• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1373428
審判番号 不服2020-12086  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-28 
確定日 2021-05-11 
事件の表示 特願2016-118467「情報媒体処理装置、情報媒体処理方法、および情報媒体処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-224122、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成28年6月15日の出願であって,令和1年10月9日付けで拒絶の理由が通知され,同年12月5日に意見書とともに手続補正書が提出され,令和2年5月25日付けで拒絶査定(謄本送達日同年6月2日)がなされ,これに対して同年8月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,同年10月27日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和2年5月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-10
・引用文献等 1-4

<引用文献等一覧>
1.特開平11-185076号公報
2.特開2012-133743号公報
3.特開2014-182432号公報
4.特開2013-246685号公報


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正(以下,「本件補正」という。)は,特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
本件補正によって,本件補正前の請求項1,9及び10に「前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定せず、また、」という事項を追加するとともに,本件補正前に「または前記第2撮像画像に撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えたとき、」とあるのを,本件補正後に「前記第2撮像画像に撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えたときも、」とする補正事項(以下これらをまとめて,単に「補正事項」という。)は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,上記補正事項が願書に最初に添付された特許請求の範囲,明細書及び図面(以下,「当初明細書等」という。)に新規事項を追加するものであるかを検討するに,当初明細書等の図11のフローチャートにおいて,ステップs12の「第1の撮像処理」を終えた後,ステップs14にて「情報読取できた」が「N」となり,さらにその後のステップs17において再度「第1の撮像処理」が行われた後に,ステップs18にて「情報読取できた」が「N」となった場合には,ステップs11に戻る態様が開示されていて,当該事項は,「判定部」が,「前記第1撮像画像、および前記第3撮像画像の少なくとも一方に対して撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えなかったとき、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定」しないことを示すとともに,同じく図11のフローチャートのステップs14にて「情報読取できた」が「Y」となった後は,ステップs20にて「裏面であることを出力」して,その後「Return」され,上記ステップs18の判断,すなわち「読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定」することを行わないことも示していて,このことは,「判定部」が,「前記第2撮像画像に撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えたときも、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定しない」ことを示しているといえるから,当該補正事項は当初明細書等に新規事項を追加するものとはいえない。
そして,以下の第4?第6に示すように,本件補正後の請求項1?10に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1?10に係る発明(以下,「本願発明1」?「本願発明10」という。)は,令和2年8月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された,次のとおりのものと認める。(下線は補正箇所を示す。)

「 【請求項1】
第1の情報を示す第1の情報コードと、第2の情報を示す第2の情報コードとが形成され、
前記第1の情報コードは、第1の波長の光が照射されると、照射された前記第1の波長の光を反射し、かつ前記第1の波長とは異なる第2の波長の光が照射されると、照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有し、
前記第2の情報コードは、前記第1の波長の光が照射されると、照射された前記第1の波長の光の反射を妨げ、かつ前記第2の波長の光が照射されると、照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有し、
前記第1の情報コードの一部が、前記第2の波長の光を透過させ、前記第1の波長の光の透過を妨げる光学特性を有する第1の被覆部によって覆われている、情報媒体を処理する情報媒体処理装置であって、
前記第1の波長の光を前記情報媒体の読取領域に照射する第1の照明部と、
前記第2の波長の光を前記情報媒体の前記読取領域に照射する第2の照明部と、
前記読取領域を撮像する撮像部と、
前記第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像した第1撮像画像、前記第1撮像画像の撮像後に、前記第1の照明部が前記第1の波長の光を点灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を消灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像した前記読取領域の第2撮像画像、および前記第2撮像画像の撮像後に、再度前記第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像した第3撮像画像を処理し、前記読取領域に翳された情報コードが、前記第1の情報コードであるか、前記第2の情報コードであるかを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記第1撮像画像、および前記第3撮像画像の少なくとも一方に対して撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えなかったとき、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定せず、また、前記第2撮像画像に撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えたときも、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定しない、情報媒体処理装置。
【請求項2】
前記情報媒体は、前記第1の情報コードと、前記第2の情報コードとが、異なる面に形成されている、請求項1に記載の情報媒体処理装置。
【請求項3】
前記第1の情報コードが示す前記第1の情報は、当該第1の情報コードが形成されている前記情報媒体の属性を示す属性情報を含む、請求項1、または2に記載の情報媒体処理装置。
【請求項4】
前記第2の情報コードが示す前記第2の情報は、他の前記情報媒体との間で共通し、予め定めた特定の情報である、請求項1?3のいずれかに記載の情報媒体処理装置。
【請求項5】
前記情報媒体は、
前記第2の情報コードを覆う第2の被覆部が形成され、
前記第2の被覆部は、前記第2の波長の光を透過させ、前記第1の波長の光の透過を妨げる光学特性を有する、請求項1?4のいずれかに記載の情報媒体処理装置。
【請求項6】
前記第1の情報コード、および前記第2の情報コードは、2次元コードである、請求項1?5のいずれかに記載の情報媒体処理装置。
【請求項7】
前記第1の波長の光は、可視光であり、
前記第2の波長の光は、可視光でない、請求項1?6のいずれかに記載の情報媒体処理装置。
【請求項8】
前記判定部によって、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定されたとき、この第1の情報コードが示す第1の情報を用いて前記情報媒体を処理する媒体処理部と、
前記判定部によって、前記読取領域に翳された情報コードが前記第2の情報コードであると判定されたとき、前記第1の情報コードを前記読取領域に翳すことを案内する案内部と、を備えた請求項1?7のいずれかに記載の情報媒体処理装置。
【請求項9】
第1の情報を示す第1の情報コードと、第2の情報を示す第2の情報コードとが形成され、
前記第1の情報コードは、第1の波長の光が照射されると、照射された前記第1の波長の光を反射し、かつ前記第1の波長とは異なる第2の波長の光が照射されると、照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有し、
前記第2の情報コードは、前記第1の波長の光が照射されると、照射された前記第1の波長の光の反射を妨げ、かつ前記第2の波長の光が照射されると、照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有し、
前記第1の情報コードの一部が、前記第2の波長の光を透過させ、前記第1の波長の光の透過を妨げる光学特性を有する第1の被覆部によって覆われている、情報媒体を処理する情報媒体処理装置のコンピュータが実行する情報媒体処理方法であって、
第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、撮像部によって読取領域を撮像して第1撮像画像を得る第1の撮像ステップと、
前記第1撮像画像を得た後に、前記第1の照明部が前記第1の波長の光を点灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を消灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像して第2撮像画像を得る第2の撮像ステップと、
前記第2撮像画像を得た後に、再度、前記第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像して第3撮像画像を得る第3の撮像ステップと、
前記第1撮像画像、前記第2撮像画像、および前記第3撮像画像を処理し、前記読取領域に翳された情報コードが、前記第1の情報コードであるか、前記第2の情報コードであるかを判定する判定ステップ、を備え、
前記判定ステップは、前記第1撮像画像、および前記第3撮像画像の少なくとも一方に対して撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えなかったとき、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定せず、また、前記第2撮像画像に撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えたときも、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定しないステップである、情報媒体処理方法。
【請求項10】
第1の情報を示す第1の情報コードと、第2の情報を示す第2の情報コードとが形成され、
前記第1の情報コードは、第1の波長の光が照射されると、照射された前記第1の波長の光を反射し、かつ前記第1の波長とは異なる第2の波長の光が照射されると、照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有し、
前記第2の情報コードは、前記第1の波長の光が照射されると、照射された前記第1の波長の光の反射を妨げ、かつ前記第2の波長の光が照射されると、照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有し、
前記第1の情報コードの一部が、前記第2の波長の光を透過させ、前記第1の波長の光の透過を妨げる光学特性を有する第1の被覆部によって覆われている、情報媒体を処理する情報媒体処理装置のコンピュータに実行させる情報媒体処理プログラムであって、
第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、撮像部によって読取領域を撮像して第1撮像画像を得る第1の撮像ステップと、
前記第1撮像画像を得た後に、前記第1の照明部が前記第1の波長の光を点灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を消灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像して第2撮像画像を得る第2の撮像ステップと、
前記第2撮像画像を得た後に、再度、前記第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像して第3撮像画像を得る第3の撮像ステップと、
前記第1撮像画像、前記第2撮像画像、および前記第3撮像画像を処理し、前記読取領域に翳された情報コードが、前記第1の情報コードであるか、前記第2の情報コードであるかを判定する判定ステップ、をコンピュータに実行させ、
前記判定ステップは、前記第1撮像画像、および前記第3撮像画像の少なくとも一方に対して撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えなかったとき、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定せず、また、前記第2撮像画像に撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えたときも、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定しないステップである、情報媒体処理プログラム。」


第5 引用例

1 引用例1に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開平11-185076号公報(平成11年7月9日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態におけるゲート開閉制御装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、上記ゲート開閉制御装置で使用される有料車両保管設備の利用券の外観を示す平面図であり、(a)は利用券の表面を、(b)は利用券の裏面を図示している。なお、図2中、矢印Aは、図1に示すゲート開閉制御装置の利用券挿入口(図示略)に対する、利用券の挿入方向を示している。
【0011】図1において、1は利用券であり、図2に示す通り、利用券1の表面(図2(a)参照)には、上記有料車両保管設備の利用可能期間または利用券1の有効期限等のデータを表すバーコード10が印刷されている。また、利用券1の裏面には、不可視の特殊インクで、所定の位置にマーク11が印刷されている(図2(b)中、点線部参照)。ここで、不可視の特殊インクとは、可視領域では、すなわち、目視した場合は、透明または利用券1の裏面と同色であるが、可視領域外(例えば近赤外域)では、反射または吸収する光の波長が大きく異なるインクのことである。また、この特殊インクとしては、容易に入手できず、セキュリティ効果が大きいものが望ましい。
【0012】2はバーコードリーダ(第1の読取手段)であり、利用券1の表面に印刷されたバーコード10を読み取る。3はバーコード判定部であり(第1の判定手段)、バーコードリーダ2が読み取ったバーコード10の内容から、現時点の年月日および時刻が、バーコード10から読み取った利用券1の有効期間内であるか等、利用券1の有効性を判断する。4は特殊インク読取機(第2の読取手段)であり、利用券1の裏面に特殊インクで印刷されたマーク11を読み取る。5は特殊インク判定部(第2の判定手段)であり、特殊インク読取機4により利用券1の裏面からマーク11が読みとれたか否かの判断を行う。
【0013】6はゲート開信号発生部(制御信号発生手段)であり、バーコード判定部3において、利用券1に印刷れさたバーコードの情報が妥当であると判断され、かつ、特殊インク判定部5において利用券1の裏面に所定のマーク11が存在すると判定された場合にのみ、図示せぬゲート装置に対してゲート開信号を出力する。」

B 「【0019】なお、カードの材質としては、紙、プラスチック、金属等を使用することができる。また、カード表面に印刷される可視の情報の形態は、上述したバーコードに限らず、数字やアルファベット、またはそれらの組み合わせであってもよい。さらに、上記の実施形態では、カード裏面の所定位置に不可視のインクによって印刷されるマークが存在しているか否かによって利用券の真贋を判定していたが、これに限らず、不可視のインクによって印刷されるマークの形状(三角形、丸、星形等)によって真贋を判定してもよい。また、不可視のインクによって、例えば、利用者のID番号や利用券のシリアル番号等の情報を示すバーコードもしくは文字や数字等よって表されるコードを印刷し、その情報の有無またはその情報の内容によって利用券の真贋を判定するようにしてもよい。」

C 「

図1」

2 引用発明

(1)上記記載事項Aの「図1は本発明の一実施形態におけるゲート開閉制御装置の構成を示すブロック図である…上記ゲート開閉制御装置で使用される有料車両保管設備」との記載,及び上記記載事項Cの図1から,引用例1は,“有料車両保管設備のゲート開閉制御装置”について記載されたものであるといえる。

(2)上記記載事項Aの「上記ゲート開閉制御装置で使用される有料車両保管設備の利用券…(中略)…利用券1の表面…には、上記有料車両保管設備の利用可能期間または利用券1の有効期限等のデータを表すバーコード10が印刷され…利用券1の裏面には、不可視の特殊インクで、所定の位置にマーク11が印刷され…不可視の特殊インクとは、可視領域では、すなわち、目視した場合は、透明または利用券1の裏面と同色であるが、可視領域外(例えば近赤外域)では、反射または吸収する光の波長が大きく異なるインクのこと」との記載,及び上記(1)の認定事項から,引用例1には,“前記ゲート開閉制御装置で使用される有料車両保管設備の利用券の表面には,前記有料車両保管設備の利用可能期間または前記利用券の有効期限等のデータを表すバーコードが印刷され,前記利用券の裏面には,可視領域で目視した場合は,透明または前記利用券の裏面と同色であるが,近赤外域では,反射または吸収する光の波長が大きく異なる特殊インクで,所定の位置にマークが印刷され”ることが記載されているといえる。

(3)上記記載事項Bの「カード裏面の所定位置に不可視のインクによって印刷されるマーク…(中略)…利用券のシリアル番号等の情報を示すバーコードもしくは文字や数字等よって表されるコードを印刷…(中略)…してもよい」との記載,及び上記(2)の認定事項から,引用例1には,“前記カード裏面の所定位置に不可視の特殊インクによって印刷されるマークは,前記利用券のシリアル番号等の情報を示すバーコードもしくは文字や数字等よって表されるコードを印刷してもよ”いことが記載されているといえる。

(4)上記記載事項Aの「2はバーコードリーダ(第1の読取手段)であり、利用券1の表面に印刷されたバーコード10を読み取る…(中略)…4は特殊インク読取機(第2の読取手段)であり、利用券1の裏面に特殊インクで印刷されたマーク11を読み取る」との記載,及び上記(2)の認定事項から,引用例1には,“前記利用券の表面に印刷された前記バーコードを読み取るバーコードリーダ(第1の読取手段)と,前記利用券の裏面に前記特殊インクで印刷された前記マークを読み取る特殊インク読取機(第2の読取手段)”が記載されているといえる。

(5)上記記載事項Aの「バーコード判定部3において、利用券1に印刷れさたバーコードの情報が妥当であると判断され、かつ、特殊インク判定部5において利用券1の裏面に所定のマーク11が存在すると判定された場合にのみ、図示せぬゲート装置に対してゲート開信号を出力する」との記載,及び上記(2)の認定事項から,“バーコード判定部において,前記利用券に印刷された前記バーコードの情報が妥当であると判断され,かつ,特殊インク判定部において前記利用券の裏面に前記マークが存在すると判定された場合にのみ,ゲート装置に対してゲート開信号を出力する”ことが記載されているといえる。

(6)以上,上記(1)?(5)より,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「有料車両保管設備のゲート開閉制御装置であって,
前記ゲート開閉制御装置で使用される有料車両保管設備の利用券の表面には,前記有料車両保管設備の利用可能期間または前記利用券の有効期限等のデータを表すバーコードが印刷され,前記利用券の裏面には,可視領域で目視した場合は,透明または前記利用券の裏面と同色であるが,近赤外域では,反射または吸収する光の波長が大きく異なる特殊インクで,所定の位置にマークが印刷され,
前記カード裏面の所定位置に不可視の特殊インクによって印刷されるマークは,前記利用券のシリアル番号等の情報を示すバーコードもしくは文字や数字等よって表されるコードを印刷してもよく,
前記利用券の表面に印刷された前記バーコードを読み取るバーコードリーダ(第1の読取手段)と,前記利用券の裏面に特殊インクで印刷された前記マークを読み取る特殊インク読取機(第2の読取手段)とを有し,
バーコード判定部において,前記利用券に印刷された前記バーコードの情報が妥当であると判断され,かつ,特殊インク判定部において前記利用券の裏面に前記マークが存在すると判定された場合にのみ,ゲート装置に対してゲート開信号を出力する
ゲート開閉制御装置。」

3 引用例2に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2012-133743号公報(平成24年7月12日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

D 「【0069】
一方、情報コードCと異なる領域に形成される第2の情報コードCaは、図12(B)のように明モジュールA5と暗モジュールA6とが組み合わされた構成をなしており、この第2の情報コードCaの明モジュールA5は、可視光等の第1波長帯の光が照射されたときに明色の反射特性を示し、暗モジュールA6は、この第1波長帯の光が照射されたときに暗色の反射特性を示すように構成されている。また、第2の情報コードCaの周囲の背景領域A7は、上記第1波長帯の光が照射されたときに明色の反射特性を示すようになっている。このように構成されているため、可視光が照射される通常の環境においてユーザが第2の情報コードCaの存在や位置を視認することが可能となり、読取装置40側では、可視光等の第1波長帯の光が照明光として照射されているとき(即ち、第1照明光源43から照明光が照射されているとき)に、明モジュールと暗モジュールとを明瞭に区別した状態で撮像し、解読することが可能となる。
なお、図12の情報コード形成媒体10において、領域B2?B7は第1実施形態と同様の構成であるので詳細な説明は省略する。
【0070】
更に、本実施形態で用いられる情報コード読取装置40は、上記のような情報コード形成媒体10を前提として、少なくとも所定の時期に、第1照明光源43(第1照明光照射手段)による第1照明光の照射と、第2照明光源44(第2照明光照射手段)による第2照明光の照射とが同時に行われるようになっている。そして、このように情報コード形成媒体10に対して第1波長帯の照明光(可視光等)及び第2波長帯の照明光(赤外光等)が同時に照射されているときに、撮像部42(撮像手段)によって当該情報コード形成媒体19を撮像し、その撮像された情報コード形成媒体10の画像において情報コードC及び第2の情報コードCaをいずれも抽出し、両種のコードを解読している。以下では、このような撮像、解読処理について、図13のような駐車場システム100を例に挙げて説明する。

…(中略)…

【0075】
S1の処理で駐車券(情報コード形成媒体10)が認識された後には、S2の撮像処理を行う。本実施形態の撮像処理では、第1照明光源43及び第2照明光源44を同時期に動作させ、可視光(第1照明光)の照射と、赤外光(第2照明光)の照射をある程度の期間において同時に行う。そして、このように情報コード形成媒体10に対して第1波長帯の照明光(可視光等)及び第2波長帯の照明光(赤外光等)が同時に照射された状態で当該情報コード形成媒体10を撮像部42によって撮像する(S2)。
【0076】
その後、S3では、このように撮像された情報コード形成媒体10の画像において情報コードC及び第2の情報コードCaをいずれも抽出し、両種のコードを解読する。本実施形態では、情報コードCの暗色モジュールA3及び第2の情報コードCaの暗モジュールA6のいずれも、例えば赤外吸収する暗色(黒色)によって構成されており、赤外光を照射した場合であっても、可視光を照射した場合であっても透けた表示態様とならず、暗色(黒色等)として明瞭に撮像されるようになっている。また、情報コードCの明色モジュールA4及び情報コードCの周囲に隣接する背景領域A2は、いずれも赤外吸収しない暗色(黒色)によって構成されており、図12(B)のように赤外光を照射して撮像したときに透けた表示態様となって明色に反転して撮像されるようになっている。換言すると、情報コード形成媒体10では、情報コードC付近において暗色モジュールA3の領域のみが赤外吸収する暗色(黒色)となっており、この領域を覆い隠すように赤外吸収しない暗色(黒色)が重ねられているため、赤外光を照射して撮像するときには、赤外吸収しない暗色(黒色)の領域が透けることになり、赤外吸収する暗色(黒色)の領域(即ち、情報コードCの暗色モジュールA3)のみが浮かび上がるように撮像されることになる。なお、本実施形態では、第2の情報コードCaの明モジュールA5及びその背景領域A7は、例えば赤外吸収しない明色(白色等)によって構成されている。」

E 「


図12」

4 引用例3に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2014-182432号公報(平成26年9月29日公開。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

F 「【0032】
図3は、二次元コード券150の発行に用いられる券媒体153の例を示す。券媒体53は、券面情報151および切符情報に基づく二次元コード152を印刷可能な面(表面)と、裏面であることを示す二次元コード(裏面二次元コード)154が既に印刷されている面(裏面)とを有する。券媒体153は、例えばロール状であり、所定間隔毎に裏面に裏面二次元コード154が印刷されている。」

G 「【0064】
上記した券売機110は、裏面に裏面二次元コード154が印刷された券媒体153の表面に、二次元コード152及び券面情報151を印刷し、二次元コード券150を発行することができる。これにより、改札機140は、二次元コード152と裏面二次元コード154とのいずれかを必ず読み取ることができる。この為、改札機140は、二次元コード券150の裏面が翳された場合であっても、無応答とならずに表面を翳すことを促す案内を利用者に報知することができる。この結果、より利便性の高い券媒体、及び改札機を提供することができる。」

H 「

図3」

5 引用例4に記載された事項

原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2013-246685号公報(平成25年12月9日公開。以下,これを「引用例4」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

I 「【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明の情報コードおよび印刷媒体を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る情報コード20の一例を説明する説明図であり、図1(A)は、コード領域30が被覆部21により被覆された状態を示し、図1(B)は、図1(A)の情報コード20から被覆部21を取り除いた状態を示す。
【0027】
本実施形態に係る情報コード20は、複製等による偽造を防止するため、図1(A)に示すように、複数の明色モジュールおよび暗色モジュールからなるコード領域30と、このコード領域30のうちの一部を被覆する被覆部21とから構成される。
【0028】
図1(B)に示すように、コード領域30は、QRコードと同様に、正方形領域として構成される複数の明色モジュールおよび暗色モジュールがマトリックス状に配置されることで、当該コード領域30の全体が矩形領域として構成されている。
【0029】
具体的には、コード領域30は、QRコードと同様に、要求される必要な情報が含まれるように構成されるデータ領域31、3つの位置検出パターン32a?32cなどから構成されている。このため、コード領域30のうちデータ領域31の大部分が隠されると、当該コード領域30が解読不能となる。また、各位置検出パターン32a?32cは、撮像された画像データにおいて当該コード領域30の位置を特定するためのパターンであって、コード領域30の4つの頂点のうちの3つの頂点に対して予め決められた所定の形状で配置されている。なお、各位置検出パターン32a?32cは、特許請求の範囲に記載の「特徴パターン領域」の一例に相当し得る。
【0030】
このように構成されるコード領域30を構成する各モジュールのうち各明色モジュールは、可視光領域の第1波長帯の光またはこの第1波長帯と異なる第2波長帯の光が照射されたときに、明色の反射特性を示すように構成されている。また、各暗色モジュールは、第1波長帯の光または第2波長帯の光が照射されたときに、暗色の反射特性を示すように構成されている。具体的には、コード領域30を構成する各モジュールは、一般的に使用される通常のインクを塗布して構成されている。
【0031】
また、被覆部21は、コード領域30のうち各位置検出パターン32a?32cを除く領域であって遮光されることで当該コード領域30が解読不能となる所定領域、具体的には、データ領域31の大部分を被覆するように、一方向(図1の左右方向)に長い状態で配置されている。より具体的に説明すると、被覆部21は、図1(A)に示すように、コード領域30の境界をなす一方の縁部30aから対向する他方の縁部30bに至るまで、連続して被覆するように帯状に配置されている。
【0032】
この被覆部21は、上記第2波長帯の光が照射されたときにコード領域30を構成する各モジュールからの反射光を透過させ、上記第1波長帯の光の透過を妨げるようなインク、例えば、赤外線透過インク等を塗布して構成されている。このため、可視光が支配的である通常状態では、図1(A)に示すように、データ領域31の大部分が被覆部21により隠されるように視認されることとなる。なお、被覆部21は、一般的に適用される誤り訂正処理がなされる場合でも解読できない程度に、例えば、データ領域31が占める領域の30%程度を被覆するように配置される。」

J 「


図1」

K 「

図2」

L 「

図3」


第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「利用券」は,本願発明1の「情報媒体」に相当し,引用発明の「ゲート開閉制御装置」は,「前記利用券の表面に印刷された前記バーコードを読み取るバーコードリーダ(第1の読取手段)と,前記利用券の裏面に特殊インクで印刷された前記マークを読み取る特殊インク読取機(第2の読取手段)とを有し,」「バーコード判定部において,前記利用券に印刷れさた前記バーコードの情報が妥当であると判断され,かつ,特殊インク判定部において前記利用券の裏面に前記マークが存在すると判定された場合にのみ,ゲート装置に対してゲート開信号を出力する」ものであるところ,情報媒体についての処理を行うものといえることから,本願発明1の「情報媒体処理装置」に相当するものといえる。
また,引用発明の「利用券の表面」に「印刷」される「有料車両保管設備の利用可能期間または前記利用券の有効期限等のデータを表すバーコード」は,本願発明1の「第1の情報を示す第1の情報コード」に相当し,同じく引用発明の「利用券の裏面」に「印刷」される「可視領域で目視した場合は,透明または前記利用券の裏面と同色であるが,近赤外域では,反射または吸収する光の波長が大きく異なる特殊インク」で「所定の位置」に「印刷」される「マーク」は,「利用券のシリアル番号等の情報を示すバーコードもしくは文字や数字等よって表されるコード」であってもよいものであるから,本願発明1の「第2の情報を示す第2の情報コード」に相当し,以上を総合して,引用発明と本願発明1とは,“第1の情報を示す第1の情報コードと,第2の情報を示す第2の情報コードとが形成され”る点で一致する。

イ 引用発明の「利用券の表面に印刷された前記バーコードを読み取るバーコードリーダ(第1の読取手段)」において,当該「利用券の表面に印刷された前記バーコード」を可視光,すなわち「第1の波長の光が照射され」たときに読み取りができるものであることは技術常識である。
また,引用発明の「利用券の裏面に特殊インクで印刷された前記マークを読み取る特殊インク読取機(第2の読取手段)」は,当該「利用券の裏面に特殊インクで印刷された前記マーク」を読み取るものであり,また当該「特殊インク」は,「可視領域で目視した場合は,透明または前記利用券の裏面と同色であるが,近赤外域では,反射または吸収する光の波長が大きく異なる」ものであるところ,可視光,すなわち「第1の波長」とは「異なる第2の波長の光が照射され」たときに読み取りが行われるものといえる。
以上を総合して,引用発明と本願発明1とは,“前記第1の情報コードは,第1の波長の光が照射されると,照射された前記第1の波長の光を反射し,かつ前記第1の波長とは異なる第2の波長の光が照射されると,照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有”する点で一致する。

ウ 引用発明の「利用券の裏面」に「印刷され」る「マーク」は,上記イのとおり,「第1の波長」とは「異なる第2の波長の光が照射され」たときに読み取りが行われるものであるところ,「可視領域で目視した場合は,透明または前記利用券の裏面と同色である」「特殊インク」によって「印刷され」ていることはすなわち,可視光(第1の波長)が照射されると,当該可視光の反射を妨げる光学特性を有しているといえる。さらに,当該「特殊インク」は,「近赤外域では,反射または吸収する光の波長が大きく異なる」ものであることから,可視光と異なる波長(第2の波長)の光が照射されると,当該可視光と異なる波長の光を反射する光学特性を有しているといえる。
そして,上記アの認定を踏まえれば,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“前記第2の情報コードは,前記第1の波長の光が照射されると,照射された前記第1の波長の光の反射を妨げ,かつ前記第2の波長の光が照射されると,照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有する,情報媒体を処理する情報媒体処理装置であ”る点で一致する。

エ 引用発明の「前記利用券の表面に印刷された前記バーコードを読み取るバーコードリーダ(第1の読取手段)」は,「利用券の表面に印刷された前記バーコード」を“撮像”する仕組みを有するものであることは明らかであるところ,当該「バーコード」が撮像される部分は“読取領域”とい得,引用発明と本願発明1とは,“読取領域を撮像する撮像部を備える”点で一致する。

オ 以上,上記ア?エの検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
第1の情報を示す第1の情報コードと,第2の情報を示す第2の情報コードとが形成され,
前記第1の情報コードは,第1の波長の光が照射されると,照射された前記第1の波長の光を反射し,かつ前記第1の波長とは異なる第2の波長の光が照射されると,照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有し,
前記第2の情報コードは,前記第1の波長の光が照射されると,照射された前記第1の波長の光の反射を妨げ,かつ前記第2の波長の光が照射されると,照射された前記第2の波長の光を反射する光学特性を有する,情報媒体を処理する情報媒体処理装置であって,
読取領域を撮像する撮像部を備える,情報媒体処理装置。

〈相違点1〉
本願発明1が,「前記第1の情報コードの一部が、前記第2の波長の光を透過させ、前記第1の波長の光の透過を妨げる光学特性を有する第1の被覆部によって覆われてい」るのに対し,引用発明は,そのような被覆部を有しない点。
である点。

〈相違点2〉
本願発明1が,「前記第1の波長の光を前記情報媒体の読取領域に照射する第1の照明部」及び「前記第2の波長の光を前記情報媒体の前記読取領域に照射する第2の照明部」を有するのに対し,引用発明は,そのような照明部の特定はなされていない点。

〈相違点3〉
本願発明1が,「前記第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像した第1撮像画像、前記第1撮像画像の撮像後に、前記第1の照明部が前記第1の波長の光を点灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を消灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像した前記読取領域の第2撮像画像、および前記第2撮像画像の撮像後に、再度前記第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像した第3撮像画像を処理し、前記読取領域に翳された情報コードが、前記第1の情報コードであるか、前記第2の情報コードであるかを判定する判定部」を備えるとともに,当該「判定部」は,「前記第1撮像画像、および前記第3撮像画像の少なくとも一方に対して撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えなかったとき、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定せず、また、前記第2撮像画像に撮像されている情報コードが示す情報の読み取りが行えたときも、前記読取領域に翳された情報コードが前記第1の情報コードであると判定しない」ものであるのに対し,引用発明は,「バーコード判定部において,前記利用券に印刷れさた前記バーコードの情報が妥当であると判断され,かつ,特殊インク判定部において前記利用券の裏面に前記マークが存在すると判定された場合にのみ,ゲート装置に対してゲート開信号を出力する」に過ぎない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に相違点3について検討する。
本願発明1は,「前記第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像した第1撮像画像、前記第1撮像画像の撮像後に、前記第1の照明部が前記第1の波長の光を点灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を消灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像した前記読取領域の第2撮像画像、および前記第2撮像画像の撮像後に、再度前記第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像した第3撮像画像を処理し、前記読取領域に翳された情報コードが、前記第1の情報コードであるか、前記第2の情報コードであるかを判定する判定部」を有するものであるが,そのうち特に,「第1撮像画像」,「第2撮像画像」を取得した後に,当該「第1撮像画像」を撮像するときと同様に,「再度前記第1の照明部が前記第1の波長の光を消灯し、前記第2の照明部が前記第2の波長の光を点灯した状態で、前記撮像部によって前記読取領域を撮像」して「第3撮像画像」を得て,当該「判定部」によって「読取領域に翳された情報コード」の判定を行っている。そして,本願発明1はこのことにより,コピー等により不正に複製された券が第1の撮像処理において読取領域内に翳され,且つ第2の撮像処理において読取領域外に移動させられた場合に,適正な乗車券であると誤判定するのを防止する(本願明細書段落【0082】)という,格別な効果を奏するものである一方で,引用発明は,単に「利用券の表面」に印刷された「バーコード」から得られる情報及び「利用券の裏面」に印刷された「マーク」或いは「バーコードもしくは文字や数字等よって表されるコード」を用いて,「利用券に印刷された前記バーコードの情報が妥当であると判断され,かつ,特殊インク判定部において前記利用券の裏面に前記マークが存在すると判定された場合にのみ,ゲート装置に対してゲート開信号を出力する」に過ぎないものであって,本願発明1の「判定部」のうち,特に,「第3撮像画像」を取得して判定を行うようにする動機付けに欠くものといわざるを得ない。
そして,このような本願発明1の「判定部」については,その他,上記第5に示した引用例2?4にも記載も示唆もされておらず,当該事項は本願出願前に周知な構成ともいえない。
したがって,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明9及び10について

本願発明1と,単にカテゴリーのみ異なる本願発明9及び10も,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明2?8について

本願発明1を直接又は間接的に引用する本願発明2?8も同様に,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

<特許法29条2項について>

審判請求時の補正により,本願発明1?10は上記第4に示すとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1?4(上記第5の引用例1?引用例4)に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-04-16 
出願番号 特願2016-118467(P2016-118467)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
山澤 宏
発明の名称 情報媒体処理装置、情報媒体処理方法、および情報媒体処理プログラム  
代理人 特許業務法人 楓国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ