバイスの製造中の完全なフォーミングプロセスを保証するために、外壁3と内壁7に設けられるエッジストリップ9、11の間の接続は、密閉が保たれるよう設計される。第1実施例によるエッジストリップ9、11の間の接続は、図2に示されている。) 「 (第7ページ第20-29行)」 (二つのエッジストリップ9、11を接続するために、はじめに外壁エッジストリップ9の縦ウェブ17をプラグソケット21に挿入し、シート状金属舌部31は、プラグソケット21の底部に位置する開口33に押し込まれる。溝形状のプラグソケット21の幅bは、縦ウェブ17のシート状金属材料の厚みsよりも十分に大きいので、このプラグインプロセスは容易にできる。 図2に示される要素の接続の堅牢さを増すために、シート状金属舌部31は決められた組立荷重F_(M)で溝形状のプラグソケット21に差し込まれる。第2組立ステップにおける組立荷重F_(M)による影響の下で、シート状金属舌部31の舌部端34は曲げられる。) 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図3】 」 「【図4】 」 (2)引用文献3が例示する周知技術 上記(1)の記載を総合すると、引用文献3には周知技術として次の技術(以下、「周知技術1」という。)が記載されている。 「冷蔵庫の内壁と外壁を接続するために、内壁に開口を設けると共に、外壁にシート状金属舌部を設け、前記開口に前記シート状金属舌部が挿入され、前記シート状金属舌部の舌部端は、開口への挿入時に曲げられること。」 3.引用文献5 (1)引用文献5の記載 原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された実願昭50-168041号(実開昭52-81653号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。 「以下本考案の一実施例を第3図、第4図、第5図に於いて説明すると、合成樹脂材にて成形した内箱6の下辺フランジ部6aに凸状フランジ片部6bを適当に設け、冷蔵庫筐体1を形成する前板7の水平部7aに内箱6の突状フランジ片部6bを嵌着する為の角穴7bを突状フランジ片部6bと同数設け該角穴7bに内箱6の突状フランジ片部6bを内箱の弾性を利用し嵌着するものである。(第2ページ第8-16行)」 「【第3図】 」 「【第4図】 」 「【第5図】 」 (2)引用文献5が例示する周知技術 上記(1)の記載を総合すると、引用文献5には周知技術として次の技術が記載されている(以下、「周知技術2」という。)。 「冷蔵庫の内箱と冷蔵庫筐体を接続するために、内箱に複数の突状フランジ片部、冷蔵庫筐体の前板に前記突状フランジ片部と同数の角穴を設け、前記角穴に前記突状フランジ片部を嵌着すること。」 第5 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「外箱11と内箱12との間に断熱材13が充填されて形成された筐体」は、本願発明の「外箱と内箱との2重構造を有する断熱箱体」に相当する。また、引用発明の「筐体」は開口縁部30を備えていることから、「開口部」を備えていることも明らかであり、本願発明の「開口部を有」する「断熱箱体」に相当する。 引用発明の「筐体の開口縁部30」に「取り付けられ」る「扉体25」は、筐体と組み合うものであるから、本願発明の「前記断熱箱体と組み合う扉部」に相当する。 引用発明の「扉25側に取り付けられると共に、扉25と開口縁部30の間に位置し、」「被磁着部材76が内設され」る「パッキン部材77」は、本願発明の「前記断熱箱体と前記扉部との間に位置するガスケット」に相当する。 引用発明の「外箱11と内箱12とのオーバーラップ領域B」は、本願発明の「前記外箱と前記内箱との内箱外箱接合領域」に相当する。また、引用発明の「オーバーラップ領域Bが扉25を閉めた際に電磁石75が被磁着部材76と対向する位置より庫外側に位置している」ことは、引用発明において、電磁石75と、パッキン部材77に内設される被磁着部材76とが対向する位置は、扉25と筐体との接合位置であることは、図1から明らかであるから、本願発明の「前記外箱と前記内箱との内箱外箱接合領域は、前記扉部と前記断熱箱体とが接合される扉断熱箱接合領域より前記断熱箱体の外側」であることに相当する。 してみると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。 ≪一致点≫ 「開口部を有し、外箱と内箱との2重構造を有する断熱箱体と、 前記断熱箱体と組み合う扉部と、 前記断熱箱体と前記扉部との間に位置するガスケットと、を含み、 前記外箱と前記内箱との内箱外箱接合領域は、前記扉部と前記断熱箱体とが接合される扉断熱箱接合領域より前記断熱箱体の外側である 冷蔵庫」 ≪相違点≫ 本願発明は、「前記内箱外箱接合領域には、前記外箱の穴有り部と穴無し部とがあり、 前記内箱外箱接合領域には、前記内箱の突起有り部と突起無し部とがあり、 前記穴有り部の穴に前記突起有り部の突起が挿入され、 前記穴無し部と前記突起無し部とが積層されている、 または、 前記内箱外箱接合領域には、前記内箱の穴有り部と穴無し部とがあり、 前記内箱外箱接合領域には、前記外箱の突起有り部と突起無し部とがあり、 前記穴有り部の穴に前記突起有り部の突起が挿入され、 前記穴無し部と、前記突起無し部とが積層され、 前記突起は、内側へ折られて前記穴へ挿入され、 前記穴有り部と前記穴無し部は、それぞれ複数あり、交互に位置」しているのに対し、 引用発明は、オーバーラップ領域Bにおいて、外箱11と内箱12がどのように接続されているか不明な点。 上記相違点について検討する。 引用文献3が例示するとおり、冷蔵庫の内壁と外壁を接続するために、内壁に開口(本願発明の「穴有り部」の「穴」に相当)を設けると共に、外壁にシート状金属舌部(本願発明の「突起有り部」の「突起」に相当)を設け、前記開口に前記シート状金属舌部が挿入され、前記シート状金属舌部の舌部端は、開口への挿入時に曲げられること(本願発明の「突起は、内側へ折られて前記穴へ挿入され」ることに相当)は、冷蔵庫の技術分野において本願の優先日前周知の技術(周知技術1)であった。また、当該周知技術1において、開口が形成されない箇所が穴無し部、突起が形成されない箇所が突起無し部であることは明らかであり、開口が形成されない箇所と突起が形成されない箇所が積層されることも、引用文献3の図2ないし4から明らかである。 また、引用文献5が例示するとおり、冷蔵庫の内箱と外箱を接続するために、内箱に複数の突状フランジ片部(本願発明の「突起有り部」の「突起」に相当)、前板に前記突状フランジ片部と同数の角穴(本願発明の「穴有り部」の「穴」に相当)を設け、前記角穴に前記突状フランジ片部を嵌着することは、冷蔵庫の技術分野において本願の優先日前周知の技術(周知技術2)であった。また、当該周知技術2において、角穴が形成されない箇所が穴無し部、突状フランジ片部が形成されない箇所が突起無し部であることは明らかであり、引用文献5の第4図において突状フランジ片部が形成される箇所と形成されない箇所がそれぞれ複数交互にあることが看取できるから、対応する角穴と穴無し部も複数交互に設けられていることも明らかである。さらに、角穴が形成されない箇所と突状フランジ片部が形成されない箇所が積層されることも、引用文献5の第3図から明らかである。 そして、引用発明においても、オーバーラップ領域Bにおいて、外箱11と内箱12を何らかの方法で接続する必要性があるので、当該接続について、上記周知技術1および2を適用することに困難性はない。 よって、相違点にかかる本願発明の構成は、引用発明と周知技術1および2に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の効果も、引用発明、周知技術1および2から予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。 審判請求人は、令和2年7月27日提出の審判請求書において、以下のとおり主張している。 「本願発明は、引用文献1?7と異なり、穴有り部と穴無し部は、それぞれ複数あり、交互に位置するという特徴があります。 引用文献1?7では、2種類の接合構造を有する記載はありません。 一方、本願発明では、2種類の接合構造を交互に用いることで、外箱と内箱が強固に固定できます(0027)。また、熱侵入量が多い外箱前部からの熱侵入量を低減し、保温・保冷効果を向上させることができます。 つまり、穴有り部で強固に固定でき、穴無し部で反りなどを低減して、外箱と内箱とをしっかり固定できます。一方、穴有り部のみを、密に、並べると、遊び部分がなくなり、外箱と内箱とを接合することが困難です。 引用文献1?7には、2種類の接合部を交互に用いる記載はなく、本願発明を導くことはできません。さらには、2種類を特定する記載もありません。 以上のことから、本願発明(補正後の請求項1)に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではないと思料致します。」(第3ページ第12-24行) しかしながら、穴有り部と穴無し部がそれぞれ複数あり、交互に位置することは、周知技術2が有する構成であり、周知技術2を例示する引用文献5には、内箱の弾性を利用して嵌着する点も記載されている(引用例5、第2ページ第8ないし16行の記載を参照。)から、周知技術2において必要な遊びが採られていることは明らかである。よって、審判請求人の上記主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-01-08 |
結審通知日 | 2021-01-12 |
審決日 | 2021-01-29 |
出願番号 | 特願2017-103641(P2017-103641) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西山 真二 |
特許庁審判長 |
松下 聡 |
特許庁審判官 |
槙原 進 川上 佳 |
発明の名称 | 冷蔵庫 |
代理人 | 村山 正人 |
代理人 | 徳田 佳昭 |