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審決分類 審判 判定 対象物 属さない(申立て不成立) H01T
管理番号 1373815
判定請求番号 判定2020-600010  
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 判定 
判定請求日 2020-03-02 
確定日 2021-04-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第5252272号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示すSPD<サージプロ>シリーズ総合カタログ(甲第14号証)に記載されている「放電ノイズ吸収素子」、「放電ギャップ式避雷器」、「放電跳ね返り波回避装置」、「ノイズ回避ボックスの配置」及び「ノイズ回避ボックスの接続工法」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第5252272号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の趣旨は、令和2年8月24日に請求人より提出された手続補正書により補正された判定請求書(以下、「判定請求書」という。)の記載からみて、イ号図面及び説明書に示すSPD<サージプロ>シリーズ総合カタログ(甲第14号証)に記載されている「放電ノイズ吸収素子」(第25頁の「MOV」参照。)、「放電ギャップ式避雷器」(第25頁の「GDT」参照。)、「放電跳ね返り波回避装置」(第21頁、第25頁及び第26頁参照。)、「ノイズ回避ボックスの配置」(第6頁参照。)及び「ノイズ回避ボックスの接続工法」(第2?6頁参照。)(イ号物件)は、特許第5252272号発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
1 手続の経緯
本件の特許第5252272号発明に係る特許出願は、平成20年5月28日に出願されたものであって、平成24年9月7日付けで拒絶理由が通知され、同年11月17日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年1月23日付で拒絶理由が通知され、同年2月15日に手続補正書が提出され、同年4月26日にその特許権の設定登録がされ、同年7月31日に特許公報が発行されたものである。
そして、令和2年3月1日付けで本件判定請求がされ、同年7月22日付けで審尋が請求人に通知され、同年8月24日に請求人より手続補正書及び回答書が提出され、同年12月18日に被請求人株式会社白山から、同年12月22日に被請求人音羽電機工業株式会社から、同年12月24日に被請求人東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社及び株式会社NTTファシリティーズから、それぞれ答弁書が提出されたものである。

2 本件特許発明について
本件の特許第5252272号発明は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのもの(以下、「本件特許発明」という。)である(なお、便宜上、構成要件に分説し、符号A?Cを付加した。以下、それぞれ「構成要件A」?「構成要件C」という。)。

[本件特許発明]
「【請求項1】
A 酸化亜鉛を主成分とし、粘土、アンチモン、ジルコニア及び二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加した微細粉混練物を焼結してなる
B 放電ノイズ吸収素子内に、少なくとも一対の放電ギャップ端子を収納してなる
C ことを特徴とする放電ギャップ式避雷器。 」

第3 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、判定請求書(令和2年8月24日付け手続補正書)において、概ね次の理由により、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属するものである旨主張している。
(1)イ号物件は、本件特許発明に即して記載すると、次のとおりのものである。
「a
二酸化亜鉛、粘士を主成分とした微細紛混練物を焼結してなるセラミック素子の2面に電極を配置した酸化亜鉛式2極型SPD素子と、
b
二酸化亜鉛を混合していない、絶縁性の高い粘土を主成分とし、高温燃結した円形筒の磁器の両端に放電極を取り付けた放電ギャップ式SPD避雷器を直・並列接続した放電ノイズ吸収素子及びこれを利用した放電ギャップ式避雷器並びに放電跳ね返り波回避回路を特徴とするSPD避雷器。」
そして、本件特許発明のA?Cの構成とイ号物件のa及びbの構成は一致する。

(2)本件特許発明のAの構成とイ号物件のaの構成に関して、予備的に主張した、SPD素子の素材の異なる素子を組み合わせた直列・並列接続の回避回路は、均等である。

(3)以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明と同ーか、少なくとも均等であることから、本件特許発明の技術的範囲に属する。

2 被請求人の主張
被請求人である株式会社白山(以下、「被請求人A」という。)、東日本電信電話株式会社(以下、「被請求人B」という。)、西日本電信電話株式会社(以下、「被請求人C」という。)及び音羽電機工業株式会社(以下、「被請求人D」という。)は、答弁書において概ね次の理由により、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属しないものである旨主張している。
なお、被請求人B及び被請求人である株式会社NTTファシリティーズは、判定を請求する利益がないから、判定請求を却下すべき旨主張している。

(1)被請求人Aの主張
a 甲第14号証は、イ号物件を特定していない。請求人の主張するイ号物件の構成は、根拠のないものである。

b イ号物件の構成に根拠があって、特定されていると仮定しても、上記1(1)のイ号の構成aの「二酸化亜鉛、粘土を主成分とした微細紛混錬物」は、本件特許発明における構成要件Aの「酸化亜鉛を主成分とし、粘土、アンチモン、ジルコニア及び二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加した微細紛混錬物」と異なっており、また、均等成立の要件を満たすものではない。

(2)被請求人Bの主張
被請求人Bは、予備的答弁として、上記(1)a及びbと同様の事項に加え、上記(1)bの均等成立の要件として、第1要件及び第5要件を充足しない旨主張する。
a 均等の第5要件について
補正前の特許請求の範囲には、「二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加した微細粉混練物」との構成を備えない構成も含まれていたことから、この減縮補正により、少なくとも「二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加した微細粉混練物」との構成を備えない構成は、本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたという特段の事情が存在するといえる。
そして、判定請求書に記載されたイ号は、構成要件Aのうち、少なくとも「二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加した微細粉混練物」との構成を備えるものではない。
したがって、判定請求書に記載されたイ号の構成については、本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたという特段の事情が存在し、均等の第5要件を充足しない。

b 均等の第1要件について
請求人は、「本発明では、二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を混合して焼成してセラミック化することでこの欠点を回避しています。」と述べている。そのため、仮に本件特許発明が進歩性を有するものであるとすれば、本件特許発明と判定請求書に記載されたイ号との素子の成分に関する相違点(特に二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加していない点)は、本件特許発明の本質的部分(従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分)であると解されるから、均等の第1要件も充足しない。

(3)被請求人Cの主張
被請求人Cは、上記(1)a及びbと同様の事項に加え、上記(1)bの均等成立の要件として、請求人Bと同様に第1要件及び第5要件を充足しない旨主張するとともに、次のaによっても、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属しないものである旨主張する。

a 上記1(1)のイ号物件の構成aの「酸化亜鉛式2極型SPD素子」は、放電ギャップ端子を収納できる構造にはなっておらず、本件特許発明における構成要件Bの「放電ノイズ吸収素子内に、少なくとも一対の放電ギャップ端子を収納してなる」と異なっている。

(4)被請求人Dの主張
被請求人Dは、上記(1)a及びbと同様の事項に加え、上記(1)bの均等成立の要件として、請求人B及びCと同様に第1要件及び第5要件を充足しない旨主張する。


3 甲第1?13号証について
甲第1?3号証は本件特許に関する証拠であって、イ号物件の構成に関する証拠ではない。
そして、甲第4?13号証には、何らかの「放電ノイズ吸収素子」及び「放電ギャップ式避雷器」の構成についての記載はあるものの、イ号物件の構成を立証し得る、客観的な事項(例えば、イ号物件の内部に使われている部品を分解した写真や、断面の写真、部品を構成する要素の成分分析表等)は記載されていない。
そうすると、甲第1?13号証は、いずれもイ号物件の構成に関する客観的な証拠とは認められない。

第4 イ号物件の構成について
1 イ号物件の「放電ノイズ吸収素子」について
甲第14号証の第25頁に記載された回路図には、「MOV」(Metal Oxide Varistorの略)、つまり、金属酸化物を用いたバリスタの記号が記載されている。ただし、本件特許発明と関連する構成について、これより詳細な事項は記載されていない。
したがって、イ号物件の「放電ノイズ吸収素子」は、次の構成を有すると認められる。
「金属酸化物を用いたバリスタを有する放電ノイズ吸収素子。」

2 イ号物件の「放電ギャップ式避雷器」について
甲第14号証の第25頁に記載された回路図には、「GDT」(Gas Discharge Tubesの略)、つまり、ガスを封入し密封した容器内にギャップを設けた避雷素子の記号が記載されている。
そして、甲第14号証には、「GDT」について、本件特許発明と関連する構成に関して、これより詳細な事項は記載されていない。
したがって、イ号物件の「放電ギャップ式避雷器」は、次の構成を有すると認められる。
「ガスを封入し密封した容器内にギャップを設けた避雷素子を有する放電ギャップ式避雷器。」

3 イ号物件の「放電跳ね返り波回避装置」について
甲第14号証の第21頁、第25頁及び第26頁に記載された、放電跳ね返り波回避装置の回路図には、「GDT」の記号が記載されている。
そして、甲第14号証には、「放電跳ね返り波回避装置」について、本件特許発明と関連する構成に関して、これより詳細な事項は記載されていない。
したがって、イ号物件の「放電跳ね返り波回避装置」は、次の構成を有すると認められる。
「ガスを封入し密封した容器内にギャップを設けた避雷素子を有する放電ギャップ式避雷器を備えた、放電跳ね返り波回避装置。」

4 イ号物件の「ノイズ回避ボックスの配置」について
甲第14号証の第6頁には、第25頁に記載された、GDTを用いたクラスII(誘導雷)対応SPDを含む「ノイズ回避ボックスの配置」が記載されている。
そして、甲第14号証には、「ノイズ回避ボックスの配置」について、本件特許発明と関連する構成に関して、これより詳細な事項は記載されていない。
したがって、イ号物件の「ノイズ回避ボックスの配置」は、次の構成を有すると認められる。
「ガスを封入し密封した容器内にギャップを設けた避雷素子を有する放電ギャップ式避雷器を用いたクラスII(誘導雷)対応SPDを含むノイズ回避ボックスの配置。」

5 イ号物件の「ノイズ回避ボックスの接続工法」
甲第14号証の第2?6頁には、第25頁に記載された、GDTを用いたクラスII(誘導雷)対応SPDを含む「ノイズ回避ボックスの接続工法」が記載されている。
そして、甲第14号証には、「ノイズ回避ボックスの接続工法」について、本件特許発明と関連する構成に関して、これより詳細な事項は記載されていない。
したがって、イ号物件の「ノイズ回避ボックスの接続工法」は、次の構成を有すると認められる。
「ガスを封入し密封した容器内にギャップを設けた避雷素子を有する放電ギャップ式避雷器を用いたクラスII(誘導雷)対応SPDを含むノイズ回避ボックスの接続工法。」

第5 属否の判断
1 文言上の対比
(1)構成要件Aについて
いずれのイ号物件の構成にも、金属酸化物の詳細な内容についての特定事項はないから、イ号物件の構成は、本件特許発明の構成要件Aの「酸化亜鉛を主成分とし、粘土、アンチモン、ジルコニア及び二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加した微細粉混練物を焼結してなる」構成を充足しない。

(2)構成要件Bについて
いずれのイ号物件の構成にも、放電ノイズ吸収素子内に、放電ギャップ端子を収納することについての特定事項はないから、イ号物件の構成は、本件特許発明の構成要件Bの「放電ノイズ吸収素子内に、少なくとも一対の放電ギャップ端子を収納してなる」構成を充足しない。

(3)構成要件Cについて
イ号物件の「放電ノイズ吸収素子」は、放電ギャップ式避雷器の構成を有しないから、本件特許発明の構成要件Cの「放電ギャップ式避雷器」を充足しない。
イ号物件の「放電ギャップ式避雷器」は、本件特許発明の構成要件Cの「放電ギャップ式避雷器」に相当するから、本件特許発明の構成要件Cを充足する。
イ号物件の「放電跳ね返り波回避装置」、「ノイズ回避ボックスの配置」及び「ノイズ回避ボックスの接続工法」は、いずれも「放電ギャップ式避雷器」を有するものであるから、本件特許発明の構成要件Cを充足する。

(4)小括
以上のように、イ号物件の「放電ノイズ吸収素子」は、本件特許発明の構成要件A?Cを充足しない。
また、イ号物件の「放電ギャップ式避雷器」、「放電跳ね返り波回避装置」、「ノイズ回避ボックスの配置」及び「ノイズ回避ボックスの接続工法」は、本件特許発明の構成要件A及びBを充足しない。
したがって、イ号物件は、文言上、本件特許発明の技術的範囲に属しない。

2 均等論の適用について
(1)構成要件A及びBについて
イ号物件は、本件特許発明の構成要件A及びBと均等なものとすることができるか否かについて検討する。

均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するための要件は、最高裁平成10年2月24日判決(平成6年(オ)第1083号)にて、以下のとおり判示されている。
「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,(1)上記部分が特許発明の本質的部分ではなく,(2)上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,(3)上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,(4)対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは, 上記対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」(以下、上記判示事項の要件である「(1)?(5)」を、順に「第1?5要件」という。)
そこで、各要件について以下で検討する。

a 第1要件について
本件特許発明の構成要件A及びBに関して、甲第3号証(本件特許の特許出願手続においてに平成24年11月17日に特許権者が提出した意見書。下線は、当審で付した。)には、
「(4)理由2、3に対して
引用刊行物1には、酸化亜鉛を主成分とし、希土類酸化物、アンチモン及びジルコニアを添加した粉末を焼結した放電ノイズ素子が記載されている。
しかしながら、従来の避雷器に使用されている酸化亜鉛やジルコニアやアンチモン(ドーパント)を焼結した素子では、応答開始電圧が高くなり、電子基板内の避雷素子として使用した場合、応答速度が遅く、電子部品が損傷する事故が多発していたのであります。これは、従来の放電素子を電子部品内で使用すると、現在の電子機器は消費電力の省電力部品で構成でされているため、酸化亜鉛を主原料にした素子では応答速度が遅過ぎることに起因します。すなわち、放電素子を小さくすると、大きなノイズが取れませんし、素子を大きくすると、小さなノイズが取れません。その理由は、素子を焼結してセラミックにする際、高温で焼成するために高抵抗の成分になってしまうからです。そこで、本発明では、二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を混合して焼成してセラミック化することでこの欠点を回避しています。しかも、素子の中央に空洞を設け、両方から放電極を配置することで、応答速度の速い放電ギャップ式避雷器を得ることを可能としています。」と説明しており、また、明細書の段落【0014】には「しかしながら、前記のような避雷器のみによる対応では、50万ボルト以下の低電圧ノイズは基板内に流入してしまうという問題が残った。そして、(中略)回路基板と電源基板とがアースグランディングされておらず、また、回路基板内で一番脆弱なデジタル回路がシールドされていないため、ノイズ侵入時に基板に接続されているケーブルから発信される高周波帯域成分の電磁波がデジタル回路を破壊する。」と記載され、段落【0016】には「本発明は、上記のような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、」と記載され、段落【0017】には「このため本発明の請求項1に係る放電ギャップ式避雷器は、酸化亜鉛を主成分とし、粘土、アンチモン、ジルコニア及び二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加した微細粉混練物を焼結してなる放電ノイズ吸収素子内に、少なくとも一対の放電ギャップ端子を収納してなることを特徴とする。」と記載され、また段落【0026】には「(2)コイルを巻きつけた素子の空隙内に避雷器を収納し、放電電流の反射波吸収素子との並列回路として電源基盤内に収納することにより、フィルターと避雷器収納スペースが従来の半分で済み、省スペース化を図ることができ、」と記載されている。

そして、これら甲第3号証及び明細書の記載に基づけば、構成要件Aの「酸化亜鉛を主成分とし、粘土、アンチモン、ジルコニア及び二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加した微細粉混練物を焼結してなる」構成及び構成要件Bの「放電ノイズ吸収素子内に、少なくとも一対の放電ギャップ端子を収納してなる」構成は、いずれも、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴部分であると解されるから、金属酸化物の詳細な内容が不明であり、また、放電ノイズ吸収素子内に放電ギャップ端子を収納してなる構成を有しないものであるイ号物件は、上記第1要件を満たしていない。

b 第5要件について
出願当初の特許請求の範囲の請求項1(以下、「出願時の請求項1」という。)は
「酸化亜鉛(ZnO:酸化物半導体)を主成分とし、粘土(稀土類酸化物)、アンチモン(ドーパント)及びジルコニア(耐熱性セラミックス材料)を添加した微細粉混練物を焼結してなることを特徴とする放電ノイズ吸収素子。」
であり、平成24年11月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正後の請求項1」という。)は
「酸化亜鉛を主成分とし、粘土、アンチモン、ジルコニア及び二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加した微細粉混練物を焼結してなる放電ノイズ吸収素子内に、少なくとも一対の放電ギャップ端子を収納してなることを特徴とする放電ギャップ式避雷器」
である。

そして、出願時の請求項1及び補正後の請求項1と、上記第2 2の[本件特許発明]の構成要件A及びBを比較すると、構成要件Aの「二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加」した構成及び構成要件Bの「放電ノイズ吸収素子内に、少なくとも一対の放電ギャップ端子を収納してなる」構成は、特許出願手続における平成24年11月17日の手続補正書による補正により、請求項1に意識的に付加された構成と認められる。

そうであれば、本件特許発明の構成要件Aの「二酸化ケイ素を含有する天然レキ岩を添加」した構成及び構成要件Bの「放電ノイズ吸収素子内に、少なくとも一対の放電ギャップ端子を収納してなる」構成を有しないイ号物件は、特許出願手続における平成24年11月17日の手続補正書による補正において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるから、イ号物件の構成は、上記第5要件を満たしていない。

c 小括
したがって、イ号物件の構成は、本件特許発明の構成要件A及びBについて、上記第2?4要件を検討するまでもなく、均等なものとすることができない。

(2)まとめ
上記(1)のとおりであるから、イ号物件の構成は、本件特許発明の構成要件A及びBと均等なものとすることができないので、本件特許発明の構成要件Cについて検討するまでもなく、本件特許発明の技術範囲に属するとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。

別紙
1 甲第14号証第1?6頁


2 甲第14号証第21?22頁


3 甲第14号証第25?26頁



 
判定日 2021-04-02 
出願番号 特願2008-139933(P2008-139933)
審決分類 P 1 2・ 04- ZB (H01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 杉山 健一
内田 博之
登録日 2013-04-26 
登録番号 特許第5252272号(P5252272)
発明の名称 放電ノイズ吸収素子及びこれを利用した放電ギャップ式避雷器並びに放電跳ね返り波回避回路及びノイズ回避ボックス  
代理人 丹治 彰  
代理人 澤田 将史  
代理人 町野 静  
代理人 飯島 歩  
代理人 村上 友紀  
代理人 藤田 知美  
代理人 吉田 芳春  
代理人 三品 明生  
代理人 城村 邦彦  

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