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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01F
管理番号 1372340
審判番号 不服2019-15683  
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-22 
確定日 2021-04-14 
事件の表示 特願2017-566495「複合磁性体および製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月17日国際公開、WO2017/138158、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)4月28日(優先権主張 平成28年2月10日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 2月 7日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 8月20日付け:拒絶査定
令和 1年11月22日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 2年 7月31日付け:補正却下の決定、拒絶理由通知書
令和 2年10月 2日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和1年8月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1ないし5について 引用文献1
・請求項6について 引用文献1ないし3

<引用文献等一覧>
1.特開平10-92621号公報
2.特開2006-49729号公報
3.特開2010-80508号公報

第3 当審拒絶理由の概要
令和2年7月31日付けの拒絶理由通知書により通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
理由1.(サポート要件)本願の請求項1ないし6に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2.(新規性)本願の請求項1、3、4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3.(進歩性)本願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開平10-92621号公報

第4 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和2年10月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
扁平状の軟磁性金属粉末と、前記軟磁性金属粉末の平均厚さよりも小さく、前記軟磁性金属粉末の表面に、水性溶媒を乾燥させて配した絶縁粒子と、前記軟磁性金属粉末および前記絶縁粒子を分散保持する有機結合材を含む複合磁性体であって、
前記軟磁性金属粉末の厚さ方向の断面における前記軟磁性金属粉末の表面の長さ0.2μmあたり前記絶縁粒子を1個以上配し、
前記軟磁性金属粉末の比表面積をSp、前記絶縁粒子の比表面積をSz、前記絶縁粒子の積層数をnとすると、(Sz/2)/Sp=n(nは1)を満たすことを特徴とする複合磁性体。
【請求項2】
前記軟磁性金属粉末の体積粒度分布の積算10%粒子径D_(10)が2μm以上6μm以下、かつ積算90%粒子径D_(90)が8μm以上27μm以下である、請求項1に記載の複合磁性体。
【請求項3】
前記絶縁粒子が、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニアの少なくとも1種を含む、請求項1または請求項2に記載の複合磁性体。
【請求項4】
前記絶縁粒子の体積抵抗率が1×10^(13)Ω・cm以上である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の複合磁性体。
【請求項5】
前記絶縁粒子の体積粒度分布のメジアン径D_(50)が10nm以上70nm以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の複合磁性体。
【請求項6】
扁平状の軟磁性金属粉末を、前記軟磁性金属粉末の平均厚さよりも小さい絶縁粒子を水性溶媒に分散させたpH>7.0のゾルに浸漬した後、前記水性溶媒を乾燥させて前記軟磁性金属粉末の表面に前記絶縁粒子を被覆し、前記軟磁性金属粉末を有機結合材と混練、分散して、前記軟磁性金属粉末の厚さ方向の断面における前記軟磁性金属粉末の表面の長さ0.2μmあたり前記絶縁粒子を1個以上配したシート状に成形することを含み、
前記軟磁性金属粉末の比表面積をSp、前記絶縁粒子の比表面積をSz、前記絶縁粒子の積層数をnとすると、(Sz/2)/Sp=n(nは1)を満たすように、前記軟磁性金属粉末と前記絶縁粒子の配合比を調整することを特徴とする複合磁性体の製造方法。」

第5 当審拒絶理由についての判断
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
当審において、請求項1及び6には「前記軟磁性金属粉末の厚さ方向の断面における前記軟磁性金属粉末の表面の長さ0.2μmあたり前記絶縁粒子を1個以上」配するという構成が記載されているのに対し、発明の詳細な説明では、実施例において「軟磁性金属粉末の表面の長さ0.2μmあたりに絶縁粒子であるジルコニア粒子が1個以上配されていることを確認」できたのは、ジルコニアゾルの添加量を「(Sz/2)/Sp=1」とした場合のみであり(【0040】-【0045】)、したがって、絶縁粒子の量が数式「(Sz/2)/Sp=1」を満たすように決定されなかった場合でも、課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないため、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨を通知した。
これに対して、令和2年10月2日にされた手続補正により、本願発明1ないし6は、いずれも「前記軟磁性金属粉末の比表面積をSp、前記絶縁粒子の比表面積をSz、前記絶縁粒子の積層数をnとすると、(Sz/2)/Sp=n(nは1)を満たす」という発明特定事項を備えるものとなり、当審拒絶理由通知で指摘したサポート要件についての記載不備は解消した。

2 特許法第29条第1項第3号(新規性)及び特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)引用文献の記載、引用発明等
当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,有機結合剤中に軟磁性体粉末を混練・分散させてなる複合磁性体に関し,詳しくは,高周波電子回路/装置において問題となる電磁干渉の抑制に有効である複素透磁率特性の優れた複合磁性体に関する。」

「【0021】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施の形態について,図面を参照して説明する。
【0022】図1は本発明の実施の形態による複合磁性体を示す断面図である。図1に示すように,複合磁性体10は,扁平状のセンダスト(Fe-Si-Al合金)粉末からなる軟磁性粉末1の表面に,TiNからなる表面改質用微粉末2をコーティングし,ポリウレタン等の合成樹脂からなる結合剤3と混合して乾燥?硬化させることによって形成されている。
【0023】本発明の実施の形態による複合磁性体10の製造をさらに具体的に説明する。
【0024】まず,平均粒径35μmで厚さが0.5μmの扁平状Fe-Si-Al合金粉末に,通常行われている熱プラズマ法によりTiNの微粒子コーティングを行った。微粒子コーティングされた扁平状Fe-Si-Al合金粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像から,約50nm径のTiN微粒子が扁平状Fe-Si-Al合金粉末の表面にほぼ均一に固着していることが確認された。」

「【図1】





上記の記載から、引用文献1には以下の事項が記載されている。
・上記【0001】の記載によれば、複合磁性体は、有機結合剤中に軟磁性体粉末を混練・分散させてなるものである。
・上記【0022】の記載によれば、複合磁性体10は、扁平状のFe-Si-Al合金粉末からなる軟磁性粉末1の表面に、TiNからなる表面改質用微粉末2をコーティングし、ポリウレタン等の合成樹脂からなる結合剤3と混合して乾燥?硬化させることによって形成されている。
・上記【0024】の記載によれば、扁平状Fe-Si-Al合金粉末は、平均粒径35μmで厚さが0.5μmであり、TiNの微粒子コーティングが行われている。
・上記【0024】の記載によれば、微粒子コーティングされた扁平状Fe-Si-Al合金粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像から、約50nm径のTiN微粒子が扁平状Fe-Si-Al合金粉末の表面にほぼ均一に固着していることが確認されている。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「有機結合剤中に軟磁性体粉末を混練・分散させてなる複合磁性体であって、
扁平状のFe-Si-Al合金粉末からなる軟磁性粉末1の表面に、TiNからなる表面改質用微粉末2をコーティングし、ポリウレタン等の合成樹脂からなる結合剤3と混合して乾燥?硬化させることによって形成されており、
扁平状Fe-Si-Al合金粉末は、平均粒径35μmで厚さが0.5μmであり、TiNの微粒子コーティングが行われており、
微粒子コーティングされた扁平状Fe-Si-Al合金粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像から、約50nm径のTiN微粒子が扁平状Fe-Si-Al合金粉末の表面にほぼ均一に固着していることが確認された、複合磁性体。」

(2)対比・判断
ア 本願発明1について
(ア)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
a.引用発明の「扁平状のFe-Si-Al合金粉末からなる軟磁性粉末1」は、本願発明1の「扁平状の軟磁性金属粉末」に相当する。
b.引用発明の「TiNからなる表面改質用微粉末2」は、約50nm径であり、コーティングを行う「Fe-Si-Al合金粉末」の厚さ0.5μmよりも小さいから、本願発明1の「前記軟磁性金属粉末の平均厚さよりも小さく、前記軟磁性金属粉末の表面に」「配した」「粒子」に相当する。
ただし、軟磁性金属粉末の表面に配した粒子に関して、本願発明1は「水性溶媒を乾燥させて配した絶縁」粒子であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。
c.引用発明のポリウレタン等の合成樹脂からなる「結合剤3」は、本願発明1の「有機結合材」に相当する。
そうすると、引用発明の「複合磁性体」は「有機結合剤中に軟磁性体粉末を混練・分散させてなる」から、「結合剤3」中に「軟磁性粉末1」及びコーティングに使用した「表面改質用微粉末2」を分散保持するといえ、引用発明の「複合磁性体」は本願発明1の「前記軟磁性金属粉末および前記」「粒子を分散保持する有機結合材を含む複合磁性体」に相当する。
ただし、有機結合材によって分散保持される粒子に関して、本願発明1は「水性溶媒を乾燥させて配した絶縁」粒子であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。
d.本願発明1は「前記軟磁性金属粉末の厚さ方向の断面における前記軟磁性金属粉末の表面の長さ0.2μmあたり前記絶縁粒子を1個以上配し、前記軟磁性金属粉末の比表面積をSp、前記絶縁粒子の比表面積をSz、前記絶縁粒子の積層数をnとすると、(Sz/2)/Sp=n(nは1)を満たす」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。
e.引用発明の「軟磁性粉末1」、「表面改質用微粉末2」及び「結合剤3」を含む「複合磁性体」は、本願発明1の「複合磁性体」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「扁平状の軟磁性金属粉末と、前記軟磁性金属粉末の平均厚さよりも小さく、前記軟磁性金属粉末の表面に配した粒子と、前記軟磁性金属粉末および前記粒子を分散保持する有機結合材を含む複合磁性体。」である点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
軟磁性金属粉末の表面に配し、有機結合材によって分散保持される粒子に関して、本願発明1は「水性溶媒を乾燥させて配した絶縁」粒子であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点2>
本願発明1は「前記軟磁性金属粉末の厚さ方向の断面における前記軟磁性金属粉末の表面の長さ0.2μmあたり前記絶縁粒子を1個以上配し、前記軟磁性金属粉末の比表面積をSp、前記絶縁粒子の比表面積をSz、前記絶縁粒子の積層数をnとすると、(Sz/2)/Sp=n(nは1)を満たす」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点。

(イ)判断
a.特許法第29条第1項第3号(新規性)について
本願発明と引用発明は、上記相違点で相違するから、本願発明1は引用発明であるとはいえない。

b.特許法第29条第2項(進歩性)について
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
引用発明の約50nm径、すなわち約0.05μm径のTiN微粒子からなる表面改質用微粉末2は、扁平状Fe-Si-Al合金粉末からなる軟磁性粉末1の表面にほぼ均一に固着していることが確認されているが、0.2μmあたり1個以上の表面改質用微粉末2が固着しているかは特定されていない。
仮に、軟磁性粉末1の表面に0.2μmあたり1個以上の表面改質用微粉末が固着していると考えるのが自然であったとしても、本願発明1の「前記軟磁性金属粉末の比表面積をSp、前記絶縁粒子の比表面積をSz、前記絶縁粒子の積層数をnとすると、(Sz/2)/Sp=n(nは1)を満たす」という構成は、軟磁性金属粉末と絶縁粒子の配合比によって決まることが明らかであり、かかる構成は引用文献1に記載も示唆もなく、自明であるともいえない。
したがって、相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本願発明2ないし6について
本願発明2ないし5は、いずれも請求項1を直接的または間接的に引用しており、上記相違点2に係る構成を含むから、本願発明1と同じ理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
また、本願発明6は、本願発明1に対応する「製造方法」の発明であり、同じく上記相違点2に係る構成を含むから、本願発明と同じ理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

第6 原査定について
令和2年10月2日にされた手続補正により、本願発明1ないし6は、いずれも「前記軟磁性金属粉末の比表面積をSp、前記絶縁粒子の比表面積をSz、前記絶縁粒子の積層数をnとすると、(Sz/2)/Sp=n(nは1)を満たす」という発明特定事項を備えるものとなっている。
上記「第5」で述べたとおり、本願発明1ないし5は、上記相違点2に係る構成を含むから、当業者であっても拒絶査定で引用された引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明6は、同じく上記相違点2に係る構成を含むから、当業者であっても拒絶査定で引用された引用文献1に記載された発明、及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、拒絶査定で引用された引用文献2及び3には、軟磁性粉末に金属酸化物微粒子をコーティングするのに、金属酸化物微粒子を分散させたpH>7.0のゾルを用いることが記載されているが、相違点2に係る構成について記載も示唆もなく、また、相違点2に係る構成が周知であるとの証拠や当業者にとって自明であるといえる合理的な理由もない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-26 
出願番号 特願2017-566495(P2017-566495)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01F)
P 1 8・ 113- WY (H01F)
P 1 8・ 537- WY (H01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久保田 昌晴  
特許庁審判長 山田 正文
特許庁審判官 五十嵐 努
井上 信一
発明の名称 複合磁性体および製造方法  
代理人 平瀬 実  
代理人 池田 憲保  
代理人 佐々木 敬  
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