• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1373029
審判番号 不服2020-4050  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-26 
確定日 2021-04-07 
事件の表示 特願2018-515019「時間領域構成を含むULグラントを提供する方法,ならびに関連したワイヤレス端末およびネットワークノード」拒絶査定不服審判事件〔平成29年3月30日国際公開,WO2017/052445,平成30年11月1日国内公表,特表2018-532324〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2016年(平成28年)9月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年9月25日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 5月14日 :特許協力条約第34条補正の翻訳文の提出
平成30年 6月 4日 :手続補正書の提出
平成31年 2月19日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 7月25日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 元年11月11日付け:拒絶査定
令和 2年 3月26日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 2年 8月 6日 :上申書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

[請求項1]
「 ワイヤレス端末(UE-a)を動作させる方法であって、
前記ワイヤレス端末(UE-a)から無線アクセスネットワーク(RAN)のノード(BS-a)へランダムアクセス手順のランダムアクセスプリアンブルを送信すること(601)と、
前記ランダムアクセスプリアンブルを送信後、前記無線アクセスネットワークの前記ノード(BS-a)から前記ランダムアクセス手順のランダムアクセス応答(RAR)を受信すること(603)と、
を含み、
前記ランダムアクセス応答は前記ランダムアクセス手順のメッセージ3アップリンク通信に対するアップリンク(UL)グラントを含み、前記ULグラントは、
前記メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成であって、
(a)前記メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数を規定する繰り返し因数、および/または
(b)前記メッセージ3アップリンク通信の送信時間間隔(TTI)情報を含む時間領域構成、ならびに
前記メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた周波数領域構成であって、
前記メッセージ3アップリンク通信に対する物理リソースブロック(PRB)リソースを指示するリソースブロックアサインメントであって、(a)UL狭帯域インデックス、および(b)前記狭帯域内のPRBペアのセットを含むリソースブロックアサインメント、ならびに/または
前記メッセージ3アップリンク通信の周波数ホッピング構成
を含む周波数領域構成
を含む、方法。」

第3 拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」及び「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」という理由を含むものであり,請求項1に係る発明に対して,以下の引用例1が引用されている。

引用例1 Huawei,HiSilicon,Consideration on RACH procedure in coverage enhancement,[online],3GPP TSG-RAN WG2#91 R2-153357,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_91/Docs/R2-153357.zip>,2015年 8月28日

第4 引用例の記載及び引用発明
1 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由で引用されたHuawei,HiSilicon,Consideration on RACH procedure in coverage enhancement(当審仮訳:カバレッジ拡張におけるRACH手順の考察),[online],3GPP TSG-RAN WG2#91 R2-153357,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_91/Docs/R2-153357.zip>,2015年 8月28日(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)

(1)「・2.2 RAR reception
In current specification [2], the eNB’s response related to UE’s PRACH transmission is included in the MAC subheader and MAC RAR. As shown in the figure below, the MAC subheader indicates the random access preamble ID (RAPID) and backoff indicator, and the MAC RAR is of 56 bits, which includes timing advance command, UL grant (for Msg3 scheduling), temporary C-RNTI.

Figure 2: MAC subheader and MAC RAR
」(第2頁第15行ないし第20行)
(当審仮訳:2.2 RARの受信
現在の仕様[2]では,UEのPRACH送信に関連するeNBの応答は,MACサブヘッダーとMAC RARに含まれている。以下の図に示すように,MACサブヘッダーはランダムアクセスプリアンブルID(RAPID)とバックオフインジケーターを示し,MAC RARは56ビットで,タイミングアドバンスコマンド,(Msg3スケジューリングのための)ULグラント,一時的なC-RNTIが含まれる。

図2:MACサブヘッダー及びMAC RAR)

(2)「In normal coverage (NC) mode case, the UE shall monitor the PDCCH of the PCell for Random Access Response(s) identified by the RA-RNTI, in the RA Response window which starts at the subframe that contains the end of the preamble transmission plus three subframes and has length ra-ResponseWindowSize subframes. The RA-RNTI is associated with the PRACH in which the Random Access Preamble is transmitted.」(第2頁第21行ないし第25行)
(当審仮訳:通常のカバレッジ(NC)モードの場合,UEは,プリアンブル送信の終了に3サブフレームを加えたサブフレームで始まり,ra-ResponseWindowSizeのサブフレーム長をもつRA応答ウィンドウで,ランダムアクセス応答をRA-RNTIによって識別するために,PCellのPDCCHを監視する。RA-RNTIは,ランダムアクセスプリアンブルが送信されたPRACHに関連付けられる。)

(3)「・2.3 Msg3 reception
The repetition level of Msg3 transmission can be determined by the repetition level of PRACH transmission or indicated by RAR. In fact, no further information except PRACH can be obtained for eNB in order to indicate more accurate repetition level information of Msg3. Therefore, determining the repetition level of Msg3 by that of PRACH is preferred so as to reduce the overhead of RAR. The repetition number of Msg3 transmission can be known according to the repetition level of Msg3.
Proposal 4: Determining the repetition level of Msg3 by that of PRACH is preferred so as to reduce the overhead of RAR.
In normal coverage scenario, the UL grant of Msg3 is carried in RAR .The current 20 bits UL grant in RAR is for Msg3 scheduling and includes the following fields [3];
- Hopping flag - 1 bit
- Fixed size resource block assignment - 10 bits
- Truncated modulation and coding scheme - 4 bits
- TPC command for scheduled PUSCH - 3 bits
- UL delay - 1 bit
- CSI request - 1 bit
Hopping flag: 1 bit Hopping flag field can be used to switch on/off Msg3 hopping. Further, to indicate Msg3 hopping configuration, 2 bits can be considered for hopping indication.
Resource allocation: If the narrowband of Msg3 transmission is implicitly determined by Tx-Rx frequency space or has the same narrowband of preamble transmission, no narrowband indication is needed. Otherwise, maximum 4 bits are needed to indicate the narrowband within 20MHz system bandwidth.
For the resource indication within the narrowband, it is preferred that one PRB is used for Msg3 transmission to obtain PSD boosting gain. Therefore, 3 bits can be used to indicate the specific PRB allocation within the narrowband.」(第3頁第14行ないし第38行)
(当審仮訳:2.3 Msg3の受信
Msg3送信の繰り返しレベルは,PRACH送信の繰り返しレベルによって決定されるか,又はRARによって示されることができる。実際のところ,Msg3のより正確な繰り返しレベル情報を示すために,eNBに対するPRACH以外のさらなる情報を取得することはできない。それゆえ,RARのオーバーヘッドを削減するために,PRACHの繰り返しレベルによってMsg3の繰り返しレベルを決定することが好ましい。Msg3送信の繰り返し回数は,Msg3の繰り返しレベルによって知らされることができる。
提案4:RARのオーバーヘッドを削減するために,PRACHの繰り返しレベルによってMsg3の繰り返しレベルを決定することが好ましい。
通常のカバレッジシナリオでは,Msg3のULグラントはRARで伝えられる。RAR内の現在20ビットのULグラントは,Msg3スケジューリング用であり,次のフィールドが含まれる[3]。
-ホッピングフラグ - 1ビット
-固定サイズのリソースブロック割り当て - 10ビット
-切り捨てられた変調およびコーディング方式 - 4ビット
-スケジュールされたPUSCHのTPCコマンド - 3ビット
-UL遅延 - 1ビット
-CSIリクエスト - 1ビット
ホッピングフラグ:1ビットホッピングフラグフィールドは,Msg3ホッピングのオン/オフを切り替えることに使用される。さらに,Msg3ホッピング構成を示すために,2ビットがホッピングインジケーションと見なされることができる。
リソース割り当て:Msg3送信の狭帯域がTx-Rx周波数空間によって暗黙的に決定される場合,またはプリアンブル送信の狭帯域が同じである場合,狭帯域インジケーションは必要とされない。それ以外の場合は,20MHzのシステム帯域幅内の狭帯域を示すために最大4ビットが必要とされる。
狭帯域内のリソースインジケーションとして,PSDブースティングゲインを取得するために,1つのPRBがMsg3送信のために使用されることが好ましい。それゆえ,3ビットが,狭帯域内の特定のPRB割り当てを示すために使用されることができる。)

2 引用発明
(1)
ア 上記1(1)における「UEのPRACH送信に関連するeNBの応答は,MACサブヘッダーとMAC RARに含まれている。」との記載によれば,UEがeNBに対して,PRACH送信を行うこと,これに対する応答として,前記eNBからMAC RARが送信されることが記載されているといえる。

イ 上記1(2)における「UEは,プリアンブル送信の終了に3サブフレームを加えたサブフレームで始まり,ra-ResponseWindowSizeのサブフレーム長をもつRA応答ウィンドウで,ランダムアクセス応答をRA-RNTIによって識別するために,PCellのPDCCHを監視する。」との記載によれば,UEはRA応答の前にプリアンブル送信を行うこと,そして前記プリアンブル送信の後,PCellからRA応答を受信していることが記載されているといえる。
ここで,上記1(2)の記載における「RA応答」は,上記1(1)の記載における「MAC RAR」を表していること,RA応答の前に行われる上記1(2)における「プリアンブル送信」は,上記1(1)の記載における「PRACH送信」において行われていることは明らかである。また,PCellが,PRACHを受信したeNBにより構成されることは技術常識である。してみれば,引用例1には,UEからeNBへ,PRACH送信においてプリアンブル送信を行うこと,及び前記プリアンブル送信を行った後,PCellを構成する前記eNBからRA応答を受信することが記載されているといえる。

ウ 引用例1のタイトルが「カバレッジ拡張におけるRACH手順の考察」であることから,引用例1に記載されたPRACH送信や,それに対するRA応答の受信は「RACH手順」に関するものであることは明らかである。

上記アないしウを総合すれば,引用例1には「UEからeNBへ,RACH手順のPRACH送信において,プリアンブル送信を行うこと,前記プリアンブル送信を行った後,UEはPCellを構成する前記eNBからRACH手順のRA応答を受信すること」が記載されているといえる。

(2)
ア 上記1(1)の「MAC RARは56ビットで,タイミングアドバンスコマンド,(Msg3スケジューリングのための)ULグラント,一時的なC-RNTIが含まれる。」との記載,及び同図2から,引用例1における「RA応答」は,R,タイミングアドバンスコマンド,(Msg3スケジューリングのための)ULグラント,一時的なC-RNTIからなることが記載されているといえる。

イ 上記1(3)における「通常のカバレッジシナリオでは,Msg3のULグラントはRARで伝えられる。RAR内の現在20ビットのULグラントは,Msg3スケジューリング用であり,次のフィールドが含まれる[3]。-ホッピングフラグ - 1ビット」及び同「ホッピングフラグ:1ビットホッピングフラグフィールドは,Msg3ホッピングのオン/オフを切り替えることに使用される。さらに,Msg3ホッピング構成を示すために,2ビットがホッピングインジケーションと見なされることができる。」との記載から,Msg3のULグラントはホッピングフラグを含み,ホッピングフラグはMsg3ホッピング構成を示すものである。また,上記(1)ウで述べたことと同様に,Msg3が「RACH手順」に関するものであることは明らかである。そして,上記アの記載事項を考慮すれば,引用例1には,RA応答がR,タイミングアドバンスコマンド,RACH手順のMsg3のULグラント,一時的なC-RNTIからなること,前記ULグラントはMsg3ホッピング構成を示すホッピングフラグを含むことが記載されているといえる。

ウ 上記1(3)における「Msg3送信の繰り返し回数は,Msg3の繰り返しレベルによって知らされることができる。」との記載において,Msg3送信を行うのはUEであるからMsg3の繰り返しレベルを知らされるのはUEであることは明らかである。加えて,上記1(3)における「Msg3送信の繰り返しレベルは,PRACH送信の繰り返しレベルによって決定されるか,又はRARによって示されることができる。」との記載によれば,RA応答はMsg3送信の繰り返しレベルを含み,前記Msg3送信の繰り返しレベルによってMsg3送信の繰り返し回数がUEに知らされることが記載されているといえる。

上記アないしウを総合すれば,引用例1における「RA応答はR,タイミングアドバンスコマンド,RACH手順のMsg3のULグラント,一時的なC-RNTIからなり,前記ULグラントはMsg3ホッピング構成を示すホッピングフラグを含むこと,また前記RA応答はMsg3送信の繰り返しレベルが含み,前記Msg3送信の繰り返しレベルによってMsg3送信の繰り返し回数がUEに知らされる」ことが記載されているといえる。

したがって,上記(1)及び(2)を総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「UEからeNBへ,RACH手順のPRACH送信において,プリアンブル送信を行うこと,
前記プリアンブル送信を行った後,UEはPCellを構成する前記eNBからRACH手順のRA応答を受信すること,
を含み,
前記RA応答はR,タイミングアドバンスコマンド,RACH手順のMsg3のULグラント,一時的なC-RNTIからなり,前記ULグラントはMsg3ホッピング構成を示すホッピングフラグを含むこと,またRA応答はMsg3送信の繰り返しレベルを含み,前記Msg3送信の繰り返しレベルによってMsg3送信の繰り返し回数がUEに知らされる,
方法。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1 引用発明における「UE」が,ワイヤレス通信システムにおける端末を示すことは技術常識であるから,引用発明における「UE」は,本願発明における「ワイヤレス端末(UE-a)」に相当する。
そして,引用発明は「UE」に「プリアンブル送信を行う」動作や「RA応答を受信する」動作を行わせるものといえるから,このような引用発明における「UE」に「プリアンブル送信を行う」動作や「RA応答を受信する」動作を行わせる手法は,本願発明と同様に,「ワイヤレス端末(UE-a)を動作させる方法」といえる。

2 引用発明における「eNB」が,無線アクセスネットワーク(Radio Access Network;RAN)におけるノードの1つであることは技術常識であるから,引用発明における「eNB」は,本願発明における「無線アクセスネットワーク(RAN)のノード(BS-a)」に相当する。
また,引用発明における「RACH手順」が,ランダムアクセスチャネルを用いて行われるランダムアクセス手順を表していることは技術常識であるから,引用発明における「RACH手順」は,本願発明における「ランダムアクセス手順」に相当する。
さらに,引用発明における「PRACH送信」が,物理層(Physical layer)におけるランダムアクセスチャネル(Random Access CHannel)送信を表し, PRACHで送信される「プリアンブル」がランダムアセスプリアンブルであることは技術常識である。してみれば,引用発明における「PRACH送信において,プリアンブル送信を行う」ことは,本願発明における「ランダムアクセスプリアンブルを送信する」ことに相当する。
してみれば,引用発明の「UEからeNBへ,RACH手順のPRACH送信において,プリアンブル送信を行うこと」は,本願発明の「前記ワイヤレス端末(UE-a)から無線アクセスネットワーク(RAN)のノード(BS-a)へランダムアクセス手順のランダムアクセスプリアンブルを送信すること(601)」に相当する。

3 引用発明の「RA応答」はランダムアクセス応答を表すものであるから,引用発明における「RA応答」は,本願発明における「ランダムアクセス応答(RAP)」に相当する。
そして,引用発明の「RACH手順」は,上記2で検討したようにランダムアクセス手順を表していることが技術常識であるから,引用発明における「前記プリアンブル送信を行った後,UEはPCellを構成する前記eNBからRACH手順のRA応答を受信すること」は,本願発明における「前記ランダムアクセスプリアンブルを送信後,前記無線アクセスネットワークの前記ノード(BS-a)から前記ランダムアクセス手順のランダムアクセス応答(RAR)を受信すること(603)」に相当する。

4 引用発明の「RACH手順のMsg3」は,上記2で検討したように「RACH手順」がランダムアクセス手順を表していることが技術常識であることを考慮すれば,「Msg3」がランダムアクセス手順のメッセージ3の略語であることも明らかである。してみれば,引用発明における「RACH手順のMsg3」による通信は,本願発明における「ランダムアクセス手順のメッセージ3アップリンク通信」に相当する。
よって,引用発明における「RACH手順のMsg3のULグラント」は,本願発明における「ランダムアクセス手順のメッセージ3アップリンク通信に対するアップリンク(UL)グラント」に相当する。
してみれば,引用発明における「RA応答」は「RACH手順のMsg3のULグラント」を含むことが,本願発明における「前記ランダムアクセス応答は前記ランダムアクセス手順のメッセージ3アップリンク通信に対するアップリンク(UL)グラントを含」むことに相当する。

5 引用発明におけるRACH手順の「Msg3送信」はランダムアクセス手順の1つであり,ランダムアクセス手順における信号の送受信はサブフレーム毎に行われることが技術常識である。そうすると「Msg3送信」を「繰り返し」行うためには,サブフレームにわたって繰り返し送信されることになるのは明らかである。つまり,引用発明の「Msg3送信の繰り返しレベル」は「Msg3送信」を時間軸方向で何サブフレームにわたって繰り返し送信するかを規定しているといえる。よって,引用発明の「Msg3送信の繰り返しレベル」は「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成」に含まれる。
また,引用発明における「Msg3送信の繰り返し回数」は本願発明の「メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数」に相当するものといえる。
そして,引用発明において,「Msg3送信の繰り返し回数」は「Msg3送信の繰り返しレベル」によってUEに知らされるものであるから,「Msg3送信の繰り返しレベル」が「Msg3送信の繰り返し回数」を規定するものといえる。してみれば,引用発明における「Msg3送信の繰り返しレベル」は,本願発明における「繰り返し因数」に含まれる。
以上のことから,引用発明における「RA応答」が「Msg3送信の繰り返しレベルを含み,前記Msg3送信の繰り返しレベルによってMsg3送信の繰り返し回数がUEに知らされる」ことと,本願発明における「ランダムアクセス応答」に含まれる「前記ULグラントは,」「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成であって,前記メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数を規定する繰り返し因数を含む時間領域構成を含む」こととは,「ランダムアクセス応答」が「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成であって,前記メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数を規定する繰り返し因数を含む時間領域構成を含む」点で共通する。

6 引用発明における「ホッピング」が,周波数ホッピングを表していることは技術常識である。そして,周波数ホッピングに関する「ホッピング構成」が周波数領域の構成情報の1つとなっていることは明らかである。してみれば,引用発明において「ULグラント」が「Msg3ホッピング構成を示すホッピングフラグを含む」ことは,本願発明の「ULグラント」が「前記メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた周波数領域構成であって」,「前記メッセージ3アップリンク通信の周波数ホッピング構成を含む周波数領域構成を含む」ことに相当する。

したがって,上記1ないし5を総合すれば,本願発明と引用発明は,
「 ワイヤレス端末(UE-a)を動作させる方法であって,
前記ワイヤレス端末(UE-a)から無線アクセスネットワーク(RAN)のノード(BS-a)へランダムアクセス手順のランダムアクセスプリアンブルを送信すること(601)と,
前記ランダムアクセスプリアンブルを送信後,前記無線アクセスネットワークの前記ノード(BS-a)から前記ランダムアクセス手順のランダムアクセス応答(RAR)を受信すること(603)と,
を含み,
前記ランダムアクセス応答は前記ランダムアクセス手順のメッセージ3アップリンク通信に対するアップリンク(UL)グラントを含み,
前記ランダムアクセス応答は,
前記メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成であって,
前記メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数を規定する繰り返し因数
を含む時間領域構成を含み,
前記ULグラントは,
前記メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた周波数領域構成であって,
前記メッセージ3アップリンク通信の周波数ホッピング構成
を含む周波数領域構成
を含む,方法。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

<相違点1>
「前記ランダムアクセス応答は,メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成であって,前記メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数を規定する繰り返し因数を含む時間領域構成を含み,」に関し,本願発明は「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成であって,(a)前記メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数を規定する繰り返し因数,および/または(b)前記メッセージ3アップリンク通信の送信時間間隔(TTI)情報を含む時間領域構成」を「ランダムアクセス応答」に含まれる「ULグラント」が含むのに対し,引用発明はMsg3送信の繰り返しレベルをRA応答に含むが,当該発明特定事項を特定していない点。

<相違点2>
本願発明は「ULグラント」に含まれる「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた周波数領域構成」として,「前記メッセージ3アップリンク通信に対する物理リソースブロック(PRB)リソースを指示するリソースブロックアサインメントであって,(a)UL狭帯域インデックス,および(b)前記狭帯域内のPRBペアのセットを含むリソースブロックアサインメント,ならびに/または前記メッセージ3アップリンク通信の周波数ホッピング構成を含む」ものであるのに対し,引用発明は「Msg3ホッピング構成を示すホッピングフラグを含む」ものの,当該発明特定事項を特定していない点。

第6 判断
1 相違点1について
引用発明の「RA応答」は「前記RA応答はR,タイミングアドバンスコマンド,RACH手順のMsg3のULグラント,一時的なC-RNTIからな」るものである。なお,Rが予約ビットを表すことは技術常識である。
引用発明においては「Msg3送信の繰り返しレベル」を上記「RA応答」内のどの領域に格納するかは明記されていない。しかしながら,「Msg3送信の関する繰り返しレベル」が「Msg3送信」のリソースに関する情報であり,また「ULグラント」は,アップリンク送信のリソースに関する情報を送信するためのものであることが技術常識である。以上のことを考慮すれば,引用発明において「Msg3送信の繰り返しレベル」を「RA応答」に含むとは,「Msg3送信の繰り返しレベル」を「RA応答」に含まれる「ULグラント」が含むこと,すなわち本願発明の「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成であって,(a)前記メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数を規定する繰り返し因数」「を含む時間領域構成」を「ランダムアクセス応答」に含まれる「ULグラント」が含むことを表しているといえる。
また,仮に,引用発明において「Msg3送信の繰り返しレベル」を「RA応答」に含むということが,「Msg3送信の繰り返しレベル」を「RA応答」に含まれる「ULグラント」に含むことを表しているとまではいえないとしても,上記したように「Msg3送信の関する繰り返しレベル」が「Msg3送信」のリソースに関する情報であり,また「ULグラント」が,アップリンク送信のリソースに関する情報を送信するためのものであるという技術常識を考慮すれば,「Msg3送信の関する繰り返しレベル」を含む時間領域構成を,「RA応答」に含まれる「ULグラント」が含むよう構成すること,すなわち本願発明と同様,「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成であって,(a)前記メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数を規定する繰り返し因数」「を含む時間領域構成」を「ランダムアクセス応答」に含まれる「ULグラント」が含むようにすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして,本願発明の「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間数領域構成であって,(a)前記メッセージ3アップリンク通信のサブフレームにわたる繰り返し回数を規定する繰り返し因数,および/または(b)前記メッセージ3アップリンク通信の送信時間間隔(TTI)情報を含む時間領域構成」との記載における「および/または」の「または」は択一的な選択肢であることを示すものである。してみれば,本願発明は「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた時間領域構成」として,「(b)前記メッセージ3アップリンク通信の送信時間間隔(TTI)情報」なる特定事項を含まないものを含んでいるため,引用発明が当該特定事項を備えていないことは,実質的な相違点とはならない。

2 相違点2について
引用発明の「ULグラント」が「Msg3ホッピング構成を示すホッピングフラグを含む」ことは,上記「第5」の「6」で検討したように,本願発明の「ULグラント」が「前記メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた周波数領域構成であって,前記メッセージ3アップリンク通信の周波数ホッピング構成を含む周波数領域構成を含む」ことに相当する。
そして,本願発明の「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた周波数領域構成であって,前記メッセージ3アップリンク通信に対する物理リソースブロック(PRB)リソースを指示するリソースブロックアサインメントであって,(a)UL狭帯域インデックス,および(b)前記狭帯域内のPRBペアのセットを含むリソースブロックアサインメント,ならびに/または前記メッセージ3アップリンク通信の周波数ホッピング構成を含む周波数領域構成」との記載における「ならびに/または」の「または」は択一的な選択肢であることを示すものである。してみれば,本願発明は「メッセージ3アップリンク通信に関連付けられた周波数領域構成」として,「前記メッセージ3アップリンク通信に対する物理リソースブロック(PRB)リソースを指示するリソースブロックアサインメントであって,(a)UL狭帯域インデックス,および(b)前記狭帯域内のPRBペアのセットを含むリソースブロックアサインメント」なる特定事項を含まないものを含んでいるため,引用発明が当該特定事項を備えていないことは,実質的な相違点とはならない。

3 審判請求人の主張について
審判請求人は,令和2年3月26日付けの審判請求書において「引用文献1-3のいずれにも、ULグラントが、「(b)狭帯域内のPRBペアのセットを含むリソースブロックアサインメント」を含むことについて開示も示唆もなされておりません。」と主張している。また,令和2年8月6日付けの上申書において,「審判請求時の請求項1の記載は、「前記ULグラントは、時間領域構成、ならびに周波数領域構成を含み、周波数領域構成は、(b)前記狭帯域内のPRBペアのセットを含むリソースブロックアサインメントを含む」ものであり、審査官殿の上記認定には誤りがあります。」と主張している。
しかしながら,上記2で検討したように,本願発明は,審判請求人が主張する「ULグラントが,「(b)狭帯域内のPRBペアのセットを含むリソースブロックアサインメント」を含む」という発明特定事項を含まないものを含んでいるため,引用発明が当該特定事項を備えていないことは,実質的な相違点とはならない。
よって,審判請求人の上記主張を採用することはできない。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明であり,また引用発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号該当し,特許を受けることができない。また,本願の請求項1に係る発明は,引用例1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-10-22 
結審通知日 2020-10-27 
審決日 2020-11-11 
出願番号 特願2018-515019(P2018-515019)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 113- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大濱 宏之  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 廣川 浩
本郷 彰
発明の名称 時間領域構成を含むULグラントを提供する方法、ならびに関連したワイヤレス端末およびネットワークノード  
代理人 冨樫 義孝  
代理人 藤井 亮  
代理人 石岡 利康  
代理人 園田 吉隆  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ